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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】ホイールローダ
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20220311BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20220311BHJP
   F16H 61/47 20100101ALI20220311BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F9/22 H
F16H61/47
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017191677
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019065576
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 幸次
(72)【発明者】
【氏名】青木 勇
(72)【発明者】
【氏名】田中 哲二
(72)【発明者】
【氏名】抜井 祐樹
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/068545(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/110086(WO,A1)
【文献】特開2017-166587(JP,A)
【文献】特開平10-184906(JP,A)
【文献】特開2009-030693(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03093397(EP,A1)
【文献】特開2010-025179(JP,A)
【文献】国際公開第2009/019974(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/145342(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00-9/28
F16H 61/00-61/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前部に設けられて上下方向に回動可能なリフトアームを有するフロント作業機を備えたホイールローダであって、
エンジンと、
前記エンジンにより駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプと、
前記走行用油圧ポンプと閉回路状に接続されて、前記エンジンの駆動力を車輪に伝達する可変容量型の走行用油圧モータと、
前記車体の走行状態を検出する走行状態検出器と、
前記リフトアームの上げ操作量を検出する操作量検出器と、
前記走行用油圧ポンプ及び前記走行用油圧モータを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記走行状態検出器で検出された走行状態、及び前記操作量検出器で検出された前記リフトアームの上げ操作量に基づいて、前記車体の前進走行中における前記リフトアームの上方向への動作を特定する特定条件を満たすか否かを判定し、
前記特定条件を満たす場合、かつライズラン操作の後半である前記リフトアームが水平姿勢時から上方向に上がりきるまでの間に限り、前記リフトアームの上げ操作量が増加するにつれて、前記走行用油圧ポンプの押し退け容積を小さくして、又は前記走行用油圧モータの押し退け容積を大きくして車速を制限する
ことを特徴とするホイールローダ。
【請求項2】
請求項1に記載のホイールローダであって、
前記エンジンにより駆動され、前記フロント作業機に作動油を供給する作業機用油圧ポンプと、
前記作業機用油圧ポンプの吐出圧を検出する圧力検出器と、をさらに備え、
前記コントローラは、
前記操作量検出器で検出された前記リフトアームの上げ操作量、及び前記圧力検出器で検出された前記リフトアームの上げ操作に応じた吐出圧に基づいて、前記特定条件を満たすか否かを判定し、
前記特定条件を満たす場合、かつライズラン操作の後半である前記リフトアームが水平姿勢時から上方向に上がりきるまでの間に限り、前記作業機用油圧ポンプの吐出圧が増加するにつれて、又は前記作業機用油圧ポンプの入力トルクが増加するにつれて、前記走行用油圧ポンプの押し退け容積を小さくして、又は前記走行用油圧モータの押し退け容積を大きくして車速を制限する
ことを特徴とするホイールローダ。
【請求項3】
請求項1に記載のホイールローダであって、
前記コントローラは、
積込作業においてダンプトラックに向かって走行する際に選択される低速度段の場合に限り、前記走行用油圧ポンプの押し退け容積を小さくして、又は前記走行用油圧モータの押し退け容積を大きくして車速を制限する
ことを特徴とするホイールローダ。
【請求項4】
請求項1に記載のホイールローダであって、
前記リフトアームの上げ操作量に対する前記走行用油圧ポンプの押し退け容積の変化率又は前記走行用油圧モータの押し退け容積の変化率を調整する調整装置をさらに備え、
前記コントローラは、
前記調整装置で設定された変化率にしたがって、前記走行用油圧ポンプの押し退け容積を小さくして、又は前記走行用油圧モータの押し退け容積を大きくして車速を制限する
ことを特徴とするホイールローダ。
【請求項5】
車体の前部に設けられて上下方向に回動可能なリフトアームを有するフロント作業機を備えたホイールローダであって、
エンジンと、
前記エンジンにより駆動される発電機と、
前記発電機に接続されて、前記エンジンの駆動力を車輪に伝達する電動モータと、
前記車体の走行状態を検出する走行状態検出器と、
前記リフトアームの上げ操作量を検出する操作量検出器と、
前記電動モータを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記走行状態検出器で検出された走行状態、及び前記操作量検出器で検出された前記リフトアームの上げ操作量に基づいて、前記車体の前進走行中における前記リフトアームの上方向への動作を特定する特定条件を満たすか否かを判定し、
前記特定条件を満たす場合、かつライズラン操作の後半である前記リフトアームが水平姿勢時から上方向に上がりきるまでの間に限り、前記リフトアームの上げ操作量が増加するにつれて、前記電動モータの回転数を減少させて車速を制限する
ことを特徴とするホイールローダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速式の走行駆動システムを搭載したホイールローダに関する。
【背景技術】
【0002】
無段変速式の走行駆動システムとして、例えば、エンジンで油圧ポンプを駆動させることによって発生した油圧を油圧モータで回転力に変換するHST式若しくはHMT式、及びエンジンで発電機を駆動させることによって発生した電力を電動モータで回転力に変換するEMT式等が知られている。
【0003】
例えば特許文献1では、上下方向に回動可能なリフトアームを含む作業装置と、エンジンによって駆動される可変容量型のHSTポンプ、及びHSTポンプから吐出される圧油により駆動されるHSTモータを含む油圧閉回路と、エンジンによって駆動され、作業装置を作動させる圧油を吐出する作業機ポンプと、を備えたホイールローダが開示されている。
【0004】
