(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】チャックの把握精度確認方法、チャックの爪交換方法およびチャックの把握精度確認装置
(51)【国際特許分類】
B23B 31/00 20060101AFI20220208BHJP
B23Q 3/06 20060101ALI20220208BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B23B31/00 D
B23Q3/06 304K
B23Q17/00 B
(21)【出願番号】P 2020535904
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031573
(87)【国際公開番号】W WO2020032237
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2020-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2018150931
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241588
【氏名又は名称】豊和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】永翁 博
【審査官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-034051(JP,A)
【文献】特開平8-155773(JP,A)
【文献】特開昭58-094901(JP,A)
【文献】特開昭63-272408(JP,A)
【文献】特開昭59-102591(JP,A)
【文献】特開平02-109616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00
B23Q 3/06
B23Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャックの爪に測定対象物を把握して把握精度を確認するチャックの把握精度確認方法であって、
前記測定対象物を前記爪に把握する把握工程と、
前記測定対象物の振れを測定可能な測定器が設けられた移動体を、移動体駆動部を駆動させることによって、前記測定器が前記測定対象物の振れを測定可能な位置に移動させる移動工程と、
回転駆動部を駆動させることにより前記チャックを回転させながら、前記測定器により前記測定対象物の振れを測定する測定工程と、を備え、
前記測定工程は、前記測定対象物の円筒外周面の振れを測定する第1測定工程と、前記測定対象物の先端面の振れを測定する第2測定工程と、を有し
、
前記移動体に、前記測定対象物を把握するハンド爪が設けられ、
前記把握工程において、前記測定対象物は、前記ハンド爪に把握されて前記移動体により前記チャックに搬送される、チャックの把握精度確認方法。
【請求項2】
前記移動体駆動部は、前記移動体を昇降させる昇降駆動部と、前記移動体を前記チャックの軸方向に移動させる軸方向移動駆動部と、前記軸方向で見たときに前記移動体を横方向に移動させる横方向移動駆動部と、を有している、請求項1に記載のチャックの把握精度確認方法。
【請求項3】
前記測定器は、上下方向の変位を測定可能な第1測定器と、水平方向の変位を測定可能な第2測定器と、を有している、請求項1または2に記載のチャックの把握精度確認方法。
【請求項4】
前記移動工程において、前記移動体駆動部を駆動させることによって、前記移動体を、前記第1測定器が前記測定対象物の振れを測定可能な位置に移動させ、
前記第1測定工程において、前記第1測定器により、前記測定対象物の前記円筒外周面の振れを測定し、
前記第1測定工程の後に、前記移動体駆動部を駆動させることによって、前記移動体を、前記第2測定器が前記測定対象物の振れを測定可能な位置に移動させ、
前記第2測定工程において、前記第2測定器により、前記測定対象物の前記先端面の振れを測定する、請求項3に記載のチャックの把握精度確認方法。
【請求項5】
チャックの爪を交換する交換工程と、
請求項1~
4のいずれか一項に記載のチャックの把握精度確認方法により、前記交換工程後の前記チャックの把握精度を確認する把握精度確認工程と、を備えた、チャックの爪交換方法。
【請求項6】
チャックの爪に測定対象物を把握して把握精度を確認するチャックの把握精度確認装置であって、
前記チャックを回転させる回転駆動部と、
前記チャックに対して移動可能に設けられた移動体と、
前記移動体を前記測定対象物に対して移動させる移動体駆動部と、
前記移動体に設けられ、前記測定対象物の振れを測定する測定器と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記測定器が前記測定対象物の振れを測定可能な位置に前記移動体を移動させた後、前記チャックを回転させながら、前記測定器により前記測定対象物の振れを測定させるように、前記回転駆動部、前記移動体駆動部および前記測定器を制御し、 前記測定器は、上下方向の変位を測定可能な第1測定器と、水平方向の変位を測定可能な第2測定器と、を有し
、
前記移動体に、前記測定対象物を把握するハンド爪が設けられ、
前記移動体は、前記測定対象物を前記ハンド爪に把握して前記チャックに搬送可能である、チャックの把握精度確認装置。
【請求項7】
前記移動体駆動部は、前記移動体を昇降させる昇降駆動部と、前記移動体を前記チャックの軸方向に移動させる軸方向移動駆動部と、前記軸方向で見たときに前記移動体を横方向に移動させる横方向移動駆動部と、を有している、請求項
