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特許7026245鎮痛活性を有するポリペプチドおよびその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】鎮痛活性を有するポリペプチドおよびその応用
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20220217BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20220217BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220217BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
A61K38/10
A61P25/04
A61P29/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020544084
(86)(22)【出願日】2018-05-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 CN2018085275
(87)【国際公開番号】W WO2019095639
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】201711122000.9
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518325921
【氏名又は名称】南京安吉生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANJING ANJI BIOLOGICAL TECHNOLOGY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】Level 6,Building A7,Hongfeng Sci-Tech Park,Kechuang Rd,Eco-Tech Development Zone,Nanjing City,Jiangsu Province 210000(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】シュー ハンメイ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ チェン
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY, 2005, Vol.280, No.1, p.80-87
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/08
A61K 38/10
A61K 38/12
A61P 25/04
A61P 29/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドI:Gly-Ser-Cys-Ser-Thr-Pro-Pro-d{Cys}-Val-Leu-Tyr-Ser、
ポリペプチドII:Gly-Ser-Cys-Ser-Thr-Pro-Pro-Ser-Ala-Val-Leu-Tyr-Cys、または
ポリペプチドIII:Lys-Cys-Ser-Thr-Pro-Pro-Asp-Ala-Val-Leu-Tyr-Cys
アミノ酸配列を有し、前記各ポリペプチド配列における2つのシステインの間で、1対のジスルフィド結合が形成されることを特徴とする鎮痛活性を有するポリペプチド、またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項2】
痛みを予防および/または治療するための医薬品の製造における請求項に記載のポリペプチドの使用
【請求項3】
その有効成分は請求項に記載のポリペプチドであることを特徴とする痛みを予防および/または治療するための医薬品
【請求項4】
前記痛みは、物理的および化学的刺激、病理学的または神経障害性疼痛を含むことを特徴とする請求項に記載の痛みを予防および/または治療するための医薬品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医薬品の分野に属し、より具体的には、鎮痛活性を有するポリペプチドおよびその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
痛み発生プロセスは複雑であり、侵害受容器、伝達神経、疼痛の中枢などの要因が関与している。痛みを引き起こす主な原因は次のとおりである。(1)一連の外部の機械的刺激および炎症反応に伴う組織の局所浮腫は、神経終末を圧迫して痛みを引き起こす。(2)物理的および化学的刺激は、感覚ニューロンを介して疼痛の中枢を興奮させ、痛みを引き起こす。(3)末梢神経への病理学的損傷は交感神経線維を刺激し、最終的に大脳皮質の過度の興奮を刺激し、神経障害性疼痛を引き起こす。(4)生体が外部から刺激を受けると、損傷した細胞または侵害受容器によって放出される発痛物質が局所的な受容器を刺激し、中枢神経系を興奮させて痛みを引き起す。
【0003】
