(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】非水性インク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/36 20140101AFI20220222BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20220222BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20220222BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
C09D11/36
C09D11/322
B41M5/00 120
B41J2/01 501
(21)【出願番号】P 2021069824
(22)【出願日】2021-04-16
(62)【分割の表示】P 2020183012の分割
【原出願日】2020-10-30
【審査請求日】2021-04-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】山崎 史絵
(72)【発明者】
【氏名】井島 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】小谷 亮介
(72)【発明者】
【氏名】安井 涼馬
【審査官】▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-021100(JP,A)
【文献】特開2019-056089(JP,A)
【文献】特開2018-095739(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207487(WO,A1)
【文献】特開2019-104866(JP,A)
【文献】国際公開第2020/241350(WO,A1)
【文献】特許第6754882(JP,B1)
【文献】特開2016-150984(JP,A)
【文献】特開2020-105307(JP,A)
【文献】特開2011-168685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット法によって吐出される非水性インク組成物であって、
前記非水性インク組成物は、下記式(1)で表される有機溶剤と、光輝性顔料と、を含有し、
さらに、ワックスを前記非水性インク組成物全量中0.05質量%以上1.0質量%以下の範囲で含有する
非水性インク組成物。
【化1】
(式(1)中、R1は炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基であり、R2は炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキレン基であり、R3は、炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基である。nは1以上4以下の整数を表す。)
【請求項2】
前記インク組成物をPETフィルムの表面に吐出し、該インク組成物を乾燥することで該PETフィルムの表面に光輝性層を形成し、45°の入射角で入射光を該光輝性層に対して入射させ、その入射角に対する反射角から法線方向に15°角度を変更させた角度を測定角度として、その測定角度でのL
*a
*b
*表色系におけるL
*(明度指数)を測定したときに、前記L
*(明度指数)が100以上である
請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
さらに前記ワックスとは異なる樹脂を含有し、該樹脂の含有量は、前記ワックスと前記光輝性顔料との合計含有量よりも小さい
請求項1又は2に記載の非水性インク組成物。
【請求項4】
さらに下記式(2)で表される有機溶剤を含有する
請求項1から3のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【化2】
(式(2)中、X1はアルキル基であり、X2は水素又はアルキル基である。nは1以上4以下の整数を表す。)
【請求項5】
前記式(1)で表される有機溶剤は、引火点が70℃以下の第1有機溶剤と、引火点が90℃以上の第2有機溶剤と、を含有する
請求項1から4のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【請求項6】
前記光輝性顔料は、金属含有光輝性顔料を含有する
請求項1から5のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【請求項7】
前記金属含有光輝性顔料の体積平均粒子径(D50)が0.03μm以上2.5μm以下であり、
前記金属含有光輝性顔料の体積平均粒子径(D90)が3.5μm以下であり、
前記金属含有光輝性顔料の厚みが10nm以上1.0μm以下である
請求項6に記載の非水性インク組成物。
【請求項8】
インクジェット法によって非水性インク組成物を吐出する記録方法であって、
前記非水性インク組成物は、下記式(1)で表される有機溶剤と、樹脂と、光輝性顔料と、を含有し、
前記非水性インク組成物は、さらに、ワックスを前記非水性インク組成物全量中0.05質量%以上1.0質量%以下の範囲で含有する
記録方法。
【化1】
(式(1)中、R1は炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基であり、R2は炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキレン基であり、R3は、炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基である。nは1以上4以下の整数を表す。)
【請求項9】
インクジェット法によって非水性インク組成物を吐出する印刷物の製造方法であって、
前記非水性インク組成物は、下記式(1)で表される有機溶剤と、樹脂と、光輝性顔料と、を含有し、
前記非水性インク組成物は、さらに、ワックスを前記非水性インク組成物全量中0.05質量%以上1.0質量%以下の範囲で含有する
印刷物の製造方法。
【化1】
(式(1)中、R1は炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基であり、R2は炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキレン基であり、R3は、炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基である。nは1以上4以下の整数を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にインクジェット法によって吐出される光輝性加飾印刷用の非水性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷物の小ロット多品種化が進んでおり、従来のオフセット方式の印刷方法の代替として、オンデマンドプリントであるインクジェット方式の印刷方法が注目されている。インクジェット方式の印刷方法は、従来のオフセット方式の印刷方法と比較して、簡便であり、経済性や省エネルギー性等のメリットを有する。インクジェット方式は、プリンタヘッドから吐出したインクの微小液滴が記録媒体に着弾した後、乾燥、硬化、浸透、等により定着してドットを形成し、このドットが多数集まることによって画像が形成される印刷方法である。
【0003】
また、基材(記録媒体)やその表面の一部又は全面に着色層が形成された印刷物等の被体に金属調を有する画像を表現することが行われることがある。このような金属調の光沢性を付与する手法として、真鍮、アルミニウム微粒子等から作製された金属粉を用いたインキの塗布や、金属箔を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写方式等が用いられてきた。
【0004】
そして、近年、金属光沢を有する塗膜を形成する上記の方法の他に、インクジェット方式の印刷方法への応用例が数多く見受けられ、その一つとして光輝性加飾印刷がある。インクジェット方式を用いた光輝性加飾印刷は、主としてインクジェットプリンター等を用いて行われる。
【0005】
例えば、特許文献1には、光輝性顔料と、所定の有機溶剤と、を含有することを特徴とする非水系インク組成物が開示されている。特許文献1によれば、この非水性インク組成物は、金属光沢画像の耐擦性に優れた記録物が得られるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、光輝性顔料と、有機溶剤と、を含有するようなインク組成物を用いて被体上に金属光沢画像を記録した場合、被体に良好な金属調の光沢性を付与するためには、光輝性顔料をインク塗膜表面近くに存在させるようにする必要がある。すると、インク組成物の塗膜から光輝性顔料が剥がれ落ちて、印刷物の光沢性が低下することや、塗膜に傷が付きやすくなって、印刷物の耐擦過性が不十分な場合があった。
