(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】偏光板及びその製造方法、並びに表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220216BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220216BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220216BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/14 A
H05B33/02
G02F1/1335 510
(21)【出願番号】P 2017188101
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2020-08-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】住田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】河村 真一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏昌
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-028234(JP,A)
【文献】特開2015-222368(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117659(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H01L 51/50
H05B 33/02
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して配置された保護フィルムとを含む偏光板であって、
初期状態において測定される視感度補正単体透過率(Ty)が、44%以上であり、
初期状態及び耐久試験後において測定される直交色相が、ab色度座標におけるa座標軸及びb座標軸を挟んで符号が変化
せず、
前記耐久試験後は、少なくとも前記初期状態から、乾燥雰囲気中で105℃、30分の加熱に供した後であることを特徴とする偏光板。
【請求項2】
前記偏光子は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向された偏光フィルムであることを特徴とする請求項
1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記偏光子の厚みが、3~15μmであることを特徴とする請求項1
又は2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記保護フィルムを除去したときに、接着剤が付着した前記偏光子の表面に、高低差が80~250nmとなる凹凸が存在することを特徴とする請求項1~
3の何れか一項に記載の偏光板。
【請求項5】
前記偏光子が、ヨウ素系偏光子であることを特徴とする請求項1~
4の何れか一項に記載の偏光板。
【請求項6】
表示パネルと、
請求項1~
5の何れか一項に記載の偏光板とを備える表示装置。
【請求項7】
偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して配置された保護フィルムとを含む偏光板の製造方法であって、
初期状態及び耐久試験後において測定される直交色相が、ab色度座標におけるa座標軸及びb座標軸を挟んで符号が変化しないように調整する色相調整工程を含
み、
前記耐久試験後は、少なくとも前記初期状態から、乾燥雰囲気中で105℃、30分の加熱に供した後であることを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項8】
前記色相調整工程として、少なくとも前記偏光子の色相を調整することを特徴とする請求項
7に記載の偏光板の製造方法。
【請求項9】
前記色相調整工程として、前記偏光板の少なくとも一方の面又は両面に配置される前記保護フィルムを選択することを特徴とする請求項
7又は
8に記載の偏光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板及びその製造方法、並びに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、偏光子の表面のスジに由来して、反射光の濃淡により確認されるスジ状のムラが生じるため、偏光子の表面凹凸の高さを280nm以下にすることで、反射光の濃淡により生じるスジ状のムラを抑えることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、消費電力の低減等の目的から、偏光板の高透過化が進んでいる。一方、偏光板が高透過になると、特許文献1に記載のように、偏光子の表面凹凸を280nm以下にしたとしても、この偏光子の表面凹凸に由来して、クロスニコル状態で偏光子を透過する光によりスジ状のムラが生じることがわかった。
【0005】
さらに、高透過の偏光板について、初期状態の色相を制御し、クロスニコル状態で偏光子を透過することにより視認されるスジ状のムラを目立たなくしても、偏光板を使用している間に、この偏光板の色相(色味)が変化することによって、スジ状のムラが目立ってくることがあった。
【0006】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、スジ状のムラを色相の変化に因らずに目立たなくすることを可能とした偏光板及びその製造方法、並びに、そのような偏光板を備えた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、本発明の態様に従えば、偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して配置された保護フィルムとを含む偏光板であって、初期状態において測定される視感度補正単体透過率(Ty)が、44%以上であり、初期状態及び耐久試験後において測定される直交色相が、ab色度座標におけるa座標軸及びb座標軸を挟んで符号が変化しないことを特徴とする偏光板が提供される。
【0008】
また、前記偏光板において、前記耐久試験後は、少なくとも前記初期状態から、乾燥雰囲気中で105℃、30分の加熱に供した後である構成としてもよい。
【0009】
また、前記偏光板において、前記偏光子は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向された偏光フィルムである構成としてもよい。
【0010】
また、前記偏光板において、前記偏光子の厚みが、3~15μmである構成としてもよい。
【0011】
また、前記偏光板において、前記保護フィルムを除去したときに、接着剤が付着した前記偏光子の表面に、高低差が80~250nmとなる凹凸が存在する構成としてもよい。
【0012】
また、前記偏光板において、前記偏光子が、ヨウ素系偏光子である構成としてもよい。
【0013】
また、本発明の態様に従えば、表示パネルと、前記何れかの偏光板とを備える表示装置が提供される。
【0014】
また、本発明の態様に従えば、偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して配置された保護フィルムとを含む偏光板の製造方法であって、初期状態及び耐久試験後において測定される直交色相が、ab色度座標におけるa座標軸及びb座標軸を挟んで符号が変化しないように調整する色相調整工程を含むことを特徴とする偏光板の製造方法が提供される。
【0015】
また、前記偏光板の製造方法において、前記色相調整工程として、少なくとも前記偏光子の色相を調整する製造方法としてもよい。
