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特許7026243バッテリーシステム、局所電気グリッド、及び断路器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】バッテリーシステム、局所電気グリッド、及び断路器
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 302A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020542495
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 DE2018100852
(87)【国際公開番号】W WO2019076405
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-06-15
(31)【優先権主張番号】102017124567.7
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520139387
【氏名又は名称】ゾネン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガイガー ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘネマン ウォルフラム
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-110683(JP,A)
【文献】特開2015-033234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H02J 3/00 - 5/00
H02H 7/00
H02H 7/10 - 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所電気グリッドで用いられるバッテリーシステムであって、
少なくとも1つのバッテリーモジュール、
前記バッテリーモジュールに電気的に接続されて、前記局所電気グリッドに対して前記バッテリーモジュールを充電及び/又は放電するように機能する出力端子、
前記バッテリーモジュールと前記出力端子の少なくとも1つの極との間に配置されて、開状態では前記バッテリーモジュールと前記出力端子の少なくとも1つの極との間での電気的接続を切断するように構成される断路器、
前記バッテリーモジュールによって特定される故障状態において、前記バッテリーモジュールと前記出力端子の少なくとも1つの極との間での電気的接続を中断するように前記断路器を動かすように構成される第1信号回路、
前記バッテリーモジュールによって特定される故障状態において、前記バッテリーモジュールと前記出力端子の少なくとも1つの極との間での電気的接続を中断するように前記断路器を動かすように構成される第2信号回路、
を有するバッテリーシステム。
【請求項2】
前記第1信号回路は第1故障中継器を有し、
前記第1故障中継器は、前記バッテリーモジュールによって制御され、前記バッテリーモジュールによって特定される前記故障状態では、前記第1信号回路を開くために開かれ、あるいは、前記第1信号回路を所定の電位にするために閉じられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリーシステム。
【請求項3】
前記第2信号回路は第2故障中継器を有し、
前記第2故障中継器は、前記バッテリーモジュールによって制御され、前記バッテリーモジュールによって特定される前記故障状態では、前記第2信号回路を開くために開かれ、あるいは、前記第2信号回路を所定の電位にするために閉じられる、
ことを特徴とする請求項に記載のバッテリーシステム。
【請求項4】
1つ又は複数の他のバッテリーモジュールが供され、
前記第1信号回路は、前記バッテリーモジュールによって制御される1つ又は複数の他の第1故障中継器を有し、かつ/あるいは、
前記第2信号回路は、前記バッテリーモジュールによって制御される1つ又は複数の他の第2故障中継器を有する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のバッテリーシステム。
【請求項5】
前記断路器は、前記第1信号回路によって電流が供給される第1保持コイル、及び/又は、前記第2信号回路によって電流が供給される第2保持コイルを有し、
前記第1保持コイル及び/又は前記第2保持コイルは、閉状態で前記断路器を保持するように構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のバッテリーシステム。