【0008】
本発明は、良好な金属調の光沢性を維持しつつ、耐擦過性が良好な印刷物を得ることができるインク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、ワックスを所定量含有する非水性インク組成物であれば上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0010】
(1)インクジェット法によって吐出される非水性インク組成物であって、
前記非水性インク組成物は、下記式(1)で表される有機溶剤と、光輝性顔料と、を含有し、
さらに、ワックスを前記非水性インク組成物全量中0.05質量%以上1.0質量%以下の範囲で含有する
非水性インク組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基であり、R
2は炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキレン基であり、R
3は、炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基である。nは1以上4以下の整数を表す。)
【0011】
(2) さらに樹脂を含有し、該樹脂の含有量は、前記ワックスと前記光輝性顔料との合計含有量よりも小さい
(1)に記載の非水性インク組成物。
【0012】
(3) さらに下記式(2)で表される有機溶剤を含有する
(1)又は(2)に記載の非水性インク組成物。
【化2】
(式(2)中、X
1はアルキル基であり、X
2は水素又はアルキル基である。nは1以上4以下の整数を表す。)
【0013】
(4)前記式(1)で表される有機溶剤は、引火点が70℃以下の第1有機溶剤と、引火点が90℃以上の第2有機溶剤と、を含有する
(1)から(3)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0014】
(5)前記光輝性顔料は、金属含有光輝性顔料を含有する
(1)から(4)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0015】
(6)前記金属含有光輝性顔料の体積平均粒子径(D50)が0.03μm以上2.5μm以下であり、
前記金属含有光輝性顔料の体積平均粒子径(D90)が3.5μm以下であり、
前記金属含有光輝性顔料の厚みが10nm以上1.0μm以下である
(5)に記載の非水性インク組成物。
【0016】
(7)基材と、該基材の表面に形成された光輝性層と、を備え、
前記光輝性層は、光輝性顔料を含有し、
前記光輝性層は、さらに、ワックスを前記光輝性層全量中0.5質量%以上30質量%以下の範囲で含有する
印刷物。
【0017】
(8)インクジェット法によって非水性インク組成物を吐出する記録方法であって、
前記非水性インク組成物は、下記式(1)で表される有機溶剤と、樹脂と、光輝性顔料と、を含有し、
前記非水性インク組成物は、さらに、ワックスを前記非水性インク組成物全量中0.05質量%以上1.0質量%以下の範囲で含有する
記録方法。
【化1】
(式(1)中、R
1は炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基であり、R
2は炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキレン基であり、R
3は、炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基である。nは1以上4以下の整数を表す。)
【0018】
(9)インクジェット法によって非水性インク組成物を吐出する印刷物の製造方法であって、
前記非水性インク組成物は、下記式(1)で表される有機溶剤と、樹脂と、光輝性顔料と、を含有し、
前記非水性インク組成物は、さらに、ワックスを前記非水性インク組成物全量中0.05質量%以上1.0質量%以下の範囲で含有する
印刷物の製造方法。
【化1】
(式(1)中、R
1は炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基であり、R
2は炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキレン基であり、R
3は、炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基である。nは1以上4以下の整数を表す。)
【発明の効果】
【0019】
本発明のインク組成物は、光沢性を維持しつつ、耐擦過性が良好な印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例の光沢評価でのL
*a
*b
*表色系におけるL
*(明度指数)の測定角度を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0022】
<1.非水性インク組成物>
本実施の形態に係る非水性インク組成物は、インクジェット法によって吐出される非水性インク組成物である。そして、この非水性インク組成物は、式(1)で表される有機溶剤と、光輝性顔料と、を含有しており、被体の表面にインクジェット法によって吐出される。そして、このインク組成物中の有機溶剤が揮発すると、被体の表面に光輝性顔料を含有する光輝性層が形成されて、被体に金属調の光沢性を付与することができる。なお、本明細書において被体とは、記録媒体の表面そのものであっても、記録媒体の表面の一部又は全面に着色層が形成されたものであってもよく、特に限定されるものではない。
【0023】
【化1】
(式(1)中、R
1は炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基であり、R
2は炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキレン基であり、R
3は、炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基である。nは1以上4以下の整数を表す。)
【0024】
ここで、非水性インク組成物とは、水を含有せず、有機溶剤を主成分とするインク組成物である。本明細書において、「水を含有しない」とは、水を意図的に含有させずに製造されたインク組成物であることを意味し、例えば大気中等に含有される水蒸気等や添加剤に含有される水等に起因するような製造者が意図しないような原因により含有されてしまうような水は考慮しない。
【0025】
そして、この非水性インク組成物はワックスを非水性インク組成物全量中0.05質量%以上1.0質量%以下の範囲で含有することを特徴とする。これにより被体の表面にスリップ性を付与することができる。さらに、光輝性顔料をインク塗膜表面近くに存在していても光輝性顔料が剥がれ落ちて光沢性が低下することを抑制することができる。これにより、光沢性を維持しつつ、耐擦過性が良好な印刷物を得ることができる。
【0026】
以下、本実施の形態に係る非水性インク組成物に含まれる各成分について各々説明する。
【0027】
[光輝性顔料]
光輝性顔料は、被体に金属調の光沢性を付与する機能を有する。光輝性顔料としては、たとえばパール顔料や金属含有光輝性顔料を含むものが挙げられる。中でも光輝性顔料は金属含有光輝性顔料を含有することが好ましい。被体により好適な金属調の光沢性を付与することができる。
【0028】
なお、光輝性顔料は金属含有光輝性顔料を含有する場合、金属含有光輝性顔料の含有量が光輝性顔料全量中30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70量%以上であることがさらに好ましい。
【0029】
パール顔料としては、雲母、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス、二酸化ケイ素、金属酸化物、およびそれらの積層等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。
【0030】
金属含有光輝性顔料としては、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等の単体金属;金属化合物;合金およびそれら混合物の少なくとも1種を挙げることができる。金属含有光輝性顔料としてはアルミニウムを含むものを使用することが好ましい。光輝性顔料としてアルミニウムを含むものを用いることで、被体により好適な金属調の光沢性を付与することができる。
【0031】
