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特許7037597クレアチンプロドラッグ、その組成物、及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】クレアチンプロドラッグ、その組成物、及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 271/06 20060101AFI20220309BHJP
   C07D 273/04 20060101ALI20220309BHJP
   C07D 413/12 20060101ALI20220309BHJP
   A61K 31/5395 20060101ALI20220309BHJP
   A61K 31/4245 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220309BHJP
   A61K 31/198 20060101ALN20220309BHJP
【FI】
C07D271/06
C07D273/04 CSP
C07D413/12
A61K31/5395
A61K31/4245
A61P9/10
A61P25/00
A61P9/00
A61P25/18
A61P21/00
A61K31/198
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020072408
(22)【出願日】2020-04-14
(62)【分割の表示】P 2017552008の分割
【原出願日】2015-12-22
(65)【公開番号】P2020128379
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2020-05-11
(31)【優先権主張番号】62/095,295
(32)【優先日】2014-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517216914
【氏名又は名称】ファーミントン ファーマ ディベロップメント
【氏名又は名称原語表記】FARMINGTON PHARMA DEVELOPMENT
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】ブルベイカー ウィリアム エフ.
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/018570(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/019855(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/097335(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/101310(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/146086(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/108370(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 271/00
C07D 273/00
C07D 413/00
A61K 31/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体であって:
式(III)の化合物は、以下のものであり:

式中:
Wは、-CHOHまたは-C(O)ORであり;
Rは、-CHまたは-CDであり;かつ
は、水素、C1-12アルキル、 3-7 シクロアルキル、1,1-ジメトキシエチル、1,1-ジエトキシエチル、フェニル、4-メトキシフェニル、ベンジル、フェネチル、スチリル、2-ピリジル、3-ピリジル、または4-ピリジルである;
前記化合物。
【請求項2】
、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、ドデシル、1,1-ジメトキシエチル、1,1-ジエトキシエチル、フェニル、4-メトキシフェニル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2-ピリジル、3-ピリジル、または4-ピリジルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、ドデシル、1,1-ジエトキシエチル、フェニル、シクロヘキシル、または3-ピリジルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ドデシル、tert-ブチル、フェニル、またはシクロヘキシルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
、エチル、イソプロピル、またはドデシルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記式(III)の化合物は、式(XVII)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体であり;
式(XVII)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;かつ
29は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、または-シクロヘキシルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】

以下、

からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載の少なくとも1種の化合物を治療上有効量で、及び薬学上許容されるビヒクルを含む、医薬組成物。
【請求項9】
1つまたは複数の徐放性経口剤形に含まれている、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の化合物が、患者の疾患を治療するのに有効な量で存在し、前記疾患は、虚血、酸化ストレス、神経変性疾患、虚血再灌流傷害、循環器疾患、クレアチンキナーゼ系を冒す遺伝病、多発性硬化症、精神障害、及び筋肉疲労であるか;疾患に冒された組織または器官にエネルギー恒常性をもたらすのに十分な量で存在するか;患者の筋力を向上させるのに有効な量で存在するか;組織または器官の生存能を改善するのに有効な量で存在するか;もしくは細胞生存能を改善するのに有効な量で存在する、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の化合物が、クレアチンキナーゼ系を冒す遺伝病の治療に有効な量で存在する、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
少なくとも1種の化合物が、クレアチン輸送体障害の治療に有効な量で存在する、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の化合物が、クレアチン合成障害の治療に有効な量で存在する、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
疾患を治療するための、請求項に記載の医薬組成物であって、前記疾患は、虚血、酸化ストレス、神経変性疾患、虚血再灌流傷害、循環器疾患、クレアチンキナーゼ系を冒す遺伝病、多発性硬化症、精神障害、または筋肉疲労である、前記医薬組成物。
【請求項15】
クレアチンキナーゼ系を冒す遺伝病が、クレアチン輸送体障害またはクレアチン合成障害である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
クレアチンキナーゼ系を冒す遺伝病を治療するための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
クレアチン輸送体障害を治療するための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
クレアチン合成障害を治療するための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
筋力を向上するための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
細胞の生存能を改善するための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
組織または器官の生存能を改善するための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
組織または器官にエネルギー恒常性をもたらすための、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年12月22出願の、米国仮出願第62/095,295号(発明の名称「CREATINE PRODRUGS, COMPOSITIONS AND METHODS OF USE THEREOF(クレアチンプロドラッグ、その組成物、及びその使用方法)」)の優先権を主張し、その開示は、あらゆる目的でそのまま全体が本明細書において参照として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、膜透過性クレアチンプロドラッグ、膜透過性クレアチンプロドラッグを含む医薬組成物、ならびにクレアチンプロドラッグまたはその医薬組成物を投与することを含む、疾患、例えば、虚血、心不全、神経変性疾患、及びクレアチンキナーゼ系を冒す遺伝性障害などを治療する方法を記載する。実施形態によっては、本発明は、クレアチンプロドラッグまたはその医薬組成物を投与することを含む、クレアチンキナーゼ系を冒す遺伝病、例えば、クレアチン輸送体障害またはクレアチン合成障害の治療を記載する。
【背景技術】
【0003】
クレアチンは、細胞エネルギー代謝で重要な役割を果たしており、高エネルギーホスホクレアチンとして、アデノシン三リン酸(ATP)に加えて、相当な筋エネルギー貯蔵を構成する。静止状態の筋肉では、ATPは、リン酸基をクレアチンに移すことでホスホクレアチンを形成することができ、したがって、ホスホクレアチンは、ATPと直接平衡状態にある。筋肉が働いている間、ホスホクレアチンは、ATP貯蔵のできるだけ迅速な補充に極めて重要である。ホスホクレアチンは、最大筋肉負荷の最初の数秒の間、この目的で利用可能である;この物質は、酵素クレアチンキナーゼによる、リン酸基をアデノシン二リン酸に移す非常に迅速な反応で、ATPを再形成することができる。クレアチンキナーゼ系は、細胞内エネルギー代謝-機能発揮において、高ATP加水分解部位で減損したATPレベルを回復させるための、ならびに中間エネルギー担体、複数の酵素反応、及び様々な細胞内構造を通じた拡散が関与するプロセスによりエネルギーをホスホクレアチンの形でミトコンドリアから他の細胞部分に移すためのエネルギーバッファーとして、二重の役割を有する。
【0004】
多くの病理学的疾患状態は、エネルギー代謝の機能障害から生じる。細胞でのATP貯蔵の枯渇は、例えば、組織虚血中に起こった場合、組織機能の障害及び細胞死をもたらす。最も医学的に関連するものの中で、虚血関連循環器疾患、例えば脳卒中及び心臓発作などは、依然として北米及び欧州の死亡及び罹患の主因である。すなわち、虚血関連組織損傷を防ぐまたは逆転させることが可能な戦略は、公衆衛生に大きな影響を与えることが予想される。エネルギー枯渇は、手術中の組織損傷でも一因となっており、臓器移植失敗のよくある原因である。そのうえさらに、酸素含有溶液を用いた再灌流は、酸素ラジカルの生成を通じて組織の健全性を悪化させる可能性さえある。したがって、再灌流傷害を引き起こすことなくATPレベルを迅速に回復させる方法は、多くの治療用途があるように思われる。神経変性疾患、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、及びハンチントン病などは、エネルギー代謝障害と関連しており、ATP代謝を改善する戦略は、ニューロンの減少を最小限に抑え、それにより、これらの疾患の患者の予後を改善する可能性があると考えられる。最後に、エネルギー代謝障害は、筋肉疲労の重大な要因であり、身体持久力を制限する。したがって、虚血組織または代謝的活性組織でのATP枯渇を防ぐまたは逆転させる方法は、広範囲にわたる適用症に幅広い臨床上の有用性を有すると思われる。
【0005】
クレアチン補給は、細胞内クレアチンリン酸レベルを上昇させる(Harris et
al., Clinical Sci 1992, 83, 367-74)。クレアチンは、健康な個体では、血液脳関門を容易に通過するので、経口投与を介して脳クレアチンレベルを上昇させることができる(Dechent et al., Am J Physiol 1999, 277, R698-704)。長期のクレアチン補給は、クレアチンリン酸の細胞でのプールを上昇させ、組織虚血及び筋肉疲労に対する抵抗性を高めることができる。すなわち、クレアチンの投与は、なにかしら治療上の有効性を有する可能性があるが、クレアチン分子を、より安定に、かつバリア組織及び細胞膜をより透過できるように修飾したものは、さらに向上した治療上の価値を有すると思われる。
【0006】
本発明のクレアチンプロドラッグは、生体液中で安定であり、受動拡散または能動輸送いずれかにより細胞に入るように、及びクレアチンを細胞の細胞質に放出するように設計される。本プロドラッグはまた、重要なバリア組織、たとえば、腸管粘膜、血液脳関門、及び血液胎盤関門などを通過することができる。生体膜を通過する能力のおかげで、クレアチンプロドラッグは、ATP枯渇細胞において、クレアチンキナーゼ系を介してエネルギー恒常性を回復及び維持すること、ならびにATPレベルを迅速に回復させて組織をさらなる虚血性ストレスから保護することができる。より高い自由エネルギーまたはより低いクレアチンキナーゼ親和性を有し、エネルギー枯渇のより深刻な条件下でATPを再生できるクレアチンプロドラッグも開示される。本発明のクレアチンプロドラッグはまた、クレアチンをある濃度で全身に持続送達することにも使用することができる。本発明は、これらの、ならびに他の重要な目的に関する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、膜透過性クレアチンプロドラッグ、膜透過性クレアチンプロドラッグを含む医薬組成物、ならびに膜透過性クレアチンプロドラッグ及びその医薬組成物の使用方法に関する。実施形態によっては、本発明は、クレアチンプロドラッグまたはその医薬組成物を投与することを含む、クレアチンキナーゼ系を冒す遺伝病、例えば、クレアチン輸送体障害またはクレアチン合成障害などの治療を記載する。
【0008】
1つの実施形態において、本発明は、式(I)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を記載し:
式(I)の化合物は、以下のものであり

式中:
Rは、-CHまたは-CDであり;
は、水素、-OR、-C(O)OR、-C(O)R


、または
であり;
nは、1~2の整数であり;
各Rは、独立して、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、または置換C6-20ヘテロアリールアルキルであり;
各R及びRは、独立して、水素、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルであり;
23は、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C5-12シクロアルキル、置換C5-12シクロアルキル、C5-12アリール、及びC5-12置換アリール、-C(O)-OR22、または-C(O)-R22であり;
22は、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、または置換C6-20ヘテロアリールアルキルであり;かつ
48は、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルである。
【0009】
さらに別の実施形態は、式(III)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶
媒和物、互変異性体、または立体異性体を記載し:
式(III)の化合物は、以下のものであり:

式中:
Wは、-CHOHまたは-C(O)ORであり;
Rは、-CHまたは-CDであり;
は、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、置換C6-20ヘテロアリールアルキル、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)(NR)、-C(R)-C(O)OR22、-C(R)-(O)C(O)R22、-C(R)-(O)C(O)-OR22

、または
であり
nは、1~2の整数であり;
各R及びRは、独立して、水素、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルであり;かつ
は、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアル
キル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、または置換C6-20ヘテロアリールアルキルであり;
23は、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C5-12シクロアルキル、置換C5-12シクロアルキル、C5-12アリール、及びC5-12置換アリール、-C(O)-OR22、または-C(O)-R22であり;かつ
22は、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、または置換C6-20ヘテロアリールアルキルである。
【0010】
さらに別の実施形態は、式(VI)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を記載し:
式(VI)の化合物は、以下のものであり:

式中:
Rは、-CHまたは-CDであり;
10は、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、置換C6-20ヘテロアリールアルキル、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)(NR)、-C(R)-C(O)OR22、-C(R)-(O)C(O)R22、-C(R)-(O)C(O)-OR22

、または
であり;
11及びR12は、それぞれ独立して、水素または-OR13であるか;もしくはR11及びR12は、それぞれ-C(O)Rであるが、ただしR11及びR12が両方とも水素であることはできず;
13は、独立して、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、置換C6-20ヘテロアリールアルキル-CH(OR)、-C(O)R、-C(O)OR、または-C(O)(NR)であり;
各R及びRは、独立して、水素、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルであり;
は、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、または置換C6-20ヘテロアリールアルキルであり;
23は、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C5-12シクロアルキル、置換C5-12シクロアルキル、C5-12アリール、及びC5-12置換アリール、-C(O)-OR22、または-C(O)-R22であり;
22は、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、または置換C6-20ヘテロアリールアルキルであり;かつ
nは、1~3の整数である。
【0011】
1つの他の実施形態は、式(VII)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を記載し:
式(VII)の化合物は、以下のものであり:

式中:
Rは、-CHまたは-CDであり;
各R14は、独立して、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、置換C6-20ヘテロアリールアルキル-CH(OR)、-C(O)R、-C(O)OR、または-C(O)(NR)であり;
各R及びRは、独立して、水素、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルであり;かつ
は、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、または置換C6-20ヘテロアリールアルキルである。
【0012】
ある特定の実施形態において、式(I)、(III)、(VI)、及び(VII)の化合物は、以下の特性を含むことができる:
【0013】
各Rは、独立して、-CHである。
【0014】
各Rは、独立して、-CDである。
【0015】
各nは、独立して、整数1である。
【0016】
各nは、独立して、整数2である。
【0017】
各R、R、R、R、R、R、R10、R14、R15、R18、及びR22は、独立して、C1-6アルキル、置換C1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、置換C3-7シクロアルキル、C5-7アリール、または置換C5-7アリールである。
【0018】
各R、R、R、R、R、R、R10、R14、R15、R18、及びR22は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、ドデシル、1,1-ジメトキシエチル、1,1-ジエトキシエチル
、フェニル、4-メトキシフェニル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2-ピリジル、3-ピリジル、または4-ピリジルである。
【0019】
各R、R、R、R、R、R、R10、R14、R15、R18、及びR22は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、ドデシル、1,1-ジエトキシエチル、フェニル、シクロヘキシル、または3-ピリジルである。
【0020】
各R、R、R、R、R、R、R10、R14、R15、R18、及びR22は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ドデシル、tert-ブチル、フェニル、またはシクロヘキシルである。
【0021】
各R、R、R、R、R、R、R10、R14、R15、R18、及びR22は、独立して、エチル、イソプロピル、またはドデシルである。
【0022】
各R及びRは、独立して、水素である。
【0023】
各R23は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルである。
【0024】
各R23は、メチルである。
【0025】
各置換基は、独立して、ハロゲン、-NO、-OH、-NH、-CN、-CF、-OCF、=O、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12アルコキシ、または置換C1-12アルコキシ、-COOR10’であり、式中、R10’は、水素、C1-3アルキル、または-(NR11’であり、式中、各R11’は、独立して、水素またはC1-3アルキルである。
【0026】
1つの実施形態において、式(I)の化合物は、式(X)、式(XI)、式(XII)、式(XIII)、式(XIV)、式(XV)、式(XVa)、または式(XVb)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体であり;
式(X)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;
式(XI)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;かつ
24は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;
式(XII)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;かつ
25は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;
式(XIII)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;かつ
26は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;
式(XIV)の化合物は、以下のものであり:

式(XV)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;
式(XVa)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;
39は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;かつ
及びRは、それぞれ独立して、水素、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルであり;
式(XVb)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;
及びRは、それぞれ独立して、水素、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルであり;かつ
53は、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルである。
【0027】
さらに別の実施形態において、式(III)の化合物は、式(XVII)、式(XVIII)、または式(XIX)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体であり;
式(XVII)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;
29は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、-シクロヘキシル、-CH-C(O)OR43、-CH-(O)C(O)R43、-CH-(O)C(O)OR43、または
であり;
39は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;
43は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;かつ
及びRは、それぞれ独立して、水素、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルであり;
式(XVIII)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;
式(XIX)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDである。
【0028】
さらに別の実施形態において、式(VI)の化合物は、式(XXII)、式(XXIII)、式(XXIV)、式(XXV)、式(XXVI)、式(XXVII)、または式(XXVIII)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体であり;
式(XXII)の化合物は、以下のものであり:

式(XXIII)の化合物は、以下のものであり:

式(XXIV)の化合物は、以下のものであり:

式(XXV)の化合物は、以下のものであり:

式(XXVI)の化合物は、以下のものであり:

式(XXVII)の化合物は、以下のものであり:

式(XXVIII)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;
は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチルであり;
32は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、シクロヘキシル、-CH-C(O)OR43、-CH-(O)C(O)R43、-CH-(O)C(O)OR43、または
であり;
39は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;
33は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;
43は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;かつ
及びRは、それぞれ独立して、水素、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルである。
【0029】
さらに別の実施形態において、式(VII)の化合物は、式(XXIX)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体であり;
式(XXIX)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;かつ
各R34は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルである。
【0030】
1つの実施形態において、本発明は、以下の構造を有する化合物:





















、または

もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体
を記載する。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、式(I)、(III)、(VI)、及び(VII)の化合物、ならびにそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体、もしくは上記のいずれかのものの医薬上許容される溶媒和物を治療上有効量で含み、及び薬学上許容されるビヒクルを含む、医薬組成物を記載する。1つの実施形態において、本発明は、本明細書中開示されるとおりの化合物の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体、もしくは上記のいずれかのものの医薬上許容される溶媒和物を治療上有効量で含み、及び薬学上許容されるビヒクルを含む医薬組成物を記載する。
【0032】
実施形態によっては、医薬組成物は、1つまたは複数の徐放性経口剤形に配合することができる。
【0033】
1つの実施形態において、医薬組成物は、本発明の少なくとも1種の化合物を、患者の疾患を治療するのに有効な量で含み、疾患は、虚血、酸化ストレス、神経変性疾患、虚血再灌流傷害、循環器疾患、クレアチンキナーゼ系を冒す遺伝病、多発性硬化症、精神障害、及び筋肉疲労であるか;疾患に冒された組織または器官にエネルギー恒常性をもたらすのに十分な量で含むか;患者の筋力の向上に有効な量で含むか;組織または器官の生存能の改善に有効な量で含むか;もしくは細胞の生存能の改善に有効な量で含む。別の実施形態において、医薬組成物は、本発明の少なくとも1種の化合物を、クレアチンキナーゼ系を冒す遺伝病の治療に有効な量で含む。実施形態によっては、医薬組成物は、本発明の少なくとも1種の化合物を、クレアチン輸送体障害の治療に有効な量で含む。1つの実施形態において、医薬組成物は、本発明の少なくとも1種の化合物を、クレアチン合成障害の治療に有効な量で含む。
【0034】
1つの実施形態において、本発明は、患者におけるエネルギー代謝の機能障害と関連した疾患、例えば、患者の虚血、酸化ストレス、神経変性疾患、これには筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、パーキンソン病、またはアルツハイマー病が含まれる、虚血再灌流傷害、循環器疾患、多発性硬化症(MS)、精神障害、クレアチンキナーゼ系を冒す遺伝病、または筋肉疲労などを治療する方法を記載し、本方法は、そのような治療を必要とする患者に、式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を、もしくは式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を含む医薬組成物を、治療上有効量で投与することを含む。
【0035】
別の実施形態において、患者のクレアチンキナーゼ系を冒す遺伝病、例えば、クレアチン輸送体障害またはクレアチン合成障害などを治療する方法が記載され、本方法は、そのような治療を必要とする患者に、式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を、もしくは式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を含む医薬組成物を、治療上有効量で投与することを含む。
【0036】
さらなる実施形態において、患者の筋力を向上させる方法が記載され、本方法は、そのような向上を必要とする患者に、式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を、もしくは式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を含む医薬組成物を、治療上有効量で投与することを含む。
【0037】
さらにもう1つの実施形態において、組織または器官の生存能を上昇させる方法が記載され、本方法は、組織または器官を、有効量の、式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体と、もしくは式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を含む医薬組成物と接触させることを含む。
【0038】
なおもう1つの実施形態において、単離された細胞の生存能を改善する方法が記載され、本方法は、細胞を、有効量の、式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体と、もしくは式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を含む医薬組成物と接触させることを含む。
【0039】
別の実施形態において、酸化ストレスと関連した疾患を治療する方法が記載され、本方法は、そのような治療を必要とする患者に、式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を、もしくは式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を含む医薬組成物を、有効量で投与することを含む。
【0040】
もう1つの実施形態において、エネルギー代謝の機能障害を示す組織または器官を治療するために組織または器官の生存能を改善する方法が記載され、本方法は、式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体と、もしくは式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を含む医薬組成物と、組織または器官とを接触させることを含む。
【0041】
さらにもう1つの実施形態において、組織または器官にエネルギー恒常性をもたらすための方法が記載され、本方法は、式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体と、もしくは式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を含む医薬組成物と、組織または器官とを接触させることを含む。
【0042】
別の実施形態において、酸化ストレスを受けた組織または器官を治療する方法が記載され、本方法は、式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体と、もしくは式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種の少なくとも1種、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を含む医薬組成物と、組織または器官を接触させることを含む。
【0043】
特に定義されない限り、本明細書中使用される技術用語及び科学用語は全て、本発明が属する技術の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。明細書において、文脈が明白にそうではないと指定しない限り、単数形は複数形も含む。本明細書中記載されるものと同様または等価な方法及び材料を本発明の実施または試験に使用できるものの、適切な方法及び材料を以下に記載する。本明細書中言及される全ての公報、特許出願、特許、及び他の参照文献は、参照として援用される。本明細書中記載される参照は、特許請求する本発明の先行技術であるとは認められない。矛盾が生じる場合、本明細書が、定義も含めて規制される。また、材料、方法、及び例は、例示にすぎず、制限することを意図しない。
【0044】
本発明の他の特長及び利点は、以下の詳細な説明及び請求項から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
定義
2つの文字間または記号間にあるのではないダッシュ記号(「-」)は、部分または置換基の結合点を示すのに使用される。例えば、-CONHは、炭素原子を通じて結合する。
【0046】
「アルキル」は、それ自身でまたは別の置換基の一部分として、親アルカン、アルケン、またはアルキンの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することに由来する、飽和もしくは不飽和の、分岐または直鎖の、一価炭化水素ラジカルを示す。アルキル基の例として、メチル;エチル類、例えばエタニル、エテニル、及びエチニルなど;プロピル類、例えば、プロパン-1-イル、プロパン-2-イル、プロプ-1-エン-1-イル(prop-1-en-1-yl)、プロプ-1-エン-2-イル(prop-1-en-2-yl)、プロプ-2-エン-1-イル(アリル)(prop-2-en-1-yl(allyl))、プロプ-1-イン-1-イル(prop-1-yn-1-yl)、プロプ-2-イン-1-イル(prop-2-yn-1-yl)など;ブチル類、例えばブタ
ン-1-イル、ブタン-2-イル、2-メチル-プロパン-1-イル、2-メチル-プロパン-2-イル、ブツ-1-エン-1-イル(but-1-en-1-yl)、ブツ-1-エン-2-
イル(but-1-en-2-yl)、2-メチル-プロプ-1-エン-1-イル(2-methyl-prop-1-en-1-yl)、ブツ-2-エン-1-イル(but-2-en-1-yl)、ブツ-2-エン-2-イル(but-2-en-2-yl)、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、ブツ-1-イン-1-イル(but-1-yn-1-yl)、ブツ-1-イン-3-イル(but-1-yn-3-yl)、ブツ-3-イン-1-イル(but-3-yn-1-yl)など;が挙げられるが、これらに限
定されない。
【0047】
「アルキル」という用語は、具体的には、任意の度合いまたはレベルの飽和度を有する基、すなわち、炭素炭素一重結合のみを有する基、1つまたは複数の炭素炭素二重結合を有する基、1つまたは複数の炭素炭素三重結合を有する基、及び炭素炭素一重、二重、三重結合を混合して有する基を含むものとする。特定レベルの飽和度を意図する場合、「アルカニル」、「アルケニル」、及び「アルキニル」という用語が使用される。アルキル基は、ある特定の実施形態において、1~20個の炭素原子、ある特定の実施形態において、1~12個の炭素原子、ある特定の実施形態において、1~10個の炭素原子、ある特定の実施形態において、1~6個の炭素原子、及びある特定の実施形態において、1~3個の炭素原子を有することができる。
【0048】
「アルコキシ」は、それ自身でまたは別の置換基の一部分として、ラジカルOR31を示し、式中、R31は、本明細書中定義されるとおりの、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、及びヘテロアリールアルキルから選択される。アルコキシ基の例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
「アリール」は、それ自身でまたは別の置換基の一部分として、親芳香環系の1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することに由来する一価芳香族炭化水素ラジカルを示す。アリールは、5員及び6員の炭素環式芳香環、例えば、ベンゼン;少なくとも1つの環は炭素環かつ芳香族である二環式環系、例えば、ナフタレン、インダン、及びテトラリン;ならびに少なくとも1つの環は炭素環かつ芳香族である三環式環系、例えば、フルオレンを包含する。アリールは、少なくとも1つの炭素環式芳香環及びそれと縮合した少なくとも1つの炭素環式芳香環、シクロアルキル環、またはヘテロシクロアルキル環を有する複数環系を包含する。例えば、アリールは、N、O、及びSから選択される1個または複数のヘテロ原子を含有する5員~7員のヘテロシクロアルキル環と縮合した5員及び6員の炭素環式芳香環を含む。そのような、環のうち1つのみが炭素環式芳香環である縮合二環式環系の場合、結合点は、炭素環式芳香環にある場合も、ヘテロシクロアルキル環にある場合もある。アリール基の例として、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキシレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどに由来する基が挙げられるが、これらに限定されない。アリール基は、ある特定の実施形態において、6~20個の炭素原子、6~12個の炭素原子、及びある特定の実施形態において、6~8個の炭素原子を有することができる。しかしながら、アリールは、本明細書中別々に定義されるヘテロアリールを、いかなる方法でも、包含することも、これと重複することもない。
【0050】
「アリールアルキル」は、それ自身でまたは別の置換基の一部分として、炭素原子、典型的には末端またはsp炭素原子と結合した水素原子のうちの1つがアリール基と置き換わった非環式のアルキルラジカルを示す。アリールアルキル基の例として、ベンジル、2-フェニルエタン-1-イル、2-フェニルエテン-1-イル、ナフチルメチル、2-ナフチルエタン-1-イル、2-ナフチルエテン-1-イル、ナフトベンジル、2-ナフトフェニルエタン-1-イルなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定のアルキル部分が意図される場合、アリールアルカニル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルの命名が使用される。ある特定の実施形態において、アリールアルキル基は、C
6-30アリールアルキル、例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分はC1-10であり、アリール部分はC6-20のものであり、ある特定の実施形態において、アリールアルキル基は、C6-20アリールアルキル、例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分はC1-8であり、アリール部分はC6-12のものである。
【0051】
「AUC」は、患者の生体液中の化合物またはその代謝産物の濃度を、患者への化合物投与後の時間の関数として表した曲線の曲線下面積である。ある特定の実施形態において、化合物は、プロドラッグが可能であり、代謝産物は薬物が可能である。生体液の例として、血漿及び血液が挙げられる。AUCは、生体液、例えば血漿または血液中の化合物またはその代謝産物の濃度を、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC/MS/MS)などの方法を用いて、様々な時間間隔で測定し、血漿濃度対時間曲線の曲線下面積を計算することにより、求める場合がある。薬物濃度対時間曲線からAUCを計算する適切な方法は、当該分野で周知である。本発明に関係がある場合、薬物またはその代謝産物のAUCは、患者への本発明の前記当化合物の投与後、患者の血漿、血液、もしくは他の生体液または組織中の薬物濃度を経時的に測定することにより、求める場合がある。
【0052】
「生体利用度」は、患者への薬物またはそのプロドラッグの投与後、患者の体循環に到達する薬物の速度及び量を示し、これは、例えば、薬物の血漿または血液濃度対時間特性を評価することにより求めることができる。血漿または血液濃度対時間曲線を特性決定するのに有用なパラメーターとして、曲線下面積(AUC)、最高濃度到達時間(Tmax)、及び最高薬物濃度(Cmax)が挙げられ、Cmaxは、患者への1用量の薬物または1剤形の薬物の投与後の患者の血漿または血液中の薬物の最高濃度であり、Tmaxは、患者への薬物の1用量の薬物または1剤形の薬物の投与後に患者の血漿または血液中の薬物が最高濃度(Cmax)に到達する時間である。
【0053】
「Cmax」は、患者への薬物またはプロドラッグ1用量の投与後の、患者の血漿または血液中の薬物の最高濃度である。
【0054】
「Tmax」は、患者への薬物またはプロドラッグ1用量の投与後に、患者の血漿または血液中の薬物が最高(ピーク)濃度(Cmax)に到達する時間である。
【0055】
「本発明の化合物(複数可)」または「本発明の化合物」は、これらの式内の具体的化合物をどれでも包含する。化合物は、それらの化学構造及び/または化学名のいずれでも同定される場合がある。化学構造及び化学名が矛盾する場合、化学構造が、化合物を同定する決定要因である。本明細書中記載される化合物は、1つまたは複数のキラル中心及び/または二重結合を有する場合があり、したがって立体異性体、例えば二重結合異性体(すなわち、幾何異性体)、鏡像異性体、またはジアステレオマーなどとして存在する場合がある。したがって、明細書の範囲内で、全体にまたは部分的に、相対配置とともに描写される化学構造はどれでも、例示される化合物の全ての可能な鏡像異性体及び立体異性体を、立体異性体として純粋な形(例えば、幾何的に純粋、鏡像異性体として純粋、またはジアステレオマーとして純粋)ならびに鏡像異性体混合物及び立体異性体混合物も含めて、包含する。鏡像異性体混合物及び立体異性体混合物は、当業者に周知の分離技法またはキラル合成技法を用いて、それらの構成鏡像異性体または立体異性体へと分割することができる。本発明の化合物は、「クレアチンプロドラッグ」または「本発明のプロドラッグ」とも示される。
【0056】
本発明の化合物として、本発明の化合物の立体異性体または光学異性体、それらのラセミ体、及びそれらの他の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。そのような実施形態において、単独の鏡像異性体またはジアステレオマー、すなわち、光学活性な形は、
不斉合成により、またはラセミ体の分割により得ることができる。ラセミ体の分割は、例えば、分割剤の存在下での結晶化、または例えば、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムを用いたクロマトグラフィーなどの従来方法により達成することができる。また、本発明の化合物は、二重結合を持つ化合物のZ型及びE型(またはシス型及びトランス型)を含む。本発明の化合物が様々な互変異性形で存在する実施形態において、化合物は、その化合物の全ての互変異性形を含む。
【0057】
「立体異性体」は、同じ原子の同じ結合からなるが、異なる三次元構造を有し、その構造は相互転換可能ではない、化合物を示す。本発明は、様々な立体異性体及びそれらの混合物を企図し、「鏡像異性体」を包含する。鏡像異性体は、分子が互いに相手と重なり合わない鏡像である2つの立体異性体を示す。
【0058】
本発明の化合物は、複数の互変異性形で存在する場合もあり、本明細書中1種類の互変異性体を記載する場合は、簡便のためにすぎず、当然ながら、示される形の他の互変異性体も包含する。したがって、本明細書中描かれる化学構造は、例示される化合物の全ての可能な互変異性形を包含する。「互変異性体」という用語は、本明細書中使用される場合、非常に容易にお互い相手に変化するので、ある平衡で一緒に存在し得る異性体を示す。例えば、ケトンとエノールは、1つの化合物の2つの互変異性形である。別の例では、置換1,2,4-トリアゾール誘導体は、以下に示すとおり、少なくとも3つの互変異性形で存在する場合がある:

T1は、Hまたは置換基を有してもよいアルキルであり、
T2は、置換基を有してもよいアリールである。
【0059】
本発明の化合物は、1個または複数の原子が、通常自然に見られる原子質量とは異なる原子質量を有する同位体標識化化合物も包含する。本明細書中開示される化合物に組み込むことができる同位体の例として、H、H、11C、13C、14C、15N、18O、17Oなどが挙げられるが、これらに限定されない。化合物は、非溶媒和形、ならびに水和形を含む溶媒和形で、及びN-オキシドとして存在する場合がある。一般に、化合物は、水和物とすることができるか、溶媒和物とすることができるか、またはN-オキシドになることができる。ある特定の化合物は、複数の結晶または不定形で存在する場合がある。本発明の化合物は、その薬学上許容される塩または上記のもののいずれかの遊離酸形の薬学上許容される溶媒和物、ならびに上記のもののいずれかの結晶形を含む。
【0060】
「クレアチンキナーゼ系」には、クレアチン輸送体、クレアチン、クレアチンキナーゼ、クレアチンリン酸、ならびにクレアチン、クレアチンキナーゼ、及び/またはクレアチンリン酸の細胞内エネルギー輸送が含まれるが、これらに限定されない。クレアチンキナーゼ系として、ミトコンドリアクレアチンキナーゼ系及び細胞質クレアチンキナーゼ系が挙げられる。クレアチンキナーゼ系を冒すとは、クレアチンキナーゼ系に含まれる化合物及びタンパク質の輸送、合成、代謝、移行などを示す。
【0061】
「シクロアルキル」は、それ自身でまたは別の置換基の一部分として、飽和または部分不飽和の環状アルキルラジカルを示す。特定レベルの飽和度が意図される場合、「シクロアルカニル」または「シクロアルケニル」の命名が使用される。シクロアルキル基の例として、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどに由来する
基が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、シクロアルキル基は、C3-15シクロアルキル、C5-12シクロアルキルであり、ある特定の実施形態において、C3-7シクロアルキルである。
【0062】
「シクロアルキルアルキル」は、それ自身でまたは別の置換基の一部分として、炭素原子、典型的には末端またはsp炭素原子と結合した水素原子のうちの1個がシクロアルキル基と置き換わった非環式のアルキルラジカルを示す。特定のアルキル部分が意図される場合、シクロアルキルアルカニル、シクロアルキルアルケニル、またはシクロアルキルアルキニルの命名が使用される。ある特定の実施形態において、シクロアルキルアルキル基は、C7-30シクロアルキルアルキル、例えば、シクロアルキルアルキル基のアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分がC1-10であり、シクロアルキル部分がC6-20であるもの、及びある特定の実施形態において、シクロアルキルアルキル基はC7-20シクロアルキルアルキル、例えば、シクロアルキルアルキル基のアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分がC1-8であり、シクロアルキル部分がC4-20またはC6-12であるものである。
【0063】
「疾患」は、疾患、障害、症状、症候、または徴候を示す。
【0064】
「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード基を示す。
【0065】
「ヘテロアルキル」は、それ自身でまたは別の置換基の一部分として、炭素原子のうち1個または複数(及びそれに付随する任意の水素原子)がそれぞれ独立して、同一または異なるヘテロ原子基と置き換わったアルキル基を示す。ヘテロ原子基の例として、-O-、-S-、-O-O-、-S-S-、-O-S-、-NR5758-、=N-N=、-N=N-、-N=N-NR5960、-PR61-、-P(O)-、-POR62-、-O-P(O)-、-SO-、-SO-、-SnR6364-などが挙げられるがこれらに限定されず、式中、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、及びR64は、それぞれ独立して、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C6-12アリール、置換C6-12アリール、C7-18アリールアルキル、置換C7-18アリールアルキル、C3-7シクロアルキル、置換C3-7シクロアルキル、C3-7ヘテロシクロアルキル、置換C3-7ヘテロシクロアルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C6-12ヘテロアリール、置換C6-12ヘテロアリール、C7-18ヘテロアリールアルキル、または置換C7-18ヘテロアリールアルキルから選択される。特定レベルの飽和度が意図される場合、「ヘテロアルカニル」、「ヘテロアルケニル」、またはR60、R61、R62、R63、及びR64「ヘテロアルキニル」の命名が使用される。ある特定の実施形態において、R57、R58、R59、は、それぞれ独立して、水素及びC1-3アルキルから選択される。
【0066】
「ヘテロアリール」は、それ自身でまたは別の置換基の一部分として、親ヘテロ芳香族環系の1個の原子から1個の水素原子を除去することに由来する一価ヘテロ芳香族ラジカルを示す。ヘテロアリールは、少なくとも1つの他の環を有する複素環系に縮合した少なくとも1つのヘテロ芳香族環を包含し、少なくとも1つの他の環は、芳香族であっても非芳香族であってもよい。ヘテロアリールは、N、O、及びSから選択される1個または複数、例えば、1~4個またはある特定の実施形態において1~3個のヘテロ原子を含有し、残りの環原子は炭素である、5員~7員の芳香族、単環式環;ならびにN、O、及びSから選択される1個または複数、例えば、1~4個またはある特定の実施形態において1~3個のヘテロ原子を含有し、残りの環原子は炭素であり、かつ少なくとも1個のヘテロ原子は芳香環に存在する、二環式ヘテロシクロアルキル環を包含する。例えば、ヘテロアリールは、5員~7員のシクロアルキル環と縮合した5員~7員のヘテロ芳香環を含む。環のうち1つだけが1個または複数のヘテロ原子を含有するような縮合、二環式ヘテロア
リール環系の場合、結合点は、ヘテロ芳香環にある場合もシクロアルキル環にある場合もある。ある特定の実施形態において、ヘテロアリール基のN、S、及びO原子の合計数が1を超える場合、ヘテロ原子は、互いに隣り合わない。ある特定の実施形態において、ヘテロアリール基のN、S、及びO原子の合計数は、2以下である。ある特定の実施形態において、芳香族ヘテロ環のN、S、及びO原子の合計数は、1以下である。ヘテロアリールは、本明細書中定義されるとおりのアリールを包含することも、これと重複することもない。
【0067】
ヘテロアリール基の例として、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどに由来する基が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、ヘテロアリール基は、5員~20員のヘテロアリールであり、ある特定の実施形態において、5員~10員のヘテロアリールであり、ある特定の実施形態において、6-~8-ヘテロアリールである。ある特定の実施形態において、ヘテロアリール基は、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ピリジン、キノリン、イミダゾール、オキサゾール、またはピラジンに由来するものである。
【0068】
「ヘテロアリールアルキル」は、それ自身でまたは別の置換基の一部分として、炭素原子と結合した水素原子のうち1個が、ヘテロアリール基と置き換わった非環式のアルキルラジカルを示す。典型的には、末端またはsp炭素原子が、ヘテロアリール基で置換される原子である。特定のアルキル部分が意図される場合、「ヘテロアリールアルカニル」、「ヘテロアリールアルケニル」、及び「ヘテロアリールアルキニル」の命名が使用される。ある特定の実施形態において、ヘテロアリールアルキル基は、6員~30員のヘテロアリールアルキル、例えば、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分が1個~10個からなり、ヘテロアリール部分が5員~20員ヘテロアリールであるもの、及びある特定の実施形態において、6員~20員ヘテロアリールアルキル、例えば、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分が1個~8個からなり、ヘテロアリール部分が5員~12員ヘテロアリールであるものである。
【0069】
「ヘテロシクロアルキル」は、それ自身でまたは別の置換基の一部分として、1個または複数の炭素原子(及びそれに付随する任意の水素原子)がそれぞれ独立して、同一または異なるヘテロ原子基と置き換わった部分飽和または不飽和の環状アルキルラジカルを示す。炭素原子(複数可)と置き換わるヘテロ原子の例として、N、P、O、S、Siなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定レベルの飽和度が意図される場合、「ヘテロシクロアルカニル」または「ヘテロシクロアルケニル」の命名が使用される。ヘテロシクロアルキル基の例として、エポキシド、アジリン、チイラン、イミダゾリジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾリジン、ピロリジン、キヌクリジンなどに由来する基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
「ヘテロシクロアルキルアルキル」は、それ自身でまたは別の置換基の一部分として、炭素原子、典型的には末端またはsp炭素原子と結合した水素原子のうちの1個がヘテロシクロアルキル基と置き換わった非環式のアルキルラジカルを示す。特定のアルキル部分が意図される場合、ヘテロシクロアルキルアルカニル、ヘテロシクロアルキルアルケニ
ル、またはヘテロシクロアルキルアルキニルの命名が使用される。ある特定の実施形態において、ヘテロシクロアルキルアルキル基は、6員~30員のヘテロシクロアルキルアルキル、例えば、ヘテロシクロアルキルアルキルのアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分が1個~10個からなり、ヘテロシクロアルキル部分が5員~20員ヘテロシクロアルキルであるもの、及びある特定の実施形態において、6員~20員ヘテロシクロアルキルアルキル、例えば、ヘテロシクロアルキルアルキルのアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分が1個~8個からなり、ヘテロシクロアルキル部分が5員~12員ヘテロシクロアルキルであるものである。
【0071】
「脱離基」は、求核剤によって置換可能な原子または基を示し、そのような基として、ハロゲン、例えばクロロ、ブロモ、フルオロ、及びヨードなど、アルコキシカルボニル(例えば、アセトキシ)、アリールオキシカルボニル、メシルオキシ、トシルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、アリールオキシ(例えば、2,4-ジニトロフェノキシ)、メトキシ、N,O-ジメチルヒドロキシルアミノなどが挙げられる。
【0072】
「親芳香環系」は、共役π電子系を有する不飽和環式または多環式環系を示す。「親芳香環系」の定義に含まれるものとして、1つまたは複数の環が芳香族であり1つまたは複数の環が飽和もしくは不飽和である縮合環系、例えば、フルオレン、インダン、インデン、フェナレンなどがある。親芳香環系の例として、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキシレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
「親ヘテロ芳香環系」は、1個または複数の炭素原子(及びそれに付随する任意の水素原子)がそれぞれ独立して、同一または異なるヘテロ原子と置き換わった芳香環系を示す。炭素原子と置き換わるヘテロ原子の例として、N、P、O、S、及びSiなどが挙げられるが、これらに限定されない。「親ヘテロ芳香環系」の定義に具体的に含まれるものとして、1つまたは複数の環が芳香族であり1つまたは複数の環が飽和もしくは不飽和である縮合環系、例えば、アルシンドール、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテンなどがある。親ヘテロ芳香環系の例として、アルシンドール、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
「患者」は、動物、好ましくは哺乳類、特に好ましくはヒトを示し、老若男女を含む。
【0075】
「医薬組成物」は、少なくとも1種の本発明の化合物及び少なくとも1種の薬学上許容されるビヒクルを示し、それを用いることで、少なくとも1種の本発明の化合物が、患者に投与され、組織もしくは器官と接触し、または細胞と接触するものである。「薬学上許容される」は、連邦政府または州政府の規制機関により認可されたまたは認可見込みであ
るか、もしくは米国薬局方または動物及びより好ましくはヒトでの使用に関する他の一般的に承認された薬局方に記載されたものであることを示す。
【0076】
「薬学上許容される塩」は、親化合物の所望の薬理活性を保持する、化合物の塩を示す。そのような塩として、以下が挙げられる:(1)酸付加塩、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などと形成されたもの;または有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、t-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などと形成されたもの;ならびに(2)親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、またはアルミニウムイオンに置き換えられた場合に形成される塩;もしくはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミンなどの有機塩基の配位化合物。ある特定の実施形態において、薬学上許容される塩は、塩酸塩である。
【0077】
「薬学上許容されるビヒクル」は、薬学上許容される希釈剤、薬学上許容されるアジュバント、薬学上許容される賦形剤、薬学上許容される担体、または上記の任意のものの組み合わせであって、それとともに本発明の化合物を患者に投与する場合があり、かつ本発明の化合物の薬理活性を破壊しないものであり、かつ化合物を治療上有効量で提供するのに十分な用量で投与された場合に無毒であるものを示す。
【0078】
「プロドラッグ」は、体内で活性薬物を放出するために変換を必要とする、薬物分子の誘導体である。プロドラッグは、親薬物に変換されるまで薬理学的に不活性であることが多いが、必ずしもそうである必要はない。式(I)、(III)、(VI)、(VII)の化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種は、患者の体内で代謝されてクレアチンを放出するクレアチンプロドラッグである。
【0079】
「前駆部分」は、薬物と、典型的には薬物の官能基と、使用時の特定条件下で切断可能な結合(複数可)を介して結合した基を示す。薬物と前駆部分の間の結合(複数可)は、酵素手段により切断される場合も、非酵素手段により切断される場合もある。使用条件下、例えば、患者への投与後、薬物と前駆部分の間の結合(複数可)は、切断されて親化合物を放出することができる。前駆部分の切断は、加水分解反応を介してなどにより自発的に進行する場合もあるし、別の作用剤、例えば酵素により、光により、酸により、もしくは物理的もしくは環境パラメーターの変化またはパラメーターへの曝露、例えば温度、pHなどの変化により、触媒または誘導される場合もある。作用剤は、使用条件に内在するもの、例えばプロドラッグが投与される患者の体循環に存在する酵素などの場合もあるし、胃の酸性条件または作用剤が外部から補給される場合もある。
【0080】
「保護基」は、分子中の反応性基と結合した場合に、その反応性を遮蔽、低下、または阻止する原子の集団を示す。保護基の例は、Wuts and Greene,"Pro
tective Groups in Organic Synthesis," Jo
hn Wiley & Sons, 4th ed. 2006; Harrison et al., "Compendium of Organic Synthetic
Methods," Vols.1-11, John Wiley & Sons
1971-2003; Larock "Comprehensive Organic
Transformations," John Wiley & Sons, 2n
d ed. 2000;及びPaquette, "Encyclopedia of
Reagents for Organic Synthesis," John Wi
ley & Sons, 11th ed. 2003に見ることができる。アミノ保護基の例として、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、トリメチルシリル(TMS)、2-トリメチルシリル-エタンスルホニル(SES)、トリチル及び置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、ニトロ-ベラトリルオキシカルボニル(NVOC)などが挙げられるが、これらに限定されない。ヒドロキシ保護基の例として、ヒドロキシ基がアシル化またはアルキル化のいずれかをうけるもの、例えばベンジル、及びトリチルエーテル、ならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル、及びアリルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
「溶媒和物」は、化合物と化学量論的または非化学量論的量の1種または複数の溶媒分子による分子錯体を示す。そのような溶媒分子は、医薬分野で一般的に使用されるものであり、レシピエントに対して非侵襲性であることが既知のもの、例えば、水、エタノールなどである。化合物または化合物の部分と溶媒との分子錯体は、非共役分子内力、例えば、静電力、ファン・デル・ワールス力、または水素結合などにより安定化され得る。「水和物」という用語は、1種または複数の溶媒分子が水である錯体を示し、一水和物及び半水和物を含む。
【0082】
「実質的に1種のジアステレオマー」は、2つ以上の不斉中心を有する化合物について、その化合物のジアステレオマー過剰度(d.e.)が、90%超または少なくとも約90%であるものを示す。ある特定の実施形態において、d.e.は、例えば、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%を超えるか、少なくともそれだけある。
【0083】
「置換された」は、1個または複数の水素原子が、それぞれ独立して、同一または異なる置換基(複数可)に置き換えられた基を示す。置換基の例として、-M、-R70、-O、=O、-OR70、-SR.70、-S、=S、-NR7071、=NR70、-CF、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO、=N、-N3、-S(O)、-S(O)OH、-S(O)70、-OS(O)O、-OS(O)70、-P(O)(O、-P(O)(OR70)(O)、-OP(O)(OR70)(OR71)、-C(O)R70、-C(S)R70、-C(O)OR70、-C(O)NR7071、-C(O)O-、-C(S)OR70、-NR72C(O)NR7071、-NR72C(S)NR7071、-NR72C(NR73)NR7071、及び-C(NR72)NR7071が挙げられるが、これらに限定されず、式中、Mは、独立して、ハロゲンであり;R70、R71、R72、及びR73は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択されるか、もしくはR70及びR71は、それらが結合した窒素原子と一緒になって、ヘテロシクロアルキル環から選択される環を形成する。ある特定の実施形態において、R70、R71、R72、及びR73は、それぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-12シクロアルキル、C3-12ヘテロシクロアルキル、C6-12アリール、及びC6-12ヘテロアリールから選択される。ある特定の実施形態において、各置換基は、独立して、ハロゲン、-OH、-CN、-CF、=O、-NO、C1-3アルコキシ、C1-3アルキル、-COOR80から選択され、式中、R80は、水素、C1-3アルキル、及び(NR74から選択され、式中、各R74は、独立して、水素またはC1-3アルキルである。
【0084】
ある特定の実施形態において、置換アリール及び置換ヘテロアリールは、以下の置換基のうち1つまたは複数を含む:F、Cl、Br、C1-3アルキル、置換アルキル、C1-3アルコキシ、-S(O)NR5051、-NR5051、-CF、-OCF、-CN、-NR50S(O)51、-NR50C(O)R51、C5-10アリール、置換C5-10アリール、C5-10ヘテロアリール、置換C5-10ヘテロアリール、-C(O)OR50、-NO、-C(O)R50、-C(O)NR5051、-OCHF、C1-3アシル、-SR50、-S(O)OH、-S(O)50、-S(O)R50、-C(S)R50、-C(O)O、-C(S)OR50、-NR50C(O)NR5152、-NR50C(S)NR5152、及び-C(NR50)NR5152、C3-8シクロアルキル、及び置換C3-8シクロアルキル、式中、R50、R51、及びR52は、それぞれ独立して、水素及びC1-4アルキルから選択される。
【0085】
ある特定の実施形態において、置換基は、ハロゲン、-NO、-OH、-COOH、-NH、-CN、-CF、-OCF、C1-8アルキル、置換C1-8アルキル、C1-8アルコキシ、及び置換C1-8アルコキシから選択することができ、置換C1-8アルキル及び置換C1-8アルコキシの各置換基は、独立して、ハロゲン、-NO、-OH、-COOH、-NH、-CN、-CF、-OCFから選択される。
【0086】
ある特定の実施形態において、各置換基は、独立して、ハロゲン、-OH、-CN、-CF、=O、-NO、C1-3アルコキシ、C1-3アルキル、-COOR80から選択され、式中、R80は、水素、C1-3アルキル、及び(NR74から選択され、式中、各R74は、独立して、水素またはC1-3アルキルである。
【0087】
「治療上有効量」は、疾患または障害もしくは疾患または障害の臨床症候の少なくとも1つを治療するために対象に投与された場合、疾患、障害、または症候のそのような治療に影響を及ぼすのに十分な化合物の量を示す。「治療上有効量」は、例えば、化合物、疾患、障害、及び/または疾患もしくは障害の症候、疾患、障害、及び/または疾患もしくは障害の症候の重篤度、治療される患者の年齢、体重、及び/または健康状態、ならびに処方する医師の判断に応じて変わる可能性がある。所与の症例が何であってもその適切な量は、当業者がすぐに突き止めることができるものであるか、または常用実験により決定することができるものである。
【0088】
「治療上有効な用量」は、患者の疾患または障害の治療に効果をもたらす用量である。治療上有効な用量は、化合物によって変化する場合も、患者によって変化する場合もあり、患者の状態及び送達経路などの要因に依存する場合もある。治療上有効な用量は、当業者に既知である常用の薬理学的手順に従って決定することができる。
【0089】
任意の疾患または障害について「治療する」または「治療」は、疾患、障害、または疾患もしくは障害の臨床症候の少なくとも1つを停止または寛解させること、疾患、障害、または疾患もしくは障害の臨床症候の少なくとも1つを患う危険性を低下させること、疾患、障害、または疾患もしくは障害の臨床症候の少なくとも1つの進展を遅らせること、もしくは疾患、障害、または疾患もしくは障害の臨床症候の少なくとも1つの進展の危険性を低下させることを示す。「治療する」または「治療」は、疾患または障害を、物理的(例えば、識別可能な症候の安定化)、生理的(例えば、物理的パラメーターの安定化)のいずれかまたは両方で阻害すること、及び患者にとって識別可能か否かを問わず少なくとも1つの物理的パラメーターを阻害することも示す。ある特定の実施形態において、「治療する」または「治療」は、疾患または障害に曝されるまたはその素因がある患者において、たとえその患者に疾患または障害が出ていないまたは呈してしないとしても、疾患
または障害もしくはその1つまたは複数の症候の発症を遅らせることを示す。
【0090】
ここから、化合物、組成物、及び方法のある特定の実施形態について、詳細に説明する。開示される実施形態は、請求項を制限することを意図しない。反対に、請求項が、全ての代替、修飾、及び等価形態を包含することを意図する。
【0091】
クレアチンプロドラッグ
ある特定の実施形態において、クレアチンプロドラッグは、式(I)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体であり:
式(I)の化合物は、以下のものであり、

式中:
Rは、-CHまたは-CDであり;
は、水素、-OR、-C(O)OR、-C(O)R


、または
であり;
nは、1~2の整数であり;
各Rは、独立して、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、または置換C6-20ヘテロアリールアルキルであり;
各R及びRは、独立して、水素、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルであり;
23は、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C5-12シクロアルキル、置換C5-12シクロアルキル、C5-12アリール、及びC5-12置換アリール、-C(O)-OR22、または-C(O)-R22であり;
22は、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、または置換C6-20ヘテロアリールアルキルであり;かつ
48は、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルである。
【0092】
式(I)の化合物のある特定の実施形態において、nは、整数1である。
【0093】
式(I)の化合物のある特定の実施形態において、nは、整数2である。
【0094】
式(I)の化合物のある特定の実施形態において、各R及びR22は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、ドデシル、1,1-ジメトキシエチル、1,1-ジエトキシエチル、フェニル、4-メトキシフェニル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2-ピリジル、3-ピリジル、または4-ピリジルである。
【0095】
式(I)の化合物のある特定の実施形態において、各R及びR22は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、ドデシル、1,1-ジエトキシエチル、フェニル、シクロヘキシル、または3-ピリジルである。
【0096】
式(I)の化合物のある特定の実施形態において、各R及びR22は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ドデシル、tert-ブチル、フェニル、またはシクロヘキシルである。
【0097】
式(I)の化合物のある特定の実施形態において、各R及びR22は、独立して、エチル、イソプロピル、またはドデシルである。
【0098】
式(I)の化合物のある特定の実施形態において、R及びRはそれぞれ独立して、水素である。
【0099】
式(I)の化合物のある特定の実施形態において、R23は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルである。
【0100】
式(I)の化合物のある特定の実施形態において、R23は、メチルである。
【0101】
式(I)の化合物のある特定の実施形態において、各置換基は、独立して、ハロゲン、-NO、-OH、-NH、-CN、-CF、-OCF、=O、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12アルコキシ、または置換C1-12アルコキシ、-COOR10’であり、式中、R10’は、水素、C1-3アルキル、または-(NR11’であり、式中、各R11’は、独立して、水素またはC1-3アルキルである。
【0102】
実施形態によっては、式(I)の化合物は、式(X)、式(XI)、式(XII)、式(XIII)、式(XIV)、式(XV)、式(XVa)、または式(XVb)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体であり;式(X)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;
式(XI)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;かつ
24は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;
式(XII)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;かつ
25は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;
式(XIII)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;かつ
26は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;
式(XIV)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;
式(XV)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;
式(XVa)の化合物は、以下のものであり:
式中、Rは、-CHまたは-CDであり;
39は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり、かつ
及びRは、独立して、水素、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルであり;
式(XVb)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;
及びRは、それぞれ独立して、水素、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルであり;かつ
53は、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルである。
【0103】
式(XI)、(XII)、及び(XIII)の化合物のある特定の実施形態において、各R24、R25、及びR26は、独立して、エチル、イソプロピル、またはドデシルである。
【0104】
式(XVa)の化合物のある特定の実施形態において、R39は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルである。
【0105】
式(XVa)の化合物のある特定の実施形態において、R39は、メチルである。
【0106】
式(XVa)または(XVb)の化合物ある特定の実施形態において、R及びRは、それぞれ水素である。
【0107】
式(XVb)の化合物のある特定の実施形態において、R53は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、またはtert-ブチルである。
【0108】
ある特定の実施形態において、クレアチンプロドラッグは、式(III)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体であり:
式(III)の化合物は、以下のものであり:

式中:
Wは、-CHOHまたは-C(O)ORであり;
Rは、-CHまたは-CDであり;
は、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、置換C6-20ヘテロアリールアルキル、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)(NR)、-C(R)-C(O)OR22、-C(R)-(O)C(O)R22、-C(R)-(O)C(O)-OR22

、または
であり;
nは、1~2の整数であり;
各R及びRは、独立して、水素、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルであり;かつ
は、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、または置換C6-20ヘテロアリールアルキルであり;
23は、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C5-12シクロアルキル、置換C5-12シクロアルキル、C5-12アリール、及びC5-12置換アリール、-C(O)-OR22、または-C(O)-R22であり;かつ
22は、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル
、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、または置換C6-20ヘテロアリールアルキルである。
【0109】
式(III)の化合物のある特定の実施形態において、nは、整数1である。
【0110】
式(III)の化合物のある特定の実施形態において、nは、整数2である。
【0111】
式(III)の化合物のある特定の実施形態において、各R、R、及びR22は、独立して、C1-6アルキル、置換C1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、置換C3-7シクロアルキル、C5-7アリール、または置換C5-7アリールである。
【0112】
式(III)の化合物のある特定の実施形態において、各R、R、及びR22は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、ドデシル、1,1-ジメトキシエチル、1,1-ジエトキシエチル、フェニル、4-メトキシフェニル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2-ピリジル、3-ピリジル、または4-ピリジルである。
【0113】
式(III)の化合物のある特定の実施形態において、各R、R、及びR22は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、ドデシル、1,1-ジエトキシエチル、フェニル、シクロヘキシル、または3-ピリジルである。
【0114】
式(III)の化合物のある特定の実施形態において、各R、R、及びR22は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ドデシル、tert-ブチル、フェニル、またはシクロヘキシルである。
【0115】
式(III)の化合物のある特定の実施形態において、各R、R、及びR22は、独立して、エチル、イソプロピル、またはドデシルである。
【0116】
式(III)の化合物のある特定の実施形態において、各R及びRは、独立して、水素である。
【0117】
式(III)の化合物のある特定の実施形態において、各R23は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルである。
【0118】
式(III)の化合物のある特定の実施形態において、各R23は、メチルである。
【0119】
式(III)の化合物のある特定の実施形態において、各置換基は、独立して、ハロゲン、-NO、-OH、-NH、-CN、-CF、-OCF、=O、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12アルコキシ、または置換C1-12アルコキシ、-COOR10’であり、式中、R10’は、水素、C1-3アルキル、または-
(NR11’であり、式中、各R11’は、独立して、水素またはC1-3アルキルである。
【0120】
さらに別の実施形態において、式(III)の化合物は、式(XVII)、式(XVIII)、または式(XIX)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体であり;
式(XVII)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;
29は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、-シクロヘキシル、-CH-C(O)OR43、-CH-(O)C(O)R43、-CH-(O)C(O)OR43、または
であり;
39は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;
43は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;かつ
及びRは、それぞれ独立して、水素、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルであり;
式(XVIII)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;
式(XIX)の化合物は、以下のものであり:
式中、Rは、-CHまたは-CDである。
【0121】
式(XVII)の化合物のある特定の実施形態において、各R29及びR43は、独立して、エチル、イソプロピル、またはドデシルである。
【0122】
式(XVII)の化合物のある特定の実施形態において、各R39は、メチルである。式(XVII)の化合物のある特定の実施形態において、R及びRは、それぞれ水素である。
【0123】
ある特定の実施形態において、クレアチンプロドラッグは、式(VI)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体であり:
式(VI)の化合物は、以下のものであり:

式中:
Rは、-CHまたは-CDであり;
10は、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、置換C6-20ヘテロアリールアルキル、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)(NR)、-C(R)-C(O)OR22、-C(R)-(O)C(O)R22、-C(R)-(O)C(O)-OR22

、または
であり;
11及びR12は、それぞれ独立して、水素または-OR13であるか;もしくはR11及びR12は、それぞれ-C(O)Rであり、ただしR11及びR12が両方とも水素であることはできず、
13は、独立して、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、置換C6-20ヘテロアリールアルキル-CH(OR)、-C(O)R、-C(O)OR、または-C(O)(NR)であり;
各R及びRは、独立して、水素、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルであり;
は、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、または置換C6-20ヘテロアリールアルキルであり;
23は、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C5-12シクロアルキル、置換C5-12シクロアルキル、C5-12アリール、及びC5-12置換アリール、-C(O)-OR22、または-C(O)-R22であり;
22は、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、または置換C6-20ヘテロアリールアルキルであり;かつ
nは、1~2の整数である。
【0124】
式(VI)の化合物のある特定の実施形態において、各R、R10、及びR22は、独立して、C1-6アルキル、置換C1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、置換C3-7シクロアルキル、C5-7アリール、または置換C5-7アリールである。
【0125】
式(VI)の化合物のある特定の実施形態において、各R、R10、及びR22は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、ドデシル、1,1-ジメトキシエチル、1,1-ジエトキシエチル、フェニル、4-メトキシフェニル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2-ピリジル、3-ピリジル、または4-ピリジルである。
【0126】
式(VI)の化合物のある特定の実施形態において、各R、R10、及びR22は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチ
ル、ネオペンチル、ドデシル、1,1-ジエトキシエチル、フェニル、シクロヘキシル、または3-ピリジルである。
【0127】
式(VI)の化合物のある特定の実施形態において、各R、R10、及びR22は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ドデシル、tert-ブチル、フェニル、またはシクロヘキシルである。
【0128】
式(VI)の化合物のある特定の実施形態において、各R、R10、及びR22は、独立して、エチル、イソプロピル、またはドデシルである。
【0129】
式(VI)の化合物のある特定の実施形態において、各R及びRは、独立して、水素である。
【0130】
式(VI)の化合物のある特定の実施形態において、R11及びR12は、それぞれ、ヒドロキシルである。
【0131】
式(VI)の化合物のある特定の実施形態において、R11またはR12の一方は、水素であり、他方は、ヒドロキシルである。
【0132】
式(VI)の化合物のある特定の実施形態において、各R23は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルである。
【0133】
式(VI)の化合物のある特定の実施形態において、各R23は、メチルである。
【0134】
式(VI)の化合物のある特定の実施形態において、各置換基は、独立して、ハロゲン、-NO、-OH、-NH、-CN、-CF、-OCF、=O、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12アルコキシ、または置換C1-12アルコキシ、-COOR10’であり、式中、R10’は、水素、C1-3アルキル、または-(NR11’であり、式中、各R11’は、独立して、水素またはC1-3アルキルである。
【0135】
式(VI)の化合物のある特定の実施形態において、nは、整数1である。
【0136】
さらに別の実施形態において、式(VI)の化合物は、式(XXII)、式(XXIII)、式(XXIV)、式(XXV)、式(XXVI)、式(XXVII)、または式(XXVIII)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体であり;
式(XXII)の化合物は、以下のものであり:

式(XXIII)の化合物は、以下のものであり:

式(XXIV)の化合物は、以下のものであり:

式(XXV)の化合物は、以下のものであり:

式(XXVI)の化合物は、以下のものであり:

式(XXVII)の化合物は、以下のものであり:

式(XXVIII)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;
は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチルであり;
32は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、シクロヘキシル;
-CH-C(O)OR43、-CH-(O)C(O)R43、-CH-(O)C(O)OR43、または
であり;
39は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;
各R33は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;R43は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルであり;かつ
及びRは、それぞれ独立して、水素、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルである。
【0137】
ある特定の実施形態において、各R32及びR33は、独立して、エチル、イソプロピル、またはドデシルである。
【0138】
ある特定の実施形態において、R39は、メチルである。
【0139】
ある特定の実施形態において、R及びRは、それぞれ水素である。
【0140】
ある特定の実施形態において、クレアチンプロドラッグは、式(VII)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体であり:
式(VII)の化合物は、以下のものであり:

式中:
Rは、-CHまたは-CDであり;
各R14は、独立して、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、置換C6-20ヘテロアリールアルキル-CH(OR)、-C(O)R、-C(O)OR、または-C(O)(NR)であり;
各R及びRは、独立して、水素、C1-12アルキル、または置換C1-12アルキルであり;かつ
は、水素、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12ヘテロアルキル、置換C1-12ヘテロアルキル、C3-12シクロアルキル、置換C3-12シクロアルキル、C4-20シクロアルキルアルキル、置換C4-20シクロアルキルアルキル、C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、置換C4-20ヘテロシクロアルキルアルキル、C5-12アリール、置換C5-12アリール、C5-12ヘテロアリール、置換C5-12ヘテロアリール、C6-20アリールアルキル、置換C6-20アリールアルキル、C6-20ヘテロアリールアルキル、または置換C6-20ヘテロアリールアルキルである。
【0141】
式(VII)の化合物のある特定の実施形態において、Rは、C1-6アルキル、置換C1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、置換C3-7シクロアルキル、C5-7アリール、または置換C5-7アリールである。
【0142】
式(VII)の化合物のある特定の実施形態において、Rは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、ドデシル、1,1-ジメトキシエチル、1,1-ジエトキシエチル、フェニル、4-メトキシフェニル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2-ピリジル、3-ピリジル、または4-ピリジルである。
【0143】
式(VII)の化合物のある特定の実施形態において、Rは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、ドデシル、1,1-ジエトキシエチル、フェニル、シクロヘキシル、または3-ピリジルである。
【0144】
式(VII)の化合物のある特定の実施形態において、Rは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ドデシル、tert-ブチル、フェニル、またはシクロヘキシルである。
【0145】
式(VII)の化合物のある特定の実施形態において、Rは、エチル、イソプロピル、またはドデシルである。
【0146】
式(VII)の化合物のある特定の実施形態において、各R14は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルである。
【0147】
式(VII)の化合物のある特定の実施形態において、一方のR14は、メチルであり
、かつ他方のR14は、水素である。
【0148】
式(VII)の化合物のある特定の実施形態において、各R及びRは、独立して、水素である。
【0149】
式(VII)の化合物のある特定の実施形態において、各置換基は、独立して、ハロゲン、-NO、-OH、-NH、-CN、-CF、-OCF、=O、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12アルコキシ、または置換C1-12アルコキシ、-COOR10’であり、式中、R10’は、水素、C1-3アルキル、または-(NR11’であり、式中、各R11’は、独立して、水素またはC1-3アルキルである。
【0150】
さらに別の実施形態において、式(VII)の化合物は、式(XXIX)の化合物、もしくはその薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体であり;
式(XXIX)の化合物は、以下のものであり:

式中、Rは、-CHまたは-CDであり;かつ
各R34は、独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ドデシル、フェニル、またはシクロヘキシルである。
【0151】
式(XXIX)の化合物のある特定の実施形態において、一方のR34は、メチルであり、かつ他方のR34は、水素である。
【0152】
クレアチンプロドラッグの合成
当業者なら、式(I)、(III)、(VI)、(VII)のクレアチンプロドラッグ化合物、及びそれらの任意の亜種または化学種、もしくはそれらの薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体が、当該分野で利用可能な一般的合成方法を介して調製可能なことがわかるだろう(例えば、Wuts and Greene, "P
rotective Groups in Organic Synthesis,"
John Wiley & Sons, 4th ed. 2006; Harrison et al., "Compendium of Organic Synthet
ic Methods," Vols. 1-11, John Wiley & So
ns 1971-2003; Larock "Comprehensive Orga
nic Transoformtions," John Wiley & Sons,
2nd ed. 2000;及びPaquette, "Encyclopedia
of Reagents for Organic Synthesis," John
Wiley & Sons, 11th ed. 2003)。化合物及びそれらの中間体を調製するのに有用な出発物質は、市販されており、そうでなければ、周知の合成法により調製することができる。
【0153】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物及び薬学上許容されるビヒクルを含むことができる。医薬組成物は、本発明の化合物を治療上有効量で、及び薬学上許容されるビヒクル
を含むことができる。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、1種より多い本発明の化合物を含むことができる。薬学上許容されるビヒクルとして、希釈剤、アジュバント、賦形剤、及び担体が挙げられる。
【0154】
医薬組成物は、標準手順を用いて製造することができる(例えば、"Remingto
n’s The Science and Practice of Pharmacy," 21st edition, Lippincott, Williams &
Wilcox, 2005を参照)。医薬組成物は、従来の混合、溶解、造粒、ドラジェ形成、湿式粉砕(levigating)、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥プロセスにより、製造することができる。医薬組成物は、1種または複数の生理学上許容される担体、希釈剤、賦形剤、または助剤を用いて従来様式で配合することができ、これらは、本明細書中開示される化合物を製剤へと加工しやすくするものであり、薬学的に使用可能なものである。適切な配合は、部分的に、投与経路に依存する可能性がある。
【0155】
本発明の医薬組成物は、患者に投与した際に、クレアチンの治療的血漿中濃度を提供することができる。クレアチンプロドラッグの前駆部分は、in vivoで、化学的及び/または酵素的に切断されてクレアチンを放出することができる。哺乳類の、腸管腔、腸管組織、血液、肝臓、脳、または任意の他の適切な組織に存在する1種または複数の酵素が、投与されたプロドラッグの前駆部分を酵素切断することができる。例えば、前駆部分は、胃腸管により吸収された後(例えば、哺乳類の、腸管組織、血液、肝臓、または他の適切な組織中で)切断され得る。ある特定の実施形態において、クレアチンは、腸管粘膜バリアを通過する間、前駆部分と結合したままでいることで、全身循環前の代謝から保護される。ある特定の実施形態において、クレアチンプロドラッグは、本質的に、腸細胞内では代謝されて対応するクレアチンを放出することはなく、体循環内で代謝されて親化合物になる。胃腸管による吸収後のクレアチンプロドラッグの前駆部分の切断は、能動輸送、受動拡散のいずれかにより、または能動及び受動プロセス両方の組み合わせにより、プロドラッグが体循環に吸収されることを可能にする場合がある。
【0156】
クレアチンプロドラッグは、生体バリア、例えば血液脳関門などをプロドラッグが通過し終わるまで、インタクトなままでいることができる。ある特定の実施形態において、本発明のプロドラッグは、部分的に切断されることが可能であり、例えば、前駆部分のうち全部ではなく1つまたは複数箇所が、生体バリアを通過する前に、もしくは細胞、組織、または器官に取り込まれた後に切断されることが可能である。
【0157】
クレアチンプロドラッグは、体循環中ではインタクトなままでいることができ、受動的または能動輸送機構によりのいずれかで、器官の細胞により吸収され得る。ある特定の実施形態において、クレアチンプロドラッグは、親油性となり、細胞膜を通って受動的に移動することができる。細胞取り込み後、プロドラッグは、化学的及び/または酵素的に切断されて、対応するクレアチンを細胞の細胞質へと放出することができ、その結果、クレアチンの細胞内濃度が上昇する。ある特定の実施形態において、プロドラッグは、ミトコンドリア膜などの細胞内膜を透過することができ、それにより、ミトコンドリアなどの細胞内小器官へのプロドラッグの送達、及びその後の前駆部分または複数の前駆部分の切断の結果、クレアチンの送達を促進することができる。
【0158】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、胃腸上皮を通じた本発明の化合物の吸収を促進するアジュバントを含むことができる。そのようなエンハンサーは、例えば、胃腸管のタイトジャンクションを開く、またはp-糖タンパク質などの細胞成分の効果を修飾することができる。適切なエンハンサーとして、サリチル酸のアルカリ金属塩、例えばサリチル酸ナトリウムなど、カプリル酸もしくはカプリン酸のアルカリ金属塩、例えばカプリル酸ナトリウムもしくはカプリン酸ナトリウムなどを挙げることができる。エンハンサ
ーとして、例えば、デオキシコール酸ナトリウムなどの胆汁酸塩を挙げることができる。様々なp-糖タンパク質修飾剤が、米国特許第5,112,817号及び米国特許第5,643,909号に記載されている。様々な吸収向上化合物及び材料が、米国特許第5,824,638号、及び米国特許出願第2006/0046962号に記載されている。細胞膜透過性を向上させる他のアジュバントとして、レソルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール、及び胆汁酸が挙げられる。
【0159】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、本発明の化合物の酵素分解を減少させるアジュバントを含むことができる。プロテイノイド微粒子、リポソーム、または多糖類を用いたマイクロカプセル化も、投与された化合物の酵素分解を減少させるのに有効となり得る。
【0160】
医薬組成物は、1種または複数の薬学上許容されるビヒクルも含むことができ、そのようなビヒクルとして、賦形剤、アジュバント、担体、希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、安定剤、界面活性剤、充填材、緩衝剤、増粘剤、乳化剤、湿潤剤などが挙げられる。ビヒクルは、医薬組成物の空隙率及び透過性を改変するように、水和及び崩壊性質を改変するように、水和を制御するように、製造性を向上するように、などで選択することができる。
【0161】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、経口投与用に配合される。経口投与用に配合された医薬組成物は、胃腸管を通じた、または胃腸管のある特定の一領域もしくは複数領域での本発明の化合物の取り込みをもたらすことができる。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、上部胃腸管からの、及びある特定の実施形態において、小腸からの、本発明の化合物の取り込みを促進するように配合することができる。そのような組成物は、製薬分野で既知の様式で製造することができ、さらに、本発明の化合物の他に、1種または複数の薬学上許容されるビヒクル、透過性エンハンサー、及び/または第二治療薬を含むことができる。
【0162】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、さらに、放出、生体利用度、治療有効性、治療効力、安定性などを向上、修飾、及び/または制御する物質を含むことができる。例えば、治療有効性を向上させるため、本発明の化合物は、胃腸管からの薬物の吸収または拡散を上昇させる、もしくは体循環中での薬物の分解を阻害する1種または複数の活性作用剤と同時投与することができる。ある特定の実施形態において、本発明の化合物は、本発明の化合物の治療有効性を向上させる薬理効果を有する活性作用剤と同時投与することができる。
【0163】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、さらに、放出、生体利用度、治療有効性、治療効力、安定性などを向上、修飾、及び/または制御する物質を含むことができる。例えば、治療有効性を向上させるため、本発明の化合物は、胃腸管からの本発明の化合物の吸収または拡散を上昇させる、もしくは体循環中での薬物の分解を阻害する1種または複数の活性作用剤と同時投与することができる。ある特定の実施形態において、本発明の化合物は、本発明の化合物の治療有効性を向上させる薬理効果を有する活性作用剤と同時投与することができる。
【0164】
医薬組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液体含有カプセル剤、散剤、徐放性配合物、坐剤、乳剤、エーロゾル剤、スプレー剤、懸濁剤、または使用に適した他の任意の形状を取ることができる。経口送達用の医薬組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性懸濁剤、顆粒剤、散剤、乳剤、カプセル剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の形状であることができる。経口投与される組成物は、薬学的に口に合う製剤を提供するために、1種または複数の任意選択の作用剤、例えば、甘
味剤、例えば、フルクトース、アスパルテーム、またはサッカリンなど、香味剤、例えば、ペパーミント、冬緑油、またはチェリー着色剤など、及び保存剤を含有する場合がある。その上、錠剤または丸剤の形状をしている場合、組成物は、胃腸管での分解及び吸収を遅らせ、それにより長時間にわたる持続作用を提供するためにコーティングされる場合がある。経口組成物は、標準的なビヒクル、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含むことができる。そのようなビヒクルは、医薬用グレードのものが可能である。経口液状製剤、例えば、懸濁剤、エリキシル剤、及び液剤については、適切な担体、賦形剤、または希釈剤として、水、生理食塩水、アルキレングリコール(例えば、プロピレングリコール)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)、油、アルコール、pH4~pH6の弱酸性緩衝剤(例えば、約5mM~約50mMの酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩など)などが挙げられる。さらに、香味剤、保存料、着色剤、胆汁酸塩、アシルカルニチンなども、加えられる場合がある。
【0165】
本発明の化合物が酸性の場合、その化合物は、遊離酸、薬学上許容される塩、溶媒和物、溶媒和物、または水和物として、上記の配合物のどれにでも含ませることができる。薬学上許容される塩は、遊離酸の活性を実質的に保持しており、塩基との反応により調製することができ、対応する遊離酸形よりも水性溶媒及び他のプロトン性溶媒に溶解しやすい傾向にある。実施形態によっては、本発明の化合物のナトリウム塩が、上記の配合物に使用される。
【0166】
本発明の医薬組成物は、非経口投与用に配合することができ、そのような投与として、注射による投与、例えば、静脈への(静脈内)、動脈への(動脈内)、筋肉への(筋肉内)、皮膚の下への(皮下またはデポー配合物として)、心膜への、冠動脈への注射など、もしくは組織または器官への送達用溶液としての使用、例えば、心肺バイパス装置での使用または移植組織もしくは器官を浸すための使用などが挙げられる。注射用組成物は、注射投与の任意の経路のための医薬組成物であることが可能であり、そのような経路として、静脈内、動脈内、冠内、心膜、血管周囲、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、及び関節内が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、注射用医薬組成物は、心臓、心膜、または冠動脈に直接投与するのに薬学上適した組成物であり得る。
【0167】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、1種または複数の本発明の化合物を、1種または複数の薬学上許容される滅菌等張性の水性、水混和性、または非水性ビヒクルと組み合わせて含むことができる。非経口用の医薬組成物は、錯形成剤及び界面活性剤などの薬物溶解性を上昇させ及び維持する物質、塩化ナトリウム、ブドウ糖、及びグリセリンなどの溶液を等張性または生理的pHに近づける化合物、抗酸化剤、不活性ガス、キレート化剤、及び緩衝剤などの溶液の化学的安定性を向上させる物質、化学的及び物理的安定性を向上させる物質、自己凝集または界面誘導型凝集を最小限にする物質、タンパク質の界面との相互作用を最小限にする物質、抗菌剤をはじめとする保存料、懸濁化剤、乳化剤、及び上記の任意のものの組み合わせを含むことができる。非経口投与用医薬組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、リポソーム、微粒子、ナノシステム、及び液剤として再構成するための散剤として配合することができる。非経口製剤は、"Remington, The
Science and Practice of Pharmacy," 21st
edition, Lippincott, Williams & Wilkins,
Chapter 41-42, pages 802-849, 2005に記載されている。
【0168】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、予定のレシピエントに移す前、最中、または後の、移植組織または器官の浴用配合物とすることが可能である。そのような組成物は、組織または器官を移植用に準備する前または最中に使用することができる。ある特定
の実施形態において、医薬組成物は、心臓手術中に投与される心停止液であり得る。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、例えば、心肺バイパス装置と組み合わせて使用して、心臓へ医薬組成物を提供することができる。そのような医薬組成物は、心臓手術の導入段階、維持段階、または再灌流段階中に使用することができる(例えば、Chang
et al., Masui 2003, 52(4), 356-62; Ibrahim et al., Eur. J. Cardiothorac Surg 1999, 15(1), 75-83; von Oppell et al., J Thorac Cardiovasc Surg. 1991, 102(3), 405-12;及びJi et al., J. Extra Corpor Technol
2002, 34(2), 107-10を参照)。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、ポンプまたは灌流装置などの機械装置を介して送達することができる(例えば、Hou and March, J Invasive Cardiol 2003, 15(1), 13-7; Maisch et al., Am. J Cardiol 2001, 88(11), 1323-6;及びMacris and Igo, Clin Cardiol 1999, 22(1, Suppl 1), 136-9を参照)。
【0169】
長期送達については、医薬組成物は、移植、例えば、皮下、皮内、または筋肉内注射による投与用のデポー製剤として提供することができる。すなわち、ある特定の実施形態において、医薬組成物は、例えば、薬学上許容される油、イオン交換樹脂に含まれる乳剤として、適切な重合体または疎水性材料とともに、または難溶解性誘導体、例えば、本発明の化合物の難溶解性塩の形で、配合することができる。
【0170】
本発明の医薬組成物は、患者への投与後に式(I)及び/または式(II)の化合物の即時、持続性、または遅延型放出を提供するように、当該分野で既知の手順を用いて配合することができる(例えば、Allen et al., "Ansel’s Phar
maceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems," 8th ed., Lippincott, William
s & Wilkins, August 2004を参照)。
【0171】
剤形
本発明の医薬組成物は、単位剤形で配合することができる。単位剤形は、治療を受けている患者用の単位用量として適切な物理的に孤立した単位を示し、各単位は、目的の治療効果をもたらすように計算された所定量の本発明の化合物を含有する。単位剤形は、1日1回の用量用であることも、1日複数回、例えば1日あたり2~4回の用量の1回分であることも可能である。1日複数回の用量が使用される場合、単位剤形は、個々の用量が同一であることも異なることも可能である。1つまたは複数の剤形で一用量を形成することができ、この一用量が、ある1つの時点でまたはある時間間隔の間に患者に投与される場合がある。
【0172】
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物の即時放出及び/または制御放出をもたらす剤形で使用することができる。剤形の適切な型は、治療する疾患、障害、または症状に、及び投与方法に依存する可能性がある。例えば、心不全または脳卒中などの急性虚血性症状の治療については、非経口で投与される即時放出型の医薬組成物または剤形の採用が適切な場合がある。慢性神経変性疾患の治療については、経口で投与される制御放出型の医薬組成物または剤形が適切な場合がある。
【0173】
ある特定の実施形態において、剤形は、患者に1日2回以下、及びある特定の実施形態において、1日1回のみで投与するのに適合させることができる。投薬は、単独で提供することも他の薬物と併用して提供することもでき、疾患、障害、または症状の有効な治療
のために必要な限り続けることができる。
【0174】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、非経口投与、経口投与、または任意の他の適切な投与経路による即時放出用に配合することができる。
【0175】
制御型薬物送達系は、送達系が薬物を特定速度で送達し続ける限り、その期間中、薬物レベルが治療範囲内に維持されるとともに、有効かつ安全な血中レベルが維持されるようなやり方で、薬物を送達するように設計することができる。制御型薬物送達は、即時放出型剤形で観察される変動と比較して実質的に一定の薬物血中レベルをもたらすことができる。薬物によっては、治療過程全体を通じて血流及び組織濃度を一定に維持することが、最も望ましい治療様式である。そうした薬物の即時放出は、望ましい反応を誘発するのに必要なレベルを超えるピークの血中レベルを引き起こす可能性があり、そのようなレベルは、薬物を無駄にするとともに、毒性副作用を引き起こすまたは悪化させる場合がある。制御型薬物送達は、最適な治療をもたらす可能性があり、投薬頻度を低下させることができるだけでなく、副作用の重篤度を低下させる場合もある。制御放出型剤形の例として、溶解制御型系、拡散制御型系、イオン交換樹脂、浸透圧制御型系、被浸食型マトリクス系、pH非依存性配合物、胃貯留型系などが挙げられる。
【0176】
ある特定の実施形態において、本発明の経口剤形は、制御型放出剤形であることが可能である。制御型送達技術は、胃腸管の1箇所または複数箇所の特定領域での薬物の吸収を改善することができる。本発明の特定の医薬組成物に適切な経口剤形は、少なくとも部分的に、本発明の化合物の胃腸吸収性質、胃腸管での本発明の化合物の安定性、本発明の化合物の薬物動態、及び目的の治療特性に依存する可能性がある。適切な制御型放出経口剤形は、本発明の特定化合物用に選択することができる。例えば、胃貯留経口剤形は、主に上部胃腸管から吸収される化合物に適切である可能性があり、徐放性経口剤形は、主に下部胃腸管から吸収される化合物に適切である可能性がある。
【0177】
ある特定の化合物は、主に小腸から吸収される。一般に、化合物は、小腸の長さを約3~5時間かけて移動する。小腸で容易に吸収されない化合物またはすぐには溶解しない化合物については、小腸での活性作用剤吸収の時間帯が短かすぎて、所望の治療効果を提供できない場合がある。胃貯留剤形、すなわち、長時間にわたり胃に保持されるように設計された剤形は、上部胃腸管で最も容易に吸収される薬物の生体利用度を高めることができる。従来剤形の胃の滞留時間は、1~3時間である。胃を通過した後、剤形が結腸に到達するまでの生体利用の時間帯は約3~5時間である。しかしながら、剤形が胃に保持される場合、薬物は、剤形が小腸に到達する前に放出されることが可能となり、薬物がより容易に吸収され得る状態で溶液として腸に入ることになる。胃貯留剤形の別の用途は、腸の塩基性条件に対して不安定な薬物の生体利用度を改善するためのものである(例えば、Hwang et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1998, 15, 243-284を参照)。上部胃腸管からの薬物吸収を向上させるため、複数の胃貯留剤形が開発されてきている。例として、ヒドロゲル(例えば、米国特許出願第2003/0008007号を参照)、浮遊マトリクス(例えば、米国特許出願第2006/0013876号を参照)、重合体シート(例えば、米国特許出願第2005/0249798号を参照)、マイクロセル発泡体(例えば、米国特許出願第2005/0202090号を参照)、及び膨潤性剤形(例えば、米国特許出願第2005/0019409号;米国特許第6,797,283号;米国特許出願第2006/0045865号;米国特許出願第2004/0219186号;米国特許第6,723,340号;米国特許第6,476,006号;米国特許第6,120,803号;米国特許第6,548,083号;米国特許第6,635,280号;米国特許第5,780,057号を参照)が挙げられる。生体接着性重合体も、胃粘膜に加えて複数の粘膜表面への薬物の制御型送達用ビヒクルを提供
することができる(例えば、米国特許第6,235,313号;米国特許第6,207,197号;米国特許出願第2006/0045865号、及び米国特許出願第2005/0064027号を参照)。イオン交換樹脂は長期胃貯留することが示されてきており、これは接着による可能性がある。
【0178】
膨潤拡大系では、周囲の胃内容物と関連して膨潤し密度を変化させる剤形を、従来の剤形より長時間胃に保持させることができる。剤形は、水を吸収し膨潤して、ゼラチン性外側表面を形成することができ、薬物を放出するまで完全性を維持したまま、胃内容物表面に浮かぶことができる。水和及び膨潤のみでは不十分な場合、脂肪材料を加えて、濡れるのを防ぐとともに浮遊しやすくすることができる。気体を放出する材料も、胃貯留剤形の密度を低下させるために組み込まれる場合がある。膨潤は、剤形の大きさを大幅に増大させ、それにより、崩壊していない膨潤固形剤形が幽門を通って小腸に入る放出を防ぐこともできる。膨潤性剤形は、薬物を含有する核及び膨潤剤をカプセル化することにより、または薬物、膨潤剤、及び1種または複数の被浸食型重合体を組み合わせることにより、形成することができる。
【0179】
胃貯留剤形は、薬物及び水不溶性拡散性重合体を含有する薄いシートを折りたたんだ形であることも可能であり、これは胃の中で広がって元の寸法及び形状になり、元の寸法及び形状は、広がった剤形が幽門括約筋を通過するのを防ぐまたは阻害するのに十分な大きさがある。
【0180】
浮遊性かつ浮揚性の胃貯留剤形は、気体を密閉カプセル化された核内に閉じ込めて核が胃内容物に浮くことができるようにし、それにより、さらに長時間、例えば、9~12時間、この剤形が胃の中に保持されるように設計することができる。浮揚性効果により、このような系は、食道領域への胃内容物の逆流を防ぐ保護層を提供することができ、制御型放出デバイスにも使用することができる。浮遊系は、例えば、保護膜でコーティングされた薬物を含有する中空核を含有することができる。核に閉じ込められた空気は、溶解性成分が放出されて系が崩壊するまで剤形を胃内容物に浮かべている。他の浮遊系では、核は、薬物及び活性化したときに気体を発生することができる化学物質を含有する。例えば、炭酸塩及び/または重炭酸塩を含有するコーティングされた核は、胃の塩酸とまたは系に組み込まれた有機酸と反応して、二酸化炭素を生成することができる。反応により生成した気体は、保持されて、剤形を浮遊させる。膨張した剤形は、生成した気体が保護コーティングをゆっくり透過していくうちに、やがて、崩壊して、胃から消え去る。
【0181】
生体接着性重合体も、胃粘膜に加えて複数の粘膜表面への薬物の制御型送達用ビヒクルを提供することができる(例えば、米国特許第6,235,313号;及び米国特許第6,207,197号を参照)。生体接着系は、生体接着性重合体内に薬物及び他の賦形剤を組み込むことにより設計することができる。摂取すると、重合体は水和して胃腸管の粘膜に接着する。生体接着性重合体は、胃腸管の所望の領域1箇所または複数箇所に接着するように選択することができる。生体接着性重合体は、胃及び小腸を含む胃腸管の標的領域に最適に送達されるように選択することができる。接着の機構は、重合体粘膜境界での静電的及び水素結合の形成を通じてであると思われる。米国特許出願第2006/0045865号及び同第2005/0064027号は、上部及び下部胃腸管の両方に薬物送達するのに有用な生体接着性送達系を開示する。
【0182】
イオン交換樹脂は長期胃貯留することが示されてきており、これは接着による可能性がある
【0183】
胃貯留経口剤形は、主に上部胃腸管から吸収される薬物の送達に適切に使用することができる。例えば、ある特定の本発明の化合物は、限定された結腸吸収を示す場合があり、
主に上部胃腸管から吸収される場合がある。すなわち、本発明の化合物を上部胃腸管で放出する剤形及び/または剤形の上部胃腸管を通じた遅延移行は、本発明の化合物の経口での生体利用度を向上させる傾向となる。本明細書中開示されるクレアチンプロドラッグの他の形は、胃貯留剤形で適切に使用することができる。
【0184】
重合体マトリクスもまた、長時間にわたる薬物の制御型放出を達成するために使用されてきている。そのような徐放型または制御型放出は、周囲の胃液がマトリックスに拡散して薬物に到達し、薬物を溶解して、溶解した薬物とともに再拡散することができる速度を制限することにより、またはゆっくりと浸食されて、持続的に新たに薬物を周囲の液体にさらすマトリクスを使用することにより、達成することができる。これらの方法により機能する重合体マトリクスの開示は、例えば、Skinner、米国特許第6,210,710号及び同第6,217,903号;米国特許第5,451,409号;米国特許第5,945,125号;PCT国際公開第WO96/26718号;米国特許第4,915,952号;米国特許第5,328,942号;米国特許第5,783,212号;米国特許第6,120,803号;及び米国特許第6,090,411号に見られる。
【0185】
長時間胃に滞留する他の薬物送達デバイスとして、例えば、粒子含有ヒドロゲルリザーバー(米国特許第4,871,548号);膨潤性ヒドロキシプロピルメチルセルロース重合体(米国特許第4,871,548号);平板状生体被浸食性重合体(米国特許第4,767,627号);複数の圧縮性保持アーム(米国特許第5,443,843号);親水性水膨潤性架橋重合体粒子(米国特許第5,007,790号);及びアルブミン架橋ポリビニルピロリドンヒドロゲル(Park et al., J. Controlled Release 1992, 19, 131-134)が挙げられる。
【0186】
ある特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、経口投与の際、本発明の化合物の徐放型放出を提供するのに適合させることができる複数の異なる剤形で実施することができる。徐放性経口剤形は、長期にわたり薬物を放出させるのに使用することができ、薬物または製剤を下部胃腸管に送達することが望ましい場合に有用である。徐放性経口剤形として、拡散制御型系、例えばリザーバーデバイスまたはマトリクスデバイスなど、溶解制御型系、浸透圧系、及び浸食制御型系が挙げられる。徐放性経口剤形及びそれらの製造方法は、当該分野で周知である(例えば、"Remington’s Pharmace
utical Sciences," Lippincott, Williams &
Wilkins, 21st edition, 2005, Chapters 46 and 47; Langer, Science 1990, 249, 1527-1533;及びRosoff, "Controlled Release of
Drugs," 1989, Chapter 2を参照)。
【0187】
徐放性経口剤形として、生体液、例えば、血漿、血液、脳脊髄液など中で、もしくは組織または器官中で、長時間、薬物の治療濃度を維持する任意の経口剤形が挙げられる。徐放性経口剤形として、拡散制御型系、例えばリザーバーデバイスまたはマトリクスデバイスなど、溶解制御型系、浸透圧系、及び浸食制御型系が挙げられる。徐放性経口剤形及びそれらの製造方法は、当該分野で周知である(例えば、"Remington’s: T
he Science and Practice of Pharmacy," Li
ppincott, Williams & Wilkins, 21st edition, 2005, Chapters 46 and 47; Langer, Science 1990, 249, 1527-1533;及びRosoff, "Co
ntrolled Release of Drugs," 1989, Chapte
r 2を参照)。
【0188】
拡散制御系では、水不溶性重合体が、流体の流れ及びそれに続く剤形からの溶解薬物の
放出を制御する。拡散プロセス及び溶解プロセスの両方が、剤形からの薬物の放出に関与する。リザーバーデバイスでは、薬物を含む核が、重合体でコーティングされ、マトリクス系では、薬物はマトリクス全体に分散されている。セルロース重合体、例えば、エチルセルロースまたは酢酸セルロースなどを、リザーバーデバイスに使用することができる。マトリクス系に有用な材料の例として、メタクリル酸化合物、アクリル酸化合物、ポリエチレン、アクリル酸共重合体、ポリビニルクロリド、高分子ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ならびに脂肪化合物、例えば、脂肪酸、グリセリド、及びカルナウバロウなどが挙げられる。
【0189】
溶解制御型系では、薬物の溶解速度は、ゆっくり溶解する重合体により、またはマイクロカプセル化により制御される。いったんコーティングが溶解すると、薬物は溶解できるようになる。1種もしくは複数のコーティングの厚さ及び/または組成を変更することにより、薬物放出速度を制御することができる。溶解制御型系によっては、合計用量の一部に、即時放出成分を含むことができる。溶解制御型系として、カプセル化/リザーバー溶解系及びマトリクス溶解系が挙げられる。カプセル化溶解系は、薬物の粒子または顆粒を、様々な厚さのゆっくり溶解する重合体でコーティングすることによりまたはマイクロカプセル化することにより、調製できる。溶解制御型系で有用なコーティング材料の例として、ゼラチン、カルナウバロウ、セラック、酢酸フタル酸セルロース、及び酢酸酪酸セルロースが挙げられる。マトリクス溶解デバイスは、例えば、薬物を、ゆっくり溶解する重合体担体とともに圧縮して錠剤形にすることにより、調製することができる。
【0190】
浸透圧ポンプ系からの薬物放出速度は、半透膜を横断してリザーバーに入る流体の流入により決定され、リザーバーは浸透圧作用剤を含有する。薬物は、作用剤と混合されているか、リザーバー中に位置するかのいずれかである。剤形は、1つまたは複数の小さなオリフィスを含有し、そこから、溶解した薬物が、浸透圧による水の流入速度により決定される速度で、ポンプで送られる。剤形内の浸透圧が上がると、薬物がオリフィス(複数可)を通じて放出される。放出速度は一定であり、厳しい制限内で制御することが可能なため、薬物の比較的一定した血漿及び/または血中濃度をもたらすことができる。浸透圧ポンプ系は、胃腸管の環境から独立して、薬物の一定放出を提供することができる。薬物放出速度は、浸透圧作用剤及び1つまたは複数のオリフィスの寸法を改変することにより、修飾することができる。
【0191】
浸食制御型系からの薬物放出は、担体マトリクスの被浸食速度により決定される。薬物は、重合体全体にわたり分散されており、薬物放出速度は、重合体の被浸食速度に依存する。薬物含有重合体は、原体から及び/または剤形の表面から分解することができる。
【0192】
徐放性経口剤形は、経口投与に適切な任意の形、例えば、錠剤、丸剤、または顆粒剤形などであることができる。顆粒剤は、カプセル剤に充填する、圧縮して錠剤にする、または液状懸濁剤に含ませることができる。徐放性経口剤形は、さらに、例えば、酸保護、嚥下しやすさ、風味、識別性などを提供するための外側コーティングを含むことができる。
【0193】
ある特定の実施形態において、徐放性経口剤形は、治療上有効量の本発明の化合物、及び薬学上許容されるビヒクルを含むことができる。ある特定の実施形態において、徐放性経口剤形は、治療上有効量より少ない量の本発明の化合物、及び薬学上有効なビヒクルを含むことができる。各剤形が本発明の化合物を治療上有効量より少ない量で含む複数の徐放型経口剤形を、一度に、またはある時間をかけて投与し、エネルギー代謝の機能障害、例えば、虚血、酸化ストレス、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、パーキンソン病、またはアルツハイマー病を含む神経変性疾患、虚血再灌流傷害、循環器疾患、多発性硬化症(MS)、精神障害、クレアチンキナーゼ系を冒す遺伝病、または筋肉疲労などと関連した患者で疾患を治療するのに治療上有効な用量またはレジメンを提供するこ
とができる。
【0194】
本発明の徐放性経口剤形は、胃腸管の適切な領域から、例えば、小腸においてまたは結腸において、吸収される本発明の化合物の能力を促進するように、剤形から本発明の化合物を放出することができる。ある特定の実施形態において、徐放性経口剤形は、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、少なくとも約16時間、少なくとも約20時間、及びある特定の実施形態において、少なくとも約24時間の期間にわたり、剤形から本発明の化合物を放出することができる。ある特定の実施形態において、徐放性経口剤形は、約0~約4時間で約0wt%~約20wt%、約0~約8時間で約20wt%~約50wt%、約0~約14時間で約55wt%~約85wt%、及び約0~約24時間で約80wt%~約100wt%の送達パターンで、剤形から本発明の化合物を放出することができる。ある特定の実施形態において、徐放性経口剤形は、約0~約4時間で約0wt%~約20wt%、約0~約8時間で約20wt%~約50wt%、約0~約14時間で約55wt%~約85wt%、及び約0~約20時間で約80wt%~約100wt%の送達パターンで、剤形から式(I)及び/または式(II)の化合物を放出することができる。ある特定の実施形態において、徐放性経口剤形は、約0~約2時間で約0wt%~約20wt%、約0~約4時間で約20wt%~約50wt%、約0~約7時間で約55wt%~約85wt%、及び約0~約8時間で約80wt%~約100wt%の送達パターンで、剤形から本発明の化合物を放出することができる。
【0195】
本発明のクレアチンプロドラッグ化合物を含む徐放性経口剤形は、患者への経口投与後、経時的に、患者の血漿、血液、または組織にある濃度のクレアチンを提供することができる。クレアチンの濃度特性は、本発明の対応する化合物の用量に比例するAUCを示すことができる。
【0196】
使用される制御型放出経口剤形の具体的な形に関わらず、本発明の化合物は、十分な長さの時間にわたり、経口投与された剤形から放出されて、患者の血漿及び/または血液に、長期間の治療濃度の本発明の化合物を提供することができる。経口投与後、本発明の化合物を含む剤形は、患者への剤形の経口投与後少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、少なくとも約16時間、及びある特定の実施形態において、少なくとも約20時間の連続した長さの時間、患者の血漿及び/または血液に治療上有効濃度のクレアチンを提供することができる。治療上有効濃度のクレアチンが維持される連続した長さの時間は、同じであることも異なることも可能である。治療上有効な血漿濃度のクレアチンが維持される連続した長さの時間は、経口投与後すぐに始まることも、またはある時間間隔を置いた後に始まることも可能である。
【0197】
ある特定の実施形態において、患者の疾患、障害、または症状を治療するための経口投薬は、本発明の化合物を含むことができ、経口剤形は、患者への経口剤形の単回投与後、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、及び少なくとも約16時間、及び少なくとも約20時間から選択される第一の連続した長さの時間、患者の血漿に治療上有効濃度のクレアチンを提供するのに適合している。
【0198】
使用方法
クレアチンキナーゼ(クレアチン-クレアチンリン酸)系は、細胞内エネルギー恒常性を維持する上で複数の機能を担っている(例えば、Walsh et al., J Physiol, 2001, 537, 971-978を参照)。ホスホクレアチンは、ATP利用速度が、ミトコンドリアの呼吸によるATP生成速度よりも大きい場合に作動する細胞内高エネルギー移行部位において、一時的なエネルギーバッファーとして働く。ミトコンドリアクレアチンキナーゼは、新たに合成されたATPの高エネルギーリン酸結合をクレアチンに移させ、そうしてホスホクレアチンを生成させるが、ホスホクレアチ
