IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社自律制御システム研究所の特許一覧

<>
  • 特許-無人航空機 図1
  • 特許-無人航空機 図2
  • 特許-無人航空機 図3
  • 特許-無人航空機 図4
  • 特許-無人航空機 図5
  • 特許-無人航空機 図6
  • 特許-無人航空機 図7
  • 特許-無人航空機 図8
  • 特許-無人航空機 図9
  • 特許-無人航空機 図10
  • 特許-無人航空機 図11
  • 特許-無人航空機 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】無人航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/26 20060101AFI20220225BHJP
   B64C 25/22 20060101ALI20220225BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20220225BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B64C27/26
B64C25/22
B64C27/08
B64C39/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021123274
(22)【出願日】2021-07-28
【審査請求日】2021-07-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515100042
【氏名又は名称】株式会社ACSL
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】福留 繁
(72)【発明者】
【氏名】小椋 慎祐
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110418753(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107585300(CN,A)
【文献】特開2020-037396(JP,A)
【文献】国際公開第2018/236295(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 25/22
B64C 27/08
B64C 27/26
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機本体と、
上方に向いた複数の回転翼と、
前記航空機本体に接続された左右の翼体部と、を備えた無人航空機であって
前記翼体部は、前記翼体部の少なくとも一部が前記航空機本体から下方に向けて延びる第1の状態と、前記航空機本体から横方向に向けて延びる第2の状態との間で移行可能であり、
前記翼体部は、前記無人航空機が前進する際に受ける空気の力により、前記第1の状態から前記第2の状態に移行するように構成されている、
無人航空機。
【請求項2】
前記第1の状態において、前記翼体部は後方に向かって間隔が狭まるように設けられている、
請求項1に記載の無人航空機。
【請求項3】
前記翼体部は、着地時に接地する接地部を先端に有し、
前記無人航空機は、前記第1の状態で前記接地部が接地して着陸する、
請求項1又は2に記載の無人航空機。
【請求項4】
前記回転翼は、前記第2の状態において平面視で前記翼体部と重ならないように配置されている、
請求項1~3の何れか1項に記載の無人航空機。
【請求項5】
前記複数の回転翼は、前方の対となる回転翼と、後方の対となる回転翼とを含み、
前記後方の対となる回転翼は、前記前方の対となる回転翼よりも上方に位置している、
請求項1~4の何れか1項に記載の無人航空機。
【請求項6】
前記翼体部は、前記第2の状態において前記翼体部が前記航空機本体の前後方向に対して、前方側が上方に傾斜するように設けられている、
請求項1~5の何れか1項に記載の無人航空機。
【請求項7】
さらに、
前記翼体部を前記第1の状態又は前記第2の状態で保持する保持機構を備える、
請求項1~6の何れか1項に記載の無人航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
無人航空機として、例えば、特許文献1に記載されているような、上方を向けて設けられた回転翼と、横方向に延びる固定翼とを有する無人航空機が知られている。また、特許文献1には、離着陸時に固定翼が周囲の樹木や建造物などに接触することを防止するために、離着陸時には固定翼を上方に折りたたみ可能とした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-168911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載されている無人航空機では、アクチュエータにより固定翼の展開及び折り畳みを行っている。しかしながら、このようにアクチュエータを搭載すると、無人航空機の重量が増加し、飛行の際の消費電力が大きくなってしまうという問題があった。
