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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】液圧供給装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20220322BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
F15B11/00 F
F04B49/06 321A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018086806
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019190622
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】三井 広明
(72)【発明者】
【氏名】豊田 敏久
(72)【発明者】
【氏名】中辻 隆
【審査官】小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-102608(JP,A)
【文献】特開2011-085044(JP,A)
【文献】国際公開第1992/006306(WO,A1)
【文献】特開2017-136693(JP,A)
【文献】特開2015-001291(JP,A)
【文献】特開2012-013055(JP,A)
【文献】特開2007-162754(JP,A)
【文献】特開2007-069500(JP,A)
【文献】特開平05-215101(JP,A)
【文献】特開平01-244812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-11/22
F04B 49/00-49/24
F04C 14/00-14/28
B22D 17/32
B29C 45/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受ける荷重に応じた保持圧力の作動液をアクチュエータに供給する液圧供給装置であって、
吐出容量を変更可能であって、該吐出容量と駆動される回転数に応じた流量の作動液を吐出する液圧ポンプと、
前記液圧ポンプを回転駆動可能に構成され、且つその回転数を変更することができる電動機と、
所定の最大吐出容量と所定の最小吐出容量との間の範囲において前記液圧ポンプの吐出容量を調整可能な吐出容量調整機構と、
前記液圧ポンプから吐出される作動液の圧力を検出する圧力検出器と、
前記電動機の回転数を検出する回転数検出器と、
前記圧力検出器で検出される圧力が保持圧力にて維持されるように、前記回転数検出器で検出される回転数に基づいて前記電動機及び前記吐出容量調整機構の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記アクチュエータに供給される作動液の圧力を前記保持圧力にて保持する際、前記液圧ポンプの吐出容量が設定下限吐出容量となるように前記吐出容量調整機構の動作を制御し、
前記設定下限吐出容量は、前記最小吐出容量より大きく設定され、且つ前記制御装置によって前記回転数検出器で検出される回転数に応じて調整され、
前記制御装置は、前記アクチュエータの圧力を保持する際、前記回転数検出器で検出される前記電動機の回転数が予め定められる第1規定回転数以下の場合において前記設定下限吐出容量を第1所定容量に設定し、前記回転数検出器で検出される前記電動機の回転数が前記第1規定回転数を超える場合において前記電動機の回転数を前記第1規定回転数以下にすべく前記設定下限吐出容量を前記第1所定容量より増加させるように前記吐出容量調整機構の動きを制御する第1運転モードを実行する、液圧供給装置。
【請求項2】
前記アクチュエータの圧力を保持する際において運転モードを切替える切替部を有し、
前記制御装置は、前記切替部に対する操作に応じて前記第1運転モードと第2運転モードとを切替えるようになっており、
前記第2運転モードでは、前記圧力検出器で検出される圧力を前記保持圧力にて維持すべく、前記設定下限吐出容量を前記第1所定容量より小さい第2所定容量に設定する、請求項に記載の液圧供給装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記切替部に対する操作に応じて第3運転モードに切替え可能であって、
前記第3運転モードでは、前記圧力検出器で検出される圧力が前記保持圧力にて維持すべく、前記設定下限吐出容量を前記第2所定容量より大きくかつ第1所定容量より小さい第3所定容量とする、請求項に記載の液圧供給装置。
【請求項4】
作動液の温度を検出する液温検出器を更に備え、
前記制御装置は、前記液温検出器によって検出される液温に応じて前記設定下限吐出容量の値を調整する、請求項1乃至の何れか1つに記載の液圧供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに液圧を供給して駆動させる液圧供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液圧ポンプからアクチュエータに液圧を供給して駆動する液圧供給装置が知られている。液圧供給装置において、液圧ポンプはサーボモータ等のような回転数制御が可能な電動機によって回転駆動されており、回転数制御によってその吐出流量を調整してアクチュエータの速度、位置、及び荷重を制御することができるようになっている。また、液圧供給装置では、液圧ポンプの吐出容量が変更可能に構成され、このような液圧供給装置としては、例えば特許文献1及び2のような駆動システムが知られている。
【0003】
特許文献1の駆動システムでは、吐出圧の大きさによって制御を変えるようになっており、吐出圧が予め定められたカットオフ開始圧力未満においては電動機の回転数を調整することによってポンプの吐出流量が制御される。他方、吐出圧が予め定められるカットオフ開始圧力に達すると、電動機の回転数を一定に維持し、ポンプ吐出容量を調整することによってポンプの吐出流量が制御される。
【0004】
また、特許文献2の駆動システムでは、ポンプ容量が2段階で切換え可能に構成されており、それほど大きな流量を必要としない保圧工程においてポンプの容量が小さい方に設定される。他方、制御装置は、ポンプのトルクを一定の値に確保すべくサーボモータの回転数を制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-172302号公報
