(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】吸収性物品用伸縮性シート及びそれを使用した吸収性物品
(51)【国際特許分類】
B32B 5/26 20060101AFI20220216BHJP
D06M 17/00 20060101ALI20220216BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20220216BHJP
D04H 3/007 20120101ALI20220216BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
B32B5/26
D06M17/00 D
D06M17/00 L
D04H3/16
D04H3/007
A61F13/49 312A
A61F13/49 315A
A61F13/49 311Z
(21)【出願番号】P 2017198788
(22)【出願日】2017-10-12
【審査請求日】2020-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【氏名又は名称】白浜 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100066267
【氏名又は名称】白浜 吉治
(72)【発明者】
【氏名】池内 謙仁
(72)【発明者】
【氏名】光野 聡
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-013687(JP,A)
【文献】特開2011-067602(JP,A)
【文献】国際公開第2009/104673(WO,A1)
【文献】特開2004-330777(JP,A)
【文献】特開2007-117117(JP,A)
【文献】特表2001-503336(JP,A)
【文献】特開2009-106468(JP,A)
【文献】特開平06-190998(JP,A)
【文献】特開2008-142342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D06M 17/00
D04H 3/16
D04H 3/007
A61F 13/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂の連続繊維から構成された、肌対向面に位置する第1繊維層と、前記肌対向面の反対側の非肌対向面に位置する第2繊維層とを含み、
前記第1繊維層はポリエチレン繊維から構成されたスパンメルト不織布から形成され、前記第2繊維層はポリエチレン繊維又はポリプロプレン繊維から構成されたスパンメルト不織布から形成されていて、
前記第1及び第2繊維層間には、複数条の弾性体が収縮可能に取り付けられており、
前記第1及び第2繊維層には、互いに隣接する前記弾性体間において前記弾性体が延在する方向と交差する方向へ複数のギャザーが形成されており、
以下の測定条件下において、前記第1及び第2繊維層のKES法による曲げ剛性の平均値が0.0035~0.022N・m
2/m×10^-4であって、かつ、前記ギャザーに対するKES法による圧縮荷重下での厚さ寸法は、0.22~1.5mmである吸収性物品用伸縮性シート。
[測定条件]
(曲げ剛性値の測定方法)
吸収性物品用伸縮性シートにおける第1繊維層の曲げ剛性値B1と第2繊維層の曲げ剛性値B2との測定は、カトーテック(株)製KES-FB2-AUTO-A曲げ測定試験機を用いて行う。第1及び
第2繊維層のそれぞれについて、それらを形成する繊維不織布の所定領域において10cm×10cmにカットしてサンプルとする。次に、各サンプルにおいて伸縮性シートの
弾性体が延在する方向である第1方向で測定できるように測定試験機のチャック間に固定する。最大曲率+2.5cm
-1まで表側に曲げ、次に、最大曲率-2.5cm
-1まで裏側に曲げた後に元に戻すことによって行う。曲げ剛性値B1,B2[N・m
2/m×10^-4]は、表側に曲げはじめて曲率に対する曲モーメントの傾きがほぼ一定になったときの傾きと裏側に曲げはじめて曲率に対する曲モーメントの傾きがほぼ一定になったときの傾きとの平均値から算出する。各サンプルにつきN=5測定し、その結果を平均して算出する。第1繊維層の曲げ剛性値B1と第2繊維層の曲げ剛性値B2との平均値は、以下の計算式によって算出する。{(第1繊維層の曲げ剛性値B1×第1繊維層の質量)/(第1繊維層の質量+第2繊維層の質量)}+{(第2繊維層の曲げ剛性値B2×第2繊維層の質量)/(第1繊維層の質量+第2繊維層の質量)}
(圧縮
荷重下での厚さの測定寸法)
伸縮性シートの厚さ寸法の測定には、カトーテック(株)製KES―FB3-AUTO-A圧縮試験機を用いて測定する。
その伸縮性シートを10.0cm×10.0cmの大きさに切り出して
厚さ寸法の測定用試料とし、
伸縮性シート
である各試料は、収縮した状態で金属平面の試験台に下面側に第2繊維層、上面側(測定面側)に第1繊維層となるように固定する。
各試料
は、その中心を上下に位置する円盤で静かに挟み込み圧縮面積(円盤の面積)約2.0cm
2、荷重0.49hpa下における各試料の厚さ寸法T0を測定する。その後、加圧速度50mm/秒で荷重49.03hpa下になるまで
各試料を圧縮し、荷重49.03hpa下における厚さ寸法Tmを圧縮荷重下の厚さ寸法として測定する。
【請求項2】
以下の測定条件下において、前記ギャザーに対する圧縮荷重下における、KES法における圧縮仕事量が0.236~5.0N・m/m
2、KES法における圧縮回復率は、19~36%である請求項1に記載の伸縮性シート。
[測定条件]
請求項1の[測定条件]に記載の(圧縮荷重下での厚さの測定方法)において測定される厚さ寸法T0から厚さ寸法Tmまで圧縮時に要した仕事量[N・m/m
