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特許7033084ラジカル重合性樹脂組成物及び構造物修復用注入剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】ラジカル重合性樹脂組成物及び構造物修復用注入剤
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20220302BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
E04G23/02 B
C08F290/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018562474
(86)(22)【出願日】2018-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2018001742
(87)【国際公開番号】W WO2018135654
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2017009733
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 健一
(72)【発明者】
【氏名】畠山 絵梨
(72)【発明者】
【氏名】黒木 一博
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-007405(JP,A)
【文献】特開2002-234921(JP,A)
【文献】特開2015-048459(JP,A)
【文献】特開平09-302053(JP,A)
【文献】特開平07-188357(JP,A)
【文献】特開2010-198719(JP,A)
【文献】特開2011-173981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ラジカル重合性樹脂と、
(B)ラジカル重合性不飽和単量体と、
(C)アミン系硬化促進剤と
を含有し、(B)ラジカル重合性不飽和単量体が、オキシアルキレン構造を有するラジカル重合性不飽和単量体(b-1)及びカプロラクトン開環構造を有するラジカル重合性不飽和単量体(b-2)を含有し、
前記(A)成分が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルから選ばれるポリオール構造を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂である、
ラジカル重合性樹脂組成物を含み、
液比重が1.01~1.15である構造物修復用注入剤
【請求項2】
前記(b-1)成分が、アルキレンオキサイド付加モル数1~30のポリアルキレンオキサイド(メタ)アクリレート構造を有する、請求項1に記載の構造物修復用注入剤
【請求項3】
前記(b-2)成分が、カプロラクトン付加モル数1~5のポリカプロラクトン(メタ)アクリレート構造を有する、請求項1又は2に記載の構造物修復用注入剤
【請求項4】
前記(b-1)成分及び(b-2)成分の合計量が、前記(B)成分中において20~95質量%である、請求項1~3のいずれかに記載の構造物修復用注入剤
【請求項5】
さらに(D)硬化剤を含有する、請求項1~のいずれかに記載の構造物修復用注入剤
【請求項6】
前記(b-1)成分と前記(b-2)成分の総量に対する前記(b-1)成分の含有量が、5590質量%である、請求項1~のいずれかに記載の構造物修復用注入剤
【請求項7】
前記ラジカル重合性樹脂(A)と前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)の総量における前記ラジカル重合性樹脂(A)の含有量が、5~60質量%である、請求項1~のいずれかに記載の構造物修復用注入剤
【請求項8】
ラジカル重合性樹脂組成物の粘度が、10~500mPa・s/25℃である、請求項1~のいずれかに記載の構造物修復用注入剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低弾性率と高比重の両物性を満たすラジカル重合性樹脂組成物に関する。さらには、コンクリート構造物の劣化等により発生したクラックの修復に適した前記ラジカル重合性樹脂組成物を含む低粘度の構造物修復用注入剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリート構造物の経年劣化等によるクラックの発生に対し、クラック部分の修復方法の一つとして注入剤の充填による修復が行われている(特許文献1)。
中でも高速道路や鉄道等の高欄壁のように、常に振動が伴うコンクリート構造物に対しては、従来の注入剤と同等の付着強度に加えて、所定の弾性物性を兼ね備えた注入剤を用いることにより、注入材の固着・乾燥後の破断が生じないようにする必要がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-002687号公報
【文献】特開2009-019354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリート構造物の劣化部分の体積が広範囲に及ぶ場合には、修復箇所の強度を確保するため、珪砂等の骨材を配合した注入剤を用いるのが一般的である。しかしながら、クラック幅の狭い箇所に対しては、骨材入りの注入剤を十分に浸透させることが難しく、骨材を配合せずに樹脂組成物のみを注入して修復する方法が検討されている。特許文献2のように、常に振動を伴う箇所のクラック修復に対して骨材無しの注入剤で低弾性率を実現しようとした場合、注入剤が低比重となる傾向にあり、所定の付着強度が得られない問題が発生する。すなわち、修復箇所のコンクリートが水分を含有していた場合、注入剤の比重が低いと、修復箇所の水分で注入剤が浮いてしまい、良好な付着強度が得られない。
本発明は上記従来の実情を鑑みてなされたものであり、低弾性率かつ高比重の両物性を満たすラジカル重合性樹脂組成物、該ラジカル重合性樹脂組成物を用いた構造物修復用注入剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、下記[1]~[10]を要旨とする。
[1](A)ラジカル重合性樹脂と、(B)ラジカル重合性不飽和単量体と、(C)アミン系硬化促進剤とを含有し、(B)ラジカル重合性不飽和単量体が、オキシアルキレン構造を有するラジカル重合性不飽和単量体(b-1)及び/又はカプロラクトン開環構造を有するラジカル重合性不飽和単量体(b-2)を含有することを特徴とするラジカル重合性樹脂組成物。
[2]前記(b-1)成分が、アルキレンオキサイド付加モル数1~30のポリアルキレンオキサイド(メタ)アクリレート構造を有する、上記[1]に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
[3]前記(b-2)成分が、カプロラクトン付加モル数1~5のポリカプロラクトン(メタ)アクリレート構造を有する、上記[1]又は[2]に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
[4]前記(b-1)成分及び(b-2)成分の合計量が、前記(B)成分中において20~95質量%である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のラジカル重合性樹脂組成物。
[5]前記(A)成分が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルから選ばれるポリオール構造を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂である上記[1]~[4]のいずれかに記載のラジカル重合性樹脂組成物。
[6]さらに(D)硬化剤を含有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載のラジカル重合性樹脂組成物。
[7]前記(b-1)成分と前記(b-2)成分の総量に対する前記(b-1)成分の含有量が、40~100質量%である、上記[1]~[6]のいずれかに記載のラジカル重合性樹脂組成物。
