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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】光源装置および表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20220225BHJP
   H01L 33/64 20100101ALI20220225BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20220225BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20220225BHJP
   F21V 29/76 20150101ALI20220225BHJP
   F21V 9/00 20180101ALI20220225BHJP
   F21K 9/64 20160101ALI20220225BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/64
F21S2/00 482
F21V29/503 100
F21V29/76
F21V9/00
F21K9/64
G02F1/13357
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2016170604
(22)【出願日】2016-09-01
(65)【公開番号】P2018037566
(43)【公開日】2018-03-08
【審査請求日】2019-08-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】金 東 榮
(72)【発明者】
【氏名】渡部 一貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 治
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/156227(WO,A1)
【文献】特開2006-100687(JP,A)
【文献】特開2013-074273(JP,A)
【文献】国際公開第2012/132232(WO,A1)
【文献】特開2006-237557(JP,A)
【文献】特開2015-032599(JP,A)
【文献】特表2012-502449(JP,A)
【文献】特表2016-500471(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0158982(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0057676(KR,A)
【文献】特開2012-124428(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0021503(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L33/00-33/64
F21K9/00-9/90
G02F1/13357
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に支持され、光を発生させる光源素子およびフレームを有する光源部と、
前記光源部の上に支持された、前記光によって励起される量子ドットを内包する容器と、
前記フレームと前記容器と前記基板とを接続する熱伝導覆い材と、
樹脂および前記樹脂に混合された熱伝導性充てん材を有する熱伝導体と、
を備え、
前記容器は前記光が入射する底壁および前記底壁を取り囲む側壁を有し、
前記熱伝導性充てん材が、前記容器および前記フレームにより取り囲まれた領域を充てんし、
前記樹脂はポリカーボネートまたはナイロンであり、前記熱伝導性充てん材は無機粒子であり、
前記熱伝導覆い材は、前記容器の前記側壁と前記基板とを接続し、前記容器の前記側壁、前記フレームの側壁、および前記基板の表面に連続して接触するように設けられ、前記容器の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する熱伝導金属を含み、
前記熱伝導性充てん材が、前記容器の底壁から前記フレームを介して前記基板に熱を伝導することを特徴とする、光源装置。
【請求項2】
前記熱伝導体は、前記光を透過することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記基板の前記容器とは反対側の面に放熱部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の前記光源装置と、前記光源装置からの光が照射される位置に設けられた液晶パネルと、を備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、色再現性の良い画像を表示することができる液晶表示装置を提供するため、液晶表示素子への入射光の色純度を高める技術の開発が求められている。一例として、量子ドットを用いた技術が開発されている。量子ドットは蛍光体であり、発光ダイオード(LED)等の光源からの励起光が入射されると該励起光の波長よりも長い波長の光を生成する。量子ドットの種類や粒径を変えることによって、量子ドットが生成する光の波長を調整可能である。例えば、励起光としてLEDからの青色光を用い、量子ドットは該青色光が入射された際に半値幅が狭い緑色光および赤色光を生成するように構成される。これにより、量子ドットを用いて、光の三原色に対応する狭い波長領域の光を生成可能な高効率の光源を実現することができる。