6に記載のチャックの把握精度確認装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1測定器が前記測定対象物の円筒外周面の振れを測定可能な位置に前記移動体を移動させて、前記第1測定器により前記測定対象物の前記円筒外周面の振れを測定し、前記第2測定器が前記測定対象物の先端面の振れを測定可能な位置に前記移動体を移動させて、前記第2測定器により前記測定対象物の先端面の振れを測定するように、前記移動体駆動部および前記測定器を制御する、請求項
6または
7に記載のチャックの把握精度確認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックの把握精度確認方法、チャックの爪交換方法およびチャックの把握精度確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チャックのチャック本体に装着される爪は、加工するワークの大きさが変わる場合や、長期間の使用による摩耗が生じた場合に交換している。そして、爪を交換した際にチャックの把握精度の確認が行われる。特許文献1のような爪自動交換装置によって爪を交換する場合には、爪を交換した際に、チャックにマスタピースを把握させて、作業者が、チャックを回転させながら測定器の測定値を読み取ることで、マスタピースの振れを測定し、チャックの把握精度の確認を行っていた。また、作業者が、交換された爪を用いて加工されたワークの振れを測定することで、チャックの把握精度の確認を行う場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マスタピースやワークの振れ測定を作業者によって行う場合には、測定値の読み間違いや測定のバラツキ等の信頼性に問題があった。
【0005】
そこで本発明の課題は、上記問題点に鑑み、信頼性を向上させることができるチャックの把握精度確認方法、チャックの爪交換方法およびチャックの把握精度確認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
チャックの爪に測定対象物を把握して把握精度を確認するチャックの把握精度確認方法であって、
前記測定対象物を前記爪に把握する把握工程と、
前記測定対象物の振れを測定可能な測定器が設けられた移動体を、移動体駆動部を駆動させることによって、前記測定器が前記測定対象物の振れを測定可能な位置に移動させる移動工程と、
回転駆動部を駆動させることにより前記チャックを回転させながら、前記測定器により前記測定対象物の振れを測定する測定工程と、を備えた、チャックの把握精度確認方法、
を提供する。
【0007】
上述したチャックの把握精度確認方法において、
前記移動体駆動部は、前記移動体を昇降させる昇降駆動部と、前記移動体を前記チャックの軸方向に移動させる軸方向移動駆動部と、前記軸方向で見たときに前記移動体を横方向に移動させる横方向移動駆動部と、を有している、
ようにしてもよい。
【0008】
上述したチャックの把握精度確認方法において、
前記測定工程は、前記測定対象物の円筒外周面の振れを測定する第1測定工程と、前記測定対象物の先端面の振れを測定する第2測定工程と、を有している、
ようにしてもよい。
【0009】
上述したチャックの把握精度確認方法において、
前記測定器は、上下方向の変位を測定可能な第1測定器と、水平方向の変位を測定可能な第2測定器と、を有している、
ようにしてもよい。
【0010】
上述したチャックの把握精度確認方法において、
前記移動工程において、前記移動体駆動部を駆動させることによって、前記移動体を、前記第1測定器が前記測定対象物の振れを測定可能な位置に移動させ、
前記第1測定工程において、前記第1測定器により、前記測定対象物の前記円筒外周面の振れを測定し、
前記第1測定工程の後に、前記移動体駆動部を駆動させることによって、前記移動体を、前記第2測定器が前記測定対象物の振れを測定可能な位置に移動させ、
前記第2測定工程において、前記第2測定器により、前記測定対象物の前記先端面の振れを測定する、
ようにしてもよい。
【0011】
上述したチャックの把握精度確認方法において、
前記把握工程において、前記測定対象物は、前記移動体により前記チャックに搬送される、
ようにしてもよい。
【0012】
また、本発明は、
チャックの爪を交換する交換工程と、
上述のチャックの把握精度確認方法により、前記交換工程後の前記チャックの把握精度を確認する把握精度確認工程と、を備えた、チャックの爪交換方法、
を提供する。
【0013】
また、本発明は、
チャックの爪に測定対象物を把握して把握精度を確認するチャックの把握精度確認装置であって、
前記チャックを回転させる回転駆動部と、
前記チャックに対して移動可能に設けられた移動体と、
前記移動体を前記測定対象物に対して移動させる移動体駆動部と、
前記移動体に設けられ、前記測定対象物の振れを測定する測定器と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記測定器が前記測定対象物の振れを測定可能な位置に前記移動体を移動させた後、前記チャックを回転させながら、前記測定器により前記測定対象物の振れを測定させるように、前記回転駆動部、前記移動体駆動部および前記測定器を制御する、チャックの把握精度確認装置、
を提供する。
【0014】
上述したチャックの把握精度確認装置において、
前記移動体駆動部は、前記移動体を昇降させる昇降駆動部と、前記移動体を前記チャックの軸方向に移動させる軸方向移動駆動部と、前記軸方向で見たときに前記移動体を横方向に移動させる横方向移動駆動部と、を有している、
ようにしてもよい。
【0015】
上述したチャックの把握精度確認装置において、
前記測定器は、上下方向の変位を測定可能な第1測定器と、水平方向の変位を測定可能な第2測定器と、を有している、
ようにしてもよい。
【0016】
上述したチャックの把握精度確認装置において、