このホイールローダは、作業モードとして、重掘削に対応したパワーモード、及びパワーモードよりもエンジン回転数を抑えて燃費を低減させるエコモードのいずれかを選択することが可能である。作業モードとしてエコモードが選択されている場合に、リフトアームシリンダのボトム圧を検出することによってリフトアームの上げ動作が検出されると、走行駆動システムは、エンジン回転数をエコモード時よりも増加させる。これにより、エコモードにて動作している時であっても、リフトアームの上げ動作速度が低下しづらくなり、ホイールローダの作業効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-94070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のホイールローダでは、リフトアームシリンダのボトム圧を用いてリフトアームの上げ動作の有無を判定しているため、例えば、リフトアームの上げ操作を行っていない場合(操作レバーが中立状態)であっても、バケット内に荷があるとリフトアームシリンダのボトム圧が高くなってしまい、リフトアームの上げ操作を行っていると誤判定する可能性がある。また、ホイールローダが露天掘り鉱山等において凹凸路面を走行する際には、車体に振動が発生してリフトアームシリンダのボトム圧が変化しやすくなるため、この場合においても、リフトアームの上げ操作を行っていると誤判定しやすくなる。
【0007】
このように、オペレータが意図してリフトアームの上げ操作を行っていない状況下においても、リフトアームの上げ操作の誤判定によりエンジン回転数が増加することで車速が急に変化してしまい、車体やオペレータに対して振動や衝撃をさらに与えてしまう可能性がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、リフトアームの上げ操作の誤判定に伴う車速の急な変化を抑制することが可能なホイールローダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、車体の前部に設けられて上下方向に回動可能なリフトアームを有するフロント作業機を備えたホイールローダであって、エンジンと、前記エンジンにより駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプと、前記走行用油圧ポンプと閉回路状に接続されて、前記エンジンの駆動力を車輪に伝達する可変容量型の走行用油圧モータと、前記車体の走行状態を検出する走行状態検出器と、前記リフトアームの上げ操作量を検出する操作量検出器と、前記走行用油圧ポンプ及び前記走行用油圧モータを制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記走行状態検出器で検出された走行状態、及び前記操作量検出器で検出された前記リフトアームの上げ操作量に基づいて、前記車体の前進走行中における前記リフトアームの上方向への動作を特定する特定条件を満たすか否かを判定し、前記特定条件を満たす場合、かつライズラン操作の後半である前記リフトアームが水平姿勢時から上方向に上がりきるまでの間に限り、前記リフトアームの上げ操作量が増加するにつれて、前記走行用油圧ポンプの押し退け容積を小さくして、又は前記走行用油圧モータの押し退け容積を大きくして車速を制限することを特徴とするホイールローダを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リフトアームの上げ操作の誤判定に伴う車速の急な変化を抑制することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の各実施形態に係るホイールローダの外観を示す側面図である。
図2】ホイールローダによるVシェープローディングについて説明する説明図である。
図3】ホイールローダのライズラン操作を説明する説明図である。
図4】第1実施形態に係るホイールローダの油圧回路及び電気回路を示す図である。
図5】アクセルペダル踏込量と目標エンジン回転速度との関係を示すグラフである。
図6】(a)はエンジン回転数とHSTポンプの押し退け容積との関係を示すグラフ、(b)はエンジン回転数とHSTポンプの入力トルクとの関係を示すグラフ、(c)はエンジン回転数とHSTポンプの吐出流量との関係を示すグラフである。
図7】速度段ごとの車速と駆動力との関係を示すグラフである。
図8】リフトアームの上げ操作量とパイロット圧との関係を示すグラフである。
図9】スプールのストローク量とパイロット圧との関係を示すグラフである。
図10】スプールのストローク量とスプールの開口面積との関係を示すグラフである。
図11】リフトアームの上げ操作量とスプールの開口面積との関係を示すグラフである。
図12】コントローラが有する機能を示す機能ブロック図である。
図13】コントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図14】リフトアーム上げ操作に係るパイロット圧とHSTモータの最小押し退け容積の増加分との関係を示すグラフである。
図15】走行負荷圧力とHSTモータの最小押し退け容積との関係を示すグラフである。
図16】ホイールローダの車速と牽引力との関係を示すグラフである。
図17】第2実施形態に係るホイールローダの油圧回路及び電気回路を示す図である。
図18】第2実施形態に係るコントローラが有する機能を示す機能ブロック図である。
図19】第2実施形態に係るコントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図20】作業機用油圧ポンプの吐出圧とHSTモータの最小押し退け容積の増加分との関係を示すグラフである。
図21】第3実施形態に係るホイールローダの油圧回路及び電気回路を示す図である。
図22】第4実施形態に係るホイールローダの油圧回路及び電気回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の各実施形態に係るホイールローダの全体構成及びその動作について、図1~3を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の各実施形態に係るホイールローダ1の外観を示す側面図である。
【0014】
ホイールローダ1は、前フレーム1A及び後フレーム1Bで構成される車体と、車体の前部に設けられたフロント作業機2と、を備えている。ホイールローダ1は、車体が中心付近で中折れすることにより操舵するアーティキュレート式の作業機械である。前フレーム1Aと後フレーム1Bとは、センタジョイント10によって左右方向に回動自在に連結されており、前フレーム1Aが後フレーム1Bに対して左右方向に屈曲する。
【0015】
前フレーム1Aには、左右一対の前輪11A、及びフロント作業機2が設けられている。後フレーム1Bには、左右一対の後輪11B、オペレータが搭乗する運転室12、エンジンやコントローラ、冷却器等の各機器を収容する機械室13、及び車体が傾倒しないようにバランスを保つためのカウンタウェイト14が設けられている。なお、図1では、左右一対の前輪11A及び後輪11Bのうち、左側の前輪11A及び後輪11Bのみを示している。
【0016】
フロント作業機2は、上下方向に回動可能なリフトアーム21と、伸縮することによりリフトアーム21を駆動させる一対のリフトアームシリンダ22と、リフトアーム21の先端部に取り付けられたバケット23と、伸縮することによりバケット23をリフトアーム21に対して上下方向に回動させるバケットシリンダ24と、リフトアーム21に回動可能に連結されてバケット23とバケットシリンダ24とのリンク機構を構成するベルクランク25と、一対のリフトアームシリンダ22やバケットシリンダ24へ圧油を導く複数の配管(不図示)と、を有している。なお、図1では、一対のリフトアームシリンダ22のうち、左側に配置されたリフトアームシリンダ22のみを破線で示している。