初期の鎮痛剤は、非ステロイド類(アスピリン)、オピオイド受容体類(コノトキシン)、他の補助鎮痛剤(抗けいれん薬)に大別できる。それらは、慢性疼痛、神経障害性疼痛、炎症に良い効果があるが、制限性や副作用は常にボトルネックの問題であり、あまり改善されていない。例えば、アスピリンは人間の循環器系、特に消化器系および造血系に大きなダメージを与え、コノトキシンは重度の中毒性、耐性、呼吸困難などの一連の有害作用があり、抗けいれん薬のアレルギーおよび副作用もあまり改善されていない。新しいターゲットに対する鎮痛剤を見つけたり、新しい構造の化合物を創製して最適化したりすることは、製薬業界の労働者が緊急に解決すべき問題である。従来の鎮痛剤と比較して、イオンチャネルに作用する鎮痛ポリペプチドは、その幅広い供給源、小さな毒性と副作用、長い半減期、および明らかな効果などの特性により、研究者に新しい光をもたらした。生体膜イオンチャネル(ion channels of biomembrane)は、細胞膜の脂質二重層を貫通し、かつ中央に親水性の孔を有する膜タンパク質の一種であり、神経、骨格筋、心筋細胞などにおける生体電気の生成の基盤となっている。このチャネルは、受容器の電位発生、神経興奮伝導や中枢神経系調節などの様々な生命活動と密接に関連し、かつ高い選択性を伴っている。特定の生体膜イオンチャネルにより、1つまたはいくつかの特定のイオンのみが高張になり、よって、ナトリウムイオンチャネル、カリウムイオンチャネル、カルシウムイオンチャネルや酸感受性イオンチャネルなどに分けることができる。一般的にCa2+イオンとKイオンは細胞膜の内外でバランスを取り、中枢内のカリウムイオンとナトリウムイオンの濃度を調整することで、ニューロンの興奮性を抑えることができ、これは中枢神経系が中枢神経の鎮痛効果を発揮するメカニズムでもある。一方で、Naイオンチャネルの活性は、痛覚衝動の形成と伝達を決定し、多くの鎮痛剤は、電位依存性ナトリウムイオンチャネルを抑制することにより、痛覚興奮経路を遮断する。近年来、痛みの分子メカニズムに関する研究の深化とともに、研究者たちは、イオンチャネルの構造変化と生体が痛みを生み出すかどうかということが密接に関連しており、ここで、ナトリウムイオンチャネル(Na)が最も重要な役割を果たすことを発見した。現代の分子生物学の研究により、このサブタイプNa1.7は、痛みを治療する新しいターゲットとして、正常な生理学的機能を発揮すると、興奮性細胞を脱分極させ、信号分子を灰白質後角からシナプスを介して侵害受容器に伝達し、最終的に生体に疼痛を発生せることができる、ということが示されている。動物毒素には、イオンチャネルに作用するポリペプチドがたくさんあり、開発の余地が大きい。徹底的に研究されているいくつかのポリペプチド構造には、Scoropendra subspinipes mutilansから抽出されたμ-SLPTXSsm6a、Buthus martensiiから抽出されたBmKAGAP、Ornithoctonus huwenaから抽出されたHWTX-I、ブラックマンバヘビから抽出されたMambalginsなどが含まれる。
【0004】
コノトキシンポリペプチドの研究は常にこの分野のホストポットであり、例えば、中国特許出願番号が201480082283.7、出願公開日が2017年5月31日である特許文献にはコノトキシンポリペプチドκ-CPTx-bt105、その製造方法および応用が開示されている。前記コノトキシンポリペプチドは16個のアミノ酸で構成され、分子量が1626.62ダルトンで、全配列がGICCVDDTCTTHSGCLである。前記コノトキシンポリペプチドは、カリウムイオンチャネル電流に対する抑制効果と鎮痛効果を有する。しかしながら、巻貝からコノトキシンポリペプチドを抽出する現在の方法は比較的複雑であり、しかもコノトキシンポリペプチドに特定の副作用があり、身体的および精神的依存が深刻となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存のコノトキシンポリペプチドの副作用を考慮して、本発明は、鎮痛活性を有するポリペプチドおよびその応用を提供し、コノトキシンと比較して構造安定性および鎮痛活性が大幅に改善され、生体の損傷などの有害作用が弱い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明で採用される技術的解決手段は次のとおりである。
鎮痛活性を有するポリペプチド、またはその薬学的に許容される塩を提供し、そのうち、前記ポリペプチドは、アミノ酸配列X-X-Cys-Ser-Thr-Pro-Pro-X-X-Val-Leu-Tyr-Xを有する。
【0007】
さらに、前記のXはGlyまたは欠失で、前記のXはSerまたはLysのいずれかであり、前記のXはd-CysまたはSerまたはAspのいずれかで、前記のXはAlaまたは欠失であり、前記のXはCysまたはSerである。
【0008】
さらに、前記のポリペプチドアミノ酸配列は、
【0009】
ポリペプチドI:Gly-Ser-Cys-Ser-Thr-Pro-Pro-d{Cys}-Val-Leu-Tyr-Ser、
【0010】
ポリペプチドII:Gly-Ser-Cys-Ser-Thr-Pro-Pro-Ser-Ala-Val-Leu-Tyr-Cys、または
【0011】
ポリペプチドIII:Lys-Cys-Ser-Thr-Pro-Pro-Asp-Ala-Val-Leu-Tyr-Cysである。
【0012】
さらに、前記の各ポリペプチド配列における2つのシステインの間で、1対のジスルフィド結合が形成される。
【0013】
さらに、鎮痛効果を有するポリペプチド、または当該ポリペプチドの薬学的に許容される塩を提供し、そのうち、前記ポリペプチドは、上記の配列に基づいて1つ以上のアミノ酸を削除、置換または添加することによって得られる配列を有する。
