(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】割岩工具、破砕装置および破砕方法
(51)【国際特許分類】
E21C 37/02 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
E21C37/02
(21)【出願番号】P 2021177530
(22)【出願日】2021-10-29
【審査請求日】2021-11-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399048869
【氏名又は名称】株式会社神島組
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】神島 昭男
(72)【発明者】
【氏名】神島 充子
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特許第4636294(JP,B1)
【文献】特許第6464396(JP,B1)
【文献】特開2016-160703(JP,A)
【文献】実開昭61-173592(JP,U)
【文献】特許第3381163(JP,B2)
【文献】特許第4961574(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21C 37/02
E21B 1/00-49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被破砕物に対して削孔形成方向に形成された削孔の内壁を押圧することで前記削孔の周囲に亀裂を発生させる割岩工具であって、
前記削孔形成方向と平行に延設されるとともに先端に向かって先細りした軸体構造を有するチゼル本体と、
前記削孔形成方向において前記チゼル本体の先端部よりも前記チゼル本体の後端側で、前記削孔形成方向と直交する第1直交方向において互いに反対方向に前記チゼル本体の側面から突設される一対の第1突設部と、
前記一対の第1突設部よりも前記チゼル本体の後端側で、前記削孔形成方向と直交する第2直交方向において互いに反対方向に前記チゼル本体の側面から突設される一対の第2突設部と、を備え、
前記削孔の内径d、前記チゼル本体の先端部の外径D0、前記一対の第1突設部の先端間の距離D1および前記一対の第2突設部の先端間の距離D2が、(D0<d<D1<D2)の大小関係を有し、
前記チゼル本体の先端部が前記削孔に対して前記削孔形成方向に押し込まれることによって、
前記一対の第1突設部が前記削孔の開口近傍領域で前記削孔の内壁を前記第1直交方向に押圧することで前記削孔の周囲に亀裂を発生させる第1割岩処理と、
前記一対の第1突設部が前記開口近傍領域よりも深い領域で前記削孔の内壁を前記第1直交方向に押圧するとともに前記一対の第2突設部が前記開口近傍領域で前記削孔の内壁を前記第2直交方向に押圧することで前記削孔の周囲に亀裂を発生させる第2割岩処理と、
を順次開始することを特徴とする割岩工具。
【請求項2】
請求項1に記載の割岩工具であって、
前記第1直交方向と前記第2直交方向とが一致する割岩工具。
【請求項3】
請求項1に記載の割岩工具であって、
前記第1直交方向と前記第2直交方向とが交差する割岩工具。
【請求項4】
請求項3に記載の割岩工具であって、
前記第1直交方向と前記第2直交方向とが互いに直交する割岩工具。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の割岩工具と、
前記チゼル本体の先端部を前記削孔に対して前記削孔形成方向に押し込んで、前記第1割岩処理および前記第2割岩処理を順次開始させる作業機械と、
を備える
ことを特徴とする破砕装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の割岩工具を用いて被破砕物を破砕する破砕方法であって、
前記チゼル本体の先端部を前記削孔に挿入する第1工程と、
前記第1工程後に、前記チゼル本体を前記削孔に対して前記削孔形成方向に押し込むことによって、前記第1割岩処理および前記第2割岩処理を順次開始する第2工程と、
を備えることを特徴とする破砕方法。
【請求項7】
被破砕物に対して削孔形成方向に形成された削孔の内壁を押圧することで前記削孔の周囲に亀裂を発生させる割岩工具であって、
前記削孔の内部で互いに対向しながら前記削孔の径方向に移動自在に配置される一対の羽根部材と、
前記削孔形成方向と平行に延設されるとともに先端に向かって先細りした軸体構造を有する楔部材と、
前記削孔形成方向において前記一対の羽根部材の後端側で、前記削孔形成方向と直交する第3直交方向において互いに反対方向に前記一対の羽根部材の側面からそれぞれ突設される一対の第3突設部と、
前記一対の第3突設部よりも前記一対の羽根部材の先端側で、前記削孔形成方向と直交する第4直交方向において互いに反対方向に前記一対の羽根部材の側面からそれぞれ突設される一対の第4突設部と、を備え、
前記一対の第3突設部の先端間の距離D3および前記一対の第4突設部の先端間の距離D4が、(D3>D4)の大小関係を有し、
前記一対の羽根部材、前記一対の第3突設部および前記一対の第4突設部が前記削孔内に挿入されるとともに前記一対の羽根部材の間に挿入された状態で前記羽根部材に対する前記楔部材の前記削孔形成方向への移動に応じ、前記一対の羽根部材が互いに離れるように移動することによって、
前記一対の第3突設部が前記削孔の開口近傍領域で前記削孔の内壁を前記第3直交方向に押圧することで前記削孔の周囲に亀裂を発生させる第3割岩処理と、
前記一対の第4突設部が前記開口近傍領域よりも深い領域で前記削孔の内壁を前記第4直交方向に押圧することで前記削孔の周囲に亀裂を発生させる第4割岩処理と、
