(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】吸収性物品の個包装体
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20220214BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20220214BHJP
A61F 13/476 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
A61F13/15 220
A61F13/56 110
A61F13/476
A61F13/15 140
(21)【出願番号】P 2020038163
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2019041031
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】林 俊久
(72)【発明者】
【氏名】山本 なるみ
(72)【発明者】
【氏名】内田 祥平
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-208317(JP,A)
【文献】特開2003-116919(JP,A)
【文献】登録実用新案第3213494(JP,U)
【文献】特開2017-118923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個包装シートと、
第1接着部を介して一方の面を前記個包装シートに固着された1以上の剥離シートと、
第2接着部を介して前記1以上の剥離シートのそれぞれの他方の面に、脱着可能に固着された吸収性物品と、を備える吸収性物品の個包装体であって、
前記個包装体は、展開状態において、長手方向及び幅方向を有し、
前記吸収性物品が、前記長手方向の前側又は後側に幅広部を有し、
前記幅広部の前記幅方向の両端部には、それぞれ、前記1以上の剥離シートを構成する幅方向端部剥離シートが配置され、
前記幅方向端部剥離シートを、前記個包装シートから幅方向に向けて剥離する際の剥離強度が、前記吸収性物品を、前記幅方向端部剥離シートから幅方向に向けて離脱させる際の剥離強度よりも大き
く、
前記吸収性物品が、吸収体と、機能剤を含有する機能層と、を備え、
前記機能層が、前記幅広部に配置され、
前記展開状態において、
前記機能層が、前記吸収体の長手方向の一方側に隣接して配置されていて、
前記個包装体は、
前記幅方向の一端側に設けられ前記長手方向に沿った長手方向第1折り線を基点に、前記幅方向に折り畳まれた第1幅方向折り畳み部と、
前記幅方向の他端側に設けられ前記長手方向に沿った長手方向第2折り線を基点に、前記幅方向に折り畳まれた第2幅方向折り畳み部と、
前記第1幅方向折り畳み部及び前記第2幅方向折り畳み部が折り畳まれた状態で、前記長手方向の一端側に設けられ前記幅方向に沿った幅方向第1折り線を基点に、前記長手方向に折り畳まれた第1長手方向折り畳み部と、
前記第1幅方向折り畳み部及び前記第2幅方向折り畳み部が折り畳まれた状態で、前記長手方向の他端側に設けられ前記幅方向に沿った幅方向第2折り線を基点に、前記長手方向に折り畳まれた第2長手方向折り畳み部と、
を有し、
前記第1長手方向折り畳み部における前記幅方向第1折り線の側の第1端部とは前記長手方向の反対側に位置する第2端部の表面に一端部を接合され、前記第2長手方向折り畳み部の表面に他端部を接合された粘着テープを備え、
前記第1長手方向折り畳み部は、前記幅方向において、
前記粘着テープの両側に位置する一対の側部と、
前記一対の側部の間に位置し、前記一対の側部の少なくとも一方に接する中間部と、
を含み、
前記一対の側部の各々に配置された補強部材を更に備える、
吸収性物品の個包装体。
【請求項2】
前記幅方向端部剥離シートに接する前記第2接着部の前記幅方向の外縁が、前記幅方向端部剥離シートに接する前記第1接着部の前記幅方向の外縁と同じ位置かそれよりも内側に配置される、請求項1に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項3】
前記吸収性物品が、液透過性の表面シートを更に備え、
前記展開状態において、
前記吸収体の長手方向の最大寸法に対する、前記表面シートの長手方向の最大寸法の比が、前記吸収体の幅方向の最大寸法に対する、前記表面シートの幅方向の最大寸法の比と比較して大きい、請求項
1又は2に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項4】
前記幅方向端部剥離シートの接する前記第2接着部が複数に分割されて存在し、且つ複数存在する前記第2接着部が、前記長手方向に沿って相互に略平行に配置されている、請求項
1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項5】
前記幅方向端部剥離シートに接する、前記第2接着部の面積の総計が、前記幅方向端部剥離シートの面積に対して、60%以下である、請求項
4に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項6】
前記剥離シートの剛性が、前記個包装シートの剛性に比較して大きい、請求項1から
5のいずれか1項に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項7】
前記長手方向の両端部に配置された、前記1以上の剥離シートを構成する長手方向端部剥離シートに接する前記第2接着部の前記長手方向の外縁が、前記長手方向端部剥離シートに接する前記第1接着部の前記長手方向の外縁と同じ位置かそれよりも内側に配置される、請求項1から
6のいずれか1項に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項8】
前記吸収性物品が、前記長手方向に沿って延びる1本以上の折り線を有する、請求項1から
7のいずれか1項に記載の吸収性物品の個包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の個包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
機能剤を有する機能層を備えた吸収性物品と、個包装シートと、を備えた、吸収性物品の個包装体が知られている。例えば、特許文献1には、吸収体と、機能層とを備えた吸収性物品と、吸収性物品の非肌対向面側に固着された個包装シートと、を備える吸収性物品の個包装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品の個包装体において、吸収性物品を個包装シートから脱着可能とするため、吸収性物品と個包装シートの間に剥離シートを介在させることがある。この場合、吸収性物品及び剥離シートの間と、剥離シート及び個包装シートの間とに、ホットメルト接着剤等による接着部を形成する。そして、吸収性物品を、剥離シートから離脱させる場合には、剥離シートが個包装シートから剥離しないように構成しつつ、吸収性物品を剥離シートから離脱させやすく構成する必要もある。
ここで、特許文献1に記載の吸収性物品の個包装体においては、吸収体が設けられている領域よりも、吸収性物品の長手方向の前側又は後側の一方に機能層が設けられている。その機能層が配置されている側の吸収性物品の端部は、他の部位に比較して幅広となっており、この幅広部を個包装シートに固定するために、幅広部の幅方向端部に接着部が設けられている。このため、幅広部の幅方向端部の接着部から、個包装シートを効果的に剥離するために、幅広部の幅方向端部を摘んで吸収性物品を離脱させようとする場合、吸収性物品の幅方向に力がかかるので、幅方向の力に対して、剥離シートを個包装シートから剥離し難く、かつ、吸収性物品を剥離シートから離脱しやすく構成する必要がある。
よって、本発明は、幅広部を備える吸収性物品と個包装シートとの間に剥離シートが介在する吸収性物品の個包装体において、幅広部を起点として、吸収性物品を剥離シートから離脱させやすい、吸収性物品の個包装体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者は、上記課題を解決するため、個包装シートと、第1接着部を介して一方の面を上記個包装シートに固着された1以上の剥離シートと、第2接着部を介して上記1以上の剥離シートのそれぞれの他方の面に、脱着可能に固着された吸収性物品と、を備える吸収性物品の個包装体であって、上記個包装体は、展開状態において、長手方向及び幅方向を有し、上記吸収性物品が、上記長手方向の前側又は後側に幅広部を有し、上記幅広部の上記幅方向の両端部には、それぞれ、上記1以上の剥離シートを構成する幅方向端部剥離シートが配置され、上記幅方向端部剥離シートを、上記個包装シートから幅方向に向けて剥離する際の剥離強度が、上記吸収性物品を、上記幅方向端部剥離シートから幅方向に向けて離脱させる際の剥離強度よりも大きい、吸収性物品の個包装体を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、幅広部を長手方向の端部に備える吸収性物品が剥離シートを介して個包装シートと固着された吸収性物品の個包装体において、吸収性物品を、幅広部を起点として、個包装シートから離脱させやすい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る、生理用ナプキン1の個包装体10を示す斜視図であり、(a)は、個包装体10を肌対向面S
F側から見た斜視図であり、(b)は、個包装体10を非肌対向面S
B側から見た斜視図である。
【
図2】生理用ナプキン1を、展開した状態で表面シート2側から厚さ方向D
Tに見た平面図である。
【
図3】生理用ナプキン1を、展開した状態で裏面シート3側から厚さ方向D
Tに見た平面図である。
【
図4】生理用ナプキン1の、展開した状態での長手方向D
Lに延びる中央軸線C
Lに沿った断面の端面図である。
【
図5】個包装体10を形成するための、生理用ナプキン1の折り畳み方法を説明するための斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る、生理用ナプキン1の個包装体10を示す斜視図である。
【
図8】個包装体10の形成方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、以下の態様に関する。
【0009】
[態様1]
個包装シートと、第1接着部を介して一方の面を上記個包装シートに固着された1以上の剥離シートと、第2接着部を介して上記1以上の剥離シートのそれぞれの他方の面に、脱着可能に固着された吸収性物品と、を備える吸収性物品の個包装体であって、上記個包装体は、展開状態において、長手方向及び幅方向を有し、上記吸収性物品が、上記長手方向の前側又は後側に幅広部を有し、上記幅広部の上記幅方向の両端部には、それぞれ、上記1以上の剥離シートを構成する幅方向端部剥離シートが配置され、上記幅方向端部剥離シートを、上記個包装シートから幅方向に向けて剥離する際の剥離強度が、上記吸収性物品を、上記幅方向端部剥離シートから幅方向に向けて離脱させる際の剥離強度よりも大きい、吸収性物品の個包装体。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、個包装体の展開状態において、幅広部の幅方向の両端部に配置された幅方向端部剥離シートを個包装シートから剥離する際の剥離強度が、吸収性物品を幅方向端部剥離シートから離脱させる際の剥離強度よりも大きい。そのため、吸収性物品の幅広部の幅方向端部を摘んで、個包装シートから、幅方向に吸収性物品を離脱させようとする際に、剥離強度の大きい一方の面側で、個包装シートが剥離シートから剥離し難く、剥離強度の小さい他方の面側で、吸収性物品が剥離シートから離脱しやすいので、吸収性物品を、個包装シートから離脱させる際に、幅方向端部剥離シートから吸収性物品を離脱させやすい。
