(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】レナリドミドの経口用錠剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/454 20060101AFI20220215BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220215BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220215BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220215BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220215BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220215BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220215BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20220215BHJP
A61K 9/32 20060101ALI20220215BHJP
A61K 9/34 20060101ALI20220215BHJP
A61K 9/36 20060101ALI20220215BHJP
A61K 9/40 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
A61K31/454
A61P35/00
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/04
A61K9/28
A61K9/32
A61K9/34
A61K9/36
A61K9/40
(21)【出願番号】P 2019519984
(86)(22)【出願日】2017-09-11
(86)【国際出願番号】 KR2017009928
(87)【国際公開番号】W WO2018070671
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2019-06-04
(31)【優先権主張番号】10-2016-0133746
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0113112
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521274533
【氏名又は名称】サムヤン ホールディングス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】SAMYANG HOLDINGS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】31,Jong-ro 33-gil,Jongno-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,サンヨブ
(72)【発明者】
【氏名】リム,ヘジョン
(72)【発明者】
【氏名】リ,サウォン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ミンヒョ
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105534981(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0046315(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105919958(CN,A)
【文献】P&T,Vol.41(5),2016年05月,pp.308-313
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 9/00
A61K 47/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、レナリドミド;
糖、糖アルコール、セルロース、デンプン、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる希釈剤;
クロスカルメロースナトリウム、
カルボキシメチルセルロース、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、
カルボキシメチルセルロースナトリウム、部分加水分解されたデンプン、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる崩壊剤;並びに
ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる潤滑剤;
を含み、
素錠100重量部に対して、3~20重量部のコーティング基剤でコーティングされており、
レナリドミド1重量部に対して、3~30重量部の希釈剤、0.1~2.5重量部の崩壊剤、および0.03~0.75重量部の潤滑剤を含み、
AUC(Area under curve)が、140~7100ng・hr/mLであり、C
maxが42~2100ng/mLである経口用
直接圧縮錠剤組成物。
【請求項2】
pH1.2の900mLの溶出溶媒中で、50回転/分のパドル法で測定したとき、2.5分での溶解溶出率が1~50%である請求項1に記載の経口用
直接圧縮錠剤組成物。
【請求項3】
5分での溶解溶出率が10~95%である請求項2に記載の経口用
直接圧縮錠剤組成物。
【請求項4】
pH1.2の緩衝溶液中での崩壊時間が、1分~20分である請求項1~3のいずれか1項に記載の経口用
直接圧縮錠剤組成物。
【請求項5】
硬度が、10N~300Nである請求項4に記載の経口用
直接圧縮錠剤組成物。
【請求項6】
摩損度が、2%以内である請求項4に記載の経口用
直接圧縮錠剤組成物。
【請求項7】
コーティング層が、単層以上である請求項1~6のいずれか1項に記載の経口用
直接圧縮錠剤組成物。
【請求項8】
コーティング層の膜厚が、1μm以上である請求項1~7のいずれか1項に記載の経口用
直接圧縮錠剤組成物。
【請求項9】