光輝性顔料の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、非水性インク組成物全量中1.0質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、被体により好適な金属調の光沢性を付与することができるようになる。光輝性顔料の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、非水性インク組成物全量中10.0質量%以下であることが好ましく、8.0質量%以下であることがより好ましく、6.0質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、非水性インク組成物や分散液中での光輝性顔料の分散性が向上する。
【0032】
金属含有光輝性顔料の体積平均粒子径(D50)が0.01μm以上3.0μm以下であり、体積平均粒子径(D90)が4.5μm以下であり、厚みが10nm以上1.0μm以下であることが好ましい。このような形状であることで、被体により好適な金属調の光沢性を付与することができる。
【0033】
金属含有光輝性顔料の体積平均粒子径(D50)の下限は、0.02μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることがさらに好ましい。金属含有光輝性顔料の体積平均粒子径(D50)の上限は、2.7μm以下であることがより好ましく、2.5μm以下であることがさらに好ましい。金属含有光輝性顔料の体積平均粒子径(D90)は、4.0μm以下であることがより好ましく、3.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0034】
金属含有光輝性顔料の厚みが10nm以上であることで、金属含有光輝性顔料の反射性、光輝性が向上し、被体により好適な金属調の光沢性を付与することができるようになる。金属含有光輝性顔料の厚みが1.0μm以下であることで、インク組成物や分散液中での金属含有光輝性顔料の分散性が向上する。
【0035】
金属含有光輝性顔料の厚みの下限は、15nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。金属含有光輝性顔料の厚みの上限は、0.8μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0036】
なお、光輝性顔料の体積平均粒子径(D50)、体積平均粒子径(D90)及び厚みは、例えばシスメックス(株)製の「FPIA-3000S」、(株)島津製作所製レーザー回折式粒度分布計「SALD 7500nano」等を使用して測定することができる。
【0037】
光輝性顔料は、金属含有粒子を機械的に造形することによって、たとえばボールミルまたはアトリションミルの中で磨砕することによって得ることができる。金属含有粒子は、公知のアトマイズ法によって得ることもできる。
【0038】
また、光輝性顔料を製造する別な方法として、基材上に形成された金属含有薄膜を微粉砕することもまた可能である。そのような方法として、例えば、剥離用樹脂層を被覆した平坦な基材の上に、真空蒸着、イオンプレーティングまたはスパッタリング法等によって10nm以上1.0μm以下程度の金属含有薄膜を形成して金属含有薄膜を基材から剥離させて微粉砕する方法が挙げられる。なお、金属含有薄膜との文言は、金属酸化物等の金属化合物含有薄膜も含む概念で使用される。金属含有薄膜の厚さの下限は、15nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。金属含有薄膜の厚さの上限は、0.9μm以下であることがより好ましく、0.8μm以下であることがさらに好ましい。
【0039】
光輝性顔料の製造に用いられる基材の具体例は、ポリテトラフルオロエチレンフィルム;ポリエチレンフィルム;ポリプロピレンフィルム;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム;66ナイロン、6ナイロン等のポリアミドフィルム;ポリカーボネートフィルム;トリアセテートフィルム;ポリイミドフィルムである。好ましい基材は、ポリエチレンテレフタレートまたはその共重合体のフィルムである。
【0040】
光輝性顔料の製造に用いられる基材の好ましい厚さの下限は、特に限定されるものではないが10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。基材の厚みが10μm以上であれることで取り扱い性が良好となる。シート状基材の好ましい厚さの上限は、特に限定されるものではないが、150μm以下であることが好ましく、145μm以下であることがより好ましく、140μm以下であることがさらに好ましい。基材の厚みが150μm以下であることで、得られる積層体の柔軟性を向上させて、ロール化や剥離が容易となる。
【0041】
基材に被覆される剥離用樹脂層に用いる樹脂の具体例は、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、ポリビニルアセタール、アクリル酸共重合体、変性ナイロン樹脂である。剥離用樹脂層に用いる樹脂を樹脂層とするには、樹脂溶液をシート状基材上にグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布、ディップ塗布、スピンコート塗布等の塗布により、剥離用樹脂層を形成する。
【0042】
剥離用樹脂層の厚さの下限は、特に限定されるものではないが、0.1μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましい。0.1μm以上であることで金属含有薄膜を基材から容易に剥離させることが可能となる。剥離用樹脂層の厚さの上限は、特に限定されるものではないが、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。50μm以下であることで金属含有薄膜を基材から容易に剥離させることが可能となる。
【0043】
なお、金属含有薄膜が形成された基材から、非水性インク組成物や非水性インク組成物の製造に用いられる分散液を製造してもよい。剥離用樹脂を溶解しうると共に光輝性顔料と反応しない溶媒中に浸漬するか、または浸漬と同時に超音波処理を行うとよい。このような溶媒としては非水性インク組成物を構成する有機溶剤が挙げられる。剥離用樹脂が光輝性顔料を分散させる分散剤としての機能を有し光輝性顔料の分散性が向上する。この場合、光輝性顔料の粒径及び膜厚は、金属含有薄膜を形成したときの条件や超音波分散時間により調整される。なお、剥離用樹脂溶解溶液から光輝性顔料を遠心分離により沈降分離させて光輝性顔料を回収し、非水性インク組成物を構成する有機溶剤に光輝性顔料を分散させてもよい。
【0044】
[ワックス]
本実施の形態に係る非水性インク組成物はワックスを非水性インク組成物全量中0.05質量%以上1.0質量%以下の範囲で含有することを特徴とする。これにより本実施の形態に係る非水性インク組成物により形成された光輝性層の表面にスリップ性を付与して得られる印刷物の耐擦過性を向上させることが可能となる。
【0045】
ここで、ワックスとは、常温またはそれ以下の温度で固体であって加熱すると液化する有機物やシリコーン化合物である。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリエチレン混合ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリプロピレン混合ワックス等の低分子量ポリオレフィンワックス類、軟化点を有するシリコーン(シリコン)類、シリコーン(シリコン)-アクリルワックス類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類、エステルワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス類、ミツロウ、ラノリン、鯨ロウ等の動物系ワックス類、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物系ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、パラフィン混合ワックス等の石油系ワックス類、及びそれらの変性物が挙げられる。これらのワックスは、市販品として容易に入手することができる。本実施の形態に係る非水性インク組成物において、ワックスは1種単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0046】