【0016】
また、前記偏光板の製造方法において、前記色相調整工程として、前記偏光板の少なくとも一方の面又は両面に配置される前記保護フィルムを選択する製造方法としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の態様によれば、スジ状のムラを色相の変化に因らずに目立たなくすることを可能とした偏光板、並びに、そのような偏光板を備えた屈曲可能な表示装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る偏光板の構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の別の実施形態に係る偏光板の構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の別の実施形態に係る偏光板の構成を示す断面図である。
【
図4】
図2に示す偏光板を備えた表示装置の構成を示す断面図である。
【
図5】偏光板の耐久試験前後で測定される直交色相の変化を説明するためのab色度座標図である。
【
図6】偏光フィルムの製造装置の構成を示す模式図である。
【
図7】実施例1,2における耐久試験前後で測定される直交色相の変化を示すab色度座標図である。
【
図8】実施例3,4及び比較例1,2における耐久試験前後で測定される直交色相の変化を示すab色度座標図である。
【
図9】参考例1における耐久試験前後で測定される直交色相の変化を示すab色度座標図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面では、各構成要素を見やすくするため、構成要素を模式的に示している場合があり、構成要素によっては寸法の縮尺を異ならせて示すこともある。また、以下の説明において例示される材料や数値等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0020】
(偏光板)
先ず、本発明の一実施形態として、例えば
図1に示す偏光板1について説明する。
なお、
図1は、偏光板1の概略構成を示す断面図である。
【0021】
本実施形態の偏光板1は、
図1に示すように、偏光子2と、偏光子2の少なくとも一方の面(本実施形態では両面)に配置された保護フィルム3,4とを含み、これら保護フィルム3,4が接着剤(図示せず。)により偏光子2の両面に貼合(接着剤層を介して積層)された構造を有している。
【0022】
偏光子2は、自然光などの光を直線偏光に変換する機能を有し、透過軸と吸収軸とを有している。偏光子2の透過軸は、この偏光子2に自然光を透過させたときの透過光の振動方向である。一方、偏光子2の吸収軸は、この偏光子2の透過軸と直交する方向となる。
【0023】
偏光子2は、一般に一軸延伸されたポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性色素が吸着配向された偏光フィルムからなる。このため、偏光子2の吸収軸方向は、その延伸方向(MD)に一致し、偏光子2の透過軸方向は、幅方向(TD)に一致する。
【0024】
PVA系樹脂フィルムは、通常、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。そのケン化度は、通常約85モル%以上、好ましくは約90モル%以上、より好ましくは約99モル%以上である。
【0025】
ポリ酢酸ビニル系樹脂は、例えば、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体等であることができる。共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類等を挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常約1000~10000、好ましくは約1500~5000程度である。これらのポリビニルアルコール系樹脂は、変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等も使用できる。
【0026】
偏光子2の厚みは、偏光板1の薄膜化の観点から薄いことが好ましいが、偏光板1の用途等に応じて適宜設定される。偏光子2の厚みは、例えば25μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下であり、例えば1μm以上、好ましくは3μm以上であってよい。偏光子2の厚みが15μm以下となるときには、PVA系樹脂フィルムの加工中の搬送において皺が生じ易く、偏光子2に凹凸が生じやすいため、本発明による効果が大きくなる。なお、偏光板1における偏光子2の厚みは、保護フィルム3,4を接着剤により貼合して硬化させた後の偏光子2の厚みに実質的に等しいと考えて差し支えない。
【0027】
保護フィルム3,4としては、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなアセチルセルロース系樹脂からなるフィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂からなるフィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム;シクロオレフィン系樹脂フィルム;アクリル系樹脂フィルム;ポリプロピレン系樹脂の鎖状オレフィン系樹脂からなるフィルムが挙げられる。
【0028】
偏光子2の両面に保護フィルム3,4が配置される場合は、同種の樹脂からなる保護フィルム3,4であってもよいし、異種の樹脂からなる保護フィルム3,4であってもよい。
【0029】
保護フィルム3,4の厚みは、偏光板1の薄膜化の観点から薄いことが好ましいが、偏光板1の用途等に応じて適宜設定される。保護フィルム3,4の厚みは、例えば85μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下であってよい。
【0030】
一方、保護フィルム3,4の厚みは、加工性の観点からある程度の強度を確保し得る厚みであることが好ましく、例えば5μm以上、好ましくは10μm以上であってよい。
【0031】
接着剤としては、水系接着剤であってもよいし、活性エネルギー線硬化型接着剤であってもよい。水系接着剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液、又はこれに架橋剤が配合された水溶液、ウレタン系エマルジョン接着剤のような水系接着剤を挙げることができる。
【0032】
活性エネルギー線硬化型接着剤とは、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射することで硬化する接着剤を意味する。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、その硬化様式で分類すると、硬化性化合物としてカチオン重合性化合物を含むカチオン重合型接着剤、硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を含むラジカル重合型接着剤、カチオン重合性化合物及びラジカル重合性化合物の両方を含む硬化性接着剤等が挙げられる。カチオン重合性化合物としてはエポキシ化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。ラジカル重合性化合物としては、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物等が挙げられる。
【0033】
水系接着剤により形成される接着剤層の厚みは、例えば20nm以上、好ましくは40nm以上であってよい。一方、接着剤の厚みは、生産コスト等の観点から必要以上に大き過ぎない程度であればよく、例えば1000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下であってよい。