【0017】
リフトアーム21は、各リフトアームシリンダ22のロッド220が伸びることにより上方向に回動し、各ロッド220が縮むことにより下方向に回動する。バケット23は、バケットシリンダ24のロッド240が伸びることによりリフトアーム21に対して上方向に回動(チルト)し、ロッド240が縮むことによりリフトアーム21に対して下方向に回動(ダンプ)する。
【0018】
このホイールローダ1は、例えば露天掘り鉱山等において、土砂や鉱物等を掘削してダンプトラック等へ積み込む荷役作業を行うための作業機械である。次に、ホイールローダ1が掘削作業及び積み込み作業を行う際の方法の1つであるVシェープローディングについて、図2及び図3を参照して説明する。
【0019】
図2は、ホイールローダ1によるVシェープローディングについて説明する説明図である。図3は、ホイールローダ1のライズラン操作を説明する説明図である。
【0020】
まず、ホイールローダ1は、矢印X1で示すように、掘削対象である地山100Aに向かって前進し、バケット23を地山100Aに突入させて掘削作業を行う。掘削作業が終わると、ホイールローダ1は、矢印X2で示すように、元の場所に一旦後退する。
【0021】
次に、ホイールローダ1は、矢印Y1で示すように、ダンプトラック100Bに向かって前進し、ダンプトラック100Bの手前で停止する。図2では、ダンプトラック100Bの手前で停止している状態のホイールローダ1を破線で示している。具体的には、図3に示すように、オペレータはアクセルペダルをいっぱいまで踏み込む(フルアクセル)と共に、リフトアーム21の上げ操作を行う(図3において右側に示す状態)。次に、フルアクセルの状態のまま、さらにリフトアーム21を上方向に上げる(図3において中央に示す状態)。そして、オペレータはブレーキを作動させてダンプトラック100Bの手前で停止し、バケット23をダンプさせてバケット23内の積荷(土砂や鉱物等)をダンプトラック100Bに積み込む。なお、この一連の操作を「ライズラン操作」という。
【0022】
積み込み作業が終わると、ホイールローダ1は、図2の矢印Y2で示すように、元の場所に後退する。このように、ホイールローダ1は、地山100Aとダンプトラック100Bとの間でV形状に往復走行し、掘削作業及び積み込み作業を行う。
【0023】
次に、ホイールローダ1の駆動システムについて、実施形態ごとに説明する。
【0024】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るホイールローダ1の駆動システムについて、図4~16を参照して説明する。
【0025】
(走行駆動システムについて)
まず、ホイールローダ1の走行駆動システムについて、図4~7を参照して説明する。
【0026】
図4は、本実施形態に係るホイールローダ1の油圧回路及び電気回路を示す図である。図5は、アクセルペダル踏込量と目標エンジン回転速度との関係を示すグラフである。図6(a)は、エンジン3の回転数とHSTポンプ41の押し退け容積との関係を示すグラフ、図6(b)は、エンジン3の回転数とHSTポンプ41の入力トルクとの関係を示すグラフ、図6(c)は、エンジン3の回転数とHSTポンプ41の吐出流量との関係を示すグラフである。図7は、速度段ごとの車速と駆動力との関係を示すグラフである。
【0027】
本実施形態に係るホイールローダ1は、HST式走行駆動システムによって車体の走行が制御されており、図4に示すように、エンジン3と、エンジン3により駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプとしてのHSTポンプ41と、HSTポンプ41を制御するための圧油を補給するHSTチャージポンプ41Aと、HSTポンプ41と閉回路状に接続された走行用油圧モータとしてのHSTモータ42と、HSTポンプ41及びHSTモータ42を制御するコントローラ5と、を備えている。
【0028】
HSTポンプ41は、傾転角に応じて押し退け容積が制御される斜板式あるいは斜軸式の油圧ポンプである。傾転角は、コントローラ5から出力された指令信号にしたがってポンプ用レギュレータ410により調整される。
【0029】
HSTモータ42は、傾転角に応じて押し退け容積が制御される斜板式あるいは斜軸式の油圧モータである。傾転角は、HSTポンプ41の場合と同様に、コントローラ5から出力された指令信号にしたがってモータ用レギュレータ420により調整される。
【0030】
HST式走行駆動システムでは、まず、運転室12に設けられたアクセルペダル61をオペレータが踏み込むとエンジン3が回転し、エンジン3の駆動力によりHSTポンプ41が駆動する。そして、HSTポンプ41から吐出した圧油によりHSTモータ42が回転し、HSTモータ42からの出力トルクがアクスル15を介して前輪11A及び後輪11Bに伝達されることにより、ホイールローダ1が走行する。
【0031】
具体的には、図4に示すように、踏込量検出器610によって検出されたアクセルペダル61の踏込量がコントローラ5に入力され、コントローラ5からエンジン3へ目標エンジン回転速度が指令信号として出力される。エンジン3は、この目標エンジン回転速度にしたがって回転数が制御される。図4に示すように、エンジン3の回転速度は、エンジン3の出力軸に設けられたエンジン回転速度センサ71で検出する。
【0032】
図5に示すように、アクセルペダル61の踏込量と目標エンジン回転速度とは比例関係にあり、アクセルペダル61の踏込量が大きくなると目標エンジン回転速度は速くなる。
【0033】
なお、図5において、アクセルペダル61の踏込量0%~20あるいは30%の範囲では、目標エンジン回転速度は、アクセルペダル61の踏込量にかかわらず最低目標エンジン回転速度Vminで一定となっている。また、アクセルペダル61の踏込量70あるいは80%~100%の範囲では、目標エンジン回転速度は、アクセルペダル61の踏込量にかかわらず最高目標エンジン回転速度Vmaxで一定となっている。
【0034】
このように、アクセルペダル61の踏込量と目標エンジン回転速度との関係において、アクセルペダル61の踏込量が少ない所定の領域では、目標エンジン回転速度が最低目標エンジン回転速度Vminに維持されるように、アクセルペダル61の踏込量が多い所定の領域では、目標エンジン回転速度が最高目標エンジン回転速度Vmaxに維持されるように、それぞれ設定されている。なお、これらの設定は、任意に変更可能である。
【0035】
次に、エンジン3とHSTポンプ41との関係は、図6(a)~(c)に示す通りである。
【0036】
図6(a)に示すように、エンジン回転速度がV1からV2までの間では、エンジン3の回転速度とHSTポンプ41の押し退け容積とは比例関係にあり、エンジン3の回転速度がV1からV2になるまで速くなるにつれて(V1<V2)、押し退け容積は0から所定の値Qcまで大きくなる。エンジン回転速度がV2以上では、HSTポンプ41の押し退け容積は、エンジン回転速度にかかわらず所定の値Qcで一定となる。
【0037】
HSTポンプ41の入力トルクは、押し退け容積に吐出圧力を積算したもの(入力トルク=押し退け容積×吐出圧力)である。図6(b)に示すように、エンジン回転速度がV1からV2までの間では、エンジン3の回転速度とHSTポンプ41の入力トルクとは比例関係にあり、エンジン3の回転速度がV1からV2になるまで速くなるにつれて、入力トルクは0から所定の値Tcまで大きくなる。エンジン回転速度がV2以上では、HSTポンプ41の入力トルクは、エンジン回転速度にかかわらず所定の値Tcで一定となる。
