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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】スプール弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/24 20060101AFI20220309BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
F16K3/24 D
F16K31/04 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018003734
(22)【出願日】2018-01-12
(65)【公開番号】P2019124252
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 慎治
(72)【発明者】
【氏名】田中 英紀
(72)【発明者】
【氏名】穴田 忠
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特許第5666174(JP,B2)
【文献】特開2014-173711(JP,A)
【文献】特表平08-510034(JP,A)
【文献】登録実用新案第3195271(JP,U)
【文献】国際公開第2010/128952(WO,A2)
【文献】登録実用新案第3193049(JP,U)
【文献】特開2011-190920(JP,A)
【文献】特開2017-040294(JP,A)
【文献】特開2016-033400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
F16K 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプール孔が形成されているハウジングと、
前記ハウジングのスプール孔に軸線方向に移動可能に挿通されているスプールと、
前記スプールと同軸に配置されたねじ軸と、
前記ねじ軸を回転する電動モータと、
前記ねじ軸に螺合し、前記ねじ軸が回転することにより前記軸線方向に移動するナットと、
前記ナットが嵌合される筒状部を有し、前記ナットと前記スプールとを連結する連結部材と、
前記スプールを中立位置に維持するための付勢力を前記スプールに与えるコイルばねであって、前記ねじ軸の径方向から見て前記ナットに重なるように前記筒状部の周りに配置されるコイルばねと、
前記連結部材の外周面と前記径方向に対向する内周面を有し、前記コイルばね及び前記ナットを収容するケーシングと、を備え、
前記コイルばねより前記スプール側における前記ケーシングの前記内周面には、前記径方向内方に向かって突き出た突起部が設けられており、
前記連結部材の前記外周面には、前記突起部が嵌まり込む案内溝であって、前記軸線方向に延びており、前記連結部材が前記軸線方向に移動する際に前記軸線方向に前記突起部を案内する案内溝が形成されている、スプール弁。
【請求項2】
前記連結部材は、前記ケーシングから突出し、前記スプールと接続される突出部を有する、請求項1に記載のスプール弁。
【請求項3】
前記ケーシングは、複数のケーシング片を含み、
前記ケーシングは、前記複数のケーシング片が互いに接合されて一体化されることによって、その内方に前記コイルばねを保持するように構成される、請求項2に記載のスプール弁。
【請求項4】
前記コイルばねは、第1スプリング及び第2スプリングを含み、
前記第1スプリングは、前記スプールが前記中立位置から前記軸線方向一方側に移動する場合に圧縮し、前記第2スプリングは、前記スプールが前記中立位置から前記軸線方向他方側に移動する場合に圧縮する、請求項1~3のいずれか1項に記載のスプール弁。
【請求項5】
前記コイルばねは、前記スプールが前記中立位置から前記軸線方向一方側及び他方側のいずれに移動する場合にも圧縮する、請求項1~3のいずれか1項に記載のスプール弁。
【請求項6】
前記連結部材は、有底筒状に形成されており、
前記連結部材は、
前記筒状部と、
前記筒状部の外径と同じ外径を有し、且つ、前記筒状部の前記軸線方向一方側を閉塞する柱状部と、を有している、請求項1~5のいずれか1項に記載のスプール弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータによってスプールを移動させるスプール弁に関する。
【背景技術】
【0002】
液圧回路に用いられる制御弁の1つとしてスプール弁が知られており、スプール弁は、スプールの位置に応じて作動油の流れる方向や作動油の流量を制御することができるようになっている。また、スプール弁には、パイロット圧をスプールに与えて位置を変えるパイロット駆動方式のものと、直動電動アクチュエータによってスプールの位置を変えるアクチュエータ駆動方式のものとが知られている。後者のアクチュエータ駆動方式のスプール弁としては、例えば特許文献1の多連方向切換弁が知られている。
【0003】
特許文献1の多連方向切換弁では、電動モータの出力軸がボールねじ減速機を介してスプールと連結されている。ボールねじ減速機は、電動モータの出力軸に取り付けられたねじ軸と、当該ねじ軸にボールを介して螺合するナットを備えており、ナットに固定された動力伝達部材に回転止めの処置を施すことでナットの回転を防止することにより、ねじ軸の回転運動をナットの直動運動に変換する。ナットは動力伝達部材を介してスプールに連結されており、電動モータの出力軸を回転させることで、スプールがその軸線方向に移動し、スプールの位置が変わるようになっている。また、この多連方向切換弁には、例えば電動モータの電力系統が遮断されたときなどにスプールを中立位置へと戻すための中立復帰機構が備わっている。中立復帰機構は、ボールねじ減速機のナットとスプールの間に配置されたコイルばねを有しており、スプールが中立位置から移動するとコイルばねによってスプールを中立位置に戻すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5666174号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の多連方向切換弁では、スプール、コイルバネ、及びボールねじ減速機のナットが、スプールの軸線方向に並んで配置されるため、スプール弁の全長が長くなる。