【請求項6】
前記断路器は、開状態では、前記バッテリーモジュールと前記出力端子の2つの極との間での電気的接続を切断するように第1スイッチと第2スイッチを備える少なくとも2極型に構成されることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のバッテリーシステム。
【請求項7】
前記断路器は、該断路器の閉状態では、前記第1信号回路及び/又は前記第2信号回路の電流供給を保証し、前記断路器の開状態では、前記第1信号回路及び/又は前記第2信号回路の電流供給を中断するように第3スイッチを備える3極型に構成される、ことを特徴とする請求項に記載のバッテリーシステム。
【請求項8】
前記断路器は、第1スイッチを備える単極型又は少なくとも第2スイッチ及び/若しくは第3スイッチを備える多極型に構成され、
前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、及び前記第3スイッチの各々は電気ヒューズを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のバッテリーシステム。
【請求項9】
前記断路器は、第1スイッチを備える単極型又は少なくとも第2スイッチ及び/若しくは第3スイッチを備える多極型に構成され、
前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、及び前記第3スイッチのすべては、共同でのみ前記断路器の開状態と閉状態とを変化させることができるように互いに機械的に結合する、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のバッテリーシステム。
【請求項10】
前記断路器は始動素子を有し、
前記始動素子によって、前記断路器は、状態から状態へ手動で移行することができる、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のバッテリーシステム。
【請求項11】
前記第1信号回路及び/又は前記第信号回路は前記バッテリーモジュールから給電されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のバッテリーシステム。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載のバッテリーシステム及び前記出力端子に接続されるインバータを有する局所電気グリッド。
【請求項13】
出力端子の少なくとも1つの極からバテリーモジュールを切断する第1スイッチ並びに第2スイッチ及び/又は第3スイッチと、
第1保持コイルと第2保持コイルであって、前記第1保持コイル及び前記第2保持コイルが通電される場合にのみ、前記第1乃至第3スイッチを閉状態に保持するように構成される1保持コイルと第2保持コイルを少なくとも有する
極断路器。
【請求項14】
始動素子を有し、
前記始動素子によって、前記第1乃至第3スイッチは状態から状態へ手動で移行することができる、
請求項13に記載の多極断路器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーシステム、局所電気グリッド、及び断路器に関する。特に本発明は、局所電気グリッドで用いられるバッテリーシステム、当該局所電気グリッド、及び、当該バッテリーシステムで用いられる断路器に関する。当該バッテリーシステムは、好適には2kWh超の合計蓄電容量を有する複数の相互接続されたバッテリー又は電気2次電池で構成される少なくとも1つのバッテリーモジュールを有する。よって個々のバッテリーは、複数の2次電池から構築される。2次電池はまた、構造的に互いに分離した電気2次電池に結合されてもよい。よってバッテリー及び電気的に結合したバッテリーから構成されるバッテリーモジュールは、そのバッテリーモジュールが局所電気グリッドである充電及び放電装置に接続される場合に、再度の充電及び放電が可能である。この特性のため、そのようなバッテリーシステムを用いて、たとえば急な消費を要しない局所DC又はAC電源からの電気エネルギーは、後で生じる需要のために蓄電され得る。
【背景技術】
【0002】
しかしそのようなバッテリーシステムは機能的に安全でなければならない。換言すると安全上重大な状況-たとえば過電圧、温度過上昇、過充電等-が存在する場合に、接続する充電及び放電装置からバッテリーモジュールを断路できなければならない。少なくともドイツでは、この断路は義務づけられており、将来的には保証されなければならない。
【0003】
文書によって実証されていない従来技術から、機能上の信頼性があるバス通信及び/又は受動部材-たとえば高電流中継器-によるバス接続によって、そのようなバッテリーシステムの機能上の安全性を実現することが知られている。しかしこれは一般的に高価で、複雑で、認証を受けるのは困難である。
