(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】光源モジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/14 20060101AFI20220304BHJP
H01S 5/02251 20210101ALI20220304BHJP
【FI】
H01S5/14
H01S5/02251
(21)【出願番号】P 2018069039
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】村越 尚輝
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-266099(JP,A)
【文献】特開2011-145402(JP,A)
【文献】特開2010-232650(JP,A)
【文献】特開平10-209570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光を出力するレーザ発振器と、
上記パルス光を導波する光ファイバであって、反射波長が上記パルス光の波長と異なる反射部が設けられた光ファイバと、を備え、
上記レーザ発振器の出射端面と反対側の端面と上記反射部とに挟まれた上記パルス光の光路は、上記レーザ発振器の外部共振器を構成し、
当該外部共振器の光学的な共振器長Lは、T[s]を上記パルス光のパルス間隔、t[s]を上記パルス光のパルス幅、cを光速[m/s]、Nを任意の自然数として、(NT/2-t/2)≦NL/c≦(NT/2+t/2)
且つL/c≠NT/2を満たす、
ことを特徴とする光源モジュール。
【請求項2】
上記レーザ発振器の物理的な共振器長をL1、上記レーザ発振器を構成する媒質の屈折率をn1、上記レーザ発振器の出射端面から上記光ファイバの入射端面までの距離をL2、上記レーザ発振器の出射端面から上記光ファイバの入射端面までの空間を構成する媒質の屈折率をn2、上記光ファイバの入射端面から上記反射部までの区間の長をL3、上記光ファイバを構成する媒質の屈折率をn3として、
上記外部共振器の光学的な共振器長Lは、L=n1L1+n2L2+n3L3により与えられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の光源モジュール。
【請求項3】
上記反射部は、上記光ファイバに形成されたブラッググレーティングにより構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光源モジュール。
【請求項4】
上記反射部の反射波長から上記レーザ発振器の発振波長を引いた差は、0nmよりも大きく6.7nmよりも小さい、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の光源モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を出力するレーザ発振器と、該レーザ光を導波する光ファイバとを備えた光源モジュールに関する。特に、光ファイバにブラッググレーティング等の反射部を設け、レーザ発振器の出射端面と反対側の端面と反射部とに挟まれたレーザ光の光路を、レーザ発振器の外部共振器として利用するタイプの光源モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を出力するレーザ発振器と該レーザ光を導波する光ファイバとを備えた光源モジュールが広く用いられている。このような光源モジュールは、例えば、ファイバレーザの励起光源として利用される。
【0003】
このような光源モジュ-ルに関して、特許文献1~2には、光ファイバにブラッググレーティング等の反射部を設け、レーザ発振器の出射端面と反対側の端面と反射部とに挟まれたレーザ光の光路を、レーザ発振器の外部共振器として利用する技術が開示されている。そして、このような外部共振器に関して、特許文献1には、その共振器長を、レーザ発振器(特許文献1における「発光素子」)の屈折率、レーザ発振器の損失係数、発光素子の後端面の反射率、及び、反射部(特許文献1における「グレーチング部」)の反射率に応じて設定することが記載されている。また、このような外部共振器に関して、特許文献2には、その共振器長をレーザ発振器(特許文献2における「ダイオードレーザ」)のコヒーレント長に応じて設定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3936008号
【文献】特許第3296562号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザ光を出力するレーザ発振器と該レーザ光を導波する光ファイバとを備えた光源モジュールにおいては、光ファイバに形成する反射部の反射波長をレーザ発振器の発振波長と異ならせることによって、反射部を透過して外部に出力されるレーザ光のスペクトル幅を広げることができる。これにより、光ファイバにおいて生じ得るSBS(Stimulated Brillouin Scattering:誘導ブリルアン散乱)等の非線形光学効果が抑制される。
