(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】蓄電デバイスモジュール及び蓄電デバイスホルダー
(51)【国際特許分類】
H01G 2/02 20060101AFI20220209BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20220209BHJP
H01G 11/82 20130101ALI20220209BHJP
【FI】
H01G2/02 101D
H01G11/10
H01G2/02 101E
H01G11/82
(21)【出願番号】P 2018068444
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148851
【氏名又は名称】鎌田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】井手上 敬
(72)【発明者】
【氏名】大原 均
(72)【発明者】
【氏名】山谷 浩司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 道広
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-110080(JP,A)
【文献】特開2005-094942(JP,A)
【文献】登録実用新案第3189898(JP,U)
【文献】特開2014-096536(JP,A)
【文献】特開2014-229725(JP,A)
【文献】特開2015-095594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/02
H01G 11/10
H01G 11/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスホルダーにおいて、
蓄電デバイスが収納される蓄電デバイス収納部と樹脂が配置されるための樹脂収納部とが、隣接して備えられ、
前記樹脂収納部と前記蓄電デバイス収納部と、が貫通孔を介して空間的に繋がっている
ことを特徴とする蓄電デバイスホルダー。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスホルダーにおいて、
前記蓄電デバイス収納部は、対向する前記樹脂収納部の間に配置される
ことを特徴とする蓄電デバイスホルダー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイスホルダーにおいて、
前記樹脂収納部の周囲に複数の前記蓄電デバイス収納部が備えられる
ことを特徴とする蓄電デバイスホルダー。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の蓄電デバイスホルダーにおいて、
前記蓄電デバイス収納部と前記樹脂収納部との境界には、実装される蓄電デバイスの頭頂部より高い所定高さまで設けられたリブを有する
ことを特徴とする蓄電デバイスホルダー。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の蓄電デバイスホルダーと、
前記蓄電デバイス収納部に収納された蓄電デバイスと、
前記樹脂収納部に配置された樹脂と、を備え、
前記樹脂が前記貫通孔を介して前記蓄電デバイスと接触することで、前記蓄電デバイスホルダーに前記蓄電デバイスが固定されている
ことを特徴とする蓄電デバイスモジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の蓄電デバイスモジュールにおいて、
前記蓄電デバイスと前記樹脂収納部の側壁外面とが当接する位置は、前記蓄電デバイスの高さ寸法を1とすると、頭頂部側1/2以内の範囲となるように、前記側壁外面が構成される
ことを特徴とする蓄電デバイスモジュール。
【請求項7】
蓄電デバイスモジュールの製造方法において、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の蓄電デバイスホルダーに蓄電デバイスを実装する工程と、
前期蓄電デバイスホルダーと前記蓄電デバイスとを樹脂で固定する工程と、を有する
ことを特徴とする蓄電デバイスモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃特性や耐振動性及び放熱特性を向上させた蓄電デバイスモジュールや蓄電デバイスホルダー等に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用途等に広く用いられている複数のコンデンサを配線基板上に実装して構成されるコンデンサモジュールに関する技術として、従来のコンデンサモジュールは、配線基板に設けた実装用の孔にコンデンサの一対のリード線を嵌め込んだ後、裏面側で半田付けすることにより配線基板に設けられた配線回路と電気的な接続を行い、複数のコンデンサを一枚の配線基板上に実装する構成が知られている。
