(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】制御装置、処置システム、制御装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20220215BHJP
【FI】
A61B18/14
(21)【出願番号】P 2020529881
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2018026045
(87)【国際公開番号】W WO2020012560
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】和泉 駿
【審査官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-317935(JP,A)
【文献】特表2013-545531(JP,A)
【文献】国際公開第2017/003852(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/037907(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の把持片と、前記第1の把持片に対して相対的に開閉することにより処置対象を把持可能な第2の把持片と、前記第1の把持片に設けられた基準電極と、前記第2の把持片に設けられた第1の対向電極と、前記第2の把持片に設けられた第2の対向電極と、を備えたエネルギー処置具とともに用いられる制御装置であって、
前記処置対象において前記基準電極と前記第1の対向電極との間で把持された第1の部分の厚さに関する第1のパラメータと、前記処置対象において前記基準電極と前記第2の対向電極との間で把持された第2の部分の厚さに関する第2のパラメータとを取得し、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータに基づいて、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの差分値を算出し、前記差分値が所定の値よりも大きいことに基づいて、前記処置対象のうち厚さが厚い部分に付与する電気エネルギーのエネルギー量を、前記処置対象のうち厚さが薄い部分に付与する電気エネルギーのエネルギー量よりも大きくするプロセッサを備える、制御装置。
【請求項2】
前記第1の対向電極に前記電気エネルギーを出力する第1の電源と、
前記第2の対向電極に前記電気エネルギーを出力する第2の電源と、をさらに備える、請求項
1の制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記第1の対向電極に前記電気エネルギーを供給する第1の電気回路における第1のインピーダンス値を前記第1のパラメータとして算出し、前記第2の対向電極に前記電気エネルギーを供給する第2の電気回路における第2のインピーダンス値を前記第2のパラメータとして算出する、請求項
1の制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記第1のインピーダンス値が前記第2のインピーダンス値よりも小さいことに基づいて、前記第1の部分における前記処置対象の厚さが、前記第2の部分における前記処置対象の厚さよりも厚いと判断し、
前記第1のインピーダンス値が前記第2のインピーダンス値よりも大きいことに基づいて、前記第1の部分における前記処置対象の厚さが、前記第2の部分における前記処置対象の厚さよりも薄いと判断する、請求項
3の制御装置。
【請求項5】
前記制御装置とともに用いられる前記エネルギー処置具は、
前記第1の対向電極に設けられるとともに前記第1のパラメータを検出する第1の検出器と、
前記第2の対向電極に設けられるとともに前記第2のパラメータを検出する第2の検出器と、
をさらに備え、
前記プロセッサは、前記第1の検出器から前記第1のパラメータを取得し、前記第2の検出器から前記第2のパラメータを取得する、請求項
1の制御装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記第1のパラメータが前記第2のパラメータよりも大きいことに基づいて、前記第1の部分における前記処置対象の厚さが、前記第2の部分における前記処置対象の厚さよりも厚いと判断し、
前記第1のパラメータが前記第2のパラメータよりも小さいことに基づいて、前記第1の部分における前記処置対象の厚さが、前記第2の部分における前記処置対象の厚さよりも薄いと判断する、請求項
5の制御装置。
【請求項7】
前記第1の検出器は、前記第1の対向電極に作用する圧力を前記第1のパラメータとして検出し、
前記第2の検出器は、前記第2の対向電極に作用する圧力を前記第2のパラメータとして検出する、請求項
5の制御装置。
【請求項8】
前記第1の検出器は、前記第1の対向電極に生じる変位を前記第1のパラメータとして検出し、
前記第2の検出器は、前記第2の対向電極に生じる変位を前記第2のパラメータとして検出する、請求項
5の制御装置。
【請求項9】
前記第2の対向電極は、前記第1の対向電極に対して、前記第2の把持片の幅方向について異なる位置に配置されている、請求項1の
制御装置。
【請求項10】
前記第2の対向電極は、前記第1の対向電極に対して、前記第2の把持片の長手方向について異なる位置に配置されている、請求項1の
制御装置。
【請求項11】
前記基準電極は、前記第1の対向電極に対向する第1の基準電極と、前記第1の基準電極に対して電気的に絶縁されるとともに前記第2の対向電極に対向する第2の基準電極と、を備える、請求項1の
制御装置。
【請求項12】
前記第1の対向電極に設けられるとともに、前記基準電極と前記第1の対向電極との間で把持された前記処置対象の第1の部分の厚さに関する第1のパラメータを検出する、第1の検出器と、
前記第2の対向電極に設けられるとともに、前記基準電極と前記第2の対向電極との間で把持された前記処置対象の第2の部分の厚さに関する第2のパラメータを検出する、第2の検出器と、
をさらに備える請求項1の
制御装置。
【請求項13】
第1の把持片と、前記第1の把持片に対して相対的に開閉することにより処置対象を把持可能な第2の把持片と、前記第1の把持片に設けられた基準電極と、前記第2の把持片に設けられた第1の対向電極と、前記第2の把持片に設けられた第2の対向電極と、を備えたエネルギー処置具と、
前記処置対象において前記基準電極と前記第1の対向電極との間で把持された第1の部分の厚さに関する第1のパラメータと、前記処置対象において前記基準電極と前記第2の対向電極との間で把持された第2の部分の厚さに関する第2のパラメータとを取得し、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータに基づいて、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの差分値を算出し、前記差分値が所定の値よりも大きいことに基づいて、前記処置対象のうち厚さが厚い部分に付与する電気エネルギーのエネルギー量を、前記処置対象のうち厚さが薄い部分に付与する電気エネルギーのエネルギー量よりも大きくするプロセッサを備える制御装置と、
を有する処置システム。
【請求項14】
請求項1の
制御装置の作動方法であって、
前記処置対象において前記基準電極と前記第1の対向電極との間で把持された第1の部分の厚さに関する第1のパラメータと、前記処置対象において前記基準電極と前記第2の対向電極との間で把持された第2の部分の厚さに関する第2のパラメータとを取得することと、
前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータに基づいて、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの差分値を算出することと、
前記差分値が所定の値よりも大きいことに基づいて、前記処置対象のうち厚さが厚い部分に付与する電気エネルギーのエネルギー量を、前記処置対象のうち厚さが薄い部分に付与する前記電気エネルギーのエネルギー量よりも大きくすることと、
を備える作動方法。
【請求項15】
前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとを取得することは、前記第1の対向電極に前記電気エネルギーを供給する第1の電気回路における第1のインピーダンス値を前記第1のパラメータとして算出することと、前記第2の対向電極に前記電気エネルギーを供給する第2の電気回路における第2のインピーダンス値を前記第2のパラメータとして算出することを含む、請求項
14の作動方法。
【請求項16】
前記制御装置とともに用いられる前記エネルギー処置具は、
前記第1の対向電極に設けられるとともに前記第1のパラメータを検出する第1の検出器と、
前記第2の対向電極に設けられるとともに前記第2のパラメータを検出する第2の検出器と、をさらに備え、
前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとを取得することは、前記第1の検出器から前記第1のパラメータを取得することと、前記第2の検出器から前記第2のパラメータを取得することとを含む、請求項
14の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー処置具とともに用いられる制御装置、処置システム、及び、制御装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
US2009/0292283A1には、血管等の生体組織を処置対象として、一対の把持片の間で把持可能なエネルギー処置具が開示されている。このエネルギー処置具では、一対の把持片のそれぞれに電極が設けられる。電極のそれぞれに高周波電力が供給されることにより、一対の把持片の間で把持された生体組織を通して、電極の間に高周波電流が流れる。生体組織は、高周波電流が流れることにより、凝固(封止)される。
