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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】配線回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/18 20060101AFI20220207BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
H05K3/18 D
H05K3/18 B
H05K1/02 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019222680
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2021093434
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-08-04
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】高倉 隼人
(72)【発明者】
【氏名】滝本 顕也
【審査官】赤穂 州一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-067317(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0170111(US,A1)
【文献】特開2018-157051(JP,A)
【文献】特開2018-174188(JP,A)
【文献】特開2018-074073(JP,A)
【文献】特開2010-056576(JP,A)
【文献】特開2002-111174(JP,A)
【文献】特開2001-007456(JP,A)
【文献】特開平10-032201(JP,A)
【文献】米国特許第04159222(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/10 - 3/26
H05K 3/38
H05K 1/00 - 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層を形成する第1工程と、
第1配線および前記第1配線より厚い第2配線を、前記絶縁層の厚み方向一方面に、順に形成する第2工程とを備え、
前記第2工程は、
種膜を、前記絶縁層の前記厚み方向一方面に形成する工程と、
第1レジストを、前記種膜の前記厚み方向一方面に、前記第1配線の反転パターンで形成する工程と、
前記第1配線を、前記第1レジストから露出する前記種膜の前記厚み方向一方面にめっきにより形成する工程と、
前記第1レジストを除去する工程と、
第2レジストを、前記種膜の厚み方向一方面に、前記第1配線を被覆するように、前記第2配線の反転パターンで形成する工程と、
前記第2配線を、前記第2レジストから露出する前記種膜の厚み方向一方面にめっきにより形成する工程と、
前記第2レジストを除去する工程と、
前記第1配線および前記第2配線から露出する前記種膜を除去する工程と
を順に備え、
前記第1レジストは、開口部を有し、
前記第2レジストは、第2開口部を有し、
前記第2開口部は、前記開口部が形成された位置に重ならず、
前記第1配線は、電気信号を伝送するように構成され、前記第1配線の厚みT1は、15μm以下、1μm以上であり、前記第1配線の幅W1は、5μm以上、50μm以下であり、
前記第2配線は、電源電流を伝送するように構成され、前記第2配線の厚みT2は、20μm以上、500μm以下であり、前記第2配線の幅W2は、20μm以上、100μm以下であることを特徴とする、配線回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記第1レジストを除去する工程では、前記種膜が残ることを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記第2配線は、前記第1配線に対して独立することを特徴とする、請求項1または2に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記種膜の厚みが、50nm以上、1000nm以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベース絶縁層の上面に、厚みの異なる配線を形成する、サスペンション用基板の製造方法が知られている。
