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特許7033449分注ロボット、分注ロボットの制御方法及び分注方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】分注ロボット、分注ロボットの制御方法及び分注方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20220303BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20220303BHJP
   B25J 15/00 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
G01N35/10 G
G01N35/00 E
B25J15/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017250247
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019117075
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 友希男
(72)【発明者】
【氏名】大内 哲志
(72)【発明者】
【氏名】三井 栄二
(72)【発明者】
【氏名】松岡 淳一
(72)【発明者】
【氏名】桐村 浩哉
(72)【発明者】
【氏名】北野 幸彦
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-009618(JP,A)
【文献】特開2017-161517(JP,A)
【文献】特開2005-172490(JP,A)
【文献】特開2015-085490(JP,A)
【文献】特開2012-117880(JP,A)
【文献】米国特許第04013104(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 - 35/10
G01N 1/00 - 1/44
B01L 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向における下方向又は斜め下方向を向いた第1当接面と分注ロボットとを備え、下端にチップが装着され且つ装着されたチップをチップエジェクタの押下により離脱させることが可能なように構成されたピペットを、前記分注ロボットが操作することによって分注を行うよう構成されたアッセイロボットシステムの前記分注ロボットであって、
前記ピペットに装着されたピペット保持具を保持するハンドを含むロボットアームと、
前記ロボットアームの動作を制御する制御器と、を備え、
前記制御器は、前記ロボットアームが、前記チップが装着された前記ピペットを、前記ハンドによって前記ピペット保持具を保持することによって保持し、且つ、保持したピペットの前記チップエジェクタの上端部を前記第1当接面に下方から当てて前記チップエジェクタを押下させるよう前記ロボットアームを制御するように構成され、
前記アッセイロボットシステムは、平面視において延在する第2当接面と、前記チップが前記ピペットから離脱したこと検知するチップ離脱検知器とをさらに備え、
前記制御器は、前記チップエジェクタが押下された後、前記チップ離脱検知器を用いて前記チップが前記ピペットから離脱しなかったことを検知すると、前記ロボットアームが前記チップの先端部を前記第2当接面に当てるよう前記ロボットアームを制御するように構成されている分注ロボット。
【請求項2】
前記制御器は、前記ロボットアームが前記チップの先端部を前記第2当接面に当てるよう前記ロボットアームを制御するときは、平面視において前記第2当接面の前方向から当該第2当接面に当てるように制御するように構成されている、請求項1に記載の分注ロボット。
【請求項3】
前記ピペットは、複数のチップを装着することが可能に構成されており、
前記第2当接面は、平面視において円弧状に延在しており、
前記制御器は、前記ロボットアームが前記チップの先端部を前記第2当接面に当てるよう前記ロボットアームを制御する際に、前記ロボットアームが前記チップの先端部を、平面視において前記第2当接面の中央における前方向から当該第2当接面に当てるよう前記ロボットアームを制御するように構成されている、請求項2に記載の分注ロボット。
【請求項4】
前記ピペット保持具を備え、前記ピペット保持具は、複数の部分円筒状部材によって構成される保持部を備え、前記複数の部分円筒状部材は、周方向の両端面が微小な隙間を有して互いに対向するように配置されると、全体として円筒形状を有するとともに内部空間が前記ピペットのグリップ部の所定部分の外周形状に対応する内周形状を有するように形成されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の分注ロボット。
【請求項5】
鉛直方向における下方向又は斜め下方向を向いた第1当接面と分注ロボットとを備え、下端にチップが装着され且つ装着されたチップをチップエジェクタの押下により離脱させることが可能なように構成されたピペットを、前記分注ロボットが操作することによって分注を行うよう構成されたアッセイロボットシステムの前記分注ロボットの制御方法であって、
前記分注ロボットは、前記ピペットに装着されたピペット保持具を保持するハンドを含むロボットアームと、前記ロボットアームの動作を制御する制御器と、を備え、
前記分注ロボットの制御方法は、前記制御器によって、前記ロボットアームが、前記チップが装着された前記ピペットを、前記ハンドによって前記ピペット保持具を保持することによって保持し、且つ、保持したピペットの前記チップエジェクタの上端部を前記第1当接面に下方から当てて前記チップエジェクタを押下させるよう前記ロボットアームを制御することを含
前記アッセイロボットシステムは、平面視において延在する第2当接面と、前記チップが前記ピペットから離脱したことを検知するチップ離脱検知器とをさらに備え、
前記ロボットの制御方法は、前記チップエジェクタが押下された後、前記制御器が前記チップ離脱検知器を用いて前記チップが前記ピペットから離脱しなかったことを検知すると、前記制御器によって、前記ロボットアームが前記チップの先端部を当該第2当接面に当てるよう前記ロボットアームを制御することをさらに含む、分注ロボットの制御方法。