【0003】
US2009/0292283A1のエネルギー処置具を用いた処置では、一対の把持片の間で把持された生体組織の厚さが、均一でない場合がある。この場合、エネルギー処置具の処置性に影響を及ぼす可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は前記課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、把持された生体組織の厚さが均一でない場合でも、適宜の処置性能が確保されるエネルギー処置具とともに用いられる制御装置、処置システム、及び、制御装置の作動方法を提供することにある。
【0005】
前記目的を達成するため、本発明のある態様の制御装置は、第1の把持片と、前記第1の把持片に対して相対的に開閉することにより処置対象を把持可能な第2の把持片と、前記第1の把持片に設けられた基準電極と、前記第2の把持片に設けられた第1の対向電極と、前記第2の把持片に設けられた第2の対向電極と、を備えたエネルギー処置具とともに用いられる。制御装置は、前記処置対象において前記基準電極と前記第1の対向電極との間で把持された第1の部分の厚さに関する第1のパラメータと、前記処置対象において前記基準電極と前記第2の対向電極との間で把持された第2の部分の厚さに関する第2のパラメータとを取得し、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータに基づいて、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの差分値を算出し、前記差分値が所定の値よりも大きいことに基づいて、前記処置対象のうち厚さが厚い部分に付与する電気エネルギーのエネルギー量を、前記処置対象のうち厚さが薄い部分に付与する電気エネルギーのエネルギー量よりも大きくするプロセッサを備える。
【0006】
前記目的を達成するため、本発明のある態様の処置システムは、第1の把持片と、前記第1の把持片に対して相対的に開閉することにより処置対象を把持可能な第2の把持片と、前記第1の把持片に設けられた基準電極と、前記第2の把持片に設けられた第1の対向電極と、前記第2の把持片に設けられた第2の対向電極と、を備えたエネルギー処置具と、前記処置対象において前記基準電極と前記第1の対向電極との間で把持された第1の部分の厚さに関する第1のパラメータと、前記処置対象において前記基準電極と前記第2の対向電極との間で把持された第2の部分の厚さに関する第2のパラメータとを取得し、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータに基づいて、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの差分値を算出し、前記差分値が所定の値よりも大きいことに基づいて、前記処置対象のうち厚さが厚い部分に付与する電気エネルギーのエネルギー量を、前記処置対象のうち厚さが薄い部分に付与する電気エネルギーのエネルギー量よりも大きくするプロセッサを備える制御装置と、を有する。
【0007】
前記目的を達成するため、本発明のある態様の作動方法は、第1の把持片と、前記第1の把持片に対して相対的に開閉することにより処置対象を把持可能な第2の把持片と、前記第1の把持片に設けられた基準電極と、前記第2の把持片に設けられた第1の対向電極と、前記第2の把持片に設けられた第2の対向電極と、を備えたエネルギー処置具とともに用いられる制御装置の作動方法である。作動方法は、前記処置対象において前記基準電極と前記第1の対向電極との間で把持された第1の部分の厚さに関する第1のパラメータと、前記処置対象において前記基準電極と前記第2の対向電極との間で把持された第2の部分の厚さに関する第2のパラメータとを取得することと、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータに基づいて、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの差分値を算出することと、前記差分値が所定の値よりも大きいことに基づいて、前記処置対象のうち厚さが厚い部分に付与する電気エネルギーのエネルギー量を、前記処置対象のうち厚さが薄い部分に付与する電気エネルギーのエネルギー量よりも大きくすることと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る処置システムを概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る処置システムでの電気的な接続状態を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るエネルギー処置具のエンドエフェクタを長手軸に略垂直な断面で概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るエネルギー処置具の把持片の間で処置対象が把持された状態を、長手軸に略垂直な断面で示す概略図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る制御装置のプロセッサが処置対象の凝固処置において行う処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係る制御装置のプロセッサが処置対象の凝固処置において行う処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第3の実施形態に係る制御装置のプロセッサが処置対象の凝固処置において行う処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第4の実施形態に係る処置システムでの電気的な接続状態を概略的に示すブロック図である。
【
図9】
図9は、第4の実施形態に係る制御装置のプロセッサが処置対象の凝固処置において行う処理を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第4の実施形態の第1の変形例に係る制御装置のプロセッサが処置対象の凝固処置において行う処理を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第5の実施形態に係るエネルギー処置具の把持片の間で処置対象が把持された状態を、幅方向に対して略垂直な断面で示す概略図である。
【
図12】
図12は、第5の実施形態に係る処置システムでの電気的な接続状態を概略的に示すブロック図である。
【
図13】
図13は、第6の実施形態に係る処置システムでの電気的な接続状態を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の処置システムである処置システム1を示す図である。
図1に示すように、処置システム1は、エネルギー処置具である処置具2と、制御装置(電源装置)3と、を備える。処置具2は、ハウジング4と、ハウジング4に連結される筒状のシャフト5と、を備える。ハウジング4は、保持可能である。ハウジング4には、ケーブル7の一端が接続されている。ケーブル7の他端は、制御装置3に着脱可能に接続される。
【0010】
シャフト5は、長手軸Cを規定する。ここで、長手軸Cに沿う方向を長手方向とする。長手方向の一方側を先端側(
図1の矢印C1側)とし、先端側とは反対側を基端側(
図1の矢印C2側)とする。シャフト5は、ハウジング4の先端側に連結され、基端側から先端側へ長手軸Cに沿って延設されている。
【0011】
シャフト5の先端部には、エンドエフェクタ6が設けられている。エンドエフェクタ6は、第1の把持片(第1の把持部材)13と、第2の把持片(第2の把持部材)14とを備える。第1の把持片13と第2の把持片14との間は、相対的に開閉可能である。第1の把持片13は、シャフト5に支持されている。第2の把持片14は、シャフト5の先端部に回転可能に取付けられ、第1の把持片13に対して回動可能である。なお、第1の把持片13及び第2の把持片14の両方が、シャフト5に対して回動可能に取付けられていてもよい。
【0012】
第1の把持片13は、処置対象に処置エネルギーを付与する処置面(対向面)17を備える。処置面17は、第2の把持片14に対して対向する。第2の把持片14は、処置対象に処置エネルギーを付与する処置面(対向面)18を備える。処置面18は、第1の把持片13の処置面17に対して対向する。
【0013】
エンドエフェクタ6の開閉方向は、長手軸Cに対して交差し、長手軸Cに対して垂直又は略垂直となる。エンドエフェクタ6の開閉方向のうち、第2の把持片14が第1の把持片13に対して開く側を第2の把持片14の開方向(矢印Y1)とし、第2の把持片14が第1の把持片13に対して閉じる側を第2の把持片14の閉方向(矢印Y2)とする。また、長手軸Cに対して交差し(垂直又は略垂直で)、かつ、エンドエフェクタ6の開閉方向に対して交差する(垂直又は略垂直な)方向を、エンドエフェクタ6の幅方向とする。
【0014】
ハウジング4は、ハウジング本体10と、グリップ(固定ハンドル)11とを備える。ハウジング本体10は、長手軸Cに沿って延設されている。グリップ11は、長手軸Cから離れる側へ向かってハウジング本体10から延設されている。シャフト5は、ハウジング本体10に先端側から連結されている。
【0015】
ハウジング本体10には、可動ハンドル12が回動可能に取付けられている。可動ハンドル12は、長手軸Cに対してグリップ11の近傍に位置し、本実施形態ではグリップ11に対して先端側に位置している。可動ハンドル12がハウジング本体10に対して回動することにより、可動ハンドル12がグリップ11に対して開く又は閉じる。可動ハンドル12がグリップ11に対して開く又は閉じることにより、エンドエフェクタ6を前述のように開動作又は閉動作させる操作が、可動ハンドル12において、入力される。すなわち、可動ハンドル12は、開閉操作入力部である。