2]をWC,厚さ寸法Tmから厚さ寸法T0に復元時に要した仕事量をWC2として、計算式(RC(%)=WC2/WC×100)に基づいて圧縮回復率RC[%]を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等を含む吸収性物品用の伸縮性シート及びそれを使用した吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収性物品用の伸縮性シートは公知である。例えば、特許文献1には、第1繊維層と、第2繊維層と、第1及び第2繊維層間に伸長状態で収縮可能に取り付けられた複数条の弾性体とを含む伸縮性シートが開示されている。第1繊維層と第2繊維層とは、複数条の弾性体の全周に塗布された接着剤を介して互いに接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された発明に係る伸縮性シートは、第1及び第2繊維層を構成する繊維不織布の剛性値、弾性体のピッチ及び弾性体の全周に塗布する接着剤の塗布量を適宜コントロールすることによって、着用者の肌に対する良好なフィット性を有するとともに、全体として比較的に肉薄であって柔軟性に優れ、吸収性物品の肌対向面側に配置された場合には、良好な触感を与えるとされている。
【0005】
しかし、かかる伸縮性シートにおいては、シート表面全体に0.5~10mmの厚さ寸法を有するギャザーがほぼ均一に形成されて審美性に優れた外観を有する一方、ギャザーが肌に触れて食い込むことによって、肌にギャザー痕が残るおそれがある。肌に対するギャザーの食い込みを抑制するために、弾性体間のピッチを大きくした場合には、肌に対するフィット性が低下するおそれがあり、繊維不織布の剛性を低くするために弾性体の全周に塗布する接着剤の塗布量を減らした場合には、吸収性物品の着用中に弾性体の固定が解除されてしまうおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、従来の伸縮性シートの改良であって、着用者の肌に対する良好なフィット性を有するとともに、肌にギャザー痕が形成されるのを抑制することのできる吸収性物品用の伸縮性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本願の第1発明は、熱可塑性樹脂の連続繊維から構成された、肌対向面に位置する第1繊維層と、前記肌対向面の反対側の非肌対向面に位置する第2繊維層とを含み、前記第1繊維層はポリエチレン繊維から構成されたスパンメルト不織布から形成され、前記第2繊維層はポリエチレン繊維又はポリプロプレン繊維から構成されたスパンメルト不織布から形成されていて、前記第1及び第2繊維層間には、複数条の弾性体が収縮可能に取り付けられており、前記第1及び第2繊維層には、互いに隣接する前記弾性体間において前記弾性体が延在する方向と交差する方向へ複数のギャザーが形成されており、以下の測定条件下において、前記第1及び第2繊維層のKES法による曲げ剛性の平均値が0.0035~0.022N・m2/m×10^-4であって、かつ、前記ギャザーに対するKES法による圧縮荷重下での厚さ寸法は、0.22~1.5mmである吸収性物品用伸縮性シートに関する。
[測定条件]
(曲げ剛性値の測定方法)
吸収性物品用伸縮性シートにおける第1繊維層の曲げ剛性値B1と第2繊維層の曲げ剛性値B2との測定は、カトーテック(株)製KES-FB2-AUTO-A曲げ測定試験機を用いて行う。第1及び第2繊維層のそれぞれについて、それらを形成する繊維不織布の所定領域において10cm×10cmにカットしてサンプルとする。次に、各サンプルにおいて伸縮性シートの弾性体が延在する方向である第1方向で測定できるように測定試験機のチャック間に固定する。最大曲率+2.5cm-1まで表側に曲げ、次に、最大曲率-2.5cm-1まで裏側に曲げた後に元に戻すことによって行う。曲げ剛性値B1,B2[N・m2/m×10^-4]は、表側に曲げはじめて曲率に対する曲モーメントの傾きがほぼ一定になったときの傾きと裏側に曲げはじめて曲率に対する曲モーメントの傾きがほぼ一定になったときの傾きとの平均値から算出する。各サンプルにつきN=5測定し、その結果を平均して算出する。第1繊維層の曲げ剛性値B1と第2繊維層の曲げ剛性値B2との平均値は、以下の計算式によって算出する。{(第1繊維層の曲げ剛性値B1×第1繊維層の質量)/(第1繊維層の質量+第2繊維層の質量)}+{(第2繊維層の曲げ剛性値B2×第2繊維層の質量)/(第1繊維層の質量+第2繊維層の質量)}
(圧縮荷重下での厚さの測定寸法)
伸縮性シートの厚さ寸法の測定には、カトーテック(株)製KES―FB3-AUTO-A圧縮試験機を用いて測定する。その伸縮性シートを10.0cm×10.0cmの大きさに切り出して厚さ寸法の測定用試料とし、伸縮性シートである各試料は、収縮した状態で金属平面の試験台に下面側に第2繊維層、上面側(測定面側)に第1繊維層となるように固定する。各試料は、その中心を上下に位置する円盤で静かに挟み込み圧縮面積(円盤の面積)約2.0cm2、荷重0.49hpa下における各試料の厚さ寸法T0を測定する。その後、加圧速度50mm/秒で荷重49.03hpa下になるまで各試料を圧縮し、荷重49.03hpa下における厚さ寸法Tmを圧縮荷重下の厚さ寸法として測定する。
【0008】
第1発明に係る吸収性物品用伸縮性シートの実施態様の一つにおいて、以下の測定条件下において、前記ギャザーに対する圧縮荷重下における、KES法における圧縮仕事量が0.236~5.0N・m/m2、KES法における圧縮回復率は、19~36%である。
[測定条件]
段落[0007]に記載の(圧縮荷重下での厚さの測定方法)において測定される厚さ寸法T0から厚さ寸法Tmまで圧縮時に要した仕事量[N・m/m2]をWC,厚さ寸法Tmから厚さ寸法T0に復元時に要した仕事量をWC2として、計算式(RC(%)=WC2/WC×100)に基づいて圧縮回復率RC[%]を求める。
【0009】
かかる吸収性物品用伸縮性シートにおいては、圧縮仕事量WC及び圧縮回復率RCともに比較的に低い数値であることから、凸部20は外力によって容易に圧縮され易く、圧縮後の形状復元性が低いといえる。したがって、凸部20が着用者の肌に接触したときには容易に圧縮されるとともに、圧縮後の形状復元性が低いことから肌に対して反発する力が低く、接触圧の分散と相俟って、肌にギャザー痕が形成されるのを抑制することができる。
