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特許7043443インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法
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  • 特許-インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20220322BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/165 211
B41J2/01 451
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019038771
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020142387
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】新井 章文
(72)【発明者】
【氏名】澤田 哲平
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-136436(JP,A)
【文献】米国特許第10717284(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式によりインクを吐出するインクジェットプリンタにおいて、
インクジェット方式によりインクジェットノズルからインクを吐出するインクヘッドと、
前記インクジェットノズルが形成されたインクジェットノズル面から離隔した位置と前記インクジェットノズル面に装着された位置との間を相対的に移動自在のキャップ部材と、前記キャップ部材に接続されて前記キャップ部材を減圧するように作動する吸引ポンプとを有するキャップユニットと、
前記離隔した位置から前記インクジェットノズル面側へ前記キャップ部材を相対的に移動させる移動制御手段と、
前記インクヘッドから前記キャップ部材側へ前記インクが吸引されたことを検出する検出手段と、
前記検出手段が前記インクが吸引されたことを検出したときにおける前記キャップ部材の位置を検出するキャップ部材位置検出手段と、
前記キャップ部材位置検出手段が検出した前記キャップ部材の位置が予め設定された範囲にあるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記キャップ部材の位置が前記予め設定された範囲にないと判定されたときに警告する警告手段と
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリンタにおいて、さらに、
動作状態を表示する表示手段を有し、
前記警告手段は、前記表示手段に警告表示を行う
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記警告手段は、音声による警告または動作停止による警告を行う
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
請求項1、2およびいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記移動制御手段は、前記キャップ部材または前記インクヘッドまたは前記キャップ部材と前記インクヘッドとの両者を移動させる
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項5】
請求項1、2、3およびいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記予め設定された範囲は、設計上の正常動作を行うための適正位置として設定された範囲である
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項6】
インクジェット方式によりインクを吐出するインクジェットプリンタにおいて、
インクジェット方式によりインクジェットノズルからインクを吐出するインクヘッドと、
前記インクジェットノズルが形成されたインクジェットノズル面から離隔した位置と前記インクジェットノズル面に装着された位置との間を相対的に移動自在のキャップ部材と、前記キャップ部材に接続されて前記キャップ部材を減圧するように作動する吸引ポンプとを有するキャップユニットと、
前記離隔した位置から前記インクジェットノズル面側へ前記キャップ部材を相対的に移動させる移動制御手段と、
前記インクヘッドから前記キャップ部材側へ前記インクが吸引されたことを検出する検出手段と、
前記検出手段が前記インクが吸引されたことを検出したときにおける前記キャップ部材の位置を検出するキャップ部材位置検出手段と、
前記キャップ部材位置検出手段が検出した前記キャップ部材の位置が予め設定された範囲にあるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記キャップ部材の位置が前記予め設定された範囲にないと判定されたときに警告する警告手段と
を有し、
前記インクヘッドは複数個配置されており、
前記キャップ部材位置検出手段は、前記検出手段が前記複数個のインクヘッドの全てから前記インクが吸引されたことを検出したときにおける前記キャップ部材の位置を検出する
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項7】
インクジェット方式によりインクジェットノズルからインクを吐出するインクヘッドと、
前記インクジェットノズルが形成されたインクジェットノズル面から離隔した位置と前記インクジェットノズル面に装着された位置との間を相対的に移動自在のキャップ部材と、前記キャップ部材に接続されて前記キャップ部材を減圧するように作動する吸引ポンプとを有するキャップユニットと
を有するインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法において、
前記吸引ポンプを作動させた状態において、前記離隔した位置から前記インクジェットノズル面側へ前記キャップ部材を相対的に移動させる移動工程と、
前記インクヘッドから前記キャップ部材側へ前記インクが吸引されたことを検出する検出工程と、
前記検出工程により前記インクが吸引されたことを検出したときにおける前記キャップ部材の位置を検出するキャップ部材位置検出工程と、
前記キャップ部材位置検出工程により検出した前記キャップ部材の位置が予め設定された範囲にあるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程により前記キャップ部材の位置が前記予め設定された範囲にないと判定されたときに警告する警告工程と