【0006】
そこで本発明は、軸線方向の長さを短くすることができるスプール弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るスプール弁は、スプール孔が形成されているハウジングと、前記ハウジングのスプール孔に軸線方向に移動可能に挿通されているスプールと、前記スプールと同軸に配置されたねじ軸と、前記ねじ軸を回転する電動モータと、前記ねじ軸に螺合し、前記ねじ軸が回転することにより前記軸線方向に移動するナットと、前記ナットと前記スプールとを連結する連結部材と、前記スプールを中立位置に維持するための付勢力を前記スプールに与えるコイルばねであって、前記ねじ軸の径方向から見て前記ナットに重なるように配置されるコイルばね、を備える。
【0008】
上記の構成によれば、コイルばねは、ねじ軸の径方向から見てナットに重なるように配置されるため、コイルばねとナットが軸線方向に並ぶ従来のスプール弁に比べて、スプール弁の軸線方向の長さを短くすることができる。
【0009】
上記のスプール弁は、前記コイルばね及び前記ナットを収容するケーシングを備え、前記連結部材は、前記ケーシングから突出し、前記スプールと接続される突出部を有してもよい。この構成によれば、コイルばね及びナットを収容するケーシングと電動モータとをアセンブリとしてから、連結部材にスプールを取り付けることができる。
【0010】
上記のスプール弁において、前記ケーシングは、一体化されており、その内方に前記コイルばねを保持するように構成されてもよい。この構成によれば、ケーシングが、一体化されており、コイルばねを保持するように構成されているため、例えばスプールを新たなスプールに交換する際などスプール弁の組み立てが容易になる。
【0011】
上記のスプール弁において、前記コイルばねは、第1スプリング及び第2スプリングを含み、前記第1スプリングは、前記スプールが前記中立位置から前記軸線方向一方側に移動する場合に圧縮し、前記第2スプリングは、前記スプールが前記中立位置から前記軸線方向他方側に移動する場合に圧縮してもよい。この構成によれば、スプールが中立位置から移動する場合に、第1スプリング及び第2スプリングのどちらかが圧縮するため、各スプリングの耐久性を向上することができる。
【0012】
あるいは、上記のスプール弁において、前記コイルばねは、前記スプールが前記中立位置から前記軸線方向一方側及び他方側のいずれに移動する場合にも圧縮してもよい。この構成によれば、コイルばねが上述の第1スプリング及び第2スプリングを備える場合よりも、スプール弁の軸線方向の長さを短くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軸線方向の長さを短くすることができるスプール弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るスプール弁を示す断面図である。
図2図1に示すスプール弁の中立復帰機構を拡大した断面図であり、(A)は、スプールが軸線方向一方側に移動したときの状態を示す図であり、(B)は、スプールが軸線方向他方側に移動したときの状態を示す図である。
図3】変形例に係るスプール弁を示す断面図である。
図4図3に示すスプール弁の中立復帰機構を拡大した断面図であり、(A)は、スプールが軸線方向一方側に移動したときの状態を示す図であり、(B)は、スプールが軸線方向他方側に移動したときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係るスプール弁1Aについて図1及び図2を参照して説明する。
【0016】
建設機械等を含む産業機械は、アクチュエータに作動油を供給すべく油圧供給装置を備えている。アクチュエータは、供給される流量に応じた速度で駆動するようになっており、油圧供給装置は、アクチュエータに供給される作動油の流量を制御すべく、図1に示すようなスプール弁1Aを有している。スプール弁1Aは、直動電動式のスプール弁であり、ハウジング11と、スプール12と、直動変換ユニット13と、電動モータ14とを備えている。スプール12は、大略円柱状に形成されており、その軸線方向に延在している。
【0017】
以下では、説明の便宜上、スプール12から電動モータ14に向かう方向であるスプール12の軸線方向一方(即ち、図1の右方)を「右方」と称し、電動モータ14からスプール12に向かう方向であるスプール12の左方(即ち、図1の左方)を「左方」と称する。また、単に「軸線方向」という場合、スプール12の軸線方向(即ち、図1の左右方向)を表すものとする。また、後述する変形例に係るスプール弁1Bの説明においても、同様とする。
【0018】
ハウジング11は、例えばバルブブロックであり、スプール孔11aと複数の油通路(本実施形態では、3つの油通路)11b~11dとが形成されている。スプール孔11aは、ハウジングを貫通するように所定方向に延在しており、3つの油通路11b~11dは、異なる位置にてスプール孔11aに夫々接続されている。また、3つの油通路11b~11dは、図示しない油圧ポンプやアクチュエータ等に繋がっており、3つの油通路11b~11dに作動油が流れるようになっている。このように構成されているハウジング11のスプール孔11aには、スプール12が挿通されている。
【0019】