【0034】
活性エネルギー線硬化型接着剤により形成される接着剤層の厚みは、0.1μm以上であること好ましく、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。
【0035】
本発明の別の実施形態としては、例えば、
図2に示す偏光板1Aや、
図3に示す偏光板1Bの構成であってもよい。なお、
図2は、偏光板1Aの概略構成を示す断面図である。
図2は、偏光板1Bの概略構成を示す断面図である。
【0036】
具体的に、
図2に示す偏光板1Aは、上記偏光板1の構成に加えて、少なくとも一方の保護フィルム(本実施形態では保護フィルム4)の偏光子2とは反対側の面に配置された粘着剤(PSA)層5を含む構成である。一方、
図3に示す偏光板1Bは、偏光子2と、偏光子2の一方の面に配置された保護フィルム3と、偏光子2の他方の面に配置された粘着剤層5とを含む構成である。
【0037】
粘着剤層5は、それ自体の粘着性により、偏光子2や保護フィルム3,4に対して貼合することができる。粘着剤層5を形成する粘着剤としては、従来公知のものを適宜選択すればよく、偏光板1A,1Bが曝され得る環境下において、剥れなどが生じない程度の接着性を有するものであればよい。具体的には、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などを挙げることができ、透明性、耐候性、耐熱性、加工性の点で、アクリル系粘着剤が特に好ましい。粘着剤層5の厚みは、通常3~100μm程度であり、好ましくは5~50μmである。
【0038】
また、粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、シランカップリング剤など、各種の添加剤を適宜に配合してもよい。
【0039】
粘着剤層5は、偏光板1A,1Bを他の部材に貼り合わせるために使用される。粘着剤層5の表面には、予め剥離フィルム(図示せず。)を有していてもよい。粘着剤層5の表面に剥離フィルムが存在する場合は、その一方の面から剥離フィルムを剥がして、この粘着剤層5を偏光子2や保護フィルム3,4に貼合(積層)することができる。さらに、その他方の面から剥離フィルムを剥がした後に、この粘着剤層5を介して他の部材に貼り合わせることができる。
【0040】
なお、本発明が適用される偏光板の構成については、上記
図1~
図3に示す偏光板1,1A,1Bの構成に必ずしも限定されるものではない。すなわち、本発明が適用される偏光板は、偏光子と、偏光子の少なくとも一方の面又は両面に配置された保護フィルムとを含む構成であればよく、それ以外の構成については適宜変更を加えることが可能である。
【0041】
例えば、上記偏光板1,1Aでは、上記保護フィルム4に代えて、例えば、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどの他の機能層が適用されていてもよい。
【0042】
また、上記偏光板1,1A,1Bを円偏光板として使用する場合は、上記構成に加えて、1/4波長(λ/4)板を含む構成とすればよい。λ/4板は、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(又は円偏光を直線偏光に)変換する機能を有している。λ/4板は、粘着剤層5を介して保護フィルム4の偏光子2とは反対側の面に配置される。
【0043】
また、上記偏光板1,1A,1Bを円偏光板として使用する場合は、λ/4板の他にも、ポジティブCプレートを含む構成としてもよい。ポジティブCプレートは、偏光板1,1A,1Bの反射色相(色味)の変化を低減することができる。ポジティブCプレートを含む場合、λ/4板は逆波長分散性λ/4板であることが好ましい。ポジティブCプレートは、接着剤層又は粘着剤層を介してλ/4板の偏光子2とは反対側の面(他方の面)に配置される。したがって、例えば、上記偏光板1である場合、上記偏光板1、粘着剤層5、λ/4板、粘着剤層又は接着剤層、ポジティブCプレートの積層構造を有する。
【0044】
また、上記偏光板1,1A,1Bを円偏光板として使用する場合は、λ/4板の他にも、1/2波長(λ/2)板を含む構成としてもよい。λ/2板は、入射光の電界振動方向(偏光面)にπ(=λ/2)の位相差を与えるものであり、直線偏光の向き(偏光方位)を変える機能を有している。また、円偏光の光を入射させると、円偏光の回転方向を反対回りにすることができる。λ/2板は、接着剤層又は粘着剤層を介してλ/4板の偏光子2とは反対側の面(他方の面)に配置される。したがって、例えば、上記偏光板1である場合、上記偏光板1、粘着剤層5、λ/4板、粘着剤層又は接着剤層、λ/2板の積層構造を有する。
【0045】
(表示装置)
次に、本実施形態の表示装置について、
図4を参照して説明する。
なお、
図4は、上記
図2に示す偏光板1Aを備えた表示装置10の構成を示す断面図である。
【0046】
本実施形態の表示装置10は、
図4に示すように、表示パネル11と、表示パネル11の視認側に配置された偏光板1Aとを備えている。偏光板1Aは、粘着剤層5を介して表示パネル11に貼り合わされている。
【0047】
表示パネル11については、特に限定されないが、例えば液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示素子などであればよい。表示装置10は、表示パネル11として液晶表示パネルを使用した場合は、液晶表示装置と称される。一方、表示装置10は、表示パネル11として有機EL表示素子を使用した場合は、有機EL表示装置と称される。
【0048】
なお、本発明が適用される表示装置の構成については、上記
図4に示す表示装置10の構成に必ずしも限定されるものではない。すなわち、本発明を適用される表示装置は、上述した本発明が適用された偏光板を備える限り、表示パネルの構成については適宜変更を加えることが可能である。一方、本発明が適用された偏光板の用途は、上述した表示装置に限定されるものではなく、様々な光学用途に使用することが可能である。
【0049】
ところで、本実施形態の偏光板1は、初期状態及び耐久試験後において測定される直交色相が、ab色度座標におけるa座標軸及びb座標軸を挟んで符号が変化しないように調整されていることを特徴とする。すなわち、偏光板1の耐久試験前後で測定される直交色相の変化が、a座標軸及びb座標軸を跨がない値に設定されている。これにより、耐久試験前後で偏光板1の直交色相が変化しても、偏光板1に発生したスジ状のムラを色相の変化に因らずに目立たなくすることが可能である。
【0050】
具体的に、偏光板1の耐久試験前後で測定される直交色相の変化について、
図5を参照して説明する。なお、
図5は、偏光板1の耐久試験前後で測定される直交色相の変化を説明するためのab色度座標図である。
【0051】
偏光板1の耐久試験前後で測定される直交色相の変化については、分光光度計等を用いて測定することができる。
【0052】
また、本実施形態では、分光光度計により、透過色相の測定を行う。その後、乾燥雰囲気中で105℃、30分の加熱に供した後に、再び分光光度計により透過色相の測定を行う。そして、偏光板1の初期状態及び耐久試験後において測定された透過色相が、a座標軸及びb座標軸を挟んで符号が変化しないことを確認した。
【0053】
また、偏光板1に発生したスジ状のムラは、バックライト上のクロスニコル透過光により観察することができる。具体的には、白色バックライトの照明面に偏光板を貼り合わせ、その上から偏光板1を吸収軸が直交するように置き、目視にてムラの強さの観察を行うことができる。
【0054】
偏光板1の保護フィルム3,4として、λ/4板、ポジティブCプレート、λ/2板等の位相差板を含む場合についても、これらの位相差板がバックライトの反対側(視認側)になるようにバックライト上に設置し、観察すればよい。また、偏光板1の保護フィルム3,4の両方が位相差板の構成である場合、照明面に偏光板を貼り合わせたバックライトの上に位相差板を設置し、その上から偏光板1がクロスニコルとなるように設置して観察することができる。
