(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20220216BHJP
A61F 13/494 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
A61F13/49 311A
A61F13/494 100
(21)【出願番号】P 2020161837
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2021-12-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】末兼 真
(72)【発明者】
【氏名】大坪 俊文
(72)【発明者】
【氏名】トラン バン ツー
(72)【発明者】
【氏名】ダン ティ クエン
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-66009(JP,A)
【文献】特開2016-67501(JP,A)
【文献】特開2010-104722(JP,A)
【文献】特開2010-35726(JP,A)
【文献】特開2010-246901(JP,A)
【文献】国際公開第2019/130404(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する縦方向と横方向と厚さ方向とを有し、
肌側シートと、
非肌側シートと、
前記厚さ方向において、前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に設けられた吸収性コアと、
前記厚さ方向において、前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に設けられ、前記横方向に伸縮可能な伸縮シートと、
前記厚さ方向において、前記肌側シートと前記伸縮シートとの間で、前記吸収性コアより前記縦方向の外側に設けられた吸汗シートと、
前記肌側シートより液体透過性が低く、前記吸汗シートより肌側に設けられ、前記縦方向に伸縮する立体ギャザー部用弾性部材によって、肌側に起立可能な一対の立体ギャザー部とを備える吸収性物品であって、
展開状態において、
平面視において、一対の前記立体ギャザー部に挟まれ、前記吸汗シートと前記伸縮シートとが重なった中央領域と、前記立体ギャザー部と前記吸汗シートと前記伸縮シートとが重なったギャザー領域と、を有し、
前記中央領域を前記横方向に単位長さだけ伸長させるのに必要な力を中央伸長力としたとき、
前記ギャザー領域が、前記横方向に単位長さだけ伸長させるのに必要な力が前記中央伸長力より小さい低伸長部分を、有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記低伸長部分が伸長しない部分であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記厚さ方向に隣接する前記肌側シートと前記吸汗シートとの間に、前記肌側シートと前記吸汗シートとが接合した接合部と、前記肌側シートと前記吸汗シートとが接合していない非接合部を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項3に記載の吸収性物品であって、
前記低伸長部分が伸長しない部分であり、
前記平面視において、前記低伸長部分と前記非接合部とが重なることを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記平面視において、前記吸汗シートは、前記伸縮シートと重ならない部分を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記平面視において、前記吸汗シートは、前記吸収性コアと重ならないことを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
第1胴回り部と、
第2胴回り部と、
前記第1胴回り部と前記第2胴回り部との間に設けられた股下部とを有し、
前記第1胴回り部が、第1吸汗シートと前記伸縮シートを備え、
前記第2胴回り部が、第2吸汗シートを備え、
前記ギャザー領域は、前記平面視において、前記立体ギャザー部と前記第1吸汗シートと前記伸縮シートとが重なっており、且つ、前記立体ギャザー部と前記第2吸汗シートとが重なっており、
前記中央領域は、前記平面視において、前記第1吸汗シートと前記伸縮シートとが重なっており、
前記第1胴回り部における前記ギャザー領域が、前記低伸長部分を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、展開型使い捨ておむつであり、
腹側胴回り部と、
背側胴回り部と、
前記腹側胴回り部と前記背側胴回り部との間に設けられた股下部とを有し、
前記伸縮シートが、前記背側胴回り部に配置された背側伸縮シートであり、
前記吸汗シートが、前記背側胴回り部に配置された背側吸汗シートであることを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項8に記載の吸収性物品であって、
前記縦方向に沿った一対の折り線を有し、
前記一対の折り線は、包装状態において、前記縦方向に沿って、前記横方向の両側端部を、肌側を内側にして折るための折り線であり、
前記横方向において、
前記背側吸汗シートの一方側の側端は、一方側の前記折り線より外側に設けられ、
前記背側吸汗シートの他方側の側端は、他方側の前記折り線より外側に設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の吸収性物品であって、
前記背側吸汗シートの繊維密度は、前記吸収性コアの繊維密度より高いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記腹側胴回り部は、腹側吸汗シートを有し、
前記平面視において、前記立体ギャザー部と前記腹側吸汗シートとが重なっていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
請求項11に記載の吸収性物品であって、
前記腹側吸汗シートの前記縦方向の長さは、前記背側吸汗シートの前記縦方向の長さより短いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の吸収性物品であって、
前記展開状態において、
前記縦方向において、
前記腹側吸汗シートは、前記吸収性コアの腹側の端より外側に設けられ、
前記背側吸汗シートは、前記吸収性コアの背側の端より外側に設けられ、
前記吸収性コアの腹側の端と前記腹側吸汗シートの背側の端との距離が、前記吸収性コアの背側の端と前記背側吸汗シートの腹側の端との距離より短いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項14】
請求項8から13のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記背側胴回り部は、前記横方向の端部に設けられたファスニングテープを備え、
前記腹側胴回り部の非肌側面は、前記ファスニングテープと係合可能なターゲット部材を備え、
前記腹側胴回り部は、腹側吸汗シートを有し、
前記平面視において、前記ターゲット部材は、前記腹側吸汗シートと重なる部分を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項15】
請求項14に記載の吸収性物品であって、
前記縦方向において、
前記腹側吸汗シートと前記吸収性コアは、離間しており、
前記ターゲット部材が、前記腹側吸汗シートと前記吸収性コアとが離間した部分を跨いて設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項16】
