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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】水中測位装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/22 20060101AFI20220302BHJP
   H04B 11/00 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
G01S5/22
H04B11/00 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018116823
(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公開番号】P2019219274
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】394025094
【氏名又は名称】三菱電機特機システム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504238806
【氏名又は名称】国立大学法人北見工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】溝井国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 佑作
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 真吾
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-212034(JP,A)
【文献】特開2011-163930(JP,A)
【文献】特開2016-125981(JP,A)
【文献】特開2004-191125(JP,A)
【文献】特開2011-013132(JP,A)
【文献】特開2012-215490(JP,A)
【文献】特開2008-157823(JP,A)
【文献】特開2006-300602(JP,A)
【文献】特開2010-122125(JP,A)
【文献】特開2010-216814(JP,A)
【文献】特表2013-517697(JP,A)
【文献】特表2016-534352(JP,A)
【文献】国際公開第2017/077597(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00-17/95
H04B 7/24- 7/26
H04B11/00
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中送信装置から送信ハイドロフォンによって送信された送信データを受信する受信ハイドロフォンを有する複数の受信部と、
前記複数の受信部における2つの受信部の各組合せを対象の組合せとして、前記対象の組合せにおける各受信部によって送信データが受信された時間差から前記水中送信装置の位置を示す測位結果を計算することにより、前記水中送信装置の位置を示す複数の測位結果を計算する測位計算部と、
前記測位計算部によって計算された前記複数の測位結果のうち、前記複数の測位結果のばらつきに応じた範囲の測位結果に基づき、前記水中送信装置の位置を推定する統計解析部と
を備える水中測位装置。
【請求項2】
水中送信装置が備える複数の送信部から送信ハイドロフォンによって送信された送信データを受信する受信ハイドロフォンを有する受信部と、
前記複数の送信部における2つの送信部の各組合せを対象の組合せとして、前記受信部によって受信された前記対象の組合せにおける各送信部から送信された送信データが受信された時間差から前記水中送信装置の位置を示す測位結果を計算することにより、前記水中送信装置の位置を示す複数の測位結果を計算する測位計算部と、
前記測位計算部によって計算された前記複数の測位結果のうち、前記複数の測位結果のばらつきに応じた範囲の測位結果に基づき、前記水中送信装置の位置を推定する統計解析部と
を備える水中測位装置。
【請求項3】
前記統計解析部は、前記複数の測位結果のうち、中心値を基準とする範囲の測位結果に基づき、前記水中送信装置の位置を推定する
請求項1又は2に記載の水中測位装置。
【請求項4】
前記統計解析部は、前記ばらつきが小さいほど狭い範囲の測位結果に基づき、前記水中送信装置の位置を推定する
請求項1から3までのいずれか1項に記載の水中測位装置。
【請求項5】
前記統計解析部は、前記複数の測位結果のうち、各送信データから得られた受信データについての搬送波対雑音比に応じた範囲の測位結果に基づき、前記水中送信装置の位置を推定する
請求項1からまでのいずれか1項に記載の水中測位装置。
【請求項6】
前記統計解析部は、前記搬送波対雑音比が高いほど狭い範囲の測位結果に基づき、前記水中送信装置の位置を推定する
請求項に記載の水中測位装置。
【請求項7】
前記統計解析部は、前記搬送波対雑音比が過去の受信データに比べて基準値以上劣化した受信データを除いた複数の受信データについての搬送波対雑音比の平均値に応じた範囲の測位結果に基づき、前記水中送信装置の位置を推定する
請求項又はに記載の水中測位装置。
【請求項8】
前記複数の受信部は、それぞれ、前記水中送信装置が備える複数の送信部から送信された送信データを受信し、
前記測位計算部は、前記複数の送信部それぞれから送信された送信データを対象の送信データとし前記対象の組合せにおける各受信部によって受信された前記対象の送信データから測位結果を計算する