【0003】
そして、このような従来のコンデンサモジュールでは、配線基板に設けた取り付け用の孔を介してこのようなコンデンサモジュールを被使用機器に取り付けて使用するものであるので、その取り付け状態によっては複数のコンデンサの質量が全て一枚の配線基板に加わるために配線基板が歪んで変形したり、また、使用状況によって特に振動が加わった際に配線基板の取り付け用の孔や配線基板本体が割れたり、あるいはコンデンサの一対のリード線を配線基板に設けた配線回路と電気的に接続した半田付け部にクラックが入るという問題があることが知られている。
【0004】
このような問題を解決する手段の一案として、下記特許文献1には、配線基板に重量的な負荷が加わることがなく、防爆弁が作動してもショート不良を発生することがない信頼性の高いコンデンサモジュールを提供することを目的とする発明が記載されている。
【0005】
この文献によれば、複数の凹部が上面に設けられた取り付け板と、この取り付け板の凹部内に少なくとも一部が保持された複数のコンデンサと、このコンデンサから引き出されたリード線を夫々電気的に接続した配線基板からなり、上記取り付け板と配線基板がコンデンサを介して相反する方向に配設され、取り付け板を介して被使用機器に取り付けるようにした構成のものであり、これにより、複数のコンデンサの重量は全て取り付け板で支えるようになるために配線基板には一切重量的な負荷がかからないようになって配線基板の破壊が発生しなくなり、信頼性の高いコンデンサモジュールを提供することができるという作用効果を有するものとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車載用途等に用いられる蓄電デバイスモジュールは、高い耐振動性が求められる。従来技術のように、複数の蓄電デバイスを複数の収納筒部を設けたホルダーで蓄電デバイスの胴部を単に挟持して保持する蓄電デバイスモジュールでは、強い振動や衝撃を受けた場合に蓄電デバイスの素子に接続されたリード端子が破断するという不具合が生じることが懸念される。また、仮に該収納筒部に従来構成のリブやスリットを設けていても、固定力が十分ではなく、その効果は限定的である。また、収納筒部内に樹脂を充填し蓄電デバイスを固定する手段が知られているが、収納筒部内での樹脂の偏りや、樹脂の粘度の調整が困難であるなどの問題があり信頼性は高いとはいえない。
【0008】
本発明は上述の問題点に鑑み為されたものであり、耐衝撃特性や耐振動性及び放熱特性を向上させた蓄電デバイスモジュールや蓄電デバイスホルダー等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の蓄電デバイスホルダーは、蓄電デバイスが収納される蓄電デバイス収納部と樹脂が配置されるための樹脂収納部とが、隣接して備えられ、樹脂収納部と蓄電デバイス収納部と、が貫通孔を介して空間的に繋がっていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の蓄電デバイスホルダーは、好ましくは蓄電デバイス収納部が、対向する樹脂収納部の間に配置されるものとし、さらに好ましくは樹脂収納部の周囲に複数の蓄電デバイス収納部が備えられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
耐衝撃特性や耐振動性及び放熱特性を向上させた蓄電デバイスモジュールや蓄電デバイスホルダー等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】複数の蓄電デバイスが蓄電デバイスホルダーに実装された蓄電デバイスモジュールを斜めから観察した状態において説明する斜視図である。
【
図2】蓄電デバイスを取り外した状態の蓄電デバイスホルダーのみの構成を斜め上方から観察して説明する図である。
【
図3】一部の蓄電デバイスについて実装を解除した状態の蓄電デバイスモジュールをリード端子側(底面側)から観察して説明する概要図である。
【
図4】一部の蓄電デバイスについて実装を解除した状態の蓄電デバイスモジュールをリード端子側(底面側)から観察して説明する概要図である。
【
図5】一部の蓄電デバイスについて実装を解除した状態の蓄電デバイスモジュールをリード端子側(底面側)から斜視観察して説明する概要図である。
【
図6】樹脂充填用凹部への樹脂充填時の樹脂の配置をガイドするとともに蓄電デバイスホルダーの構造強度強化へ寄与するリブについて説明するための平面図である。
