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  • 特許-ユニットハウスの軒樋構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】ユニットハウスの軒樋構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/064 20060101AFI20220322BHJP
   E04D 13/068 20060101ALI20220322BHJP
   E04B 1/348 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
E04D13/064 501B
E04D13/068 504A
E04B1/348 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020147560
(22)【出願日】2020-09-02
(65)【公開番号】P2022042230
(43)【公開日】2022-03-14
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591170647
【氏名又は名称】三協フロンテア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】相澤 佑介
(72)【発明者】
【氏名】中塚 直人
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-138112(JP,A)
【文献】実開平06-020682(JP,U)
【文献】米国特許第04226056(US,A)
【文献】特開2004-218229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/064
E04D 13/068
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニットハウスの屋根材の端部に配設された妻梁又は軒桁に取り付けられる軒樋構造であって、
略直立して該屋根材の端部よりも上方まで延設される上部仕上面を構成する上部軒樋部材と、
該上部軒樋部材と連結される下部軒樋部材であって、該上部仕上面と略同一平面上の下部仕上面と、該下部仕上面から室内側に屈折させた底面と、該底面から立ち上げた室内側面と、から成る集水部を形成すると共に、該集水部には竪樋への落し口を有する下部軒樋部材と
から構成され、
該上部仕上面と該下部仕上面とを離隔してスリットを設けると共に、
前記上部軒樋部材の下部を室内側にZ曲げ形状で返した返し部を有する
ことにより、該集水部からの溢水を該スリットから排水するように構成した
ことを特徴とするユニットハウスの軒樋構造。
【請求項2】
前記下部軒樋部材の前記下部仕上面の上端は、前記Z曲げ形状の下端よりも上方まで延設されており、
該下部仕上面と該Z曲げ形状との離隔部分を通して排水する
請求項に記載のユニットハウスの軒樋構造。
【請求項3】
前記上部軒樋部材が、妻梁又は軒桁に直接又は間接に固設され、
前記下部軒樋部材から室内側に突設した連結具を該Z曲げ形状に着脱可能に連結した
請求項に記載のユニットハウスの軒樋構造。
【請求項4】
前記下部仕上面の上端が、前記室内側面の上端よりも下方に位置する
請求項1ないしのいずれかに記載のユニットハウスの軒樋構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場で予め製作され、現地で組み立てるユニットハウスの軒樋の構造に関し、特に排水経路を確保した構造に係る。
【背景技術】
【0002】
ユニットハウスの屋根は特許文献1に示されるような1枚板の金属板で屋根全体を覆うもの、あるいは屋根の強度を高めるために、特許文献2に示されるような断面台形状の凸部が波形状に連続するように形成された屋根材が使用されている。
【0003】
特許文献1では、ユニットハウスの屋根を構成する金属板をフレームの上面に載せ、この金属板の四周縁部を屋根枠部の庇部の外周縁より突出させた状態から折り返して折り返し部を形成し、この折り返し部により庇部を包むようにした構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、屋根材の長手端部を押圧して平板状の連結端部を設け、その連結端部に唐草金具を装着し、唐草金具は、妻梁の端部を下向きに屈曲した屈曲片に装着される嵌合部と、妻梁の上面に連続する重合片と、重合片の下面に突設され軒樋の開口部上に位置する誘導片とを備える。そして、上記の連結端部にて妻梁の上面から重合片の上面を覆うように構成し、連結端部を屈曲して重合片の下面まで覆う折返し片を設け、折返し片から誘導片に雨水を誘導する。