請求項11から15のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記縦方向において、
前記腹側吸汗シートの外側の端は、前記腹側胴回り部の端と同じ位置であり、
前記背側吸汗シートの外側の端は、前記背側胴回り部の端と同じ位置であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸汗シートの色が、前記肌側シート、前記吸収性コア、前記伸縮シート、及び前記立体ギャザー部の色と異なることを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、使い捨ておむつ等の吸収性物品に吸収性シートを備えて、着用者の汗を吸収することが知られている。特許文献1に記載された使い捨ておむつは、ウエスト部弾性伸縮部材が吸汗シートとトップシートとの間に挟持固定されていることで、ウエスト部弾性伸縮部材の収縮でおむつ背側部を装着車の身体にフィットさせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の使い捨ておむつは、ウエスト部弾性伸縮部材の収縮で、吸汗シートを装着者の肌に近づけて、より汗を吸収しやすくなる一方で、汗を吸収した状態の吸汗シートをウエスト部弾性伸縮部材の収縮で肌に向かって押し付けた状態が続くと、吸汗シートから肌側に汗が戻ってしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、汗を吸収しやすい吸汗シートを備えつつ、吸汗シートが吸収した汗が肌側に戻ってしまう恐れを軽減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、互いに直交する縦方向と横方向と厚さ方向とを有し、肌側シートと、非肌側シートと、前記厚さ方向において、前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に設けられた吸収性コアと、前記厚さ方向において、前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に設けられ、前記横方向に伸縮可能な伸縮シートと、前記厚さ方向において、前記肌側シートと前記伸縮シートとの間で、前記吸収性コアより前記縦方向の外側に設けられた吸汗シートと、前記肌側シートより液体透過性が低く、前記吸汗シートより肌側に設けられ、前記縦方向に伸縮する立体ギャザー部用弾性部材によって、肌側に起立可能な一対の立体ギャザー部とを備える吸収性物品であって、展開状態において、平面視において、一対の前記立体ギャザー部に挟まれ、前記吸汗シートと前記伸縮シートとが重なった中央領域と、前記立体ギャザー部と前記吸汗シートと前記伸縮シートとが重なったギャザー領域と、を有し、前記中央領域を前記横方向に単位長さだけ伸長させるのに必要な力を中央伸長力としたとき、前記ギャザー領域が、前記横方向に単位長さだけ伸長させるのに必要な力が前記中央伸長力より小さい低伸長部分を、有することを特徴とする吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、汗を吸収しやすい吸汗シートを備えつつ、吸汗シートが吸収した汗が肌側に戻ってしまう恐れを軽減させることができる 。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態のおむつ1の展開状態かつ伸長状態の肌側から見た平面図である。
【
図2】
図2Aは、
図1中のA-Aにおける断面の構成を説明する模式図である。
図2Aは、
図1中の中心線CLにおける断面の構成を説明する模式図である。
図2Cは、
図1中のB-Bにおける断面の構成を説明する模式図である。
【
図3】
図3は、伸縮シート8及び吸汗シート9A、9Bに配置について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
互いに直交する縦方向と横方向と厚さ方向とを有し、肌側シートと、非肌側シートと、前記厚さ方向において、前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に設けられた吸収性コアと、前記厚さ方向において、前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に設けられ、前記横方向に伸縮可能な伸縮シートと、前記厚さ方向において、前記肌側シートと前記伸縮シートとの間で、前記吸収性コアより前記縦方向の外側に設けられた吸汗シートと、前記肌側シートより液体透過性が低く、前記吸汗シートより肌側に設けられ、前記縦方向に伸縮する立体ギャザー部用弾性部材によって、肌側に起立可能な一対の立体ギャザー部とを備える吸収性物品であって、展開状態において、平面視において、一対の前記立体ギャザー部に挟まれ、前記吸汗シートと前記伸縮シートとが重なった中央領域と、前記立体ギャザー部と前記吸汗シートと前記伸縮シートとが重なったギャザー領域と、を有し、前記中央領域を前記横方向に単位長さだけ伸長させるのに必要な力を中央伸長力としたとき、前記ギャザー領域が、前記横方向に単位長さだけ伸長させるのに必要な力が前記中央伸長力より小さい低伸長部分を、有することを特徴とする吸収性物品である。
【0010】
このような吸収性物品によれば、中央領域では、伸縮シートの収縮で、吸汗シートを肌に近づけやすくしつつ、吸汗シートの表面に凹凸を形成しやすくして、着用者の肌への接地面積を小さくすることで、吸汗シートの単位面積当たりの液体保持容量を多くさせて、汗を吸いやすくなる。また、吸汗シートが多くの汗を吸収した状態でも、ギャザー領域では、吸汗シートより肌側に設けられた液体透過性が低い立体ギャザー部によって、吸汗シートの汗が肌側に戻ることを妨げやすくなると同時に、ギャザー領域は、低伸長部分によって、吸汗シートを肌側に近づける力が中央領域より弱いため、吸汗シートが吸収した汗が肌側に戻ってしまう恐れを軽減させることができる。
【0011】
かかる吸収性物品であって、前記低伸長部分が伸長しない部分であることが望ましい。
【0012】
このような吸収性物品によれば、吸汗シートを肌に近づける力が働かない部分を有するため、吸汗シートが吸った汗が肌側に戻ってしまうことを軽減することができる。
【0013】
かかる吸収性物品であって、前記厚さ方向に隣接する前記肌側シートと前記吸汗シートとの間に、前記肌側シートと前記吸汗シートとが接合した接合部と、前記肌側シートと前記吸汗シートとが接合していない非接合部を有することが望ましい。
【0014】
このような吸収性物品によれば、肌側シートと吸汗シートとの間に離間した部分を設けることができ、吸汗シートで吸収した汗が肌側シートに戻りにくくなる。
【0015】
かかる吸収性物品であって、前記低伸長部分が伸長しない部分であり、前記平面視において、前記低伸長部分と前記非接合部とが重なることが望ましい。
【0016】
このような吸収性物品によれば、吸汗シートを肌に近づける力が働かない部分に肌側シートと吸汗シートとの間を離間した部分を設けることができるため、吸汗シートで吸収した汗が肌側に戻りにくくなる。
【0017】
かかる吸収性物品であって、前記平面視において、前記吸汗シートは、前記伸縮シートと重ならない部分を有することが望ましい。
【0018】
このような吸収性物品によれば、平面視において、伸縮シートと重ならない吸汗シートの部分は、伸縮シートによって肌側に近づけられにくい部分であるため、吸汗シートで吸収した汗が肌側に戻りにくくすることができる。
【0019】
かかる吸収性物品であって、前記平面視において、前記吸汗シートは、前記吸収性コアと重ならないことが望ましい。
【0020】
