(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/56 20060101AFI20220218BHJP
A61F 13/476 20060101ALI20220218BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
A61F13/56 110
A61F13/476
A61F13/15 144
(21)【出願番号】P 2019041017
(22)【出願日】2019-03-06
【審査請求日】2020-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】内田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】林 俊久
(72)【発明者】
【氏名】山本 なるみ
【審査官】武井 健浩
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3213494(JP,U)
【文献】特開2006-247088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向および幅方向を有するとともに、吸収体を有する吸収部と、前記吸収部の前記幅方向における両端部がそれぞれ前記幅方向の外方側に延出してなる一対のフラップ部とを有する吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、
前記吸収部の前方側に隣接するとともに所定の機能性部材を含む機能部を有し、且つ、前記一対のフラップ部の各々の前後方向中心部を通るフラップ部中央軸線から前記吸収性物品の前方側端部まで延在する前方側領域と、
前記前方側領域の前後方向長さよりも短い前後方向長さを有し、且つ、前記フラップ部中央軸線から前記吸収性物品の後方側端部まで延在する後方側領域と、を有しており、
前記前方側領域は、前記幅方向の中央部の非肌対向面において、
前記吸収体と少なくとも部分的に厚さ方向に重複し且つ前記前後方向に延在するように着衣固定用の粘着部が配置された粘着部配置領域と、
前記粘着部配置領域の前方側に隣接し且つ着衣固定用の粘着部が配置されていない粘着部非配置領域と、を有し、
さらに、前記粘着部配置領域は、前記粘着部非配置領域の前後方向長さよりも長い前後方向長さを有
し、
前記機能性部材が、前記厚さ方向において前記粘着部配置領域と重なっている、前記吸収性物品。
【請求項2】
前記機能部は、前記吸収部の幅方向両端部の各々よりも前記幅方向の外方側に延在する一対の幅広部を有し、
前記一対の幅広部の各々は、前記非肌対向面に着衣固定用の前方側粘着部を有する、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記機能性部材が、前記厚さ方向において前記前方側粘着部と重なっている、請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前後方向および幅方向を有するとともに、吸収体を有する吸収部と、前記吸収部の前記幅方向における両端部がそれぞれ前記幅方向の外方側に延出してなる一対のフラップ部とを有する吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、
前記吸収部の前方側に隣接するとともに所定の機能性部材を含む機能部を有し、且つ、前記一対のフラップ部の各々の前後方向中心部を通るフラップ部中央軸線から前記吸収性物品の前方側端部まで延在する前方側領域と、
前記前方側領域の前後方向長さよりも短い前後方向長さを有し、且つ、前記フラップ部中央軸線から前記吸収性物品の後方側端部まで延在する後方側領域と、を有しており、
前記前方側領域は、前記幅方向の中央部の非肌対向面において、
前記吸収体と少なくとも部分的に厚さ方向に重複し且つ前記前後方向に延在するように着衣固定用の粘着部が配置された粘着部配置領域と、
前記粘着部配置領域の前方側に隣接し且つ着衣固定用の粘着部が配置されていない粘着部非配置領域と、を有し、
さらに、前記粘着部配置領域は、前記粘着部非配置領域の前後方向長さよりも長い前後方向長さを有し、
前記機能部は、前記吸収部の幅方向両端部の各々よりも前記幅方向の外方側に延在する一対の幅広部を有し、
前記一対の幅広部の各々は、前記非肌対向面に着衣固定用の前方側粘着部を有し、
前記機能性部材が、前記厚さ方向において前記前方側粘着部と重なっている、前記吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収部は、前記吸収体と前記機能性部材とが前記厚さ方向に重なる重複部を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前後方向および幅方向を有するとともに、吸収体を有する吸収部と、前記吸収部の前記幅方向における両端部がそれぞれ前記幅方向の外方側に延出してなる一対のフラップ部とを有する吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、
前記吸収部の前方側に隣接するとともに所定の機能性部材を含む機能部を有し、且つ、前記一対のフラップ部の各々の前後方向中心部を通るフラップ部中央軸線から前記吸収性物品の前方側端部まで延在する前方側領域と、
前記前方側領域の前後方向長さよりも短い前後方向長さを有し、且つ、前記フラップ部中央軸線から前記吸収性物品の後方側端部まで延在する後方側領域と、を有しており、
前記前方側領域は、前記幅方向の中央部の非肌対向面において、
前記吸収体と少なくとも部分的に厚さ方向に重複し且つ前記前後方向に延在するように着衣固定用の粘着部が配置された粘着部配置領域と、
前記粘着部配置領域の前方側に隣接し且つ着衣固定用の粘着部が配置されていない粘着部非配置領域と、を有し、
さらに、前記粘着部配置領域は、前記粘着部非配置領域の前後方向長さよりも長い前後方向長さを有し、
前記吸収部は、前記吸収体と前記機能性部材とが前記厚さ方向に重なる重複部を有する、前記吸収性物品。
【請求項7】
前記前方側領域は、前記吸収性物品を前記前後方向に折り畳むための折軸を有し、
