(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】切刃部の位置調整機構および転削工具
(51)【国際特許分類】
B23C 5/24 20060101AFI20220323BHJP
B23C 5/06 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B23C5/24
B23C5/06 A
(21)【出願番号】P 2018067887
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】長屋 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】作山 徹
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-213404(JP,A)
【文献】実開昭57-028805(JP,U)
【文献】特開2009-125828(JP,A)
【文献】特開2008-089156(JP,A)
【文献】実開平04-050704(JP,U)
【文献】特開平10-306811(JP,A)
【文献】実開平02-050109(JP,U)
【文献】実開昭59-006654(JP,U)
【文献】実開平04-003111(JP,U)
【文献】実開昭62-077388(JP,U)
【文献】特開2001-252813(JP,A)
【文献】特開2015-027707(JP,A)
【文献】特開2017-185601(JP,A)
【文献】実公昭15-014183(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0297282(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 1/00 - 9/00
B23C 5/24
B23B 27/00 - 29/34
B23B 51/00 - 51/14
B23D 77/00 - 77/14
F16B 7/00 - 7/22
F16B 17/00 - 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸回りに回転させられる工具本体の先端外周部に配置される切刃部と、
前記工具本体の外周に配置され、前記切刃部を
前記中心軸が延びる方向である軸方向の先端側へ向けて押圧し前記切刃部の
前記軸方向の位置を調整する調整部と、を備え、
前記切刃部は、前記調整部を径方向内側へ向けて支持可能な遠心力受け部を有
し、
前記調整部の中心線は、前記軸方向に沿って延び、
前記切刃部は、前記工具本体に対して前記軸方向に沿ってスライド移動する、切刃部の位置調整機構。
【請求項2】
請求項
1に記載の切刃部の位置調整機構であって、
前記遠心力受け部は、前記調整部と径方向に接触
し、または径方向に隙間をあけて対向する、切刃部の位置調整機構。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の切刃部の位置調整機構であって、
前記調整部は、
前記工具本体に支持される軸部材と、
前記軸部材に螺着し、前記切刃部に接触するナット部材と、を有し、
前記軸部材に対する前記ナット部材のねじ込み量を調整することにより、前記切刃部の
前記軸方向の位置が調整され、
前記遠心力受け部は、前記ナット部材を径方向内側へ向けて支持可能である、切刃部の位置調整機構。
【請求項4】
請求項
3に記載の切刃部の位置調整機構であって、
前記ナット部材は、前記ナット部材の先端面に、先端側へ向かうにしたがい縮径する凸テーパ面を有し、
前記遠心力受け部は、前記切刃部の後端面に配置され、先端側へ向かうにしたがい径方向内側へ向けて延びる傾斜面とされて、前記凸テーパ面と接触する、切刃部の位置調整機構。
【請求項5】
請求項
4に記載の切刃部の位置調整機構であって、
前記切刃部は、前記切刃部の後端面において前記遠心力受け部よりも径方向内側に位置する接触部を有し、
前記接触部は、先端側へ向かうにしたがい径方向外側へ向けて延びる傾斜面とされて、前記凸テーパ面と接触する、切刃部の位置調整機構。
【請求項6】
請求項
3に記載の切刃部の位置調整機構であって、
前記遠心力受け部は、前記切刃部の後端部に配置されて径方向内側を向く立壁面であり、
前記ナット部材は、前記ナット部材の先端部に、
前記軸方向に延びる柱部を有し、
前記柱部は、
前記切刃部の後端面と接触する先端押圧面と、
前記遠心力受け部に径方向内側から対向する周壁面と、を有する、切刃部の位置調整機構。
【請求項7】
請求項
6に記載の切刃部の位置調整機構であって、
前記切刃部は、前記切刃部の後端部において前記遠心力受け部よりも径方向内側に位置する突起部を有し、
前記突起部は、前記周壁面に径方向内側から対向する、切刃部の位置調整機構。
【請求項8】
請求項
3に記載の切刃部の位置調整機構であって、
前記切刃部は、前記切刃部の後端面から先端側へ窪む凹部を有し、
前記遠心力受け部は、前記凹部の内面のうち径方向内側を向く立壁面であり、
前記ナット部材は、前記ナット部材の先端部に、
先端側を向き、前記切刃部の後端面と接触する押圧面と、
前記押圧面よりも先端側に突出する凸部と、を有し、
前記凸部は、前記凹部内に位置して、前記遠心力受け部に径方向内側から対向する、切刃部の位置調整機構。
【請求項9】
請求項
3に記載の切刃部の位置調整機構であって、
前記ナット部材は、前記ナット部材の先端面に、後端側へ向かうにしたがい縮径する凹テーパ面を有し、
前記遠心力受け部は、前記切刃部の後端面に配置され、後端側へ向かうにしたがい縮径するテーパ状とされて、前記凹テーパ面と接触する、切刃部の位置調整機構。
【請求項10】
中心軸回りに回転させられる工具本体と、
前記工具本体の先端外周部に周方向に互いに間隔をあけて配置される複数の切刃部と、
前記工具本体の外周に周方向に互いに間隔をあけて配置され、前記切刃部を
前記中心軸が延びる方向である軸方向の先端側へ向けて押圧し前記切刃部の
前記軸方向の位置を調整する複数の調整部と、を備え、
前記切刃部は、前記調整部を径方向内側へ向けて支持可能な遠心力受け部を有
し、
前記調整部の中心線は、前記軸方向に沿って延び、
前記切刃部は、前記工具本体に対して前記軸方向に沿ってスライド移動する、転削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切刃部の位置調整機構および転削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1の刃先交換式フライスが知られる。刃先交換式フライスは、軸線回りに回転させられる工具本体と、複数のフライス用インサートと、複数の調整機構と、を備える。調整機構は、フライス用インサートの軸線方向の位置を調整する。