ンは、ATPよりはるかに安定である。ホスホクレアチンは、細胞全体に拡散することができ、その高エネルギーリン酸結合は、他のクレアチンキナーゼ酵素が戦略的に配置されている高エネルギー利用部位でADPからATPを再生するのに使用することができる。そのような部位として、イオン輸送に携わる膜、物質を微小管に沿ってシナプス前終末へ、またはシナプス前終末から輸送するのに関与する軸索領域、及び神経伝達にエネルギーを必要とするシナプス前終末が挙げられる。ニューロンは、クレアチンを合成するが、しかしながら、クレアチンの量は、傷害中は重篤に枯渇する可能性がある。骨格及び心筋と同様に、ニューロンクレアチン貯蔵は、クレアチンの経口補給によりある程度増加させることができる。クレアチンキナーゼ系は、細胞内空間的エネルギー輸送機構としても機能する。エネルギー担体としてのこの役割では、ミトコンドリア内のATP-ADP系により生成したエネルギーは、細胞質ゾルのクレアチン-クレアチンリン酸系とカップリングしており、このクレアチン-クレアチンリン酸系は、次いで、細胞内高エネルギー伝達の部位でミトコンドリア外ATP-ADP系とカップリングしている。クレアチン-クレアチンリン酸系は、細胞内位置のATP-ADP濃度比を維持する閾値の低いADPセンサーとして機能するとも考えられており、この場合クレアチンキナーゼは、ATP消費及びATP生成経路と機能的にカップリングしている。例えば、クレアチンは、ミトコンドリアクレアチンキナーゼにより触媒される反応でミトコンドリア呼吸に由来するATPと反応することができ、アデニンヌクレオチドトランスロカーゼと機能的にカップリングして、それにより局所的ADP濃度の上昇及びミトコンドリア呼吸の刺激をもたらすことができることが、示されている。したがって、クレアチンキナーゼ系は、高エネルギー消費を前提条件とする細胞、組織、及び器官、例えばニューロン及び筋肉などで、ATP恒常性を含むエネルギー恒常性を維持する上で特に重要である。
【0199】
本発明の化合物及び本発明の医薬組成物は、エネルギー代謝の機能障害と関連した患者の疾患、障害、または症状を治療するのに有用となり得る。ある特定の実施形態において、エネルギー代謝の機能障害は、細胞内ATP濃度の枯渇、細胞内クレアチンリン酸濃度の低下、細胞内クレアチンリン酸対ATP濃度比の低下、及び/または疾患に冒された組織もしくは器官のクレアチンキナーゼ系の機能障害を含む。ある特定の実施形態において、エネルギー代謝の機能障害は、疾患に冒された組織もしくは器官の細胞内ATP濃度の低下を含む。ある特定の実施形態において、エネルギー代謝の機能障害は、疾患に冒された組織もしくは器官の細胞内クレアチンリン酸濃度の低下を含む。ある特定の実施形態において、エネルギー代謝の機能障害は、疾患に冒された組織もしくは器官のクレアチンキナーゼ系及び/または他の細胞内エネルギー経路の機能障害を含む。ある特定の実施形態において、エネルギー代謝の機能障害と関連した疾患は、虚血、酸化ストレス、神経変性疾患、虚血再灌流傷害、循環器疾患、多発性硬化症、精神病疾患、及び筋肉疲労から選択される。ある特定の実施形態において、疾患の治療は、疾患に冒された組織もしくは器官にエネルギー恒常性をもたらすことを含む。
【0200】
本発明の化合物及びそれらの医薬組成物は、酸化ストレスと関連した患者の疾患を治療するために、そのような治療を必要としている患者に治療上有効量の本発明の化合物またはその医薬組成物を投与することにより、使用することができる。ある特定の実施形態において、酸化ストレスは、虚血または神経変性疾患と関連する。本発明の方法は、酸化ストレスを受けた組織または器官を、本発明の化合物またはその医薬組成物と接触させることにより、その組織または器官を治療することを含む。
【0201】
本発明の化合物及び医薬組成物は、細胞内クレアチンレベルの迅速な上昇が治療効果を有する疾患、障害、または症状を治療するのに有用となり得る。
【0202】
虚血
本発明の化合物及び医薬組成物は、急性または慢性の虚血性疾患、障害、または症状を
治療するのに使用することができる。虚血は、細胞、組織、または器官における酸素供給と需要の不均衡である。虚血は、無酸素を含む低酸素、正常な細胞生体エネルギー動態用代謝物質の不足、及び代謝老廃物の蓄積を特徴とする。組織または器官の虚血は、血行不全、例えば、動脈硬化症、血栓症、塞栓形成、捻転または圧迫、ショックまたは出血などの血圧低下、組織腫瘤の増大(肥大)、作業負荷の増大(頻脈、運動負荷)により、及び/または心拡張などの組織ストレス低下により、引き起こされる場合がある。虚血は、外傷または外科手技からも起こる可能性がある。傷害の重篤度及び期間に応じて、虚血は、細胞機能の可逆的減少または不可逆的細胞死を招く可能性がある。細胞の型によって虚血性傷害の閾値は異なり、その値は、少なくとも部分的に、冒されている組織(複数可)または器官(複数可)の細胞エネルギー必要量に依存する。ニューロン(3~4分)、心筋、肝細胞、腎尿細管細胞、胃腸上皮(20~80分)及び線維芽細胞、表皮、ならびに骨格筋(数時間)などの実質細胞は、間質細胞よりも虚血性傷害を受けやすい。複数の研究が、クレアチンキナーゼ系の機能容量と所定組織の虚血耐性の間に相関があることを示唆しており、また、クレアチンキナーゼ系の機能容量を改善する戦略が組織の虚血耐性を改善するのに有効である可能性があることを示している(例えば、Wyss and Kaddurah-Daouk, Physiological Reviews, 2000, 80(3), 1107-1213を参照、これはそのまま全体が本明細書中参照として援用される)。例えば、経口クレアチン補給は、ミトコンドリアシトクロムC放出及び下流のカスパーゼ3活性化を阻害し、虚血性神経保護をもたらす。シトクロムC放出及びカスパーゼ3活性化の阻害ならびに神経保護と関連して、クレアチン投与は、虚血介在型ATP枯渇を阻害する。
【0203】
本発明の化合物及び医薬組成物は、急性または慢性の虚血を治療するのに使用することができる。ある特定の実施形態において、化合物または組成物は、高エネルギー需要を特徴とする組織または器官、例えば、脳、神経、心臓、肺、腎臓、または腸の虚血の急性または緊急治療に特に有用となる可能性がある。
【0204】
エネルギー貯蔵の低さに対してエネルギー必要量が高いため、脳は特に低酸素状態に対して脆弱である。脳は全体重のわずかな割合しか占めていないものの(約2%)、不釣合いに高いパーセンテージのO消費(約20%)を占める。生理的条件下、O需要が高まると、これは、大脳血流が増加することにより迅速かつ適切に補われる。低酸素/虚血の期間が長くなるほど、冒された脳の領域が大きくなりより拡散する。虚血性損傷に対してもっとも脆弱な領域は、脳幹、海馬、及び大脳皮質である。酸素供給が回復しない限り、傷害は、進行して最終的に回復不能になる。急性細胞死は、主に壊死を通じて起こるが、低酸素は遅延型アポトーシスも引き起こす。そのうえ、シナプス前ニューロンからのグルタミン酸放出は、Ca2+流入をさらに向上させる可能性があり、シナプス後細胞の破滅的崩壊をもたらす可能性がある。虚血がそれほど重篤でなければ、細胞は、境界域と呼ばれるプロセスでいくつかの機能、すなわち、タンパク質合成及び自発電気活動を抑制することができ、抑制された機能は、O供給が再開した場合に戻すことができる。しかしながら、虚血ストレスを受けた組織の酸素レベルを回復させるプロセス、例えば、再灌流は、主に活性酸素種の生成及び炎症細胞浸潤を通じて、不可逆的細胞死も誘導する可能性がある。
【0205】
ニューロンは、利用できるエネルギー生成物質が限られており、主にグルコース、ケトン体、または乳酸の使用に限られる。ニューロンは、グルコースもケトン体も、製造も貯蔵もしないので、血流から直接または間接的に吸収及び使用される物質がなければ、どのような長さの時間でも生存することができない。すなわち、エネルギー生成物質の一定した供給が、脳全体及び身体の他の部分にエネルギー生成物質を供給するのに十分な量で、常時、血流に存在しなければならない。脳細胞は、ATPを生成する酸化的リン酸化の脳の最適速度を維持する目的で、約5mM濃度のグルコース(またはその等価物)を必要と
する。栄養分は、細胞膜を通過して細胞に入る。栄養送達は、細胞膜外の機構、例えば、経口摂取、吸収、循環輸送、及び間質流動などに頼ることが多い。いったん細胞の近傍に局在すると、膜特異的プロセスが、栄養輸送に役割を果たして、続いて、血液脳関門を横断し、次いで細胞内及び様々な細胞内小器官内に入る。栄養輸送は、ATPアーゼによるATPの分解により可能となる。Na/KATPアーゼにより作り出されたNa勾配は、細胞が、栄養分子を細胞膜を横断して輸送するために利用することができる。
【0206】
酸素またはグルコースの不足は、ニューロンのATP合成能力を阻止または制限する。細胞内クレアチン/ホスホクレアチン系は、酸素またはグルコースの不足をある程度補うことができる。クレアチンキナーゼは、正常な脳組織でクレアチンからホスホクレアチンへの合成を触媒する。ATP枯渇条件下では、ホスホクレアチンは、そのリン酸基をADPに提供して、ATPを再合成することができる。しかしながら、ニューロンホスホクレアチン含有量は限られており、完全無酸素または虚血後、ホスホクレアチンもすぐに枯渇する。ATP枯渇は、Na/KATPアーゼを遮断して、ニューロンの脱分極を引き起こし、膜電位を失わせると思われる。
【0207】
枯渇した酸素レベルは、細胞の生体エネルギー動態及び機能に対して、他にも最終的に細胞死を招く可能性がある複数の帰結をもたらす。例えば、機能障害性生体エネルギー動態は、カルシウム恒常性の障害も含む。カルシウム調節は、ニューロンの適切な機能発揮及び生存に中心的な役割を果たす。カルシウムポンプは、細胞膜に存在するが、これは、ATPを使用してニューロン外にカルシウムイオンを輸送する。カルシウムポンプの適切な活性は、ニューロン、ミトコンドリア、及び小胞体の恒常性維持に必須である。カルシウムポンプ機能の変更は、細胞内の酵素活性を調節し、また、細胞死を招く場合があるミトコンドリア透過性移行の開始にも重要な役割を果たす。例えば、細胞内Ca2+代謝は、アルツハイマー病で細胞死に寄与すると思われる。例えば、酸化ストレス条件下では、酸素フリーラジカルの生成は、内在性フリーラジカル保護機構を上回る。これは、膜脂質、核酸、及び機能タンパク質を含む重要な細胞生体分子に対する直接のフリーラジカル損傷により;ならびに重要なシグナル伝達経路の変調により、ニューロン代謝及び機能を損なう。ニューロン機能は、細胞間の電気インパルスの伝達に依存する。この活性は、それぞれリン脂質二重層に浮遊する複数の膜タンパク質の厳格な作用に依存する。この動的膜微小環境の最適活性は、脂質構成要素の正確な状態及び化学組成に依存する。適切なリン脂質環境が欠けると、細胞チャンネルタンパク質、酵素、及び受容体は、持続的に最適機能レベルを達成することができない。また、酸化ストレス及び/または異常メチル代謝は、膜状脂質二重層の流動性を低下させ、続いて埋め込まれた機能タンパク質に悪影響を及ぼす可能性がある。機能障害性生体エネルギー動態は、呼吸鎖に沿った高エネルギー電子の通路にも悪影響を及ぼす可能性がある。
【0208】
アポトーシスは、プログラム細胞死のエネルギー要求プロセスを示し、これに際して個々の神経細胞は、適切な状況下、細胞死を招くプロセスを開始する。上記に記載した機構のあるものは、アポトーシス経路を開始させる場合があり、そのようなものとして、酸化ストレス、カルシウム過負荷、細胞エネルギー欠乏、栄養因子離脱、及び異常アミロイド前駆タンパク質プロセシングが挙げられる。虚血では、低酸素傷害により最も深刻に冒された脳組織領域のニューロンは、壊死により迅速に死滅するが、そこまで深刻ではない低酸素に曝されたニューロンは、アポトーシスにより死滅する。細胞壊死からアポトーシス細胞死への移行は、細胞内ATPのレベルの上昇と関連する。クレアチン補給は、ATPレベルを緩衝する能力を高め、細胞死を減少させ、それにより無酸素及び虚血性損傷からの保護を提供することができることが示されている(Balestrino et al., Amino Acids, 2002, 23, 221-229;及びZhu et al., J Neurosci 2004, 24(26), 5909-5912、これらはそれぞれ、そのまま全体が、本明細書中に参照として援用される)。
【0209】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物及び医薬組成物は、脳虚血(脳卒中)及び心筋虚血(心臓梗塞)をはじめとする循環器疾患の治療に使用することができる。虚血性心疾患は、急性心筋梗塞、うっ血性心不全、不整脈、及び心臓性突然死の多くの症例の根底にある原因として、全ての先進国で罹患率及び死亡率の主要な原因となっている。米国では、虚血性心疾患は、全ての死亡例(毎年約600,000人の死亡)のうち20%近くの原因であり、これらの死亡例の多くは、患者が病院に到着する前に起こっている。毎年、推定110万人のアメリカ人が、急性心筋梗塞を新たに発生または再発させることになり、多くの生存者に、病的状態が継続して出ており、心不全及び死亡へと至ることになる。人口が高齢化し肥満及び糖尿病などの同時罹患状態が蔓延するにつれて、虚血性心疾患により引き起こされる公衆衛生の負担は、増加するようである。
【0210】
最適な細胞性生体エネルギー動態は、以下に依存する:(1)ミトコンドリアへの酸素及び基質の適切な送達;(2)ミトコンドリアの酸化容量;(3)高エネルギーリン酸の量、及びクレアチンリン酸/ATP比が適切であること;(4)ミトコンドリアからエネルギー使用部位への有効なエネルギー移動;(5)ATPアーゼ近くのATP/ADP比の適切な局所的調節;ならびに(6)細胞のエネルギー恒常性を維持するのに有効な、使用部位からのフィードバック信号伝達。これらの心臓エネルギー経路における欠損は、循環器疾患、例えば、様々な原因の拡張型及び肥大型心筋症、心伝導障害、及び虚血性心疾患などで、見つかっている(Saks et al., J Physiol 2006, 571.2, 253-273; Ventura-Clapier et al., J Physiol 2003, 555.1,1-13;及びIngwall and Weiss, Circ Res 2004, 95, 135-145、これはそれぞれ、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される)。クレアチンリン酸/ATP比の低下は、中度の作業負荷であってさえも、ヒト心不全及び実験的心不全で一貫して報告される。クレアチン、クレアチン輸送体、クレアチンリン酸、及びATPは、大幅に減少し、クレアチンリン酸/ATP比の低下は、先天性心不全の死亡率の予測因子である。また、クレアチン輸送体タンパク質発現のダウンレギュレーションが、心疾患の実験動物モデルで、ならびにヒト心筋不全で示されており、心不全で測定された全般的に低下したクレアチンリン酸及びクレアチンレベルが、ダウンレギュレーションされたクレアチン輸送体容量と関連することを示す。
【0211】
循環器疾患として、高血圧、心不全、例えば、うっ血性心不全または心筋梗塞後の心不全など、不整脈、拡張機能障害、例えば左心室拡張機能障害など、拡張期心不全または拡張期充満障害、収縮不全、虚血、例えば心筋虚血、心筋症、例えば肥大型心筋症及び拡張型心筋症、心臓性突然死、心筋線維症、血管線維症、動脈コンプライアンス障害、心筋壊死性病変、心臓の血管損傷、心臓の血管炎症、急性心筋梗塞後症状及び慢性心筋梗塞後症状の両方を含む心筋梗塞、冠動脈形成術、左心室肥大、駆出率低下、冠動脈血栓症、心病変、心臓の血管壁肥大、血管内皮肥厚、心筋炎、ならびに冠動脈疾患、例えばフィブリノイド壊死または冠動脈などが挙げられる。冠動脈虚血性心疾患と関連した全身性高血圧による心室肥大は、突然死、梗塞後心不全、及び心臓破裂の大きな危険因子と見なされる。重篤な左心室肥大のある患者は、特に、低酸素症または虚血になりやすい。
【0212】
本発明の化合物の神経保護効果は、脳虚血の動物モデル、例えば、Cimino et
al., Neurotoxicol 2005, 26(5), 9929-33;
Konstas et al., Neurocrit Care 2006, 4(2), 168-78; Wasterlain et al., Neurology
1993, 43(11), 2303-10;及びZhu et al., J Neuroscience 2004, 24(26), 5909-5912に記載されるものなどを用いて、確定させることができる。
【0213】
虚血再灌流傷害
再灌流傷害は、ある期間の虚血後、組織に血液供給が戻った際の組織に対する損傷である。組織または器官に、血液からの酸素及び栄養分が来ないことで、循環の回復が、正常機能の回復ではなく、酸素による炎症及び酸化的損傷をもたらす状態が作り出される。虚血再灌流傷害の損傷は、部分的には、損傷した組織の炎症反応によるものである。再灌流は、脳卒中及び脳外傷と関連する脳の虚血性カスケードの一因となる。虚血及び再灌流の繰り返し発作は、床ずれ及び糖尿病性足部潰瘍などの慢性創傷の形成及び治癒不成功を招く因子であるとも思われる(Mustoe, Am J Surgery 2004, 187(5), S65-S70、これは、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される)。ある特定の実施形態において、本開示の方法及び組成物は、筋肉ならびに器官、例えば、心臓、肝臓、腎臓、脳、肺、脾臓、及びステロイド産生器官など、例えば、甲状腺、副腎、及び生殖腺などを、虚血再灌流傷害の結果としての損傷から保護することができる。
【0214】
虚血及びそれに続く再灌流は、哺乳類の骨格及び心筋損傷の主な原因である。虚血は、血流の減少の結果として組織または器官への酸素供給が減少することにより引き起こされ、器官機能障害を招く可能性がある。血液供給の減少は、血管血栓症、例えば、心筋梗塞、狭窄、偶発的血管傷害、または外科手技などによる、閉塞または血路変更から生じる可能性がある。その後の組織または器官への酸素を含む血液の適切な供給の再建は、損傷の増大をもたらす可能性があり、このプロセスは、虚血再灌流傷害または閉塞再灌流傷害として知られる。虚血再灌流傷害から生じる合併症として、脳卒中、致死性または非致死性心筋梗塞、心筋リモデリング、動脈瘤、末梢血管疾患、組織壊死、腎不全、及び筋緊張の術後減少が挙げられる。
【0215】
過渡的期間の虚血後の冠血流の回復(再灌流)は、筋細胞の生存に及び有酸素代謝を回復するために必要であるものの、細胞損傷を悪化させる可能性がある独立した一連のストレスをもたらす。再灌流中に生成した反応性酸素種は、心筋細胞内のタンパク質及び膜構造に損傷を与え、アポトーシスを招くシグナル伝達経路を活性化させる可能性がある。虚血後の内皮細胞への白血球付着は、毛細血管を塞ぎ、炎症メディエーターを放出させる可能性がある。再灌流の際、血漿に含まれるまたは心筋壁内で局所的に産生された活性化した成分、カテコールアミン、及び他のシグナル伝達分子の内向き流入は、心筋の細胞内の事象の過程にも影響を及ぼす場合がある。虚血の直接の帰結として、再灌流傷害は、急性冠血管症候群の重大な特徴である。そのような傷害は、冠血管血栓症の線維素溶解の帰結として自発的に、及び閉塞した血管を開くために今日一般的に使用される治療である急性血管形成術の線維素溶解薬の帰結として、の両方で生じる。
【0216】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物及びそれらの組成物は、虚血再灌流傷害と関連した症状を治療するのに、または虚血再灌流傷害を減少させるのに使用することができる。虚血再灌流傷害は、酸素欠乏、好中球活性化、及び/またはミエロペルオキシダーゼ産生と関連する可能性がある。虚血再灌流傷害は、複数の疾患状態の結果である可能性もあるし、医原性に誘導されたもの、例えば、血栓、狭窄、または手術によるものである可能性もある。
【0217】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物及びそれらの組成物は、虚血再灌流傷害から生じる、脳卒中、致死性または非致死性心筋梗塞、末梢血管疾患、組織壊死、及び腎不全、ならびに筋緊張の術後減少を治療するのに使用することができる。ある特定の実施形態において、本発明の方法及び組成物は、虚血再灌流傷害の程度を低下または軽減させる。
【0218】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物及びそれらの組成物は、血管狭窄、血栓症、偶発的血管傷害、または外科手技による閉塞もしくは血路変更と関連した虚血再灌流傷害を治療、減少、または予防するのに使用することができる。
【0219】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物及びそれらの組成物は、虚血再灌流、例えば、心筋梗塞、脳卒中、間欠性跛行、末梢動脈疾患、急性冠血管症候群、循環器疾患、及び血管閉塞の結果としての筋肉損傷などと関連したあらゆる他の症状を治療するのにも使用することができる。
【0220】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物及びそれらの組成物は、心筋梗塞、狭窄、少なくとも1つの血餅、脳卒中、間欠性跛行、末梢動脈疾患、急性冠血管症候群、循環器疾患、または血管閉塞の結果としての筋肉損傷と関連した再灌流傷害を治療するのに使用することができる。
【0221】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物及びそれらの組成物は、心筋の虚血または再灌流傷害を予防するまたは最小限にするために、心臓手術と併用して、例えば、心停止液に加えてまたはそれとともに使用することができる。ある特定の実施形態において、本方法及び組成物は、心筋の虚血再灌流傷害を予防するまたは減少させるために、心臓手術中に心肺バイパス装置とともに使用することができる。
【0222】
ある特定の実施形態において、本発明の方法及び組成物は、筋肉及び器官、例えば、心臓、肝臓、腎臓、脳、肺、脾臓、及びステロイド産生器官など、例えば、甲状腺、副腎、及び生殖腺などを、虚血再灌流傷害の結果としての損傷から保護することができる。
【0223】
本発明の化合物及び医薬組成物は、組織または器官を、有効量の化合物または医薬組成物と接触させることにより、その組織または器官の虚血再灌流傷害を治療するのに使用することができる。組織または器官は、患者内にある場合も、患者外、すなわち、体外にある場合もある。組織または器官は、移植組織または器官であることも可能であり、化合物または医薬組成物は、取り出し前、輸送中、移植中、及び/または組織または器官がレシピエントに移植された後、移植組織または器官と接触させることができる。
【0224】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物または医薬組成物は、心臓手術などの手術により引き起こされた虚血再灌流傷害を治療するのに使用することができる。化合物または医薬組成物は、手術前、最中、及び/または後に、投与することができる。ある特定の実施形態において、本発明の化合物または医薬組成物は、心筋、骨格筋、または平滑筋を含む筋肉の虚血再灌流傷害を治療するのに、及びある特定の実施形態において、器官、例えば、心臓、肺、腎臓、脾臓、肝臓、ニューロン、または脳などの虚血再灌流傷害を治療するのに使用することができる。本発明の化合物またはその医薬組成物は、手術前、最中、及び/または後に、投与することができる。
【0225】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物または本発明の医薬組成物は、心筋、骨格筋、及び平滑筋をはじめとする筋肉の虚血再灌流傷害を治療するのに使用することができる。
【0226】
本発明の化合物の虚血再灌流傷害を治療する有効性は、動物モデルを使用して、及び臨床試験で査定することができる。虚血再灌流傷害の治療における有効性を査定するのに有用な方法の例は、例えば、Prass et al., J Cereb Blood Flow Metab 2007, 27(3), 452-459;Arya et al., Life Sci 2006, 79(1), 38-44; Lee et
al., Eur. J. Pharmacol 2005, 523(1-3),
101-108;及び米国特許出願第2004/0038891号に記載されている。移植灌流/再灌流を評価する有用な方法は, 例えば、Ross et al., Am J. Physiol-Lung Cellular Mol. Physiol. 2000, 279(3), L528-536に記載される。
【0227】
移植灌流
ある特定の実施形態において、本発明の化合物またはそれらの医薬組成物は、本発明の化合物またはそれらの医薬組成物を用いて器官を灌流することにより、臓器移植の生存能を上昇させるのに使用することができる。クレアチンリン酸レベルの上昇は、器官の虚血性損傷を予防または最小限にすることが予想される。器官の取り出し中、ドナー器官の取り出し後、移植中、及び/または臓器移植後のクレアチンプロドラッグを用いた灌流は、器官、特に代謝活性な器官、例えば、心臓または膵臓などの生存能を向上させ、それにより、拒絶反応率を低下させる、及び/または臓器移植の時間幅を広げることができる。
【0228】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物及びそれらの組成物は、体外組織または器官での虚血再灌流傷害を、治療、予防、または減少させるのに使用することができる。体外組織または器官とは、個体の中にない(ex vivoとも称する)組織または器官、例えば移植におけるものである。組織及び臓器移植について、取り出されたドナー組織及び器官もまた、取り出し中、輸送中、移植中、及びレシピエントへの移植後、再灌流傷害を受けやすい。本方法及び組成物は、例えば、移植用組織または器官の維持または保存に使用される溶液を補うことにより、移植用組織または器官の生存能を上昇させるのに使用することができる。例えば、本方法及び組成物は、輸送中、移植用組織または器官を浸しておくのに使用することもできるし、移植前、最中、またはその後に、移植用組織または器官と接触させておくこともできる。
【0229】
神経変性疾患
細胞死を特徴とする神経変性疾患は、急性、例えば、脳卒中、外傷性脳損傷、脊椎損傷など、ならびに慢性、例えば、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、パーキンソン病、及びアルツハイマー病などに分類することができる。これらの疾患は原因が様々であり、様々な神経集団に影響を及ぼすものの、それらは、細胞内エネルギー代謝で類似の障害を共有する。例えば、ATPの細胞内濃度は、低下して、Ca2+の細胞質蓄積及び容易な酸素種の形成の刺激をもたらす。Ca2+及び反応性酸素種は、次いで、アポトーシス細胞死を引き起こすことができる。これらの障害について、脳クレアチン代謝の障害も、低下した全クレアチン濃度、クレアチンリン酸濃度、クレアチンキナーゼ活性、及び/またはクレアチン輸送体含有量に反映されるとおり明白である(例えば、Wyss and Kaddurah-Daouk, Physiol Rev 2000, 80, 1107-1213; Tarnopolsky and Beal, Ann Neurol 2001, 49, 561-574;及びButterfield and Kanski, Mech Ageing Dev 2001,122, 945-962を参照、これはそれぞれ、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される)。
【0230】
急性及び慢性の神経変性疾患は、高い罹患率及び死亡率を伴う疾病であり、その治療に利用できる選択肢は少ない。脳卒中、脳外傷、脊椎損傷、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、アルツハイマー病、及びパーキンソン病を含む多くの神経変性疾患の特徴は、神経細胞死である。細胞死は、壊死またはアポトーシスにより起こる。中枢神経系での壊死性細胞死は、脳または脊椎に対する急性虚血または外傷性傷害に続いて起こる。この細胞死は、急激な生化学的崩壊により最も深刻に影響を受けた領域で起こり、生化学的崩壊は、フリーラジカル及び興奮毒の生成を招く。ミトコンドリア及び核の膨潤、小器官の分解、及び核周囲へのクロマチン凝結に続いて、核及び細胞質膜の破裂ならびに無秩序な酵素切断によるDNA分解が起こる。アポトーシス細胞死は、急性及び慢性の神経性疾患両方
の特質であり得る。アポトーシスは、傷害により深刻に影響を受けてはいない領域で起こる。例えば、虚血後、壊死性細胞死は、低酸素が最も深刻な病変中核で起こり、アポトーシスは、側副血行が低酸素の度合いを低減する境界域で起こる。アポトーシス細胞死も、脳または脊椎損傷後に出現する病変の構成要素である。慢性神経変性疾患では、アポトーシスは、細胞死の主要な形式である。アポトーシスでは、生化学カスケードが、細胞生存に必要な分子を破壊するプロテアーゼ及び細胞死プログラムを仲介する他の酵素を活性化する。カスパーゼは、アポトーシス中の細胞の形態変化に直接または間接的に寄与する(Friedlander, N Engl J Med 2003, 348(14),
1365-75)。経口クレアチン補給は、脳虚血においてカスパーゼ介在型細胞死カスケードのミトコンドリアシトクロムC放出及び下流のカスパーゼ-3活性化を阻害し、ならびにATP枯渇を阻害することを示しており(Zhu et al., J Neurosci 2004, 24(26), 5909-5912)、このことは、クレアチンキナーゼ系を操作することが、慢性神経変性疾患でのアポトーシス細胞死を制御するのに有効である可能性があることを示す。
【0231】
クレアチン投与は、神経保護効果を、特にパーキンソン病、ハンチントン病、及びALSの動物モデルで示しており(Wyss and Schulze, Neuroscience 2002, 112(2), 243-260、これは、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される)、様々な神経変性疾患において、酸化ストレスのレベルが、代謝を決める決定因子である可能性があると認められる。クレアチン介在型神経保護の機構に関する現在の仮説には、エネルギー貯蔵の向上、ならびにクレアチンキナーゼの8量体構造によるミトコンドリア膜透過性遷移孔の安定化が含まれる。したがって、細胞内クレアチンのレベルが高いほど、細胞の全生体エネルギー状態が改善され、傷害に対する細胞の耐性をより高めると考えられる。
【0232】
パーキンソン病
パーキンソン病は、筋肉安静時の振戦(静止時振戦)、随意運動の緩慢さ、及び筋緊張の上昇(硬直)を特徴とする、神経系の緩徐進行性変性疾患である。パーキンソン病では、大脳基底核の神経細胞、例えば、黒質が、変性し、それにより大脳基底核でのドーパミンの産生及び神経細胞間の接続数が減少する。結果として、大脳基底核は、平滑筋運動及び姿勢変化の協調を取れなくなり、振戦、協調不能、及び緩慢で小さくなった運動(動作緩慢)を招く(Blandini, et al., Mol. Neurobiol.
1996, 12, 73-94)。
【0233】
酸化ストレスは、パーキンソン病組織で見られる代謝劣化の因子である可能性があると考えられ(Ebadi et al., Prog Neurobiol 1996, 48, 1-19; Jenner and Olanow, Ann Neurol 1998, 44 Suppl 1, S72-S84;及びSun and Chen, J Biomed Sci 1998, 5, 401-414、これらはそれぞれ、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される)、クレアチン補給は、神経保護効果を発揮することが示されている(Matthews et al., Exp Neurol, 1999, 157, 142-149、これは、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される)。
【0234】
パーキンソン病治療のため本発明の化合物を投与することの有効性は、パーキンソン病の動物モデル及びヒトモデルならびに臨床試験で査定することができる。パーキンソン病の動物モデル及びヒトモデルは、既知である(例えば、O’Neil et al., CNS Drug Rev. 2005, 11(1), 77-96; Faulkner et al., Ann. Pharmacother. 2003, 37(2), 282-6; Olson et al., Am. J. Med. 1997
, 102(1), 60-6; Van Blercom et al., Clin
Neuropharmacol. 2004, 27(3), 124-8; Cho
et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 2006, 341, 6-12; Emborg, J.Neuro. Meth. 2004, 139, 121-143; Tolwani et al., Lab Anim Sci 1999, 49(4), 363-71; Hirsch et al., J Neural Transm Suppl 2003, 65, 89-100; Orth and Tabrizi, Mov Disord 2003, 18(7), 729-37; Betarbet et al., Bioessays 2002, 24(4), 308-18;及びMcGeer and McGeer, Neurobiol Aging 2007, 28(5), 639-647を参照)。
【0235】
アルツハイマー病
アルツハイマー病は、神経細胞の減少ならびに老人斑及び神経原線維濃縮体の発生を含む脳組織の変性を特徴とする、精神機能の進行性喪失である。アルツハイマー病では、脳が部分的に変性し、神経細胞が破壊され、維持ニューロンの神経伝達物質に対する反応性が低下する。脳組織の異常は、老人斑または神経突起斑、例えば、アミロイドと呼ばれる不溶性異常タンパク質を含有する死んだ神経細胞の凝集塊、及び神経原線維濃縮体、神経細胞中の不溶性タンパク質のねじれた鎖からなる。
【0236】
酸化ストレスが、アルツハイマー病組織で見られる代謝劣化の因子である可能性があり、クレアチンキナーゼは酸化的損傷の標的の1つであると考えられ(Pratico et al., FASEB J 1998, 12, 1777-1783;Smith
et al., J Neurochem 1998, 70, 2212-2215;及びYatin et al., Neurochem Res1999, 24, 427-435、これらはそれぞれ、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される)、研究から、クレアチンリン酸の細胞内レベルと痴呆の進行の相関が示されている(Pettegrew et al., Neurobiol Aging 1994, 15, 117-132、これは、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される)。
【0237】
アルツハイマー病治療のため本発明の化合物を投与することの有効性は、アルツハイマー病の動物モデル及びヒトモデルならびに臨床試験で査定することができる。アルツハイマー病治療のための化合物の有効性を査定するのに有用な動物モデルは、例えば、Van
Dam and De Dyn, Nature Revs Drug Disc 2006, 5, 956-970; Simpkins et al., Ann NY
Acad Sci, 2005, 1052, 233-242; Higgins and Jacobsen, Behav Pharmacol 2003, 14(5-6), 419-38; Janus and Westaway, Physiol
Behav 2001, 73(5), 873-86;及びConn, ed., "Handbook of Models in Human Aging," 2006, Elsevier Science & Technologyに開示される。
【0238】
ハンチントン病
ハンチントン病は、特定の細胞死が新線条体及び皮質で起こる常染色体優性神経変性疾患である(Martin, N Engl J Med 1999, 340, 1970-80、これは、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される)。発病は、通常、人生の40代または50代で起こり、平均生存期間は、発症から14~20年である。ハンチントン病は致死性であり、有効な治療は存在しない。症状として、特徴的な運動障害(ハンチントン舞踏病)、認知機能障害、及び精神症状が挙げられる。この疾患は、ハ
ンチンチンタンパク質中のCAGポリグルタミンリピートの異常な伸長をコードする変異が原因である。複数の研究が、エネルギー代謝の進行性障害が存在することを示唆し、この障害はフリーラジカル生成の帰結としての酸化ストレスにより引き起こされるミトコンドリア損傷に由来する可能性がある。ハンチントン病の動物モデルにおける前臨床試験は、クレアチン投与の神経保護効果を報告している。例えば、クレアチンによる神経保護は、脳におけるクレアチンリン酸及びクレアチンの上昇したレベルならびに低下した乳酸レベルと関連しており、エネルギー産生の改善と一致する(Ryu et al., Pharmacology & Therapeutics 2005, 108(2), 193-207を参照、これは、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される)。
【0239】
ハンチントン病治療のため本発明の化合物を投与することの有効性は、ハンチントン病の動物モデル及びヒトモデルならびに臨床試験で査定することができる。ハンチントン病の動物モデルは、例えば、Riess and Hoersten、米国特許出願第2007/0044162号; Rubinsztein, Trends in Genetics, 2002, 18(4), 202-209; Matthews et al., J. Neuroscience 1998, 18(1), 156-63; Tadros et al., Pharmacol Biochem Behav
2005, 82(3), 574-82、ならびに米国特許第6,706,764号、及び米国特許出願第2002/0161049号、同第2004/0106680号、及び同第2007/0044162号に開示される。ハンチントン病を治療するためのクレアチン補給の有効性を評価するプラセボ対照臨床試験は、Verbessem et al., Neurology 2003, 61, 925-230に開示される。
【0240】
筋萎縮性側索硬化症
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、脳、脳幹、及び脊椎における運動ニューロンの進行性かつ特異的喪失を特徴とする進行性神経変性疾患である(Rowland and Schneider, N Engl J Med 2001, 344, 1688-1700、これは、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される)。ALSは、脱力感から始まり、これは手で起こることが多くまたそれほど頻度は高くないが足でも起こり、一般に腕または脚を上がるように進行する。時間とともに、脱力感は増し、筋肉攣縮及び拘縮を特徴とする痙攣が発生し、続いて筋痙攣が起こり、振戦が起こる場合もある。発病の平均年齢は、55歳であり、臨床上発病後の平均寿命予測値は4年である。ALSの唯一の承認治療は、リルゾールであるが、これは約3ヶ月しか生存期間を延ばすことができない。経口クレアチンは、ALSの遺伝子組換え動物において神経保護効果を提供することが示されている(Klivenyi et al., Nat Med 1999,
