(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20220317BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20220317BHJP
C30B 23/08 20060101ALI20220317BHJP
C30B 29/16 20060101ALI20220317BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
C23C14/24
C23C14/08 C
C30B23/08 M
C30B29/16
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2020200544
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2020-12-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0031950
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520468520
【氏名又は名称】ティー オー エス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】T.O.S Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】(Naesammi-dong) 129-20, Gyeonggi-daero 632beon-gil, Osan-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チェ バムホ
(72)【発明者】
【氏名】イ スンス
(72)【発明者】
【氏名】ジョ ヨングン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンシク
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-537644(JP,A)
【文献】特表2011-506773(JP,A)
【文献】特開昭60-080217(JP,A)
【文献】特開2004-269338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C
C30B
H01L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を備える反応チャンバと、
前記内部空間に配置され、基板が装着される基板装着ユニットと、
金属酸化物を処理して、前記金属酸化物から発生した金属イオンと酸素イオンが前記基板に供給されるようにする金属酸化物処理ユニットと、
前記基板に向くように設置されて、前記基板にヒ素イオンを供給するヒ素供給ユニットと、を含み、
前記金属酸化物処理ユニットは、
前記内部空間において前記基板に対向するように配置され、前記金属酸化物である酸化亜鉛板が設置される装着台と、
前記酸化亜鉛板に向かって電子ビームをダイレクト方式で照射して、前記酸化亜鉛板から蒸発した亜鉛イオンと酸素イオンが前記基板に向かって移動するようにする電子ビーム照射器とを含
み、
前記基板に向くように設置されて、気体状態の酸素分子を解離して前記基板に酸素ラジカルを供給する酸素供給ユニットをさらに含み、
前記反応チャンバは、
前記内部空間を限定する底面から突出形成され、前記酸素供給ユニットと前記ヒ素供給ユニットとの間に配置されて前記酸素供給ユニットから吐出された前記酸素ラジカルが前記ヒ素供給ユニット及び前記金属酸化物処理ユニット側に移動することを遮断する隔壁をさらに含む、単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置。
【請求項2】
前記基板装着ユニット及び前記電子ビーム照射器は、前記反応チャンバの上部側に設置され、
前記装着台は、前記反応チャンバの下部側に設置される、請求項1に記載の単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置。
【請求項3】
前記酸化亜鉛板に対して前記電子ビーム照射器の照射角度は20°の範囲で決定される、請求項1に記載の単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置。
【請求項4】
前記電子ビーム照射器は、
30kVの加速電圧と1Aの放出電流を使用する30kWのパワーで作動する、請求項1に記載の単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置。
【請求項5】
前記基板装着ユニット及び前記装着台は、