調整機構は、工具本体のネジ孔に軸線と平行にねじ込まれる軸部材と、軸部材の先端側に向けられたネジ部(第2ネジ部)にねじ込まれるナット部材と、を備える。ナット部材は、フライス用インサートに軸線方向の後端側から接触し、フライス用インサートを先端側へ向けて押圧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の転削工具では、調整部(調整機構)の耐久性に合わせて、切削加工時の工具回転数の上限(最高回転数)が決定されることがある。すなわち、切削加工時の遠心力の作用によって調整部が変形等することがないよう、使用時の最高回転数が制限される。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、調整部の耐久性を向上して、工具回転数の上限を高めることができる切刃部の位置調整機構および転削工具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の切刃部の位置調整機構の一つの態様は、中心軸回りに回転させられる工具本体の先端外周部に配置される切刃部と、前記工具本体の外周に配置され、前記切刃部を前記中心軸が延びる方向である軸方向の先端側へ向けて押圧し前記切刃部の前記軸方向の位置を調整する調整部と、を備え、前記切刃部は、前記調整部を径方向内側へ向けて支持可能な遠心力受け部を有し、前記調整部の中心線は、前記軸方向に沿って延び、前記切刃部は、前記工具本体に対して前記軸方向に沿ってスライド移動する。
また、本発明の転削工具の一つの態様は、中心軸回りに回転させられる工具本体と、前記工具本体の先端外周部に周方向に互いに間隔をあけて配置される複数の切刃部と、前記工具本体の外周に周方向に互いに間隔をあけて配置され、前記切刃部を前記中心軸が延びる方向である軸方向の先端側へ向けて押圧し前記切刃部の前記軸方向の位置を調整する複数の調整部と、を備え、前記切刃部は、前記調整部を径方向内側へ向けて支持可能な遠心力受け部を有し、前記調整部の中心線は、前記軸方向に沿って延び、前記切刃部は、前記工具本体に対して前記軸方向に沿ってスライド移動する。
【0007】
本発明の切刃部の位置調整機構および転削工具の一つの態様によれば、切刃部の遠心力受け部が、調整部を径方向内側へ向けて支持可能である。このため、切削加工時に、調整部に大きな遠心力(工具の径方向外側へ向かう力)が作用しても、遠心力受け部が調整部を径方向内側に向けて支持して、調整部の変形等が抑制される。これにより、調整部の耐久性(剛性)が向上して、切削加工時の工具回転数の上限(最高回転数)を高めることができる。最高回転数が高められるため、より安全に工具を使用できる。また、使用可能な工具回転数の範囲が広がり、様々な加工条件に対応できる。
【0008】
上記切刃部の位置調整機構において、前記調整部の中心線は、前記軸方向に沿って延び、前記切刃部は、前記工具本体に対して前記軸方向に沿ってスライド移動する。
【0009】
この場合、切削加工時に調整部に対して遠心力が作用したときに、調整部の耐久性に、より影響が生じやすくなる。本発明の一つの態様によれば、上記構成においても、調整部の変形等を抑制でき、工具の最高回転数を高めることができる。
【0012】
上記切刃部の位置調整機構において、前記遠心力受け部は、前記調整部と径方向に接触することとしてもよい。
上記切刃部の位置調整機構において、前記遠心力受け部は、前記調整部と径方向に隙間をあけて対向することとしてもよい。
【0013】
遠心力受け部は、調整部に遠心力が作用したときに、調整部を径方向内側へ向けて支持可能であればよい。このため、遠心力受け部は、調整部に対して径方向に接触していてもよく、または径方向に隙間をあけて対向配置されていてもよい。
【0014】
遠心力受け部が調整部と接触する場合には、この遠心力受け部を、調整部の軸方向先端側へ向けた押圧力を受ける被押圧面としても利用できる。したがって、切刃部の構造を簡素化しやすい。
【0015】
遠心力受け部が調整部と隙間をあけて対向する場合には、調整部に対して所定以上の遠心力が作用したときに、遠心力受け部が調整部と接触する。この場合、切刃部に、調整部からの軸方向先端側へ向けた押圧力を受ける被押圧面と、遠心力受け部と、を別々に設けることができ、それぞれの機能をより安定化できる。
【0016】
上記切刃部の位置調整機構において、前記調整部は、前記工具本体に支持される軸部材と、前記軸部材に螺着し、前記切刃部に接触するナット部材と、を有し、前記軸部材に対する前記ナット部材のねじ込み量を調整することにより、前記切刃部の前記軸方向の位置が調整され、前記遠心力受け部は、前記ナット部材を径方向内側へ向けて支持可能であることが好ましい。
【0017】
この場合、切削加工時においてナット部材に遠心力が作用したときに、遠心力受け部がナット部材を径方向内側に向けて支持する。これにより、調整部の耐久性が向上して、切削加工時の最高回転数を高めることができる。
【0020】
上記切刃部の位置調整機構において、前記ナット部材は、前記ナット部材の先端面に、先端側へ向かうにしたがい縮径する凸テーパ面を有し、前記遠心力受け部は、前記切刃部の後端面に配置され、先端側へ向かうにしたがい径方向内側へ向けて延びる傾斜面とされて、前記凸テーパ面と接触することが好ましい。
【0021】
この場合、遠心力受け部が、切刃部の後端面に配置される傾斜面である。遠心力受け部を簡単な構成としつつ、上述の作用効果が得られる。
【0022】
上記切刃部の位置調整機構において、前記切刃部は、前記切刃部の後端面において前記遠心力受け部よりも径方向内側に位置する接触部を有し、前記接触部は、先端側へ向かうにしたがい径方向外側へ向けて延びる傾斜面とされて、前記凸テーパ面と接触することが好ましい。
【0023】
この場合、接触部が、調整部からの軸方向先端側へ向けた押圧力を受ける被押圧面の一部として機能する。これにより、調整部からの押圧力を、切刃部の後端面の広い範囲(複数箇所)で受けることができる。したがって、ナット部材から切刃部への押圧バランスが安定する。
【0024】
上記切刃部の位置調整機構において、前記遠心力受け部は、前記切刃部の後端部に配置されて径方向内側を向く立壁面であり、前記ナット部材は、前記ナット部材の先端部に、前記軸方向に延びる柱部を有し、前記柱部は、前記切刃部の後端面と接触する先端押圧面と、前記遠心力受け部に径方向内側から対向する周壁面と、を有することが好ましい。
【0025】
この場合、切刃部は、調整部からの軸方向先端側へ向けた押圧力を後端面で受ける。また、調整部に径方向外側へ向けた遠心力が作用したときに、切刃部は、この遠心力を遠心力受け部で受ける。すなわち、切刃部において押圧力を受ける部分と、遠心力を受ける部分とが別々に設けられるので、切刃部は押圧力および遠心力をそれぞれ安定して受けられる。
【0026】
上記切刃部の位置調整機構において、前記切刃部は、前記切刃部の後端部において前記遠心力受け部よりも径方向内側に位置する突起部を有し、前記突起部は、前記周壁面に径方向内側から対向することが好ましい。
【0027】
この場合、ナット部材の柱部が、切刃部における遠心力受け部と突起部とに径方向両側から挟まれて配置される。このため、ナット部材と切刃部との組み付け姿勢が安定する。
【0028】
上記切刃部の位置調整機構において、前記切刃部は、前記切刃部の後端面から先端側へ窪む凹部を有し、前記遠心力受け部は、前記凹部の内面のうち径方向内側を向く立壁面であり、前記ナット部材は、前記ナット部材の先端部に、先端側を向き、前記切刃部の後端面と接触する押圧面と、前記押圧面よりも先端側に突出する凸部と、を有し、前記凸部は、前記凹部内に位置して、前記遠心力受け部に径方向内側から対向することが好ましい。
【0029】
