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特許7027316多数の対象の対象固有の場所間の輸送方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】多数の対象の対象固有の場所間の輸送方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20220221BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20220221BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G02B21/36
G02B21/06
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018538858
(86)(22)【出願日】2017-03-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2017055360
(87)【国際公開番号】W WO2017153430
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2020-01-07
(31)【優先権主張番号】102016104100.9
(32)【優先日】2016-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518071349
【氏名又は名称】マックス-プランク-ゲゼルシャフト ツア フェルデルング デア ヴィッセンシャフテン イー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】Max-Planck-Gesellschaft zur Forderung der Wissenschaften e.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ヘル,シュテファン ヴェー.
(72)【発明者】
【氏名】ゲットフェルト,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェストパル,フォルカー
【審査官】赤木 貴則
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-503892(JP,A)
【文献】特開2014-224814(JP,A)
【文献】特表2005-526255(JP,A)
【文献】国際公開第2012/171999(WO,A1)
【文献】特開2015-072462(JP,A)
【文献】特開2007-322417(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0021410(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62-21/83
G01N 33/00-33/98
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光マーカー(56、57)でマーキングされた試料(8)中の構造を高解像度で画像化する方法であって、
-前記発光マーカー(56、57)による発光光の放出に作用する光は、ある強度分布で前記試料(8)に向けられ、前記試料は強度最大値(3)に隣接する零点(4)を備えており
-前記試料(8)の走査すべき部分範囲(7)が前記零点(4)で走査され、及び
-前記零点(4)範囲から放出される発光光が記録され、及び前記零点(4)場所が前記試料(8)に割り当てられる方法において、
-関心対象(55)の複数のサンプルがそれぞれ前記試料(8)の前記走査すべき部分範囲(7)の1つと重なり合って配置されており、
-前記関心対象(55)の複数の前記サンプルが、このあとで行われる関心対象(55)の反応を検出するために、変更された周辺条件にさらされ、その際前記個々の試料(8)部分範囲が周辺条件の変更中及び/又は前後に前記各零点(4)で走査され、及び
-前記試料(8)の前記走査すべき部分範囲(7)の寸法が、試料中の前記零点(4)の前記強度最大値(3)が隣接している少なくとも1つの方向で、前記強度最大値(3)のこの方向の間隔(D0)の75%以下になるよう限定され
-前記発光マーカー(56、57)による発光光の放出に作用する前記光が、
-光であって、前記発光マーカー(56、57)を発光のために励起する及び/又は暗黒状態から励起可能状態に移行することで、前記光が前記発光マーカー(56、57)による発光光の放出を可能にする光、又は
-発光防止光であって、前記発光マーカー(56、57)による発光光の放出を前記零点(4)の外で阻止する発光防止光であり、
-前記試料(8)の前記走査すべき部分範囲(7)を前記零点(4)で走査する前に、追加的にスイッチオフ光(34)がさらなる強度分布で前記試料(8)に向けられること、スイッチング可能な発光マーカーとして形成された発光マーカーが、前記試料(8)の前記走査すべき部分範囲(7)に隣接する部分範囲(39)で非活性状態にスイッチオフされ、その際に前記隣接する部分範囲(39)が前記試料の前記零点(4)の強度最大値(3)が隣接している前記少なくとも1つの方向に、前記走査すべき部分範囲(7)で励起され、
発光マーカー(56、57)は、放出される発光光の波長に関して等しいか又は異なる可能性があることを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、複数のサンプルの異なった部分量が前記試料(8)中の前記関心対象(55)が異なって変更された周辺条件にさらされることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記周辺条件が、化学物質を加えることによって変更されることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法であって、前記関心対象(55)の前記複数のサンプルが前記試料(8)の固定点(50)に対して定義されたパターン(51)で配置されており、及び前記走査すべき試料(8)部分範囲が前記零点(4)で前記試料(8)の前記固定点(50)に対してアプローチされることを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法であって、前記試料(8)の前記走査すべき部分範囲(7)が反復して前記零点(4)で走査されることを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、少なくとも前記走査すべき試料(8)部分範囲の走査の反復時に前記零点(4)が3n又は2n以下の場所に、前記走査すべき部分範囲(7)ごとに配置されており、その際nが空間方向の数であり、その中で前記走査すべき試料(8)部分範囲が走査されることを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法であって、前記試料(8)中の複数のサンプルに配置された対象(55)がタンパク質、細胞成分及びウイルスを含んでいるグループから選択されることを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法であって、前記試料(8)の前記走査すべき部分範囲(7)の前記寸法が、前記試料中で前記零点(4)の前記強度最大値(3)が隣接している少なくとも1つの方向で、前記強度最大値(3)のこの方向の前記間隔(D0)の50%、45%、25%又は10%未満であることを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法であって、前記試料(8)の前記走査すべき部分範囲(7)の前記寸法が、前記試料中で前記零点(4)の前記強度最大値(3)が隣接している少なくとも1つの方向で、1つの区間より小さく、前記区間の上で前記光の強度(I)が前記零点(4)から出発してこの方向に、前記隣接している強度最大値(3)の前記光の前記強度(I)の50%、25%、10%又は5%に上昇することを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法であって、前記試料(8)の前記走査すべき部分範囲(7)を走査する前に、前記走査すべき部分範囲(7)の位置を前記試料(8)中で確定するために、前記試料(8)中の構造が他の方法で画像化され、その際任意で、前記試料(8)の前記走査すべき部分範囲(7)の走査が、より大きい試料(8)部分範囲で前記零点(4)により、前記光の少なくとも50%小さい強度で及び/又は少なくとも50%高い走査速度で走査されることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記試料(8)のより大きな範囲を走査するために前記試料(8)の前記走査すべき部分範囲(7)の走査とは異なる他の走査手段が使用されることを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記試料(8)のより大きな範囲を走査するために、少なくとも1つの方向に試料ホルダ(24)が対物レンズ(17)に対して動かされ、前記対物レンズは前記光を前記試料(8)に向けられること、及び/又は前記試料(8)の前記走査すべき部分範囲(7)を走査するために、少なくとも1つの方向に電気光学的スキャナ、音響光学的偏向器又はガルボミラーが使用されていることを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項に記載の方法であって、前記発光防止光が刺激光であり、前記刺激光が前記発光マーカー(56、57)による発光光の放出を前記零点(4)の外で、刺激された放出によって防止し、その際前記刺激光が励起光(1)と共に前記試料(8)に向けられ、前記刺激光が前記発光マーカー(56、57)を発光光の放出のために励起し、及び前記発光光が最大値(27)を持つ強度分布を前記発光防止光の前記零点(4)範囲で備えていることを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項1又は13に記載の方法であって、前記試料が前記走査すべき部分範囲(7)を走査され、その際前記走査すべき部分範囲(7)が前記走査すべき部分範囲(7)の全ての又は選択された位置で前記零点(4)により走査されることを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項1又は13に記載の方法であって、前記スイッチオフ光(34)の前記強度分布が前記走査すべき部分範囲(7)で弱め合う干渉によって形成された局部的な強度最小値を備えていることを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項1,13,14,15のうちのいずれか一項に記載の方法であって、前記スイッチオフ光(34)を前記試料(8)に向ける前及び/又はそれと時間的に重なり合って、スイッチオン光(37)が前記試料(8)の前記走査すべき部分範囲(7)に向けられ、前記スイッチオン光が前記スイッチング可能な発光マーカー(56、57)をその活性状態にスイッチオンすることを特徴とする、方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法であって、スイッチオン及び/又はスイッチオフ時に前記スイッチング可能な発光マーカー(56、57)から放出される発光光(20)が記録され、評価され、その際評価の結果は任意であり、