【0011】
[態様2]
上記幅方向端部剥離シートに接する上記第2接着部の上記幅方向の外縁が、上記幅方向端部剥離シートに接する上記第1接着部の上記幅方向の外縁と同じ位置かそれよりも内側に配置される、上記第1の態様に記載の吸収性物品の個包装体。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、幅方向端部剥離シートに接する、第2接着部の幅方向の外縁が、この幅方向端部剥離シートに接する第1接着部の幅方向の外縁と同じ位置かそれよりも内側に配置されている。そのため、吸収性物品の幅広部を摘んで、個包装シートから吸収性物品を離脱させようとする際に、個包装シートから、第1接着部を介して幅方向端部剥離シートを引っ張る力が幅方向端部剥離シートに伝わる方が、吸収性物品から、第2接着部を介して幅方向端部剥離シートを引っ張る力よりも先に伝わりやすいので、幅方向端部剥離シートが個包装シート側に引っ張られて、個包装シート側に残りやすくなり、吸収性物品が、幅方向端部剥離シートから離脱しやすい。
【0013】
[態様3]
上記吸収性物品が、吸収体と、機能剤を含有する機能層と、を備え、上記機能層が、上記幅広部に配置され、上記展開状態において、上記機能層が、上記吸収体の長手方向の一方側に隣接して配置されている、上記第1又は第2態様に記載の吸収性物品の個包装体。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、吸収性物品が、吸収体に加えて、吸収体の長手方向の一方側に隣接して配置された機能層を備え、これが幅広部に配置されているので、幅広部を含む吸収性物品の長手方向の寸法が大きくなりやすい。このような吸収性物品は、幅広部を摘んで吸収性物品を剥離する際に、吸収性物品が幅方向に離脱されやすく、本発明を適用することにより、吸収性物品を個包装シートから離脱させやすくなる。
【0015】
[態様4]
上記吸収性物品が、液透過性の表面シートを更に備え、上記展開状態において、上記吸収体の長手方向の最大寸法に対する、上記表面シートの長手方向の最大寸法の比が、上記吸収体の幅方向の最大寸法に対する、上記表面シートの幅方向の最大寸法の比と比較して大きい、上記第3の態様に記載の吸収性物品の個包装体。
【0016】
本発明の第4の態様によれば、吸収性物品が、吸収体の最大寸法に対する、表面シートの最大寸法の長手方向の比(表面シートの長手方向の最大寸法/吸収体の長手方向の最大寸法)が、その幅方向の比(表面シートの幅方向の最大寸法/吸収体の幅方向の最大寸法)と比較して大きいので、表面シートが長手方向により長く延在することになり、吸収性物品の長手方向の寸法が大きい、長手方向により長い形状になりやすい。このような吸収性物品に本発明を適用することにより、吸収性物品を、個包装シートから離脱させやすくなる。
【0017】
[態様5]
上記幅方向端部剥離シートの接する上記第2接着部が複数に分割されて存在し、且つ複数存在する上記第2接着部が、上記長手方向に沿って相互に略平行に配置されている、上記第3又は第4の態様に記載の吸収性物品の個包装体。
【0018】
本発明の第5の態様によれば、幅方向端部剥離シートの接する第2接着部が、複数に分割されて存在し、この複数存在する第2接着部が、長手方向に沿って互いに略平行に存在している。本発明の第3又は第4の態様の吸収性物品の個包装体は、展開状態において、通常の吸収性物品の個包装体と比較して、長手方向の寸法が長くなりやすいので、第2接着部が、長手方向に沿って延びるストライプ状に配置されていることにより、個包装シートから、長手方向の寸法の長い吸収性物品を、幅方向に沿って離脱させやすい。
また、吸収性物品を幅方向端部剥離シートから離脱させた後、吸収性物品に塗布されている第2接着部を内側にして、吸収性物品の幅方向端部が折れ曲がって接着してしまったとしても、接着した部分に塗布されている第2接着部における接着剤の塗布量が相対的に小さくなるので、吸収性物品の折れ曲がった接着部分を剥離しやすく、結果として、吸収性物品を剥離シートから離脱させやすい。
【0019】
[態様6]
上記幅方向端部剥離シートに接する、上記第2接着部の面積の総計が、上記幅方向端部剥離シートの面積に対して、60%以下である、上記第5の態様に記載の吸収性物品の個包装体。
【0020】
本発明の第6の態様によれば、幅方向端部剥離シートに接する、第2接着部の面積の総計が、幅方向端部剥離シートの面積に対して、60%以下であるので、吸収性物品が幅方向端部剥離シートから離脱された後、吸収性物品に塗布されている第2接着部を内側にして、吸収性物品の幅方向端部が折れ曲がって接着してしまったとしても、接着した部分に塗布されている第2接着部の塗布量が相対的に小さくなるので、吸収性物品の折れ曲がった接着部分を剥離しやすく、結果として、吸収性物品を個包装シートから離脱させ易い。
【0021】
[態様7]
上記剥離シートの剛性が、上記個包装シートの剛性に比較して大きい、上記第1から第6の態様のいずれか1の態様に記載の吸収性物品の個包装体。
【0022】
本発明の第7の態様によれば、個包装シートの少なくとも一部と、吸収性物品の少なくとも一部とをそれぞれ把持して、各剥離シートから吸収性物品を離脱させる際に、各剥離シートが変形し難いため、吸収性物品が変形しても、各剥離シートがそのような変形に追随し難く、第1接着部の剥離強度が、第2接着部の剥離強度よりも強いことと相俟って、個包装シート側に留まりやすくなるため、個包装シート及び各剥離シートから、吸収性物品を離脱させやすい。
【0023】
[態様8]
上記長手方向の両端部に配置された、上記1以上の剥離シートを構成する長手方向端部剥離シートに接する上記第2接着部の上記長手方向の外縁が、上記長手方向端部剥離シートに接する上記第1接着部の上記長手方向の外縁と同じ位置かそれよりも内側に配置される、上記第1から第7のいずれか1の態様に記載の吸収性物品の個包装体。
【0024】
本発明の第8の態様によれば、長手方向の両端部に配置された剥離シートである、長手方向端部剥離シートに接する、第2接着部の長手方向の外縁が、この長手方向端部剥離シートに接する第1接着部の長手方向の外縁と同じ位置かそれよりも内側に配置されるので、長手方向から吸収性物品を個包装シート及び剥離シートから離脱させやすい。
【0025】
[態様9]
上記吸収性物品が、上記長手方向に沿って延びる1本以上の折り線を有する、上記第1から第8のいずれか1の態様に記載の吸収性物品の個包装体。
【0026】
本発明の第9の態様によれば、一般には、吸収性物品が、長手方向に沿って延びる1本以上の折り線を有する場合、個包装体の展開状態において、長手方向に沿って延びる折り皺が残りやすくなるので、個包装シートから、吸収性物品を長手方向に離脱させにくい。よって、本発明を適用することで、吸収性物品を個包装シートから離脱させ易くなる。
【0027】
[態様10]
上記個包装体は、上記幅方向の一端側に設けられ上記長手方向に沿った長手方向第1折り線を基点に、上記幅方向に折り畳まれた第1幅方向折り畳み部と、上記幅方向の他端側に設けられ上記長手方向に沿った長手方向第2折り線を基点に、上記幅方向に折り畳まれた第2幅方向折り畳み部と、上記第1幅方向折り畳み部及び上記第2幅方向折り畳み部が折り畳まれた状態で、上記長手方向の一端側に設けられ上記幅方向に沿った幅方向第1折り線を基点に、上記長手方向に折り畳まれた第1長手方向折り畳み部と、上記第1幅方向折り畳み部及び上記第2幅方向折り畳み部が折り畳まれた状態で、上記長手方向の他端側に設けられ上記幅方向に沿った幅方向第2折り線を基点に、上記長手方向に折り畳まれた第2長手方向折り畳み部と、を有し、上記第1長手方向折り畳み部における上記幅方向第1折り線の側の第1端部とは上記長手方向の反対側に位置する第2端部の表面に一端部を接合され、上記第2長手方向折り畳み部の表面に他端部を接合された粘着テープを備え、上記第1長手方向折り畳み部は、上記幅方向において、上記粘着テープの両側に位置する一対の側部と、上記一対の側部の間に位置し、上記一対の側部の少なくとも一方に接する中間部と、を含み、上記一対の側部の各々に配置された補強部材を更に備える、上記第1から第9のいずれか1の態様に記載の吸収性物品の個包装体。
【0028】
使用者が一方の手で個包装体を幅方向に把持することで、個包装体に、その幅方向の両端部から中央部に向かう力が加わる場合がある。その場合、加わった力の大きさが強過ぎるときには、個包装体、したがって第1長手方向折り畳み部及び第2長手方向折り畳み部のいずれも手のひらの形状に沿って、略凹状に変形してしまう状況が生じ得る。そうなると、粘着テープを上手に摘まむことが困難になるおそれがある。そこで、本個包装体では、第1長手方向折り畳み部において、粘着テープの両側に位置する一対の側部の各々に、補強部材を配置している。そのため、第1長手方向折り畳み部に幅方向の両端部から中央部に向かう力が加わったとき、補強部材を含む各側部は変形し難く、補強部材を含まない中間部が変形し易くなる。ただし、中間部は粘着テープで第2長手方向折り畳み部に固定されてやや変形し難いため、一対の側部と中間部との境界付近の部分が主に変形することになる。具体的には、長手方向から見て、第1長手方向折り畳み部のうち、一対の側部と中間部との境界付近の部分が変形することで、中間部を基点として、一対の側部における、個包装体の幅方向の両端部に対応する部分が立ち上がって、略V字の形状が形成される。このとき、第2長手方向折り畳み部は略凹状に変形するが、その幅方向の外側の部分の立ち上がりは少ない。そのため、第2長手方向折り畳み部と一対の側部の各々との間に隙間が生じる。これらの隙間が生じると、使用者は、自然に、いずれかの隙間に指を挿入して、その側部を摘まんで、第2長手方向折り畳み部から引き離すことで、粘着テープを剥離しようとする。ここで、一対の側部の各々は、補強部材を含むので、その引き離そうとする力を粘着テープに容易に伝達することができる。それにより、使用者は、隙間に指を挿入して、側部を摘まんで、粘着テープを剥離させて、容易に、個包装体を開封することが可能となる。すなわち、吸収性物品の個包装体において、一方の手で把持して、他方の手で開封する際にも、開封し易い個包装体を提供することができる。したがって、本個包装体は、片手でも開封し易く、かつ、開封後に吸収性物品を個包装シートから離脱させ易く、よって使用開始時に極めて取り扱いやすく、素早く装着できるという特徴を有する。
【0029】
<第1実施形態>
以下、本発明の吸収性物品の個包装体(以下、単に「個包装体」とも言う)の第1実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断りのない限り、「水平面上に置いた対象物(例えば、個包装体、吸収性物品等)を、垂直方向の上方側から対象物の厚さ方向に見ること」を、単に「平面視」という。
【0030】
[各種定義]
本明細書において用いられる各種方向等については、特に断りのない限り、以下のとおりである。
本明細書において、「長手方向」は、「平面視における縦長の対象物(例えば、個包装体、展開した状態の吸収性物品、吸収性物品の各種構成部材等)の長さの長い方向」を指し、「幅方向」は、「平面視における縦長の対象物の長さの短い方向」を指し、「厚さ方向」は、「展開した状態で水平面上に置いた対象物に対して垂直方向」を指し、これらの方向は、互いに直交する関係にある。