この場合、切刃部は、調整部からの軸方向先端側へ向けた押圧力を後端面で受ける。また、調整部に径方向外側へ向けた遠心力が作用したときに、切刃部は、この遠心力を遠心力受け部で受ける。すなわち、凹部の遠心力受け部が、凸部を径方向内側へ向けて支持可能である。切刃部において押圧力を受ける部分と、遠心力を受ける部分とが別々に設けられるので、切刃部は押圧力および遠心力をそれぞれ安定して受けられる。
【0030】
上記切刃部の位置調整機構において、前記ナット部材は、前記ナット部材の先端面に、後端側へ向かうにしたがい縮径する凹テーパ面を有し、前記遠心力受け部は、前記切刃部の後端面に配置され、後端側へ向かうにしたがい縮径するテーパ状とされて、前記凹テーパ面と接触することが好ましい。
【0031】
この場合、凸テーパ状の遠心力受け部が、ナット部材の凹テーパ面と接触するので、遠心力受け部による上述の作用効果が得られつつ、ナット部材と切刃部との組み付け姿勢が安定する。また、調整部からの押圧力を、切刃部の後端面の広い範囲で受けることができる。したがって、ナット部材から切刃部への押圧バランスが安定する。
【発明の効果】
【0034】
本発明の一つの態様の切刃部の位置調整機構および転削工具によれば、調整部の耐久性を向上して、工具回転数の上限を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施形態の刃先交換式フライスカッタの下面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の刃先交換式フライスカッタの側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の刃先交換式フライスカッタの縦断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態の切刃部の位置調整機構を示す正面図である。
【
図5】
図4の調整部の(a)ナット部材を示す斜視図、(b)軸部材を示す斜視図である。
【
図7】第1変形例の切刃部の位置調整機構を示す正面図である。
【
図9】第2変形例の切刃部の位置調整機構を示す正面図である。
【
図10】
図9の調整部の(a)ナット部材を示す斜視図、(b)軸部材を示す斜視図である。
【
図12】第3変形例の切刃部の位置調整機構を示す正面図である。
【
図14】第4変形例の切刃部の位置調整機構を示す正面図である。
【
図16】第5変形例の切刃部の位置調整機構を示す正面図である。
【
図17】
図16の調整部の(a)ナット部材を示す斜視図、(b)軸部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態の転削工具の一例である刃先交換式フライスカッタ1、および、この刃先交換式フライスカッタ1が備える切刃部の位置調整機構20について、図面を参照して説明する。
【0037】
〔刃先交換式フライスカッタおよび切刃部の位置調整機構の概略構成〕
本実施形態の刃先交換式フライスカッタ1は、金属材料等の被削材にフライス加工を施す転削工具(切削工具)である。刃先交換式フライスカッタ1は、被削材に主に正面削り等の転削加工(切削加工)を施す。正面削りとは、被削材に対して、工具本体2の中心軸Oに垂直な加工面を形成するフライス削りである。
【0038】
図1~
図6に示すように、切刃部の位置調整機構20は、切刃部30と、調整部50と、を備える。
また、刃先交換式フライスカッタ1は、工具本体2と、複数の切刃部30と、複数の調整部50と、を備える。
【0039】
工具本体2は、中心軸Oを中心とする略円筒状である。工具本体2は、図示しない工作機械の主軸に装着され、主軸により中心軸O回りに回転させられる。
切刃部30は、工具本体2の先端外周部に周方向に互いに間隔をあけて複数配置される。切刃部30は、切削インサートまたは切削チップと呼ばれる。切刃部30は、工具本体2の先端外周部に着脱可能に装着される。工具本体2の先端外周部には、周方向に互いに間隔をあけて複数のインサート取付座4が設けられる。各切刃部30は、各インサート取付座4に対して着脱可能に取り付けられる。
【0040】
切刃部30は、切刃7を有する。インサート取付座4に取り付けられた切刃部30は、その切刃7が、工具本体2よりも先端側および径方向外側に突出して配置される。
本実施形態の刃先交換式フライスカッタ1は、インサート取付座4が工具本体2に周方向に間隔をあけて10箇所以上(例えば20箇所)設けられており、切刃部30もインサート取付座4の数と同じ数だけ、10個以上(例えば20個)設けられる。この刃先交換式フライスカッタ1は、いわゆる多刃タイプのフライスカッタである。
【0041】
刃先交換式フライスカッタ1は、その工具本体2の上側部分が工作機械の主軸に取り付けられる。刃先交換式フライスカッタ1は、主軸により、工具本体2が中心軸O回りの工具回転方向Tに回転させられつつ、中心軸Oに交差する方向(例えば直交する方向)に移動させられる。そして、工具本体2に装着された複数の切刃部30の切刃7により、被削材をフライス加工する。
【0042】
〔本実施形態で用いる向き(方向)の定義〕
本実施形態では、工具本体2の中心軸Oに沿う方向(中心軸Oが延びる方向)を、軸方向と呼ぶ。軸方向のうち、工作機械の主軸に取り付けられる工具本体2の取付部5から、インサート取付座4および切刃部30へ向かう方向を、先端側と呼び、インサート取付座4および切刃部30から取付部5へ向かう方向を、後端側と呼ぶ。
中心軸Oに直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Oに接近する向きを径方向の内側と呼び、中心軸Oから離れる向きを径方向の外側と呼ぶ。
中心軸O回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。周方向のうち、切削加工時に工作機械の主軸により工具本体2が回転させられる向きを、工具回転方向Tと呼び、これとは反対の回転方向を、工具回転方向Tとは反対方向(または反工具回転方向)と呼ぶ。
【0043】
〔工具本体の説明1〕
工具本体2は、外側本体部21と、内側本体部22と、空間部23と、クーラント孔3と、を有する。また、工具本体2は、チップポケット6と、インサート取付座4と、支持部24と、窪み部25と、を有する。チップポケット6、インサート取付座4、支持部24および窪み部25は、外側本体部21に配置される。
【0044】
図3に示すように、外側本体部21は、有底筒状である。外側本体部21は、周壁と、底壁と、を有する。外側本体部21は、例えば鋼材製である。
内側本体部22は、略円柱状である。内側本体部22は、外側本体部21の内部に配置される。すなわち、内側本体部22は、外側本体部21の内部に位置する部分を有する。内側本体部22は、例えばアルミ材製である。内側本体部22の比重は、外側本体部21の比重よりも小さい。
【0045】
内側本体部22は、円柱部22aと、フランジ部22bと、を有する。
円柱部22aの後端面(上面)には、取付部5が形成される。取付部5は、円柱部22aの後端面に開口し、この後端面から先端側に窪む穴である。取付部5には、工作機械の主軸が挿入される。
フランジ部22bは、円柱部22aの後端部(上端部)から径方向外側に広がる。フランジ部22bは、円形リング板状である。フランジ部22bの先端面(下面)は、外側本体部21の周壁の後端面(上面)に対向する。
【0046】