-前記隣接する部分範囲(39)が境を接する走査すべき部分範囲(7)が前記零点(4)で走査されるかどうか、及び/又は
-励起光(1)が、前記隣接する部分範囲(39)で限定される走査すべき部分範囲(7)で、前記試料(8)に向けられるかどうか、及び/又は
-前記試料(8)への前記刺激光の指向が、前記零点(4)の各位置で、前記隣接する部分範囲(39)に限定される走査すべき部分範囲(7)内で、及び前記零点(4)範囲から放出される発光光(20)の記録が、どの条件下で中断されるのか、であることを特徴とする、方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法であって、前記零点(4)範囲から放出される発光光がポイントセンサ(21)によって記録され、その位置が、前記試料(8)に対して前記試料(8)の前記走査すべき部分範囲(7)の走査時に変更されないことを特徴とする、方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の方法であって、前記試料(8)の前記複数の走査すべき部分範囲(7)が同時に走査されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光マーカーでマーキングした試料中の構造を高解像度で画像化する方法に関する。
【0002】
本発明は、高解像度の走査発光顕微鏡法分野に分類され、この分野では、発光光の波長及び場合によって生じ得る励起光の波長において、各試料から放出される発光光が回折限界よりも高い空間解像度であること、この励起光によって空間的に限定されて発光マーカーが発光光の放出のために励起され、試料中の場所に割り当てられること、を可能にする処置が行われる。多くの場合発光マーカーは、励起光による励起後に発光光として蛍光光が放出される蛍光マーカーである。そのため、蛍光顕微鏡検査法と呼ばれる。
【背景技術】
【0003】
独立請求項のプリアンブルに従った、公知の方法及び走査発光顕微鏡では、空間解像度を高めるために、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光が、隣接する零点の強度最大値を示す強度分布を伴って試料に向けられる。この光は多くの場合発光防止光であり、これにより、零点の外にある発光マーカーによる発光光の放出が阻止される。試料から放出される発光光はこうして零点の場所に配置され得る。なぜならそこに配置された発光マーカーだけが発光光を放出する能力があるからである。
【0004】
こうしてSTED蛍光顕微鏡検査法ではあらかじめ励起光によって励起された蛍光マーカーが、零点の範囲を除いて、蛍光防止光として刺激光で刺激された放出によって再び鎮静され、その結果零点にある蛍光マーカーだけがその後で適度の蛍光光を放出できる。この蛍光光は、こうして試料中の零点の場所に配置され得る。零点で試料を走査することで、試料中の蛍光マーカーの空間的な分布が特定される。このようにして、蛍光マーカーでマーキングされた試料中の構造の構成と空間分布が画像化され得る。
【0005】
GSD蛍光顕微鏡検査法では、蛍光防止光によって、零点範囲の外にある蛍光マーカーが電子的暗黒状態に移行され、蛍光光の放出のための励起光により励起できなくなる。
【0006】
RESOLFT蛍光顕微鏡検査法では、蛍光防止光が使用され、フォトクロミック蛍光マーカーが蛍光を発する状態から、零点の範囲を除いて、蛍光を発しない状態に移行する。それに続く、励起光による蛍光マーカーの励起は、蛍光防止光の強度分布の零点の範囲の蛍光マーカーだけに相応して、励起光により蛍光光を放出するよう励起される。こうしてここでも、蛍光マーカーによって試料から放出される蛍光光が、蛍光防止光の強度分布の零点の場所に配置され得る。
【0007】
ここまで叙述した、高解像度の走査発光顕微鏡法の方法の全てで、各試料中の発光マーカーが一時的に、又は恒久的に色あせてしまい、つまり非活性化してしまい、その結果これがもはや発光光を放出しないという、少なからぬ危険がある。この危険は、零点の範囲の外の全ての発光マーカーで発光光の放出を阻止するため、及び同時に、発光マーカーがまだ発光光を放出できる零点の範囲の空間的な寸法を大幅に狭めるために、発光防止光の強度を非常に高く狭める必要があるという事実による。この発光防止光はこの高い強度により、それらが発光防止光の零点の範囲が近づき、すなわちすでに発光マーカーが初めて零点の範囲に到達し、それによって初めて発光マーカーから放出された発光光が記録されると、早くも試料中の発光マーカーに影響を与える。このことは、記述された方法において色あせる傾向にある発光マーカーが使用され得ないか、又はそれが空間解像度の最大化に望ましいであろう、少なくとも非常に高い強度ではない発光防止光が使用されるという結果をもたらす。
【0008】
叙述された、一時的及び恒久的な色あせという、高解像度の走査発光顕微鏡法での問題に対処するため、さまざまなアプローチが行われた。特許文献1では、STED蛍光顕微鏡検査法の蛍光防止光は比較的大きな時間的間隔でパルスにより、又は試料を高速で走査することで、そのつど零点が試料上に設けられ、その結果、試料の同じ範囲が最適化された時間的反復間隔でのみ、高い強度の蛍光防止光にさらされる。このようにして試料から受け取れる蛍光光の強度が高められる。なぜなら、蛍光マーカーが励起された中間状態からさらなる励起によって永続的に、又は単にゆっくり減衰して暗黒状態にされる比率が格段に低減されるからである。言い換えると、試料の個々の範囲に比較的大きな反復間隔で、蛍光防止光の強度分布で作用することで、特定の期間で試料全体によって受け取られる蛍光光の量が最大化される。この方法は、蛍光マーカーが色あせる傾向も低減する。なぜなら、蛍光マーカーの光化学的破壊が行われる励起された状態が、より強く支配することが防止されるからである。
【0009】
色あせの傾向がある蛍光マーカーを使用した高解像度の蛍光顕微鏡検査法の実施のために、特許文献2は走査条件を示している。これは、各試料が走査される走査速度及び蛍光防止光の強度分布の光強度と並んで、試料中の蛍光マーカーの性質及び濃度を含み、蛍光光が個別に検出可能なフォトンの形で蛍光防止光の強度分の布零点の範囲から放出され得るように互いに調整される。蛍光マーカーによってマーキングされた試料中の構造の画像は、検出されたフォトンが零点での試料走査を複数回反復中に割り当てられた場所から合成される。このようにして、蛍光マーカーが初めて零点から到達して確認される前に、蛍光マーカーの色あせの確率が低減される。これは、色あせの確率が、個々の蛍光マーカーによって受け取られる蛍光光の強度と相互に関連があることに基づく。蛍光光が個々のフォトンに最小化されるので、色あせの危険も最小化される。しかしながら、基本的に、特許文献2で公知の方法では、個々の蛍光マーカーの零点の蛍光防止光は、やはり隣接する強度最大値の範囲であらかじめ高い強度にさらされて初めて達成される。
【0010】
高解像度の走査発光顕微鏡法において、色あせに対して敏感な物質を使用することもできるよう、発光マーカーでマーキングされた関心構造が内部にある試料が、測定フロントによってその上を走行され得ることが、特許文献3で公知である。ここでは、光学信号の強度は、光学信号の波長の回折限界より小さい測定フロントの深さを超えて、発光光が放出する発光マーカーの一部が、発光マーカーを発光する状態へと移行して非存在から増加して発光マーカーが発光しない状態へと移行して再び非存在まで低下するように、増加する。測定フロントの範囲からの発光光は検出され、測定フロントの属している位置が試料中に割り当てられる。測定フロントの長手方向の発光光の割り当ては、この場合同じく回折限界を超えた空間解像度によってなされ、例えば記録されたフォトンを唯一の発光マーカーに割り当てた状態で、これが例えばGSDIMとして公知の光学顕微鏡法のように行われる。
【0011】
試料の関心構造の画像化速度を走査発光顕微鏡法において高めるための1つの手段は、試料を発光防止光の複数の零点で平行して走査することである。この場合、試料から放出された発光光は発光防止光の個々の零点とは離れて配置される。特許文献4から、発光防止光から試料中へ2つの互いに直交して伸びるラインパターンが互いに重ね合わせられることで、発光防止光の強度分布が零点のラスターで形成されることが公知である。ここでは、ラインパターン間の干渉が阻止され、その結果その強度分布が加算される。希望の、強度最大値に隣接する発光防止光の強度分布の零点は、2つのライングリッドのライン形状の零点の交差点上に残る。試料を零点のラスター形状の配置の範囲で完全に走査するためには、各零点を、間隔を空けて2つのラインパターンの方向に隣接する零点をずらすだけでよい。ここでも、試料中のほとんどの発光マーカーは、零点に到達しかつそれによって初めて、検出される前に発光防止光の高い光強度にさらされる。発光マーカーはしたがって、色あせすることなくこの高い光強度に耐えるものが選択されなければならない。
【0012】