【0010】
第1発明に係る吸収性物品用伸縮性シートの他の実施態様の一つにおいて、前記第1繊維層はポリエチレン繊維から構成されたスパンメルト不織布、前記第2繊維層は少なくとも一部にポリオレフィン繊維を含むスパンメルト不織布からそれぞれ形成されている。
【0011】
かかる吸収性物品用伸縮性シートにおいては、第1繊維層は第2繊維層に比べて剛性が低く柔軟性に優れることから、肌対向面のギャザーは非肌対向面のギャザーに比べてなだらかに隆起した形状を有し、吸収性物品の着用時において肌に対する接触圧が分散され、肌にギャザー痕が残るのを抑制することができる。
【0012】
第1発明に係る吸収性物品伸縮性シートのさらに他の実施態様の一つにおいて、前記第1及び第2繊維層は、ポリエチレン繊維から構成されたスパンメルト不織布から形成されている。
【0013】
かかる吸収性物品用伸縮性シートにおいては、第1及び第2繊維層ともに良好な柔軟性を有することから、凹凸度合いのより小さなギャザーが形成されて、肌にギャザー痕が残るのをさらに抑制することができる。
【0014】
第1発明に係る吸収性物品伸縮性シートのさらに他の実施態様の一つにおいて、前記第1及び第2繊維層は、前記連続繊維が融着された複数の融着部分を有し、前記第1繊維層における前記融着部分と非融着部分との剛性差よりも、前記第2繊維層における前記融着部分と前記非融着部分との剛性差の方が大きくなっている。
【0015】
かかる吸収性物品用伸縮性シートにおいては、第1繊維層が全体として第2繊維層よりも柔軟性に優れ、複数条の弾性体の収縮作用によって小さな起伏を繰り返した態様となる。それによって、肌対向面側のギャザーが非肌対向面のギャザーよりも厚さ寸法が小さくなって、ギャザー痕が肌に残るのを抑制することができる。
【0016】
第1発明に係る吸収性物品用伸縮性シートのさらに他の実施態様の一つにおいて、前記第1及び第2繊維層の質量は、それぞれ、10~30g/m2、前記第1及び第2繊維層の見掛け密度は、それぞれ、0.04~0.15g/cm3であって、前記交差する方向へ並ぶ前記複数条の弾性体間のピッチは、2.0~12.0mmである。
【0017】
第1発明に係る吸収性物品用伸縮性シートのさらに他の実施態様の一つにおいて、前記ポリエチレン繊維の繊度は1.5~4.0dtex、前記ポリオレフィン繊維の繊度は0.9~2.5dtexである。
【0018】
第1発明に係る吸収性物品用伸縮性シートのさらに他の実施態様の一つにおいて、前記伸縮性シートは、肌対向面及びその反対側の非肌対向面を有し、前記第1面は前記肌対向面、前記第2面は前記非肌対向面に対応する。
【0019】
前記課題を解決するために、本願の第2発明は、伸縮性シートを使用した吸収性物品に関する。
【0020】
第2発明に係る吸収性物品の実施態様の一つにおいて、前記吸収性物品は、前後ウエスト域及びクロッチ域を有する使い捨ておむつであって、前記前後ウエスト域を形成するウエスト弾性シート、前記クロッチ域においてレッグ開口縁に沿って配置されるレッグ弾性シート及び前記クロッチ域から前記前後ウエスト域まで延びる防漏カフシートのうちの少なくとも1つのシートが前記伸縮性シートから形成されている。
【発明の効果】
【0021】
本願の第1及び第2発明の実施形態に係る吸収性物品用の伸縮性シートは、弾性体の収縮力によって肌に対する良好なフィット性を有するとともに、第1及び第2繊維層のKES法による曲げ剛性の平均値が0.0035~0.022N・m2/m×10^-4であって、かつ、ギャザーに対するKES法による圧縮荷重下での厚さ寸法は、0.22~1.5mmであるから、伸縮性シートは優れた柔軟性を有し、圧縮時にギャザーが潰れて肌にギャザー痕が残るのを抑制することができ、特に、使い捨ておむつ、生理用ナプキン用伸縮性シートとして実用に供するのに有益である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る吸収性物品用の伸縮性シートの実施形態の一例における斜視図。
【
図4】従来の伸縮性シートの
図2と同様の断面斜視図。
【
図5】従来の伸縮性シートの
図3と同様の断面端面図。
【
図6】本発明に係る伸縮性シートを使用した吸収性物品の一例における使い捨ておむつを内面側から視た、各弾性体の最大伸長時(弾性材料の収縮作用によるギャザーがなくなる程度)まで縦方向及び横方向に伸展したおむつの一部破断展開平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1~
図3を参照すると、本発明の実施形態に係る吸収性物品用の伸縮性シート10は、第1方向Yとそれに交差する第2方向Xと、それらに交差する厚さ方向Zとを有し、第1面11及びその反対側に位置する第2面12と、第1面11に位置する第1繊維層2と、第2面12に位置する第2繊維層3と、第1及び第2繊維層2,3間において伸長状態で収縮可能に取り付けられた複数条の弾性体4とを含む。伸縮性シート10の第1面11、第2面12は、それぞれ、吸収性物品の肌対向面、非肌対向面にそれぞれ対応する。本発明の実施形態に係る吸収性物品は、使い捨ておむつ、生理用ナプキンのほかに、パンティライナー、尿取りパッドを含む各種公知の体液、例えば、経血、糞尿等の排泄物を吸収・保持するための物品を含む。また、伸縮性シート10は、吸収性物品において着用者の肌に接触するシート材料として使用することができるものであって、例えば、ウエストパネルを形成するウエストシート、吸収体の両側縁に沿って縦方向へ延びる防漏壁シート、レッグ開口縁部に配置されたレッグ弾性帯を形成するレッグ弾性シートを含むシート材料として好適に用いることができる。
【0024】
