(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】ミニガストリン誘導体、特にCCK2受容体陽性腫瘍の診断及び/又は治療において使用するためのミニガストリン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20220218BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20220218BHJP
C07K 14/595 20060101ALN20220218BHJP
A61K 38/22 20060101ALN20220218BHJP
A61K 51/08 20060101ALN20220218BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20220218BHJP
G01N 33/574 20060101ALN20220218BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
C07K7/08
C07K14/595
A61K38/22
A61K51/08 200
A61K51/08 100
A61P35/00
G01N33/574
(21)【出願番号】P 2020516682
(86)(22)【出願日】2018-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018073020
(87)【国際公開番号】W WO2019057445
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-05-18
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501494414
【氏名又は名称】パウル・シェラー・インスティトゥート
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ベーエ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス エル. ミント
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー グロープ
(72)【発明者】
【氏名】ローガー シブリ
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-501116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0041903(US,A1)
【文献】Molecules,2017年08月02日,22(8): 1282,pp. 1-21
【文献】Angew. Chem. Int. Ed.,2013年,Vol. 52,pp. 8957-8960
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式
X-Z-Ala-Tyr-Gly-Trp-
Nle-Asp-Phe-NH
2(Y)
[式中
、配列Z
、Ala、Tyr、Gly、Trp、Nle、Asp、及びPheのアミノ酸の間、前又は後ろで
連結しているアミド又は末端アミド結合の少なくとも1つは、
あるいはY(C末端)は、1,4-二置換又は1,5-二置換の1,2,3-トリアゾールにより置き換えられる一方で、Xは、
放射性金属のためのキレーターを含む放射性核種、光活動性物質及び光増感剤から選択される光学活性化学化合物、ゲムシタビン、ドキソルビシン及びシクロホスファミドから選択される化学療法活性化合物、又は光学活性造影剤もしくはMRI造影剤を有するナノ粒子又はリポソームを表し、Yは
、アミド、第一級及び第二級アミド、遊離カルボン酸、並び
に直鎖又は分枝鎖のアルキルアルコール、アルケニルアルコール、アルキニルアルコール、芳香族アルコール及び複素環アルコールに由来するアミド及びエステルを含むカルボン酸エステル誘導体
から選択されるペプチドのC末端修飾を表し、かつZは、リンカー又はDGlu*を表し、ここでDGlu*は、1~6個の繰り返しを有するDGlu鎖(-DGlu-から-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-)を表す]
を有するミニガストリン誘導体。
【請求項2】
1つのDGluのみを有するミニガストリン誘導体[Nle
15]-MG11及び/又はミニガストリン誘導体PP-F11Nを提供する、請求項1に記載のミニガストリン誘導体。
【請求項3】
放射性金属のためのキレーターが、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)、NOTA、NOTAGA、CHX-A’’-DTPA及びTCMCからなる群から選択される、請求項
1に記載のミニガストリン誘導体。
【請求項4】
放射性核種が、
177Lu、
90Y、
111In、Ga-68/67、Tc-99m、Cu-64/67、Ac-225、Bi-213、Pb-212及びTh-227からなる群から選択される、請求項
1に記載のミニガストリン誘導体。
【請求項5】
PP-F11N及び[Nle
15]-MG11が、それぞれ
DOTA-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-Ala-Tyr-Gly-Trp-Nle-Asp-Phe-NH
2及び
DOTA-DGlu-Ala-Tyr-Gly-Trp-Nle-Asp-Phe-NH
2
と定義される、請求項2に記載のミニガストリン誘導体。
【請求項6】
