(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】熱伝達率測定素子
(51)【国際特許分類】
G01N 25/18 20060101AFI20220301BHJP
G01K 7/02 20210101ALI20220301BHJP
G01K 17/20 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
G01N25/18 E
G01K7/02 Z
G01K17/20
(21)【出願番号】P 2019554646
(86)(22)【出願日】2017-10-24
(86)【国際出願番号】 KR2017011757
(87)【国際公開番号】W WO2018186544
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2019-10-10
(31)【優先権主張番号】10-2017-0043221
(32)【優先日】2017-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518445687
【氏名又は名称】韓国原子力研究院
【氏名又は名称原語表記】KOREA ATOMIC ENERGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】111, Daedeok-daero 989beon-gil, Yuseong-gu, Daejeon 34057, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソンジェ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョンシク
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ソングク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジンファ
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0079423(KR,A)
【文献】特開2007-271456(JP,A)
【文献】特開2008-089475(JP,A)
【文献】特開2003-057121(JP,A)
【文献】特開2003-130737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00-25/72
G01K 17/20
G01K 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面方向に並んで配置されて異なる熱伝達度を有する第1材料部及び第2材料部を備える第1レイヤと、
前記第1レイヤの厚さ方向に前記第1材料部に並んで配置されて前記第2材料部と同じ熱伝達度を有する第3材料部、及び前記厚さ方向に前記第2材料部に並んで配置されて前記第1材料部と同じ熱伝達度を有する第4材料部を備える第2レイヤと、
前記第1レイヤと前記第2レイヤとの間に介在し、前記対象物の熱伝達率の算出のために前記表面方向における温度差を測定するように構成される温度測定レイヤとを含み、
前記温度測定レイヤは、
前記第1材料部と前記第3材料部との間に設けられる第1接点、及び前記第2材料部と前記第4材料部との間に設けられる第2接点を備える熱電対部と、
前記熱電対部に対応する形状を有し、前記熱電対部に並んで配置される電気伝導性材質のノイズ検知部とを含む、熱伝達率測定素子。
【請求項2】
前記熱電対部及び前記ノイズ検知部は、前記厚さ方向に並んで配置され、
前記温度測定レイヤは、前記熱電対部と前記ノイズ検知部との間に挿入される絶縁部をさらに含む、請求項1に記載の熱伝達率測定素子。
【請求項3】
前記熱電対部及び前記ノイズ検知部にそれぞれ電気的に接続され、前記熱電対部により検知される起電力から前記ノイズ検知部により検知される起電力を引いた値に基づいて前記対象物の熱伝達率を算出するように構成される制御部をさらに含む、請求項1に記載の熱伝達率測定素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の表面に取り付けられて対象物の熱伝達率(heat transfer rate)を測定する熱伝達率測定素子に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝達現象は、伝導、対流及び輻射の少なくとも1つの形態で起こる。単位時間当たりの熱伝達量である熱伝達率は、熱伝達に関する研究及び広範囲の産業分野における調査及び測定が要求される物理量である。熱伝達率は、一般的に単位時間当たりの熱量(例えば、[kJ/s=kW])、又は、単位面積及び時間当たりの熱量を意味する熱流束(例えば、[kW/m2])として表される。