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、翼体が展開可能であり、無人航空機の重量の増加を抑えた無人航空機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、航空機本体と、上方に向いた複数の回転翼と、航空機本体に接続された左右の翼体部と、を備え、翼体部は、翼体部の少なくとも一部が航空機本体から下方に向けて延びる第1の状態と、航空機本体から横方向に向けて延びる第2の状態との間で移行可能であり、翼体部は、無人航空機が前進する際に受ける空気の力により、第1の状態から第2の状態に移行するように構成されている、無人航空機を提供するものである。
本発明の一態様において、第1の状態において、翼体部は後方に向かって間隔が狭まるように設けられている。
本発明の一態様において、翼体部は、着地時に接地する接地部を先端に有し、無人航空機は、第1の状態で接地部が接地して着陸する。
本発明の一態様において、回転翼は、第2の状態において平面視で翼体部と重ならないように配置されている。
本発明の一態様において、複数の回転翼は、前方の対となる回転翼と、後方の対となる回転翼とを含み、後方の対となる回転翼は、前方の対となる回転翼よりも上方に位置している。
本発明の一態様において、翼体部は、第2の状態において翼体部が航空機本体の前後方向に対して、前方側が上方に傾斜するように設けられている。
本発明の一態様において、さらに、翼体部を第1の状態又は第2の状態で保持する保持機構を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、翼体が展開可能であり、無人航空機の重量の増加を抑えた無人航空機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る無人航空機(マルチコプタ)の一例であるマルチコプタであって、着陸脚部が航空機本体から下方に向かって延びた第1の垂下状態である無人航空機を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る無人航空機(マルチコプタ)の一例であるマルチコプタであって、着陸脚部が航空機本体から下方に向かって延びた第1の垂下状態である無人航空機を示す正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る無人航空機(マルチコプタ)の一例であるマルチコプタであって、着陸脚部が航空機本体から下方に向かって延びた第1の垂下状態である無人航空機を示す側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る無人航空機(マルチコプタ)の一例であるマルチコプタであって、着陸脚部が航空機本体から横方向に向かって延びた第2の展開状態である無人航空機を示す平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る無人航空機(マルチコプタ)の一例であるマルチコプタであって、着陸脚部が航空機本体から横方向に向かって延びた第2の展開状態である無人航空機を示す正面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る無人航空機(マルチコプタ)の一例であるマルチコプタであって、着陸脚部が航空機本体から横方向に向かって延びた第2の展開状態である無人航空機を示す側面図である。
図7図1に示す無人航空機の飛行制御システムを示す図である。
図8図1に示す無人航空機の情報処理ユニットのハードウェア構成を示す図である。
図9】無人航空機により所定の目的地まで自立飛行する流れを示すフローチャートである。
図10】前進を開始した無人航空機を示す正面図である。
図11】前進を開始した無人航空機を示す側面図である。
図12】水平飛行中の無人航空機を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下に説明する具体的態様に限定されるわけではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の態様を取り得る。例えば、無人航空機のシステム構成も、図に示されるものに限らず同様の動作が可能であれば任意の構成を取ることができる。例えば通信回路の機能を飛行制御部に統合する等、複数の構成要素が実行する動作を単独の構成要素により実行してもよいし、あるいは主演算部の機能を複数の演算部に分散する等、単独の構成要素が実行する動作を複数の構成要素により実行してもよい。また、無人航空機100のメモリ内に記憶される各種データは、それとは別の場所に記憶されていてもよいし、各種メモリに記録される情報も、1種類の情報を複数の種類に分散して記憶してもよいし、複数の種類の情報を1種類にまとめて記憶してもよい。