本実施の形態に係る非水性インク組成物に含有されるワックスは、常温で液体のものであってもよく、融点は特に制限はされないが、融点の下限は20℃以上であることが好ましく、25℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましい。ワックスの融点が20℃以上であることで、得られる印刷物のワックスが融けて表面がべたついて印刷物同士が接着してしまうことを抑制することができる。融点の上限は130℃以下であることが好ましく、125℃以下あることがより好ましく、120℃以下あることがさらに好ましい。ワックスの融点が130℃以下であることで、得られる印刷物の白化を抑制することが可能となったり、被体により好適な金属調の光沢性を付与することができる。
【0047】
本実施の形態に係る非水性インク組成物において、ワックスの含有量は、非水性インク組成物全量中0.05質量%以上1.0質量%以下の範囲であればよいが、ワックスの含有量の下限は、非水性インク組成物全量中0.07質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。ワックスの含有量が非水性インク組成物全量中0.07質量%以上であることで、被体の表面により好適にスリップ性を付与することが可能となり、耐擦過性が良好な印刷物を得ることができる。ワックスの含有量の上限は、非水性インク組成物全量中0.8質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。ワックスの含有量がインク組成物全量中0.8質量%以下であることで、被体により好適な金属調の光沢性を付与することができる。
【0048】
[有機溶剤]
本実施の形態に係る非水性インク組成物に含有される有機溶剤は、下記式(1)で表される有機溶剤を含有するものである。
【0049】
【化1】
(式(1)中、R
1は炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基であり、R
2は炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキレン基であり、R
3は、炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基である。nは1以上4以下の整数を表す。)
【0050】
なお、R1は、炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキル基であることが好ましい。R2は、炭素数1以上3以下の分岐してもよいアルキレン基であることが好ましい。R3は、水素又は炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキル基であることが好ましい。
【0051】
式(1)で表される有機溶剤は、例えば、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-イソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)エーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーエル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-イソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)エーテル、トリプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル)エーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーエル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)、等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルブチルエーテル、プロピレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルメチルエーテル等の多価アルコールのジアルキルエーテル類を挙げることができる。
【0052】
非水性インク組成物が吐出された基材への浸透性、基材表面でのレベリング性、乾燥性、の観点からは、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルブチルエーテル、プロピレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルメチルエーテル等が、好ましいものとして挙げられる。
【0053】
又、これらを2種以上混ぜた混合した有機溶剤であってもよい。例えば、引火点が70℃以下であって一般式(1)で表される第1有機溶剤と、引火点が90℃以上あって式(1)で表される第2有機溶剤と、を含有する非水性インク組成物を挙げることができる。このような第1有機溶剤と第2有機溶剤とを含有することにより、非水性インク組成物の乾燥性と基材における非水性インク組成物の濡れ広がり性を好ましいものとすることで、被体により好適な金属調の光沢性を付与することができる。
【0054】
第1有機溶剤としては、ジエチレングルコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルを挙げることができる。第2有機溶剤としては、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、を挙げることができる。
【0055】
また、本実施の形態に係る非水性インク組成物に含有される有機溶剤は、下記式(1)で表される有機溶剤以外の有機溶剤を含有してもよい。例えば、下記式(2)で表される有機溶剤を挙げることができる。
【0056】
【化2】
(式(2)中、X
1はアルキル基であり、X
2は水素又はアルキル基である。nは1以上4以下の整数を表す。)
【0057】
このような式(2)で表される有機溶剤を含有することにより、得られる印刷物の耐擦過性を向上させることができる。
【0058】
式(2)で表される有機溶剤としては、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテ-ト、等が挙げられる。
【0059】
また、本実施の形態に係る非水性インク組成物において、必要に応じて、上述した有機溶剤以外の有機溶剤を含有してもよい。例えば、環状エステル系有機溶剤や環状アミド系有機溶剤等の複素環化合物、分子構造中に1つのカルボン酸アミド構造を含み、直鎖アルキル構造中にエーテル結合を有するアミド系有機溶剤を含有していてもよい。
【0060】
環状エステル系有機溶剤としては、ラクトン系有機溶剤を例示することができる。ラクトン系有機溶剤としては、例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサラクトン、γ-ヘプタラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサラクトン、δ-ヘプタラクトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン、ε-カプロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。なお、環状エステル系有機溶剤は、2種以上混ぜた混合した環状エステルであってもよい。
【0061】
環状アミド系有機溶剤としては、α-、β-、γ-、δ-、ε-ラクタム類、2-ピロリドン、N,N'-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン等が挙げられる。
【0062】
アミド系有機溶剤としては、例えば、β-メトキシプロピオンアミド、β-ブトキシプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド等が挙げられる。
【0063】
環状エステル系有機溶剤、環状アミド系有機溶剤、アミド系有機溶剤の含有量は、非水性インク組成物全量に対して5.0質量%以上であることが好ましく、10.0質量%以上であることがより好ましく、12.0質量%以上であることがさらに好ましい。環状エステル系有機溶剤の含有量は、非水性インク組成物全量に対して30.0質量%以下であることが好ましく、20.0質量%以下であることがより好ましく、18.0質量%以下であることがさらに好ましい。環状エステル系有機溶剤の含有量が上記範囲であることにより、被体(基材や着色層等)の表面の一部を溶解して被体の内部に非水性インク組成物をより効果的に浸透させることができる。
【0064】
(インク組成物の粘度及び表面張力)
本実施の形態に係るインク組成物の粘度は、インクジェット吐出性、吐出安定性の点から、25℃での粘度が30mPa・s以下であることが好ましく、25mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以下であることがさらに好ましい。又、本実施の形態に係るインク組成物の粘度は、3mPa・s以上であることが好ましく、4mPa・s以上であることがより好ましく、5mPa・s以上であることがさらに好ましい。
