(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】スプール弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 11/07 20060101AFI20220303BHJP
F16K 37/00 20060101ALI20220303BHJP
F16K 31/122 20060101ALI20220303BHJP
F16K 3/26 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
F16K11/07 C
F16K37/00 J
F16K31/122
F16K3/26 A
(21)【出願番号】P 2018028498
(22)【出願日】2018-02-21
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】畑 直希
(72)【発明者】
【氏名】青木 誠司
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-089403(JP,U)
【文献】特開2001-221357(JP,A)
【文献】特開2007-085366(JP,A)
【文献】実開平01-065404(JP,U)
【文献】特開平10-267138(JP,A)
【文献】特開2012-193789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00-11/24
F16K 37/00
F16K 31/12-31/165
F16K 31/36-31/42
F16K 3/00- 3/36
F15B 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号圧供給流路と信号圧排出流路を有する信号圧ラインを含む複数の流路が形成されたハウジングと、
中立状態で前記信号圧供給流路に連通する第1流路と、中立状態で前記信号圧排出流路に連通する第2流路とを備えると共に、前記ハウジングの内部に形成された第1スプール用弁室を移動可能に配置され、移動することによって前記複数の流路の間の接続状態を切り替える第1スプールと、
前記第1スプールの内部に形成された第2スプール用弁室を移動可能に配置され、中立状態で前記第1流路及び前記第2流路に連通する第3流路を備えた第2スプールとを備え、
前記第1スプール及び前記第2スプールは、パイロット圧に応じて移動し、
前記第2スプールは、前記第2スプールが中立状態にあるときには、前記第3流路を介して前記第1流路から前記第2流路へ向かう作動油の流れを許容し、前記第2スプールが中立状態から移動したときには、前記第1流路から前記第2流路へ向かう作動油の流れを遮断することを特徴とするスプール弁装置。
【請求項2】
前記第1スプール用弁室の一端側に第1パイロット室が画成されると共に、前記第1スプール用弁室の他端側に第2パイロット室が画成され、
前記第1スプールは、前記第1パイロット室の内部の圧力と前記第2パイロット室の内部の圧力とに応じて、前記第1スプール用弁室の内部を移動可能に構成され、
前記第2スプールは、前記第1パイロット室の内部の圧力と、前記第2パイロット室の内部の圧力とに応じて、前記第2スプール用弁室の内部を移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスプール弁装置。
【請求項3】
前記第3流路は、前記第1スプールと前記第2スプールとの間に形成された空間であることを特徴とする請求項1または2に記載のスプール弁装置。
【請求項4】
前記第1スプールをその軸方向に付勢する第1ばねと、
前記第2スプールをその軸方向に付勢する第2ばねとを備え、
前記第2ばねのばね定数が、前記第1ばねのばね定数よりも小さいことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスプール弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロット圧に応じて流路の接続状態を切り替えるスプール弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パイロット圧に応じてスプールを移動させ、スプールの位置に応じて流路の接続状態を切り替えることにより、作動油の供給を切り替えるスプール弁装置が用いられている。また、スプール弁装置には、パイロット圧が増加した場合に、そのことを検出する構成を有する形式のものが提案されている。そのようなスプール弁装置として、例えば、特許文献1に開示されているものがある。特許文献1には、信号圧流路が設けられ、スプールの位置に応じてパイロット室から信号圧流路への作動油の供給が切り替えられるスプール弁について開示されている。スプール弁装置に、スプールの位置に応じてパイロット室から信号圧流路への作動油の供給が切り替えられる構成が設けられているので、パイロット圧が増加したときに、これを検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたスプール弁装置では、流路の接続状態を切り替えるスプールの位置によってパイロット室から信号圧流路へ作動油が供給されるか否かが決まる。そのため、信号圧流路へ作動油が供給されているか否かは、流路の接続状態を切り替えるスプールが移動しているか否かによって検出される。作動油がパイロット室から信号圧流路へ供給されるか否かが、流路の接続状態を切り替えるスプールの位置によって検出されるので、このスプールが実際に移動するまで、作動油がパイロット室から信号圧流路へ供給されたことを検出することができない。
【0005】
作動油がパイロット室から信号圧流路へ供給されるか否かが検出されるタイミングが、実際に流路の接続状態を切り替えるスプールが移動した後になるので、作動油がパイロット室から信号圧流路へ供給されたことが検出されるタイミングは、流路の接続状態を切り替えるスプールの移動のタイミングによって定まる。
【0006】
作動油がパイロット室から信号圧流路へ供給されたことを検出されるのが、流路の接続状態を切り替えるスプールが移動した後になるので、例えば、流路の接続状態を切り替えるスプールの移動の特性によっては、作動油がパイロット室から信号圧流路へ供給されたとしてもこれを即座に検出することができない可能性がある。そのため、作動油がパイロット室から信号圧流路へ供給されたときに、そのタイミングを正確に検出することができない可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、流路の接続状態を切り替えるためのスプールの移動の有無とは別に、パイロット圧が増加したときに、そのことを検出することができるスプール弁装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスプール弁装置は、信号圧供給流路と信号圧排出流路を有する信号圧ラインを含む複数の流路が形成されたハウジングと、中立状態で前記信号圧供給流路に連通する第1流路と、中立状態で前記信号圧排出流路に連通する第2流路とを備えると共に、前記ハウジングの内部に形成された第1スプール用弁室を移動可能に配置され、移動することによって前記複数の流路の間の接続状態を切り替える第1スプールと、前記第1スプールの内部に形成された第2スプール用弁室を移動可能に配置され、中立状態で前記第1流路及び前記第2流路に連通する第3流路を備えた第2スプールとを備え、前記第1スプール及び前記第2スプールは、パイロット圧に応じて移動し、前記第2スプールは、前記第2スプールが中立状態にあるときには、前記第3流路を介して前記第1流路から前記第2流路へ向かう作動油の流れを許容し、前記第2スプールが中立状態から移動したときには、前記第1流路から前記第2流路へ向かう作動油の流れを遮断することを特徴とする。
