(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】フィラメント延伸アトマイザー用中央供給ローラー
(51)【国際特許分類】
B05B 3/02 20060101AFI20220309BHJP
【FI】
B05B3/02 A
(21)【出願番号】P 2018119606
(22)【出願日】2018-06-25
【審査請求日】2021-06-25
(32)【優先日】2017-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・マシュー・ジョンソン
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-085324(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02868390(EP,A1)
【文献】特開2015-003303(JP,A)
【文献】実開昭51-119365(JP,U)
【文献】国際公開第2015/183644(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00-5/26
B01J13/00
B05B 1/00-3/18
7/00-9/08
17/00-17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体リザーバと、
1対のローラーであって、前記ローラーのうちの少なくとも一方が、
前記流体リザーバに流体的に接続された中央供給チャネルと、
前記ローラーの表面上の孔のアレイと、
前記チャネルを前記孔に接続するベーンと
を有する1対のローラーと、
前記ローラー間に形成されたニップと、
液体が前記孔から出て、前記ローラーがフィラメントを形成するように
それぞれ互いに対して逆
方向に回転して前記フィラメントが液滴に破裂するように前記ローラー間で延伸させたときに形成される液滴を受けるように配置された
堆積面と
を備える、噴霧化システム。
【請求項2】
前記液滴のサイズを制御するために前記液体の圧力を設定する圧力コントローラをさらに備える、請求項1に記載の噴霧化システム。
【請求項3】
前記中央供給チャネルに流体的に接続された複数の供給チャネルをさらに備え、各供給チャネルが異なる流体圧力にある、請求項1に記載の噴霧化システム。
【請求項4】
中央供給チャネルと、前記中央供給チャネルとローラーの表面との間のベーンと、表面液滴を形成するための前記ベーンに接続する孔を有する前記ローラーの表面とを有する第1のローラーに流体を供給するステップと、
前記第1のローラーを第2のローラーと接触させるステップであって、前記第2のローラーが前記流体を前記第1のローラーから引き離してフィラメントを形成し、前記フィラメントを延伸して液滴を形成する、接触させるステップと
を含む、液滴を生成する方法。
【請求項5】
前記流体の背圧を制御して前記表面液滴のサイズを制御することをさらに備える、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許出願は、以下の米国特許出願および特許に関連する。
【0002】
米国特許出願公開第2015/011947号明細書、「2つの分岐面間のフィラメントを伸長させることによるエアロゾルの生成方法」、(20120933US01-9841-0297);
【0003】
米国特許出願公開第2015/0343477号明細書、「フィラメントを伸長させることによるエアロゾルの生成システム」、(20120989US01-9841-0298);
【0004】
米国特許出願公開第2015/0115057号明細書、「フィラメントを伸長させることによるエアロゾル生成システム」、(20120933US02-9841-0307);
【0005】
米国特許出願公開第2015/0210009号明細書、「噴霧堆積システム」、(20131054US01-9841-0344);
【0006】
米国特許出願公開第2015/0343468号明細書、「フィラメントを伸長させることによるエアロゾル生成システム」、(20120989US02-9841-0348);
【0007】
米国特許第9,257,056号明細書、「フィラメントを伸長させることによるエアロゾル生成システム」、(20120989US03-9841-0349);
【0008】
米国特許出願公開第2016/0175856号明細書、「噴霧堆積システム」、(20140451US01-9841-0365);
【0009】
米国特許出願第14/575,922号、「フィラメントを伸長させることによるエアロゾル生成システム」、(20140868US01-9841-0383);
【0010】
米国特許出願第15/001,408号、「エアロゾル生成および選択的帯電を使用するシステム」、(20150609US01-9841-0410);および
【0011】
米国特許出願第15/001,452号、「エアロゾル生成および選択的帯電を使用する方法」、(20150609US01-9841-0410)。
【0012】
本開示は、エアロゾル噴霧システム、より具体的には、フィラメント延伸アトマイザーシステムに関する。
【背景技術】
【0013】