を順次開始することを特徴とする割岩工具。
【請求項8】
請求項7に記載の割岩工具であって、
前記第3直交方向と前記第4直交方向とが一致する破砕装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の割岩工具と、
前記一対の羽根部材の間に挿入された前記楔部材を前記一対の羽根部材に対して前記削孔形成方向に押し込んで、前記第3割岩処理および前記第4割岩処理を順次開始させる作業機械と、
を備えることを特徴とする破砕装置。
【請求項10】
請求項7または8に記載の割岩工具を用いて被破砕物を破砕する破砕方法であって、
前記一対の羽根部材、前記一対の第3突設部および前記一対の第4突設部を前記削孔内に挿入するとともに前記一対の羽根部材の間に前記楔部材を挿入する第3工程と、
前記第3工程後に、前記楔部材を前記一対の羽根部材に対して前記削孔形成方向に押し込むことで、前記一対の羽根部材を互いに離れるように移動させることによって、前記第3割岩処理および前記第4割岩処理を順次開始する第4工程と、
を備えることを特徴とする破砕方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、岩盤、岩石、コンクリート構造物などの被破砕物のうち当該被破砕物に形成された削孔の周囲に亀裂を発生させて破砕する技術、特に被破砕物の破砕に適した割岩工具、破砕装置および破砕方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
岩盤、岩石、コンクリート構造物などの被破砕物を破砕するために、2種類の破砕技術が提案されている。その一つは、楔型チゼルを割岩工具として用いたものである(例えば特許文献1参照)。ここでは、楔型チゼルの先端部を削孔に挿入した状態で、削孔の形成方向(以下「削孔形成方向」という)と平行な方向で楔型チゼルの後端部に打撃または振動を加えながら楔型チゼルを削孔形成方向に押し込む。すると、楔型チゼルの側面が削孔の内壁を削孔の径方向に押圧し、これによって削孔の周囲で被破砕物に亀裂を発生させて割岩する。
【0003】
もう一つは、楔部材(ウェッジと称されることもある)と羽根部材(ライナーと称されることもある)を有する割岩工具(セリ矢)を用いたものである(例えば特許文献2~特許文献4参照)。ここでは、複数の羽根部材と楔部材とを組み合わせた割岩工具を削孔内に挿入した後で、楔部材の後端部をブレーカーで打撃して楔部材を圧入することで楔部材の先端部に形成される傾斜面に対して複数の羽根部材を相対的に摺動させながら削孔の径方向外側に移動させる。すると、羽根部材の外側面が削孔の内壁を削孔の径方向に押圧し、これによって削孔の周囲で被破砕物に亀裂を発生させて割岩する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4636294号
【文献】特許第3381163号
【文献】特許第4961574号
【文献】特許第6464396号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、削孔形成方向において被破砕物をいくつかの領域に区分すると、削孔の開口近傍領域が最も割岩しやすく、削孔形成方向に進むにしたがって割岩し難くなる。この点を考慮すると、まず最初に開口近傍領域に対して亀裂を優先的に発生させ、それに続いて削孔形成方向に順次亀裂を発生させるのが効率的であると考えられる。しかしながら、上記した従来技術では、楔型チゼルの側面や羽根部材の外側面が削孔の内壁に当接する、つまり面接触した状態で削孔の内壁を削孔の径方向に押圧している。したがって、削孔の内壁に対し、押圧力が比較的広い領域にわたって加わる。そのため、単位面積当たりの荷重は低く、亀裂の発生領域を開口近傍領域から順次削孔形成方向に移行させるという技術には不向きである。そこで、被破砕物のうち削孔の開口近傍領域を優先的に、かつ効率的に亀裂を発生させて割岩し、それに続いて亀裂の導入領域を削孔形成方向に広げて被破砕物を破砕することができる技術ならびにそれに適した割岩工具の提供が望まれている。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、被破砕物に形成される削孔の周囲に亀裂を効率的に発生させて破砕することができる破砕技術ならびに当該破砕技術に適した割岩工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の態様は、被破砕物に対して削孔形成方向に形成された削孔の内壁を押圧することで削孔の周囲に亀裂を発生させる割岩工具であって、削孔形成方向と平行に延設されるとともに先端に向かって先細りした軸体構造を有するチゼル本体と、削孔形成方向においてチゼル本体の先端部よりもチゼル本体の後端側で、削孔形成方向と直交する第1直交方向において互いに反対方向にチゼル本体の側面から突設される一対の第1突設部と、一対の第1突設部よりもチゼル本体の後端側で、削孔形成方向と直交する第2直交方向において互いに反対方向にチゼル本体の側面から突設される一対の第2突設部と、を備え、削孔の内径d、チゼル本体の先端部の外径D0、一対の第1突設部の先端間の距離D1および一対の第2突設部の先端間の距離D2が、(D0<d<D1<D2)の大小関係を有し、チゼル本体の先端部が削孔に対して削孔形成方向に押し込まれることによって、一対の第1突設部が削孔の開口近傍領域で削孔の内壁を第1直交方向に押圧することで削孔の周囲に亀裂を発生させる第1割岩処理と、一対の第1突設部が開口近傍領域よりも深い領域で削孔の内壁を第1直交方向に押圧するとともに一対の第2突設部が開口近傍領域で削孔の内壁を第2直交方向に押圧することで削孔の周囲に亀裂を発生させる第2割岩処理と、を順次実行することを特徴としている。