【0014】
痛みを予防および/または治療するための製品の製造における上記のポリペプチドの応用である。
【0015】
痛みを予防および/または治療するための製品であって、その有効成分は上記のポリペプチドである。
【0016】
上記の製品は具体的には薬物であり得る。
【0017】
必要に応じて、上記の薬物に1つ以上の薬学的に許容される補助材料を添加することができ、前記補助材料は、製薬分野における一般的な希釈剤、賦形剤、充填剤、接着剤、湿潤剤、吸収促進剤、界面活性剤、潤滑剤や安定剤などを含む。
【0018】
本発明の薬物は、注射剤、乾燥粉末注射剤、錠剤または顆粒剤などの様々な形態として製造することができる。上記の様々な剤形の薬物はすべて、製薬分野における従来の方法に従って製造することができる。
【0019】
さらに、前記の痛みは、物理的および化学的刺激、病理学的または神経障害性疼痛を含む。
【0020】
現在の臨床では、抗炎症鎮痛剤およびオピオイド鎮痛剤を主とする。抗炎症鎮痛剤は臨床で、主に頭痛、歯痛、筋肉および関節痛、月経困難症などの慢性鈍痛に使用され、これらの薬物は中毒になりにくく、臨床診療で広く使用される。オピオイド鎮痛剤(麻薬性鎮痛薬)は、痛みを解消または軽減し、痛みに対する感情的反応を変化させることができる薬物であるが、便秘、眠気、感覚鈍麻、吐き気、嘔吐、呼吸抑制や依存性などの特定の副作用があり、身体的および精神的依存が深刻となるため、その広範な臨床応用が厳しく制限される。麻薬性鎮痛剤に加えて、中枢神経系に作用する多くの薬物、例えば、抗うつ薬、抗けいれん薬、神経遮断薬などは、痛みを制御するために応用され、ある程度、直接的な鎮痛効果または潜在的な鎮痛活性を有するが、副作用は用量の増加に伴ってより深刻になる。例えば、アスピリンは人間の循環器系、特に消化器系および造血系に大きなダメージを与え、コノトキシンは重度の中毒性、耐性、呼吸困難などの一連の有害作用があり、抗けいれん薬のアレルギーおよび副作用もあまり改善されていない。従って、本発明は、コンピュータ三次元シミュレーション技術を利用して、多数の伝統的な構造への分析および薬理学的実験に基づいて、独立して設計されたポリペプチド構造がより強い鎮痛活性およびより低い中毒性副作用を有するものである。本発明では、既存の様々な鎮痛ポリペプチド構造を分析することにより、三次元構造を利用して、イオンチャネルに作用する完全に新しい構造の鎮痛ポリペプチドを独立して設計した。様々な実験モデルにより、コノトキシンと同じ鎮痛効果を有し、かつ耐性などの有害作用が低く、開発の見通しが高いことが検証される。
【発明の効果】
【0021】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は次のとおりである。
【0022】
(1)本発明のポリペプチドは簡単な構造を有し、合成、分離および精製が容易であり、コノトキシンの鎮痛活性を効果的に保持および改善する。
【0023】
(2)本発明のポリペプチドは有害作用および中毒性副反応が弱い。
【0024】
(3)本発明に係るポリペプチドは、各実験モデルでの鎮痛効果が良好であり、具体的には、マウスの疼痛閾値を有意に増加させ、マウスの高温に耐える時間を延長し、マウスの自発運動や興奮性などの有害作用がいずれも正常値よりも低いという効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、具体的な実施例と組み合わせて、本発明をさらに説明する。以下の説明は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を他の形態で限定するものではなく、当業者であれば、上記に開示した技術的内容を利用して同等に変化する等価実施例に変更することができる。本発明の解決手段の内容から逸脱することなく、本発明の技術的本質に基づいて以下の実施例に対して行われたあらゆる簡単な修飾または同等の変更は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【実施例1】
【0026】
本発明は、鎮痛活性を有するポリペプチド、または当該ポリペプチドの薬学的に許容される塩に関し、そのうち、前記ポリペプチドのコア構造はアミノ酸配列X-X-Cys-Ser-Thr-Pro-Pro-X-X-Val-Leu-Tyr-Xを有し、ここで、XはGlyまたは欠失であり、XはSerまたはLysのいずれかであり、Xはd-CysまたはSerまたはAspのいずれかであり、XはAlaまたは欠失であり、XはCysまたはSerであり得る。具体的には、このようなポリペプチドのアミノ酸配列は、
【0027】
ポリペプチドI:Gly-Ser-Cys-Ser-Thr-Pro-Pro-d{Cys}-Val-Leu-Tyr-Ser、
【0028】
ポリペプチドII:Gly-Ser-Cys-Ser-Thr-Pro-Pro-Ser-Ala-Val-Leu-Tyr-Cys、または
【0029】
ポリペプチドIII:Lys-Cys-Ser-Thr-Pro-Pro-Asp-Ala-Val-Leu-Tyr-Cysである。
【0030】
または、鎮痛効果を有するポリペプチドを提供し、前記ポリペプチドは、上記の配列に基づいて、1つ以上のアミノ酸を削除、置換または添加することにより得られる配列を有する。配列における2つのシステインの間で、1対のジスルフィド結合が形成され、このようなポリペプチドは、物理的および化学的刺激、病理学的および神経障害性疼痛に対して良好な抑制効果を有する。