パロアルト研究センター(「PARC」)は、液体からエアロゾルを生成するフィラメント延伸アトマイザーシステムを開発した。このシステムは、一般に、フィラメントが液滴の噴霧に分割されるまで2つの分岐面間において液体フィラメントを伸長させることを含む。いくつかのバージョンのシステムにおいて、システムに入力される流体は、ドクターブレードおよび2つの表面間に形成される圧力を含む。1つのバージョンにおいて、2つの表面は、ローラーであり、ローラーは、それらの間に流体を分配するためのニップを形成する。
【0014】
典型的には、ほとんどの流体について、これは非常に有効である。しかしながら、非常に高い表面張力を有する流体は、高速ローラーから飛び出すかまたはセットアップされた密着ブレードを通って流れない。さらに、フィルムを制御するためにドクターブレードおよびニップを使用することは、液滴サイズが変更される可能性を制限する。単一のローラーは、1組の液滴を同時にしか生成することができない。いくつかの場合において、ある範囲のサイズの小さな液滴を形成することが非常に望ましいことがある。これを達成するために、システムは、流体をシステムに導入するためにドクターブレードおよび供給システムに依存することなく、ある範囲のフィラメントを形成しなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
実施形態は、孔のアレイと、ローラー内部の中央供給チャネルと、チャネルを孔に接続するベーンとを有し、チャネルと孔との間の液体の経路を形成する外側円筒面を有するローラーである。
【0016】
他の実施形態は、流体リザーバと、ローラーのうちの少なくとも一方が、流体リザーバに流体的に接続された中央供給チャネルと、ローラーの表面上の孔のアレイと、チャネルを孔に接続するベーンとを有する1対のローラーと、ローラー間に形成されたニップと、液体が孔から出て、それらがフィラメントを形成するように逆回転してフィラメントが液滴に破裂するようにローラー間で延伸させたときに形成される液滴を受けるように配置された受け面とを有する噴霧化システムである。
【0017】
他の実施形態は、中央供給チャネルと、中央供給チャネルとローラーの表面との間のベーンと、表面液滴を形成するための孔を有するローラーの表面とを有する第1のローラーに流体を供給し、第1のローラーを第2のローラーと接触させ、第2のローラーが流体を第1のローラーから引き離してフィラメントを形成し、フィラメントを延伸して液滴を形成する、液滴を生成する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、フィラメント延伸噴霧化システムの実施形態を示している。
【
図2】
図2は、1対の逆回転ローラーおよびそれらの液体システムのより詳細な図を示している。
【
図3】
図3は、ベーンを有する中央供給ローラーの実施形態を示している。
【
図4】
図4は、ベーンおよび表面上の開口の実施形態の側面図を示している。
【
図5】
図5は、窪んだ開口を有するベーンの実施形態の側面図を示している。
【
図6】
図6は、突出した開口を有するベーンの実施形態の側面図を示している。
【
図7】
図7は、1対のローラーとしての中央供給ローラーを示している。
【
図8】
図8は、中央供給ローラーの外面の図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、フィラメント延伸アトマイザーシステムを示している。このシステムにおいて、1対の逆回転ローラー100および102は、それらの間にニップ(ラベル付けしていない)を形成する。
図1の実施形態において、システムは、エアロゾル化される液体104をローラーの一方、この場合にはローラー100に塗布する。計量またはドクターブレード106は、液体をより均一な薄膜に平滑化する。液体が他方のローラーに接触すると、液体は、双方のローラーに付着する。ローラーの表面が互いに分岐するとき、液体は、分岐面間に伸長するフィラメントを形成する。最終的に、ローラーが回転し続けると、フィラメントは、液滴の噴霧に破裂する。システムは、噴霧液滴108をさらに噴霧を処理する噴霧コレクタまたは他の装置110を搬送する。さらなる処理は、材料を表面上に堆積させることまたは相変化を起こすように材料の温度を変化させることを含むことができる。
【0020】
図2は、1つのローラーの液体コーティングの代替配置を示している。
図2の実施形態において、ローラー202の一方は、液体貯蔵部216を通って回転し、液体の層をピックアップする。ドクターブレード206は、ローラー202と200との間のニップに入る前に層を平滑化する。
【0021】
上記実施形態のいずれか、ならびに多くの他の実施形態において、このアプローチは、ほとんどの流体に対して良好に機能する。しかしながら、高い表面張力を有する流体は、ドクターブレードの下方を通過せず、薄膜をもたらし、ドクターブレードの後方に構築させる。あるいは、分岐ローラー面に到達する流体は、フィラメントを形成しないであろうが、代わりに、液体の表面張力によってフィラメントを形成することができないので、液体を飛ばす。
【0022】
実施形態は、ここで、
図3に示すように、ローラー自体に供給を一体化させるためにポリマーの供給位置を変更する。ローラー300は、液体が典型的には円筒形ローラーの中空中央チャネル302に流入するのを可能とするカップリングを介して中央に供給された流体を受ける。ローラーに穿孔された孔は、中空チャネルを形成することができる。チャネルをローラーの表面に接続する304のようなベーンは、流体が中央チャネルからローラーの表面上の孔のアレイまで流れるのを可能とする。孔は、ベーンを通ってローラーを貫通する。