【0038】
図6(c)に示すように、エンジン回転速度がV1からV2までの間では、HSTポンプ41の吐出流量はエンジン3の回転速度の二乗に比例する。エンジン回転速度がV2以上では、エンジン3の回転速度とHSTポンプ41の吐出流量とは一次の比例関係にあり、エンジン3の回転速度が速くなるにつれて吐出流量は増える。
【0039】
したがって、エンジン3の回転速度が速くなるとHSTポンプ41の吐出流量が増え、HSTポンプ41からHSTモータ42に流入する圧油の流量が増えるため、HSTモータ42の回転数が増加し、車速が速くなる。車速は、HSTモータ42の回転速度としてモータ回転速度センサ72で検出する(図4参照)。
【0040】
このように、HST式走行駆動システムでは、HSTポンプ41の吐出流量を連続的に増減させることにより車速を調整(変速)するため、ホイールローダ1は滑らかな発進、及び衝撃の少ない停止が可能となる。なお、必ずしもHSTポンプ41側において吐出流量を調整することで車速を制御する必要はなく、HSTモータ42側において押し退け容積を調整することで車速を制御してもよい。
【0041】
本実施形態では、図4に示すように、最高車速を1~4速度段に選択する速度段スイッチ63が設けられている。この速度段スイッチ63は、ホイールローダ1の前進走行に対して主に使用される。図7に示すように、1速度段では最高車速がS1に、2速度段では最高車速がS2に、3速度段では最高車速がS3に、4速度段では最高車速がS4に、それぞれ設定されている。なお、S1、S2、S3及びS4の間の大小関係は、S1<S2<S3<S4である。図7では、速度段毎の最高車速と駆動力との関係を示している。
【0042】
また、1~4速度段のうち、1速度段及び2速度段が「低速度段」に、3速度段及び4速度段が「中~高速度段」に、それぞれ相当する。この「低速度段」は、積込作業においてホイールローダ1がダンプトラック100Bに向かって走行する場合(図2において矢印Y1で示す場合)、すなわちライズラン操作時に選択され、最高車速は例えば9~15km/時に設定されている。
【0043】
ホイールローダ1の進行方向、すなわち前進又は後進の選択は、運転室12に設けられた前後進切換スイッチ62(図4参照)によって行う。具体的には、オペレータが前後進切換スイッチ62で前進の位置に切り換えると、前進を示す前後進切換信号がコントローラ5に出力され、コントローラ5はトランスミッションの前進クラッチを係合状態とするための指令信号をトランスミッションに出力する。トランスミッションが前進に係る指令信号を受信すると、前進クラッチが係合状態となり、車体の進行方向が前進に切り換わる。車体の後進についても、同様の仕組みによって切り換わる。
【0044】
(フロント作業機2の駆動システムについて)
次に、フロント作業機2の駆動システムについて、図4及び図8~11を参照して説明する。
【0045】
図8は、リフトアーム21の上げ操作量とパイロット圧との関係を示すグラフである。図9は、スプールのストローク量とパイロット圧との関係を示すグラフである。図10は、スプールのストローク量とスプールの開口面積との関係を示すグラフである。図11は、リフトアーム21の上げ操作量とスプールの開口面積との関係を示すグラフである。
【0046】
図4に示すように、ホイールローダ1は、エンジン3により駆動され、フロント作業機2に作動油を供給する作業機用油圧ポンプ43と、当該作動油を貯蔵する作動油タンク44と、リフトアーム21を操作するためのリフトアーム操作レバー210と、バケット23を操作するためのバケット操作レバー230と、作業機用油圧ポンプ43からリフトアームシリンダ22及びバケットシリンダ24にそれぞれ供給される圧油の流れを制御するコントロールバルブ64と、を備える。
【0047】
作業機用油圧ポンプ43は、本実施形態では、固定式の油圧ポンプが用いられている。作業機用油圧ポンプ43からの吐出圧は圧力検出器(不図示)で検出され、検出された吐出圧に係る信号がコントローラ5へ出力される。
【0048】
オペレータがリフトアーム21を上げる方向にリフトアーム操作レバー210を操作すると、図8に示すように、その操作量に比例したパイロット圧が生成される。なお、図8において、リフトアーム21の上げ操作量0~20%の範囲では、パイロット圧は生成されず0%で一定となっている(不感帯)。また、リフトアーム21の上げ操作量85~100%の範囲では、パイロット圧は、リフトアーム21の上げ操作量にかかわらず100%で一定となり、フルレバー操作状態で維持されている。これらの範囲については、任意に設定変更可能である。
【0049】
リフトアーム21の上げ操作量(リフトアーム21の上げ操作に係るリフトアーム操作レバー210の操作量)は、操作量検出器73で検出される。本実施形態では、図8に示すようなリフトアーム21の上げ操作量とパイロット圧との比例関係から、操作量検出器73は、リフトアーム21の上げ操作量としてパイロット圧を検出している。
【0050】
リフトアーム操作レバー210によるリフトアーム21の上げ操作に応じて生成されたパイロット圧は、コントロールバルブ64に作用し、コントロールバルブ64内のスプールが当該パイロット圧に比例してストロークする。
【0051】
なお、図9に示すように、コントロールバルブ64内のスプールは、コントロールバルブ64に対して20~30%程度のパイロット圧が作用してもストロークしないように設定されている。また、スプールのストローク量が80~100%の範囲では、コントロールバルブ64に作用しているパイロット圧は100%で一定となるように設定されている。これらの範囲についても、任意に設定変更可能である。
【0052】
そして、図10に示すように、コントロールバルブ64内においてスプールがストロークすると、作業機用油圧ポンプ43とリフトアームシリンダ22とを接続する管路が当該ストローク量に比例した開口面積で開く。なお、スプールのストローク量とスプールの開口面積との関係においても、スプールのストローク量が少ない所定の範囲には不感帯が設けられ、スプールのストローク量が多い所定の範囲ではフルストローク状態が維持される。
【0053】
作業機用油圧ポンプ43とリフトアームシリンダ22とを接続する管路が開くことにより、作業機用油圧ポンプ43から吐出された作動油はコントロールバルブ64を介してリフトアームシリンダ22に流入し、これによりリフトアームシリンダ22のロッド220が伸長する。
【0054】
したがって、図11に示すように、リフトアーム21の上げ操作量とコントロールバルブ64のスプールの開口面積とは比例関係にあり、リフトアーム21の上げ操作量が増えるとスプールの開口面積も大きくなる。したがって、リフトアーム21を上げる方向にリフトアーム操作レバー210を大きく操作すると、リフトアームシリンダ22へ流入する作動油量が多くなり、ロッド220が速く伸長する。
【0055】
また、リフトアーム21の上げ操作量とコントロールバルブ64のスプールの開口面積との関係においても、リフトアーム21の上げ操作量が小さい所定の範囲には不感帯が設けられ、リフトアーム21の上げ操作量が大きい所定の範囲ではフル操作状態が維持される。
【0056】
バケット23の操作についても、リフトアーム21の操作と同様に、バケット操作レバー230の操作量に応じて生成されたパイロット圧がコントロールバルブ64に作用することによってコントロールバルブ64のスプールの開口面積が制御され、バケットシリンダ24へ流出入する作動油量が調整される。