【文献】特許第4324148号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2の駆動システムでは、共にアクチュエータに供給する作動液の圧力を維持することを目的とする場合、それほど多くの量の作動液を供給する必要がない。それ故、特許文献1の駆動システムでは、ポンプが圧力調整(カットオフ)機構を備えており、圧力調整機構によってポンプの容量が機械的に調整される。例えば、保圧工程では、圧力調整機構によってポンプの容量がカットオフ圧力を保持可能な容量に調整される。しかし、カットオフ圧力が最初に調整された圧力で固定されてしまうので、機械の負荷(プレスにおける製品の板厚・材料の相違、樹脂・粉末成型における材料の相違等)に応じて圧力を調整することができない。
【0007】
他方、特許文献2の駆動システムでは、ポンプの吐出容量が最小吐出容量に設定されている。この最小吐出容量は、一般的に斜板の傾転が所定の角度より小さくならないように機械的に制限することによって達成されており、斜板の傾転の制限は主に機械的なストッパ等で行われている。それ故、最小吐出容量を変更する場合、それに応じてポンプの設計を変える必要がある。即ち、同じサイズのポンプであっても、最小吐出容量が異なるだけで異なる部品を用いる必要があり、部品を大量生産することができず、ポンプの製造コストが増加する。それ故、ポンプの最小吐出容量は、同じサイズのポンプに対して使用態様に依らず同じ容量に設定されている。あるいは、ポンプにおいてねじ等によって最小吐出容量を調整可能なものもある。しかし、この場合は、ワークの種類を変える、いわゆる段取り替えの度に調整ねじを調整し直すことが必要となるので作業性が悪い。
【0008】
ここで、2つの駆動システムにおける圧力保持時の内部リーク量(ポンプ内部で発生するリーク量)に着目する。各駆動システムにおける内部リーク量は、それを構成する機器、並びに作動液の温度及び圧力等の駆動システムの駆動状態に応じて変化する。前述の通り、ポンプでは、使用態様及び駆動状態に関わらず最小吐出容量がある値に設定されている。それ故、どのような使用態様及び駆動状態においても内部リークによって不足する作動液の流量を補うことができるようにするために、最小吐出容量は、想定される内部リークのうち最も多い流量よりも更に大きめに設定される。そうすると、圧力保持状態において、ポンプ吐出圧とポンプ吐出容量との積で定まるポンプ駆動トルクが大きくなるので、大型(大出力)の電動機が必要となる。
【0009】
そこで、電動機の大型化を抑えるべく最小吐出容量を、前述するような容量よりも小さめに設定することが考えられる。この場合、ポンプの吐出流量はポンプ吐出容量とポンプ回転数との積で定まることから、前述する場合よりも電動機の回転数を上げることによって内部リーク量に相当する作動液の流量を補うことができる。しかしながら、連続運転等で作動液が高温になった場合、あるいは、夏季等において雰囲気温度が高温である場合に以下のような事態が顕著となる。即ち、作動液が高温になることで駆動システムにおける内部リーク量が増加し、更に多くの作動液をポンプから吐出させる必要が生じる。そうすると、想定する回転数より高い回転数にて電動機を駆動する必要があり、その際に電動機から発せられる駆動音が大きくなり、回転数の増加に伴い発生する駆動音の周波数も変わって耳触りとなり騒音となる。即ち、ポンプの使用態様に応じて電動機の回転数が変化し、騒音を発生させることになる。
【0010】
そこで本発明は、アクチュエータの圧力を保持する圧力保持状態において、電動機の回転数の変動を抑制できる液圧供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の液圧供給装置は、受ける荷重に応じた保持圧力の作動液をアクチュエータに供給するものであって、吐出容量を変更可能であって、該吐出容量と駆動される回転数に応じた流量の作動液を吐出する液圧ポンプと、前記液圧ポンプを回転駆動可能に構成され、且つその回転数を変更することができる電動機と、所定の最大吐出容量と所定の最小吐出容量との間の範囲において前記液圧ポンプの吐出容量を調整可能な吐出容量調整機構と、前記液圧ポンプから吐出される作動液の圧力を検出する圧力検出器と、前記電動機の回転数を検出する回転数検出器と、前記圧力検出器で検出される圧力が保持圧力にて維持されるように、前記回転数検出器で検出される回転数に基づいて前記電動機及び前記吐出容量調整機構の動作を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記アクチュエータに供給される作動液の圧力を前記保持圧力にて保持する際、前記液圧ポンプの吐出容量が設定下限吐出容量となるように前記吐出容量調整機構の動作を制御し、前記設定下限吐出容量は、前記最小吐出容量より大きく、且つ前記制御装置によって変動可能に設定されているものである。
【0012】
本発明に従えば、アクチュエータの圧力を保持する圧力保持状態における液圧ポンプの吐出容量を最小吐出容量より大きい設定下限吐出容量に設定して、設定下限吐出容量を調整することを可能にしている。即ち、用いられる機械装置が異なっても圧力保持状態においても液圧供給装置の駆動状況、例えば電動機の回転数及び作動液の温度等に応じて設定下限吐出容量を調整することができるので、圧力保持状態において作動液の液圧を維持すべく電動機の回転数が上昇することを抑制することができる。
【0013】
上記発明において、前記制御装置は、前記回転数検出器で検出される回転数に応じて前記設定下限吐出容量を調整してもよい。
【0014】
上記構成に従えば、電動機の回転数を所望の回転数及びその付近にて維持することができる。
【0015】
上記発明において、前記制御装置は、前記アクチュエータの圧力を保持する際、前記回転数検出器で検出される前記電動機の回転数が予め定められる第1規定回転数以下の場合において前記設定下限吐出容量を第1所定容量に設定し、前記回転数検出器で検出される前記電動機の回転数が前記第1規定回転数を超える場合において前記電動機の回転数を前記第1規定回転数以下にすべく前記設定下限吐出容量を前記第1所定容量より増加させるように前記吐出容量調整機構の動きを制御する第1運転モードを実行してもよい。
【0016】