前記折軸は、前記厚さ方向において前記粘着部配置領域と重なっていない、請求項1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記機能性部材が、機能剤成分として温感剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生理用ナプキン等の吸収性物品においては、吸収性能や良好な着用感などの基本的機能に加えて所定の付加的機能を有する吸収性物品が種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、着用者の下腹部に対応する長手方向の前方側に、温感剤等の機能剤を含む機能層を備えた吸収性物品が開示されている。この特許文献1に開示された吸収性物品によれば、着用者の下腹部に上記機能層による所定の機能(例えば、温感)を付与することができるため、着用者の生理痛を緩和するなどの効果が期待できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1に開示された吸収性物品は、非肌対向面に配置される着衣固定用の粘着部が、上記機能層(機能部)を有する前方側領域に十分に配置されていないため、吸収性物品を着用する際(すなわち、吸収性物品が着用者の身体形状に沿って前後方向に湾曲するように変形する際)に、上記前方側領域の浮き上がりや波打ちなどによって、着用者の肌と吸収性物品の肌対向面との間に隙間が生じやすく、上記機能層による機能を着用者の下腹部に十分に付与できない虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、機能部の機能を着用者の下腹部に十分に付与することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様(態様1)は、前後方向および幅方向を有するとともに、吸収体を有する吸収部と、前記吸収部の前記幅方向における両端部がそれぞれ前記幅方向の外方側に延出してなる一対のフラップ部とを有する吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、
前記吸収部の前方側に隣接するとともに所定の機能性部材を含む機能部を有し、且つ、前記一対のフラップ部の各々の前後方向中心部を通るフラップ部中央軸線から前記吸収性物品の前方側端部まで延在する前方側領域と、
前記前方側領域の前後方向長さよりも短い前後方向長さを有し、且つ、前記フラップ部中央軸線から前記吸収性物品の後方側端部まで延在する後方側領域と、を有しており、
前記前方側領域は、前記幅方向の中央部の非肌対向面において、
前記吸収体と少なくとも部分的に厚さ方向に重複し且つ前記前後方向に延在するように着衣固定用の粘着部が配置された粘着部配置領域と、
前記粘着部配置領域の前方側に隣接し且つ着衣固定用の粘着部が配置されていない粘着部非配置領域と、を有し、
さらに、前記粘着部配置領域は、前記粘着部非配置領域の前後方向長さよりも長い前後方向長さを有する、前記吸収性物品である。
【0008】
本態様1の吸収性物品は、前方側領域の粘着部配置領域が粘着部非配置領域の前後方向長さよりも長い前後方向長さを有している、すなわち着衣固定用の粘着部が前方側領域にも十分に配置されているため、吸収性物品を着用する際に、従来のような前方側領域の浮き上がりや波打ちなどが生じにくく、着用者の肌と吸収性物品の肌対向面との間に隙間が形成されにくくなっている。これにより、本態様1の吸収性物品は、前後方向長さの長い上記前方側領域によって着用者の下腹部を着実に覆いつつ、上記前方側領域を着用者の肌に隙間なく密着させることができるため、上記前方側領域に含まれる機能部の機能を、着用者の下腹部に十分に付与することができる。
【0009】
また、本発明の別の態様(態様2)では、上記態様1の吸収性物品において、前記前方側領域は、前記吸収性物品を前記前後方向に折り畳むための折軸を有し、前記折軸は、前記厚さ方向において前記粘着部配置領域と重なっていない。
本態様の吸収性物品は、吸収性物品を前後方向に折り畳むための折軸が厚さ方向において粘着部配置領域と重なっていないため、吸収性物品を着用者の着衣(例えば、下着等)に粘着固定する際に、上記折軸に沿って形成される折り皺や折り癖が前方側領域に付いたまま着用者の着衣に固定されることを抑制することができる。これにより、本態様の吸収性物品は、上記前方側領域を着用者の肌に着実に密着させることができる。
【0010】
本発明の更に別の態様(態様3)では、上記態様1または2の吸収性物品において、前記機能性部材が、前記厚さ方向において前記粘着部配置領域と重なっている。
本態様の吸収性物品は、機能性部材が厚さ方向において粘着部配置領域と重なっていることで、上記機能部における機能性部材に対応する部分を着用者の着衣に粘着固定してから吸収性物品を着用できるため、上記機能性部材に対応する部分をより的確に着用者の肌に密着させることができる。
【0011】
本発明の更に別の態様(態様4)では、上記態様1~3のいずれかの吸収性物品において、前記機能部は、前記吸収部の幅方向両端部の各々よりも前記幅方向の外方側に延在する一対の幅広部を有し、前記一対の幅広部の各々は、前記非肌対向面に着衣固定用の前方側粘着部を有する。
本態様の吸収性物品は、上記機能部における一対の幅広部の各々に前方側粘着部を有していることで、上記機能部を着用者の着衣に着実に粘着固定してから吸収性物品を着用できるため、上記機能部をより確実に着用者の肌に密着させることができる。
【0012】
本発明の更に別の態様(態様5)では、上記態様4の吸収性物品において、前記機能性部材が、前記厚さ方向において前記前方側粘着部と重なっている。
本態様の吸収性物品は、上記機能部における機能性部材が厚さ方向において前方側粘着部と重なっていることで、上記機能部における機能性部材に対応する部分を着用者の着衣に着実に粘着固定してから吸収性物品を着用できるため、上記機能部における機能性部材に対応する部分を、更に的確に着用者の肌に密着させることができる。
【0013】
本発明の更に別の態様(態様6)では、上記態様1~5のいずれかの吸収性物品において、前記吸収部は、前記吸収体と前記機能性部材とが前記厚さ方向に重なる重複部を有する。
本態様の吸収性物品は、吸収部が上述の重複部を有している、すなわち機能部の機能性部材が機能部と吸収部との境界部分を超えて吸収部まで延在しているため、上記機能部と吸収部との間に継ぎ目が形成されず、当該継ぎ目を起点とする上記前方側領域の不本意な折れ曲がりを抑制することができる。これにより、本態様の吸収性物品は、更に確実に上記機能部を含む前方側領域を着用者の肌に密着させることができる。
