(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】Bcr-Ablタンパク質イメージング用分子プローブ
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20220216BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20220216BHJP
C07F 7/22 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
C07D487/04 144
A61K51/04 200
C07F7/22 T CSP
(21)【出願番号】P 2017194584
(22)【出願日】2017-10-04
【審査請求日】2020-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】佐治 英郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 寛之
(72)【発明者】
【氏名】松田 洋和
(72)【発明者】
【氏名】中西 修一
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-521462(JP,A)
【文献】国際公開第2012/121285(WO,A1)
【文献】Ye, Yihua E.; Woodward, Caroline N.; Narasimhan, Narayana I.,Absorption, metabolism, and excretion of [14C]ponatinib after a single oral dose in humans,Cancer Chemotherapy and Pharmacology,2017年,Vol.79(3),p.507-518
【文献】渡邊裕之ら,放射性ヨウ素標識BODIPYの開発とその生体分子イメージングへの応用,JSMI Report,Vol.10(2),2017年,p.166
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/04
A61K 51/04
C07F 7/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物又はその製薬上許容される塩。
【化1】
[式(I)中、
Xは、-C(=O)-NH-又は-NH-C(=O)-であり、
R
1は、
【化2】
であり、
R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、放射性ハロゲン原子、及びフッ化メチル基であり、R
2及びR
3の一方は、放射性ハロゲン原子である。]
【請求項2】
式(I)で表される化合物は、下記式(1)から(4)のいずれかで表される化合物である、請求項1記載の化合物又はその製薬上許容される塩。
【化3】
[式(1)中のR
2及び式(2)~(4)中のR
3は、放射性ハロゲン原子である。]
【請求項3】
放射性ハロゲン原子は、
123I、
124I、又は
125Iである、請求項1又は2に記載の化
合物又はその製薬上許容される塩。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の化合物又はその製薬上許容される塩を含む、Bcr-Ablタンパク質イメージング用分子プローブ。
【請求項5】
式(II)で表される化合物又はその製薬上許容される塩である、放射性標識のための前駆体化合物。
【化4】
[式(II)中、
Xは、-C(=O)-NH-又は-NH-C(=O)-であり、
R
1は、
【化5】
であり、
R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、フッ化メチル基、トリアルキルスタニル基、ニトロ基、トシレート基、メシレート基、トリフレート基、ノシレート基又はブロシレート基であり、R
4及びR
5の一方は、ハロゲン原子、トリアルキルスタニル基、ニトロ基、トシレート基、メシレート基、トリフレート基、ノシレート基又はブロシレート基である。]
【請求項6】
式(II)で表される化合物は、下記式(5)~(8)のいずれかで表される化合物である、請求項5記載の前駆体化合物。
【化6】
[式(5)中のR
4及び式(6)~(8)中のR
5
は、ハロゲン原子、トリアルキルスタニル基、ニトロ基、トシレート基、メシレート基、トリフレート基、ノシレート基又はブロシレート基である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、Bcr-Ablタンパク質に結合可能な化合物及び該化合物を含むBcr-Ablタンパク質イメージング用分子プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
Bcr-Abl遺伝子及びそれから産生されるBcr-Ablタンパク質は、慢性骨髄性白血病(CML)の治療効果の評価や寛解の判断の指標の一つとされている(非特許文献1及び2)。なぜなら、CMLは、9番目の染色体と22番目の染色体の相互転座が生じることによりフィラデルフィア染色体が形成され、その染色体上で形成されたBcr-Abl遺伝子産生するBcr-Ablタンパク質が白血球細胞の無制限な増殖を引き起こすことにより発症するとされているからである。
【0003】
一方、イマチニブ等のチロシンキナーゼ阻害剤(Bcr-Abl TKI)はCML治療においてもっとも有効性が高いとされているが、これらによる治療が有効ではない患者も中にはいる。このため、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤耐性によりBcr-Abl TKIによる治療が失敗する可能性を回避するために、核医学診断用放射性イメージングプローブの検討が行われている(非特許文献3及び4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版
【文献】Michele Baccarani et al., European LeukemiaNet recommendations for the management of chronic myeloid leukemia: 2013, BLOOD, 8 AUGUST 2013, VOLUME 122, NUMBER 6, 872-884
【文献】Mikhail Doubrovin et al., 124I-Iodopyridopyrimidinone for PET of Abl Kinase-Expressing Tumors In Vivo, THE JOURNAL OF NUCLEAR MEDICINE, Vol. 51, No. 1, January 2010 121-129
【文献】Athanasios P. Glekas, In Vivo Imaging of Bcr-Abl Overexpressing Tumors with a Radiolabeled Imatinib Analog as an Imaging Surrogate for Imatinib, THE JOURNAL OF NUCLEAR MEDICINE, Vol. 52, No. 8, August 2011 1301-1307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、Bcr-Ablタンパク質を鮮明にイメージング可能な放射性化合物は未だ開発されていない。そこで、本開示は、Bcr-Ablタンパク質をイメージング可能な新たな放射性化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、一態様において、下記式(I)で表される化合物又はその製薬上許容される塩(以下、「本開示の放射性化合物」ともいう)に関する。
【化1】
式(I)中、
Xは、-C(=O)-NH-又は-NH-C(=O)-であり、
R
1は、
【化2】
であり、
R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、放射性ハロゲン原子、及びフッ化メチル基であり、R
2及びR
3の一方は、放射性ハロゲン原子である。
【0007】
本開示は、一態様において、式(I)で表される化合物又はその製薬上許容される塩を含む、Bcr-Ablタンパク質イメージング用分子プローブに関する。
【0008】
本開示は、一態様において、下記式(II)で表される化合物又はその製薬上許容される塩を含む、放射性標識のための前駆体組成物に関する。
【化3】
式(II)中、
Xは、-C(=O)-NH-又は-NH-C(=O)-であり、
R
1は、
【化4】
であり、
R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、トリアルキルスタニル基、ニトロ基、トシレート基、メシレート基、トリフレート基、ノシレート基又はブロシレート基であり、R
4及びR
5の一方は、ハロゲン原子、トリアルキルスタニル基、ニトロ基、トシレート基、メシレート基、トリフレート基、ノシレート基又はブロシレート基である。