本明細書において、長手方向又は幅方向の「端部」とは、「平面視における対象物(例えば、個包装体、展開した状態の吸収性物品、吸収性物品の各種構成部材等)の、長手方向又は幅方向における、末端各33%に収まる部分」をいう。
さらに、本明細書では、「縦長の対象物の幅方向の中央に位置し且つ長手方向に延びる軸線」を「長手方向の中央軸線」といい、「縦長の対象物の長手方向の中央に位置し且つ幅方向に延びる軸線」を「幅方向の中央軸線」という。
また、本明細書では、「吸収性物品の長手方向において、着用者が吸収性物品を着用した際に着用者の腹部に対して相対的に近位側となる長手方向の一方側」を、「吸収性物品の前方側」といい、「吸収性物品の長手方向において、着用者が吸収性物品を着用した際に着用者の腹部に対して相対的に遠位側(すなわち、着用者の背部に対して相対的に近位側)となる他方側」を、「吸収性物品の後方側」という。
そして、本明細書では、特に断りのない限り、展開した状態の吸収性物品の厚さ方向において、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌面に対して相対的に近位側に位置する表面」を「肌対向面」といい、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌面に対して相対的に遠位側に位置する表面」を「非肌対向面」という。
なお、本明細書において、「使用者」は、吸収性物品を実際に着用する者(すなわち、着用者)のほか、吸収性物品を他者に装着する者(例えば、介護者等)を含む。
【0031】
[個包装体]
本発明の一実施形態に係る個包装体10は、個包装シート11が固着された生理用ナプキン1を、生理用ナプキン1の肌対向面S
Fが内側となるように長手方向D
L及び幅方向D
Wの各々において三つ折りに折り畳むことによって形成されており、
図1に示すような平坦な略直方体の外形形状を有している。
なお、本実施形態の個包装体10は、
図1(a)に示すように、個包装シート11の外表面において当該個包装シート11の開封端とその他の部分とに跨って配置された粘着テープ12によって封止され、折り畳まれた生理用ナプキン1の個包装状態が維持されている。
【0032】
個包装体10は、長手方向DL及び幅方向DWがそれぞれ展開した状態の生理用ナプキン1の長手方向DL及び幅方向DWに対応するように折り畳まれているが、本発明においては、このような折り畳み形態に限定されない。
【0033】
以下、本発明の個包装体に用い得る吸収性物品について、上述の生理用ナプキン1を用いて更に詳細に説明する。
【0034】
[吸収性物品]
図2は、生理用ナプキン1を、展開した状態で表面シート2側から厚さ方向D
Tに見た平面図であり、
図3は、生理用ナプキン1を、展開した状態で裏面シート3側から厚さ方向D
Tに見た平面図である。
図2及び
図3に示すように、生理用ナプキン1は、平面視にて、長手方向D
L及び幅方向D
Wを有する縦長の外形形状を有しており、さらに、幅方向D
Wの中央軸線C
Wよりも前方側D
Fの端部に、生理用ナプキン1の幅方向D
Wの両端部が、外方に向かって突出することにより、幅方向D
Wの寸法が周囲(例えば、幅方向D
Wの中央軸線C
W上)の寸法と比較して幅広となった、幅広部20が設けられている。また、生理用ナプキン1の後方側D
Bの所定位置においては、生理用ナプキン1の幅方向D
Wの一方側端部及び他方側端部の各々が幅方向D
Wの外方側に向かって略台形状に突出した、一対のフラップ部6、6を有している。そして、本実施形態においては、生理用ナプキンの個包装体10は、展開状態において、剥離シート接着部16を介して、一方の面を個包装シート11に固着された1以上の剥離シートと、固定用接着部を介して、1以上の剥離シートのそれぞれ他方の面に脱着可能に固着された生理用ナプキン1と、を備える。後述するように、生理用ナプキン1は、展開状態において、幅方向D
Wの中央軸線C
Wよりも前方側D
Fの端部に、生理用ナプキン1の幅方向D
Wの両端部が、外方に向かって突出することにより、幅方向D
Wの寸法が周囲(例えば、後述する幅方向第1折り線LL
1上)の寸法と比較して幅広となった、幅広部20が設けられている。本実施形態においては、この幅広部20の幅方向D
Wの両端部に設けられる、後述の幅広部剥離シート13、13を、個包装シート11から幅方向D
Wに向けて剥離する際の剥離強度が、生理用ナプキン1を、幅広部剥離シート13、13から幅方向D
Wに向けて離脱させる際の剥離強度よりも大きい。これにより、展開状態において、生理用ナプキン1の幅広部20の幅方向端部を摘んで、個包装シート11から、幅方向D
Wに生理用ナプキン1を離脱させようとする際に、剥離強度の大きい一方の面側で、個包装シート11が幅広部剥離シート13、13から剥離し難く、剥離強度の小さい他方の面側で、生理用ナプキン1が幅広部剥離シート13、13から離脱しやすいので、生理用ナプキン1を、個包装シート11から離脱させる際に、幅広部剥離シート13、13から生理用ナプキン1を剥離させやすい。
【0035】
なお、本明細書における剥離強度とは、引張試験機「5543」(インストロン社製)を、チャック間10mmから20mm、引張速度100mm/min、試験片の幅を製品幅として測定した剥離強度をいう。より具体的には、剥離シートと、個包装シートとの間の剥離強度は、一方のチャックに剥離シートの幅方向端部、他方のチャックに個包装シートの幅方向端部を挟み、吸収性物品と、剥離シートとの間の剥離強度は、一方のチャックに吸収性物品の幅方向端部、他方のチャックに剥離シートの幅方向端部を挟んで測定した剥離強度をいう。
【0036】
なお、本発明において、吸収性物品の外形形状は、幅方向DWの中央軸線CWよりも前方側DFの端部に、幅広部20が設けられている形状や、一対のフラップ部6、6を有している形状に限定されるものではなく、幅方向DWの中央軸線CWよりも後方側DBの端部に、幅広部が設けられている形状や、一対のフラップ部6、6を有していない形状であってもよい。例えば、本発明は、前方側DFに幅広部20が形成されている態様に限定されるものではなく、吸収性物品の後方側DBの端部に、幅広部が追加的に形成されている態様や、吸収性物品の後方側DBの、幅方向DWの端部に、フラップ部が形成され、生理用ナプキン1の吸収領域30に対応する吸収領域と、フラップ部とが、共に幅広となっている態様(例えば、いわゆる、ヒップフラップを有する夜用の生理用ナプキン等の個包装体)も含む。また、吸収性物品の全体形状も各種用途等に応じた任意の縦長の形状(例えば、長方形、楕円形、砂時計形等)を採用することもできる。
以上の態様においても、第1接着部と第2接着部との位置関係を調整することにより、吸収性物品を、幅広部を起点として、個包装シートから離脱させ易いものに構成できる。
【0037】
図4は、生理用ナプキン1の、長手方向D
Lに延びる中央軸線C
Lに沿った断面の端面図である。上述の生理用ナプキン1は、
図4に示すように、厚さ方向D
Tにおいて、生理用ナプキン1の肌対向面S
Fを形成する液透過性の表面シート2と;生理用ナプキン1の非肌対向面S
Bを形成する液不透過性の裏面シート3と;これら両シートの間に位置する吸水性の吸収体4と;生理用ナプキン1の前方側D
Fに位置する幅広部20において表面シート2と裏面シート3の間に位置し且つ機能剤として温感剤を含む機能層21とを、主な構成部材として備えている。
【0038】
また、生理用ナプキン1は、
図2に示すように、幅方向D
Wの両端部においてそれぞれ長手方向D
Lに延在する一対のサイドシート5、5を備えている。さらに、
図3に示すように、生理用ナプキン1は、裏面シート3の非肌対向面S
Bにおいて、複数の剥離シートのそれぞれの他方の面に、生理用ナプキン1を脱着可能に固着する、本発明の第2接着部としての固定用接着部を有している。より具体的には、吸収体4と厚さ方向D
Tに重複し且つ長手方向D
Lに延びる複数本の帯状の形態で配置された着衣固定用接着部70と;一対のフラップ部6、6の各々の非肌対向面S
Bにおいて長手方向D
Lに延びる複数本の帯状の形態で配置された一対のフラップ部固定用接着部71、71と;生理用ナプキン1の前方側D
Fに位置する幅広部20において幅方向D
Wの両端部において、長手方向D
Lに延びる複数の帯状の形態で配置された一対の前方側接着部72、72とを、構成部材として備えている。
【0039】
さらに、上述の生理用ナプキン1は、
図2に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の最も前方側D
Fに位置する長手方向前方側端部を通るように幅方向D
Wに延びる前方端仮想線LE
1と、生理用ナプキン1の最も後方側D
Bに位置する長手方向後方側端部を通るように幅方向D
Wに延びる後方端仮想線LE
2とを有する。さらに、上述の生理用ナプキン1は、これら前方端仮想線LE
1及び後方端仮想線LE
2の間に、長手方向D
Lの前方側D
Fにおいて着用者に温感を与える上記機能層21を含む幅広部20と、当該幅広部20の後方側D
Bに隣接し、着用者から排出された経血等の液状排泄物を吸収する、吸収体4を含む吸収領域30とを有している。このように、生理用ナプキン1が、吸収体4に加えて、吸収体4の前方側に隣接して配置された機能層21を備え、これが幅広部20に配置されていることにより、幅広部20を含む生理用ナプキン1の長手方向D
Lの寸法が大きくなりやすい。このような生理用ナプキン1は、長手方向D
Lの全長が片手の掌に収まらず、使用者が生理用ナプキン1を個包装シート11から剥離する際に、幅広部20を摘んで生理用ナプキン1を剥離し、離脱しがちな傾向にある。よって、幅広部剥離シート13、13を、個包装シート11から幅方向D
Wに向けて剥離する際の剥離強度と、生理用ナプキン1を、幅広部剥離シート13、13から幅方向に向けて離脱させる際の剥離強度を調整することにより、生理用ナプキン1を、幅広部剥離シート13、13から剥離しやすく、生理用ナプキン1を個包装シート11から離脱させやすくなる。
【0040】
なお、
図2及び
図4に示すように、機能層21は、吸収体4の前方側D
Fに隣接して配置されており、幅広部20には、吸収領域30の吸収体4がこれら領域の境界を超えて延在していない。一方、吸収領域30には、幅広部20の機能層21がこれら領域の境界を超えて延在しており、さらに、吸収領域30における幅広部20との隣接部分には、相対的に肌対向面側に位置する吸収体4と、相対的に非肌対向面側に位置する機能層21とが厚さ方向D
Tに重なる重複部40を有している。このような形態で吸収体4と機能層21が部分的に重なっていることにより、重複部40は、着用者から排出された液状排泄物を吸収する作用を主な作用として備えている。ただし、本発明において、吸収体と機能層は、互いに重なって重複部を形成していなくてもよい。
【0041】
なお、吸収領域30は、長手方向DLにおいて吸収領域30の略中央部に位置するとともに、上記一対のフラップ部6、6と幅方向DWに重複する範囲内に設けられ、生理用ナプキン1の着用時に着用者の排泄口に対向する排泄口対向領域と;当該排泄口対向領域の前方側DFに隣接する前方側吸収領域と;当該排泄口対向領域の後方側DBに隣接する後方側吸収領域との、3つの領域に区分することができる。
【0042】
そして、上述の生理用ナプキン1は、
図2に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1を幅方向D
Wに三つ折りするための、長手方向D
Lに沿って延びる長手方向第1折り線LW
1(仮想線)及び長手方向第2折り線LW
2(仮想線)と;生理用ナプキン1を長手方向D
Lに三つ折りするための、幅方向D
Wに沿って延びる幅方向第1折り線LL
