(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】非熱的大気圧プラズマを生成するための装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20220218BHJP
H01L 41/107 20060101ALI20220218BHJP
H01L 41/053 20060101ALI20220218BHJP
H01L 41/04 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
H05H1/24
H01L41/107
H01L41/053
H01L41/04
(21)【出願番号】P 2019550182
(86)(22)【出願日】2018-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2018056431
(87)【国際公開番号】W WO2018167167
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2019-09-12
(31)【優先権主張番号】102017105401.4
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518379278
【氏名又は名称】テーデーカー エレクトロニクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ピヒラー,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイルグニ,ミハエル
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-140722(JP,A)
【文献】特表2017-504954(JP,A)
【文献】特表2016-531654(JP,A)
【文献】特表2019-507943(JP,A)
【文献】特表2017-508485(JP,A)
【文献】特表2019-533319(JP,A)
【文献】特開2016-171792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0287892(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/10-1/54
H01L 41/04-41/053
H01L 41/08-41/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非熱的大気圧プラズマを生成するための装置であって、
プロセス媒体中で非熱的大気圧プラズマを点火するように構成された第1圧電トランスと、
前記第1圧電トランスに入力電圧を印加するように構成された駆動制御回路と、を備え、
前記駆動制御回路は、前記第1圧電トランスが変調の結果として音波信号を生成するように、前記入力電圧の変調を行うように構成されている、
装置。
【請求項2】
前記変調は、振幅変調である、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記駆動制御回路は、搬送周波数を有する交流電圧を入力電圧として前記第1圧電トランスに印加し、前記の印加された入力電圧の振幅を変調周波数で変調するように構成されており、前記変調周波数は前記搬送周波数より小さい、
請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記音波信号は、可聴周波数領域及び/又は超音波周波数領域の周波数を有する、
請求項1乃至3いずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記装置はハウジングを備え、
前記ハウジング内には前記第1圧電トランスが配置されている、
請求項1乃至4いずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記ハウジングは共振容積である、
請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記ハウジングは、触媒的に活性なワイヤメッシュを有する、
請求項6項記載の装置。
【請求項8】
前記ハウジングは、ラッパ形状を有する、
請求項5乃至7いずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記ハウジングは、プラズマ点火の際に発生するオゾンを破壊するように構成されている、
請求項5乃至8いずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記第1圧電トランスは、ローゼン型トランスである、
請求項1乃至9いずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記第1圧電トランスは出力領域を備え、別個の対向電極無しで、プロセス媒体中で非熱的大気圧プラズマを点火するために、前記出力領域において高電圧を生成可能である、
請求項1乃至10いずれか1項記載の装置。
【請求項12】
前記装置はさらに、対向電極を備え、
前記装置は、前記第1圧電トランスの出力領域と前記対向電極との間に生成される電圧によって、プラズマを点火するように構成されている、
請求項1乃至10いずれか1項記載の装置。
【請求項13】
化学的反応の加速又は触媒を実現する、
請求項1乃至12いずれか1項記載の装置。
【請求項14】
汚染物質、例えば窒素酸化物、一酸化炭素、及び/又は、細塵を破壊し又は分解する、
請求項13記載の装置。
【請求項15】
表面を活性化し又は滅菌するために設けられている、
請求項1乃至14いずれか1項記載の装置。
【請求項16】
前記プロセス媒体は、ガス状媒体、使用温度及び使用圧力においてガス状である素材、使用温度及び使用圧力においてガス状である素材の混合物、エアロゾル、ガス中に浮遊する、流体及び/又は固体の粒子、流体、又は、生物学的組織である、
請求項1乃至15いずれか1項記載の装置。
【請求項17】
プロセス媒体は排気ガスである、
請求項1乃至16いずれか1項記載の装置。
【請求項18】
前記排気ガスは内燃機関の排気ガスである、
請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記第1圧電トランスの出力側端面の前に、誘電バリアが配置されており、
前記装置は、前記出力側端面で生成される高電圧が点火空間に容量的に結合されるように構成されており、前記点火空間内には前記プロセス媒体があり、したがって前記点火空間内において前記プロセス媒体中で非熱的大気圧プラズマが点火される、
請求項1乃至18いずれか1項記載の装置。
【請求項20】
前記装置は、第2圧電トランスを備え、前記第2圧電トランスは、前記第1圧電トランスに相対向して配置されており、