【0006】
しかしながら、レーザ発振器から出力されるレーザ光がパルス光である場合、反射部を透過して外部に出力されるレーザ光のスペクトルを十分に広げることができない場合があることを、発明者らは見いだした。
【0007】
このような問題が生じる原因としては、
図5の(a)に示すように、反射部に入射するパルス光のピークと、反射部にて反射され、外部共振器を往復した後、反射部に再入射するパルス光のピークとが時間軸上で重ならないことが考えられる。
図5の(a)は、従来の光源モジュールに関して、反射部に入射するパルス光の時間波形(実線)と、反射部に再入射するパルス光の時間波形(点線)とを例示したグラフである。
【0008】
反射部に入射するパルス光のピークと、反射部に再入射するパルス光のピークとが重ならない場合、
図5の(b)に示すように、これらのパルス光を重ね合せた合成パルス光のスペクトル幅(
図5の(b)における白塗り矢印)が十分に広がらず、反射部に入射するパルス光のスペクトル幅(
図5の(b)における黒塗り矢印)と同程度になる。
図5の(b)は、従来の光モジュールに関して、反射部に入射するパルス光のスペクトル(実線)と、反射部に再入射するパルス光の波長分布(点線)と、これらのパルス光を重ね合わせた合成パルス光の波長分布(一点鎖線)とを例示したグラフである。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、パルス光を出力するレーザ発振器と該パルス光を導波する光ファイバとを備えた光源モジュールにおいて、光ファイバに形成された反射部を透過して外部に出力されるパルス光のスペクトルを、従来の光源モジュールよりも広げることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光源モジュールは、パルス光を出力するレーザ発振器と、上記パルス光を導波する光ファイバであって、反射波長が上記パルス光の波長と異なる反射部が設けられた光ファイバと、を備え、上記レーザ発振器の出射端面と反対側の端面と上記反射部とに挟まれた上記パルス光の光路は、上記レーザ発振器の外部共振器を構成し、当該外部共振器の光学的な共振器長Lは、T[s]を上記パルス光のパルス間隔、t[s]を上記パルス光のパルス幅、cを光速[m/s]、Nを任意の自然数として、(NT/2-t/2)≦NL/c≦(NT/2+t/2)を満たす、ことを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、反射部を透過して外部に出力されるパルス光のスペクトルを、従来の光源モジュールよりも広げることができる。
【0012】
本発明に係る光源モジュールにおいて、上記外部共振器の光学的な共振器長Lは、例えば以下のように与えられる。すなわち、上記レーザ発振器の物理的な共振器長をL1、上記レーザ発振器を構成する媒質の屈折率をn1、上記レーザ発振器の出射端面から上記光ファイバの入射端面までの距離をL2、上記レーザ発振器の出射端面から上記光ファイバの入射端面までの空間を構成する媒質の屈折率をn2、上記光ファイバの入射端面から上記反射部までの区間の長をL3、上記光ファイバを構成する媒質の屈折率をn3として、上記外部共振器の光学的な共振器長Lは、L=n1L1+n2L2+n3L3により与えられる。
【0013】
本発明に係る光源モジュールにおいて、上記反射部は、上記光ファイバに形成されたブラッググレーティングにより構成されている、ことが好ましい。
【0014】
ファイバブラッググレーティングは、光ファイバのコアに高屈折率領域を周期的に書き込むことによって形成することができる。したがって、上記の構成によれば、上記反射部を上記光ファイバの内部に容易に実現することができる。
【0015】
本発明に係る光源モジュールにおいて、上記反射部の反射波長から上記レーザ発振器の発振波長を引いた差は、0nmよりも大きく6.7nmよりも小さい、ことが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、上記反射部の反射波長が上記レーザ発振器の発振波長と一致する場合よりも、SBS発生閾値を大きくすることができる。したがって、上記反射部の反射波長が上記レーザ発振器の発振波長と一致する場合よりも、SBSを発生し難くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パルス光を出力するレーザ発振器と該パルス光を導波する光ファイバとを備えた光源モジュールにおいて、光ファイバに形成された反射部を透過して外部に出力されるパルス光のスペクトルを、従来の光源モジュールよりも広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る光源モジュールの構成を示す平面図である。(b)は、その光源モジュールが備えるレーザ発振器から出力されるパルス光の時間波形を示すグラフである。