【請求項6】
前記ロボットの制御方法は前記制御器によって、前記ロボットアームが前記チップの先端部を前記第2当接面に当てるよう前記ロボットアームを制御するときは、平面視において前記第2当接面の前方向から当該当接面に当てるよう制御することをさらに含む、請求項5に記載の分注ロボットの制御方法。
【請求項7】
前記第2当接面は、平面視において円弧状に延在しており、
前記制御器によって、前記ロボットアームが前記チップの先端部を前記第2当接面に当てるよう前記ロボットアームを制御することにおいて、前記制御器によって、前記ロボットアームが前記チップの先端部を、平面視において前記第2当接面の中央における前方向から当該第2当接面に当てるよう前記ロボットアームを制御する、請求項6に記載の分注ロボットの制御方法。
【請求項8】
前記ピペット保持具を備え、前記ピペット保持具は、複数の部分円筒状部材によって構成される保持部を備え、前記複数の部分円筒状部材は、周方向の両端面が微小な隙間を有して互いに対向するように配置されると、全体として円筒形状を有するとともに内部空間が前記ピペットのグリップ部の所定部分の外周形状に対応する内周形状を有するように形成されている、請求項5乃至7のいずれかに記載の分注ロボットの制御方法。
【請求項9】
ピペットに装着されたピペット保持具をロボットアームのハンドにより保持し、
前記ピペットをチップに挿入させるように前記ピペットを移動させて、前記ピペットに前記チップを装着し、
前記チップが装着された前記ピペットを用いて液体を分注し、
保持された前記ピペットのチップエジェクタを第1当接部材に当てるように前記ピペットを移動させて、前記液体の分注に用いられた前記チップを前記ピペットから離脱させ、
前記ピペットから離脱しなかった前記チップがあるときは、前記チップの先端部を第2当接部材に当てる、分注方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注ロボット、分注ロボットの制御方法及び分注方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、理化学、医科学分野の実験室で少量の液体を分注するために、ピペットが用いられていた。このようなピペットを用いた分注は、人が手動式のピペットを操作して行われる場合が多い。この種のピペットは、下端にチップが装着され且つ装着されたチップを離脱させることが可能なように構成されている。また、この種のピペットは、人が、ピペットを握った状態でプランジャによる分注対象液の吸引及び吐出とチップエジェクタによるチップの離脱とを行いやすいように、プランジャの操作部とチップエジェクタの操作部とがピペットの上端部にそれぞれ配置されている。チップエジェクタは、その操作部を押下すると、ピペットの下端に装着されたチップがピペットから離脱するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-012456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、産業界において、人が行う作業をロボットに行わせたいという要求が存在する。分注においても、そのような要求が存在する。この場合、ランニングコスト及び使用実績の観点から市販の手動式のピペットを使用したいという要求が存在する。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、市販の手動式のピペットを使用して分注を行うことができる分注ロボット、分注ロボットの制御方法及び分注方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一の態様(aspect)に係る分注ロボットは、鉛直方向における下方向又は斜め下方向を向いた第1当接面を備え、下端にチップが装着され且つ装着されたチップをチップエジェクタの押下により離脱させることが可能なように構成されたピペットを、分注ロボットが操作することによって分注を行うよう構成されたアッセイロボットシステムの前記分注ロボットであって、前記ピペットに装着されたピペット保持具を保持するハンドを含むロボットアームと、前記ロボットアームの動作を制御する制御器と、を備え、前記制御器は、前記ロボットアームが、前記チップが装着された前記ピペットを、前記ハンドによって前記ピペット保持具を保持することによって保持し、且つ、保持したピペットの前記チップエジェクタの上端部を前記第1当接面に下方から当てて前記チップエジェクタを押下させるよう前記ロボットアームを制御するように構成されている。
【0007】
この構成によれば、ロボットアームが、ハンドによって保持した、チップが装着されたピペットのチップエジェクタの上端部を第1当接面に下方から当ててチップエジェクタを押下させると、チップがピペットから離脱する。従って、従来、人が行っていたピペットからチップを離脱させる操作を分注ロボットが行うことができる。しかも、ハンドがピペットに装着されたピペット保持具を保持することによってロボットアームがピペットを保持するので、ピペット保持具を、市販の手動式のピペットを所定の精度に保持できるように設計することによって、市販の手動式のピペットを所定の精度で保持することができるので、市販の手動式のピペットを使用して、分注を精度良く行うことができる。
【0008】
前記アッセイロボットシステムは、平面視において延在する第2当接面と、前記チップが前記ピペットから離脱したこと検知するチップ離脱検知器とをさらに備え、前記制御器は、前記チップエジェクタが押下された後、前記チップ離脱検知器を用いて前記チップが前記ピペットから離脱しなかったことを検知すると、前記ロボットアームが前記チップの先端部を、平面視において前記第2当接面の前方向から当該第2当接面に当てるよう前記ロボットアームを制御するように構成されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、チップエジェクタが押下されてもチップがピペットから離脱しなかった場合に、チップ離脱検知器を用いて、チップがピペットから離脱しなかったことが検知され、且つ、ロボットアームがチップの先端部を、平面視において第2当接面の前方向から当該第2当接面に当てるので、それによって離脱しなかったチップがピペットから離脱する。その結果、ピペットからのチップの離脱操作を的確に行うことができる。