円柱部22aの外周面のうち、フランジ部22bの先端側に隣接する部分は、外側本体部21の周壁の後端開口内に嵌合する。
円柱部22aの先端面のうち、外周端部および内周端部は、外側本体部21の底壁の後端面に対して、後端側から接触する。円柱部22aと外側本体部21の底壁とは、ネジ部材40により締結され、互いに固定される。
【0047】
空間部23は、外側本体部21と内側本体部22との間に位置する。空間部23は、工具本体2の内部に設けられる肉抜き空間である。空間部23は、第1空間部23aと、第2空間部23bと、を有する。
【0048】
第1空間部23aは、外側本体部21の周壁と、円柱部22aの外周面との間に配置される。第1空間部23aは、中心軸Oを中心とする円筒状の空間である。
第2空間部23bは、外側本体部21の底壁と、円柱部22aの先端面との間に配置される。第2空間部23bは、中心軸Oを中心とする円形リング状の空間である。第2空間部23bは、円柱部22aの先端面のうち、外周端部と内周端部との間に位置する。第2空間部23bは、クーラント孔3の流路の一部を構成する。
【0049】
クーラント孔3は、工具本体2の内部を延びる。クーラント孔3は、工具本体2を貫通する。工作機械の主軸を通して供給されるクーラント(切削液剤)が、クーラント孔3の内部を流通する。クーラント孔3は、第1クーラント孔3aと、第2クーラント孔3bと、第2空間部23bと、を有する。
【0050】
第1クーラント孔3aは、内側本体部22を貫通する。第1クーラント孔3aは、取付部5の内周面および円柱部22aの先端面に開口する。第1クーラント孔3aの先端部は、第2空間部23bと繋がる。第1クーラント孔3aは、周方向に互いに間隔をあけて複数(例えば4本)設けられる。
第2クーラント孔3bは、外側本体部21を貫通する。第2クーラント孔3bは、外側本体部21の底壁の後端面および周壁の外周面に開口する。第2クーラント孔3bの後端部は、第2空間部23bと繋がる。第2クーラント孔3bの先端部(径方向外端部)は、チップポケット6に開口する。第2クーラント孔3bの先端部は、切刃部30の切刃7に向けて開口する。第2クーラント孔3bは、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。第2クーラント孔3bの数は、チップポケット6の数や切刃部30の数と同じ(例えば20本)である。
【0051】
図1および
図2に示すように、チップポケット6は、工具本体2(外側本体部21)の先端外周部に周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。チップポケット6は、工具本体2の先端外周部において凹状に窪んで形成される。
インサート取付座4は、工具本体2(外側本体部21)の先端外周部のうち、チップポケット6の工具回転方向Tとは反対方向に隣接して配置される。言い換えると、チップポケット6が、インサート取付座4に対して工具回転方向Tに隣接して配置される。インサート取付座4は、切刃部30の形状に対応して、長方形穴状または溝状をなす。
インサート取付座4の詳しい説明および工具本体2の上述以外の部分の説明については、別途後述する。
【0052】
〔切刃部〕
図6に示すように、切刃部30は、例えば正面フライス加工(正面削り)に用いられる正面フライス用インサートである。工具本体2に装着される複数の切刃部30としては、互いに切刃7の形状が同一である1種類のみが用いられてもよいし、互いに切刃7の形状が異なる複数種類が用いられてもよい。
切刃部30は、工具本体2のインサート取付座4に取り付けられるインサート本体31と、インサート本体31のすくい面32と逃げ面33との交差稜線に沿って延び、インサート本体31の先端外周部に配置される切刃7と、を有する。
【0053】
インサート本体31は、多角形板状である。本実施形態の例では、インサート本体31が長方形板状である。切刃部30がインサート取付座4に装着されると、インサート本体31の長方形面(表面および裏面)の長手方向は、工具本体2の軸方向に沿って配置される(
図2参照)。また、インサート本体31の長方形面の短手方向は、工具本体2の径方向に沿って配置される(
図1参照)。
【0054】
インサート本体31は、長方形板状の台金部34と、該台金部34の1つのコーナ部に接合され、切刃7が形成された三角形板状の刃部35と、を有する。
台金部34は、例えば超硬合金製である。刃部35は、台金部34よりも硬度が高いダイヤモンド焼結体やcBN焼結体等の超高圧焼結体製である。ただしこれに限らず、インサート本体31は、台金部34および刃部35を含む全体が例えば超硬合金製であり、単一部材により一体に形成されていてもよい。
【0055】
本実施形態においては、刃部35が、インサート本体31の表面および裏面を構成する一対の多角形面(長方形面)のうち、一方の多角形面(表面)の1つのコーナ部に配置されて、台金部34にロウ付けや一体焼結等により接合されている。上記コーナ部は、切刃部30がインサート取付座4に装着されたときに、刃先交換式フライスカッタ1の先端外周部に位置するコーナ部である。
【0056】
台金部34の一方の多角形面には、該多角形面から厚さ方向に窪むクランプ凹部37が形成されている。本実施形態の例では、切刃部30を厚さ方向から見た平面視で、クランプ凹部37がD字状をなす。ただし、クランプ凹部37は、平面視でD字状に限らない。クランプ凹部37の深さは、インサート本体31の短手方向に沿って刃部35とは反対側の端部から刃部35側へ向かうにしたがい深くなる。つまりクランプ凹部37の底面は、傾斜面である。切刃部30がインサート取付座4に装着されたときに、クランプ凹部37の底面は、径方向外側に向かうにしたがい工具回転方向Tとは反対方向に向けて延びる。
【0057】
台金部34の一方の多角形面において、クランプ凹部37と刃部35との間に位置する部分には、該多角形面から厚さ方向に突出するリブ38が形成されている。切刃部30の平面視において、リブ38は、略直角三角形状をなす刃部35の斜辺と略平行に、直線状に延びる。リブ38は、刃部35に対してインサート本体31の長手方向および短手方向から対向するように配置される。このため、切刃部30がインサート取付座4に装着されたときに、リブ38は、切刃7に対して、軸方向の後端側からかつ径方向の内側から、対向して配置される。リブ38には、切刃7が被削材を切削して生じた切屑が接触する。
【0058】
図1に示すように、切刃部30の厚さは、インサート本体31の短手方向に沿って、刃部35から該刃部35とは反対側の端部へ向かうにしたがい厚くなる。すなわち、切刃部30がインサート取付座4に装着されたときに、切刃部30の厚さは、径方向内側に向かうにしたがい厚くなる。
【0059】
図2に示すように、切刃部30がインサート取付座4に装着されたときに、切刃7のアキシャルレーキ(軸方向すくい角)は、ポジティブ(正)角である。
図6において、切刃7のうち、インサート本体31の短手方向に延びる部分は、正面刃7aである。正面刃7aは、直線状である。なお、正面刃7aは直線状に限らず、例えば、大きな曲率半径を有する凸曲線状等であってもよい。正面刃7aは、切刃部30がインサート取付座4に装着されたときに、該インサート取付座4から工具本体2の先端側に向けて突出する。