【0009】
図1図6は、本発明の一実施形態に係る無人航空機(マルチコプタ)の一例であるマルチコプタを示す。図1図3は、翼体部が航空機本体から下方に向かって延びた第1の垂下状態を示し、図4図6は、翼体部が航空機本体から横方向に向かって延びた第2の展開状態を示す。図1及び図4は、無人航空機の平面図であり、図2及び図5は、無人航空機の正面図であり、図3及び図6は、無人航空機の側面図である。図1及び図4における下方が無人航空機の前方であり、上方が無人航空機の後方である。また、図3及び図6における左方が無人航空機の前方であり、右方が無人航空機の後方である。なお、図1図2図4図5には、ロータの回転範囲を破線で示している。なお、以下の説明でいう無人航空機の上下方向とは、ロータの回転軸の方向を基準としている。
【0010】
図1図3に示すように、無人航空機100は、航空機本体101と、航空機本体101から四方向に向かって延びる4つのアーム102A、102Bと、アーム102A、102Bの先端に接続され、飛行制御部240からの制御信号により駆動される4つのモータ103と、各々のモータ103の駆動により回転して揚力を発生させる4つのロータ(回転翼)104A、104Bと、着陸時に無人航空機を支える一対の翼体部105とを備える。モータ103、ロータ104A、104B、及びアーム102A、102Bの数は、それぞれ、3、4などのような3以上の数とすることもできる。飛行制御部240からの制御信号により4つのモータ103が回転させられ、それにより4つのロータ104A、104Bの各々の回転数を制御することにより、上昇、下降、前後左右への飛行、旋回等、無人航空機100の飛行が制御される。
【0011】
航空機本体101は、後述する情報処理ユニットや、測位装置、高度センサ、バッテリー、アンテナなどを保持する筐体である。
【0012】
アーム102A、102Bは、前方に向かって左右に広がるように延びる一対の前方アーム102Aと、後方に向かって左右に広がるように延びる一対の後方アーム102Bと、を含む。図3に示すように、前方アーム102Aは、前方に向かって下方に傾斜して延びており、後方アーム102Bは、後方に向かって上方に傾斜して延びている。これにより、後方アーム102Bの先端に設けられた後方の対となるロータ104Bは、前方アーム102Aの先端に設けられた前方の対となるロータ104A、104Bよりも上方に位置する。ロータ104A、104Bは、上方に向くように(回転軸が上下方向に延びるように)設けられている。なお、ここでいう上方とは、ロータ104A、104Bが前後左右に傾斜した状態で斜め上方に向いている状態も含む。また、ロータ104A、104B及びモータ103は、ロータ104A、104Bの回転軸が前後左右方向に傾斜させることができるように、アーム102A、102Bに取り付けられていてもよい。
【0013】
翼体部105は、図1図3に示すように下方に向かって延びる第1の垂下状態と、図4図6に示すように横方向に向かって延びる第2の展開状態との間で回動可能に航空機本体101に取り付けられている。翼体部105は、翼体部105の自重により下方に向かって延びる第1の垂下状態と、無人航空機100が前進する際の空力により横方向に向かって延びる第2の展開状態との間で移行することができる。
【0014】
翼体部105は先端に接地部105Aが形成されている。図6に示すように、翼体部105は、翼体部105が水平になった状態で前後方向の垂直断面形状が翼型となっている。ここでいう翼型とは、航空機本体101が前進する際に、空気により揚力が生じるような形状である。翼体部105の先端の接地部105Aは、第1の垂下状態において水平に前後方向に延びており、下縁が湾曲形状になっている。なお、本実施形態では、翼体部105Bが翼型であるが、これに限らず、空気中を滑空できるような形状であれば、例えば、平坦な形状等であってもよい。翼体部105は、軽量であるのが好ましく、例えば、プラスチックなどにより中空に形成されている。
【0015】
図2に示すように、第1の垂下状態において、一対の翼体部105は下方に向かって延びている。なお、ここでいう下方とは、垂直方向下方に限らず、一対の翼体部105が下方に向かって横方向に広がるように傾斜している場合も含む。
【0016】
また、第1の垂下状態において、一対の翼体部105は後方に向かって間隔が狭まるように航空機本体101に接続されている。また、第1の垂下状態において、無人航空機100の重心が翼体部105の前後方向中央近傍に位置するように、一対の翼体部105は設けられている。
【0017】
