(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】回転機器のための保護カバー及びこれを備える回転機器
(51)【国際特許分類】
F04D 29/60 20060101AFI20220228BHJP
【FI】
F04D29/60 B
(21)【出願番号】P 2018059393
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【氏名又は名称】田上 靖子
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】倉澤 仁香
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 望
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昭二
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-158139(JP,A)
【文献】特開平07-247986(JP,A)
【文献】実開昭51-145453(JP,U)
【文献】特開2012-171698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
F16D 3/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に回転軸の少なくとも一部が配置されるケーシングの側部開口であって、前記側部開口を通して前記ケーシングの外部から内部を視認可能な側部開口を覆うための保護カバーであって、
前記側部開口を覆う第1のカバープレートと、第2のカバープレートと、を備えており、
前記第1のカバープレートは、互いに対向する側の端部と前記端部の間を延びる側部とを有しており、
前記第1のカバープレートの前記端部の各々に、前記第1のカバープレートを前記ケーシングに固定するための締結具が通される固定用穴が形成されており、
前記第2のカバープレートは、前記第1のカバープレートの少なくとも一方の前記側部に、前記第1のカバープレートに対して角度をなして固定されて
おり、
前記ケーシングは、一対の端部壁と、前記一対の端部壁の間に配置され、前記側部開口が形成される側壁と、を含んでおり、
前記一対の端部壁の少なくとも一方は、前記回転軸が通る貫通孔を有し、前記貫通孔が、径方向外側に前記側部開口を越えて延在する拡径領域を含んでおり、
前記第2のカバープレートが前記拡径領域を覆うように構成される、保護カバー。
【請求項2】
前記第1のカバープレートと前記第2のカバープレートとの間に折り曲げ部を有する、請求項1に記載の保護カバー。
【請求項3】
前記保護カバーは、少なくとも部分的に、網目状である、請求項1または2に記載の保護カバー。
【請求項4】
前記保護カバーは、少なくとも部分的に、透明な材料で形成されている、請求項1または2に記載の保護カバー。
【請求項5】
前記固定用穴として、前記互いに対向する側の端部の一方に丸孔が形成され、他方に切り欠きが形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の保護カバー。
【請求項6】
回転機器であって、
回転軸と、
内部に回転軸の少なくとも一部が配置されるケーシングであって、前記ケーシングの外部から内部を視認可能な側部開口を有するケーシングと、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の保護カバーと、を備える、回転機器。
【請求項7】
回転機器は、モータ部とモータ部の回転軸により駆動されるポンプ部とを備えるポンプシステムである、請求項
6に記載の回転機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機器のための保護カバーに関する。また、本発明は、回転機器に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸を有する駆動部と、回転軸の回転により駆動される被駆動部と、を備える、例えばポンプシステム等の回転機器では、回転軸の周囲を覆うケーシングの側部に、保守・点検のための開口部が設けられる場合がある。ケーシングの側部の開口部を通して、例えば、回転軸の回転を視認することができる。また、ケーシングの側部の開口部を通して、カップリング部材等の部品の交換またはメンテナンス等を行うことができる。このような回転機器のケーシングの側部開口は、通常、着脱可能な保護カバーによって覆われている。これにより、回転軸の回転中に人の上肢(例えば手)等が挿入されて回転部に接触することを防止している。
【0003】
JIS等において、機械を取り扱う作業者等の安全を確保するための様々な安全規格が設けられている。特に近年、労働者に対する安全対策が強く求められる傾向にあり、このような状況において、上記の保護カバーは、回転機器にとって重要な部品の一つである。
【0004】
