(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】パスワード管理具、マスクセット及びパスワード管理方法
(51)【国際特許分類】
G06F 21/45 20130101AFI20220309BHJP
G09C 1/02 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
G06F21/45
G09C1/02
(21)【出願番号】P 2021029534
(22)【出願日】2021-02-26
(62)【分割の表示】P 2020100627の分割
【原出願日】2020-06-10
【審査請求日】2021-07-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520206014
【氏名又は名称】白井 陽太
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白井 陽太
【審査官】行田 悦資
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-243843(JP,A)
【文献】特開2016-001337(JP,A)
【文献】特開2012-123528(JP,A)
【文献】特開2017-194816(JP,A)
【文献】特開2012-203751(JP,A)
【文献】BAJPAI, S. et al.,Techniques of Steganography for Securing Information: A Survey,International Journal of Emerging Technologies,Research Trend,2012年,Vol.3, No.1,pp.48-54,[online], [令和3年10月1日検索], インターネット<URL:http://www.researchtrend.net/ijet/ijet31/ijetnew/8%20SANJAY%20BAJPAI.pdf>
【文献】一松 信,暗号の数理 作り方と解読の原理,日本,株式会社講談社,1980年03月20日,pp.55-69
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/45
G09C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクセットであって、
周縁部が同形状である6枚の板状のマスクプレートを有し、
前記
6枚のマスクプレートは、
前記周縁部の内側の5×5に区画された領域に、複数の窓部と、前記マスクプレートごとに配置が異なる複数の目隠し部と、を備え、前記複数の目隠し部の配置パターンが点対称となっており、任意の枚数の前記マスクプレートを選択し、前記周縁部が一致するように重ねると、
共通して開口する窓部の数
および位置が変化するものであり、
使用者は、
重ねた際に所望の数の窓部が開口するように前記マスクセットから複数枚の前記マスクプレートを選択し
、記入シート上の格子状に区画された記号群記入領域に前記複数の窓部が対応するように前記選択した複数枚のマスクプレートを重ねて配置し、前記開口する窓部より
所望の走査ルールに従って記号群をパスワードとして記入し、
前記選択した複数枚のマスクプレートを前記記入シートから外し、前記記入シートの前記
記号群記入領域の余白に任意の記号群を記入し、前記記入シートと前記選択した複数枚のマスクプレートを保管
すると共に、
前記走査ルールと前記選択した複数枚のマスクプレートを記憶または記録し、
前記パスワードを読み出す際に、保管していた前記記入シート
の前記記号群記入領域に前記複数の窓部が対応するように前記選択した複数枚のマスクプレートを重ね
て配置し、前記開口する窓部より
前記走査ルールに従って前記
パスワードを読み出す
ことを特徴とするマスクセット。
【請求項2】
マスクセットであって、
周縁部が同形状である6枚の板状のマスクプレートを有し、
前記6枚のマスクプレートは、前記周縁部の内側の5×5に区画された領域に、複数の窓部と、前記マスクプレートごとに配置が異なる複数の目隠し部と、を備え、前記複数の目隠し部の一つに識別記号が表示されており、任意の枚数の前記マスクプレートを選択して、前記識別記号が同じ方向に揃って視認できる向きで、かつ、前記周縁部が一致するように重ねると、共通して開口する窓部の数および位置が変化するものであり、
使用者は、
重ねた際に所望の数の窓部が開口するように前記マスクセットから複数枚の前記マスクプレートを選択し、記入シート上の格子状に区画された記号群記入領域に前記複数の窓部が対応するように前記選択した複数枚のマスクプレートを重ねて配置し、前記開口する窓部より所望の走査ルールに従って記号群をパスワードとして記入し、