コーティング基剤が、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、マクロゴールポリビニルアルコールグラフト共重合体、アクリル酸及びその塩の重合体、ポリメタクリレート、ポリ(ブチルメタクリレート,2-ジメチルアミノエチルメタクリレート,メチルメタクリレート)共重合体、ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体、ゼラチン、グァーガム、部分加水分解されたデンプン、アルギネート、キサンタン、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる請求項1~8のいずれか1項に記載の経口用
直接圧縮錠剤組成物。
【請求項10】
希釈剤が、ラクトース、セルロース粉末、微晶質セルロース、ケイ化微晶質セルロース、デンプン、糊化デンプン、シクロデキストリン、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ラクトース、デキストロース、マルトース、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトデキストリン、デキストレート、デキストリン、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる請求項1~9のいずれか1項に記載の経口用
直接圧縮錠剤組成物。
【請求項11】
錠剤の体積が、0号のカプセルより小さい請求項1~10のいずれか1項に記載の経口用
直接圧縮錠剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レナリドミドを含む経口用錠剤組成物及びその製造方法に関し、より詳細には、硬質カプセル剤のレナリドミド製剤と理化学的同等性を示し、非臨床試験及び生物学的同等性試験において同じ薬理学的、治療効果を示し、服用の容易性、取扱性、安全性などが改善された錠剤形態の組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性骨髄腫は、形質細胞の異常な分化及び増殖を特徴とする血液癌である。これらの異常な形質細胞は、骨髄腫細胞(myeloma cell)と呼ばれている。骨髄腫細胞は腫瘍を形成し、骨を溶解して痛みや骨折を誘発し、そして骨髄に侵入して白血球、赤血球、血小板のレベルを下げ、その結果、貧血、感染、及び出血の危険度を増加させる。更に、骨髄腫細胞は、異常な免疫タンパク質であるMタンパク質を産生し、これにより、血液の濃度が濃くなって、過粘度症候群又は腎臓障害を引き起こす。主に男性(特に、黒人男性)及び65歳以上の高齢者から発生しており、近年、韓国では、発生率が徐々に増加している傾向にある。多発性骨髄腫の主な治療剤としては、ボルテゾミブ、サリドマイド及びレナリドミドがあり、注射剤であるボルテゾミブは、市場で着実に拡大している。経口剤の場合、レナリドミドはサリドマイドよりも頻繁に使用されており、市場で急速に拡大している。
【0003】
レナリドミドは、サリドマイドの次世代薬物であり、その強力な抗癌作用と免疫調節により、より優れた治療効果を示している。再発又は難治性疾患を有する患者におけるレナリドミドとデキサメタゾンとの組み合わせは、無病生存期間13.4カ月及び全生存期間38カ月を有意に改善したことが報告されている。サリドマイドの末梢神経障害などの副作用は殆ど解消された。骨髄抑制の副作用がより深刻になっているが、白血球刺激因子を投与しても大きな問題がないことが知られている。これらの利点により、レナリドミドの市場が急速に拡大している。
【0004】
レナリドミドは、セルジーン社が経口用カプセル製剤として開発したものであり、25、20、15、10、7.5、5、2.5mgの用量で製品化されている。韓国でのブランド名は、レブラミド(登録商標)カプセルであり、レナリドミド半水和物を含んでいる。硬質カプセル製剤であるレブラミド(登録商標)カプセルは、25、20、15、10mgの製剤の全ての場合において0号カプセルに充填されており、長軸が約2.17cmとかなり長くて、嵩張っている。したがって患者、特に高齢の患者は服用が不便であると感じることがある。更に、水で服用した場合でも、カプセルは嚥下中に喉や食道に張り付くことがある。この場合、たとえ患者が多量の水を飲んだとしてもカプセルはその部位から除去できないことがある。薬物が誤ってカプセルから放出されると、痛みを引き起こす可能性があり、場合によっては炎症を引き起こす可能性がある。長さが短く、且つ容積の小さい錠剤形態が開発されれば、不便、且つ嵩高いカプセルによって引き起こされる上記問題を解決することができ、それにより、患者は、より容易に薬を服用することができる。即ち、カプセルの欠点を克服することができる。
【0005】
1950年代後半から1960年代にかけて、サリドマイドは妊婦のつわり防止剤として使用されたが、予期せぬ催奇形性の副作用により世界中で何万人もの奇形児が生まれたという悲劇的な出来事があった。サリドマイドと類似するレナリドミドは、催奇形性の副作用があるので、妊娠中の女性、妊娠可能年齢の女性又は妊娠可能性の女性に投与又は治療することは禁止されている。このような副作用の防止のために、カプセル剤を製造する際に厚いゼラチンカプセルが薬物を取り囲むようにして、安全な遮蔽を達成できると考えられる。しかし、錠剤(特に、素錠)の場合には、錠剤の表面に薬物が直接存在し、使用とは無関係の取扱者に暴露される可能性がある。患者が錠剤の分割線に沿って分割量を服用する場合、又は脆弱さのためにPTP包装から取り出す際に壊れた場合、又は摩損度が良くないため崩れている場合、取扱者及び周囲の人々に薬が曝される危険がある。錠剤がコーティングされている場合、皮膜生成率が低いため十分な量でコーティングされず、錠剤の一部又は多くの部分に薬物が暴露されるか、又はコーティング中に薬物が持続的に放出されるため、コーティング層の表面に薬物が存在する場合などでは、取扱者及び周囲のヒトへの暴露のリスクもある。
【0006】
したがって、従来とは異なり、十分な量のコーティング基剤を塗布して完全にコーティングすることにより、錠剤全体を一定以上の厚さのコーティングで保護できるだけでなく、薬物を取扱者などから完全に遮蔽することができるコーティング錠が必要とされる。
【0007】
同時に、臨床的に検証されている市販のカプセル剤と同じ薬物放出速度及び放出パターンを発揮するように薬物を設計及び製造することが必要である。そこで、適切な硬度範囲を確立するために、最適なコーティング圧力を選択すること、適切なコーティング基剤を選択すること、及び適切なコーティング速度及び類似の溶出パターンを示すように、コーティングシステムを設計することが不可欠である。広範囲のpHの溶出溶媒中でインビトロでの物理化学的同等性を確保するだけでなく、ヒト被検体を用いたインビボでの生物学的同等性の薬物動態試験及び実験動物を用いた非臨床試験において同等性を示すことが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、市販の硬質カプセル剤のレナリドミド製剤の剤型を錠剤に変更することによって、錠剤組成物及びその製造方法を提供することにある。上記錠剤は、コーティング剤とコーティング厚を適切に選択することにより、錠剤全体の一定厚さにわたって完全に包むことによって、薬物と取扱者を互いに離すことができ、コーティング工程中に薬物が放出するのを防止することができる。