また、図6に示すように、第2の展開状態において、一対の翼体部105は、横方向に延びている。なお、ここでいう横方向とは、翼体部105が上下方向や前後方向に傾斜した状態で横方向に延びる場合も含む。また、一対の翼体部105は、無人航空機100が水平になった状態で、無人航空機100の前後方向に対して前方側が上方に位置するように傾斜するように航空機本体101に接続されている。
【0018】
翼体部105は、航空機本体101の前後方向中間部の両側に接続されている。図4に示すように、翼体部105は、第2の展開状態において、平面視においてロータ104A、104Bと重ならないように配置されている。ここで、ロータ104A、104Bと重ならないとはロータ104A、104Bの各翼の軌跡(破線で囲まれる領域)と、翼体部105とが上下に重ならないことをいう。
なお、翼体部105の回動軸は航空機本体101内に前後方向に延びるように設けられている。
【0019】
次に、図1に示す無人航空機の飛行制御システムの構成について説明する。図7は、図1に示す無人航空機の飛行制御システムを示す図である。無人航空機100の飛行制御システム200は、制御ユニット201、制御ユニット201に電気的に接続されたモータ103、モータ103に機械的に接続されたロータ104A、104B、制御ユニット201に電気的に接続された一対のエンコーダ220、測位装置221、高度センサ222、コンパス223、及び、IMU224を有する。
【0020】
制御ユニット201は、無人航空機100の飛行制御を行うための情報処理や、そのための電気信号の制御を行うための構成であり、典型的には基板上に各種の電子部品を配置して配線することによってそのような機能の実現に必要な回路を構成したユニットである。制御ユニット201は、さらに、情報処理ユニット230、通信回路231、制御信号生成部232、スピードコントローラ233、インターフェイス234から構成される。
【0021】
一対のエンコーダ220は、航空機本体101に対する左右の翼体部105の回転角度をそれぞれ検出する。
測位装置221は、GPS(Global Positioning System)センサのような無人航空機100の飛行位置の座標を感知するナビゲーションのためのセンサである。測位装置221は、好適には、三次元的な座標を感知する。なお、測位装置221が取得する座標は、緯度、経度及び高度からなる。
【0022】
高度センサ222は、例えば、気圧計などからなり、気圧に基づき無人航空機の高度を推定する。
コンパス223は、いわゆる方位磁針であり、北を基準とした無人航空機100の前方の角度を検知する。
【0023】
IMU224は、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)であり、加速度センサにより並進運動を、角速度センサ(ジャイロ)により回転運動を検出する。さらに、IMU224は、加速度センサにより検出された並進運動(加速度)を積分することにより、速度を算出することができ、さらに、速度を積分することにより移動距離(位置)を算出することができる。また、同様に、角速度センサにより検出された回転運動(角速度)を積分することにより、角度(姿勢)を算出することができる。
【0024】
通信回路231は、例えば、アンテナに接続されている。アンテナは、無人航空機100を操縦したり制御するための情報や各種データを含む無線信号を受信したり、テレメトリ信号を含む無線信号を無人航空機100から送信する。
【0025】
通信回路231は、アンテナを通じて受信した無線信号から、無人航空機100のための操縦信号、制御信号や各種データなどを復調して情報処理ユニット230に入力したり、無人航空機100から出力されるテレメトリ信号などを搬送する無線信号を生成するための電子回路であり、典型的には無線信号処理ICである。なお、例えば、操縦信号の通信と、制御信号、各種データの通信とを別の周波数帯の異なる通信回路で実行するようにしてもよい。例えば、手動での操縦を行うためのコントローラ(プロポ)の送信器と950MHz帯の周波数で通信し、データ通信を2GHz帯/1.7GHz帯/1.5GHz帯/800MHz帯の周波数で通信するような構成を採ることも可能である。
【0026】
制御信号生成部232は、情報処理ユニット230によって演算により得られた制御指令値データを、電圧を表わすパルス信号(PWM信号など)に変換する構成であり、典型的には、発振回路とスイッチング回路を含むICである。スピードコントローラ233は、制御信号生成部232からのパルス信号を、モータ103を駆動する駆動電圧に変換する構成であり、典型的には、平滑回路とアナログ増幅器である。図示していないが、無人航空機100は、リチウムポリマーバッテリやリチウムイオンバッテリ等のバッテリデバイスや各要素への配電系を含む電源系を備えている。
【0027】
