IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-移送システム 図1
  • 特許-移送システム 図2
  • 特許-移送システム 図3
  • 特許-移送システム 図4
  • 特許-移送システム 図5
  • 特許-移送システム 図6
  • 特許-移送システム 図7
  • 特許-移送システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】移送システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/133 20060101AFI20220309BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
B65G1/133 G
B25J15/08 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017250215
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019116336
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 友希男
(72)【発明者】
【氏名】大内 哲志
(72)【発明者】
【氏名】三井 栄二
(72)【発明者】
【氏名】松岡 淳一
(72)【発明者】
【氏名】北野 幸彦
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-063754(JP,U)
【文献】特表2008-545414(JP,A)
【文献】特許第3725516(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/133
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられた、載置対象物を保持可能なエンドエフェクタと、
回転式ストッカと、
前記ロボットアーム及び前記エンドエフェクタを制御する制御装置と、を備え、
前記回転式ストッカは、
基台と、
前記基台上に設けられ、鉛直方向に延びる回転軸を中心に前記基台に対して回転可能に接続された回転部と、
前記回転部を回転させる前記回転駆動装置と、
前記回転部の回転位置を検知する回転センサと、
前記回転部に固定され、前記回転軸を中心に周方向に並んだ、前記載置対象物が載置される複数の棚と、
前記複数の棚より前記回転軸の径方向外方に位置する載置対象物検知センサであって、前記回転軸と前記載置対象物検知センサとの間に位置する前記棚に、前記載置対象物が載置されているか否かを検知する載置対象物検知センサと、を備え
前記制御装置は、前記回転センサにより検知された前記回転位置を示す回転位置情報と、前記載置対象物センサにより検知された前記載置対象物の有無を示す検知情報とに基づいて、前記ロボットアームによって前記載置対象物を移送する前記棚を決定する、移送システム
【請求項2】
前記回転式ストッカは、
前記基台に固定され、前記複数の棚より前記回転軸の径方向外方の位置で上下方向に延びる延設部と、
前記延設部から前記回転軸に向かって延び、前記回転部の上端部に回転可能に連結する連結部と、を備え、
前記載置対象物検知センサは、前記延設部に設けられる、請求項1に記載の移送システム
【請求項3】
前記複数の棚は、複数の第1棚であり、前記載置対象物検知センサは、前記延設部に固定された第1載置対象物検知センサであり、
前記回転式ストッカは、
前記複数の第1棚より上方で前記回転部に固定され、前記回転軸を中心に周方向に並んだ、前記複数の第1棚とは別の複数の第2棚と、
前記第1載置対象物検知センサより上方で前記延設部に固定された第2載置対象物検知センサであって、前記回転軸と前記第2載置対象物検知センサとの間に位置する前記第2棚に、前記載置対象物が載置されているか否かを検知する第2載置対象物検知センサと、を備える、請求項2に記載の移送システム
【請求項4】
前記複数の棚は、複数の第1棚であり、
前記回転式ストッカは、
前記複数の第1棚より上方で前記回転部に固定され、前記回転軸を中心に周方向に並んだ、前記複数の第1棚とは別の複数の第2棚と、
前記延設部に沿って昇降可能に、前記延設部に支持される昇降部と、
前記昇降部を昇降させる昇降駆動装置と、を備え、
前記載置対象物検知センサは、前記昇降部に固定されており、当該載置対象物検知センサが前記第1棚に対して前記径方向に対向する位置にあるときは、当該第1棚に前記載置対象物が載置されているか否かを検知し、当該載置対象物検知センサが前記第2棚に対して前記径方向に対向する位置にあるときは、当該第2棚に前記載置対象物が載置されているか否かを検知する、請求項2に記載の移送システム
【請求項5】