スプール12は、スプール本体部12aと、当該スプール本体部12aの一端部から突き出た平板部12bとを有している。スプール本体部12aは、大略円柱状に形成されており、その軸線方向に延在する。スプール本体部12aの外径は、スプール孔11aの孔径と略一致している。また、スプール本体部12aの外周面には、複数の周溝(本実施形態では、2つの周溝12c,12d)が形成されている。各周溝12c,12dは、スプール本体部12aの外周面において周方向全周にわたって延びている。また、各周溝12c,12dは、スプール12がスプール孔11aに挿通されている状態で、3つの油通路11b~11dに応じて配置されている。
【0020】
例えば、図1のようにスプール12が中立位置にある場合において、2つの周溝12c,12dは、軸線方向に互いに離間した位置に形成された第1及び第3油通路11b,11dに夫々接続されている。他方、スプール12が右方に移動すると左方側に位置する第1周溝12cが第1油通路11bと第2油通路11cとを接続し、スプール12が左方に移動すると右方側に位置する第2周溝12dが第3油通路11dと第2油通路11cとを接続するようになっている。
【0021】
このようにスプール12は、位置を変えることによって3つの油通路11b~11dの接続状態を切換え、また接続される油通路11b~11dの間の開度を調整することができる。即ち、スプール12は、その位置に応じた流量及び方向に作動油の流すことができるようになっている。
【0022】
平板部12bは、大略平板状に形成されており、スプール本体部12aの右端部から右方に向かって突き出ている。平板部12bは、後述する連結部材40と接続可能に形成されている。具体的には、平板部12bの中央付近には、嵌合孔12eが形成されている。嵌合孔12eは、平板部12bをその厚み方向(図1の紙面における上下方向)に貫通しており、嵌合孔12eに大略球状のボール44が嵌まり込んでいる。スプール12は、当該ボール44を介して連結部材40に接続される。平板部12bにおける連結部材40との接続について、詳細は後述する。
【0023】
ハウジング11及びスプール12の右方側に、直動変換ユニット13が配置され、更に直動変換ユニット13の右方側に電動モータ14が配置されている。直動変換ユニット13は、ケーシング20と、直動変換機構30と、連結部材40と、中立復帰機構50とを有する。
【0024】
ケーシング20は、大略円筒状になっており、その右方側端部と左方側端部に、夫々開口部を有している。ケーシング20は、スプール12の軸線方向に垂直な断面で当該軸線方向に分割してなる第1ケーシング片21と第2ケーシング片22を含む。
【0025】
第1ケーシング片21と第2ケーシング片22は、スプール12に近い側からこの順に、スプール12の軸線方向に並んで互いに連結されている。第1ケーシング片21は、大略円筒状であり、スプール12に近い側から順に、スプール孔11aと同程度の径の内周面20aと、当該内周面20aより径が大きい内周面20bとを有する(「内周面」及び後述の「段部」については、図2(A)及び図2(B)も参照。)。また、第2ケーシング片22は、大略円筒状であり、スプール12に近い側から順に、第1ケーシング片21の内周面20bに比べて径が大きい内周面20cと、第1ケーシング片21の内周面20bと同じ径の内周面20dと、スプール孔11aより径が小さい内周面20eとを有する。また、第1ケーシング片21における内周面20aと内周面20bの間には、段部20fが形成されている。また、第2ケーシング片22における内周面20cと内周面20dの間には、段部20gが形成されており、内周面20dと内周面20eの間には、段部20hが形成されている。
【0026】
ケーシング20は、これら第1ケーシング片21の右方側の開口端部と第2ケーシング片22の左方側の開口端部を互いに突き合わせて、例えば機械的締結、溶接、接着等により接合することによって一体化されている。即ち、直動変換ユニット13は、ケーシング20がその内方に直動変換機構30及び中立復帰機構50が夫々有する構成要素が保持されるように一体化されることで、1つのユニットとして構成されている。なお、第1ケーシング片21と第2ケーシング片22とが接合されることで、ケーシング20における第1ケーシング片21の内周面20bと第2ケーシング片22の内周面20cの間には、段部20iが形成されている。
【0027】
ケーシング20は、その内周面20a~20eの中心軸とハウジング11のスプール孔11aの中心軸が合うように、その左方側の端面をハウジング11の右方側の端面に当接させ、その状態でハウジング11に締結されている。ケーシング20の右方側端面に、電動モータ14が取付けられている。
【0028】
電動モータ14は、いわゆるサーボモータであり、ステータ部14aと、ロータ部(出力軸を含む)14bとを有している。ステータ部14aは、図示しない制御装置が接続されており、その制御装置から印加される電圧に応じてロータ部14bが回転するようになっている。また、ロータ部14bは、スプール12と同軸に配置されており、ステータ部14aからケーシング20内に向かってケーシング20の右方側端部開口部を挿通するように、軸線方向に突出している。ロータ部14bの先端(即ち、図1のロータ部14bの左端)に、直動変換機構30が設けられている。
【0029】
直動変換機構30は、電動モータ14のロータ部14bの回転運動を直線運動に変換する機構である。本実施形態において、直動変換機構30は、ボールねじ機構であり、ねじ軸31とナット32とを有している。ねじ軸31は、軸線方向に延在する棒状の部材であり、その外周面に雄ねじが形成されている。ねじ軸31は、スプール12と同軸に配置される。また、ねじ軸31は、ロータ部14bに取り付けられており、ロータ部14bと一体的に軸線周りに回転する。ねじ軸31には、図略の多数のボールを介してナット32が螺合している。ナット32は、連結部材40に固定されている。この連結部材40は、後述するように連結部材40の案内溝46にケーシング20の突起部23が嵌り込むことで、ケーシング20に対してスプール12の軸線周りに回転するのが防止される。即ち、連結部材40に固定されたナット32も、ケーシング20に対してスプール12の軸線周りに回転するのが防止される。このため、ねじ軸31を回転させると、ナット32は、ねじ軸31の軸線周りに回転せずに、ねじ軸31に沿って左右に移動する。
