(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】共重合体ポリオールを含むポリウレタン繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 6/70 20060101AFI20220228BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20220228BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20220228BHJP
C08G 18/66 20060101ALI20220228BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20220228BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20220228BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20220228BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20220228BHJP
D03D 15/56 20210101ALI20220228BHJP
D04B 1/18 20060101ALI20220228BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
D01F6/70 Z
C08G18/10
C08G18/48 058
C08G18/66 066
C08G18/32 025
C08G18/32 028
C08G18/44
C08G18/42
C08G18/48 004
C08G18/40 018
C08G18/40 009
D03D15/56
D04B1/18
C08G18/48 054
A61F13/49 319
(21)【出願番号】P 2017567634
(86)(22)【出願日】2016-06-29
(86)【国際出願番号】 US2016040026
(87)【国際公開番号】W WO2017004162
(87)【国際公開日】2017-01-05
【審査請求日】2019-06-14
(32)【優先日】2015-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】317013603
【氏名又は名称】インヴィスタ テキスタイルズ(ユー.ケー.)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ホン
(72)【発明者】
【氏名】ビヴィゴー-クンバ,アキーレ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ダルーラ,ノーマン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リャオ,ティエンイー
(72)【発明者】
【氏名】ブラブ,アンドレアス ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ビン-ウォ,ロナルド ディー.
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-071852(JP,A)
【文献】特表平08-508552(JP,A)
【文献】特開平11-131324(JP,A)
【文献】特表2009-516770(JP,A)
【文献】特表2009-516768(JP,A)
【文献】特表2001-505596(JP,A)
【文献】特開昭53-039396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00- 6/96
C08G 18/00-18/87
D03D 15/56
D04B 1/18
A61F 13/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量1300~1500を有する、テトラヒドロフラン及び3-メチルテトラヒドロフランの共重合体を含むポリオール(i)とジイソシアネート(ii)との反応生成物を含むプレポリマー(a)と、
鎖延長剤(b)
との反応生成物であるポリウレタンウレアを含む弾性繊維であって、
前記プレポリマーは2.6~3.6の%NCOを有し、
回復パワー(TM2)を、ASTM D 2731-72の一般的な方法にしたがって測定し、熱硬化試験を、ヤーン糸を1.5倍に延伸し、190℃の熱風で120秒間にわたって熱硬化させ、続いて30分間にわたって緩和ボイルオフすることで行ったときに、熱硬化試験後の前記弾性繊維の回復パワー(TM2)の変化率が
28.8%未満である、弾性繊維。
【請求項2】
前記プレポリマーは2.8~3.6の%NCOを有する、請求項1に記載の弾性繊維。
【請求項3】
前記プレポリマーは2.8~3.2の%NCOを有する、請求項1に記載の弾性繊維。
【請求項4】
前記鎖延長剤はジアミン系鎖延長剤である、請求項1に記載の弾性繊維。
【請求項5】
前記鎖延長剤は線状ジアミン系鎖延長剤だけから成る、請求項1に記載の弾性繊維。
【請求項6】
前記鎖延長剤はエチレンジアミンだけから成る、請求項1に記載の弾性繊維。
【請求項7】
前記ポリオールはテトラヒドロフラン及び3-メチルテトラヒドロフランの前記共重合体だけ又は前記共重合体と別のポリオールとの組み合わせを含む、請求項1に記載の弾性繊維。
【請求項8】
前記別のポリオールは1種の追加ポリオール又は、ポリカーボネートグリコール、ポリエステルグリコール、ポリエーテルグリコール及びこれらの組み合わせから成る群から選択されるポリオールのブレンド物である、請求項7に記載の弾性繊維。
【請求項9】
前記ポリオールは、50~100%のテトラヒドロフラン及び3-メチルテトラヒドロフランの前記共重合体を含む、請求項1に記載の弾性繊維。
【請求項10】
テトラヒドロフラン及び3-メチルテトラヒドロフランの前記共重合体は5~75モル%の3-メチルテトラヒドロフランを含む、請求項1に記載の弾性繊維。
【請求項11】
数平均分子量1300~1500を有する、テトラヒドロフラン及び3-メチルテトラヒドロフランの共重合体を含むポリオール(i)とジイソシアネート(ii)との反応生成物を含むプレポリマー(a)と、
鎖延長剤(b)との
反応生成物であるポリウレタンウレアを含む弾性繊維を含む生地であって、