を有することを特徴とするインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法。
【請求項8】
請求項7に記載のインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法において、
前記警告工程において、警告表示を行う
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法。
【請求項9】
請求項7に記載のインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法において、
前記警告工程において、音声による警告または動作停止による警告を行う
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法。
【請求項10】
請求項7、8およびいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法において、
前記移動工程において、前記キャップ部材または前記インクヘッドまたは前記キャップ部材と前記インクヘッドとの両者を移動させる
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法。
【請求項11】
請求項7、8、9および10いずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法において、
前記予め設定された範囲は、設計上の正常動作を行うための適正位置として設定された範囲である
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法。
【請求項12】
インクジェット方式によりインクジェットノズルからインクを吐出するインクヘッドと、
前記インクジェットノズルが形成されたインクジェットノズル面から離隔した位置と前記インクジェットノズル面に装着された位置との間を相対的に移動自在のキャップ部材と、前記キャップ部材に接続されて前記キャップ部材を減圧するように作動する吸引ポンプとを有するキャップユニットと
を有するインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法において、
前記吸引ポンプを作動させた状態において、前記離隔した位置から前記インクジェットノズル面側へ前記キャップ部材を相対的に移動させる移動工程と、
前記インクヘッドから前記キャップ部材側へ前記インクが吸引されたことを検出する検出工程と、
前記検出工程により前記インクが吸引されたことを検出したときにおける前記キャップ部材の位置を検出するキャップ部材位置検出工程と、
前記キャップ部材位置検出工程により検出した前記キャップ部材の位置が予め設定された範囲にあるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程により前記キャップ部材の位置が前記予め設定された範囲にないと判定されたときに警告する警告工程と
を有し、
前記インクヘッドは複数個配置されており、
前記キャップ部材位置検出工程において、前記検出工程にて前記複数個のインクヘッドの全てから前記インクが吸引されたことを検出したときにおける前記キャップ部材の位置を検出する
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法。
【請求項13】
請求項7、8、9、10、11および12いずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法において、
前記移動工程と、前記検出工程と、前記キャップ部材位置検出工程と、前記判定工程と、前記警告工程とを、予め設定された時間間隔で繰り返し行う
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法に関する。
【0002】
さらに詳細には、本発明は、インクヘッドにおけるメディアに向けてインクジェット方式によりインクを吐出するインクジェットノズルの吐出性能を維持するためのキャップユニットを備えたインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法に関する。
【0003】
なお、本明細書および本特許請求の範囲において、「インクジェット方式」は、二値偏向方式あるいは連続偏向方式などの各種の連続方式や、サーマル方式あるいは圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む、従来より公知の各種の手法によるインクジェット技術を用いた印刷方法を意味するものとする。
【0004】
また、本明細書および本特許請求の範囲において、「メディア」には、普通紙などの紙類よりなる各種の記録媒体は勿論のこと、ポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)やポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)などの樹脂材料、織物、布、アルミ、鉄あるいは木材などのような各種材料などからなる種々の媒体が含まれるものとする。
【背景技術】
【0005】
一般に、例えば、特許文献1として提示する特開2016-87858号公報に開示されているように、メディアに向けてインクジェット方式によりインクを吐出するインクジェットノズルを有するインクヘッドを備えたインクジェットプリンタが知られている。
【0006】
こうしたインクジェットプリンタにおいては、インクヘッドにおけるインクジェットノズルの吐出性能を良好に維持するための装置として、所謂、キャップユニットが設けられている。
【0007】
ここで、キャップユニットとは、印刷待機時において、インクヘッドのインクジェットノズルが形成された面(インクジェットノズル面)を覆うように装着されるキャップ部材と、当該キャップ部材に接続された吸引ポンプとを有して構成されるものである。
【0008】
インクジェットプリンタの印刷待機時において、インクジェットノズル面にキャップ部材が装着されることで、インクジェットノズル面とキャップ部材との間に密閉空間が形成される。
【0009】
この密閉空間が形成された状態で吸引ポンプを駆動させることによりキャップ部材内を減圧すると、それに伴い上記した密閉空間が減圧されて、インクヘッド内のインクがインクジェットノズルからキャップ部材へ排出され、これによりインクジェットノズルの吐出性能を良好に維持することができる。