【
図2】
図1に示す光源モジュールに関する。(a)は、外部共振器の光学的な共振器長LがL/c=T/2を満たしている場合について、反射部に入射するパルス光の時間波形(実線)と、反射部に再入射するパルス光の時間波形(点線)とを例示したグラフである。(b)は、反射部に入射するパルス光のスペクトル(実線)と、反射部に再入射するパルス光のスペクトル(点線)と、これらのパルス光を合成した合成パルス光のスペクトル(一点鎖線)とを例示したグラフである。
【
図3】
図1に示す光源モジュールに関する。(a)は、N=2の場合について、反射部に入射するパルス光の時間波形(実線)と、反射部に再入射するパルス光の時間波形(点線)とを例示したグラフである。(b)は、N=3の場合について、反射部に入射するパルス光の時間波形(実線)と、反射部に再入射するパルス光の時間波形(点線)とを例示したグラフである。(c)は、N=4の場合について、反射部に入射するパルス光の時間波形(実線)と、反射部に再入射するパルス光の時間波形(点線)とを例示したグラフである。
【
図4】
図1に示す光源モジュールに関し、反射部の反射波長からレーザ発振器の発振波長を引いた差と、SBS発生閾値との関係を示すグラフである。
【
図5】従来の光源モジュールに関する。(a)は、外部共振器の光学的な共振器長LがL/c=T/2を満たしている場合について、反射部に入射するパルス光の時間波形(実線)と、反射部に再入射するパルス光の時間波形(点線)とを例示したグラフである。(b)は、反射部に入射するパルス光のスペクトル(実線)と、反射部に再入射するパルス光のスペクトル(点線)と、これらのパルス光を合成した合成パルス光のスペクトル(一点鎖線)とを例示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(光源モジュールの構成)
本発明の一実施形態に係る光源モジュール1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1の(a)は、光源モジュール1の構成を示す平面図である。
図1の(b)は、光源モジュール1が備えるレーザ発振器11から出力されるパルス光の時間波形を例示したグラフである。
【0020】
光源モジュール1は、
図1に示すように、レーザ発振器11と、光ファイバ12と、筐体13と、を備えている。レーザ発振器11は、筐体13の内部に収容されており、光ファイバ12は、一方の端部が筐体13の内部に引き込まれている。
【0021】
レーザ発振器11は、パルス間隔T[s]、パルス幅t[s]のパルス光を出力する。レーザ発振器11の物理的な共振器長は、L1[m]であり、レーザ発振器11を構成する媒質の屈折率は、n1である。したがって、レーザ発振器11の光学的な共振器長は、n1×L1となる。本実施形態においては、レーザ発振器11として、レーザダイオードを用いている。
【0022】
レーザ発振器11から出力されるパルス光の時間波形は、例えば
図1の(b)に示すように、一定の間隔をおいて並んだ複数のピークを有している。この場合、上述したパルス間隔Tは、例えば
図1の(b)に示すように、パルス光の時間波形におけるピーク間隔として定義される。また、上述したパルス幅tは、例えば
図1の(b)に示すように、パルス光の時間波形における各ピークの半値半幅の平均値として定義される。
【0023】
光ファイバ12は、その入射端面12aがレーザ発振器11の出射端面11bと対向するように筐体13に固定されている。このため、出射端面11bを介してレーザ発振器11から出力されたパルス光は、入射端面12aを介して光ファイバ12に入力される。レーザ発振器11の出射端面11bから光ファイバ12の入射端面12aまでの距離は、L2[m]であり、レーザ発振器11の出射端面11bと光ファイバ12の入射端面12aとの間の空間を構成する媒質(例えば、空気)の屈折率は、n2である。したがって、レーザ発振器11から出力されるパルス光の光路のうち、レーザ発振器11の出射端面11bから光ファイバ12の入射端面12aまでの区間の光路長は、n2×L2となる。
【0024】
光ファイバ12には、反射部121が設けられている。この反射部121の反射帯域は、レーザ発振器11の発振波長(レーザ発振器から出力されるパルス光のピーク波長)を含む。ただし、この反射部121の反射波長(反射率が最大になる波長)は、レーザ発振器11の発振波長と異なっていてもよい。上述したように光ファイバ12に入力されたパルス光は、光ファイバ12のコアを導波され、その一部が反射部121に反射される。光ファイバ12の入射端面12aから反射部121までの区間の長さは、L3であり、光ファイバ12(より具体的には、光ファイバ12のコア)を構成する媒質の屈折率は、n3である。したがって、レーザ発振器11から出力されるパルス光の光路のうち、光ファイバ12の入射端面12aから反射部Pまでの区間の光路長は、n3×L3となる。本実施形態においては、光ファイバ12にブラッググレーティングBGを形成することによって、反射部121を構成している。この場合、反射部121は、ブラッググレーティングBGが形成された区間の中点に局在しているものと見做すことができる。