前記プレポリマーは2.6~3.6の%NCOを有し、
回復パワー(TM2)を、ASTM D 2731-72の一般的な方法にしたがって測定し、熱硬化試験を、ヤーン糸を1.5倍に延伸し、190℃の熱風で120秒間にわたって熱硬化させ、続いて30分間にわたって緩和ボイルオフすることで行ったときに、熱硬化試験後の前記弾性繊維の回復パワー(TM2)の変化率が
28.8%未満である、生地。
【請求項12】
前記生地は熱処理後もパワーを保持する、請求項11に記載の生地。
【請求項13】
前記生地は編み又は織り構造を備える、請求項11に記載の生地。
【請求項14】
数平均分子量1300~1500を有する、テトラヒドロフラン及び3-メチルテトラヒドロフランの共重合体を含むポリオール(i)とジイソシアネート(ii)との反応生成物を含むプレポリマー(a)と、
鎖延長剤(b)との
反応生成物であるポリウレタンウレアを含む弾性繊維を含む衛生用品であって、
前記プレポリマーは2.6~3.6の%NCOを有し、
回復パワー(TM2)を、ASTM D 2731-72の一般的な方法にしたがって測定し、熱硬化試験を、ヤーン糸を1.5倍に延伸し、190℃の熱風で120秒間にわたって熱硬化させ、続いて30分間にわたって緩和ボイルオフすることで行ったときに、熱硬化試験後の前記弾性繊維の回復パワー(TM2)の変化率が
28.8%未満である、衛生用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
数平均分子量1000~2000を有する、テトラヒドロフラン及び3-メチルテトラヒドロフランの共重合体を含むポリオール(i)と、ジイソシアネート(ii)と、鎖延長剤(c)との反応生成物を含むプレポリマーから作製する弾性繊維を含む。
【背景技術】
【0002】
共重合体ポリオール由来の、ポリウレタンウレア溶液から紡糸したスパンデックス繊維が知られている。例えば、Lawreyらの米国特許出願公開第2006/0135724(A1)号は、PTMEG共重合体を含み得るポリオールブレンド物由来であり且つジアミン系鎖延長剤ブレンド物を含むスパンデックス繊維を開示している。この繊維からは、好適な熱硬化効率を有する生地が得られる。
【発明の概要】
【0003】
関連技術とは対照的に、本発明の繊維は、熱処理後もその収縮力を維持する点で耐久性がある。加えて、本発明の繊維は、同じデニールの市販のスパンデックスより高い収縮力を有する。本発明の繊維は、数平均分子量1000~2000を有する、テトラヒドロフラン及び3-メチルテトラヒドロフランの共重合体を含むポリオール(i)とジイソシアネート(ii)との反応生成物を含むプレポリマー(a)と鎖延長剤(b)との反応生成物であるポリウレタンウレアを含む。テトラヒドロフラン及び3-メチルテトラヒドロフランの共重合体は任意の適切な数平均分子量(MW)、例えば1200~1800を有し得る。他の適切なMWは1300~1500になり得る。
【0004】
本発明のある態様において、このプレポリマーは、2.6~3.6、好ましくは2.8~3.2の%NCOを有する。
【0005】
本発明の別の態様において、鎖延長剤はジアミン系鎖延長剤、例えば線状ジアミン系鎖延長剤である。本発明のさらに別の態様において、鎖延長剤はエチレンジアミンだけから成る。
【0006】
本発明のさらなる態様において、ポリオールはテトラヒドロフラン及び3-メチルテトラヒドロフランの共重合体だけ又はこの共重合体と別のポリオールとの組み合わせを含む。この別のポリオールは1種の追加ポリオール又は、ポリカーボネートグリコール、ポリエステルグリコール、ポリエーテルグリコール及びこれらの組み合わせから成る群から選択されるポリオールのブレンド物を含み得る。
【0007】
本発明の追加の態様において、ポリオールは、約50~約100%のテトラヒドロフラン及び3-メチルテトラヒドロフランの共重合体を含む。本発明のさらに別の態様において、テトラヒドロフラン及び3-メチルテトラヒドロフランの共重合体は約5~約75モル%の3-メチルテトラヒドロフランを含み、例えば5~25モル%又は10~20モル%である。
【0008】
本発明の別の態様は、数平均分子量1000~2000を有する、テトラヒドロフラン及び3-メチルテトラヒドロフランの共重合体を含むポリオール(i)とジイソシアネート(ii)との反応生成物を含むプレポリマー(a)と鎖延長剤(b)との反応生成物であるポリウレタンウレアを含む弾性繊維を含む生地である。
【0009】
本発明のある実施形態において、この生地は熱処理後もパワーを保持する。
【0010】
本発明の追加の実施形態において、生地は編み又は織り構造を備える。
【0011】
本発明のさらなる態様は、数平均分子量1000~2000を有する、テトラヒドロフラン及び3-メチルテトラヒドロフランの共重合体を含むポリオール(i)とジイソシアネート(ii)との反応生成物を含むプレポリマー(a)と鎖延長剤(b)との反応生成物であるポリウレタンウレアを含む衛生用品である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本明細書において、「溶媒」とは有機溶媒、例えばジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)及びN-メチルピロリドンである。
【0013】
本明細書における用語「溶液紡糸」は溶液から繊維を作製することを含み、これは湿式紡糸又は乾式紡糸法のいずれかになり得て、どちらも繊維製造では一般的な技法である。
【0014】
スパンデックス繊維のヤーン加工、生地製造への適性及び衣類に用いた場合の顧客満足度を確保し易いように、多数の追加の特性を調節できる。スパンデックス組成物は当該分野で周知であり、またMonroe Couperで開示されているもの等の変化形を含み得る。Handbook of Fiber Science and Technology: Volume III, High Technology Fibers Part A. Marcel Dekker, INC: 1985, pp. 51-85。その幾つかの例をここで挙げる。
【0015】
スパンデックス繊維はTiO2等の艶消し剤又はベース繊維重合体とは異なる屈折率を有する別の粒子を0.01~6重量%のレベルで含有し得る。ブライト、すなわち光沢がある見た目が望ましい場合はより低いレベルも有用である。このレベルが上昇するにつれてヤーンの表面摩擦抗力が変化し、加工中に繊維が接触する表面での摩擦に大きく影響する可能性がある。