【0030】
連結部材40は、ナット32とスプール12とを連結する部材である。連結部材40は、大略有底筒状に形成されており、その軸線方向に延在する。連結部材40の外径は、ケーシング20の内周面20a及びスプール孔11aの径と略一致している。連結部材40は、その右方側部分を構成する筒状部41と、その左方側部分を構成する柱状部42とを有する。筒状部41は、その右方側に開口し、当該筒状部41の左側は、柱状部42により閉塞される。筒状部41は、その中心軸がスプール12の軸線に一致するように配置されている。筒状部41の開口部に、右方側からねじ軸31が挿通されており、筒状部41の内周面41aに、当該ねじ軸31に螺合するナット32が嵌合されて接着されている。このように構成される連結部材40は、ナット32と共に左右に移動できるようになっている。筒状部41を左端側から閉塞する面(即ち、柱状部42の右方側端面)42aとねじ軸31の左端部とは、ねじ軸31に対してナット32が右方側に移動したときに互いに接触しないように、所定の間隔をあけて配置されている。
【0031】
また、連結部材40は、少なくともスプール12が中立位置にある場合においてケーシング20から左方側に突出している突出部43を有する。本実施形態では、突出部43は、連結部材における柱状部42の一部であるが、柱状部42全体と筒状部の一部を含んでもよい。突出部43は、ハウジング11のスプール孔11aに挿通される。また、突出部43は、スプール12と接続可能に形成されている。本実施形態では、連結部材40の突出部43とスプール12の平板部12bとが、ナット32に対するスプール12の芯ずれを許容すべく、ナット32に対してスプール12が軸線方向に直交する全方向に傾倒かつスライドできるように接続されている。更に詳細に説明すると、連結部材40の突出部43は、平板部12bの嵌合孔12eに嵌まり込んだボール44を介して平板部12bに接続されている。即ち、連結部材40の突出部43、スプール12の平板部12b及びボール44は、ボールジョイントを構成している。
【0032】
連結部材40の突出部43の先端には、大略平板状である平板部12bが挿入される挿入溝45が形成されている。挿入溝45は、右方側に延在し且つ軸線方向に直交する直交方向(図1の紙面に直交する方向)に貫通するように形成されている。即ち、突出部43は、直交方向に垂直な断面で切断すると大略U字状に形成されている。
【0033】
挿入溝45は、嵌合孔12eに対応する箇所をボール44の形状に合わせて挿入溝45の幅方向外側に湾曲させて形成されており、その部分にボール44を嵌められるようになっている。即ち、挿入溝45には、嵌合孔12eにボール44を嵌め込んだ状態で平板部12bを挿入することができ、ボール44によって連結部材40の突出部43とスプール12の平板部12bとが係止されている。これにより、ナット32とスプール12とが連結部材40によって連結され、ナット32が軸線方向に移動する際にナット32に連動させてスプール12を左右に移動させることができる。このように、直動変換ユニット13及び電動モータ14は、当該電動モータ14に電力が供給されることによってスプール12を軸線方向に往復運動させる直動式の電動アクチュエータを構成する。
【0034】
本実施形態では、上述のように連結部材40の突出部43とスプール12の平板部12bとがボール44を介して互いに接続するため、スプール12の軸線がロータ部14bの軸線に対して傾倒するような芯ずれが生じている場合、傾倒の状態に合わせて何れの方向にも連結部材40の突出部43に対してスプール12の平板部12bを傾倒させることができる。これにより、ロータ部14bの軸線に対するスプール12の軸線の傾倒を許容することができる。
【0035】
また、ケーシング20の内周面20aには、周方向における所定箇所で径方向内方に向かって突き出た突起部23が設けられている。また、連結部材40の外周面には、当該突起部23に径方向に対向する位置から軸線方向に延びる案内溝46が形成されている。突起部23は、案内溝46に嵌り込んでおり、連結部材40が軸線方向に移動する際に案内溝46に軸線方向に沿って案内される。また、突起部23が案内溝46に嵌まり込むことにより、連結部材40がケーシング20に対してスプール12の軸線周りに回転するのが防止される。
【0036】
中立復帰機構50は、スプール12を中立位置に維持するための付勢力をスプール12に与えて、例えば電動モータ14の電力系統が遮断されたときなどにスプール12を中立位置へと戻す機構である。中立復帰機構50は、コイルばね51と、第1ばね受け部材52と、第2ばね受け部材53と、第1押圧部54と、第2押圧部55と、第1規制部56と、第2規制部57とを有している。第1ばね受け部材52と、第2ばね受け部材53と、コイルばね51とは、連結部材40に外装されている。
【0037】
図2(A)は、スプール12が右方側に移動したときの中立復帰機構50の状態を示す拡大断面図であり、図2(B)は、スプール12が左方側に移動したときの中立復帰機構50の状態を示す拡大断面図であり図である。以下では、中立復帰機構50について、図2(A)及び図2(B)を適宜参照しながら説明する。
【0038】
コイルばね51は、ねじ軸31の径方向から見てナット32に重なるように、連結部材40(より詳しくは、筒状部41)の周りに配置される。そして、第1ばね受け部材52及び第2ばね受け部材53が、当該コイルばね51を軸線方向に挟み込むように配置される。即ち、本実施形態では、連結部材40の筒状部41よりも径方向内方側に直動変換機構30が配置され、連結部材40の筒状部41よりも径方向外方側に中立復帰機構50が配置される。コイルばね51は、いわゆる圧縮コイルばねであり、圧縮された状態で2つのばね受け部材52,53の間に介在されている。