前記制御部は、前記第1測定器が前記測定対象物の円筒外周面の振れを測定可能な位置に前記移動体を移動させて、前記第1測定器により前記測定対象物の前記円筒外周面の振れを測定し、前記第2測定器が前記測定対象物の先端面の振れを測定可能な位置に前記移動体を移動させて、前記第2測定器により前記測定対象物の先端面の振れを測定するように、前記移動体駆動部および前記測定器を制御する、
ようにしてもよい。
【0017】
上述したチャックの把握精度確認装置において、
前記移動体は、前記チャックに前記測定対象物を搬送可能である、
ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施の形態によるチャックの把握精度確認装置およびチャックを軸方向で見た図であって、チャックに把握させたマスタピースの円筒外周面の振れを測定している状態を示す図である。
【
図3】
図2のローダーがマスタピースを搬送する状態を示す図である。
【
図5】
図2のチャックの把握精度確認装置において、チャックに把握させたマスタピースの先端面の振れを測定している状態を示す図である。
【
図6】
図2のチャックの把握精度確認装置において、爪の動作を測定している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態では、チャックが、NC旋盤等の工作機械のチャックである例について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0021】
まず、工作機械のチャックについて概略説明する。
【0022】
図1および
図2に示すように、チャック1は、工作機械の主軸10に固着されたチャック本体3と、加工するワークWやマスタピースMPをクランプする(把握する)爪4と、を備えている。本実施の形態によるチャック1は、3つの爪4を備えている。加工するワークWやマスタピースMPは、
図3に示すように、搬送装置として例示するローダー2によってチャック1に搬送されるようになっている。
【0023】
チャック1にクランプされた加工するワークWは、複数の刃具を備えた刃物台(図示しない)によって加工される。
図2に示すように、チャック1は、主軸10を介して回転駆動部11によって回転可能になっており、加工時には回転駆動部11が駆動されて主軸10と共にチャック1が回転することにより、ワークWは回転しながら加工される。加工内容によっては、ワークWは、回転せずに停止状態で加工される場合もある。刃物台は、チャック1の軸方向Xに移動可能であると共に、軸方向Xで見たときの横方向Y(または水平方向)、および上下方向にも移動可能になっている。
【0024】
図4に示すように、チャック1の上方には、例えば特許第3185816号公報に記載のような爪自動交換装置12が設置されている。この爪自動交換装置12によって、チャック本体3に装着される爪4は、自動的に交換可能になっている。例えば、加工するワークWの大きさが変わる場合や、長期間の使用による摩耗が生じた場合に、爪4は交換される。爪4は加工するワークWの大きさ(より具体的にはワークWの基端部分の外径)に対応して、ワークWを把握可能となるように形成されている。このため、複数種類の爪4が爪自動交換装置12のストッカー(図示せず)に収納されている。
【0025】
図4に示すように、爪自動交換装置12は、昇降可能なフィンガ13と、フィンガ13を昇降させる爪昇降駆動部14と、を有している。フィンガ13は、爪4の上部に設けられた取付ブロック15の引掛溝15aに係止可能なカギ片13aを含んでいる。フィンガ13のカギ片13aが取付ブロック15の引掛溝15aに係止すると共に、爪昇降駆動部14を駆動させることにより、爪4が昇降するようになっている。また、フィンガ13は、チャック1の軸方向Xにも移動可能になっている。
【0026】
図2および
図4に示すように、爪4は、チャック本体3に設けられた取付溝3aに嵌合するベースジョー16と、ベースジョー16に取り付けられ、チャック本体3の端面(
図2における右側の端面)から突出したトップジョー17と、を有している。取付溝3aは、半径方向に延びていると共に、チャック本体3の外周面に開口している。また、取付溝3aは、
図1および
図4に示すように、チャック本体3の端面でも開口している。トップジョー17が取り付けられたベースジョー16は、半径方向外側から(上方から)取付溝3aに挿入されて、半径方向内側に移動させることにより、爪4をチャック1に取り付けることができる。この際、爪4は、爪昇降駆動部14の駆動が停止する位置まで半径方向内側に移動する。爪4を取り外す際には、半径方向外側に爪4を移動させて、取付溝3aから引き抜く。
【0027】
チャック本体3の内部には、3つの爪4に対応させて3つのマスタジョー18が設けられている。3つのマスタジョー18は、図示しない爪駆動部により、半径方向に同期して移動可能になっている。
図4に示すように、マスタジョー18内に、爪係脱装置19が設けられており、ベースジョー16は、マスタジョー18と係脱可能になっている。すなわち、爪係脱装置19は噛合部材20を有しており、噛合部材20の先端面(ベースジョー16の側の面)には、ラック歯20aが設けられている。このラック歯20aが、ベースジョー16の後端面(マスタジョー18の側の面)に設けられたラック歯16aに噛み合い可能になっている。噛合部材20は、軸方向Xに移動可能になっており、ベースジョー16の側に前進すると、噛合部材20のラック歯20aが、ベースジョー16のラック歯16aに噛み合う。このことにより、ベースジョー16、トップジョー17およびマスタジョー18は、半径方向に一体的に移動可能になる。一方、噛合部材20がベースジョー16から後退すると、噛合部材20のラック歯20aとベースジョー16のラック歯16aの噛み合いが解除される。このことにより、ベースジョー16およびトップジョー17は、マスタジョー18とは別体に半径方向に移動可能となり、爪4を交換することが可能になる。