DOTA-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-Ala-Tyr-Gly-Trp-Nle-Asp-Phe-NH
2が、
177Luで標識されているか、又はDOTA-DGlu-Ala-Tyr-Gly-Trp-Nle-Asp-Phe-NH
2が、
177Luで標識されている、請求項
5に記載のミニガストリン誘導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミニガストリン誘導体、及びCCK2受容体陽性腫瘍の診断及び/又は治療におけるそれらの使用に関する。
【0002】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、90年代の始めから放射標識したペプチドのための標的タンパク質として使用されている。ソマトスタチン受容体は、オクトレオチド(Lit)のY-90及びLu-177で標識した誘導体での神経内分泌癌のための臨床の第一線の治療においてもたらされるペプチド(Lit)での放射性核種イメージング及び治療のための原型であった。いくつかの放射標識したペプチドは、ガストリン放出ペプチド類似体(GRP)、グルカゴン様ペプチド1類似体(GLP-1)、ニューロテンシン類似体(NT)又はニューロペプチドY類似体(NPY)を含む腫瘍で過剰発現したGPCRを標的とすることを可能にするために試験されていた(Maecke, Reubi J Nucl Med 2008;49:1735-1738)。さらに非常に興味深い標的は、コレシストキニン-2受容体(CCK-2R)である。この受容体は、主に、髄様甲状腺癌(MTC)、小細胞肺癌(SCLC)及び間質性卵巣腫瘍で発現される(Reubi, Int J Cancer. 1996及びReubi, Cancer Res. 1997)。放射標識したガストリン類似体は、標的画像化及び治療のための良好な候補である。In-111で標識したガストリン類似体が、OctreoScan-111と比較してMTCを検出するために優れており、かつ特にそれらがソマスタチン受容体シンチグラフィにおいて陰性である場合に神経内分泌腫瘍に対して追加の情報を与えることが示された(Endocr Relat Cancer. 2006 Dec;13 (4) : 1203-11.;Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2006 Nov; 33 (11):1273-9)。
【0003】
しかし、高い腎臓取り込みによって、放射標識したペプチドを治療に使用できなかった。高い腎臓取り込みは、6個の負に帯電したグルタミン酸に関係する。12個のガストリン関連化合物が設計され、合成され、かつ111Inで標識付けした化合物と比較された。腎臓に対する腫瘍の高い割合に関する最良の化合物は、6個のD-グルタミン酸又は6個のグルタミンを有するミニガストリンである。これらの化合物は、容易に酸化しうるメチオニンをさらに有する。これは、臨床適用についての欠点である。それというのも、受容体親和性がメチオニンの酸化後に劇的に減少し、かつGMP下での製造を劇的に妨害しうるからである。
【0004】
転移性髄様甲状腺癌(MTC)、小細胞肺癌(SCLC)及びさらなるCCK-2受容体陽性腫瘍を有する患者での治療及び画像生成の著しい改善のための高い可能性は、放射標識したガストリン類似体での腫瘍細胞の特異的な標識を有する。この発見についての根拠は、調査したMTCの92%でのそれぞれのCCK-2標的受容体の過剰発現の証拠であり、その証拠はin vitroでの試験により得られた[Reubi 1997]。さらに、同じ作業グループは、小細胞肺癌の57%、星状細胞腫の65%及び間質性卵巣腫瘍の100%で、CCK-2標的受容体の同一の過剰発現を同定した。
【0005】
最初の治療研究(0相研究)は、進行性転移性髄様甲状腺癌を有する8人の患者で実施された。90Yで標識したミニガストリン類似体での治療後に、以前は強く進行していた癌疾患であるMTCの経過について、2人の患者については部分的な寛解に達し、4人の患者は安定化を示した。腎臓における前記アッセイで使用した物質の強い蓄積という点での治療の腎毒性により、この研究を中止しなければならなかった。
【0006】
欧州のCOST発案(European Cooperation in Science and Technology(欧州科学技術協力機構))の支持により、その間に、複数の著しく改善された放射標識したガストリン類似体が種々のワーキンググループによって合成され、かつその特性について調査されている。以前のガストリン類似体と比較して、これらのより新しい物質は、ヒトの組織における吸収に関して、著しく高い腫瘍 対 腎臓の割合を示す[Laverman 2011, Polenc-Peitl 2011, Ocak 2011, Fani 2012]。現在、これらのより新しいガストリン類似体のうち、177Lu-PP-F11(6個のD-Glu残基を有する直鎖状ミニガストリン類似体、以下PP-F11という)は、腎臓での低い蓄積に伴う腫瘍におけるその好ましい高い蓄積によって、今後の放射性核種治療に最適な特性を示した。
【0007】
