(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】異常水位報知システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/08 20060101AFI20220208BHJP
G08B 25/10 20060101ALI20220208BHJP
G08B 27/00 20060101ALI20220208BHJP
G08B 21/10 20060101ALI20220208BHJP
H04M 11/04 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
G08B25/08 A
G08B25/10 A
G08B25/10 D
G08B27/00 A
G08B21/10
H04M11/04
(21)【出願番号】P 2018207840
(22)【出願日】2018-11-05
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】P 2017214627
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305001928
【氏名又は名称】光陽無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121371
【氏名又は名称】石田 和人
(72)【発明者】
【氏名】宗 聡
【審査官】永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-203964(JP,A)
【文献】特開2017-227485(JP,A)
【文献】特開2018-132307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C1/00-1/14
5/00-15/14
G08B19/00-31/00
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
降雨による異常水位の発生を検知し報知する異常水位報知システムであって、
建物の屋内に設置され
、又はアプリが読み込まれ実行されたスマートフォン又はコンピュータにより構成されるセンタノードと、
前記センタノードの周囲の屋内又は屋外に
設置され、又はアプリが読み込まれ実行されたスマートフォン又はコンピュータにより構成される一乃至複数のルータノードと、
前記各ルータノードの近傍に、一乃至複数設置されるリーフノードと、を備え、
前記ルータノードは、
全球測位衛星システムにより、自己位置を表すルータ位置情報を検出し出力する、又は位置情報記憶手段に予め記録された自己位置を表すルータ位置情報を出力するルータノード位置出力手段と、
前記各リーフノードに対し周囲空間へ無線発信した質問信号に対して、又は所定の時間間隔で間歇的に、前記各リーフノードから送信されてくるリーフ応答信号を受信する応答受信手段と、
前記各リーフノードのうち前記リーフ応答信号の送信が途絶したものの有無に基づき、又は前記リーフ応答信号の強度変化に基づき、水の接近又は浸水の有無を判定し、水の接近又は浸水が有りと判定された場合に、水位検知を示す値が有効とされる水位検知情報を生成する水位検知手段と、
前記水位検知手段により出力される前記水位検知情報を前記ルータ位置情報とともに、前記センタノードへ無線送信する水位検知信号送信手段と、を備え、
前記リーフノードは、
該リーフノードの識別コードであるリーフIDを記憶するリーフID記憶手段と、
前記ルータノードから発信される前記質問信号を受信した場合に、又は所定の時間間隔で間歇的に、前記リーフID記憶手段に記憶されたリーフIDを含む前記リーフ応答信号を生成し周囲空間へ無線発信するリーフノード応答手段と、を備え、
前記センタノードは、
公衆通信回線を介して外部との通信を行う通信インタフェースと、
前記ルータノードから無線送信されてくる前記水位検知情報及び前記ルータ位置情報を受信するセンタノード受信手段と、
前記センタノード受信手段が前記水位検知情報及び前記ルータ位置情報を受信した場合において、前記水位検知情報の水位検知を示す値が有効な場合、異常水位の発生を音声又は表示により周囲に報知する第1の異常報知手段と、
前記センタノード受信手段が前記水位検知情報及び前記ルータ位置情報を受信した場合において、前記水位検知情報の水位検知を示す値が有効な場合、該水位検知情報及び該ルータ位置情報を、前記公衆通信回線を介して外部の水害情報集配信サーバへ送信する異常水位情報送信手段と、
を備えたことを特徴とする異常水位報知システム。
【請求項2】
各所の建物に配置された複数の前記センタノードと、
公衆通信回線を介して前記センタノードと接続された水害情報集配信サーバと、を備え、
前記水害情報集配信サーバは、
異常水位の発生情報を地図上に表示するためのトランザクション情報である水害発生トランザクション情報を管理する水害マップデータベースと、
前記各センタノードから送信されてくる前記水位検知情報及び前記ルータ位置情報を受信するサーバ側受信手段と、
公衆通信回線を介して地図配信サーバから、又は該水害情報集配信サーバ内に備えられた地図データベースから地図情報を取得する地図情報取得手段と、
受信された前記水位検知情報及び前記ルータ位置情報と前記地図情報とに基づき、前記水害発生トランザクション情報を生成し前記水害マップデータベースに保存する水害発生マップ生成手段と、
公衆通信回線を介しての外部から送信されてくるマップ配信要求及び位置情報に応じて、前記地図情報取得手段により前記位置情報で指定される指定位置を中心とする所定範囲の地図情報(以下「指定位置周辺地図情報」という。)を取得し、前記水害マップデータベースから抽出される前記指定位置周辺地図情報に関連する前記水害発生トランザクション情報に基づき、前記指定位置周辺地図情報に水害発生情報を表示した水害発生マップ情報を生成し、該水害発生マップ情報を配信するマップ配信手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の異常水位報知システム。
【請求項3】
前記リーフノードは、前記各ルータノードの近傍の、互いに異なる高さに複数個設置されており、前記各リーフノードの前記リーフID記憶手段には、其々の高さに応じて割り当てられた高さ情報を含む前記リーフIDが記憶されており、
前記ルータノードは、該ルータノードにおいて平常時に受信される前記リーフ応答信号に含まれる前記リーフIDのリストを生成し記憶するリーフリスト記憶手段を備え、
前記ルータノードの前記水位検知手段は、前記リーフリスト記憶手段に記憶された前記リーフIDのうち、前記質問信号に対して前記リーフ応答信号の返信が途絶した前記リーフノードの前記リーフIDを抽出し、抽出した前記リーフIDに含まれている前記高さ情報を含んだ前記水位検知情報を生成するものであり、
前記水害情報集配信サーバの前記水害発生マップ生成手段は、受信された前記水位情報を含む前記水位検知情報及び前記ルータ位置情報と前記地図情報とに基づき、異常水位の発生位置とその発生位置の水位を地図上に示した水害発生マップ情報を生成するものであることを特徴とする、請求項2記載の異常水位報知システム。
【請求項4】
前記水害発生マップ生成手段は、受信された前記ルータ位置情報に基づき、当該ルータ位置情報が示す位置の周囲の標高データを前記地図情報から取得し、取得された周囲の標高データに基づき当該位置情報が示す位置の周囲の浸水推定範囲を抽出し、異常水位の発生位置及び前記浸水推定範囲を地図上に示した前記水害発生マップ情報を生成するものであることを特徴とする請求項2又は3記載の異常水位報知システム。
【請求項5】
前記水害発生マップ生成手段は、受信された前記ルータ位置情報に基づき、当該ルータ位置情報が示す位置の周囲の標高データ及び道路の経路情報を前記地図情報から取得し、当該位置情報が示す位置の周囲の浸水推定範囲を抽出するとともに該浸水推定範囲に含まれる道路範囲である浸水推定道路範囲を抽出し、異常水位の発生位置及び前記浸水推定道路範囲を地図上に示した前記水害発生マップ情報を生成するものであることを特徴とする請求項2又は3記載の異常水位報知システム。
【請求項6】
公衆通信回線を介して前記水害情報集配信サーバと接続された携帯端末装置を備え、
前記携帯端末装置は、
ディスプレイと、
全球測位衛星システムにより、自己位置を表す位置情報を検出する携帯端末位置検出手段と、
公衆通信回線を介して、前記水害情報集配信サーバに対し、前記マップ配信要求を、前記携帯端末位置検出手段により検出される位置情報とともに送信するマップ配信要求手段と、
前記マップ配信要求に対し、公衆通信回線を介して前記水害情報集配信サーバから送信されてくる前記水害発生マップ情報を受信する地図受信手段と、
前記地図受信手段で受信される前記水害発生マップ情報を前記ディスプレイに表示する地図表示手段と、
を備えたことを特徴とする請求項2乃至5の何れか一記載の異常水位報知システム。
【請求項7】
前記各ルータノードは、該ルータノードの識別コードであるルータIDを記憶するルータID記憶手段を備え、
前記各ルータノードの前記水位検知信号送信手段は、前記水位検知手段が出力する前記水位検知情報を、前記ルータ位置情報及び前記ルータIDとともに、水位検知情報として前記センタノードへ無線送信するものであり、
前記各ルータノードは、前記センタノードが設置された建物の側又は屋内の地面近傍に設置された屋側ルータノード、及び前記センタノードが設置された建物から離隔した各所に設置された周辺ルータノードに分類され、前記屋側ルータノードの前記ルータIDには、屋側ルータノードであることが識別する屋側ノード識別情報が含まれており、
前記センタノードの前記第1の異常報知手段は、
前記センタノード受信手段が前記ルータノードから無線送信される前記水位検知情報及び前記ルータIDを受信した場合において、
該ルータIDに屋側ノード識別情報が周辺ルータノードであることを示す場合には、建物周辺で異常水位が検出されたことを示す要注意警報を周囲に報知し、
該ルータIDに屋側ノード識別情報が屋側ルータノードであることを示す場合には、建物の間際で異常水位が検出されたことを示す緊急避難警報を周囲に報知するものであることを特徴とする請求項2乃至6の何れか一記載の異常水位報知システム。
【請求項8】
前記水害情報集配信サーバは、
前記サーバ側受信手段が前記センタノードから送信されてくる前記水位検知情報及び前記ルータ位置情報を受信した場合、
前記地図情報に基づき、前記各センタノードが設置された建物のうち該ルータ位置情報で特定される位置に対して水害の影響を受けることが推定される建物を抽出し、
抽出された建物に設置された前記センタノードの其々に対して、公衆通信回線を介して水害注意情報を送信する水害注意情報発信手段を備え、
前記センタノードの前記第1の異常報知手段は、公衆通信回線を介して前記水害情報集配信サーバから送信されてくる水害注意情報が受信された場合、建物上流で異常水位が検出されたことを示す水害注意報を周囲に報知するものであることを特徴とする請求項7記載の異常水位報知システム。
【請求項9】
前記ルータノードの一部は、携帯端末装置であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一記載の異常水位報知システム。
【請求項10】
前記ルータノードの一部又は全部は、
前記水位検知手段が、水位検知を示す値が有効とされる水位検知情報を生成した場合に、異常水位の発生を音声又は表示により周囲に報知する第2の異常報知手段、を備えたことを特徴とする請求項1乃至9の何れか一記載の異常水位報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大雨により生じる異常水位の発生を報知し、住民に避難を促す異常水位報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集中豪雨やゲリラ豪雨などの異常豪雨の発生が多くなってきており、洪水や土石流による被害も増加する傾向にある。異常豪雨の発生時においては、気象庁、国土交通省、都道府県の関係機関が、所定の地点の河川水位や流量観測を行った結果に基づき、洪水の危険性のある地域の住民に対して避難勧告や避難指示を発令し、人的被害の軽減が図られている。このように、住民に対して洪水の危険性について警報を出すシステムに関連する技術として、従来、特許文献1~3のものが公知である。
【0003】
特許文献1には、河川・湖沼等の橋梁上の通行車用に異常水位を警報する異常水位警報装置であって、マイクロ波の質問信号の送信及び応答信号の受信が可能な質問器と、検知したい水面位置に設置され質問器の質問信号を受信した時にマイクロ波応答信号を返信する応答器と、質問器の応答信号受信の有無に基づいて水位を判定する判定部とを備えた異常水位警報装置が記載されている(特許文献1・請求項1)。この異常水位警報装置は、マイクロ波が水で吸収される性質を利用し、マイクロ波を用いてデータを送受信する水位検知装置である(仝〔0011〕)。質問器と応答器は、内蔵の電池で作動し、検知したい水面付近に設置される。応答器は通常時は冠水せず、増水により冠水する位置に設置される(仝文献の
