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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】脊椎安定化装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20220225BHJP
   A61B 17/86 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
A61B17/70
A61B17/86
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017552170
(86)(22)【出願日】2016-04-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-10-04
(86)【国際出願番号】 US2016026379
(87)【国際公開番号】W WO2016164541
(87)【国際公開日】2016-10-13
【審査請求日】2019-04-08
(31)【優先権主張番号】62/144,289
(32)【優先日】2015-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517344273
【氏名又は名称】ケー2エム, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ブレイクモア,ラウレル
(72)【発明者】
【氏名】ゲーンズ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ヘッドランド,ルネ
(72)【発明者】
【氏名】メータ,ジャワラント
(72)【発明者】
【氏名】ミン,カン
(72)【発明者】
【氏名】ノールディーン,ヒラリ
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,ブランドン
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0072991(US,A1)
【文献】特表2014-523264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0338715(US,A1)
【文献】特表2002-512839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
A61B 17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸上のスルーホールと、前記第1軸上のスルーホールと整列したコレット凹所と、前記第1軸に対して横方向の第2軸を有するロッド受けスロットとを画成するロッド受け部材であって、前記第2軸は前記第1軸から離間している、ロッド受け部材と、
前記ロッド受け部材のコレット凹所に挿入可能で、開口と、前記開口と整列したプラグ凹所と、壁部とを画成するコレットであって、前記壁部及び前記ロッド受けスロットが、その間にロッド据え付け領域を共に画成し、前記ロッド据え付け領域はそこに脊椎ロッドを選択的に固定するよう構成される部分円形断面を有する内面を画成し、前記コレットのプラグ凹所が第1直径と第2のより大きな直径との間で変移可能であり、前記プラグ凹所が前記第1直径を成すとき前記ロッド据え付け領域は第3直径を画成し、前記プラグ凹所が前記第2のより大きな直径を成すとき前記ロッド据え付け領域は第4直径を画成し、前記ロッド据え付け領域の前記第4直径は前記ロッド据え付け領域の前記第3直径より小さい、コレットと、
前記コレットのプラグ凹所内に挿入可能で、プラグが外れているとき、前記プラグ凹所が前記第1直径を成し、前記プラグが挿入されているとき、前記プラグ凹所が前記第2のより大きな直径を成すように、前記第1直径と前記第2のより大きな直径との間で前記プラグ凹所を変移するよう構成されるプラグと、
ヘッド部と、前記ロッド受け部材のスルーホール及び前記コレットの開口の中に挿入可能なねじ部とを含むボーンスクリューと、
を備える脊椎安定化装置。
【請求項2】
前記ボーンスクリューのヘッド部が、前記ロッド受け部材のスルーホールを画成する内面と係合するよう構成される、請求項1に記載の脊椎安定化装置。
【請求項3】
前記ボーンスクリューのヘッド部が、前記ボーンスクリューがそこに固定されるように、前記ロッド受け部材のスルーホールを画成する内面を変形させるよう構成される、請求項1に記載の脊椎安定化装置。