[8]前記ラジカル重合性樹脂(A)と前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)の総量における前記ラジカル重合性樹脂(A)の含有量が、5~60質量%である、上記[1]~[7]のいずれかに記載のラジカル重合性樹脂組成物。
[9]ラジカル重合性組成物の粘度が、10~500mPa・s/25℃である、上記[1]~[8]のいずれかに記載のラジカル重合性樹脂組成物。
[10]上記[1]~[9]のいずれかに記載のラジカル重合性樹脂組成物を含み、液比重が1.01~1.15である構造物修復用注入剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、低弾性率であり、かつ高比重(23℃での比重が1.00より大)のラジカル重合性樹脂組成物を提供することができる。このような特性を有するラジカル重合性組成物を含む構造物修復用注入剤は、高比重であるため、構造物に生じたクラック部分に浸透し、付着しやすく、かつ、低弾性率であるため注入剤の固着・乾燥後の破断が生じ難い。本発明の構造物修復用注入剤を用いると、常に振動を伴うようなコンクリート構造物に対して、幅の狭いクラック部分の修復を良好に行うことができる。すなわち、固着する際に従来と同程度の付着強度を維持することができ、且つ固着後の破断等が生じない構造物修復用注入剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[ラジカル重合性樹脂組成物]
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、(A)ラジカル重合性樹脂と、(B)ラジカル重合性不飽和単量体と、(C)アミン系硬化促進剤とを含有し、(B)ラジカル重合性不飽和単量体が、オキシアルキレン構造を有するラジカル重合性不飽和単量体(b-1)及び/又はカプロラクトン開環構造を有するラジカル重合性不飽和単量体(b-2)を含有することを特徴とするラジカル重合性樹脂組成物である。
なお、(A)ラジカル重合性樹脂を(A)成分ということがあり、(B)ラジカル重合性不飽和単量体を(B)成分ということがあり、(C)アミン系硬化促進剤を(C)成分ということがあり、オキシアルキレン構造を有するラジカル重合性不飽和単量体(b-1)を(b-1)成分ということがあり、カプロラクトン開環構造を有するラジカル重合性不飽和単量体(b-2)を(b-2)成分ということがある。
【0008】
<ラジカル重合性樹脂(A)>
本発明において、ラジカル重合性樹脂(A)は、樹脂中にエチレン性不飽和基を有し、ラジカルによって重合反応が進行する化合物を指す。
ラジカル重合性樹脂(A)としては、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられ、中でもラジカル重合性樹脂組成物の硬化物の低弾性率化の観点からウレタン(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0009】
〔ウレタン(メタ)アクリレート樹脂〕
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、多価イソシアネートと多価アルコールとを反応させて得られるポリウレタンの両末端の水酸基又はイソシアナト基に対して、(メタ)アクリロイル基を導入して得られた樹脂を用いることができる。
多価アルコールとしては、特開2009-292890号公報、WO2016/171151号公報に記載の「ポリヒドロキシ化合物」又は「多価アルコール類」として記載されている化合物を特に制限なく使用することができる。
多価アルコールに特に制限はないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール;
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等の2価アルコール;
水素化ビスフェノールA等に代表される2価フェノールとプロピレンオキシド又はエチレンオキシドに代表されるアルキレンオキサイドとの付加物等の2価アルコール;
1,2,3,4-テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール等を挙げることができる。
上記した2価フェノールとアルキレンオキサイドとの付加物としては、例えばポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルが挙げられる。
これらの中でも、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルから選ばれる1種又は2種以上のポリオール構造を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂であることが好ましい。
中でもラジカル重合性樹脂組成物を硬化させた際の低弾性率化の観点から、ポリエーテルポリオールのポリオール構造を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂がより好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、ラジカル重合性樹脂組成物を硬化させた際の低弾性率化の観点から、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールが好ましい。
ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、500~4000が好ましく、500~3000がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であれば、構造物修復用注入剤として適正な弾性率と粘度のものが得られる。重量平均分子量の測定方法は、実施例に記載のとおりである。
【0010】
多価イソシアネートとしては、特開2009-292890号公報に記載のものやWO2016/171151号公報に記載のものを挙げることができ、樹脂を合成する際の反応性の観点からジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
(メタ)アクリロイル基を導入する際には、例えば末端イソシアナト基に特開2009-292890号公報に記載の水酸基含有(メタ)アクリル化合物を反応させる方法や、末端水酸基に2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアナト基含有(メタ)アクリル化合物を反応させる方法が挙げられる。この中でも、ラジカル重合性樹脂組成物の高比重化の観点から、末端イソシアナト基に水酸基含有(メタ)アクリル化合物を反応させる方法が好ましい。
ラジカル重合性樹脂組成物の高比重化の観点からは、水酸基含有(メタ)アクリル化合物は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド等が好ましく、この中でも2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、又は2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートがより好ましく、2-ヒドロキシエチルメタクリレート又は2-ヒドロキシプロピルメタクリレートが更に好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは3000~20000、より好ましくは4000~11000である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂に後述するラジカル重合性不飽和単量体等を配合したラジカル重合性樹脂組成物とした場合に、低粘度、かつ相溶性が良好である。
【0011】
〔ビニルエステル樹脂〕
ビニルエステル樹脂は、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂と呼ばれることもある樹脂である。
ビニルエステル樹脂としては、エポキシ樹脂に対して不飽和一塩基酸を反応させて得られたものを用いることができる。