前記酸化亜鉛板と前記基板との間の距離が800mmないし1800mmの範囲内となるように配置される、請求項3に記載の単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置。
【請求項6】
前記ヒ素供給ユニットは、
ヒ素をイオン化するために500℃ないし1100℃の範囲で作動して、前記ヒ素イオンとしてAs
2
+を供給する、請求項1に記載の単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置。
【請求項7】
前記基板装着ユニットを基準に、前記金属酸化物処理ユニットと前記酸素供給ユニットは互いに反対側に配置され、
前記ヒ素供給ユニットは、前記金属酸化物処理ユニットと前記酸素供給ユニットとの間に位置する、請求項
1に記載の単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置。
【請求項8】
前記酸素供給ユニットは、
前記反応チャンバの前記内部空間を限定する底面より低いレベルを有する吐出口と、
吐出口を開閉するゲートバルブと、を含む、請求項
1に記載の単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置。
【請求項9】
前記酸素供給ユニットの前記基板を向く角度は20°ないし40°の範囲で決定される、請求項
1に記載の単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置。
【請求項10】
前記基板装着ユニットに連結されたまま前記反応チャンバに設置されて、前記基板装着ユニットを駆動する駆動ユニットをさらに含み、
前記駆動ユニットは、
前記基板装着ユニットを前記ヒ素供給ユニットから遠くなるか近くなる方向に移動させるか、前記基板装着ユニットを回転させるように構成される、請求項1に記載の単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置。
【請求項11】
前記基板を加熱するために前記基板装着ユニットに対応して設置されるヒータユニットをさらに含み、
前記ヒータユニットは、750℃ないし1000℃で作動して、成膜中に前記基板の温度が550℃ないし800℃を維持するようにする、請求項1に記載の単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)、酸化亜鉛(ZnO)及びAZO、GZO、IGZOなどの酸化亜鉛系化合物をはじめとする酸化物薄膜は、LCD、オーレッド(OLED)などのディスプレイパネルの正極として使用される透明電極、画素駆動のための薄膜トランジスタの電荷輸送のためのチャネル層、太陽電池の正/負極電極などに広く使用されて商用化されており、次世代電子材料である透明電子素子の核心電極材料及び活性層材料として研究開発中である。これに伴い、発光ダイオードの能動層である発光層として多くの研究開発成果が報告されている。
【0003】
前記応用分野の場合、多結晶酸化物半導体薄膜を成膜するとともに、正孔の移動度より電子の移動度が大きいため信号処理速度において強点を有するn-型特性を有する酸化物半導体薄膜を使用しても構わない場合が多い。それにより、それとは逆の特性を有するp-型酸化物薄膜形成のための受容体(acceptor)をドーピング(doping)するなどの工程及びそれを実行可能な装置に関する技術は多く発表されていない。
【0004】
p-型酸化亜鉛薄膜形成のためのドーパントとしては窒素が最も多く研究されていたが、再現性のある効果的なp-n接合の形成が難しいため、応用分野がトランジスタ製作にとどまっており、それに対する代案としてNa、Li、Ag、Sb、B、Asなどが研究されてきた。これらのうち最も可能性のある物質はヒ素であって、受容体として作用するヒ素(As)イオンの濃度調節が容易であり、その特性の調節が他の物質に比べて最も容易であるため、現在の技術では最適の物質と考えられている。
【0005】
ところが、MOCVD技術は、原材料として使用する金属有機物(metalorganic source)内に水素及び炭素の含有量が多いため、p-型酸化亜鉛薄膜成長時にドーパント(dopant)として使用されるAsとZn-Oの結合よりはO-H結合が発生する確率が高い。そのため、相対的にAsイオンがドーパントとしてZn-O結合に参加してZn-O-As結合が発生する確率が著しく低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、ヒ素を受容体物質として注入して効果的に高純度p-型酸化亜鉛薄膜を形成可能にする、単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置を提供することにある。
【0007】