【0028】
マスタピースMPを把握する場合には、各トップジョー17が、ベースジョー16およびマスタジョー18と共に半径方向内側に移動し、
図1および
図2に示すように、各トップジョー17の内側端部に設けられた内周当接面17aが、マスタピースMPの基端外周当接面MPc(後述)に当接する(チャック1が閉じる)。各トップジョー17の内周当接面17aがマスタピースMPの基端外周当接面MPcに当接して押圧することにより、マスタピースMPが爪4に把握される。
【0029】
一方、マスタピースMPを取り外す場合には、各トップジョー17が、ベースジョー16およびマスタジョー18と共に半径方向外側に移動し、各トップジョー17の内周当接面17aがマスタピースMPから離間する(チャック1が開く)。このことにより、マスタピースMPが爪4から取り外される。
【0030】
このような爪4を交換する場合には、ワークWの加工精度を維持するために、交換した爪4によるチャック1の把握精度の確認が行われる。すなわち、上述したように、爪4のベースジョー16が、爪係脱装置19によってマスタジョー18に係合すると、マスタジョー18と一体的に半径方向に移動可能となるとともに、他の爪4のベースジョー16と同期して移動可能となる。しかしながら、各爪4においてベースジョー16の半径方向位置が異なった状態で爪4がチャック本体3に装着されると、各トップジョー17が、マスタピースMPの基端外周当接面MPcに均等に当接することが困難になり、チャック1による把握が偏る。このような状態のチャック1にワークWを把握して回転させた場合にはワークWの振れが大きくなり、ワークWの加工精度が低下し得る。本実施の形態によるチャック1の把握精度確認装置は(以下、単に把握精度確認装置21と記す)は、このような問題に対処するための装置であり、上述のようなチャック1の爪4に測定対象物(以下、一例としてのマスタピースMPと記す)を把握して把握精度を確認するための装置である。
【0031】
図1および
図2に示すように、本実施の形態による把握精度確認装置21は、チャック1を回転させる回転駆動部11と、チャック1に対して移動可能に設けられたハンド部22(移動体)と、ローダー駆動部23(移動体駆動部)と、測定器6と、制御部24と、を備えている。
【0032】
図2および
図3に示すように、マスタピースMPは、円筒外周面MPaと、先端面MPbと、基端外周当接面MPcと、基端面MPdと、を有している。マスタピースMPがチャック1に把握された状態では、円筒外周面MPaは、軸方向Xに沿うようになり、先端面MPbおよび基端面MPdは、軸方向Xに垂直になる。先端面MPbは、チャック1の側とは反対側に位置し、基端面MPdは、チャック1の側に位置する。基端外周当接面MPcは、基端面MPdの側に位置し、爪4に把握される部分である。ワークWに対応させて複数種類のマスタピースMPが、ストッカー(図示せず)に収納されている。すなわち、ストッカーには、基端外周当接面MPcの外径が異なるマスタピースMPが複数種類収納されている。
【0033】
図1および
図2に示すように、ローダー2は、ハンド部22(移動体)を有しており、このハンド部22が、マスタピースMPおよびチャック1に対して移動可能に設けられている。ローダー2は、上述したように、マスタピースMPをチャック1に搬送するための装置であり、ハンド部22は、マスタピースMPをチャック1に搬送可能になっている。より具体的には
図3に示すように、ローダー2のハンド部22には、マスタピースMPをクランプする一対のハンド爪25が取り付けられており、一対のハンド爪25の間にマスタピースMPがクランプされる。ハンド爪25は、直方体状のハンド部22の一の側面に取り付けられている。ローダー2は、マスタピースMPを、チャック1の爪4にクランプ可能な位置に搬送すると共に、チャック1から上述したストッカーに搬送する。ローダー2は、マスタピースMPと同様にしてワークWも搬送可能になっている。
【0034】
ローダー2のハンド部22は、ローダー駆動部23(移動体駆動部)によってチャック1に対して移動する。ローダー駆動部23は、ハンド部22を昇降させるローダー昇降駆動部26と、ハンド部22をチャック1の軸方向Xに移動させる軸方向移動駆動部27と、軸方向Xで見たときにハンド部22を横方向Yに移動させる横方向移動駆動部28と、を有している。より具体的には、工作機械の本体に、軸方向Xで見たときに横方向Y(または水平方向)に延びる横方向レール29が取り付けられており、この横方向レール29に沿って第1走行台30が走行可能になっている。この第1走行台30に、横方向移動駆動部28が内蔵されていてもよい。また、第1走行台30に対して、軸方向Xに延びる軸方向レール31が軸方向Xに沿って走行可能になっている。軸方向レール31には第2走行台32が取り付けられており、第2走行台32は軸方向レール31と共に、軸方向Xに走行可能になっている。上述した軸方向移動駆動部27は、第1走行台30に内蔵されていてもよい。さらに、第2走行台32に対して、上下方向に延びる昇降ロッド33が昇降可能になっている。昇降ロッド33の下端に、ハンド部22が取り付けられている。第2走行台32に、ローダー昇降駆動部26が内蔵されていてもよい。このようにして、ローダー2のハンド部22は、チャック1に対して、軸方向X、横方向Yおよび上下方向に移動可能になっている。更に、第2走行台32に、昇降ロッド33を回転させるローダー回転駆動部34が内蔵されていてもよい。ローダー回転駆動部34は、昇降ロッド33の上下方向に延びる中心軸線を中心にして、昇降ロッド33およびハンド部22を回転させるようにしてもよい。
【0035】
図1および