【
図7】蓄電デバイスの配置状況とそれに伴って形成される下部空間の概要を説明するために底面側(リード端子側)を斜め下方から観察した状態を説明する図である。
【
図8】蓄電デバイスの配置状況とそれに伴って形成される下部空間の概要を説明するために底面側(リード端子側)を斜め下方から観察した状態を説明する図である。
【
図9】樹脂充填用凹部を拡大して説明する斜視図であり、蓄電デバイスホルダーのみの図面であって蓄電デバイス及び樹脂は示していない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態で説明する蓄電デバイスホルダーは、複数の蓄電デバイスの頭部周囲を保持実装するための収納部と、樹脂を収納する樹脂収納部と、をそれぞれを有するホルダーであって、当該樹脂収納部に充填した樹脂が側壁に設けられたスリットから侵出して蓄電デバイスと密着する。これにより、ホルダーと蓄電デバイスとが強固に固定された蓄電デバイスモジュールが実現されるものとなる。さらに、樹脂収納部の周囲に複数の蓄電デバイス収納部を備えることで、一箇所の樹脂収納部に配置した樹脂で、複数の蓄電デバイスを固定することが可能となる。
【0014】
また、本実施形態の蓄電デバイスの収納部は、筒状のように蓄電デバイス頭部周囲を閉塞するものではなく、蓄電デバイスの頭部付近の側面4カ所とホルダーとを当該スリットを介した樹脂で固定することができるので、高密度に実装でき蓄電デバイスモジュールの小型化が可能となる。
【0015】
また、ホルダーの収納部に配置された蓄電デバイスは、当該蓄電デバイスの周囲側面頭部付近のみ4カ所で挟持される事となるので、一般的に蓄電デバイスが最も発熱する側面中心部付近においてホルダーは接触せず露出された状態となる。これにより、当該発熱部位の空冷による熱循環を阻害することなく放熱効果が向上することが期待できる。
【0016】
また、本実施形態で説明する蓄電デバイスホルダーは、蓄電デバイスをx軸方向及びy軸方向にそれぞれライン状に揃えて配置することができるので、x軸方向及びy軸方向のそれぞれの方向で各ライン間に空気の通り道が確保されることから放熱効果が向上することが期待できる。
【0017】
さらに、本実施形態で説明する蓄電デバイスホルダーは、樹脂として例えば接着剤を使用することにより、さらに強固に固定・実装できるものとなる。そして、好ましくはホルダー上部には、蓄電デバイスが配列される上記x軸とy軸とに斜め45°配向方向において、湾曲形状の複数のリブが当該斜めに湾曲ライン状に設けられている。このリブにより、蓄電デバイスホルダーの耐久性及び強度が向上されるだけではなく、樹脂充填時に樹脂が蓄電デバイス頭部に漏れ出さないよう壁の機能を果たしていることにより、樹脂の確実な充填作業がより容易に遂行可能となる。当該リブによる壁の高さは樹脂充填時に樹脂が周囲へ拡散されない程度の所定の高さとできる。蓄電デバイスが、例えばキャパシタの場合にはその頭頂部に樹脂が付着すると安全弁の作動に支障をきたすことも懸念されるが、このような懸念を払拭できる。
【0018】
また、蓄電デバイスの頭頂部に設けられている安全弁及びリード端子付け根の封口ゴム部を樹脂で覆うことなくホルダー及び樹脂による固定が可能である。このため安全弁の動作を阻害することもなく蓄電デバイスの経時変化に伴う封口ゴム部を介してのガスの放出を阻害することもなく、蓄電デバイスの寿命や信頼性に悪影響を与えることなく多数の蓄電デバイスを高密度で実装・保持することが可能となる。そこで、以下に図面に基づいてさらに詳細に説明する。
【0019】
図1は、複数の蓄電デバイス1200が蓄電デバイスホルダー1100に実装された蓄電デバイスモジュール1000を斜めから観察した状態において説明する斜視図である。
図1において、蓄電デバイス1200はその頭頂部1210が露出された状態で、蓄電デバイスホルダー1100の蓄電デバイス収納部1110に収納されている。蓄電デバイス1200は典型的にはキャパシタであってもよい。
【0020】
図1に示すように、各収納部1110及び蓄電デバイス1200は、図中x軸方向及びy軸方向に各々ラインを形成した状態で順次にかつ整然と配列されている。通常は円筒形状であることが多い蓄電デバイス1200を
図1のように配列すると、蓄電デバイス1200で囲まれた大凡ひし形の隙間が形成されるものとなるが、当該隙間に相当する空間には、樹脂充填用凹部1120が設けられている。
【0021】
従って、
図1から理解できるように、x軸方向及びy軸方向に対して斜め45°配向された図中p方向及びq方向として示される斜め方向においては、蓄電デバイス1200と樹脂充填用凹部1120とが交互に配置されるものとなる。