伸縮性シート10の第1及び2繊維層2,3は、熱可塑性樹脂の連続繊維から構成された繊維不織布から形成されている。第1及び第2繊維層2,3を構成する繊維不織布としてはスパンメルト繊維不織布、なかでも、スパンボンド繊維不織布、SMS(スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド)繊維不織布が好適に使用される。また、これら不織布を構成する連続繊維は、各種公知の合成繊維である、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)を含むポリオレフィン系の熱可塑性繊維が好適に使用される。本実施形態においては、第1繊維層2として、繊度1.5~4.0dtexのポリエチレン繊維を含むスパンボンド繊維不織布、第2繊維層3として、繊度0.9~2.5dtexのポリプロピレン繊維を含むスパンボンド繊維不織布を使用している。特に、第1繊維層2は、ポリプロピレン繊維よりも軟質なポリエチレン繊維から構成されていることによって、第2繊維層3に比べて剛性が低く柔軟性に優れる。第1繊維層2が、第2繊維層3に比して剛性が低く柔軟性が高くなるためには、両繊維層2,3の構成繊維の剛軟度の差に依るもののほかに、少なくとも繊維不織布の質量や繊維密度の増減によっても適宜調整することができる。
【0025】
第1面11に位置する第1繊維層2として連続繊維から構成されるスパンボンド繊維不織布又はSMS繊維不織布が用いられることによって、短繊維からなるその他の合成繊維に比べて、シート表面において毛羽立ちがなく肌触りに優れて、滑らかな触感を与えることができる。また、スパンボンド繊維不織布は、他の繊維不織布に比べて繊維配向性をコントロールしやすい。したがって、例えば、第1及び第2繊維層2,3の少なくとも一方の繊維層としてステープル(短繊維)繊維不織布を用いた場合には、柔軟性及び伸長性に優れるがシート引張強度に劣るのに対し、第1及び第2繊維層2,3の両層にスパンボンド繊維不織布を用いることによって、所望のシート引張強度と伸度とを備えたバランスの良い複合的な伸縮性シート10を得ることができる。
【0026】
伸縮性シート10の伸長時の質量は、例えば、25~135g/m2、好ましくは、40~80g/m2であって、第1及び第2繊維層2,3の質量は、それぞれ、例えば、10~30g/m2であって、好ましくは、12~25g/m2である。伸縮性シート10の質量が25g/m2未満である場合には、柔軟性に優れるものの十分な引張強度を得ることが困難になる。伸縮性シート10の質量が135g/m2を超える場合には、比較的に高い引張強度を得ることができるが、十分な柔軟性を得ることができず、着用者の身体に沿って変形したり、肌に良好なフィット性を与えることができない。
【0027】
第1及び第2繊維層2,3の厚さ寸法(2.942hpa荷重下)は、それぞれ、0.10~0.60mm、第1及び第2繊維層2,3の見掛け密度は、それぞれ、0.04~0.15g/cm3、好ましくは、0.09~0.12g/cm3である。見掛け密度が0.04g/cm3以下である場合には、第1及び第2繊維層2,3の融着部分が少なくなることで毛羽立ちやすくなるおそれがある。見掛け密度が0.15g/cm3以上の場合には、伸縮性シート10の剛性が比較的に高くなって、特に、伸縮性シート10が、吸収性物品における、着用者の鼠蹊部等の肌の弱い部位と接触する部位に使用された場合には、着用者にゴワゴワとした触感を与えるおそれがある。
【0028】
各繊維不織布の質量は、JISL1096法に基づいて測定した。見掛け密度は、これらの測定によって得られた質量と厚さ寸法とによって算出された平均値(N=3)から求めた。
【0029】
複数条の弾性体4は、第1方向Yへ延び、かつ、第2方向Xへ間隔を空けて位置する複数条の糸状、ストリング状、ストランド状の弾性材料である。複数条の弾性体4は、第1繊維層2と第2繊維層3との間において、例えば、1.5~3.0倍、好ましくは、2.2~2.7倍に伸長された状態で取り付けられる。なお、伸長倍率が1.0倍とは、各弾性体4の非伸長状態における長さ(自然長)を1としたときの伸び度合いを示したものであって、例えば、伸長倍率が1.5倍とは、非伸長状態における各弾性体4の長さから0.5だけ伸長増加されていることを意味する。
【0030】
弾性材料としては、天然ゴムのほか、スチレン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン等の各種公知の合成ゴムを制限なく用いることができる。弾性体4の繊度に特に制限はないが、200~1100dtex,好ましくは、300~1000dtexである。繊度が200dtex以下の場合には、弾性体4間のピッチよってギャザーの形状、大きさをコントロールした状態において所要の伸縮性を発揮することができないおそれがある。弾性体4の繊度が1100dtex以上の場合には、吸収性物品の非肌対向面側に位置する第2繊維層3を介して弾性体4が外部から透視しやすくなる。かかる場合には、特に、伸縮性シート10を使い捨ておむつの外面を形成するシート部材として使用したときに、複数条の弾性体4を備えたおむつと一見して認識されるおそれがあり、外観上好ましくない。
【0031】
弾性体4の離間寸法(ピッチ)は、伸縮性シート10に形成されるギャザーの断面形状、長さを含む大きさをコントロールするために適宜調整可能とされるものであるから特に制限があるものではないが、ギャザーの肌に対する食い込みを抑制するためには、例えば、2.0~12.0mm、好ましくは、4.0~10.0mmである。なお、本明細書におけるピッチとは、第2方向Xにおいて互いに隣接する弾性体4の中心間の離間距離を意味する。
【0032】
本実施形態においては、第1及び第2繊維層2,3は、それらの間に介在された各弾性体4の全周に連続的又は部分的に塗布された接着剤を介して互いに接合されている。したがって、弾性体4間のピッチが、第1及び第2繊維層2,3を互いに接合する接合ラインの離間寸法(ピッチ)ともいえる。第1及び第2繊維層2,3が弾性体4の全周に塗布された接着剤によってのみ互いに固定されることによって、伸縮性シート10が比較的に柔軟となって、第1繊維層2の柔軟性と相俟ってさらに肌触りが良好となる。
【0033】
