(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】インプリント用光硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20220209BHJP
C08F 2/46 20060101ALI20220209BHJP
C08G 75/045 20160101ALI20220209BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
C08F2/46
C08G75/045
(21)【出願番号】P 2020561413
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2019049184
(87)【国際公開番号】W WO2020129902
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2018240319
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 翔太
(72)【発明者】
【氏名】長澤 偉大
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/052008(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/171187(WO,A1)
【文献】特開2015-71741(JP,A)
【文献】特開2010-612(JP,A)
【文献】国際公開第2009/136618(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、下記(b)成分、下記(c)成分、下記(d)成分及び下記(e)成分を含むインプリント用光硬化性組成物。
(a):一次粒子径が1nm乃至100nmの、エチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子
(b):エチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物
(c):エチレン性不飽和基を有するポリロタキサン
(d):光ラジカル開始剤
(e):下記式(1)で表される多官能チオール化合物
【化1】
(式中、R
1は単結合又は炭素原子数1乃至6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を表し、Z
1は単結合、エステル結合又はエーテル結合を表し、Q
1はヘテロ原子を少なくとも1つ含むもしくはヘテロ原子を含まない炭素原子数2乃至12の有機基、又はヘテロ原子を表し、sは2乃至6の整数を表す。)
【請求項2】
さらに、下記(f)成分及び/又は下記(g)成分を含む、請求項1に記載のインプリント用光硬化性組成物。
(f):フェノール系酸化防止剤
(g):スルフィド系酸化防止剤
【請求項3】
さらに、下記(h)成分を含む、請求項1又は請求項2に記載のインプリント用光硬化性組成物。
(h):エチレン性不飽和基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物
【請求項4】
前記(b)成分は下記(b1)成分及び下記(b2)成分のうち少なくとも1つを含む、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のインプリント用光硬化性組成物。
(b1):下記式(2)で表される二官能(メタ)アクリレート化合物
(b2):ウレタン(メタ)アクリレート化合物(但し、前記(c)成分のエチレン性不飽和基を有するポリロタキサンを除く。)又はエポキシ(メタ)アクリレート化合物
【化2】
(式中、R
2は水素原子又はメチル基を表し、Q
2は炭素原子数2乃至16の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。)
【請求項5】
前記(b)成分は前記(b1)成分及び前記(b2)成分を含む、請求項4に記載のインプリント用光硬化性組成物。
【請求項6】
前記(a)成分のエチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子が、二価の連結基を介してケイ素原子と結合した(メタ)アクリロイルオキシ基で表面修飾されたシリカ粒子である、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のインプリント用光硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のインプリント用光硬化性組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のインプリント用光硬化性組成物をインプリント成形する工程を含む、樹脂レンズの製造方法。
【請求項9】
インプリント用光硬化性組成物の成形体の製造方法であって、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のインプリント用光硬化性組成物を、接し合う支持体と鋳型との間の空間、又は分割可能な鋳型の内部の空間に充填する工程、及び該空間に充填されたインプリント用光硬化性組成物を露光して光硬化する工程を含む、成形体の製造方法。
【請求項10】
前記光硬化する工程の後、得られた光硬化物を取り出して離型する工程、並びに、該光硬化物を、該離型する工程の前、中途又は後において加熱する工程をさらに含む、請求項9に記載の成形体の製造方法。
【請求項11】
前記離型する工程後、前記加熱する工程の前に有機溶媒を用いた現像工程をさらに含む、請求項10に記載の成形体の製造方法。
【請求項12】
前記成形体がカメラモジュール用レンズである、請求項9乃至請求項11のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子、エチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、エチレン性不飽和基を有するポリロタキサン、光ラジカル開始剤、及び多官能チオール化合物を含むインプリント用光硬化性組成物に関する。詳細には、次の特徴を備えた硬化物及び成形体が作製される、光硬化性組成物に関する。その硬化物及び成形体の特徴は、-20℃以下の低温及び80℃以上の高温に連続的に晒される熱衝撃試験を経ても、支持体から剥離しない優れた密着性を有するとともに、上層に反射防止層(AR層)を成膜後、熱処理を経ても該反射防止層にクラックが発生しない。
【背景技術】
【0002】
樹脂レンズは、携帯電話、デジタルカメラ、車載カメラなどの電子機器に用いられており、その電子機器の目的に応じた、優れた光学特性を有するものであることが求められる。また、使用態様に合わせて、高い耐久性、例えば耐熱性及び耐候性、並びに歩留まりよく成形できる高い生産性が求められている。このような要求を満たす樹脂レンズ用の材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー、メタクリル樹脂等の熱可塑性の透明樹脂が使用されてきた。
【0003】
また、高解像度カメラモジュールには複数枚のレンズが用いられるが、波長分散性が低い、すなわち高アッベ数を有するレンズが主に使用されており、それを形成する光学材料が要求されている。さらに、樹脂レンズの製造にあたり、歩留まりや生産効率の向上、さらにはレンズ積層時の光軸ずれの抑制のために、熱可塑性樹脂の射出成型から、室温で液状の硬化性樹脂を使った押し付け成形によるウェハレベル成形への移行が盛んに検討されている。ウェハレベル成形では、生産性の観点から、ガラス基板等の支持体上にレンズを形成するハイブリッドレンズ方式が一般的である。
【0004】
ウェハレベル成形が可能な光硬化性樹脂としては、従来、高透明性、耐熱黄変色性及び金型からの離型性の観点から、ラジカル硬化性樹脂組成物が用いられている(特許文献1)。
【0005】