【0009】
本開示は、一態様において、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤と、上記式(I)で表される化合物、その製薬上許容される塩又は上記分子プローブとが投与された被検体から前記化合物の放射性シグナルを検出することを含むイメージング方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、一態様において、Bcr-Ablタンパク質をイメージング可能な新たな放射性化合物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、K562担がんマウスにおける[
125I]PON-1の血液、骨、腫瘍及び筋肉における集積量の経時変化の一例を示すグラフである。
【
図2】
図2は、K562担がんマウスにおける[
125I]PON-1の腫瘍/臓器比の経時変化の一例を示すグラフであって、左から順に腫瘍/血液比、腫瘍/筋肉比及び腫瘍/骨比を示す。
【
図3】
図3は、K562担がんマウスにおける[
125I]PON-2の血液、骨、腫瘍及び筋肉における集積量の経時変化の一例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、K562担がんマウスにおける[
125I]PON-2の腫瘍/臓器比の経時変化の一例を示すグラフであって、左から順に腫瘍/血液比、腫瘍/筋肉比及び腫瘍/骨比を示す。
【
図5】
図5は、K562担がんマウスにおける[
125I]PON-3の血液、骨、腫瘍及び筋肉における集積量の経時変化の一例を示すグラフである。
【
図6】
図6は、K562担がんマウスにおける[
125I]PON-3の腫瘍/臓器比の経時変化の一例を示すグラフであって、左から順に腫瘍/血液比、腫瘍/筋肉比及び腫瘍/骨比を示す。
【
図7】
図7は、K562担がんマウスにおける[
125I]PON-4の血液、骨、腫瘍及び筋肉における集積量の経時変化の一例を示すグラフである。
【
図8】
図8は、K562担がんマウスにおける[
125I]PON-4の腫瘍/臓器比の経時変化の一例を示すグラフであって、左から順に腫瘍/血液比、腫瘍/筋肉比及び腫瘍/骨比を示す。
【
図9】
図9は、Ba/F Bcr-AblT315I担がんマウスにおける[
125I]PON-2の腫瘍/臓器比の経時変化の一例を示すグラフであって、左から順に腫瘍/血液比、腫瘍/筋肉比及び腫瘍/骨比を示す。
【
図10】
図10は、[
123I]PON-2を投与したK562担がんマウスのSPECT/CT撮像により得られた画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、下記の放射性標識された化合物が、Bcr-Abl negative細胞であるA431細胞と比較して、Bcr-Abl positive細胞であるK562細胞及びBcr-Abl変異細胞であるBa/F Bcr-AblT315Iに特異的に結合するという知見に基づく。中でも、[
125I]PON-2は、K562細胞により構成された腫瘍をSPECTによって鮮明にイメージングできる、という知見に基づく。
【化5】
【0013】
本開示の放射性化合物は、一又は複数の実施形態において、Bcr-Ablタンパク質に高い親和性を有し、かつ優れた腫瘍/血液比及び腫瘍/筋肉比を示すことができるという効果を奏しうる。このため、本開示の放射性化合物は、一又は複数の実施形態において、Bcr-Ablタンパク質の発現を非侵襲的に検出することができうるという効果を奏しうる。本開示の放射性化合物は、一又は複数の実施形態において、Bcr-Ablタンパク質が過剰に発現した腫瘍を非侵襲的に画像化、好ましくは定量できうるという効果を奏しうる。
【0014】
本開示の放射性化合物は、一又は複数の実施形態において、野生型Bcr-Ablタンパク質及び薬剤耐性変異型Bcr-Ablタンパク質(例えば、T315I変異型Bcr-Ablタンパク質)のいずれにも特異的に結合することができる。本開示の放射性化合物によれば、Bcr-Abl依存性耐性の被検体においても、Bcr-Ablタンパク質の発現を非侵襲的に検出することができる。
【0015】
本開示において「Bcr-Ablタンパク質イメージング用分子プローブ」とは、可視化するための放射性同位元素を含み、標的となるBcr-Ablタンパク質を認識することができる分子をいう。イメージング用分子プローブは、一又は複数の実施形態において、陽電子断層撮影(PET)又は単光子断層撮影(SPECT)に用いることができる。
【0016】
本明細書において「製薬上許容される塩」とは、薬理上及び/又は医薬上許容される塩を含有し、例えば、無機酸塩、有機酸塩、無機塩基塩、有機塩基塩、酸性又は塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。本開示において「化合物の塩」には、化合物が大気中に放置されることにより、水分を吸収して形成されうる水和物が包含され得る。また、本開示において「化合物の塩」には、化合物が他のある種の溶媒を吸収して形成されうる溶媒和物も包含され得る。
【0017】
本明細書において「放射性ハロゲン原子」とは、ハロゲン原子の放射性同位体をいう。放射性ハロゲン原子としては、18F、123I、124I、125I、131I、75Br、76Br、及び77Brが挙げられる。本明細書において「ハロゲン原子」とは、ハロゲン原子の非放射性同位体をいう。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
【0018】
[式(I)で表される化合物]
本開示は、一又は複数の実施形態において、下記式(I)で表される化合物又はその製薬上許容される塩に関する。
【化6】
式(I)中、
Xは、-C(=O)-NH-又は-NH-C(=O)-であり、
R
1は、
【化7】
であり、
R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、放射性ハロゲン原子、及びフッ化メチル基であり、R
2及びR
3の一方は、放射性ハロゲン原子である。R
1において、波線を付した結合手は、式(I)との結合部分を示す。フッ化メチル基としては、トリフルオロメチル基が挙げられる。式(I)において、薬剤耐性変異型Bcr-Ablタンパク質(中でもT315I変異型Bcr-Ablタンパク質)に対する結合親和性の向上の点からは、R
3が放射性ハロゲン原子であることが好ましい。
【0019】
式(I)で表される化合物としては、一又は複数の実施形態において、下記式(1)~(4)で表される化合物が挙げられる。
【化8】
式(1)中、R
2は放射性ハロゲン原子であり、式(2)~(4)中、R
3は放射性ハロゲン原子である。
式(I)で表される化合物としては、薬剤耐性変異型Bcr-Ablタンパク質(中でもT315I変異型Bcr-Ablタンパク質)に対する結合親和性の向上の点からは、式(2)~(4)で表される化合物が好ましい。
【0020】
本開示の放射性化合物は、一又は複数の実施形態において、Bcr-Ablタンパク質のイメージングに用いることができる。本開示の放射性化合物は、一又は複数の実施形態において、Bcr-Abl陽性腫瘍のイメージングに用いることができる。イメージングとしては、一又は複数の実施形態において、PETやSPECT等のインビボ核医学イメージングが挙げられる。その他には、本開示の放射性化合物は、一又は複数の実施形態において、CMLと診断された被検体におけるBcr-Abl阻害作用を有するチロシンキナーゼ阻害剤による治療効果の有効性の評価を行うための情報を得ることを目的としたイメージングに用いることができる。よって、本開示の放射性化合物は、一又は複数の実施形態において、Bcr-Abl阻害作用を有するチロシンキナーゼ阻害剤のコンパニオン診断薬として使用することができる。さらにその他には、本開示の放射性化合物は、一又は複数の実施形態において、Bcr-Abl TKIが標的とする又は結合するタンパク質のイメージングに用いることができる。
【0021】
本開示の放射性化合物は、一又は複数の実施形態において、薬剤耐性変異型Bcr-Ablタンパク質(例えば、T315I変異型Bcr-Ablタンパク質)に結合し、該タンパク質をイメージングすることができる。したがって、本開示の放射性化合物は、一又は複数の実施形態において、野生型Bcr-Ablタンパク質(T315I変異を含まないBcr-Ablタンパク質)に特異的な分子プローブ(すなわち、野生型Bcr-Ablタンパク質に対して親和性が優位に高く、かつT315I変異型Bcr-Ablタンパク質に対して親和性が優位に低い分子プローブ)と併用することにより、Bcr-Abl TKI投与後の被検体におけるT315I変異発生の評価を行うための情報を得ることを目的としたイメージングに用いることができる。
【0022】
したがって、本開示は、一又は複数の実施形態において、本開示の放射性化合物を含む、Bcr-Ablタンパク質イメージング用分子プローブ又はイメージング用組成物に関する。本開示において、イメージング用分子プローブ及びイメージング用組成物の形態は、特に限定されるものではないが、一又は複数の実施形態において、溶液又は粉末が挙げられる。これらは、担体等の医薬品添加物を含んでいてもよい。