本実施形態と異なり、第1及び第2繊維層2,3は、弾性体4の全周に塗布された接着剤ではなく、各種公知のパターンで第1及び第2繊維層2,3のうちの少なくとも一方の繊維層2,3の対向面側に塗布された接着剤を介して互いに接合してもよい。ただし、その場合には、弾性体4の伸縮性を阻害しないように、接着剤の塗布量を適宜調整する必要があり、また、複数条の接着ラインで接合する場合には、接着ラインが弾性体4の延在する方向へ延びていてもよいし、延在する方向と直交する方向へ延びていてもよい。第1繊維層2と第2繊維層3とを接合する接着剤には、公知の各種の接着剤を制限なく用いることができるが、伸縮性シート10の伸縮性をできるだけ阻害しないようにするために、ゴム系のホットメルト接着剤、例えば、SBS(スチレン-ブタジエン-スチレン)系、SIS(スチレン-イソプレン-スチレン)系のホットメルト接着剤を用いることが好ましい。
【0034】
図1~3を参照すると、伸縮性シート10は、弾性体4の全周に塗布された接着剤によって第1繊維層2と第2繊維層3とが互いに接合された接合域7と、第2方向Xにおいて隣接する弾性体4間に位置する、ホットメルト接着剤を介して第1繊維層2と第2繊維層3とが互いに接合されていない非接合域8とを有する。伸縮性シート10の非接合域8は、非伸長状態においてギャザー状の凹凸を繰り返しており、各弾性体4よりも肌対向面側に位置する凸部20と、弾性体4よりも非肌対向面側に位置する凹部30とを有する。非接合域8の凹部30は、非肌対向面側から視れば凸状の部分であって、第2面12も凹部30によって凹凸状を有する。伸縮性シート10のギャザーは、第1及び第2繊維層2,3全体の起伏によるギャザーを意味するから、その厚さ寸法とは、凸部20の頂縁と凹部30の底縁(ともに、第1及び第2繊維層2,3の厚さを含む)との厚さ方向における離間寸法を意味する。なお、かかるギャザーの厚さ寸法は、ギャザーごとに異なるものであって、伸縮性シート10の厚さ寸法を意味するものではない。
【0035】
第1繊維層2は第2繊維層3に比べて剛性が低く柔軟性に優れることから、伸縮性シート10が弾性体4の収縮作用によって第2方向Xへ凸部20と凹部30とが交互に位置する態様において、第1繊維層2は第2繊維層3に比べて細かい起伏を繰り返している。このように、第1繊維層2が第2繊維層3に比して細かい起伏を繰り返した形状を有することによって、凸部20は厚さ方向Zの外側へ崩れるようにしてなだらかに隆起して凹部30に比べて厚さ方向Zの外側へ突出しておらず、凸部20の見掛け厚さ(高さ)寸法D1は、凹部30の厚さ寸法D2に比べて小さくなっている。凸部20の見掛け厚さ寸法D1とは、弾性体4から凸部20の頂縁までの厚さ方向Zにおける離間寸法を意味し、凹部30の見掛け厚さ寸法D2は、弾性体4から凹部30の底縁までの厚さ方向Zにおける離間寸法を意味する。
【0036】
本実施形態のように、第1及び第2繊維層2,3が連続繊維を用いたスパンボンド繊維不織布から形成される場合には、各繊維層ともに連続繊維が互いに熱融着された複数の融着部分を有する。融着部分では、各構成繊維が熱融着されて繊維形状を維持しておらず一部がフィルム化しており、各構成繊維の非融着部分に比べて剛性が高くなっている。第1及び第2繊維層2,3においても、融着部分が非融着部分に比べて高い剛性を有しているが、第1繊維層2はその構成繊維(ポリエチレン)が第2繊維層3の構成繊維(ポリオレフィン、好ましくはポリプロピレン)に比して柔軟であって、前者の構成繊維の繊度が後者の構成繊維の繊度よりも大きく、かつ、ほぼ同一のシート質量において前者の含有本数が後者のそれよりも少ないことから、第1繊維層2の非融着部分と融着部分との剛性差が比較的に小さくなっており、第2繊維層における非融着部分と融着部分との剛性差よりも小さいといえる。これによって、第1繊維層は全体として柔軟性に優れ、かかるシート特性が、凸部20の厚さ寸法D1と凹部30の厚さ寸法D2との相違に寄与しているとも考えられる。
【0037】
このように、第1面11は第2面12に比べて平滑性に優れ、着用者の肌との接触面積が大きくなることから、局所的に肌に接触する場合に比して弾性体4の収縮力による接触圧が分散され、ギャザー痕が付き難いといえる。なお、本明細書においては、ギャザー痕は、伸縮性シート10の凸部20によって肌に残る圧迫痕を意味し、ゴム痕は、弾性体4によって肌に残る圧迫痕を意味する。
【0038】
第1繊維層2の曲げ剛性値B1と第2繊維層の曲げ剛性値B2との平均値は、例えば、0.0035~0.022N・m2/m×10^-4である。曲げ剛性値B1,B2の平均値が、0.0035N・m2/m×10^-4未満の場合には、伸縮性シート10の引張強度が低くなり、吸収性物品の着用中に一部が破断するおそれがある。0.022N・m2/m×10^-4を超える場合には、シート剛性が高くなって着用者の身体形状に順応し難くなり、身体に対するフィット性が低下するおそれがある。
【0039】
<曲げ剛性値の測定方法>
第1繊維層2の曲げ剛性値B1と第2繊維層3の曲げ剛性値B2の測定は、カトーテック(株)製KES-FB2-AUTO-A曲げ測定試験機を用いて行った。まず、第1及び2繊維層2,3のそれぞれについて、それらを形成する繊維不織布の所定領域において10cm×10cmにカットしてサンプルとした。次に、各サンプルにおいて伸縮性シートの第1方向Yで測定できるように測定試験機のチャック間に固定する。最大曲率+2.5cm-1まで表側に曲げ、次に、最大曲率-2.5cm-1まで裏側に曲げた後に元に戻すことによって行った。曲げ剛性値B1,B2[N・m2/m×10^-4]は、表側に曲げはじめて曲率に対する曲モーメントの傾きがほぼ一定になったときの傾きと裏側に曲げはじめて曲率に対する曲モーメントの傾きがほぼ一定になったときの傾きとの平均値から算出した。各サンプルにつきN=5測定し、その結果を平均して算出した。
【0040】
第1繊維層2の曲げ剛性値B1と第2繊維層3の曲げ剛性値B2との平均値は、以下の計算式によって算出した。
{(第1繊維層2の曲げ剛性値B1×第1繊維層2の質量)/(第1繊維層2の質量+第2繊維層3の質量)}+{(第2繊維層3の曲げ剛性値B2×第2繊維層3の質量)/(第1繊維層2の質量+第2繊維層3の質量)}
【0041】