【0014】
本発明の更に別の態様(態様7)では、上記態様1~6のいずれかの吸収性物品において、前記機能性部材が、機能剤成分として温感剤を含む。
本態様の吸収性物品は、機能性部材が機能剤成分として温感剤を含んでいるため、着用者の下腹部に対して十分な温感作用を付与することができ、生理痛などの諸症状の緩和に寄与することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、機能部の機能を着用者の下腹部に十分に付与することができる吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る生理用ナプキン1を、展開した状態で表面シート2側から厚さ方向D
Tに見た平面図である。
【
図2】
図2は、生理用ナプキン1を、展開した状態で裏面シート3側から厚さ方向D
Tに見た平面図である。
【
図3】
図3は、
図1における生理用ナプキン1のIII-III線に沿った断面の端面図である。
【
図4】
図4は、生理用ナプキン1を折り畳んでなる個包装体10の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の吸収性物品の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断りのない限り、「展開した状態で水平面上に置いた対象物(例えば、吸収性物品等)を、垂直方向の上方側から対象物の厚さ方向に見ること」を、単に「平面視」という。
【0018】
(各種定義)
本明細書では、「吸収性物品の前後方向において、着用者が吸収性物品を着用した際に着用者の腹部に対して相対的に近位側となる前後方向の一方側」を、「吸収性物品の前方側」といい、「吸収性物品の前後方向において、着用者が吸収性物品を着用した際に着用者の腹部に対して相対的に遠位側(すなわち、着用者の背部に対して相対的に近位側)となる他方側」を、「吸収性物品の後方側」という。
さらに、本明細書では、「縦長の対象物の幅方向の中心部に位置し且つ前後方向に延びる軸線」を「前後方向の中央軸線CL」という。
また、本明細書では、「縦長の対象物の前後方向において、当該前後方向の中心部に対して相対的に近位側」を「前後方向の内方側」といい、「縦長の対象物の前後方向において、当該前後方向の中心部に対して相対的に遠位側」を「前後方向の外方側」という。同様に、「縦長の対象物の幅方向において、当該幅方向の中心部に対して相対的に近位側」を「幅方向の内方側」といい、「縦長の対象物の幅方向において、当該幅方向の中心部に対して相対的に遠位側」を「幅方向の外方側」という。
そして、本明細書では、特に断りのない限り、展開した状態の吸収性物品の厚さ方向において、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌面に対して相対的に近位側に位置する表面」を「肌対向面」といい、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌面に対して相対的に遠位側に位置する表面」を「非肌対向面」という。
【0019】
<吸収性物品>
本発明の一実施形態に係る生理用ナプキン1(本発明における「吸収性物品」の一例である。)は、
図1に示すように、平面視にて、前後方向D
Lおよび幅方向D
Wを有する縦長の外形形状を有しており、さらに、前後方向D
Lの後方側D
Bに位置する吸収部30において、生理用ナプキン1の幅方向D
Wの一方側端部および他方側端部(すなわち、両端部)の各々が幅方向D
Wの外方側に向かって略台形状に延出してなる、一対のフラップ部6、6を有している。
【0020】
なお、本発明において、吸収性物品の外形形状は、このような態様に限定されず、前後方向および幅方向を有する長形状のものであれば、各種用途等に応じた任意の縦長の形状(例えば、長方形、楕円形、砂時計形など)を採用することができる。
【0021】
そして、上述の生理用ナプキン1では、
図1に示すように、上記一対のフラップ部6、6の各々の前後方向中心部を通るフラップ部中央軸線C
Wから生理用ナプキン1の前方側端部まで延在する前方側領域A
Fと、上記フラップ部中央軸線C
Wから生理用ナプキン1の後方側端部まで延在し且つ上記前方側領域A
Fの前後方向長さよりも短い前後方向長さを有する後方側領域A
Bと、を有していて、さらに、前方側領域A
Fは、前後方向D
Lにおいて上記吸収部30の前方側D
Fに隣接するとともに所定の機能性部材21を含む機能部20を有している。
【0022】
生理用ナプキン1は、
図3に示すように、厚さ方向D
Tにおいて、生理用ナプキン1の肌対向面S
Fを形成する液透過性の表面シート2と;生理用ナプキン1の非肌対向面S
Bを形成する液不透過性の裏面シート3と;これら両シートの間に位置する吸水性の吸収体4と;上記前方側領域A
F内の前方側D
Fに位置する機能部20において表面シート2と裏面シート3の間に位置し且つ機能剤成分として温感剤を含む機能性部材21とを、主な構成部材として備えている。
【0023】
さらに、生理用ナプキン1は、
図1に示すように、幅方向D
Wの両端部においてそれぞれ前後方向D
Lに延在する一対のサイドシート5、5を備えていて、さらに、
図2に示すように、裏面シート3の非肌対向面S
Bにおいて吸収体4と厚さ方向D
Tに重複し且つ上記前方側領域A
Fから後方側領域A
Bに跨って前後方向D
Lに延在するように複数本の帯状の形態で配置された着衣固定用の粘着部7と;一対のフラップ部6、6の各々の非肌対向面S
Bにおいて前後方向D
Lに延びる帯状の形態で配置された一対のフラップ部固定用粘着部71、71と;上記前方側領域A
F内の機能部20の非肌対向面S
Bにおいて幅方向D
Wの両端部に配置された、着衣固定用の一対の前方側粘着部72、72とを、構成部材として備えている。
【0024】
ここで、上記着衣固定用の粘着部7は、
図2に示すように、生理用ナプキン1の幅方向D
Wの中央部に配置されており、当該幅方向D
Wの中央部において生理用ナプキン1の前方側領域A
Fから後方側領域A
Bに跨って延在する粘着部配置領域を形成している。さらに、この粘着部配置領域は、
図2に示すように、前方側領域A
Fの幅方向D
Wの中央部において前後方向D
Lに延在する前方側粘着部配置領域A
7Aと、後方側領域A