【0016】
可動ハンドル12と第2の把持片14との間は、可動部材16を介して、連結されている。可動部材16は、シャフト5の内部において長手軸Cに沿って延設されている。可動ハンドル12をグリップ11に対して開く又は閉じることにより、可動部材16がシャフト5及びハウジング4に対して長手軸Cに沿って移動し、第2の把持片14がシャフト5に対して回動する。これにより、把持片13、14の間が開く又は閉じる。把持片13、14の間に処置対象が配置された状態で把持片13、14の間が閉じることにより、把持片13、14の間で処置対象が把持される。
【0017】
また、別のある実施例では、ハウジング本体10に回転ノブ等の操作部材が取付けられる。この場合、操作部材をハウジング4に対して長手軸Cの軸回りに回転することにより、シャフト5及びエンドエフェクタ6が操作部材と一緒に、ハウジング4に対して長手軸Cの軸回りに回転する。
【0018】
図2は、処置システム1での制御構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置3は、処置システム1全体を制御するプロセッサ(コントローラ)41と、記憶媒体(メモリ)42と、を備える。プロセッサ41は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を含む集積回路から形成される。プロセッサ41は、1つの集積回路から形成されてもよく、複数の集積回路から形成されてもよい。プロセッサ41での処理は、プロセッサ41又は記憶媒体42に記憶されたプログラムに従って行われる。また、記憶媒体42には、プロセッサ41で用いられる処理プログラム、及び、プロセッサ41での演算で用いられるパラメータ及びテーブル等が記憶される。なお、ある実施例では、プロセッサ41が処置具2に設けられ、後述する処理の少なくとも一部が、処置具2に設けられるプロセッサによって、行われる。この場合、処置具2に設けられるプロセッサも、処置具2を作動させる電気エネルギーの処置具2への供給を制御する制御装置を、構成する。また、この場合、処置具2に記憶媒体42が設けられてもよい。
【0019】
制御装置3は、高周波電源51、61を備える。高周波電源51、61のそれぞれは、波形生成器、変換回路及び変圧器等を備え、バッテリー電源又はコンセント電源等からの電力を高周波電力に変換する。また、第1の把持片13及び第2の把持片14のそれぞれは、少なくとも一部が金属などの導電材料によって形成される。高周波電源51、61のそれぞれは、ケーブル7の内部、ハウジング4の内部及びシャフト5の内部を通って設けられる電気経路を介して、第1の把持片13及び第2の把持片14のそれぞれにおいて導電材料から形成される部位に電気的に接続される。高周波電源51、61のそれぞれは、変換した高周波電力を前述の電気経路を通して出力し、第1の把持片13及び第2の把持片14に高周波電力を電気エネルギーとして供給する。第1の把持片13及び第2の把持片14の間で処置対象が把持された状態で、第1の把持片13及び第2の把持片14に高周波電力が供給されることにより、処置対象を介して、第1の把持片13と第2の把持片14との間で高周波電流が流れる。これにより、処置対象に高周波電流が処置エネルギーとして付与される。
【0020】
ハウジング本体10には、操作ボタン19が設けられている。操作ボタン19は、エネルギー操作入力部である。把持片13,14の間で処置対象が把持された状態で、操作ボタン19で操作が入力されることにより、高周波電源51、61から、処置具2に電気エネルギーが供給される。そして、把持された処置対象に高周波電流が、処置エネルギーとして付与される。なお、ある実施例では、操作ボタン19の代わりに、又は、操作ボタン19に加えて、制御装置3に電気的に接続されるフットスイッチが、エネルギー操作入力部として処置具2とは別体で設けられる。
【0021】
図3は、エンドエフェクタ6を示す図である。
図3は、エンドエフェクタ6を、長手軸Cに対して垂直又は略垂直な断面で示している。本実施形態では、第1の把持片13は、シャフト5の先端部に固定されている。
図3に示すように、第1の把持片13は、導電部材22を備える。導電部材22は、長手軸Cに沿って延設されている。導電部材22は、導電性を有する。処置面17は、導電部材22によって形成されている。
【0022】
第2の把持片14は、支持体31を備える。支持体31は、把持片14が把持片13に対して閉じた状態において、長手軸Cに沿って延設される。すなわち、把持片14が把持片13に対して閉じた状態では、支持体31の延設方向は、長手軸Cと平行又は略平行になる。支持体31の基端部は、シャフト5の先端部に取付けられている。支持体31は、例えば、電気的絶縁性を有する樹脂材料等で形成される。本実施形態では、支持体31は、シャフト5に対して回転可能である。
【0023】
支持体31には、導電部材32、34と当接部材(パッド部材)33とが、把持片13側から取付けられている。導電部材32、34及び当接部材33のそれぞれは、第1の把持片13の導電部材22及び処置面17に対して対向している。導電部材32、34及び当接部材33のそれぞれは、処置面18の一部を形成している。導電部材32、34及び当接部材33のそれぞれは、把持片14の延設方向について、支持体31の先端部から基端部までの範囲に渡って延設されている。
【0024】
導電部材32、34のそれぞれは、導電性を有する。導電部材32、34は、例えば、ステンレス等の金属で形成される。導電部材32、34は、幅方向について互いに対して離間している。導電部材32と導電部材34との間には、当接部材33が配置されている。当接部材33は、電気的絶縁性を有する材料から形成されている。導電部材32と導電部材34との間に当接部材33が設けられることにより、導電部材32と導電部材34との間は、電気的に絶縁されている。
【0025】
ここで、処置面17、18の間において、導電部材22、32の間に形成される空間を第1の領域D1とし、導電部材22、34の間に形成される空間を第2の領域D2とする。本実施形態では、第1の領域D1と第2の領域D2とは、幅方向についての位置が互いに対して異なる。
【0026】
処置システム1では、電気配線等から形成される電気経路52を介して、高周波電源51,61のそれぞれが、導電部材22に電気的に接続される。また、電気配線等から形成される電気経路53を介して、高周波電源(第1の電源)51が導電部材32に電気的に接続される。そして、電気配線等から形成される電気経路63を介して、高周波電源(第2の電源)61が導電材料34に電気的に接続される。なお、電気経路52,53,63のそれぞれは、ケーブル7の内部、ハウジング4の内部及びシャフト5の内部を通って、延設される。
【0027】
高周波電源51から高周波電力が出力されることにより、導電部材22,32の間に電圧(電位差)が印加される。また、高周波電源61から高周波電力が出力されることにより、導電部材22,34の間に電圧(電位差)が印加される。したがって、高周波電源51,61から高周波電力が供給されることにより、導電部材(基準電極)22、導電部材(第1の対向電極)32、及び、導電部材(第2の対向電極)34が、互いに対して異なる電極として機能する。
【0028】
プロセッサ41は、操作ボタン19での操作に基づいて、高周波電源51、61から高周波電力を電気エネルギーとして出力させる。高周波電源51から出力された高周波電力は、電気経路52を介して把持片13の導電部材22に供給されるとともに、電気経路53を介して把持片14の導電部材32に供給される。これにより、導電部材22及び導電部材32は、互いに対して電位の異なる電極として機能する。把持片13,14の間で処置対象を把持した状態で導電部材22及び導電部材32が電極として機能することにより、高周波電源51、電気経路52、導電部材22、導電部材32、電気経路53を含む電気回路58が形成され、電気回路58に高周波電流が流れる。これにより、第1の領域D1において把持された処置対象を介して、導電部材22と導電部材32との間に高周波電流が流れる。すなわち、第1の領域D1で把持された処置対象に高周波電流が処置エネルギーとして付与される。
【0029】
また、高周波電源61から出力された高周波電力は、電気経路52を介して把持片13の導電部材22に供給されるとともに、電気経路63を介して把持片14の導電部材34に供給される。これにより、導電部材22及び導電部材34は、互いに対して電位の異なる電極として機能する。把持片13,14の間で処置対象を把持した状態で導電部材22及び導電部材34が電極として機能することにより、高周波電源61、電気経路52、導電部材22、導電部材34、電気経路63を含む電気回路68が形成され、電気回路68に高周波電流が流れる。これにより、第2の領域D2で把持された処置対象を介して、導電部材22と導電部材34との間に高周波電流が流れる。すなわち、第2の領域で把持された処置対象に高周波電流が処置エネルギーとして付与される。
【0030】
このように、本実施形態では、操作ボタン19での操作に基づいて、高周波電源51、61の両方から高周波電力が出力され、第1の領域D1と第2の領域D2において同時に、把持された処置対象に高周波電流が付与される。
【0031】
電気回路58には、電流検出回路54及び電圧検出回路55が設けられる。電流検出回路54は、高周波電源51から電気回路58への出力電流の電流値I1を検出する。電圧検出回路55は、高周波電源51から電気回路58への出力電圧の電圧値V1を検出する。出力電圧の電圧値V1は、導電部材22(基準電極)及び導電部材32(第1の対向電極)の間の電位差と、同一又は略同一になる。
【0032】