このPP-11ミニガストリン類似体は、国際公開番号第2015/067473号(WO 2015/067473 Al)に従ってさらに改善されており、その際、ミニガストリン類似体PP-F11は式:X-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-Ala-Tyr-Gly-Trp-Y-Asp-Phe-NH2を有しており、ここで、Yは、メチオニンを置き換えるアミノ酸を示し、Xは、CCK-2受容体関連疾患での診断的介入及び/又は治療的介入の目的のためのペプチドに付着した化学基を表す。特に、腎臓に対する腫瘍の高い割合に関して非常に適した化合物は、6個のD-グルタミン酸又は6個のグルタミンを有するミニガストリン誘導体である。これらの化合物は、生じる可能性のある形態によりGMPでの臨床適用には不利であり、容易に酸化されうるメチオニンを未だ有している。したがって、メチオニンを非酸化性等配電子であるが生物学的活性を保持しているアミノ酸で置き換えることは、酸化電位を有さない化合物を導く。これは、低い腫瘍 対 腎臓の割合をもたらす低い親和性の化合物を導きうる貯蔵及び生成中の酸化を妨げる。国際公開番号第2015/067473号に従った好ましい実施形態において、メチオニンは、ノルロイシンに置き換えられる。このいわゆるPP-F11Nミニガストリンは、優れた腫瘍腎臓比を示し、したがって臨床適用のための非常に期待が持てる候補の1つである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、他の器官、例えば腎臓における同時に非常に低い蓄積によりCCK-2受容体陽性腫瘍における、ペプチドの代謝安定化による蓄積をさらに改善するか又はその受容体親和性及び特異性を改善するミニガストリン誘導体を提供することである。
【0009】
この目的は、式
X-Z-Ala-Tyr-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2(Y)
[式中、連結しているアミド又は末端アミドの少なくとも1つは、配列Zのアミノ酸の間、前又は後ろで、Ala、Tyr、Gly、Trp、Met、Asp、Phe及びNH2を結合し、又はY(C末端)は、1,4-二置換又は1,5-二置換の1,2,3-トリアゾールにより置き換えられる一方で、Xは、CCK-2受容体関連疾患で診断的介入及び/又は治療的介入の目的のためのペプチドに付着した化学基を表し、Yは、ペプチドのC末端修飾、例えばアミド、第一級及び第二級アミド、遊離カルボン酸、並びに制限されることなく直鎖又は分枝鎖のアルキルアルコール、アルケニルアルコール、アルキニルアルコール、芳香族アルコール及び複素環アルコールに由来するアミド及びエステルを含むカルボン酸エステル誘導体を表し、かつZは、リンカー又はDGlu*を表し、ここでDGlu*は、1~6個の繰り返しを有するDGlu鎖(-DGlu-から-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-)を表す]
を有するミニガストリン誘導体により本発明に従って達せられる。
【0010】
これらのミニガストリン誘導体は、高い受容体特異的な細胞内部移行、CCK2に対する優れたIC50値、及び十分な血漿安定性を有する。
【0011】
好ましくは、メチオニンが、ノルロイシン、又は受容体への親和性を保持している他のアミノ酸に置き換えられて、好ましくは1つのDGluのみを有するミニガストリン誘導体[Nle15]-MG11が得られる。
【0012】
放射線癌治療に関して、Xは、放射性金属、例えば177Lu又は90Y又は111Inのためのキレーター、又は非金属、例えば18F、11C、又は放射性ヨウ素のための補欠分子族のような付着基を含む放射性核種、又はプレターゲティングアプローチに適した官能基を表してよい。医療画像を改善するために、Xは、光学活性化学化合物、例えばAlexa Fluor(登録商標)647、IRDye 680RD、DY-700又は任意の他の光活動性物質、及び光学治療適用(光増感剤、例えばPhotofrin、Forscam又はPhotochlorであってよい)を表してよい。双方の適用について、活性化学化合物は、光学活性ナノ粒子であってよい。化学療法的介入治療を支持するために、Xは、化学療法的に活性のある化合物、例えばゲムシタビン、ドキソルビシン又はシクロホスファミドを表してよい。Xは、造影剤(色素、放射性核種)と治療実体(細胞毒性化合物、放射性核種)との組み合わせも表してよい。記載した薬剤の送達は、Xとしてナノ粒子又はリポソームにより行われてよいが、それらは化学療法剤を含んでいる。
【0013】
Zは、ペプチドの生物学的特性との潜在的な干渉を回避するために、距離を保ちながらペプチドとイメージングプローブ又は治療法とを共有結合するリンカー又はスペーサーユニットを提示してもよい。
【0014】
リンカー部分は、これらに制限されないがヘテロ原子(O、S、N、Pを含む)1~10個を含む炭素長1~20個の直鎖又は分枝鎖のアルキル鎖、全ての炭素又は複素環芳香族部分、例えばフェニル、ナフタレン、トリアゾール、チオフェン、フラン等、並びにリンカー主鎖又は1つもしくは複数の側鎖での不飽和C-C又はC-ヘテロ原子(O、N、S、P)結合を含んでよいが、これらに制限されない。
【0015】
好ましくは、Xは、キレーターを表し、ここで放射性金属についての1つのキレーターは、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)であってよく、及び/又は放射性核種は、177Lu、Ga-68/67、90Y及び111Inからなる群から選択される。他の放射性核種(Tc-99m、Cu-64/67、Ac-225、Bi-213、Pb-212、Th-227)及び他の適したキレーターは、当該技術分野において公知のもの、例えばMAG3、HYNIC、NOTA、NODAGA、DOTAGA、CHX-A’’-DTPA、DFO、TCMC、HEHA、サルコファジン、サイクラムの架橋した変型及びサイクレンキレーターである。
【0016】
適したミニガストリン誘導体は、PP-F11N及び[Nle15]-MG11であり、これらは、