図2に示すように、ローダー2のハンド部22には、マスタピースMPの振れを測定する測定器6が取り付けられている。測定器6は、上下方向の変位を測定可能な第1センサ6a(第1測定器)と、水平方向の変位を測定可能な第2センサ6b(第2測定器)と、を有している。第1センサ6aおよび第2センサ6bは、取付部材5を介してハンド部22に取り付けられている。取付部材5は、直方体状のハンド部22の4つの側面のうち上述したハンド爪25とは反対側の側面に取り付けられている。第1センサ6aは、直方体状の取付部材5の下面に取り付けられており、上方からマスタピースMPに接触または近接して、マスタピースMPの振れを測定可能になっている。第2センサ6bは、取付部材5の側面(ハンド爪25とは反対側の側面)に取り付けられており、水平方向でマスタピースMPに接触または近接して、マスタピースMPの振れを測定可能になっている。第1センサ6aおよび第2センサ6bの例としては、変位センサやタッチプローブ等が挙げられるが、マスタピースMPの振れを測定することができれば、これに限られることはない。また、第1センサ6aおよび第2センサ6bは、マスタピースMPに接触して振れを測定する接触式のセンサであってもよく、マスタピースMPとは離間して振れを測定する非接触式のセンサであってもよい。ここで、振れとは、マスタピースMPを回転させている間の、マスタピースMPの測定対象面(円筒外周面MPaまたは先端面MPb)の変位を意味する。
【0036】
制御部24は、上述した回転駆動部11、ローダー駆動部23および測定器6等を制御する。より具体的には、制御部24は、まず、測定器6がマスタピースMPの振れを測定可能となる位置にハンド部22を移動させ、続いて、チャック1を回転させ、その後、測定器6にマスタピースMPの振れを測定させるように、回転駆動部11、ローダー駆動部23および測定器6を制御する。制御部24は、マスタピースMPの振れを測定させる際には、第1センサ6aによりマスタピースMPの円筒外周面MPaの振れを測定する第1測定工程(
図2参照)と、第2センサ6bによりマスタピースMPの先端面MPbの振れを測定する第2測定工程(
図5参照)と、を行うようにしてもよい。
【0037】
例えば、制御部24がローダー駆動部23および測定器6を制御することにより、第1センサ6aがマスタピースMPの円筒外周面MPaの振れを測定可能な位置にハンド部22を移動させて第1測定工程を行い、第2センサ6bがマスタピースMPの先端面MPbの振れを測定可能な位置にハンド部22を移動させて第2測定工程を行うようにしてもよい。このうち第1測定工程では、第1測定位置と、第2測定位置とで、マスタピースMPの円筒外周面MPaの振れを測定するようにしてもよい。このうち第1測定位置は、マスタピースMPの円筒外周面MPaのうちチャック本体3の側の部分(マスタピースMPの基端側の部分)で円筒外周面MPaの振れが測定可能となる位置である。第2測定位置は、マスタピースMPの円筒外周面MPaのうちチャック本体3とは反対側の部分(マスタピースMPの先端側の部分)で円筒外周面MPaの振れが測定可能となる位置である。
図2において、第1測定位置を二点鎖線で示し、第2測定位置を実線で示している。第2測定工程では、
図5に示すように、第3測定位置でマスタピースMPの振れを測定するようにしてもよい。第3測定位置は、マスタピースMPの先端面MPb(チャック本体3とは反対側の端面)の振れが測定可能となる位置である。第3測定位置は、先端面MPbのうちマスタピースMPの外周縁の側で先端面MPbの振れが測定可能となる位置とすることが好ましい。
【0038】
また、制御部24は、第1センサ6aおよび第2センサ6bにより測定されたマスタピースMPの振れの測定値を記録する。測定値は、チャック1の回転位相と関連づけて記録されるようにしてもよい。なお、センサ6a、6bによる測定は、例えば、所定の位相間隔で行うようにしてもよい。
【0039】
また、制御部24は、測定器6によるマスタピースMPの振れの測定値に基づいて、マスタピースMPの振れが正常であるか異常であるかを判断する。この正常か異常かの判断は、例えば、振れの幅が、所定の基準値よりも大きいか否かで判断するようにしてもよい。基準値は、上述した3つの測定位置それぞれに設定して、測定位置毎に、正常か異常かを判断してもよい。また、正常か異常かの判断は、上述した3つの測定位置におけるマスタピースMPの振れの測定値のうちのいずれか任意の1つの測定位置で得られた測定値で異常がある場合に、異常と判断してもよい。
【0040】
異常であると判断した場合には、制御部24は、警報を報知するようにしてもよい。例えば、工作機械のディスプレイに、異常である旨の表示をしてもよい。あるいは、ランプの点灯や点滅などで異常を報知してもよく、ブザーなどの警報音で異常を報知してもよい。異常の報知は、マスタピースMPの振れの測定中に行ってもよく、測定完了後に行うようにしてもよい。
【0041】
次に、本実施の形態によるチャック1の把握精度確認方法について説明する。ここでは、爪4を交換するチャック1の爪交換方法を行う際に、チャック1の把握精度確認方法を行う例について説明する。
【0042】
まず、爪交換工程として、爪4を交換する。より具体的には、まず、チャック1を回転させることにより、チャック1に取り付けられている3つの爪4のうち、交換する爪4を取付溝3aから上方に引き抜き可能な位置に位置づける。続いて、爪自動交換装置12のフィンガ13を下降させて、チャック1の軸方向Xに沿って爪4の取付ブロック15の引掛溝15aの側に前進させて、フィンガ13のカギ片13aを取付ブロック15の引掛溝15aに係止させる。次に、爪係脱装置19の噛合部材20を後退させて、マスタジョー18との係合を解除する。その後、フィンガ13を上昇させて、チャック本体3の取付溝3aから爪4を引き抜く。次に、引き抜いた爪4をストッカー(図示せず)に搬送して収納し、他の爪4をフィンガ13に係止させる。続いて、フィンガ13を取付溝3aの上方に搬送させて下降させ、チャック本体3の取付溝3aに挿入する。次に、爪係脱装置19の噛合部材20を前進させて、取付溝3aに挿入された爪4のベースジョー16をマスタジョー18に係合させる。次に、フィンガ13のカギ片13aをチャック1の軸方向Xに沿って移動させて取付ブロック15の引掛溝15aから後退させる。そして、フィンガ13を上昇させて退避させる。このような動作を、他の爪4に対して行うことにより、チャック1に取り付けられていた3つの爪4を交換することができる。