【0055】
本実施形態において、偏光板1の耐久試験前後で測定される直交色相について、a座標軸及びb座標軸を挟んで符号が変化しない場合とは、例えば
図5に示すab色度座標図において、a座標軸及びb座標軸を挟んで象限を跨がないことと同義である。この場合、耐久試験前後で偏光板1の直交色相が変化しても、偏光板1に発生したスジ状のムラを色相の変化に因らずに目立たなくすることが可能である。一方、a座標軸及びb座標軸を挟んで象限を跨ぐと、直交色相の変化により偏光板1に発生したスジ状のムラが見え易くなる。
【0056】
偏光板1に発生したスジ状のムラについては、偏光板1の表面におけるスジ状のムラの高低差ΔHが80~250nmであることが望ましい。スジ状のムラの高低差ΔHは、保護フィルム3,4を除去したときに、接着剤が付着した偏光子2の表面を、そのスジの延長方向に対して直交方向に偏光板1の表面を走査しながら、表面の凹凸形状をライン測定する。そして、この測定結果から、下記式(1)に示すように、表面の平均線に対して、最も高い凸部の頂点における高さ(H1)と、最も高い凸部に各々隣接する2つの凹部のうち、より深い方の凹部の底部における深さ(H2)との合計により求められる。なお、スジの延長方向は、通常、延伸方向(MD)に一致する方向である。
80nm≦ΔH=H1+H2≦250nm ・・・(1)
【0057】
本実施形態の偏光板1では、初期状態及び耐久試験後において測定される直交色相が、ab色度座標におけるa座標軸及びb座標軸を挟んで符号が変化しないように調整することで、このような偏光板1に発生したスジ状のムラを色相の変化に因らずに目立たなくすることが可能である。
【0058】
また、本実施形態の偏光板1では、偏光子2の色相を調整したり、偏光板1の少なくとも一方の面又は両面に配置される保護フィルム4,5を選択したりすることで、その直交色相を調整することが可能である。
【0059】
本実施形態の偏光板1において、視感度補正単体透過率(Ty)は、44.0%以上であることが好ましく、より好ましくは44.3%以上、さらに好ましくは44.5%以上である。また、本実施形態の偏光板1において、視感度補正偏光度(Py)は、95%以上であり、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。Ty及びPyは、例えば、分光光度計等を用いて測定することができる。
【0060】
なお、本発明は、上記偏光板1以外にも、上述した偏光板1A,1Bや、λ/4板、ポジティブCプレート、λ/2板等の位相差フィルムを含む偏光板についても、初期状態及び耐久試験後において測定される直交色相が、ab色度座標におけるa座標軸及びb座標軸を挟んで符号が変化しないように調整することで、偏光板に発生したクロスニコル状態で偏光子2を透過する光により生じるスジ状のムラを色相の変化に因らずに目立たなくすることが可能である。
【0061】
(偏光板の製造方法)
次に、本実施形態の偏光板の製造方法について、
図6を参照して説明する。
なお、
図6は、上記偏光子2となる偏光フィルムの製造装置100を示す模式図である。また、
図6中に示す矢印は、偏光フィルムとなるフィルムFの搬送方向を示している。
【0062】
本実施形態では、先ず、
図6に示す製造装置100を用いて、上記偏光板1のうち、偏光子2となる偏光フィルムを作製する。具体的には、長尺の未延伸PVA系樹脂フィルム(原反フィルム)Fを出発材料として、このフィルムFを製造装置100のフィルム搬送経路に沿って連続的に搬送しながら、所定の処理工程を経ることによって、長尺の偏光フィルムを連続して製造する。
【0063】
所定の処理工程としては、フィルムFを膨潤浴102に浸漬させる膨潤処理工程と、膨潤処理工程後のフィルムFを染色浴103に浸漬させる染色処理工程と、染色処理工程後のフィルムFを架橋浴104に浸漬させる架橋処理工程と、架橋処理後のフィルムFを洗浄浴105に浸漬させる洗浄処理工程と、搬送中のフィルムFに一軸延伸処理を施す延伸処理工程と、洗浄処理工程後のフィルムFを乾燥炉106で乾燥させる乾燥処理工程とを含むことができる。さらに、必要に応じて、他の処理工程を付加してもよい。
【0064】
図6に示す偏光フィルムの製造装置100は、原反ロール101からフィルムFを連続的に巻き出しながら、フィルム搬送経路に沿って搬送させながら、このフィルム搬送経路上に設けられた膨潤浴102と、染色浴103と、架橋浴104と、洗浄浴105とにフィルムFを順次通過させ、最後に乾燥炉106にフィルムFを通過させるように構成されている。得られた偏光フィルムは、例えば、そのまま次の偏光板1の作製工程(偏光フィルムの片面又は両面に保護フィルムを貼合する工程)へと搬送することができる。
【0065】
なお、
図6に示す製造装置100では、フィルムFに対して処理を施す処理液が収容された処理浴として、膨潤浴102、染色浴103、架橋浴104及び洗浄浴105をそれぞれ1槽ずつ設けた場合を例示しているが、必要に応じて、何れか1つ以上の処理浴を2槽以上設けた構成としてもよい。
【0066】
図6に示す製造装置100は、フィルム搬送経路上において、上述した処理浴102~105の他に、搬送されるフィルムFを支持すると共に、必要に応じて搬送されるフィルムFの搬送方向を変更するガイドロール30~41と、搬送されるフィルムFを押圧・挟持し、その回転による駆動力をフィルムFに与えると共に、必要に応じて搬送されるフィルムFの搬送方向を変更するニップロール50~55とを適宜配置することによって構成されている。
【0067】
ガイドロール30~41及びニップロール50~55は、各処理浴102~105の前後や処理浴102~105中に配置することができる。これにより、各処理浴102~105へのフィルムFの導入・浸漬及び処理浴102~105からの引き出しを行うことができる。例えば、各処理浴102~105中に1つ以上のガイドロール30~41を設け、これらのガイドロール30~41に沿ってフィルムFを搬送させることにより、各処理浴102~105にフィルムFを浸漬させることができる。
【0068】
図6に示す製造装置100では、各処理浴102~105の前後にニップロール50~55が配置されている。これにより、何れか1つ以上の処理浴102~105中で、その前後に配置されるニップロール50~55間に周速差をつけて、フィルムFに対して縦一軸延伸を行うロール間延伸を実施することが可能になっている。
【0069】
以下、偏光フィルムを作製する際にフィルムFに施される各処理工程について説明する。
<膨潤処理工程>
膨潤処理工程は、原反フィルムとなるフィルムFの表面に存在する異物の除去や、フィルムF中に存在する可塑剤の除去、易染色性の付与、フィルムFの可塑化等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、フィルムFの極端な溶解や失透等の不具合を生じない範囲で決定される。
【0070】
原反フィルムとしては、厚みが65μm以下、好ましくは約10~50μm、より好ましくは約10~35μmの未延伸のPVA系樹脂フィルムを用いることができる。原反フィルムは、通常、長尺の未延伸PVA系樹脂フィルムのロール(巻回品)として用意される。但し、原反フィルムは、膨潤処理工程前に予め気体中で一軸延伸処理を施した延伸フィルムであってもよい。
【0071】
膨潤処理工程では、原反ロール101から連続的に巻き出されたフィルム(原反フィルム)Fをニップロール50、ガイドロール30~32の順で通過させる間に、膨潤浴102中に収容された処理液に所定時間浸漬する。これにより、フィルムFに対して膨潤処理が施される。また、フィルムFに対しては、延伸処理工程として、ニップロール50とニップロール51との周速差を利用して、膨潤浴102中で一軸延伸処理を施すこともできる。