【0016】
単位デニールあたりのグラムでの破断力で測定する繊維引張強さ(テナシティ(グラム)/デニール)は、分子量及び/又は紡糸条件に応じて、0.7~1.2グラム/デニールで調節し得る。
【0017】
繊維のデニールは、所望の生地構造に基づいて、5~2000以上にし得る。5~30デニールのスパンデックスヤーンはフィラメント数1~5を有し得て、30~2000デニールのヤーンはフィラメント数20~200を有し得る。繊維は各種生地(織物、経メリヤス又は横メリヤス)において、生地の所望の最終用途に応じて、含有量0.5~100%で使用し得る。
【0018】
スパンデックスヤーンは単独で使用し得て、あるいは衣類としての最終用途に適したもの等の、Federal Trade Commission: FTCに認められている任意の他のヤーンと縒り得る、撚り得る、同時挿入し得る又は混ぜ得る。この任意の他のヤーンには、以下に限定するものではないが、ナイロン、ポリエステル、多成分ポリエステル又はナイロン、綿、羊毛、ジュート、サイザル麻、ヘルプ、フラックス、竹、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフルオロカーボン、レーヨン、各種セルロース化合物及びアクリル繊維から作られた繊維が含まれる。
【0019】
スパンデックス繊維には、繊維の下流加工を改善するために、製造工程中に潤滑剤又は仕上げ剤を塗布し得る。仕上げ剤は0.5~10重量%の量で塗布し得る。あるいは、繊維を潤滑剤又は仕上げ剤を使用せず製造し得る。
【0020】
スパンデックス繊維は、スパンデックスの最初の色を調節するための又は重合体の劣化を引き起こす可能性がある要素、例えば塩素、煙、UV、NOx若しくは既燃ガスへの曝露後の黄変作用を防止若しくは隠すための添加剤を含有し得る。スパンデックス繊維は、40~160の範囲の「CIE」白色度を有するように作製し得る。
【0021】
ポリウレタンウレア及びポリウレタン組成物
少なくとも85重量%のセグメント化ポリウレタンを含む繊維又は長鎖合成重合体の作製に有用なポリウレタンウレア組成物。典型的には、これらは、ジイソシアネートと反応してNCO末端プレポリマー(「キャップドグリコール」)を生成する高分子量のグリコール又はポリオールを含み、次に、このプレポリマーを適切な溶媒、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド又はN-メチルピロリドンに溶解させ、次に二官能性鎖延長剤と反応させる。鎖延長剤がジオールの場合にポリウレタンが生成される(調製は無溶媒でも実行し得る)。鎖延長剤がジアミンの場合にはポリウレタンの下位分類であるポリウレタンウレアが生成される。スパンデックスに紡糸可能なポリウレタンウレア重合体の調製においては、グリコールを、ヒドロキシ末端基を逐次的にジイソシアネート及び1種以上のジアミンと反応させることで延長する。どの場合においても、粘度を含めた必要な特性を備えた重合体を得るにはグリコールを鎖延長に供さなくてはならない。必要に応じて、ジブチル錫ジラウレート、オクタン酸第一錫、鉱酸、第三級アミン、例えばトリエチルアミン、N,N’-ジメチルピペラジンなど及び他の公知の触媒を使用してキャッピング段階を補助できる。
【0022】
適切なポリオール成分には、数平均分子量が約600~約3500のポリエーテルグリコール、ポリカーボネートグリコール及びポリエステルグリコールが含まれる。2種以上のポリオールの混合物又は共重合体も含め得る。
【0023】
使用可能なポリエーテルポリオールの例には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン及び3-メチルテトラヒドロフランの開環重合及び/又は共重合、あるいは各分子中の炭素原子が12個未満の多価アルコール、例えばジオール又はジオール混合物、例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール及び1,12-ドデカンジオールの縮合重合で生じる、2個以上のヒドロキシ基を有するグリコールが含まれる。線状二官能性ポリエーテルポリオールが好ましく、分子量が約1700~約2100のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、例えば官能性が2のTerathane(登録商標)1800(INVISTA社、Wichita、カンザス州)は特定の適切なポリオールの一例である。共重合体はポリ(テトラメチレン-コ-エチレンエーテル)グリコールを含み得る。
【0024】
使用可能なポリエステルポリオールの例には、脂肪族ポリカルボン酸と各分子中の炭素原子が12個以下の低分子量のポリオール又はその混合物との縮合重合で生じた、2個以上のヒドロキシ基を有するエステルグリコールが含まれる。適切なポリカルボン酸の例は、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸及びドデカンジカルボン酸である。ポリエステルポリオールの調製に適したポリオールの例は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール及び1,12-ドデカンジオールである。約5~約50℃の溶融温度を有する線状二官能性ポリエステルポリオールが特定のポリエステルポリオールの一例である。
【0025】
使用可能なポリカーボネートポリオールの例には、ホスゲン、クロロ蟻酸エステル、ジアルキルカーボネート又はジアリルカーボネートと各分子中の炭素原子が12個以下である低分子量の脂肪族ポリオール又はその混合物との縮合重合で生じる、2個以上のヒドロキシ基を有するカーボネートグリコールが含まれる。ポリカーボネートポリオールの調製に適したポリオールの例は、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール及び1,12-ドデカンジオールである。溶融温度が約5~約50℃の線状二官能性ポリカーボネートポリオールが特定のポリカーボネートポリオールの例である。
【0026】
高分子量グリコール又はポリオールをジイソシアネートと反応させると生成されるプレポリマーは適切には、プレポリマーに対して2.6~3.6、好ましくは2.8~3.2のNCOの割合(「%NCO」)を有し得る。
【0027】