【0003】
例えば、ベース絶縁層の上面に、ライト配線と、それより厚いリード配線とを形成するサスペンション用基板の製造方法が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1の記載の製造方法では、ライト配線の全部と、リード配線の下側部分をめっきで形成し、その後、リード配線の上側部分をめっきで形成している。
【0005】
詳しくは、特許文献1の記載の製造方法では、リード配線の下側部分を形成する前に、第1のレジスト層を、ライト配線およびリード配線の反転パターンで形成し、続いて、めっきでライト配線およびリード配線の下側部分を形成し、その後に、第2のレジスト層をリード配線の反転パターンで形成し、続いて、めっきで、リード配線の上側部分を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-067317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、特許文献1の記載された方法において、第2のレジスト層を、リード配線の下側部分が形成された部分の周囲に、リード配線の反転パターンで形成する方法は、リード配線の下側部分と、第2のレジスト層の反転パターンとの間に公差を含んでしまう。そのため、リード配線の下側部分と、第2のレジスト層の反転パターンとの間で、ずれが発生してしまう。すると、このような第2レジスト層を用いてめっきすれば、所望の形状、配置、サイズなどではないリード配線が形成されるという不具合がある。
【0008】
本発明は、所望の形状、配置、サイズを有する第1配線または第2配線を形成することができる配線回路基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(1)は、絶縁層を形成する第1工程と、厚みが互いに異なる第1配線および第2配線を、前記絶縁層の厚み方向一方面に、順に形成する第2工程とを備え、前記第2工程は、種膜を、前記絶縁層の前記厚み方向一方面に形成する工程と、第1レジストを、前記種膜の前記厚み方向一方面に、前記第1配線の反転パターンで形成する工程と、前記第1配線を、前記第1レジストから露出する前記種膜の前記厚み方向一方面にめっきにより形成する工程と、前記第1レジストを除去する工程と、第2レジストを、前記種膜の厚み方向一方面に、前記第1配線を被覆するように、前記第2配線の反転パターンで形成する工程と、前記第2配線を、前記第2レジストから露出する前記種膜の厚み方向一方面にめっきにより形成する工程と、前記第2レジストを除去する工程と、前記第1配線および前記第2配線から露出する前記種膜を除去する工程とを順に備える、配線回路基板の製造方法を含む。
【0010】
この製造方法では、第2工程において、厚みが互いに異なる第1配線および第2配線のそれぞれを、第1レジストおよび第2レジストのそれぞれを用いて形成するので、所望の形状、配置、サイズを有する第1配線および第2配線を形成することができる。
【0011】
本発明(2)は、前記第1レジストを除去する工程では、前記種膜が残ること、(1)に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0012】
しかるに、種膜を予め、ベース絶縁層の厚み方向一方面に形成し、その後、第1レジストから露出する種膜にめっき膜を成長させ、その後、第1レジスト層を除去する際、種膜は、通常、極めて薄いことから、上記した第1レジストとともに、除去される。そのため、第2レジストの形成前に、再び、種膜を形成する必要がある。
【0013】
しかし、この方法では、種膜が残るように、第1レジストを除去するので、第2レジストを形成する前に、再度、種膜を形成する必要がない。そのため、種膜を再利用できる。その結果、少ない工数で第2配線を形成することができる。
【0014】
本発明(3)は、前記第2配線が、前記第1配線より厚い、(1)または2に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0015】