また、シラン化合物で表面修飾されたシリカ粒子、分散剤で表面修飾された酸化ジルコニウム粒子等の、表面修飾された酸化物粒子を含有することで、高いアッベ数の硬化物が得られる硬化性組成物が知られている(例えば、特許文献2及び特許文献3)。
【0006】
一方、開口部を有する環状分子、直鎖状分子、及び封鎖基(ストッパー)を有し、該環状分子の開口部が該直鎖状分子によって串刺し状に包接された擬ポリロタキサンの両端に該封鎖基が配置され、該環状分子が(メタ)アクリル基を有するポリロタキサンが知られている(例えば、特許文献4)。前記直鎖状分子は前記環状分子の開口部を貫通し、前記封鎖基は該環状分子が該直鎖状分子から離脱しないように設けられている。なお、“包接”とは環状分子の開口部の空間に他の分子を取り込むことを意味し、“擬ポリロタキサン”とは前記封鎖基を有さないポリロタキサンを意味する。前記ポリロタキサンを含む光硬化性組成物は、高強度、高弾性率、及び優れた靭性を有する光硬化物を作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5281710号(国際公開第2011/105473号)
【文献】特開2014-234458号公報
【文献】国際公開第2016/104039号
【文献】国際公開第2016/072356号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ウェハレベル成形により作製される成形体がレンズである場合、その上層に酸化ケイ素、酸化チタン等の無機物からなる反射防止層が形成される。そのため、該反射防止層で被覆されたレンズを熱処理することによって、その反射防止層にクラックが発生するという課題を有している。また、前記表面修飾された酸化物粒子を含む硬化性組成物の硬化物は、-20℃以下の低温と80℃以上の高温に連続的に晒される熱衝撃試験を行うと、該硬化物は、支持体からの剥離という課題を有している。
【0009】
高アッベ数(例えば53以上)を有し、高解像度カメラモジュール用レンズとして使用し得る成形体が得られ、その後の熱処理によって該成形体の上層に成膜された反射防止層にクラックが発生せず、さらには、熱衝撃試験に晒されても、該成形体が支持体から剥離しない、硬化性樹脂材料は未だなく、その開発が望まれていた。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。すなわち、高アッベ数を示す成形体を形成でき、且つ該成形体を熱処理することによってその上層の反射防止層にクラックが発生せず、熱衝撃試験に晒されても、該成形体が支持体から剥離しない、高い熱衝撃耐性を有する成形体を形成できる光硬化性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一態様は、下記(a)成分、下記(b)成分、下記(c)成分、下記(d)成分及び下記(e)成分を含むインプリント用光硬化性組成物である。
(a):一次粒子径が1nm乃至100nmの、エチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子
(b):エチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物
(c):エチレン性不飽和基を有するポリロタキサン
(d):光ラジカル開始剤
(e):下記式(1)で表される多官能チオール化合物
【化1】
(式中、R
1は単結合又は炭素原子数1乃至6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を表し、Z
1は単結合、エステル結合又はエーテル結合を表し、Q
1はヘテロ原子を少なくとも1つ含むもしくはヘテロ原子を含まない炭素原子数2乃至12の有機基、又はヘテロ原子を表し、sは2乃至6の整数を表す。)
【0011】
本発明のインプリント用光硬化性組成物はさらに、下記(f)成分及び/又は下記(g)成分を含有してもよい。
(f):フェノール系酸化防止剤
(g):スルフィド系酸化防止剤
【0012】
本発明のインプリント用光硬化性組成物はさらに、下記(h)成分を含有してもよい。
(h):エチレン性不飽和基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物
【0013】
前記(b)成分は、例えば下記(b1)成分及び下記(b2)成分のうち少なくとも1つを含む。
(b1):下記式(2)で表される二官能(メタ)アクリレート化合物
(b2):ウレタン(メタ)アクリレート化合物(但し、前記(c)成分のエチレン性不飽和基を有するポリロタキサンを除く。)又はエポキシ(メタ)アクリレート化合物
【化2】
(式中、R
2は水素原子又はメチル基を表し、Q
2は炭素原子数2乃至16の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。)
【0014】
前記(b)成分は、例えば前記(b1)成分及び前記(b2)成分を含む。
【0015】
前記(a)成分のエチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子が、例えば二価の連結基を介してケイ素原子と結合した(メタ)アクリロイルオキシ基で表面修飾されたシリカ粒子である。該二価の連結基は、例えば、炭素原子数1乃至5のアルキレン基、好ましくは炭素原子数2又は3のアルキレン基である。
【0016】
本発明の第二態様は、前記インプリント用光硬化性組成物の硬化物である。
【0017】
本発明の第三態様は、前記インプリント用光硬化性組成物をインプリント成形する工程を含む、樹脂レンズの製造方法である。
【0018】
本発明の第四態様は、インプリント用光硬化性組成物の成形体の製造方法であって、前記インプリント用光硬化性組成物を、接し合う支持体と鋳型との間の空間、又は分割可能な鋳型の内部の空間に充填する工程、及び該空間に充填されたインプリント用光硬化性組成物を露光して光硬化する工程を含む、成形体の製造方法である。前記鋳型はモールドとも称する。
【0019】
本発明の成形体の製造方法において、前記光硬化する工程の後、得られた光硬化物を取り出して離型する工程、並びに、該光硬化物を、該離型する工程の前、中途又は後において加熱する工程をさらに含んでもよい。
【0020】
前記離型する工程後、前記加熱する工程の前に有機溶媒を用いた現像工程をさらに含んでもよい。
【0021】
本発明の成形体の製造方法において、該成形体は、例えばカメラモジュール用レンズである。
【発明の効果】
【0022】
本発明のインプリント用光硬化性組成物は、前記(a)成分乃至前記(e)成分を含み、さらに任意で、前記(f)成分及び/又は前記(g)成分、及び前記(h)成分を含む。そのため、該光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体が、光学デバイス、例えば、高解像度カメラモジュール用のレンズとして望ましい光学特性、すなわち高アッベ数を示す。また、本発明の光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体は、該硬化物及び成形体の上層の反射防止層が175℃での熱処理によってクラックが発生せず、熱衝撃試験に晒されても該硬化物及び成形体に支持体からの剥離がない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施例6のインプリント用光硬化性組成物6から作製された硬化膜の角部を示す、デジタルマイクロスコープ写真である。
【
図2】
図2は、比較例2のインプリント用光硬化性組成物
14から作製された硬化膜の角部を示す、デジタルマイクロスコープ写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のインプリント用光硬化性組成物の各成分について、より詳細に説明する。なお、本発明において、エチレン性不飽和基とは、2つの炭素原子間に二重結合を有する基、例えば、(CH2=CH)-基及び[CH2=C(CH3)]-基が挙げられる。本発明のインプリント用光硬化性組成物に含まれるエチレン性不飽和基を有する化合物は、(a)成分乃至(c)成分及び(h)成分である。