【請求項4】
前記コレットが鍵形体を含み、前記プラグが対応する鍵形体を含み、それにより前記コレット及び前記プラグが整列する、請求項1に記載の脊椎安定化装置。
【請求項5】
前記コレットが、前記ボーンスクリューのヘッド部と係合し、前記コレットに対し前記ヘッド部の近位への平行移動を抑制するよう構成され、前記コレットの内面に配される保持形体を含む、請求項1に記載の脊椎安定化装置。
【請求項6】
前記ボーンスクリューが、平坦な遠位先端をさらに含む、請求項1に記載の脊椎安定化装置。
【請求項7】
前記コレットが、前記第1直径と前記第2のより大きな直径との間の変移を容易にするよう構成される、その一部に沿った円周切り欠きを含む、請求項1に記載の脊椎安定化装置。
【請求項8】
前記プラグ及び前記コレットのプラグ凹所が、前記第2のより大きな直径において、前記プラグの上面が前記コレットの上面と面一となるように構成される、請求項1に記載の脊椎安定化装置。
【請求項9】
前記ロッド受け部材の遠位面に配され、骨を貫通するように適合させたボーンスパイクをさらに含む、請求項1に記載の脊椎安定化装置。
【請求項10】
前記ロッド受け部材の遠位面の少なくとも一部が、アーチ形である、請求項1に記載の脊椎安定化装置。
【請求項11】
前記ロッド受け部材、前記コレット、又は前記プラグのうち少なくとも1つが、少なくとも1つの丸みを帯びた縁を含む、請求項1に記載の脊椎安定化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年4月7日に出願された米国特許仮出願第62/144,289号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、身体の骨及び関節を安定化及び固定するための整形外科システム、より詳細には、脊椎安定化装置、システム、及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
脊柱は、ヒトの身体の支持、及び脊髄及び脊髄神経の保護を提供する骨及び接続組織の複雑なシステムである。ヒト脊椎は、生まれた時には33個の椎骨、成人で24個の椎骨からなる。椎骨の各対の間は椎間板であり、隣接する椎骨間の空間を維持し、圧迫、屈曲、及び回転による負荷及び動きの緩衝材として作用する。
【0004】
脊柱が生涯で経験するかもしれない障害、疾患、及び損傷の種類は、様々ある。問題としては、脊柱側彎症、脊柱後彎症、過度な脊柱前彎症、脊椎すべり症、椎間板ヘルニア又はぎっくり腰、変性椎間板疾患、椎体骨折、及び腫瘍を含み得るがこれらに限定されない。上記症状のうちいずれかを患う人は、大抵、極度又は衰弱させる痛みを感じ、神経機能が衰えることもある。これらの状態及びこれらの治療は、患者が骨粗鬆症又は骨組織の菲薄化及び骨密度の減損を患っている場合、さらに複雑になることがある。ヒトの身体の脊柱における隣接する椎骨の終板間の脊椎円板は、重大な支持を提供する。しかし、損傷、変性、又は疾患などにより、円板がその支持機能の少なくとも一部を失うと、隣接する椎骨間の椎間腔がつぶれる程度まで、破裂する、変性する、及び/又は突出することがある。これにより、神経根の衝突及び激痛を生じることがある。
【0005】
先に言及した状態のうちいずれかのより一般的な解決策の1つは、脊椎固定術としても知られる外科的処置を伴う。脊椎固定術の処置は、椎間版又は椎間関節での動きを安定化又は取り除くため、2つ以上の椎体を癒合させることを伴う。これを達成するため、椎間板の一部又は全体のいずれかを、スペーサーと共に移植骨又は人工骨に代え、埋め込み可能な機械式ハードウェアにより安定化される骨の強固な支柱を形成する。
【0006】
脊柱を不動化するのに使用される機械式ハードウェアは、大抵、一揃いのボーンスクリュー、骨アンカー、金属ロッド、プレート、又はその組み合わせを伴う。後方から脊椎手術を行うときは、順次、ボーンスクリュー/アンカーを椎体内に据え、その後、隣接する椎体間に金属ロッドを接続させることが一般的なやり方である。前方から脊椎手術を行うときは、薄い金属プレートを直接椎体に取り付け、1つ以上のボーンスクリューを使用して、各椎体レベルにこの金属プレートを据え付けることが一般的なやり方である。
【0007】