【0009】
また、本発明の他の目的は、溶出パターンがカプセル中のものと同等であり、比較溶出試験において理化学的同等性を示すだけでなく、実験動物及び生物学的同等性試験のインビボ試験においても同等性を示す錠剤組成物及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
したがって、本発明は、市販中のカプセル製剤と同様の薬理学的効能と効果を有しており、更に発展して、外観、服用及び取扱の便利性、製造容易性、安全性などが向上した錠剤組成物及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
用語の意義
特に明記しない限り、本明細書に使用する幾つかの用語は以下のように定義され得る。
【0012】
文脈上、そうでないとする明確な指示がない限り、「含む」又は「含有する」は、任意の構成要素(又は構成成分)を特別な制限なしに含むことを意味し、他の構成要素(又は構成成分)を除外すると解釈すべきではない。
【0013】
また、「レナリドミド」は、レナリドミドベース(塩を含まない基剤)、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくはその異性体、又はそれらの混合物であってもよい。また、それぞれの場合において様々な水和物であってもよく、また、それぞれの場合において様々な結晶形であってもよい。例えば、レナリドミド無水物、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物など種々の水和物又は種々の溶媒和物、又はそれらの混合物であってもよい。
【0014】
更に、「微粉化」は、それが非常に小さいサイズ、例えば、平均直径がマイクロメートル又はナノメートルに粉末化されたことを意味する。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、有効成分として、レナリドミド及び一つ以上の薬学的に許容される担体を含む経口用錠剤組成物を提供する。より具体的には、素錠の表面がコーティング基剤でコーティングされている経口用錠剤組成物を提供する。
【0016】
一実施形態において、上記経口用錠剤組成物は、有効成分として、レナリドミド;糖、糖アルコール、セルロース、デンプン、無機塩及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる希釈剤;膨潤性崩壊剤、湿潤性崩壊剤及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる崩壊剤;及び可溶性潤滑剤、不溶性潤滑剤及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる潤滑剤;を含み、AUC(Area under curve)が、140~7100ng・hr/mLであり、Cmaxが42~2100ng/mLであってもよいが、これに限定されない。
【0017】
一実施形態において、上記経口用錠剤組成物は、pH1.2の900mLの溶出溶媒中で、50回転/分のパドル法で測定したとき、2.5分での溶解溶出率が1~50%であってもよいが、これに制限されない。
【0018】
一実施形態において、上記経口用錠剤組成物は、pH1.2の900mLの溶出溶媒中で、50回転/分のパドル法で測定したとき、5分での溶解溶出率が10~95%であってもよいが、これに制限されない。
【0019】
一実施形態において、上記経口用錠剤組成物は、pH1.2の緩衝溶液中での崩壊時間が1分~20分であってもよいが、これに制限されない。
【0020】
一実施形態において、上記経口用錠剤組成物は、硬度が10N~300Nであってもよく、摩損度が2%以内であってもよいが、これに制限されない。
【0021】
一実施形態において、上記経口用錠剤組成物のコーティング層が単層以上であってもよく、及び/又はコーティング層の膜厚が1μm以上であってもよいが、これに制限されない。
【0022】
一実施形態において、上記経口用錠剤組成物は、レナリドミド1重量部に対して、希釈剤0.5~200重量部、崩壊剤0.02~10重量部及び潤滑剤0.005~3.5重量部を含んでいてもよいが、これに制限されない。
【0023】
一実施形態において、上記錠剤の体積が0号のカプセルより小さくてもよいが、これに制限されない。
【0024】
また、本発明は、有効成分として、レナリドミド及び一つ以上の薬学的に許容される担体を混合し、混合物を打錠し、コーティング前錠剤(素錠)を製造した後、素錠の表面をコーティング基剤でコーティングすることを含む経口用錠剤組成物の製造方法を提供する。
【0025】
本発明において、レナリドミドは、微粉化形態で使用され得る。微粉化レナリドミドの平均粒径(X50)は、例えば100μm未満、好ましくは50μm未満、より好ましくは30μm未満、更に好ましくは15μm未満であってもよい。また、微粉化レナリドミドの平均粒径(X50)は、例えば、0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上であってもよい。レナリドミドの平均粒径が上記範囲内にない場合、溶出率低下又は工程上の弊害が生じる虞がある。平均粒径(X50)とは、粒度分布曲線中の重量百分率の50%相当径を意味し、例えば、光回折式粒度分布計を用いて測定することができる。
【0026】
本発明の錠剤組成物において、素錠に含まれる薬学的に許容される担体は、例えば、希釈剤、崩壊剤及び潤滑剤から選ばれる一つ以上であってもよい。
【0027】
一実施形態において、希釈剤は、糖、糖アルコール、セルロース、デンプン、無機塩、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれてもよい。
【0028】
一実施形態において、崩壊剤は、膨潤性崩壊剤、湿潤性崩壊剤、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれてもよい。
【0029】