上記構成に従えば、電動機の回転数を第1規定回転数以下に抑えることができる。このように電動機の回転数を第1規定回転数以下に抑えることによって以下のようなことを実現することができる。即ち、電動機から発せられる駆動音を第1規定回転数にて回転させた電動機で発生する駆動音以下に抑えることができ、更に駆動音周波数が高くなって耳障りとなることを抑えることができる。それ故、発せられる駆動音が許容できる音量以下、又は駆動音周波数の高さが想定した周波数以下となる回転数に第1規定回転数を設定することで、液圧供給装置による騒音を低減することができる。
【0017】
上記発明において、前記アクチュエータの圧力を保持する際において運転モードを切替える切替部を有し、前記制御装置は、前記切替部に対する操作に応じて前記第1運転モードと第2運転モードとを切替えるようになっており、前記第2運転モードでは、前記圧力検出器で検出される圧力を前記保持圧力にて維持すべく、前記設定下限吐出容量を前記第1所定容量より小さい第2所定容量に設定してもよい。
【0018】
上記構成に従えば、第2運転モードでは、アクチュエータの圧力を保持すべく第1運転モードより低い駆動トルクで電動機を回転させることができる。このように第1運転モードより低い駆動トルクで電動機を回転させることができるので、第1運転モードのときより小さい電流で電動機を回転させることができる。また、2つの運転モードを切替部に対する操作によって切替えることができるので、モード切替えが容易である。
【0019】
上記発明において、前記制御装置は、前記切替部に対する操作に応じて第3運転モードに切替え可能であって、前記第3運転モードでは、前記圧力検出器で検出される圧力が前記保持圧力にて維持すべく、前記設定下限吐出容量を前記第2所定容量より大きくかつ第1所定容量より小さい第3所定容量としてもよい。
【0020】
上記構成に従えば、第3運転モードでは、アクチュエータの圧力を保持すべく第1運転モードより高く且つ第2運転モードより低い回転数にて電動機を回転させることができる。それ故、第2運転モードより駆動音を抑えつつ、第1運転モードより小さい電流で電動機を駆動させることができる。即ち、第2運転モードより騒音の発生を抑え、第1運転モードより小さい電流で電動機を駆動することができる。
【0021】
上記発明において、作動液の温度を検出する液温検出器を更に備え、前記制御装置は、前記液温検出器によって検出される液温に応じて前記設定下限吐出容量の値を調整してもよい。
【0022】
上記構成に従えば、液温上昇が生じても作動液の圧力を保持圧力に維持することができ、圧力を保持すべく電動機の回転数が増加して電動機の駆動音が大きくなることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、アクチュエータの圧力を保持する圧力保持状態において電動機の回転数の変化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態の液圧供給装置の構成を示す液圧回路図である。
図2図1の液圧供給装置に備わる液圧ポンプの断面図である。
図3図1の液圧供給装置の制御装置が実行する設定下限吐出容量の設定処理の手順を示すフローチャートである。
図4】最小吐出容量と第1乃至第3所定容量との関係を示すグラフである。
図5】最小吐出容量及び設定下限吐出容量と液温との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態の液圧供給装置1について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する液圧供給装置1は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0026】
産業機械及びロボットは、シリンダ機構及び液圧モータ等の種々のアクチュエータを備えており、アクチュエータを動かすことによって様々な作業を行うことができる。例えば、産業機械やロボット等には、図1に示すように、アクチュエータの一例である複動式シリンダ機構2が備わっており、このシリンダ機構2には、液圧供給装置1が接続されている。液圧供給装置1は、シリンダ機構2に作動液(油又は水等)を供給してシリンダ機構2を作動させるようになっている。以下では、液圧供給装置1について更に詳細に説明する。
【0027】
[液圧供給装置1]
液圧供給装置1は、前述の通りシリンダ機構2に作動液を供給してシリンダ機構2を作動させ、また供給する作動液の流れる方向や流量等を調整することによってシリンダ機構2の動作を制御する。このような機能を有する液圧供給装置1は、主に液圧ポンプ11と、吐出容量調整機構12と、電動機13と、制御装置14と、切替部15とを備えている。液圧ポンプ11は、両回転型のポンプであり、その回転方向に応じた方向へと作動液を吐出する。更に詳細に説明すると、液圧ポンプ11は、2つのポート11a,11bを有し、正方向に回転すると一方のポート11aから作動液を吸入し、その作動液を他方のポート11bから吐出する。また、逆方向に回転すると、液圧ポンプ11は、他方のポート11bから作動液を吸入し、その作動液を一方のポート11aから吐出する。このように作動液が吸引及び吐出される2つのポート11a,11bには、第1液通路16R及び第2液通路16Lを介してシリンダ機構2が接続されており、液圧ポンプ11は、シリンダ機構2と共に閉回路を構成している。
【0028】
シリンダ機構2は、複動型のものであり、シリンダ2a及びロッド2bを有している。シリンダ2aには、ロッド2bが往復運動可能に挿入されている。また、シリンダ2aには、ヘッド側ポート2c及びロッド側ポート2dが形成されており、各々はヘッド側空間及びロッド側空間と繋がっている。また、ヘッド側ポート2cには、第2液通路16Lが接続され、ロッド側ポート2dには、第1液通路16Rが接続されている。このように構成されている液圧シリンダ機構2は、液圧ポンプ11から第1液通路16Rを介してロッド側ポート2dに作動液が供給されるとロッド2bがシリンダ2aに対して縮退し、また液圧ポンプ11から第2液通路16Lを介してヘッド側ポート2cに作動液が供給されるとロッド2bがシリンダ2aに対して伸長する。このようにシリンダ機構2は、液圧ポンプ11からの作動液によって作動し、また作動液の流れる方向に応じた作動方向に作動する(即ち、伸長及び縮退する)。
【0029】
このような機能を有する液圧ポンプ11は、いわゆる可変容量形の斜板ポンプであり、斜板21を有している。斜板21は、傾転可能に構成されており、液圧ポンプ11は、斜板21の傾転角に応じて吐出容量qを変更する。以下では、液圧ポンプ11の構成について、その一例を図2を参照しながら更に詳細に説明する。液圧ポンプ11は、斜板21の他に、ケーシング22、回転軸23、シリンダブロック24、複数のピストン25、複数のシュー26、及びバルブプレート27を備えている。ケーシング22は、その中が中空に形成されており、その中に回転軸23、シリンダブロック24、複数のピストン25、複数のシュー26、及びバルブプレート27が収容されている。