【0009】
上記構成のスプール弁装置では、第2スプールが、複数の流路の間の接続状態を切り替える第1スプールとは別にパイロット圧に応じて移動し、第2スプールが移動したときには第1流路から第2流路へ向かう作動油の流れを遮断するので、第1スプールの移動とは別に、第2スプールが移動したときにパイロット圧の増加を検出することができる。
【0010】
また、前記第1スプール用弁室の一端側に第1パイロット室が画成されると共に、前記第1スプール用弁室の他端側に第2パイロット室が画成され、前記第1スプールは、前記第1パイロット室の内部の圧力と前記第2パイロット室の内部の圧力とに応じて、前記第1スプール用弁室の内部を移動可能に構成され、前記第2スプールは、前記第1パイロット室の内部の圧力と、前記第2パイロット室の内部の圧力とに応じて、前記第2スプール用弁室の内部を移動可能に構成されていてもよい。
【0011】
第1スプール及び第2スプールが、第1パイロット室の内部の圧力と前記第2パイロット室の内部の圧力とに応じて移動可能に構成されているので、第1パイロット室あるいは第2パイロット室の内部の圧力が増加したときに、これを確実に検出することができる。
【0012】
また、前記第3流路は、前記第1スプールと前記第2スプールとの間に形成された空間であってもよい。
【0013】
第3流路が、第1スプールと第2スプールとの間に形成された空間であるので、第3流路を簡易に形成することができる。
【0014】
また、前記第1スプールをその軸方向に付勢する第1ばねと、前記第2スプールをその軸方向に付勢する第2ばねとを備え、前記第2ばねのばね定数が、前記第1ばねのばね定数よりも小さくてもよい。
【0015】
第2ばねのばね定数が、第1ばねのばね定数よりも小さいので、パイロット室の内部の圧力が増加したときに、第1スプールよりも第2スプールが先に移動する。従って、パイロット室の内部の圧力が増加したときには、即座にそのことを検出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、流路の接続状態を切り替えるためのスプールの移動の有無に関係なくパイロット圧の増加したことを検出することができるので、パイロット圧が増加したときに、そのことを検出するための構成の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)は本発明の実施形態に係るスプール弁装置についての断面図であり、(b)は(a)における第2スプール及び第2スプール用弁室について拡大した断面図である。
【
図2】
図1(a)のスプール弁装置を備える油圧供給器の油圧回路図である。
【
図3】
図1(a)のスプール弁装置において、第2スプールが他端側に移動した状態において、第2スプール及び第2スプール用弁室について拡大して示した断面図である。
【
図4】
図3の状態から、第1スプールが他端側に移動した状態のスプール弁装置について示した断面図である。
【
図5】
図1(a)のスプール弁装置において、第2スプールが一端側に移動した状態において、第2スプール及び第2スプール用弁室について拡大して示した断面図である。
【
図6】
図5の状態から、第1スプールが一端側に移動した状態のスプール弁装置について示した断面図である。
【
図7】他の実施形態に係るスプール弁装置についての断面図である。
【
図8】別の実施形態に係るスプール弁装置についての断面図である。
【
図9】さらに別の実施形態に係るスプール弁装置についての断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るスプール弁装置について、添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1(a)に、実施形態に係るスプール弁装置100についての断面図を示し、
図1(b)に、
図1(a)における第2スプール用弁室40及び第2スプール30について拡大した断面図を示す。
【0020】
スプール弁装置100は、例えば油圧ショベルに採用される。油圧ショベルでは、アタッチメントであるバケットを備えており、またバケットを動かすべくブーム及びアームを備えている。
【0021】
ブーム、アーム及びバケットには、それらを動かすべく油圧アクチュエータが取り付けられており、油圧アクチュエータは、例えば、
図2に示されるような油圧シリンダ2によって構成されている。なお、油圧アクチュエータは、油圧シリンダに限定されず、油圧モータ等であってもよく、作動油によって駆動可能なものであればよい。
【0022】
図1(a)、(b)に示されるように、スプール弁装置100は、ハウジング10と、第1スプール20とを備えている。第1スプール20は、軸線方向に延在する大略円柱状に構成されている。
図1(a)、(b)に示される状態では、第1スプール20は、中立の位置に配置されている。
【0023】
ハウジング10の内部には、第1スプール20が移動可能な第1スプール用弁室11が設けられている。第1スプール用弁室11の内部に第1スプール20が移動可能に収容されている。第1スプール20は略円筒状の形状を有しており、第1スプール用弁室11もそれに対応して、略円筒状に形成されている。内部に第1スプール20を収容する第1スプール用弁室11は、一端側から他端側にかけてハウジング10を貫通するように形成されている。また、ハウジング10には、複数の作動油の流路12が形成されている。
【0024】
ハウジングに形成された流路12としては、ポンプから供給される作動油が流通するポンプ流路12aと、ロッドを移動可能に収容するシリンダに連通するロッド側流路12bと、シリンダにおけるロッド側流路12bとは逆側の位置に連通するボトム側流路12cと、タンクに連通するタンク流路12d、12eとが、ハウジング10の内部に形成されている。
【0025】
本実施形態では、ハウジング10における一端側から他端側に向かう方向についてのほぼ中央の位置に、ポンプからのポンプ流路12aが、第1スプール20を貫通するように形成されている。また、ハウジング10におけるポンプ流路12aよりも一端側の位置に、ロッド側流路12bが第1スプール20を貫通するように形成されている。また、ハウジング10におけるポンプ流路12aよりも他端側の位置に、ボトム側流路12cが第1スプール20を貫通するように形成されている。このように、流路12a~12eは、それぞれ異なる位置で第1スプール用弁室11に接続されている。
【0026】