【0023】
[式(I)で表される化合物の製造方法]
本開示の放射性化合物は、一又は複数の実施形態において、下記式(II)で表される化合物又はその製薬上許容される塩を放射性標識することにより製造できる。したがって、本開示は、一又は複数の実施形態において、式(II)で表される化合物又はその製薬上許容される塩を放射性標識することを含む、放射性化合物の製造方法に関する。
【化9】
式(II)中、
Xは、-C(=O)-NH-又は-NH-C(=O)-であり、
R
1は、
【化10】
であり、
R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、フッ化メチル基、トリアルキルスタニル基、ニトロ基、トシレート基、メシレート基、トリフレート基、ノシレート基又はブロシレート基であり、R
4及びR
5の一方は、ハロゲン原子、トリアルキルスタニル基、ニトロ基、トシレート基、メシレート基、トリフレート基、ノシレート基又はブロシレート基である。R
1において、波線を付した結合手は、式(II)との結合部分を示す。
【0024】
式(II)において、薬剤耐性変異型Bcr-Ablタンパク質(中でもT315I変異型Bcr-Ablタンパク質)に対する結合親和性の高い分子プローブが得られる点からは、R4が水素原子であり、R5がハロゲン原子、トリアルキルスタニル基、ニトロ基、トシレート基、メシレート基、トリフレート基、ノシレート基又はブロシレート基であることが好ましい。
【0025】
式(II)で表される化合物としては、一又は複数の実施形態において、下記式(5)~(8)で表される化合物が挙げられる。
【化11】
上記式中、R
4及びR
4は、ハロゲン原子、トリアルキルスタニル基、ニトロ基、トシレート基、メシレート基、トリフレート基、ノシレート基又はブロシレート基である。
式(II)で表される化合物としては、薬剤耐性変異型Bcr-Ablタンパク質(中でもT315I変異型Bcr-Ablタンパク質)に対する結合親和性の高い分子プローブが得られる点からは、式(6)~(8)で表される化合物であることが好ましい。
【0026】
本開示は、一又は複数の実施形態において、式(5)で表される化合物を放射性標識することを含む、式(1)で表される化合物の製造方法に関する。本開示は、一又は複数の実施形態において、式(6)で表される化合物を放射性標識することを含む、式(2)で表される化合物の製造方法に関する。本開示は、一又は複数の実施形態において、式(6)で表される化合物を放射性標識することを含む、式(3)で表される化合物の製造方法に関する。本開示は、一又は複数の実施形態において、式(7)で表される化合物を放射性標識することを含む、式(4)で表される化合物の製造方法に関する。
【0027】
放射性標識は、一又は複数の実施形態において、[123/124/125I]NaI等を用いて直接標識法により行うことができる。
【0028】
式(II)で表される化合物又はその製薬上許容される塩は、上述のとおり、標識前駆体として使用することができる。したがって、本開示は、一又は複数の実施形態において、式(II)で表される化合物又はその製薬上許容される塩(以下、「本開示の標識前駆体化合物」という)に関する。また、本開示は、一又は複数の実施形態において、本開示の放射性化合物を合成するための標識前駆体として使用する本開示の標識前駆体化合物を含む組成物に関する。また、本開示は、一又は複数の実施形態において、本開示の標識前駆体化合物を含む本開示の放射性化合物を調製するためのキットに関する。本開示のキットは、一又は複数の実施形態において、放射性ハロゲン原子を含む標識試薬をさらに含んでいてもよい。
【0029】
[イメージング方法]
本開示は、一態様において、本開示の放射性化合物又は本開示の分子プローブが投与された被検体から前記化合物の放射性シグナルを検出することを含むイメージング方法(以下、「本開示のイメージング方法」ともいう)に関する。被検体は、特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、ヒト、ヒト以外の哺乳類、培養細胞、又はBcr-Ablが発現している可能性のある対象等が挙げられる。
【0030】
本開示は、その他の態様において、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤と、本開示の放射性化合物又は本開示の分子プローブとが投与された被検体から前記化合物の放射性シグナルを検出することを含むイメージング方法に関する。
【0031】
本開示のイメージング方法は、一又は複数の実施形態において、Bcr-Ablの発現レベルの測定、Bcr-Abl陽性腫瘍のイメージング、及びCMLと診断された被検体におけるBcr-Abl阻害作用を有するチロシンキナーゼ阻害剤による治療効果の有効性の評価等の用途に用いることができる。
【0032】
シグナルの検出は、一又は複数の実施形態において、使用する本開示の化合物に含まれる放射性同位元素の種類に応じて適宜決定でき、例えば、PET及びSPECT等を用いて行うことができる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を用いて本開示をさらに説明するが、これらは例示的なものであって、本開示は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0034】
[機器及び試薬]
1H(400 MHz or 500 MHz) NMRスペクトルはLNM-AL 400又は500(日本電子株式会社)にて測定し、内部標準物質としてテトラメチルシランを用いた。
逆相HPLCはLC-20AD(株式会社 島津製作所)を用い、検出器としてSPD-20A UV(株式会社 島津製作所)とサーベイメーター NDW-351(日立アロカメディカル株式会社)を使用した。
逆相HPLC用カラムにはCOSMOSIL C18-AR-II(10 x 250 mm)(ナカライテスク株式会社)を用い、移動相には(A) 0.1% TFA水溶液及び (B) 0.1% TFAアセトニトリル溶液を使用した。TLCにはsilica gel 60 F254(メルク株式会社)を用いた。
カラムクロマトグラフィーによる精製には中圧カラムW-Prep 2XY(株式会社 山善)を用い、シリカゲルはHi Flash silica gel 40 mm, 60Å(株式会社 山善)を使用した。
[125I]NaIは、PerkinElmer社より購入し、[123I]NH4Iは、日本メジフィジックス社より購入した。体内動態評価における放射能は、オートウェルガンマカウンターWallac 1480 WIARD 3(PerkinElmer社)を用いて測定した。
SPECT/CTによる画像収集は、GMI FX-3300 Pre-Clinical Imaging Systemを用い、データ解析には3D OSEMを使用した。
【0035】
(製造例1)
下記スキームに従って下記式で表されるPON-1を製造した。
【化12】
【0036】
3,5-Diiodo-4-methyl-N-[4-[(4-methyl-1-piperazinyl)methyl]-3-(trifluoromethyl)phenyl]-benzamide(化合物1)
3,5-Diiodo-4-methylbenzoic acid (194.0 mg, 0.5 mmol)にSOCl2 (0.73 mL, 10 mmol)加え、DMFを触媒量滴下し、室温で20時間攪拌した。溶液を減圧乾燥させ、中間体 (3,5-Diiodo-4-methyl-benzoyl chloride) (178.9mg, 0.44 mmol, 88%, white solid)を得た。
4-[(4-methyl-1-piperazinyl)methyl]-3-(trifluoromethyl)-benzenamine (94.6 mg, 0.35 mmol)、N,N-Diisopropylethylamine (73 μL, 0.42 mmol)、DMAP (1.2 mg, 0.01 mmol)をTHF (2.4 mL)に溶解させ、そこへ中間体 (170.7 mg, 0.42 mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。水を加え酢酸エチルで抽出し、エバポレーターで減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール = 10 : 1) により精製し化合物1 (180.0 mg, 0.28 mmol, 80%, pale yellow solid)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.30 (2H, s), 8.04 (1H, s), 7.89 (1H, d, J=8.0Hz), 7.86 (1H, s), 7.76 (1H, d, J=8.0Hz), 3.65 (2H, s), 2.81 (3H, s), 2.72-2.42 (8H, m), 2.38 (3H, s).