図8,9参照)。応答器が水没していない状態では、質問器が送信した質問信号を応答器が受信し、応答器は記憶データに応じた応答信号を返信する。従って、質問器で応答信号を受信することができ、判定部は異常水位でないと判定する。増水により水面が上昇し応答器が水没すると、質問器が送信したマイクロ波による質問信号は水に吸収されて応答器では受信できなくなり、質問器に応答信号が返送されることがない。これにより判定部は異常水位でないと判定する(仝〔0022〕-〔0025〕)。
【0004】
特許文献2記載の河川水位警報ユニットは、橋梁などに設置された水位計測センサ(特許文献2の
図2)により河川水位を計測し、計測された水位を水位判定基準と比較し、絶対水位の上昇や急激増水などのそれぞれの条件に応じて、ユニットに備えられた回転燈、ブザー、メッセージ出力などで警報を発令するとともに(仝文献明細書段落〔0026〕,
図1)、無線通信回線を介して中央管理装置に警報結果を送信する(仝文献明細書段落〔0027〕)ものである。
【0005】
特許文献3記載の洪水発生警報システムは、家屋の基礎、門、石垣、ブロック塀(特許文献3明細書段落〔0022〕,
図1)や河川からの土地高さレベルに対応した各所(仝〔0037〕,
図4)に洪水発生警報装置を設置し、各洪水発生警報装置において水位を検知して警報ブザーや警報ランプにより警報を発令するとともに(仝〔0034〕)、装置内の送信手段により、警報管理センタに洪水警報を送信するものである(仝〔0038〕)。ここで、洪水発生警報装置は、水を検知するフロートスイッチを備えた主回路部と、警報を発する警報手段(警報ブザーや警報ランプ)を備えた副回路部とを具備し、主回路部には、フロートスイッチに電気的に直列に作動リレーが配設され、フロートスイッチに電気的に並列に第1セットリレーが配設されており、また副回路部には、警報手段に電気的に直列に第2セットリレーが配設されている。フロートスイッチが水を検知してオン状態になると、作動リレーが付勢されて第1・第2セットリレーが付勢され、第1セットリレーの付勢により、作動リレーが付勢状態に保持され、第2セットリレーが付勢されることにより、警報手段が作動される(仝〔0028〕-〔0034〕)。これにより、電力の消費を極力抑えながら洪水の発生を長期にわたって検知するように工夫がされている(仝〔0019〕)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-298055号公報
【文献】特開2010-170190号公報
【文献】特開2013-109558号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】一般社団法人日本自動認識システム協会編,「よくわかるRFID」,改訂2版,日本,株式会社オーム社,平成26年6月20日.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の河川水位警報ユニットは、橋梁に取り付けられ、橋梁から河川の水面までの高さを水位計測センサで計測するものであるため、基本的に河川に取り付けるものである。しかし、近年の水害では、暗渠や用水路から道路に水が溢れて避難が困難となるケースも珍しくなく、特許文献2の河川水位警報ユニットでは、水害時の周辺住民へ洪水の危険性について警報を発報するシステムとして適用するには不十分である。
【0009】
一方、特許文献3の洪水発生警報システムは、住宅等の家屋内に警報装置が設けられ(特許文献3の
図1参照)、家屋の側や河川の堤に設置されたフロート式水位検知スイッチによって異常水位を検出して警報を発報するものである。従って、河川以外に暗渠や用水路から道路に水が溢れたような場合に於いても異常水位を検出して警報を発報することが出来る。然し乍ら、フロート式水位検知スイッチは、長期間に亘りメンテナンスを行わなければ、ゴミ詰まりや蟻、蜘蛛、泥蜂などの生物の巣掛けによる詰まり等による動作不良を生じやすいため、動作保証に関する信頼性とメンテナンスコストの点で問題がある。
【0010】
また、特許文献3の洪水発生警報システムでは(仝文献
図4)、各洪水発生警報装置(106)の水位検知スイッチで異常水位を検出した場合、その洪水発生警報装置に附属する警報ブザーや警報ランプにより警報を発令するとともに、洪水発生警報装置から洪水発生信号が無線又は有線で高台の警報管理センタに送信され(仝〔0038〕,〔0041〕)、警報管理センタから注意報や警報が発令され、各所に設置された拡声器などの警報出力手段(152)によって洪水注意情報や洪水警報情報が発令される(仝〔0042〕)。しかし、このような大がかりなシステムを導入するには多大な設備コストが必要となり、財政力の弱い自治体でこのシステムを導入するのは困難である。また、近年、豪雨による水害は、人口密度が小さい中山間地域で発生することも多く、このような中山間地域のそれぞれで警報管理センタ等の設備を導入することは現実的ではない。また、豪雨時に於いては、雨音によって、拡声器などの警報出力手段からの音声が周辺住民に届かない事例がこれまでに多く報告されており、避難情報の伝達性の点に於いても問題がある。
【0011】
尚、上述の特許文献3における課題で挙げた、水位センサの動作保証に関する信頼性とメンテナンスコストの点に関しては、特許文献1記載のマイクロ波による質問器と応答器を用いた水位センサを適用することが考えられる。しかしながら、この場合でも、上述した、システムの導入コストの問題、中山間地域での適用困難な問題、避難情報の伝達性の問題に関して、なお課題が残る。
【0012】
そこで、本発明の目的は、異常水位検出に関する信頼性が高くメンテナンスコストも抑えることが可能であり、システムの導入コストが低く、行政以外の一般世帯や小規模事業所において自主的に容易に導入することが可能な異常水位報知システムを提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、豪雨時においても避難情報の伝達を住民に確実に行うことが出来、適切な避難の判断のための情報提供を行うことが可能な異常水位報知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る異常水位報知システムの第1の構成は、降雨による異常水位の発生を検知し報知する異常水位報知システムであって、
建物の屋内に設置されるセンタノードと、
前記センタノードの周囲の屋内又は屋外に一乃至複数設置されるルータノードと、
前記各ルータノードの近傍に、一乃至複数設置されるリーフノードと、を備え、
前記ルータノードは、
全球測位衛星システムにより、自己位置を表すルータ位置情報を検出する、又は位置情報記憶手段に予め記録された自己位置を表すルータ位置情報を出力するルータノード位置出力手段と、
前記各リーフノードに対し周囲空間へ無線発信した質問信号に対して、又は所定の時間間隔で間歇的に、前記各リーフノードから送信されてくるリーフ応答信号を受信する応答受信手段と、
前記各リーフノードのうち前記リーフ応答信号の送信が途絶したものの有無に基づき、又は前記リーフ応答信号の強度変化に基づき、水の接近又は浸水の有無を判定し、水の接近又は浸水が有りと判定された場合に、水位検知を示す値が有効とされる水位検知情報を生成する水位検知手段と、
前記水位検知手段により出力される前記水位検知情報を前記ルータ位置情報とともに、前記センタノードへ無線送信する水位検知信号送信手段と、を備え、
前記リーフノードは、
該リーフノードの識別コードであるリーフIDを記憶するリーフID記憶手段と、
前記ルータノードから発信される前記質問信号を受信した場合に、又は所定の時間間隔で間歇的に、前記リーフID記憶手段に記憶されたリーフIDを含む前記リーフ応答信号を生成し周囲空間へ無線発信するリーフノード応答手段と、を備え、
前記センタノードは、
公衆通信回線を介して外部との通信を行う通信インタフェースと、
前記ルータノードから無線送信されてくる前記水位検知情報及び前記ルータ位置情報を受信するセンタノード受信手段と、
前記センタノード受信手段が前記水位検知情報及び前記ルータ位置情報を受信した場合において、前記水位検知情報の水位検知を示す値が有効な場合、異常水位の発生を音声又は表示により周囲に報知する第1の異常報知手段と、
前記センタノード受信手段が前記水位検知情報及び前記ルータ位置情報を受信した場合において、前記水位検知情報の水位検知を示す値が有効な場合、該水位検知情報及び該ルータ位置情報を、前記公衆通信回線を介して外部の水害情報集配信サーバへ送信する異常水位情報送信手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、各世帯に於いて異常水位検知システムを導入する場合、各世帯はセンタノードのみを独自に導入すればよい。ルータノード及びリーフノードは、それぞれのセンタノードで共用されるものであるため、異常水位検知システムを導入した世帯の共同負担又は公共設備として自治体が負担して設置することができ、全体としての導入コストを抑えることが出来る。また、本システムでは、それぞれのルータノードが異常水位の検出情報を発信し、センタノードは各ルータノードが発信する異常水位の検出情報に基づき建物内で音声又は表示により周囲に異常発生が報知される。従って、例えば特許文献3のような高台の警報管理センタ等の設備を各地に導入する必要がなく、各世帯や各事業所が単独でシステムを容易に導入することが出来る。従って、人口密度が低く各地に散在する中山間地域でも適用することが出来る。また、異常水位の検出は、リーフノードが送信する電磁波変化による水の接近、浸水の有無を判定するので、フロート式水位検知スイッチと比べて機械的な機構を用いない分、検知器の信頼性が高く、設置やメンテナンスも容易である。また、リーフノードにはRFID又はBluetooth(登録商標)ビーコンを用いることが出来るので、安価であり、ルータノードの周辺に多数のリーフノードを設置すればいくらでも検知精度を上げることが出来る。また、異常水位の検出は、各ルータノードの近傍のリーフノードが水没したか否かにより行い、ルータノードは無線通信に適し、水没の恐れの小さい高所に設置することが出来る。これにより、ルータノードとセンタノードとの間の無線通信が可能な距離を伸ばすことが出来、センタノードを中心として広範囲において、異常水位の検出を行うことが出来る。また、ルータノードの周辺が浸水した後も、該ルータノードが水没しない限り、該ルータノードは異常水位の検出情報を継続して発信することが出来る。従って、ルータノードの近傍に高さを変えて複数のリーフノードを設置することで、ルータノードの近傍の浸水深の検出も行うことが出来る。また、各ルータノードはルータノード位置出力手段を備えているので、ルータノードを設置するだけで、その位置をセンタノード及び水害情報集配信サーバ側で把握することが出来る。従って、ルータノードを設置する際に、その位置を水害情報集配信サーバ側に設定する必要が無く、ルータノードを容易に増設することが出来る。
【0016】
ここで、「全球測位衛星システム」(Global Navigation Satellite System:GNSS)とは、GPS(Global Positioning System)、GLONASS、Galileo、準天頂衛星(QZSS)等の衛星測位システムの総称である。「位置情報記憶手段に予め記録された自己位置」とは、ルータノードの設置時などに、ルータノードに内蔵された書き換え可能メモリのような位置情報記憶手段に書き込み記録された、該ルータノードの位置の情報をいう。「前記各リーフノードに対し周囲空間へ無線発信した質問信号に対して、又は所定の時間間隔で間歇的に、前記各リーフノードから送信されてくるリーフ応答信号」とは、リーフノードにおける「リーフ応答信号」の発信方式として、ルータノードが各リーフノードに対し周囲空間へ無線発信した質問信号に対して各リーフノードからリーフ応答信号を応答送信する場合(質問応答方式)と、質問信号に依らず、各リーフノードが所定の時間間隔で間歇的にリーフ応答信号を送信する場合(プッシュ方式)とを含むことを意味する。ここで、「所定の時間間隔」とは、一定の時間間隔のみならず、例えば、リーフノードにおいて5~10分間インタバルで乱数によって逐次決定されるランダム時間のような場合も含む(実施例1、
図10参照)。
【0017】
本発明に係る異常水位報知システムの第2の構成は、前記第1の構成に於いて、各所の建物に配置された複数の前記センタノードと、
公衆通信回線を介して前記センタノードと接続された水害情報集配信サーバと、を備え、
前記水害情報集配信サーバは、
異常水位の発生情報を地図上に表示するためのトランザクション情報である水害発生トランザクション情報を管理する水害マップデータベースと、
前記各センタノードから送信されてくる前記水位検知情報及び前記ルータ位置情報を受信するサーバ側受信手段と、
公衆通信回線を介して地図配信サーバから、又は該水害情報集配信サーバ内に備えられた地図データベースから地図情報を取得する地図情報取得手段と、
受信された前記水位検知情報及び前記ルータ位置情報と前記地図情報とに基づき、前記水害発生トランザクション情報を生成し前記水害マップデータベースに保存する水害発生マップ生成手段と、