【0039】
第1ばね受け部材52は、図2(A)及び図2(B)に示すように、連結部材40が軸線方向に挿通される挿通孔52aを有する筒状部52bと、当該筒状部52bの左方側に形成されたフランジ部52cを有する。筒状部52bは、コイルばね51の径方向内方にあり、フランジ部52cは、コイルばね51の左側端部を受ける。挿通孔52aに連結部材40が挿通されることで、第1ばね受け部材52は、連結部材40に対して軸線方向に移動(摺動)自在となっている。
【0040】
第1ばね受け部材52は、図1に示すように、スプール12が中立位置にあるとき、ケーシング20内の段部20iに当接する位置である第1位置P1にある。第1ばね受け部材52より左方側には、第1押圧部54が設けられている。第1ばね受け部材52は、左方側から第1押圧部54に押圧されることにより、第1位置P1より右方側に移動する(図2(A)参照)。
【0041】
本実施形態では、第1押圧部54は、連結部材40の外周面から径方向外方に張り出すように設けられている。第1押圧部54は、連結部材40に対して固定された別体であり、連結部材40と一体的に軸線方向に移動する。第1押圧部54は、スプール12が中立位置にあるとき、第1位置P1にある第1ばね受け部材52に対してコイルばね51とは反対側から当接する位置にある。そして、第1押圧部54は、スプール12が中立位置から右方側に移動するとき、スプール12とともに右方側に移動し、第1ばね受け部材52を押圧する(図2(A)参照)。
【0042】
第2ばね受け部材53は、図2(A)及び図2(B)に示すように、連結部材40が軸線方向に挿通される挿通孔53aを有する筒状部53bと、当該筒状部53bの右方側に形成されたフランジ部53cを有する。筒状部53bは、コイルばね51の径方向内方にあり、フランジ部53cは、コイルばね51の右側端部を受ける。挿通孔53aに連結部材40が挿通されることで、第2ばね受け部材53は、連結部材40に対して軸線方向に移動(摺動)自在となっている。
【0043】
第2ばね受け部材53は、図1に示すように、スプール12が中立位置にあるとき、ケーシング20内の段部20gに当接する位置である第2位置P2にある。第2ばね受け部材53より右方側には、第2押圧部55が設けられている。第2ばね受け部材53は、右方側から第2押圧部55に押圧されることにより、第2位置P2より左方側に移動する(図2(B)参照)。
【0044】
本実施形態では、連結部材40(より詳しくは筒状部41)の開口端部が、連結部材40の外周面から径方向外方に張り出すようにフランジ状に形成されており、当該フランジ部分が第2押圧部55を構成する。即ち、第2押圧部55は、連結部材40の一部である。第2押圧部55は、スプール12が中立位置にあるとき、第2位置P2にある第2ばね受け部材53に対してコイルばね51とは反対側から当接する位置にある。そして、第2押圧部55は、スプール12が中立位置から左方側に移動するとき、スプール12とともに左方側に移動し、第2ばね受け部材53を押圧する(図2(B)参照)。
【0045】
また、第1ばね受け部材52は、第1位置P1より左方側への移動を第1規制部56により規制される(図1及び図2(B)参照)。また、第2ばね受け部材53は、第2位置P2より右方側への移動を第2規制部57により規制される(図1及び図2(A)参照)。本実施形態では、第1ばね受け部材52(より詳しくは、フランジ部52c)及び第2ばね受け部材53(より詳しくは、フランジ部53c)の双方の径方向外側端縁が、径方向における内周面20cと当該内周面20cより径が小さい内周面20b,20dの間に位置する。このため、第1ばね受け部材52及び第2ばね受け部材53は、いずれも軸線方向における内周面20cが延在する範囲でのみ移動可能となっている。
【0046】
即ち、内周面20bと内周面20cの間の段部20iが、第1ばね受け部材52の第1位置P1より左方側への移動を規制する第1規制部56として機能し、内周面20cと内周面20dの間の段部20gが、第2ばね受け部材53の第2位置P2より右方側への移動を規制する第2規制部57として機能する。言い換えれば、第1ばね受け部材52が第1位置P1にあるとき、当該第1ばね受け部材52は第1規制部56に当接して支持されており、第2ばね受け部材53が第2位置P2にあるとき、当該第2ばね受け部材53は第2規制部57に当接して支持されている。
【0047】
このように構成される中立復帰機構50では、電動モータ14を駆動させることによりスプール12を中立位置から右方に移動させると、図2(A)に示すように、第1ばね受け部材52は、スプール12と共に移動する第1押圧部54に押圧されて、第1位置P1より右方に移動する。他方、第2ばね受け部材53は、第2規制部57である段部20gにより右方側への移動が規制され、第2位置P2に維持される。これにより、2つのばね受け部材52,53の間が狭まってコイルばね51が圧縮され、コイルばね51は、第1ばね受け部材52及び連結部材40を介してスプール12に対して中立位置に戻す方向の付勢力を与える。即ち、コイルばね51は、電動モータ14を駆動させることによる押付力に抗する左方への付勢力をスプール12に与える。
【0048】
また、電動モータ14を駆動させることによりスプール12を中立位置から左方に移動させると、図2(B)に示すように、第2ばね受け部材53は、スプール12と共に移動する第2押圧部55に押圧されて、第2位置P2より左方に移動する。他方、第1ばね受け部材52は、第1規制部56である段部20iにより左方側への移動が規制され、第1位置P1に維持される。これにより、2つのばね受け部材52,53の間が狭まってコイルばね51が圧縮され、コイルばね51は、第2ばね受け部材52及び連結部材40を介してスプール12に対して中立位置に戻す方向の付勢力を与える。即ち、コイルばね51は、電動モータ14を駆動させることによる押付力に抗する右方への付勢力をスプール12に与える。