【0010】
なお、このようにインクヘッド内のインクをインクジェットノズルからキャップ部材へ排出するための処理を、本明細書および本特許請求の範囲においては「吸引処理」と称することとする。
【0011】
また、吸引処理の後に、キャップ部材内に残留したインクを排出するために、インクジェットノズル面に対するキャップ部材の装着を解除して、キャップ部材をインクジェット面から離隔することによりキャップ部材内および密閉空間を大気圧に開放した状態とし、再度吸引ポンプを駆動することが行われている。
【0012】
このキャップ部材内および密閉空間を大気圧に開放した状態での吸引ポンプの駆動により、キャップ部材内に残留したインクを排出することができ、このキャップ部材内に残留したインクを排出するための処理を、本明細書および本特許請求の範囲においては「空吸引処理」と称することとする。
【0013】
ところで、キャップユニットを構成するキャップ部材は、インクジェットノズル面との密着性を良好に維持するために、インクジェットノズルを覆う領域にゴムなどの可撓性材料により形成されたブレードが設けられている。
【0014】
キャップ部材は、こうしたブレードの経年使用による劣化や、紙(メディア)詰まりによるインクヘッドの配置位置ずれなどにより、インクジェットノズル面との密着性を損なうようになるという不具合を生じていた。
【0015】
従来においては、上記したような不具合に対処するために、十分な裕度をもってブレードなどの各種の構成部品の交換を行ったり位置調整を行うなどのように、短めの間隔で定期的にキャップユニットのメンテナンス作業を行うようにしていた。
【0016】
一方、インクジェットプリンタが予め設定された規格を超えた過酷な環境で使用されると、上記した短めのメンテナンス作業の間隔でも、ブレードを含む各種の構成部品の予期せぬ劣化などによる不具合が発生し、インクジェットノズル面との密着性を損なうこととなっていた。
【0017】
即ち、従来の技術においては、キャップユニットのメンテナンス作業を行う時期を適切なタイミングで知ることができなかったために、短めの間隔による定期的なメンテナンス作業によりメンテナンス頻度や部品交換頻度が増加するという問題点や、予め設定された規格を超えた過酷な環境で使用された場合における不具合を早期に発見することができないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特開2016-87858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、従来の技術が有する上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、キャップユニットのメンテナンス作業を行う時期を適切なタイミングで知ることを可能にしたインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明は、予め設定された時間間隔で、キャップユニットの吸引ポンプを駆動してキャップ部材内を減圧しながら、キャップ部材をインクジェットノズル面に装着していない位置(基準位置)からインクジェットノズル面側へ徐々に移動させ、インクヘッドからインクの吸引を開始した位置が、予め適正位置として設定された範囲(適正範囲)に入っているか否かを判定するようにしたものである。
【0021】
作業者は、インクヘッドからインクの吸引を開始した位置が予め設定された適正範囲に入っていないことを知ることにより、作業者はキャップのメンテナンス作業を行う時期であることを知ることができる。
【0022】
即ち、本発明によるインクジェットプリンタは、インクジェット方式によりインクを吐出するインクジェットプリンタにおいて、インクジェット方式によりインクジェットノズルからインクを吐出するインクヘッドと、上記インクジェットノズルが形成されたインクジェットノズル面から離隔した位置と上記インクジェットノズル面に装着された位置との間を相対的に移動自在のキャップ部材と、上記キャップ部材に接続されて上記キャップ部材を減圧するように作動する吸引ポンプとを有するキャップユニットと、上記離隔した位置から上記インクジェットノズル面側へ上記キャップ部材を相対的に移動させる移動制御手段と、上記インクヘッドから上記キャップ部材側へ上記インクが吸引されたことを検出する検出手段と、上記検出手段が上記インクが吸引されたことを検出したときにおける上記キャップ部材の位置を検出するキャップ部材位置検出手段と、上記キャップ部材位置検出手段が検出した上記キャップ部材の位置が予め設定された範囲にあるか否かを判定する判定手段と、上記判定手段により上記キャップ部材の位置が上記予め設定された範囲にないと判定されたときに警告する警告手段とを有するようにしたものである。
【0023】
また、本発明によるインクジェットプリンタは、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおいて、さらに、動作状態を表示する表示手段を有し、上記警告手段は、上記表示手段に警告表示を行うようにしたものである。
【0024】
また、本発明によるインクジェットプリンタは、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおいて、上記警告手段は、音声による警告または動作停止による警告を行うようにしたものである。
【0025】
また、本発明によるインクジェットプリンタは、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおいて、上記移動制御手段は、上記キャップ部材または上記インクヘッドまたは上記キャップ部材と上記インクヘッドとの両者を移動させるようにしたものである。
【0026】
また、本発明によるインクジェットプリンタは、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおいて、上記予め設定された範囲は、設計上の正常動作を行うための適正位置として設定された範囲であるようにしたものである。
【0027】
また、本発明によるインクジェットプリンタは、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおいて、上記インクヘッドは1個または複数個配置されており、 上記キャップ部材位置検出手段は、上記検出手段が上記1個または複数個のインクヘッドの全てから上記インクが吸引されたことを検出したときにおける上記キャップ部材の位置を検出するようにしたものである。
【0028】