【0008】
また、この発明の第2の態様は、破砕装置であって、上記チゼル本体、第1突設部および第2突設部を備える割岩工具と、チゼル本体の先端部を削孔に対して削孔形成方向に押し込んで、第1割岩処理および第2割岩処理を順次実行させる作業機械と、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、この発明の第3の態様は、上記チゼル本体、第1突設部および第2突設部を備える割岩工具を用いて被破砕物を破砕する破砕方法であって、チゼル本体の先端部を削孔に挿入する第1工程と、第1工程後に、チゼル本体を削孔に対して削孔形成方向に押し込むことによって、第1割岩処理および第2割岩処理を順次実行する第2工程と、を備えることを特徴としている。
【0010】
また、この発明の第4の態様は、被破砕物に対して削孔形成方向に形成された削孔の内壁を押圧することで削孔の周囲に亀裂を発生させる割岩工具であって、削孔の内部で互いに対向しながら削孔の径方向に移動自在に配置される一対の羽根部材と、削孔形成方向と平行に延設されるとともに先端に向かって先細りした軸体構造を有する楔部材と、削孔形成方向において一対の羽根部材の後端側で、削孔形成方向と直交する第3直交方向において互いに反対方向に一対の羽根部材の側面からそれぞれ突設される一対の第3突設部と、一対の第3突設部よりも一対の羽根部材の先端側で、削孔形成方向と直交する第4直交方向において互いに反対方向に一対の羽根部材の側面からそれぞれ突設される一対の第4突設部と、を備え、一対の第3突設部の先端間の距離D3および一対の第4突設部の先端間の距離D4が、(D3>D4)の大小関係を有し、一対の羽根部材、一対の第3突設部および一対の第4突設部が削孔内に挿入されるとともに一対の羽根部材の間に挿入された状態で羽根部材に対する楔部材の削孔形成方向への移動に応じ、一対の羽根部材が互いに離れるように移動することによって、一対の第3突設部が削孔の開口近傍領域で削孔の内壁を第3直交方向に押圧することで削孔の周囲に亀裂を発生させる第3割岩処理と、一対の第4突設部が開口近傍領域よりも深い領域で削孔の内壁を第4直交方向に押圧することで削孔の周囲に亀裂を発生させる第4割岩処理と、を順次実行することを特徴としている。
【0011】
また、この発明の第5の態様は、破砕装置であって、上記羽根部材、楔部材、第3突設部および第4突設部を備える割岩工具と、一対の羽根部材の間に挿入された楔部材を一対の羽根部材に対して削孔形成方向に押し込んで、第3割岩処理および第4割岩処理を順次実行させる作業機械と、を備えることを特徴としている。
【0012】
さらに、この発明の第6の態様は、上記羽根部材、楔部材、第3突設部および第4突設部を備える割岩工具を用いて被破砕物を破砕する破砕方法であって、一対の羽根部材、一対の第3突設部および一対の第4突設部を削孔内に挿入するとともに一対の羽根部材の間に楔部材を挿入する第3工程と、第3工程後に、楔部材を一対の羽根部材に対して削孔形成方向に押し込むことで、一対の羽根部材を互いに離れるように移動させることによって、第3割岩処理および第4割岩処理を順次実行する第4工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、削孔の開口近傍領域で一対の突設部がそれぞれ削孔の内壁と点接触しながら押圧することで削孔の周囲に亀裂を効率的に発生させて破砕することができる。しかも、開口近傍領域に続いて亀裂の導入領域を削孔形成方向に広げて被破砕物を破砕することができる。その結果、削孔の周囲に亀裂を効率的に発生させて破砕することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る割岩工具の第1実施形態である楔型チゼルを装備する破砕装置を示す図である。
【
図2】本発明に係る割岩工具の第1実施形態である楔型チゼルを示す図である。
【
図3】
図1に示す破砕装置を用いて岩盤を破砕する動作を示す図である。
【
図4】本発明に係る割岩工具の第2実施形態である楔型チゼルを示す図である。
【
図5】本発明に係る割岩工具の第3実施形態を装備する破砕装置を示す図である。
【
図6】
図5の破砕装置に装備される割岩工具の構成を示す図である。
【
図7】
図5に示す破砕装置を用いて岩盤を破砕する動作を示す図である。
【
図8】本発明に係る割岩工具の第4実施形態を装備する破砕装置を示す図である。
【
図9】本発明に係る割岩工具の第5実施形態を装備する破砕装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
第1実施形態は、特許文献1に記載された破砕装置に本発明を適用したものである。以下、本発明の特徴部分について詳しく説明する一方、同一構成については一部省略するが、必要に応じて特許文献1を適宜参照することで構成理解を深めることができる。
【0016】
図1は、本発明に係る割岩工具の第1実施形態である楔型チゼルを装備する破砕装置を示す図である。油圧ブレーカー1に装着された楔型チゼル(以下、単に「チゼル」と称する)2の先端部を岩盤3に形成された削孔4に押し込むことで削孔4の周囲が破砕される。この明細書では、後の説明のために、
図1に示すようにXYZ座標軸を設定する。ここでは、削孔形成方向を「-Z」とし、削孔形成方向(-Z)と直交する第1水平方向を「+Y」とし、方向Zおよび方向Yに直交する方向を「X」とする。この点については、後で説明する実施形態においても同様である。
【0017】
油圧ブレーカー1は