【0037】
PON-1
3-Ethynyl-imidazo[1,2-b]pyridazine (30.5 mg, 2.0 mmol)、Pd(PPh3)4 (11.6 mg, 0.01 mmol)、CuI (3.05 mg, 0.016 mmol)、化合物1 (137.0 mg, 0.21 mmol)をDMF (1.6 mL)に溶解させ、そこへN,N-Diisopropylethylamine (55.8 μL, 0.32 mmol)を加え、室温で2.5時間攪拌した。水を加え、酢酸エチルで抽出し、エバポレーターで減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール = 5 : 1) により精製しPON-1 (33.3 mg, 0.051 mmol, 24%, pale yellow solid)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.50 (1H, dd, J=4.5, 1.0Hz), 8.34 (1H, d, J=1.5Hz), 8.09 (1H, s), 8.04 (1H, d, J=1.5Hz), 8.01 (1H, dd, J=9.0, 1.0Hz), 7.91 (1H, dd, J=8.0, 2.5Hz), 7.88 (1H, d, J=2.5Hz), 7.77 (1H, d, J=8.0Hz), 7.16 (1H, dd, J=9.0, 4.5Hz), 3.67 (2H, s), 2.81 (3H, s), 2.70-2.48 (8H, m), 2.40 (3H, s).
【0038】
(製造例2)
下記スキームに従って下記式で表されるPON-2を製造した。
【化13】
【0039】
1-[(2-iodo-4-aminophenyl)methyl]-4-methyl-Piperazine(化合物2)
1-[(2-iodo-4-nitrophenyl)methyl]-4-methyl-Piperazine (638.2 mg, 1.77 mmol)、Na2S2O4 (3.08 g, 17.7 mmol)をAcetone / H2O = 1 : 1 (8.8 mL)に溶解させ75 ℃で24時間加熱攪拌した。エバポレーターで濃縮し、酢酸エチルを加え、水、sat-NaHCO3 aq.で洗浄、硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過した後、エバポレーターで溶媒を留去し、化合物2 (145 mg, 0.44 mmol, 25%, pale yellow solid)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.19 (1H, d, J=2.0Hz), 7.11 (1H, d, J=8.0Hz), 6.63 (1H, dd, J=8.0, 2.0Hz), 3.61 (2H, br), 3.43 (2H, s), 2.70-2.25 (8H, m), 2.29 (3H, s).
【0040】
PON-2
Methyl 3-(2-imidazo[1,2-b]pyridazin-3-ylethynyl)-4-methyl-benzoate (156.0 mg, 0.54 mmol)をH2O (251 μL)、濃塩酸 (771.8 μL)に溶解させ100℃で1.5時間加熱還流した。その後、溶媒を減圧留去し乾固した。そこへ塩化チオニル(622.6 μL)、DMF (3 drops)を加え室温にて17時間攪拌した。その後、溶媒を減圧留去し乾固した。得られた中間体(142.5 mg, 0.48 mmol)をTHF (7.5 mL)に溶解させ、化合物2 (145.0 mg, 0.44 mmol)、DMAP (1.2 mg, 0.01 mmol)、N,N-Diisopropylethylamine (83.6 μL, 0.48 mmol)を加え室温にて17時間攪拌した。水と酢酸エチルを加え、飽和NaHCO3溶液、水で洗浄後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール = 5 : 1) により精製しPON-2 (133.4 mg, 0.23 mmol, 53%, pale yellow solid)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.50 (dd, J = 4.3, 1.4 Hz, 1H), 8.16 (d, J = 2.0 Hz 1H), 8.08-8.00 (m, 3H), 7.82 - 7.77 (m, 2H), 7.66 (dd, J = 8.3, 2.0 Hz, 1H), 7.40 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 7.15 (dd, J = 9.2, 4.6 Hz, 1H), 3.52 (s, 2H), 2.66 - 2.28 (m, 14H).
【0041】
(製造例3)
下記スキームに従って下記式で表されるPON-3を製造した。
【化14】
PON-3
Methyl 3-iodo-4-((4-methylpiperazin-1-yl)methyl)benzoate (237.0 mg, 0.63 mmol)をH
2O (296.6 μL)、濃塩酸 (953.0 μL)に溶解させ100℃で4時間加熱還流した。その後、溶媒を減圧留去し乾固した。そこへ塩化チオニル(904 μL)、DMF (3 drops)を加え室温にて17時間攪拌した。その後、溶媒を減圧留去し乾固した。得られた中間体(90.9 mg, 0.24 mmol)をTHF (3.8 mL)で溶解させ、3-(Imidazo[1,2-b]pyridazin-3-ylethynyl)-4-methylaniline (54.6 mg, 0.22 mmol)、DMAP (1.2 mg, 0.01 mmol)、N,N-Diisopropylethylamine (41.7 μL, 0.24 mmol)を加え室温にて2時間攪拌した。水と酢酸エチルを加え、飽和NaHCO
3溶液、水で洗浄後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール = 10 : 1) により精製しPON-3 (80.4 mg, 0.13 mmol, 60%, white solid)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.48 (1H, dd, J=4.0, 2.0Hz), 8.32 (1H, d, J=2.0Hz), 8.05 (1H, s), 8.00 (1H, dd, J=9.0, 2.0Hz), 7.83 (1H, d, J=2.0Hz), 7.82 (1H, dd, J=8.0, 2.0Hz), 7.73 (1H, br), 7.62 (1H, dd, J=8.0, 2.0Hz), 7.55 (1H, d, J=8.0Hz), 7.28 (1H, d, J=8.0Hz), 7.13 (1H, dd, J=9.0, 4.0Hz), 3.57 (2H, s), 2.57 (3H, s), 2.56-2.40 (8H, m), 2.31 (3H, s).