第1スプール20の長さ方向の両方の延長線上には、パイロット室13が設けられている。パイロット室13のうち、第1パイロット室13aが、第1スプール用弁室11における一端側に接続されて形成されている。また、パイロット室13のうち、第2パイロット室13bが、第1スプール用弁室11における他端側に接続されて形成されている。このように、第1スプール用弁室11の一端側に第1パイロット室13aが画成されると共に、第1スプール用弁室11の他端側に第2パイロット室13bが画成されている。また、第1パイロット室13aには、第1パイロットポート13cが形成され、第1パイロットポート13cを通じて第1パイロット室13aに作動油が流通している。また、第2パイロット室13bには、第2パイロットポート13dが形成され、第2パイロットポート13dを通じて第2パイロット室13bに作動油が流通している。
【0027】
以下、第1パイロット室13aの側のことを一端側といい、第2パイロット室13bの側のことを他端側というものとする。
【0028】
本実施形態では、ハウジング10の一端側に、ばね機構50が設けられている。ばね機構50は、ばね側ケーシング51と、第1ばね受け52と、第2ばね受け53と、第1スプールばね54とを有している。ばね側ケーシング51は、大略有底筒状の部材であり、開口部を第1スプール20の軸線方向の一端側の端部に被せるようにしてハウジング10の一端側の側面に締結されている。また、ばね側ケーシング51には、第1ばね受け52と、第2ばね受け53と、第1スプールばね54とが収容されている。第1ばね受け52及び第2ばねうけ53は、大略円環状に形成されており、第1ばね受け52及び第2ばね受け53のそれぞれの軸中心に貫通孔が形成されている。第1ばね受け52の貫通孔に第1スプール20の一端側の端部が挿入された状態で、第1ばね受け52が第1スプール20の一端側に取り付けられている。また、第2ばね受け53に形成された貫通孔に第1スプール20が挿入されると共に、第2ばね受け53が第1スプール20に取り付けられている。
【0029】
第1ばね受け52は、第2ばね受け53よりも一端側の位置に配置されている。第1ばね受け52と第2ばね受け53との間には、第1スプールばね(第1ばね)54が配置されている。第1スプールばね54は、第1スプール20をその軸方向に付勢している。第1スプールばね54は、いわゆる圧縮コイルばねとしての圧縮第1スプールばね54aと、引張コイルばねとしての引張第1スプールばね54bとを備えている。圧縮第1スプールばね54aは、圧縮された状態で対向する第1ばね受け52及び第2ばね受け53の面の間に介在している。これにより、圧縮第1スプールばね54aによる拡張する方向の付勢力が第2ばね受け53を介して第1スプール20に作用している。また、引張第1スプールばね54bは、引っ張られた状態で対向する第1ばね受け52及び第2ばね受け53の面の間に介在している。これにより、引張第1スプールばね54bによる圧縮する方向の付勢力が第2ばね受け53を介して第1スプール20に作用している。第1スプール20は、ばね側ケーシング51の内部で、第1スプールばね54を介してハウジング10に支持されている。
【0030】
第1スプール20は、第1スプール用弁室11の内部で摺動可能なので、第1パイロット室13a及び第2パイロット室13b内部の作動油の圧力に応じて移動することが可能に構成されている。第1スプール20には、径方向外側の側面に溝21が形成されている。本実施形態では、第1スプール20の側面に5つの溝21a~21eが形成されている。以下、パイロット室13の内部での作動油の圧力のことをパイロット圧というものとする。
【0031】
図1(a)、(b)に示される状態(中立状態)では、第1スプール20に形成された溝21のうち、溝21aがタンク流路12dのみに接続され、溝21b、溝21c、溝21dがポンプ流路12aのみに接続され、溝21eがタンク流路12eのみに接続されている。
【0032】
第1スプール20がハウジング10の内部で移動すると、ハウジング10の内部で、軸方向についての溝21a~21eの位置が移動する。後述するように、第1スプール20がハウジング10内で移動することにより、複数の流路12同士が連通する接続先を切り替えることができ、複数の流路12の間の接続状態を切り替える。
【0033】
本実施形態のスプール弁装置100は、第1パイロット室13a及び第2パイロット室13b内部の作動油の圧力に応じて一端側及び他端側の両方に移動可能に構成され、いわゆる3ファンクション形式のスプール弁である。
【0034】
また、第1スプール20の内部には、第2スプール用弁室40と、第2スプール用弁室40の内部を摺動可能な第2スプール30とが設けられている。
【0035】
第1スプール20における他端側の端部の位置に形成された第2スプール用弁室40の内部に、第2スプール30が、移動可能に配置されている。
図1(a)、(b)の状態では、第2スプール30についても、中立の位置に配置されている。
【0036】
第1スプール20における軸中心の位置には、第1スプール20を軸方向に沿って貫通するように、スプール内流路22が設けられている。本実施形態では、スプール内流路22は、第1パイロット室13aと第2スプール用弁室40とを連通させるように、第1スプール20の軸中心を一端側から他端側へ貫通するように形成されている。
【0037】
スプール内流路22は、一端側で第1パイロット室13aと連通するように形成されている。第1パイロット室13a内部のパイロット圧が変化すると、
図1(a)に示される矢印P1に沿ってパイロット圧の変化が伝達される。従って、第1パイロット室13a内部のパイロット圧の変化が、第1パイロット室13aからスプール内流路22を介して、第2スプール用弁室40に伝達される。
【0038】
また、第1スプール用弁室11の内部を移動可能な第1スプール20には、第2スプール用弁室40と第1スプール20の径方向の外側とを連通させる流路24が形成されている。流路24は、第1スプール20の軸中心に沿って形成された第2スプール用弁室40から、第1スプール20の径方向の外側の領域まで、第1スプール20の径方向に沿って延びるように形成されている。第1スプール20には、流路24は、一端側から他端側に向かう方向に沿って複数形成されている。本実施形態では、流路24が、一端側から他端側に向かう方向に沿って2つ形成されている。第1スプール20における一端側から他端側に向かう方向に沿って2つ形成された流路24のうち、一端側に形成された流路を第1流路24aとし、他端側に形成された流路を第2流路24bとする。
【0039】
図1に示される中立の状態で、第1スプール20の軸方向に関し、ハウジング10における第2スプール30に対応する位置には、流路17が形成されている。本実施形態では、流路17は、第1スプール20の軸方向に関し、2か所に形成されている。流路17は、第1スプール用弁室11の内側の側面に、周方向の全体に亘って形成されている。流路17は、第1スプール用弁室11が部分的に拡径されるように、ハウジング10における第1スプール用弁室11に面する位置に形成されている。
【0040】
図1(a)、(b)に示される中立状態の第1スプール20における流路17a、17bに対応した位置には、第1流路24a、第2流路24bが形成されている。第1流路24a、第2流路24bは、第1スプール20の軸方向に交差する方向に延びて第1スプール20内部に形成されている。本実施形態では、第1流路24a、第2流路24bは、それぞれ第1スプール20の軸方向に直交する方向に延び、第1スプール20を貫通するように形成されている。
【0041】