【0003】
熱伝達率又は熱流束を測定するための装置である熱伝達率測定センサ又は熱流束測定センサは、測定精度と信頼性の向上のために改善が続けられている。特に、近年、MEMS(microelectromechanical system)技術を用いた小型化が実現されており、よって、適用分野が広く拡大している。
【0004】
一般的な層状型(layered-type)熱伝達率測定センサは、熱伝達により温度差が生じる2つの地点の温度を熱電対(thermocouple)又は熱電対列(thermopile)で測定して熱伝達率を算出するように構成される。ここで、従来のセンサにおいては、温度差を測定する2つの地点を対象物に取り付けられる一面と外気にさらされる他面とにする構成が多数であった。また、上記構成においては、対象物への取り付けや外部への露出などの測定環境によって様々な誤差要因が存在する。
【0005】
よって、特許文献1(2009年8月11日登録)においては、センサの内部に表面方向に沿って2つの接点を形成し、表面方向に沿った温度差を用いて厚さ方向の熱伝達率を算出する技術を提示している。
【0006】
もっとも、特許文献1のような従来の構造においては、接点の露出に起因する誤差要因は除去されるが、熱電対列で検知される電気信号である起電力にノイズが干渉する可能性が依然として存在する。また、対象物が位置する周囲環境の空気の流動に変化が生じると、測定結果に誤差が生じる可能性も存在する。
【0007】
さらに、特許文献1のような原理が適用される熱伝達率測定素子を設計する上で、製作利便性が向上するように積層構造を様々に変形させ、その変化させた構造を反映して熱伝達率を正確に算出できるようにする余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の第1の態様は、対象物の表面の熱伝達率を算出するために対象物の表面方向における温度差を測定する上で、電気的ノイズの干渉による誤差を除去することのできる熱伝達率測定素子を提供する。
【0010】
本発明の第2の態様は、対象物の表面の熱伝達率を算出する上で、対象物周囲の空気の流動による対流の影響を検知することのできる熱伝達率測定素子を提供する。
【0011】
本発明の第3の態様は、対象物の表面方向における温度差を検知して対象物の熱伝達率を算出することができ、様々な断面構造を有するようにすることのできる熱伝達率測定素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様を実現するために、本発明による熱伝達率測定素子は、異なる熱伝達度を有する第1材料部及び第2材料部を備える第1レイヤと、前記第1レイヤの厚さ方向に前記第1材料部に並んで配置されて前記第2材料部と同じ熱伝達度を有する第3材料部、及び前記厚さ方向に前記第2材料部に並んで配置されて前記第1材料部と同じ熱伝達度を有する第4材料部を備える第2レイヤと、前記第1レイヤと前記第2レイヤとの間で表面方向における温度差を測定するように構成される温度測定レイヤとを含み、前記温度測定レイヤは、前記第1材料部と前記第3材料部との間に設けられる第1接点、及び前記第2材料部と前記第4材料部との間に設けられる第2接点を備える熱電対部と、前記熱電対部に対応する形状を有し、前記熱電対部に並んで配置されるノイズ検知部とを含む。
【0013】
本発明の第2の態様を実現するために、本発明による熱伝達率測定素子は、異なる熱伝達度を有する第1材料部及び第2材料部を備える第1レイヤと、前記第1レイヤの厚さ方向に前記第1材料部に並んで配置されて前記第2材料部と同じ熱伝達度を有する第3材料部、前記厚さ方向に前記第2材料部に並んで配置されて前記第1材料部と同じ熱伝達度を有する第4材料部、及び前記厚さ方向に前記第1及び第2材料部の少なくとも一部に重なるように形成される第5材料部を備える第2レイヤと、前記第1レイヤと前記第2レイヤとの間で表面方向における温度差を測定するように構成される温度測定レイヤとを含み、前記温度測定レイヤは、前記第1材料部と前記第3材料部との間に設けられる第1接点、及び前記第2材料部と前記第4材料部との間に設けられる第2接点を備える熱電対部と、前記第1材料部と前記第5材料部との間に設けられる第3接点、及び前記第2材料部と前記第5材料部との間に設けられる第4接点を備える対流検知熱電対部とを含む。
【0014】