本発明のまた他の一目的は、高純度単結晶酸化亜鉛基板を成長させることができる工程技術を提示することにより生産歩留まりを向上できる、単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を実現するための本発明の一側面による単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置は、内部空間を備える反応チャンバと、前記内部空間に配置され、基板が装着される基板装着ユニットと、金属酸化物を処理して、前記金属酸化物から発生した金属イオンと酸素イオンが前記基板に供給されるようにする金属酸化物処理ユニットと、前記基板に向くように設置されて、前記基板にヒ素イオンを供給するヒ素供給ユニットとを含み、前記金属酸化物処理ユニットは、前記内部空間において前記基板に対向して配置され、前記金属酸化物である酸化亜鉛板が設置される装着台と、前記酸化亜鉛板に向かって電子ビームをダイレクト方式で照射して、前記酸化亜鉛板から蒸発した亜鉛イオンと酸素イオンが前記基板に向かって移動するようにする電子ビーム照射器とを含むことができる。
【0009】
ここで、前記基板装着ユニット及び前記電子ビーム照射器は、前記反応チャンバの上部側に設置され、前記装着台は、前記反応チャンバの下部側に設置される。
【0010】
ここで、前記酸化亜鉛板に対して前記電子ビーム照射器の照射角度は40°の範囲で決定されてもよい。
【0011】
ここで、前記電子ビーム照射器は、30kVの加速電圧と1Aの放出電流を使用する30kWのパワーで作動する。
【0012】
ここで、前記基板装着ユニット及び前記装着台は、前記酸化亜鉛板と前記基板との間の距離が800mmないし1800mmの範囲内となるように配置される。
【0013】
ここで、前記ヒ素供給ユニットは、ヒ素をイオン化するために500℃ないし1100℃の範囲で作動して、前記ヒ素イオンとしてAs2
+を供給する。
【0014】
ここで、前記基板に向くように設置されて、気体状態の酸素分子を解離して前記基板に酸素ラジカルを供給する酸素供給ユニットがさらに備えられてもよい。
【0015】
ここで、前記基板装着ユニットを基準に、前記金属酸化物処理ユニットと前記酸素供給ユニットは互いに反対側に配置され、前記ヒ素供給ユニットは、前記金属酸化物処理ユニットと前記酸素供給ユニットとの間に位置してもよい。
【0016】
ここで、前記反応チャンバは、前記内部空間を限定する底面から突出形成され、前記酸素供給ユニットと前記ヒ素供給ユニットとの間に配置されて前記酸素供給ユニットから吐出された前記酸素ラジカルが前記ヒ素供給ユニット及び前記金属酸化物処理ユニット側に移動することを遮断する隔壁をさらに含んでもよい。
【0017】
ここで、前記酸素供給ユニットは、前記反応チャンバの前記内部空間を限定する底面より低いレベルを有する吐出口と、吐出口を開閉するゲートバルブとを含む。
【0018】
ここで、前記酸素供給ユニットの前記基板を向く角度は20℃ないし40℃の範囲で決定されてもよい。
【0019】
ここで、前記基板装着ユニットに連結されたまま前記反応チャンバに設置されて、前記基板装着ユニットを駆動する駆動ユニットがさらに備えられ、前記駆動ユニットは、前記基板装着ユニットを前記反応チャンバの底面から遠くなるか近くなる方向に移動させるか、前記基板装着ユニットを回転させるように構成される。
【0020】
ここで、前記基板を加熱するために、前記基板装着ユニットに対応して設置されるヒータユニットをさらに含み、前記ヒータユニットは、750℃ないし1000℃で作動して、成膜中に前記基板の温度が550℃ないし800℃を維持するようにする。
【発明の効果】
【0021】
前記のように構成される本発明に係る単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置によれば、従来技術であるMOCVDにおいてp-型酸化亜鉛薄膜を成長させにくかったこととは異なり、受容体として作用するヒ素を酸化亜鉛エピ層成長過程で供給することによりp-型酸化亜鉛単結晶薄膜を形成できるようになる。
【0022】
また、従来の電子ビーム照射器は、反応チャンバの下部に位置して近接距離から酸化亜鉛板に電子ビームを照射するために180~270°回折するデフレクション(deflection)方式を使用するため、6~15kW範囲のパワーのみを使用することが可能であったが、本発明では、ダイレクト(direct)方式で最大2倍となる高パワー出力を使用することにより、酸化亜鉛の量を増加させて蒸着率を増加させる効果が期待でき、これにより生産歩留まりが増加する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施例による単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置100に対する概念図の一例である。