ジイソシアネート成分には単一のジイソシアネート又は異なるジイソシアネートの混合物も含め得て、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)と2,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)とを含有するジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)異性体混合物を含む。任意の適切な芳香族又は脂肪族ジイソシアネートを含め得る。使用可能なジイソシアネートの例には、以下に限定するものでないが、1-イソシアナト-4-[(4-イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼン、1-イソシアナト-2-[(4-シアナトフェニル)メチル]ベンゼン、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、5-イソシアナト-1-(イソシアナトメチル)-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナト-4-メチル-ベンゼン、2,2’-トルエンジイソシアネート、2,4’-トルエンジイソシアネート及びこれらの混合物が含まれる。特定のポリイソシアネート成分の例には、Mondur(登録商標)ML(Bayer社)、Lupranate(登録商標)MI(BASF社)及びIsonate(登録商標)50 O,P'(Dow Chemical社)並びにこれらの組み合わせが含まれる。
【0028】
ポリウレタンウレア用の鎖延長剤は水又はジアミン系鎖延長剤になり得る。ポリウレタンウレア及びそこから得る繊維に望む特性に応じて様々な鎖延長剤の組み合わせを含め得る。適切なジアミン系鎖延長剤の例には、ヒドラジン、1,2-エチレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,2-ブタンジアミン、1,3-ブタンジアミン、1,3-ジアミノ-2,2-ジメチルブタン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサン、2,4-ジアミノ-1-メチルシクロヘキサン、N-メチルアミノ-ビス(3-プロピルアミン)、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、メタ-テトラメチルキシレンジアミン、1,3-ジアミノ-4-メチルシクロヘキサン、1,3-シクロヘキサン-ジアミン、1,1-メチレン-ビス(4,4’-ジアミノヘキサン)、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ペンタンジアミン(1,3-ジアミノペンタン)、m-キシリレンジアミン及びJeffamine(登録商標)(Texaco社)が含まれる。
【0029】
ポリウレタンを望む場合、鎖延長剤はジオールである。使用し得るそのようなジオールの例には、以下に限定するものでないが、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロピレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-トリメチレンジオール、2,2,4-トリメチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン及び1,4-ブタンジオール並びにこれらの混合物が含まれる。
【0030】
任意で、一官能性アルコール又は一官能性ジアルキルアミンであるブロッキング剤を含めることで重合体の分子量を制御し得る。1種以上の一官能性アルコールと1種以上のジアルキルアミンとのブレンド物も含め得る。
【0031】
本発明で有用な一官能性アルコールの例には、1~18個の炭素を有する脂肪族及び脂環式第一及び第二アルコール、フェノール、置換フェノール、分子量が約750未満(分子量500未満を含む)のエトキシル化アルキルフェノール及びエトキシル化脂肪アルコール、ヒドロキシアミン、ヒドロキシメチル及びヒドロキシエチル置換第三級アミン、ヒドロキシメチル及びヒドロキシエチル置換複素環式化合物並びにこれらの組み合わせから成る群より選択される少なくとも一員が含まれ、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、N-(2-ヒドロキシエチル)スクシンイミド、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、メタノール、エタノール、ブタノール、ネオペンチルアルコール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール、ベンジルアルコール、オクタノール、オクタデカノール、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、2-ジメチルアミノエタノール及び4-ピペリジンエタノール並びにこれらの組み合わせを含む。
【0032】
適切な一官能性ジアルキルアミンであるブロッキング剤の例には、N,N-ジエチルアミン、N-エチル-N-プロピルアミン、N,N-ジイソプロピルアミン、N-tert-ブチル-N-メチルアミン、N-tert-ブチル-N-ベンジルアミン、N,N-ジシクロヘキシルアミン、N-エチル-N-イソプロピルアミン、N-tert-ブチル-N-イソプロピルアミン、N-イソプロピル-N-シクロヘキシルアミン、N-エチル-N-シクロヘキシルアミン、N,N-ジエタノールアミン及び2,2,6,6-テトラメチルピペリジンが含まれる。
【0033】
添加剤
任意でポリウレタンウレア組成物に含め得る添加剤の種類を下に挙げる。例示的且つ非限定的なリストを含める。しかしながら、追加の添加剤は当該分野で周知である。例には、酸化防止剤、紫外線安定剤、着色剤、顔料、架橋剤、相変化物質(パラフィンワックス)、抗菌剤、鉱物(すなわち、銅)、ミクロカプセル化された添加剤(すなわち、アロエ、ビタミンEゲル、アロエ、ケルプ、ニコチン、カフェイン、香水又は芳香剤)、ナノ粒子(すなわち、シリカ又は炭素)、ナノクレイ、炭酸カルシウム、タルク、難燃剤、粘着防止添加剤、塩素による劣化に抵抗する添加剤、ビタミン、薬品、香料、導電性添加剤、可染性及び/又は染色助剤(例えば、第四級アンモニウム塩)が含まれる。ポリウレタンウレア組成物に添加し得る他の添加剤には、定着剤、帯電防止剤、抗クリープ剤、蛍光増白剤、融合助剤、導電性添加剤、発光添加剤、潤滑剤、有機及び無機充填剤、防腐剤、質感改変剤、熱変色性添加剤、昆虫忌避剤及び湿潤剤、安定剤(ヒンダードフェノール、酸化亜鉛、ヒンダードアミン)、スリップ剤(シリコーンオイル)並びにこれらの組み合わせが含まれる。