【0005】
上記の従来技術はいずれも屋根の防水性能を高めるように創出されたものであるが、特許文献1に係る1枚板の金属板で屋根全体を覆う構成は、1枚の金属板で形成する屋根形状は限定されるので、2個のユニットハウスを連設した場合には、2倍の面積の金属板が必要になり、製造や施工が更に困難になるといった課題がある。
【0006】
また、特許文献2に係る技術は凸条がユニットハウスの長手方向に沿って設けられるので、軽量の屋根材でも高い強度が得られると共に、複数の屋根材を横並びに設置するので、屋根の面積が変更されても柔軟に適応することができる点で優れるが、軒樋の上端が屋根板面よりも高い位置になるため、竪樋への落し口が詰まった際などに屋根板上に溢水し、室内への漏水につながる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3105599号公報
【文献】実用新案登録第3205530号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ユニットハウスの屋根材の端部に配設する軒樋構造であって、優れた意匠性を呈する外観の仕上面を有しながら、万一の溢水時に適切に排水を行うことのできる軒樋構造を提供することを目的とする。同時に、軒樋のメンテナンス性を向上させることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するため、本発明は次のようなユニットハウスの軒樋構造を提供する。
すなわち、第1の実施形態によれば、ユニットハウスの屋根材の端部に配設された妻梁又は軒桁に取り付けられる軒樋構造であって、略直立して該屋根材の端部よりも上方まで延設される上部仕上面を構成する上部軒樋部材と、この上部軒樋部材と連結される下部軒樋部材であって、上部仕上面と略同一平面上の下部仕上面と、下部仕上面から室内側に屈折させた底面と、底面から立ち上げた室内側面と、から成る集水部を形成すると共に、集水部には竪樋への落し口を有する下部軒樋部材とから構成される。
そして、上部仕上面と下部仕上面とを離隔してスリットを設けることにより、集水部からの溢水をスリットから排水するように構成したユニットハウスの軒樋構造を提供する。
【0010】
第2の実施形態によれば、上記の上部軒樋部材の下部を室内側に返した返し部を有する構成でもよい。
【0011】
第3の実施形態によれば、上記の上部軒樋部材の下部は室内側にZ曲げ形状であり、下部軒樋部材の下部仕上面の上端は、このZ曲げ形状の下端よりも上方まで延設されており、下部仕上面とZ曲げ形状との離隔部分を通して排水するようにしてもよい。
【0012】
第4の実施形態によれば、上部軒樋部材が妻梁又は軒桁に固設され、下部軒樋部材から室内側に突設した連結具をZ曲げ形状に着脱可能に連結してもよい。
【0013】
第5の実施形態によれば、上記集水部において、下部仕上面の上端が、室内側面の上端よりも下方に位置するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ユニットハウスの軒樋構造において、上部軒樋部材と下部軒樋部材とに分離するものの上下の仕上面を略同一平面上にしたことによって一体的な美観を有する意匠性を保つことができる。そして、上部軒樋部材と下部軒樋部材との離隔におけるスリットから、溢水時に排水を行うことができる。
【0015】
また、上部軒樋部材の下部を室内側に返した返し部によって、通常の雨の流水や飛沫をスリットから排水すること無く、正常に軒樋の集水部に導くことができる。
さらに、返し部をZ曲げ形状とすることで、スリットから軒樋の内部を隠し意匠性を向上させると共に、下部軒樋部材の固定も容易となる。
【0016】
下部仕上面の上端が、室内側面の上端よりも下方に位置することで、室内側に溢水することなく、確実にスリットから排水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る軒樋構造の断面図である。
図2】ユニットハウスの斜視図である。
図3】本発明に係る軒樋構造の組み立て図である。
図4】本発明に係る軒樋構造の様々な実施態様である。