本発明の第3の態様を実現するために、本発明による熱伝達率測定素子は、一面が対象物の表面を向く第1材料部と、一面が前記対象物の表面を向くように前記第1材料部に隣接して配置され、前記第1材料部とは異なる熱伝達度を有する材質からなる第2材料部と、前記第1材料部の他面に結合され、前記第2材料部と同じ熱伝達度及び厚さを有する第3材料部と、前記第3材料部に隣接して前記第2材料部の他面に結合され、前記第1材料部と同じ熱伝達度及び厚さを有する第4材料部と、前記第1材料部又は前記第3材料部の内部に設けられる第1接点、前記対象物の表面方向に前記第1接点から離隔して配置されるように前記第4材料部又は前記第2材料部の内部に設けられる第2接点を備える熱電対部とを含む。
【発明の効果】
【0015】
以上のように構成される本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0016】
第一に、本発明による熱伝達率測定素子は、表面方向における温度差を測定する熱電対部と同じ形状を有するノイズ検知部を備えるので、熱電対部の信号から電気的ノイズを除去することができる。よって、温度差の測定精度が改善されるので、熱伝達率の算出精度が向上する。
【0017】
第二に、本発明による熱伝達率測定素子は、外気の対流の変化に敏感に反応してその影響を検知する対流検知熱電対部を備えるようにしてもよい。こうすることにより、外気の影響をモニタし続けることができ、体感温度のレベルを算出することができる。よって、外気環境に関する統合的な情報を取得できるので、熱伝達率の算出精度が向上する。
【0018】
第三に、本発明による熱伝達率測定素子は、逆方向に一対をなす材料部の厚さがより自由に設計され、その厚さが熱伝達率の算出に反映されるので、形状や材質面での制約条件が緩和される。よって、本発明による熱伝達率測定素子を様々な形状に容易に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明による熱伝達率測定素子により対象物の熱伝達率が算出される概念を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による熱伝達率測定素子を示す分解斜視図である。
【
図3】
図2に示す熱伝達率測定素子の断面図である。
【
図4】
図2に示すノイズ検知部により検知される起電力を用いて信号のノイズを除去する方法を示す概念図である。
【
図5】本発明の他の実施形態による熱伝達率測定素子を示す断面図である。
【
図6】
図5の実施形態に示す第5材料部の他の例を示す断面図である。
【
図7】本発明のさらに他の実施形態による熱伝達率測定素子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明による熱伝達率測定素子についてより詳細に説明する。
【0021】
異なる実施形態であっても、前の実施形態と同一又は類似の構成要素には同一又は類似の符号を付し、それについての重複する説明は省略する。
【0022】
本明細書に開示された実施形態について説明する上で、関連する公知技術についての具体的な説明が本明細書に開示された実施形態の要旨を不明にすると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
【0023】
添付図面は、本明細書に開示された実施形態を容易に理解できるようにするためのものにすぎず、添付図面により本明細書に開示された技術的思想が限定されるものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物又は代替物を含むものと理解されるべきである。
【0024】
単数の表現には、特に断らない限り複数の表現が含まれる。
【0025】
図1は、本発明による熱伝達率測定素子100により対象物10の熱伝達率が算出される概念を示す図である。
図1に示すように、本発明による熱伝達率測定素子100は、第1レイヤ110、第2レイヤ120及び温度測定レイヤ130を含む。本発明による熱伝達率測定素子100は、対象物10の表面に取り付けられ、対象物10の表面における熱伝達率(又は熱流束)を測定する。
【0026】
第1レイヤ110及び第2レイヤ120は、伝導熱伝達により温度勾配(temperature gradient)を形成する構造物として機能する。また、第1レイヤ110及び第2レイヤ120は、温度測定レイヤ130を支持及び保護する。第1レイヤ110は対象物10の表面上に位置し、第2レイヤ120は第1レイヤ110の表面上に位置するようにしてもよい。すなわち、第1レイヤ110及び第2レイヤ120は、本発明による熱伝達率測定素子100の厚さ方向(