【0003】
量子ドットは水、酸素や熱に曝されると劣化しやすい。特許文献1に記載の技術は、水および酸素に対してバリア性を有する容器内に、樹脂または有機溶媒中に分散された量子ドットを密閉する。このような構成により、量子ドットを含む光源装置の劣化を抑制して信頼性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-76634号公報
【文献】特開2015-233057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
量子ドットを密閉する容器は、量子ドット自体の無放射失活等により発生した熱を蓄積しやすい。そのため、容器に蓄積された熱に起因する量子ドットの劣化が起こり得る。しかしながら、特許文献1に記載の技術は水および酸素による劣化を抑制することができるものの、熱による劣化について考慮していない。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みて行われたものであって、熱による量子ドットの劣化を抑制することができる光源装置および表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、光源装置であって、基板と、前記基板の上に支持された、光を発生させる光源部と、前記光源部の上に支持された、前記光によって励起される量子ドットを内包する容器と、前記容器と前記基板とを接続する熱伝導体と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、量子ドットを含む容器と、該容器を支持する基板との間を熱伝導体によって接続する。このような構成により、量子ドットから発生した熱を容器から基板に伝達させ、効率的に放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る表示装置の前面図である。
図2】第1の実施形態に係る表示装置の断面図である。
図3】第1の実施形態に係る量子ドット構造体の断面図である。
図4】第2の実施形態に係る表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明するが、本発明は各実施形態に限定されるものではない。なお、以下で説明する図面で、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る表示装置10の前面図である。表示装置10は、液晶パネル20と、液晶パネルの背面に沿って設けられた光源装置100と、液晶パネル20および光源装置100を支持する枠30とを備える。図1において、視認性のために液晶パネル20は背面側の光源装置100を透過するように示されている。図1に示す表示装置10に含まれる各部の数および大きさは実際の構成を反映しておらず、実際の実装方法に応じて任意に設計されてよい。
【0012】
光源装置100は直下型バックライトユニットであり、液晶パネル20の背面側から液晶パネル20に光を照射する。光源装置100の詳細な構成については、図2および3を用いて後述する。液晶パネル20は、液晶層、偏光板、カラーフィルタ、および薄膜トランジスタ(TFT)等の電気回路を含む周知の構成を有する。液晶パネル20は、電気回路を通じて画素ごとに光源装置100からの光の透過率を制御することによって、所望の画像を表示する。枠30は樹脂、金属等を用いて構成されており、液晶パネル20および光源装置100を支持する。枠30の内部には、液晶パネル20および光源装置100への電気配線が配設される。なお、本実施形態ではバックライトユニットの方式として直下型バックライトユニットを例示しているが、エッジライト方式であってもよい。
【0013】
図2は、図1のA-A線から見た本実施形態に係る表示装置10の断面図である。光源装置100は、所定の波長の光を生成する光源部120、および光源部120からの光の波長を変換する量子ドット構造体110を備える。
【0014】
光源部120は、発光素子121、基板122、およびフレーム123を有する。発光素子121は、所定の波長の光を生成し、液晶パネル20へ向けて照射する。発光素子121は不図示の電気配線に電気的に接続されており、該電気配線を通じて印加される電力を用いて光を生成する。発光素子121により生成される光の波長は、例えば青色光の波長領域(約380nm~500nm)または紫外光の波長領域(約10nm~380nm)である。発光素子121として、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)等の任意の発光素子を用いてよい。発光素子121からの光が励起光として後述の量子ドット構造体110に入射することによって、光源装置100は光の三原色に対応する狭い波長領域の光を生成することができる。