切刃7のうち、インサート本体31の長手方向に延びる部分は、外周刃7bである。外周刃7bは、直線状である。外周刃7bは、切刃部30がインサート取付座4に装着されたときに、該インサート取付座4から工具本体2の径方向外側に向けて突出する。
切刃7のうち、正面刃7aと外周刃7bとの間に位置する部分は、コーナ刃7cである。コーナ刃7cは、凸曲線状または直線状である。コーナ刃7cは、切刃部30がインサート取付座4に装着されたときに、該インサート取付座4から工具本体2の先端外周側に向けて突出する。
【0060】
図4および
図6に示すように、切刃部30は、遠心力受け部36を有する。遠心力受け部36は、調整部50を径方向内側へ向けて支持可能である。遠心力受け部36は、調整部50の後述するナット部材52を、径方向内側へ向けて支持可能である。遠心力受け部36は、切削加工時において調整部50に作用する遠心力(工具の径方向外側へ向かう力)を、径方向外側から受ける。なお、調整部50の詳しい説明については、別途後述する。
【0061】
遠心力受け部36は、切刃部30(インサート本体31)の後端部に配置される。遠心力受け部36は、切刃部30の後端部に設けられ、調整部50の先端部を径方向内側へ向けて支持可能である。本実施形態では、遠心力受け部36が、調整部50と径方向に接触する。遠心力受け部36は、調整部50に対して径方向外側から接触する。本実施形態の例では、遠心力受け部36が、調整部50と軸方向にも接触する。遠心力受け部36は、調整部50に対して先端側から接触する。
【0062】
具体的に、遠心力受け部36は、切刃部30(インサート本体31)の後端面30aに配置される。後端面30aは、径方向内側へ向かうにしたがい先端側へ向けて延びる傾斜面である。このため、遠心力受け部36も、径方向内側へ向かうにしたがい先端側へ向けて延びる傾斜面である。言い換えると、遠心力受け部36は、先端側へ向かうにしたがい径方向内側へ向けて延びる傾斜面である。遠心力受け部36は、後述する調整部50の中心線Cよりも径方向外側に位置する。遠心力受け部36は、後端面30aにおける径方向外側の端部に位置する。
【0063】
〔工具本体の説明2〕
工具本体2のインサート取付座4について、詳しく説明する。
図1~
図3に示すように、インサート取付座4は、工具本体2の先端面と外周面とに開口して軸方向に延びる。インサート取付座4は、工具回転方向Tとは反対方向を向く第1壁面8と、工具回転方向Tを向く第2壁面9と、該インサート取付座4の径方向内側の端部に位置して径方向外側を向く第3壁面10と、クランプネジ孔11と、を有する。
【0064】
図1に示すように、本実施形態の例では第1壁面8が、工具本体2の中心軸Oを含む仮想平面(図示省略)に沿って広がる平面状であり、第3壁面10は、第1壁面8と略直交する平面状である。また第2壁面9は、径方向外側に向かうにしたがい工具回転方向Tに向けて延びる。このため、第2壁面9と第1壁面8との間の距離(インサート取付座4の周方向の幅)は、径方向外側へ向かうにしたがい小さくなる。
【0065】
切刃部30は、インサート取付座4に対して軸方向の後端側に向けて挿入される。インサート取付座4に切刃部30が挿入されたときに、切刃部30の厚さ方向を向く表面(一方の多角形面)は、第1壁面8と接触する。なお、後述のように切刃部30をクランプネジ19で固定した際には、切刃部30の厚さ方向を向く表面と、第1壁面8との間に、僅かに隙間が設けられる。切刃部30の厚さ方向を向く裏面(他方の多角形面)は、第2壁面9と接触する。切刃部30の短手方向を向く側面は、第3壁面10と接触する。切刃部30は、第1壁面8と第2壁面9との間で周方向から挟持される。
【0066】
本実施形態の例では、上述のようにインサート取付座4の周方向の幅が、径方向外側へ向かうにしたがい小さくなるので、インサート取付座4に挿入された切刃部30が、インサート取付座4に対して径方向外側に移動することは抑制される。つまり、インサート取付座4から切刃部30が径方向外側へ抜け出すことが防止される。
切刃部30は、インサート取付座4に対して軸方向に沿ってスライド移動する。つまり、切刃部30は、工具本体2に対して軸方向に沿ってスライド移動する。
【0067】
クランプネジ孔11は、工具本体2の外周面(チップポケット6)および第1壁面8に開口する。クランプネジ孔11の内周面には、雌ネジ部が形成される。クランプネジ孔11は、工具回転方向Tとは反対方向へ向かうにしたがい径方向内側へ向けて延びる。クランプネジ孔11には、クランプネジ19が螺着する(
図2参照)。クランプネジ19の先端は、切刃部30のクランプ凹部37の底面に接触する。クランプネジ19がクランプネジ孔11にねじ込まれることにより、切刃部30はインサート取付座4に固定される。
【0068】
〔調整部〕
図2に示すように、調整部50は、工具本体2(外側本体部21)の外周に、周方向に互いに間隔をあけて複数配置される。調整部50は、切刃部30を軸方向の先端側へ向けて押圧し、切刃部30の軸方向の位置を調整する。調整部50は、工具本体2に対して切刃部30の軸方向の位置を調整することにより、切刃7の軸方向の位置を調整する。調整部50の数は、切刃部30の数と同一であり、本実施形態の例では、工具本体2の外周に調整部50が10個以上(例えば20個)設けられる。
【0069】
図3~
図5に示すように、調整部50は、軸部材51と、ナット部材52と、を有する。
軸部材51は、工具本体2に支持される。軸部材51は、工具本体2に螺着される。ナット部材52は、軸部材51に螺着し、切刃部30に接触する。
【0070】
図3に示すように、軸部材51の中心線Cは、工具本体2の軸方向に沿って延びる。すなわち、調整部50の中心線Cは、軸方向に沿って延びる。軸部材51の中心線Cが延びる方向は、工具本体2の軸方向に相当する。軸部材51は、工具本体2(支持部24)に対して中心線C回りに回転させられることにより、ねじの作用で工具本体2に対して軸方向に移動する。ナット部材52は、軸部材51および工具本体2に対して中心線C回りに回転させられることにより、ねじの作用で軸部材51および工具本体2に対して軸方向に移動する。
【0071】
図5(b)に示すように、軸部材51は、軸部材51の後端部に位置する第1ネジ軸53と、先端部に位置する第2ネジ軸54と、軸方向に沿う第1ネジ軸53と第2ネジ軸54との間に位置する操作部55と、を有する。
第1ネジ軸53の外径は、第2ネジ軸54の外径よりも大きい。第1ネジ軸53の外周面および第2ネジ軸54の外周面には、それぞれ、雄ネジ部が形成される。第1ネジ軸53の雄ネジ部と、第2ネジ軸54の雄ネジ部とは、互いにネジのピッチが異なる。具体的には、第1ネジ軸53の雄ネジ部のネジのピッチが、第2ネジ軸54の雄ネジ部のネジのピッチよりも大きい。
【0072】
操作部55は、円柱状または円板状である。操作部55の外径は、第1ネジ軸53の外径および第2ネジ軸54の外径よりも大きい。操作部55の外周面には、軸操作穴55aが開口する。軸操作穴55aは、操作部55の外周面に、中心線C回りに互いに間隔をあけて複数(例えば等間隔に4つ)設けられる。
図3に示すように、軸操作穴55aは、中心線Cに直交する方向に延びる。本実施形態の例では、軸操作穴55aが、中心線Cに直交する方向に操作部55を貫通して形成される。軸操作穴55aには、図示しないレンチ等の作業用工具が挿入される。
【0073】