【0010】
前記ピペットは、複数のチップを装着することが可能に構成されており、前記第2当接面は、平面視において円弧状に延在しており、前記制御器は、前記ロボットアームが前記チップの先端部を前記第2当接面に当てるよう前記ロボットアームを制御する際に、前記ロボットアームが前記チップの先端部を、平面視において前記第2当接面の中央における前方向から当該第2当接面に当てるよう前記ロボットアームを制御するように構成されていてもよい。
【0011】
ピペットに複数にチップが装着されている場合、複数本のチップが離脱しないで残る場合があり得る。この場合、一度に複数のチップを第2当接面に当てて離脱させようとすると大きな力が必要となる。しかし、上記構成では、第2当接面が平面視において円弧状に延在していて、ロボットアームがチップの先端部を、平面視において第2当接面の中央部における前方向から当該第2当接面に当てるので、第2当接面の中央に対応するチップからそれより外側の部分に対応するチップへとこれらのチップが順番に第2当接面に当たることとなり、複数のチップが順番に離脱していく。その結果、小さな力で複数のチップを離脱させることができる。
【0012】
前記ピペット保持具を備え、前記ピペット保持具は、複数の部分円筒状部材によって構成される保持部を備え、前記複数の部分円筒状部材は、周方向の両端面が微小な隙間を有して互いに対向するように配置されると、全体として円筒形状を有するとともに内部空間が前記ピペットのグリップ部の所定部分の外周形状に対応する内周形状を有するように形成されていてもよい。ここで、「部分円筒」とは、円筒の周方向における部分をいう。ちなみに、「半円筒」とは、円筒の周方向における半分をいう。また、保持部は「所定部分」に装着されるので、「所定部分」は、保持部が装着される部分を意味する。
【0013】
この構成によれば、ピペット保持具が、周方向の両端面が微小な隙間を有して互いに対向するように配置されると、全体として円筒形状を有するとともに内部空間がピペットのグリップ部の所定部分の外周形状に対応する内周形状を有するように形成された複数の部分円筒状部材によって構成される保持部を備えるので、ピペット保持具が市販のピペットの形状に適合するものとなる。その結果、市販の手動式のピペットを精度良く保持することができる。
【0014】
本発明の他の態様(aspect)に係る分注ロボットの制御方法は、鉛直方向における下方向又は斜め下方向を向いた第1当接面を備え、下端にチップが装着され且つ装着されたチップをチップエジェクタの押下により離脱させることが可能なように構成されたピペットを、分注ロボットが操作することによって分注を行うよう構成されたアッセイロボットシステムの前記分注ロボットの制御方法であって、前記分注ロボットは、前記ピペットに装着されたピペット保持具を保持するハンドを含むロボットアームと、前記ロボットアームの動作を制御する制御器と、を備え、前記分注ロボットの制御方法は、前記制御器によって、前記ロボットアームが、前記チップが装着された前記ピペットを、前記ハンドによって前記ピペット保持具を保持することによって保持し、且つ、保持したピペットの前記チップエジェクタの上端部を前記第1当接面に下方から当てて前記チップエジェクタを押下させるよう前記ロボットアームを制御することを含む。
【0015】
この構成によれば、従来、人が行っていたピペットからチップを離脱させる操作を分注ロボットが行うことができる。しかも、市販の手動式のピペットを所定の精度で保持することができるので、市販の手動式のピペットを用いて、分注を精度良く行うことができる。
【0016】
本発明のさらなる他の態様(aspect)に係る分注方法は、ピペットに装着されたピペット保持具をロボットアームのハンドにより保持し、前記ピペットをチップに挿入させるように前記ピペットを移動させて、前記ピペットに前記チップを装着し、前記チップが装着された前記ピペットを用いて液体を分注し、保持された前記ピペットのチップエジェクタを当接部材に当てるように前記ピペットを移動させて、前記液体の分注に用いられた前記チップを前記ピペットから離脱させる。
【0017】
この構成によれば、従来、人が行っていたピペットによる分注を、ロボットにより行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の分注ロボット、分注ロボットの制御方法及び分注方法は、市販の手動式のピペットを使用して、分注を行うことができる分注ロボット、分注ロボットの制御方法及び分注方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る分注ロボットが用いられるアッセイロボットシステムの概要を示す斜視図である。
図2図2は、図1の分注ロボットのハードウエアの構成を示す模式図である。
図3A図3Aは、ピペット保持具の構成を示す斜視図である。
図3B図3Bは、図3Aのピペット保持具が装着され且つピペットチップが装着されたピペットを示す斜視図である。
図3C図3Cは、図1の分注ロボットのハンドに、ピペット保持具が装着され且つピペットチップが装着されたピペットが保持された様子を示す斜視図である。
図3D図3Dは、図3Cの状態においてピペットのチップエジェクタが押下されてピペットからピペットチップが離脱した様子を示す斜視図である。
図4図4は、図1の分注ロボットの制御系統の構成を示すブロック図である。
図5図5は、図1の分注ロボットの分注動作を示すフローチャートである。
図6A図6Aは、図1の分注ロボットがチップエジェクタの上端を第1当接面に当てる動作において、チップエジェクタが第1当接面の下方に位置する状態を示す模式図である。
図6B図6Bは、図1の分注ロボットがチップエジェクタの上端を第1当接面に当てる動作において、チップエジェクタが第1当接面によって下方に押下された状態を示す模式図である。
図6C図6Cは、図1の分注ロボットがチップエジェクタの上端を第1当接面に当てた後、ピペットチップがピペットから離脱した否かをチップ離脱検知器によって確認している状態を示す模式図である。
