(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 17/00 20060101AFI20220324BHJP
【FI】
B25J17/00 Z
(21)【出願番号】P 2017226264
(22)【出願日】2017-11-24
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】掃部 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】烏山 純一
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-125546(JP,A)
【文献】特開平08-083394(JP,A)
【文献】特開平09-057680(JP,A)
【文献】特開2005-131733(JP,A)
【文献】特開2004-331089(JP,A)
【文献】特開2005-161437(JP,A)
【文献】特開平11-277481(JP,A)
【文献】特開2004-021806(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0307097(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節部を介して、回動自在に連結されている、第1リンク及び第2リンクと、
前記第1リンクを前記第2リンクに対して、相対的に揺動させるように構成されている駆動機構と、
前記駆動機構を囲むように配置されている、格子状のパイプ部材と、
前記パイプ部材を覆うように配置され、前記パイプ部材よりも柔らかい材質で構成されているカバー部材と、を備え
、
前記第1リンク及び前記第2リンクの一方に、前記駆動機構と前記パイプ部材とが取り付けられ、
前記第1リンクが前記第2リンクに対して揺動することで、前記第1リンク及び前記第2リンクの他方が前記パイプ部材と前記カバー部材とに対して揺動する、ロボット。
【請求項2】
前記駆動機構は、電動モータを有し、
前記第1リンク及び前記第2リンクの少なくとも一方のリンクには、前記電動モータに接続されるケーブルが挿通する貫通孔が設けられ、
前記パイプ部材は、前記貫通孔の周辺部を補強するように前記リンクに接続されている、請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記カバー部材は、網目状に形成されている、請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項4】
前記カバー部材は、合成樹脂で構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
稼働可能な状態でメンテナンスを行うことができる歩行型ロボットのリンクが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されている歩行型ロボットのリンクでは、開口が形成された筒状で、軽合金の鋳造によって一体物に形成されているリンク本体と、開口を覆ってリンク本体に着脱自在に取り付けられる蓋体と、を備えていて、蓋体が透明材質で形成されているため、当該蓋体部分からリンク内部に配置されている内装部品の点検をある程度行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている歩行型ロボットでは、ロボットが転倒した場合、壁に衝突した場合に、リンク本体が軽合金で形成されているため、床又は壁が損傷するおそれがあり、未だ改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、ロボットが転倒した場合、又は壁に衝突した場合等に、従来の歩行型ロボットに比して、床、壁等の損傷を抑制することができる、ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るロボットは、関節部を介して、回動自在に連結されている、第1リンク及び第2リンクと、前記第1リンクを前記第2リンクに対して、相対的に揺動させるように構成されている駆動機構と、前記駆動機構を囲むように配置されている、格子状のパイプ部材と、前記パイプ部材を覆うように配置され、前記パイプ部材よりも柔らかい材質で構成されているカバー部材と、を備える。
【0007】