1(仮想線)及び幅方向第2折り線LL
2(仮想線)とを有している。生理用ナプキン1は、固着された個包装シート11とともに、肌対向面S
Fが内側となるように、長手方向第1折り線LW
1及び長手方向第2折り線LW
2によって三つ折りに折り畳まれた後、幅方向第1折り線LL
1及び幅方向第2折り線LL
2によって三つ折りに折り畳まれて、上述の個包装体10を形成している。ここで、一般に、折り線により折り畳まれた吸収性物品の個包装体は、個包装体の展開状態において、長手方向D
Lに沿って延びる折り皺が残りやすくなる。よって、幅方向D
Wに向けて個包装シートから吸収性物品を離脱させようとすると、折り皺の部分で折れ曲がりが発生するので個包装シートから、吸収性物品を長手方向D
Lに離脱させにくい。しかしながら、そのような折り線により折り畳まれる本実施形態の生理用ナプキン1において、幅広部剥離シート13、13を、個包装シートから幅方向D
Wに向けて剥離する際の剥離強度と、吸収性物品を、幅広部剥離シート13、13から幅方向D
Wに向けて離脱させる際の剥離強度を調整することにより、生理用ナプキン1を幅方向D
Wに向けて離脱させやすくなる。したがって、長手方向第1折り線LW
1長手方向第2折り線LW
2によって三つ折りに折り畳まれるような本実施形態の生理用ナプキン1の個包装体10においては、幅方向D
Wに向けて剥離する際の上記の剥離強度調整することによる効果がより得られやすい。
【0043】
このように構成される生理用ナプキン1は、着用する際に、生理用ナプキン1の非肌対向面SBを、着衣固定用接着部70、及び一対の前方側接着部72、72を介して着用者の着衣(例えば、下着等)の内面に貼り付けた後、一対のフラップ部6、6をそれぞれ着衣の外面側に折り返しつつ一対のフラップ部固定用接着部71、71を介して着衣の外面に貼り付けることにより、着用者の着衣に固定される。
なお、本発明では、上記一対のフラップ部を有することは必須の構成要件でないため、吸収性物品の形態等によっては、必ずしもこのようなフラップ部を有さなくてもよい。
【0044】
以下、本発明の個包装体に用い得る吸収性物品の各種構成部材について、上述の生理用ナプキン1を用いて更に詳細に説明する。
【0045】
[表面シート]
生理用ナプキン1において、表面シート2は、
図2及び
図4に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の長手方向の前方側端部から後方側端部にわたって延在するとともに、生理用ナプキン1の幅方向D
Wの一方側端部から他方側端部にわたって延在する縦長の外形形状を有している。かかる表面シート2は、
図4に示すように、生理用ナプキン1の厚さ方向D
Tにおいて肌対向面側の位置に配置されて、着用者の肌面に当接し得る接触面(すなわち、生理用ナプキン1の肌対向面S
F)を形成する、液透過性のシート状部材によって形成されている。
【0046】
このような液透過性のシート状部材としては、吸収性物品の表面シートとして用い得る諸特性(例えば、液透過性や肌触り、柔軟性、強度等)を有するものであれば特に制限されず、例えば、エアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布等の各種不織布や多孔樹脂フィルム等を用いることができる。さらに、シート状部材の構造も特に制限されず、平坦な無孔のシート状構造のほか、例えば、複数の開口部を有する平坦なシート状構造や凹凸構造等の種々のシート状構造を採用できる。
【0047】
なお、表面シートとして不織布を用いる場合、その構成繊維の種類は、特に制限されず、例えば、セルロース系繊維や親水化処理を施した熱可塑性樹脂繊維(例えば、親水化処理を施したオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂等)等の親水性繊維が挙げられる。これらの繊維は単独で用いても、2種類以上の繊維を併用してもよい。
【0048】
本発明において、表面シートの外形形状や各種寸法、坪量等は、所望の液透過性や肌触り、柔軟性等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0049】
[吸収体]
上述の生理用ナプキン1において、吸収体4は、
図2に示すように、平面視にて、排泄口対向領域が設けられる、一対のフラップ部6、6が形成されている生理用ナプキン1の領域の略中央部を中心にして、長手方向D
L及び幅方向D
Wの広範囲に延在するとともに、長手方向D
Lの両端部がそれぞれ長手方向D
Lの外方側に向かって円弧を描くように突出した縦長の外形形状を有している。かかる吸収体4は、
図4に示すように、生理用ナプキン1の厚さ方向D
Tにおいて表面シート2と裏面シート3の間に配置されて、表面シート2を透過してきた経血等の液状排泄物を吸収して保持し得る、所定の吸水性及び液保持性を備えた吸水性部材によって形成されている。
【0050】
このような吸水性部材は、着用者から排出される経血等の液状排泄物を吸収して保持し得るものであれば特に制限されず、当分野において公知の任意の吸水性部材を採用することができる。そのような吸水性部材の例としては、任意の吸水性材料によって構成される少なくとも一つの吸収コアを、ティッシュ等の親水性のコアラップシートで覆ったもの等が挙げられる。ここで、吸収コアを構成する吸水性材料としては、例えば、親水性繊維や高吸収性ポリマー等が挙げられ、更に具体的には、粉砕パルプ、コットン、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維;アクリル酸ナトリウムコポリマー等の高吸収性ポリマーからなる粒状物;及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0051】
なお、生理用ナプキン1は、幅広部20を有していることにより、吸収体4の長手方向DLの寸法に対して、生理用ナプキン1の長手方向DLの寸法が、相対的に大きくなっている。これにより、吸収体4の長手方向の最大寸法は、生理用ナプキン1の長手方向の最大寸法に対して、相対的に小さくなり、吸収体4の長手方向DLの最大寸法に対する、表面シート2の長手方向DLの最大寸法の比が、吸収体4の幅方向DWの最大寸法に対する、表面シート2の幅方向DWの最大寸法の比と比較して大きくなる。より具体的には、生理用ナプキン1は以下の関係式を満たす。
(表面シート2の長手方向DLの最大寸法/吸収体4の長手方向DLの最大寸法)>(表面シート2の幅方向DWの最大寸法/吸収体4の幅方向DWの最大寸法)
なお、上記の式における表面シートとは、吸収性物品の着用時に、着用者の排泄口に当接する単一のシートを意味し、吸収体とは、吸収性物品の排泄口当接域と厚さ方向に重畳する、単一の吸収体を意味する。よって、ここでいう表面シート2の寸法には、後述のサイドシート5、5の寸法は含まず、吸収体4の寸法には、機能層21の寸法は含まない。
上記の関係式を満たす、生理用ナプキン1は、表面シート2が、長手方向DLにより長く延在し、生理用ナプキン1の長手方向DLの寸法が大きくなりやすく、通常の吸収性物品と比較して、長手方向DLに長い縦長の形状となりやすいが、後述するように、このような生理用ナプキン1の個包装体10において、固定用接着部と剥離シート接着部16との位置関係を調整することにより、生理用ナプキン1を、個包装シート11から離脱させやすくなる。ただし、本発明の吸収性物品は、吸収体の長手方向DLの最大寸法に対する、表面シートの長手方向DLの最大寸法の比が、吸収体の幅方向DWの最大寸法に対する、表面シートの幅方向DWの最大寸法の比と比較して大きい吸収性物品に限定されるものではなく、吸収体の長手方向DLの最大寸法に対する、表面シートの長手方向DLの最大寸法の比が、吸収体の幅方向DWの最大寸法に対する、表面シートの幅方向DWの最大寸法の比と比較して、同等であっても、小さくてもよい。
【0052】
本発明において、吸収体の外形形状や各種寸法、坪量等は、所望の吸収性能や柔軟性、強度等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0053】
[裏面シート]
上述の生理用ナプキン1において、裏面シート3は、
図3及び
図4に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の長手方向の前方側端部から後方側端部にわたって延在するとともに、生理用ナプキン1の幅方向D
Wの一方側端部から他方側端部にわたって延在する縦長の外形形状を有している。かかる裏面シート3は、
図4に示すように、生理用ナプキン1の厚さ方向D
Tにおいて非肌対向面側の位置に配置されて、着用者の肌面に対する非接触面(すなわち、生理用ナプキン1の非肌対向面S
B)を形成する、液不透過性のシート状部材によって形成されている。
【0054】
このような液不透過性のシート状部材としては、少なくとも着用者から排出される液状排泄物の透過を防止し得る程度の液不透過性を有するものであれば特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂繊維(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂繊維、芯鞘型等の各種複合繊維等)によって形成された疎水性不織布;ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂によって形成された疎水性樹脂フィルム;該樹脂フィルムに不織布を貼り合わせた積層体;SMS不織布等の積層不織布等を用いることができる。さらに、シート状部材の構造も特に制限されず、平坦な無孔のシート状構造のほか、例えば、所定の液不透過性を保持しつつ通気性を確保するための複数の開口部を備えた平坦なシート状構造や凹凸構造等の種々のシート状構造を採用することができる。
【0055】
本発明において、裏面シートの外形形状や各種寸法、坪量等は、所望の防漏性能や通気性等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0056】
[サイドシート]
上述の生理用ナプキン1において、一対のサイドシート5、5は、
図2に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の幅方向D
Wの両端部においてそれぞれ長手方向D
Lに延在する、一対の帯状のシート状部材によって形成されている。かかる一対のサイドシート5、5は、生理用ナプキン1の厚さ方向D
Tにおいて肌対向面側の位置に配置されて、上記表面シート2とともに生理用ナプキン1の肌対向面S
Fを形成している。
【0057】
さらに、一対のサイドシート5、5の各々は、幅方向DWの外方側端部が裏面シート3の肌対向面に接合されて固定端部を形成している一方、幅方向DWの中心側端部が表面シート2等のいずれの構成部材とも接合されておらず、自由端部を形成している。これにより、一対のサイドシート5、5は、生理用ナプキン1の着用時に幅方向DWの中心側端部(自由端部)が起立して、着用者から排出される液状排泄物の漏洩を防止するための防漏壁部を形成することができる。
【0058】
サイドシートに用いられる帯状のシート状部材としては、吸収性物品のサイドシートとして用い得る諸特性(例えば、液不透過性(防漏性)や肌触り、柔軟性、強度等)を有するものであれば特に制限されず、例えば、上記裏面シートと同様の液不透過性のシート状部材(すなわち、疎水性不織布や疎水性樹脂フィルム等のシート状部材)を帯状に裁断したもの等を用いることができる。
【0059】
本発明において、サイドシートの外形形状や各種寸法、坪量等は、所望の防漏性や肌触り、柔軟性等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0060】