前記駆動制御回路は、前記第1圧電トランスと前記第2圧電トランスとの間の電圧によって非熱的大気圧プラズマが生成されるように、前記第2圧電トランスに入力電圧が印加されるように構成されており、
前記第1圧電トランス及び前記第2圧電トランスは相互に180度だけ位相シフトして駆動制御されている、
請求項1乃至19いずれか1項記載の装置。
【請求項21】
前記装置は、少なくとも1つのさらなる圧電トランスを備え、前記さらなる圧電トランスは前記第1圧電トランスに平行に配置されており、前記第1圧電トランスとは異なる長さを有しており、
前記駆動制御回路は、前記さらなる圧電トランスが変調の結果として音波信号を生成するように、前記さらなる圧電トランスに印加される入力電圧の変調を行うように構成されている、
請求項1乃至20いずれか1項記載の装置。
【請求項22】
前記装置は手持ち機器である、
請求項1乃至21いずれか1項記載の装置。
【請求項23】
前記第1圧電トランスによって生成される非熱的大気圧プラズマの振幅は、前記入力電圧の変調に応じて変動する、
請求項1乃至22いずれか1項記載の装置。
【請求項24】
前記第1圧電トランスによって生成される非熱的大気圧プラズマの出力は、前記変調の変調周波数に応じて変動する、
請求項1乃至23いずれか1項記載の装置。
【請求項25】
生成される非熱的大気圧プラズマの出力の変動によって、前記変調の変調周波数と周波数が一致する音波信号が生成される、
請求項1乃至24いずれか1項記載の装置。
【請求項26】
前記装置は歯科治療に使用されるように設計されている、
請求項1乃至25いずれか1項記載の装置。
【請求項27】
前記装置は、歯及び/又は歯肉をプラズマ及び超音波周波数領域の音波信号を用いて、洗浄し消毒するように設計されている、
請求項1乃至26いずれか1項記載の装置。
【請求項28】
請求項1乃至25いずれか1項記載の装置を有するスピーカー。
【請求項29】
請求項1乃至25いずれか1項記載の装置を有する排気装置。
【請求項30】
請求項1乃至27いずれか1項記載の装置を有する医療機器。
【請求項31】
前記医療機器は、虫歯の治療又は創傷の治療のために設計されている、
請求項30記載の医療機器。
【請求項32】
前記医療機器は、プローブ又は内視鏡である、
請求項30又は31記載の医療機器。
【請求項33】
請求項1乃至25いずれか1項記載の装置を有する害虫防御のための機器。
【請求項34】
粒子分析のための分析機器であって、
請求項1乃至25いずれか1項記載の装置を有し、
前記装置は、分析目的のために及び/又は排気ガス流のクリーニングのために及び/又は関連する粒子を分解するために、粒子をイオン化するように、配置及び構成されている、
分析機器。
【請求項35】
請求項1乃至
27いずれか1項記載の装置、又は
請求項28記載のスピーカー、又は
請求項29記載の排気装置、又は、
請求項30記載の医療機器、又は、
請求項33記載の害虫防御装置、又は
請求項34記載の分析機器を有する、
パイプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非熱的大気圧プラズマ(nichtthermischen Atmosphaerendruck-Plasmas)を生成するための装置に関する。装置は、特に圧電トランスを有する。装置はさらに、音波信号(Schallsignal)を生成するように構成されている。
【背景技術】
【0002】
非熱的大気圧プラズマ及び音波信号の生成を可能にする装置によって、多くの用途においてプラズマと音波信号との間の相乗効果が利用され得る。例えば、非熱的大気圧プラズマ及び超音波周波数領域の音波信号は洗浄(Reinigung)及び消毒(Desinfektion)のために使用され得る。現在、装置を用いてプラズマのみならず超音波も生成されると、その両方は洗浄及び消毒に同時に使用されることができ、それにより高効率の洗浄及び消毒が実現される。
【0003】
達成しようとする目的のために音波信号のみが必要とされる装置の適用も可能である。例えば、プラズマスピーカーにおいては、プラズマの生成により音波信号が生成されることができる。プラズマスピーカーは広い周波数範囲にわたる線形周波数応答によって特徴づけられる。
線形周波数応答は、生成された音波信号の出力が、所定の入力電力において、異なる周波数範囲に対して実質的に変化しない、例えば5dB未満しか変化しない周波数領域内にある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の課題は、音波信号及び非熱的大気圧プラズマの生成を可能にする装置を提供することである。
【0005】
この課題は請求項1による装置によって解決される。
【0006】
非熱的大気圧プラズマを生成するための装置が提供されており、装置はプロセス媒体中で(in einem Prozessmedium)非熱的大気圧プラズマを点火するように構成された第1圧電トランスと、第1圧電トランスに入力電圧を印加するように構成された駆動制御回路とを備え、駆動制御回路は、第1圧電トランスが変調の結果として音波信号を生成するように、入力電圧の変調を行うように構成されている。
【0007】
本発明は、このように、出力側端面においてプラズマを点火することができる圧電トランスを用いて、プラズマのみならず音波信号も生成可能である装置に関する。圧電トランスに印加される入力電圧が変調されると、したがって圧電トランスの出力領域において生成される高電圧も変調を示す。このようにして高電圧の出力は変動し、したがって圧電トランスから生成される非熱的大気圧プラズマの振幅も、入力電圧の変調に応じて変動する。そうすると、生成されるプラズマの振幅の変動によって音波信号が生成される。その際、圧電トランスを取り囲むプロセス媒体も振動する(schwingen)。生成されるプラズマの体積の変化は、プロセス媒体中の圧力差をもたらし、それが音波信号として認識される。生成されるプラズマの変調の結果としての圧力変動は、プロセス媒体のバイブレーション(einer Vibration)につながる可能性があり、それにより音波信号が生成される。
【0008】
音波生成のために振幅が変調されるプラズマが、圧電トランスによって生成されることにより、様々な利点が得られる。
【0009】
装置のサイズ(Baugroesse)は、非常に小さく構成されることができる。なぜなら、音波信号の伝達(die Uebertragung)のための伝達部品が必要ないからである。さらに、プラズマによる音波生成では機械的ダイヤフラムが必要ないため、システムは機械的慣性から解放される(frei von mechanischer Traegheit)ことができ、プロセス媒体の振動が直接引き起こされることができる。相応に非常に広い周波数領域の音波信号が生成することができる。対照的に、機械的な音波生成システムでは、通常、達成可能な上限周波数はシステムの慣性によって制限される。音波信号が圧電トランスによって生成されれば、上限周波数はトランスの幾何学的形状によって制限され、したがって非常に高い上限周波数が達成されることができる。さらに、圧電トランスにおいて上限周波数はトランスの材料と、その圧電性能及び機械的性能と、によっても決まる。