公衆通信回線を介しての外部から送信されてくるマップ配信要求及び位置情報に応じて、前記地図情報取得手段により前記位置情報で指定される指定位置を中心とする所定範囲の地図情報(以下「指定位置周辺地図情報」という。)を取得し、前記水害マップデータベースから抽出される前記指定位置周辺地図情報に関連する前記水害発生トランザクション情報に基づき、前記指定位置周辺地図情報に水害発生情報を表示した水害発生マップ情報を生成し、該水害発生マップ情報を配信するマップ配信手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成により、水害情報集配信サーバにおいて、各地に設置されたルータノードからセンタノード経由で送信される水位検知情報を収集して、水害発生マップ情報を配信することで、水害が発生した地域の住民又は居留者や、その地域を管轄する自治体等の関係機関は、容易且つ的確に水害の発生状況をリアルタイムで把握することが出来る。そして、水害が発生した地域の住民又は居留者は、行政を通すことなく水害の発生状況を知ることが出来るため、迅速かつ的確な自主避難を行うことが出来る。
【0019】
本発明に係る異常水位報知システムの第3の構成は、前記第2の構成に於いて、前記リーフノードは、前記各ルータノードの近傍の、互いに異なる高さに複数個設置されており、前記各リーフノードの前記リーフID記憶手段には、其々の高さに応じて割り当てられた高さ情報を含む前記リーフIDが記憶されており、
前記ルータノードは、該ルータノードにおいて平常時に受信される前記リーフ応答信号に含まれる前記リーフIDのリストを生成し記憶するリーフリスト記憶手段を備え、
前記ルータノードの前記水位検知手段は、前記リーフリスト記憶手段に記憶された前記リーフIDのうち、前記質問信号に対して前記リーフ応答信号の返信が途絶した前記リーフノードの前記リーフIDを抽出し、抽出した前記リーフIDに含まれている前記高さ情報を含んだ前記水位検知情報を生成するものであり、
前記水害情報集配信サーバの前記水害発生マップ生成手段は、受信された前記水位情報を含む前記水位検知情報及び前記ルータ位置情報と前記地図情報とに基づき、異常水位の発生位置とその発生位置の水位を地図上に示した水害発生マップ情報を生成するものであることを特徴とする。
【0020】
この構成により、例えば、洪水により水位が非常に高くなり、ルータノード自体が水没した場合や、土石流や堤防決壊の際のような急激な水位上昇の発生によりルータノード自体が水没し又は流失した場合にも、的確に該ルータノードの設置地点における異常水位を検出することが出来る。
【0021】
本発明に係る異常水位報知システムの第4の構成は、前記第2又は3の構成に於いて、前記水害発生マップ生成手段は、受信された前記ルータ位置情報に基づき、当該ルータ位置情報が示す位置の周囲の標高データを前記地図情報から取得し、取得された周囲の標高データに基づき当該位置情報が示す位置の周囲の浸水推定範囲を抽出し、異常水位の発生位置及び前記浸水推定範囲を地図上に示した前記水害発生マップ情報を生成するものであることを特徴とする。
【0022】
この構成により、浸水が発生した地域の住民又は居留者が避難を行う際に、異常水位の発生位置及び浸水推定範囲を地図上で把握することが出来、避難すべきか留まるべきかの判断や、どの避難ルートで避難するかの判断を的確に行うことが可能となる。
【0023】
本発明に係る異常水位報知システムの第5の構成は、前記第2又は3の構成に於いて、前記水害発生マップ生成手段は、受信された前記ルータ位置情報に基づき、当該ルータ位置情報が示す位置の周囲の標高データ及び道路の経路情報を前記地図情報から取得し、当該位置情報が示す位置の周囲の浸水推定範囲を抽出するとともに該浸水推定範囲に含まれる道路範囲である浸水推定道路範囲を抽出し、異常水位の発生位置及び前記浸水推定道路範囲を地図上に示した前記水害発生マップ情報を生成するものであることを特徴とする。
【0024】
この構成により、浸水が発生した地域の住民又は居留者が避難を行う際に、異常水位の発生位置及び浸水推定道路範囲を地図上で把握することが出来、避難すべきか留まるべきかの判断や、どの避難ルートで避難するかの判断を的確に行うことが可能となる。
【0025】
本発明に係る異常水位報知システムの第6の構成は、前記第2乃至5の何れか一の構成に於いて、公衆通信回線を介して前記水害情報集配信サーバと接続された携帯端末装置を備え、
前記携帯端末装置は、
ディスプレイと、
全球測位衛星システムにより、自己位置を表す位置情報を検出する携帯端末位置検出手段と、
公衆通信回線を介して、前記水害情報集配信サーバに対し、前記マップ配信要求を、前記携帯端末位置検出手段により検出される位置情報とともに送信するマップ配信要求手段と、
前記マップ配信要求に対し、公衆通信回線を介して前記水害情報集配信サーバから送信されてくる前記水害発生マップ情報を受信する地図受信手段と、
前記地図受信手段で受信される前記水害発生マップ情報を前記ディスプレイに表示する地図表示手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0026】
この構成により、水害発生マップ情報を携帯端末装置で地図表示することで、浸水が発生した地域の住民又は居留者が避難を行っている最中にも、異常水位の発生範囲を地図上で把握することが出来、どの避難ルートで避難するかの判断を的確に行うことが可能となる。
【0027】
本発明に係る異常水位報知システムの第7の構成は、前記第2乃至6の何れか一の構成に於いて、前記各ルータノードは、該ルータノードの識別コードであるルータIDを記憶するルータID記憶手段を備え、
前記各ルータノードの前記水位検知信号送信手段は、前記水位検知手段が出力する前記水位検知情報を、前記ルータ位置情報及び前記ルータIDとともに、水位検知情報として前記センタノードへ無線送信するものであり、
前記各ルータノードは、前記センタノードが設置された建物の側又は屋内の地面近傍に設置された屋側ルータノード、及び前記センタノードが設置された建物から離隔した各所に設置された周辺ルータノードに分類され、前記屋側ルータノードの前記ルータIDには、屋側ルータノードであることが識別する屋側ノード識別情報が含まれており、
前記センタノードの前記第1の異常報知手段は、
前記センタノード受信手段が前記ルータノードから無線送信される前記水位検知情報及び前記ルータIDを受信した場合において、
該ルータIDに屋側ノード識別情報が周辺ルータノードであることを示す場合には、建物周辺で異常水位が検出されたことを示す要注意警報を周囲に報知し、
該ルータIDに屋側ノード識別情報が屋側ルータノードであることを示す場合には、建物の間際で異常水位が検出されたことを示す緊急避難警報を周囲に報知するものであることを特徴とする。
【0028】
この構成により、浸水が発生した地域の住民又は居留者が、どの程度の浸水が周囲で発生しているのかを把握することが出来る。
【0029】
本発明に係る異常水位報知システムの第8の構成は、前記第7の構成に於いて、前記水害情報集配信サーバは、
前記サーバ側受信手段が前記センタノードから送信されてくる前記水位検知情報及び前記ルータ位置情報を受信した場合、
前記地図情報に基づき、前記各センタノードが設置された建物のうち該ルータ位置情報で特定される位置に対して水害の影響を受けることが推定される建物を抽出し、
抽出された建物に設置された前記センタノードの其々に対して、公衆通信回線を介して水害注意情報を送信する水害注意情報発信手段を備え、
前記センタノードの前記第1の異常報知手段は、公衆通信回線を介して前記水害情報集配信サーバから送信されてくる水害注意情報が受信された場合、建物上流で異常水位が検出されたことを示す水害注意報を周囲に報知するものであることを特徴とする。
【0030】
この構成により、浸水が発生した地域の近隣やその下流域の住民又は居留者が、上流域で水害が発生したことを把握することができ、早めの避難や警戒につなげることが出来る。
【0031】
ここで、「ルータ位置情報で特定される位置に対して水害の影響を受けることが推定される建物」とは、ルータ位置情報で特定される位置(特定位置)の下流域の建物や、該特定位置の周囲の所定範囲内の建物をいう。「ルータ位置情報で特定される位置に対して水害の影響を受けることが推定される建物」の抽出は予め決められた所定のルール(例えば、特定位置の下流域で特定位置より標高の低い地域の建物、特定位置から一定の距離内の建物、特定位置の周囲のハザードマップによって水害が推定される地域の建物等を選択するなど。)に従って行われる。
【0032】
本発明に係る異常水位報知システムの第9の構成は、前記第1乃至8の何れか一の構成に於いて、前記ルータノードの一部は、携帯端末装置であることを特徴とする。
【0033】
本発明に係る異常水位報知システムの第10の構成は、前記第1乃至9の何れか一の構成に於いて、ルータノードの一部又は全部は、前記水位検知手段が、水位検知を示す値が有効とされる水位検知情報を生成した場合に、異常水位の発生を音声又は表示により周囲に報知する第2の異常報知手段、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、本発明の異常水位報知システムによれば、各世帯で直接近隣の浸水を検知出来るため、避難勧告、指示を待つことなく、自ら避難の判断が可能になり、また近所同士の助け合いによる避難が出来る。さらに、全体としての導入コストを抑えることが出来、各世帯や各事業所が単独でシステムを容易に導入することが出来る。従って、都市のみならず人口密度が低く各地に散在する中山間地域でも適用することが出来る。また、異常水位の検出は、リーフノードの電磁波変化による水の接近、浸水の有無をルータノードで無線検知することにより行うので、機械的な機構を用いない分、汚れ、異物付着、経年劣化が生じにくいなど、検知器の信頼性が高く、設置やメンテナンスも容易である。また、リーフノードは安価に構成出来、ルータノードの周辺に多数のリーフノードを設置して検知精度を上げることが出来る。また、異常水位検出は、ルータノードを無線通信に適し水没の恐れの小さい高所に設置することがで、ルータノードとセンタノードとの間の無線通信が可能な距離を伸ばすことが出来、センタノードを中心として広範囲において、異常水位の検出を行うことが出来る。また、ルータノードの近傍に高さを変えて複数のリーフノードを設置することで、ルータノードの近傍の浸水深の検出も行うことが出来る。また、各ルータノードを設置するだけで、その位置をセンタノード及び水害情報集配信サーバ側で把握することが出来、ルータノードを設置する際に、その位置を水害情報集配信サーバ側に設定する必要が無く、ルータノードを容易に増設することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施例1に係る異常水位報知システムの全体構成を表す図である。
【
図2】ルータノード3とリーフノード4の設置の一例を示した図である。
【
図3】
図1の異常水位報知システムの機能構成を表したブロック図である。
【
図4】各ルータノードの初期化処理を表すフローチャートである。
【
図5】
図1の異常水位報知システムにおける異常水位の発生の検出及び報知の動作を表すフローチャートである。
【
図6】
図1の異常水位報知システムにおける水害情報データベース17及び水害発生マップデータベース18の更新処理を表すフローチャートである。
【
図7】
図1の異常水位報知システムにおける水害発生マップ情報の配信処理の動作を表すフローチャートである。
【
図8】
図1の異常水位報知システムにおける水害発生マップ情報の配信処理の動作を表すフローチャートである。
【
図9】
図1の異常水位報知システムにおける水害注意報の配信処理の動作を表すフローチャートである。
【
図10】
図1の異常水位報知システムに、プッシュ方式によるリーフ応答信号の発信方法を適用した場合の例を表すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施例2に係る異常水位報知システムの全体構成を表す図である。
【
図12】本発明の実施例3に係る異常水位報知システムの機能構成を表したブロック図である。
【
図13】リーフノード4からルータノード3へのリーフ応答信号の伝達経路を示す図である。
【
図14】受信点Bに入射する電磁波を表す図である。
【
図15】受信点Bにおいて受信される電磁波の電場成分の相対エネルギー密度の時間平均U
Ep
(ave), U
Es
(ave) と水面の高さy
A0との関係を計算した結果である。
【
図16】受信点Bにおいて受信される電磁波の電場成分の相対エネルギー密度の時間平均U
Ep
(ave), U
Es
(ave) と水面の高さy
A0との関係を計算した結果である。
【
図17】実験室において実際にアクティブ型ビーコンを用いて、送信点Aと水面との距離の変化による受信強度の変化を測定した結果である。
【
図19】周波数f=2.4GHzにおける入射角θ
Cに対する水の強度反射率R
p, R
sの変化を表す図である。
【
図20】本発明の実施例4に係る異常水位報知システムの全体構成を表す図である。
【
図21】
図20の異常水位報知システムの機能構成を表したブロック図である。
【
図22】本発明の実施例5に係る異常水位報知システムの全体構成を表す図である。
【
図23】本発明の実施例6に係る異常水位報知システムの全体構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0037】
〔1〕システム構成
図1は、本発明の実施例1に係る異常水位報知システムの全体構成を表す図である。本実施例の異常水位報知システムは、水害情報集配信サーバ1、センタノード2、ルータノード3、リーフノード4、及び携帯端末装置5を備えている。ここで、「ノード(node)」とは、ネットワークの接点、分岐点、中継点などの機器を意味する。
【0038】