DOTA-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-Ala-Tyr-Gly-Trp-Nle-Asp-Phe-NH2(PP-F11N)及び
DOTA-DGlu-Ala-Tyr-Gly-Trp-Nle-Asp-Phe-NH2([Nle15]-MG11)
と定義される。
【0017】
好ましくは、Xは、診断機能(例えば光学活性又はMRI造影剤)を有するか、又はそれら自体による治療機能を有しもしくは活性化合物を有する、ナノ粒子又はリポソームを表す。
【0018】
本発明のミニガストリン誘導体の使用に関して、CCK-2受容体関連疾患での診断的介入及び/又はCCK-2受容体関連疾患での治療的介入が予測されている。
【0019】
本発明の好ましい実施形態を、以下に示す添付の図面に関してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】いわゆるトリアゾールスキャンによる誘導型における[Nle
15]-MG11の特異的な内部移行
【
図2】いわゆるトリアゾールスキャンによる誘導型における[Nle
15]-MG11の最大半量阻害濃度IC
50
【
図3】いわゆるトリアゾールスキャンによる誘導型における[Nle
15]-MG11の血漿安定性
【
図5】PP-F11Nと[Nle
15]-MG11誘導体DOTA[Nle
15、Tyr
12-(Tz)-Gly
13]-MG11との比較
【
図6】主にDOTA[Nle
15]-MG11でのトリアゾールスキャン
【
図8】表2からのビス-TZMGの最大半量阻害濃度IC
50
【
図10】2つの一置換トリアゾールミニガストリン 対 追加の改善を示す双方の変異を有する類似体のin vitroでの特徴
【
図11】表3によるPPF11N及びその誘導型の合計な内部移行
【
図12】表3によるその誘導型におけるPPF11Nの最大半量阻害濃度IC
50
【
図13】表3によるその誘導型におけるPPF11Nの血漿安定性
【0021】
[Nle15]-MG11は、種々のタイプの癌において過剰発現させたコレシストキニン2受容体(CCK2R)に対して高い親和性及び特異性を有する調節ペプチドであるミニガストリンの切断型類似体である。1,4,7,10-テラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)のN末端接合は、金属性放射性核種(例えば117Lu)でのペプチドの放射標識を可能にし、続いてin vivoでの腫瘍イメージング及びペプチド受容体の放射性核種治療のために使用する。
【0022】
腫瘍ターゲティングベクターとしてMG11を使用する欠点は、数分のみの生物学的半減期をもたらす速い酵素分解により腫瘍への取り込みが低いことである。安定な1,4-二置換した又は1,5-二置換した1,2,3-トリアゾールによるペプチド配列における単一アミド結合の体系的置換、いわゆるトリアゾールスキャンは、改善されたタンパク質分解安定性及び腫瘍ターゲティング特性をもたらす。この新たな方法論の一般的な有用性を証明するために、トリアゾールスキャンを、
図6に体系的に示したようにSPPSと銅(I)-触媒化アジド-アルキン環付加(1,4-二置換した1,2,3-トリアゾールについてのCuAAC)との組合せを使用する固相アプローチによりDOTA[Nle
15]-MG11で実施した。1,5-二置換した1,2,3-トリアゾールの導入は、類似しているが、ルテニウム-触媒化アジド-アルキン環付加(RuAAC)を使用する。
【0023】
次の例は、放射標識したトリアゾールペプチド模倣物の合成及びそれらの生理化学的特徴の評価を論ずる。ペプチド接合体の受容体親和性(IC50)、腫瘍細胞内部移行率及び血漿安定性を、in vitroで調査した。異種移植したマウスでのin vivo研究の最初の結果に達した。この計画の最終的な目標は、DOTA[Nle15]-MG11又はPPF11Nの類似体を同定することであり、維持もしくは改善された生物学的活性又は酵素分解に対する優れた耐性を導き、腫瘍への取り込みを改善した。
【0024】
CuAAC及びトリアゾールペプチドの構成要素は、Valdereら及びMascarinらによる文献において報告される適合した手順により製造される。
【0025】
一般的な手順A:ワインレブ(Weinreb)アミドの合成
【化1】
R
1=アミノ酸特異的側鎖
R
2=Boc/Fmoc
対応するFmoc保護又はBoc保護したアミノ酸(1当量)をCH
2Cl
2(0.1M)中で溶解し、そしてDIPEA(2.5当量)及びBOP(1当量)を添加した。その溶液を15分間撹拌し、N,O-ジメチルヒドロキシルアミン(1.2当量)を添加し、そして12~14時間室温で撹拌して反応させた。その溶液を、CH
2Cl
2で希釈し、0.1MのHCl(3×)、飽和NaHCC
3(3×)水溶液及び水(3×)で洗浄した。その有機相を、MgSO
4上で乾燥させ、濾過し、そして溶媒を減圧下で取り除いた。乾燥させたワインレブアミドを、シリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーにより単離した。
【0026】
一般的な手順B:α-アミノアルコールの合成
【化2】
R=アミノ酸特異的側鎖
側鎖に保護されたカルボン酸を有するアミノ酸について、対応するFmoc保護したアミノ酸(1当量)を、アルゴン下で無水THF(0.2M)中で溶解し、0℃に冷却した(氷浴)。N-メチルモルホリン(1.1当量)及びイソブチルクロロホルメート(1.05当量)を添加し、そして15分間0℃で撹拌して反応させた。反応の完了をTLCによりモニタリングした。白色の懸濁液を、-78℃(ドライアイス、アセトン)でTHF/MeOH(3:1、又は純粋なTHF)中でのNaBH
