(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】船舶用電力システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20220316BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20220316BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220316BHJP
B63J 99/00 20090101ALI20220316BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J7/35 K
H02J7/00 P
B63J99/00 A
(21)【出願番号】P 2021023116
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 晃生
(72)【発明者】
【氏名】川崎 修治
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-105197(JP,A)
【文献】特開2015-077820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 7/35
H02J 7/00
B63J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数の交流電力によって駆動される複数の交流負荷が接続され
、主配電盤に設けられた船内電源母線と、
陸上電源に接続可能な電源接続部と、
前記電源接続部と前記船内電源母線との間に設けられた第1の開閉器と、
前記電源接続部に接続された第2の開閉器と、
前記第2の開閉器を介して前記電源接続部に接続され、前記電源接続部から前記第2の開閉器を介して供給される交流電力を直流電力に変換する第1の電力変換器と、
前記第1の電力変換器と前記船内電源母線との間に設けられ、第1の電力変換器から出力される直流電力を交流電力に変換する第2の電力変換器と、
前記第1の電力変換器の直流側端子と前記第2の電力変換器の直流側端子とに充放電制御装置を介して接続された蓄電池と、
を備えた船舶用電力システム。
【請求項2】
所定の周波数の交流電力によって駆動される複数の交流負荷が接続された船内電源母線と、
陸上電源に接続可能な電源接続部と、
前記電源接続部と前記船内電源母線との間に設けられた第1の開閉器と、
前記電源接続部に接続された第2の開閉器と、
前記第2の開閉器を介して前記電源接続部に接続され、前記電源接続部から前記第2の開閉器を介して供給される交流電力を直流電力に変換する第1の電力変換器と、
前記第1の電力変換器と前記船内電源母線との間に設けられ、第1の電力変換器から出力される直流電力を交流電力に変換する第2の電力変換器と、
前記第1の電力変換器の直流側端子と前記第2の電力変換器の直流側端子とに充放電制御装置を介して接続された蓄電池と、
を備え、
前記電源接続部が前記陸上電源に接続されていない場合には、前記第1及び第2の開閉器を開状態とし、前記充放電制御装置を介して前記蓄電池から放電される直流電力を前記第2の電力変換器によって前記所定の周波数の交流電力に変換して前記船内電源母線に供給するよう構成され、
前記交流負荷は第1の交流負荷であり、前記第1の電力変換器と接続され交流電力によって駆動される第2の交流負荷を、さらに備え、
前記電源接続部が前記陸上電源に接続されていない場合に、前記充放電制御装置を介して前記蓄電池から放電される直流電力を前記第1の電力変換器の逆変換動作によって交流電力に変換して前記第2の交流負荷に供給可能に構成された、
船舶用電力システム。
【請求項3】
前記第2の交流負荷は、
前記第1の電力変換器によって可変速駆動されるモータである、
請求項2に記載の船舶用電力システム。
【請求項4】
前記電源接続部が前記陸上電源に接続され、前記陸上電源の周波数が前記所定の周波数と同じ周波数の場合には、前記第1の開閉器を閉状態にして前記陸上電源からの交流電力を前記船内電源母線に供給するとともに、前記陸上電源からの交流電力を前記第1の電力変換器または前記第2の電力変換器によって直流電力に変換して前記充放電制御装置を介して前記蓄電池に供給するよう構成され、