【0065】
又、本実施の形態に係るインク組成物の表面張力は、インクジェットの吐出性、吐出安定性、基材へのレベリング性の点から、25℃での表面張力が20mN/m以上であることが好ましく、22mN/m以上であることがより好ましく、24mN/m以上あることがさらに好ましい。又、本実施の形態に係るインク組成物の表面張力は、40mN/m以下であることが好ましく、37mN/m以下であることがより好ましく、35mN/m以下であることがさらに好ましい。
【0066】
[樹脂]
本実施の形態に係る非水性インク組成物は、必要に応じて樹脂(バインダー樹脂)を含有してもよい。本実施の形態に係る非水性インク組成物に樹脂を含有することで、耐擦過性がより良好な印刷物を得ることができる。樹脂としては、特に限定はなく、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性樹脂、フエノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリアミド樹脂、ビニルトルエン-α-メチルスチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、セルロースアセテートブチレート、シリコーン(シリコン)樹脂、アクリルアミド樹脂、エポキシ樹脂、あるいはこれらの共重合樹脂や混合物を用いることができる。
【0067】
本実施の形態に係る非水性インク組成物においては、中でも、高速印刷時の吐出応答性を向上する点、及び、吐出安定性、耐水性及び耐溶剤性を向上させることができることから、アクリル樹脂を含むものであることが好ましい。
【0068】
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを構成するモノマーの主成分として含むものであれば特に限定されるものではない。アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを構成するモノマーの主成分として含むものであれば特に限定されるものではない。(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、公知の化合物を使用することができ、単官能の(メタ)アクリル酸エステルを好ましく用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル等を挙げることができる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-iso-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-sec-ブチル、(メタ)アクリル酸-iso-ブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸-iso-オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸-iso-ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニノニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸サリチル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸-1,1,1-トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ-n-プロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ-iso-プロピル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸-3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-シアノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリル酸エステル類、等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を意味するものである。これらのモノマーは、三菱レイヨン(株)、日本油脂(株)、三菱化学(株)、日立化成工業(株)等から入手することができる。
【0069】
アクリル樹脂を構成するモノマーとしては、酸基を有する酸基含有モノマーや水酸基を有する水酸基含有モノマー、及びアミノ基を有するアミノ基含有モノマーを含むものであってもよい。上記酸基を有する酸基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシル基末端カプロラクトン変性(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有脂肪族系単量体等のエチレン性不飽和二重結合及びカルボキシル基を有するカルボキシル基含有モノマーを挙げることができる。上記水酸基を含有する水酸基含有モノマーとしては、不飽和二重結合及び水酸基を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、メチルα-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、エチルα-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、n-ブチルα-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。上記アミノ基含有モノマーとしては、不飽和二重結合及びアミノ基を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリルアミドN-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリンのエチレンオキサイド付加(メタ)アクリレート等の窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルピロール、N-ビニルオキサゾリドン、N-ビニルサクシンイミド、N-ビニルメチルカルバメート、N,N-メチルビニルアセトアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-2-オキサゾリン、(メタ)アクリロニトリル等を挙げることができる。
【0070】
又、アクリル樹脂を構成するモノマーとしては、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー等以外に、必要に応じてその他のモノマーを有するものであってもよい。このようなその他のモノマーとしては、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーと共重合が可能であり、所望の耐水性及び耐溶剤性を有するものとすることができるものであれば特に限定されるものではなく、エチレン性不飽和二重結合の数が1つである単官能モノマーであっても、2以上である多官能モノマーであってもよい。例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N-ビニルピロリドン、ビニルピリジン、N-ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン等のビニルモノマー;スチレン、スチレンのα-、o-、m-、p-アルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル誘導体、ビニルトルエン、クロルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、イソプロピレン等のオレフィンモノマー;ブタジエン、クロロプレン等のジエンモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物モノマー等を用いることができる。又、ポリエテレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3一ブチレングリコールジアクリレート等のジアクリレート化合物;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート等のトリアクリレート化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート等のジメタクリレート化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物;ジビニルベンゼン等を用いることができる。なお、アクリル樹脂は、これらのモノマーを用いて形成可能なものであるが、モノマーの共重合の形態については、特に限定されるものではなく、例えばブロックコポリマー、ランダムコポリマー、グラフトコポリマー等とすることができる。