前記棚は、前記載置対象物を下方から支持する水平な支持面と、前記支持面における前記回転軸に対して遠位側の端部に接続され、当該端部から前記径方向外方に向かって上方に傾斜する傾斜面を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の移送システム
【請求項6】
前記制御装置は、前記エンドエフェクタにより保持された前記載置対象物が、前記傾斜面に接触するよう前記ロボットアームを制御し、前記載置対象物が前記傾斜面に接触したときに、前記載置対象物の保持を解除するよう前記エンドエフェクタを制御する、請求項5に記載の移送システム。
【請求項7】
前記載置対象物がマイクロプレートである、請求項1~6のいずれか1項に記載の移送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプレートやチップラック等を収容する回転式ストッカ及びそれを備える移送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイクロプレートやチップラック等を収容する回転式のストッカが知られている。例えば、特許文献1には、複数の棚を備える回転式ストッカが開示されている。この回転式ストッカの各棚には、標本容器がロボットにより載置される。各棚には、センサが設けられている。このセンサの用途について特許文献1には詳しい記述がないが、このセンサには、標本容器等の載置対象物が棚に載置されているか否かを判別するためのセンサが含まれると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2008-545414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の回転式ストッカのように、棚に載置対象物が載置されているか否かを判別するセンサが設けられることにより、回転式ストッカのどの棚が空いているかを即座に判断することが可能となる。しかしながら、上述の回転式ストッカでは、棚ごとにセンサを設置するため、製造コストが増大するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、製造コストを抑えることができる回転式ストッカ及びそれを備える移送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る回転式ストッカは、基台と、前記基台上に設けられ、鉛直方向に延びる回転軸を中心に前記基台に対して回転可能に接続された回転部と、前記回転部を回転させる前記回転駆動装置と、前記回転部に固定され、前記回転軸を中心に周方向に並んだ、載置対象物が載置される複数の棚と、前記複数の棚より前記回転軸の径方向外方に位置するセンサであって、前記回転軸と前記センサとの間に位置する前記棚に、前記載置対象物が載置されているか否かを検知するセンサと、を備える。
【0007】
上記の構成によれば、回転部が回転軸を中心に回転することで、回転部に固定された複数の棚を、センサと回転軸との間に順次位置づけることができる。このため、1つのセンサを用いて、複数の棚について載置対象物が載置されているか否かを判別することができる。従って、棚ごとにセンサを設置する場合に比べて、回転式ストッカの製造コストを抑えることができる。
【0008】
上記の回転式ストッカは、前記基台に固定され、前記複数の棚より前記回転軸の径方向外方の位置で上下方向に延びる延設部と、前記延設部から前記回転軸に向かって延び、前記回転部の上端部に回転可能に連結する連結部と、を備え、前記センサは、前記延設部に設けられてもよい。この構成によれば、延設部から回転軸に向かって延びる連結部が、回転部の上端部に回転可能に連結するため、基台に対して回転部の回転軸を安定させることができる。また、延設部は、複数の棚より回転軸の径方向外方に位置するため、センサを設けるのに都合がよい。
【0009】
また、上記の回転式ストッカにおいて、前記複数の棚は、複数の第1棚であり、前記センサは、前記延設部に固定された第1センサであり、前記複数の第1棚より上方で前記回転部に固定され、前記回転軸を中心に周方向に並んだ、前記複数の第1棚とは別の複数の第2棚と、前記第1センサより上方で前記延設部に固定された第2センサであって、前記回転軸と前記第2センサとの間に位置する前記第2棚に、前記載置対象物が載置されているか否かを検知する第2センサと、を備えてもよい。この構成によれば、複数段の回転式ストッカの各段に対応したセンサが設けられているため、回転部を一周回転することにより、複数の段の棚に載置対象物が載置されているか否かを短時間で判別することができる。
【0010】