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、ノボラック型グリシジルエーテル類等が挙げられる。
具体的には、WO2016/171151号公報に記載されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
前記不飽和一塩基酸は公知のものが使用でき、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸等を挙げることができる。また、1個のヒドロキシ基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と多塩基酸無水物との反応物を使用してもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸及びメタクリル酸」の一方又は両方を意味し、また、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基及びメタクリロイル基」の一方又は両方を意味する。
前記多塩基酸は、前記エポキシ樹脂の分子量を増大させるために使用するものでありWO2016/171151号公報に記載のものなど公知のものを使用できる。
【0012】
〔不飽和ポリエステル樹脂〕
不飽和ポリエステル樹脂としては、不飽和二塩基酸、及び必要に応じて飽和二塩基酸を含む二塩基酸成分と、多価アルコール成分とをエステル化反応させて得られたものを用いることができる。
前記不飽和二塩基酸や前記飽和二塩基酸としては、例えば、WO2016/171151号公報に記載のものなどを挙げることができ、これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記多価アルコールに特に制限はないが、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の場合と同様、WO2016/171151号公報に記載のものを挙げることができる。
【0013】
不飽和ポリエステルは、本発明の効果を損なわない範囲で、ジシクロペンタジエン系化合物により変性したものを用いてもよい。ジシクロペンタジエン系化合物による変性方法については、例えば、ジシクロペンタジエンとマレイン酸付加生成物(シデカノールモノマレート)を得た後、これを一塩基酸として用いてジシクロペンタジエン骨格を導入する方法等の公知の方法が挙げられる。
本発明で使用するビニルエステル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂には、アリル基またはベンジル基などの酸化重合(空気硬化)基を導入することができる。導入方法に特に制限はないが、例えば、酸化重合基含有ポリマーの添加や、水酸基とアリルエーテル基とを有する化合物の縮合、アリルグリシジルエーテル、2,6-ジグリシジルフェニルアリルエーテルに水酸基とアリルエーテル基を有する化合物と酸無水物との反応物を付加させる方法等が挙げられる。
なお、本発明での酸化重合(空気硬化)とは、例えばアリルエーテル基などに見られる、エーテル結合と二重結合との間にあるメチレン結合の酸化によるパーオキシドの生成と分解に伴う架橋を指す。
【0014】
〔ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂〕
本発明におけるポリエステル(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとを反応させて得られるポリエステル、具体的には、ポリエチレンテレフタレート等の両末端の水酸基に対して、(メタ)アクリル酸を反応させて得られた樹脂を用いることができる。
【0015】
〔(メタ)アクリレート樹脂〕
(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、水酸基、イソシアナト基、カルボキシ基及びエポキシ基から選ばれる1種以上の官能基を有するポリ(メタ)アクリル樹脂や、前記官能基を有する単量体と(メタ)アクリレートとの共重合体の官能基に対して、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類を反応させて得られた樹脂を用いることができる。
【0016】
<ラジカル重合性不飽和単量体(B)>
本発明で使用するラジカル重合性不飽和単量体(B)は、ラジカル重合性樹脂組成物の粘度を下げ、低弾性率と高比重を両立する役割として重要である。ラジカル重合性不飽和単量体(B)は、オキシアルキレン構造を有するラジカル重合性不飽和単量体(b-1)及び/又はカプロラクトン開環構造を有するラジカル重合性不飽和単量体(b-2)を含有する。これら(b-1)成分及び/又は(b-2)成分を使用することにより、ラジカル重合性組成物の低弾性率と高比重を両立させることができる。
【0017】
オキシアルキレン構造とは―(―O-R―)― (Rはアルキレン基を表し、nは整数である)で示される構造である。アルキレン基の炭素数は2~6が好ましい。nは1~30の整数が好ましい。
(b-1)オキシアルキレン構造を有するラジカル重合性不飽和単量体としては、オキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、アルキレン基部分の炭素数は2~6がより好ましい。
また、前記(b-1)成分は、アルキレンオキサイド付加モル数1~30のポリアルキレンオキサイド(メタ)アクリレート構造を有する単量体であることが好ましい。アルキレンオキサイドの付加モル数は、より好ましくは1~20である。アルキレンオキサイドの付加モル数が上記範囲であれば、ラジカル重合性樹脂組成物の粘度と比重の観点からバランスが良い。
具体的には、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノールのアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、エトキシビスフェノールAジメタクリレート等のビスフェノールAのアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸のアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキル基末端ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を混合して用いても良い。中でも、ラジカル重合性樹脂組成物の粘度を低減する観点から、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、フェノールのアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、及びメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキル基末端ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、フェノールのアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートがより好ましい。
前記(b-1)成分は、本発明のラジカル重合性樹脂組成物の低粘度化、低弾性率化、高比重のバランスの観点から、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート及びフェノールのアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートの2種を含むことがより好ましい。(b-1)成分中におけるこれら2種の含有量の総量は、同様の観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは100質量%である。(b-1)成分中における、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートの含有量は、同様の観点から、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~90質量%、さらに好ましくは65~80質量%である。(b-1)成分中における、フェノールのアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートの含有量は、好ましくは0~50質量%、より好ましくは10~40質量%、さらに好ましくは20~35質量%である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートにおけるアルキレンオキサイドの付加モル数は、本発明のラジカル重合性樹脂組成物の低粘度化、低弾性率化、高比重のバランスの観点から、好ましくは1~30、より好ましくは4~30、さらに好ましくは4~20、よりさらに好ましくは8~20である。
フェノールのアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートにおけるアルキレンオキサイドの付加モル数は、同様の観点から、好ましくは1~10、より好ましくは1~4、さらに好ましくは1~2、よりさらに好ましくは1である。
【0018】
(b-2)カプロラクトン開環構造を有するラジカル重合性不飽和単量体とは、―(―C10COO-)-で示される構造を有する不飽和単量体である。mは1~10の整数であることが好ましい。具体的には、カプロラクトン開環構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。前記カプロラクトン開環構造を有するラジカル重合性不飽和単量体(b-2)は、カプロラクトン付加モル数1~5(m=1~5)のポリカプロラクトン(メタ)アクリレート構造を有する単量体であることが好ましい。カプロラクトンの付加モル数は1~3のものがより好ましい。付加モル数が上記範囲内であると、ラジカル重合性樹脂組成物の低弾性率化と高比重化のバランスを良好にとることができ、さらに低粘度化できる。より具体的にはカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシアルキル)イソシアヌレートなどが挙げられる。粘度を低減する観点からはカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
また、本発明のラジカル重合性樹脂組成物を低弾性率化し、かつ高比重化する観点から、(b-1)成分と(b-2)成分を併用することが好ましい。
(b-1)成分と(b-2)成分の総量に対する(b-1)成分の含有量は、好ましくは40~100質量%、より好ましくは55~90質量%、さらに好ましくは60~75質量%であり、よりさらに好ましくは60~70質量%である。
【0019】
その他のラジカル重合性不飽和単量体としては、具体的には、特開2009-292890に記載のものなどが挙げられ、低弾性率化の観点からはラウリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びメチル(メタ)アクリレートが好ましい。
ラジカル重合性不飽和単量体(B)中における、(b-1)成分及び(b-2)成分の総量は、好ましくは20~95質量%、より好ましくは30~95質量%である。含有量が上記範囲内であれば、低弾性率化と高比重化のバランスを良好にとることができ、さらに低粘度化できる。一態様として、ラジカル重合性不飽和単量体(B)中における、(b-1)成分及び(b-2)成分の総量は、好ましくは20~95質量%、より好ましくは40~90質量%、さらに好ましくは65~85質量%である。また、一態様として、75~95質量%または80~95質量%であってもよい。
ラジカル重合性樹脂(A)とラジカル重合性不飽和単量体(B)の総量におけるカプロラクトン開環構造を有するラジカル重合性不飽和単量体の含有量は、5~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、15~35質量%が特に好ましい。この範囲内であれば、低弾性率化と高比重化のバランスを良好にすることができる。
【0020】
(A)成分と(B)成分の総量中における(A)成分の含有量は、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは10~45質量%、よりさらに好ましくは15~45質量%、よりさらに好ましくは20~45質量%、よりさらに好ましくは25~45質量%、よりさらに好ましくは30~40質量%である。当該含有量が上記範囲内であれば、ラジカル重合性樹脂組成物の低弾性率化と高比重化のバランスを良好にすることができる。
【0021】
<アミン系硬化促進剤(C)>
本発明に用いるアミン系硬化促進剤(C)は、公知のアミン類を特に制限なく用いることができ、具体的には、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、p-トルイジン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4-(N-メチル-N-ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン、N-エチル-m-トルイジン、トリエタノールアミン、m-トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N-置換アニリン、N,N-置換-p-トルイジン、4-(N,N-置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類等を使用できる。中でも硬化を促進させ易い観点から、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、又はN,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンが好ましい。
アミン系硬化促進剤の含有量は(A)ラジカル重合性樹脂及び(B)ラジカル重合性不飽和単量体の合計100質量部に対し、好ましくは0.01~3.0質量部、より好ましくは0.1~1.0質量部である。含有量が上記範囲内であると硬化性の調整が容易である。
【0022】
<硬化剤(D)>
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、硬化剤(D)を含んでもよい。本発明で用いられる(D)硬化剤としては特に限定されず、公知のラジカル重合開始剤を使用することができ、有機化過酸化物を用いることが好ましい。
有機過酸化物の例としては、ジベンゾイルパーオキサイド(ベンゾイルパーオキサイドともいう)、ケトンパーオキサイド、パーベンゾエート、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、パーオキシエステル及びパーオキシジカーボネート等が挙げられ、アゾ化合物等も使用可能である。より具体的には、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート、ジベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、3-イソプロピルヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビスカルボンアミド等が使用できる。これら有機過酸化物は、単独又は組み合わせて用いることが可能である。また、これらの中でも、コスト、入手のし易さ、及び安定性の観点から、ジベンゾイルパーオキサイドが好ましい。
【0023】
硬化剤(D)の配合量は、上記(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.1~8質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。硬化剤(D)の配合量が0.1質量部以上では、所望の硬化性が得られ易い。一方、硬化剤(D)の配合量が8質量部以下であると、経済的に有利であり、十分な作業時間が得られ易い。
【0024】
<その他成分>
〔重合禁止剤〕
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、(A)ラジカル重合性樹脂及び(B)ラジカル重合性不飽和単量体の過度の重合を抑える観点、反応速度をコントロールする観点から、重合禁止剤を含んでもよい。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、カテコール、4-tert-ブチルカテコール等の公知のものが挙げられる。