図4,5を参照すると、従来の伸縮性シート100は、第1面111及びその反対側に位置する第2面112と、第1面111に位置する第1繊維層102と、第2面112に位置する第2繊維層103と、第1繊維層102と第2繊維層103との間に接着剤を介して取り付けられた複数条の弾性体104とを有する。第1繊維層102と第2繊維層103とは、各弾性体104の全周に塗布された接着剤を介して互いに接合されており、伸縮性シート100は、第1及び第2繊維層102,103が互いに接合された接合域107と、接合域107間に位置する非接合域108とを有する。
【0042】
伸縮性シート100は、第1繊維層102として、質量17.0g/m2のポリプロピレン繊維からなるスパンボンド繊維不織布、第2繊維層103として、質量17.0g/m2のポリプロピレン繊維からなるスパンボンド繊維不織布を使用している。また、弾性体104に使用する弾性材料、繊度及びピッチなどの諸条件は、本実施形態に係る伸縮性シート10に配置された弾性体4とほぼ同様である。
【0043】
図2,4を参照すると、本実施形態に係る伸縮性シート10と比較すると、従来の伸縮性シート100には、大きさのほぼ均一した厚さ寸法の比較的に大きな(深さのある)ギャザー様の凹凸部20,30が形成されていて、伸縮性シート10のギャザー数よりも伸縮性シート100のギャザー数は少なくなっている。これは、伸縮性シート10の曲げ剛性値が比較的に低く、すなわち、第1繊維層2の曲げ剛性値B1と第2繊維層の曲げ剛性値B2との平均値が0.022N・m
2/m×10^-4以下であることから、弾性体4の収縮作用によって第2方向Xへ起伏を繰り返した態様となってその形状が崩れてしまい、不均一な比較的に厚さ寸法の小さなギャザーが複数形成されたことによるものであるといえる。
【0044】
<ギャザー数の測定>
伸縮性シート10のギャザーの数は、第1方向Yにおける50mmの長さ寸法×弾性体4のピッチ幅の範囲内における凹部20又は凸部30の数を第1面11又は第2面12側から目視で数え、平均化(N=2)して求めた。後記の従来の伸縮性シート100のギャザー数についても、同様の方法で測定した。
【0045】
このように、従来の伸縮性シート100のように、凸部120の厚さ寸法が比較的に大きく、かつ、均一なギャザー構造を有する場合には、外観上の審美性に優れるが、厚さ寸法が低く不均一なギャザー構造を有する伸縮性シート10に比べて剛性値が高くなって、着用して圧縮された状態であっても凸部120が肌に深く食い込んでギャザー痕が残るおそれがある。一方、本実施形態に係る伸縮性シート10の非接合域8には、凹凸度合の小さく不均一な複数のギャザーが形成されていることから、第1面11は平滑性が高く、第1繊維層2と着用者の肌との接触面積は比較的に多くなっている。したがって、着用者の肌が伸縮性シート10の第1面11に接触したときに、弾性体4の収縮力により生じた接触圧が分散されて肌に食い込むことがないので、凸部20によるギャザー痕が付き難くなる。
【0046】
KES測定法に基づく、伸縮性シート10の凸部20の微小荷重下、すなわち、0.49hpa荷重下における各試料の厚さ寸法T0が2.70~4.70mmであって、49.03hpa荷重下における厚さ寸法Tmは、0.22~1.5mmである。
【0047】
所定の荷重下において、伸縮性シート10の凸部20の厚さ寸法Tmが1.5mm未満であって比較的に小さく、かつ、第1及び第2繊維層2,3の曲げ剛性値B1,B2の平均値が0.022N・m2/m×10^-4未満であることから、伸縮性シート10のギャザー形状は外力によって容易に変形しやすいものといえる。
【0048】
また、KES測定法に基づく、伸縮性シート10の凸部20の圧縮仕事量WCは、0.236~5.0N・m/m2、圧縮回復率RCは19~36%である。圧縮仕事量WC及び圧縮回復率RCともに比較的に低い数値であることから、凸部20は外力によって容易に圧縮され易く、圧縮後の形状復元性が低いといえる。したがって、凸部20が着用者の肌に接触したときには容易に圧縮されるとともに、圧縮後の形状復元性が低いことから肌に対して反発する力が低く、接触圧の分散と相俟って、肌にギャザー痕が形成されるのを抑制することができる。
【0049】
伸縮性シート10の第1及び第2繊維層2,3の良好な柔軟性とは、反撥性に富んだ、弾性繊維を含む弾性伸縮性不織布、その他の繊維不織布と異なり、コシが弱くて反撥性が低く、着用者の肌に接触した状態において、ギャザーが押し潰されてしまって浅いギャザー痕しか肌に残らない程度のものを意味する。
【0050】
例えば、身体へのフィット性を向上させるために、弾性体4間のピッチを小さくした場合には、肌への締め付け力が高くなって肌にギャザー痕が付き易くなるが、伸縮性シート10が、既述のKES法に基づく曲げ特性及び圧縮特性を備えることによって、凹凸度合いの大きなギャザーが形成されることはなく、ギャザー痕が肌に残るのを抑制することができる。また、弾性体4の第1及び第2繊維層2,3への接着性を向上させるために、弾性体4の全周に塗布されたホットメルト接着剤の塗布量を増加した場合には、シート剛性が高くなって肌にゴム痕が付き易くなるが、第1繊維層2が柔軟であるから過度にその剛性が高くなることはなく、ゴム痕が肌に残るのを抑制することができる。
【0051】
本明細書のKES法に基づく各力学的測定に関しては、「風合い評価の標準化と解析」第2版(社団法人日本繊維機械学会、風合い計量と規格化研究委員会 昭和55年7月10日発行)に詳細が説明されている。
【0052】
<シートの厚さ寸法T0,Tm及び圧縮特定の測定方法>
シートの厚さ寸法の測定には、カトーテック(株)製KES-FB3-AUTO-A圧縮試験機を用いた。まず、 伸縮性シート10を10.0cm×10.0cmの大きさに切り出して測定サンプルとし、各シートが収縮した状態で金属平面の試験台に下面側に第2繊維層、上面側(測定面側)に第1繊維層となるように固定する。サンプルの中心を上下に位置する円盤で静かに挟み込み圧縮面積(円盤の面積)約2.0cm2、荷重0.49hpa下における各試料の厚さ寸法T0を測定する。次に、加圧速度50mm/秒で荷重49.03hpa下になるまで測定サンプルを圧縮し、荷重49.03hpa下における厚さ寸法Tmを測定した。また、厚さ寸法T0から厚さ寸法Tmまで圧縮時に要した仕事量[N・m/m2]をWC,厚さ寸法Tmから厚さ寸法T0に復元時に要した仕事量をWC2として、下記の計算式に基づいて圧縮回復率RC[%]を求めた。