【
図2】
図1の単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置100を用いた単結晶金属酸化物半導体層を形成する工程を示すフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施例による単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置について、添付した図面を参照して詳細に説明する。本明細書では、相異なる実施例でも同一・類似の構成に対しては同一・類似の参照番号を付与し、その説明は最初の説明に代える。
【0025】
図1は、本発明の一実施例による単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置100に対する概念図の一例である。
【0026】
本図面を参照すると、単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置100は、反応チャンバ110、基板装着ユニット130、金属酸化物処理ユニット150、酸素供給ユニット170、駆動ユニット190、及びヒータユニット210を含む。
【0027】
反応チャンバ110は内部空間111を備え、その内部空間111においては高純度酸化亜鉛薄膜成長工程が行われる。内部空間111は、基本的に10-8~10-9torr、成長進行時は10-5~10-6torrレベルの真空が形成される。このために、内部空間111には真空ポンプ113が連結される。反応チャンバ110はさらにロードロックチャンバ(Loadlock chamber)に連結される。ロードロックチャンバは2つの空間に分割して、10-3torrレベルの真空度を維持する基板保管領域と、10-8~10-9torrレベルの真空度を維持する基板移送領域とに分離される。そのロードロックチャンバは、 基板Wが装着された基板装着ユニット130の移送のための自動搬送装置、金属酸化物のガス放出(outgassing)時間短縮のための予熱ユニット、最小5つの基板ホルダを保管できるスロットなどを備える。ロードロックチャンバの真空度は、工程の進行中に反応チャンバ110の真空レベルである10-8~10-9torrレベルに維持できる。ロードロックチャンバと反応チャンバ110との間の基板Wの移送はロボットにより行われる。さらに、内部空間111の底面には隔壁115が突出形成される。
【0028】
基板装着ユニット130は内部空間111に配置され、基板Wが装着される構成である。基板装着ユニット130は、最大108枚の4インチのサファイア基板を装着できるサイズを有する。基板装着ユニット130は、ロードロックチャンバから搬送されて反応チャンバ110に設置されたクレードル(cradle)に取り付けられる。このために、クレードルと基板装着ユニット130の連結部位に電磁石を4ヶ所に設置してそれらを取り付けた後、エピ層成長時には上部に位置するヒータユニット210に近接して基板Wの温度が550~800℃を維持する位置まで上に移動できる。基板装着ユニット130がロードロックチャンバに搬送されるためには、エピ層成長工程完了後にクレードルを80mm程度下げてから電磁石の磁場を解除して搬送システムに基板装着ユニット130が安着できるように製作し、これを搬送してロードロックチャンバに備えられたスロットに保管することができる。基板装着ユニット130の位置制御のために基板装着ユニット130がクレードルに取り付けられる位置及びエピ層成長工程のために上部に移動すべき位置に位置センサを設置して基板装着ユニット130の正確な位置を制御することができる。
【0029】
金属酸化物処理ユニット150は金属酸化物を処理して、その金属酸化物から発生した金属イオンと酸素イオンが基板Wに供給されるようにする構成である。本実施例において、金属酸化物を処理するとは、それに電子ビームを照射して金属イオンと酸素イオンが蒸発して基板Wに向かって移動するようにすることである。
【0030】
ここで、金属酸化物は具体的な一例として酸化亜鉛板であり、これは酸化亜鉛パウダーを焼結して製作されたものであってもよい。それにより、金属イオンはZn2+であり、酸素イオンはO2-であってもよい。酸化亜鉛板の直径は8インチで、厚さは2インチであって、100%気化した場合を仮定すると、900cm3の容量を有するようになる。1日5回のエピ成長をする場合、最大4ヶ月を使用可能な容量であって、量産工程への適用に適した量になる。酸化亜鉛板において、照射された電子ビームにより固体状態から気体状態に昇華される領域の酸化亜鉛の温度は1000~1500℃の間であり、融点は1950℃である。
【0031】
酸化亜鉛版は装着台151に設置される。装着台151は、内部空間111の下部に設置されて、基板装着ユニット130に対向して配置される。