このような吸収性物品によれば、吸収性コアで吸収した排泄物が吸汗シートに移って、吸汗シートから肌側に戻ってしまうことを防ぐことができる。
【0021】
かかる吸収性物品であって、第1胴回り部と、第2胴回り部と、前記第1胴回り部と前記第2胴回り部との間に設けられた股下部とを有し、前記第1胴回り部が、第1吸汗シートと前記伸縮シートを備え、前記第2胴回り部が、第2吸汗シートを備え、前記ギャザー領域は、前記平面視において、前記立体ギャザー部と前記第1吸汗シートと前記伸縮シートとが重なっており、且つ、前記立体ギャザー部と前記第2吸汗シートとが重なっており、前記中央領域は、前記平面視において、前記第1吸汗シートと前記伸縮シートとが重なっており、前記第1胴回り部における前記ギャザー領域が、前記低伸長部分を有することが望ましい。
【0022】
このような吸収性物品によれば、第1胴回り部の中央領域において、汗を吸収させやすくし、第1胴回り部におけるギャザー領域で吸汗シートから汗が肌側に戻ることを軽減させる一方で、伸縮シートを備えない第2胴回り部でも、ギャザー領域は、第2吸汗シートより肌側に設けられた液体透過性が低い立体ギャザー部によって第2吸汗シートが保持する汗が肌側に戻りにくくする。
【0023】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品は、展開型使い捨ておむつであり、腹側胴回り部と、背側胴回り部と、前記腹側胴回り部と前記背側胴回り部との間に設けられた股下部とを有し、前記伸縮シートが、前記背側胴回り部に配置された背側伸縮シートであり、前記吸汗シートが、前記背側胴回り部に配置された背側吸汗シートであることが望ましい。
【0024】
一般的に、仰向けに横たわった状態の着用者に展開型使い捨ておむつを着用させる場合、背側胴回り部を着用者の背中の下側に背側胴回り部を挿し込むことで、背側胴回り部が着用者の背中を覆い、続いて、股下部及び腹側胴回り部が着用者の股下及び腹部を覆うように配置することで着用状態となる。このような吸収性物品によれば、背側胴回り部が、背側伸縮シート及び背側吸汗シートを備えることで、背側伸縮シート及び背側吸汗シートを備えない場合よりも剛性が高くなり、着用させる場合に、着用者の背中の下側に差し込みやすくなる。
【0025】
かかる吸収性物品であって、前記縦方向に沿った一対の折り線を有し、前記一対の折り線は、包装状態において、前記縦方向に沿って、前記横方向の両側端部を、肌側を内側にして折るための折り線であり、前記横方向において、前記背側吸汗シートの一方側の側端は、一方側の前記折り線より外側に設けられ、前記背側吸汗シートの他方側の側端は、他方側の前記折り線より外側に設けられていることが望ましい。
【0026】
このような吸収性物品によれば、仰向けに横たわった状態の着用者に展開型使い捨ておむつを着用させる場合、一対の折り線を展開した状態で、着用者の背中の下側に背側胴回り部を挿し込むため、背側吸汗シートを一対の折り線を跨ぐように設けることで、背側吸汗シートの剛性によって、一対の折り線を展開した状態を維持しやすくなり、着用者の背中の下側に差し込みやすくなる。
【0027】
かかる吸収性物品であって、前記背側吸汗シートの繊維密度は、前記吸収性コアの繊維密度より高いことが望ましい。
【0028】
このような吸収性物品によれば、背側吸汗シートの繊維密度が吸収性コアの繊維密度より低い場合よりも背側吸汗シートの剛性を高くすることができるため、背側吸汗シートの剛性によって、着用させる場合に、着用者の背中の下側に差し込みやすくなる。
【0029】
かかる吸収性物品であって、前記腹側胴回り部は、腹側吸汗シートを有し、前記平面視において、前記立体ギャザー部と前記腹側吸汗シートとが重なっていることが望ましい。
【0030】
このような吸収性物品によれば、背側胴回り部だけでなく腹側胴回り部の汗を吸収することができ、また、平面視において、立体ギャザー部と腹側吸汗シートとが重なることで、腹側吸汗シートで吸収した汗が肌側に戻りにくくすることができる。また、このような吸収性物品を着用させた場合、腹側胴回り部が腹側吸汗シートを備えることで、腹側胴回り部の剛性が高くなり、着用者の動きによって生じる腹側胴回り部の腹側端部の折れ曲がりや、腹側胴回り部の腹側端部のヨレを軽減させることができる。
【0031】
かかる吸収性物品であって、前記腹側吸汗シートの前記縦方向の長さは、前記背側吸汗シートの前記縦方向の長さより短いことが望ましい。
【0032】
このような吸収性物品によれば、腹側吸汗シートと背側吸汗シートで、腹部と背中の汗を吸収する一方で、背側吸汗シートの縦方向の長さが、腹側吸汗シートの縦方向の長さがよりも短い場合よりも背側吸汗シートによっての背側胴回り部の剛性が高くなり、仰向きで横たわる着用者に着用させる場合に、着用者の背中の下側に差し込みやすくなる。また、腹側吸汗シートの縦方向の長さが、背側吸汗シートの縦方向の長さより長い場合よりも、腹側胴回り部の剛性が低くなり、着用時の腹側胴回り部の肌触りを向上させやすくなる。
【0033】
かかる吸収性物品であって、前記展開状態において、前記縦方向において、前記腹側吸汗シートは、前記吸収性コアの腹側の端より外側に設けられ、前記背側吸汗シートは、前記吸収性コアの背側の端より外側に設けられ、前記吸収性コアの腹側の端と前記腹側吸汗シートの背側の端との距離が、前記吸収性コアの背側の端と前記背側吸汗シートの腹側の端との距離より短いことが望ましい。
【0034】
このような吸収性物品によれば、吸収性コアで吸収した排泄物が吸汗シートに移って、吸汗シートから肌側に戻ってしまうことを防ぎつつ、吸収性コアを腹側により長く配置することができるため、前側に向かって排泄される尿等の排泄物を吸収することができるため、排泄物が吸収性物品から漏れることを防ぎつつ、吸汗シートが着用者の汗を吸収することができる。
【0035】
かかる吸収性物品であって、前記背側胴回り部は、前記横方向の端部に設けられたファスニングテープを備え、前記腹側胴回り部の非肌側面は、前記ファスニングテープと係合可能なターゲット部材を備え、前記腹側胴回り部は、腹側吸汗シートを有し、前記平面視において、前記ターゲット部材は、前記腹側吸汗シートと重なる部分を有することが望ましい。
【0036】
このような吸収性物品によれば、ターゲット部材の剛性を高くすることができるため、ターゲット部材を平面状に保ちやすくなり、ファスニングテープをターゲット部材に係止しやすくなる。
【0037】
かかる吸収性物品であって、前記縦方向において、前記腹側吸汗シートと前記吸収性コアは、離間しており、前記ターゲット部材が、前記腹側吸汗シートと前記吸収性コアとが離間した部分を跨いて設けられていることが望ましい。
【0038】
このような吸収性物品によれば、縦方向に離間している腹側吸汗シートと吸収性コアとの間にターゲット部材を設けることで、離間している部分の剛性差を緩和させることができ、腹側胴回り部の変形を軽減させることができる。
【0039】
かかる吸収性物品であって、前記縦方向において、前記腹側吸汗シートの外側の端は、前記腹側胴回り部の端と同じ位置であり、前記背側吸汗シートの外側の端は、前記背側胴回り部の端と同じ位置であることが望ましい。
【0040】
このような吸収性物品によれば、腹側吸汗シートの外側の端を腹側胴回り部の端より内側及び背側吸汗シートの外側の端を背側胴回り部の端より内側に設けた場合よりも、腹側吸汗シート及び背側吸汗シートをそれぞれより広い範囲に配置することができるため、より多くの汗を吸収することができる。
【0041】
かかる吸収性物品であって、前記吸汗シートの色が、前記肌側シート、前記吸収性コア、前記伸縮シート、及び前記立体ギャザー部の色と異なることが望ましい。
【0042】
