(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】トンネル内のズリ搬送・換気設備
(51)【国際特許分類】
E21F 5/00 20060101AFI20220308BHJP
E21F 13/08 20060101ALI20220308BHJP
E21F 1/00 20060101ALI20220308BHJP
E21D 9/12 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
E21F5/00
E21F13/08
E21F1/00 A
E21D9/12 B
(21)【出願番号】P 2017163399
(22)【出願日】2017-08-28
【審査請求日】2020-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000172813
【氏名又は名称】佐藤工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594145297
【氏名又は名称】タグチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】合歓垣 誠司
(72)【発明者】
【氏名】田口 一生
(72)【発明者】
【氏名】藤川 保
(72)【発明者】
【氏名】富永 秀之
(72)【発明者】
【氏名】小赤澤 浩
(72)【発明者】
【氏名】進邦 康成
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169554(JP,A)
【文献】特開2015-151678(JP,A)
【文献】特開平11-173079(JP,A)
【文献】特開2003-176692(JP,A)
【文献】特開2007-308902(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0232280(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 5/00
E21F 13/08
E21F 1/00
E21D 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に設置されたトンネル内のズリ搬送・換気設備であって、
トンネル中心より片側に配置された、トンネル内に設置されたトンネル掘進方向に移動可能な台車に、掘削ズリを後方に向けて搬送するベルトコンベアと、駆動設備を含む集塵装置とが一体的に設けられており、
前記台車は、ベルトコンベアの長手方向の一部を一体的に支持する構成とし、
前記集塵装置は、トンネル壁に対して支持されトンネル掘進方向に配置される風管の端部と連結され、
風管を通る換気が前記集塵装置により集塵されるようになって
おり、
前記ベルトコンベアの長手方向の一部は、切羽側から坑口側に向かって高くなる傾斜部であり、この傾斜部は設置位置が高位の高位搬送部に連なっており、
作業員による、前記傾斜部の後方位置で、前記傾斜部から前記高位搬送部渡ってズリ搬送の安定搬送の点検作業するために昇降する階段設備が設けられ、前記台車に一体化されている
ことを特徴とするトンネル内のズリ搬送・換気設備。
【請求項2】
前記高位搬送部の下方は、トンネル施工機械の離合空間とされている請求項1記載のトンネル内のズリ搬送・換気設備。
【請求項3】
前記風管は取り込み口側がトンネル天井壁に対して支持され、前記取り込み口側の終わりから前記端部に向けて下り傾斜になっている請求項1記載のトンネル内のズリ搬送・換気設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル坑内におけるズリ搬送及び換気設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば山岳トンネルにおいて、掘削ズリを搬出する方法としては、ダンプトラックが用いられることもあるが、そのダンプトラックの排気や、粉塵発生に伴い、作業環境が悪化するなどの作業環境の改善を主たる目的として、特に長大トンネルではベルトコンベアにより抗外に搬出する例が増大している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
他方で、坑内の粉塵の滞留を防止するために、切羽後方に換気設備を設けることが行われている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-48588号公報