【0004】
さらに特許文献1はDC電圧端子を有する電圧変換器を開示している。この電圧変換器は、DC電源に結合することができる。電気スイッチ素子は、DC電源端子とDC電源との間に配置されてよく、DC電源端子とDC電源との間の電気的接続を中断するように設計される。電気スイッチ素子は、バッテリー回路ブレーカー又は過電流保護装置として構成される。
【0005】
しかし費用対効果がよくて実現及び認証が単純な上述の型のバッテリーシステムの機能的安全性が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許第102015220820A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、費用対効果がよくて実現が単純なバッテリーシステム、局所電気システム、及び断路器を供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特に局所電気グリッドで用いられるバッテリーシステムに関する。当該バッテリーシステムは、
- 少なくとも1つのバッテリーモジュール、
- 前記バッテリーモジュールと電気的に接続され、前記局所電気グリッドに対して前記バッテリーモジュールを充電及び/又は放電するように機能する出力端子、
- 前記バッテリーモジュールと前記出力端子の少なくとも1つの極との間に配置されて、開状態では前記バッテリーモジュールと前記出力端子の少なくとも1つの極との間での電気的接続を切断するように構成される断路器、
- 前記バッテリーモジュールによって特定される故障状態において、前記バッテリーモジュールと前記出力端子の少なくとも1つの極との間での電気的接続を中断するように前記断路器を動かすように構成される第1信号回路、を有し、さらに、当該バッテリーシステムによって特定される故障状態において、前記バッテリーモジュールと前記出力端子の前記少なくとも1つの極との間の電気的接続が中断されるように前記断路器を始動させるように構成される第2信号回路を有する。この冗長性のため、各バッテリーモジュールは、前記出力端子への接続を、2つの独立する信号回路によって中断することができる。結果として安全性が増大する。
【0009】
当該バッテリーシステムはモジュールで構成されている。前記第1信号回路である制御装置と、前記局所電気グリッドに対して前記バッテリーモジュールを充電及び/又は放電する出力端子と、前記出力端子を前記バッテリーモジュールから切断する断路器である断路装置が存在する。その結果、当該バッテリーシステムは費用対効果よく実現が単純となる。しかも当該バッテリーシステムの機能上の安全性が保証される。しかもいかなる場合でもソフトウエアに依拠しなくても機能上の安全性が得られるため、機能上の安全性を実現する根拠としてのハードウエアのみを使用することが可能となる。
【0010】
バッテリーモジュールの個数は少なくとも1つである。換言すると当該バッテリーシステムは、1つのバッテリーモジュール又は複数のバッテリーモジュールを有してよい。当該バッテリーシステムが複数のバッテリーモジュールを含む場合、前記バッテリーモジュールは、好適にはケース毎にたとえばバス接続用のプラグを介して互いに接続される。前記プラグは、便利な機能という意味において(つまり安全性には関係しない)バス通信と前記バッテリーモジュールの電圧供給を行い、前記第1信号回路へ信号を送るように構成されることが好ましい。前記プラグはたとえば、多極でRJ45プラグであることが好ましい。前記プラグについて、各バッテリーモジュールは2つのソケットを有する。前記2つのソケットのうちの一は、他のバッテリーモジュールへの入力用で、前記2つのソケットのうちの他は、さらに他のバッテリーモジュールへの入力用、又は、当該バッテリーシステムの制御装置と第1信号回路との接続用である。当該バッテリーシステムが含むバッテリーモジュールの個数に関係なく、機能上の安全性は、前記第1信号回路によって保証される。前記プラグを介した接続によって、安全で便利となるようにすべての通信を保証することが可能となる。
【0011】
各バッテリーモジュールは、故障状態を特定できるので、前記第1信号回路へ故障状態として安全性にとって重大な状況を報告できる。それにより、前記バッテリーモジュールと前記出力端子の少なくとも1つの極との間での電気的接続を中断するように、前記断路器が始動する。従って前記第1信号回路である安全装置は、当該バッテリーシステムが含むバッテリーモジュールの個数に関わらず常に機能する。
【0012】