インターフェイス234は、情報処理ユニット230と測位装置221、高度センサ222、コンパス223などの機能要素との間で信号の送受信ができるように信号の形態を変換することにより、それらを電気的に接続する構成である。なお、説明の都合上、図面においてインターフェイスは1つの構成として記載しているが、接続対象の機能要素の種類によって別のインターフェイスを使用することが通常である。また、接続対象の機能要素が入出力する信号の種類によってはインターフェイス234が不要な場合もある。また、図7において、インターフェイス234が媒介せずに接続されている情報処理ユニット230であっても、接続対象の機能要素が入出力する信号の種類によってはインターフェイスが必要となる場合もある。
【0028】
また、情報処理ユニット230と制御信号生成部232とにより、無人航空機100の飛行を制御する飛行制御部240が構成される。飛行制御部240は、飛行計画経路データが記憶されており、これに基づき、所定の飛行経路に沿って無人航空機100が飛行するように、モータ103の駆動を制御する。
【0029】
飛行計画経路データは、無人航空機100の飛行計画経路を表すデータであり、典型的には、飛行計画経路上に存在する一連の複数のウェイポイントの集合のデータである。飛行計画経路は、典型的には、それらの複数のウェイポイントを順番に結んだ直線の集合であるが、ウェイポイントの所定範囲内においては所定の曲率の曲線とすることもできる。飛行計画経路データは、複数のウェイポイントにおける飛行速度を定めるデータを含んでいてもよい。飛行計画経路データは、典型的には自律飛行において飛行計画経路を定めるために使用されるが、非自律飛行において飛行時のガイド用として使用することもできる。飛行計画経路データは、典型的には、飛行前に無人航空機100に入力されて記憶される。
【0030】
飛行制御部240は、測位装置221、高度センサ222、コンパス223、及びIMU224により測定された自己位置及び姿勢に基づき、飛行計画経路データの飛行計画経路に沿うように無人航空機の飛行を制御する。具体的には、各種センサにより、無人航空機100の自己位置、ヘディング、姿勢、速度等を判断し、に基づき無人航空機100の現在の飛行位置及びヘディングなどを判断し、操縦信号、飛行計画経路(目標)、速度制限、高度制限等の目標値と比較することにより各ロータ104A、104Bに対する制御指令値を演算し、制御指令値を示すデータを制御信号生成部132に出力する。制御信号生成部132は、その制御指令値を電圧を表わすパルス信号に変換して各スピードコントローラ233に送信する。各スピードコントローラ233は、そのパルス信号を駆動電圧へと変換して各モータ103に印加し、これにより各モータ103の駆動を制御して各ロータ104A、104Bの回転数を制御することにより無人航空機100の飛行が制御される。
【0031】
図8は、図1に示す無人航空機の情報処理ユニットのハードウェア構成を示す図である。情報処理ユニット230は、CPU230aと、RAM230bと、ROM230cと、外部メモリ230dと、入力部230eと、出力部230fと、通信部230gとを含む。RAM230b、ROM230c、外部メモリ230d、入力部230e、出力部230f、及び、通信部230gはバス230hを介してCPU230aに接続されている。
【0032】
CPU230aは、システムバス230hに接続される各デバイスを統括的に制御する。
ROM230cや外部メモリには、CPU230aの制御プログラムであるBIOSやOS、コンピュータが実行する機能を実現するために必要な各種プログラムやデータ等が記憶されている。
【0033】
RAM230bは、CPU230aの主メモリや作業領域等として機能する。CPU230aは、処理の実行に際して必要なプログラム等をROM230cや外部メモリ230dからRAM230bにロードして、ロードしたプログラムを実行することで各種動作を実現する。
【0034】
外部メモリ230dは、例えば、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD-RAM、USBメモリ等から構成される。
入力部230eは、ユーザ等から操作指示等を受け付ける。入力部230eは、例えば、入力ボタン、キーボード、ポインティングデバイス、ワイヤレスリモコン、マイクロフォン、カメラ等の入力デバイスから構成される。
【0035】
出力部230fは、CPU230aで処理されるデータや、RAM230b、ROM230cや外部メモリ230dに記憶されるデータを出力する。出力部230fは、例えば、CRTディスプレイ、LCD、有機ELパネル、プリンタ、スピーカ当の出力デバイスから構成される。
【0036】
通信部230gは、ネットワークを介して、又は、直接外部機器と接続・通信するためのインターフェイスである。通信部230gは、例えば、シリアルインタフェース、LANインターフェイス等のインターフェイスから構成される。