図5(a)に示すように、ナット部材52は、中心線Cを中心とする円筒状または円形リング板状である。ナット部材52の外径は、軸部材51の外径よりも大きい。ナット部材52の内周面には、雌ネジ部が形成される。ナット部材52は、第2ネジ軸54に螺着する。ナット部材52の外周面には、ナット操作穴52aが開口する。ナット操作穴52aは、ナット部材52の外周面に、中心線C回りに互いに間隔をあけて複数(例えば等間隔に5つ)設けられる。ナット操作穴52aは、中心線Cに直交する方向に延びる。本実施形態の例では、ナット操作穴52aが、底部を有する止め穴である。ナット操作穴52aには、図示しないレンチ等の作業用工具が挿入される。
【0074】
ナット部材52は、調整部50において最も外径が大きい。このため、
図3に示すように、工具本体2に取り付けられた調整部50において、最も工具本体2の径方向外側に位置する径方向外端は、ナット部材52の外周面の部分である。調整部50の径方向外端の径方向の位置は、切刃部30の径方向外端(外周刃7b)の径方向の位置よりも、径方向の内側である。
【0075】
ナット部材52の先端面は、切刃部30の後端面に対して、後端側から接触する。
このため、クランプネジ19を緩めた状態または仮締めした状態において、工具本体2に対する軸部材51のねじ込み量、および、軸部材51に対するナット部材52のねじ込み量のいずれかを調整することにより、切刃部30の軸方向の位置が調整される。すなわち、作業用工具を操作して、軸部材51およびナット部材52のいずれかを中心線C回りに回転させることにより、インサート取付座4に対して、切刃部30および切刃7の軸方向の位置が調整可能である。切刃部30の位置調整を行った後は、クランプネジ19をねじ込んで本締めすることにより、インサート取付座4に対して切刃部30が固定される。なお、クランプネジ19を本締めした状態において、工具本体2に対する軸部材51のねじ込み量、および、軸部材51に対するナット部材52のねじ込み量のいずれかを調整することにより、切刃部30の軸方向の位置を微調整してもよい。
【0076】
図4および
図5(a)に示すように、ナット部材52は、ナット部材52の先端面に、先端側へ向かうにしたがい縮径する凸テーパ面52bを有する。凸テーパ面52bは、円錐面状である。凸テーパ面52bは、ナット部材52の先端面において、中心線C回りの全周にわたって延びる円形の環状である。凸テーパ面52bは、切刃部30の遠心力受け部36と接触する。遠心力受け部36は、凸テーパ面52bを径方向内側へ向けて支持する。遠心力受け部36は、凸テーパ面52bに対して径方向外側から接触する。本実施形態においては、遠心力受け部36が、調整部50からの軸方向先端側へ向けた押圧力を受ける被押圧面としても機能する。
【0077】
〔工具本体の説明3〕
工具本体2の上述以外の部分について、説明する。
図2および
図3に示すように、支持部24は、調整部50の軸方向の後端側に配置されて、調整部50を支持する。支持部24は、工具本体2の外周面に、周方向に互いに間隔をあけて複数配置される。支持部24の数は、調整部50の数と同一であり、本実施形態の例では、工具本体2の外周に支持部24が10個以上(例えば20個)設けられる。支持部24は、外側本体部21の周壁の外周面のうち、後端部に配置される。
【0078】
支持部24は、軸方向に延びるリブ状である。支持部24は、工具本体2の外周面において、径方向外側に向けて突出する。支持部24は、工具本体2の外周面のうち、支持部24に対して周方向に隣り合う部分(周方向に対向する部分)2aよりも、径方向外側に向けて突出する。なお、上記部分2aは、工具本体2の外周面のうち、周方向に隣り合う支持部24同士の間の部分2aと言い換えてもよい。
支持部24は、工具本体2の外周面のうち、支持部24の先端側に隣り合う部分(窪み部25)よりも、径方向外側に向けて突出する。
【0079】
支持部24は、軸方向に延びるネジ孔24aを有する。ネジ孔24aは、支持部24を軸方向に貫通し、支持部24の先端面および後端面に開口する。ネジ孔24aの内周面には、雌ネジ部が設けられる。ネジ孔24aには、第1ネジ軸53が螺着する。
軸方向から見て、支持部24と、調整部50と、インサート取付座4と、切刃部30とは、互いに重なって配置される。
【0080】
工具本体2の外周面のうち、周方向に隣り合う調整部50同士の間の部分2bの径方向の位置は、調整部50の径方向の位置よりも、径方向の内側である。言い換えると、調整部50は、工具本体2の外周面のうち周方向に隣り合う調整部50同士の間の部分2bよりも、径方向外側に突出して配置される。本実施形態の例では、工具本体2の外周面のうち、周方向に隣り合う調整部50同士の間の部分2bの径方向の位置が、調整部50の中心線Cの径方向の位置よりも、径方向の内側である。なお、上記部分2bは、工具本体2の外周面のうち、調整部50に対して周方向に隣り合う部分(周方向に対向する部分)2bと言い換えてもよい。
【0081】
特に図示しないが、中心軸Oに垂直な断面視において、上記部分2bは、中心軸Oを中心とする円弧状である。工具本体2の外周面のうち、上記部分2bが配置される軸方向の領域(範囲)において、上記部分2bの径方向の位置は、上記部分2b以外の部分の径方向の位置よりも、径方向外側である。つまり、上記部分2bが配置される軸方向の領域においては、上記部分2bは、工具本体2の外周面の最外径部分をなす。このため、工具本体2(外側本体部21)を製造する際、上記部分2bを旋削加工(ターニング)により形成できる。
【0082】
本実施形態の例では、工具本体2の外周面のうち周方向に隣り合う調整部50同士の間の部分2bの径方向の位置が、工具本体2の外周面のうち周方向に隣り合う支持部24同士の間の部分2aの径方向の位置よりも、径方向外側である。
また、工具本体2の外周面のうち、上記部分2bの先端側に隣接する部分は、上記部分2bよりも径方向外側に突出する。
【0083】
図2に示すように、径方向から見て、窪み部25は、工具本体2(外側本体部21)の外周面において調整部50と重なる位置に配置されて、径方向内側に窪む。窪み部25の数は、調整部50の数と同一であり、本実施形態の例では、工具本体2の外周に窪み部25が10個以上(例えば20個)設けられる。
【0084】
本実施形態の例では、窪み部25が長方形穴状である。窪み部25は、軸方向に延びる。窪み部25は、工具本体2の外周面のうち周方向に隣り合う調整部50同士の間の部分2bに対して、周方向に隣接配置される。窪み部25は、工具本体2の外周面のうち、周方向に隣り合う上記部分2b同士の間に配置される。窪み部25は、上記部分2bよりも、径方向内側に配置される。言い換えると、上記部分2bの径方向の位置は、窪み部25の径方向の位置よりも、径方向の外側である。
【0085】
図3に示すように、調整部50の一部は、窪み部25内に配置される。図示の例では、調整部50のうち、操作部55の一部(径方向内側の端部)と、ナット部材52の一部(径方向内側の端部)とが、窪み部25内に位置する。軸方向から見て、操作部55の一部(径方向内側の端部)と、ナット部材52の一部(径方向内側の端部)と、窪み部25とは、互いに重なって配置される。