前記局所電気グリッドに対して前記バッテリーモジュールを充電及び/又は放電する前記出力端子は、インバータに接続可能に構成されることが好ましい。
【0013】
一の好適実施形態では、前記第1信号回路は第1故障中継器を有する。前記第1故障中継器は、前記バッテリーモジュールによって制御され、前記バッテリーモジュールによって特定される前記故障状態では、前記第1信号回路を開くために開かれる。中継器は、他の電気部品と比較して有利である。なぜなら前記中継器は、ミリオーム範囲の相対的に低い接触境界抵抗と相対的に高い投入容量すなわち過負荷耐量を有し、冷却を必要とせず、相対的に頑丈だからである。当該バッテリーシステムはケーブルの断線に対して耐性を有する。
【0014】
説明した実施形態では、前記第1故障中継器は、特に開かれることで前記第1信号回路が急速に中断するように前記第1信号回路内に集積されてよい。この実施形態の代替例として、前記第1故障中継器は、前記第1信号回路を所定の電位-たとえば前記装置の接地電位-にするため、前記バッテリーモジュールによって特定される前記故障状態において閉じられるように構成及び/又は配備されてよい。特に前記第1故障中継器は、閉じるときに、前記第1信号回路を前記所定の電位-具体的には接地電位-に接続するため、プルダウン構成をとってよい。これを実現するため、前記第1故障中継器に接続される第1プルアップレジスタが供されることが好ましい。前記第1プルアップレジスタは、前記第1信号回路の電位を動作電位にするようにバイアス印加する。
【0016】
一の好適実施形態では、前記第2信号回路は第2故障中継器を有する。前記第2故障中継器は、前記バッテリーモジュールによって制御され、前記バッテリーモジュールによって特定される前記故障状態において、前記第2信号回路を開くように開かれる。よって前記バッテリーモジュールは、前記第1故障中継器と前記第2故障中継器を制御する。ここでも代わりに、前記第2故障中継器は、前記第2信号回路を所定の電位-たとえば前記装置の接地電位-にするため、前記バッテリーモジュールによって特定される前記故障状態において閉じられるように構成及び/又は配備されてよい。特に前記第2故障中継器は、閉じるときに、前記第2信号回路を前記所定の電位-具体的には接地電位-に接続するため、プルダウン構成をとってよい。これを実現するため、前記第2故障中継器に接続される第2プルアップレジスタが供されることが好ましい。前記第2プルアップレジスタは、前記第2信号回路の電位を動作電位にするようにバイアス印加する。
【0017】
好適には、1つ又は複数の他のバッテリーモジュールが供される。前記第1信号回路は、前記バッテリーモジュールによって制御される1つ又は複数の他の第1故障中継器を有する。前記第2信号回路は、前記バッテリーモジュールによって制御される1つ又は複数の他の第2故障中継器を有する。好適には各バッテリーモジュールはそれぞれ、第1故障中継器と第2故障中継器に割り当てられる。前記複数又はすべてのバッテリーモジュールの前記第1故障中継器は、互いに直列に接続されることが好ましい。これは、前記第2故障中継器にも適用されることが好ましい。従って前記第1故障中継器と前記第2故障中継器はそれぞれ、バッテリーモジュールが故障状態を特定しない場合には閉じられている。
【0018】
好適には前記第1故障中継器と前記第2故障中継器の各々は、「通常開」構成をとる。つまり作成コンタクトが含まれる。前記作成コンタクトは、始動すなわち駆動するときにコンタクトを形成するように構成され、始動するときにコンタクトを確立するため通常開コンタクトとも呼ばれる。これは、たとえバッテリーが完全に故障して故障信号を発することができない場合でさえも、前記バッテリーの(複数の)中継器及び関連回路が開いているという利点を有する。この場合、前記故障中継器が駆動しないことは、故障信号とみなされる。
【0019】
対応するように複数の第1故障回路及び/又は複数の第2故障回路が供されるように、1つ又は複数の他のバッテリーモジュールが供される場合、上で説明した実施形態による前記第1故障回路のうちの一は、そのバッテリーモジュールによって特定される故障状態において、前記第1信号回路を開くために開かれ得る一方、以降で説明する実施形態による前記第1故障回路のうちの他は、前記第1信号回路を所定の電圧にするために閉じられる。前複数の第2故障回路が存在する限りにおいて、上で述べたことは、前記複数の第2故障回路にも適用され得る。
【0020】
一の好適実施形態では、前記断路器は、前記第1信号回路によって電流が供給される第1保持コイル、及び/又は、前記第2信号回路によって電流が供給される第2保持コイルを有する。前記第1保持コイル及び/又は前記第2保持コイルは、閉状態で前記断路器を保持するように構成される。前記断路器は、前記第1保持コイル及び/又は前記第2保持コイルが中断する場合、前記(複数の)バッテリーモジュールを自動的に前記出力端子から切断するように構成される。よって、具体的には認証仕様IEC 62619, VDE-AR-E2510-50:2017-05, UL 1973/9540に対応する安全状態が実現され得る。