また、本発明によるインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法は、インクジェット方式によりインクジェットノズルからインクを吐出するインクヘッドと、上記インクジェットノズルが形成されたインクジェットノズル面から離隔した位置と上記インクジェットノズル面に装着された位置との間を相対的に移動自在のキャップ部材と、上記キャップ部材に接続されて上記キャップ部材を減圧するように作動する吸引ポンプとを有するキャップユニットとを有するインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法において、上記吸引ポンプを作動させた状態において、上記離隔した位置から上記インクジェットノズル面側へ上記キャップ部材を相対的に移動させる移動工程と、上記インクヘッドから上記キャップ部材側へ上記インクが吸引されたことを検出する検出工程と、上記検出工程により上記インクが吸引されたことを検出したときにおける上記キャップ部材の位置を検出するキャップ部材位置検出工程と、上記キャップ部材位置検出工程により検出した上記キャップ部材の位置が予め設定された範囲にあるか否かを判定する判定工程と、上記判定工程により上記キャップ部材の位置が上記予め設定された範囲にないと判定されたときに警告する警告工程とを有するようにしたものである。
【0029】
また、本発明によるインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法において、上記警告工程は、警告表示を行うようにしたものである。
【0030】
また、本発明によるインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法において、上記警告工程は、音声による警告または動作停止による警告を行うようにしたものである。
【0031】
また、本発明によるインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法において、上記移動工程は、上記キャップ部材または上記インクヘッドまたは上記キャップ部材と上記インクヘッドとの両者を移動させるようにしたものである。
【0032】
また、本発明によるインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法において、上記予め設定された範囲は、設計上の正常動作を行うための適正位置として設定された範囲であるようにしたものである。
【0033】
また、本発明によるインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法において、上記インクヘッドは1個または複数個配置されており、 上記キャップ部材位置検出工程は、上記検出工程が上記1個または複数個のインクヘッドの全てから上記インクが吸引されたことを検出したときにおける上記キャップ部材の位置を検出するようにしたものである。
【0034】
また、本発明によるインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法において、上記移動工程と、上記検出工程と、上記キャップ部材位置検出工程と、上記判定工程と、上記警告工程とを、予め設定された時間間隔で繰り返し行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、以上説明したように構成されているので、キャップのメンテナンス作業を行う時期を適切なタイミングで知ることができるようになるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタを示す概略構成斜視説明図である。
図2図2は、図1に示すインクジェットプリンタにおけるインクカートリッジから廃液タンクに至るインク経路を模式的に示す構成説明図である。
図3図3は、図1に示すインクジェットプリンタにおけるマイクロコンピューターの本発明の実施に関連する機能的構成をあらわすブロック構成説明図である。
図4図4は、図1に示すインクジェットプリンタが実行するタイマーカウント処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
図5図5は、図4に示す処理ルーチンのサブルーチンであるキャップユニット状態判定処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
図6図6(a)(b)は、吸引処理においてインクヘッドからキャップ部材側へインクを吸引可能なインクジェットノズル面とキャップ部材との間隔である適正間隔を設定するための動作遷移を示す説明図である。
図7図7(a)(b)(c)(d)は、キャップユニット状態判定処理における動作遷移を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるキャップユニット状態判定方法の実施の形態について詳細に説明するものとする。
【0038】
ここで、図1には、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタを示す概略構成斜視説明図があらわされている。
【0039】
このインクジェットプリンタ10は、基台部材12に支持され主走査方向に延長して配設された固定系のベース部材14を備えている。
【0040】
ベース部材14の左右両端には側方部材16L、16Rが配設され、側方部材16R側には側方ユニット18が配設されている。
【0041】
インクジェットプリンタ10は、左右2つの側方部材16L、16Rを連結する中央壁20を備え、中央壁20の壁面には主走査方向に延長してガイドレール22が配設されている。
【0042】
符号24は、中央壁20の壁面に平行して主走査方向に移動自在に配設されたワイヤーである。キャリッジ26は、ワイヤー24に固定的に配設されるとともにガイドレール22に摺動自在に装着されている。キャリッジ26には、ベース部材24上に位置するメディアたる記録紙28と対向するようにしてインクヘッド30が搭載されるとともに、インクヘッド30と接続されたダンパー装置32が搭載されている。
【0043】
ここで、インクヘッド30は、インクジェットノズル面30aに複数のインクジェットノズル(図示せず。)を備えている。インクジェットプリンタ10においては、インクカートリッジ36(図2を参照する。)に貯留されているインクがダンパー装置32を介してこれら複数のインクジェットノズルに供給され、当該供給されたインクをインクジェットノズルから吐出する。
【0044】
なお、こうしたインクジェットプリンタ10の全体の動作は、マイクロコンピューター34によって制御されている。マイクロコンピューター34の本発明の実施に関連する機能的構成については、図3に示すブロック構成説明図を参照しながら後に詳述する。