【0010】
圧電トランスにPZTセラミックが圧電材料として使用されていれば、30mmの部品長さに対する上限周波数は130kHzである。圧電材料が鉛フリーセラミックである圧電トランスに対しては、50mmの圧電トランスの長さにおいて上限周波数は同様に約130kHzとなる。トランスの長さの減少によって上限周波数はさらに高められることができる。
【0011】
コイルトランスをプラズマ及び音波の生成に使用するシステムと比較して、プラズマを圧電トランスによって生成する装置は、大きな利点を提供する。本発明による装置において、高電圧トランスが必要ないので、装置は小さいサイズで製造されることができる。相応に、装置は、スピーカー又はスピーカーシステム内に統合されることができる。さらに、圧電トランスのエネルギー必要量は低い。相応に装置は、バッテリによって作動されることができる。これにより、高出力の生成のために電源電圧を必要とするシステムよりも安全性の利点となる。
【0012】
装置においては、圧電トランスを支配的な電磁波から遮蔽するだけで十分であり得る。ただし、装置の他の要素を遮蔽することは断念され得る。このことによって装置の小さいサイズが実現される。
【0013】
装置の、小さいサイズ、低い電圧要件及び低い出力要件、並びに、圧電トランスの、損傷に対する無反応性は、装置に広い適用範囲を考慮可能にする。例えば歯科治療への装置の使用が考えられる。その際、歯及び/又は歯肉は、プラズマ及び超音波周波数領域の音波信号を用いて、洗浄され消毒されることができる。電源電圧に基づく安全性リスクがあるため、プラズマ生成のために電源電圧を必要とするシステムは、この適用のために使用されることはできないか、又は、特別な安全措置と関連する追加措置の考慮の下でのみ(nur unter Beachtung besonderer
Vorsichtsmassnahmen und damit verbundenem Mehraufwand)、使用されることができる。さらに、プラズマ生成のための電源電圧を必要とするシステムは、しばしば、大きすぎる部品サイズに基づいて歯科治療への適用には適さないことがある。
【0014】
プロセス媒体はその中でプラズマが点火される媒体を指すことができる。プロセス媒体は、例えば圧電トランスの周辺空気であることができる。プロセス媒体は、さらに、使用温度及び使用圧力においてガス状である任意の材料、使用温度及び使用圧力においてガス状である全ての考えられる材料混合物、ガス内で浮遊する流体の及び/又は固体の粒子を含むエアロゾル、流体又は生物学的組織であることができる。使用圧力及び使用温度は、非熱的大気圧プラズマの生成のための装置が通常使用される圧力又は温度を示す。使用圧力は特に大気圧であり得る。使用圧力は、0.2barと1.5barとの間、好ましくは0.8barと1.2barとの間であり得る。使用温度は、特に、室温であり得る。使用温度は、-50℃と+155℃との間、有利には0℃と45℃との間にあり得る。
【0015】
プロセス媒体はガス状の材料であれば、例えば、純粋He、純粋Ar、純粋N2、純粋O2、純粋CO2、純粋H2又は純粋Cl2等の純粋ガスである。さらに、プロセス媒体H2Oは、超臨界領域にあることができる。プロセス媒体は、超臨界の純粋物質、即ち、使用温度及び使用圧力において非凝縮性の純粋物質が含まれることができる。
【0016】
プロセス媒体は、複数の前述の純粋ガス又は以下のガスのうちの1つ又は混合物を含むことができる:空気、保護ガス(Schutzgas)及びフォーミングガス(Formiergas)。その際、プロセス媒体は、使用温度及び使用圧力において、ガス状態が維持されるように選択される。
【0017】
プロアセス媒体は、ガス又はガス混合物内の流体エアロゾルを含むことができる。これは、例えば、露点を超える空気、飽和蒸気、又はガソリン/ディーゼル‐空気混合物であり得る。プロセス媒体は、ガス又はガス混合物中の固体エアロゾルを有し得る。これは、例えば、排気ガス中のスス(Russ)又は空気中の細塵(Feinstaub)であり得る。医療及び技術用途には、プロセス媒体としてのエアロゾルの使用の際に特に良好な結果が得られる。エアロゾルは、特に空気中の水滴であり得る。さらにH2O2又はホルムアルデヒドの液滴であり得る。水滴をプラズマで処理することによってOHラジカルが生成されることができる。さらに、適用安全性(die Anwendungssicherheit)を高めるために、水滴は、例えばオゾン又は窒素酸化物などの、発生する刺激性ガスを形成し、それにより、これらのガスによる環境負荷を回避するように働かせることができる。この刺激性ガスの結合は、例えば、水滴に溶解したオゾンによって、特に消毒のために、刺激性ガスによる作用の増加をもたらす可能性がある。装置は、粒子分離用の排気流にも使用されることができる。装置は、蒸気循環路又は衛生室とその換気循環路にも使用でき、エアロゾルもプロセス媒体を形成することができる。
【0018】
装置は、プラズマ及び音波を生成するための生成ユニット内に配置されることができる。生成ユニットは、スピーカー、医療機器、害虫防御機器又はパイプシステムであることができる。生成ユニットは外部ハウジングを有することができ、その中に装置が配置される。装置は、自己完結型、即ち、外部ハウジングを有する生成ユニット無しでも使用されることができる。
【0019】
音波が圧電トランスのプラズマ生成における変調によって生成されれば、ノイズを引き起こす可能性のある、以下の障害メカニズム(Stoermechanismen)が起こり得る。圧電トランスは振動励起される(zu Schwingungen angeregt)。これらの信号は、トランスの固定部及び/又は内部にトランスが配置されるハウジングに伝達され、それにより、音波信号が生成させることができ、その周波数は実質的に、圧電トランスが動作される駆動制御周波数に相当する。このことによって音響的に認識可能な領域のノイズが発生するのを防ぐために、トランスの駆動制御周波数は好ましくは十分に大きくなるように選択される。駆動制御周波数は、例えば100kHzよりも大きく、好ましくは130kHzよりも大きくてもよい。この場合、圧電トランスの振動によって引き起こされるバイブレーションは可聴音波信号につながらない。
【0020】
生成されるプラズマにもノイズが含まれ得る。このノイズは、プラズマ点火の定期的な欠落(Ausbleiben)によって引き起こされ得る。この障害メカニズム(Stoermechanismus)並びにプラズマのノイズの低減の可能性は後に詳述される。
【0021】