水害情報集配信サーバ1は、各地に設置されたセンタノード2から送信されてくる異常水位発生に関する情報を集配信するサーバであり、一般のパーソナル・コンピュータやラックマウントサーバ・コンピュータなどの汎用型コンピュータによって構成されている。この水害情報集配信サーバ1は、水害情報の集配信を行う管理センタ(管理センタの設置場所は問わない。通信回線で接続されていればよいので遠隔地に設置してクラウド仮想環境としてもよい。)に設置されており、固定電話回線、携帯電話回線などの公衆通信回線6に接続されている。水害情報集配信サーバ1からは、公衆通信回線6を通じてインターネットに接続することが可能である。
【0039】
センタノード2は、通信可能範囲内にある各ルータノード3から送信されてくる水位検知情報(異常水位の検知の有無に関する情報)、ルータ位置情報(該ルータノード3の位置に関する情報)、及びルータID(ルータノード3の識別コード)を含む信号(以下「ルータ信号」という。)を受信し、該水位検知情報やルータID内の屋側ノード識別情報に基づき、周囲に警報を報知するとともに、該水位検知情報及びルータ位置情報を水害情報集配信サーバ1へ送信するノードである。センタノード2は、住宅や各種事業所、河川管理所等の建物Bの屋内に設置される。センタノード2は、一般に広く使用されているLANルータを介して公衆通信回線6に接続され、インターネットに接続することが可能である。センタノード2は、スマートフォン又はパーソナル・コンピュータ(ハード)及びアプリ(ソフト)によっても構成することができる。
【0040】
ここで、本実施例においてセンタノード2が報知する警報には、警報レベルとして、次の3段階がある。
(レベルL1)注意報 :建物Bの上流域等の該地域が水害の影響を受けると推定する際の原因となる地域で異常水位が検出された地点がある。
(レベルL2)要注意警報 :建物B周辺に異常水位が検出された地点がある。
(レベルL3)緊急避難警報 :建物Bに水が接近、又は浸水している。
【0041】
センタノード2では、前記レベルに応じた注意報、警報を警報ランプにより報知したり、スピーカから音声、又は警報音により報知したりする。
【0042】
ルータノード3は、全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)により自己の位置情報(ルータ位置情報)を検出してセンタノード2へ送信するとともに、該ルータノード3の近傍に設置された各リーフノード4とマイクロ波などの電磁波で近距離通信をすることで各リーフノード4が送信する電磁波変化による水の接近、浸水の有無を検知し水位検知情報(水が接近、又は浸水したリーフノード4があった場合に、水位検知を示す値が有効とされる情報)及びルータ位置情報をルータ信号としてセンタノード2へ送信するノードである。ルータノード3は、各センタノード2の建物Bの屋内又は該建物Bの周囲の屋外に設置される。センタノード2とルータノード3は、各々の電波の届く範囲内(本実施例では、100m~10km程度を想定。)において無線通信が可能である。また、自己の近傍の各リーフノード4の識別コード(リーフID)の読み取りは、現在広く使用されているRFID(radio frequency identifier)と同様に、アンチコリジョン(anti-collision:複数一括読み取り)によって行われる。ルータノード3は、スマートフォン又は組み込み型コンピュータ(ハード)及びアプリ(ソフト)によっても構成することができる。
【0043】
リーフノード4は、ルータノード3から発信される質問信号を受信し、それに対して該リーフノード4のリーフIDを含むリーフ応答信号を生成し周囲空間へ無線発信するノードである。リーフノード4は、各ルータノード3の近傍の該ルータノード3よりも低い位置に設置される。リーフノード4は、パッシブRFタグ,アクティブRFタグ、Bluetooth(登録商標)ビーコンのような無線デバイスによって構成され、各ルータノードの近傍に、一乃至複数個設置される。ルータノード3とリーフノード4とは、各々の電波の届く範囲内(本実施例では、数m~30m程度を想定。)において無線通信が可能である。尚、ルータノード4はアドホック通信でメッシュ状に構成することにより、さらに距離を延長し、面的にエリアを監視することができる。
【0044】
携帯端末装置5は、異常水位が発生した地点や水位、冠水した道路等の情報を地図情報として表示する携帯式の端末装置である。携帯端末装置5は、異常水位の発生時において住民が避難する際に、避難経路の参考情報を配信するために用いられる。避難経路の参考情報は避難を行っている際にも必要となるため、本システムでは、避難の際にセンタノード2とは独立に持ち運びが可能な携帯端末装置5が採用されている。携帯端末装置5は、スマートフォンやタブレット等のディスプレイ及び通信機能を備えた端末装置で構成され、携帯電話回線などの公衆通信回線6に接続されている。携帯端末装置5からは、公衆通信回線6を通じてインターネットに接続することが可能である。また、携帯端末装置5とセンタノード2とは、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信によって互いに通信が可能である。
【0045】
図2はルータノード3とリーフノード4の設置の一例を示した図である。ルータノード3は、
図2(a)に示したように、センタノード2が設置された建物Bの側又は屋内の地面近傍に設置された屋側ルータノード3aと、センタノード2が設置された建物Bから離隔した各所に設置された周辺ルータノード3bに類別される。屋側ルータノード3aは、建物Bの外壁や内壁、またはこれらの付近に設置される。また、屋側ルータノード3aの近傍のリーフノード4は、屋側ルータノード3aよりも低い位置の、建物Bの基礎や壁や建物Bの近傍の塀などの構造物の地面付近に設置される。この場合、リーフノード4を附設する対象物がコンクリート等の非金属なので、リーフノード4には、距離が1m程度であればパッシブ型RFIDを使用するのが好適である。尚、屋側ルータノード3aの近傍のリーフノード4は、屋側ルータノード3aと通信可能な範囲であれば何個設置してもよい。
【0046】
一方、周辺ルータノード3bは、例えば、
図2(b)に示すように、街路灯などの地面に固定された構造物に附設される。豪雨による冠水時にもセンタノード2との通信可能なように、周辺ルータノード3bはできるだけ高所に設置する。また、周辺ルータノード3bを高所に設置することで、センタノード2との通信距離を伸ばすことも出来る。周辺ルータノード3bの近傍に設置されるリーフノード4は、パッシブRFタグ又はアクティブRFタグ、Bluetooth(登録商標)ビーコンのようなRFデバイスによって構成される。
図2(b)に示したように、リーフノード4は、周辺ルータノード3bよりも低い位置の、街路灯P、ガードレールG、道路標識、信号塔、ペデスタルボックス(地中線・電線共同溝の地上機器の収容ボックス)等の固定構造物に附設される。リーフノード4は、附設する固定構造物が非金属且つ距離が1m程度であればパッシブ型RFタグを含むRFデバイス、金属又は距離が長ければアクティブ型RFタグを含むRFデバイスを用いるのが好適である。また、周辺ルータノード3bを、例えば、
図2(c)に示すように、河川Rの河川堤防Tの上部の標識、水門、橋梁などの固定構造物に附設し、リーフノード4をその周辺の河川堤防Tの川表の法面の杭又は標石や橋脚、水門などの固定構造物に固定設置する。この場合、周辺ルータノード3bと各リーフノード4との間の距離が比較的大きくなるため、リーフノード4には、アクティブ型RFタグを用いるのが好適である。
【0047】
尚、ルータノード3の近傍にリーフノード4を複数設置する場合には、
図2に示したように、各リーフノード4は異なる高さとなるように設置するのが好適である。これにより、異常水位の発生を検知出来ると共に、現在どの程度の水位であるかをも検知することが出来る。
【0048】
異常水位が発生して地面に水が溢れてリーフノード4が浸水すると、リーフノード4の周囲の水により通信で用いられるマイクロ波等の電磁波が水の誘電体損失による周波数と水深に相関する減衰特性に沿ってエネルギー減衰され、また浸水した水と大気の境界面において通信で用いられるマイクロ波等の電磁波が反射され、ルータノード3とリーフノード4との間の無線通信において通信電力が低下することで、通信時のエラーレートが上昇することにより、通信の状態が平常から途絶状態へ推移する。このエラーレートの推移、および最終的な途絶状態によって、ルータノード3においてリーフノード4が浸水したことを検出し、異常水位の発生を検出することが出来る。このとき、リーフノード4を、異なる高さとなるように複数設置しておくことで、水位の上昇に従って低位にあるリーフノード4から順に通信が途絶するため、異常水位の発生時における浸水深を、ルータノード3において検出することも出来る。
【0049】
図3は、
図1の異常水位報知システムの機能構成を表したブロック図である。
図3において、
図1と同様の構成部分については同符号が付されている。水害情報集配信サーバ1は、地図データベース10、サーバ側受信部11、地図情報取得部12、水害発生マップ生成部13、マップ配信部14、水害注意情報発信部15、回線通信インタフェース16、水害情報データベース17、水害マップデータベース18、測定点補正データベース19、及びセンタノードリスト記憶部20を備えている。回線通信インタフェース16は、公衆通信回線6との間でデータの授受を行うインタフェースである。地図データベース10は、電子地図データを格納するデータベースである。水害情報データベース17は、各センタノード2から送られてくる水位検知情報及びルータ位置情報を管理・保存するデータベースである。水害情報データベース17には、水位検知情報及びルータ位置情報が蓄積されていく。水害マップデータベース18は、各センタノード2から送られてくる水位検知情報及びルータ位置情報に基づき、浸水状況を地図上に示した水害発生マップ情報を管理・保存するデータベースである。水害発生マップ情報は、具体的には、地図上に水害発生情報を表示するためのトランザクションデータの形式をとる。この水害発生マップ情報は、時事刻々とリアルタイムに更新される。測定点補正データベース19は、ルータノード3の位置補正に関する情報を管理・保存するデータベースである。例えば、
図2(a),(b)のようなケースでは、ルータノード3の位置における標高は、該ルータノード3に近接するリーフノード4の標高と同じであるため、ルータノード3の位置補正は必要ないが、
図2(c)のようなケースでは、ルータノード3の位置における標高と、水位を測定する各リーフノード4の標高とが大きく異なるため、ルータノード3の位置を水位計測の基準標高となる点の位置に補正する必要がある。「位置補正に関する情報」とは、このようなルータノード3の位置を補正する情報をいう。測定点補正データベース19には、補正の必要があるルータノード3についてのみ、その補正後の位置情報が保管される。センタノードリスト記憶部20には、各地の建物Bに設置されたセンタノード2の、識別番号(センタノードID)、ネットワーク上のネットワーク・アドレス、位置情報を含むセンタノード関連情報のリストを記憶する。
【0050】
センタノード2は、センタノード受信部21、異常報知部22、異常水位情報送信部23、回線通信インタフェース24、遠距離通信インタフェース25、遠距離通信アンテナ26、近距離通信インタフェース27、スピーカ29、警報ランプ30、及びルータリスト記憶部31を備えている。ルータリスト記憶部31は、該センタノード2の受信範囲内にあるルータノード3のルータIDのリスト(以下「ルータリスト」という。)が記憶される。回線通信インタフェース24は、公衆通信回線6との間でデータの授受を行うインタフェースである。遠距離通信インタフェース25及び遠距離通信アンテナ26は、ルータノード3との間での無線通信を行うインタフェース及びアンテナである。遠距離通信インタフェース25には、通信距離を長くするため、スペクトル拡散通信を用いたインタフェースを採用するのが好適である。遠距離通信アンテナ26は、センタノード2に備え付けられたアンテナを用いても良いし、テレビアンテナのような外部アンテナをセンタノード2に接続して用いても良い。近距離通信インタフェース27は、携帯端末装置5との間で電波や赤外線を用いた近距離通信を行うインタフェースであり、例えば、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信方式を用いることが出来る。警報ランプ30は、一般に火災報知器に用いられているような赤色灯や回転灯が使用される。
【0051】