保護カバーは、低い材料コスト及び/または加工コストで安価に製造することができることが望ましい。また、保護カバーは、回転機器のケーシングに対して容易に着脱可能であることが望ましい。また、保護カバーは、複数形状のケーシングに取り付け可能であることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭58-92495号公報
【文献】特開平7-247986号公報
【文献】特開2015-158139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、低い材料コスト及び/または加工コストで安価に製造することができる保護カバーを提供することができる。また、本発明の一実施形態によれば、回転機器のケーシングに対して容易に着脱可能な保護カバーを提供することができる。また、本発明の一実施形態によれば、複数形状のケーシングに取り付け可能な保護カバーを提供することができる。また、本発明の一実施形態によれば、回転機器のケーシングのコストダウンを実現することができる保護カバーを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、内部に回転軸の少なくとも一部が配置されるケーシングの側部開口であって、側部開口を通してケーシングの外部から内部を視認可能な側部開口を覆うための保護カバーが提供される。保護カバーは、側部開口を覆う第1のカバープレートと、第2のカバープレートと、を備えている。第1のカバープレートは、互いに対向する側の端部とこれら端部の間を延びる側部とを有している。第1のカバープレートの端部の各々に、第1のカバープレートをケーシングに固定するための締結具が通される固定用穴が形成されている。第2のカバープレートは、第1のカバープレートの少なくとも一方の側部に、第1のカバープレートに対して角度をなして固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態による回転機器の一例の概略構成を示す外観図である。
【
図3】本発明の一実施形態による保護カバーの取り付け状態を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による保護カバーの作用を説明するための図である。
【
図6】本発明の一実施形態による保護カバーの作用を説明するための比較例を示す図である。
【
図7A】本実施形態による保護カバーを取り付け可能なケーシングの例を示す図である。
【
図7B】本実施形態による保護カバーを取り付け可能なケーシングの例を示す図である。
【
図7C】本実施形態による保護カバーを取り付け可能なケーシングの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明はあくまでも一例を示すものであって、本願発明の技術的範囲を以下の実施形態に限定する趣旨ではない。また、図面では、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。尚、以下の説明において、「上」、「下」等の方向を示す用語は、
図1に示す回転機器の設置状態における方向を意味する。また、「軸方向」とは、回転機器の回転軸に沿う方向を意味し、「径方向」とは回転軸の半径方向を意味する。また、以下の説明では、回転機器の一例としてポンプシステムを説明するが、回転機器は、ポンプシステムに限られない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態による回転機器(以下、一例としてポンプシステムと称する)10の概略構成を示す外観図である。ポンプシステム10は、モータ部11とポンプ部20とを備えている。モータ部11とポンプ部20は、ブラケット30を介して結合されている。
【0011】
図2は、
図1に示すポンプシステム10の部分分解図であり、ここでは、モータ部11及びブラケット30のみが示されている。回転軸14が、回転軸14を駆動する駆動部を取り囲むモータケーシング16から突出して延びている。回転軸14は、ブラケット30を通り、ポンプ部20内の羽根車(図示せず)に固定されるように構成されている。
【0012】
ブラケット30は、締結具90を介して、隣接するモータケーシング16及びポンプ部20のポンプケーシング(
図2には図示せず)に取り付けられるように構成されている。ブラケット30は、実質的に筒状の本体32と、本体32の下部に取り付けられた一対の脚部34と、を有している。本体32は、軸方向に面して配置される端部壁36a、36bと、端部壁36a、36bの間に周方向に所定の間隔をおいて配置される複数(本実施形態では2つ)の側壁38と、を備える。端部壁36a、36bと側壁38とは互いに一体である。これにより、隣接する側壁38の間に複数(本実施形態では2つ)の開口40(以下、側部開口40と称する)が形成される。しかし、側壁38及び側部開口40の数は特に限られない。他の実施形態では、端部壁36a、36bの間に単一の側壁38が設けられてよく、この場合、側部開口40を、同じ側壁38の周方向縁部により画定することができる。側部開口40は、後述する保護カバー(