4(2当量)の予め冷却した懸濁液に滴加し、そして20分間撹拌した。還元の完了時に、残留水素化物を水性10%酢酸により急冷し、そしてその溶液を減圧下で濃縮させた。その在留物を酢酸エチルで抽出し(3×)、そしてその有機相を飽和NaHCO
3水溶液(2×)及び水(1×)で洗浄した。その有機層を、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、そして溶媒を減圧下で取り除いた。乾燥させたα-アミノアルコールを、シリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーにより単離した。
【0027】
一般的な手順C:α-アミノアルキン5の合成
C.1 Boc保護したワインレブアミドからのα-アミノアルキンの合成
【化3】
R=アミノ酸特異的側鎖
対応するワインレブアミド(1当量)をアルゴン下で引火乾燥させたフラスコに入れ、そして無水CH
2Cl
2(0.1M)中で溶解させた。その溶液を-78℃(ドライアイス/アセトン浴)まで冷却し、そしてトルエン中1M DIBAL-Hを滴加した(3当量)。1時間撹拌した後に、その反応を、TLCにより完了を確認した。反応が終わっていなかった場合に、トルエン中1M DIBAL-H(1当量)を滴加し、-78℃で1時間再度撹拌して反応させた。出発材料の消費後に、過剰な水素化物を無水MeOHをゆっくりと添加することにより急冷し、そして0℃まで温めて反応させた(氷/水浴)。K
2CO
3(3当量)、ジメチル-(1-ジアゾ-2-オキソプロピル)ホスホネート(2当量)及び無水MeOHを添加し、そしてその反応混合物を12~14時間室温で撹拌した。ロッシェル塩の飽和溶液を添加し、その混合物を30分間撹拌した。その溶液を水及びCH
2Cl
2で希釈し、その水性相をCH
2Cl
2で抽出した(3×)。合した有機相を、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、そして溶媒を減圧下で取り除いた。乾燥させたアルキンを、シリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーにより単離した。
【0028】
C.2 Fmoc保護したワインレブアミドからのα-アミノアルキンの合成
【化4】
R=アミノ酸特異的側鎖
対応するワインレブアミド(1当量)をアルゴン下で引火乾燥させたフラスコに入れ、そして無水CH
2Cl
2(0.1M)中で溶解させた。その溶液を-78℃(ドライアイス/アセトン浴)まで冷却し、そしてトルエン中1M DIBAL-Hを滴加した(3当量)。1時間撹拌した後に、その反応を、TLCにより完了を確認した。反応が終わっていなかった場合に、トルエン中1M DIBAL-H(1当量)を添加し、-78℃で1時間再度撹拌して反応させた。出発材料の消費後に、過剰な水素化物を無水MeOHをゆっくりと添加することにより急冷し、そして0℃まで温めて反応させた(氷/水浴)。K
2CO
3(3当量)、ジメチル-(1-ジアゾ-2-オキソプロピル)ホスホネート(2当量)及び無水MeOHを添加し、そしてその反応混合物を12~14時間室温で撹拌した。ロッシェル塩の飽和溶液を添加し、その混合物を30分間撹拌した。その溶液を水及びCH
2Cl
2で希釈し、その水性相をCH
2Cl
2で抽出した(3×)。合した有機相を、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、そして溶媒を減圧下で取り除いた。Fmoc保護基の切断がTLCにより検出された場合に、粗混合物をCH
2Cl
2(初期スケール0.1M)中で溶解した。DIPEA(2.5当量)及びFmoc-OSu(2当量)を添加し、そして12~14時間室温で撹拌して反応させた。そしてその反応混合物をCH
2Cl
2及び水で希釈した。水性相をCH
2Cl
2で3回抽出した。合した有機相を、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、そして溶媒を減圧下で取り除いた。乾燥させたアルキンを、シリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーにより単離した。
【0029】
C.3 Fmoc保護したα-アミノアルコールからのα-アミノアルキンの合成
【化5】
R=アミノ酸特異的側鎖
DMSO(2.2当量)を無水CH
2Cl
2(1M)中で溶解し、そしてアルゴン下で-45℃(ドライアイス/MeCN浴)まで冷却した。二塩化オキサリル(1.2当量)を気体の発生下で-45℃で滴加した。その溶液を5分間撹拌して、対応するFmoc保護したα-アミノアルコール(1当量、CH
2Cl
2中0.13M)を-45℃で滴加し、そして30分間撹拌した。DIPEA(3当量)を添加し、-20℃まで温めて反応させ(NaCl/氷浴)、そして完了するまでTLCによりモニタリングした。そして、その溶液をCH
2Cl
2で希釈し、その有機相を、水、1M NaHSO
4、及び水で抽出した。合した有機相を、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、そして溶媒を減圧下で取り除いた。続いて、その粗反応物を無水MeOH(初期収量に従って0.1M)中で溶解し、そしてK
2CO
3(3当量)及びジメチル-(1-ジアゾ-2-オキソプロピル)ホスホネート(2当量)を添加し、反応混合物を12~14時間室温で撹拌した。その反応混合物を水で希釈し、その水性相をCH
2Cl