ルータノード3は、位置検出モジュール41、ルータID記憶部42、リーフリスト記憶部43、初期化部44、初期化スイッチ44a、質問発信部45、応答受信部46、水位検知部47、水位検知信号送信部48、遠距離通信インタフェース49、遠距離通信アンテナ50、近距離通信インタフェース51、及び近距離通信アンテナ52を備えている。位置検出モジュール41は、GNSSにより、自己位置を表すルータ位置情報を検出するモジュールであり、一般に広く使用されているGPS(Global Positioning System)受信モジュールなどを使用することが出来る。ルータID記憶部42には、該ルータノード3の識別コードであるルータIDが記憶されている。ルータIDには、該ルータノード3が屋側ルータノード3aか周辺ルータノード3bを識別するための屋側ノード識別情報が含まれている。例えば、ルータIDのコードを「YWWWWWW」(Y:屋側ノード識別情報、WWWWWW:ルータ番号)のようにする。「屋側ノード識別情報」は、屋側ルータノード3aか周辺ルータノード3bかの類別を表す情報であり、例えば、屋側ルータノード3aがY=0、周辺ルータノード3bがY=1のように設定される。「ルータ番号」は、各ルータノード3に唯一固有に割り振られる識別場番号である。尚、ルータIDは、ルータノード3の設置時に、無線式リーダライタを使って現場で書き込んだり、ディップスイッチを用いて「屋側ノード識別情報」の部分のみを現場で設定したりすることが出来る。リーフリスト記憶部43には、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、MRAM、ReRAMなどの不揮発性メモリが使用される。遠距離通信インタフェース49及び遠距離通信アンテナ50は、センタノード2との間での無線通信を行うインタフェース及びアンテナである。近距離通信インタフェース51及び近距離通信アンテナ52は、該ルータノード3の近傍の各リーフノード4との間でのマイクロ波等で無線通信を行うインタフェース及びアンテナである。初期化スイッチ44aは、該ルータノード3の初期化処理を行う際に使用されるプッシュスイッチである。
【0052】
尚、本実施例では、ルータノード3の「ルータノード位置出力手段」として、GNSSによりルータ位置情報を検出する「位置検出モジュール41」を使用した例を示すが、本発明では、「ルータノード位置出力手段」として、「位置検出モジュール41」の代わりに、ライタなどを用いて外部から書き換え可能な「位置記憶メモリ41’」を備えた構成とすることもできる。この場合、ルータノード3を現場に設置する際に、GNSSなどにより設置現場の位置(ルータ位置情報)を計測して、ライタを用いて測定したルータ位置情報を位置記憶メモリ41’に予め書き込むようにする。位置記憶メモリ41’は、要求に応じて、予め書き込まれたルータ位置情報を出力する。
【0053】
リーフノード4は、リーフID記憶部61、リーフノード受信部62、リーフノード応答部63、近距離通信インタフェース64、及び近距離通信アンテナ65を備えている。近距離通信インタフェース64及び近距離通信アンテナ65は、該リーフノード4の近傍のルータノード3との間でのマイクロ波等で無線通信を行うインタフェース及びアンテナである。リーフID記憶部61には、該リーフノード4の識別コードであるリーフIDが記憶される。このリーフIDは、該リーフノード4が設置される高さに応じて割り当てられた高さ情報を含む。例えば、リーフIDのコードを「XXXXZZZZZZ」(XXXX:高さ情報、ZZZZZZ:リーフ番号)のようにする。「高さ情報」は、その地点の浸水の浸水深(浸水域の地面から水面までの高さ)を示す情報であり、例えば、国土交通省が定める浸水深に沿って「0~0.5m(床下浸水(大人の膝までつかる))」、「0.5~1.0m(床上浸水(大人の腰までつかる))」、「1.0~2.0m(1階の軒下まで浸水する)」、「2.0~5.0m(2階の軒下まで浸水する)」、「5.0m~(2階の屋根以上が浸水する)」のような段階で定めてもよいし、より詳細に区切った浸水深を独自に定めてもよい。各々の浸水深に対して、浸水深が浅い順に数値コードを割り当てて、これを「高さ情報」とする。「リーフ番号」は、各リーフノード4に唯一固有に割り振られる識別場番号である。尚、リーフIDは、リーフノード4の設置時に、無線式リーダライタを使って現場で書き込むことが出来る。
【0054】
携帯端末装置5は、タッチパネル・ディスプレイ71、位置検出モジュール72、マップ配信要求部73、地図受信部74、地図表示部75、回線通信インタフェース76、及び回線通信アンテナ77を備えている。回線通信インタフェース76及び回線通信アンテナ77は、公衆通信回線6との間でデータの授受を行うインタフェース及びアンテナである。タッチパネル・ディスプレイ71は、液晶パネルのような表示装置とタッチパッドのような位置入力装置を組み合わせた電子部品であり、画面上の表示を押すことで機器を操作する入力兼表示装置である。位置検出モジュール72は、GNSSにより、自己位置を表す携帯端末位置情報を検出するモジュールであり、一般に広く使用されているGPS受信モジュールなどを使用することが出来る。
【0055】
尚、上記の各構成部分の詳細な機能については、後述の動作説明に於いて、まとめて説明する。
【0056】
〔2〕システム動作
以上のように構成された本実施例の異常水位報知システムについて、以下その動作を説明する。
【0057】
(1)ルータノードの初期化
図4は、各ルータノードの初期化処理を表すフローチャートである。ルータノードの初期化処理は、各ルータノード3及びその近傍の各リーフノード4を設置した直後、ルータノード3の近傍に新たなリーフノード4を設置した際、又はルータノード3の近傍のリーフノード4を除去又は交換した際に、1回だけ実施される。
【0058】
まず、ルータノード3は、該ルータノード3に備えられた初期化スイッチ44aが押されるまで待機する(S101)。ここで、初期化スイッチ44aは、ルータノード3に備えられたプッシュスイッチである。ルータノード3の設置者が初期化スイッチ44aを指で押釦することでオンとなり、指を離すとオフとなる。
【0059】
ステップS101で初期化スイッチ44aが押されたことが検出された場合、ルータノード3の初期化部44は、リーフリスト記憶部43に記憶されているリーフリストをクリア(リスト内データを消去)する。ここで、「リーフリスト」とは、該ルータノード3において平常時に受信されるリーフ応答信号に含まれるリーフIDのリストである。「リーフ応答信号」とは、ルータノード3の質問発信部45が周囲空間へ無線発信する質問信号に対して、該ルータノード3の近傍のリーフノード4から送信されてくる信号であって、該リーフノード4のリーフIDの情報を含んだ信号である。
【0060】
次に、ルータノード3の質問発信部45が、その近傍の各リーフノード4に対する質問信号を周囲空間へ無線発信し、近傍の各リーフノード4のリーフノード受信部62が質問信号を受信すると、リーフノード応答部63がリーフID記憶部61に記憶されたリーフIDを含むリーフ応答信号を生成して周囲空間へ無線発信し、ルータノード3の応答受信部46が近傍の各リーフノード4から送信されてくるリーフ応答信号を受信する、という一連の動作を行うことにより、ルータノード3においてその近傍の各リーフノード4のリーフIDを読み取る処理が行なわれる。この処理は、近傍のリーフノード4が複数存在する場合には、リーフ応答信号の衝突が生じるため、タイムスロット方式やビットコリジョン方式などのアンチコリジョンの技術(例えば、非特許文献1の47~50頁参照)を使用して実行される。ルータノード3の初期化部44は、受信された近傍の各リーフノード4のリーフIDを、リーフリストとして、リーフリスト記憶部43に保存する(S103,S210)。
【0061】
最後に、ルータノード3の初期化部44は、遠距離通信インタフェース49及び遠距離通信アンテナ50により、他のルータノード3が送信するルータ信号を一定の期間受信し、他のルータノード3が送信するルータ信号と衝突しない送信タイミング及び送信チャネルを決定する(S104)。以降の該ルータノード3からのルータ信号の送信は、ここで初期化部44によって決定された送信タイミング及び送信チャネルを使って実行される。
【0062】
以上のルータノード3の初期化処理動作により、ルータノード3の近傍に設置されたリーフノード4のリーフIDが、リーフリストとしてリーフリスト記憶部43に記憶される。以降の各リーフノード4の通信途絶の判断は、このリーフリストを参照することによって行われることになる。また、このとき同時に、該ルータノード3がセンタノード2にルータ信号の送信する際の送信タイミング及び送信チャネルが決定され、他のルータノード3とのルータ信号との衝突回避の設定がなされる。
【0063】
(2)異常水位の報知
(2.1)異常水位の検出及び報知
次に、異常水位の発生を検出及び報知する動作について説明する。
図5は、
図1の異常水位報知システムにおける異常水位の発生の検出及び報知の動作を表すフローチャートである。
【0064】
まず、ルータノード3は、内部タイマにより、検出タイミング時刻に達したか否かを判定し、検出タイミング時刻に達するまで待機する(S111)。「検出タイミング時刻」とは、異常水位の検出を実施する時刻をいい、一定の時間間隔(例えば、5分毎)とされる。
【0065】
検出タイミング時刻に達した場合、次に、ルータノード3の質問発信部45が、その近傍の各リーフノード4に対する質問信号を周囲空間へ無線発信し、近傍の各リーフノード4のリーフノード受信部62が質問信号を受信すると、リーフノード応答部63がリーフID記憶部61に記憶されたリーフIDを含むリーフ応答信号を生成して周囲空間へ無線発信し、ルータノード3の応答受信部46が近傍の各リーフノード4から送信されてくるリーフ応答信号を受信する、という一連の動作を行うことにより、ルータノード3においてその近傍の各リーフノード4のリーフIDを読み取る処理が行なわれる(S112,S211)。この処理は、ルータノードの初期化処理における場合と同様、アンチコリジョンを用いて実行される。このとき、応答受信部46は、各リーフノードから送信されてくるリーフ応答信号を受信した際の受信信号強度(Received Signal Strength:以下「RSS」という。)も同時に検出し、リーフIDとともに内部のメモリに保存する。
【0066】
次に、ルータノード3の水位検知部47は、応答受信部46で受信された各リーフ応答信号のリーフIDとリーフリスト記憶部43に記憶されたリーフリストとを照合して、通信が途絶したリーフノード4のリーフID(Communication Disruption Leaf-node's ID:以下「CDLID」という。)を検出する(S113)。
【0067】
ここで、CDLIDが検出されなかった場合には(S114)、水位検知部47は、リーフ応答信号が受信された各リーフノード4のリーフ応答信号のRSSを検査し、RSSの大きさ及びRSSのサンプリング値の分散(又は標準偏差)の大きさにより該リーフノード4の周囲における水位レベルを検出する(S115a)。具体的には、水位検知部47は、晴天時における各リーフノード4のリーフ応答信号のRSSの平時平均値Uave(i)(iは各リーフノード4のインデックス)及びRSSのサンプリング値の分散値の平時平均値(平時分散値)σ2
Uave(i)を予め内部メモリに記憶しておく。そして、各時刻tの時間区間[t-Δt, t]において、その時間区間[t-Δt, t]に受信される各リーフノード4のリーフ応答信号のRSSの区間平均 U(i; t-Δt, t)と平時平均値Uave(i)との比Ur(i; t-Δt, t)=U(i; t-Δt, t)/Uave(i)の値(比RSS)、及び時間区間[t-Δt, t]のRSSのサンプリング値の区間分散値σ2
U(i; t-Δt, t) と平時分散値σ2
Uave(i)との比σ2
Ur(i; t-Δt, t) =σ2
U(i; t-Δt, t) /σ2
Uave(i)の値(比RSS分散)を計算し、この比RSS Ur(i; t-Δt, t)及び比RSS分散 σ2
Ur(i; t-Δt, t)の大きさによりリーフノード4の周囲における水位を検出する。リーフノード4の下方に水面がある程度接近すると比RSS分散 σ2
Ur(i; t-Δt, t)が徐々に増加し、さらに水面がリーフノード4の下方に近接すると比RSS Ur(i; t-Δt, t)が低下しはじめる。そして、リーフノード4が浸水すると比RSS Ur(i; t-Δt, t)は急激に低下し、浸水が深くなると通信が途絶する。従って、いくつかの比RSSの閾値Urth(n)(nは比RSS判定レベルを表し、n=1,2,…;Urth(1)>Urth(2)>…)及び比RSS分散の閾値σ2rth(m)(mは比RSS分散判定レベルを表し、m=1,2,…;σ2rth(1)<σ2rth(2)<…)を定めておき、水位検知部47は、比RSS Ur(i; t-Δt, t)が各閾値を下回ったか否か、又はRSS分散 σ2
Ur(i; t-Δt, t)が各閾値を上回ったか否かを判定することによって、リーフノード4の周囲における水位レベルを検出することが可能となる。ここで、「水位レベル」とは、検出された水位をその高さによって段階的に区分した値である。例えば、mを0,1の2段階、nを0,1,2,3の4段階とした場合、
(0) 水位レベル(n, m)=(0, 0)(Ur(i; t-Δt, t)>Urth(1) ∩ σ2
Ur(i; t-Δt, t)<σ2rth(1))は「水位未検出」、
(1) 水位レベル(n, m)=(0, 1) (Ur(i; t-Δt, t)>Urth(1) ∩ σ2
Ur(i; t-Δt, t)≧σ2rth(1))は「水面検出」、
(2) 水位レベルn= 1 (Urth(1) ≧Ur(i; t-Δt, t)>Urth(2))は「水面接近」、
(3) 水位レベルn=2(Urth(2) ≧Ur(i; t-Δt, t)>Urth(3))は「浸水」(リーフノード4が浸水したこと。)、
(4) 水位レベルn=3(Urth(3) ≧Ur(i; t-Δt, t))は「水没による通信途絶」(リーフノード4が浸水して通信が途絶したこと。)、
のように水位レベルが検出される。尚、比RSS分散 σ2