5, 347-50、これは、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される)。
【0241】
ALS治療のため本発明の化合物を投与することの有効性は、ALSの動物モデル及びヒトモデルならびに臨床試験で査定することができる。ALSの天然の疾患モデルとして、マウスモデル(運動ニューロン変性、進行性運動ニューロパチー、及びふらつき)ならびに遺伝性イヌ脊髄性筋萎縮症イヌモデル(Pioro and Mitsumoto,
Clin Neurosci, 19954996, 3(6), 375-85)が挙げられる。実験的に生み出された及び遺伝子操作されたALS動物モデルもまた、治療有効性を査定するのに有用となり得る(例えば、Doble and Kennelu,
Amyotroph Lateral Scler Other Motor Neuron Disord. 2000, 1(5), 301-12; Grieb, Folia Neuropathol. 2004, 42(4), 239-48; Price et al., Rev Neurol (Paris), 1997, 153(8-9), 484-95;及びKlivenyi et al., Nat Med 1999, 5, 347-50を参照)。具体的には、SOD1-G93Aマウ
スモデルが、ALSモデルとして認識されている。ALSの治療を査定するのに有用な臨床試験プロトコルの例は、例えば、Mitsumoto, Amyotroph Lateral Scler Other Motor Neuron Disord. 2001, 2 Suppl 1, S10-S14; Meininger, Neurodegener Dis 2005, 2, 208-14;及びLudolph and Sperfeld, Neurodegener Dis.2005, 2(3-4), 215-9に記載される。
【0242】
多発性硬化症
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系の絶縁軸索ミエリンシートに対する自己免疫攻撃を原因とする中枢神経系の多面的炎症性自己免疫疾患である。脱髄は、伝達の破壊を招き、局所軸索の破壊及び不可逆的神経細胞死を伴う深刻な疾患を招く。MSの症候は、個々の患者によって非常に様々であり、それぞれに特異的なパターンの運動障害、感覚障害、及び知覚障害を示す。MSは、病理学的には、脳及び脊椎内での複数の炎症病巣、脱髄斑、グリオーシス、及び軸索病態を特徴とし、これらはすべて、神経性身体障害の臨床病態の一因となっている(例えば、Wingerchuk, Lab Invest 2001, 81, 263-281;及びVirley, NeruoRx 2005, 2(4), 638-649を参照)。疾患を誘発する原因事象は完全には明らかになっていないものの、ほとんどの証拠が、環境要因、ならびに特定の遺伝的素因と合わせて自己免疫病因説に関与する。機能障害、身体障害、及びハンディキャップは、運動麻痺、感覚及び認知障害、痙攣、振戦、協調運動障害、及び視力障害として現れ、これらは、個体の生活の質に影響を及ぼす。MSの臨床過程は、個体によって様々に変わり得るが、いつもこの疾患は、3種の型に分類することができる:再発寛解型、二次性進行型、及び一次性進行型である。複数の研究が、クレアチンリン酸代謝の機能障害をこの疾患の病因及び症候と結びつけている(Minderhoud et al., Arch Neurol
1992, 49(2), 161-5; He et al., Radiology 2005, 234(1), 211-7; Tartaglia et al.,
Arch Neurology 2004, 61(2), 201-207; Duong et al., J Neurol 2007, Apr.20;及びJu et al., Magnetic Res Imaging 2004, 22, 427-429)ものの、クレアチン摂取のみでは、MSの個体で運動負荷能力を改善するのに有効ではないようである(Lambert et al., Arch Phys Med Rehab 2003, 84(8), 1206-1210)。
【0243】
臨床試験でのMS治療有効性の査定は、総合障害度評価尺度(Kurtzke, Neurology 1983, 33, 1444-1452)及びMS機能複合評価(Fischer et al., Mult Scler, 1999, 5, 244-250)、ならびに核磁気共鳴画像化病変負荷、生体マーカー、及び生活の質の自己申告(例えば、Kapoor, Cur Opinion Neurol 2006, 19, 255-259を参照)などの道具を使用して達成することができる。有望な治療薬を同定及び検証するのに有用であることが示されているMSの動物モデルとして、MSの臨床的及び病理学的発現を刺激する実験的自己免疫/アレルギー性脳脊髄炎(EAE)齧歯類モデル(Werkerle and Kurschus, Drug Discovery Today: Disease Models, Nervous System Disorders, 2006, 3(4), 359-367; Gijbels et al., Neurosci Res Commun 2000, 26, 193-206;及びHofstetter et al., J Immunol 2002, 169, 117-125)、ならびに非ヒト霊長類EAEモデル(’t Hart et al., Immunol Today 2000, 21, 290-297)が挙げられる。
【0244】
精神障害
ある特定の実施形態において、本発明の化合物またはその医薬組成物は、精神障害、例えば、統合失調症、双極性障害、及び不安などを治療するのに使用することができる。
【0245】
統合失調症
統合失調症は、320万人のアメリカ人を含む世界の人口の約1%が冒されている、慢性、重篤、かつ身体障害性脳障害である。統合失調症は、思考過程の機能障害、例えば、妄想、幻覚、及び患者の他者に対する関心の広範囲な離脱などを特徴とする精神神経障害の一群である。統合失調症には、サブタイプとして、妄想または聴覚性幻覚を伴う心的占有を特徴とする妄想性統合失調症、解体した会話、解体した行動、及び平坦なもしくは不適切な感情を特徴とする破瓜型または解体型統合失調症;不動、過剰運動活性、または奇異な姿勢での常同姿勢などの身体症候が主である緊張型統合失調症;他のサブタイプの症候特徴の組み合わせを特徴とする未分化統合失調症;ならびに、個人が、現在のところ陽性症候を患ってはいないが、統合失調症の陰性及び/または認知症状を発現している、残遺型統合失調症が含まれる(DSM-IV-TR分類295.30(妄想型)、295.10(解体型)、295.20(緊張型)、295.90(未分化型)、及び295.60(残遺型);Diagnostic and Statistical Manual
of Mental Disorders, 4th Edition, American Psychiatric Association, 297-319, 2005を参照)。統合失調症として、これら及び他の密接に関連する精神障害、例えば、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想性障害、短期精神障害、共有精神病性障害、全身症状による精神障害、物質誘導型精神障害、及び不特定精神障害などが挙げられる(DSM-IV-TR, 4th Edition, pp. 297-344, American Psychiatric Association, 2005)。
【0246】
統合失調症症候は、陽性、陰性、または認知性に分類することができる。統合失調症の陽性症候として、妄想及び幻覚が挙げられ、これらは、例えば、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて測定することができる(Kay et al., Schizophrenia Bulletin 1987, 13, 261-276)。統合失調症の陰性症候として、感情鈍麻、アネルギー、失語症、及び引きこもりが挙げられ、これらは、例えば、陰性症状評価尺度(SANS)を用いて測定することができる(Andreasen, 1983, Scales for the Assessment of Negative Symptoms (SANS), Iowa City, Iowa)。統合失調症の認知症状として、組織化及び知性認識使用の障害が挙げられ、これらは、陽性・陰性症状評価尺度-認知性サブスケール(PANSS-認知性サブスケール)(Lindenmayer et al., J Nerv Ment Dis 1994, 182, 631-638)を用いて、または認知的作業を行う能力を査定することにより、例えば、ウィスコンシンカードソーティングテスト(例えば、Green
et al., Am J Psychiatry 1992, 149, 162-67;及びKoren et al., Schizophr Bull 2006, 32(2), 310-26を参照)を用いて、測定することができる。
【0247】
複数の研究が、統合失調症と脳の高エネルギーリン酸代謝における機能障害との相関を支持している(Fukuzako, World J Biol Psychiatry
2001, 2(2), 70-82;及びGangadhar et al., Prog Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry 2006, 30, 910-913)。統合失調症の患者は、脳の左前頭領域及び右前頭領域で低下したホスホクレアチンレベルを示し、これらは、敵意-不信感及び不安-抑鬱評価サブスケールと高い相関がある(Deicken e
t al., Biol Psychiatry 1994, 36(8), 503-510; Volz et al., Biol Psychiatry 1998, 44, 399-404;及びVolz et al., Biol Psychiatry 2000, 47, 954-961)。したがって、クレアチン補給は、統合失調症の治療に提案されてきている(例えば、Lyoo et al., Psychiatry Res: Neuroimaging 2003, 123, 87-100を参照)。
【0248】
統合失調症の治療に関するクレアチンプロドラッグ及びそれらの医薬組成物の有効性は、当業者に既知である方法により求めることができる。例えば、統合失調症の陰性、陽性、及び/または認知症候(複数可)を、患者の治療前後に測定することができる。そのような症候(複数可)の減少は、患者の症状が改善したことを示す。統合失調症の症候の改善は、例えば、陰性症状評価尺度(SANS)、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)(例えば、Andreasen, 1983, Scales for the Assessment of Negative Symptoms (SANS), Iowa City, Iowa;及びKay et al., Schizophrenia
Bulletin 1987, 13, 261-276を参照)、及び認知欠損試験、例えばウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST)及び他の認知機能測定手段を使用して、査定することができる(例えば、Keshavan et al., Schizophr Res 2004, 70(2-3), 187-194; Rush, Handbook of Psychiatric Measures, American Psychiatric Publishing 2000; Sajatovic and Ramirez, Rating Scales in Mental Health, 2nd ed, Lexi-Comp, 2003, Keefe, et al., Schizophr Res.2004, 68(2-3), 283-97;及びKeefe et al., Neuropsychopharmacology, 19 Apr.2006を参照。
【0249】
クレアチンプロドラッグ及びそれらの医薬組成物の有効性は、統合失調症障害の動物モデルを用いて評価することができる(例えば、Geyer and Moghaddam, in "Neuropsychopharmacology," Davis et al., Ed., Chapter 50, 689-701, American College of Neuropsychopharmacology, 2002を参照)。例えば、ラットの条件回避反応行動(CAR)及びカタレプシー試験は、それぞれ、統合失調症治療活性及びEPS効果の傾向を予測するのに有用であることが示される(Wadenberg et al., Neuropsychopharmacology, 2001, 25, 633-641)。
【0250】
双極性障害
双極性障害は、極端な気分の期間を特徴とする精神科症状である。そのような気分は、抑鬱(例えば、悲しみ、不安、罪悪感、怒り、孤独、及び/または絶望の持続的感情、睡眠及び摂食障害、疲労及び通常楽しんでいた活動の興味喪失、集中できなくなること、孤独感、自己嫌悪、無気力または無関心、離人症、性的活動の興味喪失、内気または社会不安、易怒性、慢性疼痛、やる気喪失、及び罹患/自殺念慮)から狂躁(例えば、爽快、多幸症、刺激、及び/または疑い深さ)まで及ぶスペクトルで起こり得る。双極性障害は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th Ed., Text Revision (DSM-IV-TR), American Psychiatric Assoc., 200, pages 382-401で、同定及び分類されている。双極性障害には、I型双極性障害、II型双極性障害、気分循環症、及び他に特定されない双極性障害が含
まれる。
【0251】
双極性抑鬱の患者は、ホスホクレアチン及びクレアチンキナーゼのレベル低下を特徴とする脳の高エネルギーリン酸代謝の障害を有することが示されており(Kato et al., J Affect Disord 1994, 31(2), 125-33;及びSegal et al., Eur Neuropsychopharmacology 2007, 17, 194-198)、おそらくは、ミトコンドリアエネルギー代謝が関与している(Stork and Renshaw, Molecular
Psychiatry 2005, 10, 900-919)。
【0252】
双極性障害の治療は、評価尺度、例えば、モンゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度、ハミルトンうつ病尺度、ラスキンうつ病尺度、フェイナー基準、及び/または臨床全般印象度尺度などを用いて、臨床試験で査定することができる(Gijsman et al., Am J Psychiatry 2004, 161, 1537-1547)。
【0253】
不安
不安は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th Ed., Text Revision (DSM-IV-TR), American Psychiatric Assoc., 200, pages 429-484で同定及び分類されている。不安障害として、パニック発作、広場恐怖症、広場恐怖症を伴わないパニック障害、パニック障害歴のない広場恐怖症、特定恐怖症、社会恐怖症、強迫性障害、外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、全般不安症、全身症状による不安障害、物質誘導型不安障害、及び他に特定されない不安障害が挙げられる。最近の研究で、半卵円中心(大脳白質の代表的領域)でのクレアチン/ホスホクレアチンのレベル低下と不安の深刻度の相関が記述されている(Coplan et al., Neuroimaging, 2006, 147,
27-39)。
【0254】
不安の治療を査定するのに有用な動物モデルとして、恐怖条件付け驚愕(Brown et al., J Experimental Psychol, 1951, 41, 317-327)、高架式十字迷路(Pellow et al., J Neurosci. Methods 1985, 14, 149-167;及びHogg,
Pharmacol Biochem Behavior 1996, 54(1),
21-20)、及び高架式十字迷路での恐怖条件付け行動(Korte and De
Boer, Eur J Pharmacol 2003, 463, 163-175)が挙げられる。不安の遺伝的動物モデルは、抗不安剤に敏感な他の動物モデル(Martin, Acta Psychiatr Scand Suppl 1998, 393, 74-80)と同様に既知である(Toh, Eur J Pharmacol
2003, 463, 177-184)。
【0255】
臨床試験では、有効性は、健康なボランティア及び不安障害の患者に実験的不安を誘導する心理学的手順を用いて(例えば, Graeff, et al., Brazilian J Medical Biological Res 2003, 36, 421-32を参照)、またはFirst et al., Structured Clinical Interview for DSM-IV Axis I Disorders, Patient Edition (SCIDIP), Version 2. Biometrics Research, New York State Psychiatric Institute, New York, 1995に記載されるとおりに、DSM-IVのI軸障害のための構造化面接に基づき、患者を選択するこ
とにより、評価することができる。複数ある尺度のどれでも、不安及び治療の有効性を評価するのに使用することができ、そのような尺度として、例えば、ペン状態懸念質問表(Behar et al., J Behav Ther Exp Psychiatr
2003, 34, 25-43)、ハミルトン不安及びうつ病尺度、シュピールベルガー状態・特性不安検査、及びリーボウィッツ社会不安尺度(Hamilton, J Clin Psychiatry 1980, 41, 21-24; Spielberger and Vagg, J Personality Assess 1984, 48, 95-97;及びLiebowitz, J Clin Psychiatry 1993, 51, 31-35(既出))が挙げられる。
【0256】
クレアチンキナーゼ系を冒す遺伝病
細胞内クレアチンプールは、食事からのクレアチン取り込みにより、及び内因性クレアチン合成により、維持される。多くの組織、特に、脳、肝臓、及び膵臓に、Na-Cl依存性クレアチン輸送(SLC6A8)が含まれており、これは、形質膜を通じた能動クレアチン輸送を担っている。クレアチン生合成には、2種の酵素、L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(AGAT)及びグアニジノ酢酸トランスフェラーゼ(GAMT)の作用が関与している。AGATは、アルギニンのアミジノ基をグリシンへ移してオルニチン及びグアニジノ酢酸を生成させる反応を触媒する。グアニジノ酢酸は、GAMTにより、アミジノ基でメチル化されてクレアチンを与える(例えば、Wyss and Kaddurah-Daouk, Phys Rev 2000, 80, 1107-213を参照)。
【0257】
ヒトでは、クレアチン生合成での2つの遺伝子エラー及びクレアチン輸送体での1つの遺伝子エラーが既知であり、これらのエラーは、AGAT、GAMT、及びクレアチン輸送体の欠損を生じる(Schulze, Cell Biochem, 2003, 244(1-2), 143-50; Sykut-Cegielska et al.,
Acta Biochimica Polonica 2004, 51(4), 875-882)。クレアチン合成に障害のある患者は、クレアチン及びクレアチンリン酸が全身で枯渇する。AGAT欠損症の患者は、精神遅滞及び運動発達遅滞、言語発達の重篤な遅滞、及び熱性痙攣を示す可能性がある(Item et al., Am J Hum Genet. 2001, 69, 1127-1133)。GAMT欠損症の患者は、積極的な発話のない発達遅滞、自傷を伴う自閉症、錐体外路症状、及び癲癇を示す可能性がある(Stromberger et al., J Inherit Metab Dis 2003, 26, 299-308)。クレアチン輸送体欠損症の患者は、クレアチン及びクレアチンリン酸の細胞内枯渇を示す。クレアチン輸送体をコードする遺伝子は、X染色体上に位置し、男性患者は、軽度から重度の精神遅滞を示し、女性患者は、それより症状が軽い(Salomons et al., J. Inherit
Metab Dis 2003, 26, 309-18; Rosenberg et al., Am J Hum Genet. 2004, 75, 97-105;
deGrauw et al., Neuropediatrics 2002, 33(5), 232-238; Clark et al., Hum Genet, 2006, April)。
【0258】
1日あたり約350mg~2g/kg体重の投薬でのクレアチン補給は、AGATまたはGAMT欠損症の臨床症候を解消するのに有効であることが示されている(例えば、Schulze, Cell Biochem, 2003, 244(1-2), 143-50を参照)。しかしながら、GAMT及びAGAT欠損症の患者とは異なり、クレアチン輸送体欠損症の患者では、経口クレアチン補給は、脳クレアチンレベルの上昇をもたらさない(Stockler-Ipsiroglu et al., in Physician’s Guide to the Treatment and Follo
w up of Metabolic Diseases, eds Blau et al., Springer Verlag, 2004を参照)。
【0259】
筋肉疲労
高強度の運動負荷中、ATP加水分解は、最初に、クレアチンキナーゼ反応を介してクレアチンリン酸により緩衝される(Kongas and van Beek, 2nd
Int. Conf. Systems Biol 2001, Los Angeles Calif., Omnipress, Madison, Wis., 198-207;及びWalsh et al., J Physiol 2001, 537.3, 971-78、これらはそれぞれ、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される)。運動負荷中、ATP再生のためクレアチンリン酸は即時利用可能であるのに対し、解糖は数秒遅れて誘導され、ミトコンドリア酸化的リン酸化の刺激はそれよりさらに遅れる。筋肉中のクレアチンリン酸貯蔵量は限りがあるため、高強度の運動負荷中、クレアチンリン酸は約10秒で枯渇する。筋肉の能力は、クレアチンリン酸の筋肉貯蔵量を増加させ、それによりクレアチンリン酸枯渇を遅らせることにより、向上させることが可能であると提案されてきている。クレアチン及び/またはクレアチンリン酸補給は、断続的な最大上運動負荷で筋肉の能力を改善する可能性があるものの、補給が持久能力を向上させることを示すものはない。他方で、クレアチンリン酸の静脈内注射は、長期の最大下運動負荷中の運動負荷耐性を改善するようである(Clark, J Athletic Train, 1997, 32, 45-51、これは、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される)。
【0260】
筋力
正常で健康な個体での食事によるクレアチン補給は、筋肉機能に有益な副作用をもたらし、そのため、アマチュア及びプロの運動選手によるクレアチンの利用が増加している。クレアチン補給が、高強度運動負荷の最初の数秒間におけるATPの即時再生のための最も重要なエネルギー源であるクレアチンリン酸の筋肉貯蔵量を増加させることにより、回復期中のクレアチンリン酸プールの回復を加速することにより、及び運動負荷中のアデノシンヌクレオチドの分解及びおそらくは乳酸の蓄積を抑制することにより、全筋肉能力を向上させ得ることを示唆する証拠が存在する(例えば、Wyss and Kaddurah-Daouk, Physiol Rev 2000, 80(3), 1107-1213を参照)。
【0261】
しかしながら、正常で健康な個体では、継続的かつ長期間クレアチンを使用しても、筋肉中のクレアチン及びクレアチンリン酸を高く維持することに失敗し(例えば、Juhn
et al., Clin J Sport Med 1998, 8, 286-297; Terjung et al., Med Sci Sports Exerc
2000, 32, 706-717;及びVandenberghe et al., J Appl Physiol 1997, 83, 2055-2063を参照、これらはそれぞれ、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される)、これはおそらくクレアチン輸送体活性及び輸送体タンパク質含有量の下方制御の結果である(Snow
and Murphy, Mol Cell Biochem 2001, 224(1-2), 169-181、これは、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される)。すなわち、本発明のクレアチンプロドラッグは、哺乳類、特にヒトでの筋力の維持、回復、及び/または向上に使用することができる。
【0262】
筋力の維持、回復、及び/または向上のために本発明の化合物を投与することの有効性は、動物モデル及びヒトモデルならびに臨床試験で査定することができる。筋力の評価に使用可能な動物モデルは、例えば、Wirth et al., J Applied Physiol 2003, 95, 402-412及びTimson, J. Ap
pl Physiol 1990, 69(6), 1935-1945に開示される。筋力は、例えば、Oster、米国特許出願第2007/0032750号、米国特許出願第2007/0012105号に開示される方法を使用して、及び/または当業者に既知である他の方法を使用して、ヒトで査定することができる。
【0263】
器官及び細胞生存能
ある特定の実施形態において、生きた脳、筋肉、膵臓細胞、または研究用もしくは細胞移植用の他の細胞型の単離は、クレアチンリン酸類似体プロドラッグを含有する単離媒体もしくは増殖媒体で、細胞を灌流する及び/またはその媒体と細胞を接触させることにより、向上させることができる。ある特定の実施形態において、組織器官または細胞の生存能は、組織器官または細胞を、有効量の本発明の化合物またはその医薬組成物と接触させることにより、改善することができる。
【0264】
グルコースレベル調節に関連した疾患
クレアチンリン酸の投与は、血漿グルコースレベルを低下させるので、グルコースレベル調節に関連した疾患、例えば、高血糖、インシュリン依存性または非依存性糖尿病、及び糖尿病に続発する関連疾患などを治療するのに有用となり得る(米国特許出願第2005/0256134号)。
【0265】
グルコースレベル調節に関連した疾患を治療するために本発明の化合物を投与することの有効性は、動物モデル及びヒトモデルならびに臨床試験で査定することができる。化合物は、ラット、ウサギ、またはサルなどの動物に投与することができ、血漿グルコース濃度を様々な時点で測定することができる(例えば、米国特許出願第2003/0232793号を参照)。インシュリン依存性または非依存性糖尿病及び糖尿病に続発する関連疾患の治療に関する化合物の有効性は、糖尿病の動物モデル、例えば、Shafrir, "Animal Models of Diabetes," Ed., 2007, CRC Press; Mordes et al., "Animal Models
of Diabetes," 2001, Harwood Academic Pre
ss; Mathe, Diabete Metab 1995, 21(2), 106-111;及びRees and Alcolado, Diabetic Med.
2005, 22, 359-370に開示されるものなどを使用して評価することができる。
【0266】
用量
本発明の化合物または上記のいずれかのものの薬学上許容される塩もしくは薬学上許容される溶媒和物は、エネルギー代謝の機能障害と関連した疾患または障害を治療するために投与することができる。
【0267】
本明細書中開示される特定の疾患、障害、または症状の治療に有効となる本発明の化合物の量は、疾患、障害、または症状の性質に依存することとなり、当該分野で知られる標準の臨床技法により決定することができる。また、in vitroまたはin vivoアッセイを任意選択で採用して、最適な投薬量範囲を同定する助けとすることができる。投与される化合物の量は、要因のなかでもとりわけ、治療を受ける患者、患者の体重、患者の健康、治療される疾患、罹患の重篤度、投与経路、化合物の効力、及び処方する医師の判断に依存する可能性がある。
【0268】
全身投与の場合、治療上有効用量は、最初に、in vitroアッセイから推定することができる。例えば、ある用量を動物モデルに処方して、有益な循環組成物濃度範囲を得ることができる。初期量は、当該分野で既知の技法を使用して、in vivoデータ、例えば、動物モデルから推定することもできる。そのような情報を使用して、ヒトでの
有用な用量をより正確に求めることができる。当業者なら、動物データに基づいてヒトへの投与を最適化することができる。
【0269】
クレアチンは、ヒト体内で自然に発生し、一部は、腎臓、膵臓、及び肝臓で合成され(1日あたり約1~2グラム)、一部は食べ物と共に摂取される(1日あたり約1~5グラム)。細胞は、クレアチン輸送体を介して、能動的にクレアチンを取り込む。細胞内で、クレアチンキナーゼは、クレアチンをリン酸化して、時間的かつ空間的エネルギーバッファーとして作用することができるクレアチンリン酸のプールを形成する。
【0270】
クレアチン、クレアチンリン酸、及びそれらの類似体は、有害な副作用を伴わずに高用量で投与することができる。例えば、クレアチン一水和物は、運動選手及びボディビルダーに2~3gm/日の範囲の量で投与されてきており、クレアチンリン酸は、心疾患の患者に、静脈内注射により、有害な副作用を伴わずに最高8gm/日まで投与されてきている。最高1%のシクロクレアチンを含有する食事を給餌された動物も、有害効果を示していない(例えば、Griffiths and Walker, J. Biol. Chem. 1976, 251(7), 2049-2054; Annesley et al., J Biol Chem 1978, 253(22), 8120-25; Lillie et al., Cancer Res 1993, 53, 3172-78;及びGriffiths, J Biol Chem 1976, 251(7), 2049-54を参照)。
【0271】
ある特定の実施形態において、治療上有効用量の本発明の化合物は、1日あたり約1mg等量~約20,000mg等量のクレアチンリン酸類似体、1日あたり約100mg等量~約12,000mg等量のクレアチンリン酸類似体、1日あたり約1,000mg等量~約10,000mg等量のクレアチンリン酸類似体、及びある特定の実施形態において、1日あたり4,000mg等量~約8,000mg等量のクレアチンリン酸類似体を含むことができる。
【0272】
1つの用量は、単独剤形で投与することも、複数剤形で投与することもできる。複数剤形が使用される場合、各剤形に含有される化合物の量は、同一であることも異なることもできる。1つの用量に含有される本発明の化合物の量は、投与経路、及び患者の疾患、障害、または症状が、急性、慢性、または急性投与と慢性投与の組み合わせにより有効に治療されているかどうかに依存する可能性がある。
【0273】
ある特定の実施形態において、投与される用量は、毒性用量より少ない。本明細書中記載される組成物の毒性は、細胞培養物または実験動物で標準の薬学手順により、例えば、LD50(集団の50%が致死する用量)またはLD100(集団の100%が致死する用量)を求めることにより、決定することができる。毒性と治療効果の間の用量比は、治療指数である。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、高い治療指数を示すことができる。これらの細胞培養物アッセイ及び動物実験から得られるデータを使用して、ヒトで使用するのに毒性ではない投薬量範囲を組み立てることができる。1つの用量の本発明の医薬組成物は、有効用量を含み、かつ毒性をほとんどまたは全く示さない循環濃度の範囲内、例えば、血液、血漿、または中枢神経系中の循環濃度の範囲内であることができる。用量は、採用された剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変わる場合がある。
【0274】
治療中、用量及び投薬スケジュールは、疾患を治療するために十分なまたは定常状態のレベルの有効量のクレアチンリン酸類似体を提供することができる。ある特定の実施形態において、漸増用量を投与することができる。
【0275】
投与
本発明の化合物、その薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体、もしくは上記のいずれかのものの医薬上許容される溶媒和物、もしくは上記のもののいずれかの医薬組成物は、任意の適切な経路により投与することができる。ある特定の実施形態において、本発明の化合物は、断続的または連続的に投与することができる。適切な投与経路の例として、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、経皮、直腸、吸入、または外用が挙げられるが、これらに限定されない。投与は、全身性でも局所性でも可能である。投与は、ボーラス注射でも、持続点滴でも、または上皮もしくは粘膜皮膚層、例えば口腔粘膜、直腸、及び腸管粘膜などを通じた吸収によるものでも可能である。
【0276】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物、上記のいずれかのものの薬学上許容される塩または医薬上許容される溶媒和物、もしくは上記のいずれかのものの医薬組成物を、脳室内、くも膜下腔内、及び硬膜外注射をはじめとする任意の適切な経路により直接中枢神経系に導入することが望ましい場合がある。脳室内注射は、脳室内カテーテルを、例えば、オンマイヤリザーバーなどのリザーバーと接続して使用することにより、促進することができる。
【0277】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物、その薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体、もしくは上記のいずれかのものの医薬上許容される溶媒和物、もしくは上記のいずれかのものの医薬組成物は、非経口で、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、及び胸骨内注射などをはじめとする注射または輸液により、投与することができる。
【0278】
本発明の化合物、その薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体、もしくは上記のいずれかのものの医薬上許容される溶媒和物、もしくは上記のいずれかのものの医薬組成物は、全身に、及び/または特定器官に局所的に、投与することができる。
【0279】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物またはその医薬組成物は、単独の1回用量として投与することも、慢性投与することもできる。慢性により、本発明の方法及び組成物が、所与の個体に対して複数回実施されることを意味する。例えば、慢性投与は、当業者に明らかなとおり、複数用量の医薬組成物を、1日1回、1日2回、またはそれより多いもしくは少ない頻度で、個人をはじめとする動物に投与するものであり得る。別の実施形態において、本方法及び組成物は、急性で実施される。急性により、本発明の方法及び組成物が、虚血性または閉塞性イベントに近い時期またはそれと同時期に実施されることを意味する。例えば、急性投与は、一用量または複数用量の医薬組成物を、急性心筋梗塞などの虚血性または閉塞性イベント発生時に、例えば、脳卒中などの虚血性または閉塞性イベント発現初期に、もしくは外科手技の前、最中、または後に、投与するものであり得る。虚血性または閉塞性イベントに近い時期またはそれと同時期というのは、虚血性イベントによって変わるだろうが、例えば、心筋梗塞、脳卒中、または間欠性跛行の症候が出てから約30分以内であり得る。ある特定の実施形態において、急性投与は、虚血性イベントの約1時間以内での投与である。ある特定の実施形態において、急性投与は、虚血性イベント後、約2時間、約6時間、約10時間、約12時間、約15時間、または約24時間以内での投与である。
【0280】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物またはその医薬組成物は、慢性投与することができる。ある特定の実施形態において、慢性投与は、1日の内に複数回の静脈内注射を周期的に投与することを含むことができる。ある特定の実施形態において、慢性投与
は、1回の静脈内注射を、ボーラスとしてまたは持続点滴として、毎日、約1日おき、約3~15日ごとに、約5~10日ごとに、及びある特定の実施形態において、約10日ごとに、投与することを含むことができる。
【0281】
併用療法
ある特定の実施形態において、本発明の化合物、その薬学上許容される塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体、もしくは上記のいずれかのものの医薬上許容される溶媒和物は、併用療法で、少なくとも1種の他の治療薬とともに使用することができる。本発明の化合物と他の治療薬(複数可)は、相加的に、またはある特定の実施形態において、相乗的に作用することができる。実施形態によっては、本発明の化合物は、別の治療薬、例えば、エネルギー代謝の機能障害と関連した疾患を治療するための化合物;筋肉疲労を治療するための化合物;筋力及び持久力を向上させるための化合物;移植臓器の生存能を高めるための化合物;ならびに単離した細胞の生存能を改善するための化合物などの投与と同時に投与することができる。実施形態によっては、本発明の化合物、薬学上許容される塩、もしくは上記のいずれかのものの医薬上許容される溶媒和物は、別の治療薬、例えば、虚血、心室肥大などのエネルギー代謝の機能障害、ALS、ハンチントン病、パーキンソン病、またはアルツハイマー病などの神経変性疾患、手術関連虚血性組織損傷、及び再灌流組織損傷などと関連した疾患を治療するための化合物;多発性硬化症(MS)を治療するための化合物;統合失調症、双極性障害、または不安などの精神障害を治療するための化合物;筋肉疲労を治療するための化合物;筋力及び持久力を向上させるための化合物;移植臓器の生存能を高めるための化合物;ならびに単離した細胞の生存能を改善するための化合物などの投与の前、またはそれに続いて投与することができる。