上記糖は、単糖類、多糖類、及びそれらの薬学的に許容される誘導体を包括する概念である。デンプンは、デンプン及びその薬学的に許容される誘導体を包括する概念である。セルロースは、セルロース及びその薬学的に許容される誘導体を包括する概念である。それらは当業者に公知であり、入手可能であるが、特定の成分に特に制限されない。
【0030】
上記希釈剤は、例えば、ラクトース(無水物又は水和物、例えば、一水和物)、セルロース粉末、微晶質セルロース、ケイ化微晶質セルロース、デンプン、糊化デンプン、炭酸カルシウム、シクロデキストリン、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、三ケイ酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸三カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ラクトース、デキストロース、マルトース、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトデキストリン、デキストレート、デキストリン、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれた1種以上であってもよいが、これらに限定されない。好ましくは、ラクトース、微晶質セルロース、マンニトール、デンプン、又はそれらの混合物を選択してもよい。最も好ましくは、ラクトースと微晶質セルロースの混合物を選択してもよく、希釈剤は、結合剤としても作用し得る。
【0031】
一実施形態において、上記希釈剤は、レナリドミド1重量部に対して、例えば、0.5~200重量部、好ましくは1~100重量部、より好ましくは2~50重量部、更に好ましくは3~30重量部、更に好ましくは4~20重量部の量で使用することができる。希釈剤の使用量が上記範囲より遙かに少ない場合、錠剤を製造することが困難である。一方、希釈剤を、上記範囲を超えて使用すると、薬物の濃度が低くなる可能性があるため、錠剤製造時の内容物均一性の確保に問題が生じる可能性がある。
【0032】
上記崩壊剤は、例えば、デンプン、セルロース、架橋高分子、ガム類、多糖類、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれてもよい。例えば、クロスカルメロースナトリウム(CrosCMC-Na)、カルボキシメチルセルロース、クロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)、L-HPC(低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)、デンプン(小麦、米、トウモロコシ又はジャガイモデンプン)、カルボキシメチルデンプンナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、キシラン、ジェランガム、キサンタンガム、部分加水分解されたデンプン、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれた1種以上であってもよいが、これらに限定されない。好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、L-HPC、デンプングリコール酸ナトリウムであってもよい。より好ましくは、クロスカルメロースナトリウムであってもよい。
【0033】
一実施形態において、上記崩壊剤は、レナリドミド1重量部に対して、例えば0.02~10重量部、好ましくは0.05~5重量部、より好ましくは0.1~2.5重量部、更に好ましくは0.15~1.5重量部、更に一層好ましくは0.2~1重量部の量で使用してもよい。崩壊剤の使用量が上記範囲より遙かに少ないと、崩壊速度の遅延により溶出速度の遅延が問題となる場合がある。一方、崩壊剤を、上記範囲を超えて使用する場合、圧縮不良又はコーティング不良などの生産性に問題が生じる可能性がある。
【0034】
一実施形態において、潤滑剤は、可溶性潤滑剤、不溶性潤滑剤、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれてもよい。
【0035】
上記潤滑剤は、潤滑剤、粘着防止剤、流動促進剤を包括する概念である。例えば、潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン(小麦、米、トウモロコシ又はポテトデンプン)、タルク、高分散(コロイド)シリカ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ベヘン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、硬化植物油、硬質流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、モノステアリン酸ポリオキシエチレン、三酢酸グリセリル、スクロースモノラウラート、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれた1種以上であってもよいが、これらに限定されない。上記潤滑剤は、好ましくはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、高分散(コロイド)シリカであってもよい。より好ましくはステアリン酸マグネシウムであってもよい。
【0036】
一実施形態において、上記潤滑剤は、レナリドミド1重量部に対して、例えば、0.005~3.5重量部、好ましくは0.015~2.0重量部、より好ましくは0.03~0.75重量部、更に好ましくは0.05~0.5重量部、更に一層好ましくは0.1~0.35重量部の量で使用してもよい。潤滑剤使用量が上記範囲より遙かに少ないと、圧縮不良など生産性に問題が生じる場合がある。一方、潤滑剤を、上記範囲を超えて使用すると、溶出遅延や生産性に問題が生じる可能性がある。
【0037】