〔アミン系以外の硬化促進剤〕
本発明のラジカル重合性樹脂組成物には、上記したアミン系硬化促進剤以外の硬化促進剤を含有させてもよい。アミン系以外の硬化促進剤としては特に限定はされず、公知の有機金属塩を使用することができる。有機金属塩の例としては、ナフテン酸銅、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、水酸化コバルト、ヘキソエート亜鉛、オクチル酸マンガン等が挙げられる。これらの中でも、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルトが好ましい。これらの有機金属塩は、単独又は組み合わせて用いることが可能である。
【0025】
有機金属塩の配合量は、上記(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.02~10質量部であることが好ましく、0.1~3.0質量部であることがより好ましい。有機金属塩の配合量が0.02質量部以上であると、所望の硬化時間及び硬化状態が得られ易く、乾燥性良好になる。一方、有機金属塩の配合量が10質量部以下であると、所望の可使時間及び貯蔵安定性が得られ易い。
〔光重合開始剤〕
本実施形態の樹脂組成物は、硬化性を向上させる目的で光重合開始剤を含むものであっても良い。光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤などが挙げられる。
光ラジカル重合開始剤は、二重結合を有するアクリル樹脂やモノマーの硬化性を向上させるために用いられる。
具体的には、光ラジカル重合開始剤として、ベンゾインアルキルエーテルのようなベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン、ベンジル、メチルオルソベンゾイルベンゾエートなどのベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、4-イソプロピル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン系、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系のものが挙げられる。
光重合開始剤は、(A)ラジカル反応性樹脂と(B)ラジカル重合性不飽和単量体との合計100質量部に対して、0.1~10質量部の範囲で添加することができる。
【0026】
〔界面活性剤〕
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、樹脂と水とのなじみをよくし、水を樹脂に抱き込んだ状態で硬化しやすくする観点から、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの界面活性剤の中でも陰イオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。
【0027】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホン酸塩;ステアリン酸ソーダ石鹸、オレイン酸カリ石鹸、ヒマシ油カリ石鹸等の脂肪酸塩;ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物、特殊高分子系等が挙げられる。
これらの中でも、スルホン酸塩が好ましく、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムがより好ましく、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが更に好ましい。
非イオン性界面活性剤として、例えば、ポリオキシラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシエチレン誘導体;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタンモノラウリレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート等のグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。
これらの中では、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。また、非イオン性界面活性剤のHLB(Hydrophile-Lipophil Balance)は、5~15が好ましく、6~12より好ましい。
ラジカル重合性樹脂組成物が界面活性剤を含有する場合、その量は、(A)ラジカル重合性樹脂と(B)ラジカル重合性不飽和単量体の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~7質量部、更に好ましくは0.1~5質量部である。
【0028】
〔分散剤〕
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、例えば、湿潤又は水没した被修復箇所に対する浸透性を向上させるために湿潤分散剤を含んでいてもよい。
湿潤分散剤としては、フッ素系湿潤分散剤及びシリコーン系湿潤分散剤が挙げられ、これらは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フッ素系の湿潤分散剤の市販品としては、メガファック(登録商標)F176、メガファック(登録商標)R08(大日本インキ化学工業株式会社製)、PF656、PF6320(OMNOVA社製)、トロイゾルS-366(トロイケミカル株式会社製)、フロラードFC430(スリーエム ジャパン株式会社製)、ポリシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
シリコーン系湿潤分散剤の市販品としては、BYK(登録商標)-322、BYK(登録商標)-377、BYK(登録商標)-UV3570、BYK(登録商標)-330、BYK(登録商標)-302、BYK(登録商標)-UV3500,BYK-306(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ポリシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
本発明のラジカル重合性樹脂組成物が、分散剤を含有する場合、その量は、(A)ラジカル重合性樹脂と(B)ラジカル重合性不飽和単量体の合計100質量部に対して、好ましくは、0.01~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部が好ましい。
【0029】
〔揺変剤〕
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、垂直面や天井面での作業性確保のための粘度調整等を目的として揺変剤を含んでもよい。
揺変剤としては、無機系揺変剤及び有機系揺変剤を挙げることができ、有機系揺変剤としては、水素添加ひまし油系、アマイド系、酸化ポリエチレン系、植物油重合油系、界面活性剤系、及びこれらを併用した複合系が挙げられ、具体的には、DISPARLON(登録商標)6900-20X(楠本化成株式会社)等が挙げられる。
また、無機系揺変剤としては、シリカやベントナイト系が挙げられ、疎水性のものとして、レオロシール(登録商標)PM-20L(株式会社トクヤマ製の気相法シリカ)、アエロジル(登録商標)AEROSIL R-106(日本アエロジル株式会社)等が挙げられ、親水性のものとして、アエロジル(登録商標)AEROSIL-200(日本アエロジル株式会社)等が挙げられる。揺変性をより向上させる観点から、親水性の焼成シリカに、揺変性改質剤であるBYK(登録商標)-R605やBYK(登録商標)-R606(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を添加したものも好適に用いることができる。