【0015】
フレーム123は、凹状の形状を有しており、底壁123a、および底壁123aの周囲を取り囲む側壁123bを備える。底壁123aの上には発光素子121が支持され、側壁123bの上には量子ドット構造体110が支持される。量子ドット構造体110と発光素子121との間には、底壁123aおよび側壁123bに取り囲まれている内側領域が形成され、発光素子121から量子ドット構造体110への光は該内側領域を通過する。放熱性を向上させるために、フレーム123の底壁123aおよび側壁123bは、高熱伝導樹脂等の熱伝導体を用いて構成される。高熱伝導樹脂は、例えばポリカーボネート、ナイロン等の樹脂に、無機粒子等の熱伝導性フィラーを混合したものでよい。また、フレーム123を構成する熱伝導体として、金属、半導体等の熱伝導性が高いその他の材料を用いてもよい。
【0016】
基板122は、液晶パネル20の表面に対して平行に延在し、複数の発光素子121およびフレーム123を支持する。本実施形態では、所定の数の発光素子121およびフレーム123が基板122の上に格子状かつ等間隔に配置される。発光素子121およびフレーム123の数および配置は、表示装置10の構成に応じて任意に設定されてよい。基板122は、樹脂、金属、半導体等の任意の材料を用いて構成されてよい。
【0017】
量子ドット構造体110は液晶パネル20の背面と光源部120との間に位置し、光源部120から液晶パネル20の背面へ照射される光の光路に介在する。すなわち、光源部120からの光は、量子ドット構造体110を介して液晶パネル20の背面に照射される。図3は、図1のA-A線から見た量子ドット構造体110の詳細な断面図である。量子ドット構造体110は、密閉容器111、ならびに密閉容器111に内包された量子ドット112および分散媒113を含む。分散媒113は量子ドット112を均等に分散させる液状または固体状の媒体であり、少なくとも可視光の波長領域(約380nm~780nm)の光を透過する樹脂等の任意の材料を用いて構成される。
【0018】
密閉容器111は、外部空間(すなわち大気)から隔離された内部領域を有する容器であり、少なくとも可視光の波長領域の光を透過するガラスや樹脂等の任意の材料を用いて構成される。水および酸素による量子ドット112の劣化を抑制するために、密閉容器111は水および酸素に対してバリア性を有する材料を用いて構成されることが望ましい。
【0019】
本実施形態において、密閉容器111は水および酸素に対するバリア性が高いガラスを用いて形成されたガラスセルとして構成される。具体的には、密閉容器111は、互いに平行なガラス製の矩形板である底壁111aおよび天井壁111bがガラス製の側壁111cを介して所定の間隔をおいて対向した四角柱状の構造を有する。光源部120からの光は、底壁111aに対して垂直に入射する。密閉容器111の構造は、ここに示したものに限られず、公知のものを用いてよい(例えば、特許文献2参照)。密閉容器111の形状は、例えば円柱状等の任意の形状でよい。密閉容器111を構成する壁面の少なくとも一部は平面状でなく、曲面状でもよい。
【0020】
量子ドット112(コロイド状量子ドットともいう)は、量子力学に従う光学特性を有するナノスケールの材料であり、粒子径が約1nm~100nm、好ましくは1nm~50nm、より好ましくは1nm~20nmの微小な半導体粒子である。量子ドット112は、バンドギャップ(価電子帯および伝導帯のエネルギー差)よりも大きなエネルギーを有する光子を吸収し、その粒子径に応じた波長の光を放出する。したがって、量子ドット112は、所定の波長以下の光を吸収する性質を持ち、粒子径を調整することによって所望の波長の光を発生させることができる。本実施形態において、量子ドット112は図3のように球状であるが、これに限られず任意の形状であってよい。
【0021】
量子ドット112は、少なくとも1つの半導体材料を含む。量子ドット112の半導体材料として、第IV族元素、第II-VI族化合物、第II-V族化合物、第III-VI族化合物、第III-V族化合物、第IV-VI族化合物、第I-III-VI族化合物、第II-IV-VI族化合物、第II-IV-V族化合物等を用いてよい。具体的には、量子ドット112の半導体材料として、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgS、MgSe、GaAs、GaN、GaP、GaSe、GaSb、HgO、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InN、InP、InSb、AlAs、A1N、A1P、AlSb、TiN、TiP、TiAs、TiISb、PbO、PbS、PbSe、PbTe、Ge、Si等を用いることができる。量子ドット112の材料として、ここに示したものに限られず、量子ドットの機能を発揮できる限り任意の材料をもちいてよい。