非特許文献1では、活性化できる蛍光マーカーでマーキングされた試料中の構造を高解像度で画像化する方法が示されており、重なり合うライン形状又は面形状の光強度分布の零点を備えた試料が、蛍光活性化光及び蛍光励起光によって連続して異なる方向へ走査され、その際に試料から放出される蛍光光がカメラで記録される。検出した光強度の評価から、関心試料中の構造の図が再構成され得、その空間解像度が、それぞれ蛍光光が試料から出ていない蛍光活性化光と蛍光励起光の一致した零点を縮小することで、高められている。この公知の方法でも、蛍光活性化光の零点と同時に蛍光不活性化光として作用する蛍光励起光の零点が、蛍光活性化光と蛍光励起光の強度最大値と隣接する。この強度最大値範囲での、蛍光活性化光と蛍光励起光の高い強度が、試料中の全ての発光マーカーに、これが蛍光活性化光と蛍光励起光の一致している零点の範囲に到達する前に、作用する。これにより、この公知の方法でも、蛍光マーカーの色あせの危険は、関連する測定信号に寄与する前に、すでに非常に高い。
【0013】
特許文献5から、発光マーカーでマーキングされた試料の構造を空間的に高解像度で画像化する方法が公知である。この方法では、STED蛍光顕微鏡検査法で励起光及び刺激光によって発光防止光として作用される試料のように、試料の範囲で、試料から放出されて検出された蛍光光に割り当てられ得、刺激光の零点の範囲を限定している。その際に発光マーカーを、零点に境を接する強度最大値の範囲の刺激光の高い強度から保護しなければならず、試料には追加的に励起防止光が当てられ、その強度分布が局部的に、刺激光の零点と一致する最低値を有する。この励起防止光は特にスイッチオフ光であってよく、この光はスイッチング可能な発光マーカーを励起防止光の最低値の外で非活性状態にスイッチオフし、励起光が発光光の放出のために励起可能でなくする。具体的には、発光マーカーではこれは、高解像度のRESOLFT蛍光顕微鏡検査法で使用されるような、スイッチング可能な蛍光色素であってよい。特許文献5で公知の方法では、発光マーカーがスイッチング可能であることは一次的であるが、これは空間分解能の高めるためではなく、高い強度の刺激光で色あせないように保護するためである。
【0014】
非特許文献2から、共焦点の蛍光顕微鏡検査法による方法が知られている。この方法では、発光マーカーでマーキングされた試料中の構造を画像化するために、試料が焦点を合わせた励起光によって走査される。その際に、焦点を合わせた励起光の試料中の各位置で、試料中の励起された発光マーカーから放出されて検出器に記録されたフォトンの数が希望の信号雑音比に相当する上限値に達すると、励起光がスイッチオフされる。励起光のスイッチオフは、放出されて記録されたフォトンの数が、最大ピクセルドエルタイムの所与の部分期間以内に下限値に達しない場合にも行われる。なぜならこれは、焦点が合わせられた励起光の各位置で発光マーカーが関連する濃度にないことを示しているからである。このようにして、励起光による試料の負荷は、同じ光量を試料に当てた場合と比べて、焦点が合わせられた励起光の各位置で格段に低下する。
【0015】
非特許文献3では、RESCue-STEDと名付けられた方法が公知であり、この方法はR A Hoebe他が共焦点の蛍光顕微鏡検査法のために記述した方法がSTED蛍光顕微鏡検査法に継承されている。これによって試料には必要又は有意義な長さだけ、高い強度の刺激光が当てられる。
【0016】
特許文献6から、発光物質を有している試料の構造を空間的に高解像で画像化するための方法が公知であり、この方法では試料がある測定範囲で、局部的な最小値を有する発光防止光の強度分布が当てられる。その後、試料はその測定範囲で発光励起光が当てられ、この発光励起光が発光物質を電子的な基本状態から発光する状態へと励起し、測定範囲から放出された発光光が記録される。記録された発光光は、試料中の局部的最小値の位置に割り当てられる。発光防止光により、発光物質の電子的な基本状態は、発光物質が電子的な基本状態が損なわれた状態で、発光励起光のための吸収断面積が低減されて備えられるように、損なわれる。加えて、試料には、測定範囲に発光光が記録される前にSTED光が当てられ得、このSTED光は同様に局部的な最小値を測定範囲の中心に備えている。この局部的な最小値がまだ局部的な発光防止光の強度分布の最小値より小さい場合、このことによって発光光の空間的な配置がさらに強く限定され得、それによって空間分解能が構造の写像の際にさらに高められる。STED光と蛍光防止光の局部的な最小値は、試料中の蛍光防止光の強度分布の局部的な最小値の全ての位置で、同心円的に互いに配置される。
【0017】
特許文献7では、試料中の物質の個々の分子の場所を特定する方法が公知である。この方法では、物質の個々の分子が蛍光を発する状態にあり、ここでは励起光によって蛍光光を放出するよう励起可能であり、物質の個々の分子の間隔は最小値に保たれている。物質の個々の分子は、励起光によって蛍光光を放出するよう励起され、その際接近光の強度分布は少なくとも1つの零点を備えている。励起された物質の個々の分子の蛍光光は、励起光の強度分布の少なくとも1つの零点の異なった位置に記録される。その際、その中で励起された物質の個々の分子の蛍光光が記録される、少なくとも1つの零点の直近の隣接位置間の間隔は、最小値の半分以下である。物質の個々の分子の場所は、蛍光光の強度の推移から出て、各分子から、励起光の強度分布の少なくとも1つの零点の位置を経て、試料の関心範囲に導かれる。
【0018】
特許文献8から、焦点が合わせられたレンズ系の光線に対して光線を動的移転する方法が公知である。この方法は、STED顕微鏡で使用可能である。試料を走査する際、高速のアダプティブなラスターサンプルが実現できる。これは背景範囲が暗いために、又は他の理由で、低減されたピクセル数によって高い再生速度を実現するために非関心対象物範囲が抜かされる。
【0019】
特許文献9では、複屈折クロマティックビーム成形装置付き蛍光光走査型顕微鏡が記述されている。この走査型顕微鏡は、特にSTED顕微鏡である。複屈折クロマティックビーム成形装置を励起光もSTED光も通り抜け、その際ビーム成形装置は励起光の強度最大値の形成に下流に接続された対物レンズの焦点で損なわず、しかしそれとは逆にSTED光が強度最小値の強度分布を励起光の強度最大値の場所に形成するという結果をもたらす。
【0020】
特許文献10では、解像度を上げた顕微鏡法が公知である。この方法では、試料が2回、励起光の強度最大値で走査され、試料の2つの画像が生成される。その際に、2つの画像の基礎を成している走査点は、この方法の光学的解像限界の下側でステップ幅1つ分互いにずらされ、結果として生じた画像の違いが空間分解能を高める目的で評価される。相応する方法は特許文献11でも公知である。
【0021】
特許文献12では、中心に零点を備えたビームを形成するためのビーム成形装置が公知である。このビーム成形装置は、STED顕微鏡で使用される。ビーム成形装置では、試料の走査時にビームによって調整されるスキャン角度が限定される。なぜなら、これはさまざまな遅延プレートによって中心の零点を形成するために調整されたビームの相対的遅延を損なうからである。
【0022】
特許文献13では、空間的に高解像度の試料検査方法が公知である。この方法はスイッチング可能な物質を備えたRESOLFT顕微鏡に数えられる。一実施形態では、この公知の方法は試料を平行して、すなわち同時に複数の部分範囲で検査するために、蛍光防止光の複数の零点の平行形成を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】独国特許出願公開第102005027896号明細書
【文献】独国特許出願公開第102011051086号明細書
【文献】国際公開第2011/131591号パンフレット
【文献】独国特許出願公告第102006009833号明細書
【文献】国際公開第2014/108455号パンフレット
【文献】独国特許出願公開第102013100147号明細書
【文献】独国特許出願公告第102013114860号明細書
【文献】国際公開第2010/069987号パンフレット
【文献】米国特許第2012/0104279号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2317362号明細書
【文献】独国特許出願公開第102013017468号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0201558号明細書
【文献】米国特許第7679741号明細書
【非特許文献】
【0024】
【文献】LiD他,“Extended-resolution structured illumination imaging of endocytic and cytoskeletal dynamics”, Science 2015 Aug 28;349(6251)
【文献】R A Hoebe他,“Controlled light-exposure microscopy reduces photobleaching and phototoxicity in fluorescence live-cell imaging”, Nature Biotechnology, Volume 25, No.2, February 2007,p.249-253
【文献】T. Staudt他,“Far-Far-field optical nanoscopy with reduced number of state transition cycles”, Optics Express Vol. 19, No.6,14 March 2011,p.5644-5657
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の課題は、発光マーカーでマーキングされた試料中の構造を高解像度で画像化するための方法、及びそのような方法を実施するための走査発光顕微鏡を提示することであり、これを使用して高い光強度による、試料中の発光マーカーの負荷が根本的に低減され、その結果高い光強度に対して敏感な発光マーカーも使用可能になり、及び各試料中の構造が反復して画像化可能になり、それによって周辺条件の変化に対する関心対象の反応が検出される。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の課題は、独立請求項1に従った方法で解決される。従属請求項は、本発明による方法の好ましい実施形態に関する。
【0027】
発光マーカーでマーキングされた試料中の構造高解像度で画像化するための、本発明による方法では、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光が、強度分布によって、強度最大値に隣接する零点を有する試料に向けられる。走査するべき試料の部分範囲は、零点によって走査され、零点の範囲から放出された発光光が記録され、試料中の零点の場所に割り当てられる。その際に、1つの関心対象の複数のサンプルがそれぞれ走査するべき試料の部分範囲と重なり合って配置され、その関心対象の複数のサンプルが周辺条件の変化にさらされ、それにより、これに続いて行われる関心対象の反応が検出される。個々の試料の部分範囲は、周辺条件の変化の最中及び/又は前後で、各零点により走査される。走査するべき試料の部分範囲の寸法は、零点が強度最大値によって限定されている、少なくとも1つの方向で、及び好ましくは各方向で、強度最大値との間隔の75%以下に限定される。