請求項1に記載の水中測位装置。
【請求項9】
前記受信部は、周波数多重化された送信データを受信し、
前記測位計算部は、多重化された各周波数を対象とし、前記受信部によって受信された送信データを周波数分割して得られた対象の周波数の受信データから測位結果を計算する請求項からまでのいずれか1項に記載の水中測位装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水中で音響通信することにより、送信元の装置の位置を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水中で音響通信することにより測位する音響測位システムについて記載されている。特許文献1に記載された音響測位システムでは、送信機は特定のディジタル信号を含んだ信号を送信し、受信機は受信した信号に特定のディジタル信号が含まれていることを検出する。そして、受信機は、特定のディジタル信号が含まれていることが検出された場合に、異なる2個以上の受信ハイドロフォンによって受信された信号の時間差から送信機の位置を特定する。
【0003】
特許文献2には、特許文献1のディジタル信号を、既知の符号により周波数拡散し、受信機が既知の符号を使用して復調することが記載されている。これにより、複数の送信機が固有の符号を使用することで、同時に複数の送信機の測位を実施可能としている。
【0004】
特許文献3には、複数の相対速度それぞれに起因するドップラーシフト量に基づき送信データを復調して複数の受信データを生成し、複数の受信データのうち品質の良い受信データを選択することが記載されている。これにより、マルチパスの影響を取り除くことができ、品質の良く水中で音響通信を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-128968号公報
【文献】特開2011-252747号公報
【文献】特開2016-25423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マルチパスの影響が顕著な場合には、送信機から送信した信号がマルチパスの影響で時間的に遅れて各受信機に入力されることになる。マルチパスの影響は、送受信ハイドロフォンの位置と、使用する周波数と、時刻とに応じて変動する。
【0007】
そのため、特許文献1に記載された音響測位システムでは、時間差及び位相差から送信機の方位を測定する場合には、送受信ハイドロフォンの位置と、使用する周波数と、時刻とに応じて、マルチパスの影響を受け変動した測位結果が得られる可能性があるという課題がある。
なお、マルチパスの影響を受けていない測位結果を検出することも考えられる。しかし、マルチパスの影響を受けていない測位結果を検出するには、時間的な統計を実施する必要がある。そのため、送信機及び受信機の少なくとも一方が移動する場合には、適用することが困難である。
【0008】
また、特許文献2に記載された技術を適用する場合にも、特許文献1に記載された音響測位システムと同様の課題がある。
【0009】
また、特許文献3に記載された技術を適用する場合には、マルチパスの影響を受けていても、通信エラーが無いデータが選択される。そのため、測位結果が変動してしまう可能性があるという課題がある。
【0010】
この発明は、マルチパスの影響がある場合にも、水中音響通信により精度よく測位可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る水中測位装置は、
水中送信装置から送信された送信データを受信する受信部と、
受信部によって受信された送信データから得られた複数の受信データを入力として、前記水中送信装置の位置を示す複数の測位結果を計算する測位計算部と、
前記測位計算部によって計算された前記複数の測位結果のうち、前記複数の測位結果のばらつきに応じた範囲の測位結果に基づき、前記水中送信装置の位置を推定する統計解析部と
を備える。
【発明の効果】
【0012】
この発明では、複数の測位結果のうち、測位結果のばらつきに応じた範囲の測位結果に基づき、水中送信装置の位置を推定する。
マルチパスの影響を受けた測位結果は、大きく変動してしまう。マルチパスの影響の大きさは、測位結果のばらつきによって推定することが可能である。そのため、測位結果のばらつきに応じた範囲の測位結果だけを抽出することにより、マルチパスの影響の少ない測位結果だけを抽出することが可能である。その結果、マルチパスの影響がある場合にも、精度よく測位可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係る水中音響測位システム1の構成図。
図2】実施の形態1に係る水中音響測位システム1の動作を示すフローチャート。
図3】実施の形態1に係る測位結果33の計算パターンの具体例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1を参照して、実施の形態1に係る水中音響測位システム1の構成を説明する。
水中音響測位システム1は、水中送信装置10と、水中測位装置20とを備える。水中送信装置10は、送信データを送信する装置であり、水中測位装置20は、送信データを受信して、水中送信装置10の位置を推定する装置である。
【0015】
水中送信装置10は、送信部11Aから送信部11Nの複数の送信部11を備える。各送信部11は、搬送波変調部12と、アナログアンプ13と、送信ハイドロフォン14とを備える。搬送波変調部12と、アナログアンプ13と、送信ハイドロフォン14とは、回路又は装置といったハードウェア、あるいは、ソフトウェアで実現される。