図7A図7Aは、図1の分注ロボットがピペットチップを第2当接面に当てる動作において、ピペットチップが第2当接面の前方に位置する状態を示す模式図である。
図7B図7Bは、図1の分注ロボットがピペットチップを第2当接面に当てる動作において、複数のピペットチップのうちの中央部に位置するものが第2当接面に当たって落下した状態を示す模式図である。
図7C図7Cは、図1の分注ロボットがピペットチップを第2当接面に当てる動作において、複数のピペットチップの全てが第2当接面に当たって落下した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付してその重複する説明を省略する。また、添付図面は、本発明を説明するための図である。それ故、本発明に無関係な要素が省略される場合、誇張のため寸法が正確でない場合、簡略化される場合、複数の図面において同一の要素の形状が互いに一致しない場合等がある。
【0021】
(実施形態1)
[構成]
図1は、本発明の実施形態1に係る分注ロボットが用いられるアッセイロボットシステムの概要を示す斜視図である。
【0022】
<アッセイロボットシステム>
図1を参照すると、実施形態1のアッセイロボットシステム100は、ロボットモジュール101と、試薬モジュール102と、チップモジュール103と、プレートストッカーモジュール104と、計測器モジュール105と、制御モジュール106と、屑箱7と、ピペットラック8と、第1当接部材82と、を備える。各モジュール101~106は、各々の専用の台車を備える。これらの台車は、連結器具によって互いに連結される。また、アッセイロボットシステム100は、下端が開放された直方体状の透明なケース(図示せず)によって覆われている。
【0023】
ロボットモジュール101においては、台車の上に、分注ロボット1と搬送ロボット2とが間隔を置いて設けられている。なお、正確には、台車の上には、分注ロボット1のロボットアームと、搬送ロボット2のロボットアームとが設けられている。分注ロボット1及び搬送ロボット2は、それぞれ、各々のロボットアームと各々のロボットアームの動作を制御する制御器とで構成される。これらの制御器は台車の内部に設けられている。分注ロボット1と搬送ロボット2との間に、プレート16が載置される作業台9が配置されている。プレート16は、検体が配置された検体プレートとELISAプレート(分析用プレート)との2種類のプレートを含む。
【0024】
試薬モジュール102においては、台車の上に試薬リザーバ3が配置されている。チップモジュール103においては、台車の上に複数のチップラック4が設けられている。各チップラック4には多数のチップ71が正立して配置されている。プレートストッカーモジュール104においては、台車の上にプレートストッカー17が設けられている。プレートストッカー17には、上述の2種類のプレート16が貯蔵される。
【0025】
計測器モジュール105においては、台車の上に計測器(図示せず)、ウォッシャー6が設けられている。制御モジュール106においては、台車の上に、計測器モジュール105の計測器の入出力装置5が設けられている。入出力装置5は、例えば、パーソナルコンピュータで構成される。
【0026】
<ピペット>
図3Aは、ピペット保持具の構成を示す斜視図である。図3Bは、図3Aのピペット保持具が装着され且つピペットチップが装着されたピペットを示す斜視図である。図3A及び図3Bにおいては、便宜上、図の上下方向をハンドの上下方向とする。
【0027】
図3Bを参照すると、ピペット61として、市販の手動式のピペットが用いられる。ピペット61として、例えば、レイニン社製、エッペンドルフ社製、ニチリョー社製、ギルソン社製のものを使用することができる。
【0028】
ここでは、ピペット61は、8つのピペットチップ(チップ)71が装着可能に構成された8チャンネルタイプのピペットである。なお、チャンネルの数は限定されない。図3Bに示すように、ピペット61は、正立した状態において、下端にチップ71が装着され且つ装着されたチップ71をチップエジェクタ65の押下により離脱させることが可能なように構成されている。具体的には、ピペット61は、全体として上下方向に延在する形状を有していて、本体62を有する。本体62は、ヘッド部62aを有する。ヘッド部62aの上方にグリップ部62bが配置されている。ヘッド部62aとグリップ部62bとは図示されない部材で連結されている。ヘッド部62aは中空に形成されていて、ヘッド部62aの下端から8本の円筒状のチップ装着部材63が延出している。チップ装着部材63の先端部(下端部)は縮径部に形成されていて、この縮径部にピペットチップ71の上端部が圧入されて装着される。8つのチップ装着部材の基端は図示されないシリンダに接続されている。シリンダの内部には図示されないピストンが配置されている。ピストンにはプランジャ64の下端部が接続されている。グリップ部62bは中空に形成されていて、プランジャ64はグリップ部62bを貫通してグリップ部62bの上端から延出している。プランジャ64の上端部は操作部として形成されている。この操作部にプランジャ駆動部44の従動歯車44bが当接する。プランジャ64は、例えば、押下されていない状態で圧縮バネ(非図示)によって上方向に付勢されていて、ストッパ(非図示)により上方への移動を制止されている。これにより、プランジャ64は、押下されると下降し、押下が解除されると圧縮バネによって上昇する。プランジャ64の上昇によってピペットチップ71内に分注対象液が吸入され、プランジャ64の下降によってピペットチップ71から分注対象液が吐出される。
【0029】
ヘッド部62aの下側には、矩形断面を有する筒状の押出部材66が、8つのチップ装着部材に隙間を有して嵌合されて、上下移動自在に設けられている。押出部材66はエジェクタ65にリンク部材を介して連結されている。エジェクタ65は、グリップ部62bを貫通してグリップ部62bの上端から延出している。エジェクタ65の上端部は操作部として形成されている。エジェクタ65は、例えば、押下されていない状態で圧縮バネ(非図示)によって上方向に付勢されていて、ストッパ(非図示)により上方への移動を制止されている。エジェクタ65は、押下されると下降し、押下が解除されると圧縮バネによって上昇する。一方、押出部材66は、エジェクタ65が押下されると下降し、チップ装着部材63に装着されているピペットチップ71の上端部を押下する。これにより、図3Dに示されるように、ピペットチップ71がチップ装着部材63から離脱する。そして、押下が解除されると、エジェクタ65は元の位置に戻る。これにより、押出部材66も元の位置に戻る。