【0025】
光源モジュール1においては、レーザ発振器11から出力されたパルス光の一部が、光ファイバ12に設けられた反射部121にて反射される。このため、レーザ発振器11の出射端面11bと反対側の端面11aと反射部121とに挟まれたパルス光の光路が、レーザ発振器11の外部共振器を構成する。本実施形態において、この光路は、レーザ発振器11、レーザ発振器11の出射端面11bと光ファイバ12の入射端面12aとの空間、及び、光ファイバ12の入射端面12aから反射部121までの区間により構成される。したがって、この外部共振器の光学的な共振器長Lは、L=n1×L1+n2×L2+n3×L3により与えられる。
【0026】
(光源モジュールの特徴及び効果)
光源モジュール1の特徴は、上述した外部共振器の光学的な共振器長Lが、c[m/s]を光速、Nを自然数(0を含まない)として、L/c=T/2を満たしている点である。これにより、反射部121を透過して光源モジュール1の外部に出力されるパルス光のスペクトル幅を、従来の光源モジュールよりも広くすることができる。以下、この理由について、
図2及び
図3を参照して説明する。
【0027】
外部共振器の光学的な共振器長LがL/c=T/2を満たしていれば、
図2の(a)に示すように、反射部121に入射するパルス光のピークと、反射部121にて反射され、外部共振器を往復した後、反射部121に再入射するパルス光(以下、単に「反射部121に再入射するパルス光」と記載する)のピークとが時間軸上で重なる。
図2の(a)は、外部共振器の光学的な共振器長LがL/c=T/2を満たしている場合について、反射部121に入射するパルス光の時間波形(実線)と、反射部121に再入射するパルス光の時間波形(点線)とを例示したグラフである。
【0028】
そして、反射部121に入射するパルス光のピークと反射部121に再入射するパルス光のピークとが時間軸上で重なる場合、
図2の(b)に示すように、これらのパルス光を重ね合わせた合成パルスのスペクトル幅(
図2の(b)における白塗り矢印)は、反射部121に入射するパルス光のスペクトル幅(
図2の(b)における黒塗り矢印)よりも広くなる。
図2の(b)は、反射部121に入射するパルス光のスペクトル(実線)と、反射部121に再入射するパルス光のスペクトル(点線)と、これらのパルス光を合成した合成パルス光のスペクトル(一点鎖線)とを例示したグラフである。
【0029】
従来の光源モジュールにおいては、
図5の(b)に示したように、反射部に入射するパルス光と反射部に再入射するパルス光とを合成した合成パルス光のスペクトル幅が、反射部に入射するスペクトル幅と同程度になる。一方、本実施形態に係る光源モジュール1においては、
図2の(b)に示したように、反射部121に入射するパルス光と反射部121に再入射するパルス光とを合成した合成パルス光のスペクトル幅が、反射部に入射するスペクトル幅よりも広くなる。反射部121を透過して光源モジュール1の外部に出力されるパルス光は、反射部121に入射するパルス光と反射部121に再入射するパルス光とを合成した合成パルス光である。したがって、本実施形態に係る光源モジュール1によれば、反射部121を透過して光源モジュール1の外部に出力されるパルス光のスペクトル幅を、従来の光源モジュールよりも広くすることができる。
【0030】
なお、上記の効果が得られるのは、外部共振器の光学的な共振器長LがL/c=T/2を満たしている場合に限定されない。すなわち、外部共振器の光学的な共振器長LがL/c=NT/2(Nは2以上の自然数)に一致していれば、外部共振器の光学的な共振器長LがL/c=T/2を満たしている場合と同等の効果が得られる。何故なら、外部共振器の光学的な共振器長LがL/c=NT/2を満たしていれば、外部共振器の光学的な共振器長LがL/c=T/2を満たしている場合と同様、反射部121に入射するパルス光のピークと、反射部121に再入射するパルス光のピークとが、時間軸上で重なるからである。
図3の(a)は、N=2の場合について、反射部121に入射するパルス光の時間波形(実線)と、反射部121に再入射するパルス光の時間波形(点線)とを例示したグラフである。
図3の(b)は、N=3の場合について、反射部121に入射するパルス光の時間波形(実線)と、反射部121に再入射するパルス光の時間波形(点線)とを例示したグラフである。