Bの幅方向D
Wの中央部において前後方向D
Lに延在する後方側粘着部配置領域A
7Bとに区画される。
一方、上記一対の前方側粘着部72、72は、幅方向D
Wの両端部に配置されているため、前方側領域A
Fにおける上記前方側粘着部配置領域A
7Aの前方側D
Fに隣接する幅方向D
Wの中央部には、いずれの着衣固定用の粘着部も配置されておらず、
図2に示すような粘着部非配置領域A
0が形成されている。
【0025】
そして、上述の生理用ナプキン1では、
図2および
図3に示すように、前方側領域A
Fの粘着部配置領域(すなわち、前方側粘着部配置領域A
7A)が、上記粘着部非配置領域A
0の前後方向長さよりも長い前後方向長さを有している。
このように、生理用ナプキン1は、前方側領域A
Fの前方側粘着部配置領域A
7Aが粘着部非配置領域A
0の前後方向長さよりも長い前後方向長さを有している、すなわち着衣固定用の粘着部が前方側領域A
Fにも十分に配置されているため、生理用ナプキン1を着用する際に、従来のような前方側領域A
Fの浮き上がりや波打ちなどが生じにくく、着用者の肌と生理用ナプキン1の肌対向面S
Fとの間に隙間が形成されにくくなっている。これにより、生理用ナプキン1は、前後方向長さの長い前方側領域A
Fによって着用者の下腹部を着実に覆いつつ、当該前方側領域A
Fを着用者の肌に隙間なく密着させることができるため、上記前方側領域A
Fに含まれる機能部20の機能を、着用者の下腹部に十分に付与することができる。
【0026】
ここで、本明細書において「粘着部配置領域」は、吸収性物品の幅方向の中央部における非肌対向面において、吸収体と少なくとも部分的に厚さ方向に重複し且つ吸収性物品の前後方向に延在するように配置された着衣固定用の粘着部を囲む領域であって、前後方向の最も前方側に位置する粘着部の前方側端部を含み且つ幅方向に延在する前方側端部仮想線と;前後方向の最も後方側に位置する粘着部の後方側端部を含み且つ幅方向に延在する後方側端部仮想線と;幅方向の一方側の最も外方側に位置する粘着部の一方側端部を含み且つ前後方向に延在する一方側端部仮想線と;幅方向の他方側の最も外方側に位置する粘着部の他方側端部を含み且つ前後方向に延在する他方側端部仮想線と;によって囲まれた矩形状の領域を意味する。
一方、「粘着部非配置領域」は、吸収性物品の幅方向の中央部における非肌対向面において、粘着部配置領域の前方側に隣接し且つ着衣固定用の粘着部が配置されていない領域であって、上記粘着部の前方側端部仮想線から吸収性物品の前方側端部までの領域を意味する。
【0027】
なお、本明細書において、幅方向の中央部は、幅方向の中心部から幅方向の一方側端部および他方側端部のそれぞれに向かって同じ長さだけ延びる部分であって、幅方向長さが吸収性物品の幅方向長さ(幅方向全長)の70%以下となる部分を意味する。
さらに、吸収性物品の幅方向長さは、吸収性物品において幅方向長さが最も短い部分(すなわち、幅が最も狭い部分)の幅方向長さを意味し、例えば、上述の生理用ナプキン1においては、一対のフラップ部6、6の前方側に隣接する部分の幅方向長さが該当する。
【0028】
また、上述の生理用ナプキン1は、
図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の最も前方側D
Fに位置する前方側端部を通るように幅方向D
Wに延びる前方端仮想線LE
1と、生理用ナプキン1の最も後方側D
Bに位置する後方側端部を通るように幅方向D
Wに延びる後方端仮想線LE
2と、を有していて、さらに、これら前方端仮想線LE
1および後方端仮想線LE
2の間には、上記前方側領域A
F内の前方側D
Fの位置において着用者に温感を与える上記機能性部材21を含む機能部20と、当該機能部20の後方側D
Bに隣接し且つ着用者から排出された経血等の液状排泄物を吸収する吸収体4を含む吸収部30とを有している。
【0029】
なお、上述の機能部20と吸収部30とは、所定の機能を発揮し且つ吸収性が低い部分(すなわち、吸収体4を有していない部分)と、吸収性の高い部分(すなわち、吸収体4を有する部分)とを生理用ナプキン1の前後方向DLに区分した領域である。
【0030】
上述の生理用ナプキン1では、機能部20は、
図2に示すように、吸収部30の幅方向両端部の各々よりも幅方向D
Wの外方側に延在する一対の幅広部22、22を有している。かかる一対の幅広部22、22は、吸収部30の幅方向長さ(すなわち、吸収部30において幅方向長さが最も短い部分(すなわち、幅が最も狭い部分)の幅方向長さ)よりも長い幅方向長さを有していて、着用者の下腹部をより幅広く、着実に覆うことができるように形成されている。
なお、
図2においては、上記一対の幅広部22、22は、吸収部30の幅方向長さに対応する位置において前後方向D
Lに延びる一対の仮想線LW
3、LW
3よりも、幅方向D
Wの外方側に位置する機能部20の一部分が該当する。
【0031】
本発明において、上記一対の幅広部を備えることは必須の構成要件でないため、吸収性物品の形態等によっては、必ずしもこのような幅広部を有していなくてもよい。
【0032】
また、上述の吸収部30は、前後方向DLにおいて当該吸収部30の略中央部に位置するとともに、上記一対のフラップ部6、6と幅方向DWに重複し(すなわち、上記フラップ部中央軸線CWと重複し)、生理用ナプキン1の着用時に着用者の排泄口に対向する排泄口対応領域と;当該排泄口対応領域の前方側DFに隣接する前方側吸収部と;当該排泄口対応領域の後方側DBに隣接する後方側吸収部との、3つの領域に区分することができる。
【0033】
また、上述の生理用ナプキン1では、
図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1を幅方向D
Wに三つ折りするための、前後方向D
Lに延びる前後方向第1折軸LW
1および前後方向第2折軸LW
2と;生理用ナプキン1を前後方向D
Lに三つ折りするための、幅方向D
Wに延びる幅方向第1折軸LL
1および幅方向第2折軸LL
2とを有している。生理用ナプキン1は、これらの各折軸によって、肌対向面S
Fが内側となるように前後方向D
Lおよび幅方向D
Wのそれぞれに三つ折りに折り畳まれて、
図4に示すような個包装体10を形成することができる。
すなわち、
図1に示すような展開した状態の生理用ナプキン1を、前後方向D
Lに延びる前後方向第1折軸LW