【0030】
<ピペット保持具>
ピペット保持具51は、分注ロボット1又はアッセイロボットシステム100が備える。
【0031】
図1及び図3Bを参照すると、図1に二点鎖線で示されるように、アッセイロボットシステム100は、ピペットラック8を備える。ピペットラック8は、例えば、屑箱7及び分注ロボット1の近傍に設けられる。ピペットラック8の形状は任意である。ピペットラック8には、図3Bに示すようにピペット保持具51が装着されたピペット61が載置されている。ここでは、ピペットラック8には、容量の異なる複数のピペット61が載置されている。ピペットラック8は、ロボットアーム11が、各ピペット61のピペット保持具51をハンド41によって把持することによって各ピペット61を保持(取着)し、且つ、ロボットアーム11が、ハンド41により把持(保持)されているピペット61を解放して当該ピペット61をラックの所定位置に載置することが可能なように構成されている。このようにして、分注ロボット1又はアッセイロボットシステム100は、ピペット保持具51を、ピペット61に装着された態様で備える。
【0032】
図3A及び図3Bを参照すると、ピペット保持具51は、主保持部51aと、上側補助保持部51bと、下側補助保持部51cとを備える。ピペット保持具51は、市販の手動式のピペット61に個々に適合させて、当該ピペット61を主保持部51aに係合させ、ロボットアーム11に装着されたエンドエフェクタが保持できるように設計される。
【0033】
主保持部51aは、ピペット61のグリップ部62bの下部を保持する部分であり、且つ、ハンド41のピペット保持部43によって保持される部分である。
【0034】
主保持部51aは、一対の半円筒状部材52A、52Bによって構成される。この一対の半円筒状部材52A、52Bは、周方向の両端面が微小な隙間を有して互いに対向するように配置されると、全体として円筒形状を有するように形成されている。以下、便宜上、このように対向配置された一対の半円筒状部材52A、52Bを「対向配置部材52A、52B」と略記する。対向配置部材52A、52Bは、上端部及び下端部が短円柱状に形成され、この短円柱状の上端部と下端部との間に位置する部分が8角柱状に形成されている。これにより、ハンド41のピペット保持部43の一対の爪部材48の一対の当接部材49によって把持された場合に、ピペット61の周方向に姿勢が正確に定まる。そして、対向配置部材52A、52Bの内部空間が、ピペット61のグリップ部62bの主保持部51aが装着される部分の外周形状に対応する内周形状を有するように形成されている。これにより、主保持部51aが、市販のピペット61の形状に適合するものとなる。また、対向配置部材52A、52Bの上端部と下端部との間の寸法が、ハンド41のピペット保持部43における一対の爪部材48の内面にそれぞれ設けられた一対の板状の当接部材49のY軸方向の寸法より少し大きい寸法に設計されている。また、対向配置部材52A、52Bは、互いに対向する端面間の隙間が、ピペット61のグリップ部62bの側面に位置するとともに8角柱部分の側面の中央部に位置するように設計されている。これにより、後述するように、一対の半円筒状部材52A、52Bが、対向配置部材52A、52Bとしてピペット61に装着されてハンド41に保持された場合に、ピペット61の正面が前方向を向く(図3C参照)。
【0035】
ここでは、半円筒部材52Aがピペット61のグリップ部62bの前半分に位置し、半円筒部材52Bがピペット61のグリップ部62bの後半分に位置するように設計されている。
【0036】
一対の半円筒状部材52A、52Bは、ピペット61のグリップ部62bの下端部の所定部分を挟み且つ周方向の両端面が所定の隙間を有して互いに対向するように配置された後、所定の複数の締結部材(図示せず)によって締結される。
【0037】
上側補助保持部51bは、ピペット61のグリップ部62bの上部の形状に沿った形状に形成されており、所定の複数の締結部材(図示せず)によって、グリップ部62bの上部を支持するように締結されるとともに主保持部51aの対向配置部材52A、52Bに固定される。
【0038】
下側補助保持部51cは、ピペット61のヘッド部62aの形状に沿った形状に形成されており、所定の複数の締結部材(図示せず)によって、ヘッド部62aを支持するように締結されるとともに主保持部51aの対向配置部材52A、52Bに固定される。
【0039】
なお、簡略化する場合は、上側補助保持部51b及び下側補助保持部51cを省略してもよい。
【0040】
また、主保持部51aが、3以上の部分円筒状部材によって構成されてもよい。この場合、3以上の部分円筒状部材は、周方向の両端面が微小な隙間を有して互いに対向するように配置されると、全体として円筒形状を有するとともに内部空間がピペット61のグリップ部62bの所定部分(主保持部51aが装着される部分)の外周形状に対応する内周形状を有するように形成される。
【0041】
<分注ロボット>
図2は、図1の分注ロボットのハードウエアの構成を示す模式図である。図2を参照すると、分注ロボット1は、ロボットアーム11と、ロボットアーム11の先端に装着されたハンド41と、制御器10と、を備える。ロボットアーム11と制御器10とが分注ロボット1を構成する。
【0042】
{ロボットアーム}
ロボットアーム11は、基台15と、基台15に支持された腕部13と、腕部13の先端に支持された手首部14と、手首部14に装着されたエンドエフェクタとしてのハンド41と、を備えている。ここで、エンドエフェクタとしてのハンド41は、予めロボットアーム11の腕部13の先端に支持された手首部14に装着されていてもよいし、別途装着される構成でもよい。
【0043】
