(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】織物ストリップを含むタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/18 20060101AFI20220309BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20220309BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20220309BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
B60C9/18 B
B60C9/18 K
B60C9/00 B
B60C9/00 C
B60C9/22 B
B60C9/22 C
D03D1/00 A
(21)【出願番号】P 2020179756
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2020-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0156602
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519272178
【氏名又は名称】ハンクック タイヤ アンド テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】コウ キルジュ
(72)【発明者】
【氏名】イ ミチョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヒュンラン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヘクァン
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-192788(JP,A)
【文献】特開平06-344469(JP,A)
【文献】国際公開第2015/171093(WO,A1)
【文献】特開2013-018302(JP,A)
【文献】国際公開第2018/203852(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/016791(WO,A1)
【文献】米国特許第05365988(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/18
B60C 9/00
B60C 9/22
D03D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配列された複数本の経糸、及び前記経糸を編んで製織する緯糸を含む織物ストリップを補強ベルト層に含み、
前記緯糸は粘着剤エマルジョンを含み、
前記緯糸は前記経糸に接着された
ものであり、
前記緯糸は、補強ベルト用テキスタイルコードである経糸よりも直径が小さく、高い伸び率を有し、前記経糸対比で90°方向にジグザグに位置している、
ことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記織物ストリップは、前記織物ストリップをトッピング(topping)するトッピングゴムを含まないものである、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記織物ストリップの経糸は、0.5%~10%の熱収縮率を有する、ポリアミド又はポリエステルを含むもの
であり、
前記熱収縮率は、標準試験法に基づいてTestrite装置を使用して測定したものである、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記織物ストリップの緯糸は、ナイロン又はポリエチレンテレフタレート(PET)を含むものである、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記織物ストリップは、厚さが0.4mm~1.0mmであり、幅が5mm~200mmであり、前記織物ストリップ内の経糸の本数は、4本~500本であるものである、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記織物ストリップの経糸は、RFL(レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス)接着剤及び粘着剤エマルジョンを適用して熱処理されたものである、請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤに関するものであり、より詳しくは、製造工程が単純であり、製造工程時のコストが削減され、タイヤの重量が減少し、本発明のタイヤを使用して走行時に転がり抵抗の減少を通じて燃費が向上した織物ストリップを含む乗用車用ラジアルタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に乗用車、SUV、及びミニバン用のラジアルタイヤは、スチールベルト構造物(2層~3層のベルト層)を有し、その上にナイロン(Nylon66)、ポリエステル(PET)又はアラミドハイブリッド(アラミド及びナイロン)で製造された熱収縮の可能な円周方向の補強ベルト構造物を含んでいる。
【0003】
特に、補強ベルト用織物(テキスタイル)は、主にナイロンコードが使用されており、具体的には、ナイロンは原料チップ(chip)を押出設備で熱放射(Spinning)して素線径のフィラメントを抜き出した後、冷却と熱処理を通じて多段延伸(Drawing)を行う。こうして得られた原糸は撚糸設備を通じて撚糸(Twisting)後、製織(Weaving)を行う。最終的にナイロンコードは、ゴムと一緒に圧延(Calendaring)と裁断(Cutting)過程を経て補強ベルト構造物を形成する。
【0004】