このような吸収性物品によれば、このような吸収性物品によれば、着用者や着用させようとする者に吸汗シートが設けられていることを認識させやすくなる。
【0043】
===本実施形態===
以下、吸収性物品の一例として、所謂テープ型(オープンタイプ)の展開型使い捨ておむつ1(以下、単に「おむつ1」とも呼ぶ)を例に挙げて説明する。但し、本発明に係るおむつ1は、パンツ型使い捨ておむつや、生理用ショーツ等の吸収性物品としても利用可能である。
【0044】
<<<使い捨ておむつ1の構成について>>>
図1は、本実施形態のおむつ1の展開状態かつ伸長状態の肌側から見た平面図である。
図2Aは、
図1中のA-Aにおける断面の構成を説明する模式図、
図2Aは、
図1中の中心線CLにおける断面の構成を説明する模式図、
図2Cは、
図1中のB-Bにおける断面の構成を説明する模式図である。おむつ1の展開状態とは、おむつ1全体を平面的に展開した状態をいう。おむつ1の伸長状態とは、おむつ1に生じていた皺が実質的に視認されなくなる程に伸長させた状態であり、おむつ1を構成する各部材(例えば後述する肌側シート3等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまでおむつ1が伸長した状態である。以下の説明では、
図1の展開状態且つ伸長状態のおむつ1について説明するが、必ずしも伸長状態である必要はなく、自然状態であってもよい。
図2A、
図2B、
図2Cは、
図1中の各部分における断面を示しており、便宜上、断面より縦方向の腹側の視認可能な部分を一部省略して示している。
【0045】
おむつ1は、
図1等に示す展開且つ伸長状態において、互いに直交する縦方向、横方向、及び厚さ方向を有し、縦方向の一方側から、背側胴回り部1A、股下部1C、腹側胴回り部1Bとを並んで有する。なお、縦方向は、「長手方向」ともいう。厚さ方向とは、おむつ1を構成する各部材が積層された方向であり、着用者に接する側を「肌側」といい、その反対側を「非肌側」という。
図1等に示すように、おむつ1は、左右対称な形状を有している。
図1等において、中心線C-Cは、横方向の中心であり、中心線CLは、縦方向の中心である。
【0046】
おむつ1において、背側胴回り部1A(第1胴回り部)は、着用者の背側を覆う背側部材であり、腹側胴回り部1B(第2胴回り部)は、着用者の腹側を覆う腹側部材であり、股下部1Cは、着用者の股下に配置される部材である。本実施形態では、
図1に示すように、背側胴回り部1Aは、中心線CLより背側において、最も幅広の領域を含む部分である。腹側胴回り部1Bは、縦方向の中心線CLより腹側において、最も幅広の領域を含む部分である。股下部1Cは、縦方向において背側胴回り部1Aと腹側胴回り部1Bとの間に位置し、背側胴回り部1Aの最も幅広の部分より横方向の長さが短く、腹側胴回り部1Bの最も幅広の部分より横方向の長さが短い部分をいう。
【0047】
おむつ1は、尿等の排泄液を吸収する吸収体2と、吸収体2を肌側から覆う液透過性の肌側シート3と、吸収体2を非肌側から覆う液不透過性の防漏シート4と、防漏シート4を非肌側から覆い、おむつ1の外形形状をなす外装シート5と、肌側シート3上に横方向に一対並んで設けられた一対の立体ギャザー部6、ファスニングテープ10、ターゲット部材15とを有している。各部材は、ホットメルト接着剤等の接着手段でA1~A9において、接合されている。
【0048】
背側胴回り部1Aの横方向の外側の各端部には、ファスニングテープ10が接着領域A7で固定されている。ファスニングテープ10は、係止部11を有する。ファスニングテープ10は、例えば不織布の部材であり、横方向に延出している。係止部11(例えば、面ファスナーの雄部材)は、背側胴回り部1Aから横方向の外側に延出したファスニングテープ10の部位の肌側面に接着領域A8で固定されている。
【0049】
また、ターゲット部材15は、係止部11を係合させるターゲットテープである。腹側胴回り部1Bの横方向の中央部の非肌側面には、係止部11を係止するためのターゲット部材15が設けられている。ターゲット部材15は、略矩形形状を有しており、例えば、不織布によって形成されており、接着領域A9で外装シート5に接合固定されている。ターゲット部材15の一部は、平面視において、吸収体2と重なっている。
【0050】
おむつ1の着用状態とするために、つまり、着用者がおむつ1を装着した状態とするために、展開状態のおむつ1を着用者にあてがいつつ、縦方向の略中央(中心線CLの辺り)で2つ折りし、背側胴回り部1A側の一対の背側胴回り部1Aを横方向の端部を内側に折り返す。そして、ファスニングテープ10の係止部11を腹側胴回り部1Bの非肌側面のターゲット部材15に係止する。ただし、ファスニングテープ10及びターゲット部材15は、これに限らず、例えば、ターゲット部材15を設けずに、直接係止部11を腹側胴回り部1Bの外装シート5に係止させたり、係止部11に替えて粘着テープをファスニングテープ10に設けても良い。
【0051】
肌側シート3として、第1肌側シート31と第2肌側シート32を有する。第1肌側シート31と第2肌側シート32は、それぞれエアスルー不織布、スパンボンド不織布等のエアスルー不織布等のシート部材を例示できる。第1肌側シート31は、第2肌側シート32より肌側に設けられ、縦方向の長さは、おむつ1の長手方向の長さと略同じであり、横方向において、一対の立体ギャザー部6の間に設けられている。第1肌側シート31は、着用者の肌に最も触れる部分であるため、第2肌側シート32より柔らかく肌触りがよい素材が好ましい。第2肌側シート32は、第1肌側シートと厚さ方向で隣接し、接着領域A1で接合されている。第2肌側シート32は、縦方向の長さが、おむつ1の長手方向の長さと略同じであり、横方向において、第1肌側シート31の長さ及び吸収体2の長さよりも長い。
【0052】
防漏シート4及び外装シート5は、吸収体2より非肌側に設けられた非肌側シートである。防漏シート4は、接着領域A4を介して第2肌側シート32及び吸収体2と接合されており、防漏シート4の一部は、背側吸汗シート9A、腹側吸汗シート9B、伸縮シート8とも接着領域A4で固定されている。外装シート5は、接着領域A6を介して防漏シート4と接合され、接着領域A5を介して立体ギャザー部6と接合されており、外装シート5の一部は、ファスニングテープ10とも接着領域A5で固定されている。防漏シート4としては、ポリエチレンフィルム等の樹脂フィルム等のシート部材を例示でき、外装シート5としては、SMS不織布(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド不織布)等の柔軟なシート部材を例示できる。
【0053】
吸収体2は、背側胴回り部1A、股下部1C及び腹側胴回り部1Bにわたって配置された縦方向に長い長方形状を有している。吸収体2は、尿等の排泄物を吸収する所定形状の吸収性コア21と、吸収性コア21を厚さ方向の肌側及び非肌側の両側からそれぞれ覆う液透過性のコアラップシート22とを有している。コアラップシート22に好適な材料としては、ティッシュペーパーや不織布等を例示できる。但し、これらコアラップシート22は必須の構成ではない。
【0054】
吸収性コア21は、所定形状の一例としての平面視略砂時計形状を有する。吸収性コア21を構成する液体吸収性素材としては、例えばパルプ繊維等の液体吸収性繊維や、高吸収性ポリマー(所謂SAP)等の液体吸収性粒状物を使用することができる。また、液体吸収性繊維及び液体吸収性粒状物以外の液体吸収性素材を含んでいても良い。
【0055】
