(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】二構成要素ピストンを製造する方法、二構成要素ピストンのための射出成形金型、二構成要素ピストン、及びカートリッジ
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20220314BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20220314BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/16
B29C45/26
(21)【出願番号】P 2020534360
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2018084963
(87)【国際公開番号】W WO2019121398
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-06-29
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510199605
【氏名又は名称】ズルツァー ミクスパック アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Sulzer Mixpac AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オブリスト、マンフレット
(72)【発明者】
【氏名】サイラー、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ブルナー、レナート
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02998030(EP,A1)
【文献】特表2006-502896(JP,A)
【文献】特開平01-085665(JP,A)
【文献】中国実用新案第202236714(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0208939(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二構成要素ピストン(16)を製造する方法であって、
前記二構成要素ピストン(16)は、第1構成要素としてのピストン・カバー(30)と、第2構成要素としてのピストン・ボディ(28)とを有しており、前記ピストン・カバー(30)は前記ピストン・ボディ(28)に隣接して配置され、且つ前記ピストン・ボディ(28)に対して移動させられるように構成されており、また
- 前記ピストン・カバー(30)を形成するステップと、次いで、
- 前記ピストン・カバー(30)のところに前記ピストン・ボディ(28)を形成するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記ピストン・ボディ(28)は前記ピストン・カバー(30)のところに解放不可能に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ピストン・カバーはアパーチャ(64’)を有し、前記ピストン・ボディ(28)は、前記ピストン・カバー(30)のところで前記ピストン・ボディ(28)を形成中に形成されるウェブ(62’)を有し、それにより、前記ピストン・ボディ(28)の材料の前記ウェブ(62’)が前記アパーチャ(64’)を通って延びる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ピストン・カバー(30)は前方側(50)及び後方側(48)を有し、前記後方側(48)は前記ピストン・ボディ(28)に隣接して配置され、前記ピストン・カバー(30)は、前記ピストン・カバー(30)の前記前方側のところに存在する位置から開始して形成される、請求項1から3までの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ピストン・カバー(30)は中央領域(42)を有し、また前記ピストン・カバー(30)は、前記中央領域(42)のところに存在する位置から開始して形成される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ピストン・ボディ(28)は、第1の側(32)、第2の側(68)、及び前記
第1の側(32)と前記
第2の側(68)の間において前記ピストン・ボディ(28)の周りで周囲に延びる壁(57)を有し、前記ピストン・ボディ(28)は前記壁(57)のところに存在する位置から開始して形成される、請求項1から5までの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項7】
前記壁(57)は凹部(58)を有し、前記ピストン・ボディ(28)は、前記凹部(58)のところに存在する位置から開始して形成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ピストン・ボディ(28)は、前記ピストン・ボディ(28)と前記ピストン・カバー(30)との間に存在する解放不可能な接続によって前記ピストン・カバー(30)のところに解放不可能に形成され、前記解放不可能な接続は、前記ピストン・カバー(30)の取り付け部分(64)を通って延びるように形成された前記ピストン・ボディ(28)の一部分(62)によってもたらされる、請求項2に記載の、及び任意選択で請求項4から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ピストン・ボディ(28)を形成するステップが完了した後、前記取り付け部分(64)は少なくとも部分的
に前記ピストン・ボディ(28)内に受け入れられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記取り付け部分(64)を通って延びる前記ピストン・ボディ(28)の前記
一部分(62)は、前記取り付け部分(64)を通って延びる材料のウェブ(62’)によって形成される、請求項
8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記材料のウェブ(62’)は前記取り付け部分(64)のアパーチャ(64’)を通って延び、前記材料のウェブ(64)は、前記ピストン・ボディ(28)の2つのセクションに解放不可能に接続される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ピストン・カバー(30)及び前記ピストン・ボディ(28)の少なくとも一方が射出成形プロセスで形成される、請求項1から11までの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ピストン・ボディ(28)及び前記ピストン・カバー(30)が異なる材料から形成される、請求項1から12までの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項12