前記選択した複数枚のマスクプレートを前記記入シートから外し、前記記入シートの前記記号群記入領域の余白に任意の記号群を記入し、前記記入シートと前記選択した複数枚のマスクプレートを保管すると共に、前記走査ルールと前記選択した複数枚のマスクプレートを記憶または記録し、
前記パスワードを読み出す際に、保管していた前記記入シートの前記記号群記入領域に前記複数の窓部が対応するように前記選択した複数枚のマスクプレートを重ねて配置し、前記開口する窓部より前記走査ルールに従って前記パスワードを読み出す
ことを特徴とするマスクセット。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のマスクセットであって、
前記
6枚のマスクプレートは、全て重ねると前記開口する窓部の数が0となることを特徴とするマスクセット。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか一項に記載のマスクセット及び記入シートを備える
ことを特徴とするパスワード管理具。
【請求項5】
パスワード管理方法であって、
周縁部が同形状である6枚の板状のマスクプレートを有し、前記
6枚のマスクプレートは、
前記周縁部の内側の5×5に区画された領域に、複数の窓部と、前記マスクプレートごとに配置が異なる複数の目隠し部と、を備え、前記複数の目隠し部の配置パターンが点対称となっており、任意の枚数の前記マスクプレートを選択し、前記周縁部が一致するように重ねると、
共通して開口する窓部の数
および位置が変化するマスクセットを用い、
重ねた際に所望の数の窓部が開口するように前記マスクセットか
ら複数枚の
前記マスクプレートを選択し
、記入シート上の格子状に区画された記号群記入領域に前記複数の窓部が対応するように前記選択した複数枚のマスクプレートを重ね
て配置し、前記開口する窓部より
所望の走査ルールに従って記号群をパスワードとして記入するステップと、
前記選択した複数枚のマスクプレートを前記記入シートから外し、前記記入シートの前記
記号群記入領域の余白に任意の記号群を記入し、前記記入シートと前記選択した複数枚のマスクプレートを保管する
と共に、前記走査ルールと前記選択した複数枚のマスクプレートを記憶または記録するステップと、
前記パスワードを読み出す際に、保管していた前記記入シート
の前記記号群記入領域に前記複数の窓部が対応するように前記選択した複数枚のマスクプレートを重ね
て配置し、前記開口する窓部より
前記走査ルールに従って前記
パスワードを読み出すステップと、を含む
パスワード管理方法。
【請求項6】
パスワード管理方法であって、
周縁部が同形状である6枚の板状のマスクプレートを有し、
前記6枚のマスクプレートは、前記周縁部の内側の5×5に区画された領域に、複数の窓部と、前記マスクプレートごとに配置が異なる複数の目隠し部と、を備え、前記複数の目隠し部の一つに識別記号が表示されており、任意の枚数の前記マスクプレートを選択して、前記識別記号が同じ方向に揃って視認できる向きで、かつ、前記周縁部が一致するように重ねると、共通して開口する窓部の数および位置が変化するマスクセットを用い、
重ねた際に所望の数の窓部が開口するように前記マスクセットから複数枚の前記マスクプレートを選択し、記入シート上の格子状に区画された記号群記入領域に前記複数の窓部が対応するように前記選択した複数枚のマスクプレートを重ねて配置し、前記開口する窓部より所望の走査ルールに従って記号群をパスワードとして記入しするステップと、
前記選択した複数枚のマスクプレートを前記記入シートから外し、前記記入シートの前記記号群記入領域の余白に任意の記号群を記入し、前記記入シートと前記選択した複数枚のマスクプレートを保管すると共に、前記走査ルールと前記選択した複数枚のマスクプレートを記憶または記録するステップと、
前記パスワードを読み出す際に、保管していた前記記入シートの前記記号群記入領域に前記複数の窓部が対応するように前記選択した複数枚のマスクプレートを重ねて配置し、前記開口する窓部より前記走査ルールに従って前記パスワードを読み出すステップと、を含む
パスワード管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
パスワードを物理的な道具を使って管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