【0037】
飛行制御部240は、ROM230cや外部メモリ230dに記憶された各種プログラムが、CPU230a、RAM230b、ROM230c、外部メモリ230d、入力部230e、出力部230f、通信部230g等を資源として使用することで実現される。
【0038】
本実施形態では、情報処理ユニット230及び制御信号生成部232を飛行制御部240として機能させているが、情報処理ユニット230とは別個にこれらシステムを搭載する等して無人航空機に備えられる構成としてもよい。また、自己位置推定システム又はその構成要素は、1つの物理的な装置として構成される必要はなく、複数の物理的な装置から構成されてもよい。また、自己位置推定システムを、無人航空機とは別体の地上局のコンピュータ、PC、スマートフォン、タブレット端末等の任意の適切な装置、クラウド・コンピューティングシステム、又はそれらの組み合わせ等として構成してもよい。また、自己位置推定システムの各部の機能は、無人航空機が備える1つ又は複数の装置及び無人航空機とは別体の1つ又は複数の装置のうちのいずれか1つで又は複数で分散して実行される構成としてもよい。
また、本実施形態では、無人航空機100は、翼体部105を下方に向かって延びる第1の垂下状態で保持するための第1の保持機構と、翼体部105を横方向に向かって延びる第2の展開状態で保持するための第2の保持機構とを有する。第1の保持機構及び第2の保持機構としては、翼体部105が垂下した状態または横方向に延びた状態になると、翼体部105の航空機本体101に対する回動する際の抵抗が大きくなるような構成を採用することができる。
また、第1の保持機構としては、例えば、航空機本体101から翼体部105内にピンを挿入し、翼体部105の回動を拘束する機構や、翼体部105内に磁性体を配置しておき、航空機本体101内に設けられた電磁石によりこの磁性体を吸着する構成などを採用することができる。同様に、第2の保持機構としては、例えば、航空機本体101から翼体部105内にピンを挿入し、翼体部105の回動を拘束する機構や、翼体部105内に磁性体を配置しておき、航空機本体101内に設けられた電磁石によりこの磁性体を吸着する構成などを採用することができる。
なお、これら第1の保持機構及び第2の保持機構は、必須の構成ではなく、省略することも可能である。
【0039】
以下、上記の無人航空機により所定の目的地まで自立飛行する流れを説明する。図9は、無人航空機により所定の目的地まで自立飛行する流れを示すフローチャートである。
飛行制御部240には、予め飛行計画経路データが記憶されている。
【0040】
無人航空機100は、翼体部105は下方に向かって延びた第1の垂下状態となっており、翼体部105の接地部105Aが地面に接地することにより、無人航空機100は着地している。着陸脚部105が下方に向かって延びた第1の垂下状態において、着陸脚部105の接地部105Aは航空機本体101の自重を支持する。なお、本実施形態では、着陸脚部105の接地部105Aは航空機本体101の全重量を支持するが、他の接地脚を設け、一部のみを支持する構成としてもよい。このような状態で、飛行制御部240は、モータ103を回転駆動させて、無人航空機100の姿勢を保ちながら上昇する(S1)。
【0041】
そして、飛行制御部240は、所定の時間間隔で高度センサ222により無人航空機の高度を検知する(S2)。高度センサ222により測定された高度が予め設定された所定の高さまで到達していない場合(S3においてNO)には、飛行制御部240は無人航空機100がさらに上昇するように制御する。
【0042】
そして、高度センサ222により測定された高度が予め設定された所定の高さまで到達している場合(S3においてYES)には、飛行制御部240は無人航空機100を水平に前進させる(S4)。無人航空機100を前進させる際には、飛行制御部240は後方アーム102Bに設けられたロータ104Bの回転速度を早くする。これにより、航空機本体101が前傾姿勢となり、ロータ104A、104Bにより前方上方の推進力が生じる。
図10は、前進を開始した無人航空機を示す正面図であり、図11は前進を開始した無人航空機を示す側面図である。無人航空機100が前進を開始すると、無人航空機100には前方から後方に向かって、図10及び図11に矢印Aで示すように空気が吹き付けることになる。そして、図10及び図11に示すように、翼体部105が、第1の垂下状態で後方に向かって幅が狭まるように設けられているため、前方から空気が吹き付けられることにより、翼体部105には側方に向かう空気流による付勢力Bが作用する。さらに、翼体部105が翼状に形成されているため、翼体部105には翼体部105の上面に垂直な方向に揚力Cが発生する。このように翼体部105に、空気流による付勢力B及び揚力が発生すると、翼体部105は側方に向かって回動する。
【0043】