、又は
請求項12に従属する請求項13に記載の方法であって、
前記ピストン・カバー(30)及び前記ピストン・ボディ(28)は前記射出成形プロセスによって射出成形金型(90)内において形成され、また
- 前記ピストン・カバー(30)を第1の金型(92)内に形成するステップと;
- 前記ピストン・カバー(30)を少なくとも部分的に、また好適には完全に硬化させた後、前記射出成形金型(90)から、前記ピストン・カバー(30)の後方側(48)に特有の前記第1の金型(92)の部分を任意選択で取り外すステップと;
- 前記ピストン・ボディ(28)のための第2の金型(96)の一部分として前記ピストン・カバー(30)を使用するステップと
を含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
- 前記第2の金型(96)の一部として前記射出成形金型(90)内に前記ピストン・カバー(30)を維持するステップ;又は
- 前記ピストン・カバー(30)を前記第2の金型(96)内に導入するステップ;
- 任意選択で、前記ピストン・ボディ(28)に特有の前記第2の金型のさらなる部分を導入するステップ;
- 任意選択で、前記ピストン・ボディ(28)に特有の前記第2の金型(96)の前記さらなる部分を、前記ピストン・カバー(30)に対して配置するステップ;
- 前記第2の金型(96)内で前記ピストン・ボディ(28)を形成するステップ;
- 前記第2の金型(96)内で前記ピストン・ボディ(28)を少なくとも部分的に、好適には完全に硬化させるステップ;及び
- 前記第2の金型(96)から前記二構成要素ピストン(16)を取り外すステップ
をさらに含む方法。
【請求項16】
前記ピストン・カバー(30)のための射出成形材料のための射出の第1のポイントが、前記ピストン・カバー(30)の前方側(50)を成形するように構成された前記第1の金型(92)の一部分のところにある、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記ピストン・カバー(30)は、前記前方側(50)のところに中央領域(42)を有するように形成され、前記射出の第1のポイントは、前記中央領域(42)のクラウン(74)を成形するように構成された前記第1の金型(92)の一部分のところに存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ピストン・ボディ(28)は、前記ピストン(16)の第1の側(32)から前記ピストン(16)の第2の側(68)まで延びる外側壁(57)を有するように形成され、前記第2の金型(96)は、前記ピストン・ボディ(28)の前記外側壁(57)のために構成された前記第2の金型(96)の一部分の一領域内に存在する前記ピストン・ボディ(28)のための射出成形材料のための射出の第2のポイントを有する、請求項15から17まで少なくとも一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ピストン・ボディ(28)の前記外側壁(57)は凹部(58)を有し、前記射出の第2のポイントは、前記凹部(58)のために構成された前記第2の金型(96)の前記一部分の近傍に存在する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
二構成要素ピストン(16)のための射出成形金型(90)であって、
前記二構成要素ピストン(16)は、第1構成要素としてのピストン・カバー(30)と、第2構成要素としてのピストン・ボディ(28)とを有し、前記ピストン・カバーは前記ピストン・ボディ(28)に隣接して配置され、前記射出成形金型(90)は、前記ピストン・カバー(30)のための第1の金型(92)を有し、前記第1の金型は、前記ピストン・カバー(30)のための射出成形材料のための射出の第1のポイントを形成する第1の射出チャンネル(94)を有し、前記射出の第1のポイントは、前記ピストン・カバー(30)の前方側(50)を成形するための前記第1の金型(92)の一部分のところに存在し、前記射出成形金型(90)は、前記ピストン・ボディ(28)のための第2の金型(96)をさらに有し、前記ピストン・カバー(30)が前記第2の金型(96)の一部分を形成する、射出成形金型(90)。
【請求項21】
前記第2の金型(96)は、前記ピストン・ボディ(28)のための前記射出成形材料のための射出の第2のポイントを形成する第2の射出チャンネル(98)を有し、前記射出の第2のポイントは、前記ピストン・ボディ(28)の外側壁(57)のための前記第2の金型(96)の一部分の一領域内に存在する、請求項20に記載の射出成形金型。
【請求項22】
前記二構成要素ピストン(16)は、前記第1構成要素としての前記ピストン・カバー(30)と、前記第2構成要素としての前記ピストン・ボディ(28)とを有し、前記ピストン・カバー(30)は、前記ピストン・ボディ(28)に対して移動させられるように構成され、前記ピストン・カバー(30)は前記ピストン・ボディ(28)に解放不可能に接続され、前記ピストン・ボディ(28)と前記ピストン・カバー(30)の間の前記解放不可能な接続は、前記ピストン・カバー(30)の取り付け部分(64)を通って延びる前記ピストン・ボディ(28)の一部分(62)によってもたらされる、請求項1から19までの少なくとも一項に記載の方法により入手可能である、或いは請求項20又は21に記載の射出成形金型(90)内に入手可能であるカートリッジ(10)のための二構成要素ピストン(16)。
【請求項23】
出口(12)と、少なくとも1つのチャンバ(14、14a、14b)と、請求項14に記載の少なくとも1つのピストン(16)とを有するカートリッジ(10)であって、1つのピストン(16)が前記少なくとも1つのチャンバ(14、14a、14b)の各々の中に配置され、前記カートリッジ(10)は、好適には、前記少なくとも1つのチャンバ(14、14a、14b)の各々の中に配置されるそれぞれの流動性マス(M、M’)をさらに有している、カートリッジ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二構成要素ピストンを作る方法に関し、二構成要素ピストンは第1構成要素としてのピストン・カバーと、第2構成要素としてのピストン・ボディとを有し、ピストン・カバーはピストン・ボディに隣接して配置され、ピストン・ボディを基準として移動させられるように構成される。本発明はさらに、二構成要素ピストンのための射出成形金型(injection mold)と、二構成要素ピストンと、カートリッジとに関する。
【背景技術】