【0072】
膨潤浴102の処理液には、純水の他に、ホウ酸(特開平10-153709号公報を参照。)、塩化物(特開平06-281816号公報を参照。)、無機酸、無機塩、水溶性有機溶媒、アルコール類等を約0.01~10重量%の範囲で添加した水溶液を使用することができる。
【0073】
フィルムFが未延伸フィルムである場合、膨潤浴102の温度は、例えば10~50℃程度、好ましくは10~40℃程度、より好ましくは15~30℃程度である。フィルムFの浸漬時間は、好ましくは10~300秒程度、より好ましくは20~200秒程度である。一方、フィルムFが延伸フィルムである場合、膨潤浴102の温度は、例えば20~70℃程度、好ましくは30~60℃程度である。フィルムFの浸漬時間は、好ましくは30~300秒程度、より好ましくは60~240秒程度である。
【0074】
膨潤処理では、フィルムFが幅方向に膨潤してフィルムFにシワが入るといった問題が生じやすい。このシワを取り除きつつフィルムFを搬送するための1つの手段として、ガイドロール30,31及び/又はガイドロール32に、エキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。一方、シワの発生を抑制するためのもう1つの手段としては、延伸処理を施すことができる。
【0075】
膨潤処理では、フィルムFの搬送方向にもフィルムFが膨潤拡大するので、フィルムFに積極的な延伸を行わない場合は、搬送方向のフィルムFのたるみを無くすために、例えば、膨潤浴102の前後に配置するニップロール50、51の速度をコントロールする等の手段を講ずることが好ましい。また、膨潤浴102中でのフィルムFの搬送を安定化させる目的で、膨潤浴102中での水流を水中シャワーで制御したり、EPC装置(Edge PositionControl装置:フィルムの端部を検出し、フィルムの蛇行を防止する装置)等を併用したりすることも有用である。
【0076】
膨潤浴102から引き出されたフィルムFは、ガイドロール32、ニップロール51を順に通過して染色浴103側へと搬送される。
【0077】
<染色処理工程>
染色処理工程は、膨潤処理工程後のフィルムFに二色性色素を吸着、配向させる等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、フィルムFの極端な溶解や失透等の不具合が生じない範囲で決定される。
【0078】
染色処理工程では、膨潤処理工程後のフィルムFをニップロール51、ガイドロール33~35の順で通過させる間に、染色浴103中に収容された処理液に所定時間浸漬する。これにより、フィルムFに対して染色処理が施される。また、フィルムFに対しては、延伸処理工程として、ニップロール51とニップロール52との周速差を利用して、染色浴103中で一軸延伸処理を施すこともできる。
【0079】
染色処理工程に供されるフィルムFは、二色性色素の染色性を高めるために、少なくともある程度の一軸延伸処理を施したフィルムFであることが好ましく、染色処理前に一軸延伸処理を加える、又は、染色処理前の一軸延伸処理に加えて、染色処理時に一軸延伸処理を行うことが好ましい。
【0080】
染色浴103の処理液は、二色性色素としてヨウ素を用いる場合、例えば、濃度が重量比でヨウ素/ヨウ化カリウム/水=約0.003~0.3/約0.1~10/100である水溶液を用いることができる。ヨウ化カリウムに代えて、ヨウ化亜鉛等の他のヨウ化物を用いてもよく、ヨウ化カリウムと他のヨウ化物を併用してもよい。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、ホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルト等を共存させてもよい。ホウ酸を添加する場合は、ヨウ素を含む点で後述する架橋処理と区別され、水溶液が水100重量部に対し、ヨウ素を約0.003重量部以上含んでいるものであれば、染色浴103とみなすことができる。
【0081】
この場合の染色浴103の温度は、通常10~45℃程度、好ましくは10~40℃であり、より好ましくは20~35℃である。この場合のフィルムFの浸漬時間は、通常30~600秒程度、好ましくは60~300秒である。
【0082】
一方、染色浴103の処理液は、二色性色素として水溶性二色性染料を用いる場合、例えば、濃度が重量比で二色性染料/水=約0.001~0.1/100(好ましくは約0.003~0.03/約0.1~10/100である水溶液を用いることができる。この場合、染色浴103の処理液には、染色助剤等を共存させてもよく、例えば、硫酸ナトリウム等の無機塩や界面活性剤などを含有していてもよい。二色性染料は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上の二色性染料を併用してもよい。
【0083】
この場合の染色浴103の温度は、例えば20~80℃程度、好ましくは30~70℃であり、この場合のフィルムFの浸漬時間は、通常30~600秒程度、好ましくは60~300秒程度である。
【0084】
染色処理では、上述した膨潤処理の場合と同様に、フィルムFのシワを取り除きつつフィルムFを搬送するための1つの手段として、ガイドロール33,34及び/又はガイドロール35に、エキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。一方、シワの発生を抑制するためのもう1つの手段としては、上述した膨潤処理の場合と同様に、延伸処理を施すことできる。
【0085】
染色浴103から引き出されたフィルムFは、ガイドロール35、ニップロール52を順に通過して架橋浴104側へと導入される。
【0086】
<架橋処理工程>
架橋処理工程は、架橋による耐水化や色相調整などの目的で行う処理である。架橋処理工程では、染色処理工程後のフィルムFをニップロール52及びガイドロール36~38の順で通過させる間に、架橋浴104中に収容された処理液に所定時間浸漬する。これにより、フィルムFに対して架橋処理が施される。また、フィルムFに対しては、延伸処理工程として、ニップロール52とニップロール53との周速差を利用して、架橋浴104中で一軸延伸処理を施すこともできる。
【0087】
架橋浴104の処理液は、水100重量部に対してホウ酸を例えば約1~10重量部含有する水溶液を用いることができる。架橋浴104の処理液は、染色処理で使用した二色性色素がヨウ素の場合、ホウ酸に加えてヨウ化物を含有することが好ましく、その量は、水100重量部に対して、例えば1~30重量部とすることができる。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等を共存させてもよい。
【0088】
架橋処理では、その目的によって、架橋剤(ホウ酸等)及びヨウ化物の濃度、並びに架橋浴の温度を適宜変更することができる。例えば、架橋処理の目的が架橋による耐水化であり、未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対し、膨潤処理、染色処理及び架橋処理をこの順に施す場合、架橋浴の架橋剤含有液は、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=3~10/1~20/100の水溶液であることができる。また、必要に応じて、ホウ酸に代えてグリオキザール又はグルタルアルデヒド等の他の架橋剤を用いてもよく、ホウ酸と他の架橋剤を併用してもよい。
【0089】
架橋浴104の温度は、通常50~70℃程度、好ましくは53~65℃である。フィルムFの浸漬時間は、通常10~600秒程度、好ましくは20~300秒、より好ましくは20~200秒である。一方、予め延伸したフィルムFに対して染色処理及び架橋処理をこの順に施す場合の架橋浴104の温度は、通常50~85℃程度、好ましくは55~80℃である。