あるいは、上記の回転式ストッカにおいて、前記複数の棚は、複数の第1棚であり、前記複数の第1棚より上方で前記回転部に固定され、前記回転軸を中心に周方向に並んだ、前記複数の第1棚とは別の複数の第2棚と、前記延設部に沿って昇降可能に、前記延設部に支持される昇降部と、前記昇降部を昇降させる昇降駆動装置と、を備え、前記センサは、前記昇降部に固定されており、当該センサが前記第1棚に対して前記径方向に対向する位置にあるときは、当該第1棚に前記載置対象物が載置されているか否かを検知し、当該センサが前記第2棚に対して前記径方向に対向する位置にあるときは、当該第2棚に前記載置対象物が載置されているか否かを検知してもよい。この構成によれば、昇降駆動装置により、複数段の回転式ストッカの各段の棚に対向する位置にセンサを移動させることができる。このため、1つのセンサによって、回転式ストッカが有する複数の段の棚に関して、載置対象物が載置されているか否かを判別することができる。
【0011】
上記の回転式ストッカにおいて、前記棚は、前記載置対象物を下方から支持する水平な支持面と、前記支持面における前記回転軸に対して遠位側の端部に接続され、当該端部から前記径方向外方に向かって上方に傾斜する傾斜面を有してもよい。この構成によれば、支持面における回転軸に対して遠位側の端部に傾斜面が設けられているため、棚の支持面に載置された載置対象物が回転部の遠心力で径方向外方に飛び出すのを防止することができる。また、傾斜面は、径方向外方に向かって上方に傾斜しているため、棚への載置対象物の出し入れを容易に行うことができる。
【0012】
また、本発明に係る移送システムは、前記載置対象物を前記棚に移送する移送システムであって、前記棚が前記傾斜面を有する回転式ストッカと、ロボットアームと、前記ロボットアームの先端に設けられた、前記載置対象物を保持可能なエンドエフェクタと、前記ロボットアーム及び前記エンドエフェクタを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記エンドエフェクタにより保持された前記載置対象物が、前記傾斜面に接触するよう前記ロボットアームを制御し、前記載置対象物が前記傾斜面に接触したときに、前記載置対象物の保持を解除するよう前記エンドエフェクタを制御する。この構成によれば、載置対象物が傾斜面に接触したときに、エンドエフェクタによる載置対象物の保持が解除されるため、載置対象物は傾斜面に沿って支持面へ滑り落ち、支持面の所定位置に載置される。このため、載置対象物を棚に移送する際の回転軸の径方向における載置対象物の位置決めを、棚の傾斜面を利用して行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、製造コストを抑えることができる回転式ストッカ及びそれを備える移送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る回転式ストッカを備える移送システムの概略側面図である。
図2図1に示すエンドエフェクタの斜視図である。
図3図1に示す回転式ストッカの棚に載置される容器の斜視図である。
図4図1に示す回転式ストッカの概略側面図である。
図5図1に示す回転式ストッカの概略平面図である。
図6】(A)は、回転式ストッカの棚を拡大する概略平面図であり、(B)は、(A)のVIB-VIB矢視側面断面図である。
図7】(A)~(C)は、エンドエフェクタにより棚に容器が載置される様子を時系列順に示す、回転式ストッカの一部拡大側面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る回転式ストッカの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る回転式ストッカとそれを備える移送システムについて、添付図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る回転式ストッカ20Aを備える移送システム1の概略側面図である。
【0016】
移送システム1は、容器2を移送するロボットアーム10と、回転式ストッカ20Aと、ロボットアーム10及び回転式ストッカ20Aを制御する制御装置40と、容器設置用台50とを備える。回転式ストッカ20Aは、複数の容器2を収容できるように構成されている。移送システム1は、ロボットアーム10により回転式ストッカ20Aに収容された容器2の1つを容器設置用台50上に移送したり、容器設置用台50上の容器2を回転式ストッカ20Aに収容したりするシステムである。
【0017】
本実施形態において、ロボットアーム10は、図1に示すように、5つの関節により複数のリンク11a~11eが順次連結されて構成された5軸の垂直多関節型のロボットアームである。なお、ロボットアーム10は、垂直多関節型のロボットアームでなくてもよく、例えば水平多関節型のロボットアームでもよい。また、ロボットアーム10の軸数は5軸でなくてもよく、4軸以下又は6軸以上であってもよい。
【0018】