しかるに、第1配線が、第2配線より厚い場合には、先に、厚めの第1レジストを用いて第1配線を形成し、その後、薄めの第2レジストを形成する際に、かかる第2レジストでは、厚い第1配線を確実にマスクしにくい。
【0016】
しかし、この製造方法では、第1配線が、第2配線より薄いので、先に、薄めの第1レジストを用いて第1配線を形成し、その後、厚めの第2レジストを形成する際に、かかる第2レジストで、薄い第1配線を簡単かつ確実にマスクすることができる。
【0017】
本発明(4)は、前記第2配線は、前記第1配線に対して独立する、(1)~(3)のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0018】
この製造方法によれば、第2配線が、第1配線に対して独立するので、第2配線を別の用途に用いることができる。
本発明(5)は、前記種膜の厚みが、50nm以上、1000nm以下である、(1)~(4)のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0019】
この製造方法であれば、第1レジストを除去する工程において、エッチング、剥離などの除去方法を実施しても、50nm以上の厚みを有する種膜が確実に残ることができる。そのため、第2配線を形成するときのめっきを安定して実施できる。一方、1000nm以下の厚みを有するので、種膜を短時間で形成できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の配線回路基板の製造方法は、所望の形状、配置、サイズを有する第1配線または第2配線を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1A図1Jは、本発明の配線回路基板の製造方法の一実施形態の製造工程図であり、図1Aが、ベース絶縁層を形成する第1工程、図1Bが、種膜を形成する第4工程、図1Cが、第1レジストを形成する第5工程、図1Dが、第1配線を形成する第6工程、図1Eが、第1レジストを除去する第7工程、図1Fが、第2レジストを形成する第8工程、図1Gが、第2配線を形成する第9工程、図1Hが、第2レジストを除去する工程、図1Iが、種膜を除去する第10工程、図1Jが、カバー絶縁層を形成する第3工程である。
図2図2は、図1Jに対応する配線回路基板の断面図であり、種膜が第1配線および第2配線に含まれる態様を示す図である。
図3図3A図3Hは、図1C図1Jに示す製造方法の変形例(第2配線が第1配線より薄い態様)の製造工程図であり、図3Aが、第1レジストを形成する第5工程、図3Bが、第1配線を形成する第6工程、図3Cが、第1レジストを除去する第7工程、図3Dが、第2レジストを形成する第8工程、図3Eが、第2配線を形成する第9工程、図3Fが、第2レジストを除去する工程、図3Gが、種膜を除去する第10工程、図3Hが、カバー絶縁層を形成する第3工程である。
図4図4A図4Gは、比較例1の製造方法の製造工程図であり、図4Aが、第1開口部および第2開口部を有する第1レジストを形成する工程、図4Bが、第1配線と、第2配線の他方側部分とを同時に形成する工程、図4Cが、第1レジストを除去する工程と、図4Dが、種膜を改めて形成する工程と、図4Eが、第2レジストを形成する工程と、図4Fが、第2配線の一方側部分を形成する工程と、図4Gが、第2レジストを除去する工程である。
図5図5A図5Bは、第2配線において厚み方向一方側部分が他方側部分より狭い比較例2の製造方法の製造工程図の一部であり、図5Aが、第2配線の厚み方向他方側部分と、第2開口部との公差を説明する図、図5Bが、第2配線の厚み方向一方側部分を形成する工程図である。
図6図6A図6Bは、第2配線において厚み方向一方側部分が他方側部分より広い比較例3の製造方法の製造工程図の一部であり、図6Aが、第2配線の厚み方向他方側部分と、第2開口部との公差を説明する図、図6Bが、第2配線の厚み方向一方側部分を形成する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<一実施形態>
本発明の配線回路基板の製造方法の一実施形態を図1A図2を参照して説明する。
【0023】
図1Jおよび図2に示すように、この製造方法により得られる配線回路基板1は、所定厚みを有し、長尺の平帯形状を有する。具体的には、配線回路基板1は、紙面奥行き方向に延びる。配線回路基板1は、ベース絶縁層の一例としてのベース絶縁層2と、第1配線3および第2配線4と、カバー絶縁層5とを備える。