図5】従来の軒樋構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。本発明は以下の実施例に限定されず請求項記載の範囲で適宜実施することができる。
図1は、本発明に係る軒樋構造の断面図であり、図2は本発明を適用するユニットハウスの斜視図である。
【0019】
図2に示すように、本発明は、工場で予め製作され、現地で組み立てるユニットハウス(P)の軒樋の構造に関し、特に排水経路を確保した構造を提供する。実施例として、断面台形状の凸条(11)が波形状に連続する屋根材(10)を用いる例を示すが、本発明は1枚の金属板で形成する屋根など任意の屋根材に適用することができる。
【0020】
この屋根材(10)は、断面台形状の凸部によって形成される凸条(11)がユニットハウス(P)の長手方向に沿って配置されるもので、複数枚の屋根材(10)を横並びに接続するように構成されている。屋根材(10)の周囲には軒桁(30)と妻梁(40)が配設されており、屋根材(10)は屋根端部板(20)によって軒桁(30)に接続されている。
【0021】
この屋根材(10)の長手端部を押圧して平板状の連結端部(12)を設けている。この連結端部(12)には、折返し片(12A)が形成されている。連結端部(12)にて妻梁(40)の上面から唐草金具(13)の上面を連続して覆うと共に、この折返し片(12A)を屈曲して唐草金具(13)の下面まで覆うように形成している。そして、この折返し片(12A)を唐草金具(13)の先端部に圧着して固定する。
【0022】
唐草金具(13)は、妻梁(40)の屈曲された端部に装着される部材であり、妻梁(40)の端部を下向きに屈曲した屈曲片(41)に、下から嵌合する嵌合部(13A)と、屋根材(10)の長手方向に沿って重合される重合片(13B)と、この嵌合部(13A)の下面からユニットハウス(P)の軒樋(50)の開口部上に雨水を誘導する誘導片(13C)とを備えている。
【0023】
ここで図5を用いて従来の構成を説明する。特許文献2で開示されるように、本件出願人による従来技術では、軒樋(50’)が屋根材(10)よりも上方から直立した仕上面(501)を有し、この仕上面(501)から底面(502)、室内側面(503)を屈折して樋の集水部(507)を形成していた。
【0024】
このような構成は、軒樋(50’)が屋根材(10)の端部を覆い外壁の一部を成すように見えることから、優れた外観を呈する利点があり、同時に軒樋の組み立ても容易にしている。
【0025】
しかし、軒樋(50’)の上端(504)は屋根材(10)の屋根板面よりも高い位置にあることから、竪樋(506)への落し口(505)などの排水経路が枯れ葉や汚泥などで詰まった場合に、屋根材(10)まで水位が上がり、室内への漏水につながるおそれがあった。
【0026】
また、漏水しないまでも屋根材(10)が長時間水に浸かる状態となることから、屋根の劣化が早まる問題がある。
さらに、軒樋(50’)は全体を取り外さなければ集水部(507)をメンテナンスすることが難しく、上述したような枯れ葉や汚泥を除去する際にも手間がかかっていた。
【0027】
このような問題に鑑みて、本発明では図1に示すように軒樋(50)を上部軒樋部材(51)と下部軒樋部材(52)に分割する構成を創出した。
本構成では、上部軒樋部材(51)と下部軒樋部材(52)との間に設けたスリット(53)から溢水した際の水が排出されるようになっている。以下、詳述する。
【0028】
上部軒樋部材(51)は略直立して屋根材(10)の端部よりも上方まで延設される上部仕上面(510)を有している。上部仕上面(510)は、このままユニットハウス(P)の外装の意匠的な仕上面となる。上部仕上面(510)の上端は室内側に屈折部(511)を有すると共に、下端は室内側に返した返し部を有する。本実施例において、返し部としてZ曲げ加工したZ曲げ形状(512)が形成されている。
【0029】
Z曲げ形状(512)は、上部仕上面(510)から室内側に略水平に折り曲げた水平部(512A)と、さらにその室内側端から略鉛直下方に折り曲げた鉛直部(512B)とからなる。
【0030】
下部軒樋部材(52)は、上部仕上面(510)と略同一平面上の下部仕上面(520)と、下部仕上面(520)から室内側に屈折させた底面(521)と、底面(521)から立ち上げた室内側面(522)とから成る集水部(523)を形成する。集水部(523)には竪樋(525)への落し口(524)を有する。
【0031】