上記コーティング基剤は、親水性高分子であってもよく、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、マクロゴールポリビニルアルコールグラフト共重合体、アクリル酸及びその塩の重合体、ポリメタクリレート、ポリ(ブチルメタクリレート,2-ジメチルアミノエチルメタクリレート,メチルメタクリレート)共重合体(例えば、オイドラギット(登録商標)E、エボニック(Evonik))、カルボキシメチルセルロース(ナトリウム塩及びカルシウム塩)、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、L-HPC(低置換度のHPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体(例えば、コリドン(Kollidon)(登録商標)VA64、BASF社製)、ゼラチン、グァーガム、部分加水分解デンプン、アルギネート、キサンタン、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれた1種以上であってもよいが、これらに限定されない。好ましくは、上記コーティング基剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、マクロゴールポリビニルアルコールグラフト共重合体、ポリ(ブチルメタクリレート、2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチルメタクリレート)共重合体(例えば、オイドラギット(登録商標)E、エボニック(Evonik))であってもよい。
【0038】
一実施形態において、上記コーティング基剤は、素錠100重量部に対して、例えば、1~30重量部、好ましくは2~25重量部、より好ましくは3~20重量部、更に好ましくは4~15重量部、更に一層好ましくは5~15重量部、最も好ましくは6~15重量部の量で使用することができる。親水性高分子の使用量が上記範囲より遙かに少ないと、素錠全体がコーティング基剤で覆われないという問題がある。一方、親水性高分子を、上記範囲を超えて使用すると、溶出速度が過度に遅れる可能性がある。
【0039】
錠剤を半分に切断した後のコーティング層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)等により測定することができる。このとき、錠剤全面が一定の厚さで均一にコーティングされていることが好ましく、平均厚さは5個以上の錠剤を測定して平均することにより求めることができる。断面を観察したとき、コーティング層の平均厚さは、1μm以上300μm以下であってもよい。より好ましくは3μm以上275μm以下、より好ましくは5μm以上250μm以下、更に好ましくは7μm以上225μm以下、更に一層好ましくは10μm以上200μm以下、更により一層好ましくは15μm以上180μm以下、最も好ましくは20μm以上150μm以下であってもよい。コーティング層の平均厚さが上記範囲より薄いと、錠剤全体を均一にコーティングすることが困難となり、取扱時に粉塵が発生することがある。コーティング層の平均厚さが上記範囲より厚いと、溶出遅延、過剰の処理時間などの理由により、所望の目的が達成されない場合がある。
【0040】
上記コーティング層を単層で形成する場合は、1種類以上のコーティング基剤を混合して用いてもよく、錠剤全体を十分量のコーティング基剤で被覆してコーティング層を形成してもよい。上記コーティング層は、二層以上であることが好ましい。例えば、二層を超える層でコーティングする場合、各層は、錠剤を薬物への暴露、水分、酸化などから保護するために異なるコーティング基剤で作製してもよい。一実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を用いた1次コーティングを行って薬物に対するバリアを形成し、次いでマクロゴールポリビニルアルコールグラフト重合体を用いた2次コーティングを行って最終的に二層のコーティング層を形成することが好ましい。一実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)による1次コーティングを行って薬物に対するバリアを形成し、次いでポリビニルアルコール(PVA)による2次コーティングを行って防湿バリアを形成することによって、より優れた機能を有する二層コーティング層を形成することができるが、これに限定されない。
【0041】
コーティング中に薬物がコーティング液によって瞬間的に溶解して、コーティング層に含まれるのを防止するために、コーティング液の製造に使用する溶媒の種類及び組成を慎重に選択する必要がある。更にコーティング条件は、コーティング液を素錠にコーティングした後、迅速に乾燥し得る条件を確立する必要がある。コーティング溶媒は、エタノール、メタノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ヘキサン、塩化メチレン、イソプロピルアルコール、水など、又はそれらの混合溶媒であってもよいが、それらに限定されない。好ましくは、エタノール、水、又はそれらの混合物を使用することができる。より好ましくはエタノールと水の混合物、塩化メチレンとエタノールの混合物、又はイソプロピルアルコールとエタノールの混合物を用いて1次コーティングを形成し、次いで水を用いて2次コーティングを形成することができる。
【0042】
前述のようなコーティング錠を製造する過程で、更に、コーティング効率、薬物安定性、外観、色、保護、維持、結合、性能、及び製造方法などを改善する目的のために、種々のさらなる生物学的に不活性な成分を使用することができる。
【0043】
本発明の一実施形態において、上記コーティング層に更に含まれてもよい生物学的に不活性な成分は、可塑剤、潤滑剤、着色剤、着香剤、界面活性剤、安定化剤、酸化防止剤、発泡剤、消泡剤、パラフィン、及びワックスなどよりなる群から選ばれた1種以上であってもよい。
【0044】
コーティング層に更に含まれてもよい上記可塑剤は、例えば、トリエチルシトラート、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、プロピレングリコール、トリアセチン、ポリエチレングリコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、及びセトステアリルアルコールよりなる群から選ばれる1種以上であってもよいが、これに限定されない。上記可塑剤は、各コーティング層に使用される高分子の全乾燥重量に対して、100重量%以下(例えば、0~100重量%又は0.1~100重量%)、具体的に50重量%以下(例えば、0~50重量%又は0.1~50重量%)、より具体的に30重量%以下(例えば、0~30重量%又は0.1~30重量%)で含まれてもよいが、これに限定されない。
【0045】