前記電源接続部が前記陸上電源に接続され、前記陸上電源の周波数が前記所定の周波数と異なる周波数の場合には、前記第1の開閉器を開状態、前記第2の開閉器を閉状態にし、前記陸上電源からの交流電力を前記第1の電力変換器によって直流電力に変換して前記充放電制御装置を介して前記蓄電池に供給するとともに、前記第1の電力変換器によって変換される直流電力をさらに前記第2の電力変換器によって前記所定の周波数の交流電力に変換して前記船内電源母線に供給するよう構成された、
請求項1~3のいずれかに記載の船舶用電力システム。
【請求項5】
前記電源接続部が前記陸上電源に接続されたときに、前記陸上電源の周波数を検出する周波数検出器を、さらに備え、
前記周波数検出器で検出される前記陸上電源の周波数が前記所定の周波数と同じであるか否かに応じて前記第1及び第2の開閉器の開閉状態が制御されるよう構成された、
請求項1~4のいずれかに記載の船舶用電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池を搭載した船舶に備えられた船舶用電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、船舶において、地球環境保護の観点等から、船舶の推進エネルギーおよび/または船内負荷電力をまかなうために蓄電池を用いた構成が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、船舶に蓄電池および発電機を搭載し、蓄電池に貯められた電気を推進エネルギーに用いる蓄電池推進システムの構成が記載されている。この蓄電池推進システムでは、船舶が航行時には、蓄電池から放電される直流電力によって船舶の推進器を駆動し、発電機を交流母線に接続して発電機から交流母線に接続された交流負荷に電力を供給するようにしている。そして、船舶が停泊時には、発電機を停止させて交流母船から切り離し、交流母線を陸上電源に接続し、陸上電源からの交流電力を交流母線を介して交流負荷に供給するとともに、交流母線に供給される交流電力を直流電力に変換して蓄電池に供給し、蓄電池を充電するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
船内の交流負荷に使用される電力の周波数は、通常、60Hzである。一方、陸上電源の周波数は、概ね東日本地域が50Hzで、西日本地域が60Hzである。特許文献1に記載された構成において、船内の交流負荷に使用される電力の周波数が60Hzであるとすると、船舶が停泊時に蓄電池を充電する際、陸上電源の周波数が60Hzの場合には、陸上電源から船内の交流負荷に電力を供給することができるが、陸上電源の周波数が50Hzの場合には、陸上電源から船内の交流負荷に電力を供給することができないという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、船内の交流負荷に使用される電力の周波数と陸上電源の周波数とが同じ場合も異なる場合も、陸上電源から船内の蓄電池および交流負荷への電力供給が可能になる船舶用電力システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のある態様に係る船舶用電力システムは、所定の周波数の交流電力によって駆動される複数の交流負荷が接続された船内電源母線と、陸上電源に接続可能な電源接続部と、前記電源接続部と前記船内電源母線との間に設けられた第1の開閉器と、前記電源接続部に接続された第2の開閉器と、前記第2の開閉器を介して前記電源接続部に接続され、前記電源接続部から前記第2の開閉器を介して供給される交流電力を直流電力に変換する第1の電力変換器と、前記第1の電力変換器と前記船内電源母線との間に設けられ、第1の電力変換器から出力される直流電力を交流電力に変換する第2の電力変換器と、前記第1の電力変換器の直流側端子と前記第2の電力変換器の直流側端子とに充放電制御装置を介して接続された蓄電池と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、前記電源接続部が前記陸上電源に接続され、前記陸上電源の周波数が前記所定の周波数と同じ周波数の場合には、前記第1の開閉器を閉状態にして前記陸上電源からの交流電力を前記船内電源母線に供給するとともに、前記第2の開閉器を閉状態にして前記陸上電源からの交流電力を前記第1の電力変換器によって直流電力に変換して前記充放電制御装置を介して前記蓄電池に供給するか、または、前記第2の開閉器を開状態にして前記陸上電源から前記船内電源母線に供給される交流電力を前記第2の電力変換器によって直流電力に変換して前記充放電制御装置を介して前記蓄電池に供給するよう構成することができる。