【0090】
色相調整を目的とする架橋処理においては、例えば、二色性色素としてヨウ素を用いた場合、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=1~5/3~30/100の架橋浴を使用することができる。フィルムFを浸漬するときの架橋浴104の温度は、通常10~45℃程度である。フィルムFの浸漬時間は、通常1~300秒程度、好ましくは2~100秒である。
【0091】
架橋処理は、複数回行ってもよく、通常2~5回行われる。この場合、使用する各架橋浴104の組成及び温度は、上記の範囲内であれば同じであってもよく、異なっていてもよい。架橋による耐水化のための架橋処理及び色相調整のための架橋処理は、それぞれ複数の工程で行ってもよい。
【0092】
架橋処理では、上述した膨潤処理の場合と同様に、フィルムFのシワを取り除きつつフィルムFを搬送するための1つの手段として、ガイドロール36,37及び/又はガイドロール38に、エキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。一方、シワの発生を抑制するためのもう1つの手段としては、上述した膨潤処理の場合と同様に、延伸処理を施すことできる。
【0093】
架橋浴104から引き出されたフィルムFは、ガイドロール38、ニップロール53を順に通過して洗浄浴105側へと導入される。
【0094】
<洗浄処理工程>
洗浄処理工程は、フィルムFに付着した余分なホウ酸やヨウ素等の薬剤を除去する目的で行われる。洗浄処理工程では、例えば、架橋処理工程後のフィルムFをニップロール53及びガイドロール39~41の順で通過させる間に、洗浄浴105中に収容された洗浄液(水)に所定時間浸漬する。又は、架橋処理工程後のフィルムFに対して水をシャワーとして噴霧する。若しくは、これらの洗浄処理を併用することによって行うことができる。
【0095】
図6示す製造装置100では、フィルムFを洗浄浴105に浸漬して洗浄処理を行う場合を例示している。洗浄浴105の温度は、通常2~40℃程度である。フィルムFの浸漬時間は、通常2~120秒程度である。
【0096】
洗浄処理では、上述した膨潤処理の場合と同様に、フィルムFのシワを取り除きつつフィルムFを搬送するための1つの手段として、ガイドロール39,40及び/又はガイドロール41に、エキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。一方、シワの発生を抑制するためのもう1つの手段としては、上述した膨潤処理の場合と同様に、延伸処理を施すことできる。
【0097】
洗浄浴105から引き出されたフィルムFは、ガイドロール41、ニップロール54を順に通過して乾燥炉106側へと導入される。
【0098】
<乾燥処理工程>
乾燥処理工程は、洗浄処理工程の後のフィルムFに対して乾燥処理を施す。フィルムFの乾燥処理は、特に制限されるものではなく、
図6に示す製造装置100では、乾燥炉106を用いて行うことができる。より具体的には、例えば、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターなどを用いて、フィルムFの乾燥を行うことができる。
【0099】
フィルムFの乾燥温度は、例えば20~100℃、好ましくは20~80℃である。フィルムFの乾燥時間は、例えば10~600秒、好ましくは30~300秒である。
【0100】
<延伸処理工程>
延伸処理工程は、上述した一連の処理工程の間(すなわち、何れか1つ以上の処理工程の前後及び/又は何れか1つ以上の処理工程中)において、湿式又は乾式にてフィルムFに対して一軸延伸処理を行う。
【0101】
一軸延伸処理の具体的な方法としては、例えば、フィルム搬送経路を構成する2つのニップロール(例えば、処理浴の前後に配置される2つのニップロール)間に周速差をつけて縦一軸延伸を行うロール間延伸や、特許第2731813号公報に記載されるような熱ロール延伸、テンター延伸等を用いることができ、好ましくはロール間延伸である。
【0102】
延伸処理は、フィルムFから偏光フィルムを得るまでの間に複数回に亘って実施することができる。また、延伸処理は、上述したフィルムFに発生するシワの抑制にも有利である。
【0103】
偏光フィルムの最終的な累積延伸倍率は、通常、未延伸のフィルムFを基準として4.5~7倍程度であり、好ましくは5~6.5倍である。
【0104】
<その他の処理工程>
偏光フィルムの作製工程においては、上記処理工程以外の処理工程を追加することも可能である。追加される処理工程の例としては、例えば、架橋処理工程の後に行われる、ホウ酸を含まないヨウ化物水溶液への浸漬処理工程(補色処理工程)や、ホウ酸を含まず塩化亜鉛等を含有する水溶液への浸漬処理工程(亜鉛処理工程)などを挙げることができる。
【0105】
偏光子2は、作製された偏光フィルムを適宜裁断して得ることができる。また、偏光子2は、方形形状であってもよいし、長尺のフィルムであってもよい。以上のように、偏光子2となる偏光フィルムの作製工程について説明したが、他の方法を用いて、偏光子2となる偏光フィルムを作製することも可能である。
【0106】
次に、上記偏光子2を作製した後は、偏光子2及び/又は保護フィルム3,4の貼合面に、予備処理を施す予備処理工程と、偏光子2の両面に保護フィルム3,4を接着剤により貼合する貼合処理工程と、保護フィルム3,4が貼合された偏光子2を硬化させる硬化処理工程とを経ることによって、上記偏光板1を製造することができる。
【0107】
<予備処理工程>
予備処理工程では、貼合処理工程の前に、偏光子2と保護フィルム3,4との接着性を向上させるため、偏光子2及び/又は保護フィルム3,4の貼合面に、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射、プライマー塗布処理、ケン化処理等の表面処理を施す。
【0108】
<貼合処理工程>
貼合処理工程では、偏光子2の両面に保護フィルム3,4を接着剤により貼合する。接着剤は水系接着剤であってもよいし、活性エネルギー線硬化型接着剤であってもよい。貼合条件は、偏光子2の表面に適用される接着剤の量が比較的多くなるように設定される。
【0109】
<硬化処理工程>
硬化処理工程では、保護フィルム3,4が貼合された偏光子2を硬化させる。水系接着剤を使用した場合には、保護フィルム3,4の貼合後、接着剤層の乾燥処理を行うことによって硬化させる。乾燥温度は、例えば30~100℃、好ましくは40~90℃である。乾燥時間は、例えば30~1200秒、好ましくは60~900秒である。乾燥後に、室温又はそれよりやや高い温度、例えば、20~45℃程度の温度で養生してもよい。
【0110】
活性エネルギー線硬化型接着剤を使用した場合には、偏光子2と保護フィルム3,4との貼合後、活性エネルギー線(紫外線、電子線、X線等)を照射することにより硬化させる。光照射時間は、活性エネルギー線硬化型接着剤ごとに制御されるものであって特に限定されないが、照射強度と照射時間の積として表される積算光量が10~2,500mJ/cm2となるように設定することが好ましい。
【0111】
偏光板1は、偏光子2と同様、方形形状であってもよいし、長尺のフィルムであってもよい。方形形状の偏光板1は、例えば長尺の偏光板1の裁断により得てもよい。また、長尺の偏光板1は、偏光板1のロール(巻回品)であってもよい。
【0112】
本実施形態の偏光板1の製造方法は、初期状態及び耐久試験後において測定される直交色相が、ab色度座標におけるa座標軸及びb座標軸を挟んで符号が変化しないように調整する色相調整工程を含むことを特徴とする。
【0113】