【0025】
[(a)成分:エチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(a)成分として使用可能な、エチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子は、一次粒子径が1nm乃至100nmである。ここで、一次粒子とは、粉体を構成する粒子であり、この一次粒子が凝集した粒子を二次粒子という。前記一次粒子径は、ガス吸着法(BET法)により測定される前記エチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子の比表面積(単位質量あたりの表面積)S、該表面修飾されたシリカ粒子の密度ρ、及び一次粒子径Dとの間に成り立つ関係式:D=6/(ρS)から算出することができる。該関係式から算出される一次粒子径は、平均粒子径であり、一次粒子の直径である。また、前記エチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子は、例えば、二価の連結基を介してケイ素原子と結合した(メタ)アクリロイルオキシ基で表面修飾されている。上記エチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子を用いる際には、該表面修飾されたシリカ粒子をそのまま用いてもよく、該表面修飾されたシリカ粒子を分散媒である有機溶剤に予め分散させたコロイド状態のもの(コロイド粒子が分散媒に分散したゾル)を用いてもよい。該表面修飾されたシリカ粒子を含むゾルを用いる場合、固形分の濃度が10質量%乃至60質量%の範囲のゾルを用いることができる。
【0026】
前記エチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子を含むゾルとして、例えば、MEK-AC-2140Z、MEK-AC-4130Y、MEK-AC-5140Z、PGM-AC-2140Y、PGM-AC-4130Y、MIBK-AC-2140Z、MIBK-SD-L(以上、日産化学(株)製)、及びELCOM(登録商標)V-8802、同V-8804(以上、日揮触媒化成(株)製)を採用することができる。
【0027】
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(a)成分の含有量は、該組成物に含まれる(a)成分、(b)成分、(c)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対して、10質量部乃至40質量部、好ましくは10質量部乃至30質量部である。該(a)成分の含有量が10質量部より少ないと、前記インプリント用光硬化性組成物から得られた硬化物及び成形体の上層に成膜される反射防止層のクラックを抑制できない虞がある。該(a)成分の含有量が40質量部より多いと、該硬化物及び成形体にヘイズが生じ、透過率が低下する虞がある。
【0028】
上記(a)成分のエチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
[(b)成分:エチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(b)成分として使用可能な、エチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物は、該多官能(メタ)アクリレート化合物1分子中に前記エチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物である。該多官能(メタ)アクリレート化合物として、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物、及びその他二官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。本明細書では、該その他二官能(メタ)アクリレート化合物のうち下記式(2)で表される化合物を(b1)成分と称し、前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレート化合物を(b2)成分と称する。本発明のインプリント用光硬化性組成物が(b1)成分を含むとき、後述する(c)成分のエチレン性不飽和基を有するポリロタキサンとの相溶性に優れる。
【化3】
(式中、R
2は水素原子又はメチル基を表し、Q
2は炭素原子数2乃至16の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。)
【0030】
前記その他二官能(メタ)アクリレート化合物のうち、前記式(2)で表されない化合物として、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びEO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートが挙げられる。該化合物として市販品を用いてもよく、例えば、2G、3G、4G、9G、14G、23G、A-200、A-400、A-600、A-1000、APG-100、APG-200、APG-400、APG-700、3PG、9PG、A-PTMG-65(以上、新中村化学工業(株)製)、ライトアクリレート3EG-A、ライトアクリレート4EG-A、ライトアクリレート9EG-A、ライトアクリレート14EG-A、ライトアクリレートPTMGA-250(以上、共栄社化学(株)製)、ビスコート#310HP、ビスコート#335HP(以上、大阪有機化学工業(株)製)、及びHBPE-4(第一工業製薬(株)製)が挙げられる。
【0031】
[(b1)成分:前記式(2)で表される二官能(メタ)アクリレート化合物]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(b1)成分として使用可能な、前記式(2)で表される二官能(メタ)アクリレート化合物は、該化合物1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ有する化合物である。該二官能(メタ)アクリレート化合物として、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,11-ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,13-トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,15-ペンタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、及び2,2,9,9-テトラメチル-1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0032】
前記二官能(メタ)アクリレート化合物として市販品を用いてもよく、例えば、ビスコート#195、ビスコート#230、ビスコート#260(以上、大阪有機化学工業(株)製)、BD、NPG、A-NPG、HD-N、A-HD-N、NOD-N、A-NOD-N、DOD-N、A-DOD-N(以上、新中村化学工業(株)製)、及びライトエステルEG、ライトアクリレートMPD-A(以上、共栄社化学(株)製)が挙げられる。
【0033】
