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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】車両用ドアのシール構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/50 20160101AFI20220308BHJP
   B60J 10/20 20160101ALI20220308BHJP
   B60J 10/75 20160101ALI20220308BHJP
【FI】
B60J10/50
B60J10/20
B60J10/75
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018107335
(22)【出願日】2018-06-05
(65)【公開番号】P2019209832
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】大庭 一仁
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 隼騎
(72)【発明者】
【氏名】福島 満
(72)【発明者】
【氏名】金井 勲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅年
(72)【発明者】
【氏名】松田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 弘樹
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-224198(JP,A)
【文献】特開2014-073775(JP,A)
【文献】特開2001-206068(JP,A)
【文献】米国特許第05544448(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/00-10/90
B60R 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーテイションサッシュを有する車両用ドアのうちドアトリムが臨むドアウエスト開口部の室内側の部分に装着されて、昇降式のドアガラスと摺接すると共に、長手方向での前端および後端のうちいずれか一方の端部がパーテイションサッシュに保持されているドアグラスランと突き合わされるインサイドウエザーストリップによる車両用ドアのシール構造であって、
上記インサイドウエザーストリップは、上記ドアウエスト開口部の前後方向に延在するベース部と、上記ベース部から上記ドアガラス側に向かって突出形成された少なくとも上下二段のガラスシールリップと、から構成されていると共に、
上記インサイドウエザーストリップの上記一方の端部には延長シール部が一体に突出形成されていて、
上記延長シール部は、
上記インサイドウエザーストリップの上記一方の端部のうち上記ベース部と上記下段のガラスシールリップとに跨って形成されて、上記ドアグラスランと突き合わされる端面壁部と、
上記端面壁部から上記延長シール部自体の突出方向と同方向に向けて突出形成されて、上記パーテイションサッシュと上記ドアトリムとの間の隙間を埋める起立壁部と、
上記起立壁部から上記延長シール部自体の突出方向と同方向に向けて突出形成されて、上記パーテイションサッシュを超える位置まで及んでいると共に、上記起立壁部よりも厚肉化されていて、上記パーテイションサッシュと上記ドアトリムとの間の隙間の開口端を塞いでいる封止突起部と、
備えていることを特徴とする車両用ドアのシール構造。
【請求項2】
上記インサイドウエザーストリップは、上記ドアトリムのうち上記ドアガラスと対面する部分に装着されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアのシール構造。
【請求項3】
上記封止突起部の下端部は、上記ドアガラス側から上記ドアトリム側に向かって下り勾配で傾斜した傾斜ガイド面となっていることを特徴とする請求項に記載の車両用ドアのシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアのシール構造に関し、特に車両用ドアにおけるドアウエスト開口部の室内側の部分に装着されて、前端または後端がパーテイションサッシュに保持されているグラスランと突き合わされるインサイドウエザーストリップによる車両用ドアのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のインサイドウエザーストリップによる車両用ドアのシール構造として例えば特許文献1に記載されたものが提案されている。なお、インサイドウエザーストリップは、車両用ドアでの取付位置に着目して、ドアウエスト部のインナーウエザーストリップ、ウエストインナーシール、ベルトラインウエザーストリップ、あるいはドアウエストインサイドシール部材等と称されることもある。