また、前記電源接続部が前記陸上電源に接続され、前記陸上電源の周波数が前記所定の周波数と異なる周波数の場合には、前記第1の開閉器を開状態、前記第2の開閉器を閉状態にし、前記陸上電源からの交流電力を前記第1の電力変換器によって直流電力に変換して前記充放電制御装置を介して前記蓄電池に供給するとともに、前記第1の電力変換器によって変換される直流電力をさらに前記第2の電力変換器によって前記所定の周波数の交流電力に変換して前記船内電源母線に供給するよう構成することができる。したがって、船内の交流負荷に使用される電力の周波数(所定の周波数)と陸上電源の周波数とが同じ場合も異なる場合も、陸上電源から船内の蓄電池および交流負荷への電力供給が可能になる。
【0009】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、所定の周波数と同じ周波数とは、所定の周波数と必ずしも完全一致である必要はなく、所定の周波数に対して±10%の範囲内の周波数も含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上に説明した構成を有し、船内の交流負荷に使用される電力の周波数と陸上電源の周波数とが同じ場合も異なる場合も、陸上電源から船内の蓄電池および交流負荷への電力供給が可能になる船舶用電力システムを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態の船舶用電力システムの一例を示す構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す船舶用電力システムにおいて、陸上電源が接続されていない場合の電力の供給経路を矢印で示した図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す船舶用電力システムにおいて、船内負荷に使用される周波数と同じ周波数の陸上電源が接続されている場合の電力の供給経路を矢印で示した図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す船舶用電力システムにおいて、船内負荷に使用される周波数とは異なる周波数の陸上電源が接続されている場合の電力の供給経路を矢印で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0013】
(実施形態)
図1は、本実施形態の船舶用電力システムの一例を示す構成図である。
この船舶用電力システム1は、
図1において、陸上電源21を除く部分であり、船舶に備えられている。船舶用電力システム1は、船内電源母線2を有する主配電盤P1、バッテリ(蓄電池)3、バッテリ3の充放電盤P2、陸上電源接続用のコネクタ(電源接続部)7、コネクタ7に接続された電源接続切替盤P3、及び、制御装置14等を備えている。
【0014】
船内電源母線2には、複数の船内負荷4が遮断器B1を介して接続されている。船内電源母線2は、60Hzの周波数(所定の周波数)の交流電力が供給される交流母線であり、船内電源母線2から遮断器B1を介して各船内負荷4へ交流電力が供給される。図示された船内負荷4は、60Hzの周波数の交流電力によって駆動される交流負荷であり、船舶に搭載された電気機器等である。なお、船内負荷4の仕様に応じて遮断器B1と船内負荷4との間に変圧器等が設けられていてもよい。また、船内電源母線2に、AC/DC変換器等を介して、船内の直流負荷が接続されていてもよい。
【0015】
バッテリ3の充放電盤P2には、第1の電力変換器であるAC/DCコンバータ11と、第2の電力変換器であるDC/ACコンバータ12と、DC/DCコンバータ13とが設けられている。以下では、交流(AC)が流れる配線(電線)を交流配線といい、直流(DC)が流れる配線(電線)を直流配線という。
【0016】
本例では、AC/DCコンバータ11には双方向AC/DCコンバータが用いられており、AC/DCコンバータ11の交流(AC)側端子には、電源接続切替盤P3を介して陸上電源21からの交流電力を入力するための交流配線L3と、交流モータ6の始動器5へ60Hzの交流電力を出力するための交流配線L4とが接続されている。また、AC/DCコンバータ11の直流(DC)側端子には、直流配線L6を介してDC/ACコンバータ12の直流側端子が接続されている。そして、DC/ACコンバータ12の交流側端子は、交流配線L5を介して船内電源母線2に接続されている。