【0071】
アクリル樹脂は、1種のラジカル重合性モノマーの単独重合体であってもよいし、ラジカル重合性モノマーを2種以上選択して用いた共重合体のいずれであってもよく、特に、本実施の形態に係る非水性インク組成物として好ましいアクリル樹脂は、メタクリル酸メチル単独の重合体、或いは、メタクリル酸メチルと、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エトキシエチル、及びメタクリル酸ベンジルよりなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物との共重合体である。
【0072】
このようなアクリル樹脂は、特に非水性インク組成物中の有機溶剤と良好な相溶性を示し、インクの保存安定性と画像再現性を有する非水性インク組成物を提供することができる。アクリル樹脂は、質量平均分子量が5000以上であるものが好ましい。中でも、本実施の形態に係る非水性インク組成物で用いられるアクリル樹脂は、耐擦性及び耐ブロッキング性の観点から、中でも質量平均分子量が10000以上であることが好ましく、12000以上であることがより好ましく、15000以上であることがより更に好ましい。一方、本実施の形態に係る非水性インク組成物で用いられるアクリル樹脂は、高速印刷時の高い吐出安定性の点から、100000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましく、更に35000以下であることが更に好ましく、より更に30000以下であることが好ましい。又、本実施の形態に係る非水性インク組成物で用いられるアクリル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)の下限は60℃以上であるものが好ましく、65℃以上であるものがより好ましく、70℃以上であるものがさらに好ましい。ガラス転移温度(Tg)の上限は120℃以下であるものが好ましく、115℃以下であるものがより好ましく、110℃以下であるものがさらに好ましい。Tgが上記範囲内であることにより、良好な印刷乾燥性が得られるという効果が顕著になる。又、市販の(メタ)アクリル樹脂としては、例えばロームアンドハース社の「パラロイドB99N」(メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート共重合体)Tg82℃、質量平均分子量15,000)、「パラロイドB60」(メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート共重合体)Tg75℃、質量平均分子量50,000)等が例示される。
【0073】
本実施の形態に係る非水性インク組成物に用いることのできる塩化ビニル酢酸ビニル系共重合樹脂としては、例えば、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/ヒドロキシアルキルアクリレート共重合体など、及びそれらの混合物が挙げられる。上記の塩化ビニル酢酸ビニル系共重合樹脂としては、日信化学工業(株)社から「ソルバインC(数平均分子量(Mn)、31000)、CL(Mn、25000)、CNL(Mn、12000)、CLL(Mn、18000)、C5R(Mn、27000)、TA2(Mn、33000)、TA3(Mn、24000)、A(Mn、30000)、AL(Mn、22000)、TA5R(Mn、28000)、M5(Mn、32000)等の商品名で入手して使用することができる。
【0074】
本実施の形態に係る非水性インク組成物において、非水性インク組成物100質量%中に含まれる樹脂の含有量(質量%)は、特に限定されるものではないが、ワックスと光輝性顔料との合計含有量よりも小さいことが好ましい。本実施の形態に係る非水性インク組成物に樹脂を含有することで、耐擦過性がより良好な印刷物を得ることができるが、樹脂の含有量がワックスと光輝性顔料との合計含有量以上であると、得られる印刷物の光沢性が低下する傾向がある。樹脂の含有量は、前記ワックスと前記光輝性顔料との合計含有量よりも小さいことで、得られる印刷物の耐擦過性を維持しつつ好適な金属調の光沢性を付与することが可能となる。
【0075】
具体的には、樹脂の含有量の下限は、非水性インク組成物全量中0.05質量%以上であることが好ましく、中でも、0.1質量%以上であることが好ましく、更に0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。樹脂の含有量の上限は、非水性インク組成物全量中5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく2.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0076】
[その他の添加剤]
本実施の形態に係る非水性インク組成物は、その他の添加剤として、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、電荷調整剤、湿潤剤等、種々の添加剤を含有していてもよい。
【0077】
なお、本実施の形態に係る非水性インク組成物は、光輝性顔料とは異なる通常のインクジェット用の非水性インク組成物の使用されるような色材(染料・顔料)を含有してもよい。色材は非水性インク組成物全量中3.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましく、0.2質量%以下であることが更になお好ましい。
【0078】
<2.非水性インク組成物の製造方法>
本実施の形態に係る非水性インク組成物を製造する方法は、光輝性顔料と、有機溶剤と、を混合することにより非水性インク組成物を製造する製造方法を挙げることができる。
【0079】
例えば、有機溶剤、光輝性顔料、及び必要に応じて樹脂、界面活性剤等を添加して調製する方法、有機溶剤に、光輝性顔料と分散剤を加えて分散した後、樹脂、界面活性剤及び必要に応じてその他の成分を添加して調製する方法、有機溶剤に光輝性顔料と樹脂と界面活性剤と必要に応じてその他の成分を添加した後、光輝性顔料を分散して調製する方法等が挙げられる。
【0080】
次に、本実施の形態に係る非水性インク組成物により得られる印刷物について説明する。
【0081】
<3.印刷物>
上記の実施形態に係る非水性インク組成物を使用して得られる印刷物は、基材(記録媒体)と、この基材(記録媒体)の表面に形成された光輝性層と、を備える。そして、この光輝性層は、上記の実施形態に係る非水性インク組成物に含有される光輝性顔料を含有しており、光輝性層は、さらに、ワックスを光輝性層全量中0.5質量%以上30質量%以下の範囲で含有することを特徴としている。これにより被体の表面にスリップ性を付与して、得られる印刷物の耐擦過性を向上させることが可能となる。なお、印刷物とは、少なくとも基材(記録媒体)と光輝性層とを備えていればよく、例えば、基材(記録媒体)と光輝性層に加え、通常のインク組成物によって形成された着色層、プライマー層、オーバーコート層を備えていてもよい。
【0082】
以下、印刷物を構成する各層について説明する。
【0083】
[基材(記録媒体)]
基材(記録媒体)としては、特に限定はされず、樹脂基材、金属板ガラスなどの非吸収性基材であっても、紙や布帛などの吸収性基材であっても、受容層を備える基材のような表面塗工が施された基材であってもよく、種々の基材を使用することができる。
【0084】
非吸収性基材としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系合成紙、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂基材や、金属、金属箔コート紙、ガラス、合成ゴム、天然ゴム等を挙げることができる。
【0085】
吸収性基材としては、更紙、中質紙、上質紙、綿、化繊織物、絹、麻、布帛、不織布、皮革等を挙げることができる。
【0086】
表面塗工が施された基材としてはコート紙、アート紙、キャスト紙、軽量コート紙、微塗工紙等を挙げることができる。
【0087】
[プライマー層]
印刷物はプライマー層を備えていてもよい。プライマー層は、基材(記録媒体)の表面に形成され、着色層や光輝性層との接着性を向上させる機能を有する。
【0088】