電気回路68には、電流検出回路64及び電圧検出回路65が設けられる。電流検出回路64は、高周波電源61から電気回路68への出力電流の電流値I2を検出する。電圧検出回路65は、高周波電源61から電気回路68への出力電圧の電圧値V2を検出する。電圧値V2は、導電部材22(基準電極)及び導電部材34(第2の対向電極)の間の電位差と、同一又は略同一になる。
【0033】
制御装置3には、A/D変換器48が設けられている。A/D変換器48には、電流検出回路54、64で検出された電流値I1、I2に関するアナログ信号、及び、電圧検出回路55、65で検出された電圧値V1、V2に関するアナログ信号が、伝達される。A/D変換器48は、電流値I1、I2に関するアナログ信号及び電圧値V1、V2に関するアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換されたデジタル信号をプロセッサ41に伝達する。
【0034】
プロセッサ41は、インピーダンス算出部44及び出力制御部46を備える。インピーダンス算出部44及び出力制御部46は、プロセッサ41の一部として機能し、プロセッサ41によって行われる処理の一部を行う。
【0035】
プロセッサ41は、電流値I1、I2及び電圧値V1、V2を取得する。プロセッサ41のインピーダンス算出部44は、電流値I1及び電圧値V1に基づいて、電気回路(第1の電気回路)58におけるインピーダンス値(第1のインピーダンス値)Z1を算出する。また、プロセッサ41のインピーダンス算出部44は、電流値I2及び電圧値V2に基づいて、電気回路(第2の電気回路)68におけるインピーダンス値(第2のインピーダンス値)Z2を算出する。インピーダンス値Z1、Z2の算出に用いられる式、テーブル等は、例えば、記憶媒体42に格納されている。
【0036】
プロセッサ41は、算出したインピーダンス値Z1、Z2を、把持された処置対象の厚さに関するパラメータとして取得する。この際、プロセッサ41は、インピーダンス値Z1を、基準電極(22)と第1の対向電極(32)との間で把持された部分における処置対象の厚さに関するパラメータ(第1のパラメータ)として取得する。また、プロセッサ41は、インピーダンス値Z2を、基準電極(22)と第2の対向電極(34)との間で把持された部分における処置対象の厚さに関するパラメータ(第2のパラメータ)として取得する。
【0037】
プロセッサ41は、操作ボタン19等のエネルギー操作入力部での操作入力の有無を検出する。プロセッサ41の出力制御部46は、操作ボタン19での操作入力の検出結果、及び、処置対象の厚さに関するパラメータに基づいて、高周波電源51、61からの電気エネルギーの出力を制御する。
【0038】
次に、本実施形態の処置具2、制御装置3及び処置システム1の作用及び効果について説明する。本実施形態の処置システム1は、例えば、血管等の生体組織を処置対象として把持し、把持された生体組織に高周波電流等の処置エネルギーを付与することにより、生体組織を凝固する処置に用いられる。
【0039】
処置システム1を用いた処置では、まず、腹腔等の体腔内にエンドエフェクタ6を挿入する。そして、血管等の処置対象を一対の把持片13,14の間に配置し、エンドエフェクタ6を閉動作させる。これにより、把持片13,14の間で処置対象が把持される。処置対象が把持片13,14の間で把持された状態で、制御装置3から処置具2に電気エネルギーを供給させる操作入力が行われることにより、前述のようにして、把持された処置対象に高周波電流が付与される。これにより、処置対象が凝固される。
【0040】
図4は、血管Bを処置対象として一対の把持片13、14の間に把持した状態を示す図である。血管Bは、把持片13、14の間において、エンドエフェクタ6の幅方向に沿う状態で配置されている。ここで、血管Bにおいて、導電部材22、32の間で把持された部分を第1の部分B1とし、導電部材22、34の間で把持された部分を第2の部分B2とする。第1の部分B1は、第1の領域D1に配置された部分であり、第2の部分B2は、第2の領域D2に配置された部分である。すなわち、第1の部分B1は、基準電極(22)と第1の対向電極(32)との間に配置される部分であり、第2の部分B2は、基準電極(22)と第2の対向電極(34)との間に配置される部分である。第1の部分B1と第2の部分B2とは、幅方向についての位置が互いに対して異なる。
【0041】
把持片13、14の間で血管Bを把持した際に、把持された血管Bの厚さが均一でないことがある。この場合、把持された血管Bの厚さが、位置によって異なる。例えば、第1の部分B1の厚さT1と第2の部分B2の厚さT2が異なる場合、第1の部分B1と第2の部分B2とでは、電極に対する接触面積が異なる。このため、第1の部分B1に高周波電流を流す電気回路58のインピーダンス値Z1と、第2の部分B2に高周波電流を流す電気回路68のインピーダンス値Z2とが、互いに対して異なる。
【0042】
例えば、
図4に示すように、第1の部分B1の厚さT1が第2の部分B2の厚さT2よりも大きい(厚い)ことがある。この場合、把持された血管Bの厚さが、幅方向について異なる。第1の領域D1において血管Bの第1の部分B1が電極22、32に接触する面積は、第2の領域D2において血管Bの第2の部分B2が電極22、34に接触する面積よりも大きくなる。このため、第1の部分B1に高周波電流を流す電気回路58のインピーダンス値Z1は、第2の部分B2に高周波電流を流す電気回路68のインピーダンス値Z2よりも小さくなる。
【0043】
また、例えば、血管Bにおいて第1の部分B1の厚さT1が第2の部分B2の厚さT2よりも小さい(薄い)場合、第1の部分B1に高周波電流を流す電気回路58のインピーダンス値Z1は、第2の部分B2に高周波電流を流す電気回路68のインピーダンス値Z2よりも大きくなる。
【0044】
図5は、血管Bに高周波電流を付与する処置において、プロセッサ41によって行われる処理を示すフローチャートである。
図5に示すように、血管Bの凝固処置では、プロセッサ41は、まず、操作ボタン19において制御装置3から処置具2へ電気エネルギーを出力させる操作が入力されたか否かを判断する(S101)。
【0045】
操作ボタン19での出力操作が入力されたことを示す電気信号が検出されない場合は(S101―No)、プロセッサ41は、待機状態を継続し、出力操作が入力されたことを示す電気信号が検出されるまで、待機状態を維持する。
【0046】
操作ボタン19での出力操作が入力されたことを示す電気信号が検出された場合は(S101―Yes)、プロセッサ41は、第1出力モードでの出力制御を開始する。この際、プロセッサ41は、制御装置3の高周波電源51、61から処置具2の導電部材22、32、34への電気エネルギーの出力を開始させる。これにより、前述のようにして、把持された血管Bへの高周波電流の付与が開始される。本実施形態では、プロセッサ41は、高周波電源51、61から処置具2への出力を制御することにより、電圧値V1、V2のそれぞれを所定の値(設定値)にする制御を行う。第1出力モードでは、プロセッサ41は、まず、電圧値V1、V2を、設定値Vaで経時的に維持する制御を行う(S102)。これにより、電圧値V1、V2は同じ値となる。設定値Vaは、把持された組織の厚さ検出を行うための出力値である。設定値Vaは、例えば、凝固処置の際の電圧値よりも小さい。設定値Vaは、例えば、記憶媒体42に記憶されている。
【0047】
第1出力モードでは、プロセッサ41は、次に、電流検出回路54、64で検出された電流値I1、I2、及び、電圧検出回路55、65で検出された電圧値V1、V2を取得する(S103)。
【0048】
第1出力モードでは、プロセッサ41は、次に、電圧値V1、V2及び電流値I1、I2に基づいて、電気回路58、68のそれぞれについてインピーダンス値Z1、Z2を算出する(S104)。また、プロセッサ41は、インピーダンスの基準値Zaを算出する。基準値Zaは、例えば、インピーダンス値Z1、Z2の平均値である。
【0049】
第1出力モードでは、プロセッサ41は、次に、インピーダンス値Z1、Z2が等しいか否かを判断する(S105)。インピーダンス値Z1、Z2が等しい場合(S105-Yes)、プロセッサ41は、電圧値V1、V2を設定値Vbで経時的に維持する制御を行う。これにより、プロセッサ41は、電圧値V1、V2を同じ値にする(S106)。後述のS107の処理において、電圧値V1、V2を互いに対して異なる値にする制御が行われている場合、電圧値V1、V2のそれぞれを設定値Vbで経時的に維持する制御に切替えられる。そして、処理はS108に進む。
【0050】
インピーダンス値Z1、Z2が互いに対して異なる場合(S105-No)、プロセッサ41は、算出したインピーダンス値Z1、Z2のうち、小さい方のインピーダンス値をZsとし、大きい方のインピーダンス値をZhとする。したがって、インピーダンス値Zhは、インピーダンス値Zsよりも大きく、また、Zs<Zhとなる。インピーダンス値Zsは、インピーダンス値Z1、Z2のうちのいずれか一方であり、インピーダンス値Zhは、インピーダンス値Z1、Z2のうちの他方である。
【0051】
また、インピーダンス値Zsに対応する電気回路(58、68のうちの対応する一方)の電圧値をVsとし、インピーダンス値Zhに対応する電気回路(58、68のうちの他方)の電圧値をVhとする。電圧値Vsは、電圧値V1、V2のうちのいずれか一方であり、電圧値Vhは、電圧値V1、V2のうちの他方である。プロセッサ41は、高周波電源51、61からの出力について、電圧値Vhを設定値Vcで経時的に維持し、電圧値Vsを設定値Vdで経時的に維持する制御を行う。設定値Vc、Vdは、例えば、記憶媒体42に格納されている。ここで、設定値Vdは、設定値Vcよりも大きい値である。したがって、Vd>Vc、となる。また、設定値Vc、Vdは、例えば、インピーダンス検出用の設定値Vaよりも大きい。電圧値Vsが設定値Vcよりも大きい設定値Vdになることにより、電圧値Vsが電圧値Vhよりも大きくなる(S107)。そして、処理はS108に進む。