変調は振幅変調であり得る。その際、駆動制御回路は、搬送周波数を有する交流電圧を入力電圧として圧電トランスに印加し、印加された電圧の周波数を変調周波数で変調するように構成されることができ、変調周波数は搬送周波数よりも小さい。例えば、変調周波数は搬送周波数よりも少なくとも10倍小さく(Faktor 10 kleiner)てもよい。変調周波数は、その際、生成されるべき音波信号の所望の音調周波数(Tonfrequenz)に相応する。搬送周波数は、圧電トランスの幾何学的寸法及び材料によって特性されることができる。部品長さ、即ち圧電トランスの出力側端面からの入力側端面の距離によって、共振周波数は特定される。搬送周波数は、共振周波数のすぐ近くににあるべきであり、即ち、搬送周波数は、数ヘルツだけ例えば50Hz未満だけしか共振周波数から偏差するべきではない。
【0022】
音波信号は、可聴周波数領域の及び/又は超音波周波数領域の周波数を有することができる。音波信号は、例えば0Hzと102kHzとの間の領域の周波数を有することができる。16Hzから20kHzの間の周波数はここでは可聴周波数領域としてみなされる。超音波周波数領域は、20kHzから1.6GHzの周波数を有する。超音波周波数領域の周波数は、高周波すぎるので、人間には可聴でない。
【0023】
装置は、ハウジングを有することができ、その中に圧電トランスが配置される。ハウジングは共振容積(ein Resonanzvolumen)であり得る。ハウジングは、プラズマ生成の際に発生するオゾンを破壊する(vernichten)ように構成され得る。あるいは又はさらに、ハウジングは、プラズマ生成の際に発生するさらなる刺激性ガスを破壊するように構成され得る。
【0024】
ハウジングは、例えば触媒的に活性なワイヤメッシュを有することができる。ワイヤメッシュは、トランスを取り囲むことができる。あるいはハウジングはラッパ形状に形成されることができ、例えば銅又は別の金属を含むことができる。ハウジングは、ファラデーケージ(ein Faraday’scher Kaefig)であり得る。ハウジングは、MnO2(軟マンガン鉱(Braunstein))によってコーティングされることができる。ここで挙げられるハウジングの実施形態は、プラズマ生成の際に生成されるオゾン及び他の刺激性ガスをハウジングによって破壊することを可能にする。相応に、潜在的に健康を害する虞のあるオゾンによる汚染は、妨げられることができる。多くの用途において、例えば、スピーカーへの装置の使用において、プラズマは、所望の音波生成にともなう単なる副産物である。ハウジングはこの用途に対して、オゾン汚染を回避する効果的な可能性を提供する。
【0025】
ワイヤメッシュ(Drahtgeflecht)として又はラッパ形状(Trompetenform)としてのハウジングの形態は、トランスから生成される音波信号に影響しない又は音波信号を減衰させない方法で、生成されたオゾンを破壊することを可能にし得る。波信号はワイヤメッシュの開口を介して又はラッパ形状を介して、妨げられることなく外に出る(austerten)ことができる。
【0026】
トランスはローゼン型トランスであり得る。このトランスは、特に、入力電圧が印加される入力領域と、出力領域とを有することができ、入力領域に入力電圧が印加されると、入力領域とは反対側の、出力領域の出力側端面には高電圧が生成される。入力電圧はその際、低電圧であり、例えばバッテリに由来することができる。出力側端面において生成される高電圧によって、プラズマを生成することができる。
【0027】
トランスは出力領域を有することができ、出力領域において、別個の対向電極なしで、プロセス媒体内で非熱的大気圧プラズマを点火するために十分な高電圧が生成可能である。生成された出力電圧は、プロセス媒体の原子及び分子をイオン化するのに十分なほど大きい。
【0028】
あるいは、装置はさらに、対向電極を有することができ、装置は、プラズマが圧電トランスの出力領域と対向電極との間に生成される電圧を用いて点火されるように構成される。
【0029】
対向電極を省略することは、装置の設計をさらに小型化することを可能にし得る。対向電極の使用は、生成されるプラズマビームを所望のように形成することを可能にし得る。さらに、対向電極に対してプラズマを点火することによって、プラズマに起因し得る音響的ノイズを非常に強く又は完全に抑制することができ、特に、オーディオ分野のツイーターとしての装置の使用に対して、大幅な品質の改善に寄与する。
【0030】
装置は、化学的反応を、可能にし、加速し、又は触媒するために設けられ、適合されていることができる。装置は、特に、例えば、窒素酸化物、一酸化炭素及び/又は細塵等の汚染物質を破壊し又は分解するために設けられ、適合されていることができる。
【0031】
装置は、表面を活性化し(aktivieren)又は滅菌する(sterilisieren)ように設けられ、適合されていることができる。
【0032】
上述のプラズマのノイズは以下の機構によって生成されることができる:トランスに印加される入力電圧の各ゼロクロス(Nulldurchgang)又は各半波(Halbwelle)において実際にプラズマ点火が起こるわけではない。対向電極が省略されると、約3分の1から4分の1のゼロクロスごとに、1回のドロップアウト(einem Aussetzer)、即ちプラズマ点火の欠落(einem Ausbleiben)が起きる。結果として、駆動制御信号の周波数におけるプラズマ点火は、例えば駆動制御周波数の4分の1の周波数で起きるドロップアウトによって、重畳される(ueberlagert)。例えば駆動制御周波数が50kHzであれば、ドロップアウトは、約15kHzの周波数で起き得る。相応に、ドロップアウトは可聴領域の周波数で起こる。したがって、プラズマ点火の欠落によって、音響的に認識可能なノイズが生成され得る。プラズマが対向電極に対して点火されれば、プラズマ点火の欠落はよりまれにしか起こらない。したがってノイズの周波数は超音波領域にシフトされることができる。このことは、プラズマスピーカーに装置を適用する場合に特に重要である。
【0033】
あるいは又はさらに、プラズマのノイズは、圧電トランスを著しくより高い駆動周波数で駆動することによっても、超音波領域にシフトされることができる。プラズマ点火の欠落の頻度が同じであれば、この場合、ノイズの周波数も超音波領域に移動する。可聴周波数スペクトルにおけるプラズマのノイズを回避するために、駆動周波数は、例えば100kHzより、好ましくは130kHzより高いとよい。この場合、定期的なプラズマ点火の欠落はその周波数が可聴領域外にあるノイズのみを生じさせる。
【0034】
プロセス媒体は排気ガスであり得る。排気ガスは、内燃機関の排気ガスであり得る。
【0035】
さらなる実施形態において、誘電バリアは、圧電トランスの出力側端面に直接隣り合って(unmittelbar anliegend)配置されることができ、装置は、出力側端面において生成される高電圧を点火空間に容量的に結合するように構成さており、点火空間内にはプロセス媒体があり、したがって点火空間内では非熱的大気圧プラズマがプロセス媒体内において点火される。相応に、この実施形態においては、プラズマはトランスの出力側端面において直接的には点火されず、誘電バリアを介して端面から分離されている点火空間内で点火される。