本発明のラジカル重合性樹脂組成物が、揺変剤を含有する場合、その量は、(A)ラジカル重合性樹脂と(B)ラジカル重合性不飽和単量体の合計100質量部に対して、好ましくは、0.01~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部が好ましい。
【0030】
〔硬化遅延剤〕
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、硬化時間の調製の目的で、硬化遅延剤を含んでもよい。硬化遅延剤としては、フリーラジカル系硬化遅延剤が挙げられ、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(TEMPO)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(4H-TEMPO)、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(4-Oxo-TEMPO)等のTEMPO誘導体が挙げられる。これらの中でも、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(4H-TEMPO)がコスト面、扱いやすさの点から好ましい。
ラジカル重合性樹脂組成物が重合禁止剤、硬化遅延剤を含有する場合、その量は(A)ラジカル重合性樹脂と(B)ラジカル重合性不飽和単量体の合計100質量部に対して、好ましくは各々0.0001~10質量部であり、より好ましくは各々0.001~10質量部である。
【0031】
〔消泡剤〕
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、成形時の泡発生、成形品の泡残りを改善する目的で、消泡剤を含んでもよい。消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、ポリマー系消泡剤などが挙げられる。
消泡剤の使用量は、(A)ラジカル重合性樹脂と(B)ラジカル重合性不飽和単量体の合計100質量部に対して、0.01~5質量部の範囲が好ましい。より好ましくは、0.1~1質量部である。
【0032】
〔カップリング剤〕
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、修復対象物である基材への密着性を向上させること等を目的として、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤としては、公知のシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。
このようなカップリング剤としては、例えば、R-Si(OR)で表されるシランカップリング剤を挙げることができる。なお、Rとしては、例えば、アミノプロピル基、グリシジルオキシ基、メタクリルオキシ基、N-フェニルアミノプロピル基、メルカプト基、ビニル基等が挙げられ、Rとしては、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられる。
ラジカル重合性樹脂組成物がカップリング剤を含有する場合、その量は、(A)ラジカル重合性樹脂と(B)ラジカル重合性不飽和単量体の合計100質量部に対して、好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。
【0033】
〔光安定剤〕
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、成形品の長期耐久性を向上させる目的で、光安定剤を使用してもよい。光安定剤としては、紫外線吸収剤やヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。これらは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的には、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系、サリシレート系等が挙げられ、ヒンダードアミン系光安定剤としては、N-H型、N-CH型、N-Oアルキル型等が挙げられる。
光安定剤の使用量は、(A)ラジカル重合性樹脂と(B)ラジカル重合性不飽和単量体との合計100質量部に対して、0.01~5質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.05~2質量部である。
【0034】
〔ワックス〕
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、ワックスを含むものであってもよい。ワックスとしては、パラフィンワックス類、極性ワックス類などを単独あるいは併用して用いることができ、各種融点の公知の物を使用できる。
極性ワックス類としては、構造中に極性基および非極性基を合わせ持つものが挙げられる。具体的には、NPS-8070、NPS-9125(日本精蝋社製)、エマノーン3199、3299(花王社製)等が挙げられる。
ワックスは、(A)ラジカル重合性樹脂と(B)ラジカル重合性不飽和単量体との合計100質量部に対して、0.05~4質量部含有することが好ましく、0.1~2.0質量部含有することがより好ましい。
【0035】
〔難燃剤〕
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、難燃剤を含むものであってもよい。難燃剤としては、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤、イントメッセント系難燃剤、シリコーン系難燃剤などを単独あるいは併用して用いることができ、公知のものを使用することができる。
また、臭素系難燃剤などのハロゲン系難燃剤は、難燃性を更に向上する目的で三酸化アンチモンと併用して用いることができる。
難燃剤の添加量は、系統により異なるが、(A)ラジカル重合性樹脂と(B)ラジカル重合性不飽和単量体との合計100質量部に対して、1~100質量部含有することが好ましい。
【0036】
〔可塑剤〕
本発明の樹脂組成物は、粘度、弾性率調整を目的に、可塑剤を含むものであってもよい。可塑剤としては、エポキシ類、ポリエステル類系、フタル酸エステル類系、アジピン酸エステル類系、トリメリット酸エステル類系、リン酸エステル類系、クエン酸エステル類系、セバシン酸エステル類系、アゼライン酸エステル類系、マレイン酸エステル類系、安息香酸エステル類系等、単独あるいは併用して用いることができ、公知のものを使用することができる。
可塑剤の添加量は、系統により異なるが、(A)ラジカル重合性樹脂と(B)ラジカル重合性不飽和単量体との合計100質量部に対して、0.01~20質量部含有することが好ましい。より好ましくは、0.1~10質量部含有することが好ましい。
本発明のラジカル重合性組成物中における、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の含有量の総量は、好ましくは30~100質量%、より好ましくは60~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%である。
また、本発明のラジカル重合性組成物が(D)硬化剤を含有する場合、本発明のラジカル重合性組成物中における、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)硬化剤の含有量の総量は、好ましくは30~100質量%、より好ましくは60~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%である。
【0037】
<ラジカル重合性組成物の物性値>
ラジカル重合性組成物の粘度は、無機構造物のクラックへの注入のしやすさの観点から、好ましくは10~500mPa・s/25℃、より好ましくは10~350mPa・s/25℃、さらに好ましくは10~250mPa・s/25℃である。粘度の測定方法は、実施例に記載されているとおりである。
ラジカル重合性組成物の液比重は、付着性を良好とする観点から、1.01~1.15であることが好ましく、1.03~1.15であることがより好ましく、1.05~1.15であることが特に好ましい。液比重の測定方法は、実施例に記載されているとおりである。