また、飛行制御部240は、前進を開始すると所定の時間間隔でエンコーダ220により左右の翼体部105の回転角度を検出する。検出の結果、翼体部105が第2の展開状態まで到達していないと飛行制御部240が判定した場合(S5においてNO)には、飛行制御部240は引き続き前進を続ける。なお、エンコーダ220により検出された回転角度が長時間にわたり、第2の展開状態に到達しない場合には、発生する揚力及び付勢力が不十分である可能性があるので、ロータ104A、104Bの回転数を上げてもよい。
そして、検出の結果、翼体部105が第2の展開状態まで到達したと飛行制御部240が判定した場合(S5においてYES)には、飛行制御部240は、目的地に向かって水平飛行を開始する(S6)。なお、水平飛行とは厳密に水平に飛行する場合のみならず、上昇又は下降しながら横方向に飛行する場合も含み、鉛直方向の移動よりも水平方向の移動を目的とした飛行状態をいう。なお、翼体部105が第2の展開状態まで到達すると、第2の保持機構により翼退部105が横方向に延びた状態に保持される。
図12は、水平飛行中の無人航空機を示す側面図である。水平飛行中には、翼体部105は横方向に延びる第2の展開状態となっており、翼体部105には揚力が発生する。そして、水平飛行中には、IMU224により検知された無人航空機100の姿勢が、翼体部105が前後方向に水平となるようにフィードバック制御する。これにより、低消費電力で水平飛行することが可能になる。
【0044】
また、水平飛行しながら、飛行制御部240は所定の時間間隔で測位装置221により無人航空機100の自己位置を検知する。そして、無人航空機100の自己位置が目的地の近傍に到達しているかどうかを判定する(S7)。なお、無人航空機100の自己位置が目的地の近傍に到達しているかは、例えば、目的地と、無人航空機100の自己位置との距離が所定の閾値以下となっているかどうかにより、判定することができる。そして、無人航空機100の自己位置が目的地の近傍に到達していないと判定された場合(S7においてNO)には、水平飛行を続ける。
【0045】
これに対して、無人航空機100が目的の近傍に到達した場合(S7においてYES)には、飛行制御部240はホバリングするような制御を開始する(S8)。無人航空機100がホバリングを開始すると、翼体部105に作用する揚力が無くなる。このため、翼体部105は、自重及びロータ104A、104Bにより発生するダウンフォースにより下方に向かって付勢される。これにより、翼体部105が下方内側に向かって回動する。
また、飛行制御部240は、前進を開始すると所定の時間間隔でエンコーダ220により左右の翼体部105の回転角度を検出する。検出の結果、翼体部105が第1の垂下状態まで到達していないと飛行制御部240が判定した場合(S9においてNO)には、飛行制御部240は引き続きホバリングを続ける。なお、エンコーダ220により検出された回転角度が長時間にわたり、第1の垂下状態に到達しない場合には、付勢力が不十分である可能性があるので、飛行制御部240は無人航空機100が後進するように制御してもよい。無人航空機100が後進する際には、航空機本体101が後傾し、翼体部105の上面に空気が強く当たることになり、翼体部105に下方に向かって作用する付勢力が大きくなる。
そして、検出の結果、翼体部105が第1の垂下状態まで到達したと飛行制御部240が判定した場合(S9においてYES)には、飛行制御部240はロータ104A、104Bの回転を制御し、着地地点の直上に位置するように水平方向位置を微調整しながら、無人航空機100が下降させる(S10)。なお、翼退部105が第1の垂下状態に到達すると、翼退部105は第1の保持機構により下方に向かって延びた状態で保持される。そして、高度センサ222により測定された高度の変化がなくなるなどにより、翼体部105の接地部105Aが着地したことを検知すると(S11)、飛行制御部240はロータ104A、104Bを停止する。
以上により、無人航空機100が目的地まで自立飛行することができる。
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態によれば、航空機本体101と、上方に向いた複数のロータ104A、104Bと、航空機本体101に接続された左右の翼体部105と、を備え、翼体部105は、翼体部105が航空機本体101から下方に向けて延びる第1の垂下状態と、航空機本体101から横方向に向けて延びる第2の展開状態との間で移行可能であり、翼体部105は、無人航空機100が前進する際に受ける空気の力により、第1の垂下状態から第2の展開状態に移行するように構成されている無人航空機が提供される。
このような構成によれば、翼体部105が前進する際に受ける空気の力により第1の垂下状態から第2の展開状態に移行するため、翼体部105を回動させるためのアクチュエータが不要となり、これにより、無人航空機の重量の増加を抑えることができる。