IT化により従来に増して様々な場面でパスワードが必要となっている。パスワードを生成することは面倒であるため、パスワードを作成するための器具が開発されている。例えば、特許文献1の段落[0004]には、「ランダムに印字されたパスワード候補文字(3)を設けた紙媒体(1)と、文字選択用の印である、パスワード候補文字選択箇所(4)を設けたプレート(2)を重ね、印がついている文字または、表示されている文字をパスワードとする。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、ランダムな文字列をパスワードとするため、覚えにくい。一方、すでに作成していて記憶しているパスワードの管理には、利用することができない。すでに使用中のパスワードについては、メモ帳にメモするなどの方法が採られている。しかし、メモ帳を他人に見られて、パスワードを知られる危険がある。また、新たにパスワードを生成する場合に、ランダムではなく、自身で使いやすく、記憶しやすい文字列によるパスワードとしたいという希望もある。
【0005】
一方、2020年に流行している新型コロナウイルス感染症の影響で、新しい生活様式への移行が進み、その中でリモートワークやリモート学習が加速しつつある。そして、今後さらに、インターネットを使用した生活が浸透していくことが想定されるため、より多くの人がパスワードの管理問題に直面することになる。そこで、安全性が高くかつ安心して使えるパスワード管理が必要になる。
【0006】
本発明は、使用中のパスワード、使用希望のパスワードを、他人に知られにくく、誰でも簡単に管理することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、上記目的を達成するための技術を提供する。以下のその例を挙げる。
【0008】
上記目的を達成するための解決手段の一態様として、複数の記号により構成されるパスワードを管理するためのパスワード管理具が提供される。このパスワード管理具は、記号群を記入するための記号群記入領域を有する記号記入シートと、管理対象とするパスワードの記号数に相当する数の窓部を配置したマスクセットとを備える。記号記入シートは、記号群記入領域における、マスクセットの窓部の配置パターンに対応する領域をパスワード用記号書込領域とし、その余の領域を、カムフラージュ用記号書込領域とする。
【0009】
また、上記目的を達成するための解決手段の他の態様として、記号群を個別に記入するための記号記入シートに、重ねて用いられ、記号群の一部により構成されるパスワードを管理するために用いるマスクセットが提供される。このマスクセットは、一部を目隠し状態とする目隠し部を、互いに異なる位置に設けた、複数種のマスクプレートを有し、複数種のマスクプレートから選ばれた2以上のマスクプレートを組み合わせて、管理対象とするパスワードの記号数に相当する数の窓部を開口するものである。
【0010】
さらに、上記目的を達成するための解決手段の他の態様として、複数の記号により構成されるパスワードを管理するためのパスワード管理方法が提供される。この方法は、記号群を記入するための記号群記入領域を有する記号記入シートに、一部を目隠し状態とする目隠し部を互いに異なる位置に設けた複数種のマスクプレートから選ばれた2以上のマスクプレートを組み合わせて、管理対象とするパスワードの記号数に相当する数の窓部を開口して、記号群記入領域上に配置し、記号記入シートの記号群記入領域の各窓部が対応する位置に、パスワード用記号を書込み、目隠しされていた記入領域に、カムフラージュ用記号を書き込むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用中のパスワード、使用希望のパスワードを、他人に知られにくく、誰でも簡単に管理することができる技術を提供することができる。
【0012】
本願においては、多様な実施形態が可能であり、応用も多様である。以下、実施形態について述べる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、記号群を記入するための記号群記入領域を有する記号記入シートの一例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、複数種のマスクプレートを重ねて形成されるマスクセットの一例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、マスクセットを構成するマスクプレートの#1の一例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、マスクセットを構成するマスクプレートの#2の一例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、マスクセットを構成するマスクプレートの#3の一例を示す平面図である。
【
図6】
図6は、マスクセットを構成するマスクプレートの#4の一例を示す平面図である。
【
図7】
図7は、マスクセットを構成するマスクプレートの#5の一例を示す平面図である。
【
図8】
図8は、マスクセットを構成するマスクプレートの#6の一例を示す平面図である。
【
図9】
図9は、マスクセットを構成するマスクプレート#1から#6の目隠し部の配置パターンを模式的に示す説明図である。