ラジカル重合性組成物の体積収縮率は、無機構造物のクラックへの注入後の接着性の観点から、好ましくは3~12%、より好ましくは4~11%、さらに好ましくは5~10%である。体積収縮率の測定方法は、実施例に記載されているとおりである。
ラジカル重合性組成物の弾性率は、振動に対する耐久性の観点から、好ましくは1~900N/mm、より好ましくは3~600N/mm、さらに好ましくは5~200N/mmである。弾性率の測定方法は、実施例に記載されているとおりである。
【0038】
<ラジカル重合性組成物の製造方法>
各成分の混合順序は特に問わないが、効率よく均一混合物を得るための作業性の観点から、またラジカル重合性組成物としての液比重など、目標物性範囲に組成物を調整する際の作業性の観点から、(A)成分を合成後に(B)成分の一部を加えて混合し、(A)成分を低粘度化してから、残りの(B)成分とその他成分を加えて混合することが好ましい。あるいは、(A)成分の合成時に希釈剤として(B)成分の一部を使用し、(A)成分と一部(B)成分の混合物を得てから、残りの(B)成分とその他成分を加えて混合することが好ましい。低粘度化の際の(A)成分と一部(B)成分の混合割合(質量割合)は特に限定されないが、好ましくは95:5~20:80、より好ましくは85:15~30:70である。
(A)成分と一部(B)成分の混合物の粘度としては、好ましくは100~2000mPa・s、より好ましくは100~1500mPa・s、さらに好ましくは100~1000mPa・sである。粘度の測定方法は、実施例に記載されているとおりである。あらかじめ上記範囲の粘度に調整しておけば、残りの成分を混合して本発明のラジカル重合性樹脂組成物とする際に、短時間で均一に混合することができる。
(A)成分と一部(B)成分の混合物の液比重としては、好ましくは0.95~1.15、より好ましくは1.00~1.10である。上記範囲の液比重に調整することにより、残りの成分を混合して本発明のラジカル重合性樹脂組成物とする際に、(B)成分の種類や配合量を調節して、目標とする液比重に調整しやすくなる。
【0039】
[構造物修復用注入剤]
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、該ラジカル重合性樹脂組成物を含む構造物修復用注入剤として使用することが好ましい。
構造物としては、例えば、コンクリート、アスファルトコンクリート、モルタル、木材、金属等の無機構造物が挙げられる。
構造物修復用注入剤は、ラジカル重合性樹脂組成物のみから製造してもよいし、ラジカル重合性組成物に別途、骨材等の任意の添加剤を含有させてもよい。
骨材としては、珪砂、シリカ、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、アルミニウム、チタン等が挙げられ、これらの中でも、コストや材料入手の観点から、珪砂、シリカ、炭酸カルシウムが好ましい。
なお、骨材を含有させた場合には、構造物修復用注入剤の浸透性が低減される場合があるため、本発明の構造物修復用注入剤は、骨材を含有しないことが好ましい。特に、構造物修復用注入剤を用いてクラック幅の狭いコンクリートの修復を行う場合は、骨材を含有した注入剤では浸透性が乏しく、修復対象物に付着し難くなるために、骨材を含有させなくても高比重である本発明の構造物修復用注入剤が特に好適に使用することができる。
構造物修復用注入剤の液比重は、付着性を良好とする観点から、1.01~1.15であることが好ましく、1.03~1.15であることがより好ましく、1.05~1.15であることが特に好ましい。液比重の測定方法は、実施例に記載されているとおりである。
【0040】
構造物の修復方法は、特に限定されないが、例えば、本発明の構造物修復用注入剤を、コンクリート、アスファルトコンクリート、モルタル、木材、金属等の修復箇所に塗布し、乾燥、硬化させることにより行うことができる。構造物修復用注入剤の塗布方法は、特に限定されないが、例えば、ディッピングによる塗布方法、スプレーによる塗布方法、ローラーによる塗布方法、ブラシ、刷毛やヘラ等の器具を用いた塗布方法等が適用できる。
構造物修復用注入剤の塗布量は、特に限定されないが、修復箇所の大きさ、構造物修復用注入剤の密着性、該構造物修復用注入剤の硬化体の強度などを考慮して適宜調整する。
構造物修復用注入剤を塗布した後の乾燥方法は、特に限定されないが、自然乾燥する方法、又は構造物修復用注入剤の硬化体の特性が劣化しない範囲で加熱する方法が用いられる。
【実施例
【0041】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は実施例により制限されるものではない。
【0042】
<合成例>
後述するとおり、以下の原料を用いて、(A)ラジカル重合性樹脂であるウレタン(メタ)アクリレート樹脂(UM1)~(UM8)を合成し、次いで(B)ラジカル重合性不飽和単量体の1種としてのメチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製)を混合して、(A)成分と(B)成分との混合物(U-1)~(U-8)を得た。
【0043】
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(UM1)~(UM8)の原料を以下に示す。
(多価アルコール)
(1)ポリプロピレングリコール1(重量平均分子量1000)、三井化学(株)製、製品名:アクトコールD-1000
(2)ポリプロピレングリコール2(重量平均分子量2000)、三井化学(株)製、製品名:アクトコールD-2000
(3)ポリエチレングリコール1(重量平均分子量600)、東邦化学工業(株)製、製品名:トーホーポリエチレングリコール600
(4)ポリエチレングリコール2(重量平均分子量1540)、東邦化学工業(株)製、製品名:トーホーポリエチレングリコール1540
(5)ポリエステルポリオール(重量平均分子量2000)、DIC(株)製、製品名:ポリライトOD-X-2420
(6)ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル1(重量平均分子量800)、ADEKA(株)製、製品名:BPX-55
(7)ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル2(重量平均分子量2000)、ADEKA(株)製、製品名:BPX-2000
(多価イソシアネート)
ジフェニルメタンジイソシアネート
(水酸基含有(メタ)アクリレート)
2-ヒドロキシエチルメタクリレート
2-ヒドロキシプロピルメタクリレート
次に、各合成例について具体的に説明する。
【0044】
(合成例1)
撹拌器、還流冷却管、気体導入管及び温度計を備えた3Lの4つ口フラスコに、ジフェニルメタンジイソシアネート:500g(2.0mol)、アクトコールD-1000(三井化学(株)製ポリプロピレングリコール1:重量平均分子量1000):500g(0.5mol)、トーホーポリエチレングリコール1540(東邦化学工業(株)製ポリエチレングリコール2:重量平均分子量1540):700g(0.5mol)、及びジブチル錫ジラウレート:0.2gを仕込み、60℃で4時間攪拌して反応させた。次いで、その反応物に、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:260g(2.0mol)を2時間かけて滴下しながら撹拌し、滴下終了後5時間撹拌して反応させ、ウレタンメタクリレート樹脂(UM1)を得た。ウレタンメタクリレート樹脂(UM1)の製造に用いた原料を表1に示した。
次いで、このウレタンメタクリレート樹脂(UM1)にメチルメタクリレート:850gを添加し、(A)成分と(B)成分との混合物(U-1)を得た。
ウレタンメタクリレート樹脂(UM1)の重量平均分子量は、7300であった。また、混合物(U-1)の25℃での粘度が990mPa・sであり、液比重が1.08であった。
重量平均分子量の測定には、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(昭和電工(株)製Shodex GPC-101)を用いた。重量平均分子量は、下記条件にて常温(23℃)で測定し、ポリスチレン換算にて算出した。