ロボットアーム11は、図2に示すように3以上の複数の関節JT1~JT6を有する多関節ロボットアームであって、複数のリンク11a~11fが順次連結されて構成されている。より詳しくは、第1関節JT1では、基台15と、第1リンク11aの基端部とが、鉛直方向に延びる軸回りに回転可能に連結されている。第2関節JT2では、第1リンク11aの先端部と、第2リンク11bの基端部とが、水平方向に延びる軸回りに回転可能に連結されている。第3関節JT3では、第2リンク11bの先端部と、第3リンク11cの基端部とが、水平方向に延びる軸回りに回転可能に連結されている。第4関節JT4では、第3リンク11cの先端部と、第4リンク11dの基端部とが、第4リンク11cの長手方向に延びる軸回りに回転可能に連結されている。第5関節JT5では、第4リンク11dの先端部と、第5リンク11eの基端部とが、リンク11dの長手方向と直交する軸回りに回転可能に連結されている。第6関節JT6では、第5リンク11eの先端部と第6リンク11fの基端部とが、捩じり回転可能に連結されている。そして、第6リンク11fの先端部は、メカニカルインターフェースが設けられている図3Aに示すエンドエフェクタとしてのハンド41の基部42aに着脱可能に装着される。メカニカルインターフェースは、ハンド41と電気的に接続可能なコネクターを有している。
【0044】
上記の第1関節JT1、第1リンク11a、第2関節JT2、第2リンク11b、第3関節JT3、及び第3リンク11cから成るリンクと関節の連結体によって、ロボットアーム11の腕部13が形成されている。また、上記の第4関節JT4、第4リンク11d、第5関節JT5、第5リンク11e、第6関節JT6、及び第4リンク11fから成るリンクと関節の連結体によって、ロボットアーム11の手首部14が形成されている。
【0045】
関節JT1~JT6には、それが連結する2つの部材を相対的に回転させるアクチュエータの一例としての駆動モータ(図示せず)が設けられている。駆動モータは、例えば、制御器10から送信される制御信号によってサーボアンプを介してサーボ制御されるサーボモータである。また、関節JT1~JT6には、駆動モータの回転角を検出するための回転角センサ(図示せず)と、駆動モータの電流を検出するための電流センサ(図示せず)とが設けられている。
【0046】
{制御器}
制御器10は、例えば、プロセッサとメモリとを備える。制御器10は、メモリに格納された所定の動作プログラムをプロセッサが読み出して実行することにより、ロボットアーム11の動作を制御する。制御器10は、具体的には、例えば、マイクロコントローラ、MPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)、論理回路等で構成される。制御器10は、回転角センサの検出信号と電流センサの検出信号とをフードバック信号として用いてロボットアーム11の腕部13及び手首部14の制御信号を生成し、腕部13及び手首部14の動作をフィードバック制御する。さらに、制御器10は、上述の所定の動作プログラムに従ってロボットアーム11のハンド41の動作を制御する。
【0047】
{ハンド}
図3Cは、図1の分注ロボットのハンドによって、ピペットチップが装着されたピペットを係合したピペット保持具が把持された様子を示す斜視図である。図3Dは、図3Cの状態においてピペットのチップエジェクタが押下されてピペットからピペットチップが離脱した様子を示す斜視図である。図3C及び図3Dにおいては、便宜上、図の上下方向をハンドの上下方向とする。
【0048】
図3Cを参照すると、ハンド41は、本体部42と、ピペット保持部43と、プランジャ駆動部44と、を備える。本体部42及びプランジャ駆動部44は、カバーで覆われているが、ハンド41の内部構造を示すためこのカバーが省略されている。ハンド41には、制御器10によるハンド41の動作の制御において、基準座標系が設定(定義)されている。この基準座標系は、左手直交座標系であって、例えば、Y軸が手首部14の第6リンク11fのねじり回転における回転軸に一致する。
【0049】
本体部42は、逆L字状に形成された枠体で構成される。例えば、本体部42は、基部42aの中心を、Y軸に一致するハンド41の基準軸201が通り、基部42aからZ方向に延びた後、Y方向に延びるように形成されている。基部42aは、ロボットアーム11の手首部14の第6リンク11fの先端部のメカニカルインターフェースに装着される。この場合、基部42aは、ハンドの基準軸201が手首部14の第6リンク11fのねじり回転における回転軸に一致するように装着される。従って、ハンド41が図3A~3Cに示される姿勢を取ると、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向が、それぞれ、左右方向、上下方向、及び前後方向となり、X方向、Y方向、及びZ方向が、それぞれ、左方向、下方向、及び前方向となり、且つ、X方向と反対方向、Y方向と反対方向、及びZ方向と反対方向が、それぞれ、右方向、上方向、及び後方向となる。
【0050】
図3C及び図3Dを参照すると、本体部42の先端部42bには、ピペット保持部43が設けられている。ピペット保持部43は、例えば、エアチャックで構成されている。エアチャックは、本体部42の先端部42bに固定された本体47を備える。本体47には、一対の爪部材48が、X軸方向に離隔及び近接自在に設けられている。一対の爪部材48の内面には、それぞれ、一対の板状の当接部材49が設けられている。図3Cには、一対の爪部材48が離隔された状態が示されており、図3Dには、一対の爪部材48が近接されて、ピペット61に装着されたピペット保持具51を把持(挟持)した状態が示されている。
【0051】
図3Cを参照すると、本体部52の中央部には、プランジャ駆動部44が設けられている。プランジャ駆動部44には、X軸に平行な軸線の周りに揺動可能な揺動アーム44aが設けられている。揺動アーム44aは、図示されない駆動モータによって、歯車減速機構を介して駆動される。揺動アーム44aの先端部には従動歯車44bが設けられている。従動歯車44bは、ピペット保持部43に保持されたピペット61のプランジャ64の操作部に当接し、揺動アーム44aの揺動駆動力を従動回転しながらプランジャ64に伝達する。これにより、従動歯車44bが介在しない場合における揺動アーム44aとプランジャ64の摺動を回避しながら、プランジャ64が直線駆動される。