【0023】
中央供給ローラーは、典型的にはある種の導管314を介して流体リザーバ312に接続する。より詳細に後述するように、コントローラ316は、中央チャネルに供給される流体の圧力を調整することができる。圧力の調整はまたあるいは代わりに、より詳細に後述する幾何学的要素を含むことができる。さらに、導管は、2つ以上の個々の導管から構成されてもよく、それぞれの圧力は、異なる圧力によって制御されてもよい。
【0024】
孔の側面プロファイルが
図4に示されている。ベーン304は、
図3のチャネル302から横断し、孔は、ローラー300の表面まで貫通している。これは、流体が
図4に示される306のような表面液滴を形成するのを可能とする。孔は、異なるフィラメントサイズを可能とする孔の範囲および形状を有することができる。異なるサイズの孔を使用することは、チャネル内で1つの圧力を使用する異なるサイズのフィラメントをもたらす、異なるサイズの表面液滴の形成を可能とするか、またはいくつかのサイズの孔を有するいくつかの圧力のユーザは、さらなる選択性を提供することができる。
【0025】
孔は、全体で一定のサイズおよび形状を有することができる。あるいは、それらは、より大きな直径の孔を有するコアから得ることができ、そして、コアを他の材料に包み込む。これは、ノズルプレートと同様の小さな孔を可能とする。システムはまた、より複雑な窪みおよび突出した孔を可能とすることができる。窪んだ孔は、背圧に対する感度がより高いという利点を有し、突出した孔は、余分な流体を処理するためのローラーの能力を増加させることができる。
【0026】
図5は、窪んだ孔308の実施形態を示している。孔は、ローラーの表面よりも下方に位置する部分を有する。流体の背圧の制御は、順次、チャネルの頂部を越えて窪み部308内に突出する液滴のサイズを制御する。圧力が増加すると、流体気泡306は、表面からますます突出する。この突出部の厚さは、フィラメントに引き込まれる材料の量を効果的に変化させる。この背圧を変化させることにより、突出する流体の量を変化させることができ、液滴サイズを変化させることができる。これは、全てのチャネルが互いに接続されている場合、グローバルに変化させることができるが、圧力および液滴サイズを変えるチャネルを狭めるかまたは広げる幾何学的制約を介して、または異なる圧力源に接続されることによってチャネル毎に変化させることもできる。
【0027】
流体を受ける窪んだ表面の部分は、ここでは濡れ部と称することができる。これはまた、負の膜厚を達成することができる。ここで使用される負の膜厚は、液滴が図に示すように表面から突出していないことを意味する。典型的には、このローラーは、他方のローラーとしての変形可能ローラーの存在において使用される。他方のローラーは、負の膜厚であっても変形することができるため、液滴は、他方のローラーと接触し、噴霧を継続する。
【0028】
他の実施形態において、孔は、液滴306をローラー300の表面から所定オフセット距離で形成させる突起310を有してもよい。突出した孔は、窪んだ孔と同様に機能することができる。異なる背圧は、異なるサイズの気泡を異なる量だけ突出させ、異なるサイズのフィラメントおよび液滴を形成させる。しかしながら、突出したシステムは、未使用または余分な流体が収集されることができる領域(開放領域)を提供する。全ての材料が噴霧されるわけではなく、圧力制御に偏差がある場合、または、全ての回転中に流体をきれいにすることが望ましい場合、これは有利なことである。この場合、余分な流体は、開放領域に集まる。さらに、突起のコーナーは、流体液滴を固定するために非常に望ましい場所であろう。流体がより広い領域を濡らし、そのコーナーを丸めるためには、多量の圧力が必要となる。この非常に安定した固定点は、それが圧力の小さな変化に敏感ではないため、より安定した圧力制御を提供する。
【0029】
図7は、フィラメント延伸アトマイザー内の中央供給ローラーの実施形態を示している。ローラー300は、中空中央チャネルを介して流体を受けた後、ローラーが回転すると、液体は、ローラーの表面に到達する。ローラーの表面がローラー300と400との間のニップ402に入ると、液体は、ローラー400に接触する。そして、それは互いに離れて回転するのにともない2つのローラー間に伸長し、フィラメントを形成し、液滴の噴霧に破裂する。ローラーの表面307は、
図8に示す306のような孔のアレイを有する。
【0030】
このように、これらのシステムは、ドクターブレードまたは回転面によって動作するであろうよりも高い表面張力を有する液体を使用することができる。ローラーを交換し、それを液体のリザーバに流体的に接続することにより、システムは、これらの流体を使用して液滴の噴霧を提供することができる。
【0031】
上記開示されたおよび他の特徴および機能の変形例、あるいはそれらの代替例は、多くの他の異なるシステムまたはアプリケーションに組み合わせ可能であることが理解されるであろう。様々な現在は予期しないまたは予測しない代替例、変更例、変形例、または改良例が当業者によって後に行われることができ、以下の特許請求の範囲によって包含されるようにも意図される。