【0282】
本発明の医薬組成物は、1種または複数の本発明の化合物に加えて、同一または異なる疾患、障害、または症状を治療するのに有効な1種または複数の治療薬を含むことができる。
【0283】
本発明の方法は、1種または複数の本発明の化合物もしくは医薬組成物及び1種または複数の他の治療薬の投与を含むが、ただし、投与を組み合わせることで1種または複数の本発明の化合物の治療効果が阻害されることはない、及び/または併用による悪影響が出ることはない。
【0284】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、別の治療薬の投与と同時に投与することができ、別の治療薬は、本発明の化合物を含有する医薬組成物または剤形の一部分であることも、本発明の化合物を含有するものとは別の組成物または剤形に含まれていることも可能である。ある特定の実施形態において、本発明の化合物は、別の治療薬の投与の前またはその後に投与することができる。併用療法のある特定の実施形態において、併用療法は、例えば、特定薬物と関連した有害副作用を最小限にするために、本発明の組成物と別の治療薬を含む組成物組成物との間で、投与を変更することを含む。本発明の化合物が、毒性に限定されないがそれを含む有害副作用をもたらす可能性を潜在的に有する別の治療薬と同時に投与される場合、治療薬は、有害副作用が誘発される閾値未満になる用量で、都合よく投与することができる。
【0285】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物または医薬組成物は、パーキンソン病を治療するための別の化合物、例えば、アマンタジン、ベンズトロピン、ブロモクリプチン、レボドパ、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、セレギリン、トリヘキシフェニジル、または上記のもののいずれかの組み合わせなどを含む、もしくはそれらと一緒に患者に投与することができる。
【0286】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物または医薬組成物は、アルツハイマー病
を治療するための別の化合物、例えば、ドネペジル、ガランタミン、メマンチン、リバスチグミン、タクリン、または上記のもののいずれかの組み合わせなどを含む、もしくはそれらと一緒に患者に投与することができる。
【0287】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物または医薬組成物は、ALSを治療するための別の化合物、例えば、リルゾールなどを含む、もしくはそれらと一緒に患者に投与することができる。
【0288】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物または医薬組成物は、虚血性脳卒中を治療するための別の化合物、例えば、アスピリン、ニモジピン、クロピドグレル、プラバスタチン、未分画ヘパリン、エプチフィバチド、β遮断薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、エノキサパリン、または上記のもののいずれかの組み合わせなどを含む、もしくはそれらと一緒に患者に投与することができる。
【0289】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物または医薬組成物は、虚血性心筋症または虚血性心疾患を治療するための別の化合物、例えば、ACE阻害剤、例えばラミプリル、カプトプリル、及びリシノプリルなど;n遮断薬、例えば、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルテオロール、ナドロール、ペンブトロール、プロプラノロール、チモロール、メトプロロール、カルベジロール、及びアルドステロンなど;利尿薬;ジギトキシン、または上記のもののいずれかの組み合わせなどを含む、もしくはそれらと一緒に患者に投与することができる。
【0290】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物または医薬組成物は、循環器疾患を治療するための別の化合物、例えば、抗血栓薬、コレステロール降下薬、抗血小板薬、血管拡張薬、β遮断薬、アンジオテンシン遮断薬、ジギタリス及びその誘導体、または上記のもののいずれかの組み合わせなどを含む、もしくはそれらと一緒に患者に投与することができる。
【0291】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物または医薬組成物は、MSを治療するための別の化合物を含む、もしくはその化合物と一緒に患者に投与することができる。MSを治療するのに有用な薬物の例として、コルチコステロイド、例えば、メチルプレドニゾロンなど;IFN-β、例えば、IFN-β1a及びIFN-β1bなど;酢酸グラチラマー(コパキソン(登録商標));最晩期抗原4(VLA-4)インテグリンと結合するモノクローナル抗体(タイサブリ(登録商標))、例えば、ナタリズマブなど;免疫調節薬、例えば、FTY720スフィンゴシン-1-リン酸修飾薬など、及びCOX-2阻害剤、例えば、BW755c、ピロキシカム、及びフェニドンなど;ならびにグルタミン酸興奮毒性及びiNOSの阻害剤、フリーラジカル消去剤、及びカチオンチャンネル遮断薬を含む神経保護治療;メマンチン;AMPAアンタゴニスト、例えば、トピラマートなど;ならびに、グリシン結合部位NMDAアンタゴニストが挙げられる(Virley, NeruoRx 2005, 2(4), 638-649、及びその中の引用;ならびに米国特許出願第2004/0102525号)。
【0292】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物または医薬組成物は、統合失調症を治療するための別の化合物を含む、もしくはその化合物と一緒に患者に投与することができる。統合失調症を治療するのに有用な抗精神薬の例として、アセトフェナジン、アルサーオキシロン、アミトリプチリン、アリピプラゾール、アステミゾール、ベンズキナミド、カルフェナジン、クロルメザノン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、クロザピン、デシプラミン、ドロペリドール、ハロペリドール、フルフェナジン、フルペンチキソール、グリシン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、オランザピン、オンダンセトロン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロシクリジン、プロマジン、プロ
ピオマジン、クエチアピン、レモキシプリド、レセルピン、リスペリドン、セルチンドール、スルピリド、テルフェナジン、チエチルペラジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフロペラジン、トリフルプロマジン、トリメプラジン、及びジプラシドンが挙げられるが、これらに限定されない。統合失調症の症候を治療するのに有用な他の抗精神薬として、アミスルプリド、バラペリドン、ブロナンセリン、ブタペラジン、カルフェナジン、エプリバンセリン、イロペリドン、ラミクタル、オサネタント、パリペリドン、ペロスピロン、ピペラセタジン、ラクロプリド、レモキシプリド、サリゾタン、ソネピプラゾール、スルピリド、ジプラシドン、及びゾテピン;セロトニン及びドーパミン(5HT/D2)アゴニスト、例えば、アセナピン及びビフェプルノクスなど;ニューロキニン3アンタゴニスト、例えば、タルネタント及びオサネタントなど;AMPAkine、例えば、CX-516、ガランタミン、メマンチン、モダフィニル、オカペリドン、及びトルカポンなど;ならびにα-アミノ酸、例えば、D-セリン、D-アラニン、D-シクロセリン、及びN-メチルグリシンなどが挙げられる。
【0293】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物または医薬組成物は、双極性障害を治療するための別の化合物、例えば、アリピプラゾール、カルバマゼピン、クロナゼパム、クロニジン、ラモトリジン、クエチアピン、ベラパミル、及びジプラシドンなどを含む、もしくはそれらと一緒に患者に投与することができる。
【0294】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物または医薬組成物は、不安を治療するための別の化合物、例えば、アルプラゾラム、アテノロール、ブスピロン、クロルジアゼポキシド、クロニジン、クロラゼプ酸、ジアゼパム、ドキセピン、エスシタロプラム、ハラゼパム、ヒドロキシジン、ロラゼパム、プロクロルペラジン、ナドロール、オキサゼパム、パロキセチン、プロクロルペラジン、トリフロペラジン、及びベンラファキシンなどを含む、もしくはそれらと一緒に患者に投与することができる。
【実施例
【0295】
以下の実施例は、本発明の化合物を特性決定するアッセイ及び本発明の化合物の使用を詳細に説明する。当業者には当然のことながら、本開示の範囲から逸脱することなく、材料及び方法の両方に対して多数の修飾を行うことができる。
【0296】
実験全般
化合物のNMRスペクトルは、400または500MHz(H)で25℃で測定した。H NMRスペクトルは、特に記載がない限り、0.3Hzの線幅広幅化で処理した。LC/MS分析については、Shimadzu LCMS 2010(カラム:sepax ODS 50×2.0mm、5um)、Agilent 1200 HPLC、1956 MSD(カラム:Waters XBridge C18 4.6×50mm、3.5mm)Shim-pack XR-ODS 30×3.0、2.2um)をES(+)イオン化モードで、Agilent 3110TM(またはAgilent Zorbax Bonus RP(商標)、2.1×50mm、3.5μm、を使用した。模範的な設定は、温度50℃及び流速0.8mL/分、2μLの注入量、移動相:A=水に0.1%ギ酸及び1%アセトニトリル添加、移動相B=メタノールに0.1%ギ酸添加;保持時間は分単位であった。方法詳細:(I)Binary Pump G1312B(商標)をUV/Visダイオードアレイ検出器G1315C及びAgilent 6130(商標)質量分析器とともに作動させる、モードはポジティブ及びネガティブイオンエレクトロスプレーモード、UV検出は220及び254nm、移動相Bを2.5分の線形勾配で5%から95%まで増加(II)95%Bに0.5分間維持(III)移動相Bを0.1分の線形勾配で95%から5%に低下させる(IV)5%Bに0.29分間維持。分析用HPLC試料分析については、Agilent 1200 Series(商標)にWaters HSS T3(商標)カラム、2.1×50mm、1.8μmを装着して
使用し、温度60℃及び流速0.5mL/分、移動相:A=水に0.1%ギ酸及び0.1%アセトニトリル添加、移動相B=アセトニトリルに0.1%ギ酸添加;保持時間は分単位であった。融点は、Thomas Hoover Unimelt(商標)毛細管融点測定器を使用して記録した。反応の進行は、Merck EMD 60 F254シリカゲルガラスプレートでの薄層クロマトグラフィーに、UV光及び/またはヨウ素処理を用いて視覚化することで、監視した。クロマトグラフィー精製は、Teledyne ISCO CombiFlash Companion(商標)で、5~100mL/分の様々な流速を用いて行った。使用したカラムは、Teledyne ISCO RediSep使い捨てフラッシュカラム(4、12、24、40、80、または120gのシリカゲルが予め充填)であった。ピークは、可変波長UV吸収(200~360nm)により検出した。分取逆相クロマトグラフィーは、Gilson 215 Liquid HandlerにVarian Model 218ポンプを装備して使用し、Chromeleon(商標)ソフトウェアで操作して行った。検出は、Varian Pro Star(商標)UV-VisまたはSedex55(商標)ELSDユニットいずれかを用いて行った。クロマトグラフィー分離は、Phenomenex Kinetex(商標)5u C18 100A、Axia、100×30mmカラムを流速28mL/分で使用して行った。
【0297】
バイオアッセイで試験した化合物、例えば、化合物A、B、C、D、E、F、G、H、J、K、L、及びMなどは、本明細書中記載される合成手順で例示される化合物に該当する。例えば、化合物Eは、本出願で記載される場合には、実施例26、工程5Aの化合物である。
【0298】
実施例1:In vitroでのプロドラッグの酵素切断の確定方法
クレアチンプロドラッグについては、プロドラッグが体循環にある間は未変化のままであり(すなわち、切断されず)、標的組織で切断される(すなわち、親薬物を放出する)ことが、一般に望ましい。有用な安定性レベルは、少なくとも部分的には、プロドラッグの機構及び薬物動態により決定され得る。有用な不安定性レベルも、少なくとも部分的には、経口投与された場合には、体循環での及び/または胃腸管での、プロドラッグ及び親薬物(例えば、クレアチン)の薬物動態により決定され得る。一般に、胃腸管(人工胃液、人工腸液、腸管S9、パンクレアチンまたは結腸洗浄アッセイでの安定性により査定した場合)ではより安定であり、かつマウス血漿、ラット血漿、ヒト血漿、マウス、ラット及び/またはヒト肝臓S9、肝臓ミクロソーム、及び/または肝細胞標本ではより不安定であるプロドラッグが、経口投与されるプロドラッグとして有用である可能性がある。一般に、マウス血漿、ラット血漿、ヒト血漿、マウス、ラット、及び/またはヒト肝臓S9、肝臓ミクロソーム、及び/または肝細胞標本ではより安定であり、かつ標的組織細胞破砕物または標的組織細胞単離標本、例えば、脳、筋肉、及びCaco-2 S9標本などではより不安定であるプロドラッグが、全身投与されるプロドラッグとして有用である可能性がある、及び/または標的組織にプロドラッグを送達するのにより有効となる可能性がある。一般に、様々なpHの生理緩衝液中でより安定なプロドラッグが、プロドラッグとしてより有用である可能性がある。一般に、標的組織細胞破砕物及び/または標的組織細胞単離標本、例えば、脳、筋肉、及びCaco-2 S9標本などではより不安定であるプロドラッグが、細胞内で切断されて、標的組織に親薬物を放出する可能性がある。この実施例で記載されるものなど、in vitroでのプロドラッグの酵素切断または化学切断を明らかにする試験の結果は、in vivo試験用のプロドラッグを選択するのに使用することができる。
【0299】
プロドラッグの安定性は、様々な標本を用い、当該分野で既知の方法により、1つまたは複数のin vitro系で、評価することができる。組織及び標本は、販売提供元から得る(例えば、Pel-Freez Biologicals、Rogers、Ark
.、またはGenTest Corporation、Woburn、Mass.)。in vitro試験に有用な実験条件を表1に記載する。プロドラッグは、3連で各標本に加える。
【0300】
【表1】
【0301】
アルカリホスファターゼを含有する標本については、ホスファターゼ阻害剤カクテル(Sigma)の存在下及び不在下で試験する。試料を、30分~24時間の範囲の時間、37℃でインキュベートする。各時点で、試料を50%エタノールでクエンチする。プロドラッグのベースライン濃度は、50%エタノール/標本混合物に化合物を直接加えることにより決定する(t=0)。試料を14,000rpmで15分間遠心し、未変化のプロドラッグ及び放出された親薬物の濃度を、LC/MS/MSを用いて測定する。特定酵素(例えば、ペプチダーゼなど)に対するプロドラッグのこの安定性を、精製酵素とともにインキュベートすることにより、in vitroでも査定する。
【0302】
パンクレアチン安定性試験は、0.5MのNaClを含有する0.025Mトリス緩衝液(pH7.5)中、37℃で、プロドラッグ(5μM)を1%(w/v)パンクレアチン(Sigma、P-1625、ブタ膵臓由来)とともにインキュベートすることにより行う。反応は、50%エタノールを3倍体積で加えることにより停止させる。14,00
0rpmで15分間遠心後、上清を取り出し、プロドラッグ、クレアチン、及びクレアチニンについてLC/MS/MSにより分析する。
【0303】
人工胃液(SGF)中での安定性を求めるため、プロドラッグ(10μM)を、SGF(0.2%NaClw/v、0.7%HClv/v、pH1.2)中、37℃で、ペプシン(タンパク質1mgあたり活性を800~2500単位有する精製ペプシンを、1リットルあたり3.2g)を加えて及び加えずに、インキュベートする。選択した時点(例えば、0、15、30、60、及び120分)で、50μLを分取して、0.1Mの重炭酸ナトリウム溶液50μLを加えて中和し、氷冷したアセトニトリル150μLを加える。試料を、4℃で、4,000×gで15分間遠心し、上清を取り出して、プロドラッグ、クレアチン、及びクレアチニン濃度についてLC-MSMSにより分析する(表2)。
【0304】
【表2】
【0305】
人工腸管液(SIF)中での安定性を求めるため、プロドラッグ(10μM)を、SIF(0.68%のKHPO4w/v、0.86%のNaOHv/v、pH6.8)中、37℃で、パンクレアチン(1%w/v)を加えて及び加えずに、インキュベートする。選択した時点(例えば、0、15、30、60、及び120分)で、50μLを分取して、氷冷したアセトニトリル150μLを加えて終了させる。試料を、4℃で、4,000×gで15分間遠心し、上清を取り出して、プロドラッグ、クレアチン、及びクレアチニン濃度について、LC-MSMSにより分析する(表3)。
【0306】
【表3】
【0307】
Caco-2破砕物S9中での安定性を求めるため、Caco-2細胞を21日間増殖させてから回収する。培養培地を除去し、細胞単層をすすいで、擦り取り、氷冷した10mMのリン酸ナトリウム/0.15Mの塩化カリウム、pH7.4に入れる。プローブ超音波処理器を使用して、細胞を4℃で超音波処理して溶解させる。ついで、溶解した細胞を、1.5mL遠心バイアルに移し、4℃で、9,000gで20分間遠心する。得られる上清(Caco-2細胞破砕物S9画分)を等分して0.5mLバイアルに入れ、使用するまで-80℃で貯蔵する。
【0308】
安定性試験のため、プロドラッグ(5μM)をCaco-2細胞破砕物S9画分(0.5mg/mLの0.1Mトリス緩衝液、pH7.4)、37℃でインキュベートする。3連の試料を、各時点で、50%エタノールを用いてクエンチする。プロドラッグの初期(t=0)濃度は、5μMのプロドラッグを50%エタノール/Caco-2破砕物混合物に直接加えることにより求める。試料をLC/MS/MS分析に供して、プロドラッグ、クレアチン、及びクレアチニンの濃度を求める。
【0309】
マウス、ラット、ヒト、または他の種の血漿中でのプロドラッグ安定性を求めるため、プロドラッグ(10μM)または陽性対照(10μM、プロパンテリンまたはプロカイン)を、無希釈の血漿中でインキュベートする。プロドラッグ及び対照の2連の試料を調製して分析する。プロドラッグの原液を、DMSO(10mM)で調製し、pH7.4のリン酸緩衝液に0.1mMに希釈して、スパイク溶液を調製する。プロドラッグスパイク溶液を一定分量(10μL)で96ウェルプレートに入れる。温めておいた(37℃)血漿(90μL)を、5、15、30、45、及び60分の時点用に計画されたウェルに加える;t=0分については、クエンチ溶液(400μLのアセトニトリル)を、プロドラッグ含有ウェルに直接加え、続いて温めておいた血漿90μLを加える。5、15、30、45、及び60分で、400μL分量のアセトニトリルをウェルに加えて反応を停止させる。クエンチ後、プレートを10分間(600rpm)震蘯させ、次いで5500gで15分間遠心する。一定分量(50μL)を分析プレートに移し、プロドラッグ濃度、及び場合によっては、クレアチン及び/またはクレアチニンをLC-MSMS定量するため、100μLの超純水(Millipore)で希釈する。各プロドラッグの親油性及び極性に基づいて、クロマトグラフィーカラム(例えば、Atlantis HILIC S
ilica、Gemini C-18、Ultimate XB-C18)を選択する。LC-MSMSプラットフォーム(例えば、Sciex API4000、Sciex API6500)も、各プロドラッグの必要条件に基づいて選択する。本開示の化合物(プロドラッグ)の、マウス血漿インキュベーションでの安定性を表4に示し、ヒト血漿インキュベーションでの安定性を表5に示す。
【0310】
【表4】
【0311】
【表5】
【0312】
肝臓ミクロソーム安定性試験については、プロドラッグまたは陽性対照(テストステロン、プロパフェノン、ジクロフェナク、7-エトキシクマリン、またはプロプラノロール)を、マウス、ヒト、イヌ、サル、及び/またはラット由来の肝臓または腸管画分中5μMで、インキュベート(2連で)する。インキュベーションは、代謝がNADPH要求性酵素(すなわちP450、FMO、NADPH-P450レダクターゼ、または他のオキシダーゼ酵素)を介して進行するのかどうかを示させるため、NADPH再生系の存在下または不在下で、37℃で行う。プロドラッグ及び陽性対照の2連の試料を調製して分析する。プロドラッグの原液を、DMSO(10mM)で調製し、25%MeOH/pH7.4リン酸緩衝液混合液に0.05mMに希釈して、スパイク溶液を調製する。プロドラッグスパイク溶液を一定分量(10μL)で96ウェルプレートに入れる。温めておいた(37℃)ミクロソーム溶液(80μL)を、5、15、30、45、及び60分の時点用に計画されたウェルに加え、10分間インキュベートしてから、NADPH再生溶液10μLとの反応を開始させる。t=0分については、クエンチ溶液(アセトニトリル300μL)を、プロドラッグ含有ウェルに直接加え、続いてミクロソーム溶液及びNADPH溶液を加える。熱不活性化画分または緩衝液中でのプロドラッグのインキュベーションを行い、酵素分解と非酵素分解を区別する。指定した時点(例えば、0、5、10、20、30、及び60分)で、試料を採取し、適切な内部標準(例えば、ラベタロール、トルブタミド)を含有する冷アセトニトリルを等体積で用いて停止させる。クエンチ後、プレートを4000gで20分間遠心する。一定分量(100μL)を分析プレートに移し、プロドラッグ濃度、及び場合によっては、クレアチン及び/またはクレアチニンをLC-MSMS定量するため、400μLの超純水(Millipore)で希釈する。各プロドラッグの親油性及び極性に基づいて、クロマトグラフィーカラム(例えば、ACE 5
Phenyl、Phenomenex C18 Synergi Hydro-RP、
Atlantis HILIC Silica)を選択する。LC-MSMSプラットフォーム(例えば、Sciex API4000、Sciex API6500)も、各プロドラッグの必要条件に基づいて選択する。本開示の化合物の、マウス肝臓ミクロソームインキュベーションでの代謝安定性を表6に示し、ヒト肝臓ミクロソームインキュベーションでの代謝安定性を表7に示す。
【0313】
【表6】
【0314】
【表7】
【0315】
S9安定性試験については、プロドラッグ(5μM)を、マウス、ヒト、イヌ、サル、及び/またはラットの肝臓または腸管S9破砕物(0.5mg/mLの0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.4、1mMのNADPH)中、37℃でインキュベートする。インキュベーションは、代謝がNADPH要求性酵素(すなわちP450、FMO、NADPH-P450レダクターゼ、または他のオキシダーゼ酵素)を介して進行するのかどうかを示させるため、NADPH再生系の存在下または不在下で行う。3連のプロドラッグを、各時点で、50%エタノールでクエンチする。プロドラッグの初期(t=0)濃度を、5μMのプロドラッグを直接50%エタノール/S9破砕物混合物に加えることにより求める。試料をLC/MS/MS分析に供して、プロドラッグ、クレアチン、及びクレアチニンの濃度を求める。
【0316】
肝細胞安定性試験については、プロドラッグ(5μM)を、播種した肝細胞(例えば、マウス、ラット、ヒト)とともにインキュベートする。オーバーレイ付の12ウェル様式(ラットを除く、これにはオーバーレイがない)で播種された新鮮な肝細胞を受け取る(LifeTechnologies)。受け取ったら、輸送用培地を直ちに除去し、温めておいた培養培地1mLに交換する。細胞を、37℃で5%CO2雰囲気にて一晩、気候順化させる。培地をプレートから吸引し、プロドラッグ(5μM)または溶媒対照(0.0125%DMSO)を含有する新鮮な培地1mLに交換する。試料(三つ組)を、37℃で、5%CO2雰囲気中、0、0.25、0.5、0.75、1、2、及び4時間、イ
ンキュベートする。較正曲線の作成及びバックグラウンド測定のため、溶媒対照を含む追加ウェルをインキュベートする。選択した時点で、培地を除去して凍結させる。細胞を冷PBSで2回洗う。内部標準を含有する冷70%アセトニトリル0.5mLを各ウェルに加え、細胞を、プレートから穏やかに擦り取る。有機溶液に浮遊した回収細胞を、吸引してバイアルに入れ、-80℃で凍結させる。分析のため、70%ACNに入った細胞液を冷凍庫から取り出し、破壊し、ボルテックスする。各試験管に水500μLを加え、試料を再びボルテックスする。試験管を、4℃で、13000rpmで10分間遠心する。細胞上清及び元々の回収された培地を取り出して、LC-MS/MSにより分析してプロドラッグ、クレアチン、及びクレアチニンを求める。
【0317】
3種の緩衝液を用いて、プロドラッグの化学的安定性を求める:(1)0.1Mのリン酸カリウム、0.5MのNaCl、pH2.0、(2)0.1MのトリスHCl、0.5MのNaCl、pH7.4、及び(3)0.1MのトリスHCl、0.5MのNaCl、pH8.0。プロドラッグ(5μM)を、3連で各緩衝液に加える。試料を、各時点で50%エタノールを用いてクエンチする。プロドラッグの初期(t=0)濃度を、プロドラッグ5μMを直接50%エタノール/pH緩衝液混合液に加えることにより求める。試料をLC/MS/MS分析に供して、プロドラッグ、クレアチン、及びクレアチニンの濃度を求める。
【0318】
実施例2:プロドラッグからのクレアチン放出のIn vitroでの測定
プロドラッグが持つクレアチン放出能力、及びクレアチンを優先的に望ましくない環化に回してクレアチニンにする能力を査定するため、d3標識化(重水素標識化メチル基)プロドラッグを、N-レダクターゼ活性を失わないように特別に調製した肝臓破砕物(例えば、マウス、ヒト)とともにインキュベートする。d3標識化プロドラッグの使用は、プロドラッグ由来クレアチン(d3-クレアチン)を高濃度の内因性(非標識化)クレアチンと区別する目的において必須である。インキュベーション(37℃)を、100mMリン酸カリウム緩衝液、pH6.0中で行い、N-レダクターゼ活性を最適化する。プロドラッグを、最終濃度20μM及び200μMで試験する。各反応に約4~5mgの破砕物を使用する。補因子(NADH)を最終濃度1mMで含有させる。ベンズアミドオキシム(最終濃度500μM)を、N-レダクターゼ活性の陽性対照として用いる。N-レダクターゼ活性は、ベンズアミドオキシムからベンズアミジンへの変換により確認する。陰性対照には、NADHなしでのインキュベーション(NADH非依存性プロドラッグ切断を査定するため)及びアッセイ条件下での非酵素プロドラッグ切断を査定するための肝臓破砕物なし(NAPDはあり)でのインキュベーションが含まれる。プロドラッグ原液(400または4000μM、40%DMSO含有水)10μLを、リン酸カリウム緩衝液100μLに加え、続いて肝臓破砕物70μLを加えることにより、プロドラッグインキュベーションを用意する。NADH溶液(10mM)20μL、または(-)NADH陰性対照用の水20μL水を加えることにより、反応を開始させる。選択した時点で(例えば、0、30、60、及び180分)、50μL分量を取り出し、氷冷したアセトニトリル(80%ACN/20%水)停止液150μLを加えることにより、反応を停止させる。試料を、4℃で、15890×gで10分間遠心し、続いて、LC-MSMS分析が決定するまで40Cでの貯蔵用に上清を移す。試料上清を、LC-MSMS(HILICカラム)により分析してd3-プロドラッグ、d3-クレアチン、及びd3-クレアチニンレベルを求める(表8)。
【0319】
【表8】
【0320】
実施例3:プロドラッグのCaco-2細胞透過性のIn vitroでの測定
クレアチンプロドラッグの受動透過性を、当該分野で周知である標準方法を用いて、in vitroで査定する(例えば, Stewart, et al., Pharm. Res., 1995, 12, 693を参照)。例えば、受動透過性は、培養した分極細胞単層(例えば、Caco-2細胞)を横断するプロドラッグの流束を試験することにより、評価することができる。
【0321】
連続培養から得られたCaco-2細胞(継代数は28未満)を、高密度でTranswellポリカーボネートフィルターに播種する。細胞は、実験日まで、DMEM/10%ウシ胎仔血清+0.1mMの非必須アミノ酸+2mMのL-Gln、5%CO/95%O、37℃で維持する。透過性試験を、頂端側pH6.5(1mMのCaCl、1mMのMgCl2、150mMのNaCl、3mMのKCl、1mMのNaHPO、5mMのグルコースを含有する、50mMのMES緩衝液にて)及び側底側pH7.4(10mMのHEPESを含有するハンクス平衡塩類溶液にて)で、排出ポンプ阻害剤(250μMのMK-571、250μMのベラパミル、1mMのオフロキサシン)の存在下、行う。緩衝液を含有する12ウェルまたは24ウェルプレートにインサートを置き、37℃で30分間インキュベートする。頂端側または側底側区画(ドナー)にプロドラッグ
(100μM、250μM、300μM、または500μM)を加え、反対側の区画(レシーバー)のプロドラッグ及び/または放出された親薬物(クレアチン)の濃度を、LC/MS/MSを用いて、1時間にわたる間隔で求める。見かけの透過性(Papp)の値を、以下の式を用いて計算する:
app=V(dC/dt)/(AC
式中、Vは、レシーバー区画の体積(mL)であり;dC/dtは、レシーバー区画中の濃度対時間のグラフの傾きから求められた、プロドラッグ及び親薬物の全流束(μM/s)であり;Cは、プロドラッグの初期濃度(μM)であり;かつAは、膜の表面積(cm)である。ある特定の実施形態において、顕著な経細胞透過性を持つプロドラッグは、≧1×10-6cm/sというPappの値を示し、ある特定の実施形態において、≧1×10-5cm/sというPappの値を示し、及びある特定の実施形態において、≧5×10-5cm/sというPappの値を示す。
【0322】
実施例4:Caco-2細胞及びHEK-2細胞による取り込み
Caco-2またはHEKピークを、ポリリシンコーティングした24ウェルプラスチック細胞培養プレートに、それぞれ、250,000及び500,000細胞/ウェルで播種する。細胞を、37℃で一晩インキュベートする。プロドラッグを、新鮮な培地1mLに入れて各ウェルに加える。各濃度のプロドラッグを、3連で試験する。対照ウェルには、培地のみを加える。各時点で、細胞をハンクス平衡塩類溶液で4回洗う。細胞を溶解させ、各ウェルに50%エタノール200μLを加えて室温で20分間置くことにより、化合物を抽出する。エタノール溶液を一定分量で取り出して96ウェルV底プレートに移し、4℃で、5,700rpmで20分間遠心する。上清をLC/MS/MSにより分析して、プロドラッグ、クレアチン、及び/またはクレアチニンの濃度を求める。
【0323】
実施例5:哺乳類細胞でのSMVT発現
ナトリウム依存性マルチビタミン輸送体(SMVT;SLC5A6遺伝子の産物)を、テトラサイクリンによる誘導発現を可能にするプラスミド(TREXプラスミド、Invitrogen Inc.、Carlsbad Calif.)にサブクローニングした。SMVT発現プラスミドをヒト胚性腎臓(HEK)細胞株に形質移入し、安定クローンを、G418選別及び流動標示式細胞分取(FACS)により単離した。SMVT-HEK細胞クローンでのビオチン取り込みを用いて検証した。SMVT-HEK/TREX細胞を、96ウェルプレートに100,000細胞/ウェルで播種し、37℃で24時間置いてから、テトラサイクリン(1μg/mL)を各ウェルに加えてさらに24時間置いて、SMVT輸送体発現を誘導した。放射標識化H-ビオチン(約100,000cpm/ウェル)を各ウェルに加えた。プレートを、室温で10分間インキュベートした。過剰なH-ビオチンを除去し、細胞を96ウェルプレート洗浄器で冷アッセイ液を用いて3回洗った。シンチレーション液を各ウェルに加え、プレートを密閉して96ウェルプレート対応シンチレーションカウンターで計数した。
【0324】
同様な方法を用いて、他の輸送体を発現するHEK細胞もしくはSMVTまたは他の輸送体を発現する他の細胞株を用意することができる。
【0325】
ヒトSMVTのGenBank受入番号は、NM.021095であり、これは本明細書中に参照として援用される。SMVT輸送体に関する参照には、GenBank参照番号NM.021095に記載またはそれによりコードされるアミノ酸配列、ならびに本質的に同じ輸送体活性を保持する、その配列のアレル、同族、及び誘導型のバリアント及び断片が含まれる。通常、そのようなバリアントは、模範的GenBank核酸またはアミノ酸配列と少なくとも90%配列同一性を示す。SMVTの基質は、遊離カルボン酸及び末端が環状または分岐した基である短アルキル鎖、例えば、C1-6アルキルを含有する化合物である。SMVT基質の例として、ビオチン、パントテン酸、及び4-フェニル酪
酸が挙げられる。
【0326】
実施例6:SMVTを用いた競合アッセイ
クレアチンプロドラッグがSMVT輸送体と結合するかどうかを判断するため、競合結合アッセイを開発した。このアッセイは、試験化合物の濃度を変えた場合に、ビオチンまたはパントテン酸などの放射標識化基質の取り込みをどれだけ遮断するかを測定する。試験化合物による基質の輸送の阻害の最大半量阻害濃度(IC50)は、SMVT輸送体に対する試験化合物の親和性の指標である。試験化合物が、放射標識化基質と競合してSMVTと結合するならば、HEK細胞に輸送される放射標識化基質は少なくなる。基質と競合する様式でSMVTと相互作用するのではない試験化合物については、曲線は、基本的に平坦な線のままである、すなわち、用量反応は見られない。細胞により取り込まれる放射標識化基質の量を、細胞を溶解させ、1分あたりの放射能数を測定することにより、測定する。競合結合試験を以下のとおり行う。SMVT-HEK/TREX細胞を96ウェルプレートに100,000細胞/ウェルで播種し、37℃で24時間置いてから、テトラサイクリン(1μg/mL)を各ウェルに加えてさらに24時間置いて、SMVT輸送体発現を誘導する。2連または3連で、様々な濃度の未標識ビオチンまたはパントテン酸の存在下及び不在下で、放射標識化H-ビオチン(約100,000cpm/ウェル)を各ウェルに加える。プレートを、室温で10分間インキュベートする。過剰なH-ビオチンを除去し、細胞を96ウェルプレート洗浄器で冷アッセイ液を用いて3回洗う。シンチレーション液を各ウェルに加え、プレートを密閉して96ウェルプレート対応シンチレーションカウンターで計数する。Prismソフトウェア(GraphPad、Inc.、San Diego、Calif.)を用いて、データをグラフ化し、非線形回帰分析を用いて分析する。
【0327】
実施例7:クレアチンプロドラッグを用いたHEK SMVT細胞の処理
安定してSMVTを発現するHEK細胞で、未標識クレアチンプロドラッグの取り込みを測定する。細胞を、ポリリシンコーティングした24ウェル組織培養プレートに、250,000細胞/ウェルの密度で播種する。24時間後、細胞をテトラサイクリン(1μg/mL)で処理して、SMVT発現を誘導するか、未処理のまま放置する。翌日(播種の約48時間後)、アッセイを行う。クレアチンプロドラッグ(最終濃度0.1mM)を緩衝生理食塩水(HBSS)に加え、各試験溶液0.5mLを各ウェルに加える。細胞に、1時間または3時間、試験化合物を取り込ませる。試験溶液を吸引し、細胞を氷冷したHBSSで4回洗う。次いで、細胞を、室温で15分間、50%エタノール溶液(0.2mL/ウェル)で溶解させる。溶解液を、4℃で、5477×gで15分間遠心し、細胞片を除去する。細胞中のクレアチンプロドラッグ及びクレアチン濃度を、分析LC/MS/MSにより求める。輸送体特異的取り込みを、輸送体発現を欠いた対照細胞との比較により求める。
【0328】
実施例8:クレアチンキナーゼ系に対する処理の効果
SMVTを発現するHEK細胞を、実施例6のプロトコルに従って、指定の時間の間、緩衝液、クレアチンプロドラッグ(100μM)、クレアチン(100μM)、またはクレアチン類似体(100μM)で処理する。処理後、クレアチンプロドラッグ、クレアチンリン酸、ATP、ならびにクレアチン及び/またはクレアチン類似体の細胞内濃度を、分析LC/MS/MSにより測定する。
【0329】
実施例9:アジ化ナトリウム処理後の細胞エネルギー恒常性の回復
Weinstock and Shoham, Neural Transm. 2004, 111(3), 347-66により記載される方法を応用して、細胞内エネルギー恒常性に対する本発明の化合物の保護効果を評価する。
【0330】
HEK TREX SMVT細胞株を、24ウェルポリリシンコーティング組織培養プレートに、1ウェルあたり250kで播種する。翌日、細胞をドキシサイクリン(1μg/mL)で処理して、SMVT輸送体を発現させる。この輸送体は、試験するクレアチンプロドラッグ、例えば、本発明の化合物の効果的な取り込みに必要である。細胞をインキュベートし、その翌日にアッセイする。細胞を、グルコースを含まないHBSS緩衝液で2回洗う。次いで、細胞を、5%COインキュベーター中37℃で、アジ化ナトリウムを含むまたは含まない同一緩衝液中、20mMでインキュベートする。これらの実験で使用したアジ化ナトリウムの典型的範囲は、1mM~9mMである。この後、クレアチン類似体のプロドラッグを300μMで細胞に加えるか、細胞を未処理のまま放置する。実験によっては、クレアチンを比較として使用する。細胞をさらに20分間インキュベートし、次いで緩衝液で洗う。試料を50%エタノールで15分間抽出し、LC/MS/MS用に処理して、クレアチンプロドラッグ、クレアチン、及びATPレベルを検出する。アジ化ナトリウム処理した細胞で、クレアチンプロドラッグとの接触後にクレアチンリン酸及びATPレベルが上昇することは、プロドラッグが、細胞エネルギー恒常性を回復させることができることを示す。
【0331】
実施例10:3-ニトロプロピオン酸誘導型毒性に対する保護