【0042】
(製造例4)
下記スキームに従って下記式で表されるPON-4を製造した。
【化15】
PON-4
Methyl 3-(2-imidazo[1,2-a]pyridazin-3-ylethynyl)-4-methyl-benzoate (50.0 mg, 0.17 mmol)をH
2O (80 μL)、濃塩酸 (245 μL)に溶解させ100℃で2時間加熱還流した。その後、溶媒を減圧留去し乾固した。そこへ塩化チオニル(243 μL)、DMF (3 drops)を加え室温にて17時間攪拌した。その後、溶媒を減圧留去し乾固した。得られた中間体をTHF (2.5 mL)に溶解させ、化合物2 (49.7 mg, 0.15 mmol)、DMAP (1.2 mg, 0.01 mmol)、N,N-Diisopropylethylamine (26 μL, 0.15 mmol)を加え室温にて2.5時間攪拌した。水と酢酸エチルを加え、飽和NaHCO
3溶液、水で洗浄後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール = 5 : 1) により精製しPON-4 (77.3 mg, 0.13 mmol, 87%, off white solid)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.36 (1H, s), 9.21 (1H, s), 8.69 (1H, d, J=4.5Hz), 8.35 (1H, s), 8.31-8.25 (2H, m), 8.14 (1H, d, J=4.5Hz), 7.93 (1H, d, J=8.0Hz), 7.80 (1H, d, J=8.0Hz), 7.55 (1H, d, J=8.0Hz), 7.34 (1H, d, J=8.0Hz), 3.42 (2H, s), 2.61 (3H, s), 2.50-2.20 (8H, m), 2.15 (3H, s).
【0043】
[標識前駆体合成]
標識前駆体となるPON-1 precursor、PON-2 precursor、PON-3 precursor、及びPON-4 precursorを合成した。
【0044】
(製造例5)
下記スキームに従って下記式で表されるPON-1 precursorを製造した。
【化16】
【0045】
3,5-Dibromo-4-methyl-N-[4-[(4-methyl-1-piperazinyl)methyl]-3-(trifluoromethyl)phenyl]-benzamide(化合物3)
4-[(4-methyl-1-piperazinyl)methyl]-3-(trifluoromethyl)-benzenamine (360 mg, 1.33 mmol)、N,N-Diisopropylethylamine (273 μL, 1.60 mmol)、DMAP (1.2 mg, 0.01 mmol)をTHF (5.0 mL)に溶解させ、3,5-Dibromo-4-methyl-benzoyl chloride (500 mg, 1.6 mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。水を加え酢酸エチルで抽出し、エバポレーターで減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール = 10 : 1) により精製し化合物3 (540.0 mg, 0.98 mmol, 73.8%, pale yellow solid)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 9.00 (1H, br), 7.97 (2H, s), 7.92 (1H, d, J=8.5Hz), 7.89 (1H, s), 7.68 (1H, d, J=8.5Hz), 3.63 (2H, s), 2.76-2.46 (11H, m), 2.42 (3H, s).
【0046】
PON-1 precursor
化合物3 (265.0 mg, 0.48 mmol)、3-Ethynyl-imidazo[1,2-b]pyridazine (116.0 mg, 0.81 mmol)、Pd(PPh3)4 (56.8 mg, 0.05 mmol)、CuI (9.4 mg, 0.05 mmol)をDMF (2.5 mL)に溶解させ、そこへN,N-Diisopropylethylamine (130 μL, 0.75 mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。水を加え、クロロホルムで抽出し、エバポレーターで減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール = 5 : 1) により精製しPON-1 precursor (77.0 mg, 0.144 mmol, 30%, pale yellow solid)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.60 (1H, br), 8.48 (1H, dd, J=4.5, 2.0Hz), 8.11 (1H, s), 8.09 (1H, d, J=2.0Hz), 7.99 (1H, d, J=2.0Hz), 7.97-7.90 (3H, m), 7.78 (1H, d, J=8.0Hz), 7.14 (1H, dd, J=9.0, 4.5Hz), 3.64 (2H, s), 2.71 (3H, s), 2.65-2.35 (8H, m), 2.32 (3H, s).
【0047】
(製造例6)
下記スキームに従って下記式で表されるPON-2 precursorを製造した。
【化17】
PON-2 precursor
Methyl 3-(2-imidazo[1,2-b]pyridazin-3-ylethynyl)-4-methyl-benzoate (127.0 mg, 0.44 mmol)をH
2O (217 μL)、濃塩酸 (222 μL)に溶解させ100℃で2時間加熱還流した。その後、溶媒を減圧留去し乾固した。そこへ塩化チオニル(622.6 μL)、DMF (3 drops)を加え室温にて17時間攪拌した。その後、溶媒を減圧留去し乾固した。得られた中間体(100.5 mg, 0.34 mmol)をTHF (5.3 mL)に溶解させ1-[(2-bromo-4-aminophenyl)methyl]-4-methyl-Piperazine (86.8 mg, 0.31 mmol)、DMAP (1.2 mg, 0.01 mmol)、N,N-Diisopropylethylamine (59.3 μL, 0.34 mmol)を加え室温にて2.5時間攪拌した。水と酢酸エチルを加え、飽和NaHCO
3溶液、水で洗浄後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール = 5 : 1) により精製しPON-2 precursor (108.1 mg, 0.20 mmol, 64%, white solid)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.49 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 8.10 - 8.08 (m, 2H), 8.04 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 8.0 - 7.95 (m, 2H), 7.81 (dd, J = 7.7, 2.0 Hz, 1H), 7.60 (dd, J = 8.3, 2.0 Hz, 1H), 7.46 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.39 (d, J = 8.0 Hz, 1H), , 7.14 (dd, J = 9.2, 4.6 Hz, 1H), 3.59 (s, 2H), 2.64-2.28 (m, 14H).