ロボットアーム10の各関節には、それが連結する2つの部材を相対的に回転させる駆動モータ(図示せず)が設けられている。駆動モータは、例えば、制御装置40によってサーボ制御されるサーボモータである。また、ロボットアーム10の各関節には、駆動モータの回転位置を検出するための回転センサ(図示せず)と、駆動モータの回転を制御する電流を検出するための電流センサ(図示せず)とが設けられている。回転センサは、例えばエンコーダである。
【0019】
ロボットアーム10の先端には、エンドエフェクタ12が設けられている。図2に、エンドエフェクタ12の斜視図を示す。本実施形態では、エンドエフェクタ12は、容器2を保持可能に構成される。具体的には、エンドエフェクタ12は、互いに対向する一対のフィンガー部13を備えている。一対のフィンガー部13は、制御装置40に制御され、互いに近接したり離間したりする方向に移動する。フィンガー部13の間に容器2が位置した状態で、フィンガー部13同士が近接する方向に移動することにより、フィンガー部13によって容器2を挟み込み、容器2を保持する。
【0020】
なお、本実施形態では、エンドエフェクタ12は、フィンガー部13によって容器2を挟み込むことにより容器2を保持したが、エンドエフェクタ12による容器2の保持態様は、これに限られない。例えばエンドエフェクタ12が一対のフックを備え、容器2には、当該一対のフックのそれぞれと係合可能な一対の係合部を設けてもよく、エンドエフェクタ12の一対のフックが容器2の一対の係合部に係合することにより、エンドエフェクタ12は容器2を保持してもよい。
【0021】
図3に、容器2についての斜視図を示す。本実施形態では、容器2は、主に生化学的分析や臨床検査等でマイクロプレートとして使用されるものである。容器2は、透明な樹脂によって形成され、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等によって形成されている。容器2には、液体を収容可能な穴としてのウェル3が複数形成されている。本実施形態では、長辺に12個、短辺に8個並べられ、計96個のウェル3が形成されている。容器2には、その上部を覆う蓋が設けられていてもよい。
【0022】
図4及び図5は、それぞれ回転式ストッカ20Aの概略側面図及び概略平面図である。回転式ストッカ20Aは、複数の段(本例では10段)を有しており、各段には、容器2(載置対象物)を載置するための棚21が複数配置される。
【0023】
具体的には、回転式ストッカ20Aは、基台22と、鉛直方向に延びる回転軸Cを中心に当該基台22に対して回転可能に接続された回転部23を有する。基台22は、その上に回転部23を支持する支持板24を有する。支持板24は基台22の上部に配置され、水平に拡がる。支持板24の中央には、円形の開口24aが形成されている。基台22における開口24aの周囲に、当該基台22と回転部23を回転可能に接続する環状のクロスローラーリング25が設けられている。回転部23は、クロスローラーリング25を介して基台22に回転可能に支持される。
【0024】
回転部23は、上下方向に対向する上面板26と下面板27とを有する。上面板26と下面板27は、同形同大であり、図5に示すように正八角形状である。また、回転部23は、上面板26と下面板27の間に8つの側面板28を有する。8つの側面板28は、それぞれ、上下方向に延び、正八角形である上面板26及び下面板27の各辺を接続する。
【0025】
基台22における支持板24より下方には、回転部23を回転させる回転駆動装置29が配置されている。回転駆動装置29は、例えばステッピングモータである。回転駆動装置29は基台22に固定されている。回転駆動装置29は、支持板24の開口24aを通過するように鉛直上向きに延びるシャフト31を有する。当該シャフト31に回転部23が連結されており、回転駆動装置29がシャフト31を回転させることにより、回転部23が回転する。回転駆動装置29は、制御装置40により制御される。
【0026】
上述した複数の棚21は、8つの側面板28に固定されている。棚21は、側面板28から回転軸Cの径方向外方に延びる板状部材である。回転式ストッカ20Aは、各段に、側面板28と同じ数の8つの棚21を有する。各段の8つの棚21は、回転軸Cを中心に周方向に並ぶように配置される。即ち、本実施形態では、回転式ストッカ20Aは、10個の段を有するため、計80個の棚21を有する。なお、図4と前述の図1において、理解を容易にするために、一部の側面板28に固定された棚21や後述のガイド部38については図示を省略している。
【0027】
また、基台22の支持板24には、上方に延びる柱状の延設部32が固定されている。延設部32は、上下方向に延びる板状部材である。延設部32は、複数の棚21より回転軸Cの径方向外方に位置する。延設部32は、支持板24から回転部23の上端部と同程度の高さの位置まで延びている。また、延設部32の上端部には、回転軸Cに向かって延びて、回転部23の上端部に連結する連結部33が固定されている。連結部33の回転軸C側の端部には、例えばフランジベアリングなどが設けられており、回転部23の上端部に回転可能に連結している。