【0003】
特許文献1に記載された車両用ドアのシール構造では、ドアサッシュ(グラスランチャンネル)に装着されているドアグラスラン(ドアガラスラン)の後側縦辺部と、ドアウエスト部(ベルトライン位置)のフランジに装着されているインナーウエザーストリップと、の突き合わせ部に着目したシール構造であって、インナーウエザーストリップのうちドアグラスランの後側縦辺部と突き合わされる部分であって、且つ頂壁リップと上方シールリップとの間にウェブ状の端面壁が形成されていて、この端面壁がドアグラスランの一方の挟持リップに押し付けられるようになっている。
【0004】
この特許文献1に記載された車両用ドアのシール構造では、インナーウエザーストリップとドアサッシュおよびドアトリムとの間で隙間が生じにくく、ドア内部に侵入した外部騒音が車室内へ侵入するのを効果的に防止することができる、とされている。なお、ここでの外部騒音とは、例えば走行中のロードノイズや風切り音等を指している。
【0005】
また、特許文献1には、インナーウエザーストリップがドアインナーパネルの上縁フランジに装着されたものが開示されているが、これに代わって、インナーウエザーストリップがドアトリムのトリムフランジ部に装着されたタイプのものが特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-144990号公報
【文献】特許第5946661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された車両用ドアのシール構造では、ドアサッシュに装着されているドアグラスランとインナーウエザーストリップとの突き合わせ部に着目したシール構造ではあっても、パーテイションサッシュに装着されているドアグラスランとインナーウエザーストリップとの突き合わせ部については何ら考慮されておらず、なおも改善の余地が残されている。なお、パーテイションサッシュはセンターパーテイションあるいはディビジョンバーとも称され、車両用ドアのうち昇降式のドアガラスとそれに隣接する固定式(非昇降式)のパーテイションガラスとの間に配置されるサッシュを言う。
【0008】
例えば車両用のフロントドアにおいて、昇降式のドアガラスとそれよりも前方側の固定式のパーテイションガラスとがパーテイションサッシュで仕切られている場合、パーテイションガラスはパーテイションウエザーストリップで囲繞されているので、ドアウエスト開口部のインナーウエザーストリップはパーテイションガラス側まで及ぶことはない。
【0009】
この構造では、パーテイションガラス側であって且つドアウエスト開口部よりも下方側部分において、パーテイションウエザーストリップとドアトリムとの間に比較的大きな隙間が存在し、その隙間はパーテイションサッシュとドアトリムとの間の隙間と連通している。そのため、特許文献1に記載されたシール構造のように、頂壁リップと上方シールリップとの間にウェブ状の端面壁を形成しただけでは外部騒音の侵入経路を遮断することができず、外部騒音がなおも車室内へ侵入するおそれがある。
【0010】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、車室内への外部騒音の侵入を一段と抑制することができるようにしたインサイドウエザーストリップによる車両用ドアのシール構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、パーテイションサッシュを有する車両用ドアのうちドアトリムが臨むドアウエスト開口部の室内側の部分に装着されて、昇降式のドアガラスと摺接すると共に、長手方向での前端および後端のうちいずれか一方の端部がパーテイションサッシュに保持されているドアグラスランと突き合わされるインサイドウエザーストリップによる車両用ドアのシール構造である。
【0012】
そして、上記インサイドウエザーストリップは、上記ドアウエスト開口部の前後方向に延在するベース部と、上記ベース部から上記ドアガラス側に向かって突出形成された少なくとも上下二段のガラスシールリップと、から構成されていると共に、上記インサイドウエザーストリップの上記一方の端部には延長シール部が一体に突出形成されている。
【0013】