【0017】
また、直流配線L6は直流配線L7を介してDC/DCコンバータ13の一方の端子と接続され、DC/DCコンバータ13の他方の端子は直流配線L8を介してバッテリ3と接続されている。すなわち、バッテリ3は、DC/DCコンバータ13を介して、AC/DCコンバータ11の直流側端子とDC/ACコンバータ12の直流側端子とに接続されている。DC/DCコンバータ13は、双方向DC/DCコンバータであり、バッテリ3の充放電動作を制御する充放電制御装置として用いられている。バッテリ3には、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等を用いることができる。
【0018】
なお、交流モータ6として、複数のモータが設けられてあってもよい。交流モータ6は、船舶が停泊時には使用されないモータであり、よってコネクタ7が陸上電源21に接続されていないときに使用されるモータである。このような交流モータ6は、例えば、ガスタービンエンジン駆動のウォータジェット推進器を備えた船舶である場合、ガスタービンエンジンの駆動開始時に短時間使用するガスタービンエンジン始動用のモータである。また、交流モータ6は、例えば、船舶を接岸及び離岸する際に使用するバウスラスタ用のモータであってもよい。なお、交流モータ6は、例えば60Hzの周波数(所定の周波数)の交流電力によって駆動される交流負荷(第2の交流負荷)である。
【0019】
電源接続切替盤P3は、交流配線L1でコネクタ7に接続されている。交流配線L1は、電源接続切替盤P3内で2つの交流配線L2,L3に分岐されている。一方の交流配線L2は、電源接続切替盤P3内に設けられた第1の開閉器9及び遮断器B2を介して船内電源母線2に接続されている。他方の交流配線L3は、電源接続切替盤P3内に設けられた第2の開閉器10及び遮断器B3を介してAC/DCコンバータ11の交流側端子に接続されている。
【0020】
電源接続切替盤P3には、コネクタ7が陸上電源21に接続されたときに、交流配線L1に供給される陸上電源21の電力の周波数を検出する周波数検出器8が備えられている。開閉器9,10は、周波数検出器8の出力信号に基づいて、その開閉状態が制御されるようになっている。
【0021】
ここで、コネクタ7が陸上電源21に接続されていないときは、2つの開閉器9,10は開状態(絶縁状態)である。コネクタ7が陸上電源21に接続され、周波数検出器8で検出される陸上電源21の周波数が60Hzの場合には、2つの開閉器9,10は閉状態(導通状態)となる。一方、周波数検出器8で検出される陸上電源21の周波数が60Hzとは異なる場合、例えば50Hzの場合には、第1の開閉器9は開状態を維持し、第2の開閉器10のみが閉状態となる。
【0022】
また、制御装置14は、例えば、マイクロコントローラ等で構成されており、周波数検出器8の出力信号等を入力し、コンバータ11,12,13及び始動器5等に動作指令を出力してこれらを制御する。この制御装置14は、船内の適宜の場所に設けられており、例えば充放電盤P2に設けられていてもよい。
【0023】
次に、
図2~
図4を参照して船舶用電力システム1の動作を説明する。
図2は、
図1に示す船舶用電力システム1において、陸上電源21が接続されていない場合の電力の供給経路を矢印で示した図である。
【0024】
図2に示すように、コネクタ7が陸上電源21に接続されていない場合、周波数検出器8の出力信号は非検出状態となり、2つの開閉器9,10は開状態である。この場合、制御装置14は、DC/DCコンバータ13に放電動作指令を出力し、DC/DCコンバータ13がバッテリ3の直流電力を直流配線L6,L7へ供給する。また、制御装置14は、DC/ACコンバータ12に動作指令を出力し、DC/ACコンバータ12は、DC/DCコンバータ13を介してバッテリ3から供給される直流電力を交流電力に変換し、交流配線L5を介して船内電源母線2へ供給する。つまり、DC/DCコンバータ13を介してバッテリ3から供給される所定電圧(例えば630V)の直流電力が、DC/ACコンバータ12によって60Hz,所定電圧(例えば、AC440V)の交流電力に変換されて船内電源母線2に供給され、船内電源母線2に接続される船内負荷4が駆動可能になる。このようにして、船舶の航行時等には、バッテリ3から船内負荷4への電力の供給が可能になる。