【0032】
酸化亜鉛はセラミック系列物質であり、熱伝導率が金属の14%レベルである5W/mK程度に過ぎないほど熱伝導率が低い物質である。電子ビームの照射により局部的に高い温度を有する蒸発領域とその他の領域の温度差により酸化亜鉛板に生じる熱的ストレスによる変形を防止する必要がある。このために、酸化亜鉛板の周囲の温度勾配を最小化するためのヒータユニット(図示せず)を設置してもよい。このようなヒータユニットは、酸化亜鉛板を囲むように装着台151に設置され、酸化亜鉛板の温度領域を少なくとも5つ以上にそれぞれ区分して各領域の温度差が300℃を超えないように差等加熱することが好ましい。
【0033】
酸化亜鉛板の均一な侵食プロファイル(erosion profile)を作って酸化亜鉛板の使用効率を増加させる方法として、一定の使用周期間隔で酸化亜鉛板を回転させる装置(
図2)が装着台151にさらに備えられてもよい。酸化亜鉛板の回転角度は45°で、その交替時まで計8回回転できる。
【0034】
蒸発初期に発生可能な酸化亜鉛蒸気のクロッギング(clogging)現象を防止するために酸化亜鉛板の上側一定地点、例えば、70mmの位置に直径9インチ以上のシャッター(shutter)を設置してもよい。このとき、シャッターの材質は、ステンレススチール化合物、タンタリウム又はアルミニウムであってもよい。
【0035】
高エネルギーを有する電子ビームが酸化亜鉛板に入射するとき、電子の散乱現象により後方散乱電子(backscattered electron)が発生する。後方散乱電子のエネルギーは、酸化亜鉛板に入射される電子ビームのエネルギーとほぼ類似したレベルと知られている。後方散乱電子による熱などの問題を最小化するために、後方散乱電子を捕集できる金属素材のトラップ(trap)が酸化亜鉛板の周囲に設置されてもよい。
【0036】
酸化亜鉛板に電子ビームを照射する電子ビーム照射器155は内部空間111の上部側に設置される。このような電子ビーム照射器155は、基板装着ユニット130とほぼ同一の高さに位置する。電子ビーム照射器155は、反応チャンバ110の上部の真上(90°)又は40°以内の角度(θ1)で電子ビームソースを位置させて電子ビームを酸化亜鉛板にダイレクト方式で照射する構成である。前記照射角度(θ1)は、好ましくは20°以内の角度であってもよい。電子ビームの加速電圧が高い場合、酸化亜鉛板に照射された後に発生する二次電子(secondary electron)の量を最小にすることが重要であり、電子ビームの照射角度が40°を超える場合、発生する二次電子の比率が急激に増加して50%レベルに達して、酸化亜鉛の蒸発効率、酸化亜鉛板の使用効率、反応チャンバ110の壁の汚染などに悪影響を及ぼす要因として作用するので、照射角度を20°以内に調節することが好ましい。
【0037】
電子ビーム照射器155から照射される電子ビームを5~30kVの範囲の加速電圧及び最大2Aの放出電流を使用することにより最大パワーは60kWとなる。好ましくは、30kVの加速電圧及び1Aの放出電流を使用する30kWが最大パワーとなる。
【0038】
酸化亜鉛板と電子ビーム照射器155との間の距離は、600ないし1800mmの間で可能であり、最大1800mmを超えてはならない。また、基板装着ユニット130に装着された基板の数が多い場合(例えば、4インチが108枚)、酸化亜鉛板と基板W間の距離は800ないし1800mmが適当である。その距離が800mm以下である場合、基板Wの全体に均一なエピ層の成長が不可能であり、1800mm以上になる場合、均一なエピ層の成長が可能であっても蒸着速度が遅くなりすぎる短所が存在する。
【0039】
酸素供給ユニット170は、気体状態の酸素分子を解離して基板Wに酸素ラジカル(O)を追加で供給する構成である。これは基板Wに向くように反応チャンバ110に設置される。
【0040】
酸化亜鉛単結晶の成長の時、理論的にはZn:Oの比率が1:1にならなければならないが、酸化亜鉛薄膜の特性上、実際に成分分析をすると、Oの比率がZnに比べて低い現象が自然に発生する。従って、Zn:Oの比率を1:1に合わせるために、酸素供給ユニット170を介して基板Wに酸素ラジカルを供給する。供給される酸素はO2ではなく熱又はプラズマにより解離された状態の酸素ラジカルが供給されるべきである。
【0041】
酸素供給ユニット170としてはRFアトムソース(RF Atom source)が使用されてもよく、これは反応チャンバ110の下部に装着される構造である。この装着角度(θ2)は、基板Wを眺める位置から20~40°の間であり、好ましくは、30°以内であり得る。RFアトムソースは、酸素ラジカル供給初期にスピッティング(spitting)現象又はクロッギング(clogging)現象が発生することを防止するために、その端部にシャッターを備えてもよい。また、それは酸素ラジカルを内部空間111内に噴射するためノズルを備え、O2の解離のためにRFプラズマソース及び電源供給装置、インピーダンスマッチングシステムなどを備える装置である。プラズマシステムとしてはダイレクトプラズマ又はリモートプラズマを選択しても構わないが、本実施例では、プラズマによる影響を最小にするためにリモートプラズマ方式を採択した。