本実施形態では、第2スプール30には、径方向の外側の側面に溝が形成され、溝が第3流路31として機能する。すなわち、本実施形態では、第3流路31は、第2スプール30の径方向の外側の側面に形成された溝である。第2スプール30の外側の側面に溝としての第3流路31が形成されているので、第1スプール20と第2スプール30との間に空間が形成される。第1スプール20と第2スプール30との間に空間が形成されるので、その空間を通して作動油を流通させることができる。第1スプール20と第2スプール30との間に形成された空間の内部に作動油を流通させることにより、空間を第3流路31として機能させることができる。第3流路31は、第2スプール30の軸方向において、一部にのみ形成されている。なお、本実施形態においては、第3流路31が、第2スプール30の外側の側面に形成された溝である構成について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。第1スプール20と第2スプール30との間に流路としての空間が形成されるのであれば、空間は、第2スプール30に形成された溝以外の構成であってもよい。例えば、第2スプール30の外側の側面に凸部が形成され、凸部同士の間に流路としての空間が形成された構成であってもよい。
【0042】
第2スプール30には、ばね受け32が形成されている。第2スプール30の軸方向において、ばね受け32同士の間には、第2スプール30についての第2スプールばね(第2ばね)33が設けられている。第2スプールばね33は、第2スプール30をその軸方向に付勢している。第2スプール30が、第2スプールばね33を介して、第1スプール20に支持されている。
【0043】
第2スプールばね33は、圧縮コイルばねとしての圧縮第2スプールばねと、引張コイルばねとしての引張第2スプールばねとを備えている。従って、圧縮第2スプールばねによる拡張する方向の付勢力がばね受け32を介して第2スプール30に作用している。また、引張第2スプールばねによる圧縮する方向の付勢力がばね受け32を介して第2スプール30に作用している。第2スプール30は、第2スプールばね33を介して第1スプール20に支持されている。
【0044】
スプール弁装置100には、第2スプール30が移動したか否かを検出するための信号圧ライン70が形成されている。信号圧ライン70は、作動油を供給するポンプ60から第2スプール30の第3流路31を通ってドレーン部63に至る作動油の流路である。信号圧ライン70は、ハウジング10に形成されたポンプ60からの作動油の信号圧供給流路61と、信号圧供給流路61における第1スプール用弁室11に接続される入口の流路17aと、第1スプール20に形成された第1流路24aと、第2スプール30に形成された第3流路31と、第1スプール20に形成された第2流路流路24bと、信号圧排出流路64における第1スプール用弁室11に接続された流路17bと、ハウジング10に形成されドレーン部63に向かう作動油の流通する信号圧排出流路64とを備えている。
【0045】
第1スプール20の軸方向に関し、第1スプール20の2か所に形成された作動油の流路17のうち、一端側に形成された流路17aは、ポンプ60からの作動油の信号圧供給流路61に接続されている。従って、ポンプ60が駆動されている間は、ポンプ60によって、一端側の作動油の流路17aに、作動油が供給され続ける。ポンプ60から一端側の作動油の流路17aへ向かう信号圧供給流路61には、信号圧供給流路61内部の作動油の圧力を測定できる圧力計62が取り付けられている。また、流路17のうち、他端側に形成された作動油の流路17bは、作動油をドレーン部63へ導く信号圧排出流路64に接続されている。
【0046】
図1(a)、(b)に示される状態(中立状態)では、ハウジング10における第2スプール30に対応する位置に形成された流路17a、17bが、第1スプール20において径方向に沿って形成された第1流路24a、第2流路24bと連通するように、第1スプール20及び第2スプール30が配置されている。本実施形態では、一端側で、ハウジング10における流路17aと第1スプール20における第1流路24aとが連通し、他端側で、ハウジング10における流路17bと第1スプール20における第2流路24bとが連通している。
【0047】
また、
図1(a)、(b)に示される中立の位置では、第1スプール20において径方向に沿って形成された第1流路24a、第2流路24bが、それぞれ第2スプール30の外周に軸方向に沿って形成された第3流路31と連通している。そのため、ハウジング10に形成された流路17aと流路17bとが、第1スプール20に形成された第1流路24a、第2流路24bと第2スプール30の外周に形成された第3流路31とを介して連通している。従って、ハウジング10の流路17aに供給された作動油は、第1スプール20の第1流路24aに供給され、第2スプール30の外周に形成された第3流路31を通り、第1スプール20に形成された第2流路24bを通って、ハウジング10の流路17bに供給される。
【0048】
流路17bはドレーン部63に接続されているので、流路17aに供給された作動油は、第1流路24a、第3流路31、第2流路24bを通り、流路17bに供給された後にドレーン部63に排出される。従って、ポンプ60からの信号圧供給流路61においては、作動油がドレーン部63に接続された状態になるので、信号圧供給流路61における作動油の圧力が増加せず、圧力計62によって示される圧力は一定に維持される。
【0049】
このように、第2スプール30は、信号圧供給流路61、流路17a、第1流路24a、第3流路31、第2流路24b、流路17b及び信号圧排出流路64が互いに連通した連通位置に位置することができる。その一方、第2スプール30が中立の状態から移動し、信号圧供給流路61、流路17a、第1流路24a、第3流路31、第2流路24b、流路17b及び信号圧排出流路64が互いに連通しない構成となった場合、作動油がドレーン部63に排出されなくなる。従って、信号圧供給流路61の作動油の圧力が増加する。このときの信号圧供給流路61の作動油の圧力が増加したか否かを検出することにより、第2スプール30が移動したか否かを検出することができる。
【0050】
このように、第2スプール30には、第2スプール30の外周において作動油を流通させる第3流路31が形成され、第1スプール20には、中立状態のときに作動油を第3流路31に導くための第1流路24aと、中立状態のときに作動油を第3流路31から排出させるための第2流路24bとが形成されている。また、ハウジング10には、中立状態のときに作動油を第1流路24aに導くための信号圧供給流路61及び流路17aと、中立状態のときに作動油を第2流路24bから排出させるための流路17b及び信号圧排出流路64とが形成されている。
【0051】
図2に、本実施形態のスプール弁装置100を用いた油圧回路の回路図を示す。
【0052】
油圧シリンダ2は、ロッド2aを有しており、油圧シリンダ2に供給される作動油の流れる方向に応じてロッド2aを進退させる。より詳細には、油圧シリンダ2は、2つのポート2b、2cを有しており、一方のポート2bに作動油を流すとロッド2aがD2方向へ後退し、他方のポート2cに作動油を流すとロッド2aがD1方向へ前進する。このように構成される油圧シリンダ2には、油圧供給機器3が接続されている。
【0053】