また、本実施形態によれば、第1の垂下状態において、翼体部105は後方に向かって間隔が狭まるように設けられている。
これにより、無人航空機100が前進すると、空気により翼体部105に第2の展開状態に向かって移行するような付勢力が作用し、これにより翼体部105を空気の力により第2の展開状態に移行させることができる。
また、本実施形態によれば、翼体部105は、着地時に接地する接地部105Aを先端に有し、無人航空機100は、第1の垂下状態で接地部105Aが接地して着陸する。
これにより、翼体部105とは別にスキッドなどの脚部を設ける必要がなくなり、水平飛行時における空気抵抗を減らすことができ、消費電力を抑えることができる。
また、本実施形態によれば、ロータ104A、105Bは、第2の展開状態において平面視で翼体部105と重ならないように配置されている。
このような構成によれば、水平飛行時にロータ104A、104Bにより送られた風が翼体部105Bに当たることがなく、翼退部105Bが第1の垂下状態に戻ることを防止できる。
また、本実施形態によれば、複数のロータ104A、104Bは、前方の対となるロータ104Aと、後方の対となるロータ104Bとを含み、後方の対となるロータ104Bは、前方の対となるロータ104Aよりも上方に位置している。
【0046】
水平飛行する際には、ロータ104A、104Bによる前方への推進力を大きくするため、無人航空機を前傾姿勢とすることになる。この際、後方の対となるロータ104Bが前方の対となるロータ104Aよりも上方に設けられていることにより、前傾姿勢において前方の対となるロータ104Aと、後方の対となるロータ104Bとがより、上下方向により大きく離間することになり、前方の対となるロータ104Aの後流の影響を減らすことができる。
また、本実施形態によれば、翼体部105は、第2の展開状態において翼体部105が航空機本体101の前後方向に対して、前方側が上方に傾斜するように設けられている。
このような構成によれば、無人航空機100が水平飛行する際に、翼体部105Bが水平となり、翼体部105Bの抵抗を減らし、揚力を発生させることができる。また、水平飛行からホバリングに移行しても、翼体部105が第2の展開状態から戻らない場合に、無人航空機100を後進させることにより、空気により翼体部105に下方に向かう力が作用し、翼体部105を確実に第1の垂下状態に戻すことができる。
また、本実施形態によれば、無人航空機100は、さらに、翼体部105を第1の垂下状態及び第2の展開状態で保持する保持機構を備える。
このような構成によれば、翼体部105が下降する際に、翼退部105が第1の保持機構により第1の垂下状態に保持され、安全に着陸することができる。また、翼退部105が水平飛行する際に、第2の保持機構により第2の展開状態に保持され、安全に水平飛行することができる。
なお、本実施形態では、翼体部105の先端に接地部105Aを設け、離着陸時には翼退部105を第1の垂下状態にし、接地部105Aを設置させて離着陸していたが、本発明はこれに限られない。例えば、翼体部105とは別にスキッドを設け、スキッドを接地させて離着陸を行ってもよい。この場合、離陸時には上昇時に空気抵抗となるため翼体部105を第1の垂下状態とすることが好ましいが、着陸時には翼体部105を第2の展開状態としたまま着陸してもよい。
【符号の説明】
【0047】
100 無人航空機
101 航空機本体
102A 前方アーム
102B 後方アーム
103 モータ
104A、104B ロータ
105 翼体部
105A 接地部
132 制御信号生成部
200 飛行制御システム
201 制御ユニット
220 エンコーダ
221 測位装置
222 高度センサ
223 コンパス
230 情報処理ユニット
230a CPU
230b RAM
230c ROM
230d 外部メモリ
230e 入力部
230f 出力部
230g 通信部
230h バス
230h システムバス
231 通信回路
232 制御信号生成部
233 スピードコントローラ
234 インターフェイス
240 飛行制御部
【要約】
【課題】翼体が展開可能であり、無人航空機の重量の増加を抑えた無人航空機を提供する。
【解決手段】航空機本体101と、上方に向いた複数のロータ104A、104Bと、航空機本体101に接続された左右の翼体部105と、を備え、翼体部105は、翼体部105が航空機本体101から下方に向けて延びる第1の垂下状態と、航空機本体101から横方向に向けて延びる第2の展開状態との間で移行可能であり、翼体部105は、無人航空機100が前進する際に受ける空気の力により、第1の垂下状態から第2の展開状態に移行するように構成されている無人航空機100が提供される。
【選択図】図10
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12