【0021】
一の好適実施形態では、前記バッテリーシステムは、前記第1信号回路、前記第2信号回路、並びに、前記第1保持コイル及び前記第2保持コイルを有する前記断路器を含む。前記第1保持コイルには前記第1信号回路による電流が供給される。前記第2保持コイルには前記第2信号回路による電流が供給される。前記第1保持コイルと前記第2保持コイルは、該第1保持コイルと前記第2保持コイルに電流が流れるときに、閉状態で前記断路器を保持するように構成される。
【0022】
上述の実施形態の一の変化型では、前記バッテリーシステムは、前記第1信号回路、前記第2信号回路、並びに、前記第1保持コイル及び前記第2保持コイルを有する前記断路器を含み、さらには第1及び第2の中継器を含む。前記第1中継器には前記第1信号回路による電流が供給される。前記第2中継器には前記第2信号回路による電流が供給される。さらに前記第1中継器は、前記第1保持コイルが設けられている第1補助回路を切り換え、前記第2中継器は、前記第2保持コイルが設けられている第2補助回路を切り換える。電流が前記第1保持コイル及び前記第2保持コイルを流れる限り、前記断路器は前記閉状態に保持される。よって前記第1保持コイル及び前記第2保持コイルにはそれぞれ、前記第1信号回路及び前記第2信号回路による電流が供給される。
【0023】
あるいはその代わりに、上述の2つの実施形態では、前記断路器は1つしか保持コイルを備えない。前記第1信号回路又は前記第2信号回路を流れる電流が、前記保持コイルを流れるか、あるいはその代わりに、前記第1信号回路又は前記第2信号回路を流れる電流が、補助回路を閉じる中継器を駆動させることで、前記保持コイルを流れる。
【0024】
好適には前記断路器は、開状態では、前記バッテリーモジュールと前記出力端子の2つの極との間での電気的接続を切断するように第1スイッチと第2スイッチを備える少なくとも2極型に構成される。好適には前記断路器は、該断路器の閉状態では、前記第1信号回路及び/又は前記第2信号回路の電流供給を保証し、前記断路器の開状態では、前記第1信号回路及び/又は前記第2信号回路の電流供給を中断するように第3スイッチを備える3極型に構成される。前記第3スイッチはさらなる安全性を構成する。
【0025】
一の好適実施形態では、前記断路器は、第1スイッチを備える単極型又は少なくとも第2スイッチ及び/若しくは第3スイッチを備える多極型に構成される。ここで各スイッチは電気ヒューズを有する。その結果、前記断路器は、過電流ヒューズ機能をも有することになる。よって追加の過電流ヒューズは不要となる。
【0026】
好適には前記断路器は、第1スイッチを備える単極型又は少なくとも第2スイッチ及び/若しくは第3スイッチを備える多極型に構成される。ここですべてのスイッチは、共同でのみ前記断路器の開状態と閉状態とを変化させることができるように互いに機械的に結合する。前記第1保持コイルが-又は供される場合には前記第2保持コイルも-始動されない場合、前記断路器のすべてのスイッチは共同で前記開状態を実現する。
【0027】
一の好適実施形態では、前記断路器は、始動素子を有する。前記始動素子によって、前記断路器は、状態から状態へ手動で移行することができる。その結果、前記断路器は、オンとオフを手動で切り換えることができる。
【0028】
好適には、前記第1信号回路及び/又は前記第信号回路は前記バッテリーモジュールから給電される。例として、前記バッテリーシステムは、前記バッテリーモジュールと前記第1信号回路及び/又は前記第1信号回路との間で接続されるDC/DC変換器を有する。補助回路が供される場合、前記補助回路もまた、前記バッテリーモジュールから給電されることが好ましい。
【0029】
前記バッテリーシステムは、建物の電気エネルギー供給ネットワークに電気エネルギーを一時的に供給するのに適したバッテリーシステムであることが好ましい。前記(複数の)バッテリーモジュールのバッテリー又は2次電池は蓄電容量を有するため、前記バッテリーシステムによって、たとえば急な消費を要しない局所DC又はAC電源からの前記電気エネルギーは、将来生じる需要に備えて蓄電され得る。局所DC及びAC電源-つまり前記建物のネットワークに相対的に近接して作られる電源-はたとえば、光電装置、風力装置、あるいは熱電併給(コージェネレーション)プラントである。これらのバッテリーシステムは特に、家庭及び職場の建物の電気エネルギー供給ネットワークに電気エネルギーを供給するのに用いられる。
【0030】