これにより、ロボットが転倒した場合、又は壁に衝突した場合等に、従来の歩行型ロボットに比して、床、壁等の損傷を抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のロボットによれば、ロボットが転倒した場合、又は壁に衝突した場合等に、従来の歩行型ロボットに比して、床、壁等の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施の形態1に係るロボットの概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すロボットにおける制御装置の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すロボットにおける腕の概略構成を模式的に示す側面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すロボットにおける腕のカバー部材を取り外した状態を模式的に示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示すロボットにおける腕のカバー部材を取り外した状態を模式的に示す側面図である。
【
図6】
図6は、
図3に示すロボットにおける腕のカバー部材を取り外した状態を模式的に示す正面図である。
【
図7】
図7は、
図3に示すロボットにおける腕のカバー部材を取り外した状態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、全ての図面において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、全ての図面において、本発明を説明するための構成要素を抜粋して図示しており、その他の構成要素については図示を省略している場合がある。さらに、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0011】
(実施の形態1)
本実施の形態1に係るロボットは、関節部を介して、回動自在に連結されている、第1リンク及び第2リンクと、第1リンクを第2リンクに対して、相対的に揺動させるように構成されている駆動機構と、駆動機構を囲むように配置されている、格子状のパイプ部材と、パイプ部材を覆うように配置され、パイプ部材を構成する材質よりも柔らかい材質で構成されているカバー部材と、を備える。
【0012】
また、本実施の形態1に係るロボットでは、駆動機構は、電動モータを有し、第1リンク及び第2リンクの少なくとも一方のリンクには、電動モータに接続されるケーブルが挿通する貫通孔が設けられ、パイプ部材は、貫通孔の周辺部を補強するようにリンクに接続されていてもよい。
【0013】
また、本実施の形態1に係るロボットでは、カバー部材は、網目状に形成されていてもよい。
【0014】
さらに、本実施の形態1に係るロボットでは、カバー部材は、合成樹脂で構成されていてもよい。
【0015】
以下、本実施の形態1に係るロボットの一例について、
図1~
図7を参照しながら説明する。
【0016】
[ロボットの構成]
図1は、本実施の形態1に係るロボットの概略構成を示す模式図である。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態1に係るロボット100は、胴体101と、頭102と、一対の腕103、103と、一対の脚104、104と、胴体101内に配置されている制御装置110と、を備えている。
【0018】
頭102は、首関節105を介して、胴体101に接続されている。首関節105には、頭102を胴体101に対して相対的に揺動(回動)させるための駆動機構が配置されている(図示せず)。
【0019】
同様に、腕103は、肩関節106を介して、胴体101に接続されている。肩関節106には、腕103を胴体101に対して相対的に揺動(回動)させるための駆動機構が配置されている(図示せず)。なお、腕103の構成については、後述する。
【0020】
また、脚104は、股関節107を介して、胴体101に接続されている。股関節107には、脚104を胴体101に対して、相対的に揺動(回動)させるための駆動機構が配置されている。
【0021】
各関節に配置されている駆動機構は、アクチュエータ(例えば、電動モータ(サーボモータ))、及びラック・ピニオン、ベルト・プーリ等の駆動部材で構成されている。
【0022】
なお、本実施の形態1においては、制御装置110が、胴体101内に配置されている形態を採用したが、これに限定されない。制御装置110が、頭102等の他の構成部材内に配置されている形態を採用してもよく、制御装置110が、ロボット100外に配置されている形態を採用してもよい。
【0023】
ここで、
図2を参照しながら、制御装置110の構成について、説明する。
【0024】
図2は、
図1に示すロボットにおける制御装置の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【0025】
図2に示すように、制御装置110は、CPU等の演算部110aと、ROM、RAM等の記憶部110bと、サーボ制御部110cと、を備える。制御装置110は、例えばマイクロコントローラ等のコンピュータを備えるロボットコントローラであってもよい。
【0026】