RC(%)=WC2/WC×100
【0053】
本実施形態に係る伸縮性シート10は、第1繊維層2がポリエチレン繊維を含むスパンボンド繊維不織布、第2繊維層3がポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布から形成されているが、第1及び第2繊維層2,3ともにポリエチレン繊維を含むスパンボンド繊維不織布から形成してもよい。かかる場合には、第1及び第2繊維層2,3が柔軟性に優れることから、本実施形態における伸縮性シート10の平均の曲げ剛性値及び荷重下における厚さ寸法Tmと同等又はそれ以下である。また、第1及び第2繊維層2,3の両層ともに柔軟な繊維不織布から形成されることによって、本実施形態に係る伸縮性シート10に比べて凹凸度合いの小さなギャザーが形成されるといえる。
【0054】
表1は、様々な条件下において、複数の伸縮性シートを製造し、従来の製品と比較するために、その特性及び性能を評価したものである。実施例1~6及び比較例1~3の伸縮性シートは、第1及び第2繊維層と、それらの間に介在して固定された弾性体とを含む複合シートであって、第1及び第2繊維層とは、弾性体の全周に塗布された質量0.07g/mのホットメルト接着剤を介して互いに接合されている。
【0055】
【0056】
<実施例1>
第1繊維層2として、質量17.0g/m2のポリエチレン繊維から構成されたスパンボンド繊維不織布、第2繊維層3として、質量17.0g/m2のポリプロピレン繊維から構成されたスパンボンド繊維不織布を使用した。また、複数条の弾性体として、繊度470dtexのポリウレタン糸を用いて、ピッチ9.0mmの条件下で2.5倍に伸長した状態で第1及び第2繊維層間に収縮可能に取り付けた。
【0057】
<実施例2>
第1繊維層2として、質量17.0g/m2のポリエチレン繊維から構成されたスパンボンド繊維不織布、第2繊維層3として、質量17.0g/m2のポリエチレン繊維から構成されたスパンボンド繊維不織布を使用した。また、複数条の弾性体として、繊度470dtexのポリウレタン糸を用いて、ピッチ9.0mmの条件下で2.5倍に伸長した状態で第1及び第2繊維層間に収縮可能に取り付けた。
【0058】
<実施例3>
第1繊維層2として、質量17.0g/m2のポリエチレン繊維から構成されたスパンボンド繊維不織布、第2繊維層3として、質量17.0g/m2のポリプロピレン繊維から構成されたスパンボンド繊維不織布を使用した。また、複数条の弾性体4として、繊度940dtexのポリウレタン糸を用いて、ピッチ9.0mmの条件下で2.5倍に伸長した状態で第1及び第2繊維層間に収縮可能に取り付けた。
【0059】
<実施例4>
第1繊維層2として、質量17.0g/m2のポリエチレン繊維から構成されたスパンボンド繊維不織布、第2繊維層3として、質量17.0g/m2のポリエチレン繊維から構成されたスパンボンド繊維不織布を使用した。また、複数条の弾性体4として、繊度940dtexのポリウレタン糸を用いて、ピッチ9.0mmの条件下で2.5倍に伸長した状態で第1及び第2繊維層間に収縮可能に取り付けた。
【0060】
<実施例5>
第1繊維層2として、質量25.0g/m2のポリエチレン繊維から構成されたスパンボンド繊維不織布、第2繊維層3として、質量14.0g/m2のポリプロピレン繊維から構成されたスパンボンド繊維不織布を使用した。また、複数条の弾性体4として、繊度470dtexのポリウレタン糸を用いて、ピッチ5.0mmの条件下で2.5倍に伸長した状態で第1及び第2繊維層間に収縮可能に取り付けた。
【0061】
<実施例6>
第1繊維層2として、質量20.0g/m2のポリエチレン繊維から構成されたスパンボンド繊維不織布、第2繊維層3として、質量20.0g/m2のポリエチレン繊維から構成されたスパンボンド繊維不織布を使用した。また、弾性体4として、繊度470dtexのポリウレタン糸を用いて、ピッチ5.0mmの条件下で2.5倍に伸長した状態で第1及び第2繊維層間に収縮可能に取り付けた。
【0062】
<比較例1>
第1繊維層として、質量17.0g/m2のポリプロピレン繊維からなるスパンボンド繊維不織布、第2繊維層として、質量17.0g/m2のポリプロピレン繊維からなるスパンボンド繊維不織布を使用した。また、弾性体として、繊度470dtexのポリウレタン糸を用いて、ピッチ9.0mmの条件下で2.5倍に伸長した状態で第1及び第2繊維層間に収縮可能に取り付けた。
【0063】
<比較例2>
第1繊維層として、質量17.0g/m2のポリプロピレン繊維からなるスパンボンド繊維不織布、第2繊維層として、質量17.0g/m2のポリプロピレン繊維からなるスパンボンド繊維不織布を使用した。また、弾性体として、繊度940dtexのポリウレタン糸を用いて、ピッチ9.0mmの条件下で2.5倍に伸長した状態で第1及び第2繊維層間に収縮可能に取り付けた。
【0064】
<比較例3>
第1繊維層として、質量17.0g/m2のポリプロピレン繊維からなるスパンボンド繊維不織布、第2繊維層として、質量17.0g/m2のポリプロピレン繊維からなるスパンボンド繊維不織布を使用した。また、弾性体として、繊度470dtexのポリウレタン糸を用いて、ピッチ5.0mmの条件下で2.5倍に伸長した状態で第1及び第2繊維層間に収縮可能に取り付けた。
【0065】
表1における曲げ剛性値、圧縮仕事量WC,圧縮回復率RC、初期の厚さ寸法T0、荷重下の厚さ寸法Tm、ギャザー数は、上記の測定方法に基づいて測定した。ギャザー痕のレベルの評価結果については、下記の評価方法によって求めた。
【0066】
<ギャザー痕のレベル評価方法>