【0030】
収容されている部材のうちの1つである回転軸23は、大略円柱状に形成されており、その軸線方向中間部分及び一端部が軸受部材28,29を介してケーシング22に正方向及び逆方向に回転可能に支持されている。また、回転軸23は、その他端側部分がケーシング22から突き出ており、そこには電動機13が連結されている。また、回転軸23の基端側部分には、シリンダブロック24が挿通されている。シリンダブロック24は、互いに軸線が一致し且つ相対回転不能に回転軸23に結合されている。また、シリンダブロック24には、その一端にて開口する複数のシリンダ室24aが形成されており、シリンダ室24aの各々には、ピストン25が挿入されている。
【0031】
ピストン25は、シリンダ室24a内を往復運動できるようになっている。また、ピストン25は、その一端側部分に凸球部25aを有しており、凸球部25aがシリンダ室24aから突出している。凸球部25aは、大略球状に形成されており、そこにはシュー26が転動可能に取り付けられている。シュー26は、ピストン25と共に軸線方向に往復運動し、底部が斜板21の一表面に押し付けられている。斜板21は、その内孔に回転軸23が挿通されており、その下端部に対して上端部をシリンダブロック24に近づけるようにして傾斜させて配置されている。このように配置されている斜板21は、回転軸23に対して傾転できるようになっており、その傾転角を変えることができる。
【0032】
このように構成されている斜板21には、前述の通り、各シュー26が押し付けられており、シュー26は、シリンダブロック24が回転するとピストン25と一緒に回転する。その際、シュー26は、斜板21の一表面に押し付けられているので、傾転する斜板21の一表面上をその軸線回りに摺動回転する。そうすることで、ピストン25がシリンダ室24aを往復運動する。また、シリンダブロック24の他端には、シリンダ室24aの各々に繋がるシリンダポート24bが形成され、また他端に当接させるようにバルブプレート27が設けられている。バルブプレート27は、ケーシング22に固定されており、シリンダブロック24に対して相対回転可能に設けられている。また、バルブプレート27には、第1液通路16R及び第2液通路16Lに夫々繋がる2つのポート11a,11bが形成されている。なお、図2では、説明の便宜上、2つのポート11a,11bは、周方向にずらして描かれている。これら2つのポート11a,11bは、複数のシリンダポート24bに対応させて配置され、複数のシリンダポート24bは、シリンダブロック24が回転することによって接続されるポートが2つのポート11a,11bのうちの何れかへと切替わるようになっている。
【0033】
このように構成される液圧ポンプ11は、例えば回転軸23が正回転すると、一方のポート11aからシリンダポート24bを介してシリンダ室24aに作動液を吸入する。また、吸入された作動液は、前記シリンダブロック24が約180度回転した後、ピストン25に押されてシリンダポート24bを介して他方のポート11bから排出される。他方、回転軸23が逆回転すると、液圧ポンプ11は、他方のポート11bから作動液を吸引し、一方のポート11aから作動液を排出する。このように構成されている液圧ポンプ11は、斜板21を傾転させることでピストン25の移動量を変えることができ、それに伴って液圧ポンプ11の吐出容量qが変わる。また、その移動量は斜板21の傾転角に応じて変化するので、斜板21の傾転角に応じて液圧ポンプ11の吐出容量qが変わる。このように構成されている液圧ポンプ11には、斜板21の傾転角を変えるべく図1に示すような吐出容量調整機構12が設けられている。
【0034】
吐出容量調整機構12は、いわゆるレギュレータであり、前述の通り斜板21の傾転角を変えて吐出容量を変更する機能を有しており、主にサーボピストン31と、傾転角制御弁32と、電磁比例制御弁33と、を有している。サーボピストン31は、大略円柱状に形成されており、図2においてケーシング22の紙面上部に収容されている。また、サーボピストン31は、ケーシング22内においてその軸線方向に往復運動可能に配置されており、ケーシング22には、サーボピストン31の両端部に対応する位置に夫々大径室22a,小径室22bが形成されている。サーボピストン31は、大径室22a,小径室22bに導かれる圧液の圧力pa,pb(即ち、大径室圧pa及び小径室圧pb)を両端部にて夫々受圧している。また、サーボピストン31は、その一端側部分と他端側部分とが外径が異なっており、大径室圧pa,小径室圧pbを受圧する面積、即ち受圧面積が異なっている。更に、サーボピストン31は、その中間部分に後で詳述する連結部材31aを有しており、この連結部材31aの小径室側の面に圧縮コイルばね30が設けられている。付勢部材である圧縮コイルばね30は、サーボピストン31を大径室22a側(即ち、図2の紙面右側)へと付勢している。それ故、サーボピストン31は、圧縮コイルばねの付勢力と小径室圧pbによる推力と,大径室圧paによる推力とが釣り合う位置に移動する。なお、圧縮コイルばね30は、必ずしも備えていなくても良い。
【0035】
また、サーボピストン31は、連結部材31aによって斜板21の上端部に連結されている。それ故、斜板21は、サーボピストン31が大径室22a側の方へと移動すると吐出容量qを増加させるように倒れ、サーボピストン31がその小径室22b側の方へと移動すると吐出容量qを減少させるように起き上がる。また、液圧ポンプ11では、サーボピストン31に関して、サーボピストン31の大径室22a側への移動量が以下のようにして規制されている。即ち、サーボピストン31は、その大径室22a側に移動すると、ストッパである大径室22aの壁面に当たり、それ以上の移動ができないようになっている。即ち、サーボピストン31の大径室22a側への移動量が大径室22aの壁面によって制限され、それによって最大傾転量が制限される。また、液圧ポンプ11は、サーボピストン31の小径室22b側への移動量を物理的に制限すべく最小容量調整機構40を備えており、ケーシング22の他方の小径室22bには、最小容量調整機構40を設けるべく開口が形成されている。
【0036】