【0052】
前述のように、第1の部分B1の厚さT1が第2の部分B2の厚さT2よりも大きい(厚い)場合、インピーダンス値Z1は、インピーダンス値Z2よりも小さくなる。このため、Zs=Z1、Zh=Z2となる。また、Vs=V1、Vh=V2となる。したがって、インピーダンス値Zsは、血管Bのうち厚さが厚い部分(B1)に高周波電流を流す電気回路(58)のインピーダンス値(Z1)である。また、インピーダンス値Zhは、血管Bのうち厚さが薄い部分(B2)に高周波電流を流す電気回路(68)のインピーダンス値(Z2)である。そして、電圧値Vsは、血管Bのうち厚さが厚い部分(B1)に高周波電流を流す電気回路(58)への出力電圧の電圧値(V1)である。また、電圧値Vhは、血管Bのうち厚さが薄い部分(B2)に高周波電流を流す電気回路(68)への出力電圧の電圧値(V2)である。
【0053】
S108の処理では、プロセッサ41は、基準値Zaが閾値Zth1以上であるか否かを判断する。閾値Zth1は、例えば、記憶媒体42に格納されている。
【0054】
基準値Zaが閾値Zth1より小さい場合(S108-No)、処理はS103に戻り、プロセッサ41は、S103以降の処理を順次実行する。このため、S103以降の処理は、S108の処理において基準値Zaが閾値Zth1以上であると判断されるまで、繰り返し実行される。
【0055】
基準値Zaが閾値Zth1以上である場合(S108-Yes)、プロセッサ41は、第1出力モードでの出力制御を終了し、第2出力モードでの出力制御に切り替える。第2出力モードでは、プロセッサ41は、高周波電源51、61からの出力について、電圧値V1、V2を設定値Veで経時的に維持する制御を行う(S109)。設定値Veは、把持された組織をじっくりと凝固させるための出力値である。設定値Veは、例えば、設定値Vaよりも大きく、かつ、設定値Vb、Vc、Vdよりも小さい値である。設定値Veは、例えば、記憶媒体42に格納されている。
【0056】
第2出力モードでは、プロセッサ41は、次に、基準値Zaが閾値Zth2以上であるか否かを判断する(S110)。閾値Zth2は、例えば、組織の凝固が充分に行われた状態における、インピーダンスZ1、Z2の平均値である。閾値Zth2は、例えば、記憶媒体42に格納されている。S110の処理は、基準値Zaが閾値Zth2以上であると判断されるまで、繰り返し実行される。
【0057】
基準値Zaが閾値Zth2以上である場合(S110-Yes)、プロセッサ41は、第2出力モードでの出力制御を終了し、制御装置3の高周波電源51、61から処置具2への電気エネルギーの出力を停止させる。制御装置3から処置具2への電気エネルギーの出力が停止することにより、血管Bへの高周波電流の付与が終了し、血管Bの凝固処置が終了する。
【0058】
なお、本実施形態では、基準値Zaとして、インピーダンス値Z1、Z2の平均値を用いているがこれに限るものではない。例えば、インピーダンス値Z1、Z2のいずれか一方を基準値Zaとして用いてもよい。
【0059】
前述のように、血管Bにおいて第1の部分B1の厚さT1と第2の部分B2の厚さT2とが異なる場合、インピーダンス値Z1、Z2が互いに対して異なる。本実施形態では、S105において、プロセッサ41は、インピーダンス値Z1、Z2が異なるか否かを判断する。そして、インピーダンス値Z1、Z2が異なる場合、血管Bにおいて第1の部分B1の厚さT1と第2の部分B2の厚さT2とが異なると判断される。そして、第1の部分B1の厚さT1と第2の部分B2の厚さT2とが異なると判断されたことに基づいて、S107の処理が行なわれる。
【0060】
本実施形態では、S107の処理において、プロセッサ41は、電圧値Vsを電圧値Vhよりも大きくする。このため、血管Bのうち厚さが厚い部分(B1、B2のうちのいずれか一方)に高周波電流を流す電気回路(58、68のうちのいずれか一方)への出力電圧の電圧値(V1、V2のうちのいずれか一方)が、血管Bのうち厚さが薄い部分(B1、B2のうちの他方)に高周波電流を流す電気回路(58、68のうちの他方)への出力電圧の電圧値(V1、V2のうちの他方)よりも、大きくなる。これにより、血管Bのうち厚さが厚い部分(B1、B2のうちのいずれか一方)に流れる高周波電流が、血管Bのうち厚さが薄い部分(B1、B2のうちの他方)に流れる高周波電流よりも、大きくなる。したがって、血管Bのうち厚さが厚い部分(B1、B2のうちのいずれか一方)に付与される電気エネルギーのエネルギー量が、血管Bのうち厚さが薄い部分(B1、B2のうちの他方)に付与される電気エネルギーのエネルギー量よりも、大きくなる。
【0061】
このように、本実施形態では、厚い部分に付与される電気エネルギーのエネルギー量が、薄い部分に付与される電気エネルギーのエネルギー量よりも、大きくなる。これにより、厚い部分における凝固速度(収縮速度)が、薄い部分における凝固速度(収縮速度)に比べて、大きくなる。そして、厚い部分の凝固速度(収縮速度)が大きくなることにより、厚い部分と薄い部分との厚さの差が、小さくなる。厚い部分と薄い部分との厚さの差が小さくなることにより、厚い部分に高周波電流を流す電気回路のインピーダンス値と、薄い部分に高周波電流を流す電気回路のインピーダンス値との差が、小さくなる。
【0062】
本実施形態では、インピーダンス値Z1、Z2の差が小さくなった状態で、プロセッサ41は、電圧値V1、V2を等しくする。これにより、生体組織に供給される電気エネルギーのエネルギー量が等しくなる。把持された生体組織の厚さの差が小さくなった状態で、供給される電気エネルギーのエネルギー量が等しくなることにより、生体組織の凝固を均一に行うことができる。
【0063】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について、
図6を参照して説明する。本実施形態は、第1の実施形態の構成を次の通り変形したものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0064】
図6は、本実施形態の処置システム1を用いて処置対象の凝固処置が行われる際に、プロセッサ41によって行われる処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、本実施形態では、プロセッサ41は、高周波電源51、61から処置具2への出力を制御することにより、電流値I1、I2のそれぞれを所定の値(設定値)で経時的に維持する制御を行う。
【0065】
操作ボタン19での出力操作が入力されたことを示す電気信号が検出された場合(S101―Yes)、プロセッサ41は、電流値I1、I2を、設定値Iaで維持する制御を行う(S121)。これにより、電流値I1、I2は同じ値となる。設定値Iaは、把持された組織の厚さ検出を行うための出力値である。設定値Iaは、例えば、記憶媒体42に記憶されている。
【0066】
本実施形態では、プロセッサ41は、S105の判断においてインピーダンス値Z1、Z2が等しい場合(S105-Yes)、電流値I1、I2を設定値Ibで経時的に維持する制御を行う。これにより、プロセッサ41は、電流値I1、I2を同じ値にする(S122)。後述のS123の処理において、電流値I1、I2を互いに対して異なる値で維持する制御が行われている場合、電流値I1、I2のそれぞれを設定値Ibで維持する制御に切替えられる。そして、処理はS108に進む。
【0067】
また、インピーダンス値Z1、Z2が互いに対して異なる場合(S105-No)、インピーダンス値Zsに対応する電気回路(58、68のうちの対応する一方)の電流値をIsとし、インピーダンス値Zhに対応する電気回路(58、68のうちの他方)の電流値をIhとする。電流値Isは、電流値I1、I2のうちのいずれか一方であり、電流値Ihは、電流値I1、I2のうちの他方である。
【0068】
前述のように、例えば、第1の部分B1の厚さT1が第2の部分B2の厚さT2よりも大きい(厚い)場合、インピーダンス値Z1は、インピーダンス値Z2よりも小さくなる。このため、Zs=Z1、Zh=Z2となる。そして、Is=I1、Ih=I2となる。したがって、電流値Isは、血管Bのうち厚さが厚い部分(B1)への出力電流の電流値(I1)である。また、電流値Ihは、血管Bのうち厚さが薄い部分(B2)への出力電流の電流値(I2)である。
【0069】
本実施形態では、S105においてインピーダンス値Z1、Z2が互いに対して異なる場合(S105-No)、プロセッサ41は、高周波電源51、61からの出力について、電流値Ihを設定値Icで経時的に維持し、電流値Isを設定値Idで経時的に維持する制御を行う。設定値Ic、Idは、例えば、記憶媒体42に格納されている。ここで、設定値Idは、設定値Icよりも大きい値である。したがって、Id>Ic、となる。また、設定値Ic、Idは、例えば、インピーダンス検出用の設定値Iaよりも大きい。電流値Isが設定値Icよりも大きい設定値Idになることにより、電流値Isが電流値Ihよりも大きくなる(S123)。そして、処理はS108に進む。 また、基準値Zaが閾値Zth1以上である場合(S108-Yes)、プロセッサ41は、第1出力モードでの出力制御を終了し、第2出力モードでの出力制御に切り替える。第2出力モードでは、プロセッサ41は、高周波電源51、61からの出力について、電流値I1、I2を設定値Ieで経時的に維持する制御を行う(S124)。設定値Ieは、把持された組織をじっくりと凝固させるための出力値である。設定値Ieは、例えば、設定値Iaよりも大きく、かつ、設定値Ib、Ic、Idよりも小さい値である。
【0070】