【0034】
添加剤は1つ以上の有益な特性を付与し得て、可染性、疎水性(すなわち、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、親水性(すなわち、セルロース)、摩擦制御、耐塩素性、耐劣化性(すなわち、酸化防止剤)、接着性及び/又は可融性(すなわち、接着剤及び定着剤)、難燃性、抗菌性(銀、銅、アンモニウム塩)、バリア、導電性(カーボンブラック)、引張特性、色、発光、再生利用性、生分解性、芳香、粘着制御(すなわち、金属のステアレート)、触質性、硬化力、熱調節(すなわち、相変化物質)、栄養補助、二酸化チタン等の艶消し剤、ハイドロタルサイト等の安定剤、ハント石とハイドロマグネサイトとの混合物、紫外線遮断剤並びにこれらの組み合わせが含まれる。
【0035】
繊維作製方法
一部の実施形態の繊維は、慣用のウレタン重合体用溶媒(例えば、DMAc)を使用した溶液からのポリウレタン-ウレア重合体の溶液紡糸(湿式紡糸又は乾式紡糸)で製造する。このポリウレタンウレア重合体溶液は上記の組成物又は添加剤のいずれをも含み得る。重合体は、有機ジイソシアネートと適当なグリコールとを反応させて「キャップドグリコール」を生じさせることで調製する。次に、このキャップドグリコールをジアミン系鎖延長剤の混合物と反応させる。得られた重合体において、ソフトセグメントは重合体鎖のポリエーテル/ウレタン部分である。これらのソフトセグメントは60℃未満の溶融温度を示す。ハードセグメントは重合体鎖のポリウレタン/ウレア部分であり、200℃を超える溶融温度を有する。ハードセグメントの量は、重合体の総重量の5.5~9%、好ましくは6~7.5%である。
【0036】
繊維作製の一実施形態においては、重合体固形分を30~40%含有する重合体溶液を、所望の配置の分配板及びオリフィスに通して計量してフィラメントを形成する。押出成形したフィラメントを、300~400℃の高温の不活性ガスを少なくとも10:1のガス:重合体の質量比で導入することで乾燥させ、少なくとも400メートル/分(好ましくは少なくとも600m/分)の速度で延伸し、次に少なくとも500メートル/分(好ましくは少なくとも750m/分)の速度で巻き取る。後出の全ての実施例を、押出成形温度80℃で高温の不活性ガス雰囲気中へと、巻き取り速度762m/分で行った。標準的な工程条件は当該分野で周知である。
【0037】
スパンデックスの強度及び弾性特性を、ASTM D 2731-72の一般的な方法にしたがって測定した。後出の表で報告する実施例では、5cmのゲージ長さを有するスパンデックスフィラメントを、一定の伸長速度50cm/分での0~300%の伸びのサイクルに供した。弾性率を、伸びが100%(M100)及び200%(M200)である時の力として最初のサイクルで測定し、グラムで報告する。5番目のサイクルでは無負荷状態での弾性率(U200)を200%の伸びで測定し、表にグラムで報告する。6番目の伸びサイクルで、破断時の伸び率及び破断時の力を測定した。
【0038】
硬化率を、5番目の無負荷曲線が実質的にゼロ応力に戻った点で示される、5番目のサイクルと6番目のサイクルとの間で残留している伸びとして測定した。硬化率を、サンプルを5回の0~300%の伸び/緩和サイクルに供してから30秒後に測定した。次に、硬化率を、硬化率(%)=100(Lf-Lo)/Loとして計算し、Lo及びLfは、張力なしでまっすぐに保持した場合の、5回の伸び/緩和サイクル前(Lo)後(Lf)でのフィラメント(ヤーン)長さである。
【0039】
本発明の特徴及び利点を以下の実施例でより完全に示すが、これらの実施例は例示を目的としたものであり、何らかの形で本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0040】
実施例1(比較例)
100.00重量部のTerathane(登録商標)1800グリコールを23.47部のIsonate(登録商標) 125MDR MDIと混合し、反応させることで(キャッピング比(NCO/OH)1.69)、プレポリマーに対するイソシアネート基(-NCO)の割合が2.60%のイソシアネート末端プレポリマーを生成した。次に、このプレポリマーを165.52部のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させた。この希釈したプレポリマー溶液を、1.94部のEDA、0.42部のDytek*A、0.03部のDETA、0.42部のDEA及び71.05部のDMAcを含有するアミン混合物のDMAc溶液と高速分散機を使用して反応させることで、重合体固形分約34.8%及び粘度2600ポアズ(40℃で測定)を有する均質なポリウレタンウレア溶液を生成した。この重合体溶液を、固形分重量基準で4.0%の抗漂白剤、0.17%の艶消し剤、1.35%の酸化防止剤、0.5%の染色助剤、0.3%の紡糸補助剤及び0.4%の粘着防止添加剤を含む添加剤のスラリーと混合した。
【0041】
実施例1a
実施例1の添加剤と混合した重合体溶液を、4本のフィラメントを巻き取り速度869メートル/分で撚り合わせた40デニールのスパンデックスヤーンに紡糸した。この試験品の紡糸したままのヤーン特性を測定し、表1に示した。
【0042】
実施例1b
実施例1の添加剤と混合した重合体溶液を、5本のフィラメントを巻き取り速度674メートル/分で撚り合わせた70デニールのスパンデックスヤーンに紡糸した。この試験品の紡糸したままのヤーン特性を測定し、表1に示した。
【0043】
実施例2