その上で、上記延長シール部は、上記インサイドウエザーストリップの上記一方の端部のうち上記ベース部と上記下段のガラスシールリップとに跨って形成されて、上記ドアグラスランと突き合わされる端面壁部と、上記端面壁部から上記延長シール部自体の突出方向と同方向に向けて突出形成されて、上記パーテイションサッシュと上記ドアトリムとの間の隙間を埋める起立壁部と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
車室内への外部騒音の侵入をさらに一段と抑制する上で有利な態様としては、上記延長シール部は、上記起立壁部から上記延長シール部自体の突出方向と同方向に向けて突出形成されて、上記パーテイションサッシュを超える位置まで及んでいると共に、上記起立壁部よりも厚肉化されていて、上記パーテイションサッシュと上記ドアトリムとの間の隙間の開口端を塞いでいる封止突起部を、さらに備えていることが望ましい。
【0015】
この場合において、代表的な態様として、例えば特許文献2に記載されているものと同様に、上記インサイドウエザーストリップは、上記ドアトリムのうち上記ドアガラスと対面する部分に装着されていることを想定しているが、上記インサイドウエザーストリップは、特許文献1に記載されたものと同様に、ドアインナーパネルのうちドアウエスト開口部を形成しているフランジ部に嵌合保持されていても良い。
【0016】
そして、上記のように、インサイドウエザーストリップが、上記ドアトリムのうち上記ドアガラスと対面する部分に装着されている場合には、上記インサイドウエザーストリップを含むドアトリムの組付性向上の上で、上記封止突起部の下端部は、上記ドアガラス側から上記ドアトリム側に向かって下り勾配で傾斜した傾斜ガイド面となっていることが望ましい。
【0017】
したがって、本発明では、上記インサイドウエザーストリップが延長シール部を備えていて、その延長シール部が上記ドアグラスランと突き合わされる端面壁部に加えて、上記パーテイションサッシュと上記ドアトリムとの間の隙間を埋める起立壁部を備え、さらに、上記パーテイションサッシュと上記ドアトリムとの間の隙間の開口端を塞いでいる封止突起部を、備えていることにより、車室内への外部騒音の侵入経路の遮断効果が一段と向上することになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、インサイドウエザーストリップから突出形成された延長シール部が、ドアグラスランと突き合わされる端面壁部に加えて、パーテイションサッシュと上記ドアトリムとの間の隙間を埋める起立壁部と、上記パーテイションサッシュと上記ドアトリムとの間の隙間の開口端を塞いでいる封止突起部と、を備えているため、車室内への外部騒音の侵入を一段と抑制することができ、さらなる車室内の静粛性向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る車両用ドアのシール構造のより具体的な実施の形態を示す図で、自動車のフロントドアを開いた状態を示す説明図。
図2図1のA-A線に沿った拡大断面矢視図。
図3図1のB部の拡大図であって、ドアガラスおよびパーテイションガラスよりも室内側の要素のみを室外側から見た斜視図。
図4図3に示したパーテイションサッシュおよび後述するパーテイションウエザーストリップを取り外した上で、同図のC方向から見た斜視図。
図5図3のD-D線に沿った拡大断面図。
図6図2に示したインサイドウエザーストリップの断面形状の拡大図。
図7図5のE-E線に沿った拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1~7は本発明に係る車両用ドアのシール構造を実施するためのより具体的な形態を示していて、特に図1は自動車のフロントドア(以下、単にドアと言う。)を開いた状態を示している。
【0021】
図1に示すドア1は、周知のように共にドアパネルであるドアアウターパネルとドアインナーパネルとをヘミング結合等により一体化したものであって、ドアウエスト開口部2から下側のドア本体3と、ドアウエスト開口部2から上側のアーチ状のドアサッシュ4と、で構成されている。なお、ドアウエスト開口部2とは、ドア本体3の上端において、後述するドアインナーパネル13のウエストフランジ部13a(図2,3参照。)と図示を省略したドアアウターパネルのウエストフランジ部とで形成された開口部であって、後述するドアガラス6およびパーテイションガラス7が臨んでいる部分を言う。また、ドアサッシュ4は、ドア閉時に車体ルーフ部からフロントピラーに沿うかたちとなる上辺部4aと、ドア閉時にセンターピラーに沿うかたちとなる後側の縦辺部4bと、から構成される。