Ur(i; t-Δt, t)の代わりとして、比RSS標準偏差 σUr(i; t-Δt, t)、RSSの平均偏差、又はこれに類するRSSの平均値に対する散らばりを表す統計量を用いてもよい。
【0068】
尚、リーフ応答信号の比RSS Ur(i; t-Δt, t)及び比RSS分散 σ2
Ur(i; t-Δt, t)と水位レベルとの関係に関しては、実施例3においてより詳しく説明する。また、リーフ応答信号のRSSからの水位レベルの判定方法としては、これ以外にも、RSSの時間変化のパターンに基づき、ニューラルネットワークを用いた深層学習などの機械学習の手法等によって判定を行うこともできる。
【0069】
この水位検出によって総てのリーフノード4において水位が検出されないと判定された場合には、水位検知部47は、水位検知を示す値(水位検知フラグ値)が無効の水位検知情報を出力する。一方、何れかのリーフノード4において水位が検出された場合には、水位検知部47は、各リーフノード4のうち、「高さ情報」が最も浸水深が大きい高さを表すものであって、各リーフノード4において検出された水位レベルnのうち最も浸水深が大きいもの(最大水位レベル)を求め、有効な水位検知フラグ値及び検出された高さ情報並びに最大水位レベルを含む水位検知情報を出力する。例えば、或るルータノード3において、リーフリストに3つのリーフノード4(以下、Lf1,Lf2,Lf3と記す。)が登録されていた場合において、リーフノードLf1,Lf2,Lf3の高さ情報が0,1,1(浸水深は高さ情報0よりも高さ情報1のほうが大きい、すなわち、高さ情報1は高さ情報0よりも高所を表すとする。)とし、リーフノードLf1において検出された水位レベルが2(浸水)、リーフノードLf2において検出された水位レベルが1(水面接近)、リーフノードLf3において検出された水位レベルが2(浸水)とすると、最も浸水深が大きいものは、高さ情報1のリーフノードLf3において検出された水位レベル2である。従って、水位検知情報に含まれる高さ情報及び最大水位レベルは(高さ情報,水位レベル)=(1,2)となる。そして、水位検知信号送信部48は、該水位検知情報と、位置検出モジュール41が出力するルータ位置情報と、ルータID記憶部42に記憶されたルータIDとを含むルータ信号を、遠距離通信インタフェース49及び遠距離通信アンテナ50により、周囲空間へ無線送信する(S115b)。
【0070】
一方、ステップS113においてCDLIDが検出された場合には(S114)、水位検知部47は、有効な水位検知フラグ値を含む水位検知情報を出力する。このとき、水位検知部47は、水位検知情報に、CDLIDから抽出される「高さ情報」のうち、最も浸水深が大きいものも付加し、最大の水位レベルを付加する(S116)。例えば、CDLIDとして、CDLIDに含まれる「高さ情報」が0及び1(浸水深は高さ情報0よりも高さ情報1のほうが大きいとする。)のものが検出された場合、水位検知情報には「高さ情報」として1、水位レベルとして最大の水位レベル(例えば、水位レベル3(水没による通信途絶))が付加される。そして、水位検知信号送信部48は、この水位検知情報と、位置検出モジュール41が出力するルータ位置情報と、ルータID記憶部42に記憶されたルータIDとを含むルータ信号を、遠距離通信インタフェース49及び遠距離通信アンテナ50により、周囲空間へ無線送信する(S117)。以上のステップS115又はステップS116,S117の処理の後、ルータノード3は再びステップS111に戻り、同様の動作を繰り返す。
【0071】
一方、各建物Bの屋内に設置されたセンタノード2は、受信可能な範囲内にある各ルータノード3から送信されてくるルータ信号を、遠距離通信アンテナ26,遠距離通信インタフェース25を介してセンタノード受信部21が受信するまで待機する(S301)。ここで、各ルータノード3から送信されてくるルータ信号には、前述した通り、「水位検知情報」、「ルータ位置情報」、及び「ルータID」が含まれている。
【0072】
センタノード受信部21によりルータ信号が受信された場合、センタノード2の異常報知部22は、ルータ信号に含まれている「水位検知情報」の水位検知フラグ値が有効か無効か及び水位検知情報において検出された最大水位レベルが「水位未検出」のレベル(レベル0)か否かを判定し(S302)、水位検知フラグ値が有効又は最大水位レベルレベル0以外であれば次のステップS303へ進み、水位検知フラグ値が無効且つ最大水位レベルレベル0であれば、該ルータ信号の「水位検知情報」、「ルータ位置情報」及び「ルータID」を水害情報集配信サーバ1へ送信し(S304)、上記ステップS301へ戻る。
【0073】
ステップS302でルータ信号内の「水位検知情報」の水位検知フラグ値が有効又は最大水位レベルが一定のレベル以上(例えば、「浸水」を表す値以上)の場合、異常報知部22は、異常水位の発生をスピーカ29により警報音及び警告音声で音声報知するとともに、警報ランプ30を点灯又は点滅させて、異常水位の発生を周囲に報知する(S303)。ここで、異常報知部22は、受信されたルータ信号に含まれる「ルータID」の屋側ノード識別情報Yを参照し、屋側ノード識別情報Yが周辺ルータノード3bを示す値(例えば、Y=1)の場合には警報レベルをL2、屋側ノード識別情報Yが屋側ルータノード3aを示す値(例えば、Y=0)の場合には警報レベルをL3とする。そして、警報レベルL2の場合は、異常報知部22は、建物周辺で異常水位が検出されたことを示す「要注意警報」をスピーカ29により周囲に報知する。警報レベルL3の場合は、異常報知部22は、建物の間際で異常水位が検出されたことを示す「緊急避難警報」をスピーカ29により周囲に報知する。
【0074】
そして、異常水位情報送信部23は、ルータ信号に含まれている「水位検知情報」、「ルータ位置情報」及び「ルータID」を「異常水位情報」として、回線通信インタフェース24により、公衆通信回線6を介して水害情報集配信サーバ1へ送信し(S304)、上記ステップS301の動作へ戻る。
【0075】
尚、上述したように、センタノード2において受信可能な範囲内にあるルータノード3からは、ルータ信号が一定の時間間隔TRで定期的に送信されてくる。従って、センタノード2は、平時に於いて定期的に受信されるルータ信号に含まれるルータID及び位置情報を、予めルータリストとしてルータリスト記憶部31に保存しておく。そして、ルータリストにルータIDが登録されたルータノード3のうち、ルータ信号が一定の閾値時間Tth(>TR)以上受信されないものが検出された場合には(S301)、そのルータノード3のルータ信号が途絶したと判定する(S305)。これは、例えば、洪水により水位が非常に高くなり、ルータノード3自体が水没した場合や、土石流や堤防決壊の際のような急激な水位上昇の発生によりルータノード3自体が水没し又は流失した場合に対応したものである。ルータノード3自体が水没又は流失すると、ルータノード3からセンタノード2へのルータ信号の送信が途絶えることから、センタノード2においては、ルータ信号による異常水位の判定ができなくなる。従って、センタノード2では、ルータ信号の送信途絶をもって、ルータノード3自体が水没又は流失したと判断して警報を発令することとしたものである。ステップS305でルータ信号が途絶したと判定された場合、異常報知部22が、異常水位の発生を、スピーカ29及び警報ランプ30により周囲に報知し(S306)、異常水位情報送信部23が、通信が途絶したルータノード3の「水位検知情報」、「ルータ位置情報」及び「ルータID」を「異常水位情報」として水害情報集配信サーバ1へ送信し(S307)、上記ステップS301の動作へ戻る。尚、ステップS306の動作は、ステップS303と同様である。また、ステップS307では、通信が途絶したルータノード3の「水位検知情報」は、「水位検知フラグ値」を有効として、「高さ情報」として最大の浸水深を表す値を付加したものとし、通信が途絶したルータノード3の「ルータ位置情報」とともに水害情報集配信サーバ1へ送信される。
【0076】
以上のようにして、センタノード2は、その周辺のルータノード3において異常水位(浸水)が検出された場合、スピーカ29及び警報ランプ30により、周囲に警報を報知して建物B内の住民又は居留者の避難を促すことが出来る。尚、この異常水位報知システムは、一般に使用されている火災報知器のように、実際に異常水位が検出されると、行政の判断を介することなく、自動的に警報が報知されるので、住民又は居留者が迅速な避難判断を行うことが可能となると同時に、行政等の防災機関においてもリアルタイムに地域の状況を把握出来るものである。
【0077】
尚、本実施例では、各リーフノード4は、ルータノード3からの質問信号を受けて、リーフ応答信号を返信する例を示したが、これ以外に、リーフノード4として内部電源(電池)を有するアクティブ型のリーフノード4を使用し、リーフノード4は、質問信号を受けなくても一定の時間間隔で定期的にリーフ応答信号を発信するように構成することができる。この場合、ステップS112において、ルータノード3の質問発信部45が質問信号を発信するというプロセスが省略され、ルータノード3において質問発信部45を省略することもできる。
【0078】
(2.2)水害情報集配信サーバによる水害発生マップ情報の配信
建物Bの周囲では異常水位が発生しセンタノード2が警報を周囲に報知した場合、その建物Bの住民又は居留者は、建物Bから避難を行う必要がある。この場合、建物Bの周囲の異常水位が発生地点や通行可能な道路に関する情報があれば非常に有用である。そこで、本項では、異常水位が発生地点や通行可能な道路に関する情報を示す水害発生マップ情報の配信処理について説明する。
【0079】
図6は、
図1の異常水位報知システムにおける水害情報データベース17及び水害発生マップデータベース18の更新処理を表すフローチャートである。まず、水害情報集配信サーバ1は、センタノード2から「異常水位情報」が送信されてくるまで待機する(S401)。「異常水位情報」は、前述の通り、「水位検知情報」、「ルータ位置情報」及び「ルータID」が含まれた情報である。水害情報集配信サーバ1のサーバ側受信部11は、センタノード2から送信されてくる「異常水位情報」を受信すると、該「異常水位情報」に含まれる「水位検知情報」、「ルータ位置情報」及び「ルータID」と、該「異常水位情報」の受信時刻とを、水害情報データベース17に格納する(S402)。
【0080】
次いで、地図情報取得部12は、公衆通信回線を介して水害情報集配信サーバ1に接続されている地図配信サーバ又は地図データベース10から、該「異常水位情報」に含まれる「ルータ位置情報」の周辺の地図情報を取得する(S403)。ここで、地図データベース10には、国土地理院から提供されている電子国土地図等の電子地図が格納されている。また、「公衆通信回線を介して水害情報集配信サーバ1に接続されている地図配信サーバ」とは、例えば、インターネット上へ配信されている電子地図の配信サーバなどである。
【0081】
次に、水害情報集配信サーバ1の水害発生マップ生成部13は、受信された「水位検知情報」及び「ルータ位置情報」と抽出された地図情報とに基づき、該ルータ位置情報で示される位置の周囲の浸水推定範囲を抽出する(S404)。この浸水推定範囲の抽出は、地図情報の各点の標高データや、予め地図データベース10に格納されたハザードマップデータに基づいて、予め決められたルールに従って行われる。尚、このとき、測定点補正データベース19内に、該「異常水位情報」に含まれた「ルータID」に対する「位置補正に関する情報」がある場合には、浸水推定範囲の抽出の際には、該「位置補正に関する情報」に基づいて補正した「ルータ位置情報」が用いられる。また、「水位検知情報」の水位検知フラグ値が無効値の場合には、その「ルータ位置情報」にあるルータノード3の周辺では異常水位は発生していないことを意味しているので、浸水推定範囲無し(NULL)となる。
【0082】
次いで、水害発生マップ生成部13は、抽出された浸水推定範囲に含まれる道路(車道及び徒歩道、庭園路を含む。)を抽出し、抽出された道路範囲を推定浸水道路範囲とする(S405)。
【0083】
そして、水害発生マップ生成部13は、浸水推定範囲及び推定浸水道路範囲から、地図上に、「ルータ位置情報」が示す位置における水位情報、浸水推定範囲、及び推定浸水道路範囲情報を表示するためのトランザクションデータ(以下「水害発生トランザクションデータ」)を生成し、「異常水位情報」に含まれる「ルータID」と関連づけて、水害マップデータベース18に格納する(S406)。ここで、水害マップデータベース18に、該「ルータID」と同じ「ルータID」に関するレコード(既存レコード)が存在する場合には、そのレコードの水害発生トランザクションデータを、ここで作成された新しい水害発生トランザクションデータに更新する。また、同じ「ルータID」の既存レコードが存在する場合であって、浸水推定範囲無し(NULL)の場合には、当該既存レコードは削除される。このようにして水害マップデータベース18を更新した後、前記ステップS401の動作に戻る。
【0084】
以上の動作により、水害情報データベース17には、逐次各センタノード2から送信されてくる「異常水位情報」が水害情報データベース17に蓄積されるとともに、時事刻々と変化する浸水範囲に関する情報が、地図表示のためのトランザクションデータ(水害発生トランザクションデータ)として水害マップデータベース18に保存されるとともに、水害マップデータベース18の水害発生トランザクションデータはリアルタイムに更新される。