本実施形態では、S123の処理において、プロセッサ41は、電流値Isを電流値Ihよりも大きくする。このため、血管Bのうち厚さが厚い部分(B1、B2のうちのいずれか一方)に供給される出力電流の電流値(I1、I2のうちのいずれか一方)が、血管Bのうち厚さが薄い部分(B1、B2のうちの他方)に供給される出力電流の電流値(I1、I2のうちの他方)よりも、大きくなる。したがって、血管Bのうち厚さが厚い部分(B1、B2のうちのいずれか一方)に付与される電気エネルギーのエネルギー量が、血管Bのうち厚さが薄い部分(B1、B2のうちの他方)に付与される電気エネルギーのエネルギー量よりも、大きくなる。
【0071】
このように、本実施形態では、電流値I1、I2を制御することにより、把持された生体組織に供給する電気エネルギーのエネルギー量を調整する。そして、厚い組織に付与される電気エネルギーのエネルギー量を、薄い組織に付与される電気エネルギーのエネルギー量よりも大きくする。このため、第1の実施形態と同様にして、生体組織の凝固を均一に行うことができる。
【0072】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について、
図7を参照して説明する。本実施形態は、第1の実施形態の構成を次の通り変形したものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0073】
図7は、本実施形態の処置システム1を用いて処置対象の凝固処置が行われる際に、プロセッサ41によって行われる処理を示すフローチャートである。
図7に示すように、本実施形態では、S104において電気回路58、68のインピーダンス値Z1、Z2を算出した後に、プロセッサ41は、電気回路58、68のインピーダンス値の差分値Zdを算出する(S131)。差分値Zdは、インピーダンス値Z1とインピーダンス値Z2との差の絶対値である。差分値Zdは、Zd=|Z1-Z2|の式で算出される。
【0074】
次に、プロセッサ41は、インピーダンスの差分値Zdが、閾値Zdth以下であるか否かを判断する(S132)。閾値Zdthは、例えば、記憶媒体42に格納されている。差分値Zdが閾値Zdth以下である場合(S132-Yes)、プロセッサ41は、高周波電源51、61からの出力を制御することにより、電圧値V1、V2を設定値Vbで経時的に維持する制御を行う。これにより、プロセッサ41は、電圧値V1、V2を同じ値にする(S133)。後述のS134の処理において、電圧値V1、V2が互いに対して異なる値で維持される制御が行われている場合、電圧値V1、V2のそれぞれを設定値Vbで維持する制御に切替えられる。そして、処理はS108に進む。
【0075】
差分値Zdが閾値Zdthよりも大きい場合(S132-No)、プロセッサ41は、第1の実施形態と同様に、インピーダンス値Zs、Zh及び電圧値Vs、Vhを設定する。そして、プロセッサ41は、高周波電源51、61からの出力について、電圧値Vhを設定値Vcで経時的に維持し、電圧値Vsを設定値Vdで経時的に維持する制御を行う。設定値Vc、Vdは、例えば、記憶媒体42に格納されている。ここで、設定値Vdは、設定値Vcよりも大きい値である。したがって、Vd>Vc、となる。また、設定値Vc、Vdは、例えば、インピーダンス検出用の設定値Vaよりも大きい。電圧値Vsが設定値Vcよりも大きい設定値Vdになることにより、電圧値Vsが電圧値Vhよりも大きくなる(S134)。そして、処理はS108に進む。
【0076】
前述のように、血管Bにおいて第1の部分B1の厚さT1と第2の部分B2の厚さT2とが異なる場合、インピーダンス値Z1、Z2が互いに対して異なる。本実施形態では、S131において、プロセッサ41は、インピーダンス値Z1、Z2の差分値Zdが閾値Zdthよりも小さいか否かを判断する。そして、差分値Zdが閾値Zdthよりも小さい場合、第1の部分B1の厚さT1と第2の部分B2の厚さT2との差が所定の値よりも小さいと判断される。この場合、把持された生体組織の厚さが均一であると判断される。
【0077】
また、差分値Zdが閾値Zdth以上である場合、第1の部分B1の厚さT1と第2の部分B2の厚さT2との差が所定の値以上であると判断される。この場合、把持された生体組織の厚さが均一でないと判断される。そして、プロセッサ41は、電圧値Vsを電圧値Vhよりも大きくすることにより、前述の実施形態等と同様にして、厚い組織に付与される電気エネルギーのエネルギー量を、薄い組織に付与される電気エネルギーのエネルギー量よりも、大きくする。これにより、第1の実施形態等と同様にして、生体組織の凝固を均一に行うことができる。
【0078】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について、
図8及び
図9を参照して説明する。本実施形態は、第1の実施形態の構成を次の通り変形したものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0079】
図8は、本実施形態の処置システム1での制御構成を示すブロック図である。
図8に示すように、本実施形態の処置システム1は、検出器71、72を備える。検出器(第1の検出器)71は、第2の把持片14の導電部材32に取付けられている。検出器71は、第1の領域D1において導電部材22、32の間で把持された処置対象の厚さに関するパラメータ(第1のパラメータ)を検出する。すなわち、検出器71は、処置対象において第1の領域D1に配置された部分の厚さに関するパラメータを検出する。
【0080】
検出器(第2の検出器)72は、第2の把持片14の導電部材34に取付けられている。検出器72は、第2の領域D2において導電部材22、34の間で把持された処置対象の厚さに関するパラメータ(第2のパラメータ)を検出する。すなわち、検出器72は、処置対象において第2の領域D2に配置された部分の厚さに関するパラメータを検出する。
【0081】
検出器71、72のそれぞれで検出されたアナログ信号は、A/D変換器48でデジタル信号に変換される。変換されたデジタル信号は、プロセッサ41に伝達される。
【0082】
プロセッサ41は、検出器71、72から把持された処置対象の厚さに関するパラメータを取得する。プロセッサ41は、第1の領域D1で把持される部分における処置対象の厚さに関するパラメータ(第1のパラメータ)を検出器71から取得し、第2の領域D2で把持される部分における処置対象の厚さに関するパラメータ(第2のパラメータ)を検出器72から取得する。そして、プロセッサ41の出力制御部46は、取得した処置対象の厚さに関するパラメータに基づいて、高周波電源51、61から処置具2に供給する電気エネルギーの出力を制御する。
【0083】
本実施形態では、検出器71、72として、圧力センサが用いられる。検出器(圧力センサ)71は、第1の領域D1で把持された生体組織から導電部材32に作用する圧力値F1を検出する。また、検出器(圧力センサ)72は、第2の領域D2で把持された生体組織から導電部材34に作用する圧力値F2を検出する。そして、プロセッサ41は、検出器71、72で検出された圧力値F1、F2を、把持された生体組織の厚さに関するパラメータとして取得する。プロセッサ41は、取得した圧力値F1、F2に基づいて、導電部材22、32、34に供給する電気エネルギーの出力を制御する。
【0084】
把持片13、14の間で処置対象として血管Bを把持した際には、血管Bの第1の部分B1の厚さと血管Bの第2の部分B2の厚さとが互いに対して異なることがある。この場合、第1の部分B1から導電部材32に作用する圧力値F1と、第2の部分B2から導電部材34に作用する圧力値F2とが、互いに対して異なる。例えば、第1の部分B1の厚さT1が第2の部分B2の厚さT2よりも小さい場合、導電部材32に作用する圧力値F1が導電部材34に作用する圧力値F2よりも小さくなる。また、例えば、第1の領域D1で把持された第1の部分B1の厚さT1が第2の領域D2で把持された第2の部分B2の厚さT2よりも大きい場合、導電部材32に作用する圧力値F1が導電部材34に作用する圧力値F2よりも大きくなる。
【0085】
図9は、本実施形態の処置システム1を用いて処置対象の凝固処置が行われる際に、プロセッサ41によって行われる処理を示すフローチャートである。
図9に示すように、本実施形態では、電気エネルギーの出力が開始された後、プロセッサ41は、検出器(圧力センサ)71、72で検出された圧力値F1、F2を、把持された生体組織の厚さに関するパラメータとして取得する(S141)。
【0086】
次に、プロセッサ41は、圧力値F1、F2が等しいか否かを判断する(S142)。圧力値F1、F2が等しい場合(S142-Yes)、プロセッサ41は、電圧値V1、V2を設定値Vbで経時的に維持する制御を行う。これにより、プロセッサ41は、電圧値V1、V2を同じ値にする(S143)。後述のS144の処理において、電圧値V1、V2が互いに対して異なる値で維持される制御が行われている場合、電圧値V1、V2のそれぞれを設定値Vbで維持する制御に切替えられる。そして、処理はS108に進む。
【0087】
圧力値F1、F2が互いに対して異なる場合(S142-No)、プロセッサ41は、取得した圧力値F1、F2のうち、大きい方の圧力値をFsとし、小さい方の圧力値をFhとする。圧力値Fhは、圧力値Fsよりも小さい。したがって、Fs>Fhとなる。圧力値Fsは、圧力値F1、F2のうちのいずれか一方であり、圧力値Fhは、圧力値F1、F2のうちの他方である。
【0088】
また、圧力値Fsに対応する対向電極(32、34のうちの対応する一方)への出力電圧の電圧値をVsとし、圧力値Fhに対応する対向電極(32、34のうちの他方)への出力電圧の電圧値をVhとする。電圧値Vsは、電圧値V1、V2のうちのいずれか一方であり、電圧値Vhは、電圧値V1、V2のうちの他方である。プロセッサ41は、高周波電源51、61からの出力について、電圧値Vhを設定値Vcで経時的に維持し、電圧値Vsを設定値Vdで経時的に維持する制御を行う。設定値Vc、Vdは、例えば、記憶媒体42に格納されている。ここで、設定値Vdは、設定値Vcよりも大きい値である。したがって、Vd>Vc、となる。また、設定値Vc、Vdは、例えば、インピーダンス検出用の設定値Vaよりも大きい。電圧値Vsが設定値Vcよりも大きい設定値Vdになることにより、電圧値Vsが電圧値Vhよりも大きくなる(S144)。そして、処理はS108に進む。