コーティング層に更に含まれてもよい上記潤滑剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、デンプン(小麦、米、トウモロコシ又はポテトデンプン)、タルク、高分散(コロイド)シリカ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ベヘン酸グリセリル、グルセリルモノステアレート、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれた1種以上であっても、これに限定されない。上記潤滑剤は、各コーティング層に使用される高分子の全乾燥重量に対して、100重量%以下(例えば0~100重量%又は0.1~100重量%)で含まれてもよいが、これに限定されない。
【0046】
一実施形態において、本発明の錠剤は、原料成分の称量後、(選択的に)顆粒化、混合、打錠、コーティングの順で製造することができる。顆粒化は、乾式顆粒、湿式顆粒などの方式で行うことができる。
【0047】
一実施形態において、湿式顆粒で顆粒化する場合、顆粒は、結合剤溶液を製造し、薬物と共に希釈剤などの混合物から顆粒を形成し、篩分けし、乾燥することによって得られる。その後、残りの成分を混合してから圧縮した。上記結合剤溶液は、水溶性高分子、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、L-HPC(低置換度のHPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体(例えば、コリドン(Kollidon)(登録商標)VA64、BASF社製)、又は糖類、糖アルコール類、例えば、白糖、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリトリトールなどを水やエタノール又はこれらの混合溶液に溶解して製造することができる。
【0048】
一実施形態において、乾式顆粒で顆粒化する場合、ローラーコンパクター等を用いて薬物、希釈剤及び結合剤の混合物をプレスし、篩分けした。その後、残りの成分を混合してから圧縮した。
【0049】
顆粒化の代わりに直接圧縮は、原料の称量直後に成分を混合し、圧縮するので、工程が簡単になるという長所がある。薬物自体に催奇形性の副作用があるため、製造工程中に保護具を着用する必要がある。妊婦や妊娠可能性のある女性は排除した方が良い。更に、作業者の薬物への暴露が最小限に抑えられる直接圧縮を使用することが好ましい場合があるが、それに限定されない。
【0050】
錠剤中の薬物の比率が低い場合、混合の均一性の確保が重要である。従って、混合工程から混合の均一性を確保のために注意を払う必要がある。薬物、希釈剤、崩壊剤、及び潤滑剤などが、一緒に混合されるのではなく、順次混合される場合、混合物の混合均一性が改善され得る。
【0051】
例えば、一実施形態において、希釈剤の一部を薬物と混合した後、再び希釈剤の一部を追加で添加して混合して、希釈剤の残りを更に添加して混合した。その後、崩壊剤と潤滑剤を段階的に加えて最終圧縮用の混合物を製造した。
【0052】
例えば、他の一実施形態において、崩壊剤を最初に薬物と混合し、次いで希釈剤の一部をそれに加えて更に混合してもよい。次に希釈剤の残りを加えて更に混合し、潤滑剤を最終的にそれに加えて最終圧縮用の混合物を製造した。
【0053】
薬物の投与量は変動し得るので、各錠剤について形状、重量、及びサイズを設定し、それを適切なパンチで製造する必要がある。各用量について、同じ賦形剤を使用することができる。更に、用いる賦形剤の使用割合は、各用量に対して同じであってもよいし、異なっていてもよい。好ましくは、全用量の錠剤が同じ賦形剤で、且つ同じ割合を有するように設計することによって、レナリドミドの用量、各賦形剤の用量、及び錠剤の全重量を比例させることができる。
【0054】
錠剤の形状は、長方形、楕円形、菱形、円形、及び多角形(例えば、三角形、四角形、五角形、六角形など)などのように様々である。錠剤の使用の容易性、パンチ製造及び管理の容易性、打錠、コーティング、包装及び取扱のような製造の容易性、溶出パターンの制御性、錠剤の硬度、摩損度、及び崩壊度などの性質に関連する要因の制御のし易さを考慮して決定することができる。更に、好適な形状は各投与量に応じて選択することができる。
【0055】
素錠の全重量は、錠剤の平均重量が1100mgを超えないことが好ましい。より好ましくは、880mgを超えない、更に好ましくは660mgを超えない、更に一層好ましくは550mgを超えない、最も好ましくは440mgを超えない。
【0056】
素錠の全重量の平均の下限は5mg以上であることが好ましい。より好ましくは10mg以上、更に好ましくは20mg以上、更に一層好ましくは30mg以上、最も好ましくは40mg以上であってもよい。
【0057】
素錠の最長軸(円形の場合、直径)の長さは、No.0号カプセルの長さ2.17cmより短いことが好ましい。より好ましくは2cm以下、更に好ましくは1.8cm以下、更に一層好ましくは1.6cm以下であってもよい。
【0058】
素錠の最短軸(円形の場合、直径)の長さは、1mm以上であることが好ましい。より好ましくは2mm以上、更に好ましくは3mm以上、更に一層好ましくは4mm以上であってもよい。
【0059】
素錠の硬度は、錠剤の形状と重量、大きさによって異なるが、最大平均硬度300N、最小平均硬度10Nが好ましい。より好ましくは、最大平均硬度250N、最小平均硬度20Nである。更に好ましくは、最大平均硬度230N、最小平均硬度30Nである。最も好ましくは、最大平均硬度210N、最小平均硬度40Nである。素錠の硬度が上記範囲より遙かに高い場合、崩壊遅延による薬物の放出が遅延する可能性がある。一方、素錠の硬度が上記範囲よりも低いと、錠剤が、コーティング中、輸送中、保管中、及び服用中に脆くなって割れることがある。
【0060】
上記硬度とは、長方形の錠剤の場合、長軸上で測定した値をいい、無作為に選んだ6個の錠剤の平均硬度を意味する。
【0061】
本発明において、素錠の摩損度は2%以内であってもよい。より好ましくは1%以内であってもよい。更に好ましくは0.5%以内であってもよい。
【0062】
本発明において、素錠の崩壊時間は、薬物の放出時間を決定することができる重要な要素の1つである。従って、打錠工程中に適切な圧力で圧縮することによって適切な硬度を有することが必要である。その結果、錠剤は所望の崩壊時間を有することができ、それはコーティング工程におけるコーティング基剤のコーティング量に加えて、薬物の溶出パターンを決定する要因になり得る。溶出パターンは、体内の吸収に影響を与えるので、適切な打錠圧によって適切な硬度を提供することによって、適切な崩壊時間を設定することが重要になる場合がある。更に、薬物の溶出パターンは、たとえ投与量が変わっても同じでなければならない。すなわち、崩壊時間は、異なる用量を有する全ての錠剤について同じでなければならない。