【0048】
(製造例7)
下記スキームに従って下記式で表されるPON-2 precursor(スズ化合物)を製造した。
【化18】
化合物C (235 mg)を1,4-ジオキサン溶液(8 mL)に溶解させ、(SnMe
3)
2 (523 μL)、Pd(PPh
3)(4191.8 mg)を加えて、120℃で撹拌させた。一晩撹拌後、溶媒を減圧留去し、得られた残渣をクロロホルムに溶解させた。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで脱水しろ過した。得られたろ液を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール = 95 : 5→9:1) により精製し化合物D (126.4 mg, 淡黄色固体)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 7.00 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.85 (d, J = 8.0 Hz, 2.5H), 6.57 (dd, J = 2.5, 8.0 Hz, 1H), 3.59 (s, 1H), 3.34 (s, 1H), 2.41 (brs, 6H), 2.28 (s, 3H), 1.62 (brs, 2H), 0.26 (s, 9H).
【0049】
化合物D (58.9 mg)とMethyl 3-(2-imidazo[1,2-b]pyridazin-3-ylethynyl) -4-methyl- -benzoic acid hydrocloride(50 mg)をCH2Cl2 (1.5 mL)に溶解させ、N,N-ジイソプロピルアミン (84 μL)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン (3.9 mg)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩 (36.8 mg)を加え室温で撹拌させた。一晩撹拌後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水しろ過した。得られたろ液を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール = 95 : 5→9:1) により精製し (60.0 mg,淡黄色固体)を得た。
δ 8.50 (dd, J = 2.0, 5.0 Hz, 1H), 8.10 - 8.05 (m, 2H), 8.00(dd, J = 2.0, 9.0 Hz, 1H), 7.92 (s, 1H), 7.83 (dd, J = 2.0, 8.0 Hz, 1H), 7.73 (dd, J = 2.5, 8.0 Hz, 1H), 7.60 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.25 (s, 1H), 7.14 (dd, J = 5.0, 9.0 Hz, 1H), 3.45 (s, 2H), 2.65 (s, 3H), 2.43 (brs, 6H), 2.29 (s, 3H), 1.67 (s, 2H), 0.31 (s, 9H).
【0050】
(製造例7)
下記スキームに従って下記式で表されるPON-3 precursorを製造した。
【化19】
PON-3 precursor
Methyl 3-bromo-4-((4-methylpiperazin-1-yl)methyl)benzoate (150.0 mg, 0.46 mmol)をH
2O (214.6 μL)、濃塩酸 (659.5 μL)に溶解させ100℃で2時間加熱還流した。その後、溶媒を減圧留去し乾固した。そこへ塩化チオニル(654 μL)、DMF (3 drops)を加え室温にて17時間攪拌した。その後、溶媒を減圧留去し乾固した。そこへTHF (2.9 mL)で溶解させ、3-(Imidazo[1,2-b]pyridazin-3-ylethynyl)-4-methylaniline (42.2 mg, 0.17 mmol)、DMAP (1.2 mg, 0.01 mmol)、N,N-Diisopropylethylamine (33.0 μL, 0.19 mmol)を加え室温にて2.5時間攪拌した。水と酢酸エチルを加え、飽和NaHCO
3溶液、水で洗浄後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール = 10 : 1) により精製しPON-3 precursor (46.2 mg, 0.085 mmol, 60%, pale yellow solid)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.48 (1H, dd, J=4.5, 2.0Hz), 8.05 (1H, d, J=2.0Hz), 8.04 (1H, s), 8.00 (1H, dd, J=9.0, 2.0Hz), 7.83 (1H, d, J=2.0Hz), 7.78 (1H, dd, J=8.0, 2.0Hz), 7.75 (1H, br), 7.63 (1H, d, J=8.0Hz), 7.61 (1H, dd, J=8.0, 2.0Hz), 7.28 (1H, d, J=8.0Hz), 7.13 (1H, dd, J=9.0, 4.5Hz), 3.65 (2H, s), 2.65-2.40 (11H, m), 2.32 (3H, s).
【0051】
(製造例8)
下記スキームに従って下記式で表されるPON-4 precursorを製造した。
【化20】
PON-4 precursor
Methyl 3-(2-imidazo[1,2-a]pyridazin-3-ylethynyl)-4-methyl-benzoate (77.0 mg, 0.26 mmol)をH
2O (124 μL)、濃塩酸 (380 μL)に溶解させ100℃で2時間加熱還流した。その後、溶媒を減圧留去し乾固した。そこへ塩化チオニル(377 μL)、DMF (3 drops)を加え室温にて17時間攪拌した。その後、溶媒を減圧留去し乾固した。そこへTHF (4.1 mL)に溶解させ1-[(2-bromo-4-aminophenyl)methyl]-4-methyl-Piperazine (68.2 mg, 0.24 mmol)、DMAP (1.2 mg, 0.01 mmol)、N,N-Diisopropylethylamine (42 μL, 0.24 mmol)を加え室温にて2.5時間攪拌した。水と酢酸エチルを加え、飽和NaHCO
3溶液、水で洗浄後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール = 10 : 1) により精製しPON-4 precursor (92.9 mg, 0.17 mmol, 70%, pale yellow solid)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 9.21 (1H, s), 8.68 (1H, d, J=5.0Hz), 8.30 (1H, s), 8.28-8.25 (2H, m), 8.15-8.12 (2H, m), 7.93 (1H, dd, J=8.0, 2.0Hz), 7.75 (1H, dd, J=8.0, 2.0Hz), 7.55 (1H, d, J=8.0Hz), 7.42 (1H, d, J=8.0Hz), 3.49 (2H, s), 2.61 (3H, s), 2.50-2.25 (8H, m), 2.15 (3H, s).