一対の立体ギャザー部6は、縦方向に伸縮する立体ギャザー部用弾性部材61(例えば、糸ゴム)と、立体ギャザー部6を第2肌側シート32(肌側シート3)に固定する一対の固定部6mを備える。立体ギャザー部用弾性部材61は、糸ゴムを例示することができ、縦方向に伸長された状態で立体ギャザー部6にホットメルト接着剤等で固定されている。固定部6mは、立体ギャザー部6をおむつ1に固定する部分であり、超音波接合や、ホットメルト接着剤等の接着剤による接合によって、立体ギャザー部6がおむつ1に固定される。一対の固定部6mは、それぞれ一対の立体ギャザー部6の縦方向に沿った形状であり、縦方向における背側の端部及び腹側の端部が、中央部よりも幅広に固定されている。立体ギャザー部6のうち、縦方向における中央部において、横方向における内側の端から固定部6mが設けられている部分までの、固定部6mが設けられていない領域が起立部6sとなる。起立部6sは、立体ギャザー部用弾性部材61の収縮によって、肌側に起立可能となり、防漏壁となる。立体ギャザー部6を設けることで、おむつ1の横方向から排泄物が漏れる恐れを軽減させる。
【0056】
着用者の脚回りに沿うように、おむつ1の横方向の両側部で、主に股下部1Cの位置に、縦方向に伸縮可能な一対の脚回り弾性部材7(例えば、糸ゴム)が設けられている。具体的には、
図1に示すように、展開且つ伸長状態において、立体ギャザー部用弾性部材61よりも横方向の外側に、脚回り弾性部材7が設けられている。脚回り弾性部材7は、立体ギャザー部6の非肌側面に縦方向に伸長状態で固定されている。これによって、着用状態において、おむつ1の横方向の各側部が着用者の脚回りにフィットし、排泄物の漏れが抑制される。
【0057】
立体ギャザー部用弾性部材61、及び脚回り弾性部材7の数や形状、材質等は、
図1等に示すものに限られない。例えば、それぞれ立体ギャザー部用弾性部材61、脚回り弾性部材7の数は任意に設定することができ、糸状のポリウレタン伸縮性繊維や、熱可塑性エラストマ樹脂を溶融してフィルム状とした伸縮性フィルムや伸縮繊維からなる伸縮性不織布としてもよい。
【0058】
背側胴回り部1Aは、伸縮シート8と背側吸汗シート9Aを備える。一方、腹側胴回り部1Bは、横方向に伸縮する伸縮シートを備えず、腹側吸汗シート9Bを備える。
【0059】
伸縮シート8は、肌側シート3(第1肌側シート31、第2肌側シート32)と非肌側シート(防漏シート4、外装シート5)との間に設けられている。具体的には、縦方向において背側の吸収性コア21より上側で、横方向において各ファスニングテープ10より内側で、且つおむつ1の中央部で、厚さ方向において、背側吸汗シート9Aと防漏シート4との間に設けられ、接着領域A3で背側吸汗シート9A固定されている。また、伸縮シート8は、平面視において、立体ギャザー部6と重なる部分を有する。伸縮シート8は、略矩形形状のシート状の伸縮部材であり、縦方向の長さは、ファスニングテープ10の縦方向の長さより短く、横方向の長さは、吸収体2の横方向の長さより長い。伸縮シート8は、横方向に伸縮可能な伸縮性を備えたシート状のウレタン資材であり、着用時において、所謂ウエストギャザーとなる部分である。伸縮シート8の収縮によって、背側胴回り部1Aを着用者の肌にフィットさせて、排泄物が背側から漏れてしまう恐れを軽減させる。なお、伸縮シート8としては、ウレタン資材に限らず、熱可塑性エラストマ樹脂を溶融してフィルム状とした伸縮性フィルムや伸縮繊維からなる伸縮性を備えた不織布シートを用いてもよく、不織布と糸ゴムとを貼り合わせて形成した伸縮シートであってもよい。
【0060】
背側吸汗シート9Aは、縦方向の背側の端部(縦方向における背側胴回り部1A側の端部)に設けられている。背側吸汗シート9Aは、横方向において、各ファスニングテープ10より内側で、且つおむつ1の中央部で、縦方向において吸収体2より外側で、厚さ方向において、肌側シート3(第1肌側シート31、第2肌側シート32)と伸縮シート8との間に設けられている。また、平面視において、立体ギャザー部6と伸縮シート8と重なる部分を有する。具体的には、第2肌側シート32との間の接着領域A2及び伸縮シートとの間の接着領域A3で固定されている。背側吸汗シート9Aは、汗を吸いやすいシートであり、親水性繊維(吸水性繊維)を含むシートとする。具体的には、疎水性繊維を主とし、少量の親水性繊維を含む肌側層と、親水性繊維を主とする非肌側層とを有する背側吸汗シート9Aを例示できる。背側吸汗シート9Aによって、肌側層の親水性繊維で汗を吸い取り、その汗を非肌側層に浸透、拡散しつつ、肌側層の疎水性繊維によって、吸収した汗を保持しやすくなる。
【0061】
背側吸汗シート9Aは、肌側シート3(第1肌側シート31、第2肌側シート32)、吸収性コア21、伸縮シート8及び立体ギャザー部6の色と異なることが好ましい。おむつ1では、第1肌側シート31、第2肌側シート32、吸収体2(吸収性コア21及びコアラップシート22)、伸縮シート8、及び立体ギャザー部6の色は、それぞれ白色であり、背側吸汗シート9Aは、緑色である。これによって、着用者や、おむつ1を着用させようとする者に、汗を吸うための部材として、背側吸汗シート9Aを備えることを認識させやすくなる。なお、「異なる色」とは、オストワルト表色系の色相環において、背側吸汗シート9Aの色が、肌側シート3等の色と2色相以上ずれていることを言う。
【0062】
腹側吸汗シート9Bは、縦方向の腹側の端部(縦方向における腹側胴回り部1B側の端部)に設けられている。腹側吸汗シート9Bは、おむつ1の横方向における中央部で、縦方向において吸収体2より外側で、厚さ方向において、肌側シート3(第1肌側シート31、第2肌側シート32)と伸縮シート8との間に設けられている。また、平面視において、立体ギャザー部6と伸縮シート8と重なる部分を有する。具体的には、第2肌側シート32との間の接着領域A2及び防漏シート4との間の接着領域A4で固定されている。腹側吸汗シート9Bは、背側吸汗シート9Aと同様に、汗を吸いやすいシートであり、親水性繊維(吸水性繊維)を含むシートとする。具体的には、疎水性繊維を主とし、少量の親水性繊維を含む肌側層と、親水性繊維を主とする非肌側層とを有する腹側吸汗シート9Bを例示できる。腹側吸汗シート9Bによって、肌側層の親水性繊維で汗を吸い取り、その汗を非肌側層に浸透、拡散しつつ、肌側層の疎水性繊維によって、吸収した汗を保持しやすくなる。
【0063】
腹側吸汗シート9Bは、肌側シート3(第1肌側シート31、第2肌側シート32)、吸収性コア21及び立体ギャザー部6の色と異なることが好ましい。おむつ1では、第1肌側シート31、第2肌側シート32、吸収体2(吸収性コア21及びコアラップシート22)、及び立体ギャザー部6の色は、それぞれ白色であり、腹側吸汗シート9Bは、緑色である。これによって、着用者や、おむつ1を着用させようとする者に、汗を吸うための部材として、腹側吸汗シート9Bを備えることを認識させやすくなる。なお、「異なる色」とは、オストワルト表色系の色相環において、腹側吸汗シート9Bの色が、肌側シート3等の色と2色相以上ずれていることを言う。
【0064】
<<<中央領域X及びギャザー領域Yについて>>>
図1等に示すように、おむつ1の背側胴回り部1Aは、平面視において、一対の立体ギャザー部6に挟まれ、背側吸汗シート9Aと伸縮シート8とが重なった中央領域Xと、立体ギャザー部6と背側吸汗シート9Aとが重なったギャザー領域Yを有する。中央領域Xは、平面視において、背側吸汗シート9Aと伸縮シート8とが重なった、おむつ1の横方向における中央を含む領域をいう。
図3は、伸縮シート8及び吸汗シート9A、9Bに配置について説明する図である。
図3において、便宜上、立体ギャザー部6の固定部6mは、省略して示している。また、吸汗シート9A、9Bを実線且つ左斜め下がりの斜線部として示し、伸縮シート8を実線且つ右斜め下がりの斜線部として示している。さらに、ターゲット部材15も併せて実線且つ右斜め下がりの3本斜線で示している。
図4は、
図2Aの横方向における一方側の拡大図である。
【0065】