最小容量調整機構40は、蓋体41と、当接部材42と、調整ねじ43と、ロックナット44とを有している。蓋体41は、大略円筒状に形成されており、先端側部分が残余の部分より小径に形成されている。蓋体41は、その先端側部分を小径室22bの開口に螺合させ、小径室22bの開口を塞いでいる。また、蓋体41の内孔は、基端側部分に対して先端側部分が大径に形成されており、先端側部分には大略円板状の当接部材42が、内孔の軸線に沿って移動可能に嵌挿されている。当接部材42の外周面には、Oリング45が設けられており、Oリング45によって小径室22bから外側へとパイロット液が漏れ出ることを防いでいる。また、蓋体41の内孔の基端側部分には、当接部材42の位置を調整すべく調整ねじ43が螺合されており、調整ねじ43は、それを回すことによって当接部材42の位置を調整することができる。
【0037】
このように構成されている最小容量調整機構40では、大径室22aに圧液が導かれてサーボピストン31が小径室22b側に移動すると、やがてサーボピストン31が当接部材42に当たり、サーボピストン31の移動が物理的に規制される。即ち、サーボピストン31の移動量を当接部材42によって制限し、それによって最小傾転量を制限している。このような機能を有する当接部材42は、前述の通り調整ねじ43によってその位置を変えることができる。即ち、その当接部材42の位置を変えることによって、サーボピストン31の制限される移動量を調整することができる。これにより、液圧ポンプ11では、最小容量調整機構40の調整ねじ43を回すことによって傾転量を機械的に調整することができる。
【0038】
このように液圧ポンプ11では、ストッパ及び最小容量調整機構40によってサーボピストン31の移動量を制限することによって、斜板21が最大傾転量と最小傾転量との間の範囲内にて動くように斜板21の傾転量を制限されている。これにより、液圧ポンプ11の吐出容量qが最大吐出容量qmaxと最小吐出容量qminとの範囲内で物理的に制限され、それらの間の範囲内にて吐出容量qを変えるべくサーボピストン31が移動する。他方、大径室22a,小径室22bには、サーボピストン31を移動させる圧液が導かれ、各室22a,22bは、圧液を導くべく吐出圧選択通路35を介して吐出圧導入通路39に夫々繋がっている。
【0039】
吐出圧導入通路39は、第1液通路16Rと第2液通路16Lとを繋ぐようにして配置されている。吐出圧導入通路39の途中には、シャトル弁34が介在し、またシャトル弁34は、吐出圧選択通路35を介して小径室22bに接続されている。このように配置されているシャトル弁34は、第1液通路16R及び第2液通路16Lを夫々流れる作動液のうち高圧の作動液を選択して、選択された高圧の作動液を吐出圧選択通路35に出力する。また、吐出圧選択通路35には、傾転角制御弁32と、電磁比例制御弁33が接続されている。
【0040】
傾転角制御弁32は、例えばパイロット式のスプール弁であり、吐出圧選択通路35の他に、タンク19及び大径室22aに接続されている。即ち、傾転角制御弁32は、そこに入力される制御圧pに応じて大径室22aに出力する大径室圧paを調整する。更に詳細に説明すると、傾転角制御弁32は、制御圧pに応じてスプール32aを動かして吐出圧選択通路35と大径室22aとの間の開口面積、及びタンク19と大径室22aとの間の開口面積を変えて大径室圧paを調整する。
【0041】
また、傾転角制御弁32は、スリーブ32bを有しており、スリーブ32bは、相対移動可能にスプール32aに外嵌されている。即ち、スリーブ32bは、スプール32aに対する相対位置を変化させることができ、それによって吐出圧選択通路35と大径室22aとの間の開口面積、及びタンク19と大径室22aとの間の開口面積を変化させることができる。また、スリーブ32bは、フィードバックレバー32cを介してサーボピストン31に連結されており、スリーブ32bは、サーボピストン31に連動して移動する。
【0042】
このように構成されている傾転角制御弁32は、スプール32aを移動させて大径室圧paを調整することによってサーボピストン31を移動させて斜板21の傾転角を変えることができる。また、スリーブ32bは、サーボピストン31に連動してスプール32aに対する相対位置を変え、サーボピストン31がそれに作用する力が釣り合う位置(即ち、スプール32aの移動量に応じた位置)まで移動すると吐出圧選択通路35及びタンク19と大径室22aとの間を閉じる。そうすることで、傾転角制御弁32に入力される制御圧pに応じた位置にてサーボピストン31を保持することができる、即ち、傾転角制御弁32に入力される制御圧pに応じた角度にて斜板21の傾転角を保持することができる。このような機能を有する傾転角制御弁32には、そこに制御圧pを入力すべく電磁比例制御弁33が接続されている。
【0043】
電磁比例制御弁33は、前述の通り傾転角制御弁32及び吐出圧選択通路35に接続されている他、タンク19に接続されており、そこに入力される信号に応じた圧力の制御圧pを傾転角制御弁32に出力する。これにより、電磁比例制御弁33に入力する信号に応じた位置へとサーボピストン31を移動させ、前記信号に応じた角度に斜板21傾転させることができる。即ち、それによって吐出容量qを電磁比例制御弁33に入力する信号に応じた量に調整することができる。このように構成されている液圧ポンプ11には、前述の通り、その回転軸23を回転駆動可能に電動機13が減速機等を介して連結されている。
【0044】
電動機13は、サーボモータであり、そこに入力される信号に応じて回転方向を切替え可能に構成されている、即ち回転軸23を正方向及び逆方向に回転可能に構成されている。このように回転軸23の回転方向を変えることによって、液圧ポンプ11では作動液を吐出する方向(即ち、ポート11a,11b)を切替えることができる。また、電動機13は、そこに入力される信号に応じて回転数Nを変えることができるようになっている、即ち回転軸23の回転数を変更できるようになっている。このように回転軸23の回転数が変更されることによって吐出する作動液の流量を増減させることができる。このようにして流量が調整されながら吐出される作動液は、前述の通り、液圧ポンプ11から第1液通路16R及び第2液通路16Lの何れかを介してシリンダ機構2に供給される。また、第1液通路16R及び第2液通路16Lには、液圧ポンプ11及びシリンダ機構2の他に、リリーフ弁17R,17L及び逆止弁18R,18Lが接続されている。
【0045】