【0043】
爪交換工程の後、把握精度確認工程として、チャック1の把握精度の確認を行う。
【0044】
まず、把握工程として、マスタピースMPが爪4にクランプされる。より具体的には、まず、ローダー2のハンド部22が、ストッカー(図示せず)に収納されている所望のマスタピースMPをハンド爪25にクランプする。続いて、このマスタピースMPがチャック1の爪4にクランプ可能な位置に搬送される。この際、各爪4のトップジョー17は、マスタピースMPをクランプする位置よりも半径方向外側に位置している。マスタピースMPの搬送時には、マスタピースMPの基端面MPdをチャック1の側に位置づけるため、ハンド爪25が取付部材5よりもチャック1の側に向くような姿勢になる。マスタピースMPがチャック1の爪4にクランプ可能な位置に達すると、マスタピースMPの基端面MPdは、トップジョー17の内周当接面17aよりも内側に設けられた軸方向Xに垂直な当接端面17bに当接する。次に、各マスタジョー18が半径方向内側に同期して移動し、これに伴い、各トップジョー17も半径方向内側に同期して移動する。これにより、トップジョー17の内周当接面17aが、マスタピースMPの基端外周当接面MPcに当接し、マスタピースMPが爪4にクランプされる。その後、ハンド部22は、マスタピースMPのクランプを解除する。このようにして、マスタピースMPが3つの爪4にクランプされる。
【0045】
把握工程の後、移動工程として、測定器6がマスタピースMPの振れを測定可能な位置にハンド部22を移動する。より具体的には、ローダー駆動部23のローダー昇降駆動部26、軸方向移動駆動部27および横方向移動駆動部28を駆動させることにより、測定器6の第1センサ6aまたは第2センサ6bを、所望の位置に移動する。また、ローダー回転駆動部34を駆動させることにより、ハンド部22の姿勢を変えてもよい。ここでは、
図1に示すように、軸方向XでマスタピースMPの先端から基端に向かって見たときに、取付部材5が左側に位置し、ハンド爪25が右側に位置するようにハンド部22の向きを変える。また、ハンド部22を、第1センサ6aがマスタピースMPの振れを測定可能な位置に移動させてもよい。ここでは、ハンド部22を、マスタピースMPの円筒外周面MPaのうちマスタピースMPの基端側の部分において第1センサ6aがマスタピースMPの振れを測定可能となる第1測定位置(
図2の二点鎖線で示す位置)に移動させる。
【0046】
移動工程の後、測定工程として、測定器6の第1センサ6aによりマスタピースMPの振れを測定する。測定工程は、第1センサ6aによりマスタピースMPの円筒外周面MPaの振れを測定する第1測定工程と、第2センサ6bによりマスタピースMPの先端面MPbの振れを測定する第2測定工程と、を有していてもよい。
【0047】
例えば、まず、第1測定工程を行う。この際、第1測定位置に位置づけられた第1センサ6aにより、マスタピースMPの基端側においてマスタピースMPの円筒外周面MPaの振れを測定する。この間、回転駆動部11を駆動して主軸10およびチャック1と共にマスタピースMPを回転させる。例えば、円筒外周面MPaの振れの測定は、3つの爪4のうちの一の爪4から他の一の爪4を通過して残りの爪4に達するまでチャック1を回転させている間に行ってもよい。このときのチャック1の回転角は、本実施の形態のように爪4が3つ設けられている場合には240°となる(爪4が2つ設けられる場合には180°となる)。あるいは、チャック1を1回転(360°回転)させている間、円筒外周面MPaの振れを測定するようにしてもよく、マスタピースMPの振れを効果的に測定することができれば、測定時の回転角は任意である。得られた測定値は、チャック1の回転位相と関連づけて制御部24に記録される。
【0048】
次に、ハンド部22を、マスタピースMPの円筒外周面MPaのうちマスタピースMPの先端側の部分で第1センサ6aがマスタピースMPの振れを測定可能となる第2測定位置(
図2の実線で示す位置)に移動させる。そして、第2測定位置に位置づけられた第1センサ6aにより、マスタピースMPの先端側の部分においてマスタピースMPの円筒外周面MPaの振れを測定する。この間、上述した第1測定位置における測定と同様にして、回転駆動部11を駆動して主軸10およびチャック1と共にマスタピースMPを回転させる。得られた測定値は、チャック1の回転位相と関連づけて制御部24に記録される。
【0049】
次に、ハンド部22を、第2センサ6bがマスタピースMPの振れを測定可能な位置に移動させる。ここでは、ハンド部22を、マスタピースMPの先端面MPbで第2センサ6bがマスタピースMPの振れを測定可能となる第3測定位置(
図5に示す位置)に移動させる。そして、第2測定工程を行う。この際、第3測定位置に位置づけられた第2センサ6bにより、マスタピースMPの先端面MPbの振れを測定する。この間、上述した第1測定位置における測定と同様にして、回転駆動部11を駆動して主軸10およびチャック1と共にマスタピースMPを回転させる。得られた測定値は、チャック1の回転位相と関連づけて制御部24に記録される。
【0050】
このようにして、チャック1にクランプされたマスタピースMPの測定位置に測定器6を移動させた後、チャック1を自動的に回転させると共にマスタピースMPの振れを自動的に測定することができる。測定が完了した後、ハンド部22は、マスタピースMPから離れた位置に退避してもよい。