前記の補強ベルト構造物は、タイヤのケーシングに円周方向に0°又は5°以内の角度で平行に配列されており、高速で遠心力によるタイヤの成長に抵抗する役割を担う。
【0005】
現在のラジアルタイヤは、走行耐久性及び操縦安定性などの既存の性能を維持しつつ、重量減少による燃費向上と製造コスト削減が求められている。
【0006】
しかし、タイヤの補強ベルト構造物に含まれているゴム層の厚さを減少させることによってタイヤの重量を減少させることは、常套的な方法であり、重量減少及びコスト削減の効果が少ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、製造工程が単純であり、製造工程時のコストが削減され、タイヤの重量が減少し、本発明のタイヤを使用して走行時に転がり抵抗の減少を通じて燃費が向上したタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例によると、互いに平行に配列された複数本の経糸、及び経糸を編んで製織する緯糸を含む織物ストリップを補強ベルト層に含み、緯糸は経糸に接着されたものであるタイヤを提供する。
【0009】
織物ストリップは、織物ストリップをトッピング(topping)するトッピングゴムを含まなくてもよい。
【0010】
織物ストリップの経糸は、0.5%~10%の熱収縮率を有する、ポリアミド又はポリエステルを含むことができる。
【0011】
織物ストリップの緯糸は、ナイロン又はポリエチレンテレフタレート(PET)を含むことができる。
【0012】
織物ストリップの緯糸は、粘着剤エマルジョンを追加したり、低融点材料を適用したりして熱処理されてもよい。
【0013】
織物ストリップは、厚さが0.4mm~1.0mmであり、幅が5mm~200mmであり、織物ストリップ内の経糸の本数は、4本~500本であってもよい。
【0014】
織物ストリップの経糸は、RFL(レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス)接着剤及び粘着剤エマルジョンを適用して熱処理されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタイヤは、製造工程が単純であり、製造工程時のコストが削減され、タイヤの重量が減少し、本発明のタイヤを使用して走行時に転がり抵抗の減少を通じて燃費が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施例に係るタイヤを概略的に図示した半断面図である。
【
図2】従来の技術による補強ベルト構造物を概略的に示す図である。
【
図3】従来の技術による補強ベルト構造物を撮影した写真である。
【
図4】本発明の織物ストリップを概略的に示す図である。
【
図5】本発明に係る織物ストリップを撮影した写真である。
【
図6】織物ストリップを用いてタイヤを製造する過程を示す図である。
【
図7】従来の補強ベルト構造物を適用した比較例と織物ストリップを適用した実施例において、加硫後、空気(air)捕集が発生するかどうかを観察した写真である。
【
図8】従来の補強ベルト構造物を適用した比較例と織物ストリップを適用した実施例において、加硫後、空気(air)捕集が発生するかどうかを観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0018】
本発明の一実施例に係るタイヤは、織物ストリップを補強ベルト層に含む。
【0019】
図1は、タイヤを概略的に図示した半断面図である。以下、タイヤに関して
図1を参考にして説明する。
【0020】
タイヤは、トレッド部1とサイドウォール部2とビード部3とを含む。左右一対のビード部3の間には、カーカス層4が架設され、カーカス層4のタイヤ幅方向両端部がそれぞれビード部3の周りにタイヤの内側から外側に巻き上がる。カーカス層4の外側には、スチールベルト層5及び補強ベルト層6が設置され、カーカス層4の内側には、インナーライナー(図示せず)が配置される。
【0021】
本発明は、従来のテキスタイルコードとゴム圧延物からなる補強ベルト構造物を代替して、粘着性及び配列安定性を向上させたテキスタイルコードからなる織物ストリップを適用したものである。それを通じて、既存の乗用車用ラジアルタイヤの性能を維持しつつ、製造工程を単純化し、製造工程時のコストを削減し、タイヤの重量を減少させ、本発明のタイヤを使用して走行時に転がり抵抗の減少を通じて燃費が向上する効果が得られる。
【0022】
具体的には、
図2は、従来の技術による補強ベルト構造物を概略的に示す図であり、
図3は、従来の技術による補強ベルトをテキスタイルコードが表示されるように撮影した写真であり、
図4は、本発明の織物ストリップを概略的に示す図であり、
図5は、本発明の織物ストリップをテキスタイルコードが表示されるように撮影した写真である。
【0023】
図2を参考にすると、従来の補強ベルト用テキスタイルコードは、ゴムとの圧延のために織物に製織されるべきであり、この時、テキスタイルコードである経糸11が、
図3のように平行に配列を維持するために緯糸12が使用される。緯糸12は、補強ベルト用テキスタイルコードである経糸11よりも直径が小さく伸び率が高く、経糸11対比で90°方向にジグザグに位置する。より具体的には、前記緯糸12の直径は、前記経糸11の直径の1/50~1/2と小さいものが好ましい。前記のように緯糸12の直径が経糸11の直径の1/50~1/2と小さい場合、タイヤの製造過程において緯糸と緯糸の間に空いた空間が非常に狭くて、前記空いた空間に気泡が発生するエア不適合(air inadequate)が生じることなく、タイヤの耐久性に優れた効果がある。
【0024】
前記緯糸12は、経糸11と粘着力がなくてくっついておらず、自由度(Flexible)がある。また、従来の補強ベルト用テキスタイルコードは、ゴムとの圧延によってテキスタイルコードの片面又は両面にトッピングゴム13を含む。
【0025】
一方、
図4及び