【0049】
また、スプール12が中立位置に位置する際には、第1ばね受け部材52が第1規制部56である段部20iに支持され、また第2ばね受け部材53が第2規制部57である段部20gに支持されている。それ故、コイルばね51の付勢力がスプール12に作用しない。従って、電動モータ14からスプール12に与える押圧力をゼロにすることで、スプール12を中立位置に戻すことができる。
【0050】
また、本実施形態の中立復帰機構50は、スプール12のストローク範囲を制限する構成を有している。本実施形態では、第2押圧部55の径方向外側端縁が、径方向における内周面20dと当該内周面20dより径が小さい内周面20eの間に位置する。このため、スプール12が中立位置から右方側に所定距離移動すると、それと共に右方側に移動する第2押圧部55は、内周面20dと内周面20eの間の段部20hに当接して、右方への移動が規制される(図2(A)参照)。また、第1押圧部54の径方向外側端縁が、径方向における内周面20bと当該内周面20bより径が小さい内周面20aの間に位置する。このため、スプール12が中立位置から左方側に所定距離移動すると、それと共に左方側に移動する第1押圧部54は、内周面20aと内周面20bの間の段部20fに当接して、左方への移動が規制される(図2(B)参照)。こうして、スプール12は、左右に所定距離以上移動しないよう制限される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係るスプール弁1Aは、中立復帰機構50のコイルばね51が、ねじ軸31の径方向から見てナット32に重なるように配置されるため、コイルばね51とナット32が軸線方向に並ぶ従来のスプール弁に比べて、スプール弁1Aの軸線方向の長さを短くすることができる。
【0052】
また、本実施形態では、スプール12と接続される連結部材40の突出部43がケーシング20から突出しているため、コイルばね51及びナット32を収容するケーシング20と電動モータ14とをアセンブリとしてから、連結部材40にスプール12を取り付けることができる。
【0053】
また、本実施形態では、ケーシング20は、一体化されており、その内方にコイルばね51を保持するように構成されているため、例えばスプール12を新たなスプールに交換する際などのスプール弁1Aの組み立てが容易になる。
【0054】
[変形例]
上記実施形態では、コイルばね51が1つのスプリングにより構成される例を示したが、本発明のスプール弁が備えるコイルばねは、複数のスプリングを含む構成であってもよい。以下では、コイルばねが複数のスプリングを含む例として、上記実施形態の変形例に係るスプール弁1Bについて、図3及び図4を参照して説明する。なお、変形例に係るスプール弁1Bの構成は、第1実施形態のスプール弁1Aの構成に類似しているため、以下の説明では、第1実施形態のスプール弁1Aと異なる点について主に説明し、同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
図3に示すスプール弁1Bは、第1実施形態のスプール弁1Aが備えた直動変換ユニット13及び電動モータ14を備える代わりに、電動モータ14を含むモータユニット15を備える。即ち、第1実施形態の直動変換ユニット13が電動モータ14を含まないユニットであったのに対し、モータユニット15は、電動モータ14を含むユニットとして構成されている。
【0056】
モータユニット15は、電動モータ14と、ケーシング60と、直動変換機構30と、連結部材40と、中立復帰機構70とを有する。
【0057】
ケーシング60は、大略円筒状になっており、その右方側端部と左方側端部に、夫々開口部を有している。ケーシング60は、スプール12の軸線方向に垂直な断面で当該軸線方向に分割してなる第1ケーシング片61と、第2ケーシング片62と、第3ケーシング片63とを含む。第1ケーシング片61と、第2ケーシング片62と、第3ケーシング片63は、スプール12に近い側からこの順に、スプール12の軸線方向に並んで連結されている。第1ケーシング片61は、大略円筒状であり、スプール孔11aと同じ径の内周面60aが形成されている。第2ケーシング片62は、大略円筒状であり、第1ケーシング片61の内周面60aより径が大きい内周面60bが形成されている。この内周面60bの軸線方向における中央付近に、当該内周面60bから全周にわたり径方向内方に張り出した張出部60cが形成されている。第3ケーシング片63は、電動モータ14のステータ部14aを覆うケーシング片であり、少なくとも左方側に端面60dを有する。端面60dには、ロータ部14bを挿通する開口部が形成されている。
【0058】
第1ケーシング片61と第2ケーシング片62とは、第1ケーシング片61の右方側の開口端部と第2ケーシング片62の左方側の開口端部とを互いに突き合わせて、機械的締結、溶接、接着等により接合することにより、一体化される。また、第2ケーシング片62と第3ケーシング片63とは、第2ケーシング片62の右方側の開口端部と第3ケーシング片63の端面60dとを互いに突き合わせて、機械的締結、溶接、接着等により接合することにより、一体化される。こうして、ケーシング60は、第1ケーシング片61と、第2ケーシング片62と、第3ケーシング片63の隣り合うケーシング片同士が接合されることにより、一体化されている。即ち、モータユニット15は、ケーシング60がその内方に直動変換機構30及び中立復帰機構70が夫々有する構成要素が保持されるように一体化されることで、1つのユニットとして構成されている。なお、第1ケーシング片61と第2ケーシング片62とが接合されることで、ケーシング60における内周面60aと内周面60bの間には、段部60eが形成されている。