1および前後方向第2折軸LW
2の各々において、肌対向面S
Fが内側となるように幅方向D
Wに三つ折りに折り畳んだ後、幅方向D
Wに延びる幅方向第1折軸LL
1および幅方向第2折軸LL
2の各々において、肌対向面S
Fが内側となるように前後方向D
Lに三つ折りに折り畳むことによって、
図4に示すような個包装体10を形成することができる。
なお、生理用ナプキン1を折り畳むにあたっては、生理用ナプキン1を、非肌対向面S
Bに貼付された包装材11とともに折り畳み、さらに、折り畳んだ後は、包装材11の外表面において当該包装材11の端部に配置されたリードテープ12によって、折り畳まれた包装材11の開放端部を封止して、包装状態を維持する。
【0034】
また、上述の生理用ナプキン1では、上記前方側領域A
Fは、
図1に示すように、生理用ナプキン1を前後方向D
Lに折り畳むための幅方向第1折軸LL
1が厚さ方向D
Tにおいて前方側粘着部配置領域A
7Aと重なっているが、本発明の吸収性物品においては、このような態様に限定されず、前方側領域における幅方向折軸は、厚さ方向において粘着部配置領域と重なっていなくてもよい。このように、吸収性物品を前後方向に折り畳むための折軸が厚さ方向において粘着部配置領域と重なっていない場合は、吸収性物品を着用者の着衣(例えば、下着等)に粘着固定する際に、上記折軸に沿って形成される折り皺や折り癖が前方側領域に付いたまま着用者の着衣に固定されることを抑制することができるため、上記前方側領域を着用者の肌に着実に密着させることができるという利点がある。
【0035】
なお、前後方向折軸(すなわち、前後方向第1折軸LW1および前後方向第2折軸LW2)は、幅方向折軸と異なり、生理用ナプキン1を着用する際(すなわち、生理用ナプキン1が着用者の身体形状に沿って前後方向DLに湾曲するように変形する際)に、着用者の肌と吸収性物品の肌対向面との間に隙間を生じにくい。
【0036】
また、上述の生理用ナプキン1においては、
図1~
図3に示すように、機能部20には、吸収部30の吸収体4がこれら領域の境界部分を超えて延在していないが、吸収部30には、機能部20の機能性部材21がこれら領域の境界部分を超えて延在しており、さらに、吸収部30における機能部20との隣接部分には、相対的に肌対向面側に位置する吸収体4と、相対的に非肌対向面側に位置する機能性部材21とが厚さ方向D
Tに重なる重複部40を有している。このような形態で吸収体4と機能性部材21が重なっているため、重複部40は、着用者から排出された液状排泄物を吸収する作用を主な作用として備えている。
このように、生理用ナプキン1は、吸収部30が上述の重複部40を有している、すなわち機能部20の機能性部材21が機能部20と吸収部30との境界部分を超えて吸収部30まで延在しているため、機能部20と吸収部30との間に継ぎ目が形成されず、当該継ぎ目を起点とする上記前方側領域A
Fの不本意な折れ曲がりを抑制することができる。これにより、生理用ナプキン1は、更に確実に上記機能部20を含む前方側領域A
Fを着用者の肌に密着させることができるようになっている。
【0037】
なお、生理用ナプキン1は、着用する際に、生理用ナプキン1の非肌対向面SBを、着衣固定用の粘着部7および一対の前方側粘着部72、72を介して着用者の着衣(例えば、下着等)の内面に貼り付けた後、一対のフラップ部6、6をそれぞれ着衣の外面側に折り返しつつ一対のフラップ部固定用粘着部71、71を介して着衣の外面に貼り付けることにより、着用者の着衣に固定される。
【0038】
以下、本発明の吸収性物品の各種構成部材について、上述の生理用ナプキン1を用いて更に詳細に説明する。
【0039】
[表面シート]
生理用ナプキン1において、表面シート2は、
図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の前後方向D
Lの前方側端部から後方側端部にわたって延在するとともに、生理用ナプキン1の幅方向D
Wの一方側端部から他方側端部にわたって延在する縦長の外形形状を有している。かかる表面シート2は、
図3に示すように、生理用ナプキン1の厚さ方向D
Tにおいて肌対向面側の位置に配置されて、着用者の肌面に当接し得る接触面(すなわち、生理用ナプキン1の肌対向面S
F)を形成する、液透過性のシート状部材によって形成されている。
【0040】
このような液透過性のシート状部材としては、吸収性物品の表面シートとして用い得る諸特性(例えば、液透過性や肌触り、柔軟性、強度等)を有するものであれば特に制限されず、例えば、エアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布等の各種不織布や多孔樹脂フィルムなどを用いることができる。さらに、シート状部材の構造も特に制限されず、平坦な無孔のシート状構造のほか、例えば、複数の開口部を有する平坦なシート状構造や凹凸構造などの種々のシート状構造を採用することができる。
【0041】
なお、表面シートとして不織布を用いる場合、その構成繊維の種類は、特に制限されず、例えば、セルロース系繊維や親水化処理を施した熱可塑性樹脂繊維(例えば、親水化処理を施したオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂等)などの親水性繊維が挙げられる。これらの繊維は単独で用いても、2種類以上の繊維を併用してもよい。
【0042】
また、上述の生理用ナプキン1では、厚さ方向DTにおいて吸収体4および機能性部材21の各々よりも肌対向面側に位置する表面シート2が、吸収体4および機能性部材21の各々と接合されている。このように、吸収体4および機能性部材21の各々が表面シート2と接合されていると、生理用ナプキン1を着用する際に、当該生理用ナプキン1が着用者の身体形状に沿って前後方向DLに湾曲するように変形しても、吸収体4および機能性部材21の位置ずれ等に起因する前方側領域AFの不本意な折れ曲がりを生じにくくし、さらに、吸収体4と機能性部材21との境界部分が表面シート2で覆われていることによって、当該境界部分において着用者の肌との間に隙間を生じにくくすることができる。
【0043】
本発明において、表面シートの外形形状や各種寸法、坪量等は、所望の液透過性や肌触り、柔軟性等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0044】
[吸収体]