【0016】
水中測位装置20は、受信部21Aから受信部21Mの複数の受信部21と、測位計算部22と、統計解析部23とを備える。各受信部21は、受信ハイドロフォン24と、アナログアンプ25と、搬送波復調部26と、分割分離部27とを備える。測位計算部22と、統計解析部23と、受信ハイドロフォン24と、アナログアンプ25と、搬送波復調部26と、分割分離部27とは、回路又は装置といったハードウェア、あるいは、ソフトウェアで実現される。
【0017】
***動作の説明***
図2を参照して、実施の形態1に係る水中音響測位システム1の動作を説明する。
実施の形態1に係る水中音響測位システム1の動作は、実施の形態1に係る水中音響測位方法に相当する。また、実施の形態1に係る水中音響測位システム1の動作は、実施の形態1に係る水中音響測位プログラムの処理に相当する。
【0018】
(ステップS1:送信処理)
水中送信装置10の各送信部11は、送信データ31を水中測位装置20に送信する。
具体的には、各送信部11では、搬送波変調部12は、送信データ31を周波数多重化して搬送波変調する。アナログアンプ13は、搬送波変調された送信データ31を増幅する。送信ハイドロフォン14は、増幅された送信データ31を水中測位装置20に向けて水中に送信する。なお、送信部11毎に送信データ31は異なるが、搬送波変調は同じである。
【0019】
(ステップS2:受信処理)
水中測位装置20の各受信部21は、ステップS1で水中送信装置10から送信された送信データ31を受信する。
具体的には、各受信部21では、受信ハイドロフォン24は、送信データ31を受信する。アナログアンプ25は、受信された送信データ31を増幅する。搬送波復調部26は、増幅された送信データ31を搬送波復調する。分割分離部27は、搬送波復調された送信データ31を周波数多重の分割をして周波数毎のデータとするとともに、MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)分離して、複数の受信データ32を生成する。各受信部21は、生成された複数の受信データ32を測位計算部22に出力する。この際、各受信部21は、各受信データ32についての搬送波対雑音比(以下、C/N)を、受信データ32と対応付けて測位計算部22に出力する。
【0020】
(ステップS3:測位計算処理)
水中測位装置20の測位計算部22は、ステップS2で各受信部21によって出力された複数の受信データ32を入力として、水中送信装置10の位置を示す複数の測位結果33を計算する。なお、水中送信装置10の位置は、少なくとも、水中測位装置20に対する水中送信装置10の方角を含む。測位計算部22は、複数の測位結果33を統計解析部23に出力する。
具体的には、測位計算部22は、同一の送信部11によって送信された送信データ31から得られた2つの受信データ32であって、異なる受信部21によって受信された送信データから得られた2つの受信データ32の全ての組合せを対象とする。測位計算部22は、対象の組合せの2つの受信データ32の時間差及び位相差に基づき測位結果33を計算する。これにより、測位計算部22は、複数の測位結果33を計算する。
つまり、測位計算部22は、各送信部11から送信された送信データ31を対象とし、複数の受信部21から得られる2つの受信部21の各組合せを対象として、対象の受信部21によって受信された対象の送信データ31から得られた2つの受信データ32から測位結果33を計算する。なお、測位計算部22は、多重化された各周波数を対象とし、受信部21によって受信された送信データを周波数分割して得られた対象の周波数の受信データから測位結果33を計算する。
【0021】
図3を参照して、測位結果33の計算パターンを具体的に説明する。
図3では、送信ハイドロフォン14(つまり送信部11)の数が2つ、受信ハイドロフォン24(つまり受信部21)の数が4つである。また、ここでは、周波数多重数を4とする。
この場合、送信ハイドロフォン14Aから送信された送信データ31は、受信ハイドロフォン24Aと受信ハイドロフォン24Bと受信ハイドロフォン24Cと受信ハイドロフォン24Dとによって受信される。したがって、送信ハイドロフォン14Aから送信された送信データ31について、受信ハイドロフォン24Aと受信ハイドロフォン24Bとの受信データに基づく測位結果33と、受信ハイドロフォン24Aと受信ハイドロフォン24Cとの受信データに基づく測位結果33と、受信ハイドロフォン24Aと受信ハイドロフォン24Dとの受信データに基づく測位結果33と、受信ハイドロフォン24Bと受信ハイドロフォン24Cとの受信データに基づく測位結果33と、受信ハイドロフォン24Bと受信ハイドロフォン24Dとの受信データに基づく測位結果33と、受信ハイドロフォン24Cと受信ハイドロフォン24Dとの受信データに基づく測位結果33との6通りの測位結果33が得られる。同様に、送信ハイドロフォン14Bから送信された送信データ31についても、6通りの測位結果33が得られる。したがって、合計12通りの測位結果33が得られる。
また、周波数分割して得られた周波数毎に12通りの測位結果33が得られる。ここでは、周波数多重数が4なので、12×4=48通りの測位結果33が得られる。
【0022】
なお、上記説明では、同一の周波数における受信データ32間での測位を前提とした。しかし、異なる周波数における受信データ32間での測位も可能である。