【0025】
また、制御装置14は、例えば船舶の操作盤(図示せず)から交流モータ6の駆動開始信号を入力すると、双方向AC/DCコンバータ11に逆変換動作指令を出力するとともに始動器5に動作指令を出力し、交流モータ6の駆動を開始させる。つまり、交流モータ6の駆動時には、DC/DCコンバータ13を介してバッテリ3から供給される所定電圧(例えば630V)の直流電力が、双方向AC/DCコンバータ11の逆変換動作によって60Hz,所定電圧(例えば、AC440V)の交流電力に変換され、始動器5を介して交流モータ6に供給される。
【0026】
なお、始動器5及び交流モータ6を船内電源母線2に接続するようにしてもよいが、本例のような接続構成とすることで、定格出力(容量)の小さいDC/ACコンバータ12を用いることが可能になるとともに、許容電流の小さい交流配線L5及び船内電源母線2を用いることが可能になる。
【0027】
なお、交流モータ6は、双方向AC/DCコンバータ11の逆変換動作によって可変速駆動(周波数制御)される可変速モータであってもよい。この場合、始動器5は不要である。
【0028】
次に、
図3は、
図1に示す船舶用電力システム1において、船内負荷4に使用される周波数(60Hz)と同じ周波数(同じ周波数)の陸上電源21が接続されている場合の電力の供給経路を矢印で示した図である。この
図3に示す陸上電源21は、周波数が60Hz、所定電圧(例えば、AC440V)の交流電力を供給する電源である。
【0029】
図3に示すように、コネクタ7が60Hzの交流電力を供給する陸上電源21に接続された場合、周波数検出器8で陸上電源21の周波数が60Hzであることが検出され、この出力信号(検出信号)に基づいて2つの開閉器9,10は閉状態となる。
【0030】
この場合、開閉器9が閉状態となることで、陸上電源21から供給される交流電力は、交流配線L1,L2を介して船内電源母線2へ供給される。これにより、船舶の停泊時には、陸上電源21から船内負荷4への電力の供給が可能になる。
【0031】
また、制御装置14は、陸上電源21の周波数が60Hzである旨を示す周波数検出器8の出力信号に基づいて、双方向AC/DCコンバータ11に順変換動作指令を出力するとともにDC/DCコンバータ13に充電動作指令を出力する。これにより、開閉器10が閉状態となり陸上電源21から交流配線L1,L3を介して供給される交流電力は、双方向AC/DCコンバータ11の順変換動作によって所定電圧(例えば630V)の直流電力に変換されて、DC/DCコンバータ13を介してバッテリ3へ供給され、バッテリ3が充電される。このようにして、船舶の停泊時には、陸上電源21からバッテリ3の充電が可能になる。
【0032】
なお、上記のように陸上電源21の周波数が60Hzである場合において、AC/DCコンバータ11が故障した場合には、交流配線L1,L2を介して船内電源母線2へ供給される交流電力を、交流配線L5を介して双方向DC/ACコンバータ12へ入力し、このDC/ACコンバータ12で直流電力に変換し、DC/DCコンバータ13を介してバッテリ3へ供給し、バッテリ3を充電するようにしてもよい。この場合、開閉器10は閉状態とする必要はなく、開状態でもよい。
【0033】
また、上記では、陸上電源21の周波数を、船内負荷4に使用される周波数(60Hz)と同じ周波数としたが、この同じ周波数とは、船内負荷4に使用される周波数(60Hz)と必ずしも完全一致である必要はなく、±10%の範囲内の周波数も含む。
【0034】
次に、
図4は、
図1に示す船舶用電力システム1において、船内負荷4に使用される周波数(60Hz)と異なる周波数の陸上電源21が接続されている場合の電力の供給経路を矢印で示した図である。この
図4に示す陸上電源21は、周波数が50Hz、所定電圧(例えば、AC440V)の交流電力を供給する電源である。
【0035】
図4に示すように、コネクタ7が50Hzの交流電力を供給する陸上電源21に接続された場合、周波数検出器8で陸上電源21の周波数が50Hzであることが検出され、この出力信号(検出信号)に基づいて、一方の開閉器9は開状態を維持したままで、他方の開閉器10は閉状態となる。
【0036】