しかし、脊椎全体の矯正手術の場合、骨接ぎ術を行うため、依然として、著しい量の器具類を必要とする場合がある。したがって、容易で、迅速な埋め込み、患者の長期にわたる健康への潜在的なリスクの軽減を提供し、使用中固定されたままに所望の脊椎支持を提供し、埋め込み後に低背を維持する、脊椎安定化システム、装置、及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、ロッド受け部材と、コレットと、プラグと、ボーンスクリューとを含む脊椎安定化装置に関する。ロッド受け部材は、スルーホールと、スルーホールと整列するコレット凹所と、スルーホールからずれたロッド受けスロットとを画成する。コレットは、ロッド受け部材のコレット凹所に挿入可能である。コレットは、開口と、開口と整列するプラグ凹所と、壁部とを画成する。壁部及びロッド受けスロットは、ロッド受けスロットは、そこに脊椎ロッドを選択的に固定するよう構成されるロッド据え付け領域を共に画成する。コレットは、ロッド据え付け領域によって画成される第1直径と、ロッド据え付け領域によって画成される第2の、より大きな直径との間で変移可能である。プラグは、コレットのプラグ凹所内に挿入可能であり、コレットを第1及び第2直径間で変移させるよう構成される。プラグが外れているとき、コレットは第1直径を成し、プラグが挿入されているとき、コレットは第2直径を成す。ボーンスクリューは、ヘッド部と、ねじ部とを含む。ねじ部は、ロッド受け部材のスルーホール及びコレットの開口の中に挿入可能である。
【0009】
別の態様において、ロッド受けスロットが定める軸は、スルーホールが定める軸に対して横方向であり得る。
【0010】
さらなる態様において、ボーンスクリューのねじ部は、ロッド受け部材のスルーホールを画成する内面を係合するよう構成され得る。
【0011】
一態様において、ボーンスクリューのヘッド部は、ボーンスクリューがそこに固定されるように、ロッド受け部材のスルーホールを画成する内面を変形させるよう構成され得る。
【0012】
また別の態様において、それによりコレット及びプラグが整列するように、コレットは、鍵形体を含み得、プラグは、対応する鍵形体を含み得る。
【0013】
別の態様において、コレットは、その内面に配される保持形体を含み得る。保持形体は、ボーンスクリューのヘッド部を係合し、コレットに対しその近位への平行移動を抑制するよう構成され得る。
【0014】
またさらなる態様において、ボーンスクリューは、平坦な遠位先端をさらに含み得る。
【0015】
一態様において、コレットは、その一部に沿った円周切り欠きを含み得る。切り欠きは、第1及び第2直径間の変移を容易にするよう構成され得る。
【0016】
別の態様において、プラグ及びコレットのプラグ凹所は、第2直径において、プラグの上面がコレットの上面と面一となるように構成され得る。
【0017】
さらなる態様において、脊椎安定化装置は、ロッド受け部材の遠位面に配され、骨を貫通するように適合させたボーンスパイクをさらに含み得る。
【0018】
また別の態様において、ロッド受け部材の遠位面の少なくとも一部は、アーチ形であり得る。
【0019】
別の態様において、ロッド受け部材、コレット、又はプラグのうち少なくとも1つは、少なくとも1つの丸みを帯びた縁を含み得る。
【0020】
本開示の別の実施形態において、脊椎を安定化する方法は、第1ボーンスクリューのヘッド部を、第1ロッド受け部材のスルーホールの内面と係合させ、それにより、第1ボーンスクリューと第1ロッド受け部材とを連結させることを含む。方法は、第1ボーンスクリューのねじ部を第1椎骨に入れ込むことを含む。方法は、脊椎ロッドの一部を第1ロッド据え付け領域に挿入することをさらに含む。第1ロッド据え付け領域は、第1受け部材のロッド受けスロットと、第1コレットの壁部とにより画成される。第1コレットは、第1直径を画成し、第1ロッド据え付け領域は、第1直径を画成する。方法は、第1コレットが第2の、より大きな直径に向けて変移し、第1ロッド据え付け領域が第2の、より小さな直径に向けて変移するように、第1コレットのプラグ凹所内に、第1コレットに対して遠位に、第1プラグを漸進的に入れ込むことをも含む。
【0021】
一態様において、方法は、第2ボーンスクリューのねじ部を、第2ロッド受け部材のスルーホールの内面と係合させることを含み得る。方法は、第2ボーンスクリューのねじ部を第2椎骨に入れ込むことをも含み得る。方法は、脊椎ロッドの一部を、第2受け部材のロッド受けスロットと第2コレットの壁部とにより画成される第2ロッド据え付け領域に挿入することをも含み得る。第2コレットは、第1直径を画成し得、第2ロッド据え付け領域は、第1直径を画成し得る。方法は、第2コレットが第2の、より大きな直径に向けて変移し、第2ロッド据え付け領域が第2の、より小さな直径に向けて変移するように、第2コレットのプラグ凹所内へ、第2コレットに対して遠位に、第2プラグを漸進的に入れ込むことをさらに含み得る。