リリーフ弁17R,17Lは、第1液通路16R及び第2液通路16Lに夫々対応させて接続され、またタンク19にも接続されている。このように配置されているリリーフ弁17R,17Lは、対応する第1液通路16R及び第2液通路16Lを流れる作動液が所定圧力以上になると、その作動液をタンク19に排出する。即ち、2つの通路16R,16Lを流れる作動液が所定圧力以上の高圧になることを防いでいる。逆止弁18R,18Lもまた、第1液通路16R及び第2液通路16Lに夫々対応させて接続され、またタンク19にも接続されている。このように配置されている逆止弁18R,18Lは、タンク19から対応する第1液通路16R及び第2液通路16Lへの作動液の流れを許容するが、その逆方向流れを阻止する。従って、逆止弁18R,18Lは、対応する第1液通路16R及び第2液通路16Lを流れる作動液が不足する際に、タンク19から作動液を吸い上げて対応する第1液通路16R及び第2液通路16Lに補給する。なお、逆止弁18Lは、第1液通路16Rの液圧がパイロット圧として導かれるようになっている。即ち、逆止弁18Lは、第1液通路16Rを流れる作動液の圧力(即ち、パイロット圧)が予め定められる設定圧力を超えると、第2液通路16Lとタンク19とを連通させる。このような構成を有する液圧供給装置1では、電動機13及び電磁比例制御弁33の動きを制御すべく、それらに制御装置14が電気的に接続されている。
【0046】
制御装置14は、電動機13及び電磁比例制御弁33に信号を出力してそれらの動作を制御するようになっている。また、制御装置14には、切替部15も電気的に接続されている。切替部15は、例えばダイアル式又はボタン式の入力器であって、後述する3つの運転モードの何れかを指示すべく操作可能に構成されている。即ち、切替部15は、低騒音モード、バランスモード、及び低トルクモードを含む3つの運転モードのうちの何れかを選択可能に構成されており、選択された運転モードに応じた信号を制御装置14に出力する。なお、低騒音モードは、電動機13から発生する駆動音を抑えることができる第1規定回転数N以下にて電動機13を駆動させるモードである。
【0047】
また、低トルクモードは、電動機13の駆動トルクが最も小さい第2規定回転数N及びその付近の回転数にて電動機13を駆動させるモードであり、バランスモードは、駆動音を抑えつつトルクをある程度低く抑えられる第3規定回転数N及びその付近の回転数にて電動機13を駆動させるモードである。なお、各回転数N,N,Nは、N<N<Nとなっている。制御装置14は、切替部15から信号が出力されると、その信号に応じて電動機13及び電磁比例制御弁33の動きを制御する。また、制御装置14には、電動機13及び電磁比例制御弁33の動きを制御すべく、圧力センサ36R,36L、液温センサ37、及び回転数センサ38が電気的に接続されている。
【0048】
圧力検出器である圧力センサ36R,36Lは、2つの液通路16R,16Lに夫々対応させて接続されており、対応する液通路16R,16Lを流れる作動液の圧力を検出する。即ち、第1圧力センサ36Rは、第1液通路16Rを流れる作動液の圧力を検出し、第2圧力センサ36Lは、第2液通路16Lを流れる作動液の圧力を検出する。また、液温センサ37は、タンク19に接続されており、タンク19の作動液の温度を検出する。また、回転数センサ38は、電動機13に設けられており、電動機13の回転数Nを検出するようになっている。このように構成される4つのセンサ36R,36L,37,38は、検出結果に応じた信号を制御装置14に出力し、制御装置14は、4つのセンサ36R,36L,37,38から入力された信号に基づいて電動機13及び電磁比例制御弁33の動きを制御する。
【0049】
また、制御装置14は、機械の動作工程、例えば、シリンダ機構2の下降、圧力保持、上昇、に応じて電動機13の回転方向と回転数、並びに電磁比例制御弁33を含めたポンプ傾転角を制御する。以下では、液圧供給装置1のこのような動作のうち圧力を保持する工程における制御、即ち圧力保持制御について説明する。
【0050】
まず、一般的な圧力保持制御について説明する。即ち、制御装置14は、まず液圧ポンプ11の吐出容量qを設定下限吐出容量 まで下げるべく、電磁比例制御弁33の動きを制御する。ここで、設定下限吐出容量 とは、後で詳述する運転モードに応じて設定される吐出容量であり、前述する最小吐出容量qminより大きい吐出容量である。制御装置14は、液圧ポンプ11の吐出容量qが前述する設定下限吐出容量 となるように電磁比例制御弁33の動きを制御する。更に、制御装置14は、ポート11a,11bのうち吐出側のポートに繋がる液通路16R,16Lがシリンダ機構2のロッド2bが受ける荷重に応じた保持圧力にて維持されるように電動機13の動作を制御する。即ち、制御装置14は、図示しない操作装置からの圧力指令値と圧力センサ36R,36Lの検出結果とが一致するように電動機13の回転数Nを調整すべくPID制御を行う。また、シリンダ機構2のロッド2bが受ける荷重の方向により電動機13の回転方向が反転する。これにより、シリンダ機構2のロッド2bの位置を保持すべく作動液の圧力保持を行うことができる。このような機能を有する制御装置14は、前述の通り運転モードに応じて設定下限吐出容量 を変動させるようになっており、以下では設定下限吐出容量 の設定手順(即ち、設定処理)について図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0051】
制御装置14は、図示しない電源がオンになり、制御装置14に電力が供給されると設定処理を開始する。設定処理が開始されると、ステップS1に移行する。圧力保持判定工程であるステップS1では、シリンダ機構2の位置を保持すべく、2つの液通路16R,16Lを流れる作動液の圧力の何れかが保持圧力にて保持されている、即ち液圧供給装置1が圧力保持状態にあるか否かを判定する。具体的に説明すると、制御装置14は、圧力センサ36R,36Lからの信号に基づいて2つの液通路16R,16Lの流れる作動液の圧力を検出する。更に制御装置14は、検出された2つの圧力のうち何れかの圧力が保持圧力以上であるか否かを判定する。例えば、圧力制御時の圧力指令値に対して圧力実績が80%以上になれば保持圧以上になったと判断する。圧力保持状態でない場合、制御装置14は、通常の回転数制御を行う、即ちシリンダ機構2の下降又は上昇をさせるべく電動機13の回転方向及び回転数、並びに液圧ポンプ11の傾転角を制御する。制御装置14は、このような通常の回転数制御を行いつつ再度圧力保持状態か否かの判定を繰り返し行い、やがて圧力保持状態であると判断されるとステップS2に移行する。
【0052】