【0057】
なお、図4では図示を省略しているが、リフトアーム21の下げ操作量やバケット23のチルト及びダンプ操作量をそれぞれ検出するための操作量(パイロット圧)検出器についても、油圧回路の各管路上に設けられている。
【0058】
(コントローラ5の構成及び機能)
次に、コントローラ5の構成及び機能について、図12~16を参照して説明する。
【0059】
図12は、コントローラ5が有する機能を示す機能ブロック図である。図13は、コントローラ5で実行される処理の流れを示すフローチャートである。図14は、リフトアーム上げ操作に係るパイロット圧TiとHSTモータ42の最小押し退け容積の増加分Qupとの関係を示すグラフである。図15は、走行負荷圧力とHSTモータ42の最小押し退け容積Qminとの関係を示すグラフである。図16は、ホイールローダ1の車速と牽引力との関係を示すグラフである。
【0060】
コントローラ5は、CPU、RAM、ROM、HDD、入力I/F、及び出力I/Fがバスを介して互いに接続されて構成される。そして、前後進切換スイッチ62や速度段スイッチ63といった各種の操作装置、及び踏込量検出器610や操作量検出器73といった各種の検出器等(図4参照)が入力I/Fに接続され、HSTポンプ41のポンプ用レギュレータ410やHSTモータ42のモータ用レギュレータ420等が出力I/Fに接続されている。
【0061】
このようなハードウェア構成において、ROMやHDD若しくは光学ディスク等の記録媒体に格納された演算プログラム(ソフトウェア)をCPUが読み出してRAM上に展開し、展開された演算プログラムを実行することにより、演算プログラムとハードウェアとが協働して、コントローラ5の機能を実現する。
【0062】
なお、本実施形態では、コントローラ5の構成をソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにより説明しているが、これに限らず、ホイールローダ1の側で実行される演算プログラムの機能を実現する集積回路を用いて構成してもよい。
【0063】
図12に示すように、コントローラ5は、データ取得部51と、記憶部52と、判定部53と、演算部54と、指令信号出力部55と、を含む。
【0064】
データ取得部51は、前後進切換スイッチ62から出力された前進あるいは後進の前後進切換信号、踏込量検出器610で検出されたアクセルペダル61の踏込量、操作量検出器73で検出されたリフトアーム21の上げ操作量としてのパイロット圧Ti(以下、単に「パイロット圧Ti」とする)、及び速度段スイッチ63から出力された速度段信号に関するデータをそれぞれ取得する。
【0065】
記憶部52は、リフトアーム21の上げ操作に係るパイロット圧に関する第1パイロット閾値T1、第2パイロット閾値T2、及び第3パイロット閾値T3を記憶している。第1パイロット閾値T1及び第2パイロット閾値T2はそれぞれ、リフトアーム21が水平姿勢よりも上方向に上がっている状態のパイロット圧であり、第2パイロット閾値T2は第1パイロット閾値T1よりも大きい値に設定されている(T1<T2)。例えば、本実施形態では、第1パイロット閾値T1は70%(T1=70%)、第2パイロット閾値T2は85%(T2=85%)である。なお、第1パイロット閾値T1は、リフトアーム21が上げ操作を行っている状況において、少なくともリフトアーム21が水平姿勢をとった時のパイロット圧であればよい。第3パイロット閾値T3は、リフトアーム21が上方向に上がりきった時のパイロット圧、すなわち100%である(T3=100%)。
【0066】
判定部53は、データ取得部51で取得された前後進切換信号及びアクセルペダル61の踏込量に基づいて、ホイールローダ1が前進走行中であるか否かを判定すると共に、データ取得部51で取得されたパイロット圧Tiに基づいて、リフトアーム21が上げ動作中であるか否かを判定する。以下、ホイールローダ1の前進走行中におけるリフトアーム21の上方向への動作を特定するための条件を「特定条件」とし、この「特定条件」を満たす場合とは、前述したライズラン操作を行っている場合である。
【0067】
ここで、前後進切換スイッチ62及び踏込量検出器610はそれぞれ、ホイールローダ1の車体の走行状態を検出する走行状態検出器の一態様である。なお、本実施形態では、前後進切換スイッチ62から出力された前進を示す前後進切換信号、及び踏込量検出器610で検出されたアクセルペダル61の踏込量によって車体の前進走行を判定しているが、これに限らず、車体に搭載された他の複数の走行状態検出器で検出された各走行状態を踏まえて総合的に車体の前進走行を判定してもよい。
【0068】
本実施形態では、判定部53は、特定条件を満たすと判定された場合(ライズラン操作中)に、データ取得部51で取得されたパイロット圧Ti、及び記憶部52から読み出した第1~第3パイロット閾値T1,T2,T3に基づいて、パイロット圧Tiと第1~第3パイロット閾値T1,T2,T3との大小関係を判定する。また、判定部53は、データ取得部51で取得された速度段信号に基づいて、低速度段が選択されているか否かを判定する。
【0069】
演算部54は、判定部53で特定条件を満たすと判定された場合(ライズラン操作中)に、HSTモータ42の最小押し退け容積Qminを演算する。なお、演算部54は、必ずしもHSTモータ42の最小押し退け容積Qminを演算する必要はなく、代わりにHSTポンプ41の最大押し退け容積Qmaxを演算してもよい。
【0070】
指令信号出力部55は、演算部54で演算されたHSTモータ42の最小押し退け容積Qminにしたがった指令信号をモータ用レギュレータ420に出力する。なお、演算部54でHSTポンプ41の最大押し退け容積Qmaxを演算した場合には、指令信号出力部55は、HSTポンプ41の最大押し退け容積Qmaxにしたがった指令信号をポンプ用レギュレータ410に出力する。
【0071】
次に、コントローラ5内で実行される具体的な処理の流れについて説明する。
【0072】
図13に示すように、まず、データ取得部51は、前後進切換スイッチ62からの前後進切換信号、踏込量検出器610からのアクセルペダル61の踏込量、及び操作量検出器73からのパイロット圧Tiをそれぞれ取得する(ステップS501)。
【0073】
次に、判定部53は、ステップS501において取得した各データに基づいて、ホイールローダ1が前進走行をしているか否かを判定すると共に、リフトアーム21が上げ動作を行っているか否かを判定する(ステップS502)。すなわち、ステップ502において、特定条件を満たすか否かを判定する。
【0074】
ステップS502において特定条件を満たすと判定された場合(ステップS502/YES)、データ取得部51は、速度段スイッチ63から速度段信号を取得する(ステップS503)。一方、ステップS502において特定条件を満たさないと判定された場合(ステップS502/NO)、コントローラ5における処理が終了する。
【0075】
判定部53は、ステップS503で取得した速度段信号に基づいて、速度段が低速度段であるか否かを判定する(ステップS504)。ステップS504において速度段が低速度段であると判定された場合(ステップS504/YES)、ステップS501で取得したパイロット圧Tiと、記憶部52から読み出した第1パイロット閾値T1及び第2パイロット閾値T2との大小関係を判定する。具体的には、判定部53は、パイロット圧Tiが第1パイロット閾値T1以上であり、かつ第2パイロット閾値T2よりも小さいか否かを判定する(ステップS506)。