【0022】
ドア本体3のドアウエスト開口部2とドアサッシュ4の上辺部4aとの間にはパーテイションサッシュ5が掛け渡されている。そして、パーテイションサッシュ5よりも後方側には昇降式のドアガラス6が収容配置されていて、パーテイションサッシュ5よりも前方側には固定式(非昇降式)のパーテイションガラス7が嵌め込まれている。
【0023】
パーテイションサッシュ5を含むドアサッシュ4の内周には、図5に基づいて後述するようにドアグラスラン10が装着されていて、このドアグラスラン10にドアガラス6が昇降可能に案内支持されている。また、パーテイションガラス7の周囲には、図5に基づいて後述するように閉ループ状のパーテイションウエザーストリップ11が装着されるようになっていて、この閉ループ状のパーテイションウエザーストリップ11を介してパーテイションガラス7がパーテイションサッシュ5よりも前方側に固定配置されている。
【0024】
なお、ドア本体3の内側(室内側の面)には、表面に所定の加飾が施された樹脂製のドアトリム(内張り)8が装着されている。また、ドア本体3およびドアサッシュ4を含むドア1の室内側の周縁部には、中空ゴム紐状をなすドアウエザーストリップ9が閉ループ状に装着されている。そして、周知のように、ドア閉時にドアウエザーストリップ9が車体側のドア開口部周縁に弾接することで車室内外がシールされる。これにより、気密性、水密性および遮音性等が確保される。
【0025】
図2図1のA-A線に沿った拡大断面矢視図であって、ドアガラス6よりも室内側の要素のみを図示している。図3図1のB部の拡大図であって、ドアガラス6およびパーテイションガラス7よりも室内側の要素のみを室外側から見た斜視図で示している。したがって、図2,3ではドアガラス6およびパーテイションガラス7が図示されていない。図4図3に示したパーテイションサッシュ5および後述するパーテイションウエザーストリップ11を取り外した上で、図4のC方向から見た斜視図を示している。また、図5図3のD-D線に沿った拡大断面図を示している。
【0026】
図3,5に示すように、パーテイションサッシュ5は断面略H字状をなしていて、このパーテイションサッシュ5には、ドアグラスラン10とパーテイションウエザーストリップ11とがいわゆる背中合わせのかたちで嵌合保持されている。すなわち、パーテイションサッシュ5の後方側にドアグラスラン10が、パーテイションサッシュ5の前方側にパーテイションウエザーストリップ11がそれぞれ嵌合保持されている。
【0027】
ドアグラスラン10は、図5に示すように断面略コ字状をなし、その開口縁に内側に向けて左右一対のシールリップ12a,12bが突出形成されている。そして、それら一対のシールリップ12a,12b同士の間にドアガラス6を受容するようになっている。他方、パーテイションウエザーストリップ11のうちパーテイションサッシュ5に沿う部分では、そのパーテイションサッシュ5のうちドアグラスラン10とは反対側の位置に縦辺部11aが嵌合保持されていて、その縦辺部11aのコ字状断面形状部でパーテイションガラス7を挟持するようになっている。
【0028】
なお、図1から明らかなように、パーテイションウエザーストリップ11のうちパーテイションサッシュ5に沿う部分以外の部分では、ドアサッシュ4の上辺部4aおよびドアウエスト開口部2に嵌合保持されている。また、ドアグラスラン10およびパーテイションウエザーストリップ11共に、例えばEPDMその他の樹脂系あるいはゴム系の弾性体により形成されている。
【0029】
ドアウエスト開口部2では、図1,2および図3に示すように、当該ドアウエスト開口部2を形成しているドアインナーパネル13側のウエストフランジ部13aが起立形成されていて、このウエストフランジ部13aの内側(室外側)にドアトリム8側の端末フランジ部8aが近接するように配置されている。つまり、ドアウエスト開口部2にドアトリム8側の端末フランジ部8aが臨んでいる。ドアトリム8の端末フランジ部8aには、例えばEPDMその他の樹脂系あるいはゴム系の弾性体からなるインサイドウエザーストリップ14が装着されている。端末フランジ部8aは、ドアウエスト開口部2の全長に及んでいるのに対して、インサイドウエザーストリップ14は、ドアウエスト開口部2のうちドアサッシュ4の後側の縦辺部4bとパーテイションサッシュ5との間に配置されている。
【0030】