【0089】
前述のように、例えば、第1の部分B1の厚さT1が第2の部分B2の厚さT2よりも大きい(厚い)場合、圧力値F1は、圧力値F2よりも大きい。このため、Fs=F1、Fh=F2となる。そして、Vs=V1、Vh=V2となる。したがって、電圧値Vsは、血管Bのうち厚さが厚い部分(B1)への出力電圧の電圧値(V1)であり、電圧値Vhは、血管Bのうち厚さが薄い部分(B2)への出力電圧の電圧値(V2)である。
【0090】
前述のように、血管Bにおいて第1の部分B1の厚さT1と第2の部分B2の厚さT2とが異なる場合、圧力値F1、F2が互いに対して異なる。本実施形態では、S142において、プロセッサ41は、圧力値F1、F2が異なるか否かを判断する。そして、圧力値F1、F2が異なる場合、血管Bにおいて第1の部分B1の厚さT1と第2の部分B2の厚さT2とが異なると判断される。そして、第1の部分B1の厚さT1と第2の部分B2の厚さT2とが異なると判断されたことに基づいて、S144の処理が行われる。
【0091】
本実施形態においても、S144の処理において、プロセッサ41は、電圧値Vsを電圧値Vhよりも大きくする。これにより、本実施形態においても、血管Bのうち厚さが厚い部分(B1、B2のうちのいずれか一方)に付与される電気エネルギーのエネルギー量が、血管Bのうち厚さが薄い部分(B1、B2のうちの他方)に付与される電気エネルギーのエネルギー量よりも、大きくなる。
【0092】
(第4の実施形態の第1の変形例)
本実施形態の第1の変形例について、
図10を参照して説明する。本変形例は、第4の実施形態の構成を次の通り変形したものである。なお、第4の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0093】
本変形例では、検出器71、72として、変位計が用いられる。変位計は、例えば、歪みゲージである。検出器(変位計)71は、処置対象が把持されることにより導電部材32に生じる変位(歪み)X1を検出する。また、検出器(変位計)72は、処置対象が把持されることにより導電部材34に生じる変位(歪み)X2を検出する。プロセッサ41は、導電部材32、34に生じる変位X1、X2を把持された処置対象の厚さに関するパラメータとして取得する。そして、プロセッサ41は、取得した変位X1、X2に基づいて、導電部材22、32、34に供給する電気エネルギーの出力を調整する。
【0094】
把持片13、14の間で処置対象として血管Bを把持した際には、血管Bの第1の部分B1の厚さと血管Bの第2の部分B2の厚さとが互いに対して異なることがある。この場合、導電部材32に生じる変位X1と、導電部材34に生じる変位X2とが、互いに対して異なる。例えば、第1の部分B1の厚さT1が第2の部分B2の厚さT2よりも大きい場合、導電部材32に生じる変位X1が導電部材34に生じる変位X2よりも大きくなる。また、例えば、第1の領域D1で把持された第1の部分B1の厚さT1が第2の領域D2で把持された第2の部分B2の厚さT2よりも小さい場合、導電部材32に生じる変位X1が導電部材34に生じる変位X2よりも小さくなる。
【0095】
図10は、本変形例の処置システム1を用いて処置対象の凝固処置が行われる際に、プロセッサ41によって行われる処理を示すフローチャートである。
図10に示すように、本変形例では、電気エネルギーの出力が開始された後、プロセッサ41は、検出器(変位計)71、72で検出された変位X1、X2を、把持された組織の厚さに関するパラメータとして取得する(S151)。
【0096】
次に、プロセッサ41は、変位X1、X2が等しいか否かを判断する(S152)。変位X1、X2が等しい場合(S152-Yes)、プロセッサ41は、電圧値V1、V2を設定値Vbで経時的に維持する制御を行う。これにより、プロセッサ41は、電圧値V1、V2を同じ値にする(S153)。後述のS154の処理において、電圧値V1、V2が互いに対して異なる値で維持される制御が行われている場合、電圧値V1、V2のそれぞれを設定値Vbで維持する制御に切替えられる。そして、処理はS108に進む。
【0097】
変位X1、X2が互いに対して異なる場合(S152-No)、プロセッサ41は、変位X1、X2のうち、大きい方の変位をXsとし、小さい方の圧力値をXhとする。変位Xhは、変位Xsよりも小さい。したがって、Xs>Xhとなる。変位Xsは、変位X1、X2のうちのいずれか一方であり、変位Xhは、変位X1、X2のうちの他方である。
【0098】
また、変位Xsに対応する対向電極(32、34のうちの対応する一方)への出力電圧の電圧値をVsとし、変位Xhに対応する対向電極(32、34のうちの他方)への出力電圧の電圧値をVhとする。電圧値Vsは、電圧値V1、V2のうちのいずれか一方であり、電圧値Vhは、電圧値V1、V2のうちの他方である。プロセッサ41は、高周波電源51、61からの出力について、電圧値Vhを設定値Vcで経時的に維持し、電圧値Vsを設定値Vdで経時的に維持する制御を行う。設定値Vc、Vdは、例えば、記憶媒体42に格納されている。ここで、設定値Vdは、設定値Vcよりも大きい値である。したがって、Vd>Vc、となる。また、設定値Vc、Vdは、例えば、インピーダンス検出用の設定値Vaよりも大きい。電圧値Vsが設定値Vcよりも大きい設定値Vdになることにより、電圧値Vsが電圧値Vhよりも大きくなる(S154)。そして、処理はS108に進む。
【0099】
前述のように、例えば、第1の部分B1の厚さT1が第2の部分B2の厚さT2よりも大きい(厚い)場合、変位X1は、変位X2よりも大きくなる。このため、Xs=X1、Xh=X2となる。そして、Vs=V1、Vh=V2となる。したがって、電圧値Vsは、血管Bのうち厚さが厚い部分(B1)を形成する電気回路(58)への出力電圧の電圧値(V1)である。また、電圧値Vhは、血管Bのうち厚さが薄い部分(B2)を形成する電気回路(68)への出力電圧の電圧値(V2)である。
【0100】
前述のように、血管Bにおいて第1の部分B1の厚さT1と第2の部分B2の厚さT2とが異なる場合、変位X1、X2が互いに対して異なる。本実施形態では、S152において、プロセッサ41は、変位X1、X2が異なるか否かを判断する。そして、変位X1、X2が異なる場合、血管Bにおいて第1の部分B1の厚さT1と第2の部分B2の厚さT2とが異なると判断される。そして、第1の部分B1の厚さT1と第2の部分B2の厚さT2とが異なると判断されたことに基づいて、S154の処理が行われる。
【0101】
本実施形態においても、S154の処理において、プロセッサ41は、電圧値Vsを電圧値Vhよりも大きくする。これにより、本実施形態においても、血管Bのうち厚さが厚い部分(B1、B2のうちのいずれか一方)に付与される電気エネルギーのエネルギー量が、血管Bのうち厚さが薄い部分(B1、B2のうちの他方)に付与される電気エネルギーのエネルギー量よりも、大きくなる。
【0102】
(第5の実施形態)
本実施形態の第5の実施形態について、
図11乃至
図12を参照して説明する。本実施形態は、第1の実施形態の構成を次の通り変形したものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0103】
図11は、本実施形態における把持片13、14の構成を示す図である。
図6に示すように、本実施形態では、把持片13は、支持体91を備える。支持体91は、把持片13が把持片14に対して閉じた状態において、長手軸Cに沿って延設される。支持体91の基端部は、シャフト5の先端部に取付けられている。支持体91は、例えば、電気的絶縁性を有する樹脂材料等で形成される。
【0104】
支持体91には、導電部材92、94が、把持片14側から取付けられている。導電部材92、94のそれぞれは、第2の把持片14の処置面18に対して対向し、把持片13の処置面17の一部を形成している。導電部材92、94のそれぞれは、導電性を有する。導電部材92、94は、例えば、ステンレス等の金属で形成される。導電部材92、94は、長手方向について、互いに対して離間している。長手方向について導電部材92と導電部材94との間は、支持体91及び当接部材93によって、電気的に絶縁されている。
【0105】
把持片14では、支持体31には、導電部材96、98が、把持片13側から取付けられている。導電部材96は、把持片13の導電部材92に対して対向している。また、導電部材98は、把持片13の導電部材94に対して対向している。したがって、導電部材96、98のそれぞれは、第1の把持片13の処置面17に対して対向し、把持片14の処置面18の一部を形成している。導電部材96、98のそれぞれは、導電性を有する。導電部材96、98のそれぞれは、例えば、ステンレス等の金属で形成される。導電部材96、98は、長手方向について、互いに対して離間している。長手方向について導電部材92と導電部材94との間は、支持体31及び当接部材33によって、電気的に絶縁されている。
【0106】
本実施形態では、処置面17、18の間において、導電部材92、96の間に形成される空間を第1の領域D1とし、導電部材94、98の間に形成される空間を第2の領域D2とする。本実施形態では、第1の領域D1と第2の領域D2とは、長手方向についての位置が互いに対して異なる。
【0107】
処置システム1では、電気配線等から形成される電気経路52を介して、高周波電源51が、導電部材92に電気的に接続される。また、電気配線等から形成される電気経路53を介して、高周波電源(第1の電源)51が導電部材96に電気的に接続される。また、電気配線等から形成される電気経路62を介して、高周波電源(第2の電源)61が導電材料94に電気的に接続される。そして、電気配線等から形成される電気経路63を介して、高周波電源(第2の電源)61が導電材料98に電気的に接続される。なお、電気経路52、53、62、63のそれぞれは、ケーブル7の内部、ハウジング4の内部及びシャフト5の内部を通って、延設される。