【0002】
カートリッジからマス(mass)を分配するための多種多様な手法が従来技術において知られている。マスはいわゆる一成分マスであり、これは、UV光若しくは熱などの外部エネルギー源により、又は適用位置の周囲に存在する例えば湿気などにより引き起こされる化学反応によって例えば硬化する単一成分材料を意味する。1つの成分材料の典型的な応用例は、例えば歯科の分野において、又は例として窓とコンクリート要素などの製品とを接合するために若しくは異なる構成要素の間に密閉を提供するために建築工業において見ることができる。
【0003】
別の既知の種類のマスは多成分マスである。分配されることになる材料は、通常、マトリックス材料及び硬化剤である。充填済みカートリッジは、各数字が、分配されることになる2つの材料の各々の量の比を表す、1:1、2:1、4:1、及び10:1などとして示される多様な比で提供される。これらの多様な比の目的は、多種多様な異なる構成物を混合して分配するのを可能にすることである。例えば、一部の構成物はより多くの硬化剤を必要とし、一部の構成物はより少ない硬化剤を必要とする。また、一部の構成物はより多くの混合を必要とする。カートリッジから出るときに構成物を混合するように適合される混合先端部が従来技術から知られている。
【0004】
二成分材料は、通常、例えば歯科印象の形成における印象材として、補綴修復のためのセメント材料として、試適用合着修復のための又は合着仮歯のための仮着用セメントとして、歯科の分野で使用される。建設工業には二成分材料の別の用途があり、ここでは、二成分材料が、例えば、経時的に腐食する機械継手の代用品として使用される。窓とコンクリート要素などとの製品を接合するのに接着接合が利用され得る。例えば、湿気バリア、腐食防止、及びすべり止めコーティングの形態で、保護コーティングとして多成分材料を使用することはますます一般的になりつつある。使用され得る流動性材料の例は、例えば、商品名AFFINIS(登録商標)を使用するColtene社、又は商品名PermaCemを使用するDMG社により流通されている。一成分材料及び多成分材料は非常に高価であることが多いことから、カートリッジ及び材料が、1回使用のためだけではなく、例えば、数日、数週間、又はさらには数ヶ月といったような長い期間にわたって複数回使用され得るように設計される場合に特に、これらの材料の保管寿命を延ばすことが所望される。
【0005】
成分の保管時間を延ばすことを目的として、充填されることになるカートリッジは、中に保管されるマスと反応しない材料から作られる必要がある。また、カートリッジはクリーンである必要があり、つまりカートリッジは、特に単一成分のマスの保管に関連する場合、水残留物などを一切含むべきではない。カートリッジを充填するとき、カートリッジは通常、既にカートリッジ内に配置されるピストンを用いて、カートリッジの出口を介して充填され、又は、カートリッジは、ピストンの据え付けの前にピストンを通常受けるところである端部から充填される。いずれの場合も、空気が、ピストンと、中に保管される材料との間に捕捉される可能性がある。この空気はカートリッジ内に存在する材料の反応を引き起こし、それによってカートリッジ内に存在する材料の保管寿命を短縮する可能性がある。
【0006】
また、ピストン・ボディから分離されるピストン・カバーを備える二構成要素ピストンの製造時、ピストンを使用するときに問題に直面する場合がある。
【0007】
これらの問題のうちの一部はピストン・カバーがピストン・ボディに不十分に取り付けられることを原因として生じ、これによりピストン・カバーとピストン・ボディとの間の密閉が不十分となる。密閉が不十分であると、空気がカートリッジの中に達するのを可能にし、それによってカートリッジの中で保管される成分の寿命を短縮する可能性がある。
【0008】
また、ピストンは、通常、射出成形プロセスで形成される。ピストン・カバー及び/又はピストン・ボディの成形中、スプルー・マークが射出成形材料の射出のポイントのところに残る。射出成形金型の製造を簡単にするために、これらの射出のポイントはピストンの一方側に存在し、つまりバルブにアクセス可能である側に存在する。ピストン・カバーの場合、これは、スプルー・マークがバルブ・ピンの端部の領域内に存在することを意味し、ピストン・ボディについては、このスプルー・マークはカートリッジ内でピストンを駆動するのに使用されるプランジャの取り付け領域に存在する。これらのスプルー・マークはもちろんサイズが多様であってよく、それらのサイズ及び向きによっては、バルブ・ピンの動作に干渉する可能性がある(つまり、ピンをピストン・カバーの後方側に押し当てる)。
【0009】
バルブ・ピンが正確に動作しない場合、充填後にピストン・カバーの領域内でカートリッジの中に存在する残留空気は充填済みカートリッジから正確に放出できない。この残留空気も、カートリッジの中に保管される成分の寿命を短縮する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記を考慮して、本発明の目的は、ピストンを製造する改善された方法を提供することであり、得られるピストンは、充填済みカートリッジの中で保管される材料の保管寿命を改善するのを促進する。本発明の別の目的は、ピストンを製造する改善された方法を提供することであり、得られるピストンは従来技術と比較して使用を改善される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的が請求項1に記載の方法によって満たされる。
【0012】
二構成要素ピストンが、第1構成要素としてのピストン・カバーと、第2構成要素としてのピストン・ボディとを備え、ピストン・カバーがピストン・ボディに隣接するように配置され、ピストン・ボディを基準として移動させられるように構成される、二構成要素ピストンを製造するそのような方法が:
- ピストン・カバーを形成するステップ、次いで、
- ピストン・カバーのところにピストン・ボディを形成するステップ
を含む。
【0013】
最初にピストン・カバーを形成することにより、ピストン・カバーは、例えば、ピストン・ボディのための金型として使用され得、それにより、ピストン・ボディのところでのピストン・カバーの取り付けが改善させることが保証される。ピストン・ボディはピストン・カバーのところに、好適には直接に形成されることから、ピストン・カバーをピストン・ボディに取り付けることに関連する問題が回避され得る。
【0014】
好適には、ピストン・ボディはピストン・ボディのところに解放(取り外し)不可能に形成される。ピストン・ボディをピストン・カバーのところに解放不可能な手法で形成することにより、ピストン・ボディに対してのピストン・カバーの取り付けが改善され、ピストン・ボディのところのピストン・カバーの取り付けに関連する問題が回避され得る。
【0015】