図6図2に示したインサイドウエザーストリップ14の断面形状を拡大して示している。このインサイドウエザーストリップ14は、図2,3および図6に示すように、ドアトリム8の端末フランジ部8aに重ねて配置される板状のベース部15と、このベース部15からドアガラス6側に向かって斜め上向きに突出形成された互いに平行な上下二段のガラスシールリップ16,17と、ベース部15の下端から上下二段のガラスシールリップ16,17とは反対向きに突出形成されたパネルシールリップ18と、を備えている。インサイドウエザーストリップ14のベース部15には、例えば金属の薄板状の芯材19が埋設されていて、ベース部15と上下二段のガラスシールリップ16,17およびパネルシールリップ18とからなるインサイドウエザーストリップ14は、長手方向で均一断面形状のものとして押出成形法により成形されている。
【0031】
なお、図2,3では、芯材19の図示を省略している。また、ドアトリム8の端末フランジ部8aに対するインサイドウエザーストリップ14の固定手段は図示を省略しているが、公知の切り起こし爪片方式によりインサイドウエザーストリップ14が端末フランジ部8aに固定されている。この切り起こし爪片方式の固定構造は、例えば先に述べた特許文献2に記載されているように、芯材19が埋設されているベース部15から芯材19ごと複数の爪片を切り起こすように形成する一方、それらの爪片を端末フランジ部8a側の挿通孔に挿入した上で、端末フランジ部8aの裏面側で爪片を折り曲げる方式とする。
【0032】
インサイドウエザーストリップ14のうち上下二段のガラスシールリップ16,17の前端は、図3に示すように、パーテイションサッシュ5側のドアグラスラン10のシールリップ12aと突き合わされる一方、上下二段のガラスシールリップ16,17の後端は、図1に示したドアサッシュ4の後側の縦辺部4b側のドアグラスラン10と突き合わされる。そして、上下二段のガラスシールリップ16,17は、図6に示すようにドアガラス6に弾接して、ドアガラス6の昇降動作時には当該ドアガラス6と相対摺動しつつその昇降動作を許容することになる。また、パネルシールリップ18は、図2,3および図6に示すように、ドアインナーパネル13側のウエストフランジ部13aに弾接して、ドアトリム8の端末フランジ部8aとウエストフランジ部13aとの間の隙間を遮断する機能を有している。
【0033】
図3~5に示すように、インサイドウエザーストリップ14の上下二段のガラスシールリップ16,17の前端は、上記のようにパーテイションサッシュ5側のドアグラスラン10と突き合わされているものの、下側のガラスシールリップ17はその位置で終わることなく、パーテイションサッシュ5を迂回するかたちで、さらにパーテイションサッシュ5を超えた前方側まで延びている。
【0034】
先にも説明したように、図4図3に示したパーテイションサッシュ5および後述するパーテイションウエザーストリップ11を取り外した上で、同図のC方向から見た斜視図を示している。また、図5図3のD-D線に沿った拡大断面図を示している。図3のほか図4,5に示すように、インサイドウエザーストリップ14の前端には、パーテイションサッシュ5を超えてさらに前方側まで延びるようにして、屈曲形状の延長シール部20が前方に向かって一体的に突出形成されている。
【0035】
ベース部15と上下二段のガラスシールリップ16,17およびパネルシールリップ18とからなるインサイドウエザーストリップ14は、先にも説明したように、押出成形法により長手方向で図6に示したような均一断面形状のものとして成形される。これに対して、延長シール部20は、インサイドウエザーストリップ14の前端の端末部に所定の切断加工を施した上で、その端末部を金型に挿入し、金型内に延長シール部20となるべき樹脂材料を充填する金型成形法により、インサイドウエザーストリップ14と一体に成形される。なお、図4から明らかなように、下段のガラスシールリップ17のうち延長シール部20に近い部分では、リップ先端がベース部15に次第に近付くように徐変している。
【0036】
この延長シール部20は、図3~5に示すように、下段のガラスシールリップ17の前端とベース部15とに跨って形成された端面壁部21と、この端面壁部21のうちベース部15寄りの位置からパーテイションサッシュ5を避けるように前方側に延びる薄肉状の起立壁部22と、この起立壁部22の前端に当該起立壁部22よりも厚肉に形成された封止突起部23と、から形成されている。この封止突起部23をさらに細分化するならば、厚肉の基部24と、この基部24から上方に延びる角柱状の上部突起部25と、同じく基部24から下方に延びていて、略鉤状に屈曲した爪部26aを有する下部突起部26と、から形成されている。
【0037】