図1に示すようにバックホウ等の建設車両5のアーム51にブラケット52を介して取り付けられている。この油圧ブレーカー1はブラケット52に支持されるブレーカー本体(図示省略)を備えている。また、このブレーカー本体は、中央部に油圧シリンダー11を有している。そして、不図示の油圧供給源から切換弁を介して油圧シリンダー11へ圧油を供給することにより、油圧シリンダー11内に摺嵌されるピストン12が軸方向に前後進可能になっている。
【0018】
ブレーカー本体の先端部(
図1の下方側端部)には、チゼル2の軸線AX(
図2)がピストン12の往復軸と同軸線上となるようにチゼル2の後端部が挿着され、このチゼル2の後端面とピストン12との間に打撃室が形成されている。そして、ブレーカー本体の先端部内では、上記ピストン12の打撃によってチゼル2が軸線AXの方向に所定距離の往復移動が可能になっている。なお、
図1中の符号53は、ピストン12の打撃時に発生する作動音が騒音として周囲に伝播するのを抑制する防音カバーである。
【0019】
図2は、本発明に係る割岩工具の第1実施形態である楔型チゼルを示す図である。同図(a)はチゼル2を(+X)方向から見た側面図であり、同図(b-0)~(b-4)はそれぞれチゼル2の軸線方向Zにおいて互いに異なる軸線方向位置Z0~Z4でのXY断面図である。
【0020】
楔型チゼル2は、削孔4の形成方向(-Z)と平行な軸線AXを有する軸体構造を有するチゼル本体20と、突設ペア21~24とを有している。チゼル本体20の後端部25が油圧ブレーカー1に装着可能となっている。一方、チゼル本体20は先端側、(-Z)方向側に進むにしたがって外径が減少する、いわゆる先細り形状を有している。より詳しくは、チゼル本体20の先端部26の外径D26(本発明の「外径D0」に相当)は削孔4の内径dよりも小さい。一方、先端部26から後端部25に向けてチゼル本体20の外径が連続的に大きくなるように、チゼル本体20の外側面は傾斜面に仕上げられている。そして、当該外側面から4つの突設ペア21~24が突設されている。
【0021】
突設ペア21は、一対の突設部21a、21bにより構成されている。突設部21a、21bは、削孔形成方向(-Z)においてチゼル本体20の先端部26よりもチゼル本体20の後端側の軸線方向位置Z1で、削孔形成方向(-Z)と直交するY方向において互いに反対方向にチゼル本体20の側面から半円球状に突設されている。より詳しくは、
図2に示すように、突設部21a、21bは、それらの先端間の距離D21が削孔4の内径dよりも大きくなるように、チゼル本体20の側面からそれぞれ(+Y)方向および(-Y)方向に突設されている。
【0022】
また、突設ペア22は、一対の突設部22a、22bにより構成されている。突設部22a、22bは、削孔形成方向(-Z)において突設ペア21よりもチゼル本体20の後端側の軸線方向位置Z2で、Y方向において互いに反対方向にチゼル本体20の側面から半円球状に突設されている。より詳しくは、
図2に示すように、突設部22a、22bは、それらの先端間の距離D22が上記距離D21よりも大きくなるように、チゼル本体20の側面からそれぞれ(+Y)方向および(-Y)方向に突設されている。
【0023】
また、突設ペア23は、一対の突設部23a、23bにより構成されている。突設部23a、23bは、削孔形成方向(-Z)において突設ペア22よりもチゼル本体20の後端側の軸線方向位置Z3で、Y方向において互いに反対方向にチゼル本体20の側面から半円球状に突設されている。より詳しくは、
図2に示すように、突設部23a、23bは、それらの先端間の距離D23が上記距離D22よりも大きくなるように、チゼル本体20の側面からそれぞれ(+Y)方向および(-Y)方向に突設されている。
【0024】
さらに、突設ペア24は、一対の突設部24a、24bにより構成されている。突設部24a、24bは、削孔形成方向(-Z)において突設ペア23よりもチゼル本体20の後端側の軸線方向位置Z4で、Y方向において互いに反対方向にチゼル本体20の側面から半円球状に突設されている。より詳しくは、
図2に示すように、突設部24a、24bは、それらの先端間の距離D24が上記距離D23よりも大きくなるように、チゼル本体20の側面からそれぞれ(+Y)方向および(-Y)方向に突設されている。
【0025】
このように本実施形態では、4つの突設ペア21~24のうち任意の2つ、例えば先端部26側に位置する突設ペア21が本発明の「一対の第1突設部」に相当し、突設ペア21の突設部21a、21bが本発明の「第1突設部」に相当し、それらの先端間の距離D21が本発明の「距離D1」に相当しているのに対し、後端部25側に位置する突設ペア22が本発明の「一対の第2突設部」に相当し、突設ペア22の突設部22a、22bが本発明の「第2突設部」に相当し、それらの先端間の距離D22が本発明の「距離D2」に相当している。また、その他の組み合わせについても同様であり、(D0<d<D1<D2)の大小関係が成立している。
【0026】
次に、このように構成された楔型チゼル2を用いて削孔4の周囲に亀裂を発生させて岩盤3を破砕する動作について、
図3を参照しつつ説明する。
図3は、
図1に示す破砕装置を用いて岩盤を破砕する動作を示す図である。
図2に示すチゼル2の先端部26を削孔4に挿入すると、同図の「タイミングT1」の欄に示すように、突設ペア21を構成する一対の突設部21a、21bが削孔4の開口近傍領域R1で削孔4の内壁と点接触する(本発明の「第1工程」の一例に相当)。
【0027】
この点接触状態で、油圧ブレーカー1のピストン12を軸線AXと略平行に往復動させてチゼル2の後端部25を直接打撃すると、チゼル2が削孔4に押し込まれる(本発明の「第2工程」の一例に相当)。このとき、削孔4の開口近傍領域R1では、削孔4の内壁のうち突設部21a、21bと点接触している箇所に対して(+Y)方向および(-Y)方向への押圧力が集中的に与えられる。このため、岩盤3の開口近傍領域R1に対して優先的に、しかも効率的に亀裂が発生して割岩される(第1割岩処理)。