【0028】
また、延設部32には、複数のセンサ35が設けられている。本実施形態では、複数のセンサ35のそれぞれが、回転式ストッカ20Aの各段に対応して設けられている。具体的には、延設部32には、回転式ストッカ20Aの段の数と同じ数(本例では、10個)のセンサ35が、上下方向に並ぶように設けられている。
【0029】
センサ35は、当該センサ35に対応する段の棚21、より詳細には当該センサ35と同程度の高さに位置する棚21に、載置対象物としての容器2が載置されているか否かを検知する。即ち、回転部23が回転軸Cを中心に回転することにより、センサ35に対応する段の8個の棚21のうちの1個の棚21が、当該センサ35と回転軸Cとの間に位置付けられて、当該センサ35と回転軸Cの径方向に対向する。
【0030】
センサ35は、当該センサ35と回転軸Cとの間に位置付けられた棚21に、載置対象物としての容器2が載置されているか否かを検知する。例えばセンサ35は、回転軸C側に光を発射して、棚21に容器2が載置されている場合には発射した光がその容器2に当たるように配置された光電センサである。
【0031】
図6(A)は、回転式ストッカ20Aの棚21を拡大する平面図であり、図6(B)は、図6(A)のVIB-VIB矢視側面断面図である。なお、図6(A)及び図6(B)において、回転軸Cに対して遠位側及び近位側を、それぞれ「手前側」及び「奥側」と呼び、棚21を前側から見たときの棚21の左方及び右方を、それぞれ「左側」及び「右側」と呼ぶこととする。
【0032】
棚21は、概ね水平に延びる板状部材であり、載置対象物としての容器2を下方から支持する水平な支持面36を有する。支持面36は、略方形状であり、支持面36の中央には、棚21の軽量化のため、略方形状の切り欠き部36aが設けられている。また、棚21の左右方向における当該切り欠き部36aの両端には、それぞれ奥行き方向に沿って補強部36bが設けられている。補強部36bは、棚21の手前側下方への垂れ下がりを抑制する。本実施形態では、補強部36bは、支持面36を構成する部材における切り欠き部36aの左右方向両側端縁を、下方へと折り曲げることにより形成されている。
【0033】
支持面36の手前側端部36cには、一対の傾斜面37が続いている。一対の傾斜面37は、左右方向に互いに離間している。一対の傾斜面37は、回転軸Cの径方向外方に向かって上方に傾斜する。この傾斜面37は、棚21の支持面36に載置された容器2が回転部23の遠心力で径方向外方に飛び出すのを防止する。また、傾斜面37は、径方向外方に向かって上方に傾斜しているため、棚21への容器2の出し入れを容易に行うことができる。
【0034】
側面板28には、棚21の奥行き方向に容器2をガイドする一対のガイド部38が設けられている。一対のガイド部38は、棚21の左右方向に離間して設けられており、側面板28から回転軸Cの径方向外方へと延びる。一対のガイド部38の奥側部分の間隔は、一定であり、容器2が嵌り込む長さである。一対のガイド部38の手前側部分の間隔は、側面板28から離れるにつれて広がっている。回転式ストッカ20Aに容器2を収容する際に、容器2が棚21に対して左右方向に位置ずれしていた場合でも、容器2がガイド部38に案内されるため、棚21に対する容器2の左右方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0035】
図1に戻って、制御装置40は、ロボットアーム10、エンドエフェクタ12、及び回転式ストッカ20Aの動作を制御する。制御装置40は、例えば、マイクロコントローラ、PLC(Programmable Logic Controller)、論理回路等からなる演算部(図示せず)と、ROMやRAM等からなる記憶部(図示せず)を有する。記憶部には、基本プログラム、各種固定データ等の情報が記憶されている。演算部は、記憶部に記憶された基本プログラム等のソフトウェアを読み出して実行することにより、ロボットアーム10、エンドエフェクタ12、及び回転式ストッカ20Aの各種動作を制御する。
【0036】
なお、制御装置40は、集中制御する単独の制御装置40によって構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御する複数の制御装置40によって構成されていてもよい。例えば、ロボットアーム10及びエンドエフェクタ12を制御する制御ユニットと回転式ストッカ20Aを制御する制御ユニットは別々であってもよい。
【0037】