選択モード判定工程であるステップS2では、3つの運転モードのうち何れが選択されているかを制御装置14が判断する。具体的に説明すると、制御装置14は、運転モードに関する信号が切替部15から出力されると、その信号に基づいて選択されている運転モードを上書きするように記憶し、その記憶される運転モードに基づいて現在選択されている運転モードを判断する。選択されるモードが低騒音モードの場合、ステップS11に移行する。
【0053】
下限設定工程であるステップS11では、制御装置14が設定下限吐出容量 を第1所定容量qに設定する。ここで第1所定容量qは、前述する最小吐出容量qminより大きく設定されている(図4の実線及び一点鎖線参照)。設定下限吐出容量 が第1所定容量qに設定されると、ステップS12に移行する。吐出容量設定工程であるステップS12では、液圧ポンプ11から吐出される作動液の流量を抑えるべく、制御装置14が電磁比例制御弁33の動作を制御して液圧ポンプ11の吐出容量qを設定下限吐出容量 、即ち第1所定容量qにする。液圧供給装置1では、装置全体における作動液のリーク量を大よそ把握することができるので、そのリーク量から圧力保持状態において必要な最小吐出流量を事前に推測することができる。液圧ポンプ11の吐出流量は、前述の通り、吐出容量qと電動機13の回転数Nに比例する。そこで、第1所定容量qは、最小吐出流量に基づき、電動機13の駆動音が小さい第1規定回転数N以下にて電動機13が主に作動できるような値に設定されており、低騒音モードでは、液圧ポンプ11の吐出容量qが基本的に第1所定容量qにて維持されている。
【0054】
なお、制御装置14は、設定後、吐出容量qを第1所定容量qに維持しつつ、検出される圧力が保持圧力以上に維持されるように電動機13の動作を制御する。他方、制御装置14は、作動液の温度変化等で液圧ポンプ11の内部リーク等が大きくなって検出される圧力が保持圧力未満となると、ポンプ容量を増加して、液圧ポンプ11の吐出流量を大きくする。このようにして、液圧供給装置1は圧力保持状態を維持している。他方、設定処理に関しては、液圧ポンプ11の吐出容量qが第1所定容量qになると、ステップS13に移行する。
【0055】
回転数判定工程であるステップS13では、制御装置14が電動機13の回転数Nが第1規定回転数N以下か否かを判定する。第1規定回転数Nは、発せられる駆動音が許容できる音量以下、又は駆動音周波数の高さが想定した周波数以下となる回転数に設定され、これによって前述の通り電動機13で発生する駆動音を抑えることができる。第1規定回転数Nは、例えば最大回転数に対して10%以上80%以下にて設定される。即ち、制御装置14は電動機13で発生する駆動音が大きいか否かを判定している。電動機13の回転数Nが第1規定回転数N以下であると判定されると、ステップS1に戻り、再度圧力保持状態か否かを判定する。他方、第1規定回転数N以上であると判定されると、ステップS14に移行する。
【0056】
下限変更工程であるステップS14では、制御装置14によって設定下限吐出容量 が変更される。即ち、制御装置14は、電動機13の回転数Nを下げるべく吐出容量qを増加させる。液圧ポンプ11の吐出流量は、電動機13の回転数N×吐出容量qに比例しており、吐出容量qを増加させることによって電動機13の回転数Nを下げることができる。それ故、制御装置14は、吐出容量qを増加させて電動機13の回転数Nを下げる。具体的に説明すると、制御装置14は、設定下限吐出容量 として設定されていた値に所定の増加量Δqを加算し、その値を新たな設定下限吐出容量 として設定する。設定下限吐出容量 が設定変更されると、制御装置14は、設定される設定下限吐出容量qLに合わせて吐出容量qを変更すべく電磁比例制御弁33の動きを制御する。このようにして吐出容量qが変更されると電動機13の回転数Nを低下させることができ、電動機13にて発生する駆動音を小さくすることができる。即ち、電動機13によって発生される騒音を抑えることができる。そして、設定下限吐出容量 が設定変更されると、ステップS1に戻り、再び圧力保持状態か否かが判定される。
【0057】
次に、ステップS2において選択された運転モードが低トルクモードの場合、について説明する。運転モードが低トルクモードの場合、ステップS2からステップS21に移行する。下限設定工程であるステップS21では、制御装置14が設定下限吐出容量 を第2所定容量qに設定する。ここで第2所定容量qは、第1所定容量qより小さく設定されている(図4実線及び二点鎖線参照)。設定下限吐出容量 が第2所定容量qに設定されると、ステップS22に移行する。
【0058】
吐出容量設定工程であるステップS22では、液圧ポンプ11から吐出される作動液の流量を抑えるべく、制御装置14が電磁比例制御弁33の動作を制御して液圧ポンプ11の吐出容量qを設定下限吐出容量 、即ち第2所定容量qにする。なお、制御装置14は、設定後、吐出容量qを第2所定容量qに維持しつつ、検出される圧力が保持圧力以上に維持されるように電動機13の動作を制御する。低トルクモードは、前述の通り、電動機13の駆動トルクが最も小さい第2規定回転数N及びその付近にて電動機13を作動させるモードである。それを実現すべく、第2所定容量qは、前述する最小吐出流量に基づき、電動機13の駆動トルクが最も小さい第2規定回転数N及びその付近の回転数にて電動機13が作動できるような値に設定されており、低トルクモードでは液圧ポンプ11の吐出容量qが第2所定容量qにて維持されている。このようにして、液圧供給装置1では、低トルクモードにおいて電動機13が低トルクを保ったまま圧力保持状態が維持される。設定処理に関しては、液圧ポンプ11の吐出容量qが第2所定容量qになると、ステップS1に戻り、再び圧力保持状態か否かが判定される。
【0059】
最後に、ステップS2において選択された運転モードがバランスモードの場合、について説明する。運転モードがバランスモードの場合ステップS2からステップS31に移行する。下限設定工程であるステップS31では、制御装置14が設定下限吐出容量 を第3所定容量qに設定する。ここで第3所定容量qは、第1所定容量qより小さく且つ第2所定容量qより大きく設定されている(図4実線及び三点鎖線参照)。設定下限吐出容量 が第3所定容量qに設定されると、ステップS32に移行する。
【0060】