本構成において、上部仕上面(510)と下部仕上面(520)とを離隔してスリット(53)を設けることによって、落し口(524)等が堆積物で塞がった場合でも集水部(523)からの溢水をスリット(53)から排水することができる。
【0032】
スリット(53)は軒樋(50)の全長にわたって形成されているので、小さな離隔であっても十分な排水能力を有しており、5mmないし15mm、好ましくは10mm程度の離隔で足りる。
上部仕上面(510)と下部仕上面(520)を略同一平面上とすると共に、この離隔が小さいことによって一体的な美観を有する意匠性を保つことができる。
【0033】
下部軒樋部材(52)の集水部(523)において、下部仕上面(520)の上端が、室内側面(522)の上端よりも下方に位置することが好ましい。集水部(523)において溢水した場合でも、高さの低い下部仕上面(520)の上端から先に排水される。
従って、室内側面(522)の上端からユニットハウス(P)のフロントパネル(60)側に溢水することなく、確実にスリット(53)から排水することができる
【0034】
本実施例において、上部軒樋部材(51)は妻梁(40)の上部部材(42)と取り合い金具(54)を介してボルト等で固設される。図3に示すように上部軒樋部材(51)に対して下部軒樋部材(52)を連結することによって下部軒樋部材(52)が支持される。すなわち、下部軒樋部材(52)から室内側にZ状の連結具(526)を突設し、連結具(526)に付設したナット(527)に対して上部軒樋部材(51)の孔部を通したボルト(528)によって螺合して着脱可能に連結する。
【0035】
本構成によればボルト(528)によって容易に下部軒樋部材(52)を取り外すことができるので、集水部(523)や落し口(524)の掃除等のメンテナンスや、下部軒樋部材(52)の交換を容易にする。
【0036】
本発明の基本的な構成は以上に示した通りであるが、軒樋(50)は妻梁(40)に設ける構成に限らず軒桁(30)に設ける構成でもよい。軒樋と妻梁や軒桁は、上記のように取り合い金具等を介して固設してもよいことはもちろん、別の部材を介して、妻梁や軒桁と実質的に固定される構成でもよく、本願における「妻梁又は軒桁に取り付けられる」との表現に含まれる。また、上部軒樋部材(51)と下部軒樋部材(52)との間のスリット(53)近傍の構造は様々な態様が考えられる。図4は、別実施例を列挙した図である。
【0037】
図4(a)は、上部軒樋部材(51)において返し部を有しない構造である。本発明では必ずしも返し部を設けなくてもよく、例えば上端の屈折部(540)をやや長めに水平方向に伸ばすことで、雨の流水や飛沫がスリット(53)から排水するのを防ぐようにしてもよい。
【0038】
図4(b)は、上部軒樋部材(51)において返し部を屈折部(541)と同様に屈折させた構造(542)である。図4(a)の構造と同様に、軒樋(50)の内部が外から見える点で美観は劣るものの、構造が簡単で製造コストを抑えることができる。
【0039】
図4(c)は、上部軒樋部材(51)において返し部(543)を斜め下方に屈折させた構造である。斜めに雨水を誘導することで円滑に流れ、水滴音の防止に寄与する。
本構造は、通常時のスリット(53)からの排水を防ぐことができ、かつ軒樋(50)の内部が見えないことから、上記実施例におけるZ曲げ形状と同様の効果を有する。
【0040】
図4(d)は、上部軒樋部材(51)において返し部を斜め下方に屈折させると共にZ曲げ形状した構造(544)である。本構造は図4(c)と同様の効果を有すると共に、下部軒樋部材(52)とZ曲げ形状の下部が平行となるため、上記実施例と同じくボルトによって上部軒樋部材(51)と下部軒樋部材(52)との連結が容易である。
【0041】
図4(e)及び図4(f)はいずれも屈折部分を曲面にした構造である。加工がやや複雑になるものの、流水の流れが円滑で水滴音は抑制される。その他の効果の点では図4(c)とほぼ同様である。
【符号の説明】
【0042】
P ユニットハウス
10 屋根材
11 凸条
12 連結端部
13 唐草金具
20 屋根端部板
30 軒桁
40 妻梁
41 屈曲片
42 妻梁上部部材
50 軒樋
51 上部軒樋部材
510 上部仕上面
512 Z曲げ形状
52 下部軒樋部材
520 上部仕上面
521 底面
522 室内側面
523 集水部
524 落し口
525 竪樋
53 スリット
54 取り合い金具
図1
図2
図3
図4
図5