【0052】
[放射化学合成]
放射性標識化合物である[
125I]PON-1、[
123/125I]PON-2、[
125I]PON-3、及び[
125I]PON-4を下記スキームに従って合成した。
【化21】
【0053】
(製造例9)
[
125
I]PON-1
PON-1 precursor (6.6 mg)、CuSO4・5H2O (7.25 mg)、(NH4)2SO4 (6.41 mg)を反応バイアルへ入れ、MeOH (200 μL)、H2O (200 μL)に懸濁させ、[125I]NaI (237 μCi)を加えた後、封緘中150℃で加熱した。10分後から反応バイアルへ26Gの注射針、ルアーアダプタ、輸液ポンプ用延長チューブを経由し溶媒を留去しながら、50分間加熱した。MeCN (200 μL)、MeOH (200 μL)で反応物を洗浄した後、MeCN (200 μL)、H2O (200 μL)を加え、溶液をCosmonicefilter Sを通し、逆相HPLC (COSMOSIL 5C18-AR-II, 10 x 250 mm, eluent 50% (A) and (B), flow rate 1.0 mL/min, λ = 220, 254 nm, Rt = 32.25-34.75 min)にて精製し、[125I]PON-1を放射化学的収率10%、放射化学的純度>99%で得た。
【0054】
(製造例10)
[
125
I]PON-2
PON-2 precursor (2.2 mg)、CuSO4・5H2O (2.8 mg)、(NH4)2SO4 (3.2 mg)を反応バイアルへ入れ、MeOH (200 μL)、H2O (200 μL)に懸濁させ、[125I]NaI (252 μCi)を加えた後、封緘中150℃で加熱した。10分後から反応バイアルへ26Gの注射針、ルアーアダプタ、輸液ポンプ用延長チューブを経由し溶媒を留去しながら、50分間加熱した。MeCN (200 μL)、MeOH (200 μL)で反応物を洗浄した後、MeCN (800 μL)、H2O (800 μL)を加え、溶液をCosmonicefilter Sを通し、逆相HPLC (COSMOSIL 5C18-AR-II, 10 x 250 mm, eluent 65% (A) and 35% (B), flow rate 2.0 mL/min, λ = 220, 254 nm, Rt = 14.5-16.5 min)にて精製し、[125I]PON-2を放射化学的収率50%、放射化学的純度>99%で得た。
【0055】
(製造例11)
[
125
I]PON-3
PON-3 precursor (1.54 mg)、CuSO4・5H2O (2.51 mg)、(NH4)2SO4 (2.62 mg)を反応バイアルへ入れ、MeOH (200 μL)、H2O (200 μL)に懸濁させ、[125I]NaI (251 μCi)を加えた後、封緘中150℃で加熱した。10分後から反応バイアルへ26Gの注射針、ルアーアダプタ、輸液ポンプ用延長チューブを経由し溶媒を留去しながら、50分間加熱した。MeCN (200 μL)、MeOH (200 μL)、MeOH/H2O=1/1 (400 μL) で反応物を洗浄した後、MeCN (200 μL)、H2O (200 μL)を加え、溶液をCosmonicefilter Sを通し、逆相HPLC (COSMOSIL 5C18-AR-II, 10 x 250 mm, eluent 60% (A) and 40% (B), flow rate 1.0 mL/min, λ = 220, 254 nm, Rt = 26.5-28.0 min)にて精製し、[125I]PON-3を放射化学的収率38%、放射化学的純度>99%で得た。
【0056】
(製造例12)
[
125
I]PON-4
PON-4 precursor (3.1 mg)、CuSO4・5H2O (5.3 mg)、(NH4)2SO4 (4.3 mg)を反応バイアルへ入れ、MeOH (200 μL)、H2O (200 μL)に懸濁させ、[125I]NaI (383 μCi)を加えた後、封緘中150℃で加熱した。10分後から反応バイアルへ26Gの注射針、ルアーアダプタ、輸液ポンプ用延長チューブを経由し溶媒を留去しながら、50分間加熱した。MeCN (200 μL)、MeOH (200 μL)、MeOH/H2O=1/1 (400 μL)で反応物を洗浄した後、MeCN (600 μL)、H2O (600 μL)を加え、溶液をCosmonicefilter Sを通し、逆相HPLC (COSMOSIL 5C18-AR-II, 10 x 250 mm, eluent 65% (A) and 35% (B), flow rate 1.0 mL/min, λ = 220, 254 nm, Rt = 31.0-32.0 min)にて精製し、[125I]PON-3を放射化学的収率33%、放射化学的純度>99%で得た。
【0057】
(製造例13)
[
123
I]PON-2
PON-2 precursor (1.71 mg)、CuSO4・5H2O (2.61 mg)、(NH4)2SO4 (2.62 mg)を反応バイアルへ入れ、MeOH (200 μL)、H2O (200 μL)に懸濁させ、[123I]NH4I (29.1 mCi)を加えた後、封緘中150℃で加熱した。10分後から反応バイアルへ26Gの注射針、ルアーアダプタ、輸液ポンプ用延長チューブを経由し溶媒を留去しながら、50分間加熱した。MeCN (400 μL)、MeOH (400 μL)、MeOH/H2O=1/1 (400 μL)で反応物を洗浄した後、MeCN (400 μL)、H2O (400 μL)を加え、溶液をCosmonicefilter Sを通し、逆相HPLC (COSMOSIL 5C18-AR-II, 10 x 250 mm, eluent 65% (A) and 35% (B), flow rate 1.0 mL/min, λ = 220, 254 nm, Rt = 30.0-32.0 min)にて精製し、[123I]PON-2を放射化学的収率37%、放射化学的純度>99%で得た。
【0058】
[細胞増殖抑制活性の測定]
96ウェルプレート上にK562細胞(3.0×103 cells/well)またはBa/F3 Bcr-AblT315細胞(3.0×103 cells/well)を播種し、10% Fetal Bovine Serum含有RPMI1640培地中にて1晩培養した。各ウェルにPON-1, -2, -3, -4を終濃度が0.03-1000 nMになるように添加し、CO2インキュベーター中で72時間インキュベートした。72時間後、Cell Counting Kit-8(同仁科学株式会社)を用いて生存細胞数をカウントし、各濃度のカウント数から各化合物のIC50値を算出した。
【0059】
【0060】
表1に示すように、PON-1, -2, -3, -4はBcr-Abl positive細胞であるK562細胞に対して結合親和性を示した。また、PON -2, -3, -4はBcr-Abl変異細胞であるBa/F Bcr-AblT315Iに対して結合親和性を示した。
【0061】
[K562担がんマウスを用いた[
125I]PON-1体内動態評価]
Bcr-Abl positive細胞であるK562担がんマウスへ[