【0036】
誘電バリアは、例えば、ガラス、SiO2又はAl2O3を含む層であり得る。
【0037】
誘電バリアは、トランスのコーティングによって形成されていてもよい。コーティングは、外部電極を除いて(wobei die Aussenelektroden frei von der
Beschichtung bleiben)圧電トランスを完全に覆ってもよい、又はトランスの出力領域だけを覆ってもよい。
【0038】
あるいは、トランスは、圧電トランスの出力領域を囲むキャビティ内に配置されることができる。キャビティは側壁を有することができ、キャビティの側壁は誘電バリアから形成される。その際、側壁は誘電体からなる。トランスはキャビティ内に挿入(eingeschoben)されることができる。キャビティは、装置に固定されるように構成されたキャップによって形成されていてもよい。
【0039】
圧電トランスから空間的に分離された点火空間内におけるプラズマの点火は、特定の用途に対して有利であり得る。プロセス媒体がガス状媒体ではなく、流体又は生物学的組織であれば、トランスとプロセス媒体とが互いに直接接触することを回避するために、プラズマは好ましくは圧電トランスから空間的に分離された点火空間内で点火される。流体は別の場合にはトランスを損傷する虞がある。生物学的組織もまた、圧電トランスとの直接接触によって破壊される虞がある。非熱的大気圧プラズマを生成するための装置が、例えば医療機器内で、例えば内視鏡で、使用される場合、生物学的組織及びトランスが相互に直接接触することを避けるために、第1圧電トランスの出力側端面には、好ましくは誘電バリアが配置されている。したがって、医療機器を使用する際の安全性を向上させることができる。
【0040】
組織又は流体がプロセス媒体として使用されれば、プロセス媒体はトランスの振動を減衰させる可能性がある。しかしながら、誘電バリアを介してトランスとプロセス媒体とを分離することによって、プロセス媒体がトランスの振動を減衰させないことが確実にされることができる。
【0041】
プラズマが高圧下又は高温において点火されなければならない用途においても、プラズマがトランスから空間的に分離される点火空間において点火されることは有利である。このようにして、トランスが、高圧及び/又は高温に曝されるのを避けることができる。そうでない場合は、高圧及び/又は高温がトランスを損傷し、その寿命が短くなってしまう虞がある。
【0042】
装置が、プラズマの点火のために、攻撃的な媒体、又は高温下又は高圧下で使用される場合、装置は、好ましくは、圧電トランスの、誘電バリアで囲まれている部分のみが、プロセス媒体と接触するように構成される。この場合誘電バリアは、好ましくは、例えばガラスなどの不活性誘電体である。装置の残りの部分は、プロセス媒体に対してカプセル化(von dem Prozessmedium abgekapselt)されることができる。
【0043】
あるいは、圧電トランスによって生成された高電圧は相応に構成された目標デバイス(Zielapparatur)を介して点火チャンバ内に結合されることができる。例えば、目標デバイスは、ガラス製のパイプセクション(ein Rohrstueck)を有することができ、そこに圧電トランスが装入される(herangefuehrt)ことができる。目標デバイスは、点火チャンバと機械的に結合されるように構成されることができる。例えば、目標デバイスは、例えば空調システムの一部又は蒸気発生器の一部などのさらなるパイプセクションと接続されることができ、プラズマはこのようにして空調システム又は蒸気発生器に結合されることができる。相応に、生成されたプラズマは、目標デバイスを介して、所望の使用場所に導かれることができる。
【0044】
さらに、プロセス媒体が導電性である用途において、トランスを、誘電バリアを介してプロセス媒体から分離することは有利である。その際、例えば、空調システム又は工作機械の構成金属の中に装置が組み込まれている。
【0045】
さらに誘電バリアは、プラズマを化学反応の生成、加速又は触媒に使用する用途でも有利であり得る。このような用途のためには、誘電バリア無しのトランスがプロセス媒体と接触し、そこで直接プラズマが点火されることも同様に有利であり得る。
【0046】
さらに装置は、第2圧電トランスを有し、駆動制御回路は、非熱的大気圧プラズマを両圧電トランス間の電圧によって生成するように、第2圧電トランスに入力電圧を印加するように構成されることができ、第1及び第2圧電トランスは相互に180度だけ位相シフトされて駆動制御される。相応に、プラズマは、特に両トランスの間で点火されることができる。両トランスに印加される入力電圧はその際それぞれ振幅変調される。
【0047】
両トランスの間でプラズマを点火することによって、トランスと対向電極との間でのプラズマ点火の際と同様にノイズが抑えられる。反対位相で動作する(gegenphasig betriebenen)2つのトランスの間でプラズマが点火されると、プラズマ点火の欠落(ein Ausbleiben)は、対向電極に対する点火の場合よりも、より低い周波数及び/又は頻度で起きる。相応に、ノイズの周波数もさらに超音波領域に移動し、したがってノイズは音響的に認識できなくなる。ノイズの抑制に基づいて、生成される音波信号の品質は著しく改善されることができる。
【0048】
それらの間でプラズマを点火する両トランスは、同一であってもよい。あるいは、それらのトランスはその長さ及び/又は材料が互いに異なっていてもよい。
【0049】
さらに装置は、少なくとも1つのさらなる圧電トランスを有し、その圧電トランスは、第1圧電トランスの長さ及び/又は材料と異なる長さ及び/又は材料を有する。駆動制御回路は、さらなる圧電トランスが変調の結果として同様に音波信号を生成するように、さらなるトランスに印加される入力電圧の変調を行うように構成されている。
【0050】
トランスは異なる周波数で駆動制御されることができる。トランスは互いに並列に動作されることができる。並列動作とは、ここでは、トランスが隣り合って配置されており、プラズマがトランス同士の間で点火されない運転をいう。長さが異なることにより共振周波数が相互に異なる複数のトランスを使用することにより、生成される音波信号の音響品質を改善することができる。
【0051】
装置は、手持ち機器(ein Handgeraet)であることができる。手持ち機器は、特に、異なる場所でのモバイル使用のためも適した持ち運び可能な機器であり得る。
【0052】
本発明はさらに、上述の装置を有するスピーカーに関する。ここで、特に、装置から生成される音響的音波信号の非常に広い周波数領域にわたる線形周波数応答は、スピーカーの高品質へとつながる。かかるプラズマスピーカーは、理論的には、理想的な高音音波変換器に非常に近い。なぜなら、それは、プロセス媒体をダイヤフラムとして使用するからであり、したがって、無質量(massefrei)のように好適に働き、通常のダイヤフラム材料であれば音色の変化につながる(ansonsten zu klanglichen Verfaerbungen