【0022】
光源部120が生成する光が青色光である場合には、緑色光の波長領域(約510nm以上610nm以下、好ましくは520nm以上580nm以下)に発光中心波長を有する第1の量子ドット112と、赤色光の波長領域(約600nm以上700nm以下、好ましくは610nm以上680nm以下)に発光中心波長を有する第2の量子ドット112とを組み合わせて用いることができる。すなわち、光源部120が生成する青色光は、量子ドット112に対する励起光として機能するとともに、光源装置100が発する可視光として機能する。本実施形態においては、青色、緑色、及び赤色の3つの極大がある発光スペクトルを有する光源を示したが、量子ドットの発光中心波長及び量子ドットの組み合わせはこれに限られず任意の組み合わせを用いてよい。
【0023】
光源部120が生成する光が紫外光である場合には、緑色光の波長領域に発光中心波長を有する第1の量子ドット112と、赤色光の波長領域に発光中心波長を有する第2の量子ドット112と、青色光の波長領域に発光中心波長を有する第3の量子ドット112とを組み合わせて用いる。すなわち、光源部120が生成する紫外光は、量子ドット112に対する励起光として機能する。
【0024】
量子ドット112は、少なくとも1つの半導体材料を含むコアと、少なくとも1つの半導体材料を含むシェルとからなるコアシェル型構造を有していてもよい。具体的には、コアとしてCdSe、シェルとしてCdZnSを有する量子ドット112、コアとしてCdZnSe、シェルとしてCdZnSを有する量子ドット112、コアとしてCdS、シェルとしてCdZnSを有する量子ドット112等を用いることができる。
【0025】
図2に戻り、本実施形態に係る光源装置100において効率的な放熱を実現する手段を説明する。光源装置100は、量子ドット構造体110から放熱を行うために、量子ドット構造体110の側壁111cの周囲を覆う高熱伝導覆い材130、および光源部120のフレーム123の内側領域を充てんする高熱伝導充てん材140を備える。高熱伝導覆い材130および高熱伝導充てん材140は、それぞれ量子ドット構造体110と光源部120の基板122とを熱的に接続し、量子ドット構造体110からの熱を基板122に伝達する。
【0026】
具体的には、高熱伝導覆い材130は、量子ドット構造体110の側壁111cと基板122の表面とを接続する。量子ドット構造体110から高熱伝導覆い材130への熱の移行を促進するために、また高熱伝導覆い材130は側壁111cの高さ方向の1/3以上、より好ましくは半分以上、さらに好ましくは全てに接触している。高熱伝導覆い材130は側壁111cの外周方向に沿った少なくとも一部に接触していればよいが、より好ましくは側壁111cの外周方向に沿った全てに接触している。高熱伝導覆い材130自体からの放熱量を増加させるために、高熱伝導覆い材130の表面に凹凸を設けて表面積を大きくすることが望ましい。
【0027】
本実施形態において、高熱伝導覆い材130は、熱伝導体をペースト状にした高熱伝導ペーストを、量子ドット構造体110の側壁111c、光源部120の側壁123bおよび基板122の表面に連続して接触するように塗布することによって形成される。高熱伝導覆い材130に用いられる熱伝導体として、金属、半導体、上述の高熱伝導樹脂等を用いてよい。このような構成により、量子ドット構造体110で発生した熱は、量子ドット構造体110の側壁111cから高熱伝導覆い材130を通って基板122に伝達し、基板122から放出される。
【0028】
高熱伝導充てん材140は、量子ドット構造体110の底壁111aと光源部120の底壁123aとを接続する。発光素子121からの光の損失を抑制するために、高熱伝導充てん材140は、光源部120の底壁123aおよび側壁123bに取り囲まれている内側領域を完全に満たしており、発光素子121から量子ドット構造体110への光路上に空間が存在しないことが望ましい。
【0029】
本実施形態において、高熱伝導充てん材140は、光源部120の底壁123aおよび側壁123bに取り囲まれている内側領域に熱伝導体を充てんすることによって形成される。高熱伝導充てん材140に用いられる熱伝導体として、少なくとも発光素子121からの光の波長領域を透過する無機物質や上述の高熱伝導樹脂等を用いてよい。通常、光源部120のフレーム123は大気より伝熱量が多いため、高熱伝導充てん材140からの熱は容易に基板122へ伝導する。このような構成により、量子ドット構造体110で発生した熱は、量子ドット構造体110の底壁111aから高熱伝導充てん材140および光源部120のフレーム123を通って基板122に伝達し、基板122から放出される。
【0030】
さらに光源部120の基板122には、基板122からの放熱部であるヒートシンク150が設けられている。ヒートシンク150は、表面上に多数の凹凸を有しており、放熱性を高めた部材である。ヒートシンク150の設置面積を大きくするため、ヒートシンク150は基板122の量子ドット構造体110とは反対側に設けられることが望ましい。量子ドット構造体110から高熱伝導覆い材130および高熱伝導充てん材140を介して基板122へ伝導した熱は、基板122のヒートシンク150からより効率的に放出される。基板122からの放熱部として、ヒートシンク150の他に、基板122の表面に塗布された放熱塗料等の任意の構造を用いてもよい。また、基板122の表面に凹凸を設けることによって、基板122自体を放熱部として機能させてもよい。
