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特許70297402-メチルアリルアルコールを連続的に製造する方法
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  • 特許-2-メチルアリルアルコールを連続的に製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】2-メチルアリルアルコールを連続的に製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/124 20060101AFI20220225BHJP
   C07C 33/03 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
C07C29/124
C07C33/03
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020554344
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2018109595
(87)【国際公開番号】W WO2019119934
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】201711400139.5
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(73)【特許権者】
【識別番号】520224960
【氏名又は名称】浙江皇馬科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG HUANGMA TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Zhangzhen New Industry District Shangyu Shaoxing, Zhejiang 312363 China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】尹 紅
(72)【発明者】
【氏名】陳 志栄
(72)【発明者】
【氏名】王 偉松
(72)【発明者】
【氏名】王 新栄
(72)【発明者】
【氏名】王 勝利
(72)【発明者】
【氏名】金 一豊
(72)【発明者】
【氏名】董 楠
(72)【発明者】
【氏名】高 洪軍
(72)【発明者】
【氏名】馬 定連
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-010296(JP,A)
【文献】特公昭48-010765(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第103242139(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105037097(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ(1)~(3)を含む2-メチルアリルアルコールを連続的に製造する方法:
ステップ(1)多段直列連続撹拌反応器に酢酸ナトリウム溶液、および2-メチルアリルクロリドを添加して水酸化ナトリウムと反応させ、直接2-メチルアリルアルコールを得るステップであって、前記多段直列連続撹拌反応器の段数が6~15段であり、前記酢酸ナトリウムの量が2-メチルアリルクロリド1mol基準で6~10molであり、前記水酸化ナトリウムの導入量は反応液のpHを9~11とする量であり、多段直列連続撹拌反応器において反応温度が100~120℃であるステップ、
ステップ(2)一定時間連続的反応した後、反応器の上部出口から流れ出す反応混合物を分離して生成物である2-メチルアリルアルコール、塩化ナトリウム結晶、回収水分及び酢酸ナトリウム溶液を得るステップ、
ステップ(3)前記回収水分及び酢酸ナトリウム溶液を還流するステップ。
【請求項2】
前記酢酸ナトリウム溶液及び2-メチルアリルクロリドを多段直列連続撹拌反応器の第1段連続撹拌反応器に導入し、水酸化ナトリウムを溶液に調製してそれぞれ各段の撹拌反応器に投入する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水酸化ナトリウム溶液の添加量を制御するように、前記各段の撹拌反応器にオンラインpH計が取り付けられている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記連続的反応の滞留時間が1~4時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(2)における分離は、下記のステップ(A)~(C)を含む、請求項1に記載の方法:
ステップ(A)反応混合物が分層器に入り、分層器上部の油層が連続精留塔に入り、分層器の下層がフラッシュ蒸発器に入るステップ、
ステップ(B)精留塔頂部の凝縮液から水分離器によって下層水層を分離し、上層を精留塔の塔頂に還流し、精留塔の下部から気相排出の方式によって生成物である2-メチルアリルアルコールを収集し、水分離器により分離された水層を回収水分とし、精留缶出液が酢酸ナトリウム溶液であるステップ、
(C)フラッシュ蒸発器上部の気相を凝縮して得られた2-メチルアリルアルコールと水との混合液を回収水分とし、下部における塩水相をろ過、分離し、水で洗浄して塩化ナトリウム結晶及び母液を得、母液が酢酸ナトリウム溶液であるステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-メチルアリルアルコールを連続的に製造する方法に関し、有機化学工学の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
2-メチルアリルアルコール(MAOHと略称)は、重要な有機中間体であり、ポリマーのモノマー、樹脂及び香料として使用可能であり、その最も重要な用途がメチルアリルポリオキシエチレンエーテルを合成することである。メチルアリルポリオキシエチレンエーテルは、第4世代ポリカルボン酸系コンクリート減水剤の合成にとって重要なモノマーであり、ポリカルボン酸系減水剤の低添加量、高減水、低スランプ等の高性能に対して決定的な役割を有する。メチルアリルポリオキシエチレンエーテルの適用により、生コンクリートの流動性及び流動保持性を向上させ、スランプ及び収縮率を低下させることによりポリカルボン酸系減水剤の用途をより広くし、適応性をより大きくすることができ、水利、原子力発電工学等の重要な分野に利用可能となる。
【0003】
2-メチルアリルアルコールの合成は主に2つのプロセスルートがあり、1つは2-メチルアクリルアルデヒドの還元ルートであり、もう1つは、2-メチルアリルクロリドのアルカリ加水分解ルートである。以下、それぞれ紹介する。
【0004】
2-メチルアクリルアルデヒドを出発原料として、還元反応によって2-メチルアリルアルコールを合成する方法は、以下の2種類である。
【0005】
US2779801、US4731488、CN107365245、CN105061139、CN106278814には、アルミニウムアルコキシド等の触媒の存在下、第二級アルコールによってアルデヒド基を選択的に還元して、相応する不飽和アルコールを製造する方法が公開されており、この方法では、等モルのその他のカルボニル化合物を副産する。
【0006】
CN107032952は、2-メチルアクリルアルデヒドを、α-Hを持たないアルデヒドと交差Cannizzaro反応させてエステルを生成し、さらにアルカリけん化反応させて2-メチルアリルアルコール及びカルボン酸塩を得た。
【0007】
CN106984356は、錫ベース化合物を触媒として、2-メチルアクリルアルデヒドをエタノールと反応させて2-メチルアリルアルコール及びアセタールを得た。
【0008】
US2767221、CN102167657、CN103755523、CN106824221等は、異なる触媒を使用し、不飽和アルデヒドを選択的に水素化還元して不飽和アルコールを製造した。この方法は、C=O上に選択的に水素添加する必要があってC=C結合を破壊せずに行うことが困難であり、水素添加過程において飽和アルデヒド又は飽和アルコールを生成することがよくあり、一般的に不飽和アルコールに対する選択率が悪い。
【0009】
上述した2-メチルアリルアルコールの合成方法は、まず安定性の悪い原料である2-メチルアクリルアルデヒドを得る必要があり、しかし、イソブチレンの接触酸化による2-メチルアクリルアルデヒド製造の収率が高くないので、この方法による2-メチルアクリルアルデヒドの単独生産は優位性を有さない。
【0010】
2-メチルアリルクロリドを出発原料として、アルカリ加水分解法を用いた2-メチルアリルアルコールの合成は、最初に開発された工業化方法である。
【0011】