プライマー層を形成することのできるプライマー剤としては活性エネルギー線硬化型のインク組成物であっても、溶剤を含有する溶剤型のインク組成物であっても、水を含有する水性型のインク組成物であってもよい。プライマー剤は、例えば、後述する着色層を形成するインク組成物であって、樹脂成分や重合性化合物を主成分とし、色材を除外又は減量して色彩を視認しないように調整したようなインク組成物であってもよい。着色層と同様の組成のプライマー剤を使用することで着色層との密着性を向上させることができる。また、プライマー剤は、例えば、従来公知のプライマー剤であってもよい。
【0089】
プライマー剤を基材(記録媒体)の表面を塗布する方法としてはどのような方法であってもよく、例えば、スプレー塗布、タオル、スポンジ、不織布、ティッシュ等を用いた塗布、ディスペンサー、刷毛塗り、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット、熱転写方式等のいずれであってもよい。
【0090】
[着色層]
印刷物は着色層を備えていてもよい。着色層とは、光輝性顔料とは異なる通常のインク組成物の使用されるような色材(染料・顔料)を含有する層である。又、この着色層を形成するインク組成物は、活性エネルギー線硬化型のインク組成物であっても、色材を含有し、有機溶剤を含有する非水性インク組成物であっても、色材を含有し、水を含有する水性インク組成物であってもよい。また、複数のインク組成物(例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクを含む複数の層の場合等)であってもよい。上記の実施形態に係るインク組成物により形成される光輝性層は、光沢性を維持しつつ、耐擦過性が良好であるため、このような複数のインク組成物から形成された画像であることで、耐擦過性に優れ、光沢性によりその画像を際立たせる極めて意匠性に優れた印刷物となる。
【0091】
着色層には樹脂が含有されていてもよい。着色層に樹脂が含有される場合、この樹脂は、インク組成物に含まれるバインダー樹脂や高分子分散剤がそのままこのインク層の樹脂となってもよいし、インク組成物に含まれる重合性化合物が基材(記録媒体)の表面に吐出された後に活性エネルギー線を照射して重合されて形成された硬化物であってもよい。
【0092】
又、この着色層を形成するためのインク組成物の塗布方法は、特に限定されるものではない。例えば、スプレー法、コーター法、インクジェット法、グラビア法、フレキソ法等を挙げることができる。中でもインクジェット法により吐出(塗布)されることが好ましい。インクジェット法であれば、基材の任意の場所に吐出(塗布)することも、基材全面に吐出(塗布)することも容易である。
【0093】
着色層を形成するインク組成物の色材は、特に限定されるものではなく、染料系であってもよいし、顔料系であってもよい。着色層の耐水性や耐光性等の耐性が良好である顔料系インク組成物を使用することが好ましい。着色層を形成するインク組成物に用いることのできる顔料は特に限定されない。従来のインク組成物に使用されている有機顔料又は無機顔料等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的な有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染料からの誘導体、フタロシアニン系有機顔料、キナクリドン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、ジオキサジン系有機顔料、ニッケルアゾ系顔料、イソインドリノン系有機顔料、ピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料、キナクリドン系固溶体顔料、ペリレン系固溶体顔料等の有機固溶体顔料等、無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛等その他の顔料として、カーボンブラック等が挙げられる。インク組成物に用いることのできる顔料は、複数の有機顔料や無機顔料を併用してもよく、顔料分散剤によって水溶性溶媒中に分散させた顔料分散体と自己分散型顔料を併用したものであってもよい。
【0094】
[光輝性層]
光輝性層は、上記の実施形態に係る有機溶剤と、光輝性顔料と、ワックスと、を含有する非水性インク組成物により形成される層である。具体的には、有機溶剤と、光輝性顔料と、を含有する非水性インク組成物が被体の表面にインクジェット法によって吐出され、非水性インク組成物中の有機溶剤が揮発することで形成される光輝性顔料と、ワックスと、を含有する層である。なお、非水性インク組成物が樹脂を含有する場合には、樹脂も光輝性層を構成する。
【0095】
この光輝性層は、ワックスを光輝性層全量中0.5質量%以上30質量%以下の範囲で含有することが好ましい。これにより光輝性層の表面にスリップ性を付与して得られる印刷物の耐擦過性を向上させることが可能となる。なお、ワックスの含有量の下限は光輝性層全量中1.0質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることがさらに好ましい。ワックスの含有量の上限は光輝性層全量中28.0質量%以下であることがより好ましく、26.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0096】
この光輝性層は、光輝性顔料を光輝性層全量中99.5質量%以下の割合で含有することが好ましく、99.0質量%以下の割合で含有することがより好ましい。この光輝性層は、光輝性顔料を光輝性層全量中45.0質量%以上の割合で含有することが好ましく、50.0質量%以上の割合で含有することがより好ましく、55.0質量%以上の割合で含有することが好ましい。
【0097】
[オーバーコート層]
印刷物はオーバーコート層を備えていてもよい。オーバーコート層は、印刷物の最上面(例えば光輝性層や着色層の表面)に形成され、印刷物の耐久性を向上させる機能を有する。
【0098】
オーバーコート層を形成することのできるオーバーコート剤としては活性エネルギー線硬化型のインク組成物であっても、溶剤を含有する溶剤型のインク組成物であっても、水を含有する水性型のインク組成物であってもよい。オーバーコート剤は、例えば、上述した着色層を形成するインク組成物であって、樹脂成分や重合性化合物を主成分とし、色材を除外又は減量して色彩を視認しないように調整したようなインク組成物であってもよい。着色層と同様の組成のオーバーコート剤を使用することで着色層との密着性を向上させることができる。また、オーバーコート剤は、例えば、従来公知のオーバーコート剤であってもよい。
【0099】
オーバーコート剤を光輝性層や着色層の表面に塗布する方法としてはどのような方法であってもよく、例えば、スプレー塗布、タオル、スポンジ、不織布、ティッシュ等を用いた塗布、ディスペンサー、刷毛塗り、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット、熱転写方式等のいずれであってもよい。
【0100】
<4.記録方法>
上記の実施形態に係る非水性インク組成物を用いて基材(記録媒体)の表面に記録する記録方法は、非水性インク組成物を吐出する記録方法である。インクジェット法によって非水性インク組成物を吐出することで小ロットの印刷物の製造に対応可能となる。
【0101】
インクジェット記録装置は、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等のいずれのインクジェット記録装置にも適用することができる。また、インクジェット記録装置は、記録媒体(基材)の巻き取り機構や基材表面を乾燥させる乾燥機構、インクの循環機構を備えていても備えていなくともよい。
【0102】
この記録方法で得られた印刷物であれば、光沢性を維持しつつ、耐擦過性が良好となる。
【0103】
<5.印刷物の製造方法>
上記の実施形態に係る非水性インク組成物を基材の表面に吐出する記録方法は、印刷物の製造方法として定義することもできる。
【0104】
この製造方法で得られた印刷物であれば、光沢性を維持しつつ、耐擦過性が良好となる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0106】
1.光輝性顔料の作成
(1)光輝性顔料1
下記組成の塗工液1を厚み100μmのPETフィルム上にバーコート法で均一に塗布し、60℃で10分間乾燥し、剥離樹脂層を形成した。
【0107】
塗工液1
・セルロースアセテートブチレート(ブチル化率35~39%、関東化学社製) 3%
・イソプロパノール 97%
【0108】
次に、(株)真空デバイス製「VE-1010方真空蒸着装置」を使用して、剥離樹脂層上に膜厚20nmの金属含有薄膜を形成して積層体を作製した。得られた積層体をジエチレングリコールジエチルエーテル中に浸漬すると共に、(株)アズワン製「VS-150超音波分散機」を用いて剥離、粉砕、微分散処理を同時に12時間行い、光輝性顔料(アルミニウムからなる金属含有光輝性顔料)を含有する光輝性顔料分散液を得た。
【0109】