上述の生理用ナプキン1において、吸収体4は、
図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の排泄口対応領域の略中央部を中心にして、前後方向D
Lおよび幅方向D
Wの広範囲に延在するとともに、前後方向D
Lの両端部がそれぞれ前後方向D
Lの外方側に向かって円弧を描くように突出した縦長の外形形状を有している。かかる吸収体4は、
図3に示すように、生理用ナプキン1の厚さ方向D
Tにおいて表面シート2と裏面シート3の間に配置されて、表面シート2を透過してきた経血等の液状排泄物を吸収して保持し得る、所定の吸水性及び液保持性を備えた吸水性部材によって形成されている。
【0045】
このような吸水性部材は、着用者から排出される経血等の液状排泄物を吸収して保持し得るものであれば特に制限されず、当分野において公知の任意の吸水性部材を採用することができる。そのような吸水性部材の例としては、任意の吸水性材料によって構成される少なくとも一つの吸収コアを、ティッシュ等の親水性のコアラップシートで覆ったものなどが挙げられる。ここで、吸収コアを構成する吸水性材料としては、例えば、親水性繊維や高吸収性ポリマーなどが挙げられ、更に具体的には、粉砕パルプ、コットン、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維;アクリル酸ナトリウムコポリマー等の高吸収性ポリマーからなる粒状物;およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0046】
本発明において、吸収体の外形形状や各種寸法、坪量等は、所望の吸収性能や柔軟性、強度等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0047】
[裏面シート]
上述の生理用ナプキン1において、裏面シート3は、
図2に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の前後方向D
Lの前方側端部から後方側端部にわたって延在するとともに、生理用ナプキン1の幅方向D
Wの一方側端部から他方側端部にわたって延在する縦長の外形形状を有している。かかる裏面シート3は、
図3に示すように、生理用ナプキン1の厚さ方向D
Tにおいて非肌対向面側の位置に配置されて、着用者の肌面に対する非接触面(すなわち、生理用ナプキン1の非肌対向面S
B)を形成する、液不透過性のシート状部材によって形成されている。
【0048】
このような液不透過性のシート状部材としては、少なくとも着用者から排出される液状排泄物の透過を防止し得る程度の液不透過性を有するものであれば特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂繊維(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂繊維、芯鞘型等の各種複合繊維など)によって形成された疎水性不織布;ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂によって形成された疎水性樹脂フィルム;該樹脂フィルムに不織布を貼り合わせた積層体;SMS不織布等の積層不織布などを用いることができる。さらに、シート状部材の構造も特に制限されず、平坦な無孔のシート状構造のほか、例えば、所定の液不透過性を保持しつつ通気性を確保するための複数の開口部を備えた平坦なシート状構造や凹凸構造などの種々のシート状構造を採用することができる。
【0049】
本発明において、裏面シートの外形形状や各種寸法、坪量等は、所望の防漏性能や通気性等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0050】
[サイドシート]
上述の生理用ナプキン1において、一対のサイドシート5、5は、
図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の幅方向D
Wの両端部においてそれぞれ前後方向D
Lに延在する、一対の帯状のシート状部材によって形成されている。かかる一対のサイドシート5、5は、生理用ナプキン1の厚さ方向D
Tにおいて肌対向面側の位置に配置されて、上記表面シート2とともに生理用ナプキン1の肌対向面S
Fを形成している。
【0051】
さらに、一対のサイドシート5、5の各々は、幅方向DWの外方側の端部が裏面シート3の肌対向面に接合されて固定端部を形成している一方、幅方向DWの内方側の端部が表面シート2などのいずれの構成部材とも接合されておらず、自由端部を形成している。これにより、一対のサイドシート5、5は、生理用ナプキン1の着用時に幅方向DWの内方側の端部(自由端部)が起立して、着用者から排出される液状排泄物の漏洩を防止するための防漏壁部を形成することができる。
【0052】
サイドシートに用いられる帯状のシート状部材としては、吸収性物品のサイドシートとして用い得る諸特性(例えば、液不透過性(防漏性)や肌触り、柔軟性、強度等)を有するものであれば特に制限されず、例えば、上記裏面シートと同様の液不透過性のシート状部材(すなわち、疎水性不織布や疎水性樹脂フィルムなどのシート状部材)を帯状に裁断したものなどを用いることができる。
【0053】
本発明において、サイドシートの外形形状や各種寸法、坪量等は、所望の防漏性や肌触り、柔軟性等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0054】
なお、本発明において、上記一対のサイドシートを備えることは必須の構成要件でないため、吸収性物品の形態等によっては、必ずしもこのようなサイドシートを有していなくてもよい。
【0055】
[機能性部材]
上述の生理用ナプキン1において、機能性部材21は、
図1に示すように、平面視にて、上記前方側領域A
F内の前方側D
Fに位置する機能部20において前後方向D
Lおよび幅方向D
Wの広範囲にわたって延在する所定の外形形状を有している。かかる機能性部材21は、
図3に示すように、生理用ナプキン1の厚さ方向D
Tにおいて表面シート2と裏面シート3の間に配置されて、着用者に所定の作用(温感作用)をもたらす機能剤成分としての温感剤を含むシート状部材によって形成されている。
【0056】
機能性部材21を形成するシート状部材は、機能剤成分としての温感剤と、当該温感剤を保持し得る基材とによって構成されている。