Brouillet et al., J. Neurochem 2005, 95(6), 1521-40により記載される方法を応用して、細胞内エネルギー恒常性に対する本発明の化合物の保護効果を評価する。
【0332】
ラット心筋芽細胞の細胞株H9c2を、ATCCから入手する(#CRL-1446)。3-ニトロプロピオン酸(3-NP)の20mM原液を、通常培地(DMEM/高グルコース(4.5g/L)/10%FBS/6mMのL-グルタミン/PSF)で使用直前に調製し、1Nの水酸化ナトリウムを滴下してpHを7.4に調整する。クレアチンプロドラッグ、例えば本発明の化合物の40mM原液を、DMSOで調製し、クレアチンを無血清培地に10mMで直接溶解させる。
【0333】
クレアチンプロドラッグ及び/またはクレアチン類似体により提供される、3-NP毒性に対する細胞保護の程度を測定するため、H9c2細胞を、96ウェル透明底黒色組織培養プレートに、通常培地中1ウェルあたり10K個の細胞で播種し、37℃で一晩インキュベートする。翌日、培地を除去し、クレアチンプロドラッグまたはクレアチンの系列希釈物を含有する無血清培地に交換する。プレートを37℃で2時間インキュベートする。次いで、培地を吸引して除去し、様々な濃度の3-NPを含有する通常培地に交換し、プレートを37℃でさらに20時間インキュベートする。各ウェル中の生存細胞数を求めるため、室温で、等体積のCellTiter-Glo試薬(Promega)を加えてプレート振盪機で10分間混合する。プレートをルミノメーターで読むことにより発光を測定する。このアッセイで生じる発光は、存在するATP量に比例し、代謝活性な細胞数と直接関連する。
【0334】
3-NP及びクレアチンプロドラッグと接触した細胞の生存能が、3-NP及びクレアチンと接触した細胞の生存度に比べて上昇すれば、それは、クレアチンプロドラッグが細胞エネルギー恒常性を維持する能力を有することを示す。
【0335】
実施例11:ラットでの結腸投与後のクレアチンプロドラッグの薬物動態
約6~約24時間の時間をかけてゆっくりと薬物を放出する徐放性経口剤形は、一般に、結腸内で用量の相当な割合を放出する。すなわち、そのような剤形で使用するのに適した薬物は、結腸で吸収されるべきものである。この実験は、本発明の化合物などクレアチンプロドラッグの結腸内投与後の、血漿/血液または脳脊髄液(CSF)などの生体液中の該当するクレアチンプロドラッグ及びクレアチンの取り込みならびにその結果のレベル
を査定し、それによりクレアチンプロドラッグの徐放性経口剤形での使用に対する適性を求めるために行う。クレアチンプロドラッグの同時投与後のクレアチンプロドラッグ及びクレアチンの生体利用度は、クレアチンプロドラッグの経口投与及び/または結腸投与に対して計算することができる。
【0336】
工程A:投与プロトコル
ラットを購入し、上行結腸及び頸静脈の両方に予めカニューレ処置する。動物は、実験時に意識がある。全ての動物を、一晩及びクレアチンプロドラッグの投与後4時間まで、絶食させる。クレアチンプロドラッグを、体重1kgあたり約1mg~約200mgに等しい用量で、溶液(水または他の適切な溶媒またはビヒクルに溶解)として、カニューレを介して直接結腸に投与する。血液試料(0.3mL)を、8時間にわたり間隔を開けて頸静脈カニューレから得て、直ちにメタ重亜硫酸ナトリウムまたは他の適切な抗酸化剤でクエンチして、クレアチンプロドラッグの酸化を防ぐ。血液試料は、クレアチンプロドラッグの試料採取後加水分解を防ぐために、メタノール/過塩素酸でさらにクエンチすることができる。血液試料を、以下に記載のとおり分析する。試料は、CSFまたは他の適切な生体液から採取することもできる。
【0337】
工程B:結腸から吸収されたプロドラッグについての試料調製
空の1.5mLエッペンドルフ試験管に、メタノール/過塩素酸(300μL)を加える。ラット血液(300μL)を、様々な時点で採取してメタ重亜硫酸ナトリウム75μLの入ったEDTA試験管に入れ、ボルテックスして混合する。固定量の血液(100μL)を直ちにエッペンドルフ試験管に入れ、ボルテックスして混合する。クレアチンプロドラッグ(0.04、0.2、1、5、25、及び100μg/mL)の標準原液10マイクロリットル及び10%メタ重亜硫酸ナトリウム溶液10μLを、空ラット血液80μLに加え、最終較正標準(0.004、0.02、0.1、0.5、2.5、及び10μg/mL)を作る。次いで、メタノール/過塩素酸(50/50で300μL)を各試験管に加え、続いてp-クロロフェニルアラニン20μLを加える。試料をボルテックスし、14,000rpmで10分間遠心する。上清をLC/MS/MSにより分析する。
【0338】
工程C:LC/MS/MS分析
API 4000 LC/MS/MS分光計に、Agilent 1100バイナリポンプ、CTC HTS-PALオートサンプラー、及びZorbax XDB C84.6×150mmカラムを装着して、分析中使用する。適切な移動相、例えば、(A)0.1%ギ酸、及び(B)0.1%ギ酸含有アセトニトリルなどを使用することができる。適切な勾配条件、例えば、:5%Bを0.5分間、次いで3分で98%Bにし、98%Bを2.5分間維持し、次いで2分間で2%Bに戻す、を使用することができる。TurboIonSprayイオン源をAPI 4000で使用する。分析は、適切なイオンモードで行い、各分析物のMRM遷移は、標準溶液を使用して最適化する。各試料5μLを注入する。WinNonlinソフトウェア(v.3.1プロフェッショナルバージョン、Pharsight Corporation、Mountain view、Calif.)を使用して、個々の動物特性でノンコンパートメント分析を行う。主要パラメーター推定値の統計的要約は、Cmax(投薬後観測されたピーク濃度)、Tmax(最大濃度到達時は、ピーク濃度が観測された時点である)、AUC(0-t)(0時点から最終採血時までの血清濃度時間曲線下面積、対数線形台形法を使用して推定)、AUC(0-。infin。)(0時点から無限大までの血液濃度時間曲線下面積、最終採血時まで対数線形台形法を使用し無限大に外挿して推定)、及びt1/2,z(最終半減期)について行う。
【0339】
クレアチンプロドラッグの結腸投与後の該当するクレアチンプロドラッグ及びクレアチンの薬物動態パラメータを求め、クレアチンプロドラッグの等価な結腸投薬後に得られる
ものと比較する。クレアチンプロドラッグ及びクレアチンの血中最大濃度(Cmax値)及びクレアチンプロドラッグの結腸内投薬後の血液濃度対時間曲線下面積(AUC)が、該当するクレアチンプロドラッグの結腸投与で得られるものよりも高ければ、それは、プロドラッグが結腸生体利用度の向上をもたらすことを示す。
【0340】
実施例12:ラットへの静脈内または経口投与後のクレアチンプロドラッグ薬物動態
1群4~6匹のオス成熟Sprague-Dawleyラット(約250g)からなる各群に、クレアチンプロドラッグを、静脈内ボーラス注射として、または経口胃管栄養により投与する。動物は、実験時に意識がある。経口投与する場合、クレアチンプロドラッグを、体重1kgあたり適切なクレアチンプロドラッグ用量当量で、水溶液(または別の適切な溶媒の溶液として、任意選択で適切なビヒクルを含ませる)として投与する。血液試料(0.3mL)を、経口投与後8時間にわたり間隔を開けて頸静脈カニューレから得る。血液は、例えば、1%ギ酸含有アセトニトリルを使用して、直ちにクエンチし、次いで分析するまで±80℃で凍結する。試料は、CSFまたは他の適切な生体液から採取することもできる。
【0341】
空の1.5mL試験管に、0.1%ギ酸含有アセトニトリル300(300)μLを加える。ラット血液(300μL)を、様々な時点で採取してEDTAの入った試験管に入れ、ボルテックスして混合する。固定量の血液(100μL)を直ちに試験管に入れ、ボルテックスして混合する。クレアチンプロドラッグの標準原液(0.04、0.2、1、5、25、及び100μg/mL)10マイクロリットルを、0.1%ギ酸含有アセトニトリル300μLでクエンチした空ラット血液90μLに加える。次いで、p-クロロフェニルアラニン20μLを各試験管に加え、最終較正標準(0.004、0.02、0.1、0.5、2.5、及び10μg/mL)を作る。試料をボルテックスし、14,000rpmで10分間遠心する。上清をLC/MS/MSにより分析する。
【0342】
API 4000 LC/MS/MS分光計に、Agilent 1100バイナリポンプ、CTC HTS-PALオートサンプラー、及びPhenomenex Synergihydro-RP 4.6×30mmカラムを装着して、分析で使用する。適切な移動相及び勾配条件を分析に使用する。分析は、適切なイオンモードで行い、各分析物のMRM遷移は、標準溶液を使用して最適化する。各試料5(5)μLを注入する。WinNonlin(v.3.1プロフェッショナルバージョン、Pharsight Corporation、Mountain view、Calif.)を使用して、個々の動物特性でノンコンパートメント分析を行う。主要パラメーター推定値での統計的要約は、Cmax(投薬後観測されたピーク濃度)、Tmax(最大濃度到達時は、ピーク濃度が観測された時点である)、AUC(0-t)(0時点から最終採血時までの血清濃度時間曲線下面積、対数線形台形法を使用して推定)、AUC(0-。infin。)(0時点から無限大までの血液濃度時間曲線下面積、最終採血時まで対数線形台形法を使用し無限大に外挿して推定)、及びt1/2(最終半減期)について行う。
【0343】
クレアチンプロドラッグの経口生体利用度(F(%)は、正規化用量に基づいて、経口投与後のクレアチンプロドラッグ濃度対時間曲線下面積(AUC)を、静脈内投与後のクレアチンプロドラッグ濃度対時間曲線のAUCと比較することにより求める。
【0344】
試料をCSFから得て、クレアチンプロドラッグ及びクレアチンの薬物動態を求めることもできる。クレアチンプロドラッグ及び/またはクレアチンのレベルが高くなっていれば、プロドラッグは血液脳関門を横断して移動する能力を有することが示されたと言える。
【0345】
他の動物でクレアチンプロドラッグの薬物動態について同様な試験を行うことができ、
そのような動物として、イヌ、サル、及びヒトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0346】
実施例13:筋萎縮性側索硬化症の治療に関するクレアチンプロドラッグの有効性を査定するための動物モデルの使用
SOD1変異関連型ALSのマウスモデルが開発されている。このモデルでは、マウスが、93番残基(SOD1)で、ヒトスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)変異グリシン→アラニンを発現する。こうしたSOD1マウスは、SODの不都合な性質の優性獲得、及びヒトALSと同様な運動ニューロン変性及び機能障害の発症を示す(Gurney et al., Science 1994, 264(5166), 1772-1775; Gurney et al., Ann. Neurol. 1996, 39, 147-157; Gurney, J. Neurol. Sci. 1997, 152, S67-73; Ripps et al., Proc Natl Acad Sci U.S.A. 1995, 92(3), 689-693;及びBruijn et al., Proc Natl Acad Sci U.S.A.1997, 94(14), 7606-7611)。SOD1遺伝子導入マウスは、約3ヶ月齢で後肢脱力の徴候を示し、4ヶ月齢で死亡する。ヒトALSと共通する特徴として、アストロサイト増加、マイクログリオーシス、酸化ストレス、シクロオキシゲナーゼ/プロスタグランジンのレベル上昇、及び疾患の進行として、深刻な運動ニューロン減少が挙げられる。
【0347】
ヒトCu/Zn-SOD G93A変異を過剰発現する遺伝子導入マウス(B6SJL-TgN(SOD1-G93A) 1 Gur)及び非遺伝子導入B6/SJLマウス、ならびにそれらの野生型同腹仔で試験を行う。マウスを12時間の日中/明周期で飼育し(45日齢で開始する)、試験化合物を補充した固形試料または対照として、同一のペレットに成形した通常配合のコールドプレス固形試料いずれかに自由に近づけるようにする。遺伝子型判定は、Gurney et al., Science 1994, 264(5166), 1772-1775に記載されるとおりに、21日齢で行うことができる。SOD1マウスを、複数の群に分け、試験化合物で処置するか、対照として使用する。
【0348】
マウスを毎日観察し、毎週体重を測定する。健康状態を査定するため、マウスを毎週体重測定し、流涙/唾液分泌、眼瞼閉鎖状態、耳攣縮及び瞳孔反応、ひげの向き、姿勢反射及び正向反射、ならびに全身状態のスコアの変化を調べる。全身病理検査は、屠殺時に行う。
【0349】
動物の運動協調性能力は、当業者に既知である1種または複数の方法により査定することができる。例えば、運動協調性は、神経学的点数化方法を用いて査定することができる。神経学的点数化では、定義された4点尺度に従って各肢の神経学的点数を観察して記録する:0=後肢の正常反射(尾で持ち上げた場合に、動物がその後肢を伸ばす);1=後肢の異常反射(尾で持ち上げた場合に、動物がその後肢を伸ばすことをしない);2=肢の異常反射及び麻痺のエビデンス;3=反射の欠如及び完全麻痺;ならびに4=横向きにした場合に30秒で正しい姿勢に戻ることができない、または死亡が確認される。主要エンドポイントは生存であり、二次エンドポイントは、神経学的点数及び体重である。神経学的点数観察及び体重は、週に5日間行って記録する。データ分析は、適切な統計方法を用いて行う。
【0350】
ロータロッド試験は、動物が回転するロッドの上に居続ける能力を評価するものであり、運動協調性及び自己受容性感度の評価を可能にする。装置は、直径3cmの自動回転、例えば毎分12回転する、ロッドである。ロータロッド試験は、マウスがどのくらい長く落ちないで軸上に自身を維持できるかを測定する。この試験は、任意の期限、例えば、1
20秒後に停止させることができる。動物が120秒より前に落ちた場合、能力を記録し、2回追試を行う。3回の試験の平均時間を計算する。運動欠陥は、歩行時間の減少により示される。
【0351】
格子試験では、マウスを、平面支持体上に位置する格子(長さ:37cm、幅:10.5cm、目開き:1×1cm)に乗せる。マウスが格子を通して自身の足をついた回数を数え、運動協調性の尺度とする。
【0352】
ぶら下がり試験は、動物がワイヤーにしがみつく能力を評価する。装置は、台から40cm上に水平に張ったワイヤーである。動物を、自身の前足でワイヤーにつかまらせる。3回連続で試験して、動物が自身の後足で線を掴むのに要した時間を記録する(最長60秒)。
【0353】
電気生理学的測定(EMG)も、運動活性状態を査定するのに使用することができる。電気筋運動記録を、電気筋運動記録装置により取る。EMG観察中、マウスは麻酔下にある。測定するパラメーターは、複合筋活動電位(CMAP)の振幅及び潜伏時間である。CMAPは、坐骨神経の刺激後に腓腹筋で測定する。基準電極をアキレス腱の近くに挿入し、探査針を、尾根に置く。アース針を、マウスの背下部に挿入する。坐骨神経を、1回の0.2msecパルスを用いて過最大強度(12.9mA)で刺激する。振幅(mV)及び反応潜時(ms)を測定する。振幅は、活動運動単位数を示し、遠位潜伏時間は、運動神経伝導速度を反映する。
【0354】
試験化合物の有効性は、バイオマーカー分析を用いて評価することもできる。運動機能障害発生中のSOD1マウスでのタンパク質バイオマーカー調節を査定するため、腰髄の試料(タンパク質抽出物)を、様々な表面化学的/生化学的性質を持つタンパク質チップアレイに添加し、例えば、表面増強レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析により分析する。次いで、統合タンパク質質量特性分析方法を用いて、データから、様々な処置群のタンパク質発現特性を比較する。分析は、適切な統計方法を用いて行うことができる。
【0355】
実施例14:パーキンソン病の治療に関するクレアチンプロドラッグの有効性を査定するための臨床試験
以下の臨床試験を用いて、パーキンソン病の治療におけるクレアチンプロドラッグの有効性を査定することができる。Queen Square Brain Bank基準(Gibb et al., J Neurol Neurosurg Psychiatry 1988, 51, 745-752)を満たし、運動変動及び規定の短期間GABA類似体反応(1.5~4時間)がある突発性PD患者が、参加に適格である。患者の現在の投薬において毎朝の服薬後の臨床上関連するピークドーズジスキネジアがあることが、さらなる必須条件である。患者はまた、臨床試験を開始する前の少なくとも1ヶ月間、固定用量の治療で状態が安定していることが求められる。患者の現在の薬物レジメンに徐放性配合のL-Dopa、COMT阻害剤、セレギリン、抗コリン薬、または胃吸収と干渉する可能性がある他の薬物(例えば制酸剤)が含まれる場合は、その患者は除外される。他の除外基準として、精神病症状のある患者または向精神病治療中の患者、臨床上関連する認知機能障害のある患者、MMS(簡易知能評価)尺度で規定して24未満(Folstein et al., J Psychiatr Res 1975, 12,
189-198)、妊娠の可能性がある、オフ状態でHoehn&Yahrステージ5、重篤な不安定型真性糖尿病、及び不安定型循環器疾患または中度~重度の腎臓または肝臓機能障害などの病状があることが挙げられる。ベースライン及び試験完了後に、全血球数、肝臓、及び腎臓機能血液検査を行う。
【0356】
無作為二重盲検交差試験設計を用いる。クレアチンプロドラッグ及び放出されるクレア
チンの薬物動態は、適切な時間間隔で血中濃度を測定することにより査定することができる。脳中のクレアチンレベルも、磁気共鳴分光法(MRS)により非侵襲的に測定することができる。
【0357】
臨床評価のため、運動機能を、UPDRS(パーキンソン病統一評価尺度)運動点数及びBrain試験(Giovanni et al., J Neurol Neurosurg Psychiatry 1999, 67, 624-629)を用いて査定する。Brain試験は、患者に状態が悪い方の手でノートパソコンのキーポードを叩いてもらい行う試験である。これらの試験は、ベースラインで、次いで患者が自身の完全なオン状態に到達するまで毎回血液採取後直ちに、及びその後患者が自身のベースラインのオフ状態に達するまで間隔をあけて、行われる。患者が自身の完全なオン状態に到達したら、20分間隔で3回、ビデオで記録を取る。以下の記憶及び運動課題は、ジスキネジアを増大させることが示されているので(Duriff et al., Mov Disord 1999, 14, 242-245)、これらの課題を各ビデオセッション中に観察する:(1)1分間座って静止する;(2)暗算する;(3)コートを着てボタンを留める;(4)コップに水を入れて飲む;及び(5)歩く。ビデオテープを、例えば、ゲッツ評価尺度(Goetz Rating Scale)及び異常不随意運動評価尺度(Abnormal Involuntary Movements Scale)を複数バージョン用いて点数化し、試験化合物により誘導されたジスキネジアの増大の可能性を記録する。
【0358】
ジスキネジアの実際の発生及び重篤度を、ジスキネジアモニター(Manson et
al., J Neurol Neurosurg Psychiatry 2000, 68, 196-201)を用いて測定する。この装置を、患者の状態が悪い側の肩にテープで留める。モニターは、課題セッションの時間全部を通して記録を取り、ジスキネジア発生の頻度及び重篤度の測定を提供する。
【0359】
結果は、適切な統計方法を用いて分析することができる。
【0360】
実施例15:パーキンソン病のMPTP誘導型神経毒性動物モデルにおけるクレアチンプロドラッグの有効性
MPTP(1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン)は、ヒト及び実験動物の両方でパーキンソン病様症候群を生じさせる神経毒である。MPTP神経毒性の機構についての研究は、主要代謝産物であるMPPの生成がこの毒性に関わっていることを示し、MPPは、モノアミンオキシダーゼのMPTPに対する作用により形成される。モノアミンオキシダーゼの阻害剤は、マウス及び霊長類の両方で、MPTPの神経毒性を遮断する。MPPの神経毒性効果がドーパミン作動性ニューロンに特異的であるのは、シナプスドーパミン輸送体によるMPPの取り込みによるものであるらしい。この輸送体の遮断剤は、MPP神経毒性を防ぐ。MPPは、ミトコンドリア複合体I活性の比較的特異的阻害剤であることが示されており、これは、ロテノン結合部位で複合体Iと結合して酸化的リン酸化を障害する。In vivo研究は、MPTPがマウスで線条体ATP濃度を枯渇させる可能性があることを示している。ラットで線条体内投与されたMPPがATPの大幅な枯渇、ならびに注射部位の線条体に限って乳酸濃度の上昇をもたらすことが実証されている。ATP生成を向上させる化合物は、マウスでMPTP毒性に対する保護となる可能性がある。
【0361】
クレアチンプロドラッグを、マウスまたはラットなどの動物に3週間投与してから、MPTP処置する。MPTPを、適切な用量、投薬間隔、及び投与様式で1週間投与してから、屠殺する。対照群には、通常の生理食塩水またはMPTP塩酸塩のみいずれかを与える。屠殺後、2つの線条体を迅速に解体して、冷0.1M過塩素酸に入れる。続いて、組
織を超音波処理して、一定分量を、蛍光光度計アッセイを用いてタンパク質含有量について分析する。ドーパミン、3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)、及びホモバニリン酸(HVA)も定量する。ドーパミン及び代謝産物の濃度は、nmol/mgタンパク質で表す。
【0362】
MPTPが誘導するDOPAC枯渇、HVA、及び/またはドーパミン枯渇に対する保護となるクレアチンプロドラッグは、神経保護性であり、したがって、パーキンソン病の治療に有用である可能性がある。
【0363】
実施例16:ハロペリドール誘導型自発運動低下動物モデルを用いた抗パーキンソン病活性の可能性の評価
テオフィリンなどのアデノシンアンタゴニストは、齧歯類において、ハロペリドールなどのドーパミンアンタゴニストの行動抑制効果を逆転させることができることが実証されており、抗パーキンソン病活性の可能性がある薬物をスクリーニングする妥当な方法として検討されている(Mandhane, et al., Eur. J. Pharmacol. 1997, 328, 135-141)。マウスで自発運動活性のハロペリドール誘導型欠損を遮断するクレアチンプロドラッグの能力は、抗パーキンソン病活性のin vivo活性及び可能性を査定するのに使用することができる。
【0364】
実験で使用されるマウスを、管理された環境下で飼育して気候順化させてから、実験に使用する。試験の1.5時間前に、マウスに0.2mg/kgのハロペリドールを投与する。これは、自発運動活性をベースラインから少なくとも50%低下させる用量である。試験化合物を、試験の5~60分前に投与する。次いで、動物を個別に、平坦な穴開き蓋の付いた汚れのない透明なポリカーボネートケージに入れる。光線の遮断を集計するのに使用されるコンピュータと連動した3×6配列の光電管を備えた枠内にケージを置いて、水平方向の自発運動活性を求める。マウスを1時間自由に動き回らせておき、この期間中に光線を遮った回数を自発運動活性の指標として使用する。これを、統計的有意差があるかどうか、対照動物のデータと比較する。
【0365】
実施例17:パーキンソン病の6-ヒドロキシドーパミン動物モデル
パーキンソン病で見られる神経化学的欠損は、黒質線条体ニューロンの細胞体または軸索線維いずれかを含む脳領域にドーパミン系神経毒、6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)を局所的に注射することにより再現することができる。脳の片側のみで黒質線条体経路を一側性に損傷させることにより、運動阻害における行動の非対称性を観察する。一側性損傷した動物は、依然として運動可能であり自力維持可能であるものの、損傷した側の残存ドーパミン感受性ニューロンは、刺激に対して過敏になっている。このことは、アポモルヒネなどのドーパミンアゴニストの全身投与後に、動物が損傷した側と反対側の方向に明白な回転を示すという観察により実証される。6-OHDA損傷ラットに反対回転を誘導するという化合物の能力は、パーキンソン病の治療における薬物有効性を予測する感受性モデルとなることが示されている。
【0366】
オスSprague-Dawleyラットを、管理された環境下で飼育し、気候順化させてから、実験に使用する。手術の15分前に、動物にノルアドレナリン作動性取り込み阻害剤デシプラミン(25mg/kg)を腹腔内注射して与え、非ドーパミンニューロンに対する損傷を防ぐ。次いで、動物を麻酔チャンバーに入れ、酸素とイソフルランの混合物を用いて麻酔する。意識不明になったら、動物を定位固定フレームに移し、麻酔はマスクを通じて維持する。動物の頭の頂部を剃毛し、ヨウ素液で滅菌する。乾燥したら、頭皮の正中線に沿って2cm長で切開し、皮膚を押し込めてクリップで止め、頭蓋骨を露出させる。次いで注入部位上の頭蓋骨にドリルで小さな穴を開ける。黒質線条体経路を損傷させる目的で、注入カニューレを、右内側前脳束上、十字縫合から前後方向-3.2mm、
内外方向-1.5mm、かつ硬膜から7.2mmの深さにゆっくりと下ろした。カニューレを下ろしてから2分後、6-OHDAを4分以上0.5μL/分の速度で注入し、最終用量8μgとする。カニューレはさらに5分間その位置に残して、拡散を促進してから、ゆっくりと引き上げる。次いで、皮膚を縫合して閉じ、動物を定位固定フレームから出して収容場所に戻す。ラットを、2週間、手術から回復させ、その後行動試験を行う。
【0367】
回転行動を、ロトメーターシステムで測定する。このシステムは、ステンレス鋼ボウル(直径45cm×高さ15cm)を備え、ボウルの縁に沿った周囲を有し高さ29cmになる透明なプレキシグラスカバーで閉じられる。回転を査定するため、ラットに、ボウルの上に配置した光学式ロトメーターと接続した係留バネを取り付けた布製ジャケットを被せる。光学式ロトメーターは、部分的(45°)または完全(360°回転)いずれでも左または右への移動を査定する。
【0368】
試験化合物投与中のストレスを減らすため、ラットを最初に4日間連続で15分間装置に慣らす。試験日、ラットに試験化合物、例えば、クレアチンプロドラッグを与える。試験直前に、動物に閾値下の用量のアポモルヒネを皮下注射で与え、次いでハーネスを取り付けて回転数を1時間記録する。1時間の試験期間中の完全反対回転の合計数を抗パーキンソン病薬効の指標とする。
【0369】
実施例18:虚血性傷害におけるクレアチンプロドラッグの有効性を査定する動物実験
成熟オスラットに、クレアチンプロドラッグを与え、約24時間後、麻酔して冠動脈閉塞の用意をする。追加用量のクレアチンプロドラッグを手術の開始時に投与し、左主冠動脈を30分間閉塞させ、その後開放する。次いで、同用量のクレアチンプロドラッグを手術後に適切な間隔及び期間で投与する。次いで、動物を心機能について調べる。偽注射(生理食塩水)を与えられた動物は、左拡張末期圧の大幅な上昇を示し、心筋梗塞に続発した心臓の拡張型硬直を示す。偽処置された対照と比較して心機能の欠損を排除または縮小するクレアチンプロドラッグは、虚血性傷害を防ぐのに有用である。
【0370】
実施例19:器官生存能を維持するというクレアチンプロドラッグの能力を査定する動物実験
体重300~330gのWistarオスラットに、クレアチンプロドラッグまたはビヒクルを投与してから、24時間後に、ex vivo試験のため心臓を取り出す。ペントバルビタール(0.3mL)及び静脈内ヘパリン化(0.2mL)を用いて動物を屠殺する。心臓は、最初に15分間平衡化させる。次いで、左心室バルーンを、約8mmHgの拡張末期圧を与える体積に膨張させる。0.02mL分量の上げ幅でバルーン体積を膨張させることにより、左心室圧体積曲線を構築する。ゼロ体積は、左心室拡張末期圧がゼロの時点と規定する。圧体積曲線の終了時、左心室バルーンを縮小させて、拡張末期圧を8mmHgに戻し、冠血流の確認後、安静期間を15分間継続する。次いで、心臓を50mLのCelsior+分子で停止させて、60cmHO圧下、4℃で休止させる。次いで、心臓を取り出し、同溶液で満たし、砕いた氷で取り囲んだプラスチック容器に入れて4℃で5時間貯蔵する。
【0371】
貯蔵後、心臓をランゲンドルフ装置に移す。バルーンカテーテルを左心室に再挿入し、虚血前期間中と同じ体積まで再膨張させる。心臓を、37℃で少なくとも2時間、再灌流する。再灌流圧は、15分間の再流中50cmHOに設定し、その後の2時間は100cmHOに戻す。ペーシング(毎分320拍)を再開する。収縮指数及び拡張期圧の等容性測定を、再灌流の25、45、60、及び120分の時点で3連で行う。この時点で、圧体積曲線を得て、45分の再灌流中の冠血管流出物を収集してクレアチンキナーゼ漏出を測定する。クレアチン類似体のプロドラッグで処理した後の左心室圧の改善、ならびに体積圧曲線の改善、拡張期左心室圧の低下、及びクレアチンキナーゼ漏出の減少は、器
官生存能を維持するというクレアチンプロドラッグの能力を示す。
【0372】
実施例20:ハンチントン病の遺伝子導入マウスモデルにおけるクレアチン類似体のプロドラッグの神経保護効果
N171-82Q系統の遺伝子導入HDマウス及び非遺伝子導入の同腹仔を、10週齢からクレアチン類似体のプロドラッグまたはビヒクルで処置する。マウスを回転ロッド(「ロータロッド」)に乗せる。マウスがロータロッドから落ちるまでの時間の長さを、運動協調性の尺度として記録する。マウスが移動した合計距離も、全自発運動の尺度として記録する。N171-82Q遺伝子導入HDマウスモデルにおいて神経保護性であるクレアチンプロドラッグを投与されたマウスは、ビヒクルを投与されたマウスよりも長時間ロータロッドに乗り続け、より長い距離を移動する。
【0373】
実施例21:ハンチントン病のマロン酸モデルにおけるクレアチンプロドラッグの有効性
エネルギー生成経路に関与する酵素の一連の可逆的及び不可逆的阻害剤は、パーキンソン病及びハンチントン病などの神経変性疾患の動物モデルを作り出すために使用されてきている。細胞エネルギー恒常性に影響を及ぼす酵素であるコハク酸デヒドロゲナーゼの阻害剤は、ハンチントン病のモデルを作るために使用されてきている(Brouillet
et al., J. Neurochem. 1993, 60, 356-359; Beal et al., J. Neurosci. 1993, 13, 4181-4192; Henshaw et al., Brain Research 1994, 647, 161-166 (1994);及びBeal et al.,
J. Neurochem. 1993, 61, 1147-1150)。コハク酸デヒドロゲナーゼ酵素は、トリカルボン酸サイクルならびにミトコンドリアの電子伝達系両方で中心的役割を果たす。マロン酸は、コハク酸デヒドロゲナーゼの可逆的阻害剤マロン酸である。ラットにおけるマロン酸の線条体内注射は、競合的及び非競合的NMDAアンタゴニストの両方により減弱される用量依存性線条体興奮毒性病変をもたらすことが示されている(Henshaw et al., Brain Research 1994, 647, 161-166)。グルタミン酸放出阻害剤であるラモトリジンも、病変を減弱する。コハク酸との同時注射は病変を遮断し、コハク酸デヒドロゲナーゼに対する効果と一致する。病変は、化学シフト共鳴画像化法により示されるとおり、in vivoでATPレベルの大幅な低下、ならびに乳酸レベルの大幅な上昇を伴う(Beal et al., J. Neurochem. 1993, 61, 1147-1150)。病変は、ハンチントン病で見られるものと同じパターンの細胞節約をもたらし、マロン酸負荷が、ハンチントン病の神経病理学的及び神経化学的特徴の有用なモデルであることを示唆する。
【0374】
ハンチントン病に関するこのマロン酸モデルにおけるクレアチンプロドラッグの効果を評価するため、クレアチンプロドラッグを、適切な用量、投薬間隔、及び経路で、オスSprague-Dawleyラットに投与する。プロドラッグを、2週間投与してからマロン酸を投与し、それからさらに1週間後に屠殺する。マロン酸は、蒸留脱イオン水に溶解させ、pHを0.1MのHClで7.4に調整する。マロン酸を3μmol含有する1.5μLの線条体内注射を、正中線の2.4mm外側かつ硬膜の4.5mm腹側の十字縫合の水準で、左線条体に行う。動物を7日目に断頭して屠殺し、脳を素早く取り出して氷冷した0.9%生理食塩水に入れる。脳を、脳型中2mm間隔で切片にする。次いで、切片を、後ろ側を下にして、2%2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロリドに入れる。切片を、暗中、室温で、30分間染色し、次いで取り出して4%パラホルムアルデヒドpH7.3に入れる。薄く染色されて視認できるようになった病変を、各切片の後側表面で評価する。測定は、ニッスル染色された隣接切片で得られる測定と比較することで検証する。
【0375】
神経保護効果を発揮し、したがって、ハンチントン病の治療に有用である化合物は、マロン酸誘導型病変の減少を示す。
【0376】
実施例22:クレアチン輸送体障害のモデルにおけるクレアチンプロドラッグの有効性
ヒトCrT欠損のマウスモデルが作り出されており、この症状のための治療の開発が可能である(Skelton et al., PloS One, 201, 6(1), e16187)。loxP部位と隣接しているSlc6a8のエクソン2-4を持つマウスを、Cre:CMVマウスと交雑させて、ユビキタスCrTノックアウト発現マウスの系統を作りだした。オスCrT-/y(罹患)マウスは、脳及び筋肉にCrが欠けており、心臓及び精巣を含む他の組織でCrが大幅に減少している。CrT-/yマウスは、モリス水迷路で、獲得及び逆転学習中の経路長の増加を示す。プローブ試験中、CrT-/yマウスは、プラットホームの場所からの平均距離の増加を示す。CrT-/yマウスは、CrT+/yと比較して、新規対象認識及び条件付け恐怖記憶の減少を示す。CrT-/yマウスは、海馬及び前頭前皮質でセロトニン及び5-ヒドロキシインドール酢酸が増加している。ユビキタスCrTノックアウトマウスは、ヒトCrT欠乏症に類似した学習及び記憶欠陥を有するので、このモデルは、この障害を理解しこの障害の治療としてクレアチンプロドラッグを試験するのに有用である。
【0377】
モリス水迷路(MWM)でのクレアチンプロドラッグの効果を評価するため、クレアチンプロドラッグを、オスCrT-/yマウスに、適切な用量、投薬間隔、及び経路で投与する。MWMは、空間学習及び参照記憶の試験であり(Vorhees et al.,
Nature Protocols 2006, 1:848-858)、動物を、Skelton et al., Brain Res 2003, 984:1-10及びSchaefer et al., Neuroscience 2009, 164:1431-1443に記載されるとおりに試験する。隠されたプラットフォームで試験する前に、視認できるプラットフォームでの訓練(手がかり学習)を6日間行う。この段階の間、迷路の周りをカーテンで囲って、目につく遠方の手がかりを見えなくし、真鍮ロッドの先に橙色のボールを付けたものを直径10cmのプラットフォームに立てて、プラットフォームを、予め定めた四分円に置く。第1日目、このプラットフォームを用いて同じ開始位置で6回試行(90秒)させる;翌日からは、1日2回の試験を、開始位置及びプラットフォーム位置を無作為に決めて行う。
【0378】
MWM試験の隠されたプラットホーム試験部分は、3つの段階(6日間/1段階:獲得、逆転、及び移行)で行われ、1つの段階は、動物が隠されたプラットフォームを学習するために1日あたり4回の試験を行う6日間、続いて7日目の単独プローブ試験(プラットフォームなし)からなる(Vorhees et al., Nature Protocols 2006, 1:848-858)。プラットフォーム直径は、獲得では10cm、逆転では7cm(対向する四分円に配置される)、及び移行では5cm(隣接する四分円のうち1つに配置される)である。能力を、AnyMazeソフトウェア(Stoelting Company、Wood Dale、IL)を用いて測定する。プロドラッグ治療の効果を、対照(未処置のオスCrT-/yマウス及び/または野生型マウス)対プロドラッグ処置したマウスで成績を比較することにより分析する。
【0379】
条件付け恐怖モデルでのクレアチンプロドラッグの効果を評価するため、クレアチンプロドラッグを、オスCrT-/yマウスに、適切な用量、投薬間隔、及び経路で投与する。手がかり及び文脈的恐怖は、Peters et al., Science 2010, 328: 1288-1290)に記載されるとおりに評価する。1日目、未処置(対照)及び処置した(プロドラッグを投与した)マウスを、30回のブザー(82dB、2kHz、30秒のオン/オフ周期)、続いて3回のブザーと足の電撃(0.5mAで
1秒間)のセットに曝す。翌日、文脈的恐怖の試験として、動物を、ブザーも電撃もないチャンバーに戻す。次の日、動物を新たな格子床のチャンバーに入れる。3分の気候順化後、ブザーを鳴らしてフリージング行動を点数化する。次いで、動物を、30秒間ブザーを鳴らし30秒間鳴らさないサイクルに30回曝し、恐怖の延長を測定する。Freezeframeソフトウェア及びCoulbourn試験チャンバーを使用する(Coulbourn Instruments、Allentown、PA)。フリージング時間のパーセントを分析する。プロドラッグ処置の効果を、対照(未処置のオスCrT-/yマウス及び/または野生型マウス)対プロドラッグ処置したマウスで成績を比較することにより分析する。
【0380】
新規物体認識(NOR)モデルでのクレアチンプロドラッグの効果を評価するため、クレアチンプロドラッグを、オスCrT-/yマウスに、適切な用量、投薬間隔、及び経路で投与する。NORは、短期記憶の試験である(Clark et al., J Neurosci 2000, 20: 8853-8860)。マウスを、2日間(10分/日)、試験場(直径91cm)に慣らし、続いて2日間(10分/日)、2個の同一物体に慣らす。試験日、動物に、2個の新規同一物体を、累積観察時間が30秒になるまで、与えておく。1時間後、動物に、見慣れた物体の1つと同一のコピー及び新規物体を与えることにより、記憶を試験する。識別指数は、新規物体を観察するのに費やした時間から、見慣れた物体の観察時間を差し引くことにより計算する。プロドラッグ処置の効果を、対照(未処置のオスCrT-/yマウス及び/または野生型マウス)対プロドラッグ処置したマウスで成績を比較することにより分析する。
【0381】
クレアチン輸送体障害を治療するのに有用な化合物は、上記に概要を示した評価法のうち1つまたは複数で、もしくは行動、神経機能、及び/または神経筋機能を試験する代替モデルで、未処置の対照と比べて処置したオスCrT-/yマウスで改善を示すことになる。
【0382】
実施例23:エチル=(N’-ヒドロキシ-N-メチルカルバムイミドアミド)アセタートの合成