【0031】
実施例では、主に、当該ポリペプチドI、ポリペプチドIIおよびポリペプチドIIIを対象として、その鎮痛活性を研究する。当該ポリペプチドの合成は南京ゲンスクリプトバイオテック有限公司に委託され、純度は95%以上である。
【0032】
鎮痛ホットプレート実験における鎮痛ポリペプチドの痛みへの抑制効果
【0033】
体重20±2gの昆明メスマウスを用意する。室内温度は22~25℃に維持される。55℃の恒温金属板にマウスを置き、一定の温度(±0.5℃以内で変化)で、マウスが金属板に触れた時刻から、それが後ろ足をなめるかジャンプするまでの時間を疼痛閾値の指標とする。
【0034】
1.実験動物:昆明メスマウス
【0035】
実験用マウスのケージ換気システムにおいてマウスを飼育する。飼育温度は約23℃であり、正常な昼夜交替で生かせる。すべての実験動物は自由に摂食する。購入した実験動物は、実験環境に適応するように本実験室で3~5日間飼育する。すべての動物実験は8:00~18:00で行われ、実験動物は手術後、いずれも単一のケージで飼育する。
【0036】
2.実験装置:電子天秤、ホットプレートテスター、ケージ換気システム、1mLのシリンジ、Ultra超純水システム
【0037】
3.実験試薬:コノトキシン、0.9%のNaCl溶液、ポリペプチドI、ポリペプチドII、ポリペプチドIII。
【0038】
本発明で使用されるコノトキシンポリペプチド(タイピングがBuIAである)構造はGly-Cys-Cys-Ser-Thr-Pro-Pro-Cys-Ala-Val-Leu-Tyr-Cysであり、そのうち、C1-C3は環を形成し、C2-C4は環を形成する。
【0039】
4.実験方法:実験の前に基本疼痛閾値を測定し、2回測定して平均値を計算し、測定する場合、5分間の間隔をあける。反応潜時が5s未満または30sを超えるマウスを除外する。マウスの足のやけどを防ぐために、カットオフ時間を60sに設定する。適格なマウスを、乱数表に従って、陰性対照群、陽性対照群およびコノトキシン群に分け、群当たり10匹とする。
【0040】
合計で、生理食塩水、コノトキシン、ポリペプチドI、ポリペプチドIIおよびポリペプチドIIIの5群があり、群当たり10匹とする。そのうち、生理食塩水群は0.9% のNaCl溶液で、陰性対照群として使用され、コノトキシン群は用量が1 μg/kgで、陽性対照群として使用され、ポリペプチド群は実験群として投与され、投与量はすべて2 nmol/kgとする。投与方法は腹腔内注射である。
【0041】
投与後の15、30、45、60、75、90 minで、それぞれマウスの疼痛閾値を記録し、実験は独立して3回繰り返され、結果はx±Sで表され、かつ統計的T検定を実行し、生理食塩水の陰性群と比較して、*P<0.05の場合は有意差があることを表し、**P<0.01の場合は有意差が非常に高いことを表し、コノトキシンの陽性群と比較して、^P<0.05の場合は有意差があることを表し、^^P<0.01の場合は有意差が非常に高いことを表す。投与前後のホットプレートに対するマウスの耐性時間の変化を各群内で比較し、各群のマウスの疼痛閾値を群間で比較する。投与後の可能な最大鎮痛率を計算し、薬物の鎮痛効果を評価する。
【0042】
【数1】
【表1】
【0043】
注:生理食塩水群と比較して、*P<0.05、**P<0.01であり、コノトキシンの陽性対照群と比較して、^P<0.05、^^P<0.01である
【0044】
5.実験結果:
【0045】
5.1マウスの熱閾値の検出結果
【0046】
ポリペプチド群はホットプレート鎮痛動物モデルでいずれも鎮痛効果を発揮でき、結果を表1に示し、生理食塩水の陰性群と比較して、ポリペプチドI、II、III群はいずれもマウスの熱閾値を効果的に高めることができる。ポリペプチドIIの疼痛閾値の増加レベルは、生理食塩水群およびコノトキシン群よりも明らかに高い。実験結果は統計的有意性がある。
【0047】
5.2PMAP評価結果
【0048】
PAMPは約47.57%と計算されており、コノトキシン群と比較して鎮痛効果に大きな差はなく、優れた鎮痛効果を有する。
【実施例2】
【0049】
熱放射テールフリック実験における痛みに対する鎮痛ポリペプチドの抑制効果
【0050】
体重20±2gの昆明マウスは、メスとオスを半々にする。室内温度は22-25℃に維持される。小型スポットライトで特定の強度のビームを生成し、痛みを引き起こすためにレンズを通してマウスの尾に集光照射する。実験中、マウスの尾をテールフリック式痛覚測定装置のテールスロットに置き、光点をマウスの尾の中間下部の3分の1の部位に当てるようにし(実験の前に、ペンで色を塗ってマークし、毎回同じ位置で痛みを測定するようにする)、熱放射の開始からテールフリック反応の出現までの潜時(TFL、Tail Flick Latency)を痛み反応の指標とする。
【0051】
投与前に、まず、すべてのマウスの基本疼痛閾値を測定し、反応潜時が1s未満または3sを超えるマウスを除外し、マウスの尾のやけどを防ぐために、カットオフ時間を10sに設定する。基本疼痛閾値が基準を満たしているマウスは、乱数表に従って、陰性対照群、陽性対照群、コノトキシン群に分けられ、群当たり10匹とする。
【0052】
生理食塩水、コノトキシン、ポリペプチドI、ポリペプチドIIおよびポリペプチドIII群として、群当たり10匹とする。そのうち、生理食塩水群は陰性対照群として使用され、コノトキシン群は用量が1 μg/kgで、陽性対照群として使用され、ポリペプチド群の投与量はすべて2 nmol/kgである。投与方法は側脳室への投与である。