【0086】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の切刃部の位置調整機構20および刃先交換式フライスカッタ1によれば、切刃部30の遠心力受け部36が、調整部50を径方向内側へ向けて支持可能である。このため、切削加工時に、調整部50に大きな遠心力(工具の径方向外側へ向かう力)が作用しても、遠心力受け部36が調整部50を径方向内側に向けて支持して、調整部50の変形等が抑制される。これにより、調整部50の耐久性(剛性)が向上して、切削加工時の工具回転数の上限(最高回転数)を高めることができる。最高回転数が高められるため、より安全に工具を使用できる。また、使用可能な工具回転数の範囲が広がり、様々な加工条件に対応できる。
【0087】
また本実施形態では、調整部50の中心線Cが軸方向に沿って延び、切刃部30が工具本体2に対して軸方向に沿ってスライド移動する。
この場合、切削加工時に調整部50に対して遠心力が作用したときに、調整部50の耐久性に、より影響が生じやすくなる。本実施形態によれば、上記構成においても、調整部50の変形等を抑制でき、工具の最高回転数を高めることができる。
【0088】
また本実施形態では、遠心力受け部36が、切刃部30の後端部に設けられ、調整部50の先端部を径方向内側へ向けて支持可能である。
このため、切刃部30の構造を複雑にすることなく、上述の作用効果が得られる。
【0089】
また本実施形態では、遠心力受け部36が、調整部50と径方向に接触する。
遠心力受け部36が調整部50と接触する場合には、本実施形態の例のように、この遠心力受け部36を、調整部50の軸方向先端側へ向けた押圧力を受ける被押圧面としても利用できる。したがって、切刃部30の構造を簡素化しやすい。
【0090】
また本実施形態では、遠心力受け部36が、ナット部材52を径方向内側へ向けて支持可能である。
すなわち、切削加工時においてナット部材52に遠心力が作用したときに、遠心力受け部36がナット部材52を径方向内側に向けて支持する。これにより、調整部50の耐久性が向上して、切削加工時の最高回転数を高めることができる。
【0091】
また本実施形態では、調整部50が複数の螺着構造を有する。すなわち、工具本体2と軸部材51とが螺着し、軸部材51とナット部材52とが螺着する。このため、本実施形態と異なり、例えば軸部材51が工具本体2と固定される場合のように、単一の螺着構造(軸部材51とナット部材52との螺着構造のみ)を有する調整部と比べて、本実施形態では、調整部50の剛性が低下しがちである。しかしながら本実施形態によれば、遠心力受け部36により、調整部50の剛性が安定して確保される。したがって、調整部50により、切刃部30の軸方向の位置調整作業を容易化し、かつ微調整可能としつつも、調整部50の耐久性が確保される。
【0092】
また本実施形態では、遠心力受け部36が、切刃部30の後端面30aに配置される傾斜面であり、ナット部材52の先端面の凸テーパ面52bと接触する。
このため、遠心力受け部36を簡単な構成としつつ、上述の作用効果が得られる。
【0093】
また本実施形態では、工具本体2の内側本体部22の比重が、外側本体部21の比重よりも小さい。
このため、工具本体2のうち、高剛性が必要とされる外側本体部21については、剛性を確保しやすい例えば鋼材製とし、内側本体部22については、軽量の例えばアルミ材製として、工具本体2の総重量を削減できる。すなわち、例えば本実施形態と異なり工具本体の全体が鋼材製である場合に比べて、本実施形態によれば工具の重量を軽量化できる。つまり、工具の剛性を確保しつつも、工具を軽量化できる。工具を軽量化できるため、工具の最高回転数をより高めやすい。
【0094】
また本実施形態では、外側本体部21と内側本体部22との間に空間部23が設けられるので、工具本体2を肉抜きして重量を削減でき、工具をより軽量化できる。
なお本実施形態では、空間部23の一部(第2空間部23b)を、クーラント孔3の流路部分として用いている。このため、空間部23の一部にクーラントを一時的に溜めることができ、切刃部30へのクーラント噴出量を安定させたり、複数のクーラント孔3(第2クーラント孔3b)同士のクーラントの噴出バランスを均等化しやすくできる。
【0095】
また、工具本体2の外周面のうち、周方向に隣り合う調整部50同士の間の部分2bの径方向の位置が、調整部50の径方向の位置よりも径方向内側であるので、工具本体2の外周面から余分な肉、つまり工具剛性を確保する上で必要とは言えない金属部分を削減でき、工具を軽量化できる。
【0096】
また本実施形態では、支持部24が、工具本体2の外周面のうち支持部24に対して周方向に隣り合う部分2aよりも、径方向外側に向けて突出する。すなわち、上記部分2aの径方向の位置が、支持部24の径方向の位置よりも径方向の内側に配置される。これにより、工具本体2の外周面において支持部24近傍の余分な肉を削減でき、工具をより軽量化できる。
【0097】
また本実施形態では、切刃部30が、工具本体2の先端外周部(インサート取付座4)に着脱可能に装着される。
すなわち、切刃部30が着脱式の切削インサートまたは切削チップである。このため、切刃部30が工具寿命となった際には、別の新しい切刃部30と交換することにより、加工精度を良好に維持できる。また、被削材の種類や加工形態等に応じて、様々な切刃7を有する複数種類の切刃部30を用意し、選択的に使用することができる。
【0098】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0099】
図7および
図8は、前述の実施形態で説明した切刃部の位置調整機構20の第1変形例を示す。
この第1変形例では、切刃部30が、接触部39を有する。接触部39は、切刃部30の後端面30aにおいて遠心力受け部36よりも径方向内側に位置する。接触部39は、先端側へ向かうにしたがい径方向外側へ向けて延びる傾斜面とされて、凸テーパ面52bと接触する。
【0100】
第1変形例によれば、接触部39が、調整部50からの軸方向先端側へ向けた押圧力を受ける被押圧面の一部として機能する。これにより、調整部50からの押圧力を、切刃部30の後端面30aの広い範囲(複数箇所)で受けることができる。したがって、ナット部材52から切刃部30への押圧バランスが安定する。
【0101】
図9~
図11は、前述の実施形態で説明した切刃部の位置調整機構20の第2変形例を示す。
この第2変形例では、切刃部30の後端面30aが、中心線Cに垂直な方向に広がる平面状である。遠心力受け部41は、切刃部30の後端部に配置されて径方向内側を向く立壁面である。遠心力受け部41は、切刃部30の後端部における径方向外側の端部に配置される。遠心力受け部41は、工具の径方向に垂直な方向に広がる平面状である。遠心力受け部41は、後端面30aから後端側へ向けて延びる。
【0102】
ナット部材52は、ナット部材52の先端部に、軸方向に延びる柱部56を有する。図示の例では、柱部56が、円柱状である。なおこれに限らず、柱部56は、多角形柱状等であってもよい。柱部56は、先端押圧面56aと、周壁面56bと、を有する。
【0103】
先端押圧面56aは、中心線Cに垂直な方向に広がる平面状である。先端押圧面56aは、円形リング面状である。先端押圧面56aは、切刃部30の後端面30aと接触する。先端押圧面56aは、後端面30aに対して後端側から接触する。先端押圧面56aは、後端面30aを先端側へ向けて押圧する。