【0024】
ベース絶縁層2は、平面視において、配線回路基板1と同一形状を有する。ベース絶縁層2の厚み方向一方面は、平坦である。ベース絶縁層2の材料としては、例えば、ポリイミドなどの絶縁樹脂が挙げられる。ベース絶縁層2の厚みは、例えば、5μm以上であり、また、例えば、30μm以下である。
【0025】
第1配線3は、ベース絶縁層2の厚み方向一方面に配置されている。第1配線3は、ベース絶縁層2の幅方向(厚み方向および長尺方向に直交する方向)一方側部分において、例えば、幅方向に互いに間隔を隔てて複数配置されている。複数の第1配線3のそれぞれは、幅方向および厚み方向に沿う断面において、略矩形状を有する。例えば、第1配線3は、具体的には、電気信号(例えば、10mA未満、さらには、1mA未満の微弱電流)を伝送する。第1配線3の材料としては、例えば、銅、銀、金、クロム、ニッケル、チタン、それらの合金などの導体が挙げられる。
【0026】
第1配線3の厚みT1は、例えば、25μm以下、好ましくは、20μm以下、より好ましくは、15μm以下であり、また、例えば、1μm以上である。第1配線3の幅W1は、例えば、5μm以上であり、また、例えば、50μm以下である。
【0027】
第2配線4は、ベース絶縁層2の厚み方向一方面に、第1配線3と幅方向に間隔を隔てて配置されている。第2配線4は、第1配線3と独立して設けられている。具体的には、第2配線4は、ベース絶縁層2の幅方向他方側部分において、例えば、単数配置されている。また、第2配線4は、1層で形成されている。第2配線4は、幅方向および厚み方向に沿う断面において、略矩形状を有する。例えば、第2配線4は、電源電流(例えば、10mA以上、さらには、100mA以上の大電流)を伝送する。第2配線4の材料は、例えば、銅、クロム、それらの合金などの導体が挙げられ、好ましくは、第1配線3の材料と同一である。
【0028】
第2配線4は、本実施形態では、第1配線3より厚い。具体的には、第2配線4の厚みT2は、例えば、10μm以上、好ましくは、15μm以上、より好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、500μm以下である。第1配線3の厚みT1に対する第2配線4の厚みT2の比(T2/T1)は、例えば、1.25以上、好ましくは、1.5以上、より好ましくは、1.8以上、さらに好ましくは、2以上であり、また、例えば、100以下である。
【0029】
第2配線4の幅W2は、第1配線3の幅W1と同一またはそれを越えてもよい。例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上、より好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、100μm以下である。
【0030】
カバー絶縁層5は、第1配線3および第2配線4を被複する。具体的には、カバー絶縁層5は、第1配線3および第2配線4の厚み方向一方面および幅方向両側面と、ベース絶縁層2における第1配線3および第2配線4の周囲の厚み方向一方面とに配置されている。カバー絶縁層5の材料としては、ベース絶縁層2の材料で例示した同様の材料が挙げられる。カバー絶縁層5の厚みは、カバー絶縁層5の厚み方向一方面と第1配線3の厚み方向一方面との間の長さ、および、カバー絶縁層5の厚み方向一方面と第2配線4の厚み方向一方面との間の長さであって、例えば、5μm以上であり、また、例えば、30μm以下である。
【0031】
図1A図1Jに示すように、この製造方法は、ベース絶縁層2を形成する第1工程と、第1配線3および第2配線4を形成する第2工程と、カバー絶縁層5を形成する第3工程とを備える。
【0032】
図1Aに示すように、第1工程では、例えば、ポリイミドなどの絶縁樹脂から上記した形状のベース絶縁層2を形成する。具体的には、上記した絶縁樹脂組成物を基材に塗布して、感光性ベース層を形成し、これをフォトリソグラフィーして、ベース絶縁層2を形成する。
【0033】
図1B図1Iに示すように、第2工程では、第1配線3および第2配線4を、ベース絶縁層2の厚み方向一方面に、この順で形成する。つまり、図1Eに示すように、まず、第1配線3をベース絶縁層2の厚み方向一方面に形成し、その後、図1Iに示すように、第2配線4をベース絶縁層2の厚み方向一方面に形成する。
