(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】水素製造装置および水素製造システム
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20220221BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20220221BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
(21)【出願番号】P 2018137050
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100118474
【氏名又は名称】寺脇 秀▲徳▼
(74)【代理人】
【識別番号】100141911
【氏名又は名称】栗原 譲
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 基貴
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幸二
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-053314(JP,A)
【文献】特開2001-348691(JP,A)
【文献】特開平11-241804(JP,A)
【文献】特開平03-274303(JP,A)
【文献】特開2004-010707(JP,A)
【文献】特開2002-286039(JP,A)
【文献】特開平11-293304(JP,A)
【文献】特開2010-090425(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156830(WO,A1)
【文献】特開平05-026587(JP,A)
【文献】特開2004-127900(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0064752(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1484269(CN,A)
【文献】特開昭63-091494(JP,A)
【文献】特開昭63-130983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00- 9/77
C25B 13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気電解を行い水素を生成する電解セルスタックを内部に収容
し電気炉の内部に配置されるラックと、このラックを炉内で支持
し前記電気炉の下部に配置され前記電気炉の外表面に接する複数の脚を有する水素製造装置
であって、
前記脚の一つが前記ラックの下部に固定される固定脚であり、他の前記脚は前記ラックに対して摺動自在に配置され
前記ラックの水平方向の熱膨張により発生する応力を吸収する摺動脚であ
り、
前記摺動脚とラックの間にはチッ化ホウ素、黒鉛、フッ素樹脂のいずれかで形成された板材から成る固体潤滑材で形成された摺動部材が配置されていることを特徴とする水素製造装置。
【請求項2】
請求項
1記載の水素製造装置と、
水蒸気供給管に接続されて水蒸気となる水を前記電解セルスタックに供給する水供給機構と、
水素排出管に接続されて前記電解セルスタックで生成された水素を回収する水素回収機構と、を備えることを特徴とする水素製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高温水蒸気電解法を用いた水素製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物型の高温水蒸気電解法は、固体酸化物にて高温雰囲気下で水蒸気電解を行い、水素を製造する方法である。
【0003】
500℃以上の高温雰囲気下において水蒸気を電解することで、液体の水の電解と比較して、電解時の電気量を削減することできるため、高効率の水素製造を行うことができる。
【0004】
高温水蒸気電解装置は炉内に電解セルスタックが複数配置されている。電解セルスタックはラックの上に設置され、このラックは脚により支持される。500℃以上の高温雰囲気下でこの電解セルスタックにおいて、水蒸気を電気分解することにより水素を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水素製造装置において、電気分解による水素製造を行う電解セルスタックは複数個、ラックの上に設置され、電気炉の中に配置される。
【0007】
この電気炉は500℃以上の高温で運転されるが、高温による材料の熱伸びにより炉内部にあるラックは熱膨張する。このラックは電気炉の下部に配置された脚により支持される構造であるが、脚は電気炉の外表面に接する構造のため比較的低温に維持される。このことから電気炉本体と脚において温度差が発生し、それに伴って不均一な熱膨張量によりラックに応力が発生し、破損の原因となっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記実施形態に係る水素製造装置は、水蒸気電解を行い水素を生成する電解セルスタックを内部に収容し電気炉の内部に配置されるラックと、このラックを炉内で支持し前記電気炉の下部に配置され前記電気炉の外表面に接する複数の脚を有する水素製造装置であって、前記脚の一つが前記ラックの下部に固定される固定脚であり、他の前記脚は前記ラックに対して摺動自在に配置され前記ラックの水平方向の熱膨張により発生する応力を吸収する摺動脚であり、前記摺動脚とラックの間にはチッ化ホウ素、黒鉛、フッ素樹脂のいずれかで形成された板材から成る固体潤滑材で形成された摺動部材が配置されていることを特徴とする。
【0009】
さらに上記実施形態に係る水素製造システムは、上記水素製造装置と、水蒸気供給管に接続されて水蒸気となる水を上記電解セルスタックに供給する水供給機構と、水素排出管に接続されて上記電解セルスタックで生成された水素を回収する水素回収機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態は、上述した課題を解決するためになされたものであり、高温運転時にラックに発生する水平方向の不均一な熱膨張により生じる応力を吸収する水素製造装置および水素製造システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施の形態に係る水素製造装置および水素製造システムの概要を示す概略ブロック断面図。
【
図2】第1の実施の形態の要部を示す
図1のA部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は第1の実施の形態に係る高温水蒸気電解装置1の概要を示す概略ブロック図であり、
図2は第1の実施の形態の要部を示す
図1のA部拡大図である。なお、
図2において
図1と同一部分には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0014】
図1において、水素製造装置である高温水蒸気電解装置1を構成し、水蒸気電解を行う電解セルスタック3は、保温材8が内面に配置された電気炉2の内部に配列して設置される。この電解セルスタック3は、ラック4の上に設置される。そして、この電解セルスタック3は水素製造システム9となる水蒸気供給管10を介して水蒸気となる水を供給する水供給機構11が接続され、さらにこの電解セルスタック3は水素排出管12を介して水素を回収する水素回収機構13が接続されている。また、この電気炉2内の上方には酸素回収配管15を介して酸素回収機構16が設けられている。なお、この酸素回収機構16は必要に応じて系外に放出する構成にしても良い。
【0015】
そして、この各々の電解セルスタック3は電気分解させるために電流供給機構14から電力の供給を受けている。
【0016】
以上の高温水蒸気電解装置1、水素製造システム9において、本実施形態では、
図2に示すようにラック4を支持する脚5の内の1脚を締結ボルト7にてラック4と締結する固定脚5aとし、残りの脚5の上部に、摺動部材であるチッ化ホウ素製のプレート(板材)6を設置してラック4に対して摺動自在に配置されている摺動脚5bとし、ラック4の水平方向の熱膨張により発生する応力を吸収する構成としている。
【0017】
よって、本発明の実施形態は複数の脚の内、1箇所を脚とラックをボルトにて締結することで固定脚とし、他の全ての脚を摺動脚とすることで、脚がラックの荷重を支持しながら、高温運転時にラックに発生する、水平方向の熱膨張により生じる応力を吸収することができる。
【0018】
なお、このプレート6の材料については高温水蒸気電解装置1が運転中、すなわち500℃以上の高温の雰囲気で摺動する固体潤滑材であればよく、黒鉛、フッ素樹脂を用いることも可能であり、ラック4の水平方向の熱膨張により発生する応力を摺動することによって吸収することができる。さらにチッ化ホウ素、黒鉛、フッ素樹脂のいずれかで形成された板材と表現しているが、板材のラック4に接する部分のみ、または板材の表面を覆う形にして設置しても良いのはもちろんである。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0020】
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
【0021】
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0022】
1…高温水蒸気電解装置(水素製造装置)
2…電気炉
3…電解セルスタック
4…ラック
5…脚
5a…固定脚
5b…摺動脚
6…プレート(板材:固体潤滑材)
7…締結ボルト
8…保温材
9…水素製造システム
10…水蒸気供給管
11…水供給機構
12…水素排出管
13…水素回収機構
14…電流供給機構
15…酸素回収配管
16…酸素回収機構