300.00重量部のPTG L-1400グリコール(3Me-THF及びTHFの共重合体であり、14モル%の3Me-THFを含み、数平均分子量は1400である)を87.16部のIsonate(登録商標)125MDR MDIと混合し、反応させることで(キャッピング比(NCO/OH)1.658)、プレポリマーに対するイソシアネート基(-NCO)の割合が3.00%のイソシアネート末端プレポリマーを生成した。次に、このプレポリマーを571.06部のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させた。この希釈したプレポリマー溶液を、271.77部のジアミン系延長剤混合物のDMAc溶液(7.35部のEDA、1.58部のDytek(登録商標)A及び262.84部のDMAcを含有)及び8.90部のDEAのDMAc溶液(0.78部のDEA及び8.12部のDMAc)と混合し、反応させることで、重合体固形分約32.0%及び粘度5000ポアズ(40℃で測定)を有する均質なポリウレタンウレア溶液を生成した。この重合体溶液を、固形分重量基準で4.0%の抗漂白剤、0.17%の艶消し剤、1.35%の酸化防止剤、0.5%の染色助剤、0.3%の紡糸補助剤及び0.4%の粘着防止添加剤を含む添加剤のスラリーと混合した。
【0044】
実施例2a
実施例2の混合溶液を、4本のフィラメントを巻き取り速度869メートル/分で撚り合わせた40デニールのスパンデックスヤーンに紡糸した。この試験品の紡糸したままのヤーン特性を測定し、表1に示した。
【0045】
実施例2b
実施例2の混合溶液を、4本のフィラメントを巻き取り速度1042メートル/分で撚り合わせた40デニールのスパンデックスヤーンに紡糸した。この試験品の紡糸したままのヤーン特性を測定し、表1に示した。
【0046】
実施例2c
実施例2の混合溶液を、5本のフィラメントを巻き取り速度674メートル/分で撚り合わせた70デニールのスパンデックスヤーンに紡糸した。この試験品の紡糸したままのヤーン特性を測定し、表1に示した。
【0047】
実施例2d
実施例2の混合溶液を、7本のフィラメントを巻き取り速度716メートル/分で撚り合わせた70デニールのスパンデックスヤーンに紡糸した。この試験品の紡糸したままのヤーン特性を測定し、表1に示した。
【表1】
【0048】
表1に示すように、実施例2の本発明の繊維は実質的に高い回復パワー(TM2)及び上昇したTM2/TP2比(又は低ヒステリシス)を示し、ヤーン破断伸び又はテナシティに有意な変化は見られなかった。
【0049】
実施例3
100.00重量部のPTG L-1400グリコールを28.52部のIsonate(登録商標)125MDR MDIと混合し、反応させることで(キャッピング比(NCO/OH)1.61)、プレポリマーに対するイソシアネート基(-NCO)の割合が2.80%のイソシアネート末端プレポリマーを加熱容器内で生成した。次に、このプレポリマーを152.60部のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させた。この希釈したプレポリマー溶液を、2.51部のEDA、0.02部のDETA、0.23部のDEA及び85.32部のDMAcを含有するアミン混合物のDMAc溶液と高速分散機を使用して反応させることで、重合体固形分約35.0%及び粘度2500ポアズ(40℃で測定)を有する均質なポリウレタンウレア溶液を生成した。この重合体溶液を、総固形分重量基準で2.0%の抗漂白剤、0.17%の艶消し剤、1.35%の酸化防止剤、0.3%の紡糸補助剤及び0.4%の粘着防止添加剤を含む添加剤のスラリーとさらに混合した。
【0050】
実施例3a
実施例3で得られた、添加剤を加えた粘度約4000ポアズ(40℃で測定)の重合体溶液を、4本のフィラメントを巻き取り速度869メートル/分で撚り合わせた40デニールのスパンデックスヤーンに紡糸した。
【0051】
実施例3b
実施例3で得られた、添加剤を加えた粘度約4000ポアズ(40℃で測定)の重合体溶液を、5本のフィラメントを巻き取り速度869メートル/分で撚り合わせた40デニールのスパンデックスヤーンに紡糸した。
【0052】
実施例4(比較用H350)
市販の40デニールのスパンデックス繊維。高パワーで優れた耐熱性を有するスパンデックスであると謳い、高温での硬化又は再染色であってもその生地パワーを維持する。
【0053】
実施例5(比較用T582L)
市販の40デニールのスパンデックス繊維。高温での熱硬化及び/又は染色及び再染色工程下でも改善された耐熱性及び生地パワーを保持するように設計されている。
【0054】
実施例6(比較用T162B)
市販の40デニールのスパンデックス繊維。一般的なCK及びWK生地用途に使用する。
【0055】
市販の比較用コントロールと比較した本発明の実施例(実施例3)の紡糸したままのヤーン特性を表2に示す。
【表2】
【0056】
表2に示すように、実施例3の本発明の繊維は実質的に高い回復パワー(TM2)及び上昇したTM2/TP2比(又は低ヒステリシス)を示し、ヤーン破断伸びに有意な変化は見られず、ヤーン破断テナシティに若干の低下が見られた。
【0057】
ヤーンサンプルを、生地熱硬化工程及び高温染色工程をシミュレートした条件下でさらに処理することでそのパワーの保持及び耐熱性を評価した。
【0058】
ヤーン熱硬化試験を、ヤーン糸を1.5倍に延伸し、190℃の熱風で120秒間にわたって熱硬化させ、続いて30分間にわたって緩和ボイルオフすることで行った。各糸サンプルについての熱硬化効率(HSE%)を測定した。
【0059】
ヤーン長さ成長(yarn length growth)試験を、ヤーン糸を3.0倍に延伸し、190℃の熱風で120秒間にわたって熱硬化させ、続いて、張力下、130℃で30分間にわたって蒸気処理することで行った。ヤーン糸長さ成長率(LG%)を測定した。
【0060】
本発明の実施例3及び比較例から得られたHSE%及びLG%を表3aに示す。この表は、本発明の実施例が、最良の市販の比較例とほぼ同じ寸法変化を熱処理下で見せたことを示す。
【表3】
【0061】
熱硬化試験及び長さ成長試験後のヤーンの特性を表3b及び表3cにそれぞれ示す。表は、本発明のサンプルが依然として、熱硬化後の比較例より実質的に高い回復パワー(TM2)及び高いTM2/TP2比(又は低ヒステリシス)を保持したことを示した。
【表4】
【表5】
【0062】
織り生地実施例
以下の実施例は、本発明及び多様なウェイト生地の製造におけるその使用性を実証するものである。本発明は他の異なる実施形態も可能であり、その幾つかの細部は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく様々な明白な点で改変可能である。実施例はその本質を例示するものであって制限を目的としていないと理解すべきである。
【0063】