【0045】
また、インクジェットプリンタ10においては、上記したようにメディアとして記録紙28を用いるものとする。この記録紙28は、幅方向たる主走査方向において所定の長さを有するとともにロール状に巻回されたメディアであって、給紙装置(図示せず。)によって引き出されてベース部材14上に供給され、主走査方向と直交する方向、即ち、記録紙28の長手方向に搬送される。なお、主走査方向と直交する方向、即ち、記録紙28の搬送方向かつ記録紙28の長手方向を「副走査方向」と称する。
【0046】
そして、このインクジェットプリンタ10においては、マイクロコンピューター34の制御に従って記録紙28上に印刷が行われる。
【0047】
即ち、マイクロコンピューター34の制御に従って、ワイヤー24の巻き取りによりワイヤー24が移動すると、このワイヤー24の移動に伴って、キャリッジ26が主走査方向における行き方向(往路)および帰り方向(復路)に往復移動する。これにより、キャリッジ26に搭載されたダンパー装置32およびインクヘッド30が、給紙装置によってベース部材14上に供給された記録紙28上を主走査方向における行き方向(往路)および帰り方向(復路)に一体的に往復移動し、記録紙28上に印刷が行われる。
【0048】
インクジェットプリンタ10においては、ベース部材14に廃液タンク42が配設されており、側方ユニット18に着脱可能に配設されるインクカートリッジ36から廃液タンク42へ至るインク経路100が形成されている(図2を参照する。)。
【0049】
インクジェットプリンタ10には、インクヘッド30に形成されたインクジェットノズルの開口部が位置するインクジェットノズル面30aをキャッピングするキャップユニット38が設けられている。
【0050】
なお、符号40は、作業者がインクジェットプリンタ10の動作を制御するための操作子40aを備えた操作パネルである。操作パネル40には、インクジェットプリンタ10の動作状態を表示するための表示装置40bが設けられている。
【0051】
ここで、図2には、図1に示すインクジェットプリンタ10におけるインク経路100を模式的に示す構成説明図があらわされている。
【0052】
この図2に示すインク経路100は、一方の端部102aにインクカートリッジ36が連通するように接続されるとともに他方の端部102bにダンパー装置32が連通するように接続された可撓性のインク供給チューブ102を備えている。
【0053】
インクカートリッジ36はインクヘッド30へ供給するためのインクを貯留しており、インクカートリッジ36内に貯留されたインクの容量を検知するセンサー(図示せず。)が設けられている。
【0054】
インク供給チューブ102における一方の端部102aと他方の端部102bとの間には、インク経路100内のインクを加圧してダンパー装置32へ送液するためのポンプたる送液ポンプ101が配設されている。送液ポンプ101としては、例えば、従来より公知のチューブポンプやトロコイドポンプなどの加圧ポンプを用いることができるので、その詳細な説明は省略する。。
【0055】
ここで、チューブポンプやトロコイドポンプは、ポンプ内のコロや歯車を回転することによりインクを加圧して送液する。チューブポンプやトロコイドポンプにおいては、設計上の理論値として、コロや歯車の単位回転量(単位作動量)当たりの送液容量が単位送液容量として設定されている。
【0056】
ダンパー装置32はインクヘッド30とともにキャリッジ26に搭載されており、インク供給チューブ102を通過したインクを一時的に貯留するインク貯留室を備えている。このダンパー装置32により、キャリッジ26が記録紙28に対して往復動する際におけるインク経路100内のインクの圧力変動を吸収している。
【0057】
ダンパー装置32は、インク貯留室内におけるインクの貯留容量の変化に伴い変動する負圧を検知する負圧検知部材たる検知レバーを備えている。こうした検知レバーを備えたダンパー装置32は、例えば、特許第5951091号公報に開示されているように従来より公知の技術であるので、その詳細な説明は省略する。
【0058】
インクジェットプリンタ10には、上記した検知レバーの変位を検知するセンサー118が設けられている。センサー118としては、例えば、光により検知レバーの変位を検知する光センサーや、検知レバーの接触状態から検知レバーの変位を検知する接触センサーなど、各種のセンサーを適宜に用いることができる。センサー118による検知レバーの変位の検知結果は、マイクロコンピューター34に出力されて処理される。
【0059】
ダンパー装置32には、ダンパー装置32のインク貯留室と連通するインクジェットノズル(図示せず。)を備えたインクヘッド30が接続されており、インクカートリッジ36に貯留されたインクは、ダンパー装置32を介してインクヘッド30へ供給される。インクヘッド30に供給されたインクは、インクジェットノズル面30aに配置されたインクヘッドノズルの開口部から吐出される。
【0060】
ここで、ダンパー装置32において、検知レバーはインク貯留室内のインク貯留量に応じて変位するので、検知レバーの変位の情報に基づいて、インク貯留室内のインク貯留量を判定することができる。例えば、インク貯留室内のインク貯留量が所定の下限値(所定量)に到達したか否かや、インク貯留量が所定の上限値(満タン)に到達したか否かなどを判定することができる。
検知レバーの変位はセンサー118により検知され、センサー118における検知信号がマイクロコンピューター34へ送られる。マイクロコンピューター34はセンサー118の検知信号に応じて、送液ポンプ101ならびに吸引ポンプ114(後述する。)を作動または停止する。
【0061】
即ち、上記構成によれば、ダンパー装置32内のインク貯留量に応じて送液ポンプ101ならびに吸引ポンプ114(後述する。)を作動させることができる。これにより、インクジェットプリンタ10によるメディア28への印刷時においても、インク貯留室内に所定量のインクを維持することができ、インクヘッド30に安定的にインクを供給することができる。
【0062】
また、本発明の実施に関連しては、マイクロコンピューター34は、センサー118によるダンパー装置32のインク貯留室内のインクの量の変化の検知結果を用いて、後述するインクジェットプリンタ10におけるキャップユニット状態判定処理を行う。
【0063】
また、インクジェットプリンタ10においては、上記において説明したように、インクヘッド30のインクジェットノズル面30aに形成されたインクジェットノズル周りをキャッピングするキャップユニット38が設けられている。
【0064】