【0051】
測定工程の後、判断工程として、マスタピースMPの振れの測定値に基づいて、マスタピースMPの振れが正常であるか異常であるが判断される。異常であると判断された場合には、異常であることが報知される。この場合には、作業者が、取付異常が発生している爪4のチャック本体3に対する装着を修正し(例えば、装着し直し)、再度、把握精度の確認を行ってもよい。
【0052】
マスタピースMPの振れが正常であると判断された場合には、マスタピースMPが爪4から取り外される。この場合、まず、ローダー2のハンド部22が、マスタピースMPをクランプする。続いて、各マスタジョー18が半径方向外側に同期して移動し、これに伴い、各トップジョー17も半径方向外側に同期して移動する。これにより、トップジョー17の内周当接面17aが、マスタピースMPの基端外周当接面MPcから離間し、マスタピースMPの爪4によるクランプを解除する。そして、マスタピースMPをストッカーに搬送して収納する。
【0053】
次に、ハンド部22が、ストッカーに収納されている所望のワークWをクランプし、このワークWがチャック1の爪4にクランプ可能な位置に搬送される。この際、各爪4のトップジョー17は、ワークWをクランプする位置よりも半径方向外側に位置している。ワークWがチャック1の爪4にクランプ可能な位置に達すると、ワークWの基端面は、トップジョー17の当接端面17bに当接する。次に、各マスタジョー18が半径方向内側に同期して移動し、これに伴い、各トップジョー17も半径方向内側に同期して移動する。これにより、トップジョー17の内周当接面17aが、ワークWに当接し、ワークWが爪4にクランプされる。その後、ハンド部22は、ワークWのクランプを解除する。このようにして、ワークWが3つの爪4にクランプされる。
【0054】
その後、爪4にクランプされたワークWが、図示しない刃物台の刃具によって加工される。上述したように、爪4の交換後であってワークWの加工前に、爪4の把握精度を確認してマスタピースMPの振れが正常であると判断している。このため、把握精度を確認して正常であると判断された爪4でワークWを把握することができ、ワークWの加工精度を確保することができる。
【0055】
このようにして、作業者自身が振れを測定することを不要にでき、作業者による測定値の読み間違いや測定のバラツキ等の問題を回避することができる。そして、測定器6による振れの測定値とチャック1の回転位相とが関連づけられることで、振れの測定値が異常であった回転位相を容易に認識することができる。すなわち、マスタピースMPが長尺である場合には、チャック1と振れの測定箇所が離れることで、振れの測定値とチャック1の回転位相を同時に観測することが困難になっていた。しかしながら、本実施の形態によれば、マスタピースMPが長尺であっても、振れの測定値が異常であったチャック1の回転位相を容易に認識することができる。このため、取付異常の爪4を容易に判別することができ、爪4の取付修正作業を効率良く行うことができる。また、チャック本体3に装着される爪4を交換した後、ワークWを加工する前にチャック1の把握精度の確認が実施できるため、加工不良のワークWを発見した場合には、交換した爪4以外の原因(刃具や機械トラブル等)で加工不良が発生していることが容易に判別できる。
【0056】
なお、本実施の形態によるチャック1の把握精度確認装置21は、爪4の動作状態を確認するために用いることもできる。すなわち、3つの爪4を半径方向に移動させるための機構は、上述したようにマスタジョー18等によって構成されているが、この機構が正常か異常かを確認するために本実施の形態による把握精度確認装置21を用いることもできる。この場合、
図6に示すように、爪4を半径方向外側に移動させてチャック1を開いた場合に、各爪4の外周面の位置を測定器6の第1センサ6aまたは第2センサ6bで測定してもよい。各爪4で外周面の位置が異なる場合には、この機構に異常が発生していると判断することができる。また、一の爪4に対して、外周面の位置の測定値をデータとして集積して分析することによっても、機構が正常か異常かの判断をすることができる。異常が発生していると判断した場合には、作業者によって機構を修正することができる。このため、チャック1の予防保全に寄与することができる。
【0057】
このように本実施の形態によれば、測定器6が取り付けられたローダー2のハンド部22を、ローダー駆動部23を駆動させることによって、測定器6がマスタピースMPの振れを測定可能な位置に移動させ、当該位置において測定器6がマスタピースMPの振れを測定する。このことにより、マスタピースMPの振れを自動的に測定することができ、作業者による作業を不要にすることができる。このため、爪4を交換した後のチャック1の把握精度確認の信頼性を向上させることができる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、ローダー駆動部23は、ハンド部22を昇降させるローダー昇降駆動部26と、ハンド部22をチャック1の軸方向Xに移動させる軸方向移動駆動部27と、軸方向Xで見たときにハンド部22を横方向Yに移動させる横方向移動駆動部28と、を有している。このことにより、測定器6が取り付けられたハンド部22を、測定器6がマスタピースMPの振れを測定可能な位置に容易に移動させることができる。このため、測定器6の振れの測定値の測定精度を確保することができ、チャック1の把握精度確認の信頼性を向上させることができる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、第1測定工程として、マスタピースMPの円筒外周面MPaの振れを測定し、第2測定工程として、マスタピースMPの先端面MPbの振れを測定する。このことにより、マスタピースMPの振れを異なる位置で測定することができる。