【文献】特開2015-212462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、トンネル坑内においては、掘削ズリを搬出する設備、換気設備のほか、油圧ショベル、油圧ブレーカー、ドリルジャンボ、クラッシャー(台車)、吹付機、ホイルローダなどが施工段階に応じてトンネル方向に行き交う。
【0006】
トンネル断面が大断面である場合には問題が顕在化しないが、小断面の場合には、掘削ズリを搬出する搬送コンベア、換気設備の占有断面積が、各種トンネル施工機械車両の移動の制限となる状態を招く。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする主たる課題は、搬送コンベア及び換気設備が、各種トンネル施工機械車両の移動の制限となることがない、トンネル内のズリ搬送・換気設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明のトンネル内のズリ搬送・換気設備は、
トンネル内に設置されたトンネル内のズリ搬送・換気設備であって、
トンネル内に設置されたトンネル掘進方向に移動可能な台車に、掘削ズリを後方に向けて搬送するベルトコンベアと、駆動設備を含む集塵装置とが一体的に設けられており、
前記台車は、ベルトコンベアの長手方向の一部を一体的に支持する構成とし、
前記集塵装置は、トンネル壁に対して支持されトンネル掘進方向に配置される風管の端部と連結され、
風管を通る換気が前記集塵装置により集塵されるようになっている、
ことを特徴とするものである。
【0009】
換気設備における駆動設備を含む集塵装置のサイズは、近年、必要な換気量を確保するために大型化する傾向にあり、その設置スペースは、各種トンネル施工機械車両の移動の制限要素となる場合がある。特に、小断面トンネルでは問題が顕在化する。
しかるに、抗外に連続的にズリ搬送を行うために連続ベルトコンベアシステムを採用する場合、連続ベルトコンベアの設置スペースも確保する必要がある。
トンネルの掘進段階に応じて、ベルトコンベア及び換気設備を前方に移動させる必要がある。
本発明に従って、トンネル掘進方向に移動可能な台車に、掘削ズリを後方に向けた搬送するベルトコンベアと、駆動設備を含む集塵装置とを一体的に設けると、トンネルの掘進段階に応じて、切羽側に延伸するのに容易である。また、ベルトコンベアと、駆動設備を含む集塵装置との設置スペースとして、個別の設置の場合と比較して、小さくできる。
【0010】
台車によるベルトコンベアの支持領域は、切羽側から坑口側に向かって高くなる傾斜部とすることができ、この傾斜部は設置位置が高位の高位搬送部に連なっている構成とすることができる。
【0011】
前記の高位搬送部の下方の空間を、トンネル施工機械車両の離合空間とすることができる。すなわち、高位搬送部の下方の空間に、当該施工段階では不要なトンネル施工機械車両の待避空間とし、当該施工段階で必要なトンネル施工機械車両を後方から切羽側に送り込むことができる。また、次の施工段階では、先に切羽側に送り込んだトンネル施工機械車両を坑口側に退避させ、換わりに空間に待避していたトンネル施工機械車両を切羽側に送り込むことができる。
【0012】
他方で、掘削ズリはショベルにより集め、必要により設けられるクラッシャーで細かくし、ベルトコンベアで搬送する。したがって、ベルトコンベアの前端部は、切羽側から坑口側に向かって高くなる傾斜部とし、これを高位搬送部につなげる構成とするのが望ましい。かかる形態において、当該傾斜部を台車により支持する構成が好適である。
【0013】
傾斜部の後方位置において、作業員が作業するために昇降する階段設備が、台車に一体化されているのが望ましい。掘削ズリが傾斜部から高位搬送部に渡って安定して搬送されているかなどの点検作業を行うのが望ましいところ、階段設備を設置することで円滑な点検作業などを行うことができる。
【0014】