【0052】
<第1及び第2当接面並びにチップ離脱検知器>
図6Aは、図1の分注ロボットがチップエジェクタの上端を第1当接面に当てる動作において、チップエジェクタが第1当接面の下方に位置する状態を示す模式図である。図7Aは、図1の分注ロボットがピペットチップを第2当接面に当てる動作において、ピペットチップが第2当接面の前方に位置する状態を示す模式図である。
【0053】
図1A及び図6Aを参照すると、屑箱7の上方に一部が位置するように第1当接部材82が設けられている。第1当接部材82は、例えば、図1のアッセイロボットシステム100の適所に立設された支柱と、当該支柱の上部から水平方向に屑箱7の上方に突出する腕部とを含むように構成される。ここでは、第1当接部材82の腕部の下面が第1当接面82aである。第1当接面82aは、ここでは、下方向を向いていている。しかし、第1当接面は、これには限定されず、斜め下方向を向いていてもよい。第1当接面82aが斜め下方を向いていても、ピペット61のチップエジェクタ65が当接すると、チップエジェクタ65が押下されて、ピペットチップ71がピペット61から離脱するからである。
【0054】
また、屑箱7と第1当接面82aとの間の高さに位置するようにチップ離脱検知器81が設けられている。チップ離脱検知器81は、例えば、カメラ(デジタルカメラ)、レーザセンサ、発光素子と受光素子との組合せ等によって構成される。チップ離脱検知器81は、ここでは、カメラで構成されている。このカメラは、光軸81が所定の撮像領域を通るように設けられている。この所定の撮像領域は、ハンド41がチップ離脱確認位置に位置する場合に、ハンド41に保持されたピペット61の8つのチップ装着部材63に装着された8つのピペットチップ71の中央部が位置する領域である。チップ離脱確認位置は任意の位置に設定できるが、ここでは、屑箱7の上方であって、ハンド41に保持されたピペット61のチップエジェクタ65が第1当接面82aの下方に位置し且つプランジャが第1当接面82a下方に位置しない位置である。この理由は、チップ離脱確認位置を、チップエジェクタ65を第1当接面82aに当てる際の待機位置として利用するためである。カメラは、所定の撮像領域の画像、すなわち、チップ離脱確認位置に位置するハンド41に保持されたピペット61からピペットチップ71が離脱していない又は離脱した画像を撮像し、その画像データを制御器10に送る。
【0055】
図1図6A、及び図7Aを参照すると、屑箱7は直方体状に形成されている。屑箱7の内部には、屑箱7の上端から一定高さ下がった位置から漏斗状にシュート7aが形成されている。また、屑箱7の一辺の内面には、シュート7aより上方に位置するように第2当接部材7bが設けられている。第2当接部材7bは、水平に円弧状に延在し、且つ、両端が屑箱7の当該一辺に接続するように設けられている。この第2当接部材7bの前側の面が第2当接面91である。ここで、「前方向」とは、第2当接部材7bが呈する円弧形状の中央の法線方向をいう。
【0056】
<制御系統の構成>
図4は、図1の分注ロボットの制御系統の構成を示すブロック図である。図4を参照すると、制御器10は、ロボットアーム11を制御する。また、制御器10は、チップ離脱検知器81からの検知信号に基づいてピペット61からピペットチップ71が離脱したか否かを検知する。具体的には、制御器10は、チップ離脱検知器81としてのカメラの動作を制御し、且つ、カメラから送られる画像データを画像処理して、ピペット61からピペットチップ71が離脱したか否かを検知する。
【0057】
[動作]
次に、以上のように構成されたアッセイロボットシステム100及び分注ロボット1の分注動作を説明する。分注自体は周知であるので、ここでは、分注のうち、実施形態1に係る発明に関連する動作を主に説明する。
【0058】
図1及び図3Cを参照すると、分注ロボット1及び搬送ロボット2は、それぞれの役割を分担しながら、プレートストッカー17、試薬リザーバ3、チップラック4、計測器(図示せず)、及びウォッシャー6等を利用して、一連の分注動作を行う。
【0059】
この一連の分注動作において、分注ロボット1は、ハンド41に保持されたピペット61のチップ装着部材63をチップラック4上のピペットチップ71に圧入し、チップ装着部材63にピペットチップ71を装着する。そして、分注ロボット1は、このピペットチップ71を用いて所定の処理作業を行う。そして、所定の処理作業が終了すると、分注ロボット1は、屑箱7上でピペット61からピペットチップ71を離脱させて、それを屑箱7に廃棄する。
【0060】
次に、分注ロボット1のこの分注動作(制御方法)を詳しく説明する。図5は、図1の分注ロボット1の分注動作を示すフローチャートである。この分注ロボット1の動作は制御器10が所定の制御プログラム(動作プログラム)を実行することによって実現される。
【0061】
図3C及び図3Dを参照すると、分注ロボット1は、ハンド41のピペット保持部43のエアチャックの一対の爪部材48の一対の当接部材49によって、ピペット61に装着されたピペット保持具51の主保持部51aを保持する。この際、主保持部51aの対向配置部材52A、52Bのうちの部材52AがZ方向側に位置し、且つ、対向配置部材52A、52Bの8角柱部分の、互いに対向する端面間の隙間が存在する側面を一対の当接部材49によって把持する。これにより、ハンド41に保持されたピペット61がY軸方向に延在し、且つ当該ピペット61の正面がZ方向を向く。
【0062】
図3B図3C及び図5を参照すると、分注ロボット1は、まず、ロボットアーム11のハンド41によって、ピペット61に装着されたピペット保持具51を把持し、それによって、ピペット61を保持する8ステップS1)。
【0063】
次いで、分注ロボット1は、ピペットチップ71を上述のように装着する(ステップS2)。
【0064】
次いで、分注ロボット1は、上述のように分注を行う(ステップS3)。この際、分注ロボット1は、予め揺動アーム44aを所定位置まで下方に揺動させて置き、そこから揺動アーム44aを上方に揺動させる。すると、圧縮バネによりプランジャ64が上昇して、ピペットチップ71内に分注対象液が吸入される。その後、分注ロボット1は、揺動アーム44aを所定位置まで下方に揺動させる。すると、プランジャ64が下降して、ピペットチップ71から分注対象液が吐出される。