このため、チャック1の把握精度確認の信頼性を向上させることができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、測定器6は、上下方向の変位を測定可能な第1センサ6aと、水平方向の変位を測定可能な第2センサ6bと、を有している。このことにより、第1センサ6aによりマスタピースMPの円筒外周面MPaの振れを測定することができ、第2センサ6bによりマスタピースMPの先端面MPbの振れを測定することができる。このため、第1測定工程から第2測定工程に移行する際に、ハンド部22の移動量を低減することができる。このため、マスタピースMPの振れの測定時間を短縮させることができる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、ローダー駆動部23を駆動させることによって、ハンド部22を第1センサ6aがマスタピースMPの振れを測定可能な位置に移動させて、第1測定工程が行われる。そして、ローダー駆動部23を駆動させることによって、ハンド部22を第2センサ6bがマスタピースMPの先端面MPbの振れを測定可能な位置に移動させて、第2測定工程が行われる。このことにより、マスタピースMPの振れを異なる位置で自動的に測定することができ、作業者による作業を不要にすることができる。このため、爪4を交換した後のチャック1の把握精度確認の信頼性を向上させることができる。
【0062】
また、本実施の形態によれば、マスタピースMPは、ハンド部22にクランプされてチャック1に搬送される。このことにより、マスタピースMPを爪4に把握する工程を、自動的に行うことができる。このため、爪4を交換した後のチャック1の把握精度を容易に確認することができ、作業者による作業を不要にすることができる。
【0063】
なお、上述した本実施の形態においては、測定対象物の一例として、チャック1の把握精度を確認するために爪4にクランプされたマスタピースMPの振れを測定する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、爪4にクランプされたワークWの振れを測定して、チャック1の把握精度を確認するようにしてもよい。この場合には、ワークWを加工する前にチャック1の把握精度を確認してもよく、ワークWを加工した後にチャック1の把握精度を確認するようにしてもよい。
【0064】
また、上述した本実施の形態においては、マスタピースMPの振れを測定する測定器6が、上下方向の変位を測定可能な第1センサ6aと、水平方向の変位を測定可能な第2センサ6bと、を有している例について説明した。しかしながら、測定器6の構成はこれに限られることはない。センサの個数は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。例えば、第2センサ6bを、マスタピースMPの側方で第1測定位置に相当する位置および/または第2測定位置に相当する位置に位置づけて、マスタピースMPの円筒外周面MPaの振れを測定するようにしてもよい。
【0065】
また、上述した本実施の形態においては、第1測定位置(マスタピースMPの基端側の部分)および第2測定位置(マスタピースMPの先端側の部分)においてマスタピースMPの円筒外周面MPaの振れをそれぞれ測定すると共に、第3測定位置においてマスタピースMPの先端面MPbの振れを測定する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、チャック1の把握精度の確認の信頼性を確保することができれば、これら3つの測定位置のうちの任意の1つの測定位置で、マスタピースMPの振れを測定して、チャック1の把握精度を判断するようにしてもよい。
【0066】
また、上述した本実施の形態においては、爪4を交換するチャック1の爪交換方法を行う際に、チャック1の把握精度の確認を行う例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、爪4を交換しない場合であっても、爪4が長期間の使用による摩耗が生じたと想定される場合に、チャック1の把握精度の確認を行うようにしてもよい。
【0067】
また、上述した本実施の形態においては、加工するワークWやマスタピースMPを搬送するローダー2のハンド部22に取付部材5を介して測定器6を設ける例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、工作機械が、チャック1に対して移動可能なロボットを備えている場合には、このロボットに、測定器6が取り付けられていてもよい。例えば、このロボットの先端部に、爪自動交換装置12が取り付けられている場合には、この爪自動交換装置12に測定器6が取り付けられていてもよい。また、ローダー2のハンド部22の代わりに、ワークWの加工に使用される刃物台(タレットともいう)や、刃具を自転させるミル軸に測定器6を取り付けてもよい。
【0068】
また、上述した本実施の形態においては、チャック1が3つの爪4を備えている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、爪4の個数は2つであってもよく、4つ以上であってもよい。
【0069】
また、上述した本実施の形態においては、チャック1が工作機械のチャックである例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、本実施の形態は、検査装置に用いられるチャックにも適用することができる。この場合であっても、本実施の形態によるチャック1の把握精度の確認を行うことにより、検査装置によるワークWの検査の精度を確保することができる。
【0070】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施できる。