図1及び
図2には図示せず)により覆うことができる。この目的のため、側部開口40の上下に位置する側壁38のそれぞれ
の縁部には、保護カバーを取り付けるための取付け穴38a、38bが形成されている。
【0013】
モータ側の端部壁36aとポンプ側の端部壁36bとは、いずれも環状であり、軸方向に開口する中央開口42a、42bが、端部壁36a、36bを貫通している。締結具90を通す取付け穴92が、端部壁36a、36bに設けられている。端部壁36bには、その中央開口42bに連続して軸方向に延びる貫通孔46を形成する軸封部44が設けられている。軸封部44は、端部壁36bから軸方向に延在し、本体32の内側(端部壁36aよりも内側)で終端する。貫通孔46には、回転軸14の周囲に配置されるメカニカルシール(図示せず)等の軸封部材が配置される。貫通孔46は、端部壁36aの中央開口42aから挿入される回転軸14を受け入れることができる。
【0014】
図1に示すように、側部開口40は、ポンプシステム10が組立てられた状態において、側部開口40を通して、ブラケット30の内部の軸封部44及び回転軸14が視認される位置に形成されている。換言すれば、側部開口40は、回転軸14の径方向に向けて開口している。側部開口40は、ブラケット30内の回転軸14の動作確認及び/又は軸封部44の保守・点検を行うために設けられている。後述するように、本実施形態では、側部開口40と、モータ側の端部壁36aの中央開口42aとが互いに連続している。換言すれば、中央開口42aは、径方向外側に側部開口40を越えて延在する拡径領域を含んでいる。
【0015】
本実施形態によれば、側部開口40を覆うための保護カバー50を提供することができる。
図3は、保護カバー50がブラケット30に取り付けられた状態を示す。保護カバー50は、第1のカバープレート52と第2のカバープレート54とを備える。側部開口40は、第1のカバープレート52によって覆われる。具体的には、
図3に示すように、保護カバー50は、締結具(
図3には図示せず)を介してブラケット30の側壁38に固定される第1のカバープレート52を備える。
図3中、56及び58は、締結具が通される固定用穴である。尚、本実施形態では、側部開口40の上部に位置する固定用穴56は丸孔(換言すれば、閉じられた輪郭を有する穴部)の形態を有し、側部開口40の下部に位置する固定用穴58は、略U字状の切り欠きの形態を有しているが、これに関しては後述する。また、ブラケット30の側壁38における、固定用穴56、58に対応する位置には、固定用穴56、58と位置合わせされて締結具を受け入れる取付け穴38a、38bが形成されている。
図3では、取付け穴38bにのみ符号が付されている。また、本実施形態では、第1のカバープレート52は、複数の微小な穴が形成された網目状部分70を有している。
【0016】
保護カバー50は、さらに、第1のカバープレート52に対して角度をなして固定される第2のカバープレート54を備える。本実施形態では、第2のカバープレート54は、第1のカバープレート52から実質的に直角をなして延びている。従って、
図3では、第2のカバープレート54は、
図3の紙面の手前側に延びている。第2のカバープレート54は、
図3には示されない、上記した中央開口42aの拡径領域を覆うように構成されている。
【0017】
図4A、
図4B、及び
図4Cは、それぞれ、保護カバー50の平面図、側面図、下面図である。
図4Aに示すように、第1のカバープレート52は、互いに対向する側に位置する端部62、64と、端部62、64の間に延びる側部66、68と、を備えている。固定用穴56、58は、端部62、64にそれぞれ設けられている。第2のカバープレート54は、第1のカバープレート52の一方の側部68に角度をなして固定されている。
【0018】
尚、本実施形態では、側部66、68は、それぞれ、切り欠き66a、68bを有している。切り欠き66a、68bは、保護カバー50がブラケット30に取り付けられる際
の締結具90の位置(
図3等参照)を避けるために設けられている。従って、締結具90の位置に応じて切り欠き66a、68bの位置及び/または大きさを変えることができる。また、他の実施形態では、切り欠き66a、68bは設けられていなくてもよい。
【0019】
保護カバー50は、固定用穴56、58に通される例えばボルト等の締結具を介して、着脱可能にブラケット30に固定される。以下、
図3を参照して、保護カバー50の取り付け方法の一例を説明する。尚、説明の便宜上、
図3では、固定用穴56、58に通される締結具は図示を省略されている。
【0020】
例えば、側部開口40の下方に位置するブラケット30の取付け穴38bに、締結具(以下、ボルト)を仮締めしておく。次に、取付け穴38bのボルトの軸部が固定用穴58に受け入れられるように固定用穴58を下にして、側部開口40を第1のカバープレート52で覆うように保護カバー50を配置する。このとき、第2のカバープレート54が中央開口42aの拡径領域を覆う(換言すれば、第2のカバープレート54が