この場合には、周波数1~4のうちの2つの周波数の組合せ毎に12通りの測位結果33が得られる。周波数1~4のうちの2つの周波数の組合せは、周波数1-周波数1と、周波数1-周波数2と、周波数1-周波数3と、周波数1-周波数4と、周波数2-周波数1と、周波数2-周波数2と、周波数2-周波数3と、周波数2-周波数4と、周波数3-周波数1と、周波数3-周波数2と、周波数3-周波数3と、周波数3-周波数4と、周波数4-周波数1と、周波数4-周波数2と、周波数4-周波数3と、周波数4-周波数4との16通りである。そのため、12×16=192通りの測位結果33が得られる。
【0023】
(ステップS4:統計解析処理)
水中測位装置20の統計解析部23は、ステップS3で計算された複数の測位結果33のうち、複数の測位結果33のばらつきと、ステップS2で出力された複数の受信データについてのC/Nの平均値との少なくともいずれかに応じた範囲の測位結果33に基づき、水中送信装置10の位置を推定する。統計解析部23は、推定された位置を示す測位データ34を出力する。
具体的には、統計解析部23は、ステップS2で出力された複数の受信データそれぞれを対象として、対象の受信データのC/Nが、対象の受信データの過去のC/Nと比較して基準値(例えば、6dB)以上劣化しているか否かを判定する。統計解析部23は、基準値以上劣化している受信データを複数の受信データから除外して、残った受信データについてのC/Nの平均値を計算する。統計解析部23は、ステップS3で計算された複数の測位結果33の中心値を基準として、複数の測位結果33のばらつきと、C/Nの平均値との少なくともいずれかに応じた範囲の測位結果33を抽出する。そして、統計解析部23は、抽出された測位結果33が示す位置の平均の位置を水中送信装置10の位置と推定する。
ここで、複数の測位結果33のばらつきに応じた範囲は、ばらつきが小さいほど、狭い範囲である。また、C/Nの平均値に応じた範囲は、C/Nの平均値が高い値であるほど、狭い範囲である。例えば、C/Nの平均値に応じた範囲は、C/Nの平均値が20dB以上の場合は統計解析の中心値5度の誤差範囲であり、C/Nの平均値が20~10dBの場合は統計解析の中心値7度の誤差範囲であり、C/Nの平均値が10dB以下の場合は統計解析の中心値10度の誤差範囲である。ここで、中心値X度の誤差範囲は、中心値が表す方角からのずれがX度の範囲を意味する。
【0024】
***実施の形態1の効果***
以上のように、実施の形態1に係る水中音響測位システム1では、複数の測位結果33のうち、測位結果33のばらつきと搬送波対雑音比との少なくともいずれかに応じた範囲の測位結果33に基づき、水中送信装置の位置を推定する。
マルチパスの影響を受けた測位結果33は、大きく変動してしまい、異なる位置を示す。マルチパスの影響の大きさは、測位結果33のばらつき及びC/Nによって推定することが可能である。そのため、測位結果33のばらつきとC/Nとの少なくともいずれかに応じた範囲の測位結果33だけを抽出することにより、マルチパスの影響の少ない測位結果33だけを抽出することが可能である。その結果、マルチパスの影響がある場合にも、精度よく測位可能である。
【0025】
ここで、強いマルチパスが発生している環境では、特定の周波数特性が劣化する周波数選択性フェージングが発生し、特定の周波数のC/Nが劣化する。したがって、C/Nが劣化している信号はマルチパスの影響を受けていると考えられる。アンテナの配置によりこの影響は変化し、また時刻によってもこの影響は変化する。
マルチパスの影響を受けた測位結果は大きく変動し、正しい測位結果は一定の誤差範囲内に集中する。マルチパスの影響が強いほど、正しい測位結果は狭い誤差範囲に集中する。そのため、C/Nの平均値が高い値であるほど、中心値を基準とする狭い範囲の測位結果33のみを用いることにより、精度よく測位可能である。
【0026】
強いマルチパスが発生している環境では、特定の周波数特性が劣化する周波数選択性フェージングと、経路の異なる信号が発生し測位した位置が変化してしまう。しかし、実施の形態1に係る水中音響測位システム1は、送信データを周波数多重化し、受信機側で分離する。これにより、周波数選択性フェージングの影響と、マルチパスの影響とを小さくすることが可能である。
【0027】
***他の構成***
<変形例1>
実施の形態1では、測位計算部22は、同一の送信部11によって送信された送信データ31から得られた2つの受信データ32であって、異なる受信部21によって受信された送信データから得られた2つの受信データ32の時間差及び位相差に基づき測位結果33を計算した。しかし、測位計算部22は、異なる送信部11によって送信された送信データ31から得られた2つの受信データ32であって、同一の受信部21によって受信された送信データから得られた2つの受信データ32の時間差及び位相差に基づき測位結果33を計算してもよい。
【0028】
<変形例2>
実施の形態1では、水中送信装置10の搬送波変調部12が周波数多重化した。しかし、搬送波変調部12は、多重化せず広帯域変調のみを行い、水中測位装置20の分割分離部27が複数の帯域制限フィルタを使用して、周波数多重化と同様の効果を奏することも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 水中音響測位システム、10 水中送信装置、11 送信部、12 搬送波変調部、13 アナログアンプ、14 送信ハイドロフォン、20 水中測位装置、21 受信部、22 測位計算部、23 統計解析部、24 受信ハイドロフォン、25 アナログアンプ、26 搬送波復調部、27 分割分離部、31 送信データ、32 受信データ、33 測位結果、34 測位データ。
図1
図2
図3