舞い上がった粉塵をも集塵するために、あるいは、掘削ジャンボ、吹付機などのスペース確保などのために、風管はその取り込み口が天井近くに位置させるのが望ましい。そこで風管は一般的にトンネル天井壁に対して支持される構成が採られている。他方、駆動設備を含む集塵装置を高位に設置するのは安定性に欠ける。そこで、粉塵取り込み口側の終わりから集塵装置との連結端部に向けて下り傾斜になっている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、搬送コンベア及び換気設備が、各種トンネル施工機械車両の移動の制限となることがないものとなり、その結果、トンネル施工を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図8】コンベアベルト下での機械設備の配置例である。
【
図9】機械設備の配置例の従来例(a)と本発明例(b)との対比説明平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。
【0018】
図1は、本発明に係るズリ搬送・換気設備の実施形態の概要図であり、
図2はその平面図である。
【0019】
上記課題を解決するための本発明のトンネル内のズリ搬送・換気設備は、トンネル内に設置されたトンネル掘進方向に移動可能な台車1に、掘削ズリを後方に向けた搬送するベルトコンベア10と、駆動設備(電源及びファンを有する)を含む集塵装置20とが一体的に設けられているものである。台車1は迅速移動のために例えばエンジン駆動による自走式であるのが望ましい。
トンネルの換気のための集塵装置20は風管30の端部と連結されている。
【0020】
ここで、予め粉塵の集塵形態について説明しておく。トンネル等の坑内において発生する粉塵の集塵方法としては、例えば、希釈封じ込め方式である送気集塵方式や排気集塵方式と、吸引捕集方式とに大別することがきる。前者の希釈封じ込め方式は切羽に向けてエアを送気(排気)し、粉塵を希釈する方式であり、希釈効果を高めるために、エアの送気口を切羽からトンネル等価直径の5倍程度離す必要がある。他方、後者の吸引捕集方式はそのような制約がなく、逆に、吸引口を切羽に近付けて集塵効果を高める必要がある。
【0021】
トンネル工事においては、粉塵が切羽直下において主に発生するため、後者の吸引捕集方式が効率的であるとされている。もっとも、切羽直下においては、地盤の削孔や、装薬、発破、ズリ出し、コンクリート吹付け等の各種作業が行われる。したがって、これらの作業の妨げとならないよう、吸引口を切羽に近付けたり、遠ざけたりすることができる伸縮ダクトを使用した集塵システムを利用するのが好適である。
【0022】
かかる背景の下で、図示の実施の形態における風管30は、好ましくは長手方向の少なくとも一部に伸縮部、例えば蛇腹状の伸縮部30aを有している。
【0023】
風管30は、トンネルT壁、好ましくは重機類の移動の妨げにならないようにトンネルTの天壁の片側位置にトンネル掘進方向に配置され、トンネルT壁に吊持された例えば吊持材30Aによりガイドレール30Bが支持され、このガイドレール30Bに沿って移動可能となっている。
【0024】
伸縮部30aを伸縮して先端の取り込み用開口30bを前後に移動する移動機構としては、例えば、ガイドレール30Bをラックとして当該ラック上を歯車たるピニオンが転がるラック・アンド・ピニオン方式やガイドレール30Bをガータとして当該ガータ上を車輪が転がるクレーン用トロリ方式等を採用できる。
【0025】
一方、台車1は、掘削ズリを後方に向けて搬送するベルトコンベア10の長手方向の一部を一体的に支持する構成としてある。具体的には、ベルトコンベア10は、コンベアベルト10Aとこれを支持する支持ローラ10B群と支持ローラ10Bの所要数の架台10Cを有し、架台10Cが台車1に一体化されている。
ベルトコンベア10は、掘削ズリを後方に向けて搬送するもので、その長さは坑口外に至る長さであるほか、複数の単位ベルトコンベアを連結して、坑口外に至るようにしたもののほか、坑口までには至らないで、その終点からはダンプトラック又は別種のコンベアなどにより坑口外に搬出するものでもよい。
【0026】
換気設備における駆動設備を含む集塵装置のサイズは、近年、必要な換気量を確保するために大型化する傾向にあり、その設置スペースは、各種トンネル施工機械車両の移動の制限要素となる場合がある。特に、小断面トンネルでは問題が顕在化する。
しかるに、抗外に連続的にズリ搬送を行うために、連続ベルトコンベアシステム(古くから特開2001-20680に代表されるように改良が加えられてきている)を採用する場合、連続ベルトコンベアの設置スペースも確保する必要がある。
トンネルの掘進段階に応じて、ベルトコンベア10及び換気設備(集塵装置20及び風管30)を前方に移動・延伸させる必要がある。