【0022】
さらに、
図1から理解できるように、一つの蓄電デバイス1200に着目すれば、その周囲には四つの樹脂充填用凹部1120が隣接配置されていることになり、当該四つの樹脂充填用凹部1120の各一つの壁と当該一つの蓄電デバイス1200とが接触して仮保持されるものとなる。すなわち、各蓄電デバイス1200は、その周囲に隣接配置された四つの樹脂充填用凹部1120を形成する壁のうち最も近い壁計四つとそれぞれ当接して、頭頂部1210の周囲側壁四カ所で仮保持されている。
【0023】
また、
図2は、蓄電デバイス1200を取り外した状態の蓄電デバイスホルダー1100のみの構成を斜め上方から観察して説明する図である。
図2に示すように、蓄電デバイスホルダー1100の四隅にはネジ止め用のネジ穴が設けられており、回路基板等にネジ止め可能に構成されているがこれに限定されるものではない。
【0024】
図2において、複数の蓄電デバイス収納部1110はx軸方向及びy軸方向にそれぞれライン状に配置されているが、当該蓄電デバイス収納部1110は、その隙間に形成されている樹脂充填用凹部1120によって結果的に形成されているものと説明することも可能である。
【0025】
すなわち、
図2から理解できるように、樹脂充填用凹部1120はその上部から樹脂や接着剤を充填可能に上面が開放された略四角柱の器状に形成されている。そして、当該樹脂充填用凹部1120を形成する四側面の一つによって、かつ樹脂充填用凹部1120が四つ正方形状に配列されることでその中央に蓄電デバイス収納部1110が構成されているものと理解できる。
【0026】
また、
図2に示すように、樹脂充填用凹部1120を構成する四つの側壁には、それぞれ充填された樹脂が蓄電デバイス1200と接触するための貫通孔1130が設けられている。
図2においては、当該貫通孔1130は、縦長のスリット形状を呈しているがこれに限定されるものではなく、任意形状の貫通孔1130とすることができる。また、
図2では、各樹脂充填用凹部1120を構成する四つの側壁全てがそれぞれ縦長スリット形状の貫通孔1130を備えるものとして説明しているが、いずれか任意所定の側壁にのみ貫通孔1130を設ける構成とすることもできる。
【0027】
また、
図2において、樹脂充填用凹部1120を構成する四つの側壁の外面、すなわち蓄電デバイス1200と接触する外面は、それぞれ円筒形状の蓄電デバイス1200の周囲にフィットするように湾曲した側壁とされているが、この形状に限定されるものではなく、任意の形状としてもよい。
図2に示すような蓄電デバイス1200の周囲にフィットするように湾曲した側壁とすることにより、より安全かつ確実に大きな面積で蓄電デバイス1200と接触することが可能となるので、仮固定が容易となるだけではなく、縦長スリット状の貫通孔1130も設けやすくなる。さらに、縦長スリット状の貫通孔1130により、蓄電デバイス1200の周壁上方において高さ方向に延伸された樹脂密着部位を形成できるので、かつ周囲四カ所に形成できるので、確実な固定実装が可能となり、耐振動性や耐衝撃性の向上が期待できるものとなる。
【0028】
ここで、
図9は、樹脂充填用凹部1120を拡大して説明する斜視図であり、蓄電デバイスホルダー1100のみの図面であって蓄電デバイス1200及び樹脂は示していない。蓄電デバイスホルダー1100は、
図9に示すようにハッチングで表した部分(貫通孔1130の上部にあたる部分)が開放空間とされて、切り欠き部1135とされていることがさらに好ましい。ここで、当該ハッチングは、その箇所を示すためのマーキングであって何かの物質や素材がそこに存在することを示すものではないことに留意されたい。すなわち、蓄電デバイスホルダー1100の構成としては、
図9で示すハッチングをした部分に、その構成材料等が一切存在しないことがさらに好ましいということである。このように切り欠き部1135を貫通孔1130の上部に設けることにより、樹脂充填が容易になり、また蓄電デバイスホルダー1100に蓄電デバイス1200を挿入した時に、貫通孔1130越しに蓄電デバイス1200の実装具合を頭頂部1210側から視認し易くなる。
【0029】
図3及び
図4は、一部の蓄電デバイス1200について実装を解除した状態の蓄電デバイスモジュール1000をリード端子1230(1),1230(2)側(底面側)から観察して説明する概要図である。また、
図5は、一部の蓄電デバイス1200について実装を解除した状態の蓄電デバイスモジュール1000をリード端子1230(1),1230(2)側(底面側)から斜視観察して説明する概要図である。リード端子1230(1),1230(2)は以下において適宜リード端子1230と総称する。また、