なお、制御装置110は、集中制御する単独の制御装置110によって構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御する複数の制御装置110によって構成されていてもよい。また、本実施の形態1においては、記憶部110bが、制御装置110内に配置されている形態を採用したが、これに限定されず、記憶部110bが、制御装置110と別体に設けられている形態を採用してもよい。
【0027】
記憶部110bには、基本プログラム、各種固定データ等の情報が記憶されている。演算部110aは、記憶部110bに記憶されている基本プログラム等のソフトウェアを読み出して実行することにより、ロボットの各種動作を制御する。すなわち、演算部110aは、ロボットの制御指令を生成し、これをサーボ制御部110cに出力する。サーボ制御部110cは、演算部110aにより生成された制御指令に基づいて、ロボット100の各関節に設けられているサーボモータの駆動を制御するように構成されている。
【0028】
次に、
図3~
図6を参照しながら、本実施の形態1に係るロボット100の腕103について、説明する。
【0029】
図3は、
図1に示すロボットにおける腕の概略構成を模式的に示す側面図である。
図4及び
図5は、
図3に示すロボットにおける腕のカバー部材を取り外した状態を模式的に示す側面図である。
図6は、
図3に示すロボットにおける腕のカバー部材を取り外した状態を模式的に示す正面図である。
図7は、
図3に示すロボットにおける腕のカバー部材を取り外した状態を模式的に示す斜視図である。なお、
図3~
図7においては、ロボット100の一部を省略している。また、
図3~
図7においては、ロボットにおける前後、上下、左右方向を図における前後、上下、左右方向として表している。
【0030】
図3~
図7に示すように、本実施の形態1に係るロボット100の腕103は、下椀(第1リンク)10、上腕(第2リンク)20、肘関節(関節部)30、駆動機構40、パイプ部材50、及びカバー部材60を備えていて、駆動機構40が駆動することにより、下椀10が上腕20に対して相対的に揺動するように構成されている。
【0031】
下椀10は、略直方体状に形成されている。下椀10の上端部の前方には、貫通孔12が形成されていて、下椀10の上端部の後方には、上方に延びるように突起部11が形成されている。
【0032】
上腕20は、略直方体状に形成されている。上腕20の下端部には、下方に突出するように、一対の板状の突起部21、21が形成されている。一対の突起部21、21は、下椀10の上端部を挟み込むように、配置されている。また、一対の突起部21、21には、それぞれ、下椀10の貫通孔12と連通するように、貫通孔22、22が設けられている。
【0033】
そして、下椀10の貫通孔12と上腕20の貫通孔22、22を挿通するように、軸部材70が配置されている。軸部材70、下椀10の上端部、上腕20の突起部21、21は、ナット部材71により、共締めされていて、これらの部材が、肘関節30を構成する。
【0034】
なお、貫通孔12、及び/又は貫通孔22、22には、軸受部材が配置されていてもよい。軸受部材としては、ベアリング等を用いることができる。また、本実施の形態1においては、軸部材70が、貫通孔22、22を挿通する形態を採用したが、これに限定されない。例えば、下椀10の外表面に一対の軸部(ボス部)を設けて、当該軸部が、貫通孔22、22を挿通する形態を採用してもよい。
【0035】
また、下椀10の突起部11には、軸部材72を介して、駆動機構40の下端部が回動自在に接続されている。一方、上腕20の上端部には、一対の短冊状の固定部材23、23が、締結部材24により、それぞれ、固定されている。一対の固定部材23、23の後端部には、それぞれ、貫通孔25が設けられていて、当該貫通孔25には、軸受部材26を介して、駆動機構40の軸部41Aが挿通されている。
【0036】
駆動機構40は、ここでは、直動アクチュエータで構成されていて、第1筐体41と、第2筐体42と、電動モータ43と、ネジ軸44及びナット部材45を有するボールネジ機構と、を備えている(
図5参照)。また、駆動機構40は、電動モータ43の回転を第1プーリ46、ベルト47、第2プーリ(図示せず)を介して、ネジ軸44に伝達し、ネジ軸44の回転により、ナット部材45が進退するように構成されている。ナット部材45には、第2筐体42が固定されている。
【0037】
これにより、電動モータ43が回転することによって、第2筐体42が第1筐体41に対して、相対的に進退動作を行い、軸部41Aと軸部材70との距離が変動して、下椀10が上腕20に対して、相対的に揺動することができる。
【0038】