キャップユニット38は、インクヘッド30のインクジェットノズル面30aに装着して封止するキャップ部材112と、キャップ部材112内を減圧してインク経路100内のインクを吸引可能な吸引ポンプ114とを有して構成されている。吸引ポンプ114は、インクヘッド30のインクジェットノズル面30aに形成されたインクジェットノズルの開口部を封止したキャップ部材112に負圧を供給し、インク供給経路100内のインクを吸引する。
【0065】
符号116は廃液チューブであり、一方の端部116aをキャップ部材112に接続するとともに他方の端部116bを廃液タンク42に接続している。吸引ポンプ114は、廃液チューブ116の一方の端部116aと他方の端部116bとの間に設けられている。
【0066】
吸引ポンプ114としては、例えば、従来より公知のチューブポンプ、トロコイドポンプあるいは真空ポンプなどの種々の構成のものを用いることが可能であるので、その詳細な説明は省略する。
【0067】
ここで、チューブポンプやトロコイドポンプは、ポンプ内のコロを移動したり歯車を回転させたりして吸引力を発生させている状態と、所定の位置でポンプ内のコロの移動を停止したり歯車の回転を停止して吸引力が解除されて外気に開放された状態と、所定の位置でポンプ内のコロの移動を停止したり歯車の回転を停止して吸引力が解除されて外気に対して閉鎖された状態とを選択的に制御可能なポンプである。
【0068】
具体的には、吸引ポンプ114としては、例えば、特許第4857798号公報などに開示されたチューブポンプと同様な構成の公知のチューブポンプを用いることができる。
【0069】
インクジェットプリンタ10は、キャップ部材112とインクヘッド30との位置関係が、予め設定されている基準位置(吸引処理ならびに空吸引処理を行わない位置であり、キャップ部材112とインクヘッド30との位置関係を測定する際の原点位置となる位置であって、キャップ部材112とインクヘッド30のインクジェットノズル面30aとが離隔している位置である。)から吸引処理を行う際の吸引位置と空吸引処理を行う際の空吸引位置とに相対的に移動自在に変化することができるように、ステッピングモーター111によりキャップ部材112を移動する。
【0070】
キャップ部材112とインクヘッド30との位置関係を移動自在に相対的に変化させるために、キャップ部材112をステッピングモーター111の駆動により移動させる機構については、例えば、特許第6437687号公報などに開示された従来より公知の技術を適用することができるので、その詳細な説明は省略する。
【0071】
なお、本実施の形態においては、図6(a)(b)乃至図7(a)(b)(c)(d)に示すように、スライド溝112a内を移動自在なスライドバー112bがキャップ部材112に取り付けられており、ステッピングモーター111の駆動によりスライドバー112bをスライド溝112a内で移動することにより、キャップ部材112をインクヘッド30へ近づくように移動したり、キャップ部材112をインクヘッド30から離れるように移動したりする。
【0072】
ステッピングモーター111の回転によるキャップ部材112の位置制御は、マイクロコンピューター34により制御される。
【0073】
また、インクジェットプリンタ10においては、後述するキャップユニット状態判定処理においては、マイクロコンピューター34がステッピングモーター111を制御して、キャップ部材112を基準位置からインクヘッド30側へ近づくように徐々に移動する処理を実行する。
【0074】
図3には、インクジェットプリンタ10におけるマイクロコンピューター34の本発明の実施に関連する機能的構成をあらわすブロック構成説明図が示されている。
【0075】
マイクロコンピューター34は、制御部202と、記憶部204と、センサー検出部206と、キャップ部材位置検出部208と、吸引ポンプ制御部210と、判定部212と、表示制御部214と、タイマーカウント部216を有して構築される。
【0076】
制御部202は、インクジェットプリンタ10により実行される印刷処理、吸引処理あるいは空吸引処理などの従来より公知の各種の処理や、後述するキャップユニット状態判定処理などの各種の処理を含む全体の処理の制御を行う。
【0077】
具体的には、制御部202は、キャップユニット状態判定処理においては、ステッピングモーター111の駆動を制御して、キャップ部材112を基準位置からインクヘッド30側へ近づくように徐々に移動する制御を行う。
【0078】
記憶部204は、印刷処理、吸引処理あるいは空吸引処理などの従来より公知の処理に用いられる情報や、後述するキャップユニット状態判定処理などで用いられる情報を含む各種の情報を記憶する。
【0079】
本発明に関連しては、記憶部204には、吸引位置においてキャップ部材112が予め設定されている設計上の正常動作を行うための適正位置として設定された範囲(適正範囲)PR(図6(a)(b)を参照する。)を記憶する。
【0080】
ここで、図6(a)(b)には、吸引処理においてインクヘッド30からキャップ部材112側へインクを吸引可能なインクジェットノズル面30aとキャップとの間隔である適正間隔PRを設定するための動作遷移を示す説明図があらわされてる。
【0081】
この図6(a)(b)に示すように、適正範囲PRは、キャップ部材112を基準位置RPから上方へ移動して吸引位置へ移動する際において、その移動経路における基準位置RPから適正範囲PRの下限値Z1までの距離L1と、基準位置RPから適正範囲PRの上限値Z2までの距離L2とにより定義されるものである。
【0082】
具体的には、記憶部204は、適正範囲PRとして、距離L1と距離L2とをそれぞれ記憶する。
【0083】
センサー検出部206は、センサー118におけるダンパー装置32の検知レバーの変位を検出する。
【0084】
キャップ部材位置検出部208は、ステッピングモーター111の駆動状態から、基準位置RPからキャップ部材112が存在する位置までの距離L3を検出する。
【0085】
吸引ポンプ制御部210は、キャップ部材112内を減圧してインク経路100内のインクを吸引する吸引ポンプ114の作動を制御する。
【0086】
判定部212は、キャップ部材位置検出部208が検出した距離L3が、適正範囲PR、即ち、距離L1と距離L2との間に存在するか否かについて判定する。
【0087】
表示制御部214は、判定部212により距離L3が、適正範囲PR、即ち、距離L1と距離L2との間に存在すると判定されたときに、「キャップユニットのメンテナンス不要」の正常動作が行われる旨の表示を表示装置40bに表示するように制御し、一方、判定部212により距離L3が、適正範囲PR、即ち、距離L1と距離L2との間に存在しないと判定されたときに、「キャップユニットのメンテナンス必要」の正常動作が行われない旨の警告表示を表示装置40bに表示するように制御する。