【
図10】
図10は、複数種マスクプレートを#1から#4まで重ねて順次得られる窓部の配置パターン(逆には目隠し部の配置パターン)を模式的に示す説明図である。
【
図11】
図11は、複数種マスクプレートを#1、#3、#5及び#6を重ねて得られる窓部の配置パターン(逆には目隠し部の配置パターン)を模式的に示す説明図である。
【
図12】
図12は、複数種マスクプレートを#2、#3、#4及び#5を重ねて得られる窓部の配置パターン(逆には目隠し部の配置パターン)を模式的に示す説明図である。
【
図13】
図13は、複数種マスクプレートを#1から#4まで重ねて得られるマスクセットを記号記入シートに重ね、窓部の配置パターンに記号を記入している過程を模式的に示す説明図である。
【
図14】
図14は、マスクセットを介して記号記入シートの記号群記入領域に記載されたパスワードを構成する記号群の記入例を示す説明図である。
【
図15】
図15は、記号群記入領域にパスワードを構成する記号群とカムフラージュ記号群とを記入した記号記入シートの一例を示す平面図である。
【
図16】
図16は、記号群記入領域を表記した記号記入シートを2ページ分形成した例を示す平面図である。
【
図17】
図17は、
図16に示す記号記入シートのそれぞれの記号群記入領域にパスワードを構成する記号群とカムフラージュ記号群とを記入した記号記入シートの他の例を示す平面図である。
【
図18】
図18は、記号記入シートの記号群記入領域の行列の大きさが、マスクセットのサイズより大きい場合の配置位置の例を示した説明図である。
【
図19】
図19は、目隠し部を設けていないマスクプレートの一例を示す平面図である。
【
図20】
図20は、記号を個別に記入するための円形の記入領域の集合である記号群記入領域を表記した記号記入シートの一例を示す平面図である。
【
図21】
図21は、複数種のマスクプレートを重ねて円形の窓部を形成されるマスクセットの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本願において開示するパスワード管理具を含むパスワード管理技術に関する実施形態例について説明する。
図1は、記号群を記入するための記号群記入領域を有する記号記入シートの一例を示す平面図である。また、
図2は、複数種のマスクプレートを重ねて形成されるマスクセットの一例を示す平面図である。本実施形態のパスワード管理具は、記号群を記入するための記号記入シート10と、記号記入の際、及び、パスワードを確認する際に使用するマスクセット20とを備える。なお、「記号」とは、少なくともコンピュータが認識可能な文字を含み、その他のマークやシンボルも含み得る広義の意味である。
【0015】
記号記入シート10は、手書き可能なシートにより構成される。例えば、メモ用紙、手帳、メモ帳等を台紙として用いることができる。台紙の素材は、紙に限らず、プラスチック等でもよい。また、シートと表現したが、ある程度の剛性のある板であってもよい。ここで、記号記入シート10を手書き可能としている理由は、マスクセット20を用いて、記号を手書き入力することを想定しているためである。これにより、誰でもが、パスワード用の記号を、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等の電子機器を用いることなく、簡単に入力することができる。
【0016】
記号記入シート10には、記号を記入するための記号群記入領域11が設けられている。具体的には、この記号群記入領域11には、記号を個別に記入するための個別記入領域12が複数配置されている。また、記号記入シート10には、
図1に示すように、当該シートを他のシートと区別するための識別情報記入欄14が設けてある。識別情報記入欄14には、例えば、通信サービス会社名、通販サービス会社名、金融機関名等の、そのシートに記載されるパスワードでログインする対象を特定する情報を記入するための名称欄15と、対応するID(認証識別子)欄16とが設けられる。なお、ID欄に記入するIDについてもパスワードによる表記としてもよい。なお、名称欄15についても、パスワード表記とすることもできる。
【0017】
記号群記入領域11は、例えば、領域内を格子状に区画して、記号を個別に記入するための個別記入領域12を形成している。本実施形態では、5×5の25個のセルを配置したマトリクス状に形成した例を示す。もちろん、5×5のマトリクスに限らず、n×nのマトリクスのほか、m×nのマトリクスとすることもできる。各個別記入領域12は、例えば、
図15に示すように、アルファベット、数字等の文字その他の記号を手書きで入力できる面積に設定される。
【0018】
記号群記入領域11は、後述するマスクセット20の窓部22が対応する個別記入領域12をパスワード用記号書込領域とし、その余の記入領域を、カムフラージュ用記号書込領域とする。これらの領域分けは、使用するマスクセットによって異なる。