【0031】
光源部120の基板122は面積が広いため、量子ドット構造体110の密閉容器111よりも放熱性が高い。また、ヒートシンク150によって基板122の放熱性がさらに高められている。そのため、本実施形態に係る光源装置100によれば、量子ドット構造体110で発生した熱を、高熱伝導覆い材130および高熱伝導充てん材140を用いて基板122に逃がすことによって、量子ドット構造体110からの放熱量を増加させ、熱による量子ドット112の劣化を抑制することができる。
【0032】
本実施形態では、高熱伝導覆い材130および高熱伝導充てん材140の両方によって量子ドット構造体110と基板122とを熱的に接続しているが、高熱伝導覆い材130および高熱伝導充てん材140の少なくとも一方を設ければ本実施形態の効果を得ることができる。
【0033】
(実施例)
実施例として第1の実施形態に係る光源装置100に対して加速試験を行った。また、光源装置100から高熱伝導覆い材130およびヒートシンク150が省略された比較例1、ならびに光源装置100から高熱伝導覆い材130が省略された比較例2に対して加速試験を行った。加速試験の条件としては、発光素子121として中心波長450nmのLEDを用いて光源装置100を作製し、85度の環境温度においてLEDを点灯した。LED点灯前の状態および70時間経過後の状態についてそれぞれ全光束を測定し、それらの状態の間の全光束維持率を算出した。光束維持率は、比較例1を100%とした相対値として表されており、その値が高いほど量子ドットの劣化が抑制されているため良い。また、実施例、比較例1および比較例2についてそれぞれ外観検査を行った。外観検査は、量子ドット112および分散媒113の色が、劣化により黒くなる程度を評価したものである。測定結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示すように、実施例では、高熱伝導覆い材130およびヒートシンク150が設けられていない比較例1に比べて全光束維持率が大幅に向上した。また、実施例1では、基板122の裏にヒートシンク150が設けられているだけの比較例2に比べて全光束維持率が向上した。また、外観検査による量子ドットの劣化評価についても実施例は比較例1および比較例2よりも良い。そのため、量子ドット構造体110と基板122とを接続する高熱伝導覆い材130を設けることが、量子ドット構造体110の放熱性の向上および信頼性の向上に有効であることが確認できた。
【0036】
(第2の実施形態)
図4は、図1のA-A線から見た本実施形態に係る表示装置10の断面図である。本実施形態においては、量子ドット構造体110の構成が第1の実施形態と異なる。量子ドット構造体110の構成以外は、第1の実施形態と同様である。
【0037】
本実施形態に係る表示装置10では、高熱伝導覆い材130は省略され、代わりに量子ドット構造体110の側壁111cの表面上に量子ドット構造体110からの放熱部であるヒートシンク160が設けられている。ヒートシンク160は、表面上に多数の凹凸を有しており、放熱性を高めた部材である。また、量子ドット構造体110の側壁111cの表面に凹凸を設けることによって、側壁111c自体を放熱部として機能させてもよい。量子ドット構造体110の側壁111cを放熱部として機能させる手段は、表面への凹凸の付与に限定されず、表面に塗布された放熱塗料等の任意の構造を用いてもよい。
【0038】
量子ドット構造体110からの放熱部として、ヒートシンク160の代わりに、密閉容器111の底壁111a、天井壁111bまたは側壁111cの内部または表面に設けられた循環パイプの中を気体または液体を循環させることによって強制冷却を行う空冷装置または水冷装置を設けてもよい。
【0039】
本実施形態に係る表示装置10によれば、量子ドット構造体110で発生した熱を、高熱伝導充てん材140を用いて基板122に逃がすとともに、量子ドット構造体110に設けられたヒートシンク160から放出することによって、量子ドット構造体110からの放熱量を増加させ、熱による量子ドット112の劣化を抑制することができる。
【0040】
第1および第2の実施形態を組み合わせ、量子ドット構造体110の側壁111cに高熱伝導覆い材130およびヒートシンク160の両方を設けてもよい。これにより、量子ドット構造体110からの放熱量をさらに増加させることができる。
【0041】
本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0042】
100 光源装置
110 量子ドット構造体
111 密閉容器
112 量子ドット
120 光源部
130 高熱伝導覆い材
140 高熱伝導充てん材
図1
図2
図3
図4