(測定条件)
カラム:昭和電工(株)製LF-804、2本
カラム温度:40℃
試料:被測定物の0.4質量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1ml/分
溶離液:テトラヒドロフラン
また、粘度と液比重の測定条件については、後述する実施例の試料の測定条件と同様である。
【0045】
(合成例2~8)
合成例2~8については、使用した原料を表1のとおり変更した以外は合成例1と同様にして合成を行い、ウレタンメタクリレート樹脂(UM2)~(UM8)を得た。また、表2に示すとおり、各ウレタンメタアクリレート樹脂(UM2)~(UM8)70質量部に対して、メチルメタクリレートを30質量部となるように添加して、混合物(U-2)~(U-8)を得た。ウレタンメタクリレート樹脂(UM2)~(UM8)の重量平均分子量を表1に示した。また、混合物(U-2)~(U-8)の液比重及び粘度の値を表2に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
参考例1~3、実施例~16>
原料として、各合成例で得られた混合物(U-1)~(U-8)と、以下の(B)ラジカル重合性不飽和単量体、(C)アミン系硬化促進剤及び(D)硬化剤を用いた。
((B)ラジカル重合性不飽和単量体)
〔(b-1)成分〕
(1)エトキシビスフェノールAジメタクリレート(エチレンオキサイド付加モル数10)、新中村化学工業(株)製、製品名:NKエステル BPE-500
(2)メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、日油(株)製:ブレンマーPME-400(エチレンオキサイド付加モル数9)
(3)フェノキシエチルメタクリレート(エチレンオキサイド付加モル数1)、共栄社化学(株)製、製品名:ライトエステルPO
(4)フェノキシエチルアクリレート(エチレンオキサイド付加モル数1)、共栄社化学(株)製、製品名:ライトアクリレートPO-A
〔(b-2)成分〕
(5)カプロラクトン変性(付加モル数1)ヒドロキシエチルメタクリレート、(株)ダイセル製、製品名:プラクセルFM1
表3において、カプロラクトン変性(1mol)メタクリレートと表記した。
(6)カプロラクトン変性(付加モル数2)ヒドロキシエチルメタクリレート、(株)ダイセル製、製品名:プラクセルFM2D
表3において、カプロラクトン変性(2mol)メタクリレートと表記した。
(7)カプロラクトン変性(付加モル数2)ヒドロキシエチルアクリレート、(株)ダイセル製、製品名:プラクセルFA2D
表3において、カプロラクトン変性(2mol)アクリレートと表記した。
〔その他のラジカル重合性不飽和単量体〕
(8)ラウリルメタクリレート、共栄社化学(株)製、製品名:ライトエステルL
(9)2-エチルヘキシルメタクリレート、共栄社化学(株)製、製品名:ライトエステルEH
(10)メチルメタクリレート、三菱レイヨン(株)製、製品名:アクリエステルM
【0049】
((C)アミン系硬化促進剤)
(1)N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、和光純薬工業(株)製、製品名:アクセルレーターA
(2)N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン、モーリン化学工業(株)製、製品名:PT-2HE
((D)硬化剤)
ジベンゾイルパーオキサイド、化薬アクゾ(株)製、製品名:パーカドックスCH-50L
【0050】
合成例で得られた各混合物(U-1)~(U-8)に、必要に応じて表3に示す(B)ラジカル重合性不飽和単量体を添加して、(A)成分及び(B)成分からなる予備試料を得た。次いで、この予備試料100質量部、すなわち、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、(C)アミン系硬化促進剤及び(D)硬化剤を、この順に表3に示す割合で加えて撹拌し、ラジカル重合性樹脂組成物を得た。
表3中のメチルメタクリレートの欄には、上記の混合物(U-1)~(U-8)に予め含まれているメチルメタクリレート含有量と、必要に応じて添加した(B)ラジカル重合性不飽和単量体としてのメチルメタクリレート含有量とを合算して記載した。
また、表3中の(A)ラジカル重合性樹脂の欄には、混合物(U-1)~(U-8)の製造に使用した原料の仕込み量から算出した(A)ラジカル重合性樹脂のみの含有量を記載した。(A)ラジカル重合性樹脂の含有量は、混合物(U-1)~(U-8)の製造に使用した原料が100%反応したとみなして算出した。
【0051】
<比較例1~9>
(b-1)成分及び(b-2)成分を含まないこと以外は、実施例と同様にして、ラジカル重合性樹脂組成物を得た。ラジカル重合性樹脂組成物の各成分の含有量を表3に示した。
このようにして得られたラジカル重合性樹脂用組成物について、下記の方法により、粘度、液比重、体積収縮率、弾性率を測定し、評価した。その結果を表3に示す。
【0052】
<粘度測定>
東機産業(株)製RE-85型粘度計、コーンプレート型、コーンロータ1°34’×R24を用いて、25℃環境下の粘度を回転数100rpmにて測定した。
<液比重測定>
JIS K 7112-1999の附属書2「プラスチック-液状樹脂-水中置換法」に準じて、アルファーミラージュ(株)製電子比重計MD-200Sを用いて、23℃における液比重を測定した。
<体積収縮率>
長さ×幅×厚み=40mm×40mm×3mmの試験体を、つぎのように作製した。すなわち、常温(23℃)環境下にてラジカル重合性樹脂組成物を、長さ×幅×厚み=200mm×200mm×3mmの型枠に注ぎ込み、試験体(固体)を作製した。その後、常温(23℃)環境下にて12時間養生後、80℃、3時間後硬化を行った。作成した試験体から、長さ×幅×厚み=40mm×40mm×3mmの試験体を切り出し、測定に用いた。 当該試験体を用い、JIS K 7112-1999の水中置換法に準じて、液比重測定の同試験機により、固体比重を測定した。固体比重測定は、各試験体について2回ずつ行った。そして、2回の測定結果の平均値を、体積収縮率の算出に使用した。JIS K 6901-2008記載の計算式を用いて体積収縮率を算出した。
<弾性率>
ラジカル重合性樹脂組成物を次のようにして固体とした。すなわち、常温環境下にてラジカル重合性樹脂組成物を、長さ×幅×厚み=200mm×200mm×3mmの型枠に注ぎ込み、試験体(固体)を作製した。その後、常温環境下にて12時間養生後、80℃、3時間後硬化を行った。
次いで、JIS K 7113-1995、2号試験片に準じて試験体を作製した。作製した試験体について、温度23℃、湿度50%の試験環境で、上記規格に準じて、インストロン製5900Rを用いて、つかみ間長120mm、試験速度50mm/分で試験を行った。弾性率の測定は、各試験体について3回ずつ行った。そして、3回の測定結果の平均値を、弾性率の評価に使用した。
【0053】
【表3-1】
【0054】
【表3-2】
【0055】
【表3-3】
【0056】
表3に示すように、オキシアルキレン構造を有するラジカル重合性不飽和単量体(b-1)及び/又はカプロラクトン開環構造を有するラジカル重合性不飽和単量体(b-2)を含有する本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、高比重かつ低弾性率であることが分かった。
特に、(b-1)成分と(b-2)成分の総量が多い実施例8及び10は、高比重と低弾性率が極めて良好であることが分かった。
これに対し、オキシアルキレン構造を有するラジカル重合性不飽和単量体(b-1)及びカプロラクトン開環構造を有するラジカル重合性不飽和単量体(b-2)のいずれも含まない比較例1~9のラジカル重合性樹脂組成物は、参考例1~3及び実施例~16の樹脂組成物と比較して、高比重と低弾性率化を両立できないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物及び構造物修復用注入剤は、高比重かつ低弾性率であるため、コンクリート構造物等のクラックの修復に好適に用いることができる。