なお、本実施形態では、油圧ショベルに本発明のスプール弁装置100が用いられる形態について説明しているが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明のスプール弁装置100は、他の構成に対して用いられてもよい。油圧を用いて駆動させる他の建設機械に対し用いられてもよい。また、本発明のスプール弁装置100は、建設機械以外の他の産業機械に用いられてもよい。
【0054】
油圧供給機器3は、2つのポート2b、2cに作動油を供給可能に構成されており、2つの油圧ポンプ4を備えている。本実施形態では、油圧供給機器3は、第1スプール20と第2スプール30とを有するスプール弁装置100を1つ備えると共に、第2スプール30を有していない第1スプール20を1つ備えている。油圧ポンプ4は、例えば斜板ポンプであり、タンク5から作動液を吸引して吐出する。また、油圧ポンプ4は、一方のスプール弁装置100に接続されており、油圧ポンプ4からの作動油がスプール弁装置100に供給される。
【0055】
本実施形態では、油圧ポンプ4から延びた流路8は、タンク7に接続されている。油圧ポンプ4からタンク7に向かって延びた流路8が途中で分岐し、ハウジング10に形成されたポンプ流路12aに接続されている。従って、油圧ポンプ4からタンク7に向かって供給される作動油のうち、一部の作動油が、ポンプ流路12aを通り、第1スプール20を介して油圧シリンダ2に向けて供給される。油圧ポンプ4からタンク7に向かって供給される作動油のうち、ポンプ流路12aに供給されない作動油については、そのまま流路8を通ってタンク7に排出される。
【0056】
本実施形態では、1つの油圧シリンダ2に対し、2つの油圧ポンプ4が接続されている。また、油圧ポンプ4から供給される作動油を振り分けるための第1スプール20が、2つ設けられている。また、ポート2bに対し、2つのボトム側流路12cが合流した流路が接続されている。また、同様に、ポート2cに対し、2つのロッド側流路12bが合流した流路が接続されている。
【0057】
なお、本実施形態の油圧供給機器3においては、1つの油圧シリンダ2に2つの油圧ポンプ4が接続されているが、1つの油圧シリンダ2につき、1つの油圧ポンプ4が接続された構成であってもよい。また、1つの油圧シリンダ2につき、3つ以上の複数の油圧ポンプ4が接続されてもよい。
【0058】
スプール弁装置100における第1スプール20は、いわゆる方向切換弁を備える弁装置であり、作動油の流れる方向を切換えて2つのポート2b,2cに作動油を選択的に流し、油圧シリンダ2に流す作動油の流量を調整する。
【0059】
第1スプール20は、その位置に応じて各流路12a~12eの接続状態を切換えるように構成されている。
【0060】
油圧供給機器3は、操作桿80を備えている。油圧供給機器3の操作者によって操作桿80が倒されると、それに応じて第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13bのパイロット圧が増加する。第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13bのパイロット圧の増加に応じて、第2スプール30及び第1スプール20が移動する。つまり、操作桿80の操作に応じて第2スプール30及び第1スプール20を移動させ、油圧シリンダ2においてD1方向あるいはD2方向へロッド2aを駆動させることができる。このように、操作桿80の操作によって、油圧供給機器3を操作することができる。
【0061】
次に、
図1に示される中立状態から第1スプール20が移動するときについて説明する。まず、第1パイロット室13aのパイロット圧が増加し、それに伴い、第2スプール30及び第1スプール20が一端側から他端側に向けて移動する場合について説明する。第1スプール20が移動する際には、本実施形態では、第1スプール20が通路11の内部を摺動して移動する前に、第2スプール30が第2スプール用弁室40の内部を摺動して移動する。
【0062】
図3に、
図1(a)、(b)の中立の状態から、一端側の第1パイロット室13aのパイロット圧が増加することによって第2スプール30が第2スプール用弁室40の内部を移動すると共に、第1スプール20が通路11の内部を移動したときのスプール弁装置100の断面図を示す。
【0063】
図3には、第1パイロット室13aのパイロット圧が増加することによって第2スプール30が第2スプール用弁室40の内部を他端側へ移動したときの第2スプール30及び第2スプール用弁室40の内部について拡大して示した断面図が示されている。
図3に示される状態では、第1スプール20は移動していない。
【0064】
第1パイロット室13a内部のパイロット圧が増加すると、第1パイロット室13a内部の圧力の増加が、第1スプール20内部のスプール内流路22を介して、第2スプール用弁室40における一端側の部分に伝達される。第2スプール用弁室40における一端側の部分における作動油の圧力が増加すると、第2スプール用弁室40の内部に配置された第2スプール30が移動する。
【0065】
本実施形態では、第1パイロット室13aの内部のパイロット圧が増加したときに、第1スプール20よりも先に第2スプール30が移動するように、第2スプールばね33及び第1スプールばね54が設定されている。つまり、第2スプールばね33のばね定数が、第1スプールばね54のばね定数よりも小さい。
【0066】
第1パイロット室13a内部のパイロット圧が増加することによって第2スプール30が他端側へ移動するので、第2スプール30の外周に形成された第3流路31の位置が軸方向に沿って移動する。そのため、
図3に示されるように、第1スプール20の第1流路24aと第2スプール30の第3流路31との間で、連通した状態が解除される。
【0067】
第1流路24aと第3流路31との間が連通していない状態で、ポンプ60から信号圧供給流路61に作動油が供給され続けるので、信号圧供給流路61における作動油の圧力が増加する。信号圧供給流路61の作動油の圧力が増加すると、圧力計62によって示される圧力の値が増加する。このときの圧力計62によって示される圧力の増加を検出することにより、第2スプール30が他端側に移動したことを検出することができ、第1パイロット室13a内部の圧力が増加したことを検出することができる。
【0068】
このように、第2スプール30は、信号圧供給流路61、流路17a、第1流路24a、第3流路31、第2流路24b、流路17b及び信号圧排出流路64が連通しない非連通位置に位置することができる。
【0069】
第2スプール30が中立状態にあるときには、第3流路31を介して第1流路24aから第2流路24bへ向かう作動油の流れが許容される。その一方、第2スプール30が移動したときには、第1流路24aから第2流路24bへ向かう作動油の流れが遮断される。
【0070】
圧力計62によって信号圧供給流路61の圧力が増加したことが検出され第2スプール30が移動したことが検出されると、第1パイロット室13a内部においてパイロット圧が増加したことが検出される。従って、操作桿80の操作が行われたことを検出することができる。また、一方の第1スプール20において、第2スプール30が移動したことが検出されて第1パイロット室13a内部におけるパイロット圧が増加したことが検出されると、他方の第1スプール20においても、第1パイロット室13a内部におけるパイロット圧が増加したと判断される。
【0071】