まず、各実施例及び各比較例における伸縮性シートを長さ寸法180mm×幅寸法100mmの大きさにカットした。次に、カットしたシートの両端部を互いに接合して、周囲長140cmの環状のサンプルを形成した。次に、環状のサンプルを被験者の前腕に通して30分間装着させた後に取り外し、目視観察によって前腕に付されたギャザー痕のレベルを決定した。測定は、10名の被験者(成人の男性5名、成人の女性5名)を対象として行い、10名の被験者のギャザー痕のレベルを平均化したものを、各実施例及び各比較例のギャザー痕レベルとした。
【0067】
ギャザー痕レベル1~5は、以下の状態を意味する。
レベル1・・ギャザー痕はなく、ゴム痕のみが視認できる状態。
レベル2・・ゴム痕から縦に延びるギャザー痕が確認できる状態。
レベル3・・ゴム痕よりもギャザー痕の方が大きく目立ち、ゴム痕を起点とする1~3mm程度の縦に延びる多数のギャザー痕が確認できる状態
レベル4・・レベル3で確認されたギャザー痕に加えて、弾性体間に5mm以上の縦に延びるギャザー痕も確認できる状態。
レベル5・・レベル4で確認された5mm以上の縦に延びるギャザー痕が所定範囲(200mm×50mm)内に10本以上確認できる状態。
【0068】
<測定結果>
表1に示すとおり、実施例1~6に係る伸縮性シート10の荷重下の厚さ寸法Tmは1.5mm以下であって、第1及び第2繊維層2,3の平均の曲げ剛性値は、0.022N・m2/m×10^-4以下であり、ギャザー痕レベルは3.0以下である。一方、比較例1~3に係る伸縮性シートの荷重下の厚さ寸法Tmは1.5mm以上であって、第1及び第2繊維層の平均の曲げ剛性値は、0.03以上であり、ギャザー痕レベルは3.0以上となっている。すなわち、伸縮性シートにおいて、荷重下の厚さ寸法Tm及び第1及び第2繊維層の平均の曲げ剛性値が大きい場合には、ギャザー痕レベルが高くなる傾向があるといえる。
【0069】
実施例1と実施例3とを比較すると、弾性体4の繊度が大きいとギャザー痕レベルも比較的に大きくなっているが、ゴム痕よりも目立つギャザー痕が付されていない程度のレベルを維持している。実施例1と実施例5を比較すると、第1繊維層3の質量が高く、かつ、弾性体4間のピッチを小さくすることによって、ギャザー痕レベルは高くなっているが、その場合であっても、少なくとも弾性体4間に5mm以上の縦皺が付されない程度のレベルを維持している。このように、弾性体4の繊度が比較的に大きい場合や弾性体4間のピッチが比較的に大きい場合であっても、伸縮性シート10自体の剛性が低く、かつ、ギャザーが潰れて肌を強く圧迫することがないので、大きなギャザー痕が残ることはない。
【0070】
図6は、本発明に係る伸縮性シートを使用した吸収性物品の一例における使い捨ておむつ200を内面側から視た、各弾性体の最大伸長時(弾性材料の収縮作用によるギャザーがなくなる程度)まで縦方向及び横方向に伸展したおむつ200の一部破断展開平面図である。
【0071】
図6を参照すると、おむつ200は、縦方向P及びそれに交差する横方向Qを有し、ウエスト周り方向へ環状に延びる弾性ウエストパネル210と、弾性ウエストパネル210の内面に取り付けられた吸収性パネル220と、前ウエスト域211と、後ウエスト域212と、前後ウエスト域211,212間に位置するクロッチ域213とを有する。弾性ウエストパネル210は、前ウエスト域211を形成する前ウエストパネル230と、後ウエスト域212を形成する後ウエストパネル240とから構成される。前ウエストパネル230の両側縁部と後ウエストパネル240の両側縁部とが互いに重ね合わされ、縦方向Yへ間欠的に位置するサイドシーム215によって連結され、ウエスト開口及び一対のレッグ開口とが画成される。
【0072】
前後ウエストパネル230,240は、横方向Qへ延びる複数条のウエスト弾性体251が配置されたウエスト弾性シート250から形成されており、レッグ開口縁部には、レッグ開口周りに延びる複数条のレッグ弾性体261を有するレッグ弾性シート260が配置されている。吸収パネル220は、体液吸収性を有する吸液構造体221と、吸液構造体の横方向Xの両側において縦方向Yへ延びる一対の防漏カフとを有する。防漏カフは、自由縁部に取り付けられた縦方向Yへ延びる複数条のカフ弾性体271を有する防漏カフシート270から形成される。
【0073】
おむつ200において、ウエスト弾性シート250、レッグ弾性シート260及び防漏カフシート270のうちの少なくとも1つのシートとして、伸縮性シート10が使用されている。すなわち、これらのシート250,260,270として伸縮性シート10を用いる場合には、ウエスト弾性体251、レッグ弾性体261、カフ弾性体271は、それぞれ、伸縮性シート10の弾性体4に対応する。また、かかる場合には、伸縮性シート10の第1面11を着用者の肌と対向する肌対向面側、第2面12をその反対側に位置する非肌対向面側とすることが好ましい。
【0074】
ウエスト弾性シート250として伸縮性シート10を使用したときには、前後ウエスト域211,212が所要のホールド力を発揮する程度の伸長応力をウエスト弾性体251が有する場合であっても、伸縮性シート10の第1面11が肌に接触することによって、ウエスト開口縁部においてウエスト弾性体251の収縮力により生じた接触圧が分散されて肌に食い込むことがないので、凸部20によるギャザー痕が付き難くなる。レッグ弾性体シート260及び防漏カフシート270として伸縮性シート10を使用したときにも同様の技術的効果を発揮しうるが、特に、これらのシート260,270は、着用者のウエスト部分に比べて肌の弱い脚周り及び鼠蹊部に接触されるものであることからギャザー痕がより付き易いところ、伸縮性シート10を用いることによって、深いギャザー痕が付くのを抑制することができる。
【0075】
本明細書に使用されている、「第1」、「第2」の用語は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いている。
【符号の説明】
【0076】
2 第1繊維層
3 第2繊維層
4 弾性体
10 伸縮性シート
11 第1面(肌対向面)
12 第2面(非肌対向面)
20 凸部
30 凹部
200 吸収性物品
211 前ウエスト域
212 後ウエスト域
213 クロッチ域
250 ウエスト弾性シート
260 レッグ弾性シート
270 防漏カフシート