【0022】
さらなる態様において、第1プラグ又は第2プラグを漸進的に入れ込むことは、同時か順次かのいずれかで、第1プラグ又は第2プラグを漸進的に入れ込むことをさらに含み得る。
【0023】
また別の態様において、方法は、第1コレットが第2の、より大きな直径を画成し、第1ロッド据え付け領域が第2の、より小さな直径を画成し、第1プラグの上面が第1コレットの上面と面一となるように、第1プラグを遠位に完全に入れ込むことをさらに含む。
【0024】
別の態様において、第1ボーンスクリュー及び第1ロッド受け部材を係合することは、第1ロッド受け部材のスルーホールを画成する内面を変形させることをさらに含み得る。
【0025】
別の態様において、第1プラグを漸進的に入れ込むことは、第1プラグ及び第1コレットのプラグ凹所のそれぞれで画成される鍵形体を介して、第1プラグ及び第1コレットをかみ合わせることをさらに含み得る。
【0026】
一態様において、方法は、第1ボーンスクリューのヘッド部と、第1コレットの内面に配される保持形体との間の係合を介する、第1コレットに対する第1ボーンスクリューの近位への平行移動を抑制することを含み得る。
【0027】
本開示の上記及び他の態様並びに特徴は、添付の図面と併せて、以下の発明を実施するための形態に照らし合わせれば、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本開示に係る脊椎安定化システムの実施形態の、部品を分けた正面斜視図である。
図2】部品を組み立てた、図1の脊椎安定化システムの正面斜視図である。
図3図2の脊椎安定化システムの側面図である。
図4A】ロック解除配置の、図2の脊椎安定化システムの上面図である。
図4B図4Aの断面線4B-4Bに沿って得た断面図である。
図5A】ロック配置の、図2の脊椎安定化システムの上面図である。
図5B図5Aの断面線に沿って得た断面図である。
図6図1の脊椎安定化システムを使用する構築物の上面図である。
図7図1の脊椎安定化装置と共に使用可能なロック器具の側面図である。
図8図1の脊椎安定化装置と共に使用可能なロック解除器具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、図面を参照して本開示の実施形態を詳説する。図面中、同じ参照符号は、いくつかの図のそれぞれで、同一又は対応する要素を意味する。当該技術分野で理解されているとおり、用語「治療者」は、医師、看護師、又は他の医療供給者を指し、支援要員を含んでもよい。用語「近位の」は、治療者に近い機器の部分又はその構成要素を指し、用語「遠位の」は、治療者から遠い機器の部分又はその構成要素を指す。
【0030】
図1図3を参照すると、脊椎安定化装置1は、ロッド受け部材100と、コレット200と、プラグ300と、ボーンスクリュー400とを含む。通常、ロッド受け部材100は、ボーンスクリュー400を介して骨に据え付けられ得る。さらに、脊椎安定化装置1がロック配置とロック解除配置との間で変移可能であることで、脊椎安定化装置1がロック配置をとるとき脊椎ロッド500はロッド受け部材100に据え付けられる。脊椎安定化システム10が、結果的に複数の隣接する椎体「VB」にわたりまたがる構築物を形成するように(図6)、脊椎安定化システム10は、複数の脊椎安定化装置1(すなわち、複数のロッド受け部材100、複数のコレット200、複数のプラグ300、及び複数のボーンスクリュー400)を含み得る。脊椎安定化装置1は、そこに固定される正常な解剖学的構造から伸長する高さが約6mm~約7mmの、低背(すなわち、椎体「VB」から離れる方向へ伸長する、ロッド受け部材100、コレット200、プラグ300、及び脊椎ロッド500を組み合わせた外形)を画成する。脊椎安定化装置1が低背であることにより、外科医が容易に手術部位を塞ぐことが可能となり、患者の痛みが軽減され、周囲の組織、筋肉、及び臓器の刺激及び損傷が最小化される。加えて、ロッド受け部材100、コレット200、プラグ300、ボーンスクリュー400、又は脊椎ロッド500のうち少なくとも1つは、少なくとも1つの平滑又は丸みを帯びた縁及び/又は角を画成し得、患者並びに周囲組織、筋肉、及び臓器の術後の痛み、刺激、又は損傷を軽減しつつ、手術部位を塞ぐ外科医の技能をさらに容易にし得る。