normaler Membranmaterialien)部分振動(Partialschwingungen)も起こさないことを可能にするからである。
【0053】
本発明はさらに、上述の装置を有する排気装置に関する。その際装置は、特に汚染物質、例えば、窒素酸化物、一酸化炭素及び/又は細塵などの、破壊又は分解に使用されることができる。あるいは、装置は例えば分析目的のためにも使用されることができる。
【0054】
本発明はさらに、上述の装置を有する医療機器に関する。機器において、例えば音波信号、特に超音波周波数領域における超音波信号、及びプラズマは、消毒及び洗浄のために使用されることができる。相乗効果は、2つの異なる信号を用いて洗浄することによって達成できる。医療機器において、特に、非熱的大気圧プラズマ内に含まれる又はこれによって生成される、ラジカル、並びにさらなる生成される反応種、特にO3及びNOxは、例えば虫歯の治療(Kariesbehandlung)、創傷の治療(Wundbehandlung)又は表面の消毒等の各用途のために重要な役割を果たす。プラズマは、その際、生成された音波信号との付加的な組み合わせによって、洗浄及び消毒作用の強化のために使用されることができる。医療機器は、例えば、プローブ又は内視鏡であってもよい。
【0055】
さらに本発明は、上述の装置を有する害虫防御(Schaedlingsabwehr)のための機器に関する。例えばラット、マウス、テンだけでなく、犬や子供も超音波を用いて遠ざけることができる。プラズマも、害虫の駆除(Vertreibung der Schaedlinge)における相乗効果に寄与することができる。害虫駆除のための機器は、例えば車、庭、倉庫、例えば空調システムなどのパイプシステムに使用されることができる。
【0056】
さらなる態様によれば、本発明は粒子分析のための分析機器に関し、分析機器は、分析目的のために及び/又は排気ガス流の洗浄のために及び/又は関連する粒子(der betreffenden Partikel)を分解するために粒子をイオン化するように配置され、構成された装置を有する。
【0057】
さらなる態様によれば、本発明はパイプシステムに関し、パイプシステムは、上述の装置、又はかかる装置を有するスピーカー、又はかかる装置を有する排気装置(Auspuff)、又はかかる装置を有する医療機器、又はかかる装置を有する害虫防御装置(Schaedlingsabwehr)、又はかかる装置を有する分析機器を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
以下では、本発明は図面を参照しながらより詳細に述べられる。
【
図2】第1実施形態によるプラズマ生成装置と音波信号を模式的に示す図である。
【
図3】第2実施形態による装置を模式的に示す図である。
【
図4】第3実施形態による装置を模式的に示す図である。
【
図5】2つの相互に平行に配置されたトランスを有する第4実施形態による装置を示す図である。
【
図6】誘電バリアの後方でプラズマ点火が行われる第5実施形態による装置を横断面で示す図である。
【
図7】第5実施形態の変形例による装置を横断面で示す図である。
【
図8】
図7に示された装置を斜視図で示す図である。
【
図11】第6実施形態の第1変形例による装置を示す図である。
【
図12】第6実施形態の第2変形例による装置を示す図である。
【
図13】第6実施形態の第3変形例による装置を示す図である。
【
図14】第6実施形態の第3変形例による装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、圧電トランス1を斜視図で示す。圧電トランス1は特にプラズマ生成器内で非熱的大気圧プラズマを生成することができる。
【0060】
圧電トランス1は、圧電性に基づく共振トランスの形式の一種であり、従来の磁気トランスとは異なり電気機械システムである。圧電トランス1は例えばローゼン型のトランスである。
【0061】
圧電トランス1は入力領域2及び出力領域3を有し、出力領域3は長手方向zにおいて入力領域2に連結している。入力領域2は圧電トランス1電極4を有し、電極4には交流電圧が印加されることができる。電極4は圧電トランス1の長手方向zにおいて延在している。電極4は、長手方向zに対して垂直である積層方向xにおいて、圧電材料5と交互に積層されている。圧電材料5は積層方向xにおいて分極されている。
【0062】
電極4は圧電トランス1の内部に配置されており、内部電極とも称される。圧電トランス1は第1側面6と、第1側面6に対向する第2側面7を有する。第1側面6上には第1外部電極8が配置されている。第2側面7上には第2外部電極(図示されていない)が配置されている。内側にある電極4は積層方向xにおいて、第1外部電極8又は第2外部電極のいずれかと電気的にコンタクトしている。
【0063】
入力領域2は、電極4同士の間に印加される低い交流電圧で駆動制御されることができる。入力側に印加される交流電圧は、圧電効果に基づいてまず機械的振動に変換される。機械的振動の周波数はその際、実質的に圧電トランス1の幾何学的寸法と機械的構造に依存する。
【0064】
出力領域3は、圧電材料9を有し、内部に電極は存在しない(frei von innenliegenden Elektroden)。出力領域3の圧電材料9は長さ方向xにおいて分極している。出力領域3の圧電材料は、入力領域2の圧電材料5と同一の材料であり、圧電材料5及び9はその分極方向において異なることができる。出力領域3において、圧電材料9は、長手方向zにおいて完全に分極されている、単一のモノリシックな層(einer einzigen monolithischen Schicht)に形成されている。出力領域3の圧電材料9は、単一の分極方向を有する。
【0065】
入力領域2の電極4に交流電圧が印加されると、圧電材料5,9の内部において機械的波を形成し、圧電効果によって出力領域3において出力電圧が生成される。出力領域3は出力側端面10を有する。出力領域において、端面10と、入力領域2の電極4の端部との間の電圧が生成される。その際、出力側端面10では、高電圧が生成される。その際、出力側端面と圧電トランスの環境との間にも、プロセス媒体をイオン化する強い電界を生成するのに十分な高い電位差が発生する。
【0066】
このようにして圧電トランス1は、ガス又は流体を電気的励起によってイオン化する状態にある高い電界を生成する。その際、それぞれのガス又はそれぞれの流体の原子又は分子はイオン化されプラズマを形成する。圧電トランス1の表面の電界強度がプラズマの点火電界強度を超えると、イオン化が常に発生する。プラズマの点火電界強度は、原子又は分子のイオン化に必要な電界強度を意味する。