この場合、制御装置14は、陸上電源21の周波数が50Hzである旨を示す周波数検出器8の出力信号に基づいて、双方向AC/DCコンバータ11に順変換動作指令を出力するとともにDC/ACコンバータ12に動作指令を出力し、DC/DCコンバータ13に充電動作指令を出力する。これにより、陸上電源21から交流配線L1,L3を介して供給される周波数が50Hzの交流電力は、AC/DCコンバータ11の順変換動作によって所定電圧(例えば630V)の直流電力に変換され、この直流電力がDC/DCコンバータ13を介してバッテリ3へ供給され、バッテリ3が充電される。
【0037】
さらに、AC/DCコンバータ11によって変換された直流電力は、DC/ACコンバータ12によって60Hz,所定電圧(例えば、AC440V)の交流電力に変換されて船内電源母線2に供給され、船内電源母線2に接続される船内負荷4が駆動可能になる。
【0038】
上記のように本実施形態では、交流負荷である船内負荷4に使用される電力の周波数(60Hz)と陸上電源21の周波数とが同じ場合も異なる場合も、陸上電源21から船内のバッテリ3および船内負荷4への電力供給が可能になる。
【0039】
なお、本実施形態において、周波数検出器8を設けない構成としてもよい。この場合、例えば、電源接続切替盤P3あるいは操作盤等に、船員等が陸上電源21の周波数を選択操作する周波数選択スイッチを設け、この周波数選択スイッチの周波数選択信号(50Hzであるか60Hzであるかを示す信号)に基づいて開閉器9,10の開閉状態が制御されるようにしてもよい。また、この場合、周波数選択スイッチの周波数選択信号が制御装置14へ入力され、制御装置14が周波数選択信号等に基づいてコンバータ11,12,13へ動作指令を出力するよう構成されていてもよい。
【0040】
なお、船舶には、船舶用電力システム1が複数備えられてあってもよい。この場合、例えば、1つのコネクタ7が共用されるようにして複数の船舶用電力システム1が構成されていてもよい。
【0041】
また、本実施形態では、バッテリ3の蓄積電力を主に船内の電気機器等の負荷に使用するようにしているが、バッテリ3の蓄積電力を船舶の推進エネルギーとして使用するようにしてもよい。例えば、船舶が電気推進船である場合において、推進器のモータ(直流モータまたは交流モータ)の電力にバッテリ3の蓄積電力を使用するようにしてもよい。
【0042】
(その他の実施形態)
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0043】
(まとめ)
本発明のある態様に係る船舶用電力システムは、所定の周波数の交流電力によって駆動される複数の交流負荷が接続された船内電源母線と、陸上電源に接続可能な電源接続部と、前記電源接続部と前記船内電源母線との間に設けられた第1の開閉器と、前記電源接続部に接続された第2の開閉器と、前記第2の開閉器を介して前記電源接続部に接続され、前記電源接続部から前記第2の開閉器を介して供給される交流電力を直流電力に変換する第1の電力変換器と、前記第1の電力変換器と前記船内電源母線との間に設けられ、第1の電力変換器から出力される直流電力を交流電力に変換する第2の電力変換器と、前記第1の電力変換器の直流側端子と前記第2の電力変換器の直流側端子とに充放電制御装置を介して接続された蓄電池とを備えている。
【0044】
この構成によれば、前記電源接続部が前記陸上電源に接続され、前記陸上電源の周波数が前記所定の周波数と同じ周波数の場合には、前記第1の開閉器を閉状態にして前記陸上電源からの交流電力を前記船内電源母線に供給するとともに、前記第2の開閉器を閉状態にして前記陸上電源からの交流電力を前記第1の電力変換器によって直流電力に変換して前記充放電制御装置を介して前記蓄電池に供給するか、または、前記第2の開閉器を開状態にして前記陸上電源から前記船内電源母線に供給される交流電力を前記第2の電力変換器によって直流電力に変換して前記充放電制御装置を介して前記蓄電池に供給するよう構成することができる。また、前記電源接続部が前記陸上電源に接続され、前記陸上電源の周波数が前記所定の周波数と異なる周波数の場合には、前記第1の開閉器を開状態、前記第2の開閉器を閉状態にし、前記陸上電源からの交流電力を前記第1の電力変換器によって直流電力に変換して前記充放電制御装置を介して前記蓄電池に供給するとともに、前記第1の電力変換器によって変換される直流電力をさらに前記第2の電力変換器によって前記所定の周波数の交流電力に変換して前記船内電源母線に供給するよう構成することができる。したがって、船内の交流負荷に使用される電力の周波数(所定の周波数)と陸上電源の周波数とが同じ場合も異なる場合も、陸上電源から船内の蓄電池および交流負荷への電力供給が可能になる。