【0108】
高周波電源51から高周波電力が出力されることにより、導電部材92、96の間に電圧(電位差)が印加される。また、高周波電源61から高周波電力が出力されることにより、導電部材94、98の間に電圧(電位差)が印加される。したがって、高周波電源51,61から高周波電力が供給されることにより、導電部材(第1の基準電極)92、導電部材(第2の基準電極)94、導電部材(第1の対向電極)96、及び、導電部材(第2の対向電極)98が、互いに対して異なる電極として機能する。
【0109】
本実施形態では、電気回路58は、高周波電源51、電気経路52、導電部材92、導電部材96、電気経路53によって形成され、電気回路68は、高周波電源61、電気経路62、導電部材94、導電部材98、電気経路63によって形成される。
【0110】
図11は、血管Bを処置対象として一対の把持片13、14の間に把持した状態を示す図である。ここで、血管Bにおいて、導電部材92、96の間で把持された部分を第1の部分B1とし、導電部材94、98の間で把持された部分を第2の部分B2とする。第1の部分B1は、第1の領域D1に配置された部分であり、第2の部分B2は、第2の領域D2に配置された部分である。すなわち、第1の部分B1は、第1の基準電極(92)と第1の対向電極(96)との間に配置される部分であり、第2の部分B2は、第2の基準電極(94)と第2の対向電極(98)との間に配置される部分である。本実施形態では、第1の部分B1と第2の部分B2とは、長手方向についての位置が互いに対して異なる。
【0111】
例えば、
図11に示すように、第1の部分B1の厚さT1が第2の部分B2の厚さT2よりも大きい(厚い)ことがある。この場合、把持された血管Bの厚さが、長手方向について異なる。そして、血管Bの第1の部分B1に高周波電流を流す電気回路58のインピーダンス値Z1は、血管Bの第2の部分B2に高周波電流を流す電気回路68のインピーダンス値Z2よりも小さくなる。
【0112】
また、例えば、血管Bにおいて第1の部分B1の厚さT1が第2の部分B2の厚さT2よりも小さい(薄い)場合、第1の部分B1に高周波電流を流す電気回路58のインピーダンス値Z1は、第2の部分B2に高周波電流を流す電気回路68のインピーダンス値Z2よりも大きくなる。
【0113】
本実施形態においても、プロセッサ41は、第1の実施形態と同様の処理を行い、S107の処理において、電圧値Vsを電圧値Vhよりも大きくする。これにより、血管Bのうち厚さが厚い部分(B1、B2のうちのいずれか一方)に付与される電気エネルギーのエネルギー量が、血管Bのうち厚さが薄い部分(B1、B2のうちの他方)に付与される電気エネルギーのエネルギー量よりも、大きくなる。そして、インピーダンス値Z1、Z2の差が小さくなった状態で、プロセッサ41は、電圧値V1、V2を等しくする。これにより、生体組織に供給される電気エネルギーのエネルギー量が等しくなる。把持された生体組織の厚さの差が小さくなった状態で、供給される電気エネルギーのエネルギー量が等しくなることにより、生体組織の凝固を均一に行うことができる。
【0114】
(第6の実施形態)
本実施形態の第6の実施形態について、
図13を参照して説明する。本実施形態は、第1の実施形態の構成を次の通り変形したものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0115】
図13は、本実施形態の処置システム1での制御構成を示すブロック図である。
図13に示すように、本実施形態では、制御装置3は、高周波電源51、61に加えて、超音波電源81を備える。超音波電源81は、波形生成器、変換回路及び変圧器等を備え、バッテリー電源又はコンセント電源等からの電力を交流電力に変換する。また、ハウジング本体10の内部には、超音波トランスデューサ8が設けられている。超音波電源81は、ケーブル7の内部及びハウジング4の内部を通って設けられる電気経路を介して、超音波トランスデューサ8に電気的に接続される。超音波電源81から超音波トランスデューサ8に電気エネルギー(交流電力)が供給されることにより、超音波トランスデューサ8において、超音波振動が発生する。
【0116】
超音波トランスデューサ8の先端側には、振動伝達部材(超音波プローブ)が着脱可能に接続される。振動伝達部材は、ハウジング本体10の内部から先端側へ延設され、シャフト5の内部を通って、シャフト5の先端から先端側へ突出する。そして、振動伝達部材のシャフト5から先端側への突出部分によって、第1の把持片13が形成される。超音波トランスデューサ8で発生した超音波振動は、振動伝達部材に伝達され、第1の把持片13を形成する振動伝達部材の先端部まで伝達される。これにより、超音波振動が処置エネルギーとして第1の把持片13に伝達される。第1の把持片13と第2の把持片14との間に処置対象が把持された状態で第1の把持片13に超音波振動が伝達されることにより、処置対象に超音波振動が処置エネルギーとして付与される。
【0117】
本実施形態では、プロセッサ41の出力制御部46は、制御装置3からの出力を制御することにより、処置具2を作動させる電気エネルギーの処置具2への供給を制御する。処置具2は、電気エネルギーが供給されることにより、前述した高周波電流及び超音波振動のうち少なくとも1つを処置エネルギーとして処置対象に付与する。例えば、生体組織等の処置対象を凝固する処置では、高周波電流が処置エネルギーとして処置対象に付与される。また、例えば、生体組織等の処置対象を凝固及び切開する処置では、高周波電流と超音波振動の両方が、処置エネルギーとして処置対象に付与される。
【0118】
(その他の実施形態)
ある実施形態では、電気回路58、68のそれぞれに、可変抵抗が設けられる。プロセッサ41は、可変抵抗のそれぞれの抵抗値を、電気エネルギーの出力に関するパラメータとして、制御する。プロセッサ41は、可変抵抗の抵抗値を制御することにより、把持された処置対象に付与される電気エネルギーのエネルギー量を制御する。
【0119】
例えば、プロセッサ41は、血管Bのうち厚さが厚い部分(B1、B2のうちのいずれか一方)に高周波電流を流す電気回路(58、68の対応する一方)に設けられた可変抵抗の抵抗値を、血管Bのうち厚さが薄い部分(B1、B2のうちの他方)に高周波電流を流す電気回路(58、68のうちの他方)に設けられた可変抵抗の抵抗値よりも、小さくする。これにより、血管Bのうち厚さが厚い部分に流れる高周波電流の電流値が、血管Bのうち厚さが薄い部分に流れる高周波電流の電流値よりも、大きくなる。これにより、血管Bのうち厚さが厚い部分(B1、B2のうちのいずれか一方)に付与される電気エネルギーのエネルギー量が、血管Bのうち厚さが薄い部分(B1、B2のうちの他方)に付与される電気エネルギーのエネルギー量よりも、大きくなる。
【0120】
また、ある実施形態では、第1の部分B1の厚さT1と第2の部分B2の厚さT2とが異なると判断された場合、プロセッサ41は、電圧値Vsの代わりに、電圧値Vhを調整することにより、血管Bのうち厚さが薄い部分(B1、B2のうちのいずれか一方)に高周波電流を流す電気回路(58、68の対応する一方)の電圧値(Vh)を、血管Bのうち厚さが厚い部分(B1、B2のうちのいずれか一方)に高周波電流を流す電気回路(58、68の対応する一方)の電圧値(Vs)よりも、小さくする。
【0121】
また、ある実施形態では、把持片14には、3つ以上の導電部材(対向電極)が設けられる。導電部材は、互いに対して電気的に絶縁される。導電部材のそれぞれは、処置面18の一部を形成し、処置面18における位置が互いに対して異なる。この場合、制御装置3には、導電部材のそれぞれに接続される3つ以上の高周波電源が設けられる。この実施例では、処置面17、18の間には、対向電極のそれぞれに対応し、互いに対して位置が異なる3つ以上の領域が形成される。この実施例においても、各領域において把持される組織の厚さが異なる場合、厚さが大きい部分に付与されるエネルギー量を、薄い部分に付与されるエネルギー量よりも大きくすることにより、組織の凝固を均一に行うことができる。
【0122】
また、ある実施形態では、ヒータ(熱源)で発生する熱が、処置エネルギーとして用いられる。この場合、エンドエフェクタ6にヒータ(図示しない)が設けられ、制御装置3には熱電源(図示しない)が設けられる。熱電源は、処置具2を作動させる電気エネルギーとして直流電力又は交流電力を、ヒータに供給する。そして、ヒータに電気エネルギーが供給されることにより、ヒータ熱が処置対象に付与される。
【0123】
この実施形態では、処置具2は、電気エネルギーが供給されることにより、前述した高周波電流及び熱のうち少なくとも1つを処置エネルギーとして処置対象に付与する。例えば、生体組織等の処置対象を凝固する処置では、高周波電流が処置エネルギーとして処置対象に付与される。また、例えば、生体組織等の処置対象を凝固及び切開する処置では、高周波電流と熱の両方が、処置エネルギーとして処置対象に付与される。
【0124】
また、ある実施形態では、処置対象を切開するための構成として、エンドエフェクタ6にカッター(コールドカッター)が設けられる。この場合、第1の把持片13の処置面17及び第2の把持片14の処置面18のそれぞれに溝が形成される。溝は、処置面17、18のそれぞれにおいて、幅方向について中央位置に設けられ、長手方向(把持片14の延設方向)に沿って延設される。そして、把持片13、14の間で処置対象を把持した状態で前述の溝にカッターが基端側から挿入されることにより、把持された処置対象が切開される。
【0125】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。