制御装置40には、回転式ストッカ20Aの各センサ35から、棚21上の容器2の有無を示す検知情報が送られる。当該検知情報は、制御装置40の記憶部に記憶される。また、制御装置40の記憶部には、回転部23の回転位置を示す回転位置情報が記憶される。本実施形態では、回転駆動装置29に図略のエンコーダ等の回転センサが設けられており、当該回転センサが検知した回転位置情報が制御装置40に送られる。但し、制御装置40による回転位置情報の取得方法は、特に限定されない。例えば、制御装置40は、回転駆動装置29を駆動させるための電流値から回転位置を算出することにより、回転部23の回転位置を示す回転位置情報を取得してもよい。
【0038】
次に、本実施形態における移送システム1の動作の流れの一例として、容器設置用台50上の容器2を回転式ストッカ20Aの棚21に載置する際の動作の流れを説明する。なお、ロボットアーム10、エンドエフェクタ12、及び回転式ストッカ20Aの動作は制御装置40により制御される。
【0039】
まず、移送システム1では、回転式ストッカ20Aの棚21への容器2の移送を行う前に、制御装置40は、センサ35からの検知情報と回転部23の回転位置情報とに基づき、回転式ストッカ20Aのどの棚21が空いているかの判別を行う。
【0040】
具体的には、回転駆動装置29は、各段において回転軸Cを中心に周方向に並ぶ複数の棚21のうちの1つの棚21が、回転軸Cとセンサ35との間に位置するように回転部23を回転させる。そして、各段のセンサ35が、回転軸Cと当該センサ35との間の棚21に容器2が載置されているか否かを検知する。こうして、制御装置40の記憶部には、回転部23の回転位置情報とセンサ35からの検知情報とがセットで記憶される。次に、回転駆動装置29は、容器2が載置されているか否かが確認された棚21に対し周方向に隣接する次の棚21が、センサ35に対向するように回転部23を回転させる。その後、センサ35は、センサ35に対向する棚21に容器2が載置されているか否かを検知する。制御装置40の記憶部には、回転部23の回転位置情報とセンサ35からの検知情報とがセットで記憶される。このように、回転部23に固定された複数の棚21を、センサ35と回転軸Cとの間に順次位置づけて、各センサ35からの検知情報と回転部23の回転位置情報が記憶される。このため、制御装置40は、回転式ストッカ20Aのどの棚21が空いているかの判別が可能となる。
【0041】
制御装置40は、空いている棚21の中から、容器設置用台50上の容器2を載置する棚21を決定する。但し、制御装置40を操作する操作者により、容器2を載置する棚21の決定が行われてもよい。こうして、容器2を載置する棚21が決まると、制御装置40は、容器設置用台50上の容器2を保持(把持)するようエンドエフェクタ12を動作させ、容器2を棚21の上方に移動させるようロボットアーム10を動作させる。
【0042】
図7(A)~図7(C)は、エンドエフェクタ12により棚21に容器2が載置される様子を時系列順に示す、回転式ストッカの一部拡大側面図である。図7(A)に示すように、ロボットアーム10は、エンドエフェクタ12により保持された容器2を、棚21の真上に移動させる。
【0043】
その後、ロボットアーム10は、容器2下面の一端縁2aが棚21の所定位置に位置決めされるように、容器2を棚21に載置する。具体的には、ロボットアーム10は、図7(B)に示すように、エンドエフェクタ12により保持された容器2の一端縁2aが傾斜面37に接触するように容器2を移動させる。容器2の端縁2aが傾斜面37に接触したときに、制御装置40は、容器2の保持を解除するようエンドエフェクタ12を制御する。
【0044】
これにより、容器2は、図7(B)に矢印で示すように、傾斜面37に沿って支持面36へ滑り落ちる。その結果、容器2は、図7(C)に示すように、その端縁2aが支持面36と傾斜面37の境界部分(即ち、支持面36の手前側端部36c)に一致するように、支持面36の所定位置に載置される。このため、容器2を棚21に移送する際に、回転軸Cの径方向における容器2の位置決めを、棚21の傾斜面37を利用して行うことができる。
【0045】
以上に説明したように、本実施形態に係る回転式ストッカ20A及びそれを備える移送システム1では、回転部23が回転軸Cを中心に回転することで、回転部23に固定された複数の棚21を、センサ35と回転軸Cとの間に順次位置づけることができる。このため、1つのセンサ35を用いて、各段に配置された複数の棚21について容器2が載置されているか否かを判別することができる。従って、棚21ごとにセンサを設置する場合に比べて、回転式ストッカ20Aの製造コストを抑えることができる。
【0046】
また、本実施形態では、延設部32から回転軸Cに向かって延びる連結部33によって、回転部23の上端部が保持される。このため、基台22に対して回転部23の回転軸Cを安定させることができる。また、延設部32は、複数の棚21より回転軸Cの径方向外方に位置するため、センサ35を設けるのに都合がよい。