図3に示される状態からさらに第1パイロット室13a内部のパイロット圧が増加すると、第1スプール20が他端側に向かって移動する。
【0072】
図4に、第1スプール20が他端側へ移動したときのスプール弁装置100の断面図を示す。
【0073】
第1パイロット室13a内部のパイロット圧の増加によって、第1スプール20が他端側へ移動すると、第1スプール20の外周に形成された溝21a~21eの軸方向に沿った位置が移動する。
図4に示される状態では、第1スプール20に形成された溝21のうち、溝21aが、タンク流路12dとロッド側流路12bとの間に接続され、溝21b、溝21cが、ポンプ流路12aのみに接続され、溝21dが、ポンプ流路12aとボトム側流路12cとの間に接続され、溝21eがタンク流路12eのみに接続されている。従って、溝21aを介してタンク流路12dとロッド側流路12bとが接続されると共に、溝21dを介してポンプ流路12aとボトム側流路12cとが接続される。このように、溝21dを介してポンプ流路12aとボトム側流路12cとが接続されるので、油圧ポンプ4からの作動油をボトム側流路12cに向けて供給することができる。
【0074】
また、その一方、溝21aを介してタンク流路12dとロッド側流路12bとが接続されるので、ロッドの配置された側のシリンダ内部の作動油をタンク5に排出することができる。そのため、シリンダ内部におけるロッド側の部分の圧力を減少させると共にシリンダ内部におけるボトム側の部分の圧力を増加させることができる。これにより、ロッド2aを、
図2に示されるロッド2aの延びる方向D1に向けて移動させることができる。
【0075】
次に、第2パイロット室13bのパイロット圧が増加し、それに伴い、第2スプール30及び第1スプール20が他端側から一端側に向けて移動する場合について説明する。
【0076】
図5に、
図1(a)、(b)の中立の状態から、他端側の第2パイロット室13bのパイロット圧が増加することによって第2スプール30が第2スプール用弁室40の内部を移動したときの、第2スプール30及び第2スプール用弁室40の内部について拡大して示した断面図を示す。
図5に示される状態では、第1スプール20は移動していない。
【0077】
第2スプール用弁室40における他端側の部分における作動油の圧力が増加すると、第2スプール用弁室40の内部に配置された第2スプール30が他端側から一端側に向けて移動する。本実施形態では、第2パイロット室13bの内部のパイロット圧が増加したときに、第1スプール20よりも先に第2スプール30が移動するように、第2スプールばね33及び第1スプールばね54が設定されている。第2パイロット室13b内部のパイロット圧が増加することによって第2スプール30が一端側へ移動するので、第2スプール30の外周に形成された第3流路31の位置が軸方向に沿って移動する。
【0078】
そのため、
図5に示されるように、第1スプール20の第1流路24aと第2スプール30の第3流路31とが連通しているが、第2スプール30の第3流路31と第1スプール20の第2流路24bとが連通していない状態になる。従って、第2スプール30の第3流路31と第1スプール20の第2流路24bとの間で、連通した状態が解除される。
【0079】
第3流路31と第2流路24bとが連通していない状態でポンプ60から信号圧供給流路61に作動油が供給され続けているので、信号圧供給流路61における作動油の圧力が増加する。信号圧供給流路61の作動油の圧力が増加すると、圧力計62によって示される圧力の値が増加する。このときの圧力計62によって示される圧力の増加を検出することにより、第2スプール30が一端側に移動したことを検出することができ、第2パイロット室13b内部の圧力が増加したことを検出することができる。
【0080】
圧力計62によって信号圧供給流路61の圧力が増加したことが検出され第2スプール30が移動したことが検出されると、第2パイロット室13b内部においてパイロット圧が増加したことが検出される。従って、操作桿80の操作が行われたことを検出することができる。また、一方の第1スプール20において、第2スプール30が移動したことが検出されて第2パイロット室13b内部におけるパイロット圧が増加したことが検出されると、他方の第1スプール20においても、第2パイロット室13b内部におけるパイロット圧が増加したと判断される。
【0081】
図5に示される状態からさらに第2パイロット室13b内部のパイロット圧が増加すると、第1スプール20が一端側に向かって移動する。
【0082】
図6に、第1スプール20が一端側へ移動したときのスプール弁装置100の断面図を示す。
【0083】
第1パイロット室13b内部のパイロット圧の増加によって、第1スプール20が一端側へ移動すると、第1スプール20の外周に形成された溝21a~21eの軸方向に沿った位置が移動する。
【0084】
図6に示される状態では、第1スプール20に形成された溝21のうち、溝21aが、タンク流路12dのみに接続され、溝21bが、ロッド側流路12bとポンプ流路12aとの間に接続され、溝21c、溝21dがポンプ流路12aのみに接続され、溝21eが、ボトム側流路12cとタンク流路12eとの間に接続されている。従って、溝21bを介してロッド側流路12bとポンプ流路12aとが接続されると共に、溝21eを介してボトム側流路12cとタンク流路12eとが接続される。
【0085】
このように、溝21bを介してロッド側流路12bとポンプ流路12aとが接続されるので、油圧ポンプ4からの作動油をロッド側流路12bに向けて供給することができる。また、その一方、溝21eを介してボトム側流路12cとタンク流路12eとが接続されるので、ボトム側のシリンダ内部の作動油をタンク5に排出することができる。
【0086】
そのため、シリンダ内部におけるロッド側の部分の圧力を増加させると共にシリンダ内部におけるボトム側の部分の圧力を減少させることができる。これにより、ロッド2aを、
図2に示されるロッド2aの延びる方向とは逆側のD2に向けて移動させることができる。
【0087】
本実施形態のスプール弁装置100によれば、スプール弁装置100が、通路11の内部で摺動可能に配置された第1スプール20と、第2スプール用弁室40の内部で摺動可能に配置された第2スプール30とを備えているので、第1スプール20の移動とは別に、第2スプール30によって第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13bのパイロット圧が増加したか否かを検出することができる。従って、第1スプール20の移動のタイミングとは関係なく、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13b内部のパイロット圧が増加したことを検出することができる。そのため、第1スプール20の移動の特性に制限されずに、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13b内部のパイロット圧が増加したことを検出することができる。
【0088】