2で3回抽出した。合した有機相を、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、そして溶媒を減圧下で取り除いた。Fmoc保護基の切断がTLCにより検出された場合に、粗混合物をCH
2Cl
2(初期スケール0.1M)中で溶解した。DIPEA(2.5当量)及びFmoc-OSu(2当量)を添加し、そして12~14時間室温で撹拌して反応させた。そしてその反応混合物をCH
2Cl
2及び水で希釈した。水性相をCH
2Cl
2で3回抽出した。合した有機相を、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、そして溶媒を減圧下で取り除いた。乾燥させたアルキンを、シリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーにより単離した。
【0030】
α-アミノアルキン構成要素の光学純度の決定のための一般的な手順D:α-アミノアルキンからのジペプチドの合成
D.1 Boc保護したα-アミノアルキンからのジペプチドの合成
【化6】
R=アミノ酸特異的側鎖
対応するα-アミノアルキン(1当量)を、CH
2Cl
2/TFA/H
2O(75:20:5)(0.05M)の溶液中で溶解し、15~30分間撹拌して反応させ、反応の完了後に、溶媒を減圧下で取り除いた。水及びTFAの残留量をトルエンでの同時蒸発により取り除いた。その残留物をCH
2Cl
2(0.1M)中で溶解し、そしてPG-Ala-OH(2当量、PG=Boc又はFmoc)、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP、2当量)及びDIPEA(5当量)を添加した。室温で撹拌して反応させ、そして完了するまでTLCによりモニタリングした。溶媒を減圧下で粗混合物から取り除き、そして所望のジペプチドをシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーにより単離した。
【0031】
D.2 Fmoc保護したα-アミノアルキンからのジペプチドの合成
【化7】
R=アミノ酸特異的側鎖
対応するα-アミノアルキン(1当量)を、DMF中25%ピペリジン(0.05M)中で溶解し、そして室温で15~30分間撹拌して反応させた。氷冷したH
2Oを反応混合物に添加し、EtOAcで抽出した(3×)。合した有機画分を、MgSO
4上で乾燥させ、濾過し、そして溶媒を減圧下で取り除いた。その残留物をCH
2Cl
2(0.1M)中で溶解し、そしてFmoc-Ala-OH(2当量)、BOP(2当量)及びDIPEA(5当量)を添加した。室温で撹拌して反応させ、そして完了するまでTLCによりモニタリングした。溶媒を減圧下で粗混合物から取り除き、そして所望のジペプチドをシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーにより単離した。
【0032】
一般的な手順E:手動の固相ペプチド合成
rinkアミドMBHA LL樹脂(約100mg、0.03~0.04mmol)を、プロピレンフリット及びテフロンタップを有するプロピレンシリンジ中に置き、そしてCH2Cl2及びDMF中で繰り返し膨張させた。DMF中20%ピペリジンを使用して、Fmoc保護基を切断した(3×3分、室温)。配列の伸長のために、Fmoc保護したアミノ酸又はDOTA-トリス(tert-ブチルエステル)(2当量、0.06mmol)、HATU(1.9当量、0.057mmol)及びDIPEA(5当量、0.15mmol)をDMF中で(合計3mL)、樹脂に添加した。1時間室温で振盪して懸濁させた。溶媒を濾過により取り除き、そして樹脂をDMF及びCH2Cl2で繰り返し洗浄した。反応の完了をカイザー試験によりモニタリングし、そして適宜カップリングを繰り返した。
【0033】
一般的な手順F:固体支持体上でのペプチドのN末端上のアジド官能性の導入
Fmoc保護基の切断後に、遊離N末端アミンを、イミダゾール-1-スルホニルアジドヒドロクロリド(3当量、0.09mmol)、DIPEA(9当量、0.27mmol)及びCuSO4(0.01当量、0.03μmol)の触媒量7でDMF中で(合計2mL)試験した。1時間室温で振盪して懸濁させた。溶媒を濾過により取り除き、そして樹脂をDMF中ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムの0.5%溶液、DMF及びCH2Cl2で繰り返し洗浄した。反応の完了をカイザー試験によりモニタリングし、そして適宜繰り返した。
【0034】
一般的な手順G:固相銅(I)-触媒化環化付加(CuAAC)
Fmoc保護したα-アミノアルキン(2当量、0.06mmol)、DIPEA(1当量、0.03mmol)、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロホスフェート(0.5当量、0.015mmol)及びトリス[(1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル]アミン(TBTA、0.5当量、0.015mmol)をDMF(2mL)中で、N末端アジド官能性に添加し、そして12~14時間室温で振盪して懸濁した。溶媒を濾過により取り除き、そして樹脂をDMF中ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムの0.5%溶液、DMF及びCH2Cl2で繰り返し洗浄した。反応の完了を、脂肪族アジドについての比色分析試験によりモニタリングした。
【0035】
一般的な手順H:固相ルテニウム触媒化環化付加(RuAAC)