なお、本発明において、機能性部材を形成するシート状部材としては、例えば、液体状または固体状(ペースト状、粉体状等を含む。)の機能剤成分と、当該機能剤成分を保持し得る構造を備えた基材(例えば、布帛等)とを少なくとも含む機能剤成分含有型のシート状部材や、所定の機能(例えば、保温機能)を発現し得る基材(例えば、布帛等)によって構成される機能剤成分非含有型のシート状部材などが挙げられる。
【0057】
上記基材としては、特に制限されず、例えば、布帛(例えば、不織布、織布、編布等)や多孔質樹脂シート(例えば、スポンジシート等)などが挙げられる。かかる基材は、機能性部材用の基材として単独で用いられるものでなくてもよく、他の構成部材(例えば、表面シートや裏面シート、中間シート、コアラップシート等)と兼用されていてもよい。したがって、機能性部材が上述の機能剤成分非含有型のシート状部材によって形成されている場合は、このような他の構成部材が機能性部材となり、このような場合でも、着用者の下腹部を保温する機能などの所定の機能を発揮することができる。
なお、機能剤成分自体が所定の保形性等を有していて、機能剤成分単独で吸収性物品の所定の位置に配置され且つ所定の機能を発揮し得るような場合は、機能性部材は、基材を有していなくてもよい。
【0058】
また、上述の生理用ナプキン1において、機能剤成分として用いられる温感剤は、それ自体が発熱せずに着用者の皮膚の温熱知覚受容器を刺激することにより、着用者に温感を知覚させる温感成分を含むものである。
なお、生理用ナプキン1においては、温感剤は、平面視にて、機能性部材21の略全体に含まれているが、所定の温感機能を発揮し得るのであれば一部分(例えば、中心部のみ等)に含まれていてもよい。
【0059】
また、上述の生理用ナプキン1では、機能性部材21が表面シート2よりも非肌対向面側に配置されているが、機能性部材21に含まれる温感剤が、生理用ナプキン1の着用時に溶出または揮発等により表面シート2を透過し、着用者の下腹部の肌に接触することができるため、かかる温感剤の温感成分が皮膚の温熱知覚受容器を刺激することにより、着用者の下腹部に温感を付与することができる。
このようにして着用者の下腹部、すなわち着用者の子宮に近い部分を温めることで、着用者の生理痛を緩和したり、月経前症候群や冷え性、更年期障害などの諸症状を軽減したりすることに寄与することができる。
【0060】
また、上述の生理用ナプキン1では、
図2および
図3に示すように、上記機能性部材21が、厚さ方向D
Tにおいて上述の前方側粘着部配置領域A
7Aと重なっている。これにより、生理用ナプキン1は、機能部20における機能性部材21に対応する部分を着用者の着衣に粘着固定してから着用できるため、上記機能性部材21に対応する部分をより的確に着用者の肌に密着させることができる。
【0061】
なお、生理用ナプキン1において、機能性部材21を配置する厚さ方向DTの位置は、生理用ナプキン1の着用時に温感剤が着用者の肌に接触し得る位置であれば特に制限されないが、着用者の肌への接触のしやすさの点から、肌対向面SFに近い位置であることが好ましい。
【0062】
上記温感剤に含まれる温感成分としては、着用者の安心感などの点から、植物由来の化合物であることが好ましく、例えば、カプサイシン類、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例えば、バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル等)、ショウガエキス、ジンジャーオイルなどが挙げられる。これらの化合物の中でも、皮膚への刺激性の点から、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体、ショウガエキス、ジンジャーオイルなどを用いることが好ましい。なお、これらの化合物は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0063】
また、上記温感剤を塗工などにより基材に適用する際は、温感成分とともに当該温感成分を溶解ないし分散し得る溶媒成分を用いることができ、そのような溶媒成分としては、例えば、親油性溶媒や親水性溶媒などが挙げられる。
上記親油性溶媒としては、例えば、天然油(例えば、トリグリセリド等の脂肪酸エステル、ヤシ油、アマニ油など)や炭化水素(例えば、パラフィン等)などの油脂が挙げられる。一方、上記親水性溶媒としては、例えば、水やアルコールなどが挙げられ、さらに、アルコールとしては、例えば、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等)、高級アルコール(例えば、カプリルアルコール、ラウリルアルコール等)などが挙げられる。
これらの溶媒の中でも、揮発性を制御しやすいという点で、油脂などの親油性溶媒またはアルコールを用いることが好ましく、さらに、吸収性物品の吸収性能を維持しやすいという点から、油脂などの親油性溶媒を用いることがより好ましい。
なお、このような溶媒は、基材に適用した後に、溶媒が固化した状態または揮発した状態で適用対象部位に留まっていてもよい。
【0064】
また、上記温感剤における温感成分の濃度は、温感効果の点から、好ましくは1~50質量%であり、より好ましくは3~30質量%であり、更に好ましくは5~15質量%である。
【0065】
本発明において、機能性部材の機能剤成分は、上記温感剤に限定されず、所望の作用に応じた任意の機能剤成分を採用することができる。そのような機能剤成分としては、例えば、冷感剤や発熱剤、薬剤(例えば、皮膚収斂剤、抗炎症剤、抗菌剤、pH調整剤、保湿剤、消臭剤、漢方薬等)などが挙げられる。これらの機能剤成分は、例えば、平面視にて、機能性部材の一部の部分に1種類の機能剤成分(例えば、温感剤)を配置し、他の部分に別の種類の機能剤成分(例えば、冷感剤)を配置する形態で、併用してもよい。
【0066】
本発明において、上記機能剤成分として用い得る冷感剤は、それ自体が冷却せずに着用者の皮膚の冷感知覚受容器を刺激することにより、着用者に冷感を知覚させる冷感成分を含むものである。上記冷感成分としては、例えば、メントール(例えば、l-メントール等);メントール誘導体(例えば、乳酸メンチル、メンチルグリセリルエーテル等);サリチル酸メチル;ミントやユーカリ等の植物由来の精油などが挙げられる。なお、冷感剤を塗工などにより基材に適用する際は、上記温感剤と同様の溶媒成分を用いることができる。