中央領域Xでは、着用状態では、伸縮シート8と接着領域A3で固定された背側吸汗シート9Aが、伸縮シート8の収縮によって、着用者の肌に近づきやすくなると同時に、背側吸汗シート9Aが横方向に縮められることで、背側胴回り部1Aの中央部における単位面積当たりの背側吸収シート9Aの液体保持容量を大きくすることができ、より多くの汗を吸収しやすくなる。また、伸縮シート8の収縮に伴い、背側吸汗シート9Aが横方向に縮められることで、背側吸汗シート9Aの表面に凹凸が形成されやすくなり、着用者の肌への設置面積が小さくなる。これによって、着用者の肌と背側吸汗シート9Aとの間に隙間を設けやすくなるため、通気性を向上させることができる。
【0066】
また、立体ギャザー部6の液体透過性は、肌側シート3の液体透過性よりも低い。本実施形態では、肌側シート3として、第1肌側シート31と第2肌側シート32を備えているところ、立体ギャザー部6は第1肌側シート31より液体透過性が低く、第2肌側シート32よりも液体透過性が低い。第1肌側シート31と第2肌側シート32とを重ねたものと比較しても、立体ギャザー部6の方が、液体透過性が低い。
【0067】
液体透過性は、以下の方法で測定することができる。
各シートを所定の大きさ(例えば、40mm×40mm)の矩形形状のものを試料とし、内径35mmの上部円筒(ガラス製)と内径35mmの下部円筒(ガラス製)との間に、上下に2つのパッキン(シリコン製)で試料を挟み込み、上部円筒の下端及び下部円筒の上端に設けられた環状のフランジ部にクリップを嵌合させ、上下の円筒が作業台に対し垂直方向となるように固定させる。続いて、生理食塩水(濃度0.9%の食塩水)を所定量(例えば、50g)だけ、上方の円筒状の上部より一度に入れて、生理食塩水が試料を透過する秒数を測定する。生理食塩水を入れてから各試料上の液がなくなるまでの時間を測定し、その時間が短いほど、液透過性が高いものとし、その時間が長い程、液透過性が低いものとする。
【0068】
さらに、中央領域Xを横方向に単位長さだけ伸長させるのに必要な力を中央伸長力Fxとしたとき、ギャザー領域Yは、横方向に単位長さだけ伸長させるのに必要な力が、中央伸長力Fxより小さい低伸長部分Nを有する。つまり、低伸長部分Nを横方向に単位長さだけ伸長させるのに必要な力を低伸長力Fnとしたとき、低伸長力Fnが中央伸長力Fxより小さい(Fn<Fx)。なお、各領域について、横方向に単位長さだけ伸長させるのに必要な力は、横方向に単位長さだけ収縮する力と等しい。
【0069】
中央領域Xを横方向に単位長さだけ伸長させるのに必要な力(Fx)と低伸長部分Nを横方向に単位長さだけ伸長させるのに必要な力(Fn)の比較は、周知の方法で行うとよい。例えば、背側胴回り部1Aから中央領域Xのうち、横方向における中央を含む領域の全て又は一部、及び低伸長部分Nの全て又は一部をそれぞれサンプルとして切り出す。そして、引張試験機のチャックに各サンプルの両端部を挟ませる。チャック間を単位長さ離してサンプルを伸長させた状態で得られる荷重を測定する。そして、各サンプルの荷重を、各サンプルの上下方向の長さで除した値を比較するとよい。
【0070】
低伸長部分Nについて説明する。低伸長部分Nは、伸縮シート8と背側吸汗シート9Aとが接着領域A3で接合されていない領域Nでもある。
図4等に示すように、伸縮シート8は、接着領域A3を介して背側吸汗シート9Aに接合されている。おむつ1の伸縮シート8は、横方向の端部の領域N(
図3等)には、接着領域A3が設けられていないため、領域Nは、平面視において立体ギャザー部6と伸縮シート8と背側吸汗シート9Aとが重なった領域であり、且つ、伸縮シート8と背側吸汗シート9Aとが接合していない部分である。具体的には、製造過程において、伸縮シート8の横方向における領域N間にホットメルト等の接着剤を設け、横方向に伸長させた状態の伸縮シート8の各領域Nを掴んで、所定の大きさの背側吸汗シート9Aの非肌側面に貼り合わせ、その後、防漏シート4の肌側面に接着領域A5を介して貼り合わせている。そのため、領域Nには、ホットメルト等の接着剤が設けられていないため、伸縮シート8の領域Nは、背側吸汗シート9Aと接合していない部分となる。これによって、伸縮シート8の領域Nは、おむつ1に対して伸縮力を付与しておらず、収縮した状態(自然状態)となっている。つまり、おむつ1の領域Nは、伸長しない部分である。
【0071】
また、ギャザー領域Yは、背側吸汗シート9Aより肌側に、立体ギャザー部6を備え、固定部6mで固定されているため、立体ギャザー部6等の複数の部材の重なりにより、中央領域Xより横方向に単位長さだけ伸長させる力が小さくした低伸長部分を有していてもよい。また、伸縮シート8のうち、ギャザー領域に該当する部分の伸長力を予め小さくすることで、低伸長部分を設けてもよい。例えば、伸縮シート8のうち、中央領域Xに該当する部分に、横方向に沿った複数の糸ゴムを配置し、ギャザー領域Yに該当する部分に、中央領域Xより少ない数の糸ゴムを配置した伸縮シート8を用いてもよい。
【0072】
背側吸汗シート9Aが汗を吸収し、吸収した汗が背側吸汗シート9Aの横方向に拡散した状態でも、ギャザー領域Yにおいて、背側吸汗シート9Aより肌側に、より液体透過性が低い立体ギャザー部6を設けることで、ギャザー領域Yにおける立体ギャザー部6は、汗を肌側に透過させにくい。また、低伸長部分Nを備えるギャザー領域Yは、中央領域Xより伸長力(収縮力)が弱いことから、背側吸汗シート9Aを肌側に近づける力が弱いため、背側吸汗シート9Aを肌側に押し付ける恐れを軽減する。そのため、ギャザー領域Yにおいて、一旦背側吸汗シート9Aが吸収した汗が、肌側に戻ってしまう恐れを軽減させることができる。つまり、中央領域Xにおいて、ギャザー領域Yより大きな伸長力により、背側吸汗シート9Aを肌側に近づけやすくして、より多くの汗を吸収し、吸収した汗を背側吸汗シート9Aの横方向に拡散した場合でも、低伸長部分Nを有するギャザー領域Yでは、背側吸汗シート9Aを肌側に近づける力が弱く、且つ、ギャザー領域Yでは、背側吸汗シート9Aより肌側に液体透過性が低い立体ギャザー部6を備えるため、背側吸汗シート9Aが吸収した汗が肌側に戻ってしまう恐れを軽減させることができる。また、おむつ1の領域Nが伸長しない部分であることで、ギャザー領域Yに、背側吸汗シート9Aを肌側に近づける力が働かない部分を設けることができるため、背側吸汗シート9Aが吸収した汗が着用者の肌にまで戻ってしまう恐れをより軽減させやすくなる。
【0073】
また、厚さ方向に隣接する肌側シート3(第2肌側シート32)と背側吸汗シート9Aとの間に、肌側シート3と背側吸汗シート9Aとが接合した接合部(接合領域A2)と、肌側シート3と背側吸汗シート9Aとが接合していない非接合部B2を有することが好ましい。具体的には、
図4等に示すように、第2肌側シート32と背側吸汗シート9Aとの間において、背側吸汗シート9Aは、第2肌側シート32とが接着領域A2で接合されていることから、接着領域A2が接合部であり、背側吸汗シート9Aの横方向の端部では、第2肌側シート32と接合する接着剤を設けない所謂ドライエッジ部分を有し、このドライエッジ部分は、非接合部B2である。この非接合部B2によって、肌側シート3(第2肌側シート32)と背側吸汗シート9Aとの間に離間した部分を設けやすくなり、背側吸汗シート9Aが吸収した汗が、肌側シート3(第2肌側シート32)に移動しにくくなるため、背側吸汗シート9Aから汗が着用者の肌にまで戻る恐れを軽減させることができる。なお、背側吸汗シート9Aと第2肌側シート32との間の非接合部は、ドライエッジ部分によるものに限らない。例えば、背側吸汗シート9Aと第2肌側シート32との間を接着剤で接合する場合の接着パターン(ストライプやスパイラル等)によって接合部と非接合部を設けてもよい。
【0074】