例えば、第2スプール30における第2スプールばね33のばね定数を、第1スプール20における第1スプールばね54のばね定数よりも小さくすることにより、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13b内部のパイロット圧が増加したときの第2スプール30の移動のタイミングを速くすることができる。このように、第2スプール30における第2スプールばね33のばね定数及び第1スプール20における第1スプールばね54のばね定数を適宜設定することにより、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13b内部のパイロット圧が増加したときの第2スプール30の移動のタイミングを速くすることができる。これにより、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13b内部のパイロット圧が増加したときに、遅れずに即座にパイロット圧が増加したことを検出することができる。そのため、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13b内部のパイロット圧が増加したときに、そのタイミングをより正確に検出することができる。
【0089】
第2スプール30が移動すると、ポンプ60が駆動されているにも関わらず信号圧供給流路61と信号圧排出流路64との間の連通が解除されることにより、信号圧供給流路61内部の作動油の圧力が増加する。また、信号圧供給流路61内部の作動油の圧力が増加したときには、圧力計62の示す圧力によって、そのことを検出することができる。従って、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13bの圧力が増加することによって第2スプール30が移動したときには、圧力計62の指し示す圧力によってそのことを検出することができる。これにより、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13bの圧力が増加したときには、そのことを確実に検出することができる。
【0090】
また、本実施形態では、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13bのパイロット圧が増加したときに、第2スプール30の移動によってこれを検出することができるので、第1スプール20の移動とは関係なく、そのことを検出することができる。第1スプール20の移動特性に関係なく、第2スプール30が移動したときに、第2スプール30の移動を検出することによって、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13bのパイロット圧の増加を検出することができる。第2スプール30の移動の検出によって、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13bのパイロット圧の増加を検出するので、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13bのパイロット圧の増加を検出するための構成の自由度を向上させることができる。第1スプール20の移動特性によって制限されずに、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13bのパイロット圧の増加を検出するための構成を自由に設計することができる。
【0091】
このように、第1スプール20の移動に関係なく、第2スプール30の移動を検出したときに、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13bのパイロット圧が増加したことを検出することができるので、パイロット圧の増加を検出するための構成を自由に設定することができる。つまり、第2スプール30を摺動可能に支持する第2スプールばね33の特性と、第1スプール20を摺動可能に支持する第1スプールばね54との特性とを、自由な組み合わせに設定することができる。これにより、スプール弁装置100の設計の際の自由度を向上させることができる。
【0092】
図2に示されるように、1つの油圧シリンダ2につき2つの油圧ポンプ4が接続されている場合に、油圧ポンプ4を駆動させるタイミングを2つの油圧ポンプ4の間で別にすることにより、2つの油圧ポンプ4によって油圧シリンダ2に供給される作動油の流量を調節することができる。第1スプール20の移動のタイミングとは関係なく、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室31bの内部のパイロット圧が増加したことを検出することができるので、2つの第1スプール20の間で、第1スプール20が移動を開始するタイミングを変えることができる。具体的には、第2スプール30が移動したことが検出されたときに、その後に一方の第1スプール20と他方の第1スプール20との間で、移動するタイミングに差を持たせることができる。一方の第1スプール20が移動し、その後に他方の第1スプール20が移動するように、2つの第1スプール20の間で移動するタイミングに差を持たせることにより、作動油を油圧シリンダ2に対し徐々に供給することができる。2つの第1スプール20の間で、移動するタイミングに差が生じるので、一方の油圧ポンプ4によってのみ油圧シリンダ2に対し作動油を供給する時間を作ることができる。そのため、まず一方の油圧ポンプ4によってのみ油圧シリンダ2に作動油が供給され、その後に他方の油圧ポンプ4についても油圧シリンダ2に作動油が供給され、両方の油圧ポンプ4によって油圧シリンダ2に対し作動油が供給されることになる。従って、作動油を油圧シリンダ2に対し徐々に供給することができる。
【0093】
このように、例えば、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室31bの内部のパイロット圧が増加する過程で、最初に一方の第1スプール20を移動させ、その後に他方の第1スプール20を移動させることができる。この場合、2つの第1スプール20の間で、第1スプールばね54のばね定数に差を持たせることにより、2つの第1スプール20の間の移動のタイミングに差を持たせることができる。そのため、油圧シリンダ2への作動油の供給量を増加させる際に、まず一方の油圧ポンプ4からの作動油を供給し、その後に両方の油圧ポンプ4からの作動油を供給することによって、油圧シリンダ2に供給される作動油の流量を徐々に増加させることができる。
【0094】
また、操作桿80による微妙な操作領域のときには、一方の油圧ポンプ4のみによる作動油の供給を行うようにし、操作桿80によって大きく操作が行われたときには両方の油圧ポンプ4による作動油の供給を行うように作動油の供給量を制御することができる。
【0095】
従来の構成では、第1スプール20が移動したときに第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13bの内部のパイロット圧が増加したことが検出される。このとき、操作桿80によって操作が行われたときには第1スプール20を確実に移動させる必要があったので、2つの第1スプール20の間で移動のタイミングに差を持たせることが難しかった。そのため、2つの油圧ポンプ4の間で作動油の供給を増加させるタイミングに差を持たせることが難しかった。その結果、操作桿80が操作されたときには、一度に作動油の供給が増加され、油圧ポンプ4からの作動油の供給において細かな調節を行うことができなかった。
【0096】