このようにして、ピストンは利用可能となり、それにより、カートリッジの中に保管される成分の保管寿命はさらに改善され得る。
【0016】
ピストン・カバーはアパーチャを備え、ピストン・ボディは、ピストン・カバーのところにピストン・ボディを形成する間に形成されるウェブを備え、その結果、ピストン・ボディの材料のウェブはアパーチャを通って延在することになる。このようにして、ピストン・ボディを形成することにおいて、ピストン・ボディのところでピストン・カバーを高い信頼性で取り付けることが保証される。
【0017】
有利には、ピストン・カバーは前方側及び後方側を有し、後方側はピストン・ボディに隣接して配置され、ここでは、ピストン・カバーはピストン・カバーの前方側に存在する位置から形成され、好適にはここでは、ピストン・カバーは中央領域を有し、ここでは、ピストン・カバーは中央領域のところに存在する位置から形成される。
【0018】
ピストンの前方側からピストン・カバーを形成することは、ピストン・カバーの前方側のところにスプルー・マークを有するピストン・カバーが得られることを意味する。結果として、このようなピストンは、エア抜きアクションに干渉する可能性があるバルブ・ピンのところにスプルー・マークを備えない。前方側にスプルー・マークを有するピストンは、従来技術のピストンよりも効率的に放出(エア抜き)が行われ得る。
【0019】
ピストン・ボディは、前方端部及び後方端部、並びに前方端部と後方端部との間においてピストン・ボディの周りを周方向に延在する壁を有し、ピストン・ボディは、壁に存在する位置から形成される場合が好適であり、好適にはここでは、壁は凹部を有し、ピストン・ボディは凹部のところに存在する位置から形成される。
【0020】
したがって、二構成要素ピストンを製造する方法では、ピストン・カバーのための及びピストン・ボディのためのスプルー・マークが従来技術の成形と比較して移動させられる。従来技術のプロセスでは、プラスチックはピンの底部から射出され、このピンの底部は、(ピンを材料側の方向に押し込むことにより)バルブを動作させる位置でもある。そこに形成されるスプルー・マークのサイズを最小にするためには、スプルー・マークを制御下で維持するように十分な注意が払われなければならなかった。これには、かなり高価であるホット・ランナーのためのニードル・バルブの使用が必要であった。二構成要素ピストンを作る本方法ではこのようなニードル・バルブの使用は回避され得る。
【0021】
好適には、ピストン・ボディは、ピストン・ボディとピストン・カバーとの間に存在する解放不可能な接続によりピストン・カバーのところに解放不可能に形成され、ここでは、解放不可能な接続は、ピストン・カバーの取り付け部分を通って延在するように形成されるピストン・ボディの一部分によりもたらされる。ピストン・カバーの取り付け部分を通って突出するようにピストン・ボディの一部分を形成することにより、ピストン・カバーとピストン・ボディとの間の接続を改善することが達成され、それによりピストン・ボディのところにピストン・カバーを正確に取り付けることが保証される。
【0022】
解放不可能な接続のデザインにより、ピストン・ボディに対してピストン・カバーを取り付けることは改善され、ピストン・ボディのところにピストン・カバーを取り付けることに関連する問題が回避され得る。
【0023】
このようにして、ピストンが利用可能となり、それにより、カートリッジの中に保管される成分の保管寿命がさらに改善され得る。
【0024】
有利には、ピストン・ボディを形成するステップが完了した後、取り付け部分がピストン・ボディ内に少なくとも部分的に、また好適には全体として、受けられる。ピストン・ボディの中に受けられるように取り付け部分を形成することは、ピストンの使用においてピストン・カバーの前方側に干渉しないことを意味する。
【0025】
取り付け部分を通って延在するピストン・ボディの部分が、取り付け部分を通って延在し好適には取り付け部分のアパーチャを通って延在する材料のウェブによって形成される場合に好適であり、材料のウェブはピストン・ボディの2つのセクションに解放不可能に接続される。このタイプのデザインにより、製造が簡単で使用において高効率である解放不可能な接続をコンパクトな形で実現することが保証される。さらに、アパーチャを使用することにより、ピストン・ボディの一部分がピストン・カバーを通って延在することが可能となり、したがってピストン・ボディに対してピストン・カバーを取り付けることが容易になる。
【0026】
好適には、ピストン・カバー及びピストン・ボディの少なくとも一方が射出形成プロセスで形成される。射出形成プロセスはコスト効率が高く、小型部品の大量生産に適する。
【0027】
二構成要素ピストンが有利に使用される。その理由は、これにより、1つには、第1の側と充填済みカートリッジの中に保存される材料との間においてピストンの第1の側のところに存在する空気の放出が可能となるからである。
【0028】
有利には、ピストン・ボディ及びピストン・カバーが異なる材料から形成され、その結果、ピストン・ボディ及びピストン・カバーが各構成要素の固有の使用に合うように調整され得る。例えば、ピストン・カバーは、ピストン・ボディの材料より硬い、且つカートリッジの中に保管される成分と反応しにくい材料から作られ得る。これはピストンの寿命を延ばすことができ、したがってピストンの中に保管される成分の保管寿命を延ばすことができる。同時に、例えばシーリング・リップを備えるピストン・ボディがPE(ポリエチレン)などの柔らかい材料から作られ得、それにより、使用される材料のおかげでピストンとカートリッジ壁との間の密閉が高い信頼性で保証される。
【0029】
ピストン・カバー及びピストン・ボディが射出形成プロセスによって射出成形金型の中に形成される場合が好適であり、この方法は:
- 第1の金型の中でピストン・カバーを形成するステップと;
- ピストン・キャビティを少なくとも部分的にまた好適には完全に硬化させた後で、射出成形金型から、ピストン・カバーの後方側に固有の第1の金型の一部分を任意選択で取り外すステップと;
- ピストン・ボディのための第2の金型の一部分としてピストン・カバーを使用するステップと
を含む。これらは、コスト効率の高い容易で迅速な手法でピストン・カバー及びそれぞれのピストンを形成することを目的として実行され得る有利なステップである。
【0030】
有利には、この方法は:
- 第2の金型の一部分として、射出形成金型の中にピストン・カバーを維持するステップ;又は
- ピストン・カバーを第2の金型の中に導入するステップ
- 任意選択で、ピストン・ボディに固有の第2の金型の別の部分を導入するステップ;
- 任意選択で、ピストン・カバーを基準として、ピストン・ボディに固有の第2の金型の別の部分を配置するステップ;
- 第2の金型の中でピストン・ボディを形成するステップ;
- 第2の金型の中でピストン・ボディを少なくとも部分的に、好適には完全に硬化させるステップ;及び