具体的な色相調整工程としては、偏光子2の色相を調整することによって、偏光板1の初期状態及び耐久試験後において測定される直交色相を調整することが可能である。また、偏光子2の色相は、上述した処理液の濃度(例えば、染色浴103中のヨウ化カリウム濃度又は染料濃度や、架橋浴104中のホウ酸濃度、ヨウ化カリウム濃度など。)、処理液の温度、水洗の強さ(時間・温度)、フィルムFの厚み及びその延伸倍率などにより調整することが可能である。その中でも、直交色相の調整には、水洗の強さを制御することが有用である。
【0114】
また、色相調整工程としては、偏光子2の少なくとも一方の面又は両面に配置される保護フィルム3,4を選択することによって、偏光板1の初期状態及び耐久試験後において測定される直交色相を調整することが可能である。すなわち、選択される保護フィルム3,4の種類によっても、偏光板1の初期状態及び耐久試験後において測定される直交色相を調整することが可能である。
【0115】
保護フィルム3,4は、直交色相変化の調整の点から、シクロオレフィン樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂から形成されるフィルムであることが好ましい。また、最表面にくる保護フィルム3は、ハードコート層が付与されていてもよい。
【0116】
また、色相調整工程においては、偏光板1の初期状態及び耐久試験後において測定される直交色相が、ab色度座標におけるa座標軸及びb座標軸から離間する方向に変化するように調整することが好ましい。これにより、耐久試験前後で偏光板1の直交色相が変化しても、ab色度座標におけるa座標軸及びb座標軸を跨ぐことがないため、偏光板1に発生したスジ状のムラを色相の変化に因らずに目立たなくすることが可能である。
【0117】
なお、本発明は、上記偏光板1を製造する場合以外にも、偏光板1A,1Bや、λ/4板、ポジティブCプレート、λ/2板等を含む偏光板を製造する場合についても、初期状態及び耐久試験後において測定される直交色相が、ab色度座標におけるa座標軸及びb座標軸を挟んで符号が変化しないように調整する色相調整工程を設けることで、製造された偏光板に発生したスジ状のムラを色相の変化に因らずに目立たなくすることが可能である。
【実施例】
【0118】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0119】
<実施例1>
実施例1では、
図6に示す偏光フィルムの製造装置100において、2つの架橋浴104(1つ目を架橋浴104aとし、2つ目を架橋浴104bとして区別するものとする。)を用いた以外は、上記製造装置100と同様の製造装置を用いて、偏光フィルムを製造し、得られた偏光フィルムの両面に保護フィルムが貼合された偏光板を作製した。
【0120】
(1)膨潤処理工程
先ず、厚み30μmのポリビニルアルコールフィルム(原反フィルム)(株式会社クラレ製の商品名「クラレポバールフィルムVF-PE♯3000」、平均重合度2400、ケン化度99.9モル%)を原反ロールより連続的に巻出しながら搬送し、20℃の純水が入った膨潤浴に30秒間浸漬した。この膨潤処理工程では、ニップロール50,51間に周速差をつけてロール間延伸(縦一軸延伸)を行った。原反フィルムを基準とする延伸倍率は2.5倍とした。
【0121】
(2)染色処理工程
次に、ニップロール51を通過したフィルムを、純水/ヨウ化カリウム/ヨウ素/ホウ酸/(質量比)が100/2/0.01/0.3である30℃の染色浴に120秒間浸漬した。この染色処理においてもニップロール51,52間に周速差をつけてロール間延伸(縦一軸延伸)を行った。膨潤処理工程後のフィルムを基準とする延伸倍率は1.1倍とした。
【0122】
(3)架橋処理工程
次に、ニップロール52を通過したフィルムを、純水/ヨウ化カリウム/ホウ酸/(質量比)が100/12/4である56℃の架橋浴104aに70秒浸漬した。ニップロールと、第1架橋浴104aと第2架橋浴104bとの間に設置されたニップロール52,53間に周速差をつけてロール間延伸(縦一軸延伸)を行った。染色処理工程後のフィルムを基準とする延伸倍率は1.9倍とした。
【0123】
(4)補色処理工程
次に、第1の架橋処理後のフィルムをヨウ化カリウム/ホウ酸/純水(質量比)が9/2.9/100である40℃の架橋浴104bに10秒浸漬した。
【0124】
(5)洗浄処理工程
次に、第2架橋処理後のフィルムを5℃の純水が入った洗浄浴105に5秒間浸漬させた。
【0125】
(6)乾燥処理工程
次に、洗浄処理工程後のフィルムを乾燥炉に通すことにより80℃で190秒間加熱乾燥させて、偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムの厚みは約12μmであった。
【0126】
(7)貼合処理工程
次に、接着剤として、水100質量部に対してポリビニルアルコールを5質量部含有する水系接着剤を調製した。上記で製造した偏光フィルムの両側に、調製した水系接着剤を用いて下記表1に示す保護フィルムを積層させた。得られた積層体に加熱乾燥を行い、接着剤を乾燥させて偏光板を作製した。なお、得られた偏光板における接着剤層の厚みは約50nmであった。
【0127】
<視感度補正単体透過率の測定>
得られた偏光板の視感度補正単体透過率(Ty)を、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製の「V7100」)を用いて、「JIS Z 8729」に準拠して測定した。その測定結果を下記表1に示す。
【0128】
<偏光子の表面凹凸の測定>
得られた偏光板を10cm×5cmの小片に切り出し、二塩化メチレン600mLに浸漬させて、室温にて30分間超音波処理を行い、貼合されていた第1保護フィルム及び第2保護フィルムを溶解除去した。
【0129】
これら保護フィルムが除去された偏光フィルムについて、フロント側(第1保護フィルムが貼合されていた側)の表面であって、接着剤が付着した偏光子の表面を、その延伸方向に対して垂直方向に走査して、接着剤が付着した偏光子の表面凹凸をライン測定した。そして、この測定結果から、起伏の大きさ(凸凹高低差)と凸凹間隔を算出した。その算出結果を下記表1に示す。
【0130】
ここで、凸凹高低差と凸凹間隔とは、下記により算出される値である。
凸凹高低差:表面の平均線に対して、最も高い凸部の頂点における高さ(H1)と、最も高い凸部に各々隣接する2つの凹部のうち、より深い方の凹部の底部における深さ(H2)との合計。
凸凹間隔:最も高い凸部の頂点と、最も高い凸部に各々隣接する2つの凹部のうち、より深い方の凹部の底部との間の、表面の平均線に対して平行な方向における距離。
【0131】
なお、表面凹凸の測定は、以下の条件で行った。
測定装置:VertScan(登録商標)(株式会社菱化システム製 型式R5500G)
対物レンズ(倍率):2.5倍
測定範囲:3700×2800μm
解像度:640×480ピクセル
測定モード:Waveモード
面補正:4次処理
【0132】
<色相の測定>
製造した偏光板の直交a値及び直交b値を、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製の「V7100」)を用いて測定した。その測定結果を下記表1に示す。
【0133】
その後、製造した偏光板を乾燥雰囲気下で105℃、30分の加熱に供した。加熱後の偏光板の直交a値及び直交b値を、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製の「V7100」)を用いて測定した。その測定結果を下記表1に示す。
【0134】
<スジ状のムラの測定>
20000cd/m2の輝度の白色バックライトモジュールの照明面に視感度補正単体透過率(Ty)が41.6%、視感度補正偏光度(Py)が99.997の偏光板Aを貼り合わせ、その上から偏光板を置いた。
【0135】
なお、このとき偏光板の下記表1に示す第1保護フィルムが上になり、かつ偏光板Aの透過軸と偏光板の透過軸とが直交する(クロスニコル状態)ように置いた。この状態で、偏光板の第1保護フィルム側から、目視によってスジ状のムラを確認した。スジ状のムラを以下の4段階で評価した。その評価結果を下記表1に示す。