【0088】
タイマー部216は、インクジェットプリンタ10の主電源が投入されてからの時間経過をカウントするものであるが、後述するようにカウントした時間経過がクリアされると(図4のステップS406を参照する。)、その時点からあらたなカウントを開始する。
【0089】
以上の構成において、インクジェットプリンタ10においては、マイクロコンピューター34の制御により、インクカートリッジ36からインク供給チューブ102へインクを供給しながら、インクヘッド30のインクジェットノズルから記録紙28に対してインクを吐出して記憶紙28への印刷処理を行う。
【0090】
また、インクジェットプリンタ10においては、図4に示すタイマーカウント処理ならびに図5に示すキャップユニット状態判定処理が行われる。
【0091】
以下に、図4に示すフローチャートを参照しながら、タイマーカウント処理の処理ルーチンについて説明する。
【0092】
このインクジェットプリンタ10においては、インクジェットプリンタ10の主電源が投入されるとタイマー部216が時間経過のカウントを開始するものであり、予め設定された時間間隔(例えば、1秒である。)毎に、図4のフローチャートに示すタイマーカウント処理の処理ルーチンが起動して実行される。
【0093】
タイマーカウント処理の処理ルーチンが起動されると、タイマー部216によりカウントされている時間経過が、予め設定されている時間(例えば、1ヶ月分の720時間である。)以上となったか否かを判定する(ステップS402)。
【0094】
ステップS402の判定処理において、タイマー部216によりカウントされている時間経過が予め設定されている時間以上ではないと判定された場合(No)には、このタイマーカウント処理の処理ルーチンを終了する。
【0095】
一方、ステップS402の判定処理において、タイマー部216によりカウントされている時間経過が予め設定されている時間以上となったと判定された場合(Yes)には、ステップS404の処理へ進んで、タイマーカウント処理の処理ルーチンのサブルーチンであるキャップユニット状態判定処理の処理ルーチンを実行する。
【0096】
ステップS404におけるキャップユニット状態判定処理を終了すると、ステップS406の処理へ戻り、タイマー部216がカウントした時間経過をクリアして、その時点からタイマー部216があらたなカウントを開始するように設定した後に、このタイマーカウント処理の処理ルーチンを終了する。
【0097】
従って、上記したタイマーカウント処理の処理ルーチンを実行することにより、予め設定されている時間(例えば、1ヶ月分の720時間である。)間隔で、キャップユニット状態判定処理の処理ルーチンを実行することができるようになる。
【0098】
次に、図5のフローチャートならびに図7(a)(b)(c)(d)に示すキャップユニット状態判定処理における動作遷移を示す説明図を参照しながら、ステップS402において実行するキャップユニット状態判定処理の処理ルーチンの詳細について説明する。
【0099】
キャップユニット状態判定処理の処理ルーチンが起動すると、ステップS502の処理へ進み、制御部202はステッピングモーター111の駆動を制御して、キャップ部材112を現在位置から基準位置RPへ移動する(図7(a)(b)を参照する)。
【0100】
ステップS502の処理を終了すると、ステップS504の処理へ進み、吸引ポンプ制御部210の制御により吸引ポンプ114の作動を開始する。
【0101】
ステップS504の処理を終了すると、ステップS506の処理へ進み、制御部202はステッピングモーター111の駆動を制御して、キャップ部材112を基準位置から上方へ予め設定された微少な距離L4(例えば、0.1mmである。)だけ移動する(図7(b)(c)を参照する)。
【0102】
ステップS506の処理を終了すると、ステップS508の処理へ進み、センサー検出部206がセンサー118におけるダンパー装置32の検知レバーの変位を検出したか否かを判定する。
【0103】
ステップS508の判定処理において、センサー検出部206がセンサー118におけるダンパー装置32の検知レバーの変位を検出していないと判定された場合(No)には、ステップS506へ戻って処理を繰り返す。
【0104】
ここで、センサー検出部206がセンサー118におけるダンパー装置32の検知レバーの変位を検出していないとの判定は、ダンパー装置32からインクヘッド30へインクが供給されていないことを示すものであり、インクヘッド30のインクジェットノズルからキャップ部材112側へインクが吸引されていないことを示すものである。
【0105】
一方、ステップS508の判定処理において、センサー検出部206がセンサー118におけるダンパー装置32の検知レバーの変位を検出したと判定された場合(Yes)には、ステップS510の処理へ進み、キャップ部材位置検出部208によってステッピングモーター111の駆動状態から、基準位置RPからキャップ部材112が存在する位置までの距離L3を検出する(図7(d)を参照する)。
【0106】
ここで、センサー検出部206がセンサー118におけるダンパー装置32の検知レバーの変位を検出したとの判定は、ダンパー装置32からインクヘッド30へインクが供給されていることを示すものであり、インクヘッド30のインクジェットノズルからキャップ部材112側へインクが吸引されたことを示すものである。
【0107】
ステップS510の処理を終了すると、ステップS512の処理へ進み、記憶部204はステップS510で検出した距離L3を記憶する。
【0108】
ステップS512の処理を終了すると、ステップS514の処理へ進み、判定部212により距離L3が距離L1と距離L2とにより定義される適正範囲PRに入っているか否か、即ち、「L1≦L3≦L2」であるか否かを判定する。
【0109】
ステップS514の判定処理において、距離L3が距離L1と距離L2とにより定義される適正範囲PRに入っていると判定された場合、即ち、「L1≦L3≦L2」である場合(Yes)には、ステップS518の処理へ進む。
【0110】
一方、ステップS514の判定処理において、距離L3が距離L1と距離L2とにより定義される適正範囲PRに入っていないと判定された場合、即ち、「L1≦L3≦L2」でない場合(No)には、ステップS516の処理へ進み、表示制御部214により表示部40bに「キャップユニットのメンテナンス必要」の警告表示を行うように制御する。
【0111】