【0067】
図1に示される圧電トランスは、非熱的大気圧プラズマの生成とともに、音波信号の生成のためにも同時に使用されることができる。
図2はプラズマ及び音波信号を生成するための装置を示す。装置は、圧電トランス1に加えて、圧電トランス1に入力電圧を印加するように構成された駆動制御回路11をさらに有する。入力電圧は、入力領域2の電極4に印加される上述した交流電圧である。入力電圧の周波数は、以下では搬送周波数とも称される。入力電圧の周波数は、圧電トランス1を第1高調波で動作させるために、圧電トランス1の共振周波数と同一であるか、又は少なくとも近い。
【0068】
駆動制御回路11は、したがって、圧電トランス1に印加される電力の振幅変調を行うように構成されている。その際、圧電トランス1に印加される入力電圧の振幅は、変調周波数によって変調される。変調周波数は、搬送周波数よりも低い。入力電圧の振幅の変調に応じて、圧電トランス1の出力領域3で生成される高電圧も変調される。圧電トランス1で生成されるプラズマの出力は変調周波数で変動する。生成されるプラズマの出力の変動によって、音波信号が生成され、その周波数は変調周波数と一致する。
【0069】
生成された音波信号は、0Hzから102kHzの周波数範囲において線形周波数応答を有する。ここで、線形周波数応答として、一定の入力電力から出発して、所与の周波数領域内で少なくとも5dB未満だけ偏差するか、又は、生成された音波信号の振幅が所与の周波数領域内の信号の周波数には依存しない、という態様が示される。
【0070】
装置はハウジング12をさらに有する。ハウジング12は圧電トランス1を取り囲む。
図2に示す実施形態では、駆動回路11はハウジング12内に配置されている。あるいは、駆動回路11は、ハウジング12外に配置されてもよい。
【0071】
ハウジング12は、触媒的に活性なワイヤメッシュであり得る。ハウジング12は、トランス1によって生成された音波信号がハウジング12から出ることができるように構成されている。ハウジング12は、圧電トランス1によって生成されたプラズマを吸収するように構成されている。特にハウジングはプラズマ生成時に発生するオゾン(O3)を吸収すべきである。ハウジング12は、好ましくは、接地された、場合によっては触媒的に活性なワイヤメッシュとして構成されている。
【0072】
あるいは、圧電トランス1は部分的にだけハウジング12内に配置されてもよい。さらなる実施形態では、圧電トランス1を取り囲むハウジング12は設けられていない。
【0073】
装置は、ハウジング12に代えて又は加えて、外部ハウジングを有してもよく、その中には、装置の、さらなる全ての要素が配置されている。
図1に示す実施形態では、圧電トランスに印加される入力電圧は、トランス1の出力領域3において、別個の対向電極無しにプラズマを点火する交流電圧を生成するために十分な強さを有している。
【0074】
図3は、第2実施形態による装置を示し、そこには対向電極13が設けられている。第2実施形態においても、駆動制御回路11は、圧電トランス1に印加される入力電圧の振幅変調を行うように構成されており、音波信号が生成される。
【0075】
対向電極13は、圧電トランス1の出力側端面10の前に配置されている。対向電極13は所定の電位、特にアース電位に接続されている。圧電トランス1の出力側端面10と対向電極13との間の電圧は、プラズマ点火を提供する。対向電極13は、
図3に示されるように圧電トランス1の出力領域3の近くに分かれて配置されるか、又は、装置のハウジング12に相応することもできる。さらに、任意で、追加の外側ハウジンが設けられていてもよい。
【0076】
対向電極13に対してプラズマを点火することにより、プラズマに由来する音響ノイズを大幅に抑制することができ、特に、オーディオ分野におけるツイーター(Hochtoener)としての使用に相当の品質改善が得られる。
図4は、非熱的大気圧プラズマ及び音波信号の生成のための装置の第3実施形態を示す。装置は、2つの圧電トランス1、14を有する。圧電トランス1,14は、駆動制御回路によって180度だけ位相シフトされて動作する。プラズマは両トランス1,14の間で点火される。駆動制御回路11は、やはり、両圧電トランス1,14に印加される入力電圧の振幅変調を行うように構成されている。
【0077】
駆動制御回路11は、
図4に模式的に示されるように、2つの別個の基板上に別々に形成されてもよく、それぞれ1つの基板は、トランス1,14のうちの1つと接続されている。あるいは、駆動制御回路11は、トランス1,14の両方と接続される単一の基板上に形成されていてもよい。
【0078】
位相シフトされて作動する両圧電トランス1,14の間のプラズマの点火は、同様に、プラズマに起因する白色音響ノイズを非常に強く又は完全に抑制する。さらに、装置は隣り合って配置される複数の圧電トランス1を有し、これらは、音波出力を増加させるために、それぞれプラズマと音波信号を生成する。圧電トランス1はその幾何学的寸法が異なる可能性があり、したがって、それぞれの共振周波数は相互に異なる可能性がある。この場合、駆動制御回路11は圧電トランスを異なる搬送周波数で駆動制御するように構成されている。
【0079】
図5は、第4実施形態による装置を示す。装置は、同様に、2つの圧電トランス1,14を有する。両圧電トランス1,14は相互に平行に配置されている。相応に、両圧電トランス1,14の出力側端面10は同じ方向を向いている。両圧電トランス1,14は、その長さが異なる。相応に、両圧電トランス1,14は、その共振周波数が異なる。
【0080】
両圧電トランス1,14は駆動制御回路11と接続されている。駆動制御回路11は、両トランス1,14のそれぞれに入力電圧として交流電圧を印加するように構成されており、交流電圧の周波数はそれぞれのトランス1,14の共振周波数に相応する。駆動制御回路11はさらに、それぞれ入力電圧の振幅の変調を行うように構成されており、両トランス1,14から変調の結果として音波信号が生成される。
【0081】
音波信号はしたがって複数の圧電トランス1,14によって生成され、その共振周波数が、したがって、駆動制御回路11からトランス1,14に印加される入力電圧の周波数が異なる。生成された音波信号の品質は、したがって、単一のトランス1のみから生成される信号に対して改善されることができる。
【0082】
図6は第5実施形態による装置を示す。装置は、圧電トランス1及び誘電バリア15を有する。誘電バリア15は圧電トランス1の出力側端面10の前に直接配置されている。圧電トランス1と誘電バリア15との間にはギャップ16が配置されている。
【0083】
プラズマ点火は、誘電バリアを介して圧電トランス1から分離されている点火空間17において行われる。プロセス媒体は点火空間17内にある。相応に圧電トランス1はプロセス媒体と直接接触していない。
【0084】