そして、図5から明らかなように、インサイドウエザーストリップ14の正規組付状態での平面視では、延長シール部20の端面壁部21と起立壁部22および封止突起部23の内面が、それと対面するパーテイションサッシュ5と当該パーテイションサッシュ5に嵌合保持されたドアグラスラン10の一部の外側面形状に倣った形状となっている。
【0038】
これにより、端面壁部21の内面がパーテイションサッシュ5に嵌合保持されたドアグラスラン10の一部に当接して、この端面壁部21がパーテイションサッシュ5とドアトリム8の端末フランジ部8aとの間の隙間のうち後方側の開口部を塞ぐように封止している。同時に、封止突起部23の内面がパーテイションサッシュ5の前方側の部分に当接して、この封止突起部23がパーテイションサッシュ5とドアトリム8の端末フランジ部8aとの間の隙間のうち前方側の開口部を塞ぐように封止している。
【0039】
さらに、薄肉状の起立壁部22がパーテイションサッシュ5とドアトリム8の端末フランジ部8aとの間の隙間に介在していて、その隙間に相当する空間を薄肉状の起立壁部22が物理的に埋めている。その結果として、パーテイションサッシュ5とドアトリム8の端末フランジ部8aとの間の隙間とその前後の開口部が、延長シール部20で埋められるようにして封止されている。
【0040】
図7図5のE-E線に沿った拡大断面図を示している。図5,7に示すように、パーテイションガラス7に嵌合保持されたパーテイションウエザーストリップ11とそれに隣接するドアトリム8の端末フランジ部8aとの間に、両者の間の隙間を埋めるように延長シール部20の封止突起部23が位置している。この封止突起部23には、図4に示すように、基部24と上部突起部25および下部突起部26とが含まれている。封止突起部23は、ドアトリム8における端末フランジ部8aの一方の面に密着しつつ、下部突起部26の爪部26aがその下側まで及んでいる。
【0041】
つまり、図3,4に示すように、端末フランジ部8aのうちパーテイションサッシュ5に相当する位置には、局部的に下方に突出する舌片部8bが形成されていて、この舌片部8bの下縁に下部突起部26の爪部26aが係合している。これにより、図7に示すように、封止突起部23のうち下部突起部26の爪部26aとそれよりも上方部分とのなすアングル状の空間に、ドアトリム8の端末フランジ部8aにおける舌片部8bが密着するようにその舌片部8bを受容している。
【0042】
図4,7に示すように、延長シール部20の下部突起部26における爪部26aの背面は、パーテイションガラス7に嵌合保持されたパーテイションウエザーストリップ11側から、ドアトリム8の端末フランジ部8a側に向かって下り勾配で傾斜した円弧状の傾斜ガイド面27となっている。なお、この傾斜ガイド面27の機能については後述する。また、この傾斜ガイド面27は、円弧状のものに代えて、平坦な傾斜面であっても良い。
【0043】
図7に示すように、パーテイションウエザーストリップ11のうちドアトリム8の端末フランジ部8aと対面する部分には、紐状で超軟質のエプトシール材(エプトシーラー)28が長手方向に沿って予め貼着されていて、このエプトシール材28はパーテイションウエザーストリップ11と端末フランジ部8aの間に挟み込まれるようになっている。そのため、インサイドウエザーストリップ14の正規組付状態では、図7に示すように、延長シール部20における封止突起部23の上部突起部25とエプトシール材28とが位置的に上下方向および車幅方向で互いに重なるようになっている。
【0044】
したがって、このようなインサイドウエザーストリップ14によるシール構造では、図5,7に示すように、パーテイションウエザーストリップ11を介してドア1に嵌め込まれたパーテイションガラス7は固定式(非昇降式)のものとなっている。これに対して、パーテイションガラス7に隣接するドアガラス6は、ドアサッシュ4の後側の縦辺部4b(図1参照。)およびパーテイションサッシュ5に嵌合保持されたドアグラスラン10に案内支持されていて、図示しないウインドレギュレータ機構の操作により昇降可能となっている。この場合に、ドアグラスラン10やインサイドウエザーストリップ14はドアガラス6の昇降動作をスムーズに許容する。
【0045】
また、ドアガラス6の閉め切り状態では、図5に示すように、ドアサッシュ4の後側の縦辺部4bおよびパーテイションサッシュ5に嵌合保持されたドアグラスラン10の双方のシールリップ12a,12bがドアガラス6の表裏両面に圧接することになる。同時に、インサイドウエザーストリップ14の上下二段のガラスシールリップ16,17のほか、ドアガラス6を挟んでインサイドウエザーストリップ14と対向配置された図示外のアウトサイドウエザーストリップの同じく上下二段のガラスシールリップがドアガラス6の表裏両面に圧接することになる。これにより、ドアガラス6を挟んで車室内外がシールされ、気密性、水密性および遮音性等が確保されることになる。