[(b2)成分:ウレタン(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレート化合物]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(b2)成分として使用可能なウレタン(メタ)アクリレート化合物は、1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2つ及び“-NH-C(=O)O-”で表されるウレタン構造を少なくとも2つ有する化合物である。但し、該ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、後述する(c)成分のエチレン性不飽和基を有するポリロタキサンを除くものである。該ウレタン(メタ)アクリレート化合物として、例えば、EBECRYL(登録商標)230、同270、同280/15IB、同284、同4491、同4683、同4858、同8307、同8402、同8411、同8804、同8807、同9270、同8800、同294/25HD、同4100、同4220、同4513、同4738、同4740、同4820、同8311、同8465、同9260、同8701、KRM7735、同8667、同8296(以上、ダイセル・オルネクス(株)製)、UV-2000B、UV-2750B、UV-3000B、UV-3200B、UV-3210EA、UV-3300B、UV-3310B、UV-3500B、UV-3520EA、UV-3700B、UV-6640B、UV-6630B、UV-7000B、UV-7510B、UV-7461TE(以上、日本合成化学(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、UA-510H、UF-8001G(以上、共栄社化学(株)製)、M-1100、M-1200(以上、東亞合成(株)製)、及びNKオリゴU-2PPA、同U-6LPA、同U-200PA、U-200PA、同U-160TM、同U-290TM、同UA-4200、同UA-4400、同UA-122P、同UA-7100、同UA-W2A(以上、新中村化学工業(株)製)が挙げられる。
【0034】
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(b2)成分として使用可能なエポキシ(メタ)アクリレート化合物は、1分子中にエポキシ環を少なくとも2つ有する化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させたエステルである。該エポキシ(メタ)アクリレート化合物として、例えば、EBECRYL(登録商標)645、同648、同860、同3500、同3608、同3702、同3708(以上、ダイセル・オルネクス(株)製)、DA-911M、DA-920、DA-931、DA-314、DA-212(以上、ナガセケムテックス(株)製)、HPEA-100(ケーエスエム(株)製)、及びユニディック(登録商標)V-5500、同V-5502、同V-5508(以上、DIC(株)製)が挙げられる。
【0035】
上記(b2)成分のウレタン(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレート化合物として、該化合物1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ又は3つ有する化合物が好ましく用いられる。該(b2)成分のウレタン(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
本発明のインプリント用光硬化性組成物が、(b)成分として(b1)成分及び(b2)成分のうち少なくとも1つを含む場合、その含有量は、該組成物に含まれる(a)成分、(b)成分、(c)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対して、下記式(3)乃至式(5)で表される関係をすべて満たし、好ましくは下記式(3´)乃至(5´)の関係をすべて満たす。ここで、該(b1)成分の含有量をX質量部、該(b2)成分の含有量をY質量部とする。
式(3):30質量部≦(X+Y)≦85質量部
式(4):0質量部≦X≦70質量部
式(5):0質量部≦Y≦80質量部
式(3´):30質量部≦(X+Y)≦80質量部
式(4´):0質量部≦X≦60質量部
式(5´):0質量部≦Y≦70質量部
前記(b1)成分の含有量が70質量部より多いと、前記インプリント用光硬化性組成物から得られた硬化物及び成形体が脆性化することで、該硬化物及び成形体の耐クラック性が低下する虞がある。また、前記(b2)成分の含有量が80質量部より多いと、前記インプリント用光硬化性組成物から得られた硬化物及び成形体の架橋密度が低下することにより、該硬化物及び成形体の加熱時の形状変化が増加する虞がある。
【0037】
[(c)成分:エチレン性不飽和基を有するポリロタキサン]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(c)成分として使用可能なエチレン性不飽和基を有するポリロタキサンは、環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接された擬ポリロタキサンの両端に前記環状分子が脱離しないように封鎖基を配置され、該環状分子がエチレン性不飽和基を有する。該環状分子がエチレン性不飽和基を有するポリロタキサンの構成要素である、環状分子、直鎖状分子及び封鎖基について、説明する。
【0038】
<c-1.環状分子>
(c)成分のエチレン性不飽和基を有するポリロタキサンの環状分子は、環状であり且つ開口部を有し、直鎖状分子によって串刺し状に包接されるものであれば、特に限定されない。該エチレン性不飽和基は、環状分子が有するのが好ましく、該環状分子に直接結合していても、スペーサーを介して結合していてもよい。該スペーサーとしては、特に限定されないが、例えば、アルキレン基、アルキレンオキシド基、ヒドロキシアルキレン基、カルバモイル基、アクリル酸エステル鎖、ポリアルキレンエーテル鎖、及びポリアルキレンカーボネート鎖が挙げられる。前記環状分子として、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリンからなる群から選択するのが好ましい。
【0039】
<c-2.直鎖状分子>
(c)成分のエチレン性不飽和基を有するポリロタキサンの直鎖状分子は、用いる環状分子の開口部に串刺し状に包接され得るものであれば、特に限定されない。例えば、該直鎖状分子として、特許文献4に例示された化合物(ポリマー)が挙げられ、それらの中で、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテルからなる群から選ばれるポリマーが好ましく、特にポリエチレングリコールが好ましい。
【0040】
前記直鎖状分子は、その重量平均分子量が1,000以上、好ましくは3,000~100,000、より好ましくは6,000~50,000である。(c)成分のエチレン性不飽和基を有するポリロタキサンにおいて、(環状分子、直鎖状分子)の組合せが、(α-シクロデキストリン由来、ポリエチレングリコール由来)であるのが好ましい。
【0041】
<c-3.封鎖基>
(c)成分のエチレン性不飽和基を有するポリロタキサンの封鎖基は、擬ポリロタキサンの両端に配置され、用いる環状分子が脱離しないように作用する基であれば、特に限定されない。例えば、該封鎖基として、特許文献4に例示された封鎖基が挙げられ、それらの中で、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンチル基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、及びピレン類からなる群から選ばれる封鎖基が好ましく、より好ましくはアダマンチル基類又はシクロデキストリン類である。該封鎖基は、例えば-NH-C(=O)-基を介して、前記直鎖状分子と結合している。
【0042】
前記エチレン性不飽和基を有するポリロタキサンとして市販品を用いてもよく、例えば、セルム(登録商標)スーパーポリマーSA1303P、同SA1305P、同SA1305P-10、同SA2403P、同SA2405P-10、同SA3403P、同SM1303P、同SM2403P、同3403P(以上、アドバンスト・ソフトマテリアルズ(株)製)が挙げられる。
【0043】