【0053】
投与後の5、15、30、45、60、90、120 minで、それぞれ疼痛閾値を記録し、結果はx±Sで表され、投与前後の熱放射に対するマウスの耐性時間の変化を群内で比較し、各群のマウスの疼痛閾値を群間で比較する。投与後の疼痛閾値の増加率を計算し、薬物の鎮痛効果を評価する。
【0054】
【数2】
【表2】
【0055】
注:生理食塩水群と比較して、*P<0.05、**P<0.01であり、コノトキシンの陽性対照群と比較して、^P<0.05、^^P<0.01である
【0056】
実験結果:
【0057】
1.マウスの熱閾値の検出結果
【0058】
ポリペプチド群はマウスの熱放射テールフリック動物モデルでいずれも鎮痛効果を発揮でき、結果を表2に示し、生理食塩水の陰性群と比較して、ポリペプチド群はいずれもマウスの熱閾値を効果的に高めることができる。ある時間帯で、ポリペプチドIは2 nmol/kgの用量でコノトキシン群と非常に高度な有意差(^^P<0.01)を比較し、ある時間帯で、ポリペプチドIIIは2 nmol/kgの用量で生理食塩水群と非常に高度な有意差(**P<0.01)を比較する。実験結果は統計的有意性がある。
【0059】
2.PMAP評価結果
【0060】
PAMPは約38.32%と計算されており、コノトキシン群と比較して鎮痛効果に大きな差はなく、優れた鎮痛効果を有する。
【実施例3】
【0061】
オープンフィールド実験におけるマウスの自発活動と探索行動に対する鎮痛ポリペプチドの影響と作用
【0062】
1.材料と方法
【0063】
1.1実験動物
【0064】
昆明メスマウスは60匹とする。
【0065】
飼育条件:室温(23±1)℃、湿度(50±5)%、蛍光灯で照明し、明暗サイクル12/12(照明時間が7:00~19:00)とし、動物は自由に摂食する。
【0066】
1.2実験器械
【0067】
コンピュータのリアルタイム監視および分析システムのSMART VIDEO-TRACKING(米国、SMARTv3.0.02)を利用する。当該器械は主に4つの40cm×40cm×40cmの実験用オープンボックスで構成され、記録システムに接続されたカメラがボックスの上部の中央に配置され、システムによってマウスのリアルタイム画像を分析し、オープンフィールドでのマウスの行動データを取得する。
【0068】
2.実験方法:
【0069】
実験を開始する前に、各マウスに対して統計学的ボディマス測定を実行し、不適格なマウスを除外し、乱数表に従って、陰性対照群、陽性対照群、ポリペプチドI、ポリペプチドIIおよびポリペプチドIII群に分ける。そのうち、生理食塩水群は陰性対照群として0.9% NaCl溶液を注射し、コノトキシン群は用量が1 μg/kgで、陽性対照群として使用され、ポリペプチド群の投与量はすべて2 nmol/kgである。投与方法は腹腔内注射である。
【0070】
まず、オープンフィールド装置が清潔で異臭がないことを確認する。マウスの番号、日付、状態をオペレーティングソフトウェアに記録し、次に、実験動物を事前、行動実験室の特別な臨時ケージに送り、約3時間環境に適応させ、動物の緊張を緩和する必要があり、そして、マウスをケージから取り出して(マウスの尾部を実験者に向けるようにする)、装置の中央に置いてから装置の上部カバーをすばやく静かに閉じ、ビデオ記録システムを開き、オープンフィールドでのマウスの活動を記録する。合計時間は5minである。観察後、75%エタノールを使用してボックスの内壁と底面を適時に洗浄し、前回試験用動物が残る情報(動物の便、尿、匂いなど)が次の試験結果に影響を与えないようにする。最後に、今回のマウスをケージ内に戻し、次のマウスのテストを開始する。すべてのマウスを観察した後、1hと24hの間隔で、上記の手順に従って、関連する指標を再度計測する。Origin 8.0ソフトウェアを使用してマウスの中央滞在時間、運動時間、壁登り回数および乗り越えた格子の数を最終データとして統計する。
【0071】
3.実験結果:
【表3】
【0072】
注:生理食塩水群と比較して、*P<0.05、**P<0.01であり、コノトキシンの陽性対照群と比較して、^P<0.05、^^P<0.01である
【表4】
【0073】
注:生理食塩水群と比較して、*P<0.05、**P<0.01であり、コノトキシンの陽性対照群と比較して、^P<0.05、^^P<0.01である
【表5】
【0074】
注:生理食塩水群と比較して、*P<0.05、**P<0.01であり、コノトキシンの陽性対照群と比較して、^P<0.05、^^P<0.01である
【表6】
【0075】
注:生理食塩水群と比較して、*P<0.05、**P<0.01であり、コノトキシンの陽性対照群と比較して、^P<0.05、^^P<0.01である
【表7】
【0076】
注:生理食塩水群と比較して、*P<0.05、**P<0.01であり、コノトキシンの陽性対照群と比較して、^P<0.05、^^P<0.01である
【表8】
【0077】
注:生理食塩水群と比較して、*P<0.05、**P<0.01であり、コノトキシンの陽性対照群と比較して、^P<0.05、^^P<0.01である
【表9】
【0078】
注:生理食塩水群と比較して、*P<0.05、**P<0.01であり、コノトキシンの陽性対照群と比較して、^P<0.05、^^P<0.01である
【0079】