【0085】
図7は、水害発生マップ生成部13により生成される水害発生トランザクションデータを用いて表示される水害発生マップ情報の一例を示す図である。
図7において、「○」「△」「×」で示された点が「ルータ位置情報」が示す位置であり、「○」が浸水無し、「△」が膝下浸水、「×」が膝上以上の浸水の浸水深を表している。また、膝上以上の浸水領域、及び膝下浸水領域が地図上に青色と水色で示され、膝上以上の浸水内の道路範囲が赤色、膝下浸水領域内の道路範囲が橙色で示されている(尚、
図7は白黒濃淡画像であるため、色情報についてはグレースケール変換されている)。また、家のマークは、センタノード2が設置されている建物Bの位置(「ルータID」に含まれる「屋側ノード識別情報」から判別される。)を表している。水害発生トランザクションデータは、地図上に「○」「△」「×」等の記号や浸水領域内の道路線を表示したり、浸水領域を表示したりするためのコマンド・シーケンスである。
【0086】
図8は、
図1の異常水位報知システムにおける水害発生マップ情報の配信処理の動作を表すフローチャートである。水害発生マップ情報の配信は、建物Bにいる住民又は居留者が所持する携帯端末装置5に対して、公衆通信回線6を介して行われる。
【0087】
まず、携帯端末装置5において、ユーザにより、タッチパネル・ディスプレイ71から水害発生マップの表示指示が入力される(S500)。該表示指示が入力されると、マップ配信要求部73は、位置検出モジュール72により自己位置を表す位置情報を検出する(S501)。次いで、マップ配信要求部73は、水害情報集配信サーバ1に対し、公衆通信回線を介して、マップ配信要求を自己位置の位置情報とともに送信する(S502)。
【0088】
水害情報集配信サーバ1は、携帯端末装置5から送信されてくるマップ配信要求及び位置情報を受信すると(S421)、まず、マップ配信部14は、地図情報取得部12により地図データベース10又は公衆通信回線を介して水害情報集配信サーバ1に接続されている地図配信サーバから、位置情報で指定される指定位置を中心とする所定範囲の地図情報(以下「指定位置周辺地図情報」という。)を取得する(S422)。次いで、マップ配信部14は、水害マップデータベース18から、指定位置周辺地図情報に関連する水害発生トランザクション情報を抽出する(S423)。ここで、「指定位置周辺地図情報に関連する水害発生トランザクション情報」とは、指定位置周辺地図情報の範囲内にある地図上の地点に異常水位の発生情報を表示する水害発生トランザクション情報のことである。次いで、マップ配信部14は、抽出された水害発生トランザクション情報に基づき、指定位置周辺地図情報の地図内に水害発生情報を表示した水害発生マップ情報を生成する(S424)。これは、指定位置周辺地図情報に対して、抽出された水害発生トランザクション情報のトランザクションを実行することにより行うことが出来る。そして、マップ配信部14は、生成した水害発生マップ情報を、マップ配信要求及び位置情報を送信してきた携帯端末装置5に対して配信する(S425)。
【0089】
携帯端末装置5において、マップ配信要求に対して水害情報集配信サーバ1から送信されてくる水害発生マップ情報を地図受信部74が受信すると(S503)、地図表示部75は、受信した水害発生マップ情報をタッチパネル・ディスプレイ71に表示する(S504)。タッチパネル・ディスプレイ71に表示される水害発生マップ情報は、例えば、
図7に示したような水害発生マップである。
【0090】
このようにして、建物Bにいる住民又は居留者が、携帯端末装置5から水害発生マップ情報を閲覧することで、住民又は居留者は、建物Bの周辺の水害発生状況をリアルタイムに把握することが出来る。これにより、住民又は居留者は、避難すべきか留まるべきかの判断を的確に行うことが可能となり、また避難する際には、携帯端末装置5で水害発生状況をリアルタイムに確認しながら避難経路を選択することが出来る。
【0091】
(2.3)水害情報集配信サーバにおける広域水位検知情報の集配信
上記(2.1)で説明した異常水位の検出及び報知動作は、センタノード2が設置された建物Bの周辺において異常水位が発生した狭域水位検知情報の検出及び報知を行うものである。一方、建物Bの周囲では異常水位が発生していないが、建物Bのある地域の上流域等の該建物Bのある地域が水害の影響を受けると推定する際の原因となる地域で異常水位が発生した場合、軈て建物Bの周辺地域でも異常水位が発生する可能性が高いと考えられる。従って、建物Bのある地域の上流域も含めた広域水位検知情報の報知を行うことは有用であると考えられる。そこで、本項では、広域水位検知情報の集配信及び報知処理について説明する。
【0092】
図9は、
図1の異常水位報知システムにおける水害注意報の配信処理の動作を表すフローチャートである。最初に、各地の建物Bに設置されたセンタノード2の一つから、水害情報集配信サーバ1へ「異常水位情報」が送信されてくる。前述した通り、「異常水位情報」には、異常水位を検知したルータノード3の「ルータ位置情報」及び「ルータID」、並びに「水位検知情報」が含まれている。水害情報集配信サーバ1の水害注意情報発信部15は、「異常水位情報」を受信すると(S431)、該「異常水位情報」に含まれている「ルータ位置情報」を元に、該「ルータ位置情報」の周辺の所定の範囲、及び該「ルータ位置情報」よりも下流の下流域の地図情報を、地図情報取得部12により取得する。ここで抽出された該「ルータ位置情報」の周辺及び下流域を「水害注意報発令領域」と呼ぶ。次いで、水害注意情報発信部15は、センタノードリスト記憶部20に保存されているセンタノード関連情報の中から、その位置情報が水害注意報発令領域に含まれているセンタノード関連情報を抽出し(S433)、抽出された各センタノード関連情報のネットワーク・アドレスに対して、公衆通信回線6を介して「水害注意報」を送信する(S434)。ここで、「水害注意報」とは、建物Bの上流域で浸水した地域あることを報知する情報であり、警報レベルL1(上述の「〔1〕システム構成」の項を参照)の情報である。
【0093】
水害情報集配信サーバ1から送信されてくる「水害注意報」を受信したセンタノード2の異常報知部22は(S321)、スピーカ29及び警報ランプ30により、建物上流で異常水位が検出されたことを示す「水害注意報」を周囲に報知する(S322)。
【0094】
以上のような動作により、センタノード2が設置された各地の建物Bにおいて、その建物Bのある地域の上流域も含めた広域水位検知情報の報知を行うことが出来る。
【0095】
尚、本実施例では、リーフノード4は、ルータノード3から周囲空間へ無線発信された質問信号を受信し、該質問信号に対してリーフ応答信号を送信する方式(質問応答方式)の例(
図5のステップS111~S113,S211の部分を参照)について説明したが、リーフノード4におけるリーフ応答信号の発信方式については、これ以外に、ルータノード3からの質問信号に依らず、各リーフノード4が所定の時間間隔で間歇的にリーフ応答信号を送信する場合(プッシュ方式)により構成することも出来る。この場合、
図5のステップS111~S113,S211の部分を、例えば、
図10のように変更すればよい。
【0096】
図10においては、リーフノード4は、一定のサイクル時間Tcの間に1回リーフ応答信号を発信する。まず、リーフノード4のリーフノード応答部63は、内部タイマをリセットした後(S211)、送信タイミングTsを決定し(S222)、内部タイマをスタートする(S223)。「送信タイミング」とは、内部タイマがスタートしてからリーフ応答信号を送信するまでの時間Tsであり、0<Ts<Tcの範囲で、乱数によりランダムに決定される。ここで、送信タイミングTsをランダム決定するのは、ルータノード3において、該リーフノード4のリーフ応答信号が他のリーフノード4のリーフ応答信号と衝突するのを回避するためである。内部タイマの計時時刻tが送信タイミングTsに達すると(S224)、リーフノード4のリーフノード応答部63は、リーフIDを含むリーフ応答信号を生成し周囲空間へ無線発信する(S225)。そして、内部タイマの計時時刻tがサイクル時間Tcに達するまで待機した後(S226)、ステップS221に戻る。これにより、1サイクル時間Tcの間に、1つのリーフノード4から1回リーフ応答信号が発信されることになる。
【0097】
一方、ルータノード3においては、平常時にリーフ応答信号を送信してくる近傍のリーフノード4のリーフIDのリスト(リーフリスト)を、予めリーフリスト記憶部43に登録しておく。この状態で、内部タイマをスタートさせて1サイクル時間Tcの間、応答受信部46は、各リーフノード4から送信されてくるリーフ応答信号を受信して、受信したリーフ応答信号に含まれるリーフID及び該リーフ応答信号の受信強度のリスト(受信リーフリスト)を生成する(S111’,S112’)。内部タイマの計時時刻tが1サイクル時間Tcに達すると、水位検知部47は、受信リーフリストを、リーフリスト記憶部43に格納されたリーフリストと照合し、該ルータノード3の近傍の各リーフノード4のうちリーフ応答信号の送信が途絶したものの有無を判定する(S113’)。以下は、
図5と同様、上述したステップS114に続く。このようにして、質問発信部45の質問信号に依らず、近傍の各リーフノード4が1サイクル時間Tc毎に1回ずつ自発的に発信してくるリーフ応答信号によって、リーフ応答信号の送信が途絶したリーフノード4をルータノード3において検出し、異常水位の発生や浸水深を検知することも可能である。
【実施例2】
【0098】
図11は、本発明の実施例2に係る異常水位報知システムの全体構成を表す図である。本実施例の異常水位報知システムにおいては、実施例1と比較すると、新たに中継ノード7が追加されている点が相違している。中継ノード7は、ルータノード3からセンタノード2へルータ信号を送信する際に、送信の中継を行うノードである。中継ノード7は、自己の識別コードである中継ノードIDを記憶する中継ノードID記憶部(図示せず)を備えている。中継ノード7は、ルータノード3や他の中継ノード7から送信されてくるルータ信号を受信すると、該ルータ信号に、中継ノードID記憶部に記憶された中継ノードIDをルーティング情報として付加して、周囲空間へ無線発信する。このとき、ルータ信号に自己の中継ノードIDがルーティング情報として付加されていた場合には、そのルータ信号は廃棄し、周囲空間への無線発信は行わない。これにより、複数の中継ノード7の間でルータ信号が無限循環することを防止する。このように、中継ノード7を導入することにより、各センタノード2は、より広範囲のルータノード3からルータ信号を受信し、より広域における異常水位の発生を報知することが可能となる。特に、山間部の地域では、周囲の山によって無線通信での電波が遠方まで届きにくく、また民家や事業所等の建物も疎らなためセンタノード2をあまり多く設置できないことが多い。このような場合、中継ノード7を用いて1つのセンタノード2でカバーする異常水位検出地域を広げることにより、的確な異常水位の報知を行うことが可能となる。
【実施例3】
【0099】
本実施例では、各ルータノード3と通信する各リーフノード4のリーフ応答信号のRSS U(i, t)からの水位検出を、各センタノード2において行う例について説明する。尚、本実施例における異常水位報知システムの全体構成は、
図1と同様であるとする。
図12は、実施例3に係る異常水位報知システムの機能構成を表したブロック図である。実施例1の
図3と比較すると、センタノード2において新たに水位検知部32が加わった点が相違している。
【0100】
実施例3の異常水位報知システムの動作は、基本的には実施例1と同様であるが、本実施例においては、
図5のステップS115aにおいて、ルータノード3の水位検知部47は、各リーフノード4のリーフ応答信号の(リーフID,RSS,高さ情報)を水位検知情報とし、ステップS115bにおいて、水位検知信号送信部48は、該水位検知情報と、位置検出モジュール41が出力するルータ位置情報と、ルータID記憶部42に記憶されたルータIDとを含むルータ信号を、遠距離通信インタフェース49及び遠距離通信アンテナ50により、周囲空間へ無線送信する。
【0101】
また、
図5のステップS116において、水位検知部47は、水位検知フラグ値を有効とし、CDLIDから抽出される「高さ情報」のうち最も浸水深が大きいものを抽出し、有効な水位検知フラグ値、検出された高さ情報、及び受信された各リーフ応答信号の(リーフID,RSS,高さ情報)の情報を水位検知情報として出力する。そして、水位検知信号送信部48は、この水位検知情報と、位置検出モジュール41が出力するルータ位置情報と、ルータID記憶部42に記憶されたルータIDとを含むルータ信号を、遠距離通信インタフェース49及び遠距離通信アンテナ50により、周囲空間へ無線送信する(S117)。
【0102】
すなわち、本実施例においては、ルータノード3は、各リーフ応答信号のRSSから水位の推定までは行わず、RSSの情報そのものをリーフ応答信号に係るリーフノード4の「高さ情報」と共にセンタノード2へ送信する。
【0103】