【0059】
中立復帰機構70は、スプール12に付勢力を与えるコイルばねが第1スプリング71及び第2スプリング72を含む構成となっている。第1スプリング71及び第2スプリング72は、スプール12の軸線方向に並んで配置された、同じ線径及び巻き数のスプリングであり、いずれも圧縮コイルばねである。第1スプリング71及び第2スプリング72の径は、内周面60aの径より大きく、内周面60bの径より小さい。第1スプリング71は、ケーシング60の張出部60cより左方側に配置され、第2スプリング72は、ケーシング60の張出部60cより右方側に配置される。
【0060】
また、中立復帰機構70は、更に、第1ばね受け部材73と、第2ばね受け部材74と、押圧部75と、規制部76とを有している。第1スプリング71と、第2スプリング72と、第1ばね受け部材73と、第2ばね受け部材74とは、連結部材40に外装されている。
【0061】
図4(A)は、スプール12が右方側に移動したときの中立復帰機構70の状態を示す拡大断面図であり、図4(B)は、スプール12が左方側に移動したときの中立復帰機構70の状態を示す拡大断面図であり図である。以下では、中立復帰機構70について、図4(A)及び図4(B)を適宜参照しながら説明する。
【0062】
第1スプリング71及び第2スプリング72は、ねじ軸31の径方向から見てナット32に重なるように、連結部材40(より詳しくは、筒状部41)の周りに配置される。即ち、本実施形態でも、第1実施形態と同様、連結部材40の筒状部41よりも径方向内方側に直動変換機構30が配置され、連結部材40の筒状部41よりも径方向外方側に中立復帰機構70が配置される。
【0063】
第1ばね受け部材73及び第2ばね受け部材74は、夫々大略円板状に形成されており、その軸線方向に連結部材40を挿通すべく挿通孔73a,74aが形成されている。第1ばね受け部材73及び第2ばね受け部材74は、夫々挿通孔73a,74aに連結部材40が挿通されることで、連結部材40に対して軸線方向に移動(摺動)自在となっている。第1スプリング71は、圧縮された状態で第1ばね受け部材73と第1ケーシング片61の段部60eの間に介在されている。また、第2スプリング72は、圧縮された状態で第2ばね受け部材74と第3ケーシング片63の端面60dの間に介在されている。図3に示すように、スプール12が中立位置にあるとき、第1ばね受け部材73は、ケーシング60内の第1位置P1にあり、第2ばね受け部材74は、ケーシング60内の第2位置P2にある。
【0064】
押圧部75は、連結部材40におけるばね受け部材73,74が摺動する面から径方向外方に張り出すように設けられている。押圧部75は、連結部材40の一部であり、連結部材40と一体的に軸線方向に移動する。また、規制部76は、上述した張出部60cであり、第1ばね受け部材73の右方側への移動を規制するとともに、第2ばね受け部材74の左方側への移動を規制する。
【0065】
押圧部75と規制部76とは、軸線方向の厚みが同じであり、スプール12が中立位置にある場合に径方向に互いに対向している。また、押圧部75の径方向外側端縁と規制部76の径方向内側端縁は、いずれも径方向における内周面60bと当該内周面60bより径が小さい内周面60aの間に位置する。スプール12が中立位置にある場合に、第1位置にある第1ばね受け部材73は、右方側で押圧部75と規制部76に当接して支持されており、第2位置にある第2ばね受け部材74は、左方側で押圧部75と規制部76に当接して支持されている。
【0066】
このように構成される中立復帰機構70では、電動モータ14を駆動させることによりスプール12を中立位置から右方に移動させると、図4(A)に示すように、第1ばね受け部材73が第1位置P1に維持されるのに対して、第2ばね受け部材74は、スプール12と共に移動する押圧部75に押圧されて、第2位置P2より右方に移動する。これにより、第2ばね受け部材74と第3ケーシング片63の端面60dの間が狭まって第2スプリング72が圧縮され、第2スプリング72は、第2ばね受け部材74及び連結部材40を介してスプール12に対して中立位置に戻す方向の付勢力を与える。即ち、第2スプリング72は、電動モータ14を駆動させることによる押付力に抗する左方への付勢力をスプール12に与える。
【0067】
また、電動モータ14を駆動させることによりスプール12を中立位置から左方に移動させると、図4(B)に示すように、第2ばね受け部材74が第2位置P2に維持されるのに対して、第1ばね受け部材73は、スプール12と共に移動する押圧部75に押圧されて、第1位置P1より左方に移動する。これにより、第1ばね受け部材73と第1ケーシング片61の段部60eの間が狭まって第1スプリング71が圧縮され、第1スプリング71は、第1ばね受け部材73及び連結部材40を介してスプール12に対して中立位置に戻す方向の付勢力を与える。即ち、第1スプリング71は、電動モータ14を駆動させることによる押付力に抗する右方への付勢力をスプール12に与える。
【0068】
本変形例では、スプール12が中立位置から移動する場合に、第1スプリング71及び第2スプリング72のいずれか一方が圧縮するため、各スプリングの耐久性を向上することができる。
【0069】
また、本変形例に係るスプール弁1Bでも、中立復帰機構70のコイルばね51が、ねじ軸31の径方向から見てナット32に重なるように配置されるため、コイルばね51とナット32が軸線方向に並ぶ従来のスプール弁に比べて、スプール12の軸線方向の長さを短くすることができる。但し、上記の第1実施形態のスプール弁1Aは、2つのスプリングを軸線方向に並べて配置する必要がないため、本変形例よりも軸線方向の長さを短くすることができる。なお、本変形例では、第1スプリング71及び第2スプリング72の双方が、ねじ軸31の径方向から見てナット32に重なるように配置されているが、本発明は、これに限定されない。即ち、第1スプリング71及び第2スプリング72のうちの少なくとも一方が、ねじ軸31の径方向から見てナット32に重なるように配置されていればよい。