オープンフィールド実験におけるポリペプチドI、ポリペプチドIIおよびポリペプチドIIIの各指標は、生理食塩水群と比較して有意差がなく、コノトキシン群と比較してそのほとんどは有意差があり、それによって、ポリペプチドI、ポリペプチドIIおよびポリペプチドIIIはコノトキシンよりも低い副反応効果を有し、マウスの自発活動などの不良状況を顕著に改善しうることが説明された。詳細は表3~9を参照する。実験結果は統計的有意性がある。
【実施例4】
【0080】
強制水泳実験におけるマウスの運動疲労耐性に対する鎮痛ポリペプチドの影響と作用
【0081】
1.材料と方法
【0082】
1.1実験動物
【0083】
昆明メスマウスは40匹とする。
【0084】
室温18~22℃、12h(6:00~18:00)の明るい環境および12h(18:00~6:00)の暗い環境で、自由に摂食して飼育し、1週間環境に事前に適応させた後、18~22gのマウスを20匹選択して本格的な実験(すべての実験は19:00~24:00で実行される)に使用される。
【0085】
1.2.実験装置
【0086】
ビーカー、恒温水槽、ストップウォッチ、カウンター、AONI ANC Core HD1080P高解像度カメラなどの実験装置は、すべて本実験室で作られる。
【0087】
1.3.方法
【0088】
実験の前に、25匹のマウスを乱数表に従って陰性対照群、陽性対照群、ポリペプチドI、ポリペプチドIIおよびポリペプチドIII群に分ける。そのうち、生理食塩水群は陰性対照群として0.9% NaCl溶液を注射し、コノトキシン群は用量が1 μg/kgで、陽性対照群として使用され、ポリペプチド群の投与量はすべて2 nmol/kgである。投与方法は腹腔内注射である。
【0089】
作業者は、直径10cm、水深10cm、水温23~25℃の温水で満たされた丸いビーカーにマウスを入れ、カメラシステムを使用して5min内の動物の運動状態時間を記録する。運動状態とは、動物が自発的に足掻き、体が浮いてうねっているという状態を意味する。すべてのマウスを観察した後、1hと24hの間隔で、上記の手順に従って、マウスの水中での運動時間を再度計測する。
【0090】
2.実験結果
【表10】
【0091】
注:生理食塩水群と比較して、*P<0.05、**P<0.01であり、コノトキシンの陽性対照群と比較して、^P<0.05、^^P<0.01である
【0092】
運動持久力の改善は、抗疲労能力の強化の最も直接的な兆候であり、水泳時間の長さは動物の運動疲労の程度を反映でき、運動時間が短いほど、毒性と副作用が大きくなる。強制水泳実験におけるポリペプチド群のデータは、生理食塩水群と比較して有意差がなく、コノトキシン陽性群と比較してそのほとんどは有意差があり、いくつかは非常に高度な有意差がある。ポリペプチドI、II、IIIはコノトキシンよりも低い毒性副反応効果を有することが説明された。詳細は表10を参照する。実験結果は統計的有意性がある。
【実施例5】
【0093】
尾懸垂実験におけるマウスの抗うつ効果に対する鎮痛ポリペプチドの影響と作用
【0094】
1.材料と方法
【0095】
1.1実験動物
【0096】
昆明メスマウスは50匹とする。
【0097】
室温18~22℃、12h(6:00~18:00)の明るい環境および12h(18:00~6:00)の暗い環境で、自由に摂食して飼育し、1週間環境に事前に適応させた後、18~22gのマウスを20匹選択して本格的な実験(すべての実験は19:00~24:00で実行される)に使用される。
【0098】
1.2.実験装置
【0099】
側面に立って、周囲の壁と底が黒い尾懸垂ボックス(20 cm×20 cm×30 cm)、ストップウォッチ、カウンター、AONI ANC Core HD1080P高解像度カメラを含む実験装置は、すべて本実験室で作られる。
【0100】
1.3.方法
【0101】
実験の前に、20匹のマウスを乱数表に従って陰性対照群、陽性対照群、ポリペプチドI、II、III群に分ける。そのうち、生理食塩水群は陰性対照群として0.9% NaCl溶液を注射し、コノトキシン群は用量が1 μg/kgで、陽性対照群として使用され、ポリペプチド群の投与量はすべて2 nmol/kgである。投与方法は腹腔内注射である。
【0102】
作業者は、マウスの尾の先端の1/3部位をテープで尾懸垂ボックスに吊り下げ、頭がボックスの底から約10cm離れ、カメラに面するようにし、カメラシステムを使用して動物の6min内の不動状態潜時および4min内の不動状態持続時間を記録する。不動状態とは、動物が自発的な足掻きをあきらめ、体が吊り下げられてうねっていないという状態を意味する。
【0103】
2.実験結果
【表11】
【0104】
注:生理食塩水群と比較して、*P<0.05、**P<0.01であり、コノトキシンの陽性対照群と比較して、^P<0.05、^^P<0.01である
【0105】
マウスは吊り下げられて逃げようとするが、逃げられないため、足掻きをあきらめ、独特のうつかつ不動の状態になることにより、実験中、動物の不動時間を記録してうつ状態を反映し、尾懸垂運動時間が短いほど、毒性と副作用が大きくなる。尾懸垂実験におけるポリペプチドI、IIおよびIII群のデータは、生理食塩水群と比較して有意差がなく、コノトキシン陽性群と比較してそのほとんどは有意差がある。鎮痛ポリペプチドI、II、IIIはコノトキシンよりも低い毒性副反応効果を有することが説明された。詳細は表11を参照する。実験結果は統計的有意性がある。
【実施例6】
【0106】
ホルマリンによる疼痛誘発実験における疼痛抑制率に対する鎮痛ポリペプチドの影響
【0107】