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(c)成分の含有量は、該組成物に含まれる(a)成分、(b)成分、(c)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対して、1質量部乃至15質量部、好ましくは3質量部乃至10質量部である。該(c)成分の含有量が1質量部より少ないと、熱衝撃試験において前記インプリント用光硬化性組成物から得られた硬化物及び成形体の支持体からの剥離を抑制する効果が不十分となる虞がある。該(c)成分の含有量が15質量部より多いと、該硬化物及び成形体にヘイズが生じ、透過率が低下する虞がある。
【0044】
上記(c)成分のエチレン性不飽和基を有するポリロタキサンは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
[(d)成分:光ラジカル開始剤]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(d)成分として使用可能な光ラジカル開始剤として、例えば、アルキルフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラー(Michler)のケトン類、アシルホスフィンオキシド類、ベンゾイルベンゾエート類、オキシムエステル類、テトラメチルチウラムモノスルフィド類及びチオキサントン類が挙げられ、特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。前記光ラジカル開始剤として市販品、例えば、OMNIRAD(登録商標)184、同369、同651、同500、同819、同907、同784、同2959、同TPO、同1173(以上、IGM Resins社製)[旧IRGACURE(登録商標)184、同369、同651、同500、同819、同907、同784、同2959、同TPO、同1173(以上、BASFジャパン(株)製)]、IRGACURE(登録商標)CGI1700、同CGI1750、同CGI1850、同CG24-61、同1116(以上、BASFジャパン(株)製)、及びESACURE KIP150、同KIP65LT、同KIP100F、同KT37、同KT55、同KTO46、同KIP75(以上、Lamberti社製)を採用することができる。
【0046】
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(d)成分の含有量は、該組成物に含まれる(a)成分、(b)成分、(c)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対し0.1質量部乃至5質量部、好ましくは0.5質量部乃至3質量部である。該(d)成分の含有量が0.1質量部より少ないと、前記インプリント用光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体の強度が低下する虞がある。該(d)成分の含有量が5質量部より多いと、該硬化物及び成形体の耐熱黄変性が悪化する虞がある。
【0047】
上記(d)成分の光ラジカル開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
[(e)成分:前記式(1)で表される多官能チオール化合物]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(e)成分として使用可能な多官能チオール化合物は、前記式(1)で表される多官能チオール化合物である。該式(1)で表される多官能チオール化合物として、例えば、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、及びトリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピル)エーテルが挙げられる。前記式(1)で表される多官能チオール化合物として、市販品、例えば、カレンズMT(登録商標)PE1、同NR1、同BD1、TPMB、TEMB(以上、昭和電工(株)製)、及びTMMP、TEMPIC、PEMP、EGMP-4、DPMP、TMMP II-20P、PEMP II-20P、PEPT(以上、SC有機化学(株)製)を採用することができる。
【0049】
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(e)成分の含有量は、該組成物に含まれる(a)成分、(b)成分、(c)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対し、1質量部乃至15質量部、好ましくは3質量部乃至10質量部である。該(e)成分の含有量が1質量部より少ないと、前記インプリント用光硬化性組成物から得られた硬化物及び成形体の支持体との密着性が低下する虞がある。該(e)成分の含有量が15質量部より多いと、該硬化物及び成形体の強度が低下し、該硬化物及び成形体の加熱時の形状変化が増加する虞がある。
【0050】
上記(e)成分の前記式(1)で表される多官能チオール化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
[(f)成分:フェノール系酸化防止剤]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(f)成分として使用可能なフェノール系酸化防止剤として、例えば、IRGANOX(登録商標)245、同1010、同1035、同1076、同1135(以上、BASFジャパン(株)製)、SUMILIZER(登録商標)GA-80、同GP、同MDP-S、同BBM-S、同WX-R(以上、住友化学(株)製)、及びアデカスタブ(登録商標)AO-20、同AO-30、同AO-40、同AO-50、同AO-60、同AO-80、同AO-330(以上、(株)ADEKA製)が挙げられる。
【0052】
本発明のインプリント用光硬化性組成物が(f)成分を含有する場合、その含有量は、該組成物に含まれる(a)成分、(b)成分、(c)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対し、0.05質量部乃至3質量部、好ましくは0.1質量部乃至1質量部である。
【0053】
上記(f)成分のフェノール系酸化防止剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
[(g)成分:スルフィド系酸化防止剤]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(g)成分として使用可能なスルフィド系酸化防止剤として、例えば、アデカスタブ(登録商標)AO-412S、同AO-503(以上、(株)ADEKA製)、IRGANOX(登録商標)PS802、同PS800(以上、BASFジャパン(株)製)、及びSUMILIZER(登録商標)TP-D(住友化学(株)製)が挙げられる。
【0055】
本発明のインプリント用光硬化性組成物が(g)成分を含む場合、その含有量は、該組成物に含まれる(a)成分、(b)成分、(c)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対し、0.05質量部乃至3質量部、好ましくは0.1質量部乃至1質量部である。
【0056】
上記(g)成分のスルフィド系酸化防止剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