【0028】
ここで発光マーカーとは、特に蛍光マーカーである。しかし、その発光特性が例えば化学発光又は電界発光をベースにしている他の発光マーカーを使用してもよい。このことは、発光光を放出するための発光マーカーの励起が、本発明による方法において特定のメカニズムに決められていないことを含んでいる。しかし、発光光を放出するための発光マーカーの励起は、しばしば励起光によって行われる。
【0029】
発光マーカーによる発光光の放出に作用する光は、発光マーカーによる発光光の放出を阻止する発光防止光であってよい。例えば発光マーカーを暗黒状態に移行することで阻止するか、又は励起された発光マーカーが刺激された放出によって再び鎮静されることで、発光光の放出が阻止される。しかし、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光は、発光マーカーが発光しない状態から、別の発光しない状態へと移行される光であってもよい。これにより、色あせは特によく保護される。その他に、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光は、単独ではなく別の光と併せられて初めて、光の強度分布の零点の範囲だけで行われるように、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光であってもよい。
【0030】
他の一実施形態では、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光は発光可能化光であり、この光は例えば発光マーカーを発光のために励起して初めて、発光マーカーによる発光光の放出を可能にする。つまりこれは発光励起光又は発光マーカーは、暗黒状態から励起可能状態に移行される。
【0031】
発光マーカーによる発光光の放出に作用する光の強度分布の零点は、少なくとも光の局部的な強度最小値である。これはしばしば、光の強度が実質的にゼロに戻る強度最小値である。理想的には、光の強度は零点の中心で事実上ゼロに戻る。これはしかし、必ずしも前提条件ではない。光が例えば発光防止光である場合、発光防止光の強度が零点の範囲で、発光マーカーの発光を阻止しない、又は少なくとも実質的に阻止しない、すなわち優勢的に阻止しないという結果をもたらすほどに、小さく維持されるだけで十分である。零点はその際に、発光防止光が発光マーカーによる発光光の放出を少なくとも実質的に阻止する範囲によって限定される。そのなかで発光防止光が発光マーカーによる発光光の放出を少なくとも実質的に阻止する、この範囲の間の全ては、ここでは「零点」又は「零点の範囲」と呼ぶ。
【0032】
ここで、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光の強度分布の零点に隣接する強度最大値は複数で、これによって零点が例えばリング形状で零点の周囲に広がる強度最大値を取り囲む場合は排除されない。全ての断面で、発光光の放出に作用する光の強度分布により、そのようなリング形状の強度最大値が、零点が断面内で、両側で隣接している2つの強度最大値の形であることが明らかになる。
【0033】
この零点は、1つ、2つ又は3つの方向で強度最大値と隣接していてよい。これはつまり、面形状、線形状、点形状の零点である。この場合、零点は二次元又は一次元の試料を、線形状又は点形状の零点が試料の次元であらゆる面で強度最大値と隣接するような断面にできる。加えて、空間解像度を画像化の際に全ての方向で最大化するために、試料の全ての次元で強度最大値と隣接していない、零点で走査すべき試料の部分範囲は、異なった方向に走査され得る。走査すべき試料の部分範囲の寸法の限定は、本発明による方法では、試料中の零点が強度最大値と隣接している少なくとも1つの方向で、及び好ましくは全ての方向で、行われる。
【0034】
試料中の零点に隣接している強度最大値は、しばしば、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光の強度分布の範囲よりも大幅に高い光強度であり、これは直接零点と境を接しており、その中では光がすでに求められている方法で、例えば発光マーカーによる発光光の放出を阻止するように作用する。強度最大値の範囲の強度が非常に高いことは、全体として高い光の強度の結果であり、これもやはり、発光マーカーによる発光光の放出に少なくとも実質的に作用しない零点の範囲が空間的に大きく限定されるための前提条件である。そのため、零点と直接境を接する範囲と、強度分布の強度最大値の間に中間範囲が残り、その中では光強度が強度最大値の光強度を大幅に下回っている。この中間範囲は、本発明による方法では、試料の走査された部分範囲の寸法が、この方向での強度最大値との間隔の75%を超えないようにすることで、選択的に使用される。走査された各方向の部分範囲の寸法が各方向で強度最大値との間隔の50%より小さい状態にとどまる場合は、光のフル強度の走査された部分範囲のどの点も、強度最大値にさらされない。しかし、間隔を75%に限定された状態でも、走査すべき試料の部分範囲に当てられる、発光光の放出に作用する光の平均的な強度が大幅に限定される。走査すべき試料の部分範囲に当てられる光の平均的な強度は、さらに戻れば戻るほど、その寸法が各方向で、強度最大値との間隔を下回ったままになることは自明である。絶対的に、走査すべき部分範囲の寸法は、各方向で、強度最大値の最大300nm、好ましくは最大200nm及びさらに好ましくは約100nmの間にあり得る。この絶対的な数値は発光光の、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光の、及び/又は場合によってあり得る可視範囲の励起光の、波長と関連している。
【0035】
試料の走査すべき部分範囲は、本発明による方法を実施する際に単独で、すなわち排他的に走査され、及びそれに応じて試料の関心範囲に向けられる、関心対象の複数のサンプルと重なり合う試料の部分範囲であり得る。
【0036】
本発明による方法では、基本的に関心対象の全てのサンプルが同じように変化した周辺条件にさらされる。しかし好ましくは、試料中の関心対象の複数のサンプルの異なった部分量が、異なって変化した周辺条件にさらされる。このことは特に、関心対象が異なって変化した周辺条件に対して異なった反応をすることが検知され、互いに比較されることを可能にする。その際この反応は、反応結果に関しても、反応速度に関しても異なり得る。この場合本発明による方法が、走査すべき部分範囲の零点による走査の迅速な反復も有利であることは明かである。
【0037】
関心対象のサンプルが本発明による方法でさらされる周辺条件は、異なった物理的周辺条件であってよく、例えば異なった温度、異なった電界、磁界及び電磁界及び同類のものである。しかし周辺条件は、化学物質を添加しても変化する。つまり異なった化学的周辺条件も含まれる。具体的な一実施形態では、本発明による方法により、薬物スクリーニングが実施され得、その際に希望の反応が関心対象で引き起こされる物質が探される。このために、関心対象の多くのサンプルが個々に、又は大きな部分量で、異なった物質に対して行われ、希望の反応を引き起こす適正があるか検査される。本発明による方法の高い空間分解能により、その際例えば、関心対象の空間的な変化を、作用の結果として各物質を検出することが可能である。これは、多くの他の方法によって検出できないか又は間接的にしか検出できず、したがって多額の費用がかかる。
【0038】
例えば言及された薬物スクリーニングを特に効率的に実施するため、関心対象の複数のサンプルは、本発明による方法によって試料の固定点に対して定義されたパターンで配置され得る。これで、走査すべき試料の部分範囲を零点で、試料の固定点に対してアプローチすることが非常に効率的に可能である。このことは、全自動で行われることも可能である。関心対象をパターンに配置することは、例えば免疫反応又はそれと同様の助けを借りて行うことができる。
【0039】
本発明による方法では、走査すべき試料の部分範囲は、通例反復されて零点で走査され、変化した周辺条件への関心対象の反応が検出される。その際、好ましくは、少なくとも走査すべき試料の部分範囲の走査の反復において、零点が3n以下又はそれどころか2n以下の場所で、走査すべき部分範囲ごとに配置され、その際にnが空間方向の数であり、その中で走査すべき試料の部分範囲が走査され、関心対象が高解像度に画像化される。それが各走査すべき部分範囲に記録された発光光のためにそれぞれ1つの特定の発光マーカーに割り当てられ得る場合、個々の発光マーカーの場所を個々の走査すべき部分範囲内で検出するためにはこのように少ない零点の場所で十分である。常に発光マーカーのうちの1つだけが発光光を放出する場合、すなわち時間的な区別が可能である場合、又は発光光が例えばその波長によって個々の発光マーカーに割り当てられ得る場合、このような割り当てが可能である。本発明による方法のこの実施形態では、MINFLUXとして公知の方法が使用される。MINFLUXでは、個々の発光マーカーの場所を特定するために、1つの平面で励起光の光強度分布の1つの零点が、試料中の4つの異なる場所に位置決めされ、そのために発光マーカーの発光光強度が検出される。
【0040】
試料中の複数のサンプル内に割り当てられた関心対象では、これは例えばタンパク質分子、錯体のような分子であり得るが、シナプス、膜、他の細胞成分又は完全なウイルスのような、より複雑な生物学的単位であってもよい。
【0041】
各零点による、部分範囲の連続する走査の順番は非常に速くてできるため、関心対象の迅速は変化も検出できる。
【0042】
本発明は、走査され、それによって画像化された試料の部分範囲が非常に小さい状態にとどまることを意図的に妥協している。これはしばしば、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光の波長の回折限界のオーダーでの間隔となる。しかし、走査された部分範囲に平均して作用する光強度が大幅に低減されることで、比較的色あせ傾向の強い発光マーカーを問題なく使用でき、又は走査された試料の部分範囲を強度分布の零点で反復走査可能である。