図3の(c)は、N=4の場合について、反射部121に入射するパルス光の時間波形(実線)と、反射部121に再入射するパルス光の時間波形(点線)とを例示したグラフである。
【0031】
また、外部共振器の光学的な共振器長LがL/c=NT/2(Nは1以上の自然数)を満たしていなくても、外部共振器の光学的な共振器長Lが(NT/2-t/2)≦NL/c≦(NT/2+t/2)を満たしていれば、上記の効果と略同等の効果が得られる。何故なら、外部共振器の光学的な共振器長Lが(NT/2-t/2)≦NL/c≦(NT/2+t/2)を満たしていれば、反射部121に入射するパルス光のピークと反射部121に再入射するパルス光のピークとの時間差がパルス光のパルス幅tの1/2以下になり、その結果、反射部121に入射するパルス光の時間波形と反射部121に再入射するパルス光の時間波形との重なりが十分大きくなるからである。
【0032】
(SBS発生閾値)
光ファイバ12に入力されるパルス光のパワーがある閾値Pthを超えると、光ファイバ12においてSBSが発生し易くなる。本明細書においては、この閾値Pthのことを、「SBS発生閾値」と呼ぶ。光ファイバ12のSBS発生閾値Pthは、下記の式(1)により定義される。
【0033】
【0034】
上記の式(1)において、Kは、光ファイバ12の偏波依存性パラメータであり、gBは、光ファイバ12のブリルアン利得係数であり、Aeffは、光ファイバ12の実効的コア断面積であり、ΔvBは、光ファイバ12のブリルアン利得スペクトルの半値全幅である。これらの量は、光ファイバ12の材質及び構造によって定まる定数である。一方、上記の式(1)において、Δvは、光ファイバ12に入力されるパルス光のスペクトルの半値全幅である。
【0035】
上記の式(1)により定義されたSBS発生閾値Pthは、SBSの発生のし難さを表す指標として利用することができる。すなわち、SBS発生閾値Pthが大きくなるほど、SBSが発生し難くなり、SBS発生閾値Pthが小さくなるほど、SBSが発生し易くなる。なお、上記の式(1)により定義されたSBS発生閾値Pthは、実効的相互作用長Leffが単位長さ(1m)となる光ファイバ12におけるSBS発生閾値である。SBS発生閾値は、光ファイバ12の実効的相互作用長Leffに反比例するので、例えば、実効的相互作用長が5mとなる光ファイバ12におけるSBS発生閾値は、上記の式(1)におり定義されたSBS発生閾値Pthの1/5となる。
【0036】
なお、SBS発生閾値Pthは、反射部121の反射率に応じて変化する。例えば、反射部121の反射率が0%よりも大きく60%よりも小さければ、SBS発生閾値Pthを十分に大きくすることができる。
【0037】
(反射部の好ましい反射波長)
光源モジュール1の備える反射部121の好ましい反射波長について、
図4を参照して説明する。ここで、反射部121の反射波長とは、反射部121の反射率が最大になる波長のことを意味する。
【0038】
図4は、反射部121の反射波長からレーザ発振器11の発振波長を引いた差(以下、「波長差Δλ」とも記載する)と、上記の式(1)により定義されたSBS発生閾値Pthとの関係を示すグラフである。
図4によれば、以下のことが確かめられる。
【0039】
SBS発生閾値Pthの波長差Δλ依存性は、上に凸な単峰曲線により表され、SBS発生閾値Pthは、波長差Δλが3.4nmのときに最大値を取る。波長差Δλが0nmであるとき、すなわち、反射部121の反射波長がレーザ発振器11の発振波長と一致するときのSBS発生閾値Pthは、39.27Wになる。そして、波長差Δλが0nmよりも大きく6.7nmよりも小さいときのSBS発生閾値Pthは、反射部121の反射波長がレーザ発振器11の発振波長と一致するときのSBS発生閾値Pthよりも大きくなる。すなわち、波長差Δλが6.7nmよりも小さくなるように、反射部121の反射波長をレーザ発振器11の発振波長よりも大きくすることによって、反射部121の反射波長がレーザ発振器11の発振波長と一致する場合よりもSBS発生閾値Pthを大きくすることができる。
【0040】
なお、
図4に示したグラフは、反射部121の反射率が3%である場合に得られたものである。ただし、反射部121の反射率を変更しても、SBS発生閾値Pthが大きく変化することはない。したがって、波長差Δλが6.7nmよりも小さくなるように、反射部121の反射波長をレーザ発振器11の発振波長よりも大きくする構成を採用すれば、反射部121の反射率に依らずにSBS発生閾値Pthを十分に大きくすることができる。
【0041】
(付記事項)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1 光源モジュール
11 レーザ発振器
11a 出射端面と反対側の端面
11b 出射端面
12 光ファイバ
12a 入射端面
121 反射部
BG ブラッググレーティング
13 筐体