[(h)成分:エチレン性不飽和基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(h)成分として使用可能な、エチレン性不飽和基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物は、該単官能(メタ)アクリレート化合物1分子中に前記エチレン性不飽和基を1つ有する化合物である。該単官能(メタ)アクリレート化合物として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルジエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジメトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジエトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリエトキシシラン、及び8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジエトキシシランが挙げられる。
【0058】
前記単官能(メタ)アクリレート化合物として市販品を用いてもよく、例えば、AIB、TBA、NOAA、IOAA、LA、STA、ISTA、IBXA、1-ADA、1-ADMA、ビスコート#150、ビスコート#155、ビスコート#160、ビスコート#190、ビスコート#192、ビスコート#MTG、ビスマー#MPE400A、ビスマー#MPE500A、HEA、4-HBA(以上、大阪有機化学工業(株)製)、FA-BZM、FA-BZA、FA-511AS、FA-512M、FA-512MT、FA-512AS、FA-513M、FA-513AS(以上、日立化成(株)製)、LMA、LA、S、A-S、S-1800M、S-1800A、IB、A-IB、PHE-1G、AMP-10G、PHE-2G、AMP-20GY、M-20G、M-30G、AM-30G、M-40G、M-90G、AM-90G、M-130G、AM-130G、M-230G、AM-230G、M-30PG、AM-30PG、702A(以上、新中村化学工業(株)製)、ライトエステルM、ライトエステルE、ライトエステルNB、ライトエステルIB、ライトエステルTB、ライトエステルEH、ライトエステルL、ライトエステルS、ライトエステルCH、ライトエステルIB-X、ライトエステルBZ、ライトエステルPО、ライトエステルTHF(1000)、ライトエステル130MA、ライトエステル041MA、ライトエステルHO-250(N)、ライトエステルHOA(N)、ライトエステルDM、ライトエステルDE、ライトアクリレートL-A、ライトアクリレートS-A、ライトアクリレートIB-XA、ライトアクリレートPO-A、ライトアクリレートTHF-A、ライトアクリレートMTG-A、ライトアクリレート130A、ライトアクリレートDPM-A、ライトアクリレートEC-A、エポキシエステルM-600A、(以上、共栄社化学(株)製)及びKBM-5103、KBM-503、KBM-502、KBE-503、KBE-502、KBM-5803(以上、信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0059】
本発明のインプリント用光硬化性組成物が(h)成分を含有する場合、その含有量は、該組成物に含まれる(a)成分、(b)成分、(c)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対し0.5質量部乃至20質量部、好ましくは1質量部乃至10質量部である。
【0060】
上記(h)成分のエチレン性不飽和基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
<その他添加剤>
さらに本発明のインプリント用光硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、連鎖移動剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、レベリング剤、レオロジー調整剤、シランカップリング剤等の接着補助剤、顔料、染料、消泡剤などを含有することができる。
【0062】
<インプリント用光硬化性組成物の調製方法>
本発明のインプリント用光硬化性組成物の調製方法は、特に限定されない。調製法としては、例えば、(a)成分、(b1)成分、(b2)成分、(c)成分、(d)成分及び(e)成分、並びに必要により(f)成分及び/又は(g)成分、及び(h)成分を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法が挙げられる。
【0063】
また、溶液に調製した本発明のインプリント用光硬化性組成物は、孔径が0.1μm乃至10μmのフィルターなどを用いてろ過した後、使用することが好ましい。
【0064】
<硬化物>
本発明のインプリント用光硬化性組成物を、露光(光硬化)して、硬化物を得ることができ、本発明は該硬化物も対象とする。露光する光線としては、例えば、紫外線、電子線及びX線が挙げられる。紫外線照射に用いる光源としては、例えば、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、及びUV-LEDが使用できる。また、露光後、硬化物の物性を安定化させるためにポストベークを施してもよい。ポストベークの方法としては、特に限定されないが、通常、ホットプレート、オーブン等を使用して、50℃乃至260℃、1分乃至24時間の範囲で行われる。
【0065】
本発明のインプリント用光硬化性組成物を光硬化することにより得られる硬化物は、アッベ数νDが53以上と高いものである。そのため、本発明のインプリント用光硬化性組成物は、樹脂レンズ形成用として好適に使用することができる。
【0066】
<成形体>
本発明のインプリント用光硬化性組成物は、例えばインプリント成形法を使用することによって、硬化物の形成と並行して各種成形体を容易に製造することができる。成形体を製造する方法としては、例えば接し合う支持体と鋳型との間の空間、又は分割可能な鋳型の内部の空間に本発明のインプリント用光硬化性組成物を充填する工程、該空間に充填されたインプリント用光硬化性組成物を露光して光硬化する工程、該光硬化する工程により得られた光硬化物を取り出して離型する工程、並びに、該光硬化物を、該離型する工程の前、中途又は後において加熱する工程を含む方法が挙げられる。その際、前記光硬化する工程により得られた光硬化物を取り出して離型する工程の後、前記加熱する工程の前に有機溶媒にて未硬化部を洗浄・除去する現像工程をさらに含んでもよい。前記未硬化部を作製する手法としては、特に制限はないが、マスク露光、投影露光等により所定の位置のみを露光することで、露光されない部分すなわち未硬化部を作製することができる。さらに、必要に応じて、前記現像工程後の光硬化物を、再度露光して光硬化してもよい。
【0067】
上記露光して光硬化する工程は、前述の硬化物を得るための条件を適用して実施することができる。さらに、上記光硬化物を加熱する工程の条件としては、特に限定されないが、通常、50℃乃至260℃、1分乃至24時間の範囲から適宜選択される。また、加熱手段としては、特に限定されないが、例えば、ホットプレート及びオーブンが挙げられる。このような方法によって製造された成形体は、カメラモジュール用レンズとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例及び比較例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0069】
(1)撹拌脱泡機
装置:(株)シンキー製 自転・公転ミキサー あわとり練太郎(登録商標)ARE-310
(2)UV露光
装置:シーシーエス(株)製 バッチ式UV-LED照射装置(波長365nm)
(3)アッベ数νD
装置:アントンパール社製 多波長屈折計Abbemat MW
測定温度:23℃
(4)熱衝撃試験機
装置:エスペック(株)製 小型熱衝撃試験機TSE-11-A
条件:-40℃/85℃、-40℃および85℃での曝し時間=30分、50サイクル
(5)デジタルマイクロスコープ(熱衝撃試験における剥離観察)
装置:(株)ハイロックス製 KH-7700、MXG-2500REZ
条件:反射(暗視野)、Low-Range、100倍
(6)透過率測定
装置:日本分光(株)製 紫外可視近赤外分光光度計 V-670