なお、本発明において、上記一対のサイドシートを備えることは必須の構成要件でないため、吸収性物品の形態等によっては、必ずしもこのようなサイドシートを有していなくてもよい。
【0061】
[機能層]
上述の生理用ナプキン1において、機能層21は、
図2に示すように、平面視にて、少なくとも生理用ナプキン1の前方側D
Fに位置する、幅方向D
Wの寸法が周囲に比較して大きくなっている幅広部20において長手方向D
L及び幅方向D
Wの広範囲にわたって延在する所定の外形形状を有している。かかる機能層21は、
図4に示すように、生理用ナプキン1の厚さ方向D
Tにおいて表面シート2及び裏面シート3の間に配置されて、着用者に所定の作用(温感作用)をもたらす機能剤としての温感剤を含むシート状部材によって形成されている。
【0062】
機能層21を形成するシート状部材は、機能剤としての温感剤と、当該温感剤を保持し得る基材とによって構成されている。なお、本発明において、幅広部は、機能剤を含む機能層が配置されたものに限定されず、機能剤を含まない吸収層が、表面シート及び裏面シートの間に配置されたものであってもよい。
【0063】
本実施形態において、上記機能剤を保持し得る基材としては、液体状又は固体状の機能剤を保持し得るものであれば特に制限されず、例えば、布帛(例えば、不織布、織布、編布等)や多孔質樹脂シート(例えば、スポンジシート等)等が挙げられる。かかる基材は、機能層用の基材として単独で用いられるものでもよく、他の構成部材(例えば、表面シートや裏面シート、中間シート、コアラップシート等)と兼用されていてもよい。
なお、機能剤自体が所定の保形性等を有していて、機能剤単独で吸収性物品の所定の位置に配置され且つ所定の機能を発揮し得るような場合は、機能層は、基材を有していなくてもよい。
【0064】
(機能剤)
また、上述の生理用ナプキン1において、機能剤として用いられる温感剤は、それ自体が発熱せずに着用者の皮膚の温熱知覚受容器を刺激して、着用者に温感を知覚させる温感成分と、当該温感成分を溶解させる溶媒成分とを含むものである。なお、上述の生理用ナプキン1においては、温感剤は、平面視にて、機能層21の略全体に含まれているが、所定の温感機能を発揮し得るのであれば一部分(例えば、中央部のみ等)に含まれていてもよい。
【0065】
機能剤は、生理用ナプキン1が使用されるまでに揮発したり、他の領域へ移動したりすることを防止するため、水崩壊性の保護材、例えば、マイクロカプセルに保護されていてもよい。マイクロカプセルは、機能剤を内包し、液体(例示:経血、尿、汗)に触れると崩壊し、機能剤を外部に放出させる。放出された機能剤は、着用者の体温等により気化したり、着用者の肌に接触したりすることで、着用者に対して所定の機能を発揮する。
【0066】
マイクロカプセルの素材としては、例えば、糖類、例えば、単糖類(例示:ブドウ糖)、二糖類(例示:ショ糖)及び多糖類(例示:デキストリン、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、水溶性でんぷん)、ゼラチン、水溶性ポリマー(例示:ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル)等が挙げられる。
【0067】
マイクロカプセルは市販されており、例えば、Symrise社から市販される、INCAP(商標)等が挙げられる。また、マイクロカプセルは、例えば、水にマイクロカプセルの素材を溶解させて水溶液を形成し、当該水溶液に機能剤及び界面活性剤を混合し、その水溶液をスプレーしながら減圧乾燥することにより製造することができる。
【0068】
上述の生理用ナプキン1では、機能層21が表面シート2よりも非肌対向面側に配置されていても、機能層21の温感剤が、生理用ナプキン1の着用時に表面シート2を透過して着用者の下腹部の肌に接触することができるため、かかる温感剤の温感成分が皮膚の温熱知覚受容器を刺激して、着用者の下腹部に温感を付与することができる。
このようにして着用者の下腹部、すなわち着用者の子宮に近い部分が温められることによって、着用者の生理痛を緩和したり、月経前症候群や冷え性、更年期障害等の症状を軽減したりすることが期待される。
【0069】
なお、機能層21を配置する厚さ方向DTの位置は、生理用ナプキン1の着用時に温感剤が着用者の肌に接触し得る位置であれば特に制限されないが、着用者の肌への接触のしやすさの点から、肌対向面SFに近い位置であることが好ましい。
【0070】
上記温感剤に含まれる温感成分としては、着用者へ安心感を与える観点から、植物由来の化合物であることが好ましく、例えば、カプサイシン類、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例えば、バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル等)、ショウガエキス、ジンジャーオイル等が挙げられる。これらの化合物の中でも、皮膚への刺激性の点から、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体、ショウガエキス、ジンジャーオイル等を用いることが好ましい。なお、これらの化合物は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0071】
また、上記温感剤を、塗工等することにより基材に適用する際は、温感成分とともに当該温感成分を溶解ないし分散し得る溶媒成分を用いてもよく、そのような溶媒成分としては、例えば、親油性溶媒や親水性溶媒等が挙げられる。
上記親油性溶媒としては、例えば、天然油(例えば、トリグリセリド等の脂肪酸エステル、ヤシ油、アマニ油等)や炭化水素(例えば、パラフィン等)等の油脂が挙げられる。一方、上記親水性溶媒としては、例えば、水やアルコール等が挙げられ、さらに、アルコールとしては、例えば、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等)、高級アルコール(例えば、カプリルアルコール、ラウリルアルコール等)等が挙げられる。
これらの溶媒の中でも、揮発性を制御しやすいという点で、油脂等の親油性溶媒又はアルコールを用いることが好ましく、さらに、吸収性物品の吸収性能を維持しやすいという点から、油脂等の親油性溶媒を用いることがより好ましい。
なお、このような溶媒は、基材に適用した後に、溶媒が固化又は半固化した状態で適用対象部位に留まっていてもよく、又は溶媒が揮発して溶質のみが残存していてもよい。
【0072】
また、上記温感剤が溶媒を含む場合における温感成分の濃度は、温感効果の点から、好ましくは0.0001質量%以上5.0質量%以下であり、より好ましくは0.0005質量%以上3.0質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下である。
【0073】
なお、本発明において、機能剤は、上記温感剤に限定されず、所望の作用に応じた任意の機能剤を採用することができる。そのような機能剤としては、例えば、冷感剤や発熱剤、薬剤(例えば、皮膚収斂剤、抗炎症剤、抗菌剤、pH調整剤、保湿剤等)等が挙げられる。これらの機能剤は、例えば、平面視にて、機能層の一部の部分に1種類の機能剤(例えば、温感剤)を配置し、他の部分に別の種類の機能剤(例えば、冷感剤)を配置する形態で、併用してもよい。
【0074】
本発明において、上記機能剤として用い得る冷感剤は、それ自体が吸熱せずに着用者の皮膚の冷感知覚受容器を刺激して、着用者に冷感を知覚させる冷感成分を含むものであり、必要に応じて、当該冷感成分を溶解ないし分散させる溶媒成分を含んでいてもよい。上記冷感成分としては、例えば、メントール(例えば、l-メントール等);メントール誘導体(例えば、乳酸メンチル、メンチルグリセリルエーテル等);サリチル酸メチル;ミントやユーカリ等の植物由来の精油等が挙げられる。なお、冷感剤に含まれていてもよい溶媒成分は、上記温感剤に含まれていてもよい溶媒成分と同様のものを用いることができる。
【0075】
また、上記冷感剤が溶媒を含む場合における冷感剤中の冷感成分の濃度は、冷感効果の点から、好ましくは0.0001質量%以上5.0質量%以下であり、より好ましくは0.0005質量%以上3.0質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下である。
【0076】
本発明において、上記機能剤として用い得る発熱剤は、それ自体が発熱することで着用者の皮膚を温める作用を有するものである。そのような発熱剤としては、例えば、鉄粉等の金属粉の酸化熱、酸又はアルカリの中和熱、無機塩の水和熱等の化学エネルギーを利用するものが挙げられる。なお、発熱剤は、溶媒成分又は分散媒体に溶解又は分散させて用いてもよい。
【0077】
本発明において、上記機能剤として用い得る薬剤は、着用者の皮膚に所定の薬理作用をもたらすものであり、例えば、皮膚収斂剤、抗炎症剤、抗菌剤、pH調整剤、保湿剤等が挙げられる。
上記皮膚収斂剤としては、例えば、酸化亜鉛や硫酸アルミニウム、タンニン酸、油溶性ポリフェノール(例えば、オウバクエキス、オトギリソウエキス、カモミラエキス、シラカバエキス、ビワ葉エキス、ボダイジュエキス、ホップエキス等)等の収斂成分を含むものが挙げられる。
上記抗炎症剤としては、例えば、天然由来の抗炎症成分(例えば、ボタンエキス、オトギリソウエキス、カモミラエキス、ヨモギエキス、シソエキス等)や合成抗炎症成分(例えば、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム等)等の抗炎症成分を含むものが挙げられる。
上記抗菌剤としては、例えば、天然由来の抗菌成分(例えば、オウバクエキス、オリーブ葉エキス、カモミラエキス、クマザサエキス、サンショウエキス、シソエキス、ドクダミエキス、ホップエキス、ユーカリエキス、ヨモギエキス等)や合成抗菌成分(例えば、エチルヘキシルグリセリン等)等の抗菌成分を含むものが挙げられる。
上記pH調整剤としては、例えば、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、乳酸等の肌を弱酸性に保つための弱酸性成分を含むものが挙げられる。
上記保湿剤としては、例えば、多価アルコール類(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビット等)、尿素、エモリエント成分(例えば、ワセリン等)等の保湿成分を含むものが挙げられる。
【0078】
本発明において、機能層における機能剤の含有量(坪量)は、機能剤の種類や機能層の配置位置等に応じた所定の含有量を採用することができる。例えば、機能剤として温感剤又は冷感剤を採用し、かつ、機能層を上述の生理用ナプキン1と同様の形態で配置する場合には、機能剤は、有効成分としての温感成分又は冷感成分の坪量が、好ましくは0.001g/m2以上10g/m2以下、より好ましくは0.003g/m2以上5g/m2以下、更に好ましくは0.01g/m2以上2.5g/m2以下となるような坪量で、機能層に含有させることができる。
【0079】
なお、本発明において、機能層の外形形状や各種寸法、坪量等は、機能剤の種類や配置形態等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。また、機能剤の性状は、特に限定されるものではなく、例えば、有効成分を含む溶液状のものであってもよいし、塗布可能な固体状の成分であってもよいし、液状の有効成分からなるものであってもよく、揮発性の成分であってもよい。
【0080】