125I]PON-1(18.5 kBq/100 μL)をマウス尾静注より投与した。投与後60、120、180、240分に各臓器(腫瘍、血液、心臓、肺、肝臓、膵臓、胃、小腸、脾臓、腎臓、筋肉、骨)を摘出した。各臓器の重量と放射能を測定し、単位重量あたりの放射能から放射集積量(ID%/g)を算出した。その結果を
図1及び3に示す。
図1は、血液、骨、腫瘍及び筋肉における集積量の経時変化を示すグラフである。
図2は、左から順に腫瘍/血液比、腫瘍/筋肉比及び腫瘍/骨比の経時変化を示すグラフである。
図1に示すように、投与後240分において、腫瘍への集積は2.3 ID%/gであった。また、
図2に示すように、画像化に重要な臓器比は腫瘍/血液比13.8、腫瘍/筋肉比3.1、腫瘍/骨比4.1と高い臓器比が得られた。
【0062】
[K562担がんマウスを用いた[
125I]PON-2体内動態評価]
Bcr-Abl positive細胞であるK562担がんマウスへ[
125I]PON-2(18.5 kBq/100 μL)をマウス尾静注より投与した。投与後60、120、180分に各臓器(腫瘍、血液、心臓、肺、肝臓、膵臓、胃、小腸、脾臓、腎臓、筋肉、骨)を摘出した。各臓器の重量と放射能を測定し、単位重量あたりの放射能から放射集積量(ID%/g)を算出した。その結果を
図3及び4に示す。
図3は、血液、骨、腫瘍及び筋肉における集積量の経時変化を示すグラフである。
図4は、左から順に腫瘍/血液比、腫瘍/筋肉比及び腫瘍/骨比の経時変化を示すグラフである。
図3に示すように、投与後180分において、腫瘍への集積は4.1 ID%/gであった。また、
図4に示すように、画像化に重要な臓器比は腫瘍/血液比9.6、腫瘍/筋肉比4.6、腫瘍/骨比3.7と高い臓器比が得られた。
【0063】
[A431担がんマウスを用いた[125I]PON-2体内動態評価]
Bcr-Abl negative細胞であるA431担がんマウスへ[125I]PON-2(18.5 kBq/100 μL)をマウス尾静注より投与した。投与後180分に各臓器(腫瘍、血液、心臓、肺、肝臓、膵臓、胃、小腸、脾臓、腎臓、筋肉、骨)を摘出した。各臓器の重量と放射能を測定し、単位重量あたりの放射能から放射集積量(ID%/g)を算出した。投与後180分において、腫瘍への集積は0.6 ID%/gであり、画像化に重要な臓器比は腫瘍/血液比2.9、腫瘍/筋肉比1.3、腫瘍/骨比0.9と低い臓器比が認められた。
【0064】
[K562担がんマウスを用いた[
125I]PON-3体内動態評価]
Bcr-Abl positive細胞であるK562担がんマウスへ[
125I]PON-3(18.5 kBq/100 μL)をマウス尾静注より投与した。投与後60、120、180分に各臓器(腫瘍、血液、心臓、肺、肝臓、膵臓、胃、小腸、脾臓、腎臓、筋肉、骨)を摘出した。各臓器の重量と放射能を測定し、単位重量あたりの放射能から放射集積量(ID%/g)を算出した。その結果を
図5及び7に示す。
図5は、血液、骨、腫瘍及び筋肉における集積量の経時変化を示すグラフである。
図6は、左から順に腫瘍/血液比、腫瘍/筋肉比及び腫瘍/骨比の経時変化を示すグラフである。
図5に示すように、投与後180分において、腫瘍への集積は1.3 ID%/gであった。また、
図6に示すように、画像化に重要な臓器比は腫瘍/血液比5.8、腫瘍/筋肉比7.2、腫瘍/骨比1.6と高い臓器比が得られた。
【0065】
[A431担がんマウスを用いた[125I]PON-3体内動態評価]
Bcr-Abl negative細胞であるA431担がんマウスへ[125I]PON-3(18.5 kBq/100 μL)をマウス尾静注より投与した。投与後180分に各臓器(腫瘍、血液、心臓、肺、肝臓、膵臓、胃、小腸、脾臓、腎臓、筋肉、骨)を摘出した。各臓器の重量と放射能を測定し、単位重量あたりの放射能から放射集積量(ID%/g)を算出した。その結果、投与後180分において、腫瘍への集積は0.3 ID%/gであり、画像化に重要な臓器比は腫瘍/血液比2.1、腫瘍/筋肉比4.4、腫瘍/骨比1.8と低い臓器比が認められた。
【0066】
[K562担がんマウスを用いた[
125I]PON-4体内動態評価]
Bcr-Abl positive細胞であるK562担がんマウスへ[
125I]PON-4(18.5 kBq/100 μL)をマウス尾静注より投与した。投与後60、120、180分に各臓器(腫瘍、血液、心臓、肺、肝臓、膵臓、胃、小腸、脾臓、腎臓、筋肉、骨)を摘出した。各臓器の重量と放射能を測定し、単位重量あたりの放射能から放射集積量(ID%/g)を算出した。その結果を
図7及び8に示す。
図7は、血液、骨、腫瘍及び筋肉における集積量の経時変化を示すグラフである。
図8は、左から順に腫瘍/血液比、腫瘍/筋肉比及び腫瘍/骨比の経時変化を示すグラフである。
図8に示すように、投与後180分において、腫瘍への集積は1.5 ID%/gであった。また、
図8に示すように、画像化に重要な臓器比は腫瘍/血液比10.2、腫瘍/筋肉比3.9、腫瘍/骨比3.9と高い臓器比が得られた。
【0067】
[A431担がんマウスを用いた[125I]PON-4体内動態評価]
Bcr-Abl negative細胞であるA431担がんマウスへ[125I]PON-4(18.5 kBq/100 μL)をマウス尾静注より投与した。投与後180分に各臓器(腫瘍、血液、心臓、肺、肝臓、膵臓、胃、小腸、脾臓、腎臓、筋肉、骨)を摘出した。各臓器の重量と放射能を測定し、単位重量あたりの放射能から放射集積量(ID%/g)を算出した。その結果、投与後180分において、腫瘍への集積は0.3 ID%/gであり、画像化に重要な臓器比は腫瘍/血液比1.5、腫瘍/筋肉1.9、腫瘍/骨比1.2と低い臓器比が認められた。
【0068】
[Ba/F Bcr-AblT315I担がんマウスを用いた[
125I]PON-2体内動態評価]
Bcr-Abl変異細胞であるBa/F Bcr-AblT315I担がんマウスへ[
125I]PON-2(18.5 kBq/100 μL)をマウス尾静注より投与した。投与後1、3、24時間に各臓器(腫瘍、血液、心臓、肺、肝臓、膵臓、胃、小腸、脾臓、腎臓、筋肉、骨)を摘出した。各臓器の重量と放射能を測定し、単位重量あたりの放射能から放射集積量(ID%/g)を算出した。その結果を
図9に示す。
図9は、左から順に腫瘍/血液比、腫瘍/筋肉比及び腫瘍/骨比の経時変化を示すグラフである。投与後3時間の時点において、腫瘍への集積は1.7 ID%/gであった。また、
図9に示すように、投与後24時間において画像化に重要な臓器比は腫瘍/血液比7.5、腫瘍/筋肉比6.2、腫瘍/骨比2.9と高い臓器比が得られた。
【0069】
[SPECT/CT撮像]
K562担がんマウスへ[
123I]PON-2(87.3 MBq/100 μL)をマウス尾静脈より投与した。投与後1074分からイソフルラン(2.0%)吸引麻酔し投与後1084分からSPECT/CT装置(FX-3300)を用いて48分間撮像した。その後、CT撮像(60 kV, 320 μA)を行った。画像再構成は、3D-OSEMを用いて行った。得られた画像を
図10に示す。
図10に示すように、移植したK562細胞で構成された腫瘍をイメージングできた。撮像終了後、屠殺し各臓器を摘出し、各臓器の重量と放射能を測定し、単位重量あたりの放射能から集積量(%ID/g)を算出した。その結果、腫瘍/血液比12.1、腫瘍/筋肉比7.4、腫瘍/骨比10.5と高い近接臓器比が認められた。