【0104】
周壁面56bは、遠心力受け部41に径方向内側から対向する。図示の例では、遠心力受け部41が、周壁面56bと径方向に隙間をあけて対向する。つまり、遠心力受け部41は、調整部50と径方向に隙間をあけて対向する。遠心力受け部41は、調整部50に遠心力が作用したときに、調整部50と接触して、調整部50を径方向内側へ向けて支持可能である。
【0105】
第2変形例では、切削加工時に調整部50に対して所定以上の遠心力が作用したときに、遠心力受け部41が調整部50と接触する。この場合、切刃部30に、調整部50からの軸方向先端側へ向けた押圧力を受ける被押圧面と、遠心力受け部41と、を別々に設けることができ、それぞれの機能をより安定化できる。
【0106】
具体的に、切刃部30は、調整部50からの軸方向先端側へ向けた押圧力を後端面30aで受ける。また、調整部50に径方向外側へ向けた遠心力が作用したときに、切刃部30は、この遠心力を遠心力受け部41で受ける。すなわち、切刃部30において押圧力を受ける部分と、遠心力を受ける部分とが別々に設けられるので、切刃部30は押圧力および遠心力をそれぞれ安定して受けられる。
【0107】
図12および
図13は、前述の実施形態で説明した切刃部の位置調整機構20の第3変形例を示す。
この第3変形例では、上記第2変形例の切刃部30が、突起部42を有する。突起部42は、切刃部30の後端部において遠心力受け部41よりも径方向内側に位置する。突起部42は、切刃部30の後端部における径方向内側の端部に配置される。突起部42は、周壁面56bに径方向内側から対向する。
【0108】
第3変形例によれば、ナット部材52の柱部56が、切刃部30における遠心力受け部41と突起部42とに径方向両側から挟まれて配置される。このため、ナット部材52と切刃部30との組み付け姿勢が安定する。
【0109】
図14および
図15は、前述の実施形態で説明した切刃部の位置調整機構20の第4変形例を示す。
この第4変形例では、切刃部30が、切刃部30の後端面30aから先端側へ窪む凹部43を有する。後端面30aは、中心線Cに垂直な方向に広がる平面状である。凹部43は、後端面30aにおける径方向の両端部同士の間に位置する。遠心力受け部44は、凹部43の内面のうち、径方向内側を向く立壁面である。遠心力受け部44は、工具の径方向に垂直な方向に広がる平面状である。遠心力受け部44は、後端面30aから先端側へ向けて延びる。
【0110】
ナット部材52は、ナット部材52の先端部に、押圧面57と、凸部58と、を有する。押圧面57は、中心線Cに垂直な方向に広がる平面状である。押圧面57は、円形リング面状である。押圧面57は、先端側を向き、切刃部30の後端面30aと接触する。押圧面57は、後端面30aに対して後端側から接触する。押圧面57は、後端面30aを先端側へ向けて押圧する。
【0111】
凸部58は、押圧面57よりも先端側に突出する。凸部58は、軸方向に延びる柱状である。図示の例では、凸部58が、円柱状である。なおこれに限らず、凸部58は、多角形柱状等であってもよい。凸部58は、凹部43内に位置する。凸部58は、遠心力受け部44に径方向内側から対向する。図示の例では、遠心力受け部44が、凸部58の外周面と径方向に隙間をあけて対向する。つまり、遠心力受け部44は、調整部50と径方向に隙間をあけて対向する。遠心力受け部44は、調整部50に遠心力が作用したときに、調整部50と接触して、調整部50を径方向内側へ向けて支持可能である。また、凸部58の先端面と、凹部43の後端側を向く底面との間には、隙間が設けられる。
【0112】
第4変形例によれば、切刃部30は、調整部50からの軸方向先端側へ向けた押圧力を後端面30aで受ける。また、調整部50に径方向外側へ向けた遠心力が作用したときに、切刃部30は、この遠心力を遠心力受け部44で受ける。すなわち、凹部43の遠心力受け部44が、凸部58を径方向内側へ向けて支持可能である。切刃部30において押圧力を受ける部分と、遠心力を受ける部分とが別々に設けられるので、切刃部30は押圧力および遠心力をそれぞれ安定して受けられる。
【0113】
図16~
図18は、前述の実施形態で説明した切刃部の位置調整機構20の第5変形例を示す。
この第5変形例では、ナット部材52が、ナット部材52の先端面に、後端側へ向かうにしたがい縮径する凹テーパ面53cを有する。凹テーパ面53cは、円錐面状である。凹テーパ面53cは、ナット部材52の先端面において、中心線C回りの全周にわたって延びる円形の環状である。
【0114】
遠心力受け部45は、切刃部30の後端面30aに配置され、後端側へ向かうにしたがい縮径するテーパ状とされて、凹テーパ面53cと接触する。遠心力受け部45は、円錐面状である。遠心力受け部45は、後端面30aにおいて、中心線C回りの全周にわたって延びる円形の環状である。遠心力受け部45は、凹テーパ面53cと接触して、調整部50を径方向内側へ向けて支持する。遠心力受け部45は、中心線Cよりも径方向内側に位置する部分において、凹テーパ面53cを径方向内側へ向けて支持する。
【0115】
第5変形例によれば、凸テーパ状の遠心力受け部45が、ナット部材52の凹テーパ面53cと接触するので、遠心力受け部45による上述の作用効果が得られつつ、ナット部材52と切刃部30との組み付け姿勢が安定する。また、調整部50からの押圧力を、切刃部30の後端面30aの広い範囲で受けることができる。したがって、ナット部材52から切刃部30への押圧バランスが安定する。
【0116】
また、前述の実施形態では、軸部材51の操作部55の外周面に軸操作穴55aが開口し、ナット部材52の外周面にナット操作穴52aが開口する例を挙げた。そして、軸操作穴55aおよびナット操作穴52aに対して、レンチ等の作業用工具を挿入し、軸部材51およびナット部材52を中心線C回りに回転操作する。これに限らず、例えば、操作部55の外周面およびナット部材52の外周面が、中心線Cに垂直な断面視で、六角形等の多角形状をなしていてもよい。そして、軸部材51およびナット部材52を、スパナ等の作業用工具により中心線C回りに回転操作してもよい。
また、調整部50は、切刃部30を軸方向の先端側へ向けて押圧し、切刃部30の軸方向の位置を調整可能であればよい。例えば、軸部材51が、工具本体2に螺着されずに固定されてもよい。また調整部50は、軸部材51およびナット部材52を有する構成に限定されない。
【0117】
前述の実施形態では、切刃部30が、工具本体2の先端外周部に着脱可能に装着される例を挙げたが、これに限らない。切刃部30は、工具本体2に対して軸方向に位置調整可能に取り付けられていればよく、工具本体2の先端外周部に取り外し不能に装着されてもよい。すなわち、転削工具は、刃先交換式フライスカッタ1に限定されない。
【0118】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0119】
1…刃先交換式フライスカッタ(転削工具)
2…工具本体
20…切刃部の位置調整機構
30…切刃部
30a…後端面
36,41,44,45…遠心力受け部
39…接触部
42…突起部
43…凹部
50…調整部
51…軸部材
52…ナット部材
52b…凸テーパ面
53c…凹テーパ面
56…柱部
56a…先端押圧面
56b…周壁面
57…押圧面
58…凸部
C…中心線
O…中心軸