図3の右方且つ手前側に位置する)ように保護カバー50の向きを決定する。上記したように、第1のカバープレート52の側部66、68には、切り欠き66a、68a(
図4Aを参照)が設けられている。従って、保護カバー50を、締結具90と干渉することなく、
図3の手前側からブラケット30に取り付けることができる。
【0021】
この状態で、取付け穴38bに仮締めされたボルトを本締めすることにより、保護カバー50の下部の位置を固定する。最後に、固定用穴56とブラケット30の取付け穴38a(
図3では符号省略)にボルトを通して本締めし、保護カバー50の上部の位置を固定する。こうして、保護カバー50の取り付けが完了する。しかし、保護カバー50の取付けのための作業は、必ずしも上記の順序で行われなくてもよい。
【0022】
保護カバー50は、通常はブラケット30に固定された状態にあり、回転軸14の動作確認及び/または軸封部44の保守・点検を行う際に取り外すことができる。上記したように、本実施形態による保護カバー50は、複数の微小な穴が形成された網目状の部分70を有している。網目状の部分70の位置及び網目状の部分70を形成する穴の大きさは、網目状の部分70を通して回転軸14の回転が視認することができるように設定される。
【0023】
本実施形態では、第1のカバープレート52及び第1のカバープレート54に対して角度をなして固定される第2のカバープレート54は、単一の板状部材を折り曲げることにより形成されている。換言すれば、保護カバー50は、第1のカバープレート52と第2のカバープレート54との間に折り曲げ部55(
図4Cを参照)を有する。折り曲げ加工することにより、保護カバー50全体の強度または剛性を増すことができるので、板状の保護カバー50の厚さを薄くすることができる。これにより、保護カバー50を軽量化し、保護カバー50の材料コストを抑えることができる。また、折り曲げは、プレス加工によって容易に行うことができるので、保護カバー50の加工コストを抑えることができる。しかし、他の実施形態によれば、第1のカバープレート52と第2のカバープレート54は、予め別個の部材として用意され、互いに接合等によって固定されるものであってもよい。また、ポンプシステム10の製造現場において、複数枚の保護カバー50が積み重ねられた状態で保管される場合がある。保護カバー50は、第1のカバープレート52と第1のカバープレート52に対して角度を有する第2のカバープレート54を備えているので、単一の平坦な板状部材からなる保護カバーと比較して、積み重ねられた保護カバー50を、第1及び第2のカバープレート52、54の一方を把持して一枚ずつ取り上げることができる。従って、ポンプシステム10の製造時等における保護カバー50の取り扱いが容易になる。
【0024】
本実施形態では、第2のカバープレート54は、第1のカバープレート52に対して実質的に直角をなして固定されている。しかし、第1のカバープレート52と第2のカバープレート54とが交差する角度は、側部開口40周りのブラケット30の形状に合わせて適宜設定することができる。
【0025】
本実施形態では、固定用穴56、58の少なくとも一方を切り欠きの形態にすることにより、取付け時の位置決め作業が容易になる。すなわち、予めブラケット30の一方の取付け穴(本実施形態では38b)に通したボルトを仮締めした後に保護カバー50の位置決め作業を行うことができる。特に、回転軸14が水平方向に配置される横置きポンプでは、下部の固定用穴58を切り欠きにすることによって、低い位置での作業負担を軽くすることができる。しかし、上部の固定用穴56を切り欠きにし、下部の固定用穴58を丸孔の形態にすることもできる。他の実施形態では、固定用穴56、58は、いずれも丸孔の形態を有していてもよい。または、固定用穴56、58は、いずれも切欠きの形態を有していてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、網目状部分70を通して、回転軸14の回転を視認することができるので、回転軸14の動作確認を、保護カバー50を取り外すことなく行うことができる。回転軸14の回転を視認することができる限り、保護カバー50における網目状部分70が形成される位置及び/または範囲は特に限られない。例えば、網目状部分70は、第1のカバープレート52の実質的に全体にわたって形成されていてもよいし、第2のカバープレート54の一部または全部に形成されていてもよい。保護カバー50の全体が網目状部分70を形成していてもよい。しかし、他の実施形態では、網目状部分70は無くてもよい。
【0027】
保護カバー50を形成する材料は、特に限られない。金属材料または樹脂材料を使用することができる。金属材料と樹脂材料とを適宜組み合わせてもよい。樹脂材料として、透明な材料を使用することができる。この場合、透明な樹脂材料で形成された部分を通して、回転軸14の回転を視認することが可能になる。透明な樹脂材料として、例えば、ポリカーボネート及び/またはアクリル等を使用することができる。また、保護カバー50を形成する透明な材料として、ガラスを使用することもできる。