【0019】
マスクセット20は、
図2に示すように、板状体に、窓部22(図中、白抜きで示す四辺形)を設けたものである。窓部22は、板状体の表裏を貫通して形成されている。
図2に示す例では、窓部22は、後述する配置パターンを構成する8箇所に配置されている。この場合には、パスワードを8文字とすることができる。窓部22は、上述した個別記入領域12に対応する形状及び大きさとなるように形成されている。これは、これらの窓部22を通して、記号記入シート10上の個別記入領域を臨むことができて、その部分に記号を手書きできるようにするためである。
【0020】
マスクセット20は、窓部22以外の部分は、不透明としてあり、記号記入シート10に重ねた際、窓部22が臨む位置以外の領域を不可視としている。このように、窓部22以外の部分を不可視とすることにより、手書きする領域を明確にすることができる。特に、記入されている記号を読み取る際に、窓部22の外側の記号を誤読してしまわないようにする効果がある。もちろん、窓部22が使用者に明確に視認できるのであれば、透明としてもよい。
【0021】
マスクセット20は、パスワードを記録する場合、読み取る場合などの使用時に、複数種のマスクプレートを重ねて構成される。ただし、使用するマスクプレートの組み合わせは必要に応じて特定される。すなわち、使用者が必要に応じて選択することにより組み合わせが特定される。この組み合わせ方によって、窓部の配置パターンが多様なマスクセット20が実現できる。すなわち、マスクセット20は、それを構成するマスクプレートの組み合わせにより、窓部の配置パターンが異なる。マスクプレートは、非使用時は、重ねずに、保管する。これにより、マスクプレートの組み合わせの任意性を増して、秘匿性を向上することができる。重ねて保管してもよいが、使用時に選択されないマスクプレートを混ぜるなどするのが好ましい。
【0022】
図3から
図8に、マスクプレートの一例を示す。ここでは、マスクプレート201から206を示す。これらの図において、白抜きで示す四辺形部分が窓部22であり、各プレート201から206の周縁部25の内側の領域において、複数箇所に配置されている。また、マスクプレート201から206において、窓部22は、表裏を貫通する孔として形成されている。
【0023】
マスクプレート201から206において、一部を目隠し状態とする目隠し部23を、それぞれ複数箇所、互いに異なる位置に設けてある。
図3に示すマスクプレート201では、板状体の四隅と中央の5箇所設けてある。また、目隠し部23の一つに、当該マスクプレートを識別するための記号が付されている。
図3に示す場合には、#1と記してある。他のマスクプレート202から206についても、
図4から
図8に示すように、#2から#6の記号が同様に付されている。複数枚のマスクプレートを重ねる際に、これらの記号が同じ方向に揃って視認できるようにすると、使い易い。
【0024】
図9に、マスクプレート201から206について、目隠し部23の配置パターン例を模式的に示す。
図9に示すように、#1から#6まで、周縁部25により仕切られる外部区画を模式的に示すフレーム21内に、5×5の25セルが配置される。#1のフレーム21内では5箇所のセルに、#2から#6のフレーム21では4箇所のセルに、それぞれ目隠し部23が設けられている。#1から#6のフレームでは、目隠し部23の配置パターンが点対称となり、#5及び#6のフレームでは、目隠し部23の配置パターンが左右対称となっている。これらの目隠し部23の配置パターンから分かるように、マスクプレート201から206を、同じ向きで全てを重ねると、25セルの全てが目隠し部23で埋まるため、窓部22は全く開口しないこととなる。なお、マスクプレート205とマスクプレート206は、いずれか一方を裏返すと他方と同じ配置パターンになるため、記号#5と#6が表に見えるように使用することで、混同が防止される。
【0025】
次に、マスクセット20を構成する方法の一例について、
図10を参照して説明する。ここでは、
図9に示した目隠し部23の配置パターンをさらに参照して説明する。まず、#1のフレーム21の配置パターンと#2のフレーム21の配置パターンとを重ねると、
図10(a)に示す配置パターンとなる。これに、#3フレーム21の配置パターンを重ねると、
図10(b)に示す配置パターンとなる。この時点において、12文字分のパスワードを構成する記号を記入することができる。さらに、#4のフレーム21の配置パターンを重ねると、
図10(c)に示す配置パターンとなる。この配置パターンは、窓部22の配置パターンと見ると、
図2に示すマスクセット20の窓部22の配置パターンとなる。
【0026】
マスクセット20の窓部22の配置パターンは、マスクプレート201から206の選択を換えて組み合わせることにより、変化することができる。