【0043】
試料の部分範囲を迅速に強度分布の零点で反復走査可能であることは、動的なプロセスで関心試料中の構造を時間的に解像することも可能にする。試料中の発光マーカーは、本発明による方法において特に色あせ傾向が小さいため、つまり特に多くのフォトンを、個々の蛍光マーカーそれぞれが、試料のそれぞれ走査すべき部分範囲で受け取るため、特に多くの画像が試料の走査すべき部分範囲で撮影され得、それによって関心試料中の構造の長期間の変化も観察され得る。一般に、試料の部分範囲は、本発明による方法では、100x100=10,000画素以下で走査される。これは数ミリ秒間で可能である。これにより、画像周波数100Hz以上が実施できる。
【0044】
しかしまた、本発明による方法では、走査すべき試料の部分範囲は、例えば試料中の個々の蛍光マーカーの移行を、変化した周辺条件が理由で検出するために、試料中の零点の非常に少ない位置でだけ走査され得る。
【0045】
有利には、走査すべき試料の部分範囲の寸法は、試料中の零点が強度最大値に隣接している各方向で、この方向の強度最大値との間隔の45%以下、25%以下、又はそれどころか10%以下である。発光マーカーによる発光光の放出に作用する光の強度に関して、試料中の零点が強度最大値に隣接している、走査すべき試料の部分範囲の各方向の寸法が、光の強度が零点から各方向に、隣接している強度最大値で光の強度の50%、25%、10%又は5%上昇する区間以下である場合有利である。これに応じて、走査すべき範囲内の発光マーカーの最大負荷は、隣接する強度最大値の光の強度の50%、25%、10%又は5%に限定される。
【0046】
本発明による方法では、発光マーカーでマーキングされた試料中の関心対象のサンプルを、走査すべき試料の部分範囲を零点で走査する前に他の方法で画像化し、走査すべき試料の部分範囲の位置を確定することは、しばしば有意義である。走査すべき試料の部分範囲は、変化した周辺条件が原因で対象の特別な詳細又は対象の展開が生じるように、関心対象のサンプルと重なり合う試料の部分範囲であるこの画像化は、発光光の放出のために局部的又は大面積で発光マーカーを励起して行うことができる。
【0047】
走査すべき試料の部分範囲を走査する前に、走査すべき試料の部分範囲の位置を確定するために、試料のより大きな範囲を零点で、発光光の放出に作用する光より少なくとも50%小さい強度で及び/又は少なくとも50%高い走査速度で走査され得る。この先行する走査では、試料のより大きな範囲の全ての点に、強度最大値の範囲の光の高い強度が当てられる。そのために、この強度が意図的に弱められ、及び/又は短時間だけ発光マーカーに作用する。
【0048】
本発明による方法の一実施形態では、試料のより大きな範囲を走査するために、個々の走査すべき試料の部分範囲を走査するのとは異なる、他の走査手段が使用される。
【0049】
試料のより大きな範囲を走査するために異なった走査手段を使用する際、走査すべき試料の部分範囲を確定するために、及びそれに続いて走査すべき試料の部分範囲を走査するために、個々の狭く限定された走査すべき試料の部分範囲の走査には特別に調整された走査手段を使用できる。これは、試料中の走査すべき部分範囲の寸法が小さいために、光強度分布の零点による大きな移行を可能にできないでないが、それによってカバー可能な移行が非常に迅速に及び/又は正確に行われる、走査手段であり得る。こうして、例えば関心対象の迅速な変化を部分範囲内で行うために、非常に迅速な反復走査が走査すべき部分範囲で行われる。
【0050】
具体的には、試料のより大きな範囲を走査するために、少なくとも1つの方向で試料ホルダが試料のために対物レンズに対して動かされ得、この対物レンズによって光が試料に向けられ、それに対して、個々の走査すべき試料の部分範囲を走査するために、少なくとも1つの方向に電気光学的スキャナ、音響光学的偏向器又はガルボミラーすなわちガルバノメータドライブ付き偏向ミラーが、使用される。個々の走査すべき試料の部分範囲を走査するための装置は、追加の電気光学的又は音響光学的変調器を、移相器として光強度分布の零点の移行のために組み合わせることができる。
【0051】
すでに言及されたように、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光は特に発光防止光であり得、この発光防止光は零点の外で発光マーカーによる発光光の放出を阻止する。例えば、発光防止光は、発光マーカーをスイッチング可能なタンパク質の形で、その中では発光光の放出のために励起できない暗黒状態に移行するか又はスイッチングする。発光防止光は特に励起光と共に、発光マーカーが発光光を放出するために励起されおよび強度最大値の強度分布が発光防止光の零点の範囲を備えている試料に向けられ得る。これは、走査すべき試料の部分範囲のための狭い限界を除いて、STED、RESOLFT又はGSD蛍光光顕微鏡法の一般的方法に相当する。
【0052】
本発明による方法の好ましい一実施形態では、特許文献5(WO2014/108455A1)で公知のコンセプト、STED蛍光顕微鏡が、スイッチング可能な発光マーカーと共に実施され、発光マーカーを非活性状態にスイッチングすることで、刺激光の強度最大値の範囲で高い強度から発光マーカーを保護するために、この方法が一部変更した形で適用。具体的には、走査すべき試料の部分範囲を零点で走査する前に、スイッチング可能な発光マーカーを試料の走査すべき部分範囲と隣接する部分範囲内で非活性状態にスイッチオフするような強度分布で、追加のスイッチオフ光が試料に向けられる。この隣接する部分範囲は、試料中の刺激光の零点の強度最大値と隣接している少なくとも1つの方向で、走査すべき部分範囲と隣接している。これにより発光マーカーは、刺激光の強度最大値が生じる場所で、及びこの保護対策なしでは発光マーカーが刺激光の高い強度で走査すべき試料の部分範囲の走査時に色あせしてしまう場所で、非活性状態にスイッチングされる。本発明による方法のこの実施形態では、発光マーカーの色あせがなくなることで、徐々に、また直接隣接するか又はそれどころか互いに重なり合って、走査すべき部分範囲のために実施され得る。言い換えると、試料は走査すべき部分範囲で走査され得、その際に走査すべき部分範囲は全ての又は試料中の少なくとも選択された位置で、零点で走査される。
【0053】
スイッチオフ光の強度分布は、それぞれ引き続いて走査すべき部分範囲で、弱め合う干渉によって形成された局部的な強度最小値を備えることができ、その強度最小値ではスイッチオフ光は発光マーカーを少なくとも実質的にスイッチオフせず、つまりその中ではそれは発光マーカーを少なくとも実質的に活性状態のままにし、その状態ではそれは励起光によって励起可能である。スイッチング可能な発光マーカーの選択に応じて、この活性状態を必要とする、又は少なくとも有意義にすることができる。スイッチオフ光を試料に向ける前及び/又はそれと時間的に重なり合って、スイッチング可能な発光マーカーをその活性状態にスイッチオンするスイッチオン光が各走査すべき試料の部分範囲に向けられる。
【0054】
スイッチオン及び/又はスイッチオフ時に放出するスイッチング可能な発光マーカーは、しばしば同じく発光光である。この発光光は本発明による方法では記録され、評価され得る。この評価の目的は例えば、各励起された部分範囲を限定して走査すべき部分範囲がそもそも零点で走査されるのかどうか、又は全体として励起光が当てられるのかどうかを決定することであってよく、その際に放出される発光光は共焦点で記録され、又はまったく励起光が当てられないかどうかを決定することであってよく、なぜならスイッチオン及び/又はスイッチオフ時に記録された発光光の強度が小さいことは、発光マーカーでの関連する濃度がそれぞれ走査すべき部分範囲にあることを示すからである。さらにこの評価は、どんな条件下で刺激光を試料に向け、隣接する部分範囲で限定される走査すべき部分範囲、及び零点の範囲から放出された発光光の記録が、有意義に中断するかを決定するという目的を持っていてよい。つまり、例えば上限値及び/又は下限値は、RESCue法を実施するために、それぞれ走査すべき部分範囲において、評価の結果に依存して決定され得る。
【0055】
本発明による方法の特別な一実施形態では、零点の範囲から放出された発光光がポイントセンサで記録され、試料に対するその位置が、試料のそれぞれ走査すべき部分範囲の走査時に変更されない。つまり、発光光がポイントセンサで記録された時には、光発光マーカーによる発光光の放出に作用する光の強度分布の零点の位置変化は考慮されない。なぜなら、走査すべき部分範囲の寸法が、試料に対するポイントセンサの検出範囲よりも規則的に小さいため、このことが可能だからである。このことは、各走査すべき部分範囲の中心点に対して共焦点に配置されたポイントセンサにも適用される。ポイントセンサ自体にも、走査すべき試料の部分範囲全体からの発光光が規則的に到達する。なぜならその寸法は規則的に発光光の波長の回折限界を下回るからである。位置が固定されたポイントセンサとは、試料のそれぞれ走査すべき部分範囲の零点が、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光だけに作用することで、移動されるということを意味する。場合によってあり得る励起光も、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光と一緒に移動される必要はない。なぜならその強度最大値も、通常走査すべき試料の部分範囲全てに広がっているからである。
【0056】
すでに言及されたように、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光は別法として発光可能化光であり得、この発光防止光は零点の外で発光マーカーによる発光光の放出をまず第一に可能にする。このことには、発光励起光が試料に向けられた唯一の光であることが含まれる。これには、この光が発光活性化光であり、この光が発光マーカーを暗黒状態から発光のために励起される状態に移行する、すなわち活性化することも含まれる。発光マーカーによる発光光の放出に作用する光は、2つの機能、つまり活性化と励起を持つことも可能であり、そのために波長の異なる2つの成分を備えている。さらに試料の部分範囲が、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光の強度分布の零点で走査される場合、部分範囲内にある発光マーカーが零点に隣接する強度最大値の範囲内で高い光強度が当てられないか、又は少なくとも可能な限り少なく当てられるようにするために、この部分範囲は本発明により小さく保たれる。試料中の発光マーカーによって放出される発光光の検出は、本発明による方法のこの実施形態では、通常1台のカメラで行われ、及び評価は試料中の零点の現在の位置及びそれに伴う、試料から放出されてカメラによって検出される発光光の強度分布の変化という観点から、記録された強度分布を展開することで行われる。