また、駆動機構40の電動モータ43には、ケーブル80の先端部が接続されている。ケーブル80は、上腕20の側面に設けられている貫通孔27から上腕20の内部空間に通され、上腕20から肩109及び肩関節106を経て、胴体101内に引き回されている。ケーブル80の基端部は、例えば、ロボット100の内部に配置されているバッテリ、電動モータ43以外の電動モータ、又は家屋等に配置されているコンセント(いずれも図示せず)等と接続されていてもよい。また、ケーブル80の基端部は、例えば、制御装置110に接続されていてもよい。
【0039】
上腕20の貫通孔27近傍(ここでは、貫通孔27の上方と下方)には、補強部材51A、51Bが配置されている。なお、貫通孔27は、下椀10に設けられていてもよい。
【0040】
補強部材51A、51Bには、パイプ部材50が接続されている。パイプ部材50は、格子状に形成されていて、駆動機構40を囲むように配置されている。パイプ部材50は、例えば、アルミニウム、鉄、ニッケル、亜鉛、銅等の金属で構成されていてもよく、これらの金属のうち、2種類以上の金属を含む、合金で構成されていてもよい。
【0041】
パイプ部材50には、当該パイプ部材50を覆うように、カバー部材60が配置されている。カバー部材60は、網目状に形成されている。カバー部材60の線径は、パイプ部材50の線径よりも小さくなるように構成されている。
【0042】
また、カバー部材60の網目の大きさ(間隔)は、パイプ部材50の格子の大きさ(間隔)よりも小さくなるように構成されている。さらに、カバー部材60の網目の大きさは、カバー部材60内への通気性、カバー部材60内にほこり等の侵入を抑制する観点と、電動モータ43等で発生する熱をカバー部材60外に放熱する観点と、から、適宜設定することができる。
【0043】
カバー部材60は、パイプ部材50よりも柔らかい材質で構成されていて、例えば、合成樹脂で構成されている。合成樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、プリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ナイロン等が挙げられる。
【0044】
このように構成された、本実施の形態1に係るロボット100では、カバー部材60が、パイプ部材50よりも柔らかい材質で構成されている。これにより、ロボット100が転倒した場合、壁に衝突した場合等に、床、壁等の損傷を抑制することができる。
【0045】
また、本実施の形態1に係るロボット100では、パイプ部材50が、駆動機構40を囲むように配置されていてもよい。これにより、ロボット100が転倒した場合、壁に衝突した場合等に、駆動機構40が損傷することを抑制することができる。
【0046】
また、本実施の形態1に係るロボット100では、ケーブル80を上腕20内に引き込むための貫通孔27近傍に、補強部材51A、51Bが配置されている。これにより、上腕20における貫通孔27の開口部近傍を補強することができる。
【0047】
さらに、本実施の形態1に係るロボット100では、網目状のカバー部材60が、パイプ部材50を覆うように配置されている。これにより、従来の歩行型ロボットに比して、内部の状態を容易に把握することができる。このため、ロボット100に故障等が生じた場合に、故障箇所等を早期に発見することができる。
【0048】
なお、本実施の形態1においては、第1リンクとして、下椀10を例示し、第2リンクとして、上腕20を例示し、関節部として、肘関節30を例示したが、第1リンク、第2リンク、及び関節部は、これらに限定されない、例えば、第1リンクとして、上腕20であってもよく、第2リンクとして、手であってもよく、関節部として、手首関節であってもよい。また、例えば、第1リンクとして、大腿であってもよく、第2リンクとして、下腿であってもよく、関節部として、膝関節であってもよい。
【0049】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良又は他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のロボットは、ロボットが転倒した場合、又は壁に衝突した場合等に、従来の歩行型ロボットに比して、床、壁等の損傷を抑制することができるため、産業ロボットの分野において有用である。
【符号の説明】
【0051】
10 下椀
11 突起部
12 貫通孔
20 上腕
21 突起部
21A 貫通孔
22 貫通孔
23 固定部材
24 締結部材
25 貫通孔
26 軸受部材
27 貫通孔
30 肘関節
40 駆動機構
41 第1筐体
41A 軸部
42 第2筐体
43 電動モータ
44 ネジ軸
45 ナット部材
46 第1プーリ
47 ベルト
50 パイプ部材
51A 補強部材
51B 補強部材
60 カバー部材
70 軸部材
72 軸部材
80 ケーブル
100 ロボット
101 胴体
102 頭
103 腕
104 脚
105 首関節
106 肩関節
107 股関節
109 肩
110 制御装置
110a 演算部
110b 記憶部
110c サーボ制御部