US2072015には、激しく撹拌しながら、100~150℃で、アルカリ金属である水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウム、アルカリ土類金属水酸化物又は炭酸塩の存在下で加水分解反応を行い、2-メチルアリルアルコールを得ることが提案され、収率が94~96%であった。
【0012】
US2313767には、界面活性剤であるネカリンの存在下で、縦型反応器にアルカリ溶液を加え、2-メチルアリルクロリドを蒸気の形で反応器の底部に導入し、頂部で凝縮してから循環加水分解を行って2-メチルアリルアルコールを得ることが提案された。水酸化ナトリウム溶液で3時間反応させた場合、転化率が84%であり、炭酸ナトリウム溶液で5.5時間反応させた場合、転化率が83%であり、エーテル含有量が0.2%であった。
【0013】
US2323781は、2-メチルアリルクロリドと水酸化カリウム又は炭酸カリウムとの電解銅触媒反応によって2-メチルアリルアルコールを製造した。水酸化カリウム溶液を2-メチルアリルクロリドと反応させた場合、収率が88%であり、炭酸カリウムを2-メチルアリルクロリドと反応させた場合、収率が理論値に近い。しかし、反応過程において処理しにくい銅含有廃水を生成してしまう。
【0014】
Schaleら(ChemischeBerichte., Vol.70(1937);p.116,121)は、水酸化カリウムを用いて2-メチルアリルクロリドと反応させて2-メチルアリルアルコールを合成することを提案しており、この方法では、エーテル化副反応がひどいため、目標生成物の収率が低く、生成物の分離が難しくなる。
【0015】
CN101759528は、水、固体アルカリ、2-メチルアリルクロリド及びポリエチレングリコールを順次に反応容器に入れて、そして、還流条件で、1~50%アルカリ溶液を滴下して断続的加水分解を行い、反応終了後に静置して分層し、油層を脱水、脱色して2-メチルアリルアルコールを得、含有量が98.5%未満であり、副産物である2-メチルアリルアルコールエーテルの含有量が1.3~1.6%であり、水層は、ろ過して塩を除去した後に還流する。
【0016】
CN104447206は、低濃度の水酸化ナトリウム溶液(3~8%)を用いて、80~120℃の条件で0.3~5時間反応させ、油層を分離し、水層から共沸蒸留によって2-メチルアリルアルコールと水の共沸物を留出させ、さらにシクロヘキサンにより抽出、蒸留して溶媒を取り除き、高含有量の2-メチルアリルアルコールを得、収率が97.2~98.5%であった。低濃度のアルカリを用いたので、塩含有廃水の量が大きい。
【0017】
CN104341255は、非極性溶媒を希釈剤として用い、ハロゲン化オレフィン、触媒、水を反応釜に入れて、20~150℃の条件でアルカリ溶液を滴下し、pHを5~7となるように制御し、収率が92%であり、2-メチルアリルアルコールの含有量が97.2%であった。
【0018】
CN103588622は、連続的加水分解法を用いて2-メチルアリルアルコールを合成した。その過程は、触媒、アルカリを水溶液に調製し、その後、塔型反応器の底部に連続的に導入し、同時に、2-メチルアリルクロリドを塔底に導入し、気化した2-メチルアリルクロリドと、循環するアルカリ溶液とを充填塔において反応させ、反応温度が90~100℃であり、滞留時間が約18時間であり、2-メチルアリルアルコールの転化率が88.0~97.6%であり、選択率が92.1~97.5%であった。
【0019】
上述した一歩直接加水分解法の主な欠点は、エーテル化副反応が発生しやすいので、収率が高くなく、粗製品の分離、精製が難しいことにある。
【0020】
一歩法にエーテル化副反応が発生しやすいという課題を解決するために、2-メチルアリルクロリドを出発原料として、エステル化、加水分解という二歩法によって2-メチルアリルアルコールを生産するプロセスを提案する文献があった。
【0021】
JP2009107949には、DMFを溶媒として、まず2-メチルアリルクロリドを酢酸ナトリウムと反応させて2-メチルアリルアルコールアセテートを得、ろ過して塩化ナトリウムを除去し、さらにアルカリを添加してけん化反応させ、ろ過して酢酸ナトリウムを除去し、精留して2-メチルアリルアルコールを得ることが提案されており、収率が最高で97.5%であり、含有量が99%であった。この反応過程は、DMFを溶媒とする必要があり、2-メチルアリルアルコールの沸点がDMFに近く、分離しにくい。また、ろ過して得られた塩化ナトリウムに対して、溶媒を取り除く過程が必要であり、プロセスが複雑である。
【0022】