図1における上下方向)に並んで積層される層状構造を形成する。
【0027】
ただし、本発明による熱伝達率測定素子100においては、第1レイヤ110が第1材料部111及び第2材料部112を備え、第2レイヤ120が第3材料部123及び第4材料部124を備える。ここで、第1材料部111及び第2材料部112は、異なる熱伝達度を有する材質からなり、対象物10の表面方向(
図1における左右方向)に並んで配置されてもよい。
【0028】
第1レイヤ110の上側に配置される第2レイヤ120は、第1材料部111と同じ熱伝達度を有する第4材料部124と、第2材料部112と同じ熱伝達度を有する第3材料部123とを備える。また、第3材料部123は、厚さ方向に第1材料部111に並んで配置され、第4材料部124は、厚さ方向に第2材料部112に並んで配置される。
【0029】
その結果、
図1に示すように、第1レイヤ110及び第2レイヤ120は、同じ熱伝達度を有する材料部が交互に配置されるように形成される。また、図示のように、第1~第4材料部111、112、123、124は、厚さ方向及び表面方向に同じ大きさを有するようにしてもよい。
【0030】
一方、温度測定レイヤ130は、本発明において対象物10の熱伝達率の測定のための温度差を検知する役割を果たす。特に、本発明の温度測定レイヤ130は、表面方向における温度差を測定するように構成される。
【0031】
温度測定レイヤ130は、第1接点131a及び第2接点131bを備える熱電対部131を含む。第1接点131aは、第1材料部111と第3材料部123との間に設けられ、第2接点131bは、第2材料部112と第4材料部124との間に設けられる。また、熱電対部131は、第1レイヤ110と第2レイヤ120との間に介在するので、表面方向に第1レイヤ110及び第2レイヤ120に並んで配置される。
【0032】
以下、
図1を参照して、本発明による熱伝達率測定素子100において熱伝達率を算出する過程について説明する。
【0033】
本発明による熱伝達率測定素子100が取り付けられた対象物10の表面温度をTbとする。また、本発明の第2レイヤ120の表面温度をTsとする。Tb及びTsは、表面方向の円滑な熱交換により、それぞれ表面方向に所定値を有する。
【0034】
第1レイヤ110及び第2レイヤ120の厚さが図示のようにそれぞれ有する所定値をΔxとし、熱伝達が行われる断面積をAとする。表面方向における各材料部の長さの比は1-a、aとし、前述したように各材料部の長さは全て同じであると仮定する(a=0.5)。
図1に示すように、第1材料部111及び第4材料部124の熱伝達度はk
1、第2材料部112及び第3材料部123の熱伝達度はk
2とし、k
1>k
2の関係が成立すると仮定する。
【0035】
図1に示す本発明による熱伝達率測定素子100における上下方向(厚さ方向)の伝導熱伝達方程式は、次のように表される。
【数1】
【0036】
ここで、総熱抵抗(thermal resistance)であるR
tは、次のように定義される。
【数2】
【0037】
総熱抵抗(R
t)は、単位熱抵抗が厚さ方向に直列及び並列に接続された場合であって、次のように計算される(R
1及びR
2は、それぞれ第1材料部111及び第2材料部112の熱抵抗であり、R
a及びR
bは、それぞれ後述するQ
a及びQ
bの熱抵抗である。)。
【数3】
【数4】
【数5】
【0038】
また、総熱伝達率(Q
t)は、第1材料部111及び第3材料部123を流れる熱伝達率Q
aと、第2材料部112及び第4材料部124を流れる熱量Q
bの和で表される。
【数6】
【0039】
上記数式を上記熱抵抗の項を含む伝導熱伝達方程式で表してまとめると下記数式が得られる。
【数7】
【0040】
すなわち、本発明による熱伝達率測定素子100の第1接点131a及び第2接点131bで測定される表面方向における温度差(T1-T2)は、厚さ方向における温度差(Tb-Ts)に正比例する関係を有する。
【0041】
そして、上記数式を総伝導熱伝達方程式に代入してまとめると下記数式が導出される。
【数8】
【0042】
上記数式により、温度測定レイヤ130の熱電対部131で検知される温度差が反映され、対象物10の厚さ方向における熱伝達率(Qt)が算出される。
【0043】
前述したように、上記関係式により表面方向における温度差に基づいて対象物10の熱伝達率が算出されるので、本発明による熱伝達率測定素子100においては、熱電対の接点を厚さ方向に離隔配置しなくてもよい。よって、薄膜状の素子の厚さを最小化することができ、小型化を効果的に実現することができる。
【0044】