Fmoc保護したα-アミノアルキン(2当量、0.06mmol)及び(クロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(シクロオクタジエン)ルテニウム(CpRu(COD)Cl、0.5当量)をDMF中(2mL)でN末端アジド官能性にアルゴン雰囲気下で添加し、そして12~14時間室温で振盪して懸濁した。溶媒を濾過により取り除き、そして樹脂をDMF中ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムの0.5%溶液、DMF及びCH2Cl2で繰り返し洗浄した。反応の完了を、脂肪族アジドについての比色分析試験によりモニタリングした。
【0036】
一般的な手順I:ペプチド接合体の切断及び精製
N末端キレーターDOTA-トリス(tert-ブチルエステル)の最終的なカップリング後に、その接合体を、5時間室温で撹拌しながらTFA/TIS/H2O/フェノール(92.5/2.5/2.5/2.5、6mL)を使用して樹脂から脱保護及び切断した。切断混合物を、樹脂から濾過により分離して、そして窒素流を揮発性成分の蒸発のために適用した。そして、粗ペプチドを氷冷ジエチルエーテル(15mL)の添加により沈澱させた。遠心分離(1800rpm、5分)及び氷冷したジエチルエーテルでの2回の洗浄工程の後に、粗ペプチド接合体を、水中20%CH3CN(1mg/mL)中で溶解し、そして逆相半調製用HPLCにより精製した。続いて凍結乾燥して、白色の粉末として最終生成物を得た。
【0037】
合成結果を表1において示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0038】
(放射性)金属標識
ストック溶液を、基準物質(DOTA-[Nle15]-MG11及びDOTA-PP-F11-N)又はトリアゾロミニガストリン(1mg、750nmol)を酢酸アンモニウム緩衝液(50μL、0.5M、pH5.5)中で溶解し、そして最終ペプチド濃度250μΜ(約0.3mg/mL)まで水を添加することにより調製した。in vitroでの実験のために、DOTA官能化化合物(1nmol、4μLの250μΜストック溶液)を水性HCl(22.5μL、0.05M、pH1.3),酢酸アンモニウム緩衝液(10μL、0.5M、pH5.5)及び水性アスコルビン酸ナトリウム(5μL、0.5M)の混合物に添加した。20~25MBqの177LuCl3(約2.5μL、0.04M HCl中、20~25MBq/nmol)を添加し、そしてその混合物を加熱ブロック中で20分間95℃まで加熱した。標識後に、標識混合物の1μLアリコートを、γ-HPLCによる品質制御のために水性DTPA(200μL、25μM)に添加した。
【0039】
放射活性のない175Luでの標識のために、試験化合物(25nmol、100μL、250μM)を、5モルの過剰な水性175LuCl3(125nmol、12.5μL、10mM)、酢酸アンモニウム(5μL、0.5M、pH5.5)と混合し、そして加熱ブロック中で95℃まで20分間加熱した。
【0040】
in vivo実験のために、DOTA官能化化合物を、多量の177LuCl3で標識付けして、45~55MBq/nmolの特異的活性をもたらし、そして、品質制御後に、PBSで希釈して、100pmol/mLの濃度に達した。
【0041】
細胞培養
CCK2Rを発現するヒト髄様甲状腺癌細胞(MZ-CRC1)を、NunclonTM Deltaで処理した細胞培養フラスコ中で単層で5%CO2及び37℃での加湿空気中で成長させた。細胞を、20mM L-グルタミン(L-Glu)及び10% FCSで補った培養培地DMEM(高グルコース(4.5g/L))中で維持した。0.25%トリプシン0.38‰EDTA溶液を使用して、80~90%の培養密度で培養物を定期的に継代した。アッセイを、0.1%BSAを含むアッセイ培地DMEM(高グルコース)中で実施した。
【0042】
細胞内部移行実験
実験の前日に、MZ-CRC1細胞を細胞培養培地中で6ウェルプレート(0.85・106細胞/ウェル)に入れ、付着のために一晩インキュベートした。実験当日に、培地を取り除き、細胞を1mLのPBSで2回洗浄した。プレートを調製のために氷上に置いた。0.9mLのアッセイ培地を非特異的結合のものを除く全てのウェルに分注した。0.2pmolの177Lu標識した接合体(100μL、アッセイ培地中2nM、約4.2kBq)を全てのウェルに分注した。非特異的結合を測定するために、5000倍過剰のミニガストリン(1nmol、100μL、アッセイ培地中10μL)を、177Lu標識した接合体を含む0.8mLのアッセイ培地に添加した。プレートを5%CO2中で37℃でインキュベートして、結合及び内部移行させた。このプロセスを、30分、60分、120分及び240分後に上清を回収することによって停止した。細胞をPBSで2回(それぞれ0.6mL)洗浄した。合した上清は、放射活性の遊離した非結合部分を表す。細胞を冷却した生理食塩水グリシン緩衝液(0.6mL、0.05M、pH2.8)で2回室温で5分間インキュベートすることにより、膜結合活性を測定した。内部移行した画分を、NaOHでの細胞溶解を2サイクル(それぞれ0.6mL、1M、10分、室温)実施することによって単離した。画分の放射活性を、COBRA-IIガンマカウンターにより測定し、適用した合計の放射活性量のパーセンテージとして表す(n=3~5で3回)。
【0043】
受容体親和性-IC50アッセイ