【0045】
前記電源接続部が前記陸上電源に接続され、前記陸上電源の周波数が前記所定の周波数と同じ周波数の場合には、前記第1の開閉器を閉状態にして前記陸上電源からの交流電力を前記船内電源母線に供給するとともに、前記陸上電源からの交流電力を前記第1の電力変換器または前記第2の電力変換器によって直流電力に変換して前記充放電制御装置を介して前記蓄電池に供給するよう構成され、前記電源接続部が前記陸上電源に接続され、前記陸上電源の周波数が前記所定の周波数と異なる周波数の場合には、前記第1の開閉器を開状態、前記第2の開閉器を閉状態にし、前記陸上電源からの交流電力を前記第1の電力変換器によって直流電力に変換して前記充放電制御装置を介して前記蓄電池に供給するとともに、前記第1の電力変換器によって変換される直流電力をさらに前記第2の電力変換器によって前記所定の周波数の交流電力に変換して前記船内電源母線に供給するよう構成されていてもよい。
【0046】
前記電源接続部が前記陸上電源に接続されたときに、前記陸上電源の周波数を検出する周波数検出器を、さらに備え、前記周波数検出器で検出される前記陸上電源の周波数が前記所定の周波数と同じであるか否かに応じて前記第1及び第2の開閉器の開閉状態が制御されるよう構成されていてもよい。
【0047】
前記電源接続部が前記陸上電源に接続されていない場合には、前記第1及び第2の開閉器を開状態とし、前記充放電制御装置を介して前記蓄電池から放電される直流電力を前記第2の電力変換器によって前記所定の周波数の交流電力に変換して前記船内電源母線に供給するよう構成され、前記交流負荷は第1の交流負荷であり、前記第1の電力変換器と接続され交流電力によって駆動される第2の交流負荷を、さらに備え、前記電源接続部が前記陸上電源に接続されていない場合に、前記充放電制御装置を介して前記蓄電池から放電される直流電力を前記第1の電力変換器の逆変換動作によって交流電力に変換して前記第2の交流負荷に供給可能に構成されていてもよい。この構成によれば、第2の交流負荷を船内電源母線に接続する場合と比べて、定格出力(容量)の小さい第2の電力変換器を用いることが可能になるとともに、許容電流の小さい船内電源母線を用いることが可能になる。
【0048】
前記第2の交流負荷は、前記第1の電力変換器によって可変速駆動されるモータであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、船内の交流負荷に使用される電力の周波数と陸上電源の周波数とが同じ場合も異なる場合も、陸上電源から船内の蓄電池および交流負荷への電力供給が可能になる船舶用電力システム等として有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 船舶用電力システム
2 船内電源母線
3 バッテリ(蓄電池)
4 船内負荷(交流負荷、第1の交流負荷)
6 交流モータ(第2の交流負荷)
7 コネクタ(電源接続部)
9 第1の開閉器
10 第2の開閉器
11 AC/DCコンバータ(第1の電力変換器)
12 DC/ACコンバータ(第2の電力変換器)
13 DC/DCコンバータ
14 制御装置
【要約】 (修正有)
【課題】船内の交流負荷に使用される電力の周波数と陸上電源の周波数とが同じ場合も異なる場合も、陸上電源から船内の蓄電池及び交流負荷への電力供給が可能になる船舶用電力システムを提供する。
【解決手段】船舶用電力システム1は、所定の周波数の交流電力によって駆動される複数の交流負荷が接続された船内電源母線2と、陸上電源21に接続可能なコネクタ7と、コネクタと船内電源母線との間に設けられた第1の開閉器9と、コネクタに接続された第2の開閉器10と、コネクタから第2の開閉器を介して供給される交流電力を直流電力に変換する第1の電力変換器11と、第1の電力変換器と船内電源母線との間に設けられ、第1の電力変換器から出力される直流電力を交流電力に変換する第2の電力変換器12と、第1及び第2の電力変換器の直流側端子に充放電制御装置として用いられるDC/DCコンバータ13を介して接続されたバッテリ3と、を備えている。
【選択図】
図1