【0031】
ロッド受け部材100は、スルーホール110と、スルーホール110と整列してつながるコレット凹所120と、スルーホールから横にずれたロッド受けスロット130とを画成する。スルーホール110は、そこを通るボーンスクリュー400の軸440を受けるよう構成され、このとき、スルーホール110を画成する内面112は、後述するとおり、ボーンスクリュー400のヘッド部410を係合する。コレット凹所120は、そこにコレット200を摺動可能に受けるよう構成される。長手方向の軸「S」は、ロッド受けスロット130により定められ、スルーホール110が定める軸「X」に対して横方向であり得る。そのような構成が、ロッド受け部材100の断面低背化を促し、そのため、脊椎安定化装置1の外形が小さくなることを理解すべきである。またさらに、ロッド受け部材100のロッド受けスロット130及びスルーホール110を一体として構築することにより、後に説明するとおり、脊椎安定化システム10内で多機能を有する単一で目立たない装置が提供される。
【0032】
ロッド受け部材100が、その遠位面182から伸長する1つ以上のボーンスパイク180を含み得ることがさらに想定される(図3)。加えて、遠位面182は、ロッド受け部材100が椎体「VB」と面一に接して置かれるように(図6)、アーチ形の表面をさらに画成し得る。ボーンスパイク180は、最初にロッド受け部材100が椎体「VB」に対して配置されて固定されるように、椎体「VB」を貫通するように適合される。ロッド受け部材100が所望の場所に配置されると、ボーンスパイク180は、ロッド受け部材100が脊椎安定化装置10の構築中、捻回、摺動、又は他の動作に抵抗するよう、椎体「VB」の中に入れ込まれる。
【0033】
コレット200は、開口210と、開口210と整列してつながるプラグ凹所220と、プラグ凹所220に対して外側面232に配される壁部230とを画成する。プラグ凹所220は、後述するとおり、プラグ300を摺動可能に受けるよう構成される。開口210は、第1直径(図4B)と、第1直径より大きな第2直径(図5B)との間を変移するよう構成される。開口210が第1直径と第2直径との間を変移する結果、壁部230が開口210が定める軸「C」に対して、径方向に平行移動する。さらに、開口210は、第1又は第2直径のうち1つに偏るよう構成され得る。コレット200は、その一部に沿った、少なくとも1つの円周切り欠き240をさらに含み得、それによって第1直径「D1」から第2の、より大きな直径「D2」へのコレット200の径方向の拡大が容易になる。またさらに、コレット200は、プラグ凹所220を画成する内面222に沿って径方向に配される保持形体250を含み得る(図1図4B、及び図5B)。保持形体250は、後述するとおり、コレット200に対して、ボーンスクリュー400の近位への平行移動を抑制するよう構成される。
【0034】
プラグ300は、そこを通るドライバ具(不図示)を受けるよう構成されるスルーホール310と、ドライバ具(図7及び図8)が係合するよう構成されるヘッド320とを画成する。プラグ300は、ヘッド320を介し、コレット200に対して、遠位へ挿入されて入れ込まれるよう構成される。ヘッド320は、ヘッド320を直線的に入れ込むために機械的利点を提供するよう、当該技術分野で既知の幾つものドライバ具を共に係合するよう構成され得る。プラグ300は、プラグ300がその挿入及び遠位入れ込みの間コレット200と整列するように、コレット200の対応する鍵形体260を係合するよう構成される鍵形体330をさらに含む。
【0035】
ボーンスクリュー400は、ドライバ具(不図示)とかみ合うよう構成されるヘッド部410と、軸440の外面に配され、その長さに沿って伸長するねじ部420とを含む。ボーンスクリュー400は、椎体「VB」に固定されるよう構成される(図6)。ヘッド部410は、そのトルク駆動回転がもたらされるよう当技術分野で既知の幾つものドライバ具を共に係合するよう構成され得る。ボーンスクリュー400の遠位端430は、埋め込み時の患者への外傷を低減するよう構成される。遠位端430は、実質的に平坦で先細でない外形、丸みを帯びた又は鋭利でない外形、若しくはアーチ形表面を画成し得る。あるいは、遠位端430は、そこに切削溝がある又は切削溝がない先細先端を画成し得る。より詳細には、先端430は、大凡0.125インチ~大凡0.2インチの間の端半径を有する鋭利でない先端を画成し得ることが想定される。あるいは、遠位端430は、大凡30度の先細先端を画成し得る。