【0067】
また、上記冷感剤における冷感成分の濃度は、冷感効果の点から、好ましくは5~90質量%であり、より好ましくは10~80質量%であり、更に好ましくは30~70質量%である。
【0068】
本発明において、上記機能剤成分として用い得る発熱剤は、それ自体が発熱することで着用者の皮膚を温める作用を有するものであり、例えば、鉄粉等の金属粉の酸化熱、酸またはアルカリの中和熱、無機塩の水和熱などの化学エネルギーを利用するものが挙げられる。なお、発熱剤は、溶媒成分または分散媒体に溶解または分散させて用いてもよい。
【0069】
本発明において、上記機能剤成分として用い得る薬剤は、着用者の皮膚に所定の薬理作用をもたらすものであり、例えば、皮膚収斂剤、抗炎症剤、抗菌剤、pH調整剤、保湿剤などが挙げられる。
上記皮膚収斂剤としては、例えば、酸化亜鉛や硫酸アルミニウム、タンニン酸、油溶性ポリフェノール(例えば、オオバクエキス、オトギリソウエキス、カモミラエキス、シラカバエキス、ビワ葉エキス、ボダイジュエキス、ホップエキス等)などの収斂成分を含むものが挙げられる。
上記抗炎症剤としては、例えば、天然由来の抗炎症成分(例えば、ボタンエキス、オトギリソウエキス、カモミラエキス、ヨモギエキス、シソエキス等)や合成抗炎症成分(例えば、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム等)などの抗炎症成分を含むものが挙げられる。
上記抗菌剤としては、例えば、天然由来の抗菌成分(例えば、オウバクエキス、オリーブ葉エキス、カモミラエキス、クマザサエキス、サンショウエキス、シソエキス、ドクダミエキス、ホップエキス、ユーカリエキス、ヨモギエキス等)や合成抗菌成分(例えば、エチルヘキシルグリセリン等)などの抗菌成分を含むものが挙げられる。
上記pH調整剤としては、例えば、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、乳酸等の肌を弱酸性に保つための弱酸性成分を含むものが挙げられる。
上記保湿剤としては、例えば、多価アルコール類(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビット等)、尿素、エモリエント成分(例えば、ワセリン等)などの保湿成分を含むものが挙げられる。
【0070】
本発明において、機能性部材における機能剤成分の含有量(坪量)は、機能剤成分の種類や機能性部材の配置位置などに応じた所定の含有量を採用することができる。例えば、機能剤成分として温感剤または冷感剤を採用し、かつ、機能性部材を上述の生理用ナプキン1と同様の形態で配置する場合には、機能剤成分は、温感剤または冷感剤に含まれる温感成分または冷感成分の坪量が、好ましくは0.001~30g/m2、より好ましくは0.01~20g/m2、更に好ましくは0.1~10g/m2となるような坪量で、機能性部材に含有させることができる。
【0071】
なお、本発明において、機能性部材の外形形状や各種寸法、坪量等は、機能剤成分の種類や配置形態等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0072】
[粘着部]
上述の生理用ナプキン1は、
図2に示すように、裏面シート3の非肌対向面S
Bにおいて複数の粘着部、すなわち着衣固定用の粘着部7、一対のフラップ部固定用粘着部71、71および一対の前方側粘着部72、72を備えており、これらの粘着部は、それぞれ上述の所定の形態で配置された粘着剤によって形成されている。
【0073】
このような粘着部に用いられる粘着剤としては、当分野において公知の任意の粘着剤を採用することができ、例えば、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)等のスチレン系コポリマーを主体とした感圧型粘着剤などが挙げられる。
【0074】
なお、上述の生理用ナプキン1では、着衣固定用の上記一対の前方側粘着部72、72が、
図2に示すように、それぞれ上記機能部20における一対の幅広部22、22に配置されている。このように、上記機能部20における一対の幅広部22、22の各々に前方側粘着部72、72が配置されていると、上記機能部20を着用者の着衣に着実に粘着固定してから生理用ナプキン1を着用できるため、上記機能部20をより確実に着用者の肌に密着させることができる。
【0075】
さらに、上述の生理用ナプキン1においては、
図2および
図3に示すように、上記一対の前方側粘着部72、72が、厚さ方向D
Tにおいて上記機能性部材21と重なっている。このように、上記機能部20における機能性部材21と、一対の前方側粘着部72、72とが厚さ方向D
Tに重なっていると、上記機能部20における機能性部材21に対応する部分を着用者の着衣に着実に粘着固定してから生理用ナプキン1を着用できるため、上記機能部20における機能性部材21に対応する部分を、更に的確に着用者の肌に密着させることができる。
【0076】
なお、本発明において、各種粘着部の配置形態や外形形状、各種寸法等は、着衣への固定のしやすさなどを考慮した任意の配置形態や外形形状、各種寸法等を採用することができる。
【0077】
本発明の吸収性物品は、上述の実施形態の生理用ナプキンに限定されず、パンティーライナー、失禁パッド、母乳パッド、使い捨ておむつなどの様々な吸収性物品に適用することができる。また、本発明の吸収性物品は、上述した実施形態等に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや代替、変更等が可能である。なお、本明細書において、「第1」、「第2」等の序数は、当該序数が付された事項を区別するためのものであり、各事項の順序や優先度、重要度等を意味するものではない。
【符号の説明】
【0078】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5 サイドシート
6 フラップ部
7 着衣固定用の粘着部
71 フラップ部固定用粘着部
72 前方側粘着部
20 機能部
21 機能性部材
30 吸収部
40 重複部
AF 前方側領域
AB 後方側領域
A7A 前方側粘着部配置領域
A7B 後方側粘着部配置領域
A0 粘着部非配置領域
CW フラップ部中央軸線