【0042】
効率的にO2を解離するために、RFプラズマパワーは300~750Wの範囲で使用可能であり、好ましくは、500Wが適当である。酸素ラジカルの供給のためのRFアトムソースと基板Wとの間の距離は800~1400mmであり,好ましくは、800mmである。
【0043】
供給される酸素ラジカルの量が多すぎる場合、酸化亜鉛エピ層内の酸素ラジカルの空き空間を埋めることには役立つが、酸素ラジカルによる反応チャンバ110及び内部空間111に存在する部品の酸化による性能低下を引き起こす短所がある。酸素ラジカルの量が少なすぎる場合、酸化亜鉛エピ層に十分な酸素が供給されず酸素ラジカルの空き空間を埋めることができないことにより、酸化亜鉛エピ層の性能低下を引き起こす短所が存在するので、適切な供給量を選択することが重要である。本実施例では、前述した酸素ラジカルを供給するときに、真空度が10-5torrに維持できる酸素ラジカルの供給量を選択する。
【0044】
さらに、酸素供給ユニット170から供給される酸素ラジカルによる周辺部品の酸化を防止するために、基板装着ユニット130を基準に酸素供給ユニット170と金属酸化物処理ユニット150は互いに反対側に配置される。さらに、後述するヒ素供給ユニット180は、それらの間に配置される。また,前述した隔壁115は,酸素供給ユニット170から導出された酸素ラジカルがヒ素供給ユニット180及び金属酸化物処理ユニット150側に移動することを遮断する。
【0045】
他の方法として、酸素供給ユニット170の吐出口171は内部空間111の底面より低いレベルに位置してもよい。そのような構造において、吐出口171にはそれを開閉するゲートバルブ175が設置される。ゲートバルブ175は、基板Wにおいて酸化亜鉛薄膜が成長する間のみ酸素ラジカルが内部空間111に流動できるように開閉される。
【0046】
ヒ素供給ユニット180は基板Wにヒ素イオンを供給するための構成である。それは、反応チャンバ110の底面に設置されて基板Wに向くように配置される。
【0047】
ヒ素供給ユニット180としては、例えば、クヌーセンセル(Knudsen cell(K-cell))が使用できる。それは、常温で固体であるヒ素を500~1100℃の温度範囲、好ましくは、600℃~1100℃で分解して、As2
+状態のイオンとして基板Wに供給する。ヒ素イオン中にAs4
+を基板Wに供給する場合は、Zn-O-As間の化学結合が合わないため、高品質のp-型酸化亜鉛膜を作ることができない。従って、前記温度範囲でAs2
+を作り出すことが重要である。また、ヒ素供給ユニット180が基板Wを眺める装着角度(θ3)は20~40°の間である。ヒ素供給ユニット180は、ヒ素イオンの量(究極的にはAs2
+ドーピング濃度 (doping concentration))を1017~1021個/cm3の範囲でエピ薄膜の特性に合うように調節するための調節バルブをさらに有してもよい。
【0048】
ヒ素を分解して基板に供給する初期のAs2
+受容体のスピッティング(spitting)現象による不純物濃度増加を制御するために、ヒ素供給ユニット180は、独自のシャッターを備え、ヒ素の分解のために熱を加えるヒータユニットを備えてもよい。また、ヒ素供給ユニット180はヒ素を保存できる保存器を備えてもよい。
【0049】
駆動ユニット190は、基板装着ユニット130を駆動するための構成である。駆動ユニット190は、基板装着ユニット130に連結されたまま反応チャンバ110に設置される。駆動ユニット190は、具体的に、基板装着ユニット130が垂直方向(V)に沿って反応チャンバ110の底面から遠くなるか近くなる方向に移動するようにする。さらに、駆動ユニット190は、基板装着ユニット130を回転方向(R)に沿って回転させることもできる。
【0050】
具体的に、駆動ユニット190は、垂直方向(V)に沿って基板装着ユニット130を上下50~100mm、好ましくは、80mm移動させる。また、基板Wに均一な薄膜蒸着のために、駆動ユニット190は基板装着ユニット130を5~50rpmの速度、好ましくは、10rpmで回転させる。この場合、駆動ユニット190は、前記クレードルのみを回転させて、実質的に基板装着ユニット130の全体が回転するようにする。
【0051】