【0036】
先に記したとおり、脊椎ロッド500は、ロッド受け部材100に据え付け可能である。より詳細には、ロッド受け部材100のロッド受けスロット130及びコレット200の壁部230は、以下でさらに述べるとおり、そこに脊椎ロッド500を受けて、据え付けるよう構成されるロッド据え付け領域600を共に画成する(図3図5B)。脊椎ロッド500は、直径が約3mmと約8mmとの間であり得ることが想定される。さらに、脊椎ロッド500の直径、形状、及び材料は、外科的処置の要件及び脊椎ロッド500の所望な機械的特性、例えば、剛性、曲げ弾性、曲げ強さ、可塑性、降伏強さなどに基づき選出され得る。
【0037】
ボーンスクリュー400は、ボーンスクリュー400のねじ部420の一部がスルーホール110を画成する内面112を係合するように、ロッド受け部材100のスルーホール110内に配置可能である(図1図4B、及び図5B)。ヘッド部410は、ボーンスクリュー400とロッド受け部材100とがそれにより連結されるように、内面112の対応するねじを係合してもよく、内面112を変形させてもよいと想定される。コレット200は、ロッド受け部材100のコレット凹所120内に挿入可能であり、このとき、壁部230は、ロッド据え付け領域600の一部を形成する(図3)。さらに、コレット200は、コレット200の上面205がロッド受け部材100の上面105と面一に配置され得るように、コレット凹所120内に完全に配されるよう構成され、脊椎安定化装置1の低背化がさらに促進される(図4B及び図5B)。特に、ロッド受け部材の上面105、コレット200の上面205、プラグ300の上面305、ロッド受けスロット130の上面115は、同一平面上にあり、面「X」に存在する(図5B)。後述するとおり、コレット200は、ロッド据え付け領域600の直径に影響を及ぼす。プラグ300が、コレット200のプラグ凹所220内に挿入可能であり、コレット200に対して遠位へ入れ込まれ得ることで、プラグ300の鍵形体320は、コレット200の鍵形体260を共に係合し、その挿入、整列、入れ込みが容易になる。
【0038】
少なくとも1つのピン140は、ロッド受け部材100、コレット200、及びプラグ300を連結する。より詳細には、ピン140は、ロッド受け部材100のピンスロット142、コレット200のピン穴242、及びプラグ300のピンスロット342内に挿入可能である。後述するとおり、コレット200に対しプラグ300の遠位入れ込みの間、コレット200は、第1直径「D1」から第2直径「D2」に変移し、ピン140は、軸「X」に対して横方向である軸に沿ってピンスロット142内に摺動し、軸「X」と平行で横にずれた軸に沿ってピンスロット342内に摺動する。埋め込みの際に、ドライバ具の一部がボーンスクリュー400のヘッド部410と係合し、そのトルク駆動回転をもたらすように、ドライバ具(不図示)がプラグ300のスルーホール310及びコレット200の開口210の中を通過し得ることを理解すべきである。
【0039】
図4A図5Bを参照すると、プラグ300がコレット200のプラグ凹所220に挿入され、そこに対し遠位へ入れ込まれると、コレット200の直径は、第1直径「D1」(図4A及び図4B)から、第2の、より大きな直径「D2」(図5A及び図5B)に変移する。コレット200が第1直径「D1」から第2の、より大きな直径「D2」に変移すると、壁部230は、開口210が定める軸「C」に対して径方向外側に平行移動する。壁部230が径方向外側に平行移動すると、壁部230及びロッド受けスロット130により画成されるロッド据え付け領域600の直径は、第1直径「d1」から第2の、より小さな直径「d2」に変移する。認識され得るように、脊椎ロッド500がロッド据え付け領域600内に配された状態、より詳細には、壁部230とロッド受けスロット130との間に配された状態にあると、壁部230は、脊椎ロッド500の外面510に圧縮力を与える。そのため、脊椎ロッド500は、ロッド受け部材100に対する脊椎ロッド500の線形平行移動及び軸回転がそれにより抑制されるように、ロッド受けスロット130内に据え付けられる。
【0040】