【0028】
第1割岩処理に続けてチゼル2を削孔4にさらに押し込んだタイミングT2では、同図の「タイミングT2」の欄に示すように、突設ペア21を構成する一対の突設部21a、21bが削孔4の開口近傍領域R1よりも深い領域、つまり(-Z)方向側に隣接する第1中間領域R2で削孔4の内壁と点接触する。また、突設ペア22を構成する一対の突設部22a、22bが削孔4の開口近傍領域R1に移動し、削孔4の内壁と点接触する。そして、チゼル2の後端部25への直接打撃によるチゼル2の押込により、突設部21a、21bがそれぞれ第1中間領域R2で削孔4の内壁を(+Y)方向および(-Y)方向に押圧するとともに突設部22a、22bがそれぞれ開口近傍領域R1で削孔4の内壁を(+Y)方向および(-Y)方向にさらに押圧する。これらにより、開口近傍領域R1に導入された亀裂の総量が増加するとともに、第1中間領域R2で新たな亀裂が発生する(第2割岩処理)。
【0029】
第2割岩処理に続いてチゼル2を削孔4にさらに押し込んだタイミングT3では、同図の「タイミングT3」の欄に示すように、突設ペア21を構成する一対の突設部21a、21bが第1中間領域R2の(-Z)方向側に隣接する第2中間領域R3に到達し、突設ペア22を構成する一対の突設部22a、22bが第1中間領域R2に到達し、突設ペア23を構成する一対の突設部23a、23bが開口近傍領域R1に到達する。そして、チゼル2の後端部25への直接打撃によるチゼル2の押込により、突設部21a、21bがそれぞれ第2中間領域R3で削孔4の内壁を(+Y)方向および(-Y)方向に押圧し、突設部22a、22bがそれぞれ第1中間領域R2で削孔4の内壁を(+Y)方向および(-Y)方向に押圧するとともに突設部23a、23bがそれぞれ開口近傍領域R1で削孔4の内壁を(+Y)方向および(-Y)方向にさらに押圧する。これらにより、開口近傍領域R1および第1中間領域R2に導入された亀裂の総量が増加するとともに、第2中間領域R3で新たな亀裂が発生する。
【0030】
さらにチゼル2を削孔4に押し込んだタイミングT4では、同図の「タイミングT4」の欄に示すように、突設ペア21を構成する一対の突設部21a、21bが第2中間領域R3の(-Z)方向側に隣接する削孔4の底部領域R4に到達し、突設ペア22を構成する一対の突設部22a、22bが第2中間領域R3に到達し、突設ペア23を構成する一対の突設部23a、23bが第1中間領域R2に到達し、突設ペア24を構成する一対の突設部24a、24bが開口近傍領域R1に到達する。そして、チゼル2の後端部25への直接打撃によるチゼル2の押込により、突設部21a、21bがそれぞれ底部領域R4で削孔4の内壁を(+Y)方向および(-Y)方向に押圧し、突設部22a、22bがそれぞれ第2中間領域R3で削孔4の内壁を(+Y)方向および(-Y)方向に押圧し、突設部23a、23bがそれぞれ第1中間領域R2で削孔4の内壁を(+Y)方向および(-Y)方向に押圧するとともに突設部24a、24bがそれぞれ開口近傍領域R1で削孔4の内壁を(+Y)方向および(-Y)方向にさらに押圧する。これらにより、開口近傍領域R1、第1中間領域R2および第2中間領域R3に導入された亀裂の総量が増加するとともに、底部領域R4で新たな亀裂が発生する。
【0031】
以上のように、第1実施形態では、チゼル2の後端部25への直接打撃によるチゼル2の押込により、第1割岩処理および第2割岩処理が順次開始される。つまり、開口近傍領域R1で亀裂を優先的に、効率的に発生させ、それに続いて亀裂の導入領域を削孔形成方向(-Z)に広げている。その結果、岩盤3に形成される削孔4の周囲に亀裂を効率的に発生させることができる。
【0032】
このように第1実施形態では、岩盤3が本発明の「被破砕物」の一例に相当している。また、突設ペア21~24のいずれにおいても、突設部の離間方向はY方向であり、当該Y方向が本発明の「第1直交方向」および「第2直交方向」に相当している。また、油圧ブレーカー1が装着された建設車両5が本発明の「作業機械」の一例に相当している。
【0033】
<第2実施形態>
第1実施形態では、上記したように本発明の「第1直交方向」および「第2直交方向」を一致させており、亀裂の向きを揃えているが、「第1直交方向」および「第2直交方向」が交差するように構成してもよい。例えば
図4に示すように、突設ペア21、23における突設部の離間方向をX方向とする一方で、突設ペア22、24における突設部の離間方向をY方向としてもよい(第2実施形態)。この第2実施形態に係るチゼル(割岩工具)を用いることで、亀裂の向きを多様化させながら岩盤3に形成される削孔4の周囲に亀裂を効率的に発生させることができる。この点については、次に説明する第3実施形態においても同様である。
【0034】
<第3実施形態>
第3実施形態は、特許文献4に記載された破砕装置に本発明を適用したものである。以下、本発明の特徴部分について詳しく説明する一方、同一構成については一部省略するが、必要に応じて特許文献4を適宜参照することで構成理解を深めることができる。
【0035】
図5は、本発明に係る割岩工具の第3実施形態を装備する破砕装置を示す図である。油圧ブレーカー1に装着された割岩工具100を用いて岩盤3に形成された削孔4の周囲が破砕される。割岩工具100は、削孔4の形成方向(-Z)と平行に延設された2枚の羽根部材110、120と、羽根部材110、120の後端部を相互に連結する連結機構130と、羽根部材110、120の間に対して先端部を挿脱可能に形成された楔部材140と、突設ペア151~154とを有している。
【0036】
図6は、