急性組織損傷による持続性疼痛をシミュレートする。希釈したホルマリン溶液を動物の片足の背側に皮下注射すると、安静時の脚の屈曲、運動中の跛行、足舐めなどの動物の行動変化が引き起こされる。これらの行動の程度(足舐め時間など)は、ホルマリンの濃度に正比例し、一般的には痛みの象徴と考えられる。また、毛づくろい、探索や運動活動などの他の行動もホルマリン注射による影響を受ける。
【0108】
体重20±2gの昆明マウスは、メスとオスを半々にする。室内温度は23~24℃に維持される。乱数表に従ってマウスを群別し、陰性対照群、陽性対照群およびポリペプチド群をそれぞれ設定し、群当たり10匹とする。そのうち、0.9%のNaCl溶液群は陰性対照群として使用され、コノトキシン群は用量が1 μg/kgで、陽性対照群として使用され、鎮痛ポリペプチド群I、IIおよびIIIの投与量は0.2 nmol/匹である。各群の実験用マウスに5min投与した後、1mLシリンジを使用してマウスの右後足裏に5%ホルマリン(フォルマザン含有量5%)溶液を20 μL皮下注射し、注射直後、マウスを大きなガラスビーカーに入れて1h以内の疼痛反応を観察し、右足を舐める時間を行動反応指標とする。ビーカーの後ろに鏡をプラットフォームに対して約30°の角度で置き、同時に、正面と鏡面から、ストップウォッチを使用して、注射された足を5sごとに舐める、噛む、振る累計時間を記録し、連続的に60min観察して記録し、それぞれフェーズI(0-10min)およびフェーズII(10-60min)とし、ホルマリンによる炎症性疼痛誘発モデルを使用して試薬の急性投与後の鎮痛効果を検討する。陽性対照群およびコノトキシンのフェーズIおよびフェーズIIの疼痛反応に対する抑制率をそれぞれ計算する。
【数3】
【0109】
実験結果:
【表12】
【0110】
注:陰性群と比較して、*P<0.05、**P<0.01であり、陽性対照群と比較して、^P<0.05、^^P<0.01である
【0111】
ホルマリンによる疼痛誘発実験における自己設計された鎮痛ポリペプチドのデータは、生理食塩水群と比較して有意差があり、コノトキシン陽性群と比較してそのほとんどは有意差がある。ポリペプチドI、IIおよびIIIはすべて優れた鎮痛効果を有することが説明される。詳細は表11を参照する。実験結果は統計的有意性がある。
【実施例7】
【0112】
がん浸潤性疼痛モデルCIPにおける神経痛に対する鎮痛ポリペプチドの影響と作用
【0113】
1.材料
【0114】
1.1.動物
【0115】
体重25~30gのオスBALB/cマウスを数匹用意する。
【0116】
1.2.実験装置および試薬
【0117】
vonFeryモノフィラメント、マイクロシリンジ、5 mg/mLのポリペプチドI、II、III溶液、生理食塩水。
【0118】
1.3方法
【0119】
BALB/cマウスの右坐骨神経を露出し、5×10 Meth A肉腫細胞を含む腹水を、後部二頭筋腱のブランチから離れた坐骨神経転子近くの近位神経に注射し、傷口を閉じ、左側に偽手術を行い、同一体積の生理食塩水を注入する。
【0120】
1.3.1熱感受性テスト
接種後の4日目、7日目、10日目、14日目に、動物の熱放射刺激による足上げの潜時を観察し、熱放射の強度を、通常のマウスの足上げ潜時が(10±2)秒であることを基準とするように調整する。
【表13】
【0121】
1.3.2機械的感度テスト
接種後の4日目、7日目、10日目、14日目に、von Feryモノフィラメントを使用して両足の機械的感度をテストし、フリップテスト法を使用して50%足足引っ込め反応が現れる時の閾値を測定し、テストは0.4gから始まる。
【0122】
1.3.3Gross行動
【0123】
接種後の4日目、7日目、10日目、14日目に、熱感受性および機械的痛覚過敏などの行動が起こる前に、まず、自発痛と下垂足などが現れ、10分間以内に右後足を上げる累計時間を計算する。
【0124】
2.結果
【0125】
すべてのデータはM±SDで表され、一元配置分散分析を使用する。
【0126】
2.1熱感受性の亢進の発生
【0127】
熱放射刺激による足上げの潜時は、接種後の10日目に明らかに8秒短縮され、接種後の14日目に明らかに15秒延長され、そのうち、ポリペプチドI群は特に顕著である。
【0128】
2.2機械的感度の変化
【0129】
痛覚過敏症や熱感受性過敏症の症状が現れ、同時に自発痛も観察される。10日目にvon Feryモノフィラメントの機械的痛覚過敏を検出できるが、14日目に、マウスの機械的痛覚過敏が低減するようになる。群間に差はない。
【0130】
2.3自発痛神経症候群
【0131】
接種後の10日目に、一部のマウスに下垂足が観察され、右後足上げの累計持続時間がわずかに増加するが、14日目に、ポリペプチドI、II群で左足上げの行動が明らかに観察される。
【実施例8】
【0132】
パクリタキセルによる疼痛誘発マウスモデルにおける痛みに対する鎮痛ポリペプチドの抑制効果
【0133】
1.材料
【0134】
1.1.動物
【0135】
7週齢の体重20~25gのddYオスマウスを用意する。
【0136】
1.2.実験装置および試薬
【0137】
フィラメント機械的痛み測定装置、細いフィラメント(0.0688gの強度に相当)、太いフィラメント(1.4798gの強度に相当)、パクリタキセル、ポリペプチドI、II、III、ロキソプロフェン、生理食塩水。
【0138】
1.3方法
【0139】
1.3.1動物の群別
【0140】