また、機能層の着色に用いる着色剤は、特に限定されず、当分野において公知の任意の着色剤(例えば、顔料、染料等)を採用することができる。さらに、この着色剤による着色手段も特に限定されず、機能層は、例えば、着色剤を塗工又は印刷することによって着色してもよいし、着色剤を機能層の構成成分に含有させることによって着色してもよい。
【0081】
[固定用接着部]
上述のとおり、生理用ナプキン1は、
図3に示すように、裏面シート3の非肌対向面S
Bにおいて、第2接着部としての複数の固定用接着部を有する。より具体的には、吸収体4と厚さ方向D
Tに重複し且つ長手方向D
Lに沿って延びる複数本の帯状の形態で配置された着衣固定用接着部70と;一対のフラップ部6、6の各々の非肌対向面S
Bにおいて長手方向D
Lに沿って延びる複数本の帯状の形態で配置された一対のフラップ部固定用接着部71、71と;生理用ナプキン1の前方側D
Fに位置する幅広部20において幅方向D
Wの両端部に、長手方向D
Lに沿って延びる複数の帯状の形態で配置された一対の前方側接着部72、72とを有する。これらの固定用接着部は、それぞれ上述の所定の形態で配置された粘着剤によって形成されている。
【0082】
なお、本実施形態における前方側接着部72、72は、本発明における幅方向端部剥離シートが接する第2接着部に該当するが、この前方側接着部72、72が、上述のとおり、複数に分割されて存在するとともに、複数存在する上記前方側接着部72、72が、長手方向DLに沿って延び、幅方向DWに間隔を空けて相互に略平行に配置されている。これにより、展開状態において、通常の吸収性物品の個包装体と比較して、長手方向DLの寸法が長くなりやすい生理用ナプキン1の個包装体において、個包装シート11から、長手方向DLの寸法の長い生理用ナプキン1を、幅方向DWに沿って離脱させやすい。また、サイドシート5、5や裏面シート3等の生理用ナプキン1の構成材料は柔軟性が高く、変形しやすい傾向にあるが、生理用ナプキン1を幅広部剥離シート13、13から離脱させた後、生理用ナプキン1に塗布されている前方側接着部72、72を内側にして、生理用ナプキン1の幅方向端部が長手方向DLに沿って延びる折れ軸で折れ曲がって、折れ曲がった裏面シート3同士で接着してしまったとしても、接着した部分に塗布されている前方側接着部72、72における接着剤の塗布量が相対的に小さくなるとともに、接着剤同士が接着する可能性を低減もできる。よって、生理用ナプキン1の折れ曲がった接着部分を剥離しやすく、結果として、生理用ナプキン1を剥離シートから離脱させやすい。
【0083】
また、本発明における幅方向端部剥離シートに該当する幅広部剥離シート13、13に接する、上記前方側接着部72、72の面積の総計は、幅広部剥離シート13、13の面積に対して、60%以下となっている。これにより、生理用ナプキン1が幅広部剥離シート13、13から離脱された後、生理用ナプキン1に塗布されている前方側接着部72、72を内側にして、生理用ナプキン1の幅広部剥離シート13、13が長手方向DLに沿って延びる折れ軸で折れ曲がって、折れ曲がった裏面シート3同士で接着してしまったとしても、接着した部分に塗布されている幅広部剥離シート13、13の接着剤の塗布量が相対的に小さくなる。よって、生理用ナプキン1の折れ曲がった接着部分を剥離しやすく、結果として、生理用ナプキン1を個包装シート11から離脱させやすくなる。
【0084】
このような固定用接着部に用いられる粘着剤としては、当分野において公知の任意の粘着剤を採用することができ、例えば、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)等のスチレン系コポリマーを主体とした感圧型粘着剤等が挙げられる。固定用接着部にこれらの粘着剤を用いることにより、生理用ナプキン1を、着衣や各剥離シート等に脱着可能に固着することができる。
【0085】
本発明において、第2接着部の配置形態や外形形状、各種寸法等は、着衣への固定のしやすさ等を考慮した任意の配置形態や外形形状、各種寸法等を採用してもよい。
【0086】
[個包装シート]
図1は、生理用ナプキン1を折り畳んでなる個包装体10の斜視図であり、(a)は、個包装体10を肌対向面S
F側から見た斜視図であり、(b)は、個包装体10を非肌対向面S
B側から見た斜視図である。上述の実施形態では、個包装体10は、
図1に示すように、生理用ナプキン1の非肌対向面S
Bに配置された上記複数の固定用接着部を介して生理用ナプキン1に固着された、個包装シート11を有している。なお、
図3及び
図4においては、個包装シート11を図示していない。
かかる個包装シート11は、生理用ナプキン1とともに折り畳まれて、折り畳まれた生理用ナプキン1を包むものであり、所定のシート状部材によって形成されている。
【0087】
個包装シートとして用い得るシート状部材は、特に限定されず、例えば、樹脂製シートや不織布等を用いることができる。中でも、個包装体の気密性の点から、樹脂製シートを用いることが好ましく、さらに、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂からなる樹脂製シートを用いることがより好ましい。かかる樹脂製シートは、単層の構造又は複数層の積層構造を有していてもよく、さらに、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂等によって形成されたバリア層を有していてもよい。
【0088】
本発明において、個包装シートの外形形状や各種寸法、坪量等は、包装のしやすさや気密性等を考慮した任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0089】
[剥離シート]
上述の実施形態では、個包装体10は、
図3に示すように、第1接着部である、剥離シート接着部16を介して、一方の面を個包装シート11に固着された1以上の剥離シートを備える。より具体的には、生理用ナプキン1は、剥離シートとして、幅広部20の幅方向D
Wにおける両端部に配置される、幅広部剥離シート13、13;生理用ナプキン1の吸収体4と厚さ方向D
Tに重畳して配置される、吸収体位置剥離シート14;及びフラップ部6、6に配置される、フラップ部剥離シート15、15を備えている。これらの幅広部剥離シート13、13;吸収体位置剥離シート14;及びフラップ部剥離シート15、15の他方の面は、それぞれ、前方側接着部72、72;着衣固定用接着部70;フラップ部固定用接着部71、71と脱着可能に固着され、これにより、生理用ナプキン1を剥離シートから脱着可能に固着している。なお、
図3に示されるように、本実施形態における幅広部剥離シート13、13は、幅広部20の幅方向D
Wの両端部に配置されているという意味において、本発明における幅方向端部剥離シートに該当する。また、本実施形態における幅広部剥離シート13、13、及び吸収体位置剥離シート14は、少なくともその一部が、生理用ナプキン1の長手方向D
Lの両端部に配置されているという意味において、本発明における長手方向端部剥離シートに該当する。
【0090】
なお、本実施形態において、上記の各剥離シートの剛性は、個包装シート11の剛性に比較して大きくなっている。これにより、個包装シート11の少なくとも一部と、生理用ナプキン1の少なくとも一部とをそれぞれ把持して、各剥離シートから生理用ナプキン1を離脱させる際に、各剥離シートが変形し難いため、生理用ナプキン1が変形しても、各剥離シートがそのような変形に追随し難く、剥離シート接着部16の剥離強度が、固定用接着部の剥離強度よりも強いことと相俟って、個包装シート11側に留まりやすくなるため、個包装シート11及び各剥離シートから、生理用ナプキン1を離脱させやすい。
【0091】
上記の各剥離シートは、本発明における第1接着部としての、剥離シート接着部16を介して、各剥離シートの一方の面を個包装シート11に固着されている。ここで、本実施形態においては、幅広部剥離シート13、13に接する前方側接着部72、72の幅方向DWの外縁は、展開状態において、幅広部剥離シート13、13に接する剥離シート接着部16の幅方向DWの外縁と同じ位置かそれよりも内側に配置されている。これにより、生理用ナプキン1の幅広部20を摘んで、個包装シート11から生理用ナプキン1を幅方向に離脱させようとする際に、個包装シート11から、剥離シート接着部16を介して幅広部剥離シート13、13を引っ張る力が幅広部剥離シート13、13に伝わる方が、生理用ナプキン1から、前方側接着部72、72を介して幅広部剥離シート13、13を引っ張る力よりも先に伝わりやすいので、幅広部剥離シート13、13が個包装シート11側に引っ張られて、個包装シート11側に残りやすくなるので、生理用ナプキン1が、幅広部剥離シート13、13から離脱しやすい。
【0092】
また、長手方向端部剥離シートに該当する、幅広部剥離シート13、13、及び吸収体位置剥離シート14にそれぞれ接する前方側接着部72、72、及び着衣固定用接着部70の長手方向DLの外縁は、幅広部剥離シート13、13、及び吸収体位置剥離シート14にそれぞれ接する第1接着部としての剥離シート接着部16の長手方向DLの外縁と同じ位置かそれよりも内側に配置されている。これにより、生理用ナプキン1の長手方向DLの端部を摘んで、長手方向DLに向けて、個包装シート11から生理用ナプキン1を離脱させようとする際に、個包装シート11側から幅広部剥離シート13、13、及び吸収体位置剥離シート14を牽引する引張力が、剥離強度のより強い剥離シート接着部16を介して幅広部剥離シート13、13、及び吸収体位置剥離シート14に伝わりやすく、この引張力が前方側接着部72、72、及び着衣固定用接着部70に対してより作用しやすいので、長手方向DLから、生理用ナプキン1を個包装シート11及び剥離シートから離脱させやすい。
【0093】
なお、本発明において、第1接着部と、第2接着部との位置関係は、上記の関係に限定されるものではなく、幅方向端部剥離シートを、個包装シートから幅方向に向けて剥離する際の剥離強度が、吸収性物品を、幅方向端部剥離シートから幅方向に向けて離脱させる際の剥離強度よりも大きくなる範囲で、適宜調整することができる。また、本発明において、剥離シートを、個包装シートから剥離する際の剥離強度が、吸収性物品を、剥離シートから離脱させる際の剥離強度よりも大きいものとするためには、第1接着部に塗布された接着剤、及び第2接着部に塗布された接着剤の種類、塗布量、塗布面積等を適宜変更することにより、第1接着部に塗布された接着剤の接着力を、第2接着部に塗布された接着剤の接着力と比較して、大きくしてもよい。例えば、第1接着部に塗布される接着剤を、第2接着部に塗布される接着剤の接着力と比較して、接着力のより大きな接着剤としてもよいし、第1接着部に塗布される接着剤の塗布量を、第2接着部に塗布される接着剤の塗布量と比較して、より多くしてもよいし、第1接着部に塗布される接着剤の塗布面積を、第2接着部に塗布される接着剤の塗布面積よりも大きくしてもよい。また、第1接着部が塗布される剥離シートの一方の面に離型処理を施さず、第2接着部が塗布される剥離シートの他方の面のみに離型処理を施してもよい。
【0094】
[粘着テープ]
上述の実施形態では、個包装体10は、
図1(a)及び
図2に示すように、個包装シート11の外表面において当該個包装シート11の端部とその他の部分とに跨って配置された粘着テープ12を備えている。かかる粘着テープ12は、生理用ナプキン1とともに折り畳まれた個包装シート11の開封端を封止して、折り畳まれた生理用ナプキン1の個包装状態を維持するものであり、帯状のテープ部材によって形成されている。
【0095】