エチル=(N’-ヒドロキシ-N-メチルカルバムイミドアミド)アセタートは、Zbinden et al., Bioorganicic & Medicinal Chemistry Letters, 2005, 15: 5344-5352に記載される手順を使用して合成することができる。手短に述べると、エチル=[シアノ(メチル)アミノ]アセタート(MP Biomedicals、Inc.から入手)を、EtOH中、ヒドロキシルアミン塩酸塩とともに還流させて、表題化合物とする。
【0383】
実施例24:tert-ブチル=2-(3-(tert-ブトキシカルボニル)-2-ヒドロキシ-1-メチルグアニジノ)アセタート-3-イル)アミノ]アセタートの合成

工程1:tert-ブチル=2-(N-メチルシアナミド)アセタートの合成

撹拌子を備えた丸底フラスコに、tert-ブチル=2-(メチルアミノ)アセタート(500mg、2.75mmol)、炭酸カリウム(761mg、5.50mmol)及びアセトニトリル(10mL)を投入した。混合物を室温で30分間撹拌し、それから臭化シアン(320mg、3.025mmol)のアセトニトリル(2mL)溶液を加えた。反応物を室温で一晩撹拌放置し、デカンテーションにより不溶性残渣を残して溶媒を取り出した。次いで溶媒を減圧エバポレートして、生成物を、フラッシュクロマトグラフィーで石油エーテル-酢酸エチル(勾配は酢酸エチルを0%から40%へ)を用いて精製することにより、tert-ブチル=2-(N-メチルシアナミド)アセタート(410mg、2.41mmol、収率88%)を白色固体として得た。ES LC-MS m/z
= 171 (M+H) & 193 (M+Na).
【0384】
工程2:tert-ブチル=2-(2-ヒドロキシ-1-メチルグアニジノ)アセタートの合成

撹拌子を備えた丸底フラスコに、tert-ブチル=2-(N-メチルシアナミド)アセタート(300mg、1.76mmol)及びテトラヒドロフラン(5mL)を投入した。この混合物に、ヒドロキシルアミン(50%水溶液、583mg、8.80mmol)を加えた。1時間後、水10mLを加え、混合物を、ジクロロメタン5mLで3回抽出した。次いで、有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、粗tert-ブチル=2-(2-ヒドロキシ-1-メチルグアニジノ)アセタート(349mg、1.72mmol、収率98%)を白色固体として得た。これは、次の工程に直ちに使用した。ES LC-MS m/z = 204 (M+H).
【0385】
工程3:tert-ブチル=2-(3-(tert-ブトキシカルボニル)-2-ヒドロキシ-1-メチルグアニジノ)アセタート-3-イル)アミノ]アセタートの合成

撹拌子を備えた丸底フラスコに、tert-ブチル=2-(2-ヒドロキシ-1-メチルグアニジノ)アセタート(349mg、1.72mmol)及びテトラヒドロフラン(5mL)を投入した。この混合物に、重炭酸ジ-tert-ブチル(375mg、1.7
2mmol)を加えた。混合物を、室温で一晩撹拌した。次いで、溶媒を減圧エバポレートし、生成物をフラッシュクロマトグラフィーでジクロロメタン-酢酸エチル(勾配は酢酸エチルを0%から30%へ)を用いて溶出させることにより精製して、tert-ブチル=2-(3-(tert-ブトキシカルボニル)-2-ヒドロキシ-1-メチルグアニジノ)アセタート(151mg、0.50mmol、収率29%)を白色固体として得た.ES LC-MS m/z = 304 (M+H).H NMR (ジメチルス
ルホキシド-d) δ: 5.73 (s, 2H), 3.81 (s, 2H), 2.76
(s, 3H), 1.42 (s, 9H), 1.41 (s, 9H).
【0386】
実施例25:tert-ブチル=2-(3-(tert-ブトキシカルボニル)-2-ヒドロキシ-1-トリジュウテリオメチルグアニジノ)アセタートの合成

工程1:tert-ブチル=2-(4-ニトロフェニルスルホンアミド)アセタートの合成

窒素下、撹拌子を備えた丸底フラスコに、グリシンtert-ブチルエステル塩酸塩(20g、119.76mmol)及びピリジン(260mL)を投入した。混合物を0℃に冷却し、それから4-ニトロベンゼンスルホニルクロリド(28.98g、131.74mmol)を少しずつ、混合物の温度を10℃未満に維持しながら加えた。次いで、反応物を室温まで昇温させた。室温で18時間後、反応混合物を水(1000mL)に注いだ。生じた沈殿を、濾過し、真空乾燥させて、tert-ブチル=2-(4-ニトロフェニルスルホンアミド)アセタート(30.8g、97.46mmol、収率81%)を黄色固体として得た。H NMR (CDCl) δ: 8.36-8.34 (m, 2
H), 8.07-8.05 (m, 2H), 5.23 (brs, 1H), 3.75
-3.74 (d, J = 5.6 Hz, 2H), 1.35 (s, 9H).
【0387】
工程2:tert-ブチル=2-[(4-ニトロフェニル)スルホニル-(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタートの合成

窒素下、撹拌子を備えた丸底フラスコに、tert-ブチル=2-(4-ニトロフェニルスルホンアミド)アセタート(30.8g、97.46mmol)、DMF(320m
L)、及びCDI(14.13g、97.46mmol)を投入した。この混合物に、室温で、CsCO(34.85g、107.22mmol)を加え、反応物を45分間撹拌した。次いで、反応混合物を水(1000mL)に注ぎ、EtOAc(3×500mL)で抽出した。有機相を1つにまとめ、NaCl(500mL)で洗い、乾燥させ(NaSO)、濾過し、溶媒を減圧エバポレートして、tert-ブチル=2-[(4-ニトロフェニル)スルホニル-(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタート(27.8g、83.48mmol、収率81%)を、淡黄色固体として得た。H NMR
(CDCl) δ: 8.36-8.33 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 8.
01-7.99 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 3.98 (s, 2H), 1.38 (s, 9H).
【0388】
工程3:tert-ブチル=2-(tert-ブトキシカルボニル(トリジュウテリオメチル)アミノ)アセタートの合成

窒素下、撹拌子を備えた丸底フラスコに、tert-ブチル=2-[(4-ニトロフェニル)スルホニル-(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタート(27.8g、83.48mmol)、CsCO(67.83g、208.7mmol)、アセトニトリル(400mL)、及びTHF(40mL)を投入した。この溶液に、チオフェノール(34mL、333.93mmol)を加え、反応物を45℃で90分間加熱し、それから反応混合物をMTBE(500mL)で希釈して、水(5×100mL)で抽出した。水抽出物を1つにまとめてMTBE(500mL)で洗い、水混合物に、DCM(500mL)、続いて(BOC)O(36.4g、166.97mmol)を加えた。二相反応混合物を一晩激しく撹拌した。次いで、相を分離させ、水層をDCM(500mL×5)で抽出した。有機相を1つにまとめて乾燥させ(NaSO)、濾過し、溶媒を減圧エバポレートした。生成物を、クロマトグラフィーで120gシリカカートリッジを使用してヘプタン-EtOAc(勾配はEtOAcを0%から30%へ)で溶出させることにより精製し、tert-ブチル=2-(tert-ブトキシカルボニル(トリジュウテリオメチル)アミノ)アセタート(6g、24.19mmol、収率28%)を無色油状物として得た。H NMR (CDCl) δ: 3.84-3.74 (m, 2H), 1.45-1.41 (m, 18H).
【0389】
工程4:tert-ブチル=2-(N-トリジュウテリオメチルアミノ)アセタートTFA塩の合成

撹拌子を備えた丸底フラスコに、tert-ブチル=2-(tert-ブトキシカルボニル(トリジュウテリオメチル)アミノ)アセタート(500mg、2.02mmol)及びジクロロメタン(2mL)を投入した。混合物を0℃に冷却し、それからトリフルオロ酢酸(TFA)1mLを加えた。次いで、混合物を0℃で3時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧エバポレートして、tert-ブチル=2-(N-トリジュウテリオメチルアミノ)アセタートTFA塩(320mg、2.02mmol、収率100%)を淡褐色油状物として得た。これは次の工程に直接用いた。ES LC-MS m/z = 149 (M+H).
【0390】
工程5:tert-ブチル=2-(N-トリジュウテリオメチルシアナミド)アセター
トの合成

撹拌子を備えた丸底フラスコに、tert-ブチル=2-(N-トリジュウテリオメチルアミノ)アセタートTFA塩(320mg、2.02mmol)、炭酸カリウム(837mg、6.06mmol)、及びアセトニトリル(10mL)を投入した。混合物を室温で0.5時間撹拌し、それから臭化シアン(235mg、2.22mmol)のアセトニトリル(2mL)溶液を加えた。反応物を室温で一晩撹拌放置した。次いで、デカンテーションにより不溶性残渣を残して溶媒を取り出した。溶媒を減圧エバポレートし、次いでフラッシュクロマトグラフィーで石油エーテル-酢酸エチル(勾配は酢酸エチルを0%から40%へ)を用いて溶出させることにより精製して、tert-ブチル=2-(N-トリジュウテリオメチルシアナミド)アセタート(260mg、1.50mmol、収率74%)を白色固体として得た。ES LC-MS m/z = 174 (M+H
& 196 (M+Na).
【0391】
工程6:tert-ブチル=2-(2-ヒドロキシ-1-トリジュウテリオメチルグアニジノ)アセタートの合成

撹拌子を備えた丸底フラスコに、tert-ブチル=2-(N-トリジュウテリオメチルシアナミド)アセタート(260mg、1.50mmol)及びテトラヒドロフラン(5mL)を投入した。この混合物に、ヒドロキシルアミン(50%水溶液、495mg、7.50mmol)を加えた。1時間後、水10mLを加え、混合物をジクロロメタン5mLで3回抽出した。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、tert-ブチル=2-(2-ヒドロキシ-1-トリジュウテリオメチルグアニジノ)アセタート(298mg、1.45mmol、収率97%)を白色固体として得た。これは、直ちに次の工程に用いた。ES LC-MS m/z = 207 (M+H).
【0392】
工程7:tert-ブチル=2-(3-(tert-ブトキシカルボニル)-2-ヒドロキシ-1-トリジュウテリオメチルグアニジノ)アセタートの合成

撹拌子を備えた丸底フラスコに、tert-ブチル=2-(2-ヒドロキシ-1-トリジュウテリオメチルグアニジノ)アセタート(298mg、1.45mmol)及びテトラヒドロフラン(5mL)を投入した。この混合物に、重炭酸ジ-tert-ブチル(316mg、1.72mmol)を加えた。反応物を、室温で一晩撹拌した。次いで、溶媒を減圧エバポレートし、生成物を、フラッシュクロマトグラフィーでジクロロメタン-酢酸エチル(勾配は酢酸エチルを0%から30%へ)を用いて溶出させることにより精製して、tert-ブチル=2-(3-(tert-ブトキシカルボニル)-2-ヒドロキシ-1-トリジュウテリオメチルグアニジノ)アセタート(90mg、0.29mmol、収率20%)を白色固体として得た。ES LC-MS m/z = 307 (M+H).H NMR (ジメチルスルホキシド-d) δ: 5.71 (s, 2H), 3
.81 (s, 2H), 1.43 (s, 9H), 1.41 (s, 9H).
【0393】
他のクレアチンプロドラッグ及びそれらの誘導体は、上記の手順を用い、適切な出発物質を選ぶことにより、合成することができる。
【0394】
実施例26:エチル=2-[メチル-(5-オキソ-4H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)アミノ]アセタートの合成

撹拌子及び窒素導入管を備えた丸底フラスコに、エチル=2-[シアノ(メチル)アミノ]アセタート(852mg、6.0mmol)及びテトラヒドロフラン(30mL)を投入した。この混合物に、ヒドロキシルアミン塩酸塩(2.1g、30.0mmol)及びトリエチルアミン(1.3mL、9.0mmol)を加えた。18時間後、カルボニルジイミド(5.8g、36.0mmol)を加え、反応物を1時間放置した。デカンテーションにより不溶性残渣を残して溶媒を取り出した。溶媒を減圧エバポレートし、生成物を、逆相クロマトグラフィーでそれぞれ0.1%トリフルオロ酢酸で修飾した水-アセトニトリルを用いて溶出させることにより、精製した。これにより、エチル=2-[メチル-(5-オキソ-4H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)アミノ]アセタートを白色固体として得た:80mg、0.40mmol、収率7%。ES LC-MS m/z = 202 (M+H).H NMR (クロロホルム-d) δ: 4.25 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.96 (s, 2H), 3.04 (s, 3
H), 1.31 (t, J = 7.1 Hz, 3H).融点120-123℃.
【0395】
エチル=2-[メチル-(5-オキソ-4H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)アミノ]アセタートは、Kitamure et al, Chem. Pharm. Bull., 2001, 49(3) 268-277に記載される手順を用いて合成することもできる。
【0396】
実施例27:2-[メチル-(5-オキソ-4H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)アミノ]酢酸の合成

撹拌子及び窒素導入管を備えた丸底フラスコに、エチル=2-[メチル-(5-オキソ-4H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)アミノ]アセタート(20mg、0.1mmol)、テトラヒドロフラン(5mL)、及び水(5mL)を投入した。この混合物に、水酸化リチウム一水和物(4mg、0.1mmol)を加えた。1時間後、溶媒を減圧エバポレートし、生成物を、逆相クロマトグラフィーでそれぞれ0.1%トリフルオロ酢酸で修飾した水-アセトニトリルを用いて溶出させることにより、精製した。これにより、2-[メチル-(5-オキソ-4H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)アミノ]酢酸を白色固体として得た:15mg、0.09mmol、収率90%。ES
LC-MS m/z = 174 (M+H).H NMR (メタノール-d
) δ: 3.97 (s, 2H), 2, 96 (s, 3H).融点150-155℃.
【0397】
他のクレアチンプロドラッグ及びそれらの誘導体は、上記の手順を用い、適切な出発物質を選ぶことにより、合成することができる。
【0398】
実施例28:アルキル=2-[(5-オキソ-2H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタートの合成

工程1:メチル=2-[エトキシカルボニルカルバモチオイル(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタートの合成

撹拌子及び窒素導入管を備えた丸底フラスコに、エチル=N-(チオキソメチレン)カルバメート(4.1mL、35.0mmol)及びジクロロメタン(300mL)を投入した。混合物を0℃に冷却し、メチル=2-(トリジュウテリオメチルアミノ)アセタートトリフルオロ酢酸塩(7.70g、35.0mmol)を加え、続いてトリエチルアミン(4.9mL、35.0mmol)を加えた。混合物を、室温まで昇温させながら一晩撹拌した。混合物を、1NのHCl(100mL)で洗い、乾燥させ(NaSO)、溶媒を減圧エバポレートした。生成物を、クロマトグラフィーで120gシリカカートリッジを使用して、ヘプタン-酢酸エチル(勾配は酢酸エチルを0から30%へ)で溶出させることにより精製した。これにより、メチル=2-[エトキシカルボニルカルバモチオイル(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタートを得た:8.0g、33.8mmol、収率96%。ES LC-MS m/z = 238 (M+H).H NMR
(クロロホルム-d) δ: 7.38 (br s, 1H), 4.41-4.59 (m, 2H), 4.20 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 3.80 (s, 3H)
, 1.31 (t, J = 7.1 Hz, 3H).
【0399】
工程2:メチル=2-[[(Z)-N-エトキシカルボニル-C-メチルスルファニル-カルボンイミドイル]-(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタートの合成

撹拌子(stir)及び窒素導入管を備えた丸底フラスコに、[エトキシカルボニルカルバモチオイル(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタート(7.82g、33.0mmol)、ヨウ化メチル(4.1mL、66.0mmol)、及びテトラヒドロフラン(200mL)を投入した。この混合物に、室温で、水素化ナトリウム(油中60%;1.32g、33.0mmol)を加えた。1時間後、生成物を飽和塩化アンモニウム溶液(100mL)に加え、水相を酢酸エチル(3×100mL)で抽出し、乾燥させ(NaSO)、溶媒を減圧エバポレートした。生成物を、クロマトグラフィーで120gシ
リカカートリッジを用いてヘプタン-酢酸エチル(勾配は酢酸エチルを0から40%へ)で溶出させることにより精製した。これにより、メチル=2-[[(Z)-N-エトキシカルボニル-C-メチルスルファニル-カルボンイミドイル]-(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタートを得た:8.0g、32.0mmol、収率97%。ES LC-MS m/z = 252 (M+H).H NMR (クロロホルム-d) δ:
4.30 (s, 2H), 4.16 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 3.77 (s, 3H), 2.42 (s, 3H), 1.30 (t, J = 7.1 Hz, 3
H).
【0400】
工程3:メチル=2-[(5-オキソ-2H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタートの合成

撹拌子、ビグリューカラム、及び窒素導入管を備えた丸底フラスコに、メチル=2-[[(Z)-N-エトキシカルボニル-C-メチルスルファニル-カルボンイミドイル]-(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタート(7.53g、30.0mmol)及びピリジン(50mL)を投入した。この混合物に、ヒドロキシルアミン塩酸塩(2.09g、30.0mmol)を加え、混合物を60℃で1時間加熱した。溶媒を減圧エバポレートした。酢酸エチル(100mL)及び水(100mL)を加えた。相を分離させ、水相を酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。有機相を1つにまとめて乾燥させ(NaSO)、溶媒を減圧エバポレートした。生成物を、クロマトグラフィーで120gシリカカートリッジを用いてヘプタン-酢酸エチル(勾配は酢酸エチルを0から100%へ)で溶出させることにより精製した。これにより、メチル=2-[(5-オキソ-2H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタートを白色固体として得た:3.0g、15.8mmol、収率53%。ES LC-MS m/z = 191 (M+H).H NMR (クロロホルム-d) δ:
3.98 (s, 2H), 3.79 (s, 3H).融点120-125℃.
【0401】
工程4:2-[(5-オキソ-2H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-(トリジュウテリオメチル)アミノ]酢酸の合成

撹拌子及び窒素導入管を備えた丸底フラスコに、メチル=2-[(5-オキソ-2H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタート(95mg、0.5mmol)、テトラヒドロフラン(5mL)、及び水(5mL)を投入した。この混合物に、水酸化リチウム一水和物(21mg、0.5mmol)を加えた。1時間後、溶媒を減圧エバポレートし、生成物を、逆相クロマトグラフィーでそれぞれ0.1%トリフルオロ酢酸で修飾した水-アセトニトリルを用いて溶出させることにより、精製した。これにより、2-[(5-オキソ-2H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-(トリジュウテリオメチル)アミノ]酢酸を白色固体として得た:50mg、0.28mmol、収率57%。ES LC-MS m/z = 177 (M+H).H NMR (メタノール-d) δ: 3.98 (s, 2H).融点1
50-155℃.
【0402】
工程5A:ヘプチル=2-[(5-オキソ-2H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタートの合成

撹拌子を備えたシンチレーションバイアルに、2-[(5-オキソ-2H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-(トリジュウテリオメチル)アミノ]酢酸(88mg、0.50mmol)、1-ヘプタノール(58mg、0.50mmol)、ジメチルアミノピリジン(92mg、0.75mmol)、及びジクロロメタン(10mL)を投入した。この混合物に、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(144mg、0.75mmol)を加えた。1時間後、トリエチルアミン(0.07mL、0.50mmol)を加えた。反応物をさらに1時間放置した。溶媒を減圧エバポレートし、生成物を、逆相クロマトグラフィーでそれぞれ0.1%トリフルオロ酢酸で修飾した水-アセトニトリルを用いて溶出させることにより、精製した。これにより、ヘプチル=2-[(5-オキソ-2H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタートを白色固体として得た:70mg、0.25mmol、収率50%。ES LC-MS m/z = 275 (M+H).H NMR (クロロホルム-d) δ: 11.06 (br s, 1H), 4.17 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 3.95 (s, 2H), 1.56-1.82 (m, 4H), 1.19-1.44 (m, 7H), 0.85-0.94 (m, 2H
).融点110-115℃.
【0403】
工程5B:エチル=2-[(5-オキソ-2H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタートの合成

撹拌子を備えたシンチレーションバイアルに、2-[(5-オキソ-2H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-(トリジュウテリオメチル)アミノ]酢酸(176mg、1.00mmol)、エタノール(46mg、1.00mmol)、ジメチルアミノピリジン(183mg、1.50mmol)、及びジクロロメタン(20mL)を投入した。この混合物に、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(288mg、1.50mmol)を加えた。1時間後、トリエチルアミン(0.14mL、1.00mmol)を加えた。反応物をさらに1時間放置した。溶媒を減圧エバポレートし、生成物を、逆相クロマトグラフィーでそれぞれ0.1%トリフルオロ酢酸で修飾した水-アセトニトリルを用いて溶出させることにより、精製した。これにより、エチル=2-[(5-オキソ-2H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタートを白色固体として得た:133mg、0.65mmol、収率65%。ES LC-MS m/z = 205 (M+H).
NMR (クロロホルム-d) δ: 11.13 (br s, 1H), 4.24 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.96 (s, 2H), 1.30 (t, J =
7.1 Hz, 3H).融点12-130℃.
【0404】
工程5C:イソプロピル=2-[(5-オキソ-2H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタートの合成

撹拌子を備えたシンチレーションバイアルに、2-[(5-オキソ-2H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-(トリジュウテリオメチル)アミノ]酢酸(176mg、1.00mmol)、イソプロパノール(60mg、1.00mmol)、ジメチルアミノピリジン(183mg、1.50mmol)、及びジクロロメタン(20mL)を投入した。この混合物に、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(288mg、1.50mmol)を加えた。1時間後、トリエチルアミン(0.14mL、1.00mmol)を加えた。反応物をさらに1時間放置した。溶媒を減圧エバポレートし、生成物を、逆相クロマトグラフィーでそれぞれ0.1%トリフルオロ酢酸で修飾した水-アセトニトリルを用いて溶出させることにより、精製した。これにより、イソプロピル=2-[(5-オキソ-2H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタートを白色固体として得た:139mg、0.64mmol、収率64%。ES LC-MS m/z = 219 (M+H).H NMR (クロロホルム-d) δ: 11.09 (br s, 1H),
5.10 (sept, J = 6.3 Hz, 1H), 3.91 (s, 2H), 1.28 (d, J = 6.2 Hz, 6H).融点143-145℃.
【0405】
実施例29:3-[2-ヒドロキシエチル(トリジュウテリオメチル)アミノ]-2H-1,2,4-オキサジアゾール-5-オンの合成

撹拌子及び窒素導入管を備えた丸底フラスコに、2-[(5-オキソ-2H-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-(トリジュウテリオメチル)アミノ]酢酸(528mg、3.0mmol)及びテトラヒドロフラン(THF)(60mL)を投入した。この混合物に、BH・THF(1.0MのTHF溶液)(6.0mL、6.0mmol)を加えた。2時間後、反応物をメタノール(5mL)でクエンチして、溶媒を減圧エバポレートした。生成物を、逆相クロマトグラフィーでそれぞれ0.1%トリフルオロ酢酸で修飾した水-アセトニトリルを用いて溶出させることにより、精製した。これにより、3-[2-ヒドロキシエチル(トリジュウテリオメチル)アミノ]-2H-1,2,4-オキサジアゾール-5-オンを白色固体として得た:372mg、2.30mmol、収率77%。ES LC-MS m/z = 163 (M+H).H NMR (メタ
ノール-d) δ: 3.70 (t, J = 5.4 Hz, 3H), 3.33 (s,
1H).融点98-104℃.
【0406】
実施例30:3-イミノ-4-(メチル-d)-1,2,4-オキサジアジナン-6-オン及び3-アミノ-4-(メチル-d)-4,5-ジヒドロ-6H-1,2,4-オキサジアジン-6-オンの合成
工程1:メチル=2-[シアノ(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタートの合成
フラスコに、メチル=2-(トリジュウテリオメチルアミノ)アセタート(3.00g、21.04mmol、HCl塩)、KCO(5.82g、42.08mmol)、及びMeOH(20.00mL)を入れた。次いで、臭化シアン(2.23g、21.04mmol)を加えた。それから、反応混合物を25℃で約5時間撹拌した。反応混合物をエバポレートして残渣を得た。HO(20mL)を加え、EtOAc(35mL×5)を用いて生成物を抽出した。有機層をブライン(20mL)で洗い、無水NaSOで乾燥させ、エバポレートしてメチル=2-[シアノ(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタート(2.00g、収率72.48%)を黄赤色油状物として得た。H NMR (MeOD, 400MHz) δ: 3.91 (s, 2H), 3.79 (s, 3
H).
【0407】
工程2:3-イミノ-4-(メチル-d)-1,2,4-オキサジアジナン-6-オン及び3-アミノ-4-(メチル-d)-4,5-ジヒドロ-6H-1,2,4-オキサジアジン-6-オンの合成

フラスコに、メチル=2-[シアノ(トリジュウテリオメチル)アミノ]アセタート(1.00g、7.62mmol)、ヒドロキシルアミン(2.12g、30.50mmol、HCl塩)、及びAcONa(2.81g、34.31mmol)のMeOH(20.00mL)溶液を入れた。反応混合物を、25℃で約4時間撹拌した。反応溶液をエバポレートして、ほとんどのMeOHを除去した。次いで、HO(約3mL)を加えて、全ての固体を溶解させた。溶液の半分を、特殊分取HPLC(中性)により直接精製して、所望のMSを持つピークを4種得た。ピークC、39.7mg、明桃色。ES LC-MS m/z=130(M+H).H NMR (DMSO-d6) δ: 3.67 (s, 2H).ピークD、70.7mg、白色固体。ES LC-MS m/z=13
0(M+H).H NMR (DMSO-d6) δ: 3.64 (s, 2H).残
りのピークは、3-ヒドロキシ-2-イミノ-1-(メチル-d)イミダゾリジン-4-オン、(Z)-2-(ヒドロキシイミノ)-1-(メチル-d)イミダゾリジン-4-オン、または(E)-2-(ヒドロキシイミノ)-1-(メチル-d)イミダゾリジン-4-オンに該当すると思われる。
【0408】
実施例31:4-アミノ-2,5-ジメチル-5,6-ジヒドロ-1,3,5-オキサジアゼピン-7(2H)-オンの合成

表題化合物である4-アミノ-2,5-ジメチル-5,6-ジヒドロ-1,3,5-オキサジアゼピン-7(2H)-オンは、容易に入手可能な出発物質であるクレアチン(Sigma Aldrichから入手可能)及びプロパン-2-オン(アセトン、同じくS
igma Aldrichから入手可能)から合成することができる。クレアチン(6.55g;50mmol)及びアセトン(3.70mL、50mmol)を無水ジオキサン(100mL)に溶解させた溶液を撹拌しながら、そこにトリフルオロ酢酸(TFA;2.0mL;26mmol)を10分かけて加える。この溶液を、室温で10分間撹拌し、続いて1時間還流させ、次いで減圧濃縮して、粗生成物を得る。粗生成物を、最小量の無水ジオキサンに溶解させ、続いて、無水HClガス流を導入する。生じる沈殿を濾過し、無水ジエチルエーテルで洗い、表題化合物のHCl塩を得る。
【0409】
プロパン-2-オンの代わりに他の、アルデヒドまたはケトンを用いることで、他の4-アミノ-5,6-ジヒドロ-1,3,5-オキサジアゼピン-7(2H)-オン化合物を調製することができる。
【0410】
他のクレアチンプロドラッグを、上記の手順を用い、適切な出発物質を選ぶことにより、合成することができる。
【0411】
本明細書中引用される全ての文献、例えば、非特許文献、特許出願、及び特許などは、本明細書中、あらゆる目的で、参照として援用される。本発明は、その精神または本質的特徴から逸脱することなく、他の特定形態で具現化することができる。したがって、上記の実施形態は、あらゆる面で、本明細書中記載される本発明を制限するのではなく例示としてみなされるべきである。すなわち、本発明の範囲は、上記の説明によるのではなく、添付の請求項により示されるものであり、請求項と等価であるという意味及び範囲に含まれる全ての変更は、請求項に包含されることを意図する。