CN103242139Aには、エステル化、加水分解という二歩法のプロセスが公開されており、すなわち、まず2-メチルアリルアルコールカルボキシレートを合成し、その後、さらに低濃度の強アルカリを添加して加水分解して2-メチルアリルアルコールを得ることが公開された。この方法の反応収率が98%以上に達することができ、含有量が99%に達することができるが、この方法では、相間移動触媒が必要であるため、反応系の分層が困難であり、反応において酢酸ナトリウムを含有する廃塩、廃水を大量に生成してしまう。
【0023】
CN105037097Aには、過剰の相間移動触媒及び2-メチルアリルクロリドの存在で、固体酢酸ナトリウムと2-メチルアリルクロリドとを反応させることにより、酢酸ナトリウムを十分に反応させ、反応物を簡単に蒸留して2-メチルアリルアルコールアセテートと未反応原料との混合物を得、混合物を精留して未反応原料と2-メチルアリルアルコールアセテートを得、未反応原料を還流し、2-メチルアリルアルコールアセテートをアルカリ溶液でけん化反応させて2-メチルアリルアルコールを得、水相から水分を取り除いて酢酸ナトリウムを得、反応に直接に還流できることが提案された。しかし、このプロセスのエステル化反応において相間移動触媒に係わり、しかもエステル化反応が断続的であり、その生成物を処理してからけん化反応を行う必要があり、二歩の反応が完全に分割されており、操作が煩雑である。
【発明の概要】
【0024】
従来技術に存在する課題に対して、本発明は、二歩法の方式を用い、連続的生産過程において廃液の排出がない、2-メチルアリルアルコールを連続的に製造する方法を提供する。本発明のメリットは、収率が高く、製品の品質が良いが、プロセスが複雑であり、操作コストが高く、設備の投資費用が高い。
【0025】
下記のステップ(1)~(3)を含む2-メチルアリルアルコールを連続的に製造する方法。
(1)多段直列連続撹拌反応器に酢酸ナトリウム溶液、および2-メチルアリルクロリドを添加して水酸化ナトリウムと反応させ、直接に2-メチルアリルアルコールを得、前記多段直列撹拌反応器の段数が6~15段であり、前記酢酸ナトリウムの量が2-メチルアリルクロリド 1mol基準で6~10molであり、前記水酸化ナトリウムの導入量が反応液のpHを9~11とする量であり、多段直列連続撹拌反応器において反応温度が100~120℃であることが好ましい。
(2)一定時間連続的に反応した後、反応器の上部出口から流れ出す反応混合物を分離して生成物である2-メチルアリルアルコール、塩化ナトリウム結晶、回収水分及び酢酸ナトリウム溶液を得る。
(3)前記回収水分及び酢酸ナトリウム溶液を還流する。
【0026】
前記酢酸ナトリウム溶液及び2-メチルアリルクロリドを多段直列連続撹拌反応器の第1段に導入し、水酸化ナトリウムを溶液に調製してそれぞれ各撹拌段に投入する。
【0027】
水酸化ナトリウム溶液の添加量を制御するように前記各撹拌段にオンラインpH計が取り付けられている。
【0028】
前記連続的反応の滞留時間が1~4時間である。
【0029】
前記ステップ(3)における回収水分が、水酸化ナトリウム溶液を調製してステップ(1)に還流するために用いられ、酢酸ナトリウム溶液を、ステップ(1)に直接に還流するか、あるいは水酸化ナトリウム溶液を調製してからステップ(1)に還流するために用い
【0030】
前記ステップ(2)における分離は、下記のステップ(A)~(C)を含む。
(A)反応混合物が分層器に入り、分層器上部の油層が連続精留塔に入り、分層器の下層がフラッシュ蒸発器に入る。
(B)精留塔頂部の凝縮液から水分離器によって下層水層を分離し、上層を精留塔の塔頂に還流し、精留塔の下部から気相排出の方式によって生成物である2-メチルアリルアルコールを収集し、水分離器により分離された水層を回収水分とし、精留缶出液が酢酸ナトリウム溶液である。
(C)フラッシュ蒸発器上部の気相を凝縮して得られた2-メチルアリルアルコールと水との混合液を回収水分とし、下部における塩水相をろ過、分離し、水で洗浄して塩化ナトリウム結晶及び母液を得、母液が酢酸ナトリウム溶液である。
【0031】