【0076】
ステップS506においてパイロット圧Tiが第1パイロット閾値T1以上であり、かつ第2パイロット閾値T2よりも小さい(T1≦Ti<T2)と判定された場合(ステップS506/YES)、演算部54は、パイロット圧TiとHSTモータ42の最小押し退け容積の増加分Qupとが比例関係になるように、HSTモータ42の最小押し退け容積Qminを演算する(ステップS507)。
【0077】
そして、指令信号出力部55は、ステップS507で演算されたHSTモータ42の最小押し退け容積Qminにしたがった指令信号をモータ用レギュレータ420に出力する(ステップS510)。
【0078】
図14に示すように、パイロット圧Tiが第1パイロット閾値T1(T1=70%)から第2パイロット閾値T2(T2=85%)までの間では(70%≦Ti<85%)、パイロット圧Tiが大きくなるにつれて、HSTモータ42の最小押し退け容積の増加分Qupが所定の値Qup1まで大きくなる(0<Qup1)ように、コントローラ5は、HSTモータ42の最小押し退け容積Qminを大きくし、車速を制限(減速)する。したがって、本実施形態では、パイロット圧Tiが第1パイロット閾値T1になって初めて、コントローラ5は車速を制限するための処理を実行する。
【0079】
一方、ステップS506においてパイロット圧Tiが第1パイロット閾値T1以上であり、かつ第2パイロット閾値T2よりも小さい(T1≦Ti<T2)と判定されなかった場合(ステップS506/NO)、判定部53は、さらにパイロット圧Tiが第2パイロット閾値T2以上であり、かつ第3パイロット閾値T3よりも小さいか否かを判定する(ステップS508)。
【0080】
ステップS508においてパイロット圧Tiが第2パイロット閾値T2以上であり、かつ第3パイロット閾値T3よりも小さい(T2≦Ti<T3)と判定された場合(ステップS508/YES)、演算部54は、パイロット圧Tiの増加に関係なく、HSTモータ42の最小押し退け容積の増加分Qupが所定の値Qup1に維持されるように、HSTモータ42の最小押し退け容積Qminを演算する(ステップS509)。
【0081】
そして、指令信号出力部55は、ステップS509で演算されたHSTモータ42の最小押し退け容積Qminにしたがった指令信号をモータ用レギュレータ420に出力する(ステップS510)。
【0082】
図14に示すように、パイロット圧Tiが第2パイロット閾値T2(T2=85%)から第3パイロット閾値T3(T3=100%)までの間では(85%≦Ti<100%)、パイロット圧Tiの増加に関係なく、HSTモータ42の最小押し退け容積の増加分Qupが所定の値Qup1に維持されるように、コントローラ5は、HSTモータ42の最小押し退け容積Qminを大きくし、車速を制限(減速)する。
【0083】
以上のように、ステップS502において特定条件を満たす(ライズラン操作中)と判定された場合(ステップS502/YES)、図15に示すように、HSTモータ42の最小押し退け容積QminをQmin1からQmin2へと増やすことにより(Qmin1→Qmin2、Qmin2>Qmin1)、図16に示すように、ホイールローダ1の車速がSmax1からSmax2へと制限される(Smax1→Smax2、Smax2<Smax1)。
【0084】
したがって、特定条件を満たす場合、すなわちライズラン操作中において、リフトアーム21の上げ動作速度に対して車速に制限をかけることにより、ホイールローダ1からダンプトラック100Bまでの走行距離(図2において実線で示したホイールローダ1から破線で示したホイールローダ1までの距離)を、車速に制限をかけない場合と比べて短くすることができる。
【0085】
なぜならば、リフトアーム21の上げ動作速度に対して車速に制限をかけない場合にはリフトアーム21が上方向に上がりきる前にホイールローダ1がダンプトラック100Bの手前に到着してしまう可能性があり、この場合には走行距離を長くとる必要がある。しかしながら、コントローラ5でリフトアーム21の上げ動作の速度に対して車速を制限(減速)することにより、短い走行距離でもリフトアーム21が上がりきるからである。これにより、Vシェープローディングにおける作業のサイクルタイムが短縮して作業効率が良くなると共に、ホイールローダ1の燃費も向上する。
【0086】
また、特定条件を満たすか否かを判定する際に、操作量検出器73で検出されたパイロット圧Tiを用いてリフトアーム21の上げ動作の有無を判定しているため、リフトアームシリンダ22のボトム圧を検出する場合と比べて、リフトアーム21の上げ動作の誤判定を低減することが可能となり、車速の急な変化が抑制される。リフトアーム操作レバー210の操作によって生成したパイロット圧を用いる場合は、リフトアームシリンダ22のボトム圧を用いる場合と異なり、リフトアーム21の上げ動作を直接的に検出することができるため、バケット23内の荷や車体の振動等による圧力変動の影響が少ないからである。
【0087】
さらに、本実施形態では、ライズラン操作の後半、少なくともリフトアーム21が水平姿勢時から上方向に上がりきるまでの間(図14では、パイロット圧Tiが70~100%の間)に限り、コントローラ5により車速に制限をかけているため、リフトアーム21の上げ操作量が多いほど車速が遅くなるというオペレータの感覚と一致しやすく、オペレータの違和感を低減することができる。
【0088】
また、パイロット圧Tiが70~85%の間は(T1≦Ti<T2)、パイロット圧Tiが大きくなるにつれて、HSTモータ42の最小押し退け容積の増加分Qupが徐々に大きくなるため、滑らかに車速が制限され、急な減速に伴う車体やオペレータへの振動や衝撃をより抑制することができる。
【0089】
ステップS508においてパイロット圧Tiが第2パイロット閾値T2以上であり、かつ第3パイロット閾値T3よりも小さい(T2≦Ti<T3)と判定されなかった場合(ステップS508/NO)、すなわちリフトアーム21が大きく上げ動作されなかった場合(Ti<T1)、又はライズラン操作が終了した場合(Ti=T3)、コントローラ5における処理が終了する。
【0090】
ステップS510において指令信号出力部55がモータ用レギュレータ420に指令信号を出力した後は、ステップS501に戻り、処理を繰り返す。
【0091】
本実施形態では、ステップS504において速度段が低速度段でなかった場合(ステップS504/NO)、ステップS503に戻り、速度段が低速度段になるまでHSTモータ42の最小押し退け容積Qminを制御して車速を制限する処理(ステップS506以降の処理)に進まないこととしている。ライズラン操作を行うにあたっては低速度段(特に、図7における2速度段)が適しており、低速度段が選択されている場合に限って車速に制限をかけることが望ましいからである。
【0092】
なお、コントローラ5は、ステップS503及びステップS504を省略して、選択された速度段の種類に関係なくHSTモータ42の最小押し退け容積Qminを制御してもよい。
【0093】
また、本実施形態では、ホイールローダ1は、図12に示すように、調整装置65を備えている。この調整装置65は、パイロット圧Tiに対するHSTモータ42の最小押し退け容積Qminの変化率をオペレータが任意に調整するものである。コントローラ5は、調整装置65によって予め設定された変化率を記憶部52に記憶しておき、記憶された変化率にしたがって演算部54がHSTモータ42の最小押し退け容積Qminを演算する。
【0094】