【0057】
走査すべき部分範囲内でそれぞれただ1つの発光マーカーが検出された発光光を試料から放出する場合、例えば局部的な極値を示す関数を適用することで、試料中のその位置が非常に簡単に、零点の異なった場所に記録された発光光から特定され得、その際に、発光マーカーの探していた位置の適用された関数の極値の場所が同一視される。この方法は、発光マーカーによる発光光の放出に作用し、その強度分布が零点を備えている光が発光防止光である場合でも、それが発光可能化光又は励起光である場合でも、可能である。最初の場合、零点に境を接する発光防止光の強度最大値は、有利には、近くにある他の発光マーカーから放出される発光光が位置調整を妨害することを阻止する。2つ目の場合、各発光マーカーには走査すべき部分範囲内で最小光量しか当てられず、それによって光化学的に与えられる負荷が最小である。
【0058】
走査され、それによって画像化された試料の部分範囲がそれぞれ非常に小さいままであるという本発明による方法の短所は、試料が複数の部分範囲で同時に走査されることで、少なくとも部分的に補われ得る。その際、基本的に公知であるように、特に発光マーカーによる発光光の放出に作用する光の零点のラスターが使用され得る。しかしその際、零点のラスターは、本発明により、試料が全体として画像化されるほどには、つまりラスター寸法全体ほどにはずらされない。むしろ、その中で試料が走査される個々の部分範囲は、本発明による方法のこの実施形態でも互いに分離されているままである。このようにしてのみ、試料の走査された部分範囲で本発明による発光マーカーの色あせの危険が低減される。本発明のこの並列された実施形態は、スイッチング可能な発光マーカーによって実施され、この発光マーカーはそれぞれ試料の走査すべき部分範囲でのみその蛍光性状態にあり、試料を補って走査すべき部分範囲も走査され得、完全な画像化が可能になることは明らかである。
【0059】
本発明による方法では、関心対象の複数のサンプルが、複数の走査すべき試料の部分範囲の1つとそれぞれ重なり合って配置されているため、各部分範囲の走査時にはこの対象の部分画像が得られる。この部分画像が統計的に対象に分散され、及びその数が十分大きい場合、そこから関心対象全体の1つの画像が再構成され得る。これが関心対象の異なったサンプルが少なくとも広範囲にわたって一致することを前提とすることは明らかである。部分画像を関心対象の特定の点に割り当てるため、試料中の関心対象のサンプルを追加的に他の方法で画像化でき、それによってその位置と配列を試料の走査された部分範囲に対して特定できる。
【0060】
本発明による方法を実施するための走査発光顕微鏡は、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光のための光源、光を強度分布によって強度最大値に隣接する零点を備えた試料の方向に向ける光形成手段、走査すべき試料の部分範囲を零点走査する走査手段、零点の範囲から放出される発光光を記録する検出器、及び本発明による方法を実施するための制御装置を備えている。
【0061】
この検出器は点検出器であってよく、その場合試料に対する点検出器の位置は、試料の走査すべき部分範囲の走査時に固定できる、つまりこれをスキャンから除外することなく試料から放出される発光光が検出できる。なぜなら走査すべき部分範囲は一般に回折限界を下回る寸法であるからである。さらに、試料の走査すべき部分範囲を零点で走査するための、及び試料のより大きな範囲を走査することを企図している走査手段とは異なる、その他の走査手段があってよい。
【0062】
ここでも、試料のより大きな範囲を走査するための走査手段は、少なくとも1つの方向に光形成手段1つの対物レンズに対して可動の試料ホルダを備えているのに対して、試料の走査すべき部分範囲を走査するための走査手段は、少なくとも1つの方向に電気光学的スキャナ、音響光学的偏向器又はガルボミラーを備えていてよい。
【0063】
しかしこの検出器は、例えば点検出器であってもよく、これはスキャンから除外された発光光を試料から検出し、又はスキャンから除外されない発光光を試料に対して固定された相対位置で検出するカメラのような平形検出器であってよい。
【0064】
本発明によるSTED法を実施するための走査発光顕微鏡では、光源が供給する光が刺激光であり、及び別の光源が励起光のために備えられており、その際に光形成手段が光強度分布によって励起光を、発光防止光の零点の範囲に最大値を有している試料の方に向ける。
【0065】
スイッチング可能な発光マーカーを使用する、本発明による方法を実施するために、走査発光顕微鏡では追加的にスイッチオフ光源がスイッチオフ光のために備えられ、その際に光形成手段がスイッチオフ光を、スイッチング可能な発光マーカーが走査すべき部分範囲と境を接する試料の部分範囲で、非活性状態でスイッチオフされるような強度分布で試料の方に向ける。この隣接する部分範囲は、この場合その中で試料中の刺激光の零点の強度最大値と隣接している少なくとも1つの方向で、走査すべき部分範囲と境を接している。その上、スイッチング可能な発光マーカーをその活性状態でスイッチオンするスイッチオン光のためのスイッチオン光源を備えていてよく、その際に光形成手段がスイッチオフ光を、走査すべき部分範囲にある試料に向ける前及び/又はそれと時間的に重なり合って、試料の部分範囲全体に向ける。
【0066】
本発明による方法の実験的な検査では、試料中の発光マーカーからのフォトンの収率が、1ファクタ>100を達成した。このことは例えば、変化を記録するために、変化した関心構造の画像を100回多く撮影され得ることを意味している。その上、それぞれ個々の画像のために必要な時間は短い。なぜなら長期的に時間単位当たりより多くのフォトンが試料中の発光マーカーから放出されるからである。
【0067】
有利には、本発明の発展形態は請求項、説明及び図で示される。説明中に挙げられた特徴と複数の特徴の組合せの利点は単なる例であり、これらの利点を必ず本発明による実施形態で達成する必要なしに、選択的又は追加的に実施されてよい。これによって元の出願書類及び特許の開示内容の観点から、添えられた請求項の対象が変えられることなしに、以下が適用される:その他の特徴は図から、特に示された複数の構成部品の相互の形状及び相対的な寸法、及びその相対的な配置と作用接続から見て取れる。本発明の異なった実施形態の特徴、又は異なった請求項の特徴を組み合わせることは、同様に請求項の選択された後方参照とは相違して可能であり、及びこれによって提案される。これは、独立した図に示されるか又はその説明が挙げられた特徴にも該当する。これらの特徴は、異なった請求項の特徴と組み合わせることもできる。同様に、異なった請求項に挙げられた特徴が本発明の別の実施形態では省略されてもよい。
【0068】
請求項及び挙げられた特徴の説明の中で、数に関しては、正確にその数が、又は挙げられた数よりも大きな数が、「少なくとも」という明示的な副詞を必要とすることなく、解釈されるものとする。つまり例えば、1つの光源とは、正確に1つの光源、2つの光源又は複数の光源であると解釈されるものとする。この特徴は、他の特徴で補足され得るか、又はそれから各装置が構成されるか又はそれが各方法を備えている、1つの特徴であってよい。
【0069】
請求項に含まれる符号は、請求項によって保護される対象の範囲を限定するものではない。これは単に、請求項を理解しやすくするためのものである。
【0070】
以下では、本発明が図に示された好ましい実施例を用いて説明され、記述される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】は、試料中に配置されている発光マーカーによる発光光の放出に作用する光の例として、励起光及び蛍光防止光の、及び結果として生じた、蛍光光を放出するための試料中の蛍光マーカーの効果的な励起の、模式的強度分布である。
図2】は、図1に従った蛍光防止光の強度分布のための、図1に従った強度分布による、本発明による方法において試料の走査すべき部分範囲の寸法である。
図3】は、試料の走査すべき部分範囲の模式的平面図であり、ここでは走査が蛇行軌道に沿って行われる。
図4】は、試料の走査すべき部分範囲の模式的平面図であり、ここでは走査がらせん軌道に沿って行われる。
図5】は、本発明による方法を実施するための、蛍光顕微鏡を、例として走査発光顕微鏡を模式的に図示している。
図6】は、(a)あらかじめ撮影した試料の共焦点の画像、及び(b)個々の走査すべき試料の部分範囲が共焦点画像に基づいて選択された後に本発明により撮影された試料の部分画像である。
図7】は、撮影可能な画像の数と試料の走査された部分範囲の寸法との間の従属関係である。
図8】は、本発明による方法を実施するための、図5とは異なる蛍光顕微鏡を、例として走査発光顕微鏡を図示している。
図9】は、その中で走査蛍光顕微鏡によってスイッチオフ光が試料に向けられた、同時に隣接する部分範囲を表示した、走査すべき試料の部分範囲の模式図である。
図10】は、試料を走査すべき部分範囲で走査するための、図9に従った試料中の複数の走査すべき部分範囲の配置図である。
図11】は、試料中の走査すべき部分範囲の別の配置図である。
図12】は、本発明による方法の実施形態のブロック図である。
図13】は、図12に従った本発明による方法による、試料中の走査すべき部分範囲の配置図である。
図14】は、関心対象の変化した周辺条件に対する反応の模式図である。