さらに、平面視において、領域Nと非接合部B2とが重なることがより好ましい。領域Nでは、伸縮シート8の伸長力が働いていないことから、背側吸汗シート9Aを肌側に近づける力が働かない部分であるため、この領域Nと非接合部B2とが重なることで、肌側シート3(第2肌側シート32)と背側吸汗シート9Aとの間を離間させやすくなる。そのため、背側吸汗シート9Aが吸収した汗が肌側に戻りにくくすることができる。
【0075】
背側吸汗シート9Aと伸縮シート8について、平面視において、背側吸汗シート9Aが伸縮シート8と重ならない部分を有することが好ましい。
図3に示すように、おむつ1の背側吸汗シート9Aは、伸縮シート8より大きい。また、背側吸汗シート9Aの両側端は、伸縮シート8の両側端より外側に設けられており、背側吸汗シート9Aの縦方向の外側の端は、伸縮シート8の縦方向の外側の端より外側に設けられている。背側吸汗シート9Aは、伸縮シート8より肌側に設けられていることから、伸縮シート8の収縮に伴って、背側吸汗シート9Aを肌側に近づける力が働く。このとき、平面視において、背側吸汗シート9Aが伸縮シート8と重ならない部分は、背側吸汗シート9Aと伸縮シート8とが重なる部分より背側吸汗シート9Aが肌側に近づける力が働きにくい部分であるため、背側吸汗シート9Aで吸収した汗が肌側に戻りにくくさせることができる。
【0076】
背側吸汗シート9Aと吸収性コア21について、平面視において、背側吸汗シート9Aが吸収性コア21と重ならないことが好ましい。これによって、吸収性コア21が吸収した排泄物が背側吸汗シート9Aに移動し、背側吸汗シート9Aが吸収した排泄物が、着用者の肌にまで移ってしまう恐れを軽減させることができる。おむつ1においては、背側胴回り部1Aだけでなく、腹側胴回り部1Bも腹側吸汗シート9Bを備えている。背側吸汗シート9Aと同様に、腹側吸汗シート9Bについても、平面視において、吸収性コア21と重ならないことがより好ましい。
【0077】
また、おむつ1が所謂テープ型(オープンタイプ)の展開型の使い捨ておむつで、背側胴回り部1Aが、伸縮シート8及び背側吸汗シート9Aを備えることが好ましい。一般的に、仰向けに横たわった状態の着用者に対して展開型の使い捨ておむつを着用させる場合には、まず、背側胴回り部1Aを着用者の背中の下側に背側胴回り部1Aを挿し込むことで、背側胴回り部1Aで着用者の背中を覆わせる。続いて、股下部1C及び腹側胴回り部1Bが着用者の股下及び腹部を覆うように配置し、適宜ファスニングテープ10等で係止することで、おむつ1は着用状態となる。このような展開型の使い捨ておむつにおいて、背側胴回り部1Aが、伸縮シート8及び背側吸汗シート9Aを備えることで、伸縮シート8と背側吸汗シート9Aを備えない場合よりも、剛性が高くなり、着用させる際に、着用者の背中の下側に背側胴回り部1Aを挿し込みやすくなる。
【0078】
通常、
図1等に示す展開型の使い捨ておむつ1は、横方向の両側端部を、肌側を内側にして折るための一対の折り線F、Fを有している。一対の折り線F、Fは、縦方向に沿った折り線であり、包装状態では、一対の折り線F、Fで横方向の両側端部が、横方向の内側に折られ、且つ、縦方向の中央線CLで、肌側を内側にして折り畳まれている。このようなおむつ1において、横方向において、背側吸汗シート9Aの一方側の側端が、一方側の折り線Fより外側に設けられ、横方向において、背側吸汗シート9Aの他方側の側端が、他方側の折り線Fより外側に設けられていることが好ましい。
【0079】
展開型使い捨ておむつ(おむつ1)を仰向けに横たわった状態の着用者に着用させる場合、まず、縦方向における中心線CLで折り畳まれた部分を展開し、続いて、一対の折り線Fにおいておむつ1の横方向の端部を展開させることで、
図1等に示すようなおむつ1を展開させた状態となる。このとき、通常、一対の折り線Fには、所謂折り癖が付いており、おむつ1の横方向の端部が折り線Fで折られやすい状態となっている。これに対し、おむつ1は、背側吸汗シート9Aが一対の折り線F、Fを跨ぐように設けられているため、背側吸汗シート9Aの剛性によって、背側胴回り部1Aの剛性が高くなり、一対の折り線F、Fをそれぞれ展開した状態を維持しやすくなる。これによって、着用者は、背側胴回り部1Aを着用者の背中の下側に差し込むやすくなる。
【0080】
さらに、背側吸汗シート9Aの繊維密度が、吸収性コア21の繊維密度より高いことが好ましい。背側吸汗シート9Aの繊維密度が高いことで、背側吸汗シート9Aの繊維密度が吸収性コア21の繊維密度より低い場合よりも、背側吸汗シート9Aの剛性を高くすることができる。背側吸汗シート9Aの剛性を高くすると、背側胴回り部1Aの剛性もより高くすることができるため、仰向けに横たわった状態の着用者の背中の下側に、背側胴回り部1Aを挿し込みやすくなる。
【0081】
背側吸汗シート9A及び吸収性コア21の繊維密度の比較は周知の方法で行うとよい。例えば、背側吸汗シート9A及び吸収性コア21の繊維密度を均一として測定するが、均一でない場合には、複数箇所を測定し、その平均密度で比較する。繊維密度の比較方法としては、例えば、おむつ1から、背側吸汗シート9A及び吸収性コア21をそれぞれサンプルとして所定の大きさを切り出し、各サンプルの面積と質量を測定し、単位面積あたりの質量である坪量(g/m2)を算出する。また、上記の方法で各サンプルの厚みも測定し、サンプルの坪量(g/m2)を厚み(m)で除することで、密度を算出することができる(g/m3)。
【0082】
また、
図1等に示すように、腹側胴回り部1Bが腹側吸汗シート9Bを有することが好ましい。背側胴回り部1Aの背側吸汗シート9Aだけでなく、腹側胴回り部1Bが腹側吸汗シート9Bを備えることで、背部だけでなく、腹部の汗を吸収しやすくなる。また、平面視において、立体ギャザー部6と腹側吸汗シート9Bとが重なっていることが好ましい。
図2Cに示すように、平面視において、立体ギャザー部6と腹側吸汗シート9Bとが重なる領域Zを有している。領域Zでは、腹側吸汗シート9Bより肌側に、より液体透過性が低い立体ギャザー部6を備えることで、腹側吸汗シート9Bで吸収した汗が、立体ギャザー部6より肌側に透過することを軽減させやすくなり、着用者の肌に汗が戻ってしまう恐れを軽減させることができる。さらに、腹側胴回り部1Bが腹側吸汗シート9Bを備えることで、腹側胴回り部1Bの剛性を高くすることができる。これによって、着用者の動きに応じて腹側胴回り部の腹側の端部が折れ曲がったり、腹側胴回り部の腹側の端部がよれてしまったりする恐れを軽減させることができる。
【0083】
なお、背側胴回り部1Aは、背側吸汗シート9Aと伸縮シート8を備える一方、腹側胴回り部1Bは、腹側吸汗シート9Bを備え、伸縮シートを備えないことが好ましい。腹側胴回り部1Bは、着用者の腹部を覆う部分であり、着用者の腹部は、背中より丸みを帯びているため、肌触りの良し悪しを感じやすい。そのため、腹側胴回り部1Bが伸縮シートを備えないことで、腹側胴回り部1Bが伸縮シートを備えた場合に、腹側胴回り部1Bの剛性が高くなることによる着用者に与える不快感を軽減させることができる。
【0084】
背側胴回り部1Aが背側吸汗シート9Aを備え、腹側胴回り部1Bが腹側吸汗シート9Bを備える場合、縦方向において、背側吸汗シート9Aの外側の端が、背側胴回り部1Aの端と同じ位置であり、腹側吸汗シート9Bの外側の端が、腹側胴回り部1Bの端と同じ位置であることが好ましい。具体的には、
図3に示すように、背側吸汗シート9Aの縦方向における外側の端は、背側胴回り部1Aの縦方向における外側の端に沿っており、腹側吸汗シート9Bの縦方向における外側の端は、腹側胴回り部1Bの縦方向における外側の端に沿っている。これによって、縦方向において、背側吸汗シート9Aの外側の端を背側胴回り部1Aの端よりも内側及び腹側吸汗シート9Bの外側の端を腹側胴回り部1Bの端よりも内側に設けた場合よりも、背側吸汗シート9A及び腹側吸汗シート9Bをそれぞれより広い範囲に設けることができるため、より多くの汗を吸収することができる。