0:スジ状のムラが視認されない。
1:スジ状のムラがほぼ視認されない。
2:スジ状のムラが薄く視認できる。
3:スジ状のムラがはっきりと視認される。
【0136】
その後、製造した偏光板を乾燥雰囲気下で105℃、30分の加熱に供した。加熱後の偏光板を上記と同様にしてスジ状のムラのムラを確認し、上記と同様に評価した。その評価結果を下記表1に示す。また、実施例1について、耐久試験前後の色相変化をab色度座標図に図示したものを
図7に示す。
【0137】
<実施例2>
実施例2では、偏光フィルムの色相を調整するため、偏光フィルムに対する洗浄条件のみを変更する(具体的には浸漬時間を3秒とした。)以外は、実施例1と同様にして偏光板2を作製した。そして、得られた偏光板の視感度補正単体透過率(Ty)、偏光子の表面凹凸、耐久試験前後の色相変化、耐久試験前後のスジ状のムラの変化を上記実施例1と同様な方法により測定した。その測定結果を下記表1に示す。また、実施例2について、耐久試験前後の色相変化をab色度座標図に図示したものを
図7に示す。
【0138】
<実施例3>
(1)膨潤処理工程
先ず、厚み30μmのポリビニルアルコールフィルム(原反フィルム)(株式会社クラレ製の商品名「クラレポバールフィルムVF-PE♯3000」、平均重合度2400、ケン化度99.9モル%)を原反ロールより連続的に巻出しながら搬送し、20℃の純水が入った膨潤浴に30秒間浸漬した。この膨潤処理工程では、ニップロール50,51間に周速差をつけてロール間延伸(縦一軸延伸)を行った。原反フィルムを基準とする延伸倍率は2.2倍とした。
【0139】
(2)染色処理工程
次に、ニップロール51を通過したフィルムを、純水/ヨウ化カリウム/ヨウ素/ホウ酸/(質量比)が100/1.4/0.01/0.3である30℃の染色浴に120秒間浸漬した。この染色処理においてもニップロール51,52間に周速差をつけてロール間延伸(縦一軸延伸)を行った。膨潤処理工程後のフィルムを基準とする延伸倍率は1.2倍とした。
【0140】
(3)架橋処理工程
次に、ニップロール52を通過したフィルムを、純水/ヨウ化カリウム/ホウ酸/(質量比)が100/9/4である53℃の架橋浴104aに70秒浸漬した。ニップロールと、第1架橋浴104aと第2架橋浴104bとの間に設置されたニップロール52,53間に周速差をつけてロール間延伸(縦一軸延伸)を行った。染色処理工程後のフィルムを基準とする延伸倍率は2.1倍とした。
【0141】
(4)補色処理工程
次に、第1の架橋処理後のフィルムを純水/ヨウ化カリウム/ホウ酸/(質量比)が100/9/3.9である50℃の架橋浴104bに10秒浸漬した。
【0142】
(5)洗浄処理工程
次に、第2架橋処理後のフィルムを13℃の純水が入った洗浄浴105に5秒間浸漬させた。
【0143】
(6)乾燥処理工程
次に、洗浄処理工程後のフィルムを乾燥炉に通すことにより80℃で190秒間加熱乾燥させて、偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムの厚みは約12μmであった。
【0144】
(7)貼合処理工程
次に、製造した偏光フィルムの両側に、水100質量部に対してポリビニルアルコールを5質量部含有する水系接着剤を用いて下記表1に示す保護フィルムを積層させた。得られた積層体に加熱乾燥を行い、接着剤を乾燥させて偏光板を作製した。なお、得られた偏光板における接着剤層の厚みは約50nmであった。
【0145】
そして、得られた偏光板の視感度補正単体透過率(Ty)、偏光子の表面凹凸、耐久試験前後の色相変化、耐久試験前後のスジ状のムラの変化を上記実施例1と同様な方法により測定した。その測定結果を下記表1に示す。また、実施例3について、耐久試験前後の色相変化をab色度座標図に図示したものを
図8に示す。
【0146】
<実施例4>
実施例4では、保護フィルムの種類を下記表1に示す保護フィルムに変更した以外、実施例3と同様にして偏光板を作製した。そして、得られた偏光板4の視感度補正単体透過率(Ty)、偏光子の表面凹凸、耐久試験前後の色相変化、耐久試験前後のスジ状のムラの変化を上記実施例1と同様の方法により測定した。その測定結果を下記表1に示す。また、実施例4について、耐久試験前後の色相変化をab色度座標図に図示したものを
図8に示す。
【0147】
<比較例1>
比較例1では、偏光フィルムの色相を調整するため、偏光フィルムに対する洗浄条件のみを変更(具体的には浸漬時間を3秒とした。)する以外は、実施例3と同様にして偏光板を作製した。そして、得られた偏光板の視感度補正単体透過率(Ty)、偏光子の表面凹凸、耐久試験前後の色相変化、耐久試験前後のスジ状のムラの変化を上記実施例1と同様の方法により測定した。その測定結果を下記表1に示す。また、比較例1について、耐久試験前後の色相変化をab色度座標図に図示したものを
図8に示す。
【0148】
<比較例2>
比較例2では、偏光フィルムの色相を調整するため、偏光フィルムに対する洗浄条件のみを変更する(具体的には浸漬時間を3秒とした。)以外は、実施例4と同様にして偏光板を作製した。そして、得られた偏光板の視感度補正単体透過率(Ty)、偏光子の表面凹凸、耐久試験前後の色相変化、耐久試験前後のスジ状のムラの変化を上記実施例1と同様の方法により測定した。その測定結果を下記表1に示す。また、比較例2について、耐久試験前後の色相変化をab色度座標図に図示したものを
図8に示す。
【0149】
<参考例1>
参考例1として、染色処理工程において、純水/ヨウ化カリウム/ヨウ素/ホウ酸/(質量比)が100/2/0.03/0.3とした以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。そして、得られた偏光板の視感度補正単体透過率(Ty)、偏光子の表面凹凸、耐久試験前後の色相変化、耐久試験前後のスジ状のムラの変化を上記実施例1と同様の方法により測定した。その測定結果を下記表1に示す。また、参考例1について、耐久試験前後の色相変化をab色度座標図に図示したものを
図9に示す。
【0150】
【0151】
なお、表1中の保護フィルムは、以下に示すとおりである。
保護フィルムA:紫外線硬化型ハードコート層付斜め延伸環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、厚み29μm
保護フィルムB:トリアセチルセルロースフィルム、厚み25μm
保護フィルムC:紫外線硬化型ハードコート層付トリアセチルセルロースフィルム、厚み32μm
保護フィルムD:紫外線硬化型ハードコート層付トリアセチルセルロースフィルム(ただし保護膜Cと紫外線吸収能が異なる)厚み32μm
【0152】
また、表1中において、耐久試験前後で直交色相がab色度座標軸を挟んで符号が変化しないものを、色相の軸「○」とした。一方、耐久試験前後で直交色相がab色度座標軸を挟んで符号が変化するものを、色相の軸「×」とした。
【0153】
表1及び
図7~
図9に示すように、実施例1~4では、耐久試験前後で直交色相がab色度座標軸を挟んで符号が変化しておらず、スジ状のムラが少なく、耐久試験後でもスジ状のムラが大きく増えずに良好であった。
【0154】
一方、比較例1,2では、耐久試験前後で直交色相がab色度座標軸を挟んで符号が変化しており、耐久試験後でもスジ状のムラが大きく増えた。また、参考例1では、視感度補正単体透過率(Ty)が44%未満の偏光フィルムではスジ状のムラが視認されなかった。
【符号の説明】
【0155】
1,1A,1B…偏光板 2…偏光子 3,4…保護フィルム 5…粘着剤層 10…表示装置 11…表示パネル 30~41…ガイドロール 50~55…ニップロール 100…製造装置 101…原反ロール 102…膨潤浴 103…染色浴 104…架橋浴 105…洗浄浴 106…乾燥炉 F…フィルム