図3(b)で太線で囲んでマーキング記載しているガイド部1125は、下方が広がったテーパ状になっており、蓄電デバイス1200を上方へ挿入ガイドする役割がある。また、樹脂充填用凹部1120に設けられたスリット状の貫通孔1130は、ガイド部1125の領域内にまでは延伸されていない。仮にガイド部1125の領域まで貫通孔1130が延伸されているとすれば、蓄電デバイス1200と、ガイド部1125にまで延伸された貫通孔1130と、の間に隙間が生じてしまい(ガイド部1125はテーパ状である)、樹脂の漏れが生じることが懸念される。
【0030】
図3乃至
図5において、リード端子1230は、不図示の回路基板等にそれぞれハンダ付されて電気が供給されたり供給したりするものとしてもよく、当該不図示の回路基板に蓄電デバイスホルダー1100がネジ止め等固定実装されるものとしてもよい。
【0031】
そして、
図3乃至
図5から理解できるように、樹脂充填用凹部1120を構成する四つの側壁の外面は、蓄電デバイス1200の円筒側面に完全にフィット(面接触)するものではなく、辺縁部で縦方向に接触(線接触)するものとしてもよい。
図3乃至
図5に示す樹脂充填用凹部1120を構成する四つの側壁のうち、一つの側壁の外面に着目すれば、外面の二つの辺縁部(両端二本の縦辺縁部を構成する線)で高さ方向に蓄電デバイス1200と接触するとともに、二つの辺縁部の中央間において縦長スリット状の貫通孔1130により樹脂で固定される。このように、各蓄電デバイス1200は周囲に配置された四つの樹脂充填用凹部1120の各側壁外面によって、保持され固定されるものとしてもよい。また、
図4から理解できるように、挟持される蓄電デバイス1200と樹脂充填用凹部1120を構成する側壁の外面とが当接する位置は、蓄電デバイス1200の高さの頭頂部側1/2以内の範囲となるように樹脂充填用凹部が構成されている。具体的には、蓄電デバイス1200がその典型例であるキャパシタである場合には、最も発熱する部位はキャパシタの高さ寸法を1とした(但しリード端子長さは含まない)ときに1/2すなわち中央部となることから、当該中央部近辺及びその下方部位は、当該側壁外面と当接しないようにして露出させて冷却効率を維持させることがより好ましい。
【0032】
また、
図6は、樹脂充填用凹部1120への樹脂充填時の樹脂の配置をガイドするとともに蓄電デバイスホルダー1100の構造強度強化へ寄与するリブ1140について説明するための平面図である。
図6からも理解できるように、x軸方向とy軸方向とにそれぞれライン状に蓄電デバイス収納部1110が直線配置され、それぞれ複数のラインを形成していることは既に説明した。
【0033】
そして、
図6において、当該複数の蓄電デバイス収納部1110の配列隙間に該当する空間に、樹脂充填用凹部1120が配置されている。
図6に示すように、樹脂充填用凹部1120は上面が開放された略四角柱の形状を有しており、その側壁四面はそれぞれ充填樹脂が蓄電デバイス1200と密着または/および接着するための貫通孔1130が設けられ、貫通孔1130は典型的には縦長スリット状である。
【0034】
また、
図6において、紙面左上から紙面右下方向の斜め方向に複数の第一リブ1140(1)が、ちょうど蓄電デバイス収納部1110及び樹脂充填用凹部1120の間を仕切るように上方(紙面手前側)に所定高さだけ突出してかつ交互に湾曲して設けられている。同様に、紙面右上から紙面左下方向の斜め方向に複数の第二リブ1140(2)が、ちょうど蓄電デバイス収納部1110及び樹脂充填用凹部1120の間を仕切るように上方(紙面手前側)に突出してかつ交互に湾曲して設けられている。第一リブ1140(1)及び第二リブ1140(2)は、総称して適宜リブ1140と称する。
【0035】
リブ1140は、樹脂充填用凹部1120に充填される樹脂が隣接される蓄電デバイス収納部1110等へはみ出したりこぼれたりすることを防止する仕切り壁及びガイドの機能を有する。
【0036】
仮に上方へ任意所定高さだけ突出した仕切り壁状のリブ1140が存在しなければ、樹脂充填用凹部1120に充填される樹脂が、充填作業時等に隣接箇所にあふれ出したりする事態も懸念されるため、極めて精緻かつ精確な充填量制御及び充填位置制御が必須となる。しかし、リブ1140により仕切り壁機能を有するので、ある程度の制御誤差も許容範囲とされることから、現実の生産現場等におけるスループット及び生産性が向上するものとなる。
【0037】