- 第2の金型から二構成要素ピストンを取り外すステップと
をさらに含む。これらは、コスト効率の高い容易で迅速な手法でピストン・カバーのところのピストン・ボディひいてはピストンを形成することを目的として実行され得る有利なステップである。
【0031】
ピストン・カバーのための射出成形材料のための射出の第1のポイントが、ピストン・カバーの前方側を成形するように構成される第1の金型の一部分のところに存在する場合が好適である。ピストン・カバーの後方側のところではなくピストン・カバーの前方側のところに射出成形材料を射出することは、後方側にはスプルー・マークが形成されないことを意味する。
【0032】
有利には、ピストン・カバーが前方側のところに中央領域を有するように形成され、射出の第1のポイントが、中央領域のクラウンつまり中心部を成形するように構成される第1の金型の一部分のところに存在する。ピストン・カバーの中心部また具体的には幾何学的中心部からピストン・カバーを射出成形することにより、射出成形材料が、高品質なピストン・カバーの形成を保証する一様な形でこの中心部から広がることができるため、ピストン・カバーが一様に形成されることが保証される。
【0033】
好適には、ピストン・ボディがピストンの第1の側からピストンの第2の側まで延在する外側横方向壁を有するように形成され、第2の金型が、ピストン・ボディの外側横方向壁のために構成される第2の金型の一部分の領域内に存在するピストン・ボディのための射出成形材料のための射出の第2のポイントを備え、好適には、ここでは、ピストン・ボディの外側横方向壁が凹部を備え、射出の第2のポイントが、凹部のために構成される第2の金型の部分の近傍に存在する。このようにして、ピストン・ボディのスプルー・マークは従来技術のピストンのスプルー・マークから修正され、カートリッジから材料を分配するためにプランジャと相互作用するように構成されるピストン・ボディの第2の側の領域内に存在しない。
【0034】
別の態様では、本発明は二構成要素ピストンのための射出成形金型に関連し、この二構成要素ピストンは第1構成要素としてピストン・カバー及び第2構成要素としてピストン・ボディを備え、ピストン・カバーはピストン・ボディに隣接するように配置され、射出成形金型はピストン・カバーのための第1の金型を備え、第1の金型は、ピストン・カバーのための射出成形材料のための射出の第1のポイントを形成する第1の射出チャンネルを有し、射出の第1のポイントは、ピストン・カバーの前方側を成形するための第1の金型の一部分のところに存在し、射出成形はピストン・ボディのための第2の金型をさらに備え、ピストン・カバーは第2の金型の一部分を形成する。
【0035】
従来技術の金型では、プラスチックはバルブ・ピンの底部から射出され、このバルブ・ピンの底部は、バルブを動作させる(バルブ・ピンを材料側の方向に押し込むことにより)位置でもある。そこに形成されるスプルー・マークのサイズを最小にするためには、スプルー・マークを制御下で維持するように十分な注意が払われなければならなかった。これには、かなり高価であるポット・ランナーのためのニードル・バルブの使用が必要であった。したがって、本発明による射出成形金型は、ニードル・バルブを必要としないことから、よりコスト効率の高い手法で作られ得る。さらに、スプルー・マークを制御下で維持するのに必要となる注意が低減されることで、不良品の数が低減され得、したがって射出成形金型がピストンのそれぞれのピストン・カバーをより経済的に製造するのに使用され得る。
【0036】
有利には、第2の金型は、ピストン・ボディのための射出成形材料のための射出の第2のポイントを備え、射出の第2のポイントは、ピストン・ボディの外側横方向壁のための第2の金型の一部分の領域内に存在する。
【0037】
したがって、二構成要素ピストンを製造するのに使用される金型では、ピストン・カバーのための及びピストン・ボディのためのスプルー・マークは従来技術の金型と比較して移動させられることになり、つまりピストンのバルブの動作に干渉しない位置まで移動させられる。
【0038】
別の態様によると、本発明は、本明細書で提示される教示による方法により、又は本明細書で提示される教示による射出成形金型により得られるカートリッジのための二構成要素ピストンに関連し、二構成要素ピストンは第1構成要素としてのピストン・カバー及び第2構成要素としてのピストン・ボディを備え、ここでは、ピストン・カバーはピストン・ボディを基準として移動させられるように構成され、ここでは、ピストン・カバーはピストン・ボディに解放不可能に接続され、ピストン・ボディとピストン・カバーとの間の解放不可能な接続は、ピストン・カバーの取り付け部分を通って延在するピストン・ボディの一部分によって形成される。
【0039】
ピストン・カバーの取り付け部分を通って突出するようにピストン・ボディの一部分を形成することにより、ピストン・カバーとピストン・ボディとの間の接続を改善することが達成され、それによりピストン・ボディのところにピストン・カバーを正確に取り付けることが保証される。
【0040】
解放不可能な接続のデザインにより、ピストン・ボディに対してピストン・カバーを取り付けることが改善され、ピストン・ボディのところにピストン・カバーを取り付けることに関連する問題が回避され得る。
【0041】
このようにして、ピストンが利用可能となり、それにより、カートリッジの中で保管される成分の保管寿命がさらに改善され得る。
【0042】
二構成要素ピストンが有利に使用される。その理由は、第1の側と充填済みカートリッジの中に保存される材料との間においてピストンの第1の側のところに存在する空気の放出が可能となるからである。
【0043】
別の態様によると、本発明は、出口と、少なくとも1つのチャンバと、本明細書で提示される教示による少なくとも1つのピストンとを備えるカートリッジに関連し、1つのピストンは少なくとも1つのチャンバの各々の中に配置され、カートリッジは、好適には、少なくとも1つのチャンバの各々の中に配置されるそれぞれの流動性マスをさらに備える。
【0044】
カートリッジ内で、本明細書で考察されるピストンを使用するというのは、カートリッジのチャンバの中に存在する成分の保管寿命を延ばすために、チャンバの中に存在する成分とピストンとの間でチャンバの中に存在する空気を取り除くことができることを保証するような改善された形でカートリッジに対して放出を行うことができることを意味する。
【0045】
カートリッジが少なくとも1つのチャンバの各々の中に配置されるそれぞれの流動性マスを備える場合が好適である。一般的な分配システムは、2.5ml、5ml、10ml、20ml、50ml及び100ml、500ml、並びに2500mlを含めたボリューム範囲から選択される流動性マスのためのボリュームを有し、このボリュームはカートリッジの両方のチャンバのために組み合わされるボリュームである。したがって、好適な実施例では、分配システムが1から2500mlの、より好適には1から500mlの、範囲内のボリュームを有する。