センタノード2においては、水位検知部32は、各ルータノード3から送られてくるルータ信号から、該ルータノード3の周囲のリーフノード4のリーフ応答信号のRSSを取得し、該リーフノード4の周囲における水位レベルを検出する。この水位検出については、実施例1のステップS115aで説明した方法と同様である。そして、異常報知部22は、水位検知部32が検出した水位レベルのうち一定のレベル以上(例えば、「浸水」を表す値以上)のものがあった場合、又はルータ信号内の「水位検知情報」の水位検知フラグ値が有効のものがあった場合には、異常水位の発生をスピーカ29により警報音及び警告音声で音声報知するとともに、警報ランプ30を点灯又は点滅させて、異常水位の発生を周囲に報知する。
【0104】
このように、各リーフノード4の周囲における水位レベルの検出を、それぞれのルータノード3で行うのではなく、センタノード2で集中して行うように構成することも可能である。
【0105】
最後に、ルータノード3において受信されるリーフ応答信号のRSS U(i, t)と水位レベルとの関係について説明する。リーフノード4からルータノード3へリーフ応答信号が送信される場合において、リーフノード4の下方に水面が存在する場合を考える。ここでは、原理的な説明を容易にするため、水面は波が全くない静水面であると仮定する。この場合、リーフ応答信号の伝達経路は、
図13に示したようになる。
図13において、リーフノード4を送信点A、ルータノード3を受信点Bとし、点A,Bは静水面上にあるとして、
図13に示した様に、点A,Bを含む鉛直面内に、水平向きにx軸、鉛直向きにy軸をとったx-y座標系を設定する。送信点Aの座標を(0, y
A)、受信点Bの座標を(x
B, y
B)とし、水面をy=y
0とする。送信点Aから発射される電磁波(リーフ応答信号)は、放射状に広がる球面波であると仮定したとき、受信点Bに到達する電磁波の経路は、(1) 送信点Aから受信点Bへ直接至る経路p
AB、(2) 送信点Aから水面上の反射点Cで反射され、受信点Bへ至る経路p
ACB、(3) 送信点Aから水面上の屈折点Dで屈折して水中へ進入し、水底面上の反射点Eで反射され、水面上の屈折点Cで屈折し、受信点Bへ至る経路p
ADECB、…などが考えられる。今想定している電磁波の周波数は、RFIDやBluetooth(登録商標)などで使用される周波数帯(900MHz~数GHz)であり、この周波数帯においては、水面での電磁波の反射率が大きく、水中での電磁波の減衰も大きいと考えられるので、ここでは、経路p
AB, p
ACBのみを考えることとする。水面から送信点Aまでの距離をy
A0、水面から受信点Bまでの距離をy
B0、h
BA=y
B-y
Aとする。このとき、経路p
ABの経路長l
AB、経路p
ACBの経路長l
ACB、経路p
ACBの反射点Cのx座標x
C、反射点Cの入射・反射角θ
C、及び受信点Bにおいて経路p
AB,p
ACBが成す角θ
Bは、其々、次のように表される。
【0106】
【0107】
また、経路p
AB,p
ACBを通って受信点Bに入射される電磁波の電場成分を、其々、E
1, E
2とし、電場E
1, E
2のx-y平面内の成分(p偏光成分)をE
1p, E
2p、x-y平面に垂直な方向の成分(s偏光成分)をE
1s, E
2sとし、E
1p, E
2p, E
1s, E
2sを、其々、次のように表す(
図14参照)。
【0108】
【数2】
ここで、i
1, i
2は、其々、電場E
1, E
2の向きを表す単位ベクトル、i
zはx-y平面に垂直な向きの単位ベクトル、ωは電磁波の角周波数、φ
1, φ
2は、其々、受信点Bにおける送信点Aに対する電磁波E
1, E
2の位相シフト量である。
【0109】
このとき、受信点Bにおけるp偏光電場及びs偏光電場のエネルギー密度の時間平均UEp
(ave), UEs
(ave)は、其々次のように表される。
【0110】
【0111】
また、電磁波の波長をλとすると、位相シフト量φ1, φ2は次のように表される。
【0112】
【0113】
今、送信点Aから発射される電磁波は球面波であると仮定しているので、送信点Aからの光路長をlとすると、電磁波のエネルギー密度は1/l2に比例して減衰する。従って、送信点Aにおける電磁波の電場成分のp偏光,s偏光の大きさをE0p, E0sとすると、E10p, E20p, E10s, E20sは、其々次のように表される。
【0114】
【数5】
ここで、R
p, R
sは、其々、p偏光,s偏光の水面における強度反射率であり、水の屈折率をn(周波数2.4GHzではn=8.94(水温10℃))とすると次のように表される。
【0115】
【0116】
以上の各式により、受信点Bにおいて受信される電磁波の電場成分の相対エネルギー密度(受信点Bの電場エネルギー密度を送信点Aの電場エネルギー密度で除した値)の時間平均U
Ep
(ave), U
Es
(ave) と水面の高さy
A0との関係を計算すると、
図15,
図16のようになる。ここで、h
BA=1mとし、
図15ではx
B=1m、
図16ではx
B=10mとしている。
図15,
図16より、水面が送信点Aに近づくにつれて、直接波と反射波との干渉が大きくなるため、受信点Bにおいて受信される電磁波の電場成分の相対エネルギー密度のy
A0の変化による振動が大きくなる。実際の水面は疑似ランダムに振動しているため、水面が送信点Aに近づくにつれて、受信点Bにおける電磁波の受信強度の分散が大きくなる現象として観測される。
【0117】
図17は、実験室において実際にアクティブ型ビーコンを用いて、送信点Aと水面との距離の変化による受信強度の変化を測定した結果である。
図17において横軸は時間、縦軸は受信強度(dB)を表す。また、
図18は、
図17の測定の測定条件を示す図である。測定は、水槽内にポールを設置して、125cm間隔で高さを変えてアクティブ型ビーコンを設置し、水槽に水を注水しながら水槽外部の受信機で各ビーコンから送信される信号の受信強度を観測することによって実施した。
図17の(a),(b),(c)の測定結果は、其々、
図18の(a),(b),(c)のビーコンからの信号の受信強度を表している。
【0118】
図17より、水槽内に水が注水され始めると、受信強度の分散が大きくなり始め、水面が各ビーコンに接近するにつれて受信強度の分散が大きくなる。これは、水面がビーコンに接近するにつれて、ビーコンから受信アンテナへ伝搬する直接波と反射波との干渉の影響が大きくなり(
図15,
図16)、水面の揺れによる受信強度の変化が大きくなるためであると解される。水面がビーコンにさらに接近すると、~10cm以下まで接近した辺りから、受信強度の平均値が徐々に低下し始めるとともに、受信信号の有効サンプリング数(受信に成功した信号の数)が低下し始める。これは、水面がビーコンに非常に近くまで近接すると、反射波の水面への入射角がブリュースタ角に近づくため、p偏光波の反射があまり生じなくなり、その分だけ全体の受信強度が低下するためであると解される。
図19は、周波数f=2.4GHzにおける入射角θ
Cに対する水の強度反射率R
p, R
sの変化を表す図である。
図19より、周波数f=2.4GHzにおいては、空気-水間の反射のブリュースタ角は約84度であり、入射角θ
Cが60度を超えた付近からp偏光波の反射率は急激に低下していることが分かる。
【0119】
そして、ビーコンが水没すると、受信強度は急激に低下する。これは、水中のビーコンから発射された電波が水面で反射及び屈折されるためであると解される。尚、周波数f=2.4GHzにおいては屈折率が大きいため、水中から水面に入射される電磁波の屈折角は、ほぼ90度となり、屈折波の殆どは水面に沿って伝搬するため、水面から離れた位置にある受信アンテナへ到達する電波強度は大きく弱まると考えられる。さらに、水没後にビーコンの水深が大きくなると、水中のビーコンから発射された電波は水中で大きく減衰するため、受信強度はさらに急激に低下して、通信途絶に至る。
【0120】
従って、受信点(ルータノード3)において、送信点(リーフノード4)からの信号の受信強度の分散の増加を観測することにより、浸水が始まったことを検出することが可能であることが分かる。また、受信強度の平均値の低下を観測することによって、送信点(リーフノード4)が近接又は水没したことを検出することが可能であることが分かる。
【実施例4】
【0121】
図20は、本発明の実施例4に係る異常水位報知システムの全体構成を表す図である。本実施例の異常水位報知システムは、基本的に実施例1のものと同様の構成であるが、携帯端末装置5が、ルータノード3としても機能するように構成されている(以下、「携帯端末装置5,3」と記す)。すなわち、携帯端末装置5,3は、
図3に示したタッチパネル・ディスプレイ71、位置検出モジュール72、マップ配信要求部73、地図受信部74、地図表示部75、回線通信インタフェース76、回線通信アンテナ77の機能に加え、
図21に示すように、位置検出モジュール41、ルータID記憶部42、リーフリスト記憶部43、初期化部44、初期化スイッチ44a、質問発信部45、応答受信部6、水位検知部47、水位検知信号送信部48、遠距離通信インタフェース49、遠距離通信アンテナ50、近距離通信インタフェース51、近距離通信アンテナ52の機能も併せ持っている。さらに、携帯端末装置5,3は、水位検知部47が、水位検知を示す値が有効とされる水位検知情報を生成した場合に、異常水位の発生を音声又は表示により周囲に報知する異常報知部78と、スピーカ79とを備えている。ここで、携帯端末装置5としては、スマートフォンやタブレットを利用することができる。
【0122】
このように、携帯端末装置5,3をルータノード3としても機能させることで、住民又は居留者が携帯端末装置5,3を常時携帯していれば、住民又は居留者は、異常水位報知システムがカバーしている範囲内では、どこに居ても、リーフノード4からの信号を受けて異常水位の発生をリアルタイムで知ることが出来、住民又は居留者の迅速な避難につながる。
【0123】
尚、本実施例では、ルータノード3のうち、携帯端末装置5,3にのみ異常報知部78及びスピーカ79を備えた構成を示したが、総てのルータノード3に異常報知部78及びスピーカ79を備えた構成とすることもできる。
【実施例5】
【0124】
図22は、本発明の実施例5に係る異常水位報知システムの全体構成を表す図である。本実施例5に係る異常水位報知システムは、基本的には実施例4の異常水位報知システムと同様であるが、各ルータノード3及び各センタノード2は、アドホック・ネットワーク(マルチホップ無線ネットワーク)によって接続された点が相違している。この場合、ネットワーク・コーディネータの役割は、いずれかのセンタノード2が受け持つこととする。このようなアドホック・ネットワークによる構成は、例えば、Bluetooth(登録商標)などにより容易に実現できる。このように、各ルータノード3及び各センタノード2をアドホック・ネットワークによって接続することにより、各ルータノード3及び各センタノード2は中継ノード7としての機能も併せ持つこととなる。従って、仮に、一部のルータノード3又はセンタノード2が水没等によって通信が途絶した場合であっても、マルチパス・ルーティング・プロトコルによって、通信が途絶していないルータノード3又はセンタノード2を経由してネットワーク通信を継続して行うことが可能となり、システム全体の通信のロバスト性を向上させることが出来る。
【実施例6】
【0125】
図23は、本発明の実施例6に係る異常水位報知システムの全体構成を表す図である。本実施例6に係る異常水位報知システムは、基本的には実施例5の異常水位報知システムと同様であるが、センタノード2と屋側ルータノード3aを合体させた点が相違している。すなわち、
図23におけるセンタノード2,3は、屋側ルータノード3aの各機能構成も併せ持っている。このようにすることで、ネットワーク構成を簡単にすることができ、より安価にシステムを導入することが可能となる。尚、センタノード2,3としては、現在普及しつつあるスマートメータを利用することも可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 水害情報集配信サーバ
10 地図データベース
11 サーバ側受信部
12 地図情報取得部
13 水害発生マップ生成部
14 マップ配信部
15 水害注意情報発信部
16 回線通信インタフェース
17 水害情報データベース
18 水害マップデータベース
19 測定点補正データベース
20 センタノードリスト記憶部
2 センタノード
21 センタノード受信部
22 異常報知部
23 異常水位情報送信部
24 回線通信インタフェース
25 遠距離通信インタフェース
26 遠距離通信アンテナ
27 近距離通信インタフェース
29 スピーカ
30 警報ランプ
31 ルータリスト記憶部
32 水位検知部
3 ルータノード
3a 屋側ルータノード
3b 周辺ルータノード
41 位置検出モジュール
42 ルータID記憶部
43 リーフリスト記憶部
44 初期化部
44a 初期化スイッチ
45 質問発信部
46 応答受信部
47 水位検知部
48 水位検知信号送信部
49 遠距離通信インタフェース
50 遠距離通信アンテナ
51 近距離通信インタフェース
52 近距離通信アンテナ
4 リーフノード
61 リーフID記憶部
62 リーフノード受信部
63 リーフノード応答部
64 近距離通信インタフェース
65 近距離通信アンテナ
5 携帯端末装置
71 タッチパネル・ディスプレイ
72 位置検出モジュール
73 マップ配信要求部
74 地図受信部
75 地図表示部
76 回線通信インタフェース
77 回線通信アンテナ
6 公衆通信回線
7 中継ノード
B 建物