【0063】
崩壊時間の測定は、第1の試験液であるpH1.2緩衝液中で、韓国薬局方の一般試験法の第10版(KP X)中のNo.17崩壊試験法に従って測定することができる。崩壊時間は6個の錠剤を測定し、平均することにより決定される。一実施形態において、素錠の平均崩壊時間は、1分~20分である。好ましくは1分30秒~15分、より好ましくは2分~10分、更に好ましくは2分30秒~8分、更に一層好ましくは3分~6分、最も好ましくは3分30秒~5分30秒である。本発明において、素錠に形成されるコーティング層は、単層、二層以上、より好ましくは二層以上であってもよい。
【0064】
コーティングのための溶媒は、変動し得る。例えば、HPMCコーティングの場合、溶媒は、無水エタノールと水を2:8~8:2の間の比率で有していてもよく、又は水単独であってもよい。更に、例えば、水を単独でPVAのコーティング用の溶媒として使用することができる。これらの溶媒は全てコーティング工程中に揮発し、最終製品中には実質的に残留しない。
【0065】
上記錠剤には、錠剤の物理的な特性、製造性、圧縮性、外観、薬物の味及び/又は安定性などを改善するために、更に各種添加剤が含んでいてもよい。そのような添加剤としては、例えば、安定化剤、可溶化剤、甘味剤、矯味剤、顔料、湿潤剤、充填剤、安定化剤、界面活性剤、潤滑剤、可溶化剤、緩衝剤、甘味剤、吸着剤、矯味剤、結合剤、懸濁化剤、硬化剤、抗酸化剤、光沢剤、着香剤、香味剤、顔料、コーティング剤、湿潤剤、湿潤調整剤、充填剤、消泡剤、清涼化剤、咀嚼剤、静電防止剤、着色剤、糖衣剤、等張化剤、軟化剤、乳化剤、粘着剤、粘増剤、発泡剤、pH調節剤、賦形剤、分散剤、崩壊剤、防水剤、防腐剤、保存剤、溶解補助剤、溶剤、及び流動化剤などを含むが、それらに限定されるものではなく、薬学的に許容されるのであれば任意に添加剤を使用することができる。本発明のコーティング錠剤は、カプセルに製造された比較製剤の溶出率と同等の溶出率を示すことができる。特に、2.5分、5分、10分、15分などでの初期溶出率は、pH1.2の緩衝溶液などの酸性条件において重要である。
【0066】
溶出試験は、韓国薬局方の第10版(KP X)中の一般試験法のうち、No.35溶出試験法に準じて、第2の方法であるパドル法に従い、37℃、50回転/分で行う。ある時点での平均溶出率は、6個の錠剤のそれぞれを試験し、各時点でのそれらの溶出率をHPLCで測定することによって得ることができる。
【0067】
各時点でのコーティング錠剤のレナリドミドの平均溶出率は、例えば、2.5分で1~50%、5分で10~95%(又は20~90%)、10分で40%以上105%以下、15分で70%以上105%以下であってもよい。
【0068】
一実施形態において、本発明のコーティング錠剤は、50回転/分でパドル法によりpH1.2の900mLの溶出溶媒中2.5分で測定したとき、平均溶出率が好ましくは2~48%、より好ましくは5~45%、更に好ましくは10~40%であってもよい。
【0069】
一実施形態において、本発明のコーティング錠剤は、パドル法で50回転/分でパドル法によりpH1.2の900mLの溶出溶媒中5分で測定したとき、溶出率が、好ましくは20~90%、より好ましくは30~87.5%、更に好ましくは40~85%、更に一層好ましくは50~80%であってもよい。一実施形態において、本発明のコーティング錠剤は、50回転/分でパドル法によりpH1.2の900mLの溶出溶媒中10分で測定したとき、溶出率が、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、更に一層好ましくは80%以上であってもよい。
【0070】
一実施形態において、本発明のコーティングされた錠剤は、パドル法で50回転/分でパドル法により、pH1.2の900mLの溶出溶媒中15分で測定したとき、溶出率が好ましくは75%以上、より好ましくは77.5%以上、更に好ましくは80%以上、更に一層好ましくは85%以上であってもよい。
【0071】
本発明のコーティングされた錠剤は、生物学的同等性試験(インビボPK試験)において、カプセル製剤と比較して、80~125%、好ましくは90~110%、最も好ましくは95%~105%のAUC(曲線下面積)とCmax(最高血中濃度)値を有していてもよい。
【0072】
健常な志願者成人(男性)に対して行った生物学的同等性試験において、薬物動態学的因子としてのAUC(曲線下面積)は、140~7100ng・hr/mLであってもよい。好ましくは280~5700ng・hr/mL、より好ましくは425~4250ng・hr/mL、更に好ましくは570~2800ng・hr/mL、更に一層好ましくは700~2100ng・hr/mL、最も好ましくは1000~1800ng・hr/mLであってもよい。
【0073】
健常な志願者成人(男性)に対して行った生物学的同等性試験において、薬物動態学的因子としてのCmaxは42~2100ng/mLであってもよい。好ましくは84~1680ng/mL、より好ましくは120~1260ng/mL、更に好ましくは160~840ng/mL、更に一層好ましくは210~630ng/mL、最も好ましくは310~525ng/mLであってもよい。
【0074】
本発明の上記錠剤組成物は、従来のレナリドミド製剤と同じ用途、例えば、多発性骨髄腫、骨髄形成異常症候群などの治療及び/又は予防用として使用することができる。
【発明の効果】
【0075】
本発明に開示されるレナリドミドを含む錠剤組成物は、硬質カプセルのレナリドミド製剤と理化学的同等性を示し、非臨床試験及び生物学的同等性試験において同じ薬理学的治療効果を有し、また、服用の容易性、取扱性、安全性などが改善されているので、有用な錠剤形態の組成物として期待される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】
図1は、実施例1の錠剤と比較例1のカプセル製剤(レブラミド(登録商標)カプセル)を用いた、pH1.2の溶出溶媒における溶出比較試験結果を示したグラフである。
【
図2】
図2は、実施例1の錠剤と比較例1のカプセル製剤を用いた、pH4.0の溶出溶媒における溶出比較試験結果を示したグラフである。
【
図3】
図3は、実施例1の錠剤と比較例1のカプセル製剤を用いた、pH6.8の溶出溶媒における溶出比較試験結果を示したグラフである。
【
図4】