【0028】
本実施形態による保護カバー50の構成は、ブラケット30の軽量化、ひいてはブラケット30の製造コストの低減に寄与することができる。このことについて、
図5及び
図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態の比較例を示す図であり、第2のカバープレートを有しない保護カバー(理解の容易のため、外形のみが破線で示される)500と従来のブラケット300との組み合わせを示している。ブラケット300は、モータ側の端部壁360aの中央開口420aの範囲(換言すれば、大きさ)を除いて、本実施形態で説明されたブラケット30と実質的に同じ構成を有している。ブラケット300は、2つの側壁380の間に形成された側部開口400を備えている。比較例の保護カバー500は、側部開口400を覆う単一の平坦な板状部材(換言すれば、本実施形態の保護カバー50の第1のカバープレート52に相当する部材)である。この場合、ブラケット300の端部壁360aの中央開口420aの大きさ(換言すれば、直径)は制限される。具体的には、中央開口420aは、
図6に示すような実質的に側部開口400の近傍の位置まで径方向に拡大されてもよい。しかし、中央開口420aが、側部開口400から大きく離れた位置まで拡大されることは望ましくない。仮に中央開口420aを側部開口400から大きく離れた位置まで拡大すると、取り付けられた保護カバー500を越えて中央開口420aの一部が外部に露出され、露出された中央開口420aの部分を通して、作業者の手が回転中の回転軸(
図1等を参照)に触れる虞が生じるからである。
【0029】
これに対し、
図5に示す本実施形態の保護カバー50(理解の容易のため、外形のみが
破線で示される)は、第1のカバープレート52と、第1のカバープレート52に角度をなして固定される第2のカバープレート54と、を備えている。従って、ブラケット30の端部壁36aの中央開口42aを、側部開口40から大きく離れた位置まで径方向に拡大することができる。本実施形態では、ブラケット30の中央開口42aは、側部開口40よりも径方向内側の領域(
図5の領域A)と、側部開口40よりも径方向外側の領域(
図5の領域B)(すなわち、拡径領域)を含んでいる。
【0030】
本実施形態によれば、中央開口42aの拡径領域Bを、第2のカバープレート54によって実質的に覆うことができる。これにより、拡径領域Bを通して作業者の手が回転中の回転軸14(
図1等を参照)に触れる虞をなくすことができる。従って、
図6の場合と比較して、ブラケット30の中央開口42aを大きくすることができる。従って、ブラケット30を、比較例のブラケット300と比べて、拡径領域Bの分だけ低い材料コストで製造することができる。これにより、ブラケット30の製造コストを低減させることができる。
【0031】
本実施形態では、第2のカバープレート54は、第1のカバープレート52のモータ側の側部68にのみ設けられている。しかし、ブラケット30の具体的形状に応じて、第2のカバープレート54は、第1のカバープレート52のポンプ側の側部66に設けられていてもよく、側部66、68の各々に設けられてもよい。また、第1のカバープレート52及び第2のカバープレート54の各々の輪郭形状は、図示のものに限られない。第1のカバープレート52及び第2のカバープレート54の各々の外形は、側部開口40周りのブラケット30の形状に応じて、種々の変更が可能である。例えば、軸封部44等、ブラケット30の内部から外部へ側部開口40を通して突出する部分が存在する場合には、当該部分との干渉を避ける切り欠き部を設けることができる。締結具90のための切り欠き66a、68aも、その位置及び大きさを適宜変更することができる。また、取付け時の干渉を防止するための切り欠きを有しない実施形態も可能である。また、
図4A~
図4Cに示すように、本実施形態の第1のカバープレート52及び第2のカバープレート54の各々は、平坦である。しかし、側部開口40周りのブラケット30の形状に応じて、第1のカバープレート52及び第2のカバープレート54の各々は、例えば回転軸14の周方向に湾曲して延びるように構成されていてもよい。
【0032】
このように、本実施形態の保護カバー50では、第1のカバープレート52によってブラケット30の側部開口40を覆うことができるだけでなく、第2のカバープレート54によって、側部開口40に連続する中央開口42aの拡径領域Bを覆うことができる。これにより、端部壁36aの中央開口42aを、側部開口40から大きく離れた位置まで拡径することができる。従って、ブラケット30の材料コスト、ひいては製造コストを低減することができる。また、保護カバー50は、第1のカバープレート52と第2のカバープレート54との間に折り曲げ部55を有しているので、保護カバー50全体の強度または剛性を増すことができる。従って、保護カバー50の板厚を薄くすることができ、保護カバー50の材料コストを低減することができる。また、折り曲げ部55を有する保護カバー50は、プレス加工により低コストで容易に加工することができる。また、保護カバー50の網目状部分70によって、保護カバー50を取り外すことなく回転軸14の動作確認を行うことができる。また、固定用穴56、58の一方を切り欠きにしているので、ブラケット30の一方の取付け穴にボルトを仮締めした後に、第1のカバープレート52の位置決めを行うことができる。従って、保護カバー50の位置決め作業が容易になる。