また、第1レイヤ110と第2レイヤ120との間に温度測定レイヤ130が挿入されるので、熱電対部131の熱的接触状態や絶縁状態の保証が容易であり、測定結果の精度が向上する。
【0045】
図2は、本発明の一実施形態による熱伝達率測定素子100を示す分解斜視図であり、
図3は、
図2に示す熱伝達率測定素子100の断面図である。以下、
図2及び
図3を参照して、本発明による熱伝達率測定素子100から発生する電気信号のノイズを除去して結果を算出する構成について説明する。
【0046】
図2及び
図3に示すように、本発明による温度測定レイヤ130は、ノイズ検知部132をさらに含んでもよい。ノイズ検知部132は、電気的ノイズを検知するように機能する。
【0047】
具体的には、ノイズ検知部132は、熱電対部131に対応する形状を有し、厚さ方向に熱電対部131に並んで離隔配置されてもよい。
図2及び
図3に示すように、熱電対部131が複数の熱電対が重なって形成される熱電対列からなる場合、ノイズ検知部132は、その形状に対応してジグザグ状に延設されてもよい。すなわち、ノイズ検知部132は、厚さ方向に正確に熱電対部131と重なるように形成されてもよい。ノイズ検知部132は、電気伝導性材質からなり、両端部が起電力を測定できる制御部(図示せず)に電気的に接続されてもよい。
【0048】
ここで、ノイズ検知部132は、熱電対部131と通電しないように、熱電対部131から離隔して配置されてもよい。例えば、ノイズ検知部132と熱電対部131との間には、表面方向に延びる絶縁部133が介在してもよい。
図2及び
図3に示すように、第1~第4材料部111、112、123、124の材質を考慮して、温度測定レイヤ130の上側及び下側には、絶縁維持のための絶縁層134がそれぞれ形成されてもよい。よって、ノイズ検知部132と熱電対部131との間に介在する絶縁部133も、絶縁層134と同じ形状及び材質で形成されて積層されてもよい。
【0049】
図4は、
図2及び
図3に示すノイズ検知部132により検知される起電力を用いて信号のノイズを除去する方法を示す概念図である。
図4の(a)を参照すると、本発明による熱伝達率測定素子100が対象物10に取り付けられた場合、熱電対部131により検知される起電力(V
t)には、電気的ノイズが含まれることがある。すなわち、熱電対部131により測定される起電力(V
t)は、複数の第1接点131a及び第2接点131b間で温度差により形成される起電力に電気的ノイズが干渉した状態であり得る。その熱電対部131の起電力(V
t)をそのまま温度差に換算すると、不正確な熱伝達率が算出される。
【0050】
本実施形態のようにノイズ検知部132をさらに含む場合、熱電対部131が
図4の(a)のような起電力(V
t)を測定している間、同時にノイズ検知部132は、
図4の(b)のようなプロファイルのノイズ起電力(V
n)を検知する。ノイズ検知部132は、単一の電気伝導性材質で形成されて延びるので、ノイズ検知部132においては、第1接点131a及び第2接点131bの温度差に関係なく純粋な電気的ノイズ信号のみが形成される。
【0051】
本発明による熱伝達率測定素子100は、ノイズ検知部132から得られたノイズ起電力(V
n)信号を用いて熱電対部131の起電力(V
t)信号を加工する役割を果たす制御部をさらに含んでもよい。前記制御部は、熱電対部131により検知される起電力(V
t)からノイズ検知部132により検知されるノイズ起電力(V
n)を引いて得られる、
図4の(c)のような起電力信号を生成するようにしてもよい。また、前記制御部は、
図4の(c)のような信号のプロファイルに対応する第1接点131aと第2接点131bとの温度差(T
1-T
2)を算出するように構成されてもよい。さらに、前記制御部は、表面方向における温度差(T
1-T
2)から対象物10の熱伝達率を算出するように構成されてもよい。
【0052】
本発明による熱伝達率測定素子100は、ノイズ検知部132をさらに含むので、熱電対部131の起電力信号に干渉する電気的ノイズを検知及び除去することができる。よって、表面方向における温度差値の精度が向上し、その結果、熱伝達率の精度及び信頼性が向上する。特に、微細に生じる温度差による起電力を正確に選別できるので、MEMS技術などにより熱伝達率測定素子100を薄膜状に製作する場合、測定精度を改善できるという利点がある。
【0053】
一方、
図5は、本発明の他の実施形態による熱伝達率測定素子200を示す断面図である。以下、本発明の他の実施形態により外部流体(空気など)による不均一な対流の影響を検知する構成について説明する。
【0054】