吐出容量設定工程であるステップS32では、液圧ポンプ11から吐出される作動液の流量を抑えるべく、制御装置14が電磁比例制御弁33の動作を制御して液圧ポンプ11の吐出容量qを設定下限吐出容量 、即ち第3所定容量qにする。なお、制御装置14は、設定後、吐出容量qを第3所定容量qに維持しつつ、検出される圧力が保持圧力以上に維持されるように電動機13の動作を制御する。バランスモード、低トルクモードより駆動音を抑えつつ、低騒音モードより低トルクで駆動できる第3規定回転数N及びその付近にて電動機13を駆動させるモードである。それを実現すべく、第3所定容量qは、最小吐出流量に基づき、規定回転数N及びその付近の回転数にて電動機13が作動できるような値に設定されており、バランスモードでは、液圧ポンプ11の吐出容量qが第3所定容量qにて維持されている。設定処理に関しては、液圧ポンプ11の吐出容量qが第3所定容量qになると、ステップS1に戻り、再び圧力保持状態か否かが判定される。
【0061】
このように構成されている液圧供給装置1では、圧力保持状態における液圧ポンプ11の吐出容量qが最小吐出容量qminより大きい設定下限吐出容量qに設定して設定下限吐出容量qを変動させることを可能にしている。吐出容量qが一定の場合、圧力を保持すべく液圧供給装置1の駆動状況に応じて電動機13の回転数Nが所望値より過度に大きくなることがある。しかし、液圧供給装置1では、圧力保持状態であっても液圧供給装置1の駆動状況、例えば電動機13の回転数N及び作動液の温度等に応じて吐出容量qを変更することができるので、圧力保持状態において作動液の液圧を維持すべく電動機13の回転数Nを大きく変動させることを抑制することができる。
【0062】
また、液圧供給装置1では、低騒音モードにおいて電動機13の騒音の低減を実現し、低トルクモードにおいて出力の小さい電動機13の使用を可能とすることができる。また、バランスモードでは、電動機の騒音を低減しつつ低騒音モードに対して低トルク、即ち小さい電流で電動機13を駆動することができ、電動機13からの発熱を抑えることができる。また、液圧供給装置1では、これら3つのモードを切替部15によって使用者の好み及び環境状況に応じて切替えることができるので、液圧供給装置1を備える産業機械としての利便性が高い。即ち、夜間等に産業機械で作業を行う場合には、騒音に配慮して低騒音モードにて電動機13の騒音の低減を実現し、昼間等に暗騒音の比較的大きい環境で作業を行う場合には、低トルクモードにて電動機13からの発熱を抑えて装置を駆動することができる。また、昼間であっても、環境上あまり大きな音が発せられない場合には、バランスモードにて電動機13における駆動音の低減を図りつつ電動機13からの発熱を抑えることができる。
【0063】
また、液圧供給装置1の制御装置14は、作動液の温度、即ち液温に基づいて設定下限吐出容量qを変更する。即ち、液温が上昇すると粘性が低下し、液圧供給装置1における高圧箇所からのリーク量が増加する。それ故、設定下限吐出容量qを一定値とすると、作動液の圧力低下を抑えるべく電動機13の回転数Nを増加させる必要がある。これに対して、制御装置14では、図5に示すように液温に応じて設定下限吐出容量qを変化させる。即ち、設定下限吐出容量qは、基本的に最小吐出容量qminより大きく設定されており、液温上昇に応じて増加する。設定下限吐出容量qは、最小吐出容量qminより小さくない値に設定されていてもよい。このように設定下限吐出容量qを設定することによって、液温上昇が生じても作動液の圧力を保持圧力に維持することができ、また維持すべく電動機13の回転数Nが増加して電動機の駆動音が大きくなることを抑制することができる。
【0064】
また、液圧供給装置1では、設定下限吐出容量qを最小容量調整機構40によって機械的に変えるのではなく、電気的に変えることができる。それ故、設定下限吐出容量qを機械的に変える場合に比べて、設定下限吐出容量qを容易に変えることができ、また各モードにおける設定下限吐出容量qの値の再現性を高めることができる。
【0065】
[その他の実施形態について]
本実施形態の液圧供給装置1では、設定下限吐出容量qが運転モード及び液温の両方に基づいて設定されているが、必ずしも両方に基づいて変更する必要はない。即ち、設定下限吐出容量qは、運転モードにのみ基づいて設定されてもよく、また液温にのみ基づいて設定されてもよい。また、設定下限吐出容量qとして設定される3つの所定容量q,q,qは、液圧ポンプ11の機種(即ち、吐出容量q)及び液圧供給装置1の構成によって異なるが、前述の通り、液圧供給装置1におけるリーク量に基づいて設定することができる。
【0066】
また、本実施形態の液圧供給装置1では、3つの運転モードから1つのモードを選択することができるように構成されているが、選択可能な運転モードは3つに限定されない。例えば、選択可能な運転モードは低騒音モード及び低トルクモードの2つであってもよい。選択可能な運転モードは、逆に更に別のモードを加えて4つ以上にしてもよい。また、本実施形態の液圧供給装置1では、液圧ポンプ11として斜板ポンプが用いられているが、これに限定されない。例えば、斜軸ポンプであってもよく、吐出容量qを変えることができるものであればよい。また、斜板21を傾転させる吐出容量調整機構12は、必ずしも上述するような構成である必要はない。即ち、サーボピストン31は、パイロット圧式のものであるがサーボモータやソレノイドによって直接駆動される電動式のものであってもよく、その構成については限定されない。また、液圧ポンプ11は、両回転型のポンプが用いられているが、一方向のみに回転する片回転型のポンプであってもよい。この場合、ポンプとアクチュエータとの間に方向切換弁が介在され、方向切換弁によって作動油の流れる方向が切替えられる。
【0067】
更に、本実施形態の液圧供給装置1では、電動機13としてサーボモータが採用されているが、必ずしもサーボモータに限定されず、回転数制御が可能な電動機であればよい。更に、本実施形態の液圧供給装置1では、アクチュエータの例としてシリンダ機構2が開示されているが、アクチュエータはシリンダ機構2に限定されない。例えば、単動式のピストン及び前述するような液圧モータであってもよく、作動液を供給することによって駆動可能なアクチュエータであればよい。また、適用される機械も産業機械に限定されず、ロボット全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 液圧供給装置
2 シリンダ機構
11 液圧ポンプ
12 吐出容量調整機構
13 電動機
14 制御装置
15 切替部
36R 第1圧力センサ(圧力検出器)
36L 第2圧力センサ(圧力検出器)
37 液温センサ(液温検出器)
38 回転数センサ(回転数検出器)
図1
図2
図3
図4
図5