本発明はさらに、上述の実施形態のうちの1つ以上によるバッテリーシステム、及び、前記出力端子に接続されるインバータを有する局所電気グリッドに関する。前記出力端子への接続用端子に加えて、前記インバータは、前記建物の電気エネルギー供給ネットワーク及び/又は特に光電装置の前記局所DC又はAC電源への接続用端子をさらに有することが好ましい。前記インバータは、光電装置のソーラーモジュールによって生成される電気を変換し、前記電気を前記バッテリーシステム及び/又は前記建物の電気エネルギー供給ネットワークへ供給する。同時に前記インバータは、前記バッテリーシステムを監視及び/又は制御するように構成されてよい。
【0031】
さらに本発明は多極断路器に関する。当該多極断路器は、出力端子の少なくとも1つの極からバテリーモジュールを切断する第1スイッチ並びに第2スイッチ及び/又は第3スイッチと、第1保持コイルと第2保持コイルであって、前記第1保持コイル及び前記第2保持コイルが通電される場合にのみ前記第1乃至第3スイッチを閉状態に保持するように構成される1保持コイルと第2保持コイルを少なくとも有する。
【0032】
好適には当該多極断路器は、前記第1乃至第3スイッチが状態から状態へ手動で移行することができる始動素子をさらに有する。しかも前記バッテリーシステムに関連して説明して前記バッテリーシステム内に含まれる前記断路器に関する好適実施形態は、必要な変更を加えた上で前記断路器に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の他の特性及び利点は、図示されて以降の例で説明される典型的実施形態によって明らかになる。図の概略は以下の通りである。
【0034】
図1】第1実施形態によるバッテリーシステムの回路図を示している。
図2】第2実施形態によるバッテリーシステムの回路図を示している。
図3】第3実施形態によるバッテリーシステムの回路図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、第1実施形態によるバッテリーシステムの回路図を示している。バッテリーシステムは、純粋な例として、3つのバッテリーモジュール1を有する。ここでは3つのバッテリーモジュール1は単に概略的にのみ示され、個別的には示されていない。さらにバッテリーシステムは、バッテリーモジュール1に電気的に接続されて、局所電気グリッド(不図示)に対してバッテリーモジュール1を充電及び/又は放電するように機能する出力端子2を有する。出力端子は、インバータ(不図示)に接続されるように構成される。
【0036】
出力端子2は極21と極22を有する。断路器3は、バッテリーモジュール1と極21,22との間に配置される。断路器3は、開状態では、バッテリーモジュール1と極21,22との間の電気的接続を切断するように構成される。さらにバッテリーシステムは、バッテリーモジュール1によって特定される故障状態において、バッテリーモジュール1と極21,22との間の電気的接続を中断するように断路器3を始動させるように構成される第1信号回路41を有する。さらにバッテリーシステムは、バッテリーモジュール1によって特定される故障状態において、バッテリーモジュール1と極21,22との間の電気的接続を中断するように断路器3を始動させるように構成される第2信号回路42を有する。
【0037】
断路器3は、第1信号回路41によって電流が供給される第1保持コイル31、及び、第2信号回路42によって電流が供給される第2保持コイル32を有する。第1保持コイル31及び第2保持コイル32は、双方に同時に電流が供給される場合に断路器3を閉状態に保持するように構成される。
【0038】
断路器3はさらに3極型の構成をとる。断路器3は、開状態でバッテリーモジュール1と極21,22との間の電気的接続を切断するように構成される第1スイッチ301及び第2スイッチ302を有する。第1スイッチ301が極21に接続される一方で、第2スイッチ302が極22に接続される。断路器3の第3スイッチ303は、断路器3の閉状態では、第1信号回路41及び第2信号回路42の電流供給を保証し、断路器3の開状態では、第1信号回路41及び第2信号回路42の電流供給を中断するように構成される。断路器3は、電流が第1保持コイル31と第2保持コイル32の両方を流れるときにのみ閉状態に保持される。
【0039】
第1信号回路41は、第1故障中継器S1,S2,S3を有する。第1故障中継器S1,S2,S3はそれぞれ、3つのバッテリーモジュール1のうちの1つに割り当てられる。第1故障中継器S1,S2,S3は直列に接続されている。同様に第2信号回路42は、第2故障中継器S4,S5,S6を有する。第2故障中継器S4,S5,S6はそれぞれ、3つのバッテリーモジュール1のうちの1つに割り当てられる。第2故障中継器S4,S5,S6もまた直列に接続されている。換言すると、2つの独立する故障中継器-具体的には第1故障中継器S1,S2,S3及び第2故障中継器S4,S5,S6-によって、各バッテリーモジュールは、故障状態を特定したときに閉状態から開状態への断路器3の切換を引き起こすことができる。