【0070】
[その他の形態について]
本発明は上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0071】
例えば、上記実施形態及び変形例では、連結部材40がケーシング20,60から突出する突出部43を有しており、当該突出部43がハウジング11のスプール孔11aに挿通されていたが、連結部材40は、ケーシング20,60から突出するものでなくてもよい。例えば、スプール12がハウジング11から突出する突出部を有していてもよく、当該突出部がケーシング20,60内に入り込んでもよい。但し、上記実施形態及び変形例のように連結部材40が突出部43を有する場合、コイルばね51及びナットを収容するケーシングと電動モータとをアセンブリとしてから、連結部材40にスプール12を取り付けることができるため、スプール12単品を交換する際など特に有用である。
【0072】
また、上記実施形態では、スプール12のストローク範囲を制限するために、スプール12が中立位置から右方側に所定距離移動すると、第2押圧部55が段部20hに当接し、スプール12が中立位置から左方側に所定距離移動すると、第1押圧部54が段部20fに当接したが、スプール12のストローク範囲を制限する構成は、これに限定されない。
【0073】
例えば、筒状部52b及び筒状部53bの一方又は双方の軸線方向の長さを長くしてもよい。これにより、第1ばね受け部材52又は第2ばね受け部材53が移動する際に、筒状部52bと筒状部53bの間の隙間がなくなる(筒状部52bと筒状部53bとが互いに接触する)ことで、第1ばね受け部材52及び第2ばね受け部材53の移動量を制限することができる。このように、第1ばね受け部材52及び第2ばね受け部材53の移動量が制限されることで、結果的にスプール12のストローク範囲を制限することができる。
【0074】
あるいは、例えば、筒状部52bと筒状部53bの間に、連結部材40に外装された筒状体を設けてもよい。この筒状体の軸線方向の長さを適切な長さに調整することで、この筒状体は、第1ばね受け部材52又は第2ばね受け部材53が移動する際に、筒状部52bと筒状部53bに軸線方向に挟み込まれる。これにより、第1ばね受け部材52及び第2ばね受け部材53の移動量を制限して、スプール12のストローク範囲を制限することができる。
【0075】
なお、連結部材40に外装された筒状体を設けてスプール12のストローク範囲を制限する上述の構成は、他の部材の寸法等を変更せずに、筒状体の軸線方向の長さを変更するだけで、異なるストローク領域を有したスプール弁に適用可能となるため、特に有用である。
【0076】
また、上記実施形態では、連結部材40とスプール12とは、ボール44を介して接続されていたが、連結部材40とスプール12の接続形態はこれに限定されない。例えば、連結部材40とスプール12の接続形態としてユニバーサルジョイントを採用してもよい。また、例えば、連結部材40の一端部に軸線方向に延びるねじ部を形成し、当該ねじ部を、スプール12の一端部に形成したねじ穴に挿入することによって、連結部材40とスプール12とを接続してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、スプール本体部12aと当該スプール本体部12aの一端部から突き出た平板部12bとが一体的に形成されているが、別体で形成されてもよい。また、連結部材40は、ナット32が嵌合される筒状部41と、スプール12と接続可能に形成された突出部43とが一体的に形成されているが、連結部材40は、複数の部材が結合されることにより構成されたものであってもよい。例えば筒状部41と突出部43とは別体に形成されていてもよい。また、第1押圧部54は、連結部材40と別体で形成されているが、連結部材40と一体的に形成されてもよい。また、第2押圧部55及び押圧部75は、連結部材40と一体的に形成されているが、別体で形成されてもよい。第1規制部56、第2規制部57、及び規制部76は、ケーシング20と一体的に形成されているが、別体で形成されてもよい。
【0078】
また、上記の説明では、1つのスプリングにより構成されるコイルばね51を備えるスプール弁1Aが、電動モータ14を含まない直動変換ユニット13を備え、コイルばねとして第1スプリング71及び第2スプリング72を備えるスプール弁1Bが、電動モータ14を含むモータユニット15を備えていたが、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、中立復帰機構のコイルばねとして1つのスプリングを備えるスプール弁が、モータユニットを備えるように構成されてもよいし、中立復帰機構のコイルばねとして複数のスプリングを備えるスプール弁が直動変換ユニットを備えるように構成されてもよい。
【0079】
更に、第1実施形態及び変形例のスプール弁1A,1Bでは、直動変換機構30がロータ部14bに直接連結されているが、変速機構等を介してロータ部14bと直動変換機構30とが接続されていてもよい。この場合、電動モータ14は、直動変換機構30と同軸上に配置されず、電動モータ14を直動変換機構30と並行して配置することも可能である。更に、直動変換機構30は、ボールねじ機構でなくてもよく、例えば直動変換機構30は、すべりねじ機構及び台形ねじ機構等であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
1A,1B :スプール弁
11 :ハウジング
12 :スプール
14 :電動モータ
20,60 :ケーシング
31 :ねじ軸
32 :ナット
40 :連結部材
51 :コイルばね
71 :第1スプリング
72 :第2スプリング
図1
図2
図3
図4