ヒータユニット210は、基板Wを加熱するために基板装着ユニット130に対応して備えられる。ヒータユニット210は、反応チャンバ110や駆動ユニット190に設置されて内部空間111に位置する。ヒータユニット210は750℃ないし1000℃で作動して、成膜中に基板Wの温度が550℃ないし800℃に維持できるようにする。基板W全体の温度を均一に維持するためにヒータユニット210は1~4個が設置されてもよい。ヒータユニット210は真空上で輻射熱により基板Wに熱を伝達するように設計される。
【0052】
以上の単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置100を用いた単結晶金属酸化物半導体層形成過程は、
図2をさらに参照して説明する。
図2は、
図1の単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置100を用いた単結晶金属酸化物半導体層を形成する工程を示すフローチャートの一例である。
【0053】
本図面(及び
図1)を参照すると、まず、基板Wに対する移送及び熱処理が行われる(S1)。具体的に、ロードロックチャンバに基板Wが装着された基板装着ユニット130が投入される。ここで、300℃の温度で熱処理工程によるガス放出(outgassing)工程が行われる。このとき、熱処理時間は5ないし30分が好ましく、ロードロックチャンバの圧力は10
-3torrを維持する。熱処理された基板Wは10
-8torrの超高真空状態のトランスファーチャンバ領域に移送されて5分ないし30分間ガス放出(outgassing)工程を経ることになる。
【0054】
その後、基板Wは反応チャンバ110に移送されて熱処理される(S3)。具体的に、トランスファーチャンバと反応チャンバ110との間で連結されたゲートバルブが開かれてから反応チャンバ110に基板Wが移送される。以後、ゲートバルブが閉じることにより、トランスファーチャンバと反応チャンバ110は分離される。このとき、反応チャンバ110の真空度はトランスファーチャンバの真空度と同一になるように10-8torrを維持する。反応チャンバ110内でヒータユニット210に電源を提供して基板Wの温度を600℃ないし700℃まで上昇させ、3次ガス放出(outgassing)工程が行われる。
【0055】
次は、基板Wの表面処理が行われる(S5)。酸素プラズマを利用して基板表面処理工程を行って基板Wの表面に単結晶金属酸化物膜の成長に支障をきたさないほどの非常に薄い厚さの自然酸化膜を生じさせる。酸素プラズマを利用した基板処理時間は10~60秒の間であり得る。このとき、基板Wの表面に存在する有機物形態の不純物を除去するために水素プラズマを利用して基板表面処理工程を行う。水素プラズマを用いた基板処理時間は30秒以内が好ましい。
【0056】
基板Wに対する薄膜成長が行われる(S7)。5~50rpmの速度で基板Wが回転される内に、金属酸化物の蒸発工程が行われる。金属酸化物の蒸発工程の実行時には初期に一度に多量の金属酸化物が蒸発して基板に移送されることを防止するために、蒸発源(酸化亜鉛板)側に備えられたシャッターにより金属酸化物気体を遮断し、昇華率が一定の量に到達した時にシャッターを移動させて金属酸化物気体が基板Wに移動するようにする。これと同時に、プラズマにより解離された酸素ラジカルを基板Wに同時供給することにより、基板W上に金属酸化物層が形成されるようにする。p-型金属酸化物層を形成するためにAs2
+を基板Wに供給し、このとき、金属酸化物気体及び酸素ラジカルが供給され始めた直後にヒ素2価物質を供給する。
【0057】
次に、薄膜成長終了段階が行われる(S9)。所望の厚さのp-型金属酸化物薄膜が形成されたことを、厚さ測定器を利用して確認した後、金属酸化物気体、酸素ラジカル、ヒ素2価イオンの供給を止めると同時に基板Wの回転を停止する。
【0058】
その後、薄膜に対する表面処理が行われる(S11)。単結晶金属酸化物薄膜形成のために700℃の温度で熱処理工程を行い、熱処理時間は10分ないし30分で、好ましくは30分である。
【0059】
最後に、基板移送が行われる(S13)。基板Wの温度を冷却した後、トランスファーチャンバ、ロードロックチャンバの順に基板Wを移動させる。
【0060】
前記のような単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置は、前述した実施例の構成と作動方式に限定されるものではない。前記実施例は、各実施例の全部又は一部が選択的に組み合わされて様々な変形ができるように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
100:単結晶金属酸化物半導体エピ成長装置
110:反応チャンバ
130:基板装着ユニット
150:金属酸化物処理ユニット
170:酸素供給ユニット
180:ヒ素供給ユニット
190:駆動ユニット
210:ヒータユニット