【0034】
第2工程は、具体的には、種膜6を形成する第4工程(図1B参照)と、第1レジスト7を形成する第5工程(図1C参照)と、第1配線3をめっきにより形成する第6工程(図1D参照)と、第1レジスト7を除去する第7工程(図1E参照)と、第2レジスト8を形成する第8工程(図1F参照)と、第2配線4をめっきにより形成する第9工程(図1G参照)と、第2レジスト8を除去する第10工程(図1H参照)と、種膜6を除去する第11工程(図1I参照)とを備える。図1B図1Iに示すように、第4工程~第11工程は、順に実施される。
【0035】
図1Bに示すように、第4工程では、種膜6を、ベース絶縁層2の厚み方向一方面に形成する。種膜6は、ベース絶縁層2の厚み方向一方面全面に接触する。種膜6を、例えば、スパッタリング、めっき(無電解めっきなど)などの成膜方法、好ましくは、スパッタリングにより、種膜6を形成する。
【0036】
種膜6の材料としては、上記した第1配線3および第2配線4で例示した材料が挙げられる。種膜6の厚みT3は、例えば、50nm以上、好ましくは、75nm以上、より好ましくは、100nm以上であり、また、例えば、1000nm以下、好ましくは、300nm以下である。
【0037】
種膜6の厚みT3が上記した下限以上であれば、後の第7工程(図1E)で第1レジスト7の除去に伴って、第1配線3から露出する種膜6が確実に残ることができる。一方、種膜6の厚みT3が上記した上限以下であれば、種膜6を短時間で形成できる。
【0038】
図1Cに示すように、第5工程では、第1レジスト7を、種膜6の厚み方向一方面に、第1配線3の反転パターンで形成する。例えば、感光性のドライフィルムレジストを種膜6の厚み方向一方面全面全面に配置し、その後、感光性のドライフィルムレジストをフォトリソグラフィーによって、上記したパターンで第1レジスト7を形成する。第1レジスト7は、第1配線3の形成予定位置に対応する第1開口部17を有する。第1開口部17は、第1レジスト7を厚み方向に貫通する。第1開口部17は、種膜6の厚み方向一方面を露出する。第1レジスト7の厚みT4は、例えば、第1配線3の厚みT1を越える。
【0039】
図1Dに示すように、第6工程では、第1配線3を、第1レジスト7の第1開口部17から露出する種膜6の厚み方向一方面に、めっきにより形成する。第6工程では、ベース絶縁層2、種膜6および第1レジスト7を、めっき液に浸漬しながら、種膜6に給電して、第1開口部17から露出する種膜6の厚み方向一方面に、第1配線3を形成する。
【0040】
図1Eに示すように、第7工程では、第1レジスト7を除去する。例えば、エッチング、剥離などによって、種膜6が残るように、第1レジスト7を除去する。
【0041】
このとき、第1配線3から露出する種膜6は、上記した第1レジスト7の除去によって、第1配線3に対応する種膜6より、例えば、10~100nm、薄くなっている。つまり、後の工程で形成される第2配線4に対応する種膜6は、第1配線3に対応する種膜6より、例えば、10~100nm薄い。
【0042】
図1Fに示すように、第8工程では、第2レジスト8を形成する。第2レジスト8を、第1配線3をマスク(被覆)するように、種膜6の厚み方向一方面に、第2配線4の反転パターンで形成する。例えば、感光性のドライフィルムレジストを種膜6の厚み方向一方面と、第1配線3の厚み方向一方面および幅方向両側面とに配置し、その後、感光性のドライフィルムレジストをフォトリソグラフィーによって、上記したパターンで第2レジスト8を形成する。第2レジスト8は、第2配線4の形成予定位置に対応する第2開口部18を有する。第2開口部18は、第2レジスト8を厚み方向に貫通する。第2開口部18は、種膜6の厚み方向一方面を露出する。第2レジスト8の厚みT5は、第2配線4の厚みT2を越える。なお、第2レジスト8の厚みT5は、例えば、第1レジスト7の厚みT4より、厚い。第1レジスト7の厚みT4に対する第2レジスト8の厚みT5の比(T5/T4)は、例えば、2以上、さらには、3以上であり、また、例えば、20以下、さらには、10以下である。
【0043】