より詳細には、コレット200が第1直径「D1」を画成し、ロッド据え付け領域600が第1の直径「d1」を画成した状態にあると、脊椎ロッド500は、それにより、ロッド受け部材100への据え付けを外され、そのため、脊椎安定化装置1は、ロック解除配置をとる(図4A及び図4B)。反対に、コレット200が第2の、より大きな直径「D2」を画成し、ロッド据え付け領域600が第2の、より小さな直径「d2」を画成した状態にあると、脊椎ロッド500は、それにより、ロッド受け部材100へ据え付けられ、そのため、脊椎安定化装置1は、ロック配置をとる(図5A及び図5B)。ロック配置において、プラグ300は、プラグ300の上面がコレット200の上面205と面一となるように、プラグ凹所220内に完全に配されるよう構成され、脊椎安定化装置1の低背化をさらに促進する(図5B)。認識され得るように、ロック配置において、プラグ300及びコレット200は、実質的にロッド受け部材100が定める面「X」内に配される(図5B)。
【0041】
プラグ300が、プラグ凹所220に漸進的に入れ込まれ得る、又は前進し得ることがさらに想定される。コレット200に対するプラグ300の遠位への漸進的遠位前進によって、コレット200の直径は、脊椎ロッド500に圧縮力が徐々に加えられるように、第1直径「D1」から第2の、より大きな直径「D2」に向けて漸進的に拡大する。結果、脊椎ロッド500は、ロッド据え付け領域600内に、最初のうち又は緩く据え付けられ得ることから、脊椎ロッド500及び脊椎安定化装置1の調整及び再整列が可能となる。そして、プラグ300は、コレット200に対して、遠位に完全に入れ込まれ、前進することができ、脊椎ロッド500がロッド据え付け領域600内に完全に据え付けられる。
【0042】
図1図6を参照すると、脊椎安定化装置1を使用して脊椎を安定化する方法において、治療者は、最初に、患者の脊椎を撮像しつつ、患者の頭及び足を引っ張ることにより、患者の脊椎を伸ばし得る。これにより、治療者が容易に矯正することができる脊椎の分節を見て、椎間板切除又は脊椎修復を行う必要がある分節を正確に指摘することが可能となる。これにより、治療者は、より少ない脊椎の分節を手術することが可能となり、そのため、患者の罹患率を減らすことができる。これら少数の分節が、骨接ぎ構築物で共にかみ合い、椎体「VB」の一側方にプレート部材を癒合及び挿入することを可能にし、脊椎の安定化を助ける。通常、椎間板切除術が完了した後に、脊椎安定化構築物を組み立てる。
【0043】
治療者には、ロッド受け部材100と、コレット200と、プラグ300と、ボーンスクリュー400と、脊椎ロッド500とが提供される。本明細書で述べるとおり、治療者には、部品が分かれた状態又は部品が組み立てられた状態で、ロッド受け部材100と、コレット200と、プラグ300とが提供されてもよい。最初に、治療者は、入れ込み機を使用することにより、予め穴をあける及び/又はボーンスクリュー400を直接埋め込んで、椎体「VB」にボーンスクリュー400のねじ部420を据え付けてもよい。ボーンスクリュー400は、プラグ300のスルーホール310、コレット200の開口210、及びロッド受け部材100のスルーホール110内に配置され、ヘッド部410が椎体「VB」の上の近位に配されるように、骨に埋め込まれる。次に、ロッド受け部材100の遠位面182が、椎体「VB」に隣接して配置される。ボーンスパイク180を含む実施形態において、ボーンスパイク180を椎体「VB」に接触させて、そこに固定する。ボーンスパイク180を椎体「VB」に入れ込むため、当該技術分野で公知の適切な入れ込み機(例えば、ハンマー、木槌など)を使用してもよいと考えられる。ロッド受け部材100及びボーンスクリュー400が椎体「VB」に固定されると、必要に応じて、所望な骨と骨との接触を得るため、この時点で圧迫を行ってもよく、同種移植片、自家移植片、又は当該技術分野で公知の他の癒合促進物質を空隙に充填してもよい。
【0044】
最初、脊椎ロッド500は、特定の処置の必要に応じて、治療者により整列され、調整され得る。次に、脊椎ロッド500を、ロッド据え付け領域600に挿入する。脊椎安定化装置がロック解除位置にある状態で、脊椎ロッド500は、ロッド据え付け領域600内に配置され、必要に応じて治療者によりさらに調整又は整列され得る。コレット200に対する、プラグ300の遠位への漸進的な入れ込み及び前進を通して、脊椎ロッド500は、ロッド据え付け領域600内に徐々に据え付けられ、必要に応じて治療者により漸進的に調整又は整列され得る。脊椎ロッド500への最終調整が完了すると、プラグ300は、プラグ300の上面305がコレット200の上面205と面一となるように、遠位に入れ込まれ、プラグ凹所220内に完全に前進し、それによりロッド据え付け領域600内に脊椎ロッド500を完全に据え付ける。それぞれが異なる直径、形状、及び/又は材料を有する様々な脊椎ロッド500が提供され得ることが想定される。