リファレンス:空気
(7)反射防止層の成膜
装置:神港精機(株)製 SRV4300シリーズ
方式:RFスパッタ・マグネトロン方式
条件:ターゲット材=SiO2、ターゲット・基板間の垂直距離=100mm、
温度=室温、スパッタ時間=29分
(8)光学顕微鏡(反射防止膜の観察)
装置:(株)キーエンス製 VHX-1000、VH-Z1000R
条件:反射(明視野)、対物500倍
【0070】
各製造例、実施例及び比較例において使用した化合物の供給元は以下の通りである。
MEK-AC-2140Z:日産化学(株)製 商品名:オルガノシリカゾル MEK-AC-2140Z
APG-200:新中村化学工業(株)製 商品名:NKエステル APG-200
V#260:大阪有機化学工業(株)製 商品名:ビスコート#260
V#230:大阪有機化学工業(株)製 商品名:ビスコート#230
SA1303P:アドバンスト・ソフトマテリアルズ(株)製 商品名:セルム(登録商標)スーパーポリマーSA1303P
UA-4200:新中村化学工業(株)製 商品名:NKオリゴ UA-4200
EBECRYL4513:ダイセル・オルネクス(株)製 商品名:EBECRYL4513
I184:IGM Resins社製 商品名:OMNIRAD(登録商標)184(旧IRGACURE(登録商標)184)
I245:BASFジャパン(株)製 商品名:IRGANOX(登録商標)245
AO-503:(株)ADEKA製 商品名:アデカスタブ(登録商標)AO-503
BA:東京化成工業(株)製 化合物名:アクリル酸ブチル
HEMA:東京化成工業(株)製 化合物名:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
KBM-503:信越化学工業(株)製 商品名:KBM-503
PEPT:SC有機化学(株)製 商品名:PEPT
【0071】
[製造例1]
500mLナスフラスコに、(b1)前記式(2)で表される二官能(メタ)アクリレート化合物としてV#260 200gを秤量し、メチルエチルケトン(以下、本明細書ではMEKと略称する。)200gにて溶解させた。その後、(a)前記エチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子として、MEK-AC-2140Z((メタ)アクリロイルオキシ基で表面修飾された一次粒子径10nm~15nmのシリカ粒子、固形分45質量%のMEK分散液)441gを加え、撹拌して均一化した。その後、エバポレーターを用いて、50℃、減圧度133.3Pa以下の条件でMEKを留去し、前記エチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子のV#260分散液(該表面修飾されたシリカ粒子含有量50質量%)を得た。
【0072】
[製造例2]
500mLナスフラスコに、(b1)前記式(2)で表される二官能(メタ)アクリレート化合物としてV#230 50gを秤量し、MEK 50gにて溶解させた。その後、(a)前記エチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子として、MEK-AC-2140Z((メタ)アクリロイルオキシ基で表面修飾された一次粒子径10nm~15nmのシリカ粒子、固形分45質量%のMEK分散液)111gを加え、撹拌して均一化した。その後、エバポレーターを用いて、50℃、減圧度133.3Pa以下の条件でMEKを留去し、前記エチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子のV#230分散液(該表面修飾されたシリカ粒子含有量50質量%)を得た。
【0073】
[製造例3]
500mLナスフラスコに、(b2)ウレタン(メタ)アクリレート化合物としてUA-4200 50.0gを秤量し、MEK 50.0gにて溶解させた。その後、(a)前記エチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子として、MEK-AC-2140Z((メタ)アクリロイルオキシ基で表面修飾された一次粒子径10nm~15nmのシリカ粒子、固形分45質量%のMEK分散液)111gを加え、撹拌して均一化した。その後、エバポレーターを用いて、60℃、減圧度133.3Pa以下の条件でMEKを留去し、前記エチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子のUA-4200分散液(該表面修飾されたシリカ粒子含有量50質量%)を得た。
【0074】
[製造例4]
500mLナスフラスコに、(b1)前記式(2)で表される二官能(メタ)アクリレート化合物としてV#260 20.0gを秤量した。その後、(c)前記エチレン性不飽和基を有するポリロタキサンとして、SA1303P(シクロデキストリンからなる環状分子の側鎖にアクリル基を有するポリロタキサン、固形分50質量%のMEK分散液)40.0gを加え、撹拌して均一化した。その後、エバポレーターを用いて、50℃、減圧度133.3Pa以下の条件でMEKを留去し、前記エチレン性不飽和基を有するポリロタキサンのV#260溶液(該エチレン性不飽和基を有するポリロタキサン含有量50質量%)を得た。
【0075】
[製造例5]
500mLナスフラスコに、(b1)前記式(2)で表される二官能(メタ)アクリレート化合物としてV#230 20.0gを秤量した。その後、(c)前記エチレン性不飽和基を有するポリロタキサンとして、SA1303P(シクロデキストリンからなる環状分子の側鎖にアクリル基を有するポリロタキサン、固形分50質量%のMEK分散液)40.0gを加え、撹拌して均一化した。その後、エバポレーターを用いて、50℃、減圧度133.3Pa以下の条件でMEKを留去し、前記エチレン性不飽和基を有するポリロタキサンのV#230溶液(該エチレン性不飽和基を有するポリロタキサン含有量50質量%)を得た。
【0076】
[製造例6]
500mLナスフラスコに、(b2)ウレタン(メタ)アクリレート化合物としてUA-4200 11.0gを秤量した。その後、(c)前記エチレン性不飽和基を有するポリロタキサンとして、SA1303P(シクロデキストリンからなる環状分子の側鎖にアクリル基を有するポリロタキサン、固形分50質量%のMEK分散液)18.0gを加え、撹拌して均一化した。その後、エバポレーターを用いて、50℃、減圧度133.3Pa以下の条件でMEKを留去し、前記エチレン性不飽和基を有するポリロタキサンのUA-4200溶液(該エチレン性不飽和基を有するポリロタキサン含有量45質量%)を得た。
【0077】
[実施例1]
(a)エチレン性不飽和基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子として製造例1で得た前記V#260分散液の固形分、(b1)前記式(2)で表される二官能(メタ)アクリレート化合物としてV#260、(b2)エチレン性不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物としてUA-4200、(c)エチレン性不飽和基を有するポリロタキサンとして製造例4で得た前記V#260溶液の固形分、(d)光ラジカル開始剤としてI184、(f)フェノール系酸化防止剤としてI245、及び(g)スルフィド系酸化防止剤としてAO-503を、それぞれ下記表1に記載の割合で配合した。なお、下記表1に示すV#260の割合は前記V#260分散液及び前記V#260溶液に含まれるV#260成分を含む。その後、配合物を50℃で16時間振とうさせ混合した後、(e)前記式(1)で表される多官能チオール化合物としてPEPTを添加し、前記撹拌脱泡機を用いて10分間撹拌脱泡することで、インプリント用光硬化性組成物1を調製した。なお、下記表1中、「部」は「質量部」を表す。
【0078】
[実施例2乃至実施例12、比較例1及び比較例2]