【0047】
また、本実施形態では、複数段の回転式ストッカ20Aの各段に対応してセンサ35が設けられているため、回転部23を一周回転することにより、複数の段の棚21に容器2が載置されているか否かを短時間で判別することができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る回転式ストッカ20Bを、図8を参照して説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0049】
図8は、第2実施形態に係る回転式ストッカ20Bの概略側面図である。本実施形態では、延設部32に複数のセンサ35が設けられておらず、1つのセンサ35が設けられている点で、第1実施形態と異なる。
【0050】
具体的には、回転式ストッカ20Bでは、延設部32に、当該延設部32に沿って昇降可能に昇降部51が支持されている。昇降部51は、昇降駆動装置52により昇降される。昇降駆動装置52は、例えば電動アクチュエータ又は空圧アクチュエータなどである。昇降駆動装置52は、制御装置40により制御される。
【0051】
センサ35は、昇降部51に固定されている。昇降部51は、最下段の棚21の高さから最上段の棚21の高さまで昇降可能である。
【0052】
制御装置40は、センサ35からの検知情報と回転部23の回転位置情報とともに、センサ35がどの段の棚の高さに位置するか示す高さ情報をセットで記憶する。制御装置40は、これら検知情報、回転位置情報及び高さ情報に基づき、回転式ストッカ20Aのどの棚21が空いているかの判別を行う。
【0053】
具体的には、昇降部51が最下段の棚(第1棚)21の高さに位置すると、センサ35は、最下段の棚(第1棚)21の1つと径方向に対向可能となる。そして、回転駆動装置29が回転部23を回転させて、回転軸Cとセンサ35との間に最下段の棚21を順次位置づけて、センサ35が、容器2が載置されているか否かを検知する。こうして、制御装置40の記憶部には、回転部23の回転位置情報とセンサ35からの検知情報とともに、センサ35の高さ情報がセットで記憶される。その後、昇降駆動装置52により昇降部51が最下段の棚(第1棚)21の1つ上の段の棚(第2棚)21の高さまで移動し、同様に、回転部23の回転とセンサ35による検知が繰り返される。こうして、制御装置40には、全ての棚21について、位置を特定する情報(回転位置情報及び高さ情報)と載置対象物の有無についての情報(検知情報)が記憶される。このため、制御装置40は、回転式ストッカ20Bのどの棚21が空いているかの判別が可能となる。
【0054】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態では、昇降駆動装置52により、複数段の回転式ストッカ20Bの各段の棚21に対向する位置にセンサ35を移動させることができる。1つのセンサ35によって、回転式ストッカ20Bが有する全ての棚21に関して、載置対象物が載置されているか否かを判別することができる。
【0055】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0056】
例えば上記実施形態では、棚21への載置対象物である容器2が、マイクロプレートであったが、載置対象物はこれに限らず、例えばチップラックなどであってもよい。また、上記実施形態では、回転式ストッカ20A,20Bの段数が10段であり、1段あたりの棚21の数が8個であったが、本発明の回転式ストッカの段数や棚の数はこれに限定されない。例えば、本発明の回転式ストッカの段数は1段であってもよい。また、本発明の回転式ストッカの各段の棚21の数は、2つ以上の数であればよい。
【0057】
また、回転式ストッカ20A,20Bの棚21も上記実施形態に説明されたものに限定されず、例えば棚21は、傾斜面37を有していなくてもよいし、切り欠き部36aも形成されていなくてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、センサ35が設けられる延設部32が柱状であったが、延設部32は、板状であってもよいし、あるいは回転式ストッカが回転部23の上方及び側方を覆うカバー部を有する場合、延設部32は当該カバー部の一部であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 :移送システム
2 :容器(載置対象物)
10 :ロボットアーム
12 :エンドエフェクタ
20A,20B :回転式ストッカ
21 :棚
22 :基台
23 :回転部
29 :回転駆動装置
32 :延設部
33 :連結部
35 :センサ
36 :支持面
37 :傾斜面
51 :昇降部
52 :昇降駆動装置
C :回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8