本発明の発明者は、大量の研究により、以下のことを見い出した。多段撹拌によって原料である2-メチルアリルクロリド(MACと略称)を高モル比の酢酸ナトリウム水溶液中に分散させることにより、MACと水酸化ナトリウムの反応速度を大幅に向上させることができ、相間移動触媒を添加せずに所望の速度で反応させることができ、反応により形成された副産物である塩化ナトリウムの高濃度酢酸ナトリウムにおける溶解度が低く、7~8%に過ぎないので、酢酸ナトリウム溶液を2回以上循環還流すれば、副産物である塩化ナトリウムを結晶の形で析出させることとなり、ろ過により分離することができる。しかも、生成物である2-メチルアリルアルコールの高濃度酢酸ナトリウム溶液における溶解度が低く、1~2%のみである。多段撹拌反応器において、エステル化反応及びけん化反応が同時に発生し、沸点が異なるため、反応器の上部が2-メチルアリルアルコールと水の混合物であり、底部が反応原料である2-メチルアリルクロリド及び酢酸ナトリウムである。したがって、ほとんどの生成物が油層の形で存在しており、分層によって2-メチルアリルアルコール粗製品が得られ、粗製品は、共沸によってその中に含まれる水分を除去して、溶解した少量の酢酸ナトリウムを取り除いた後に、製品である2-メチルアリルアルコールが得られる。酢酸ナトリウムがエステル化反応に参与するが、けん化反応が発生した後に、また副産物である酢酸ナトリウムが得られるので、この連続的反応過程において、反応に必要なpHを維持するように水酸化ナトリウム(溶液)を補充し続ければ、投入した酢酸ナトリウムの量は循環使用されても大きく変化しない。
【0032】
また、本発明の発明者は、反応熱測定により、以下のことを見い出した。2-メチルアリルクロリドと水酸化ナトリウムの反応は、強い放熱反応であり、1Kgの2-メチルアリルアルコール計で、反応熱が370Kcalに達し、もし多釜直列反応器を用いて連続的反応を行えば、反応熱を利用して流体を徐々に昇温させることができ、徐々に昇温する反応過程がこの反応の選択率の向上に非常に有利である。反応器から離れた流体が自動分層装置によって水層と油層とに分けられ、油層を精留して2-メチルアリルアルコールが得られ、水層を減圧フラッシュ蒸発して降温後の塩水層が得られ、塩水層をろ過して塩化ナトリウム結晶及び酢酸ナトリウム溶液が得られ、酢酸ナトリウム溶液を反応過程に直接に循環還流することができ、フラッシュ蒸発して得られた蒸気は、凝縮された後に水酸化ナトリウム溶液の調製に用いることができる。
【0033】
本発明は、MACと水酸化ナトリウムを原料として、高モル比の酢酸ナトリウム溶液中で連続的反応させ、分離した後、生成物が2-メチルアリルアルコール及び塩化ナトリウム結晶の2種類のみであり、反応熱が流体を徐々に昇温させる過程に利用され、エネルギー源を別途設置する必要がないので、過程のエネルギー消耗が低く、反応過程における水は、水酸化ナトリウム溶液を循環調製して反応に添加するために用いられる。
【0034】
本発明は以下の利点を有する。
1)反応過程を連続的に行うことができ、エネルギー消耗が低く、収率が高い。
2)多段撹拌反応器内に自然に形成した徐々に昇温する過程は、反応速度論の要求に合致し、反応の選択率が高く、副産物が少ない。
3)過程において得られるのは、製品である2-メチルアリルアルコール及び副産物である塩化ナトリウム結晶のみであり、その他の廃液・固体廃棄物・排ガスの排出がない。
4)反応過程に相間移動触媒が必要されず、反応液の分層が容易であり、副産物である塩化ナトリウムの含有量が高く、有機物の残存が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は本発明のプロセスフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、実施例を参照しながら本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限られない。
【0037】
実施例1
図1に示す総容積が500Lの6段直列撹拌反応器1の底部に、連続的還流によりバランスを取った酢酸ナトリウム溶液(酢酸ナトリウムを36.0%、塩化ナトリウムを7.5%含有し、温度が約75℃)を136Kg/時間で導入し、同時に、9.05Kg/時間でMACを導入する。6つの撹拌段内にそれぞれ総量が9.8Kg/時間の水酸化ナトリウム溶液(水酸化ナトリウムを41%含有)を導入し、1段当たりの導入量をpH計で制御し(pHを11に制御)、この場合、滞留時間が約4時間である。反応器1の上部出口において、反応生成物の温度が約100℃であり、連続分層器2によって分層し、油層が連続共沸精留塔7の中部に入り、水層がフラッシュ蒸発器3に入る。
【0038】
再沸器11に熱源を提供する条件で、精留塔7の塔頂において、共沸物が凝縮器8によって凝縮された後に水分離器9に入り、水分離器9の上部における油層を精留塔7の塔頂の還流とし、下部の水層が約0.4Kg/時間でアルカリ配合釜5に入る。精留塔7の塔下部側線において2-メチルアリルアルコール蒸気を収集し、凝縮器10によって凝縮された後に約7.2Kg/時間(GC検出により含有量が99.76%)で2-メチルアリルアルコール製品を得た。精留塔7において少量の酢酸ナトリウムを含有する缶出液も約0.2Kg/時間でアルカリ配合釜に入る。