図1Gに示すように、第9工程では、第2配線4を、第2レジスト8の第2開口部18から露出する種膜6の厚み方向一方面に、めっきにより形成する。第9工程では、ベース絶縁層2、種膜6、第1配線3および第2レジスト8を、めっき液に浸漬しながら、種膜6に給電して、第2開口部18から露出する種膜6の厚み方向一方面に、第2配線4を形成する。なお、第1配線3および第2配線4は、いずれも、種膜6の厚み方向一方面(同一平面上)に設けられる。また、第1配線3の種膜6および第2配線4の種膜6は、共通しており、同じ層である。
【0044】
図1Hに示すように、第10工程では、第2レジスト8を除去する。例えば、エッチング、剥離などによって、第2レジスト8を除去する。
【0045】
図1Iに示すように、第11工程では、第1配線3および第2配線4から露出する種膜6を除去する。例えば、エッチング、剥離などの除去方法によって、種膜6を除去する。
【0046】
なお、ベース絶縁層2および第1配線3の間の種膜6と、ベース絶縁層2および第2配線4との間の種膜6とは、いずれも、除去されず、残る。なお、図1Iに示すように、種膜6および第1配線3の界面と、種膜6および第2配線4の界面とは、いずれも観察され、明瞭に描画されているが、図2に示すように、上記した界面が観察されず、不明瞭であって、種膜6は、第1配線3および第2配線4と渾然一体となり、第1配線3および第2配線4のそれぞれに含まれてもよい。
【0047】
上記した第4工程~第11工程を実施する第2工程によって、第1配線3および第2配線4を、ベース絶縁層2の厚み方向一方側に順に形成する。
【0048】
図1Jに示すように、第3工程では、カバー絶縁層5を、ベース絶縁層2の厚み方向一方面に、第1配線3および第2配線4を被覆するように、形成する。具体的には、上記した絶縁樹脂組成物をベース絶縁層2、第1配線3および第2配線4の厚み方向一方面に塗布して、感光性カバー層を形成し、これをフォトリソグラフィーして、カバー絶縁層5を形成する。
【0049】
これにより、ベース絶縁層2と、第1配線3および第2配線4と、第1配線3および第2配線4に対応する種膜6と、カバー絶縁層5とを備える配線回路基板1を製造する。
【0050】
(一実施形態の作用効果)
そして、この製造方法では、第2工程において、図1Dおよび図1Gに示すように、厚みが互いに異なる第1配線3および第2配線4のそれぞれを、第1レジスト7および第2レジスト8のそれぞれを用いて形成するので、所望の形状、配置、サイズを有する第1配線3および第2配線4を形成することができる。
【0051】
ここで、上記の理解をより深めるために、特許文献1の製造方法に対応する比較例1の方法を、図4A図4Gを用いて説明する。
【0052】
比較例1では、図4Aに示すように、第5工程において、第1開口部17および第2開口部18を有する第1レジスト7を形成する。
【0053】
そうすると、図4Bに示すように、第6工程では、めっきにより、第1配線3と、第2配線4の厚み方向他方側部分13とを、同時に形成する。
【0054】
なお、図4Cに示すように、第7工程では、第1レジスト7を除去する際、種膜6が除去される。図4Dに示すように、その後、再度、種膜6を、ベース絶縁層2の厚み方向一方面と、第1配線3および厚み方向他方側部分13の厚み方向一方面および両側面とに形成する。
【0055】
図4Eに示すように、第8工程では、第2開口部18を有する第2レジスト8を形成する。
【0056】
しかし、第1レジスト7の第2開口部18の位置と、第2配線4の厚み方向他方側部分13との位置がずれる場合がある。つまり、図4Aに示す第5工程における第1レジスト7の第2開口部18と、図4Eに示す第8工程における第2レジスト8の第2開口部18との間に、位置に関する公差が存在する。そうすると、第2配線4の厚み方向他方側部分13と、第2レジスト8の第2開口部18との間で、ずれを発生する。
【0057】
なお、この比較例1では、厚み方向他方側部分13と第2開口部18との間に関する公差に関し、第2開口部18の一方側内側面21は、厚み方向他方側部分13の幅方向一方側面23に対して、幅方向一方側にずれる。第2開口部18の他方側内側面22は、13の幅方向他方側面24に対して幅方向一方側にずれる。
【0058】