【0027】
本発明に従って、トンネル掘進方向に移動可能な台車1に、掘削ズリを後方に向けた搬送するベルトコンベア10と、駆動設備を含む集塵装置20とを一体的に設けると、トンネルの掘進段階に応じて、切羽側に延伸するのに容易である。また、ベルトコンベア10と、駆動設備を含む集塵装置20との設置スペースとして、個別の設置の場合と比較して、小さくできる。
【0028】
台車1によるベルトコンベア10の支持領域は、切羽側から坑口側に向かって高くなる傾斜部ICとすることができ、この傾斜部は連続ベルトコンベアシステムにおける設置位置が高位の高位搬送部Hoに連なっている構成とすることができる。
【0029】
前記の高位搬送部Hoの下方の空間を、トンネル施工機械車両の離合空間とすることができる。すなわち、高位搬送部Hoの下方の空間に、当該施工段階では不要なトンネル施工機械車両の待避空間とし、当該施工段階で必要なトンネル施工機械車両を後方から切羽側に送り込むことができる。また、次の施工段階では、先に切羽側に送り込んだトンネル施工機械車両を坑口側に退避させ、換わりに空間に待避していたトンネル施工機械車両を切羽側に送り込むことができる。
【0030】
他方で、掘削ズリは例えばホイルローダ40により集め、クラッシャー41(
図7においては自走式のクラッシャーを図示してある)で細かくし、必要により設けられるテールピース台車45を介して、ベルトコンベア10で搬送する。したがって、ベルトコンベア10の前端部は、切羽側から
坑口側に向かって高くなる傾斜部ICとし、これを高位搬送部Hoにつなげる構成とするのが望ましい。かかる形態において、当該傾斜部ICを台車1により支持する構成が好適である。
【0031】
傾斜部ICの後方位置において、作業員が作業するために昇降する階段設備2が、台車1に一体化されているのが望ましい。掘削ズリが傾斜部ICから高位搬送部Hoに渡って安定して搬送されているかなどの点検作業を行うのが望ましいところ、階段設備2を設置することで円滑な点検作業などを行うことができる。
【0032】
舞い上がった粉塵をも集塵するために、あるいは、掘削ジャンボ42(
図8では退避状態を示している)、吹付機46などのスペース確保などのために、風管30はその取り込み用開口30bが天井近くに位置させるのが望ましい。そこで風管30はトンネルT天井壁に対して支持される構成とされている。他方、駆動設備を含む集塵装置20を高位に設置するのは安定性に欠ける。そこで、風管30の後部30cは、集塵装置20との連結端部に向けて下り傾斜になっている構成とすることができる。
【0033】
図7には発破後に掘削ズリを搬出する形態を示している。
図8では、次の切羽の発破までの間に各種重機が
坑口側に退避している状態を示している。符号43はショベル、44はトラックである。
【0034】
ここで、本発明の実施の形態によってその利点を具体的に説明する。従来例では、例えば
図9(a)に示すように、掘削ジャンボ42、吹付機46を切羽(図面の右側壁である。)から退避させ、その後方に連続ベルトコンベア装置Q(例えばクラッシャー41及びテールピース台車45を含む)、集塵機20A、油圧式ショベル47、47、ホイルローダ40等を配置していた。この場合、連続ベルトコンベア装置Qのコンベアベルトqが低位を走るので、これを避けて、集塵機20A、油圧式ショベル47、ホイルローダ40等を、トンネル中心CLを越えてはみ出すように配置せざるを得なかった。
これに対し、本発明例では、連続ベルトコンベア装置Qを切羽の近くに設置し、掘削ズリを
坑口へと搬送できる。また、コンベアベルトqは高位に位置させて搬送するので、その下方に空間を最大限利用でき、コンベアベルトq下方に、掘削ジャンボ42、吹付機46、油圧式ショベル47、47、ホイルローダ40等を、トンネル中心CLより片側に配置できる。
その結果、連続ベルトコンベア装置Qを切羽の近くに設置できることは積み込み箇所が切羽近くになり、積み込み作業時間の短縮となる。また、掘削ジャンボ42、吹付機46、油圧式ショベル47、47、ホイルローダ40等を、トンネル中心CLより片側に配置できる結果、他の片側を利用して機械の離合を行うことができる。
なお、集塵装置20もトンネル中心CLより片側に配置できるので、換気方式として吸引方式が可能となる利点もある。
【符号の説明】
【0035】
1…台車、2…階段設備、10…ベルトコンベア、20…集塵装置、30…風管、IC…傾斜部、Ho…高位搬送部