図5を参考にすると、本発明において補強ベルト層に適用される織物ストリップは、互いに平行に配列された複数本の経糸21、及び経糸21を編んで製織する緯糸22を含む。この時、緯糸22は経糸21に接着される。
【0026】
即ち、織物ストリップは、緯糸22が経糸21に接着されて、粘着性及び配列安定性が向上することによって、ゴムとの圧延工程無しに直ちにスチールベルト層5とトレッド部1との間に直接位置させることにより、補強ベルト層6のトッピングゴム13を大胆になくしてタイヤの重量を大きく減少させることができる。これにより、織物ストリップは織物ストリップをトッピング(topping)するトッピングゴム13を含まなくてもよい。
【0027】
織物ストリップの経糸21は、補強ベルト層6の特性上、熱収縮が可能でなければならないので、ポリアミド又はポリエステルを含むことができる。ポリアミドとしては、ナイロン6(Nylon6)又はナイロン66(Nylon66)を例に挙げられ、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、又はポリブチレンナフタレート(PBN)を例に挙げられる。また、アラミドとナイロンのハイブリッド、アラミドとポリエステルのハイブリッドなども熱収縮が可能なので、使用することができる。
【0028】
また、織物ストリップの経糸21の熱収縮率は、0.5%~10%であってもよく、熱収縮率は、標準試験法に基づいてTestrite装置を使用して測定することができる。経糸21の熱収縮率が0.5%未満である場合、加硫時に熱収縮によってベルト及びカーカスなどを十分に圧着させることができない虞がある。
【0029】
緯糸22は、織物ストリップの配列を維持するために使用され、緯糸22の材質は、ナイロン又はポリエチレンテレフタレート(PET)であってもよい。
【0030】
ただし、緯糸22は、既存の緯糸12とは異なり、トッピングゴム13がなくて相対的に経糸21の配列がばらばらになりかねないため、それを防ぐために、緯糸22と経糸21の接触部位を結合させて自由度がないように固定させるための粘着剤23を含む。粘着剤23を通じて、緯糸22が経糸21に接着される。
【0031】
粘着剤23は、例えば、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂などの粘着剤エマルジョンを追加したり、低融点繊維(Low Melting Fiber)又は低融点ポリエステル(Low Melting Polyester)などの低融点材料を適用して熱処理されたものであってもよい。
【0032】
織物ストリップの厚さは、0.4mm~1.0mmと経糸21の直径と同一であり、幅は5mm~200mm水準で自由に調整が可能であり、織物ストリップ内の経糸21の本数は、4本~500本まで可能である。従来の補強ベルト構造物の長さは、安定した圧延加工性を確保するためには、少なくとも300m以上、好ましくは、600m以上でなければならないが、織物ストリップは、圧延工程無しにタイヤ成形工程に直ちに適用することができるので、加工性を確保するための最小の長さに制限はない。
【0033】
図6は、織物ストリップを用いてタイヤを製造する過程を示す図であり、
図6を参考にすると、織物ストリップは、トッピングゴム圧延工程無しにタイヤ成形工程に直ちに適用されるので、成形時にスチールベルト層5のゴム層と直接接触される。したがって、織物ストリップの経糸21が十分な粘着性を持たなければ成形作業ができないので、織物ストリップの経糸21は、例えば、RFL(レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス)接着剤及びエポキシ樹脂又はアクリル樹脂などの粘着剤エマルジョンを適用して熱処理されることにより、経糸21は十分な粘着性を有することができる。また、そのために、RFL接着剤にテルペン系樹脂及び各種粘着剤の添加も可能である。
【0034】
これにより、織物ストリップは粘着性を有しているので、圧延及び裁断工程無しにタイヤ成形工程に直ちに適用することができる。
【0035】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態にて具現されてよく、ここで説明する実施例に限定されない。
[製造例:織物ストリップの製造]
【0036】
従来の補強ベルト構造物と本発明の織物ストリップとの比較試験は、205/55R16サイズの乗用車タイヤで行われた。補強ベルト構造物は、タイヤ圧延、裁断、成形、及び加硫の過程を経て製造され、織物ストリップは、タイヤ成形(
図4参考)、及び加硫の過程を経て製造されたが、圧延及び裁断工程が省略されたことを除いては、通常の方法で製造された。
[実験例:織物ストリップが適用されたタイヤの試験結果]
【0037】
織物ストリップが適用されたタイヤは、補強ベルトで約50%の重量が減少して、タイヤ上で約2%の重量減少効果が得られ、転がり抵抗は約1%向上して、燃費向上に有利であると判断される。
【0038】
図7及び
図8は、それぞれ、従来の補強ベルト構造物を適用した比較例と織物ストリップを適用した実施例において、加硫後、空気(air)捕集が発生するかどうかを観察した写真である。
図7及び
図8を参考にすると、既存の無圧延フィルム(Film)方式の補強ベルト構造物は、
図7のように、タイヤ上で空気(air)が通り抜ける通路がなくて加硫後、空気が捕集される問題があったが、織物ストリップは、フィルム方式ではないので、
図8のように、空気捕集による問題は発見されなかった。
【0039】
以上で本発明の好ましい実施例について詳しく説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、次の請求範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0040】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 スチールベルト層
6 補強ベルト層
11、21 経糸
12、22 緯糸
13 トッピングゴム
23 粘着剤