得られた光輝性顔料分散液を開き目5μmのSUSメッシュフィルターで濾過し、粗大粒子を除去した。その後、光輝性顔料の濃度を調整し、光輝性顔料1を5質量%含有する光輝性顔料分散液1を調製した。この光輝性顔料1の体積平均粒子径(D50)は2.5μm、体積平均粒子径(D90)は3.5μm、厚みは40nmであった。
【0110】
(2)光輝性顔料2
上記と同様に光輝性顔料分散液を製造し、光輝性顔料分散液200gに対し、5gの酸価70のポリエステル樹脂(Crylcoat340、ベルギー国のUCBにより供給)および5gのエポキシ当量750のエポキシ樹脂(Araldit GT6063ES、スイス国のVanticoにより供給)を、100gのアセトンに溶解させたものを加えて1時間撹拌した後、上述の遠心分離と洗浄の操作を行い、アセトンをジエチレングリコールジエチルエーテルに置き換え、表面保護処理された光輝性顔料2を5質量%含有する光輝性顔料分散液2を調製した。この光輝性顔料2の体積平均粒子径(D50)は2.3μm、体積平均粒子径(D90)は2.7μm、厚みは25nmであった。
【0111】
(3)光輝性顔料3
上記の光輝性顔料2の製造において、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂をステアリン酸ステアリル1gに置き換えて同様の操作を行い、表面保護処理された光輝性顔料3を5質量%含有する光輝性顔料分散液3を調製した。この光輝性顔料3の体積平均粒子径(D50)は2.0μm、体積平均粒子径(D90)は2.5μm、厚みは20nmであった。
【0112】
(4)光輝性顔料4
上記の光輝性顔料2の製造において、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂を、1gのDisperbyk180(リン酸基含有分散剤、酸価:95mgKOH/g添加剤、アミン価:95mgKOH/g添加剤;ビッグケミー社0.2gのオクチルホスホン酸に置き換えて同様の操作を行い、表面保護処理された光輝性顔料4を5質量%含有する光輝性顔料分散液4を調製した。この光輝性顔料4の体積平均粒子径(D50)は1.9μm、体積平均粒子径(D90)は2.1μm、厚みは20nmであった。
【0113】
(5)光輝性顔料5
上記の光輝性顔料1の製造において、微細化処理やメッシュフィルターの開き目を変更して光輝性顔料5を含有する光輝性顔料分散液5を調製した。この光輝性顔料5の体積平均粒子径(D50)は1.2μm、体積平均粒子径(D90)は2.5μm、厚みは20nmであった。
【0114】
2.非水性インク組成物の製造
上記の「光輝性顔料分散液1~5」を使用して実験例の非水性インク組成物を製造した。具体的には、光輝性顔料分散液1~5と、有機溶剤と、樹脂と、ワックス1~4を用いて下記表の割合になるように実施例、比較例の非水性インク組成物を調整した。単位は、質量%である。
【0115】
【0116】
表中、「DEGDEE」は、ジエチレングリコールジエチルエーテルである。(引火点:71℃)
【0117】
表中、「DEGMEE」は、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルである。(引火点:63℃)
【0118】
表中、「DPGDME」は、ジプロピレングリコールジメチルエーテルである。(引火点:65℃)
【0119】
表中、「DEGBE」は、ジエチレングリコールモノブチルエーテルである。(引火点:105℃)
【0120】
表中、「TEGBEAC」は、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテートである。
【0121】
表中、「GBL」は、γ-ブチロラクトンである。
【0122】
表中、「ECL」は、ε-カプロラクトンである。
【0123】
表中、「樹脂1」は、アクリル系樹脂(ロームアンドハース社「パラロイドB99N」)である。
【0124】
表中、「樹脂2」は、CAB樹脂(セルロース系樹脂)(イーストマン社「CAB-381-0.5」)である。
【0125】
表中、「ワックス1」とは、三井化学社製ポリエチレンワックス(ハイワックス110P 融点109℃)である。
【0126】
表中、「ワックス2」とは、シャムロック社製ポリエチレンワックス(Versaflow LV 液状ワックス)である。
【0127】
表中、「ワックス3」とは、日本精鑞社製パラフィンワックス(Paraffin Wax-115 融点48℃)である。
【0128】
表中、「ワックス4」とは、日信化学社製シリコンアクリルワックス(シャリーヌ R-175S 融点120℃)である。
【0129】
3.評価
(1)光沢評価
実施例及び比較例の非水性インク組成物を用いて得られた印刷物の光沢を評価した。具体的には、実施例及び比較例の非水性インク組成物をインクジェット記録装置、富士フイルム(株)製「マテリアルプリンター DMP-2850」によって、記録媒体としてPETフィルム(東洋紡(株)コスモシャインA4300)の表面に吐出し、乾燥することにより、印刷物を製造した。得られた印刷物について、コニカミノルタ社製マルチアングル測色系CM-M6を使用して
図1に示すように、印刷面から45°の入射角で入射光を光輝性層に対して入射させ、その入射角に対する反射角から法線方向に15°角度を変更させた角度を測定角度として、その測定角度でのL
*a
*b
*表色系におけるL
*値を測定し、以下の評価基準により光沢を評価した(表中「光沢」と表記)。
評価基準
A:明度指数が120以上であった。
B:明度指数が100以上120未満であった。
C:明度指数が100未満であった。
A、Bは実使用可能範囲内である。
【0130】
(2)耐傷性評価
実施例及び比較例の非水性インク組成物を用いて得られた印刷物の耐傷性を評価した。具体的には、上記で得られた印刷物について、コインで削り、目視で耐傷性を評価した。
評価基準
A:傷がほとんど見られなかった。
B:コインにより傷が少し見られたが実質上許容範囲内であった。
C:コインにより傷が見られ、基材が露出した。
A、Bは実使用可能範囲内である。
【0131】
(3)耐摩擦性評価
実施例及び比較例の非水性インク組成物を用いて得られた印刷物の耐摩擦性を評価した。具体的には、上記で得られた印刷物について、荷重200g、50往復で印刷面を互いに擦り、目視で耐摩擦性を評価した。
評価基準
A:光輝性層が剥がれなかった。
B:光輝性層がわずかに剥がれていたが実質上許容範囲内であった。
C:光輝性層が剥がれて基材が露出した。
A、Bは実使用可能範囲内である。
【0132】
上記表から分かるように、ワックスを非水性インク組成物全量中0.05質量%以上1.0質量%以下の範囲で含有する実施例の非水性インク組成物は、光沢性を維持しつつ、耐擦過性(耐傷性・耐摩擦性)が良好な印刷物を得ることができることが分かる。
【0133】
この中でも、ワックスの含有量が非水性インク組成物全量中0.1質量%以上の範囲で含有する実施例4、10は、非水性インク組成物全量中0.07質量%未満の範囲で含有する実施例7と比較しても、耐傷性が良好であった。また、ワックスの含有量が非水性インク組成物全量中0.8質量%以下の範囲で含有する実施例4、7は、非水性インク組成物全量中0.5質量%超の範囲で含有する実施例10と比較して、印刷物の光沢は良好であった。
【0134】
また、樹脂を含有し、樹脂の含有量は、ワックスと光輝性顔料との合計含有量よりも小さい実施例9は、樹脂を含有しない実施例3と比較して、耐傷性が良好であった。
【0135】
一方、ワックスを含有しない比較例1、2は、得られる印刷物の耐擦過性が悪化していた。また、ワックスを非水性インク組成物全量中1.0質量%超の範囲で含有する比較例3は、印刷物の光沢は悪化していた。さらに、ワックスを非水性インク組成物全量中0.05質量%未満の範囲で含有する比較例4は、得られる印刷物の耐擦過性が悪化していた。
【符号の説明】
【0136】
1 印刷物
【要約】
【課題】良好な金属調の光沢性を維持しつつ、耐擦過性が良好な印刷物を得ることができるインク組成物を提供する。
【解決手段】インクジェット法によって吐出される非水性インク組成物であって、
前記非水性インク組成物は、下記式(1)で表される有機溶剤と、光輝性顔料と、を含有し、
さらに、ワックスを前記非水性インク組成物全量中0.05質量%以上1.0質量%以下の範囲で含有する
非水性インク組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基であり、R
2は炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキレン基であり、R
3は、炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基である。nは1以上4以下の整数を表す。)
【選択図】なし