これに対し、本発明においては、第1スプール20の移動のタイミングとは関係なく、第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室31bの内部のパイロット圧が増加したことを検出することができるので、2つの第1スプール20の間で、第1スプール20が移動を開始するタイミングを変えることができる。従って、作動油の供給を増加させるタイミングに差を持たせることができ、作動油の供給において、作動油の供給量を増加させる工程でより細かな流量の調節を行うことができる。
【0097】
なお、第2スプール30を摺動可能に支持する第2スプールばね33のばね係数は、必ずしも、第1スプール20を摺動可能に支持する第1スプールばね54のばね係数よりも小さい構成でなくてもよい。第2スプール30を摺動可能に支持する第2スプールばね33のばね係数が、第1スプール20を摺動可能に支持する第1スプールばね54のばね係数よりも大きく設定されてもよい。
【0098】
また、本実施形態では、第2スプール用弁室40及び第2スプール30が第1スプール20の内部に設けられている。従って、第1スプール20とは別に第1パイロット室13aあるいは第2パイロット室13bのパイロット圧の増加を検出するための構成が設けられると共に、その構成を小型化させることができる。
【0099】
本実施形態では、パイロット室の内部のパイロット圧の増加を検出するための構成が、第1スプール20の内部に設けられている。従って、第1スプール20のためのスペースと、パイロット室の内部のパイロット圧の増加を検出するための構成のためのスペースとが共通して用いられている。そのため、それぞれ別々に構成される場合に比べて、必要とされるスペースを省くことができる。これによって、スプール弁装置100の構成が省スペース化されることにより、スプール弁装置100を小型化することができる。
【0100】
また、油圧ショベル等の旋回体を有する作業機械に本発明が適用される場合においては、旋回アクチュエータのパーキングブレーキ解除用の信号として、圧力計62の信号を利用することができる。旋回アクチュエータの操作をしていないときであって、それ以外のアクチュエータ(ブーム、アーム、バケット)の操作をしているときに、外力を受けることにより予期せずにショベルが旋回してしまい、ブレーキ用のフリクションプレートが焼付いてしまうことがある。この場合であっても、それ以外のアクチュエータのレバー操作を素早く検知することで、旋回アクチュエータのパーキングブレーキを解除しておけば、ブレーキの焼付きを防止できる。
【0101】
なお、上記実施形態では、第2スプール30が、第2スプール30の他端側に設けられた第2スプールばね33によって第1スプール20に対し移動可能に支持される構成について説明した。しかしながら、本発明は上記実施形態に限定されない。第2スプール30を第1スプール20に対し移動可能に支持するための構成は、他の構成であってもよい。
【0102】
例えば、
図7に示されるスプール弁装置100aのように、第2スプール30の他端側に設けられた第2スプールばね33が設けられると共に、第2スプール30の一端側に、第2スプールばね33とは別のばね34が設けられてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、第2スプール30及び第1スプール20が第1パイロット室及び第2パイロット室に面し、第1パイロット室あるいは第2パイロット室のパイロット圧の増加に応じて第2スプール30及び第1スプール20が移動するスプール弁の構成について説明した。しかしながら、上記実施形態はこれに限定されない。第2スプール30及び第1スプール20は、1つのパイロット室にのみ面する構成であって、第2スプール30及び第1スプール20が、1つのパイロット室の内部のパイロット圧の増加に応じて移動する構成であってもよい。このように、スプール弁は、いわゆる2ファンクション形式であってもよい。
【0104】
図8に、他端側に設けられた第2パイロット室13bのみを有し、第2パイロット室13b内部のパイロット圧の増加に応じて第2スプール30及び第1スプール20が移動する構成のスプール弁装置100bについての断面図を示す。
図8に示されたスプール弁装置100bでは、第1スプール20の一端側に第1パイロット室13aが存在せず、第1スプール20の他端側の第2パイロット室13bのみ形成されている。第1スプール20をハウジング10に対し移動可能に支持する第1スプールばね54が、ばね側ケーシング51の内側の壁面に取り付けられている。従って、第2パイロット室13bのパイロット圧が増加したときには、第2スプール30が一端側へ移動する。また、さらに第2パイロット室13bのパイロット圧が増加したときには、第1スプール20が一端側へ移動する。このように、スプール弁装置100bは、1つだけパイロット室が設けられた構成であってもよい。
【0105】
また、
図1~6に示されるスプール弁装置100の構成では、第2スプール30を移動可能に支持するための第2スプールばね33が第2スプール30の他端側にのみ設けられ、
図7に示されるスプール弁装置100aの構成では、第2スプール30を移動可能に支持するためのばねが第2スプール30の一端側と他端側との両方に設けられている構成について説明した。しかしながら、第2スプール30を移動可能に支持するためのばねの構成は、上記実施形態に限定されない。第2スプール30を移動可能に支持するためのばねは、第2スプール30の一端側にのみ設けられる構成であってもよい。
【0106】
図9に、第2スプール30を移動可能に支持するためのばね35が、第2スプール30の一端側にのみ設けられたスプール弁装置100cの構成についての断面図を示す。
図9に示されるスプール弁装置100cでは、第2スプール30及び第1スプール20は、第2パイロット室13bにのみ面し、第2スプール30及び第1スプール20が、第2パイロット室13b内部のパイロット圧の増加に応じて移動するように構成されている。
【0107】
このように、第2スプール30を移動可能に支持するためのばねは、小スプールの一端側にのみ設けられてもよいし、他端側にのみ設けられてもよいし、一端側と他端側との両方に設けられてもよい。第2スプール30を移動可能に支持できるのであれば、第2スプール30を移動可能に支持するためのばねは、どのように構成されていてもよい。
【0108】
また、第2スプール30及び第1スプール20は、1つのパイロット室にのみ面する構成であってもよいし、2つのパイロット室の間に配置される構成であってもよい。
【0109】
また、第2スプール30を移動可能に支持するためのばねの構成と、パイロット室の個数との組み合わせは、どのような構成であってもよい。パイロット室内部のパイロット圧の増加に応じて第2スプール30及び第1スプール20を移動させることができるのであれば、第2スプール30を移動可能に支持するためのばねの構成と、パイロット室の構成との組み合わせは、どのように組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0110】
11 第1スプール用弁室
13a 第1パイロット室
13b 第2パイロット室
20 第1スプール
24a 第1流路
24b 第2流路
30 第2スプール
31 第3流路
33 第2スプールばね(第2ばね)
40 第2スプール用弁室
54 第1スプールばね(第1ばね)
61 信号圧供給流路
64 信号圧排出流路
100 スプール弁装置