以下の6つの実施例のそれぞれについて、100%のコットンステープル紡糸ヤーンを縦糸として使用する。実施例では配列パターンが不規則な7.0Ne OEヤーン及び8.5Ne OEヤーンの2つの番手のヤーンを使用した。巻き返し前に、ヤーンをインディゴにロープ形態で染色した。次に、ヤーンにサイジングを施し、織機ビームに巻き取った。
【0064】
実施例2の本発明の繊維及び代表的なT162B LYCRA(登録商標)繊維を弾性コアとして使用し、綿繊維をシースとして使用して16番手の綿弾性コアスパンヤーンを作製した。そのような弾性コアスパンヤーンを横糸として生地に挿入した。表4に、各実施例のコアスパンヤーンの製造で採用及び使用した材料及び工程条件を示す。 エラステーン繊維がデラウェア州Wilmington及びカンザス州WichitaのInvista, s.a.r.L.から入手可能である。例えば、エラステーン繊維という見出しの欄において、78dtexは70デニールを意味し、3.8倍は、コア紡糸機により加えられる弾性物のドラフトを意味する(機械ドラフト)。「ハードヤーン」という見出しの欄において、16番手は、English Cotton Count Systemに準拠して測定する紡糸ヤーンの線密度である。表4の残りの項目は明確に表示されている。
【0065】
続いて、ストレッチ織物生地を表4の各実施例のコアスパンヤーンを横糸として使用して作製した。表5は生地で使用するヤーン、織目及び生地の品質特徴をまとめたものである。各実施例についての幾つかの追加コメントを下に記す。別段の定めがない限り、生地はDonier社のエアジェット織機で織った。織機速度は500ピック/分であった。生地の幅は織機及び未漂白未染色の状態でそれぞれ約76インチ及び約72インチであった。
【0066】
実施例における各未漂白未染色生地をスカーリング、デサイジング、緩和及び柔軟剤の追加により仕上げた。
【表6】
【表7】
【0067】
実施例7:標準的な弾性コアスパンヤーン(CSY)のストレッチデニム
これは本発明ではなく比較例である。縦糸は7.0Ne番手/8.4Ne番手混紡オープンエンドヤーンであった。巻き返し前に縦糸はインディゴに染色した。横糸は70D/5fのT162C Lycra(登録商標)スパンデックスの16Neコアスパンヤーンである。Lycra(登録商標)繊維を、カバーリング工程中に3.8倍にドラフトした。表5に生地の特性を示す。この生地は重量(11.6g/m2)、伸長率(42.7%)、成長率(7.2%)、回復率(78.9%)及び伸び12%での回復パワー(395.6グラム)を有した。
【0068】
実施例8:本発明の弾性CSYを含有するストレッチデニム
このサンプルは実施例7と同じ生地構造を有した。違いは横糸方向のコアスパンヤーンであり、標準速度で紡糸した2cの本発明の70D/5fの繊維を含有する。この生地では実施例7と同じ縦糸及び構造を用いた。また、編み及び仕上げ工程は実施例7と同じであった。表5に試験結果をまとめる。このサンプルが実施例7の生地より低い生地成長率(6.1%)、高い回復率(81.5%)及び高い回復パワー(455.7グラム)を有することが見て取れる。
【0069】
実施例9:高速で紡糸した本発明の弾性CSYのストレッチデニム
このサンプルは実施例7及び実施例8と同じ生地構造を有した。唯一の違いは、実施例2dの本発明の70D/7fの繊維を使用したことであった。この新しい繊維を高速で紡糸する。表5に試験結果をまとめる。このサンプルがより高い伸長率(44.5%)、低い生地成長レベル(5.5%)、高い回復率(84.56%)、低いヒステリシス(11.0%)及び狭い生地幅(46インチ)及び重い重量(11.99オンス/ヤード2)を有することを明確に示す。これら全てのデータが、本発明の弾性繊維が標準的なスパンデックス繊維より高い回復力及びパワーを有することを示す。この新しい繊維を使用することで、生地は高い伸長性、高い回復性及び優れた形状保持性を有する。
【0070】
実施例10:標準的な弾性CSYのストレッチデニム
これは本発明ではなく比較例である。縦糸は7.0Ne番手/8.4Ne番手混紡オープンエンドヤーンであった。巻き返し前に縦糸はインディゴに染色した。横糸は70D/5fのT162C Lycra(登録商標)スパンデックスの16sコットンコアスパンヤーンである。Lycra(登録商標)繊維を、カバーリング工程中に4.1倍にドラフトした。表5に生地の特性を示す。この生地は重量(11.8g/m2)、伸長率(42.0%)、成長率(8.8%)、回復率(73.8%)及び伸び12%での回復パワー(419.4グラム)を有した。
【0071】
実施例11:本発明のCSYを含有するストレッチデニム
このサンプルは実施例10と全く同じ生地構造を有した。違いは横糸方向のコアスパンヤーンであり、標準速度で紡糸した実施例2cの本発明の70D/5fの繊維を含有する。本発明の繊維を、カバーリング工程中に4.1倍にドラフトした。この生地では実施例10と同じ縦糸及び構造を用いた。また、編み及び仕上げ工程は実施例10と同じであった。表5に試験結果をまとめる。このサンプルが実施例10の生地より低い生地成長率(7.7%)、高い回復率(77.98%)及び高い回復パワー(454.1グラム)を有することが見て取れる。
【0072】
実施例12:高速で紡糸した本発明の弾性CSYのストレッチデニム
このサンプルは実施例10及び実施例11と同じ生地構造を有した。唯一の違いは、実施例2dの新しい弾性繊維である本発明の70D/7fの繊維をドラフト4.1倍で使用したことであった。この新しい繊維を高速で紡糸する。表5に試験結果をまとめる。このサンプルがより高い伸長率(45.9%)、低い生地成長レベル(7.0%)、高い回復率(80.93%)、低いヒステリシス(10.8%)及び狭い生地幅(45.5インチ)及び重い重量(11.87オンス/ヤード2)を有することを明確に示す。ここでもまた、これら全てのデータが、本発明の弾性繊維が標準的なスパンデックス繊維より高い回復力及びパワーを有することを示す。この新しい繊維を使用することで、生地は高い伸長性、高い回復性及び優れた形状保持性を有する。
【0073】
編み生地実施例
以下の実施例は、本発明及び編み生地におけるその使用性を実証するものである。本発明は他の異なる実施形態も可能であり、その細部は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく様々な明白な点で改変可能である。したがって、実施例はその本質を例示するものであって制限を目的としていないと理解すべきである。
【0074】