特に、点火空間17内で高い圧力及び/又は高い温度及び/又は攻撃的な又は腐食性のプラズマ媒体が使用される用途では、圧電トランス1から誘電バリア15を介して分離されている点火空間17におけるプラズマ生成は有利である。この場合、圧電トランス1は高圧、高温又はプロセス媒体によって損傷することが回避されることができる。プロセス媒体が流体又は生物組織である用途では、圧電トランス1から誘電バリア15を介して分離されている点火空間17内にプラズマが生成されることが有利である。かかる用途は、例えば非熱的大気圧プラズマを生成するために圧電トランス1を有する内視鏡であり得る。
【0085】
圧電トランスから誘電バリア15を介して分離されている点火空間17内でのプラズマ点火のさらなる利点は、この場合、プロセス媒体が圧電トランス1の振動を減衰させないことにある。これは、特に流体又は固体のプロセス媒体にとって特に重要である。
【0086】
圧電トランス1を損傷することなく、導電性材料に対するプラズマ点火を可能にするために、誘電バリア15の後方(hinter)でのプラズマ点火が有利であり得る。誘電バリア15は、例えばガラス、SiO2又はAl2O3等の任意の誘電体製の薄い壁であり得る。誘電バリア15は、圧電トランス1の出力側端面10で生成される出力が容量的に点火空間17に結合され、従って点火空間17をトリガするように構成されている。
【0087】
代替的実施形態では、誘電バリア15はトランス1のコーティングによって形成されてもよい。この場合、コーティングは、例えばガラス、SiO2又はAl2O3等の誘電体材料から構成されてもよい。
【0088】
誘電バリア15は圧電トランス1上に配置されるキャップ(einen Aufsatz)によって形成され得る。キャップは、プロセス媒体を圧電トランス1の出力側端面10に供給するように構成されることができる。キャップはノズルキャップであり得る。
【0089】
図7は第5実施形態の変形例による装置を断面図で示す。
図8はこの装置を斜視図で示す。
【0090】
誘電バリア15は平坦な壁によって形成されるのではなく、圧電トランス1の側壁が出力領域3において部分的に突出するキャビティを構成する。圧電トランス1は誘電バリア15から形成されるキャビティ内に挿入されることができる。キャビティは、例えば圧電トランス1をその長さの4分の1まで覆うことができる。この場合も、圧電トランス1と誘電バリア15との間にはギャップ16が残る。プラズマは、圧電トランス1から誘電バリア15を介して分離される点火空間17内で点火される。
【0091】
図9及び
図10は第6実施形態の装置を示す。点火空間17はここでは間18によって形成される。パイプ18は、例えば鋼製の壁を有する。プロセス媒体は、パイプ18を介して任意の方向に流れるか又はパイプ18内に静的に存在することができる。
【0092】
装置は、複数の、例えば3つの圧電トランス1,14,19を有し、これらは点火空間17からそれぞれ平面状(flaechige)誘電バリア15を介して分離されている、トランス1,14,19は、パイプ18に沿って配置されている。プロセス媒体がパイプ18に沿って流れると、プロセス媒体は3つの圧電トランス1,14,19を次々と通過する。
【0093】
トランス1,14,19はパイプ18の外面20に配置されている。誘電バリア15はパイプ18の内面にそれぞれ配置されている。その際、誘電バリア15は圧電トランス1,14,19の直接前にそれぞれ配置されており、ここから壁のみを介して分離されている。
【0094】
各トランス1,14,19はその出力側端面10に高電圧を生成することができ、これは、誘電バリア15を介してパイプ18の内部に、即ち点火空間に結合されており、そこでプラズマ点火がトリガされる。各圧電トランス1,14,19と接続された駆動制御回路は、圧電トランス1,14,19のそれぞれを変調された入力電圧で駆動制御するように構成されており、したがって音波信号が点火空間17内で生成される。いる。
【0095】
図11は第6実施形態の変形例を示す。
図11に示される実施形態では、例えば
図7及び8のように誘電バリア15はキャビティとして形成されている。点火空間を形成するパイプ18の壁は、誘電バリア15が導入される(eingebracht)凹部22を有する。圧電トランス1はまたキャビティ内に配置されている。
【0096】
図12はこの実施形態の第2変形例を示す。
図12に示される変形例は、パイプ18内には誘電バリア15のみがパイプ18の内面21に配置されており、圧電トランス1はパイプ18の外面22に配置されている、という点で、
図10に示される実施形態と異なっている。トランス1及び誘電バリア15の数は任意に大きくすることができる。
【0097】
図13及び14は第6実施形態の第3変形例を示し、複数のトランス1、14,19が設けられている。パイプ18の壁は複数の凹部22を有し、その中にはそれぞれ誘電バリア15が配置されており、キャビティを形成している。これらのキャビティのそれぞれの中に圧電トランス1,14,19が配置されており、これはプラズマ点火をパイプ18の内部で生成することができる。
【0098】
ここで示された実施形態のそれぞれでは、圧電トランス1から誘電バリア15を介して分離された点火空間17内でプラズマ点火が行われ、駆動制御回路11は圧電トランス1と接続されており、入力電圧をトランス1に印加し、この入力電圧の変調を行うように構成されている。変調に基づいて音波信号が生成される。相応にこれらの実施形態において、音波信号は常に点火空間17内で行われる。
【符号の説明】
【0099】
1 圧電トランス(piezoelektrischer Transformator)
2 入力領域(Eingangsbereich)
3 出力領域(Ausgangsbereich)
4 電極(Elektrode)
5 圧電材料(piezoelektrisches Material)
6 第1側面(erste Seitenflaeche)
7 第2側面(zweite Seitenflaeche)
8 第1外部電極(erste Aussenelektrode)
9 圧電材料(piezoelektrisches Material)
10 出力側端面(ausgangsseitige Stirnseite)
11 駆動制御回路(Ansteuerschaltung)
12 ハウジング(Gehaeuse)
13 対向電極(Gegenelektrode)
14 圧電トランス(piezoelektrischer Transformator)
15 誘電バリア(dielektrische Barriere)
16 ギャップ(Spalt)
17 点火空間(Zuendungsraum)
18 パイプ(Rohr)
19 圧電トランス(piezoelektrischer Transformator)
20 外面(Aussenseite)
21 内面(Innenseite)
22 凹部(Ausnehmung)
x 積層方向(Stapelrichtung)
z 長手方向(Laengsrichtung)