【0039】
分層器2の水層からフラッシュ蒸発器3によって蒸留された蒸気は、凝縮器6によって凝縮された後に約5.1Kg/時間の流量でアルカリ配合釜5に入る。フラッシュ蒸発した後の水層が77℃程度まで降温し、フィルター4によって連続的に遠心ろ過し、ろ過ケークを0.3Kg/時間の水で洗浄し、約6.1Kg/時間の塩化ナトリウム結晶(含水量が約5%)を得た。ろ液及び洗浄液が酢酸ナトリウム溶液であり、少量の塩化ナトリウムを含有し、混合した後に直接に反応過程に還流する。
【0040】
実施例2
図1に示す総容積が500Lの10段直列撹拌反応器1の底部に、連続的還流によりバランスを取った酢酸ナトリウム溶液(酢酸ナトリウムを38.5%、塩化ナトリウムを7.3%含有し、温度が約89℃)を315Kg/時間で導入し、同時に、18.1Kg/時間でMACを導入する。10の撹拌段にそれぞれ総量が20.0Kg/時間の水酸化ナトリウム溶液(水酸化ナトリウムを40%含有)を導入し、1段当たりの導入量をpH計で制御し(pHを10に制御)、この場合、滞留時間が約2時間である。反応器1の出口において、反応生成物の温度が約110℃であり、連続分層器2によって分層し、油層が連続共沸精留塔7の中部に入り、水層がフラッシュ蒸発器3に入る。
【0041】
再沸器11に熱源を提供する条件で、精留塔7の塔頂において、共沸物が凝縮器8によって凝縮された後に水分離器9に入り、水分離器9の上部における油層を精留塔7の塔頂の還流とし、下部の水層が約0.8Kg/時間でアルカリ配合釜5に入る。精留塔7の塔下部側線において2-メチルアリルアルコール蒸気を収集し、凝縮器10によって凝縮された後に約14.4Kg/時間(GC検出により含有量が99.83%)で2-メチルアリルアルコール製品を得た。精留塔7において少量の酢酸ナトリウムを含有する缶出液も約0.4Kg/時間でアルカリ配合釜に入る。
【0042】
分層器2の水層からフラッシュ蒸発器3によって蒸留された蒸気は、凝縮器6によって凝縮された後に約10.6Kg/時間の流量でアルカリ配合釜5に入る。フラッシュ蒸発した後の水層が91℃程度まで降温し、フィルター4によって連続的に遠心ろ過し、ろ過ケークを0.6Kg/時間の水で洗浄し、約12.2Kg/時間の塩化ナトリウム結晶(含水量が約5%)を得た。ろ液及び洗浄液が酢酸ナトリウム溶液であり、少量の塩化ナトリウムを含有し、混合した後に直接に反応過程に還流する。
【0043】
実施例3
図1に示す総容積が500Lの15段直列撹拌反応器1の底部に、連続的還流によりバランスを取った酢酸ナトリウム溶液(酢酸ナトリウムを41.2%、塩化ナトリウムを7.0%含有し、温度が約101℃)を597Kg/時間で導入し、同時に、27.15Kg/時間でMACを導入する。15の撹拌段内にそれぞれ総量が30.9Kg/時間の水酸化ナトリウム溶液(水酸化ナトリウムを39%含有)を導入し、1段当たりの導入量をpH計で制御し(pHを9に制御)、この場合、滞留時間が約1時間である。反応器の出口において、反応生成物の温度が約120℃であり、連続分層器2によって分層し、油層が連続共沸精留塔7の中部に入り、水層がフラッシュ蒸発器3に入る。
【0044】
再沸器11に熱源を提供する条件で、精留塔7の塔頂において、共沸物が凝縮器8によって凝縮された後に水分離器9に入り、水分離器9の上部における油層を精留塔7の塔頂の還流とし、下部の水層が約1.2Kg/時間でアルカリ配合釜5に入る。精留塔7の塔下部側線において2-メチルアリルアルコール蒸気を収集し、凝縮器10によって凝縮された後に約21.6Kg/時間(GC検出により含有量が99.91%)で2-メチルアリルアルコール製品を得た。精留塔7において少量の酢酸ナトリウムを含有する缶出液も約0.6Kg/時間でアルカリ配合釜に入る。
【0045】
分層器2の水層からフラッシュ蒸発器3によって蒸留された蒸気は、凝縮器6によって凝縮された後に約17.1Kg/時間の流量でアルカリ配合釜5に入る。フラッシュ蒸発した後の水層が101℃程度まで降温し、フィルター4によって連続的に遠心ろ過し、ろ過ケークを0.9Kg/時間の温水で洗浄し、約18.3Kg/時間の塩化ナトリウム結晶(含水量が約5%)を得た。ろ液及び洗浄液が酢酸ナトリウム溶液であり、少量の塩化ナトリウムを含有し、混合した後に直接に反応過程に還流する。
図1