ずれは、上記に限定されず、例えば、比較例2では、図5Aに示すように、第2開口部18の一方側内側面21は、厚み方向他方側部分13の幅方向一方側面23に対して、幅方向他方側にずれる。比較例3では、第2開口部18の他方側内側面22は、厚み方向他方側部分13の幅方向他方側面24に対して幅方向他方側にずれる。
【0059】
すると、図4F(さらには、図5Bおよび図6B)に示すように、第9工程において、めっきにより形成される第2配線4における厚み方向一方側部分14の幅方向両端面と、厚み方向他方側部分13の幅方向両端面との間で、ずれが発生する。従って、図4Gに示すように、所望の形状、配置、サイズを有する第2配線4を形成できない。
【0060】
比較例1では、一方側部分14が、他方側部分13に対して、幅方向一方側にずれる。比較例2では、図5Bに示すように、一方側部分14が、厚み方向他方側部分13に比べて幅狭となる。比較例3では、図6Bに示すように、一方側部分14が、厚み方向他方側部分13に比べて幅広となる。
【0061】
しかし、本実施形態では、図1Fに示すように、第2配線4を、第1レジスト7を用いず、第2レジスト8のみを用いて一度に形成するので、所望の形状、配置、サイズを有する第2配線4を形成することができる。
【0062】
また、図1Eに示すように、この製造方法の第7工程では、種膜6が残るように、第1レジスト7を除去するので、図1Fに示す第2レジスト8を形成する前に、再度、種膜6を形成する必要がない(図4Dの工程参照)。そのため、第6工程のめっきで用いた種膜6をそのまま再利用して、図1Gに示す第9工程のめっきに用いることができる。その結果、少ない工数で第2配線4を形成することができる。
【0063】
また、この実施形態では、第2配線4が、第1配線3に対して独立するので、第2配線4を、第1配線3とは別の用途に用いることができる。具体的には、第1配線3を信号配線として用い、第1配線3より厚い第2配線4を電源配線として用いる。
【0064】
さらに、この実施形態では、図1Eに示すように、第7工程において、第1レジスト7を除去する工程において、エッチング、剥離などの除去方法を実施しても、上記した下限以上の厚みT3を有する種膜6が確実に残ることができる。そのため、第9工程において、第2配線4を形成するときのめっきを安定して実施できる。また、上記した上限以下の厚みT3を有する種膜6を短時間で形成できる。
【0065】
(変形例)
以上の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0066】
変形例の製造方法で得られる配線回路基板1では、図3Hに示すように、第1配線3が第2配線4より厚い。
【0067】
図3Bに示すように、第1レジスト7は、第1配線3に対応する厚みT4を有し、また、図3Eに示すように、第2レジスト8は、第2配線4に対応する厚みT5を有することを踏まえると、図3Dに示すように、第2レジスト8は、通常、第1配線3の厚みT1より薄い。
【0068】
そのため、第2レジスト8で第1配線3の厚み方向一端部の幅方向端部を被覆(マスク)しづらい。そうすると、第2レジスト8による第1配線3へのマスク漏れがあれば、めっき成長させたくない部分、とりわけ、第1配線3の厚み方向一端部の幅方向端部からのめっき成長を招来する場合がある。
【0069】
対して、一実施形態では、図1Fに示すように、第2配線4が第1配線3より厚い場合には、厚い第2レジスト8は、第2配線4より薄い第1配線3を簡単かつ確実に被覆(マスク)できる。そのため、上記しためっき成長を抑制できる。
【0070】
図1Jの仮想線で示すように、配線回路基板1は、金属支持基板20をさらに備えてもよい。金属支持基板20は、ベース絶縁層2の厚み方向他方面に配置される。金属支持基板20の材料は、例えば、鉄、銅、合金(ステンレス、銅合金など)などの金属が挙げられる。金属支持基板20の厚みは、特に限定されない。第1工程において、図1Aの仮想線で示すように、金属支持基板20を準備し、それの厚み方向一方面にベース絶縁層2を配置する。
【0071】
第10工程および第11工程を区別なく実施することができる。具体的には、第2レジスト8を除去する際に、意図せず、種膜6が除去される。
【符号の説明】
【0072】
1 配線回路基板
3 第1配線
4 第2配線
6 種膜
7 第1レジスト
8 第2レジスト
T3 種膜の厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6