実施例2、3、5、6及び9に関しては、前記実施例1と同様の手順にて、(a)成分乃至(g)成分を下記表1に示す割合で混合することで、インプリント用光硬化性組成物2、3、5、6及び9を調製した。実施例4に関しては、(a)成分として製造例2で得た前記V#230分散液の固形分を使用し、(c)成分として製造例5で得た前記V#230溶液の固形分を使用する以外は前記実施例1と同様の手順にて、(a)成分乃至(g)成分を下記表1に示す割合で混合することで、インプリント用光硬化性組成物4を調製した。実施例7及び8に関しては、(a)成分として製造例3で得た前記UA-4200分散液の固形分を使用し、(c)成分として製造例6で得た前記UA-4200溶液の固形分を使用する以外は前記実施例1と同様の手順にて、(a)成分乃至(g)成分を下記表1に示す割合で混合することで、インプリント用光硬化性組成物7及び8を調製した。実施例10、11及び12に関しては、(a)成分として製造例2で得た前記V#230分散液の固形分、(c)成分として製造例5で得た前記V#230溶液の固形分を使用し、(a)成分乃至(d)成分及び(f)成分乃至(h)成分を下記表1に記載の割合で配合し、配合物を50℃で16時間振とうさせ混合した後、(e)成分を添加し、前記撹拌脱泡機を用いて10分間撹拌脱泡することで、インプリント用光硬化性組成物10、11及び12を調製した。比較例1に関しては、(a)成分として製造例2で得た前記V#230分散液の固形分を使用し、(c)成分を使用しない以外は前記実施例1と同様の手順にて、下記表1に示す割合で混合することで、インプリント用光硬化性組成物13を調製した。 比較例2に関しては、(e)成分を使用しない以外は前記実施例1と同様の手順にて、(a)成分乃至(g)成分を下記表1に示す割合で混合することで、インプリント用光硬化性組成物14を調製した。
【0079】
【0080】
[硬化膜の作製]
実施例1乃至実施例12及び比較例1乃至比較例2で調製した各インプリント用光硬化性組成物を、500μm厚のシリコーンゴム製スペーサーとともに、NOVEC(登録商標)1720(スリーエムジャパン(株)製)を塗布し乾燥することで離型処理したガラス基板2枚で挟み込んだ。この挟み込んだインプリント用光硬化性組成物を、前記UV-LED照射装置を用いて30mW/cm2で200秒間UV露光した。露光後得られた硬化物を、前記離型処理したガラス基板から剥離した後、100℃のホットプレートで10分間加熱することで、直径1cm、厚さ0.5mmの硬化膜を作製した。
【0081】
[透過率評価]
前記の方法で作製した硬化膜の波長410nmにおける透過率を、前記分光光度計を用いて測定した。さらに、耐熱性試験として125℃のオーブンで94時間加熱し、室温に冷却した硬化膜の透過率を同様に測定した。その結果を下記表2に合わせて示す。
【0082】
[アッベ数νD評価]
前記の方法で作製した硬化膜をカッターで約6mm四方に切り出し、該硬化膜のアッベ数νDを、前記多波長屈折計を用いて測定した。その結果を下記表2に合わせて示す。
【0083】
[熱衝撃試験における硬化膜の剥離耐性の評価]
実施例1乃至実施例12及び比較例1乃至比較例2で調製した各インプリント用光硬化性組成物を適量、NOVEC(登録商標)1720(スリーエムジャパン(株)製)を塗布し乾燥することで離型処理したフォトマスク基板(開口部1cm角)上に滴下した。その後、500μm厚のシリコーンゴム製スペーサーを介して、無アルカリガラス基板(10cm角、0.7mm厚)で、前記離型処理したフォトマスク基板上のインプリント用光硬化性組成物を挟み込んだ。前記無アルカリガラス基板は、信越化学工業(株)製接着補助剤(製品名:KBM-5803)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、本明細書ではPGMEAと略称する。)で10質量%に希釈した溶液を塗布し乾燥することで、密着処理したものである。この挟み込んだインプリント用光硬化性組成物を、前記UV-LED照射装置を用いて115mW/cm
2で2.2秒間UV露光した。露光後得られた硬化物を、前記離型処理したフォトマスク基板から剥離した後、撹拌されたPGMEA中に浸漬(現像)し、さらにPGMEAでリンスして未露光部を除去した。その結果、前記密着処理した無アルカリガラス基板上に、1cm角、厚さ0.5mmの硬化膜が作製された。この硬化膜を、再度前記UV-LED照射装置を用いて30mW/cm
2で191.7秒間UV露光し、100℃のホットプレートで10分間加熱した後、前記エスペック(株)製熱衝撃試験機内に投入した。熱衝撃試験50サイクル終了後に前記硬化膜を該試験機から取り出し、前記(株)ハイロックス製デジタルマイクロスコープにて該硬化膜の角部を観察した。前記密着処理した無アルカリガラス基板から該硬化膜の剥離が確認される場合を“×”と判定し、該硬化膜の剥離が確認されない場合を“○”と判定し、その結果を下記表2に合わせて示す。例として、判定結果が“○”である、実施例6のインプリント用光硬化性組成物6から作製された硬化膜の角部を観察した写真を
図1に、及び判定結果が“×”である、比較例2のインプリント用光硬化性組成物14から作製された硬化膜の角部を観察した写真を
図2に示す。
【0084】
[反射防止層(AR層)の成膜とその耐クラック性評価]
実施例3及び実施例4並びに比較例1で調製した各インプリント用光硬化性組成物0.03gを、NOVEC(登録商標)1720(スリーエムジャパン(株)製)を塗布し乾燥することで離型処理したガラス基板上に秤量した。その後、500μm厚のシリコーンゴム製スペーサーを介して、無アルカリガラス基板(6cm角、0.7mm厚)で、前記離型処理したガラス基板上のインプリント用光硬化性組成物を挟み込んだ。前記無アルカリガラス基板は、信越化学工業(株)製接着補助剤(製品名:KBM-5103)をPGMEAで30質量%に希釈した溶液を塗布し乾燥することで、密着処理したものである。この挟み込んだインプリント用光硬化性組成物を、前記UV-LED照射装置を用いて30mW/cm2で200秒間UV露光した。露光後得られた硬化物を、前記離型処理したガラス基板から剥離した後、100℃のホットプレートで10分間加熱した。その結果、前記無アルカリガラス基板上に、直径1cm、厚さ0.5mm及び質量0.03gの硬化膜が作製された。
【0085】
前記無アルカリガラス基板上に作製された硬化膜上に、前記RFスパッタ装置を用いて前記成膜条件にて、膜厚200nmの酸化ケイ素層を反射防止層として成膜した。前記(株)キーエンス製光学顕微鏡を用いて、前記硬化膜上の反射防止層を観察しクラックの有無を確認した後、前記無アルカリガラス基板を175℃のホットプレートで2分30秒間加熱することで耐熱性試験を行った。耐熱性試験後の前記無アルカリガラス基板についても、前記(株)キーエンス製光学顕微鏡を用いて前記硬化膜上の反射防止層のクラックの有無を観察し、該反射防止層の耐クラック性を判定した。前記硬化膜上の反射防止層でクラックが視認できる場合を“×”と判定し、該硬化膜上の反射防止層でクラック、シワがいずれも視認できない場合を“○”と判定し、その結果を下記表2に合わせて示す。
【0086】
【0087】
(c)成分を含まない比較例1のインプリント用光硬化性組成物13から作製した硬化膜及び(e)成分を含まない比較例2のインプリント用光硬化性組成物14から作製した硬化膜は、熱衝撃試験後に無アルカリガラス基板から剥離する結果となった。一方、(a)成分乃至(e)成分を含む実施例1乃至実施例12のインプリント用光硬化性組成物から作製した硬化膜は、熱衝撃試験後に無アルカリガラス基板から剥離しなかった。本発明のインプリント用光硬化性組成物から得られた硬化膜は、アッベ数νDが53以上を示した。したがって、本発明のインプリント用光硬化性組成物から得られた硬化膜(成形体)は、高いアッベ数を示し、熱衝撃試験を経ても支持体から剥離しない優れた密着性を有し、さらに該硬化膜(成形体)上層の反射防止層が175℃での熱処理によってクラックが発生しない、高解像度カメラモジュール用のレンズとして望ましい特性を有することが示された。