【0046】
その一方、車両の走行に伴って、不可避的にドア本体3の内部に侵入したロードノイズや風切り音等の外部騒音に着目した場合、図5に示すように、パーテイションサッシュ5とドアトリム8の端末フランジ部8aとの間の隙間に延長シール部20の起立壁部22が介在していてその隙間の空間を埋めているだけでなく、その隙間の後方側と前方側の開口部を延長シール部20の端面壁部21と封止突起部23とが塞ぐようにして封止している。そのため、ドアウエスト開口部2とパーテイションサッシュ5との交差部付近における外部騒音の侵入経路が延長シール部20で遮断され、風漏れ音等を抑制して車室内の静粛性の向上に寄与することができる。
【0047】
また、例えばドアトリム8に対するインサイドウエザーストリップ14の組付ばらつきが生じたとしても、パーテイションサッシュ5とドアトリム8との間には延長シール部20の起立壁部22が必ず介在していることになるので、外部騒音の侵入経路の遮断効果が阻害されることもない。
【0048】
さらに、外部騒音の侵入経路の遮断効果を発揮する延長シール部20は、インサイドウエザーストリップ14の前方側に延長形成されているので、乗員の視認可能な位置に露出すことはなく、見栄えを損なうこともない。
【0049】
その上、図2~4および図6に示すように、インサイドウエザーストリップ14が予め装着されているドアトリム8をドア1に組み付ける際には、ドアトリム8の端末フランジ部8aがドアウエスト開口部2のウエストフランジ部13aを乗り越えて、そのウエストフランジ部13aよりも室外側に端末フランジ部8aを位置させる必要がある。特に図4,5から明らかなように、パーテイションサッシュ5が配置されている部分では、パーテイションサッシュ5とドアトリム8の端末フランジ部8aとの間に、延長シール部20の薄肉状の起立壁部22を挟み込む必要がある。
【0050】
その対策として、図4,7に示すように、ドアトリム8の端末フランジ部8aと重なり合っている延長シール部20の爪部26aの背面側に傾斜ガイド面27を予め形成してある。この傾斜ガイド面27があることによって、インサイドウエザーストリップ14のうちでも特に延長シール部20がドアウエスト開口部2のウエストフランジ部13aを乗り越えやすくなる。しかも、傾斜ガイド面27をパーテイションウエザーストリップ11の外画面に沿わせるようにして、インサイドウエザーストリップ14をドアトリム8の端末フランジ部8aと共に下降させることで、正規位置に位置決めすることができる。
【0051】
その結果として、インサイドウエザーストリップ14に延長シール部20が一体に形成されていても、そのインサイドウエザーストリップ14が予め装着されているドアトリム8の組付性が損なわれることがない。
【0052】
ここで、上記実施の形態では、延長シール部20が一体に形成されているインサイドウエザーストリップ14をドアトリム8に予め装着しておくタイプのものを例にとって説明したが、本発明はこれに限らず、例えばインサイドウエザーストリップ14がドアウエスト開口部2のウエストフランジ部13aに装着されるタイプのものにも適用することができる。また、インサイドウエザーストリップ14は、三段以上のガラスシールリップを備えていても良い。
【0053】
さらに、上記実施の形態では、ドア1のうち昇降式のドアガラス6の前方側にパーテイションサッシュ5が配置されるタイプのフロントドアを例にとって説明したが、例えばリアドアのように昇降式のドアガラスの後方側にパーテイションサッシュが配置されるタイプのドアにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…フロントドア
2…ドアウエスト開口部
3…ドア本体
4…ドアサッシュ
5…パーテイションサッシュ
6…ドアガラス
7…パーテイションガラス
8…ドアトリム
8a…端末フランジ部
10…ドアグラスラン
14…インサイドウエザーストリップ
15…ベース部
16,17…ガラスシールリップ
20…延長シール部
21…端面壁部
22…起立壁部
23…封止突起部
24…基部
25…上部突起部
26…下部突起部
26a…爪部
27…傾斜ガイド面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7