図5の破砕装置に装備される割岩工具の構成を示す図であり、(a)は割岩工具100の側面図であり、(b-1)~(b-4)は、それぞれ羽根部材110、120の延設方向Zにおいて互いに異なる軸線方向位置Z1~Z4でのXY断面図である。割岩工具100では、羽根部材110、120は同形状及び同寸法である。そこで、羽根部材110の構成を以下に説明する一方で、羽根部材120の各部については相当符号を付して説明を省略する。
【0037】
羽根部材110は、フランジ部11aと、フランジ部11aの下面から削孔形成方向(-Z)と平行な方向に延びる押圧部11bとを有している。押圧部11bのうち削孔4の内壁と対向する面は、削孔形成方向(-Z)に沿った円弧面を基本形状として構成されている。押圧部11bでは円弧面と反対側に傾斜面が形成されている。そして、2つの羽根部材110、120は、傾斜面同士が向かい合うように配置された状態で、連結機構130によりフランジ部11a、12aを相互に連結することで一体化される。
【0038】
連結機構130は、特許文献4に記載された連結機構と同様に構成されている。つまり、連結機構130は、コイルばね131~133、ボルト134およびナット135により形成されている。フランジ部11a、12aの(+X)方向側では、
図6(a)に示すように、フランジ部11a、12aにそれぞれ形成される貫通孔11c、12cに挟まれるようにコイルばね132が配置されている。また、貫通孔11cの(+Y)方向側にコイルばね131が配置されるとともに、貫通孔12cの(-Y)方向側にコイルばね133が配置されている。そして、コイルばね133、貫通孔12c、コイルばね132、貫通孔11cおよびコイルばね131を貫通してボルト134が挿通され、ボルト134の先端の雄ネジ部にナット135が螺合されている。なお、
図6への図示を省略しているように、フランジ部11a、12aの(-X)方向側においても、上記と同様に、コイルばね131~133、ボルト134およびナット135が設けられている。
【0039】
コイルばね132は羽根部材110、120をY方向において相互に離間させるように付勢している。また、ボルト134の頭部が羽根部材110の(-Y)方向の移動を規制し、ナット135が羽根部材120の(+Y)方向の移動を規制する。また、コイルばね131は羽根部材110とボルト134の頭部との間に配置されて羽根部材110をボルト134の頭部に対して(+Y)方向に付勢している。さらに、コイルばね133は羽根部材120とナット135との間に配置されて羽根部材120をナット135に対して(-Y)方向に付勢している。
【0040】
このように連結機構130を設けたことによって、羽根部材110、120はボルト134の円筒部にガイドされながらY方向に移動可能な状態で相互に連結されており、羽根部材110、120の位置関係をナット135によって調整可能となっている。また、羽根部材110、120の先端部、つまり押圧部11b、12bを削孔4に挿入していくと、フランジ部11a、12aが削孔4の周辺表面に係止され、それ以上の挿入が規制されて割岩工具100が削孔4に対してセット可能となっている。さらに、羽根部材110、120の一体化によって両傾斜面によって挟まれる空間は羽根部材110、120の先端側ほど細くなる先細り形状となる。この先細り形状の空間に、この空間と同様に先細り形状に構成された楔部材140が挿入される。
【0041】
この楔部材140の先端部は、X方向に直交する断面において矩形形状を有し、先端に向かうにしたがってY方向の厚みが減少する先細り形状を有しており、(-Y)側面および(+Y)側面は傾斜面となっている。また、
図6中の符号136、137は連結機構130により羽根部材110、120を連結してなる連結体を吊持するためのフックであり、フック136、137はそれぞれフランジ部11a、12aの上面から立設され、ワイヤー138を装着可能となっている。
【0042】
上記楔部材140の圧入を行うための油圧ブレーカー1は、
図5に示すように油圧パワーショベル等の建設車両5のアーム51にブラケット52を介して取り付けられている。このため、オペレータが建設車両5の操作レバーなどを操作してアーム51の位置や角度などを制御することで油圧ブレーカー1の位置および姿勢に制御可能となっている。このように、本実施形態においても、油圧ブレーカー1が装着された建設車両5が本発明の「作業機械」の一例に相当している。
【0043】
図6に戻って割岩工具100の構成説明を続ける。羽根部材110、120の外側面(円弧面)から4つの突設ペア151~154が突設されている。
【0044】
突設ペア151は、一対の突設部151a、151bにより構成されている。突設部151a、151bは、削孔形成方向(-Z)において羽根部材110、120の先端よりも(+Z)方向側の軸線方向位置Z1で、削孔形成方向(-Z)と直交するY方向において互いに反対方向に羽根部材110、120の外側面から半円球状にそれぞれ突設されている。より詳しくは、
図6に示すように、楔部材140が削孔形成方向(-Z)に押し込まれていない状態、つまり割岩処理の準備状態で、突設部151a、151bは、それらの先端間の距離D151が削孔4の内径dよりも小さくなるように、羽根部材110、120の外側面からそれぞれ(+Y)方向および(-Y)方向に突設されている。
【0045】
また、突設ペア152は、一対の突設部152a、152bにより構成されている。突設部152a、152bは、削孔形成方向(-Z)において突設ペア151よりも(+Z)方向側の軸線方向位置Z2で、Y方向において互いに反対方向に羽根部材110、120の外側面から半円球状に突設されている。より詳しくは、