そして、上記したステップS516の処理を終了すると、ステップS518の処理へ進む。
【0112】
ステップS518の処理においては、吸引ポンプ制御部210の制御により吸引ポンプ114の作動を停止し、このキャップユニット状態判定処理の処理ルーチンを終了し、タイマーカウント処理の処理ルーチンに戻る。
【0113】
従って、上記したインクジェットプリンタ10によれば、作業者はキャップユニットのメンテナンス作業を行う時期を適切なタイミングで知ることができるようになる。
【0114】
このため、作業者はメンテナンス作業を頻繁に行う必要がなく、また、部品の交換も頻繁に行う必要がない。
【0115】
さらには、予め設定された規格を超えた過酷な環境で使用された場合における不具合についても、早期に発見することができるようになる。
【0116】
なお、上記した実施の形態は例示に過ぎないものであり、本発明は他の種々の形態で実施することができる。即ち、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更などを行うようにしてもよいことは勿論である。
【0117】
例えば、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(7)に示すように変形するようにしてもよい。
【0118】
(1)上記した実施の形態においては、キャップユニット38のメンテナンスが必要な場合における作業者への警告として、表示部40bに警告の表示を行うようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。キャップユニット38のメンテナンスが必要な場合における作業者への警告としては、例えば、インクジェットプリンタ10に音声生成手段とスピーカーとを設けるようにして、作業者に対して音声で警告を発するようにしてもよい。
【0119】
(2)上記した実施の形態においては、キャップユニット38のメンテナンスが必要な場合には作業者へ警告するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。キャップユニット38のメンテナンスが必要な場合には、キャップユニット38のメンテナンスが必要な場合には作業者への警告として、例えば、インクジェットプリンタ10の動作を停止するように制御してもよい。
【0120】
(3)上記した実施の形態においては、キャップ部材112の移動する手法として、スライド溝112aとスライドバー112bとを用いて、キャップ部材112を斜め上方に移動するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。キャップ部材112は、例えば、垂直上方へ移動するようにしてもよい。
【0121】
(4)上記した実施の形態においては、キャップ部材112のみをインクヘッド30のインクジェットノズル面30a側へ移動するにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、キャップ部材112に代えてインクヘッド30を移動するようにしてもよいし、あるいは、キャップ部材112とインクヘッド30との両方を移動するようにしてもよい。
【0122】
(5)上記した実施の形態においては、インクヘッド30のインクジェットノズルからキャップ部材112側へインクが吸引された否かを、センサー118がダンパー装置32の検知レバーの変位を検知したか否かによって判定するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、インクカートリッジ36のセンサーにより、インクカートリッジ36からインク供給チューブ102へインクが供給されたか否かを検出し、インクカートリッジ36からインク供給チューブ102へインクが供給された場合に、インクヘッド30のインクジェットノズルからキャップ部材112側へインクが吸引された判定するようにしてもよい。
【0123】
(6)上記した実施の形態においては、インクジェットプリンタ10に単一のインクヘッド30を搭載した場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、インクジェットプリンタには複数個のインクヘッドを搭載してもよく、その場合には、インクジェットプリンタに搭載した全てのインクヘッドのインクジェットノズルからキャップ部材側へインクが吸引されるまでキャップ部材を移動する処理を行い、インクジェットプリンタに搭載した全てのインクヘッドのインクジェットノズルからキャップ部材側へインクが吸引されたときに、ステップS510における距離L3を検出する処理を行うようにする。
【0124】
(7)上記した各実施の形態ならびに上記した(1)乃至(6)に示す各実施の形態は、適宜に組み合わせるようにしてもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、インクヘッドのインクジェットノズルからインクジェット方式によりインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタに用いて好適である。
【符号の説明】
【0126】
10 インクジェットプリンタ
12 基台部材
14 ベース部材
16L 側方部材
16R 側方部材
18 側方ユニット
20 中央壁
22 ガイドレール
24 ワイヤー
26 キャリッジ
28 記録紙
30 インクヘッド
30a インクジェットノズル面
32 ダンパー装置
34 マイクロコンピューター
36 インクカートリッジ
38 キャップユニット
40 操作パネル
40a 操作子
40b 表示装置(表示手段)
42 廃液タンク
100 インク経路
101 送液ポンプ
102 インク供給チューブ
102a 端部
102b 端部
111 ステッピングモーター
112 キャップ部材
114 吸引ポンプ
116 廃液チューブ
116a 端部
116b 端部
118 センサー(検出手段)
202 制御部(移動制御手段)
204 記憶部
206 センサー検出部(検出手段)
208 キャップ部材位置検出部(キャップ部材位置検出手段)
210 吸引ポンプ制御部
212 判定部(判定手段)
214 表示制御部(警告手段)
216 タイマーカウント部
PR 適正範囲(範囲)
Z1 適正範囲の下限値
Z2 適正範囲の上限値
RP 基準位置
L1 基準位置から適正範囲の下限値までの距離
L2 基準位置から適正範囲の上限値までの距離
L3 基準位置からキャップ部材が存在する位置までの距離
L4 キャップ部材を基準位置から上方へ移動する距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7