【0085】
図3に示すように、腹側吸汗シート9Bの縦方向の長さ(L9b)が、背側吸汗シート9Aの縦方向の長さ(L9a)より短いことが好ましい(L9b<L9a)。腹側胴回り部1Bと背側胴回り部1Aが、それぞれ腹側吸汗シート9Bと背側吸汗シート9Aを備えることで、着用者の腹部及び背部の汗を吸収できる一方で、腹側吸汗シート9Bの縦方向の長さ(L9b)が、背側吸汗シート9Aの縦方向の長さ(L9a)より短くすることで(L9b<L9a)、腹側吸汗シート9Bの縦方向の長さ(L9b)を背側吸汗シート9Aの縦方向の長さ(L9a)以上とする場合よりも(L9b≧L9a)、背側胴回り部1Aの剛性を高くすることができ、仰向けに横たわった着用者の背中の下側に背側胴回り部1Aを挿し込みやすくなると同時に、腹側胴回り部1Bの剛性を低くすることができるため、着用者の腹部に接する肌触りを向上させることができる。
【0086】
また、
図3に示すように、縦方向において、背側吸汗シート9Aは、吸収性コア21の背側の端より外側に設けられ、腹側吸汗シート9Bは、吸収性コア21の腹側の端より外側に設けられていることが好ましい。吸収性コア21で吸収した排泄物が背側吸汗シート9A及び腹側吸汗シート9Bに移動して、背側吸汗シート9A及び腹側吸汗シート9Bに移った排泄物が、着用者の肌にまで到達してしまう恐れを軽減させることができる。このとき、吸収性コア21の腹側の端と腹側吸汗シート9Bの背側の端との距離(Db)が、吸収性コア21の背側の端と背側吸汗シート9Aの腹側の端との距離(Da)より短い(Db<Da)ことがより好ましい。このようにすることで、縦方向において、腹側胴回り部1Bのより長い領域に吸収性コア21を配置することができるため、前側に向かって排泄される尿等の排泄物を吸収しやすくなる。つまり、前側に向かって排泄される排泄物がおむつ1の外側に漏れてしまう恐れを軽減させつつ、吸汗シート9A、9Bによって着用者の汗を吸収することができる。
【0087】
腹側胴回り部1Bがターゲット部材15を備える場合には、
図3に示すように、腹側胴回り部1Bにおいて、平面視において、ターゲット部材15が腹側吸汗シート9Bと重なる部分を有することが好ましい。おむつ1は、平面視において、ターゲット部材15の縦方向における外側の端部が、腹側吸汗シート9Bの縦方向における内側の端部と重なっている。これによって、ターゲット部材15の剛性が高くなり、ターゲット部材15を平面上に保ちやすくなることで、おむつ1を着用する際に、ファスニングテープ10をターゲット部材15に係止させやすくなる。
【0088】
腹側胴回り部1Bの縦方向において、腹側吸汗シート9Bと吸収性コア21は、長さDbだけ離間している。このとき、ターゲット部材15が、腹側吸汗シート9Bと吸収性コア21とが離間した部分(長さDbの領域)を跨いで設けられていることがより好ましい。縦方向において、腹側吸汗シート9Bと吸収性コア21とが離間した部分(長さDbの領域)は、剛性が低いため、折れ曲がりやすい部分である。そのため、この腹側吸汗シート9Bと吸収性コア21とが離間した部分を跨ぐ領域にターゲット部材15を配置することで、離間した部分の剛性差による変形を緩和させることができる。
【0089】
===その他の実施形態===
上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0090】
上述の実施形態では、ギャザー領域Yの一部に低伸長部分Nを設けたが、これに限られない。ギャザー領域Yの全域に低伸長部分Nを設けてもよい。ギャザー領域Yの全域だけでなく、中央領域Xの一部が低伸長部分Nを有する構成であってもよい。このような場合であっても、横方向における中央を含む中央領域Xを単位長さだけ横方向に伸長させる力(Fx)より、低伸長部分Nを横方向に単位長さだけ伸長させるのに必要な力(Fn)を小さくすることで、中央領域Xは、低伸長部分Nより大きな伸長力で背側吸汗シート9Aを肌側に近づけやすくして、より多くの汗を吸収しつつ、ギャザー領域Yでは、背側吸汗シート9Aより肌側に液体透過性が低い立体ギャザー部6を備えることで、背側吸汗シート9Aが吸収した汗が肌側に戻りにくくさせ、低伸長部分Nを備えることで、背側吸汗シート9Aを肌側に近づける力を弱くして、背側吸汗シート9の汗が肌側に戻ってしまう恐れを軽減させることができる。
【0091】
また、上述の実施形態では、背側胴回り部1A(第1胴回り部)が背側吸汗シート(第1吸汗シート)9A及び伸縮シート8を備え、腹側胴回り部1Bが腹側吸汗シート(第2吸汗シート)9Bを備える構成としたが、これに限られない。腹側胴回り部が第1胴回り部として、腹側吸汗シート(第1吸汗シート)と伸縮シートを備え、背側胴回り部が第2胴回り部として、背側吸汗シート(第2吸汗シート)を備え、伸縮シートを備えない構成であってもよい。このとき、ギャザー領域では、平面視において、立体ギャザー部と腹側吸汗シートと伸縮シートが重なり、且つ、立体ギャザー部と背側吸汗シートとが重なり、中央領域では、平面視において、腹側吸汗シートと伸縮シートとが重なり、腹側胴回り部におけるギャザー領域が低伸長部分を有するものであってもよい。このような場合であっても、ギャザー領域では、腹側胴回り部(第1胴回り部)の低伸長部分によって、腹側胴回り部(第1胴回り部)の腹側吸汗シートを着用者の肌に近づけることを抑制しつつ、平面視において、立体ギャザー部と重なる腹側胴回り部(第1胴回り部)及び背側胴回り部(第2胴回り部)の背側吸汗シートの汗が肌側に戻ることを軽減させることができる。なお、背側胴回り部と腹側胴回り部のいずれもが、吸汗シートと伸縮シートを備える構成であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 おむつ(展開型使い捨ておむつ、吸収性物品)、
1A 背側胴回り部(第1胴回り部)、
1B 腹側胴回り部(第2胴回り部)、
1C 股下部、
2 吸収体、
21 吸収性コア、
22 コアラップシート、
3 肌側シート、
31 第1肌側シート(肌側シート)、
32 第2肌側シート(肌側シート)、
4 防漏シート(非肌側シート)、
5 外装シート(非肌側シート)、
6 立体ギャザー部、
6s 起立部、
6m 固定部、
61 立体ギャザー部用弾性部材、
7 脚回り弾性部材、
8 伸縮シート(背側伸縮シート)、
9A 背側吸汗シート(吸汗シート、第1吸汗シート)、
9B 腹側吸汗シート(第2吸汗シート)、
10 ファスニングテープ、
11 係止部、
15 ターゲット部材、
A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9 接着領域、
F 折り線、
X 中央領域、
Y ギャザー領域、
N 低伸長部分(領域)
【要約】 (修正有)
【課題】汗を吸収しやすい吸汗シートを備えつつ、吸汗シートが吸収した汗が肌側に戻りにくくする。
【解決手段】肌側シートと、非肌側シート4、5と、吸収性コア21と、厚さ方向において肌側シートと非肌側シートとの間に設けられた伸縮シート8と、厚さ方向において肌側シートと伸縮シートとの間で吸収性コア21より縦方向の外側に設けられた吸汗シート9Aと、肌側シートより液体透過性が低く、吸汗シートより肌側に設けられた一対の立体ギャザー部6とを備える吸収性物品1であって、展開状態において、一対の立体ギャザー部に挟まれ、吸汗シートと伸縮シートとが重なった中央領域Xと、立体ギャザー部と吸汗シートと伸縮シートとが重なったギャザー領域Yと、を有し、中央領域の横方向の伸長力より低い低伸長部分を、ギャザー領域に有する。
【選択図】
図1