例えば、車速の制限をあまりかけたくない場合には、図14及び図16において一点鎖線で示すように、パイロット圧Tiに対するHSTモータ42の最小押し退け容積の増加分Qupの変化率が小さくなるように調整装置65で設定する。反対に、車速の制限を大きくかけたい場合には、図14及び図16において二点鎖線で示すように、パイロット圧Tiに対するHSTモータ42の最小押し退け容積の増加分Qupの変化率が大きくなるように調整装置65で設定する。
【0095】
このように、ホイールローダ1に調整装置65を設けることにより、オペレータの好みや現場の環境等に合わせて、車速の制限を任意に調整することが可能となり、利便性が向上する。
【0096】
なお、本実施形態では、HSTモータ42の最小押し退け容積Qminを大きくすることにより車速を制限していたが、これに限らず、HSTポンプ41の最大押し退け容積を小さくすることにより車速を制限してもよい。
【0097】
この場合、図13に示すステップS507では、演算部54は、パイロット圧Tiの増加につれてHSTポンプ41の最大押し退け容積の減少分Qdownが0から所定の値Qdown1まで大きくなるように(0<Qdown1)、HSTポンプ41の最大押し退け容積Qmaxを演算する。また、ステップS509では、演算部54は、パイロット圧Tiの増加に関係なくHSTポンプ41の最大押し退け容積の減少分Qdownが所定の値Qdown1に維持されるように、HSTポンプ41の最大押し退け容積Qmaxを演算する。
【0098】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るホイールローダ1について、図17~20を参照して説明する。図17~20において、第1実施形態に係るホイールローダ1について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0099】
図17は、第2実施形態に係るホイールローダ1の油圧回路及び電気回路を示す図である。図18は、第2実施形態に係るコントローラ5Aが有する機能を示す機能ブロック図である。図19は、第2実施形態に係るコントローラ5Aで実行される処理の流れを示すフローチャートである。図20は、作業機用油圧ポンプ43の吐出圧PaとHSTモータの最小押し退け容積の増加分Qupとの関係を示すグラフである。
【0100】
本実施形態に係るホイールローダ1は、図17に示すように、作業機用油圧ポンプ43の吐出圧を検出する圧力検出器74をさらに備えている。なお、本実施形態における走行駆動システムは、第1実施形態と同様に、HST式の走行駆動システムである。
【0101】
図18及び図19に示すように、本実施形態に係るコントローラ5Aでは、データ取得部51Aは、前後進切換スイッチ62から出力された前後進切換信号、踏込量検出器610で検出された踏込量、操作量検出器73で検出されたパイロット圧Ti、及び速度段スイッチ63から出力された速度段信号に加えて、圧力検出器74から出力された作業機用油圧ポンプ43の吐出圧Paに関するデータを取得する(ステップS501A)。
【0102】
次に、ステップS502において、判定部53Aは、特定条件を満たすか否かを判定する。このとき、判定部53Aは、操作量検出器73で検出されたパイロット圧Tiに加えて、圧力検出器74で検出された作業機用油圧ポンプ43の吐出圧Paに基づき、リフトアーム21が上げ動作を行っているか否かを判定する。
【0103】
このように、リフトアーム21の上げ動作を判定するにあたって、パイロット圧Ti及び作業機用油圧ポンプ43の吐出圧Paを用いることにより、パイロット圧Tiのみを用いてリフトアーム21の上げ動作の判定を行う場合と比べて、リフトアーム21の上げ操作の誤判定をより低減することが可能となる。
【0104】
記憶部52Aは、積荷が入った状態のバケット23をリフトアーム21が持ち上げる際に必要となる作業機用油圧ポンプ43の吐出圧に関する第1ポンプ閾値P1、第2ポンプ閾値P2、及び第3ポンプ閾値P3を記憶している。第1ポンプ閾値P1は、リフトアーム21が荷の入った状態のバケット23を上方に持ち上げる操作を開始する時の作業機用油圧ポンプ43の吐出圧である。第2ポンプ閾値P2は、当該リフトアーム21が水平姿勢をとった時の作業機用油圧ポンプ43の吐出圧である。第3ポンプ閾値P3は、当該リフトアーム21が上方向に上がりきった時の作業機用油圧ポンプ43の吐出圧、すなわちリリーフ圧である。
【0105】
判定部53Aは、ステップS501Aで取得した吐出圧Paと、記憶部52Aから読み出した第1ポンプ閾値P1及び第2ポンプ閾値P2との大小関係を判定する。具体的には、判定部53Aは、吐出圧Paが第1ポンプ閾値P1以上であり、かつ第2ポンプ閾値P2よりも小さいか否かを判定する(ステップS506A)。
【0106】
ステップS506Aにおいて吐出圧Paが第1ポンプ閾値P1以上であり、かつ第2ポンプ閾値P2よりも小さい(P1≦Pa<P2)と判定された場合(ステップS506A/YES)、演算部54Aは、作業機用油圧ポンプ43の吐出圧PaとHSTモータ42の最小押し退け容積の増加分Qupとが比例関係になるように、HSTモータ42の最小押し退け容積Qminを演算する(ステップS507A)。
【0107】
そして、指令信号出力部55Aは、ステップS507Aで演算されたHSTモータ42の最小押し退け容積Qminにしたがった指令信号をモータ用レギュレータ420に出力する(ステップS510A)。
【0108】
図20に示すように、リフトアーム21の上げ操作開始時(第1ポンプ閾値P1)からリフトアーム21が水平姿勢をとる(第2ポンプ閾値P2)までの間では、作業機用油圧ポンプ43の吐出圧Paが大きくなるにつれて、HSTモータ42の最小押し退け容積の増加分Qupが所定の値Qup2まで大きくなる(0<Qup1)ように、コントローラ5Aは、HSTモータ42の最小押し退け容積Qminを大きくし、車速を制限(減速)する。
【0109】
一方、ステップS506Aにおいて吐出圧Paが第1ポンプ閾値P1以上であり、かつ第2ポンプ閾値P2よりも小さい(P1≦Pa<P2)と判定されなかった場合(ステップS506A/NO)、判定部53Aは、さらに吐出圧Paが第2ポンプ閾値P2以上であり、かつ第3ポンプ閾値P3よりも小さいか否かを判定する(ステップS508A)。
【0110】
ステップS508Aにおいて吐出圧Paが第2ポンプ閾値P2以上であり、かつ第3ポンプ閾値P3よりも小さい(P2≦Pa<P3)と判定された場合(ステップS508A/YES)、演算部54Aは、吐出圧Paの増加に関係なく、HSTモータ42の最小押し退け容積の増加分Qupが所定の値Qup2に維持されるように、HSTモータ42の最小押し退け容積Qminを演算する(ステップS509A)。
【0111】
そして、指令信号出力部55Aは、ステップS509Aで演算されたHSTモータ42の最小押し退け容積Qminにしたがった指令信号をモータ用レギュレータ420に出力する(ステップS510A)。
【0112】
図20に示すように、リフトアーム21の水平姿勢時(第2ポンプ閾値P2)からリフトアーム21が上方向に上がりきる(第3ポンプ閾値P3)までの間では、作業機用油圧ポンプ43の吐出圧Paの増加に関係なく、HSTモータ42の最小押し退け容積の増加分Qupが所定の値Qup2に維持されるように、コントローラ5Aは、HSTモータ42の最小押し退け容積Qminを大きくし、車速を制限(減速)する。
【0113】