図6に示すように、突設部152a、152bは、割岩処理の準備状態において、それらの先端間の距離D152が削孔4の内径dよりも小さく、かつ上記距離D151よりも大きくなるように、羽根部材110、120の外側面からそれぞれ(+Y)方向および(-Y)方向に突設されている。
【0046】
また、突設ペア153は、一対の突設部153a、153bにより構成されている。突設部153a、153bは、削孔形成方向(-Z)において突設ペア152よりも(+Z)方向側の軸線方向位置Z3で、Y方向において互いに反対方向に羽根部材110、120の外側面から半円球状に突設されている。より詳しくは、
図6に示すように、突設部153a、153bは、割岩処理の準備状態において、それらの先端間の距離D153が削孔4の内径dよりも小さく、かつ上記距離D152よりも大きくなるように、羽根部材110、120の外側面からそれぞれ(+Y)方向および(-Y)方向に突設されている。
【0047】
さらに、突設ペア154は、一対の突設部154a、154bにより構成されている。突設部154a、154bは、削孔形成方向(-Z)において突設ペア153よりも(+Z)方向側の軸線方向位置Z4で、Y方向において互いに反対方向に羽根部材110、120の外側面から半円球状に突設されている。より詳しくは、
図6に示すように、突設部154a、154bは、割岩処理の準備状態において、それらの先端間の距離D154が削孔4の内径dよりも小さく、かつ上記距離D153よりも大きくなるように、羽根部材110、120の外側面からそれぞれ(+Y)方向および(-Y)方向に突設されている。
【0048】
このように本実施形態では、4つの突設ペア151~154は、それぞれ「底部領域R4(
図3参照)」、「第2中間領域R3(
図3参照)」、「第1中間領域R2(
図3参照)」および「開口近傍領域R1(
図3参照)」に対応している。また、4つの突設ペア151~154のうち任意の2つ、例えば突設ペア154が本発明の「一対の第3突設部」に相当し、突設ペア154を構成する突設部154a、154bが本発明の「第3突設部」に相当し、それらの先端間の距離D154が本発明の「距離D3」に相当しているのに対し、突設ペア153が本発明の「一対の第4突設部」に相当し、突設ペア153の突設部153a、153bが本発明の「第4突設部」に相当し、それらの先端間の距離D153が本発明の「距離D4」に相当している。また、その他の組み合わせについても同様であり、(D3>D4)の大小関係が成立している。
【0049】
次に、このように構成された割岩工具100を用いて削孔4の周囲に亀裂を発生させて岩盤3を破砕する動作について、
図7を参照しつつ説明する。
図7は、
図5に示す破砕装置を用いて岩盤を破砕する動作を示す図である。
図6に示すように、羽根部材110、120の押圧部11b、12bを削孔4に挿入するとともに、楔部材140の先端部を羽根部材110、120の間に挿入する(本発明の「第3工程」の一例に相当)。なお、この段階では、楔部材140は削孔形成方向(-Z)に押し込まれていない、つまり割岩処理の準備状態に維持される。
【0050】
これに続いて、油圧ブレーカー1のピストンで楔部材140の後端部が打撃されて楔部材140の先端部が削孔形成方向(-Z)に押込み量H1だけ圧入されると、楔部材140が羽根部材110、120に対して削孔形成方向(-Z)4に沿って移動する。これに伴って羽根部材110、120がそれぞれ(+Y)方向および(-Y)方向に移動することで、以下のようにして割岩処理が実行される(本発明の「第4工程」の一例に相当)。すなわち、上記距離D151~D154および削孔4の内径dは、次の大小関係、
D151<D152<D153<D154<d
を有しているため、
図7の「タイミングT1」の欄に示すように、比較的小さな押込み量H1では、削孔4の開口近傍領域R1に対応する突設ペア154の突設部154a、154bのみが削孔4の内壁と点接触し、(+Y)方向および(-Y)方向に押圧力を集中的に与える。このため、岩盤3の開口近傍領域R1に対して優先的に、しかも効率的に亀裂が発生して割岩される(第3割岩処理)。
【0051】
楔部材140が押込み量H2まで圧入されると、羽根部材110、120の移動量も増加し、突設ペア154だけでなく、削孔4の第1中間領域R2に対応する突設ペア153の突設部153a、153bも削孔4の内壁と点接触し、(+Y)方向および(-Y)方向に押圧力を集中的に与える。つまり、突設ペア154による開口近傍領域R1への亀裂の追加(第3割岩処理)と、突設ペア153による第1中間領域R2への亀裂の導入(第4割岩処理)とが並行して行われる。
【0052】
また、楔部材140が押込み量H3まで圧入されると、羽根部材110、120の移動量もさらに増加し、突設ペア154、153だけでなく、削孔4の第2中間領域R3に対応する突設ペア152の突設部152a、152bも削孔4の内壁と点接触し、(+Y)方向および(-Y)方向に押圧力を集中的に与える。これにより、割岩工具100による割岩処理が実行される範囲が削孔形成方向(-Z)に広がる。
【0053】
さらに、楔部材140が押込み量H4まで圧入されると、羽根部材110、120の移動量もさらに増加し、突設ペア154、153、152だけでなく、削孔4の底部領域R4に対応する突設ペア151の突設部151a、151bも削孔4の内壁と点接触し、(+Y)方向および(-Y)方向に押圧力を集中的に与える。これにより、割岩工具100による割岩処理が実行される範囲が削孔4の底部まで広がる。
【0054】
以上のように、第3実施形態に係る割岩工具100を用いて破砕処理を行うと、第1実施形態と同様に、楔部材140の押込により、第3割岩処理および第4割岩処理が順次開始される。つまり、開口近傍領域R1で亀裂を優先的に、効率的に発生させ、それに続いて亀裂の導入領域を削孔形成方向(-Z)に広げている。その結果、岩盤3に形成される削孔4の周囲に亀裂を効率的に発生させることができる。