【0033】
また、保護カバー50が取り付けられるブラケット30は、側壁38に取付け穴38a、38bを有するだけでよく、取り付けのための特別な形状を必要としない。従って、本実施形態の保護カバー50は、図示されるブラケット30だけでなく、複数形状のケーシングに取り付け可能である。一例として、保護カバー50を取り付け可能なブラケットの
形状の例を、
図7A~
図7Cに示す。
図7A~
図7Cでは、保護カバー50で覆われる側部開口が符号401で示されている。尚、
図7A~
図7Cは、回転軸が縦方向に配置される立軸ポンプシステムに使用されるブラケットの例であるが、本発明の実施形態において、回転機器はポンプシステムに限られない。また、ケーシングはブラケットに限られない。回転機器は、回転軸を有する駆動部と、回転軸の回転により駆動される被駆動部とを備えていればよく、ケーシングは、内部に回転軸の少なくとも一部が配置されるケーシングであればよい。また、回転軸を通す貫通孔は、ケーシングの端部壁の一方にのみ形成されていればよい。すなわち、本実施形態のブラケット30のように、端部壁36a、36bの両方に貫通孔(すなわち、中央開口42a、42b)が形成されていなくてもよい。回転機器の例として、液体用撹拌機、遠心送排風機、軽荷重用コンベア、発電機、ウォームギア減速機、コンベア、ホイスト、エレベータ、ラインシャフト、ホールミル、レシプロ式コンプレッサ、ハンマーミル、クラッシャ、舶用プロペラなどを挙げることができる。
【0034】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0035】
本発明は、以下の態様を含む。
1. 内部に回転軸の少なくとも一部が配置されるケーシングの側部開口であって、側部開口を通してケーシングの外部から内部を視認可能な側部開口を覆うための保護カバーであって、
側部開口を覆う第1のカバープレートと、第2のカバープレートと、を備えており、
第1のカバープレートは、互いに対向する側の端部と端部の間を延びる側部とを有しており、
第1のカバープレートの端部の各々に、第1のカバープレートをケーシングに固定するための締結具が通される固定用穴が形成されており、
第2のカバープレートは、第1のカバープレートの少なくとも一方の側部に、第1のカバープレートに対して角度をなして固定されている、保護カバー。
2. 前記第1のカバープレートと前記第2のカバープレートとの間に折り曲げ部を有する、上記1.に記載の保護カバー。
3. 保護カバーは、少なくとも部分的に、網目状である、上記1.または2.に記載の保護カバー。
4. 保護カバーは、少なくとも部分的に、透明な材料で形成されている、上記1.または2.に記載の保護カバー。
5. 固定用穴として、互いに対向する側の端部の一方に丸孔が形成され、他方に切り欠きが形成されている、上記1.~4.のいずれかに記載の保護カバー。
6. ケーシングは、一対の端部壁と、一対の端部壁の間に配置され、側部開口が形成される側壁と、を含んでおり、
一対の端部壁の少なくとも一方は、回転軸が通る貫通孔を有し、貫通孔が、径方向外側に側部開口を越えて延在する拡径領域を含んでおり、
第2のカバープレートが拡径領域を覆うように構成される、上記1.~5.のいずれかに記載の保護カバー。
7. 回転機器であって、
回転軸と、
内部に回転軸の少なくとも一部が配置されるケーシングであって、ケーシングの外部から内部を視認可能な側部開口を有するケーシングと、
上記1.~6.のいずれかに記載の保護カバーと、を備える、回転機器。
8. 回転機器は、モータ部とモータ部の回転軸により駆動されるポンプ部とを備えるポンプシステムである、上記7.に記載の回転機器。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、回転機器に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
A、B 領域
10 ポンプシステム
11 モータ部
14 回転軸
16 モータケーシング
20 ポンプ部
30 ブラケット
32 本体
34 脚部
36a、36b 端部壁
38 側壁
38a、38b 取付け穴
40 側部開口
42a、42b 中央開口
44 軸封部
46 貫通孔
50 保護カバー
52 第1のカバープレート
54 第2のカバープレート
55 折り曲げ部
56 固定用穴(丸孔)
58 固定用穴(切り欠き)
62、64 端部
66、68 側部
66a、68a 切り欠き
70 網目状部分
90 締結具
92 取付け穴
300 ブラケット
360a 端部壁
380 側壁
400 側部開口
420a 中央開口
500 保護カバー(比較例)