このように、コントローラ5Aは、特定条件を満たす場合に、作業機用油圧ポンプ43の吐出圧Paの増加に応じてHSTモータ42の最小押し退け容積(又はHSTポンプ41の最大押し退け容積)を制御して車速を制限してもよい。なお、この際、作業機用油圧ポンプ43の吐出圧Paに限らず、作業機用油圧ポンプ43の入力トルクの増加に応じて車速を制限してもよい。
【0114】
また、コントローラ5Aは、圧力検出器74で検出した作業機用油圧ポンプ43の吐出圧Pa(作業機用油圧ポンプ43の入力トルク)に基づいて車速を制限していたが、これに限らず、所定の設定時間内の平均吐出圧Pav(平均入力トルク)に基づいて車速を制限してもよい。この場合、車体に瞬間的に大きな振動や衝突等が発生して検出値が変動しても、平均値を用いることにより安定した車速制限を行うことが可能となる。
【0115】
本実施形態では、ライズラン操作の前半、すなわちリフトアーム21の上げ操作開始時からリフトアーム21が水平姿勢をとるまでの間において、作業機用油圧ポンプ43の吐出圧Paが大きくなるにつれて、HSTモータ42の最小押し退け容積の増加分Qupが徐々に大きくなるように、コントローラ5AがHSTモータ42の最小押し退け容積を制御している。これにより、滑らかに車速が制限され、急な減速に伴う車体やオペレータへの振動や衝撃を抑制することができる。
【0116】
また、図18に示すように、本実施形態に係るホイールローダ1は、第1実施形態と同様に、作業機用油圧ポンプ43の吐出圧Paに対するHSTモータ42の最小押し退け容積Qminの変化率を調整することが可能な調整装置65Aを備えていてもよい。これにより、図20において一点鎖線や二点鎖線で示すように、オペレータの好みや現場の環境等に合わせて、車速の制限を任意に調整することが可能となる。
【0117】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係るホイールローダ1について、図21を参照して説明する。図21において、第1及び第2実施形態に係るホイールローダ1について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0118】
図21は、第3実施形態に係るホイールローダ1の油圧回路及び電気回路を示す図である。
【0119】
本実施形態に係るホイールローダ1は、HMT式走行駆動システムによって車体の走行が制御されている。このHMT式走行駆動システムでは、HSTポンプ41及びHSTモータ42が閉回路状に接続されたHST4と、機械伝動部80と、を備えており、エンジン3の駆動力が遊星歯車機構81を経由してHST4及び機械伝動部80へパラレルに伝達される。
【0120】
遊星歯車機構81は、入力軸82に固定されたサンギア811と、サンギア811の外周に歯合された複数のプラネタリギア812と、複数のプラネタリギア812をそれぞれ軸支する遊星キャリア813と、複数のプラネタリギア812の外周に歯合されたリングギア814と、リングギア814の外周に歯合されたポンプ入力ギア815と、を有している。
【0121】
エンジン3の出力トルクは、前進用油圧クラッチ83A、後進用油圧クラッチ83B、及びクラッチシャフト83Cを有するクラッチ装置83を経由して入力軸82に伝達され、入力軸82から遊星歯車機構81に伝達される。
【0122】
ここで、遊星歯車機構81の遊星キャリア813は出力軸84に固定されており、これにより、エンジン3の駆動力が機械伝動部80に伝達される。機械伝動部80に伝達されたエンジン3の駆動力は、出力軸84に接続されたプロペラシャフト85を介してアクスル15に伝達され、これにより前輪11A及び後輪11Bが駆動される。
【0123】
また、遊星歯車機構81のポンプ入力ギア815はHSTポンプ41の回転軸に固定されており、エンジン3の駆動力がHST4にも伝達される。HSTモータ42の回転軸には、モータ出力ギア86が固定されており、モータ出力ギア86は、出力軸84のギア840に歯合している。したがって、HST4に伝達されたエンジン3の駆動力についても、出力軸84に接続されたプロペラシャフト85を介してアクスル15に伝達され、これにより、前輪11A及び後輪11Bが駆動される。
【0124】
このように、HST4と機械伝動部80とを組み合わせて変速機を構成することにより、第1実施形態で説明したHST式走行駆動システムよりも伝達効率を高めることができる。なお、図14では、遊星歯車機構81からの出力をHST4へ入力する入力分割型のHMT式走行駆動システムを示しているが、これに限らず、HST4からの出力を遊星歯車機構81に入力する出力分割型のHMT式走行駆動システムであってもよい。
【0125】
本実施形態においても、第1及び第2実施形態と同様に、コントローラ5は、特定条件を満たす場合に、リフトアーム21の上げ操作量(パイロット圧)の増加、又は作業機用油圧ポンプ43の吐出圧の増加に応じて、HSTモータ42の最小押し退け容積Qminを大きくすることにより車速を制限する。これにより、第1及び第2実施形態で記載した作用及び効果と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0126】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態に係るホイールローダ1について、図22を参照して説明する。図22において、第1~第3実施形態に係るホイールローダ1について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0127】
図22は、第4実施形態に係るホイールローダ1の油圧回路及び電気回路を示す図である。
【0128】
本実施形態に係るホイールローダ1は、EMT式走行駆動システムによって車体の走行が制御されている。このEMT式走行駆動システムでは、前述したHMT式走行駆動システムにおいて、HSTポンプ41に代えて発電機91が、HSTモータ42に代えて電動モータ92が、それぞれ設けられている。
【0129】
本実施形態では、コントローラは、特定条件を満たす場合に、リフトアーム21の上げ操作量(パイロット圧)の増加、又は作業機用油圧ポンプ43の吐出圧の増加に応じて、電動モータ92の回転数を減少させて車速を制限する。なお、電動モータ92の回転数は、電動モータ92への電流値又は電圧値を変化させることにより制御する。本実施形態においても、第1及び第2実施形態で記載した作用及び効果と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0130】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0131】
例えば、上記実施形態では、リフトアーム21が大きく上げ動作をしていない場合(例えば、リフトアーム21が水平姿勢よりも下方に位置している場合)、コントローラ5,5Aは車速を制限する処理を終了することとしているが、必ずしもその必要はなく、少なくとも特定条件を満たしていればコントローラ5,5Aは車速を制限する処理を行う。
【符号の説明】
【0132】
1:ホイールローダ
2:フロント作業機
3:エンジン
5,5A:コントローラ
11A:前輪
11B:後輪
21:リフトアーム
41:HSTポンプ(走行用油圧ポンプ)
42:HSTモータ(走行用油圧モータ)
43:作業機用油圧ポンプ
62:前後進切換スイッチ(走行状態検出器)
63:速度段スイッチ
65,65A:調整装置
73:操作量検出器
74:圧力検出器
91:発電機
92:電動モータ
100B:ダンプトラック
610:踏込量検出器(走行状態検出器)
図1
図2
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