図15】は、走査すべき部分範囲を走査する際の、試料のわずかな場所だけにある零点の配置である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1では、上は励起光1の強度分布の断面が示されている。励起光1は、幾何学的な焦点Fで強度最大値27が最大強度Iを備えている。しかしこの強度Iは、各方面で焦点Fを大幅に超えて伸びた範囲に分散されており、その回折限界直径は、励起光1の波長ラムダと励起光1の使用対物レンズの焦点Fでの焦点合わせのための開口数NAで、ラムダ/NAに相当する。励起光1で達成された試料中の蛍光マーカー励起を、励起光1の強度分布の拡張よりも小さい範囲に限定するために、追加的に蛍光防止光2が試料に向けられ、この光が強度最大値3に隣接する零点4を備えている。この蛍光防止光2は、例えば刺激された放出によって蛍光マーカーを再び鎮静化することで、励起光1によって励起された蛍光マーカーからの蛍光光の放出を阻止する。蛍光防止光2の零点4の範囲5の外側ならどこでも、蛍光防止光2の強度Iはこの鎮静化が完全に実行されるほど大きい。つまり、そこに配置された蛍光マーカーは蛍光光を放出しない。反対に、ここで「零点4」とは範囲5全体を意味し、その中では、蛍光防止光2の強度Iが、その中に配置された蛍光マーカーによる蛍光光の放出を阻止しないほどに小さく維持される。図1では、下は効果的な蛍光励起6の空間的な分布である。これは範囲5で零点4と境を接している。零点4で試料が走査されると、試料から放出された蛍光光が常に範囲5からのみ出て、それに応じて試料の場所に割り当てられる。
【0073】
零点4が試料の走査時に蛍光染料でマーキングされた関心構造に近づくと、蛍光マーカーはまず強度最大値3の範囲に接近し、それによって重なり合った励起光1の強度が、それが範囲5で零点4に達する。特に列単位の試料走査は、最初に蛍光光がそれによって記録される前に、蛍光マーカーに高い光強度を反復して当てることで行われる。これは、初めて零点4から到達される前に、蛍光マーカーがすでに色あせているという結果をもたらす。例えば蛍光マーカーでマーキングされた試料の関心構造の時間的変化を観察するための、同じ試料の反復走査も、この作用でしばしば不可能である。
【0074】
しかし、図2に示されたように、零点4で走査された試料の範囲が、強度最大値3の間の間隔D0の最大3/4又は75%に限定される場合、走査された範囲ですでに蛍光マーカーで平均的な負荷に低下し、この平均的な負荷は、強度最大値3の範囲の蛍光防止光2の高い強度によって、特に図1に従った励起光1の強度と関連して、表れる。走査すべき範囲の寸法が強度最大値3の間隔D0の半分で、限定が小さくなる場合、この負荷はさらに低下する。寸法がD0/2より小さく限定されると、試料の走査すべき部分範囲で、強度最大値3の直近の範囲に1つも点が到達しない。走査すべき範囲の寸法がD0/4に限定されると、試料が走査すべき範囲内で与えられる、蛍光防止光2の最大強度は、約I0/2に限定され、その際I0は強度最大値3内で蛍光防止光2の最大強度である。
【0075】
図3は、断面で示された試料8の走査すべき部分範囲7の走査を示しており、ここでは蛇行形状の軌道9の長手方向に零点4の範囲5がある。ここで走査すべき部分範囲7は、強度最大値3内に示され、この場合この強度最大値3の位置は走査すべき部分範囲7の中心点10で零点4の配置に一致している。これに応じて、強度最大値は、もっと正確に言えば、ここで図3に示された零点4の位置の周りのリング形状の強度最大値3は、続いて走査すべき部分範囲7に伸びており、これが破線11で示されている。この重なりは、走査すべき部分範囲7がさらにD0/2より小さく限定されることで阻止され得る。しかしまた、ここで与えられた、走査すべき部分範囲7の寸法を約2D0/3へ限定することで、試料8への蛍光防止光2の平均的な照射が部分範囲7で大幅に低減される。
【0076】
図4は、D0/2に限定された試料8の走査すべき部分範囲7を示している。ここでは破線11で示されたリング形状の強度最大値3の伸びが、零点4のどの位置でも、走査すべき部分範囲7で、もう部分範囲7に到達しない。さらに、図4はらせん軌道12を示しており、これに沿って、走査すべき部分範囲7が中心点10から出発して走査される。零点4が走査すべき部分範囲7の走査時に動かされる軌道の形状には無関係に、試料8から放出されて記録された蛍光光は試料中の各零点の場所4に割り当てられる。
【0077】
図5は、本発明による方法を実施するために特に適している走査蛍光顕微鏡13を示している。この走査蛍光顕微鏡13は、蛍光防止光2のための光源14を備えており、その断面が拡大レンズ15で拡大され、及びその波先がその断面を超えて、位相板16を使って、対物レンズ45で試料8に焦点を合わせる際に零点4が隣接している強度最大値3と、図1及び図2に従って、各焦点Fの周りに形成されるように変調される。励起光1のために、別の光源17が拡大レンズ18と共に備えられている。ダイクロイックミラー19を使って、励起光1と蛍光防止光2がまとめられ、その結果励起光1は蛍光防止光2の零点4の範囲5でその強度最大値27を図1に従って備えている。試料から、正確には蛍光防止光2の零点の範囲から放出された蛍光光20は、ダイクロイックミラー26によってアウトカップリングされ、点検出器21を使って記録され、各零点の場所で試料内に配置される。試料の各部分範囲を零点で走査するために、走査手段22及び23は2つの互いに直交する走査方向のために備えられており、これらが互いに調整されて走査される。走査手段22及び23は、励起光1及び蛍光防止光2の方向にのみ作用し、これらはそれどころか蛍光防止光2の光学経路にのみ配置されている。試料8の走査すべき部分範囲7は寸法が回折限界を下回るため、点検出器21の試料8に対して固定された配置でも蛍光防止光2の零点の範囲から、試料8から放出された蛍光光20は常に点検出器21内に、つまり零点の移行にもかかわらず、走査手段22及び23を使用して到達する。本発明により走査される、試料8の走査すべき部分範囲7は、試料8を超えて走査され、例えばまず適切な走査すべき部分範囲の位置を特定するために、別の走査手段を試料ホルダ24の範囲に備えており、この手段はここでは単に対応するスライドシンボル25で示されている。
【0078】
これまでの記述では、空間解像度が関心試料中の構造8の画像化でこのz方向にも高めるために、蛍光防止光2の強度分布の零点4が、蛍光防止光2が試料の方に向けられたz方向にも、強度最大値3で限定されていてよいということは、明示的に表現されていなかった。それに応じて、走査すべき部分範囲7はこのz方向でも最大75%、好ましくは50%未満に、光の強度最大値の間隔がこの方向にも限定されるか、又はz方向にもその中心点10で始まって、この中心点10からの間隔を増大しながら走査される。高められた空間解像度は、z方向への構造の画像化の場合、本発明による方法で、しかし他の処置でもやはり達成でき、例えば蛍光光の放出のための蛍光マーカーの4Piレイアウト又は2フォトン励起によって、又は他の蛍光顕微鏡検査法分野で公知の処置によって達成できる。ここに記述された方法が他の蛍光顕微鏡検査法分野で公知の処置によって補足され得ることも、基本的に適用される。これに加えて、例えば蛍光防止光2及び/又は励起光1をパルスで当てること、同時に連続的に励起光1又は蛍光防止光2を当てること、定義された時間窓で各パルスなどのあとに蛍光光のゲート記録が行われることなどがある。
【0079】
この共焦点画像は、図6(a)に従い、それによって発光マーカー、ヌクレオポリンgp210によってマーキングされた関心構造の試料が撮影された。共焦点画像は関心構造の概要を示す。この概要から、個々の試料の部分範囲が選択され、その中でSTED画像が本発明による方法により撮影された。この部分範囲は励起光の焦点よりも小さい。部分範囲には、関心構造が高い空間解像度で、及び同時に高い発光効率で画像化される。図6(b)に示された、走査された部分範囲を再現する試料の部分画像を撮影するため、波長635、出力5μWの励起光がパルスで、反復速度20MHzで試料に向けられた。波長775nmのSTED光は、パルス長1.2ns、出力150mWの同期パルスで試料に向けられた。励起光及びSTED光は、1.4NAのオイル逆転対物レンズで試料に焦点が合わせられた。蛍光光はオイル逆転対物レンズとその他のレンズによって点検出器に焦点が合わせられた。
【0080】
図7は、走査された試料の部分範囲の寸法に応じて、染色された核膜孔タンパク質という例を使って、STED走査蛍光顕微鏡により、色あせ傾向が示されている。p1/2は蛍光信号が色あせによって元の値の半分に低下するまでに撮影できる画像の数を表している。試料の走査された部分範囲の寸法がナノメートルで、1/2でグラフ化されている。STED性能は160mWで、励起性能は2μWである。それ以外は、図6に従ったSTED条件に相当する。走査された部分範囲の寸法100x100nmでは、色あせは寸法800x800nmと比べて係数100低減されている。それに応じて、例えば動的プロセスで観察するために、同じ部分範囲で100回多く画像が撮影できる。
【0081】
図8には、走査蛍光顕微鏡13は図5に示された走査蛍光顕微鏡とは以下の相違点がある。点検出器21は、試料8から見て、走査手段22及び23の後方に配置され、そのために走査手段が試料8から来る蛍光光20を点検出器21に対してスキャン回避する。その際、走査手段22及び23は、走査すべき部分範囲の蛍光防止光2の零点による走査だけでなく、試料8中での走査すべき部分範囲の基本的な配置又は移動も企図している。図8は、試料8から見て走査手段22及び23の前に配置された蛍光光用検出器28も示している。しかしここではこれは点検出器ではなく、カメラ29であり、つまり平形検出器である。この検出器28は、点検出器21に加えて、又は点検出器21の代わりに備えられてよく、その際に蛍光光20を検出器28からそらすダイクロイックミラー30が、一時的に又は恒久的に対物レンズ45と走査手段22及び23との間に配置されている。
【0082】
さらには、走査蛍光顕微鏡13では、図8に従い、スイッチオフ光源31が備えられており、これには拡大レンズ32が割り当てられていて、これによって各走査すべき部分範囲を蛍光防止光2の零点で走査する前にスイッチオフ光34が用意される。スイッチオフ光34は、ダイクロイックミラー43を使用してインカップリングされ、ビーム形成手段33によって、走査すべき部分範囲と境を接する試料の部分範囲8が試料8中に含まれるスイッチング可能な発光マーカーを非活性状態にスイッチングするように、試料8中の強度分布が形成される。この非活性状態では、試料8中のスイッチング可能な発光マーカーは、励起光1によって蛍光光20を放出するようには励起され得ない。これに応じて、非活性状態にある発光マーカーでは、刺激光の形で蛍光防止光2による色あせの危険がなくなる。こうして、図8に従ったこの走査蛍光顕微鏡13を使用してすでに走査された、走査すべき部分範囲に隣接する試料の部分範囲8を、蛍光防止光2の零点で走査し、その際に試料8からの蛍光光20が記録されることが可能である。なぜならそこにある発光マーカーはあらかじめ走査された走査すべき部分範囲の走査時に色あせることがないからであり、その理由はそれが色あせしないよう保護する非活性状態にあるからである。