図4は、実施例1の錠剤と比較例1のカプセル製剤を用いた、水中における溶出比較試験結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下の実施例によって本発明を更に詳細に説明する。ただし、これらの実施例は本発明を例示することのみを目的としており、本発明の範囲はこれらの実施例によって何等限定されるものではない。
【0078】
実施例1
<素錠の製造>
レナリドミド5.0gと無水ラクトース40.0gを篩過し、混合した。その後、微結晶セルロース31.8g、クロスカルメロースナトリウム2.4g、及びステアリン酸マグネシウム0.8gを篩過し、最後に混合した。錠剤1個当たり400mgの重量に対して、長方形のパンチ(punch)で混合物を圧縮した。素錠の硬度は、約155Nであった。
【0079】
<素錠のコーティング>
上記で製造した素錠を、素錠全重量100%(w/w)に対して、合計7.5%(w/w)量で二種類のコーティング剤で二重コーティングを行った。主成分としてHPMCを含有するオパドライ(登録商標)で1次コーティング(2.5%(w/w))した後、主成分としてPVAを含有するオパドライ(登録商標)で2次コーティング(5%(w/w))を行った。1次コーティング作業条件を下記表1に、2次コーティング作業条件を下記表2に示した。
【0080】
【0081】
【0082】
実施例2
<素錠の製造>
レナリドミド5.0gと無水ラクトース40.0gを篩過し、混合した。微結晶セルロース31.8g、クロスカルメロースナトリウム2.4g、ステアリン酸マグネシウム0.4g、Aerosil 0.2g及びステアリン酸0.2gを篩過し、最後に混合した。錠剤1個当たり400mg重量に対して、長方形のパンチ(punch)で混合物を圧縮した。素錠の硬度は150Nであった。
【0083】
<素錠のコーティング>
上記で製造した素錠を、素錠全重量100%(w/w)に対して、合計6%(w/w)の量で二種類のコーティング剤で二重コーティングを行った。主成分としてHPMCを含有するオパドライ(登録商標)で1次コーティング(2%(w/w))した後、主成分としてマクロゴールポリビニルアルコールグラフト共重合体を含有するオパドライ(登録商標)で2次コーティング(4%(w/w))を行った。
【0084】
実施例3
<素錠の製造>
レナリドミド5.0gと噴霧乾燥マンニトール40.0gを篩過し、混合した。微結晶セルロース31.8g、デンプングリコール酸ナトリウム2.4g及びステアリン酸カルシウム0.8gを篩過し、最後に混合した。錠剤1個当たり400mg重量に対して、長方形のパンチで混合物を圧縮した。素錠の硬度は165Nであった。
【0085】
<素錠のコーティング>
上記で製造された素錠を、素錠全重量100%(w/w)に対して、合計(5%(w/w))の量で、主成分としてHPMCを含有するオパドライ(登録商標)コーティングした。
【0086】
試験例1:錠剤の物性測定
摩損度測定
摩損度は、米国薬局方 1216 錠剤の摩損度試験項目に記載の方法により、10個の錠剤に対して、ファーマテスト摩損率試験機(Pharmatest friability tester)を用いて測定し、下記表3に示した(測定時間=4分)。
【0087】
【0088】
崩壊試験
韓国薬局方の第10版の崩壊試験法に従って、pH1.2溶液中で実施例1の崩壊試験を行い(n=3)、その結果を下記表4に示した。
【0089】
【0090】
試験例2:溶出試験
実施例1について、n=6として下記条件溶出試験を行い、その結果を下記表5に示した。
【0091】
【0092】
試験方法:韓国薬局方溶出試験法のパドル法
溶出溶媒:0.01 NHCl溶液
回転速度:50rpm
温度:37℃
溶出基準時点:15分
分析方法:HPLC分析法
HPLC分析条件
検出器:紫外部吸光光度計(測定波長210nm)
カラム:長さ250mm、直径4.6mm、5μmのC18カラム又は同等のカラム
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
移動相:下記表6に記載
【0093】
【0094】
溶媒A:1000mLの水に、1.36gのリン酸二水素カリウムを溶解し、オルトリン酸を用いて溶液のpHを3.5±0.05に調整した後、ろ過した溶液
溶媒B:メタノールとアセトニトリルを90:10(v/v)の割合で混合した後、ろ過した溶液
【0095】
試験例3:比較溶出
実施例1及び比較例1(レブラミド(登録商標)カプセル製剤)を用いて、韓国薬局方第8版の一般試験法中、溶出試験法に従ってpH1.2及びpH4.0、pH6.8、水中で、経時的に溶出率を測定した。
【0096】
各溶出時間に採取した試験液を用いて、液体クロマトグラフィーにより溶出率を測定した。その溶出ファイルを
図1~
図4に示した。
【0097】
<溶出条件>
溶出試験装置:韓国薬局方溶出試験法のパドル法
試験液:pH1.2、pH4.0、pH6.8、水
回転速度:50rpm
温度:37℃
溶出基準時点:
2.5分、5分、10分、15分、30分(pH1.2)
5分、10分、15分、30分、45分(pH4.0)
5分、10分、15分、30分、45分、60分(pH6.8、水)
分析方法:HPLC分析法
【0098】
実施例4.コーティング率に応じたコーティング層の膜厚
実施例1と同様にして、錠剤を長軸15mm及び短軸5.8mmになるように長方形状に圧縮した後、Opadry(登録商標(PVA含有))をコーティングし、一定の硬度を有する錠剤を製造した。コーティング率は、錠剤重量とコーティング後の重量増加率から決定することができる。
【0099】
錠剤を半分に切断した後、コーティング層の平均厚さを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、5個の膜厚値の平均を記録し、下記表7に示した。
【0100】
【0101】
実施例5.一定量のレナリドミドをそれぞれ含む錠剤の製造
実施例1と実質的に同じ方式で、各用量の錠剤を製造した。
【0102】
各錠剤に対する評価結果を下記表8に示した。
【0103】
【0104】
試験例4.レナリドミドの生物学的同等性試験
実施例1で製造した試験物質レナリドミド錠剤(25mg用量)と比較物質ブラミド(登録商標)(Celgene、25mg用量)とを比較するために、41人の健常な男性志願者に対して、生物学的同等性試験を実施した。
【0105】
被験者を2群に分け、絶食下で試験物質と比較物質を水で与え、24時間までの間、所定の間隔で血液を採取した。2週間後、群を変えて同じ薬を試験した。血液を採取し、採取した血液サンプルから血漿を分離し、それらを凍結保存した。試料をLC/MS/MS装置により分析して血中濃度を得た。当該データからAUC及びCmaxを算出し、その結果を下記表9に示した。
【0106】