図5に示すように、本実施形態による熱伝達率測定素子200は、前述した実施形態と同様に、第1レイヤ110、第2レイヤ120及び温度測定レイヤ130を含む。第1レイヤ110は、第1材料部111及び第2材料部112を備え、温度測定レイヤ130は、第1接点131a及び第2接点131bを備える熱電対部131を含み、表面方向における温度差を測定する。
【0055】
ただし、本実施形態の第2レイヤ120は、第5材料部225をさらに備える。第5材料部225は、第1材料部111を通過する熱伝達量(Qc)と第2材料部112を通過する熱伝達量(Qd)が異なる値を有するようにする機能を果たす。具体的には、第5材料部225は、厚さ方向に第1材料部111及び第2材料部112の少なくとも一部に重なるように形成されてもよい。ここで、第5材料部225は、単一の材質からなり、第1材料部111及び第2材料部112の一部の上側には、同じ材質の第5材料部225が配置されるようにしてもよい。
【0056】
ここで、温度測定レイヤ130は、第1材料部111と第5材料部225との間に設けられる第3接点235c、及び第2材料部112と第5材料部225との間に設けられる第4接点235dを備える対流検知熱電対部235を含んでもよい。対流検知熱電対部235は、熱電対部131と同じ形状を有するように形成されてもよい。対流検知熱電対部235は、熱電対部131とは別に、両端部が制御部に接続され、前記制御部に別途の起電力信号を伝達するようにしてもよい。
【0057】
図5を参照すると、同じ材質の第5材料部225が第3接点235c及び第4接点235dの上側に備えられるので、本実施形態の対流検知熱電対部235により検知される温度差(T
3-T
4)は、第5材料部225の上面で生じる温度差(T
s3-T
s4)と同じ値となる。
【0058】
対象物10の熱伝達率によりそれぞれの前記温度差が同一になった状態で第5材料部225上に流体の流動(例えば、対流熱伝達による空気の流れ)が形成されると、第5材料部225の上面で生じる温度差(Ts3-Ts4)に変化が生じる。また、前記温度差(Ts3-Ts4)は、第5材料部225の厚さ方向に沿って形成される同じ温度勾配によりそれぞれ温度が変化し、対流検知熱電対部235の温度差(T3-T4)に影響を及ぼす。よって、対流検知熱電対部235は、外気の影響による空間的な温度分布の変化の程度及び持続時間を検知することができる。
【0059】
本実施形態による熱伝達率測定素子200は、対流検知熱電対部235を含むので、外気の対流の変化に敏感に反応してその影響を検知することができる。よって、熱伝達率を測定している間、外気の影響をモニタし続けることができる。すなわち、外気環境に関する追加情報を取得することができ、その情報を熱伝達率の算出時に反映することができる。特に、対象物10の表面上で外気の流動により形成される体感温度を算出できるという利点がある。
【0060】
特に、第5材料部225の上面の温度変化を対流検知熱電対部235において敏感に反映するために、第5材料部225は、熱伝達度が相対的に高い材質、例えば金属性材質からなるようにしてもよい。ここで、対流検知熱電対部235との電気絶縁のために、温度測定レイヤ130は、対流検知熱電対部235と第5材料部225との間に配置される絶縁層134を含んでもよい。
【0061】
また、
図6は、
図5の実施形態に示す第5材料部225の他の例を示す断面図である。
図6の他の例においては、第3接点235cと第4接点235dとの温度差(T
3-T
4)に第5材料部225の上面の温度差(T
s3-T
s4)をより正確に反映できるようにする。
【0062】
図6に示すように、第5材料部225は、複数の熱伝達促進部分225aと熱伝達鈍化部分225bとを備えてもよい。複数の熱伝達促進部分225aは、第3接点235cと第4接点235dにそれぞれ重なるように互いに離隔して配置され、熱伝達鈍化部分225bより熱伝達度が高い材質からなるようにしてもよい。
【0063】
熱伝達鈍化部分225bは、熱伝達促進部分225a間に配置されてもよい。特に、熱伝達鈍化部分225bは、厚さ方向に第1材料部111と第2材料部112との当接地点に並んで配置されてもよい。熱伝達鈍化部分225bは、熱伝達促進部分225aより相対的に熱伝達度が低い材質からなるようにしてもよい。
【0064】
熱伝達鈍化部分225bにより、2つの熱伝達促進部分225a間で表面方向に行われる熱伝達が制限される。よって、前述した表面方向における温度差(T3-T4及びTs3-Ts4)の減少が制限され、より敏感に外気の対流の影響を測定することができる。
【0065】
一方、