【0055】
このように第3実施形態では、突設ペア151~154のいずれにおいても、突設部の離間方向はY方向であり、当該Y方向が本発明の「第3直交方向」および「第4直交方向」に相当している。
【0056】
<第4実施形態>
第4実施形態は、特許文献2に記載された破砕装置に本発明を適用したものである。以下、本発明の特徴部分について詳しく説明する一方、同一構成については一部省略するが、必要に応じて特許文献2を適宜参照することで構成理解を深めることができる。
【0057】
図8は、本発明に係る割岩工具の第4実施形態を装備する破砕装置を示す図である。この第4実施形態に係る割岩工具100は、楔部材140を挟んで対向する一対の羽根部材110、120を2組設けたものである。これに対応して突設ペア151~154がそれぞれ2組設けられている点を除き、第3実施形態と同様に構成されている。このため、第4実施形態に係る割岩工具100の楔部材140を油圧シリンダー6により削孔形成方向(-Z)に移動させて破砕処理を行うと、楔部材140の押込に応じて第3割岩処理および第4割岩処理が順次開始される。その結果、第3実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0058】
<第5実施形態>
第5実施形態は、特許文献3に記載された破砕装置に本発明を適用したものである。以下、本発明の特徴部分について詳しく説明する一方、同一構成については一部省略するが、必要に応じて特許文献3を適宜参照することで構成理解を深めることができる。
【0059】
図9は、本発明に係る割岩工具の第5実施形態を装備する破砕装置を示す図である。この第5実施形態に係る割岩工具100は、突設ペア154が1組であるのに対し、突設ペア151~153がそれぞれ2組設けられている点を除き、第3実施形態と同様に構成されている。このため、第5実施形態に係る割岩工具100の楔部材140を油圧シリンダー6により削孔形成方向(-Z)に移動させて破砕処理を行うと、楔部材140の押込に応じて第3割岩処理および第4割岩処理が順次開始される。その結果、第3実施形態と同様の作用効果が得られる。その結果、第3実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0060】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記第1実施形態および第2実施形態では、割岩工具2に対して4種類の突設ペア21~24を設けているが、突設ペアの種類はこれに限定されるものではなく、2種類以上の突設ペアを設け、削孔4の内壁を押圧するタイミングを相違させることで第1割岩処理および第2割岩処理が順次開始されるように構成してもよい。
【0061】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、チゼル本体20の側面への突設部21a、21b、…、24a、24bの突設方法について具体的に言及していないが、割岩処理に耐え得る金属ブロックを切削加工してチゼル本体20と突設部21a、21b、…、24a、24bとを一体的に成形するのが望ましいが、チゼル本体20と突設部21a、21b、…、24a、24bとを個別に成形し、突設部21a、21b、…、24a、24bをチゼル本体20に取り付けてもよいし、チゼル本体20の側面に金属材料を半球形状に肉盛して突設部21a、21b、…、24a、24bを形成してもよい。これらの点については、第3実施形態ないし第5実施形態における羽根部材110の外側面への突設部151a~154aの突設および羽根部材120の外側面への突設部151b~154bの突設も同様である。
【0062】
また、上記第3実施形態ないし第5実施形態では、割岩工具100に対して4種類の突設ペア151~154を設けているが、突設ペアの種類はこれに限定されるものではなく、2種類以上の突設ペアを設け、削孔4の内壁を押圧するタイミングを相違させることで第3割岩処理および第4割岩処理が順次開始されるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明は、岩盤、岩石、コンクリート構造物などの被破砕物のうち当該被破砕物に形成される削孔の周囲に向けて亀裂を発生させて破砕する技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…油圧ブレーカー(作業機械)
2…楔型チゼル(割岩工具)
3…岩盤(被破砕物)
4…削孔
5…建設車両(作業機械)
6…油圧シリンダー(作業機械)
20…チゼル本体
21~24,151~154…突設ペア
21a~24a、21b~24b、151a~154a、151b~154b…突設部 110,120…羽根部材
130…連結機構
140…楔部材
AX…軸線
R1…開口近傍領域
-Z…削孔形成方向
【要約】
【課題】被破砕物に形成される削孔の周囲に亀裂を効率的に発生させて破砕する。
【解決手段】チゼル本体の側面に対し、削孔形成方向と直交する第1直交方向において互いに反対方向に一対の第1突設部が突設され、第1突設部よりもチゼル本体の後端側で、削孔形成方向と直交する第2直交方向において互いに反対方向に一対の第2突設部が突設されている。削孔の内径d、チゼル本体の先端部の外径D0、一対の第1突設部の先端間の距離D1および一対の第2突設部の先端間の距離D2が、(D0<d<D1<D2)の大小関係を有しており、チゼル本体の先端部が削孔に対して削孔形成方向に押し込まれることによって、開口近傍領域で亀裂が優先的に、効率的に発生し、それに続いて亀裂の導入領域が削孔形成方向に広げられる。
【選択図】
図3