【0046】
以下で、図面を参照して実施例により本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】カートリッジの実施例の構成要素を示す分解図である。
【
図2】カートリッジの別の実施例の構成要素を示す別の分解図である。
【
図5a】ピストン・カバーを示す第1の側面図である。
【
図5b】
図5aのピストン・カバーを示す第2の側面図である。
【
図5c】
図5aのピストン・カバーを示す上面図である。
【
図6a】射出成形ツールの第1の金型を示す概略断面図である。
【
図6b】射出成形ツールの第2の金型を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下で、同じ又は同様の機能を有する特徴を、同じ参照符号を使用して説明する。また、特に明記しない限り、一実施例で使用される参照符号に関連して与えられる説明が他の実施例に関連する同じ参照符号にも適用される。
【0049】
図1はカートリッジ10の第1の実施例を示す。カートリッジ10は、出口12と、2つのチャンバ14a、14bと、2つのピストン16a、16bとを備える。カートリッジ10の出口12がキャップ機構18の使用を介して密閉される。キャップ機構18は、密閉プラグ24に係合されるサークリップ(スナップリング)22によってカートリッジ10に固定されるキャップ20を備える。出口12は密閉プラグ24の使用を介して密閉される。
図1に示されるカートリッジ10はいわゆる1:1のカートリッジ10である。
【0050】
図2はカートリッジ10の別の実施例を示す。
図1の実施例とは異なり、
図2のカートリッジ10はいわゆる4:1のカートリッジ10を示す。これは、第1のチャンバ14bの中で保管され得る材料Mのボリュームが、第2のチャンバ14aの中で保管され得る材料M’のボリュームの4倍であることを意味する。
【0051】
図1及び
図2のカートリッジ10の間の別の違いはクロージャ・キャップ26である。
図2のクロージャ・キャップ26は、当技術分野でよく知られているいわゆるバイオネット(バヨネット)手段又はデバイス27によってカートリッジ10のところで固定される。他の種類のクロージャ・キャップ(図示せず)も出口12をカートリッジ10から密閉するのに使用され得る。
【0052】
カートリッジ10の特定の使用に応じて及び/又は上記カートリッジ10を使用して分配されることになる材料に応じて、クロージャ・キャップ26、キャップ機構18、並びに
図1及び
図2に示されるカートリッジ10の比は任意に組み合わされ得る。
図2のカートリッジのチャンバ14a、14bのボリュームが異なることから、外径、つまりチャンバ14a、14b内で採用されるピストン16a、16bのサイズは、
図2から明らかなように、やはり異なっている。
【0053】
図3はピストン16の概略図を示す。ピストン16は、概略円筒形状のピストン・ボディ28及びピストン・カバー30を備える。ピストン・カバー30がピストン16の第1の側32の少なくともかなりの部分を覆う。ピストン・ボディ28が、第1の側32のところで円周方向に延在する面取りリップ34aの形態のセンタリング部分34をさらに備える。リップ34aが、通気(エア抜き)手段36aとして、中に設けられる3つの通気スロット36を有し、それにより、ピストン16がカートリッジ10の中に据え付けられて通気プロセス(venting process)が実行された後でリップ34aとカートリッジ(図示せず)のチャンバ壁との間に存在する空気を放出するのを可能にする。
【0054】
密閉リップ38は密閉手段38aとして面取りリップ34aの下に配置される。密閉リップ38は、空気などが密閉リップ38を介してカートリッジ10に入る又はカートリッジ10から出るのを防止するためにカートリッジ10とピストン16との間の密閉を保証するように設けられる。見ることができるように、密閉リップ38はセンタリング部分34に隣接する。
【0055】
さらに、通気スロット36の境界部は、好適には、センタリング部分34に隣接する密閉リップ38の境界部に直接に隣接する。これにより、センタリング・リップ34とカートリッジ壁との間の空間から高い信頼性で空気を放出するのを可能にするように通気手段36aが配置されることが保証される。示される図では、通気スロット36は、その断面が概略U形の谷の形態を有する。一般的に言うと、V形の谷、又はセンタリング部分を通って延在する単純な貫通孔などの、任意の他の種類の形状が、通気スロット36に選択され得る。
【0056】
ピストン16をカートリッジ10の中に挿入するとき、センタリング部分34は、ピストン16をカートリッジの中に挿入するときにダメージから密閉リップ38を保護するためのセンタリング補助装置として機能し、ひいては漏洩を回避するのを補助することに加えて、スクレーパとしても機能してそれによりカートリッジ壁に近いエリアからカートリッジ壁のところに存在する材料及び任意の粒子を掃除するのを補助する(当然、これは、材料が粒子を含む場合のみである)。
【0057】
これに関連して、ピストン・カバー30は、通常、ピストン・ボディ28の材料とは異なる材料から作られる。ピストン・カバー30の材料には、例えば、PE又はPBTが含まれてよく;ピストン・ボディ28の材料には例えばPA(ポリアミド)又はHDPEが含まれてよい。二構成要素ピストン16の好適な実施例では、ピストン・カバー30がPBTを備え、ピストン・ボディ28がHDPEを備える。
【0058】
ピストン・カバー30は、プレートの形状を有するとみなされ得る凹形形状の中央領域42を有する。通気溝(図示せず)がピストン・カバー30の前方側50のところに設けられ得、それにより、凹形形状の中央領域42から空気を取り除くことを促進する。この通気溝はピストン・カバー30の中央領域42から延在してよく、さらに、ピストン・カバー30の円周部延在側方部分44に沿って下方に突出してピストン・ボディ28の中に形成される溝46の中に入る。通気溝は側方部分44の全高にわたって溝46の中へ延在する。
【0059】
図4は、ピストン16の長手方向軸Aに一致する
図3の断面線A-Aに沿う、
図3のピストン16を通る断面を示す。ピストン・カバー30はピストン・ボディ28の周縁部延在溝46の中へ延在する。さらに、ピストン・カバー30は、第1の側32のところにある前方側50、及び後方側48を有する。後方側48は、ピストン・ボディ28の第1の側32の形状のかなりの部分に対して相補的である形状を有する。ピストン・カバー30は、ピストン・カバー30とピストン・ボディ28との間に配置されるバルブ54の一部分を形成するいわゆるバルブ・ピン52をさらに有する。バルブ・ピン52の中心はピストン16の長手方向軸Aに一致する。第1の側32のところに、ピストン・ボディ28は、頂端部40’を有する内側壁33と、外側表面40と、バルブ表面40”とを備える。ピストン16の非通気状態において、ピストン・カバー30の後方側48の一部分は内側壁33のところで支持される。