ストレッチ編み生地の3つの実施例を作製した。表6は生地で使用するヤーン、生地構造、エラステーン繊維のドラフト及び最終仕上げ後の生地の物理的な品質特徴をまとめたものである。例えば、エラステーン繊維ドラフトという見出しの欄において、2.6倍は、編み工程においてエラステーン繊維に加えられる伸びを意味する。3つの右端の欄に関しては、高温湿式エージング工程において生地サンプルを130℃、pH5.0の水に見出し欄に記載の時間にわたって沈めることを必要とした。また、これらの欄において、残留%は、割合で表した、高温湿式エージング前の生地の回復パワーに対する回復パワーの量である。残りの項目は明確に表示されている。生地を、28カット、直径26インチ及び18回転/分のMonarch社のシングルジャージー丸編機で編んだ。各実施例において、ナイロンヤーンを生地における随伴ハードヤーンとして使用する。具体的には、このナイロンヤーンは、デラウェア州WilmingtonのINVISTA Sarl社から入手可能なタイプ6,6完全延伸ヤーンであり、タイプ名は40/13-T6300である。実施例2a、2bの本発明の弾性繊維及び同じくデラウェア州WilmingtonのINVISTA Sarl社から入手可能な標準的なT162B LYCRA(登録商標)繊維を、実施例の編みにおけるプレーティングヤーンとして使用した。
【0075】
実施例における各未漂白未染色生地を、酸化防止剤の塗布、193℃での45秒間にわたる熱硬化、98℃での40分間にわたる水性染色及び140℃での45秒間にわたる乾燥により仕上げた。
【表8】
【0076】
実施例13:標準的なエラステーンのストレッチ編み生地
これは本発明ではなく比較例である。エラステーンは40デニールのT162B LYCRA(登録商標)エラステーンであった。このエラステーン繊維を編み工程中に2.6倍にドラフトした。随伴ハード繊維は40/13-T6300であった。表6に生地の特性を示す。この生地は、重量(93.6g/m2)、幅(51インチ)、伸び率(195%)、回復パワー(261.5gF)及び残留回復パワーを30、60及び90分間にわたる高温湿式エージング後に有した(それぞれ78.5%、73.4%、61.6%)。
【0077】
実施例14:高速で紡糸した本発明のエラステーンのストレッチ編み生地
この実施例は実施例13と同じ生地構造を有した。唯一の違いは、40デニールのT162B LYCRA(登録商標)エラステーンの代わりに高速で紡糸した実施例2bの繊維である本発明の繊維を使用したことであった。表6に生地の特性を示す。この生地は、重量(88.8g/m2)、幅(50インチ)、伸び率(192%)、回復パワー(228.1gF)及び残留回復パワーを30、60及び90分間にわたる高温湿式エージング後に有した(それぞれ87.5%、85.8%、84.5%)。これらのデータは、本発明の弾性繊維が高温湿式エージング後に標準的なエラステーンより高い残留パワーを有することを示す。
【0078】
実施例15:低速で紡糸した本発明のエラステーンのストレッチ編み生地
この実施例は実施例13と同じ生地構造を有した。唯一の違いは、40デニールのT162B LYCRA(登録商標)エラステーンの代わりに低速で紡糸した実施例2aの繊維である本発明の繊維を使用したことであった。表6に生地の特性を示す。この生地は、重量(91.2g/m2)、幅(50インチ)、伸び率(192%)、回復パワー(241.4gF)及び残留回復パワーを30、60及び90分間にわたる高温湿式エージング後に有した(それぞれ85.8%、84.1%、75.8%)。これらのデータは、本発明の弾性繊維が標準的なエラステーンより高い残留パワーを高温湿式エージング後に有することを示す。
【0079】
衛生用途の場合の高パワー繊維の利点
LYCRA(登録商標)繊維T837(680dtx)及び本発明の実施例3の組成物の688dtx繊維の応力/ひずみ曲線(図示せず)を精査したところ、本発明の繊維の力は、サイクルの収縮側の大半で、T837より有意に高いことが実証された。このより高い収縮力は、オムツ又は衛生用品の脚部、カフ部、ウエストバンド部又は他のストレッチ性のある構成要素の構築に使用するホットメルト弾性アタッチメント部用接着剤及び不織布の妨害作用を繊維が克服するための高い能力につながる。オムツの脚部及び/又はカフ部のこのよりしっかりとした収縮力は、着用者の体に対するより高い漏れ防止作用と漏れが起きる可能性の低下につながる。本発明の繊維は、衛生用品内で収縮力を再分配できるようにすることで快適さとフィット性を改善する。
【0080】
LYCRA(登録商標)繊維T837をより軽いデニールの本発明と置き換え
スパンデックスの供給パッケージのランタイムは、ローリングテイクオフ式巻き出し装置を使用した衛生用品製造業者用のロール上の繊維の長さに関係している。同じ量の供給パッケージの場合、より軽いデニールのほうが重いデニールより長くなる。より軽いデニールのパッケージのほうが重いデニールのパッケージよりランタイムが長くなるため、所与の製造時間中に必要となる製造ライン停止数は少なくなる。ダウンタイムが少なければ生産性は高くなる。オーバーエンドテイクオフ式巻き出し装置の場合、より長い軽デニールのパッケージでは所与の製造時間中の移行回数が減るため、移行失敗の機会が減り、移行失敗を正すためのダウンタイムが対応して短縮される。
【0081】
より軽いデニールの本発明のスパンデックスの使用により、オムツに使用するスパンデックスの量も減る。単位あたりの節約できる量は数グラムではあるものの、産業活動で節約できる全体量は数キロトンとなる可能性がある。
【0082】
より高いパワーの本発明のスパンデックスを使用する別の利点は、スレッドラインのデニールを維持する又は上げられるため、オムツの構成要素で使用するスレッドラインの総数を減らせる可能性があることである。同じ又はデニールの高収縮力の繊維を使用することで、所望の収縮力を維持しながらスレッドライン数を減らし得る。このシナリオの利点は、スレッドラインの数が減ることで使用する接着剤の量を減らせることである。スレッドラインの数を少なくできることで衛生用品の製造工程を簡素化することもでき、取扱う材料の量が減り、対応するスレッドラインガイド及び接着剤塗布部品を削減することができる。
【0083】
本発明の好ましい実施形態と現時点で考えられるものについて説明してきたが、当業者ならば、本発明の趣旨から逸脱することなく変更及び改変を加え得ることがわかる。本発明は、本発明の真の範囲に入るそのような変化及び改変を全て含めるものとする。