【0045】
本開示の別の実施形態に従い、治療者は、先に説明した方法を行って、脊椎安定化システム10を形成する、すなわち、複数の脊椎安定化装置1を利用する構築物(図6)を形成し得る。治療者には、それぞれのボーンスクリュー400が隣接する椎体「VB」に順次埋め込まれる複数の脊椎安定化装置1が提供される。脊椎装置1が各々ロック解除位置にある状態で、脊椎ロッド500は、脊椎ロッド500が多数の椎体「VB」にまたがるように、容易に調整され整列され得る。さらに、個々の脊椎安定化装置1が徐々にロックされて、脊椎ロッド500が、各脊椎安定化装置1内に漸進的に据え付けられ得る。
【0046】
本明細書に開示される方法に加えて、治療者に、様々な寸法測定値及び材料特性を維持する複数の脊椎安定化装置1及び脊椎ロッド500を提供してもよい。より詳細には、各ロッド受け部材100、各コレット200、各プラグ300、各ボーンスクリュー400、各脊椎ロッド500、又はその組み合わせは、治療者が所望の脊椎安定化装置1及び共に使用するのに適合した適切な脊椎ロッド500、又はその逆のものを選択し得るように、特定の寸法サイズ又は材料特性を画成し得ると想定される。例えば、治療者は、所定の処置に関して予め具体的に定められたその長さ、直径、又は強度に基づき、脊椎ロッド500を選出し、続いて、選出した脊椎ロッド500用に対応するロッド据え付け領域600を有する対応する脊椎安定化装置1を選出し得る。
【0047】
本開示に従い、図1図6を参照し、キットを説明する。キットは、ロッド受け部材100と、コレット200と、プラグ300と、ボーンスクリュー400とを有する脊椎安定化装置1を含む。キットは、脊椎ロッド500をさらに含み得る。加えて、キットは、脊椎安定化システム10が構築され得るように、複数の脊椎安定化装置1及び/又は脊椎ロッド500を含み得る。さらに、キットは、様々な直径、形状、及び/又は材料が与えられた複数の脊椎安定化装置1及び/又は脊椎ロッド500を含み得る。
【0048】
図1及び図7を参照すると、脊椎安定化装置1は、ロック装置700を共に係合するよう構成される。ロック装置700は、ロッド受け部材100の外側面107に配される少なくとも1つの凹所108を係合するよう構成される少なくとも1つのフィンガー710を含む。複数の凹所108が、スルーホール110が定める軸「X」を中心に径方向に配され得ることが想定される。ロック装置700は、プラグ300のヘッド320を係合するよう構成されるドライバピン720と、その本体部分740に対し、ピン720を遠位に入れ込むよう構成される作動可能な入れ込み機構730とをさらに含む。認識されうるように、入れ込み機構730が作動し、ドライバピン720が遠位に入れ込まれると、プラグ300は、コレット200に対し遠位に入れ込まれ、そのため、脊椎安定化装置1がロック配置へと変移する。
【0049】
図1及び図8を参照すると、脊椎安定化装置1は、ロック解除装置800を共に係合するよう構成される。ロック解除装置800は、ドライバピン820の遠位端に配される捕捉要素810を含む。捕捉要素810は、プラグ300のヘッド320を係合し、そこに固定して据え付けるよう構成される。作動可能な入れ込み機構830は、その本体部分840に対して、ドライバピン820を近位に引くよう構成される。認識されうるように、入れ込み機構830が作動し、ドライバピン820を近位へ引くと、プラグ300は、コレットに対し、近位へ引かれ、そのため、脊椎安定化装置1がロック解除位置に変移する。
【0050】
本開示のいくつかの実施形態が図面に示されているが、本開示は、当該技術で許可される範囲の広さであり、明細書もそのように読み取られることを意図していることから、本開示はそれらに限定されないと意図される。したがって、上記説明は、限定ではなく、単に本開示の実施形態の例示として解釈されるべきである。そのため、実施形態の範囲は、与えられた実施例ではなく、本願の特許請求の範囲及びその法的な等価物により決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8