【0060】
ピストン16をカートリッジ10の中に備え付けるとき、バルブ・ピン52が作動させられ得る。それにより、ピストン・カバー30が持ち上げられてピストン・ボディ28から離され、通気チャンネル(図示せず)の中にあってひいてはピストン・カバー30の後方側50とピストン・ボディ28の壁33との間に、つまり、ピストン・カバーと、頂端部40’、外側表面40、及びバルブ表面40”と、の間に空気の流れが存在することを可能にする。これにより、ピストン16の第1の側32のところに存在する残留物を、バルブ54を介してピストン・カバーの前方側50からエア抜きするのを可能にする。
【0061】
バルブ・ピン52を第2の側68から作動させるとき、バルブ・ピン52は長手方向軸Aに沿ってピストン・カバー30の方向に移動させられ、それにより凹形形状の中央領域42を曲げてより浅い凹形にするか又は一部の事例ではさらに凸形にする。それにより、頂端部40’、外側表面40、さらにはバルブ表面40”の領域において、ピストン・カバー30の後方側50とピストン・ボディ28との間に通気チャンネル(図示せず)を形成する。
【0062】
バルブ・ピン52の選択される長さが大きいと、ピストン・カバー30はピストン・ボディ28からさらに持ち上げられ得る。それにより、ピストン16を介してカートリッジ10から放出されることになる空気のために設けられる通気チャンネルの空間が拡大される。図に示されるバルブ・ピン52を使用するのではなく、中空円筒部材(図示せず)などの他の形態のバルブ部材52aが使用され得る。バルブ部材52aは2つの機能を有し、すなわち、放出のためのプランジャと協働すること、及びバルブ54を形成するためにピストン・ボディのバブル表面40”と協働することである。
【0063】
ピストン16は、周縁部を延在する外側壁57によって形成される外側周縁表面56を有し、環状溝46は外側壁57と内側壁33との間に形成される。
【0064】
図4の外側周縁表面56又は外側壁57が実質的に円筒形の外形を有し、第1の側32のところに面取りセンタリング・リップ34を有する。ピストン16の第1の側32から第2の側68まで外側周縁表面56の外面形状に従って、ピストン・ボディ28が、センタリング・リップ34と、密閉リップ38と、第1の凹部58と、第2の側68のところに形成される安定化突出部60とを備える。第1の凹部58が密閉リップ38と安定化突出部60との間に配置される。
【0065】
安定化突出部60がピストン16のところに設けられ、それにより、分配アクション中にカートリッジ壁に沿ってピストン16が移動するときにピストン16を安定させる。これにより、可能な限り一様な形でピストン16がカートリッジ壁に沿って移動することが保証される。
【0066】
さらに、スプルー・マーク78は第1の凹部58の中に存在し、射出成形プロセスにおいてピストン・ボディ28が形成されること、及び対応する金型96(
図6bを参照)のところにある成形材料の射出のポイントが、外側壁57を形成するように設計される金型の領域の中に存在することを示す。
【0067】
ピストン16の第2の側68が中央凹部70をさらに備え、その中に、プランジャ(図示せず)が導入され得、それによりバルブ・ピン52を作動させる。第2の側68は、出口12を介してカートリッジ10内に存在する材料M、M’を分配するためにカートリッジ内でピストン16を移動させるようにさらに作動され得る。
【0068】
プランジャは、分配アクション中にバルブ54に係合されないように設計される。その理由は、そうしないと、分配中、カートリッジ10の中に存在する成分が中央凹部70を介してカートリッジ10から漏洩する可能性があるからである。
【0069】
ピストン・ボディ28は、外側周縁表面56のところに配置されるOリング(図示せず)を備えることができる。このような密閉Oリングは、有利には、1つの用途のみで使用されるのではなく時間を分けて多くの用途で利用されるカートリッジの連続的な密閉を保証するのに使用される。
【0070】
ピストン・カバー30はピストン・ボディ28に解放不可能に接続される。解放不可能な接続は、ピストン・カバー30の取り付け部分64を通って延在するピストン・ボディ28の一部分62によって形成される。ピストン・カバー30は、ピストン・カバー30とピストン・ボディ28との間での解放不可能な接続のための少なくとも2つの取り付け部分64を備える。ピストン・ボディ28は、それぞれの取り付け部分64を通って各々が延在する2つの部分62を備える。取り付け部分64は、長手方向軸Aの両側で互いに向き合うように配置される。取り付け部分64は、少なくとも概略的には、第2の側68の方向に、ピストン・カバー30から突出する。
【0071】
各取り付け部分64はアパーチャ64’(
図5aから5cも参照)を備え、取り付け部分64を通って延在するピストン・ボディ28の部分62は、少なくとも実質的に完全に、アパーチャ64’の内部空間を埋める。
【0072】
本実例では、取り付け部分64を通って延在するピストン・ボディ28の部分62が、取り付け部分64を通って延在する材料のウェブ62’によって形成される。材料のウェブは、取り付け部分64の両側に配置されるピストン・ボディ28の2つのセクションに解放不可能に接続される。ウェブ62’はピストン・ボディと同じ材料から形成される。同様に、取り付け部分64はピストン・カバー30と同じ材料から形成される。
【0073】
取り付け部分64はピストン・カバーと一体に形成され、ピストン・ボディ28の溝46の基部66の領域のところでピストン・カバー30から第2の側68の方向に突出する。取り付け部分64はピストン・ボディの中で完全に受けられる。この目的のために、溝46の基部66が取り付け部分凹部65を備える。ピストン・ボディ28は取り付け部分64の周りでピストン・カバー30に隣接するように形成される。
【0074】
ピストン・カバーの中央領域42はクラウン74を備える。スプルー・マーク76はクラウン74の中心部のところに存在する。このスプルー・マーク76は、ピストン・カバー30が射出成形されたこと、及び対応する金型92(
図6aを参照)での成形材料の射出のポイントがクラウン74の領域内に存在することを示す。
【0075】
図5a~5cはピストン・カバー30の種々の図を示す。見ることができるように、アパーチャ64’は、少なくとも概略的な、長方形形状を有する。アパーチャ64’の寸法は、アパーチャ64’の下側フレーム84(つまり、第2のプラスチックの中に完全に埋設される部分)が、ピストン・ボディ28の周囲外側表面までつまり外側壁57及び凹部70の壁まで概して等しい距離のところに位置するように選択される。下側フレーム84は2つのアーム88を介して取り付け部分64の上側フレーム86に接続される。示される図面では、アーム88の幅が下側フレーム84の高さより大きい。下側フレームの高さはアーム88の幅より大きくてよいか又はアーム88の幅に等しくてもよい。上側フレーム86はピストン・カバー30の下側89のところに一体に形成され、したがってその下側89のところでピストン・カバー30から突出する。