図11には、
図9に示す#1、#3、#5及び#6を組み合わせたマスクセットの窓部22の配置パターンを示す。
図12に、
図9に示す#2、#3、#4及び#5を組み合わせたマスクセットの窓部22の配置パターンを示す。
【0027】
なお、日本の総務省推奨のパスワードは、英大小文字+数字+記号を使用し10桁以上である。この規則を考慮し、本実施形態の例では、5×5の25個の個別記入領域12に対して、2~3枚のマスクプレートを重ねたときに10個以上の窓部22が残るように、マスクプレート201から206に目隠し部23の数を配分している。これにより、2~3枚のマスクプレートを使うことが促され、安全性を向上できる。
【0028】
次に、パスワードを記録する方法の一例について説明する。まず、記号群を記入するための記号群記入領域を有する記号記入シートを用意する。ここでは、例えば、
図1に示す記号記入シート10を用いるものとする。また、複数種のマスクプレートを用意する。例えば、
図3から
図6に示すマスクプレート201から204を選択して、これらを重ねる。これにより、
図10(c)に示す窓部配置パターンを有するマスクセット20(
図2参照)を構成することができる。
【0029】
このようにしてマスクプレート201から204を重ねて構成されるマスクセット20を、
図13に示すように、記号記入シート10の記号群記入領域11上に配置する。マスクセット20を記号記入シート10上に配置する際、記号群記入領域11の各個別記入領域12と、マスクセット20の各窓部22との位置関係を対応させる。ここで、使用者は、どのマスクプレートを使用したかについて、記録しておくか、記憶しておく必要がある。なお、
図9に示すような点対称の配置パターンを有さないマスクプレートを用いた場合、そのマスクプレートの向きを記録あるいは記憶する必要がある。
【0030】
次に、マスクセット20の窓部22に、ボールペン等の筆記具の先端を差し込んで、使用中の、又は、使用予定のパスワード用記号を、個別記入領域12に、1記号ずつ書き込む。これを8個の窓部22について行う。この際、パスワードを構成する記号をどのような規則で窓部配置パターンに書き込むかを決めておく必要がある。走査ルールを、例えば、「左上から右下まで、1行ずつ走査する」として、記録すべきパスワード(2sHz&q!7)を記入すると、
図14のように記入されることになる。後に、このパスワードを読み出すときには、同じマスクセット20を使って、同じルールを適用して読み出す必要がある。
【0031】
この後、マスクセット20を外すと、
図14に示すように、記号群記入領域11の8箇所の個別記入領域12に、窓部22の配置パターンに対応した記号群が記入される。ここで、余白の個別記入領域12のそれぞれに、任意の記号、カムフラージュ記号群を記入する。これにより、例えば、
図15に示すように、記号群記入領域11の全ての個別記入領域12がパスワード用記号群とカムフラージュ記号群とで満たされることとなる。従って、パスワードが直ちには察知されない状態で記録される。
【0032】
この後、記号記入シート10と、マスクセット20とを別個に保管することにより、パスワードを安全に保存することができる。なお、マスクセット20は、マスクプレートに分解して、保管することが好ましい。また、記号記入シート10の識別情報記入欄14には、ログイン対象を示す名称を名称欄15に記載する。さらに、ログインする際のIDをID(認証識別子)欄16に記載する。これにより、記号記入シート10が複数枚になった際に、該当する記号記入シート10を確実に特定することができる。なお、IDについても、パスワード化することができる。例えば、同じ記号群について、走査ルールを、例えば、「右上から左下まで、1列ずる走査する」とすれば、記録すべきパスワードは、(zqs72!H&)となる。これをIDとしてもよい。
【0033】
次に、記録してあるパスワードを確認する場合には、まず、識別情報記入欄14の名称欄15及びID欄16の記載が目的のものである記号記入シート10を用意する。また、パスワードを記入する際に使用したマスクプレート201から204(#1から#4)を重ねて構成したマスクセット20を用意する。このマスクセット20を、
図13に示すような記号記入シート10の記号群記入領域11上に配置する。マスクセット20を記号記入シート10上に配置する際、記号群記入領域11の各個別記入領域12と、マスクセット20の各窓部22との位置関係を対応させる。この状態では、マスクセット20の窓部22は、例えば、
図14に示すような記号群が見える。
【0034】
ここで、パスワードを記録する際に使用した走査ルールを適用して、記号を読み出す。
図14の例では、「左上から右下まで、1行ずつ走査する」という走査ルールを適用すると、(2sHz&q!7)の順に並ぶ記号列を読み出すことができる。すなわち、記録したパスワードを読み取ることができる。