粘着テープ12として用いられるテープ部材は、当分野において公知の任意のテープ部材を採用することができ、例えば、帯状のテープ基材(例えば、フィルム、不織布、紙等)と、該テープ基材の表面に配置された粘着剤(例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤等)とによって構成されたもの等が挙げられる。さらに、上記テープ基材として用い得るフィルムや不織布の構成材料は、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。かかるテープ基材は、伸縮性を有するものであってもよい。
【0096】
本発明において、粘着テープの配置形態や外形形状、各種寸法等は、粘着テープとして求められる強度や開封のしやすさ等を考慮した任意の配置形態や外形形状、各種寸法等を採用することができる。
【0097】
なお、本発明において、このような粘着テープ12を備えることは必須の構成要件でないため、粘着テープ以外の手段(例えば、熱融着手段等)で個包装状態を維持し得るのであれば、個包装体はこのような粘着テープを備えていなくてもよい。
【0098】
[個包装体の形成方法]
以下、本発明の個包装体を形成するための、吸収性物品の折り畳み方法(すなわち、個包装体の形成方法)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図5は、個包装体10を形成するための、生理用ナプキン1の折り畳み方法を説明するための斜視図である。
【0099】
上述の実施形態の個包装体10は、
図5(a)に示すような展開した状態の生理用ナプキン1を、
図5(b)に示すように、長手方向D
Lに延びる長手方向第1折り線LW
1及び長手方向第2折り線LW
2の各々において、肌対向面S
Fが内側となるように幅方向D
Wに三つ折りに折り畳んだ後、
図5(c)及び(d)に示すように、幅方向D
Wに延びる幅方向第1折り線LL
1及び幅方向第2折り線LL
2の各々において、肌対向面S
Fが内側となるように長手方向D
Lに三つ折りに折り畳むことによって形成することができる。
【0100】
なお、生理用ナプキン1を折り畳むにあたっては、生理用ナプキン1を、非肌対向面SBに固着された個包装シート11とともに折り畳み、さらに、折り畳んだ後は、個包装シート11の外表面において当該個包装シート11の端部に配置された粘着テープ12によって、折り畳まれた個包装シート11の開封端を封止して、包装状態を維持する。
【0101】
なお、本発明において、個包装体を形成するための吸収性物品の折り畳み方法は、上述の実施形態の態様に限定されず、個包装体のコンパクト性や開封のしやすさ等を考慮した任意の折り畳み方法を採用することができる。
【0102】
[個包装体からの吸収性物品の離脱方法]
本実施形態の生理用ナプキン1の個包装体から、生理用ナプキン1を離脱させる方法は、使用者により異なるものであるが、生理用ナプキン1が、幅広部20を備え、長手方向DLの寸法がより大きいものであるため、例えば、以下のような方法で、個包装体10から生理用ナプキン1を離脱させることが想定される。
まず、個包装状態の個包装体10は、長手方向DL及び幅方向DWにそれぞれ三つ折りにされているが、使用者は、まず、個包装体10を長手方向DLに展開し、次いで、幅方向DWに展開する。生理用ナプキン1は、前方側DFの端部に幅広部20を備えているが、使用者は、例えば、幅広部20の幅方向DWの一方端部を指先で摘み、個包装シート11の対角線方向に生理用ナプキン1離脱させようとする。この際、幅広部剥離シート13、13のうちの一方が対抗する、前方側接着部72、72のうちの一方には、幅方向DWに向かう力がかかる。本発明の生理用ナプキン1の個包装体は、そのような場合においても、生理用ナプキン1を、幅広部剥離シート13、13から剥離させやすく、個包装シート11から離脱させやすい。
一方の幅広部剥離シート13が、生理用ナプキン1から剥離した後には、他方の幅広部剥離シート13や、吸収体位置剥離シート14についても、生理用ナプキン1の個包装シート11の離脱が進むにつれて、剥離することとなる。
【0103】
<第2実施形態>
以下、本発明の個包装体の第2実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、第1実施形態と相違する点について主に説明する。
図6~
図8は本実施形態に係る個包装体10(個包装の状態)の構成例を示す図である。
図6は、生理用ナプキン1の個包装体10(個包装の状態)の構成例を示す斜視図である。
図7は、生理用ナプキン1の個包装体10の構成例を示す平面図である。
図8は、実施形態に係る生理用ナプキン1の個包装方法(個包装体10の形成方法)を示す模式図である。ただし、
図6及び
図8は、基本的にそれぞれ
図1及び
図5と同じであるが、個包装体10内での機能層21や幅広部剥離シート13、13の位置を分かり易く示している点でそれぞれ
図1及び
図5と相違している。
【0104】
ここで、個包装体10は、幅方向DWにおいて、長手方向第1折り線LW1及び長手方向第2折り線LW2により三つの領域に区画されるものとする。すなわち、個包装体10は、幅方向DWに、長手方向第1折り線LW1よりも外側(一端側)の第1幅方向折り畳み部B1と、長手方向第2折り線LW2よりも外側(他端側)の第2幅方向折り畳み部B2と、長手方向第1折り線LW1と長手方向第2折り線LW2との間の幅方向中央部BCと、に区画されるものとする。なお、それらの部分は、個包装体10が長手方向第1折り線LW1及び長手方向第2折り線LW2で折り畳まれた場合でも、同様に第1幅方向折り畳み部B1、第2幅方向折り畳み部B2及び幅方向中央部BCと称すものとする。
更に、個包装体10は、長手方向DLにおいて、幅方向第1折り線LL1及び幅方向第2折り線LL2により三つの領域に区画されるものとする。すなわち、個包装体10は、長手方向DLに、幅方向第1折り線LL1よりも外側(一端側)の第1長手方向折り畳み部A1と、幅方向第2折り線LL2よりも外側(他端側)の第2長手方向折り畳み部A2と、幅方向第1折り線LL1と幅方向第2折り線LL2との間の長手方向中央部ACと、に区画されるものとする。なお、それらの部分は、個包装体10が幅方向第1折り線LL1及び幅方向第2折り線LL2で折り畳まれた場合でも、同様に第1長手方向折り畳み部A1、第2長手方向折り畳み部A2及び長手方向中央部ACと称すものとする。
【0105】
個包装体10では、個包装された状態において、
図6に示すように、第1長手方向折り畳み部A
1が、一対の側部63、63と、中間部61と、を含んでいる。ここで、一対の側部63、63は、長手方向第1折り線LW
1と長手方向第2折り線LW
2とで折り畳まれた第1長手方向折り畳み部A
1における粘着テープ12の幅方向D
Wの両側に位置しており、長手方向D
Lに延在している。本実施形態では、一方の側部63は、第1長手方向折り畳み部A
1において、粘着テープ12の幅方向D
Wの一方の側縁の位置を、側部63の幅方向D
Wの一方の端縁として、その端縁よりも幅方向D
Wの外側の部分である。その側部63の幅方向D
Wの他方の端縁の位置は長手方向第1折り線LW
1の位置である。他方の側部63は、粘着テープ12の幅方向D
Wの他方の側縁を、側部63の幅方向D
Wの一方の端縁として、その端縁よりも幅方向D
Wの外側の部分である。その側部63の幅方向D
Wの他方の端縁の位置は長手方向第2折り線LW
2の位置である。別の実施形態では、一対の側部63、63の各々における幅方向D
Wの内側の端縁は、粘着テープ12の幅方向D
Wの両端縁よりも、内側又は外側のいずれかである。ただし、内側又は外側は、幅方向D
Wにおいて、例えば、粘着テープ12の幅方向D
Wの端縁から粘着テープ12の幅方向D
Wの寸法の1/2未満の範囲である。
【0106】
中間部61は、幅方向DWにおいて、一対の側部63、63の間に位置しており、長手方向DLに延在している。中間部61は、幅方向DWにおいて、粘着テープ12の寸法と同じ寸法を有し、一対の側部63、63の両方に接している。別の実施形態では、中間部61は、幅方向DWにおいて、粘着テープ12の寸法未満の寸法を有し、一対の側部63、63の間に位置し、一対の側部63、63の一方に接している。更に、別の実施形態では、中間部61は、幅方向DWにおいて、粘着テープ12の寸法未満の寸法を有し、一対の側部63、63の間に位置し、一対の側部63、63の両方に接していない。
【0107】
本実施形態では、一対の側部63、63の各々の剛性は、中間部61の剛性よりも高い。言い換えれば、中間部61は、一対の側部63、63の間の領域のうちの、相対的に剛性が低い領域ということができる。それゆえ、幅方向DWの両外側から個包装体10(の第1長手方向折り畳み部A1)に力が加わると、各側部63は変形し難く、中間部61は変形し易い。したがって、上記の幅方向DWの力を、一対の側部63、63を相対的に小さく変形させつつ、中間部61を相対的に大きく変形させて逃がすことができる。なお、中間部61は、一対の側部63、63の間の領域に相対的に剛性が低い領域として存在すればよいので、幅方向DWの全域に亘って存在する必要はなく、幅方向DWの一部の領域に存在していればよい。
【0108】
本実施形態では、一方の側部63には、第1幅方向折り畳み部B
1及び幅方向中央部B
Cの幅方向D
Wの一方側の部分が厚さ方向Tに積層され、他方の側部63には、第2幅方向折り畳み部B
2及び幅方向中央部B
Cの幅方向D
Wの他方側の部分が厚さ方向Tに積層されている。したがって、
図7などに示すように、各側部63の大部分は、幅広部剥離シート13と、幅広部剥離シート13の一方及び他方の面に配置された前方側接着部72(図示されず)及び剥離シート接着部16(図示されず)と、2枚分の機能層21と、2枚分の表面シート2と、2枚分の裏面シート3と、2枚分の個包装シート11と、が厚さ方向Tに積層されている。一方、中間部61は、幅方向中央部B
C並びに第1幅方向折り畳み部B
1及び第2幅方向折り畳み部B
2の幅方向D
Wの外側の端縁の近傍部分が厚さ方向Tに積層されている。したがって、
図7などに示すように、中間部61の大部分は、機能層21と、2枚分の表面シート2と、2枚分の裏面シート3と、3枚分の個包装シート11と、が厚さ方向Tに積層されている。ここで、側部63及び中間部61における表面シート2、裏面シート3、個包装シート11の剛性に対する効果を同程度と考えると、各側部63は、中間部61と比較して、前方側接着部72、幅広部剥離シート13、剥離シート接着部16、及び機能層21をより多く含んでいる。よって、各側部63は、中間部61よりも多くの層で形成されている。言い換えれば、中間部61は、一対の側部63、63の間の領域における、相対的に少ない層で形成された領域ということができる。それゆえ、幅方向D
Wの両外側から個包装体10(の第1長手方向折り畳み部A
1)に力が加わったとき、各側部63は変形し難く、中間部61は変形し易い。したがって、上記の幅方向D
Wの力を、一対の側部63、63を相対的に小さく変形させつつ、中間部61を相対的に大きく変形させて逃がすことができる。なお、中間部61としては、一対の側部63、63の間の領域に相対的に少ない層で形成された領域として存在すればよいので、幅方向D
Wの全域に亘って存在する必要はなく、幅方向D
Wの一部の領域に存在していればよい。
【0109】
次に、本実施形態に係る生理用ナプキン1の個包装体10の作用を説明する。
図9は、個包装体10の作用を示す模式図である。使用者が一方の手Hで個包装体10を幅方向D
Wに把持することで、個包装体10に、その幅方向D