【0076】
ピストン・カバーの側方部分44は、2つの凹部80、80’及び2つのピーク82、82’によって示される波形状を有する。これらの特徴は、下記で考察されるように、ピストン・ボディ28の形成中にピストン・カバー30の握持を保証することを目的として存在する。
【0077】
図6aは、上記で考察される二構成要素ピストン16のための射出成形金型90の概略断面を示す。射出成形金型90はピストン・カバー30のための第1の金型92を備える。第1の金型は、ピストン・カバー30のための射出形成材料のための射出の第1のポイントを形成する第1の射出チャンネル94を有する。第1の射出チャンネル94は、ピストン・カバー30の前方側50の成形のための第1の金型92の一部分のところに存在する。
【0078】
射出成形材料は、第1の射出チャンネル94を介して、ピストン・カバー30の材料のために通常使用されるそれぞれの温度及び圧力で第1の金型92の中に導入される。ピストン・カバー30を成形するとき、スプルー・マーク76はクラウン74のところに存在することになる。
【0079】
図6bに示されるように、射出成形金型90はピストン・ボディ28のための第2の金型96をさらに備える。ピストン16の射出成形中、ピストン・カバーは最初に第1の金型92の中で成形され、次いで、第2の金型96の一部分を形成する。
【0080】
第2の金型96は、ピストン・ボディ28のための成形材料の射出に使用される射出の第2のポイントを形成する第2の射出チャンネル98を備える。射出の第2のポイントは、ピストン・ボディ28の外側周縁壁57のための第2の金型96の一部分の領域内に存在する。
【0081】
したがって、二構成要素ピストンを製造する方法では、ピストン・カバー30のための及びピストン・ボディ28のためのスプルー・マークは従来技術の金型と比較して移動させられる。従来技術のプロセスでは、プラスチックはピンの底部から射出され、このピンの底部は、(ピンを材料側の方向に押し込むことにより)バルブを動作させる位置でもある。そこに形成されるスプルー・マークのサイズを最小にするためには、スプルー・マークを制御下で維持するように十分な注意が払われなければならなかった。これには、かなり高価であるホット・ランナーのためのニードル・バルブの使用が必要であった。
【0082】
この新しい方法でスプルー・マークをピストン・カバーの前方側まで移動させることにより、スプルー・マークの位置は任意の局所的な残留樹脂に関してより重要ではない。したがって、より安価なランナー・システムが使用され得る。これに関連して、スプルーの位置は、ピストン・カバー30の形成のための対称軸により接近する必要があることに留意されたい。
【0083】
また、ピストン・ボディのためのスプルー・マーク78は、従来技術の金型と比較して、第2の側68から外側壁57まで移動させられている。また、これにより、ピストン・ボディ28を製造する方法が単純化される。
【0084】
ピストンを作るとき、二構成要素ピストン16を作る以下の方法が実行される。第1のステップでは、ピストン・カバー30が、第1の射出チャンネル94を介して、第1の金型92の中に射出成形材料を射出することによって形成される。次いで、第2のステップで、ピストン・ボディ28が第2の金型96の中でピストン・カバー30のところに形成される。
【0085】
第1のステップ中、ピストン・カバー30がピストン・カバー30の第1の側50のところに、より具体的にはより具体的には、中央領域42のクラウン74の中心を表す位置のところに、存在する位置から形成される。次いで、この開始位置が、ピストン・カバー30のところに存在するスプルー・マーク76によって画定される。ピストン・カバー30が完全に又は部分的に一定の時間で硬化することが可能となると、ピストン・カバー30の後方側48に固有の(特有の)第1の金型92の部分は射出成形金型90から取り外される。
【0086】
次いで、ピストン・カバー30がピストン・ボディ28のための第2の金型96の一部分として使用される。これは、別の射出成形金型90の中で行われ得るか、又はピストン・カバー30を形成したのと同じ射出成形金型90の中で行われ得る。
【0087】
第2のステップ中、ピストン・ボディ28が、第2の射出チャンネル98を介して、外側壁57のところに存在する位置から、より具体的には外側壁57の凹部58のところに存在する位置から形成される。第2の射出チャンネル98は、スプルー・マーク78を凹部58の中に形成する射出の第2のポイントを形成する。
【0088】
ピストン・カバー30の位置が第2の金型96の中に確保されると、ピストン・ボディ28に固有の第2の金型96の残りの部分は射出成形金型90の中に導入される。その後、ピストン・ボディ28が、射出の第2のポイント96を介してピストン・ボディ28の材料のために通常使用されるそれぞれの温度及び圧力で射出成形材料を第2の金型96の中に導入することによって形成される。その後、ピストン・ボディが、少なくとも部分的に、また好適には完全に、第2の金型96の中で硬化することが可能となり、その後、最終的な二構成要素ピストン16が第2の金型96から取り外されて、カートリッジ10との組み立てのために利用可能となる。
【符号の説明】
【0089】
10 カートリッジ
12 出口
14、14a、14b チャンバ
16、16a、16b ピストン
18 キャップ機構
20 キャップ
22 サークリップ
24 密閉プラグ
26 クロージャ・キャップ
27 バイオネット手段
28 ピストン・ボディ
30 ピストン・カバー
32 第1の側
33 内側壁
34、34a センタリング部分、面取りリップ
36、36a 通気スロット、通気手段
38、38a 密閉リップ、密閉手段
40、40’、40” 外側表面、頂端部、バルブ表面
42 凹形形状の中央領域
44 側方部分
46 溝
48 後方側
50 前方側
52、52 バルブ・ピン、バルブ部材
54 バルブ
56 外側周縁表面
57 外側壁
58 第1の凹部
60 突出部
62、62’ 部分、ウェブ
64、64’ 取り付け部分
65 取り付け部分凹部
66 基部
68 第2の側
70 中央凹部
74 クラウン
76 スプルー・マーク
78 スプルー・マーク
80、80’ 凹部
82、82’ ピーク
84 下側フレーム
86 上側フレーム
88 アーム
89 下側
90 射出成形金型
92 第1の金型
94 第1の射出チャンネル
96 第2の金型
98 第2の射出チャンネル
A 長手方向軸
M、M’ 材料