【0035】
本発明は上述した実施形態に限られない。発明の基本的な考え方を外れない限り、多様な変形が可能である。以下にそれらの例を示す。
【0036】
図16に示す例は、記号記入シート10を見開きの2面構成としたもので、各面に、記号群記入領域11が配置されている。それぞれの記号群記入領域11には、異なる記号群を記入することができる。
図17には、この記号記入シート10のそれぞれに異なる記号群が記入されている例を示す。なお、図示していないが、メモ帳、ノートのように、複数ページに渡るものであってもよい。また例えば、各ページを、記号記入シートの下にカーボン紙及び転写用の記号記入シートを重ねた冊子として構成すれば、パスワード記入後、カーボン紙及び転写用の記号記入シートを切り離すことで、別途保管できる。記号記入シートが盗まれたあるいは紛失した場合でも、転写用の記号記入シートが残っていれば助かる。
【0037】
図18に示す例は、記号記入シート10に表記される記号群記入領域11を、6×6のマトリクスとしたものである。この6×6のサイズの記号群記入領域11に、同じく6×6サイズに適合した窓部を有するマスクセット(図示せず)を載置することができる。また、これまでのサイズ、例えば、
図2に示すようなマスクセット20を載置する構成とすることもできる。その場合には、
図18に示すように、例えば、位置決めマーク171と172とを基準として、マスクセット20を載置すること、または、位置決めマーク181と182とを基準として、マスクセット20を載置することができる。もちろん、この他の位置に置くこともできる。
【0038】
図19に示す例は、目隠し部を設けていないマスクプレート200の例である。このマスクプレートは、記号記入シート10の記号群記入領域11に、
図1に示すような格子状の区画等が設けられていない場合、すなわち白紙の場合に適用するためのものである。まず、マスクセット20を記号記入シート10上の白紙の領域である記号群記入領域11に載置して、パスワード用記号を記入した後、マスクセット20を外して、記入されているパスワード用記号群を、マスクプレート200の所定窓部に位置させて、その他の空白の窓部22に、カムフラージュ記号群を記入することによって、
図15と同様な記号群を配置するものである。
【0039】
上述した実施形態では、格子状に区画した個別記入領域の例を示したが、当該領域を、使用者が視認でき、かつ、手書き入力が容易であれば、それに限られない。記号を個別に入力すべき領域を示すことができ、かつ、一定の配置パターンを形成することができる図形等を用いることができる。例えば、四辺形、円、模様等の図形を配置したものとすることができる。
図20には、円形の個別記入領域12を配置した記号群記入領域11を有する記号記入シート10の例を示す。また、
図21に、円形の窓部22を有するマスクセット20の例を示す。
【0040】
上述した実施形態では、マスクセット20の全ての窓部22に記号を書き込む例を示したが、一部の窓部22に記号を書き込んでもよい。すなわち、パスワードの記号数を窓部22の数よりも少なくする使い方もできる。ただし、この使い方においては、走査ルールとともに、パスワードの記号を書き込んだ窓部22の位置(例えば、窓部22が8個の場合、走査順に先頭から7個など)を記憶しておく必要がある。
【0041】
異なるパスワードを覚えておくのは困難、同じパスワードを使い回すことはできるが危険、物理的な手帳などに記録しておくことはできるが、落したりして他人に見られるおそれがある、などの様々な不安がある中で、上述した各実施形態によれば、誰でも簡単にパスワードの管理できる。特に、使用中のパスワード、また、本人が作成したパスワードを、他人に知られにくく、管理することが可能となる。
【0042】
記号記入シートが盗まれたとしても、カムフラージュ用記号も記載されている中からパスワードを特定することは困難であり、マスクプレートと一緒に盗まれたとしても、マスクプレートの組み合わせが複数通りあり、暗号の解読までには相当の時間がかかる。
【0043】
本発明は、パスワード管理具、マスクセット、パスワード管理方法だけでなく、様々な態様で提供することができる。例えば、本発明は、パスワード管理具及びそれを使った方法をコンピュータ上でユーザの操作により仮想的に実行可能にするコンピュータプログラムとして提供することもできる。当該コンピュータプログラムは、WEBアプリ、スマートフォン用アプリ、パソコン用アプリなど様々な形態で実装され得る。
【符号の説明】
【0044】
10…記号記入シート、11…記号群記入領域、12…個別記入領域、
14…識別情報記入欄、15…名称欄、16…ID欄、
20…マスクセット、21…フレーム、22…窓部、23…目隠し部、
201から206…マスクプレート