【0083】
隣接する走査すべき部分範囲の発光マーカーを励起光1で蛍光光20放出のために励起できるよう、これは再びその活性状態になければならない。そのために、発光マーカーがその非活性状態から活性状態に自然に戻るまで待たなければならない。しかし図8に従った走査蛍光顕微鏡13は、追加的にスイッチオン光源35と拡大レンズ36も備えており、それによってスイッチオン光37がダイクロイックミラー44を通って試料8に向けられ、それによって次の走査すべき部分範囲の発光マーカーが、まずその活性状態にスイッチングされる。その際、スイッチオン光37で検出された試料の部分範囲8は、次の走査すべき部分範囲より大きい可能性がある。なぜなら、続いてスイッチオフ光34によって次の走査すべき部分範囲の外の発光マーカーがその非活性状態に移行されるからである。それゆえに、この走査蛍光顕微鏡13を使用して、試料8は2段階で、すなわち、大きなステップで走査すべき部分範囲を、小さいステップでそれぞれ走査すべき部分範囲にある蛍光防止光2の零点で、走査され得る。
【0084】
試料8中の発光マーカーのスイッチオン及び/又はスイッチオフの際に、スイッチオン光37又はスイッチオフ光34を使用して、スイッチング可能なさまざまな発光マーカーが蛍光光20の放出のためにも励起される。この蛍光光20は、それによってすでに各試料の部分範囲8にある発光マーカーの濃度に関する情報を与える。この情報は、適切に評価されて、次の走査すべき部分範囲を蛍光防止光2の零点で走査することが実行するに値するのかしないのかを決定するために使用され得る。それが実行に値しない場合、そのような走査も実行されず、試料8には不要な蛍光防止光2が当てられない。さらに、発光マーカーのスイッチオン又はスイッチオフ時に記録された蛍光光20も、走査すべき部分範囲の蛍光防止光2の各零点の場所で記録された蛍光光の上限値及び/又は下限値を確定するために使用可能であり、それが達成されるかされないかで、RESCue方法において試料8に発光防止光2及び励起光1を当てることが中止される。
【0085】
最後に図8には、走査蛍光顕微鏡13を本発明による方法により制御するために、光源14及び17の制御装置38、スイッチオン光源35、スイッチオフ光源31、及び走査手段22及び23が示されている。
【0086】
図9は、蛍光防止光の零点が走査すべき部分範囲7の中心点10にある場合の、走査すべき部分範囲7及びその周囲に広がる蛍光防止光強度最大値3を示している。図9はさらに、リング形状で隣接する部分範囲39を示しており、その中では部分範囲7が走査される前に試料8にスイッチオフ光34が当てられて、そこにあるスイッチング可能な発光マーカーがその非活性状態に移動される。部分範囲39では部分範囲7が空いている。つまり部分範囲7ではスイッチオフ光34の強度がゼロ又は少なくとも発光マーカーを時間内にスイッチオフするほど小さい。この時間スイッチオフ光34が試料8に向けられるが十分ではない。スイッチング可能な発光マーカーが少なくとも試料8走査すべき部分範囲7で活性状態にあることを確保するため、スイッチオフ光34の前及び/又はそれと時間的に重なり合って、スイッチオン光37が走査すべき部分範囲7を含むリング状の部分範囲40にわたって、試料8に向けられる。
【0087】
図10では、走査すべき部分範囲7で試料8がどのように走査可能であるかが示されている。ここでは図10(a)は、複数の連続する円形の部分範囲7の位置が図9に従って試料8に示しており、そのうちの1つの部分範囲7では軌道9があり、それに沿っての試料8の部分範囲7内で正方形の範囲で走査される。図10(b)では、どのようにしてような正方形の部分範囲41で試料8を完全にカバーし、それに応じて完全に撮影可能かが示されている。
【0088】
図11(a)では、他の形の試料8の部分範囲7の走査が示されている。ここでは円形の部分範囲7の連続する状態で、試料8の六角形の配置が示されている。その際、軌道9はその各部分範囲7に沿って伸び、それによって発光防止光の零点で、規則正しい六角形に走査される。図11(b)では、どのようにしてような規則正しい六角形42が試料8全体で確認され、相応に撮影されるかが示されている。
【0089】
図12は、ブロック図で示された本発明による方法の実施形態であり、発光マーカーを備えた複数の関心対象のマーク46から始まっている。ここでは各関心対象は確かに複数の発光マーカーでマーキングされている。しかし各対象当たりの発光マーカーの数は少なくてよく、例えば2つだけである。具体的には、対象の構造をこの2つの関心対象の範囲が現在互いにどれほど離れているかという趣旨で画像化するために例えば2つの同じ又は2つの異なった蛍光マーカーを備えたタンパク質のような、2つの異なった関心対象の範囲であってよい。次に続く、試料8の走査すべき部分範囲7の複数の関心対象の指示47は、関心対象の部分範囲7それぞれに配置されている。各部分範囲の正確に1つの関心対象の指示47は、免疫反応をベースに行われ得、それを介してそれぞれ1つの関心対象が、各走査すべき部分範囲7の中心点につなげられる。後続の、試料8中の発光マーカーの場所の特定48は、走査すべき部分範囲7を、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光の、つまり例えば発光励起光の強度分布の零点で走査することで行われる。具体的には、試料8中の発光マーカーの場所は発光光の強度で特定でき、この強度は試料中の零点8の個々の場所で、部分範囲7のそれぞれに関して記録された。これに続いて関心対象の周辺条件の変更49は、対象の構造及びそれによって試料8中の発光マーカーの相対的な場所に作用し、この作用が特定48を反復することで確認できる。ここでは特定48が何度も反復され、その際にこの反復がすでに変更49中に開始され、関心対象が変更された周辺条件に対する動的な反応を検出するために、その後も継続され得る。
【0090】
図13は、固定点50に対して多数の走査すべき部分範囲7がパターン51に定義されている試料8を示している。パターン51はここでは正方形のパターンであり、その中に部分範囲7が行52と列53で規則的に配置されている。ここでは走査すべき部分範囲7はどれでも、固定点50を使用して見つけ出すことができ、発光マーカーによる発光光の放出に作用する光の強度分布の零点でアプローチできる。部分範囲7の中心点54では、関心対象が前述の免疫反応によってインカップリングされ得、その結果各部分範囲7と重なり合って、それぞれ1つの関心対象に配置されている。
【0091】
図14は大幅に模式化した関心対象55で、これは2つの範囲で2つの個々では異なって示された発光マーカー56及び57でマーキングされている。これは、発光マーカー56及び57が線形状の対象55の2つの端部に配置されていることを示している。図14aには対象の伸ばされた構造55が、図14bには曲げられた、又は折りたたまれた構造55が示されている。図14aによる伸ばされた構造と図14bによる折りたたまれた構造との変更点は、変更された周辺条件に対する構造55の反応であってよく、例えば変更されたpH値又は特定の化学物質が存在することである。ここで、本発明による方法による構造の変更点は、2つの発光マーカー56及び57の間隔を検出することで、簡単に記録され得る。加えて、そこから放出される発光光が、波長が異なっていることが理由で、又は時間的に分離可能である場合、2つの発光マーカー56及び57の試料中の位置は同時に特定され得る。なぜなら2つの発光マーカー56及び57はそれぞれ一時的にしか発光光を放出しないからである。たとえそれが同じであっても2つの発光マーカー56及び57のどちらか1つだけによる発光光の一時的放出は、さまざまな状況で、例えば発光マーカー56及び57が発光励起光による励起によって一時的に暗黒状態になることで、又は追加的なスイッチオフ光を一時的に暗黒状態にスイッチングされることが可能な、スイッチング可能な発光マーカーとして形成されることで、達成できる。
【0092】
図15は、走査すべき部分範囲7の4つの場所58及び59を示している。ここには、発光マーカー56、57の個々の放出場所を部分範囲7内で特定するために、発光光の放出に作用する光の強度分布の零点を配置され得る。ここでは、場所58は部分範囲7の中心点54にあり、場所59は部分範囲7の辺縁範囲の円弧にある。部分範囲7が4つの零点の場所だけで走査されることで、各発光マーカー56又は57の場所を試料の1つの平面で特定するため、この特定は非常に速く行うことができる。さらに、発光光の放出に作用し、かつ零点を持つ強度分布で試料に向けられる光が、励起光であり、つまり各発光マーカー56、57にわずかな強度で当てられる場合、その位置を部分範囲7内で特定するためには各発光マーカー56、57の非常にわずかなフォトンしか必要としない。このことは、変更された周辺条件に対する関心対象55の反応を検出するために、敏感な発光マーカーでも反復位置調整を許容する。
【符号の説明】
【0093】
1 励起光
2 蛍光防止光
3 強度最大値
4 零点
5 範囲
6 励起
7 走査されるべき部分範囲
8 試料
9 軌道
10 中心点
11 破線
12 らせん軌道
13 走査蛍光顕微鏡
14 光源
15 拡大レンズ
16 位相板
17 その他の光源
18 拡大レンズ
19 ダイクロイックミラー
20 蛍光光
21 点検出器
22 走査手段
23 走査手段
24 試料ホルダ
25 スライドシンボル
26 ダイクロイックミラー
27 強度最高値
28 検出器
29 カメラ
30 ダイクロイックミラー
31 スイッチオフ光源
32 拡大レンズ
33 ビーム形成手段
34 スイッチオフ光
35 スイッチオン光源
36 拡大レンズ
37 スイッチオン光
38 制御装置
39 隣接する部分範囲
40 部分範囲
41 正方形
42 六角形
43 ダイクロイックミラー
44 ダイクロイックミラー
45 対物レンズ
46 マーク(ステップ)
47 指示(ステップ)
48 特定(ステップ)
49 変更(ステップ)
50 固定点
51 パターン
52 列
53 段
54 中心点
55 対象
56 発光マーカー
57 発光マーカー
58 場所
59 場所
F 焦点
I 強度
D0 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10(a)】
図10(b)】
図11(a)】
図11(b)】
図12
図13
図14(a)】
図14(b)】
図15