【0065】
図6A乃至図6C及び図5を参照すると、次いで、分注ロボット1は、チップエジェクタ65の上端を第1当接面82aに当てる(ステップS4)。この動作は、チップエジェクタ65の上端を第1当接面82aに当てることができれば、どのように行われてもよい。ここでは、図6A及び図6Bに示すように行われる。まず、図6Aに示すように、分注ロボット1は、ハンド41を上述のチップ離脱確認位置に位置させる。次いで、図6Bに示すように、分注ロボット1は、ハンド41を上昇させてチップエジェクタ65の上端を第1当接面に当てる。すると、押出部材66に押下されてピペットチップ71がチップ装着部材63から離脱する。離脱したピペットチップ71は屑箱7に落下し、シュート7aを滑り落ちて屑箱7に廃棄される。
【0066】
図6C及び図5を参照すると、次いで、分注ロボット1(正確には制御器10)は、ピペットチップ71がピペット61から離脱したか否か確認する(ステップS5)。この理由は、本発明者等の検討結果では、約1/2000の確率でピペットチップ71がピペット61から離脱しないからである。具体的には、分注ロボット1は、ハンド41をチップ離脱確認位置に位置させる。次いで、分注ロボット1(正確には制御器10)が、チップ離脱検知器81としてのカメラに上述の所定の撮像領域を撮像させ、その画像データに基づいて、ピペットチップがピペット61から離脱したか否か確認する。
【0067】
全てのピペットチップ71がピペット61から離脱した場合(ステップS5でYES)、分注ロボット1は、分注動作を終了する。
【0068】
少なくとも一部のピペットチップ71がピペット61から離脱しない場合(ステップS5でNO)、分注ロボット1は、ピペットチップ71を第2当接面91に当てる(ステップS6)。具体的には、分注ロボット1は、図7Aに示すように、ハンド41に保持されたピペット61に残ったピペットチップ71の先端部を、屑箱7の上部に設けられた第2当接部材7bの前面である第2当接面91の前方に位置させる。次いで、図7Bに示すように、ピペット61を第2当接面91に向けて移動させて、ピペットチップ71の先端部を第2当接面91に当てる。すると、第2当接面91の中央に対応するピペットチップ71からそれより外側の部分に対応するピペットチップ71へとこれらのピペットチップ71が順番に第2当接面91に当たり、複数のピペットチップ71が順番に離脱する。これにより、小さな力で複数のピペットチップ71を離脱させることができる。
【0069】
次いで、図7Cに示すように、分注ロボット1は、ピペット61を、第2当接面91を通過するように移動させる。これにより、全てのピペットチップ71がピペット61から離脱する。
【0070】
次いで、分注ロボット1は、分注動作を終了する。
【0071】
以上に説明したように、実施形態1によれば、分注ロボット1によって、ピペット61からピペットチップ71を離脱させる操作を行うことができ、しかも、ハンド41がピペット61に装着されたピペット保持具51を保持することによってロボットアーム11がピペット61を保持するので、ピペット保持具51を、市販の手動式のピペット61を所定の精度に保持できるように設計することによって、市販の手動式のピペット61を所定の精度で保持することができる。その結果、市販の手動式のピペット61を使用して、分注を精度良く行うことができる。
【0072】
さらに、チップエジェクタ65が押下されてもピペットチップ71がピペット61から離脱しなかった場合に、チップ離脱検知器81を用いて、ピペットチップ71がピペット61から離脱しなかったことが検知され、且つ、ロボットアーム11がピペットチップ71の先端部を、平面視において第2当接面91の前方向から当該第2当接面91に当てるので、それによって離脱しなかったピペットチップ71がピペット61から離脱する。その結果、ピペット61からのピペットチップ71の離脱操作を的確に行うことができる。
【0073】
また、ピペット保持具51が、周方向の両端面が微小な隙間を有して互いに対向するように配置されると、全体として円筒形状を有するとともに内部空間がピペット61のグリップ部62bの所定部分の外周形状に対応する内周形状を有するように形成された複数の部分円筒状部材52A、52Bによって構成される保持部51aを備えるので、ピペット保持具51が市販のピペット61の形状に適合するものとなる。その結果、市販の手動式のピペット61を精度良く保持することができる。
【0074】
(実施形態2)
本発明の実施形態2は、図7A乃至7Cに示される屑箱7が第2当接部材7bを備えておらず、且つ、図5に示されるピペットチップ71の離脱確認動作(ステップS4)及びピペットチップ71を第2当接面91に当てる動作(ステップS5)が省略される。これ以外の点は実施形態1と同様である。
【0075】
(その他の実施形態)
実施形態1において、第2当接面は円弧状ではなくてもよく、平面視において延在すればよい。
【0076】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の分注ロボット及びその制御方法は、ピペットからチップを離脱させる操作を行うことができ、しかも、市販の手動式のピペットを使用して分注を行うことができる分注ロボット及びその制御方法として有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 分注ロボット
2 搬送ロボット
3 試薬リザーバ
4 チップラック
5 入出力装置
6 ウォッシャー
7 屑箱
7a シュート
7b 第2当接部材
8 ピペットラック
9 作業台
10 制御器
11 ロボットアーム
16 プレート
17 プレートストッカー
43 ピペット保持部
44 プランジャ駆動部
44a 揺動アーム
44b 従動歯車
48 爪部材
49 当接部材
51 ピペット保持具
61 ピペット
71 ピペットチップ
81 チップ離脱検知器
82 第1当接部材
82a 第1当接面
91 第2当接面
100 アッセイロボットシステム
201 基準軸
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C