マウスを温度(22±1)℃、相対湿度55%±10%の動物室内で1週間飼育して試験に使用する。36匹のマウスをモデル群(パクリタキセルのみ)、ブランク対照群(パクリタキセルなし)、ロキソプロフェン群およびポリペプチドI、II、III群に分け、そのうち、パクリタキセルの投与の3日前に、それぞれロキソプロフェン群およびポリペプチド群に対応する薬物を7日間投与する。群当たり6匹のマウスがある。
【0141】
1.3.2実験過程
【0142】
パクリタキセルによる疼痛誘発モデルの作製:マウスに10mg/kgのパクリタキセルを腹腔内注射してモデル化する。
【0143】
マウスの痛み行動学的テスト:3つのコンパートメントに分割された金属メッシュの上にマウスを置き、15分間静置させ、後足の足底部の機械的刺激応答を測定し、まず細いフィラメントで異常痛を評価し、そして太いフィラメントで痛覚過敏の程度を評価する。刺激応答は5回で、合計10ポイントである。評価基準(0ポイント:足をすばやく持ち上げる動作、2ポイント:足を激しく振ったり舐めたりする動作。測定時間はパクリタキセルの投与前および投与後の24、48、72、96時間とする)。
【0144】
2.実験結果
【0145】
測定データはM±SDで表され、群間の差はt検定で検定される。
【表14】
【0146】
2.1パクリタキセル投与後のマウスの痛み反応
【0147】
マウスに10mg/kgのパクリタキセルを腹腔内投与すると、異常痛と痛覚過敏は両方ともパクリタキセル投与後の24時間でピークに達し、その後、ゆっくりと軽減し、96時間後に投与前のレベルに戻る。投与前後の24時間の痛み関連スコアについて、異常痛は0.5±0.2、1.8±0.6であり、痛覚過敏は2.3±0.5、5.5±0.6である。
【0148】
2.2ロキソプロフェンとポリペプチド注射剤の治療効果
【0149】
異常痛への影響について、ポリペプチドI、II、III群はモデル群と比較して痛み関連スコアが顕著に低い(P<0.05)。ポリペプチド群はモデル群と比較して痛み関連スコアが減少傾向を示し、有意差がない。痛覚過敏への影響について、ロキソプロフェン、ポリペプチドI、II、III群はモデル群と比較して痛み関連スコアに有意差がない。
【実施例9】
【0150】
三叉神経疼痛閾値に対する鎮痛ポリペプチドの影響
【0151】
1.材料
【0152】
1.1.動物
【0153】
体重170~200gのSDラット(オスまたはメス)を用意する。
【0154】
1.2.実験装置および試薬
【0155】
機械的閾値試験機(Stoelting、Wood Dale公司、米国)、顕微鏡、ポリペプチドI、II、III、生理食塩水。
【0156】
1.3方法
【0157】
1.3.1動物モデルの作製(すべての操作は無菌条件で完了する)。
【0158】
1.3.2三叉神経痛誘発およびモデル動物の陽性基準
【0159】
実験の前に適応訓練を行う。このモデルの三叉神経痛誘発実験は、手術後の約2週間に、静かであり且つ室温の条件下で実施され、ラットに以下の反応のいずれか一項または一項以上が発生した場合、モデルが確立したと判断されうる:〔1〕刺激を与えると、急速な後退、回転などの回避動作を示し、ラットは、刺激物を回避するために丸くなってケージの壁に近づいたり、顔が刺激物に触れないように頭と顔を体の下に隠したりする。〔2〕顔を引っ掻き、具体的には、顔の刺激領域を少なくとも3回続けて引っ掻く動作を示す。〔3〕ラットはすぐに刺激物をつかんで攻撃する。
【0160】
1.3.3実験方法
【0161】
体重175~200gのSDラット(メスまたはオス)を60匹選択し、ランダムに6群に分ける:生理食塩水対照群(6匹)、50 ug/kgのポリペプチドI、II、III群にそれぞれ6匹、100 ug/kgのポリペプチドI、II、III群にそれぞれ6匹、300 ug/kgのポリペプチドI、II、III群にそれぞれ6匹である。手術後の2週間に痛覚過敏が発生すれば、各群の動物の腹腔内にポリペプチド注射剤50 ug/kg、100 ug/kg、300 ug/kg、生理食塩水0.1 mL/kgをそれぞれ注射した後、疼痛閾値を5時間連続して1時間ごとに測定し、疼痛閾値の変化を記録する。
【表15】
【0162】
2.実験結果
【0163】
実験データはM±SDで表され、ノンパラメトリックKruskal-Wallis検定の一元配置分散分析およびMann±Whitney u検定を使用して、時効用値の曲線下面積は台形法で計算され、2つの群間の時効用値の曲線下面積はt検定で計算される。P<0.05は統計的有意性があると見なされる。
【0164】
ラットは、手術の14日後に痛覚過敏が発生し、手術側の疼痛閾値が(0.38±0.04)gに低下し、手術の反対側が(0.43±0.04)g、偽手術群が12.5gの場合、ポリペプチドI、II、III注射溶液を50 ug/kg、100 ug/kg皮下注射した後、動物反応閾値が顕著に増加する。ポリペプチドI、II、III50 ug/kg群において、注射してから3時間後に、手術側の最高疼痛閾値は(2.3±0.5)gであり、反対側は(1.2±0.2)gであり、かつ1時間続く。ポリペプチドI、II、IIIの100 ug/kg群において、注射してから3時間後に、手術側の最高疼痛閾値は(7.4±0.9)gであり、反対側は(3.2±1.3)gであり、かつ手術側での作用は約8時間続く。その一方で、ポリペプチドI、II、IIIを300 ug/kg皮下注射した群では、疼痛閾値は顕著に増加しない。
【配列表】
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