Wの両端部から中央部に向かう力Kが加わる場合がある。その場合、加わった力Kの大きさが強過ぎるときには、個包装体10、したがって第1長手方向折り畳み部A
1及び第2長手方向折り畳み部A
2のいずれも手のひらの形状に沿って、略凹状に変形してしまう状況が生じ得る。そうなると、粘着テープ12を上手に摘まむことが困難になるおそれがある。
【0110】
そこで、本生理用ナプキン1では、第1長手方向折り畳み部A1において、粘着テープ12の両側に位置する一対の側部63、63の各々の剛性を、一対の側部63、63の間に位置する中間部61の剛性よりも高くしている。したがって、第1長手方向折り畳み部A1に幅方向DWの両端部から中央部に向かう力Kが加わったとき、剛性の高い各側部63を変形し難くすることができ、剛性の低い中間部61を変形し易くすることができる。あるいは、本生理用ナプキン1では、第1長手方向折り畳み部A1において、一対の側部63、63の各々の内部に補強部材(例示:機能層21、前方側接着部72、幅広部剥離シート13、剥離シート接着部16、及び、他のシート部材の少なくとも一つ)を配置している。したがって、第1長手方向折り畳み部A1に幅方向DWの両端部から中央部に向かう力Kが加わったとき、補強部材を含む各側部を変形し難くすることができ、補強部材を含まない中間部が変形し易くすることができる。
【0111】
ただし、中間部61は粘着テープ12で第2長手方向折り畳み部A2に固定されてやや変形し難い。そのため、第1長手方向折り畳み部A1に幅方向DWの両端部から中央部に向かう力Kが加わったとき、一対の側部63、63と中間部61との境界付近の部分が主に変形することになる。具体的には、長手方向DLから見て、第1長手方向折り畳み部A1のうち、一対の側部63、63と中間部61との境界付近の部分が変形することで、中間部61を基点として、一対の側部63、63における、個包装体10の幅方向DWの両端部に対応する部分が立ち上がる。すなわち、中間部61を一種の折線(又は基点)として、その両側の側部63、63が立ち上がり、略V字の形状が形成される。このとき、第2長手方向折り畳み部A2は略凹状に変形するが、その幅方向DWの外側の部分の立ち上がりは少ない。そのため、第2長手方向折り畳み部A2と一対の側部63、63の各々との間に隙間Vが生じる。これらの隙間Vが生じると、使用者は、自然に、いずれかの隙間Vに指を挿入して、その側部63を摘まんで、第2長手方向折り畳み部A2から引き離すことで、粘着テープ12を剥離しようとする。ここで、一対の側部63、63の各々は、相対的に剛性が高いので、その引き離そうとする力を粘着テープ12に容易に伝達することができる。それにより、使用者は、隙間Vに指を挿入して、側部63を摘まんで、粘着テープ12を剥離させて、容易に、個包装体10を開封することが可能となる。すなわち、生理用ナプキン1の個包装体10において、一方の手Hで把持して、他方の手で開封する際にも、開封し易い個包装体10を提供できる。
【0112】
ここで、側部63は相対的に剛性が高い(又は変形し難い)が、側部63全体が、高剛性である必要はなく、部分的に高剛性であればよい。平面視で、側部63における剛性の高い(又は変形し難い)領域の面積は、側部63全体の面積の30%以上が挙げられ、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましい、60%以上が更により好ましい。また、平面視において、側部63における剛性が高い(又は変形し難い)領域の長手方向DLの寸法は、力Kを加える指が配置される範囲を考慮して、側部63の長手方向DLの寸法の30%以上が挙げられ、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましい、60%以上が更により好ましい。また、平面視において、側部63における剛性が高い(又は変形し難い)領域の幅方向DWの寸法は、力Kに対する抵抗力の観点から、側部63の幅方向DWの寸法の60%以上が挙げられ、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい、90%以上が更により好ましい。
【0113】
一方、中間部61は剛性の低い(又は変形し易い)が、一対の側部63、63の間の領域全体が、低剛性である必要はなく、部分的に低剛性であればよい。平面視において、一対の側部63、63の間の領域における剛性の低い(又は変形し易い)領域の面積は、一対の側部63、63の間の領域全体の面積の40%以上が挙げられ、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい、70%以上が更により好ましい。また、平面視において、一対の側部63、63の間の領域における剛性の低い(又は変形し易い)領域の長手方向DLの最大寸法は、中間部61が一種の折線として機能する観点から、側部63の長手方向DLの寸法の60%以上が挙げられ、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい、90%以上が更により好ましい。また、平面視において、一対の側部63、63の間の領域における剛性の低い(又は変形し易い)領域の幅方向DWの最大寸法は、中間部61が一種の折線として機能する観点から、一対の側部63、63の間の領域全体の幅方向DWの寸法の10%以上が挙げられ、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましい、40%以上が更により好ましい。
【0114】
一対の側部63、63の各々の剛性(又は変形し難さ)を相対的に高める方法としては、上記のように、中間部61が含まない層(例示:少なくとも幅広部剥離シート13、好ましくは前方側接着部72、剥離シート接着部16)又は含んでも数が少ない層(機能層21)を側部63に追加することで、側部63を相対的に多層で形成する方法が挙げられる。このような少なくとも幅広部剥離シート13、好ましくは機能層21、前方側接着部72、剥離シート接着部16等は、側部63の剛性を補強する補強部材ということができる。あるいは、剛性を相対的に高める方法としては、上記のように、既に含まれているシート部材等の資材を、側部63の剛性が高くなるように、側部63に含まれ、中間部61に含まれないように配置したり、側部63に配置された資材の剛性を高めたりする方法があり得る。資材の剛性を高める方法としては、材質の変更や厚さの変更などの方法があり得る。あるいは、剛性を相対的に高める方法としては、上記の剥離シート以外の、相対的に剛性の高いシート部材などの部材を補強部材として、平面視で、側部63の全体又は一部に挿入する方法があり得る。
【0115】
ただし、側部63と中間部61との間の剛性(又は変形し難さ)の比較は、以下に説明する押込力の測定結果を比較することにより行うことができる。押込力は、略板状の試料に所定の冶具を厚さ方向に所定距離だけ押し込んだときに要する荷重の大きさとして測定される。押込力が大きいほど変形し難い、よって、剛性が高いといえる。押込力を測定する装置は、試料台と、試料台の上面からの内部へ延びる孔部と、試料台の上面に試料を固定する固定具と、試料台の上方に配置され、孔部へ挿通可能な円柱状の冶具と、冶具に掛かる荷重を測定するデジタルフォースゲージと、を備える。測定方法は、測定対象領域が孔部を覆うように試料を試料台の上面に載置して固定具で固定し、試料の上方から孔部へ向かって冶具を下降させたとき、冶具に掛かる荷重を測定する。その測定方法は、具体的には次のように行う。
【0116】
(1)長手方向第1折り線LW1及び長手方向第2折り線LW2で折り畳まれた第1長手方向折り畳み部A1を切り出して試料とする。試料の第1長手方向折り畳み部A1を、例えば、2mm角の矩形を有する複数の測定対象領域で区画しておく。
(2)試料の平面方向(長手方向DL及び幅方向DW)と、試料台の上面とが平行になるように、試料を試料台の上面に載置して固定具で固定する。ただし、試料台には、試料台の上面から略垂直に内部へ延びる孔部(直径20mm×深さ10mm)が形成されている。試料を、一つの測定対象領域の中心が孔部の中心に位置するように、固定する。
(3)試料台をスタンド上にセットする(試料台がスタント上に予めセットされていてもよい)。ただし、スタンドは、鉛直方向の上方に延びる柱状部材を備える。柱状部材には測定子の先端に円柱状の冶具(直径2mm×長さ100mm)が連結されたデジタルフォースゲージ(FGP-5:日本電産シンポ株式会社製)が取り付けられている。冶具は、試料台の孔部の鉛直方向の上方に、その先端が試料の測定対象領域に接するように配置される。このとき、冶具は、試料の平面方向に対して垂直に移動して、厚さ方向Tに試料を押し込むことが可能になっている。
(4)冶具を、速度30mm/minで鉛直方向の下方に移動させて、試料の測定対象領域を厚さ方向Tに1mm押込む。そのときのデジタルフォースゲージが計測した最大荷重(N)を記録する。
(5)第1長手方向折り畳み部A1において測定対象領域を順次変更して、(1)~(4)の測定を繰り返し、第1長手方向折り畳み部A1全体を測定する。
(6)異なるN個(Nは3以上の自然数)のサンプルで、(1)~(5)の測定を繰り返し、それらの平均値を、押込力として採用する。
【0117】
なお、側部と中間部との間の剛性(又は変形し難さ)の比較は、側部及び中間部が含む層の数や種類により行うこともできる。例えば、側部63は、中間部61が含まない層(例示:前方側接着部72、幅広部剥離シート13、剥離シート接着部16)及び含んでも数が少ない層(例示:機能層21)を含んでいる。したがって、側部63は明らかに中間部61よりも相対的に剛性が高い(又は変形し難い)ということができる。あるいは、側部63が、明らかに剛性が高い(又は変形し難い)補強部材を含んでおり、中間部61が含んでいなければ、側部63は明らかに中間部61よりも相対的に剛性が高い(又は変形し難い)ということができる。
【0118】
別の実施形態では補強部材(例示:機能層21、機能層21、前方側接着部72、幅広部剥離シート13、剥離シート接着部16)の一部は、一対の側部63、63の各々から、隣接する中間部61の幅方向DWの端部まで延出している。すなわち、補強部材が側部63から、その側部63に隣接する中間部61の端縁を越えて中間部61の内部(ただし、端部の範囲)まで延出している。そのため、側部63を摘んで第2長手方向折り畳み部A2から引き離そうとする力を加えたとき、その力を粘着テープ12により確実に伝達することができる。すなわち、使用者は、より容易に、個包装体10を開封することが可能となる。なお、端部とは全体の両端縁から全体の30%の範囲をいう。
【0119】
本発明の個包装体における吸収性物品は、上述の各実施形態の生理用ナプキンに限定されず、パンティーライナー、失禁パッド、母乳パッド、使い捨ておむつ等の様々な吸収性物品に適用することができる。
また、本発明の個包装体は、上述した各実施形態等に限定されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや代替、変更等が可能である。なお、本明細書において、「第1」、「第2」等の序数は、当該序数が付された事項を区別するためのものであり、各事項の順序や優先度、重要度等を意味するものではない。
【符号の説明】
【0120】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5 サイドシート
6 フラップ部
7 着衣固定用接着部
71 フラップ部固定用接着部
72 前方側接着部
10 個包装体
11 個包装シート
12 粘着テープ
13 幅広部剥離シート
14 吸収体位置剥離シート
15 フラップ部剥離シート
16 剥離シート接着部
20 幅広部
21 機能層
30 吸収領域
40 重複部