実験の前日に、MZ-CRC1細胞を細胞培養培地中で6ウェルプレート(0.85・106細胞/ウェル)に入れ、付着のために一晩インキュベートした。実験当日に、培地を取り除き、細胞を1mL PBSで2回洗浄した。氷上で、0.8mLのアッセイ培地及び放射標識した基準化合物177Lu-DOTA-PP-F11N(0.2pmol、アッセイ培地中2nM、100μL、約4.2kBq)をそれぞれのウェルに分注した(ウェル中の最終濃度=0.2nM)。175Luで標識した試験化合物を添加して、10-11~5・10-6Mの最終ウェル濃度(アッセイ培地中10-10~5・10-5Mの100μLの希釈系列)に達した。177Lu-DOTA-PP-F11Nの総結合を、試験化合物を添加せずに細胞をインキュベートすることによって確認した。プレートを4℃で1時間インキュベートした後に、上清を取り除き、細胞を1mLの冷したPBSで2回洗浄した。細胞溶解のために、NaOHを全てのウェルに2回添加した(0.6mL、1M、10分、室温)。溶解させた細胞に関連する放射活性を、COBRA-IIガンマカウンターで測定した。50%阻害濃度(IC50)を、GraphPad Prism(n=3で3回)での正規化非線形回帰によって算出した。
【0044】
血漿安定性
177Luで標識した化合物を0.9%NaClで3.75μΜの濃度に希釈し、そして窒素でフラッシュした新鮮なヒト血漿(1.5mL)中で37℃でインキュベートした(375pmol、100μL、7.5~12MBq)。異なる時点(0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間及び24時間)でアリコート(75μL)を取り、そしてタンパク質をCH3CN(100μL)中で沈殿させ、遠心分離した(2分、14680rpm、室温)。上清(75μL)を水(75μL)で希釈し、γ-HPLCで分析した。単相減衰非線形回帰(A=A0*e-kT)を使用して、GraphPad Prism(n=2~3)でのペプチド接合体の半減期(t1/2)を算出した。
【0045】
LogD測定
放射標識したトリアゾロペプチドの親油性(logD)を、「振盪フラスコ法」によって測定した。放射標識した接合体(10pmol、10μL、PBS中1μl、約0.25MBq)をn-オクタノール/PBS(1mL、pH7.4)の飽和1:1混合物に添加し、ボルテックスにより1分間激しく振盪した。遠心分離(3000rpm、10分)後に、双方の相の100μLアリコートを取り出し、放射活性をガンマカウンターで測定した(n=2で4通り)。
【0046】
異種移植したマウスにおける体内分布研究
全ての手順は、地域の動物委員会によって承認され、動物の倫理的使用に関する国際的なガイドラインに従った。6週齢のメスのCD1 nu/nuマウス(Charles River Laboratory、ドイツ)に、5 Mio MZCRC細胞を接種した。マウスを50~200mm2のサイズに達するまで2週間成長させた。実験当日に、マウスに、尾静脈を介して100μlのPBS(約0.5MBq)中でそれぞれ177Luで標識した化合物10pmolを注射した。マウスを、注射後4時間でCO2窒息により屠殺し、臓器(血液、心臓、肺、脾臓、腎臓、膵臓、胃、腸、肝臓、筋肉、骨、腫瘍)を解剖により採取し、重量を測定し、ガンマカウンターで測定した(n=4)。ブロッキング実験のために、放射標識した化合物の注射前に、マウスに100μlのPBS中100mgのミニガストリン(約60000pmol、6000倍過剰)を注射した(n=4)。組織分布データを、組織1グラムあたりの注射された活性のパーセント(%ID/g)として算出し、そして統計分析をGraphPad Prismで実施した。
【0047】
図1は、基準としてミニガストリン誘導体DOTA[Nle15]-MG11の特異的な内部移行、及び最後の6個のアミノ酸の鎖における異なる位置で組み込まれたTz(1,4-二置換1,2,3-トリアゾール)を有する誘導ミニガストリンを示す。DOTA[Nle15、Tyr
12-(Tz)-Gly
13]-MG11は、120分後に50%超の特異的な内部移行の値を示す。
【0048】
図2は、基準のミニガストリン誘導体DOTA[Nle15]-MG11と比較した、いわゆるトリアゾールスキャンによるその誘導型における[Nle
15]-MG11の最大半量阻害濃度IC
50を示す。したがって、DOTA[Nle15、Tyr
12-(Tz)-Gly
13]-MG11は、放射標識した基準化合物PP-F11-Nを置換することにおいて最高の効果を有するミニガストリン誘導体である。
【0049】
図3は、基準のミニガストリン誘導体DOTA[Nle15]-MG11と比較した、いわゆるトリアゾールスキャンによるその誘導型における[Nle
15]-MG11の血漿安定性を示す。ほとんどの誘導体は、基準誘導体と同様に機能する。DOTA[Nle15、Tyr
12-(Tz)-Gly
13]-MG11は、この点で安定性は低いが、それにもかかわらず、ペプチドの60%超が少なくとも2時間超安定したままであり、広範囲の診断及び治療の適用が可能である。したがって、
図1から3に表示された結果の要約の
図4にも示されているように、DOTA[Nle15、Tyr
12-(Tz)-Gly
13]-MG11は、最も高い測定された特異的な内部移行及び最も低いIC
50値がわずかに低い血漿の半減期を補償することから、将来の診断及び治療の適用のための最良の候補であるように考えられる。
【0050】
国際公開番号第2015/067473号からのミニガストリン誘導体PPF11Nと比較して、ミニガストリン誘導体DOTA[Nle15、Tyr12-(Tz)-Gly13]-MG11は、120分までの範囲の時間間隔でより高い特異的な内部移行を有し、したがって、対処される受容体(例えばGPCR)を「ブロック」する効果が高い。