【0040】
第1信号回路41及び第2信号回路42は、バッテリーモジュール1から給電される。この目的のため、バッテリーシステムは、バッテリーモジュール1と第1信号回路41及び第2信号回路42との間で接続されるDC/DC変換器5を有する。バッテリーモジュール1の電圧範囲及び保持コイル31,32の電圧範囲が対応する場合では、DC/DC変換器5は必要ない。
【0041】
図2は、第2実施形態によるバッテリーシステムの回路図を示している。図2に示されたバッテリーシステムは、図1に示されたバッテリーシステムと同一の構成要素を有するが、さらに第1中継器R1と第2中継器R2を有する。図1で説明した構成要素と図2に示されたバッテリーシステムの構成要素は、図1で説明したバッテリーシステムと同様の構成と機能を有する。ただし、第1中継器R1には第1信号回路41による電流が供給され、第2中継器R2には第2信号回路42による電流が供給される点は異なる。図1に示された実施形態とは異なり、第1保持コイル31は第1信号回路41の一部ではなく、その代わりに第1中継器R1が第1信号回路41の一部になっている。それに対応して第2保持コイル32は第2信号回路42の一部ではなく、その代わりに第2中継器R2が第2信号回路42の一部になっている。
【0042】
第1中継器R1は、内部に第1保持コイル31が設けられる第1補助回路R41を切り換える。第2中継器R2は、内部に第2保持コイル32が設けられる第2補助回路R42を切り換える。よって第1保持コイル31及び第2保持コイル32には、それぞれ第1信号回路41及び第2信号回路42によって間接的に電流が供給される。
【0043】
図1による第1バッテリーシステムと図2による第2バッテリーシステムのいずれでも、他の切り換え素子とは独立して第1保持コイル31を流れる電流をオフに切り換えることが可能な制御中継器6がさらに供される。この目的のため、制御中継器6は、制御端子61を介して対応信号を受ける。
【0044】
図3は、第3実施形態によるバッテリーシステムの回路図を示している。図3に示された第3実施形態によるバッテリーシステムは、第1故障中継器S1,S2,S3及び第2故障中継器S4,S5,S6の配置と機能の点で、図2に示された第2実施形態によるバッテリーシステムとは異なる。図2による実施形態における第1故障中継器S1,S2,S3が、第1信号回路41内で交互に直列接続され、故障状態及びその結果として第1故障中継器S1,S2,S3のうちの1つが開くことで第1信号回路41が開く。他方、図3による実施形態における第1故障中継器S1,S2,S3は、第1信号回路41と接地電位との間で互いに並列に配置されている。この場合、故障状態によって、第1故障中継器S1,S2,S3のうちの1つは閉じられる。この結果、第1信号回路41は接地電位になり、第1中継器R1を流れる電流は中断される。この目的のため、第1プルアップ抵抗器PU1は、第1信号回路41の正極と第1故障中継器S1,S2,S3との間に配置される。
【0045】
この機能はまた、第2信号回路42内にも供され、第2プルアップ抵抗器PU2と互いに並列に配置される3つの第2故障中継器S4,S5,S6によって実現される。第2故障中継器S4,S5,S6の1つ又は複数はバッテリーシステム1の故障状態では、第2信号回路42を接地電位にするために閉じられる。その結果、第2中継器R2を流れる電流は中断される。
【0046】
回路の機能は、故障中継器S1,S2,S3,S4,S5,S6の1つ又は複数によって生成されるプルアップ/プルダウン信号を中継器信号に変換することを必要とすることに留意して欲しい。ハードウエア部品を用いてこれを実現するための回路の詳細は、当業者には十分知られているので、ここでは具体的に説明しない。
【符号の説明】
【0047】
PU1 第1プルアップ抵抗器、PU2 第2プルアップ抵抗器、R1 第1中継器、R2 第2中継器、R41 第1補助回路、R42 第2補助回路、S1 第1中継器、S2 他の第1中継器、S3 他の第1中継器、S4 第2中継器、S5 他の第2中継器、S6 他の第2中継器、1 バッテリーモジュール、2 出力端子、21 極、22 極、3 断路器、301 第1スイッチ、302 第2スイッチ、303 第3スイッチ、31 第1保持コイル、32 第2保持コイル、41 第1信号回路、42 第2信号回路、5 DC/DC変換器、6 制御中継器、61 制御端子。
図1
図2
図3