図7は、本発明のさらに他の実施形態による熱伝達率測定素子300を示す断面図である。本実施形態を参照して、第1~第4材料部311、312、323、324の厚さが同じでない場合も前述した原理により熱伝達率を正確に測定する構成について説明する。
【0066】
本実施形態による熱伝達率測定素子300は、第1~第4材料部311、312、323、324を含む。第1材料部311は、下面が対象物10の表面を向くように配置され、第2材料部312は、下面が対象物10の表面を向くように第1材料部311に隣接して配置される。第1材料部311及び第2材料部312は、異なる熱伝達度を有する材質からなる。
【0067】
第1材料部311の上面には、第2材料部312と同じ熱伝達度を有する材質からなる第3材料部323が結合される。ここで、第2材料部312及び第3材料部323は、同じ厚さ、すなわち同じ上下方向の高さを有する。
【0068】
第2材料部312の上面には、第1材料部311と同じ熱伝達度を有する材質からなる第4材料部324が結合される。第4材料部324は、第1材料部311と同じ厚さを有する。その結果、
図7に示すように、第1~第4材料部311、312、323、324は所定の厚さを有するように形成される。
【0069】
一方、本実施形態による熱伝達率測定素子300は、熱電対部131をさらに含む。熱電対部131は、第1接点131a及び第2接点131bを備え、2つの地点の温度差を測定する。第1接点131aは、第1材料部311又は第3材料部323の内部に配置され、第2接点131bは、対象物10の表面方向に第1接点131aから離隔して配置され、第4材料部324又は第2材料部312の内部に配置される。
【0070】
また、本実施形態による熱伝達率測定素子300は、次のように熱伝達率を算出する制御部(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0071】
前述した実施形態と同様に、熱伝達が行われる総断面積をA、第1材料部311及び第4材料部324の熱伝達度をk
1、第2材料部312及び第3材料部323の熱伝達度をk
2とし、k
1>k
2の関係が成立すると仮定する。各地点の温度を
図7に示す。
【0072】
また、第1材料部311及び第4材料部324の厚さをΔx
1、第2材料部312及び第3材料部323の厚さをΔx
2とすると、
図7の場合は、Δx
1>Δx
2が成立し、その比をC(=Δx
1/Δx
2)とすると、次のように伝導熱伝達方程式が得られる。
【数9】
【数10】
【0073】
また、前述した一実施形態と同様に、本発明による熱伝達率測定素子300の厚さ方向における温度差(T
b-T
s)と、第1接点131aと第2接点131bとの温度差(T
1-T
2)の比は次のように計算される。
【数11】
【0074】
よって、総熱伝達率を第1接点131aと第2接点131bとの温度差(T
1-T
2)についてまとめると次の通りである。
【数12】
【0075】
一方、上記ケースとは異なり、Δx
1<Δx
2が成立し、その比をC(=Δx
2/Δx
1)とすると、総熱伝達率は次のように計算される。
【数13】
【0076】
本発明の他の実施形態による熱伝達率測定素子300は、必ずしも各材料部の厚さを均一に製作しなくてもよいという利点がある。すなわち、第1材料部311及び第4材料部324が同じ厚さを有し、第2材料部312及び第3材料部323が同じ厚さを有するという条件さえ満たせば、表面方向における温度差により対象物10の熱伝達率を正確に測定することができる。
【0077】
また、本実施形態においては、交互に配置される同じ材質の材料部同士が接触するように設計される。よって、第1材料部311と第2材料部312とのいずれか一方のみを電気絶縁材質にすると、熱電対部131の電気絶縁のための絶縁部133を省略することができる。
【0078】
よって、本実施形態によれば、熱伝達率測定素子300の形状及び材質の制約条件が緩和され、製作利便性が向上する。
【0079】
以上の説明は本発明による熱伝達率測定素子を実施するための実施形態にすぎず、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲において定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更が可能であることを理解するであろう。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、熱伝達に関する研究だけでなく、広範囲の産業分野において対象物の熱伝達率又は断熱性能の測定に用いることができる。