また、リブ1140は、蓄電デバイスホルダー1100の構造強化の観点からも大きな寄与をするものとなる。すなわち、収納される蓄電デバイス1200の頭頂部1210よりも上方に張り出した網目状壁構成のリブ1140によって、当該上方にまさしく骨組みが形成されるものとなるので、これが筋交いのようになって蓄電デバイスホルダー1100の形状保持強度が大きく向上するものとなる。さらに、蓄電デバイスホルダー1100の最外周壁においてもリブ1140と同一高さまで上方に張り出した仕切り壁構成を有することで、蓄電デバイスホルダー1100全体の形状保持強度が大きく維持される。
【0038】
さらにリブ1140は、仕切り壁状であってある程度の厚さを有するが、バルクではない網目骨組状であることから全体として軽量化に寄与するものとなり、かつ蓄電デバイス1200の頭頂部1210が空冷等されるための空間及び空気の通過・換気スペースを保持できるものとなる。さらに、
図6において、リブ1140は、少し湾曲した波状に延伸されるものとすることにより、その形状強度がさらに増大するものとなり、かつ省スペース化を実現可能となる。
【0039】
すなわち、当該少し湾曲した波状形状は、
図6の視野観察から理解できるように、蓄電デバイスホルダー1100のスペースを広げるように少し樹脂充填用凹部1120側に膨らんだものである。これにより、樹脂充填用凹部1120の容積を少し低減させる一方で蓄電デバイスホルダー1100のスペースを増大させるものとできる。換言すれば、同一の蓄電デバイス収納部1110のスペースを確保する場合には、樹脂充填用凹部1120の容積を低減させる相当分だけ全体の容積を低減させることにつながる。
【0040】
また、
図6に明示しているように、蓄電デバイスホルダー1100の辺縁部においては、1/2形状(略三角形の形状)の樹脂充填用凹部1120が設けられるものとできる。そしてこの場合においても、蓄電デバイス収納部1110との間の壁には貫通孔1130が配置されることが好ましい。
【0041】
図7と
図8とは、蓄電デバイス1200の配置状況とそれに伴って形成される下部空間の概要を説明するために蓄電デバイスモジュール1000の底面側(リード端子1230側)を斜め下方から観察した状態を説明する図である。
図7及び
図8から理解できるように、蓄電デバイス1200はその側面の頭頂部1210近辺において蓄電デバイスホルダー1100(及び貫通孔1130から侵出した樹脂)に保持されるものとなるので、側面の中央付近や底部近辺は蓄電デバイスモジュール1000に何ら保持されるものではなく露出されている。
【0042】
このため、特に発熱部位である側面の中央付近で空冷により冷却されることが容易であり、かつ
図7、
図8に示すように空気の通過経路がライン状に確保されるものとなるので空冷効率が高いものとなる。
【0043】
すなわち、蓄電デバイス1200の配置が一直線状であって複数のライン状に配置されることにより、当該ライン間にも一直線状の空間が見通せるものとなり、空冷に大きく寄与するものとなる。しかも当該見通せる空間箇所は、主たる発熱部位である蓄電デバイス1200の側面中央付近及びその下部であるため、冷却機能は極めて高いものとなる。なお、ここでいうところの蓄電デバイス1200の露出とは、蓄電デバイスホルダー1100や樹脂等に被覆及び接触されていないという意味における露出であって、必ずしも蓄電デバイス本体のむき出し暴露を意味するものではない。蓄電デバイス1200は蓄電デバイスホルダー1100に実装されるにあたり各種ケースやカバーに収納されたり保護フィルム等に被覆・保護される場合もあるが、当該各種ケースやカバー等に収納・保護された状態においても、蓄電デバイスホルダー1100に当接・被覆されていない限り、それがここでいう蓄電デバイス1200の露出であると理解できる。
【0044】
また、上記説明においては樹脂が収納される箇所について、説明の便宜上樹脂充填用凹部1120を典型例として図示し説明したがこれに限定されるものではなく、その他の樹脂収納部としての任意の構成等を採用し適用してもよい。また、蓄電デバイス収納部1110やそのような任意構成の樹脂収納部をそれぞれ単数備える蓄電デバイスホルダーとしてもよく、少なくともいずれかを複数備える蓄電デバイスホルダーとしてもよい。
【0045】
本発明の蓄電デバイスモジュールや蓄電デバイスホルダー等は、上述の実施形態で説明した構成や方法に限定されるものではなく、当業者に自明な範囲でかつ本発明の技術思想の範囲内で適宜その構成を変更し、組み合わせ適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、キャパシタを含む各種蓄電デバイスを典型例とする任意数の電子部品の実装モジュールに好適である。
【符号の説明】
【0047】
1000・・蓄電デバイスモジュール、1100・・蓄電デバイスホルダー、1110・・蓄電デバイス収納部、1120・・樹脂充填用凹部、1130・・貫通孔、1200・・蓄電デバイス、1210・・頭頂部。